仮面ライダーヘブン 第8話 |
第8話 「The one learnt from defeat」 (暁視点) うっすらと目を開けると、太陽の光が差し込みそのほのかな光で身体が目覚めて行く。 それと同時に全身に激痛と気だるいまでの脱力感が襲い、まだ立ち上がれなさそうと感じる。顔だけ動かして見渡すと、これは・・・キャンピングカーって車の中か? 小奇麗というか何もない。まああるとしたら水やスポーツドリンクのペットボトルがいくつもあることと、窓のあたりに干してある白いTシャツに革のパンツ、ジャケットくらいだ。そして俺はダブルベットに寝かされている。そして体を見ると・・・包帯が綺麗に巻かれている。薬も塗られているのか、傷口に染みる痛みが感じられるが、大分回復しているようだ。 暁「一体・・・・誰が・・・・・」 そう言っていると扉が開いた。そうだ、お礼言わなくちゃ・・・。 暁「・・・あ、あの」 アリス「あっ、目を覚ましたなぁ、暁」 前言撤回。今すぐこの場から少なくとも半径数百キロメートルは全速力で逃げよう。 暁「さらばじゃっ!!(一気に立ち上がって走ろうと駆けだす)」 ガンッ(ベットの敷居に足をひっかけて躓いた音) ぎゅっ(アリスが飛び込んできた俺を捕まえて捕獲(抱きしめる)した音) ふにゅっ・・・・むぎゅうう・・・(アリスが俺の頭を胸に押しつける音) アリス「・・・・へえ・・・怪我してまだ動けないと思っていたら・・・随分積極的だなあ?そんなに・・・・私が・・・・恋しかったかぁ?」 暁「バカ言うなああああああああああああああっ!!お前、俺をどうするつもりだっ、俺食ったって美味しくねえぞっ、離せ、離せゴルァアアアアアアアアアアアッ!!」 アリス「・・・・・何かものすごいこと考えているようだけど、今動かない方がいいぜぇ?私たちこの公園から今出られないから」 暁「・・・・はあ?」 そう言われて窓の外の景色を見る。 その瞬間、俺はあまりの惨状に言葉を失い、目が驚きで見開かれ、全身の血の気が一気に引くように意識が遠のきかけた。 公園の池全体を黒いもやのようなものが覆い尽くしていて、その中を無数の人間がゆらゆらと不自然な動きで歩きまわっている。しかし、その顔は・・・・血の気が失せた青白い顔・・・目や鼻、口は真っ暗な闇が広がりそこからどろりとどす黒い血が流れ出ており、「おお」とか「ああ」とかいう唸り声を上げながら池の周りを歩き回っている。 まるで・・・ホラー映画に出てくるようなゾンビだ。 暁「・・・な・・・何だよ・・・どうなっているんだよ」 アリス「・・・・どこぞのバカがやらかしたらしい。たまたま公園の駐車場のキャンピングカーで寝泊まりしていたからこうして隠れてあいつらに見つからないようにしているんだが・・・・それも時間の問題だな。お前が持っていた聖水の効果も、そう長くは持たない」 暁「はあっ!?というか、聖水って・・・・ああ!?俺の持っていた聖水が!?というか、俺の持っていたものがどうして分かるんだ!?」 アリス「あのなあ、私だって吸血鬼の端くれだぜぇ?効果くらいは分かるさ」 暁「ああ・・・・・そうですか・・・」 せっかくの打開策をあっさりと見破られ俺はがっくりと頭を下げる。 暁「どうやってここを出るか・・・・」 アリス「・・・先ほどからあのゾンビどもが何やらつぶやいていたが、“帰りたい”としか言っていない」 暁「・・・ふむ・・・・・帰りたい・・・・か」 アリス「・・・・・死んだヤツが帰りたいと願うのはおそらく永遠の眠り・・・・つまりあの世のことだろうな。ようやく長い眠りについていたのに、突然自分が生きていたころの光を見せつけられて、そのショックは計り知れないだろう。二度と取り戻せないのだからな。まあ、今はその方法を考えるしかないな」 暁「二度と取り戻せない光・・・・それを見せつけてしまったのか。そうだ、昴、昴の奴は!?」 再び飛び出そうとアリスを振り切ろうとするがアリスがそんな俺をつかんで離さない!くそっ、何で離してくれないんだよ! 暁「離してくれ!離せ!公園にもしかしたらまだ俺のダチがいるかもしれないんだっ!!」 アリス「落ち着け!!そんな状態で飛び出したらどうなるか分かるだろっ!?」 暁「お前に関係ねえだろっ!!ダチなんだよ・・・・!もしあいつがこんなことやらかしちまって・・・・もしまだ公園内にいたら・・・・!助けないと・・・!・・・・・もしあいつに何かあったら・・・・・何かあったらよぅ・・・・!!俺が、俺が助けにいかねぇでどうするんだよっ・・・!!」 アリス「落ち着けって・・・言ってるだろう!!!」 アリスが俺の胸倉を掴み、怒鳴りつけた!! え・・・・?こいつ、何でこんなに本気で怒っているんだ・・・? アリス「お前さ・・・・そんな状態で出て行ってお前に何かあったら・・・その友人やイマジンたちはどんなことになるのか、そこまで分かっているのか!?お前は何でもかんでも一人だけで問題を背負って解決しようとしている。でもな、背負うものにも限度があるだろうが!それでお前が押し潰れて動けなくなってしまったら、お前が突っぱねてきた他の誰かがもし助けてくれなかったら・・・・お前はどうなるんだっ!!!」 言葉が・・・・・出なかった。 アリス「どうして誰かに助けてもらおう、手伝ってもらおうと考えられない!一人で解決することがカッコいいとでも、責任だからとでも言いたいのか!?自分の命をないがしろにしてまで他人の気持ちも考えずに無茶することなんて無責任も甚だしい!何のための仲間だ!!お前が守るだけの存在じゃないだろう!お前が困っている時、助け合うのが仲間じゃないのか!!それすらも信じあえないヤワな絆なんて、仲間じゃない!!そして、それを信じられないお前も、仲間の本当の意味を分っちゃいないだろうがっ!!だから、少し落ち着けって言ってるんだ!!!」 俺が・・・・何も分かっていない? いざという時・・・誰にも助けが求められない。俺だけでなんとかしようとする。それが・・俺の・・・・弱さ。俺自身が一番驚いていたし、ショックだった。 アリス「・・・・・いつものお前ならそれが分かるはずだ。誰かのために本気で熱くなれるのはいいが、周りが見えなくなって暴走するなんてお前らしくない。そんな拳に・・・お前に惚れたんじゃないんだ。自分の弱さから逃げるな、受け入れて、それを乗り越えるほど強くなればいいじゃないか。お前一人だけで得られるほど“本当の力”は安くない。それは私自身がお前から教わったことだからな」 暁「・・・・俺が?」 アリスがどこか懐かしそうに、思い出すように話す。 その後・・・まさかアリスが「ちょっと様子を見てくる」と言って俺を置いて公園内の探索に出るとは思わなかった。しかし俺はアリスの話してくれた過去に、座りこんでもう何も考えられなかった。あいつがまさか・・・人間だったなんて・・・。 アリス「お前と戦うまで・・・ずっと餓えていた。ただ戦うことしか知らない・・・一人で生き残るためには・・・ただひたすら殴り、戦い、奪うことしか知らない。それが・・・スラムの中でも最底辺の連中の・・・・生まれついての私のルールだった。でもそんな運命なんかに負けるなんてゴメンだった。日々の食糧すらも手に入らないほどの地獄であっても、この拳で切り開くしかない。そう思ってなりふり構わず喧嘩に明け暮れていた・・・その中で一番強くなって・・・生きることに困ることがなくなっても・・・・それからもずっと戦いを挑んでくる奴らと戦って、戦って、勝ち続けて、それでとうとう挑んでくる相手もいなくなって、私はずっと餓えていた。だからなりふり構わず戦いを挑んでいって、でも、イングリッドに負けて私はその強さを見込まれて吸血鬼になった・・・。人間よりも長生きできるならいつか、自分の拳が無意味じゃないということを証明できると思って」 生きるために戦うしか出来なかった。戦うことが生きるすべだった。 でも振っていくうちに、何のために拳を振るうのか分からなくなって、それでも自分の虚しさを埋めるためにひたすら戦い続けて・・・今イングリッドとやらに仕えていても・・・信用出来ない相手のために振う拳にも虚しさを感じていて、それを埋めるためにもっと強いヤツを追い求めて・・・それすらも叶わない。あいつが長年の間抱えてきた欲望への渇望、絶望、虚しさは言葉に言い表せない。 アリス「ところがどうだ。お前と会って、戦って、これまでに感じた事のない強さを感じた。誰かのために全力で振るう拳があんなに熱いものだったなんてな。私の拳では感じた事のない熱さと信念を感じた。だから・・・お前に惹かれるんだ。お前はまだ弱い、でも、これから先成長して強くなれば、きっとさらに強くなる。そんなお前と戦うことが私の今の・・・・楽しみなんだ。だから、今、あの敗北を糧にどこまで強くなれるのか挑んでみたい」 そして、最後に言ったあいつの言葉が一番俺の心を突抜けたような気がする。 「まだ終わりじゃない。限界までまだたどり着いてない。そうだろう」 こんなところで・・・・立ち止まっている場合じゃないだろ。 俺の心に、瞳に再び、火がついたような感覚が目覚め始めていた。 (アリス視点) ふう、まさかあんな過去の話をしてしまうとはな。 誰にも話したことなんてないのにな・・・まああいつが放っておけなかったからだが。 ようやく会えた、私の獲物。こんなところで朽ち果ててしまったら私は何を楽しみにして生きて行けばいい?お前は私のものだ。絶対に手放すものか。 しかし・・・この連中、どうやら生きている人間に果てしなく恨み・・狂気・・殺意を抱いているな。公園の入口に聖水を振りかけて公園の存在そのものを見えなくすることで、公園内にいるのは私と暁くらいになったが、もし生きている人間が見たら大パニックになることこの上ないだろう。そうなると面倒くさい。 さてと、石板調査も兼ねて・・・探索といきますか。 遊歩道に来ると、私の気配に気づいてか虚ろな目を向けて、暗い双眸から底知れない殺意を発して、ゆらりゆらりと襲いかかってきた。近くには奴らが食い荒らした鳥や猫の死骸が転がっている。噛みつかれて肉を食われ、ほとんど骨だけとなった無残な死体。 ふん・・・油断しているとこうなるということか。 アリス「ナメるなよ・・・死人ごときが!!」 自分の姿をライオンプレデターと呼ばれる獣の姿に化身すると、襲い来るゾンビ共を爪で引き裂き、拳で殴り倒し、もはや足を止めることなくひたすら殴っては吹き飛ばし、引き裂いては吹きとばす。しかしその数はもはや減ることはなく、むしろ池の奥から次々と這い出てきている。はっ、なら一斉にぶっ飛ばすとするか。 私の拳に黄金色の大地の力を集結させ・・・すると足元の地面が震えだし、ゴゴゴゴゴゴ・・・という地鳴りの音が響き渡り、精神を集中させる。 そしてまずは・・・左の拳で思い切り地面を殴りつける!! すると、地面から発する超振動から生み出される衝撃波が敵を吹き飛ばし上空に舞い上がった。そしてそれを見据えて、無防備となった集団に向かって右の拳を突き出す!!すると、黄金の輪を描いて強烈な衝撃波が発する!! ライオンプレデター「テラ・・・ブラスタァアアアアアァァアアアッ!!!!」 衝撃波を食らい、ゾンビ共がことごとく粉砕し砕け散る。そしてそのまま砂になると、お前らが望んでいた闇へと荒療治だったが戻してやることに成功した。 さあ、後は石板を探して・・・ついでに昴というヤツも探してやるか。 全く我ながらお節介なもんだな。 まあ・・・惚れた弱みってやつかな。あれ?でも、昴ってどういうヤツだったっけ?まずい、そこが分かってなかった。まあその辺ぶらぶらして生きている人間がいたら連れて行けばいいか。 その様子を、珍しく苛立ちを露にした聖が腹ただしげに見下ろしていた。 聖「あの虫けら風情が・・・・・!!もはや、このまま生かしておいたら何をしでかすか分りませんね。イングリッドさんは私に司令権を持たせている。ということは、司令官としては不穏分子は削除するべきですねぇ・・・・。くふふ、アリス・ビストレオ。貴方は少し言うことを聞かなさすぎた。ましてや、人間の男に心を奪われるとは・・・愚かです」 そして、眼帯を外すと、そこには・・・・黒い十字架に二匹の蛇が絡んでいる紋章が眼球の代わりにあった。 その眼は「這い寄る混沌(ナイアルラトホテップ)」と呼ばれる古代呪術の最たる危険な宝珠の形をした呪術用宝具。それを右目にねじ込むように抑えて自らの目と同化させてしまった彼女の狂気と凶暴性は以前の「ヒュプノス事件」とは比べ物にならないほどに膨れ上がっていた。その宝具はもはや存在そのものに触れることが禁じられている呪われた代物であり、この世の摂理そのものから踏み外している負の念、狂気、殺意、憎悪を術者に宿しもはやこの世の生き物の思念全てを嘲り笑うまでの不可解な精神と思念の持ち主になり、その分、絶大なる闇の魔力を与え、呪術を専門とする魔術に関する膨大な知識と能力を与えるのだ。そして、その魔力ももはや風を操るだけではなく、ファンガイアをもはるかに超えた魔力を手に入れていたのだ。 聖「・・・・さあさ、暗き地の底から目覚めし常世の民よ。今一度、待ち望んだ現世の光を貪らんとする愚かなる餓鬼よ。その願い我が叶えん。その代償として、今ここに我に力を与えたまえ。愚かなる獅子に死の鉄槌を下せ!!地獄の奥底に引きずり込み、苦痛と狂気と絶望にまみれた闇へと飲みこんでしまえ!!」 その呪詛にこたえるかのように、黒いもやが見る見る濃くなりそのもやが吹き飛ばしたゾンビ共を飲みこんでいき、やがてそれは池全体に充満していく。 アリス「・・・な、何だ、これは!?」 アリスが驚き、池の方から遠ざかった直後だ! 池の水面が大きく盛り上がり、中から、巨大な体躯を持つ紫色の皮膚を持つ筋骨隆々とした巨大なゾンビ「ジャッジメント(審判)」が現れた!!!!右手には頭がい骨がいくつも埋め込まれた棍棒を握り、池から這い上がると、立ち上がり、一気に吠える!! 審判「グオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」 アリス「何だ、こいつは!?」 聖「やりなさい、ジャッジメント。言うことを聞かない悪い子にはおしおきです!」 審判「グアアアアアアアアアアアアッ!!グオオオオオオオオオオオオオッ!!」 叫び狂いながら棍棒をブンブン振り回してくる!!太い腕で振り上げる棍棒は木々をなぎ倒し、地面をぶち割り、振り上げるたびに吹きすさぶ風圧がベンチやごみ箱をなぎ倒し、棍棒によって彫刻像やいす、木々をぶっ飛ばし、空中に舞い上がって地面に落下し無残な光景と化す!! アリスが必死で逃げまどう。そんなアリスを追いかけるように執拗に走り、地面を震わせて足跡を地面に思い切り石板をぶち割りつけていく。 アリス「ちっ、やるしかないか!!」 アリスがライオンプレデターの姿に変わると、ジャッジメントが根棒を振り回し、地面に叩きつけたのを確認すると、棍棒の上に飛び乗り、そのまま一気に駆け出すと頭の部分まで駆け上がり、そのまま足を振り上げて顔の部分に渾身の空中回し蹴りを叩きこむ!! ガキィン!!!! ライオンプレデター「くっ!!!」 あまりにも固い筋肉の装甲に、右足が激しく痛む。しかしひるむことなく、頭を駆けあがり、足を振り上げると踵を思い切り頭部に振り下ろす!! 鋼鉄さえも踏み砕く強力な四肢を振う踵落としが脳天に直撃した!!しかし、それにもビクともしないようで、逆に足があまりに硬い筋肉の鎧に悲鳴をあげる。 ライオンプレデター「くそっ・・・!!」 審判「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」 審判が容赦なく棍棒を振り回し、ライオンプレデターをぶちのめすべく、何度も何度も振り下ろす。その棍棒の一撃を素早く身軽な動きでかわしながら、何とか反撃の隙を窺う。しかし、意外と機敏な動きに翻弄され、なかなか体勢が整わない。あんな棍棒で殴られたら・・・いくら自分でも一撃で全身の骨が砕けるだろうし、無事では済まない。 しかし、審判が振りかざした棍棒が彫刻像をたたき割ると無数のがれきが舞い上がり、それを避けるが、その直後だった。 審判「グオオオオオッ、グアアアアアアアアアッ、ジネェエエエエエエエエエッ!!」 目の前に巨大な拳が迫っていた!!! バゴォオオオオオンッ!!!! ライオンプレデター「かはっ・・・・・・・」 急所を外したが拳の一撃の破壊力は凄まじく、気を失うような激しい痛みが全身を襲う。重量級のパンチにライオンプレデターの鍛え抜かれた鋼の肉体も耐えきれず、身体がアリスの姿に戻っていき、激痛にもんどり打ち、地面を転がる。 口から血を吐きだし、苦痛で表情が歪む。その表情には余裕などなく、歯を食いしばり必死で痛みをこらえている。 アリス「ぐっ・・・・・!!ちくしょう・・・・・!!」 聖「ふふっ、あははは、私の邪魔をする奴は誰であろうと容赦しません・・・・。もうちょっと甚振ってから大人しくさせるとしましょうか・・・・そうですね・・・その自慢の腕をバキバキにブチ折って、使い物にならなくなったら、どんな絶望を味わうでしょうね?ああ、足も両方粉々にしてしまえば、もう二度と戦えない。愛する暁君とももう戦えない。そうなったら壊れちゃうのかしら?ふふっ、あははっ、試してみたくなっちゃった♪」 そういって、審判に指示を送る。 聖「殺さないようにして下さい。でも、手足を使い物にならなくしてあげなさい。丁寧にじわじわと、腕を一本ずつ・・・足を一本ずつ・・・・粉々にしてあげなさい」 その言葉を聞いて、審判が拳を振りかざし、動けずにいるアリスに襲いかかる!! 何とか激痛をこらえて必死で転がり避けるが、次々とくる拳の猛打に必死で歯をくいしばって起き上がると、震えるおぼつかない足で必死で走りだす。しかし繰り出す拳の風圧と飛び交うがれきに吹き飛び、そのつど激痛が全身を支配する。がれきが頭部に当たり、額が切れて血が一筋流れだし、髪がほどけてふぁさっと黒髪のロングヘアがほどけおちる。血で視界が見えなくなり、ダメージと走り続けてきたことによる疲労でもはや走ることも限界が来ているようで、息使いも荒く、視界もぼやけている。 アリス「かはっ・・・ああ・・・・・このまま・・・・くたばってたまるか・・・!」 そうだよ・・・誓ったんだ・・・・。 この拳で・・・掴もうと思えばどんな未来だって掴めるんだ・・・・。 あいつともう一度戦いたいんだ!!あの熱い戦いをもう一度やりたい!! そのために・・・もっともっと強くなりたい!!! あいつに負けないくらいに、あいつが持っている強さを超えていきたい!! その先にある強さが何か・・・知りたいんだ!!! それまで死ねるかよ・・・! アリス「・・・・・暁・・・・・・!!」 (暁視点) あ・・・・?今、あいつの声がした・・・? 間違いない、誰にも聞こえないだろうけど、直感で感じ取れる。 あいつの声が・・・あいつが俺を呼んでいる!? 何かあったのか・・? 胸騒ぎがする。俺が慌てて車から出ると・・・その光景に絶句する。 暁「な、何だよ、あれ!?」 俺が見たのは全長6mはある巨大な筋骨隆々とした巨人・・・それもゾンビたちと同じように紫色の生気が宿っていない腐った肌を持ち、腐臭を漂わせながら、頭がい骨がいくつも埋め込まれている巨大な棍棒を振り回している・・・!!どこぞのバイオハザードだよ、こりゃ!? 暁「ありえねえ――――――――――――――――――――っ!!!!」 何でこんな公園に巨大なゾンビがいるんだよっ!!!!! しかもあれ、どう見たってヤバい類というか、凶暴極まりないと言わんばかりに暴れまわっているじゃないか!!!! 「暁・・・!」 あ・・・この声は・・・・・? クリス「暁っ、暁!!無事だったですか!?」 クロキバ「暁!!ようやく精神が通じたぞ、大丈夫なのか!?」 脳の中にクリスとクロキバの声が聞こえてくる。どうやら精神の波長があったらしく、交信ができる。 暁「・・・・・ああ・・・・俺は無事だ・・・・でも・・・・相当ヤバいことになってる・・・公園内に・・・・・とんでもなくデカい化け物がいる・・・・・あれ・・・一体何なんだ?」 クリス「・・・・・何ですかあれはああああああああああああああっ!!!!?」 クロキバ「・・・・これは・・・呪術で呼び出された怨霊を元に作った合成生物・・・・!!昔聞いたことがある。呪術で呼び出した悪霊を合成することで強力な怪物を生み出すこととができる呪いの法具・・・・這い寄る混沌(ナイアルラトホテップ)という宝珠を!!その宝珠で生み出された合成生物の特徴に当てはまっている・・・・!」 暁「その、“ナイアガラホイップ”とか持ってるヤツがやらかしやがったわけか!!」 クリス「そう、しかしその“ナンデアルカストップ”を持っている人なんてどこに・・・!」 暁=「ナイアガラホイップ」クリス=「ナンデアルカストップ」 →見事に大間違いである。 クロキバ「ナイアルラトホテップだぁああああああああああっ!!!お前らそんな真剣な表情でものすごい聞き間違いボケやらかすなぁああああああああああっ!!我もう泣くぞ!!」 ちょっと聞き間違えただけじゃねえか!しかももう泣いてるし!! クロキバ・・・・お前も疲れているのかな?色々と大変だしな。(今回はお前らのせいである) 「暁・・・!!」 あ・・・まただ。 また、あいつの声が聞こえる・・・・? 見ると、ゾンビが追いかけているのは・・・・・・アリス!? あいつ、何かあったのか!?というか、四天王のあいつが襲われているのか!?どうなっているんだ!?あのデカゾンビ仲間じゃないのか!? というか・・・あいつケガしている?まさか・・・かなりヤバいのか!? 暁「・・・・・・・・・・・・・!!あの・・・・バカ・・・・かなりヤベェな・・・」 クリス「暁、どうするのですか?」 クロキバ「・・・・・・まさか、助けるつもりではあるまいな?あいつは敵だぞ!」 分かってるさ。今、俺が考えていることがあまりにもバカげていることなど。 でも、でもよ・・・・。 今の俺には迷いなんてなかった。 暁「・・・・・あいつに助けてもらった・・・・・ならその礼はきっちり返さなきゃならねぇ・・・・・・」 傷の手当だけじゃない。自分を見失い、慌てふためき、周りに俺を気遣ってくれる仲間たちがいることを忘れ、迷いの中にいた俺に喝を唱え、再び俺らしさを取り戻してくれたこと。俺の・・・・見失いがちだった俺自身を取り戻してくれた。 暁「・・・・・あいつを・・・・・助ける・・・・・助けたい・・・!!クリス、クロキバ、力を貸してくれ・・・・!!」 クリス「暁・・・!」 クロキバ「・・・・・迷いはないのだな?」 暁「・・・・・・ない!!」 クリス「・・・・・了解です!!」 クロキバ「・・・・手がかかることだが、お主の決意が決まっているのなら仕方あるまい。うむ!!心得た!!」 暁「冷牙!流水!!雷斗!!力を貸してくれ―――――――――――――っ!!」 冷牙「・・・あいつが頭を下げるとはな・・・・・・」 流水「・・・・・・さーてっと、どうするの?」 冷牙「・・・・・・フン・・・知れたことだ。言うまでもない」 流水「だよね♪」 雷斗「・・・・・・・・(コクリ)」 三人が顔を合わせると、お互いに考えていることをしゃべらずとも確認し合い、笑みを浮かべる。 冷牙「久しぶりに・・・派手に暴れてやるか」 蒼い風が噴き出し、その姿をウルフェンの姿へと変えると赤く凶暴な光を宿した瞳をギラつかせて鋭い爪を光らせて唸り声を上げて覇気を出す。 流水「そうだね、教えてあげようか。ボクたちに喧嘩売ったらどうなるのか♪」 紫色の水柱が噴き出し、みるみる黄色い瞳を光らせて、魚と人間が合わさったような怪人、マーマンの姿へと変わり、にぃっと笑みを浮かべる。 雷斗「・・・・・・勝った、喧嘩は、返品、不可!!」 灰色の髪を肩まで伸ばし、色白の肌を持っている長身の青年の名前は雷斗(フランケン族の青年)。涼しげな雰囲気を漂わせる切れ長の青い瞳、鼻筋がまっすぐで整った顔立ちは知性的な印象を持っており、シャツとベスト、スーツのズボンをしわ一つなく着こなす英国紳士のような出で立ちをしている中性的な美貌を持つ美青年といえる。拳と拳をぶつけ合わせて白色の稲光が激しく轟くと、その姿が二まわり以上は膨れ上がった強靭な筋肉の鎧を持つ巨人、フランケンの姿に変わると一気に吠える・・・!! そして、3体の姿が光に包まれると、それぞれ時空を超えて、光の扉をくぐりぬけて消えていった・・・!! 「「「了解したぜ、相棒」」」 そして、俺もベルトを装着し一気に崖を駆け降りる!! 暁「行くぜ―――――――――――――っ!!!変身!!」 銀色の風を纏い、俺の姿を仮面ライダーヘブンへと変わっていく!!! ヘブン「アリス――――――――――――――――――――――ッ!!!!」 (アリス視点) この声は・・・・・暁!? どうして、ここに、いるんだ・・・? そのとたん、審判の拳が振り上げられ、私めがけて振りおろそうと振りかぶっていた!! ちっ、もう逃げられない! くらったら確実に地面にめり込み、圧殺されるであろう超重量級の拳の一撃を覚悟した時だ。 ビュンッ!!!!! 蒼い風が吹き出し、気がつくと、さっきまで私がいた場所に巨人の拳が振り下され瓦礫が飛び、地面をぶち割っていた・・・。 そして見ると、私は誰かに抱きかかえられていることに気がついた。見るとそれは・・・銀色の毛並みを風になびかせている凶暴な顔つきをした・・・ウルフェン・・・だと!? アリス「なっ、う、ウルフェン・・・だと!?」 ヴォルファス「ふふん・・・驚いたか」 マーマン「マーマンもいるよ―♪きゃはははははは♪」 トーライ「・・・・・・・フランケン・・・・・・さん・・・・じょう・・・・」 いや、「俺、参上!」みたいなノリで言っても片言だし所々しどろもどろだしな・・・。 トーライ「・・・・・・・・!(ズガーン)orz」 ヘブン「ありがとう、来てくれて!!」 ヴォルファス「ふん、ありがたく思え、崇めたてまつるがよいぞ」 チューン「きゃははははははは!久しぶりに大暴れしちゃうぞぉ!」 トーライ「・・・・・パワー・・・・・全開!!(立ち直った)」 ヴォルファス「しかし、何だ、あれは!?お前もうこれホラー映画の世界だろ」 チューン「この世の生き物とは思えないよねー」 トーライ「・・・・・化け・・・・もの!!」 オオカミ男に半魚人、フランケンシュタインが言うかそれを。 チューン「うえっ、デカいし臭いしブチャイクだしサイアックなんですけど」 ヘブン「どこぞの誰かがナイアルラトホテップとかいう術で作ったらしいんだが・・・!」 トーライ「・・・・ナイアルラト・・・・ホテップ・・・・・俺・・・・・知ってる」 ヘブン「マジか!?それじゃ、対策も!?」 トーライ「・・・・ナイアルラトホテップの・・・・呪術の一つに・・・・・死者の魂を・・・・錬成して・・・ゾンビを作り出す術が・・・・・・ある。ゾンビを・・・・倒すには・・・・コアと呼ばれる・・・・・ゾンビの力の源を・・・・壊せば・・・・・いい・・そうすれば・・・・コアに宿った力が消滅・・・・力を失う!」 チューン「それで!?コアってどこにあるの?!」 トーライ「・・・・・・・・・・・・・コアの気配・・・感じる・・・・・よーく・・・見えるぜ・・・・・」 トーライの目に光が宿り、輝くと、視界にはレーダーの役割を果たす機械仕掛けのアイレーダーが働き、巨人を分析すると、胸の部分に何か赤く光り輝いているものを見つける。 見ると、そこにはどくんどくんと鼓動を繰り返す赤い宝石が光り輝いている。 トーライ「胸のところ!・・・あそこが・・・・弱点・・・・・!!」 ヘブン「この先に広場があったな。これ以上進ませたら公園の外に出ちまう。そこでケリつけるしかないか!」 マシンフレスベルグを召喚すると、後ろに人間体に戻った雷斗と流水が飛び乗り、それぞれヘルメットをかぶると一気にエンジンを吹かせて遊歩道をぶっちぎる!!するとあのデカゾンビも追いかけだしてきた。 ヘブン「冷牙!!大丈夫か!!」 ヴォルファス「俺様の脚を甘く見るな。あんなデクノボウなんぞに引けは取らない!」 そして高速でバイクを駆け、隣を冷牙が青い風と共に駆けていく。 審判「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」 迫りくるデカゾンビが棍棒を振り上げてくる!! チューン「・・・・ウッザいなあ・・・・・・いい加減にしないとボクも怒るよ?・・・・潰すよ・・・・・!!」 デカゾンビの暴れぶりにかなりイラついたのか、本性を露にして凶悪な笑みを浮かべると口からいくつも水風船を吐き出し、バズーカ砲のごとく乱射して顔面に直撃し、デカゾンビが怯む!! ヴォルファス「・・・・つくづく思うんだが、多重人格なんじゃないのか、あいつは」 トーライ「・・・・チューン・・・・怒ると・・・・怖い・・・・・」 暁「・・・・・ま、まあ、時々俺でも怖いと思うほどの迫力だしな・・・」 そして中央広場までたどり着くと、デカゾンビが追い付いてきた。それを見ながら、俺は黒い弾丸をクロノストリガーに装填する。そして発射する!! ヘブン「魔獣召喚!!!トーライッハンマーッ!!!!!!」 トーライ「オウッ!!!」 そして魔法陣が展開されるとそこへトーライが飛び込み、黒い光となって俺と被さる・・・。 すると、全身に黒色の筋骨隆々とした巨人を表すように、分厚く超重量級のアーマーが装着され、腕に大きな手甲が装着され、手に巨大な拳骨のように力強く握りしめた巨大ハンマー、トーライハンマーを両手でつかみ取る・・・・!! ヘブンTフォーム「グオオオオオオオ・・・オオオオオオオオ・・・ッ!!!!」 全身から黒き稲光を発し、地面を震わせるような唸り声を上げて、ゆっくりと動き出して構えるその姿は・・・・その名も「トーライフォーム」!! トーライハンマーを地面を引きずりながら火花を散らせて、悠然と敵の近くまで歩いていく、そして、ハンマーをブオンブオンと回転させて両手で構えなおすと、一気に振り上げて横なぎに相手の膝めがけて振り下ろす!! バキバキバキバキッ!!!!! 膝の頭をぶち割り、関節をへし折るとすかさずもう片方の足を同じようにハンマーでぶち壊すとその体重をささえる足がなくなったため、膝から前のめりに倒れ込み、両腕で自身を支える土下座のような体勢になる。そしてその両腕をも折れると、ぐらりと頭から地面に滑り込むように突っ伏す。 暁(今だ!!!!) トーライ(出力・・・最大・・・!!) トーライフォームがハンマーをクロキバにかませると、黒い霧が生み出され、みるみる周囲を取り囲むと、銀色の満月が浮かび上がり、その光を受けてハンマーを肩にかついで立つ。 ヘブンTフォーム「グオオオオオ・・・・・オオオオオオオオ・・・・ッ」 全身から銀色の稲光が発生し、それが巨大な球のようになると、それをハンマーで思い切りぶっ叩く!!すると、球がものすごい速さで飛び出し、審判に直撃すると審判の巨体が稲光で全身麻痺し動けなくなる!! ヘブンTフォーム「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 審判の巨体を飛び越すほどの大ジャンプで飛び上がり、胸のコアを見定めると、ハンマーを振り上げる!!すると、黒い霧の中で発生する稲光が集まり、巨大な拳の形になると、そのまま一気に振り下ろす!!!! ヘブンTフォーム「ギガンテック・・・・・インパクトォォオオオオオオオッ!!!」 一気にハンマーを振り下ろし肉を裂き、骨を砕き、飛び交う怨霊をも吹き飛ばし、コアを粉々に打ち砕いた!!! 審判「グギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」 絶叫を上げてデカゾンビが無数の紫色の火の玉のような形になって飛び散っていく・・・! そしてその無数の火の玉が飛び交い、嘆き、絶望、怒りのままにうめき声を上げる。 くそっ、こいつらの憎しみは底なしか・・・!! 「お前らどいてろ!!」 そういって、後ろから何かが飛んできた!? ヴォルファス「いてぇっ!!(頭を踏みつけられた)」 チューン「あいたっ!!(頭を蹴られた)」 そして飛んできたのは・・・あれは・・・ファルコンプレデター(フレア)!? 無数の怨霊を前にしても不敵な笑みを浮かべてるし、どうするつもりなの!? ファルコンプレデター「皆まとめてぶっ飛ばすぜ!!」 そういって、両手には・・・無数の赤く光り輝く筒のようなものがあり、それを一気に投げ放った!!!すると・・・・真っ白に光り輝いた瞬間・・・・!! ドドドドドドドドドドドドオオオオンッ!!!!!!! 派手な大爆発を引き起こし、紅蓮の巨大な炎が吹き上がり、その炎に飲まれて怨霊たちが苦しそうに、激しい絶叫を上げて飲み込まれ、やがて姿が消えていった・・・!! ヴォルファス「バカな!?あれは・・・・アンデッドを焼き払い、不死の定理さえも覆す・・・破邪の炎・・・・聖なる力の象徴だぞっ!?何であいつが使えるんだよ!?」 チューン「普通、聖職者が使うならわかるけど・・・なんでダイナマイトなのさ」 チューン「俺たちじゃ・・・・不利すぎる・・・・!!あれ・・・・俺たち苦手・・・!」 ファルコンプレデター「狼男に半魚人、フランケン、おいおいハロウィンじゃねえんだよ。まとめて・・・ぶっとんでみっかぁ!?」 シャークプレデター「フレア、いったん引きますよ!!」 そういって、後ろにはシャークプレデターまでもいやがる!!どうやらこっちが不利と思ったらしいな。撤退命令を聞くと、ファルコンプレデターが「ヘイヘイ」といって、引き下がる。 そして二人とも闇の中へと消えていった・・・。 流水「破邪の炎を操るプレデターなんて・・・ちょっとヤバいかもね」 暁「頭はバカだけどな」 冷牙「バカゆえに、何をするか分からないだろうが」 流水「だよねぇ、バカだからって甘く見ているわけにはいかないね」 暁「そうだな、いくらバカでも・・・」 バカバカ言い過ぎだ。バカだけどさ。 そうだ、アリス・・・・!! 避難させたアリスの近くに来ると、アリスがようやく起き上がったようで、駆けてくる俺たちを見て驚いたように目を見開く。 アリス「・・・お前・・・・・あいつを・・・・倒したのか・・・・・?」 暁「お前に借り作りっぱなしなんて、冗談じゃねえからな」 アリス「・・・ははは・・・・その様子だと・・・・取り戻したか・・・・自分を」 暁「・・・・うん・・・・・・あのよ・・・・その・・・・・」 自分でも分かる。 顔が真っ赤になっているし、恥ずかしくて照れくさくて、アリスの顔をまともに見れない。 でも・・・これだけはいわなくてはな。 暁「・・・・・アリス・・・・・・・・・あり・・・がとう・・・・」 アリス「・・・・・・・・・・・・・・・・お前が・・・・・私に・・・?」 暁「・・・・あー、そんだけっ!!」 そのままそっぽを向いて、もうすぐ帰るとするかっ!!もうこの場にいられる自信がねぇわ!! その時だった。 アリス「・・・・そうか・・・・・お前・・・・さらに強くなったんだ・・・・」 暁「・・・・・・え?」 アリス「・・・・・なのに・・・・・私は・・・・無様だな・・・・・」 その時だ。 アリスの頬に涙が一筋伝って・・・落ちた。 え・・・・泣いている!? あいつが・・・・!? 暁「お前・・・・・!?」 アリス「・・・・・・お前の前では・・・・・こんな無様な姿・・・・見せたくなかった!!」 そして、はじかれた様にその場を飛び出していった! そのとき、あいつは・・・泣いていた。 涙を流し、悔しくて悔しくて仕方ないといわんばかりに飛び出していった。 俺たちは言葉が出なかった。でも、俺は・・・。 暁「アリス!!」 俺はその場を走り出していた。しかし、公園を出た後、あいつは・・・どこにもいなかった。 冷牙「・・・・しかし・・・・どうなるんだか」 流水「・・・・分かりませーん」 雷斗「・・・・・だとしても・・・・俺・・・・・あいつに・・・・ついていくだけ」 冷牙「・・・・・・はあ、しっかし面倒くさいことになったな」 流水「まあ、しゃあないでしょう!こうなったらとことん付き合うよってね」 今回の事件、ナイアルラトホテップという禁忌の呪術をも使いこなせる相手が敵にいる、それは3人にとっても、脅威の事態でしかなかった。 一方。 畜生・・・ちくしょうちくしょうちくしょう!!! 悔しい、悔しい、悔しい・・・!!あいつの前で・・・・あいつの前だけでは・・・・弱いところなんて見せたくなかったのに・・・・・!! あいつの前では・・・・!! 涙が止まらない。 どこまでも走り、走り、走る。 止まりたくない。 あいつの前から・・・いなくなってしまいたい・・・! 悔しくて・・・情けなくて・・・・!! また再び立ち直る。そのつもりだ。でも、今は、あいつの前にいたくない。 こんな弱い自分、見られたくない・・・!! 私は膝を抱えて、自分への怒りと、悔しさで、言葉が出ないほど深い怒りに襲われてうずくまっていた・・・。 一方・・・・。 遺跡の広間、突然呼び出されたエリザベートと四天王を前に、聖がやってきた。 そして告げた命令、エリザベートは苦々しげに歯を食いしばり、3人は言葉が出ないほど驚きで目を見開いていた。今回、アリスがヘブンを助けたこと、そして、石板を手に入れるために差し向けた審判の妨害を行ったこと・・・そう・・・・すべては聖が仕組んだことだったのだ。四天王たちの間でも混沌と混乱という騒ぎを引き起こすために・・自分の破壊の欲望を満たすために・・・・例え自分が身を寄せている組織であろうと彼女がおとなしく従うわけではない。新しい混乱と狂気を呼び寄せるのだ。このように自分が差し向けた手下を利用して・・・。 そして、イングリッドが告げた。 イングリッド「・・・今回の由々しき事態・・・・真に残念です。ですが、これ以上の目に余る行動ぶりは組織の規律を大きく乱します・・・・そうなると我らの野望も果たせなくなります。エリス、分かりますね?私が何を言いたいのか?」 エリザベート「・・・・ははっ!!」 イングリッド「残りの四天王に命じます。この時をもってアリス・ビストレオから四天王の称号を剥奪、および、処刑を命じます」 アリス・ビストレオへの非情なる処刑命令。 その様子を聖が面白そうにほくそ笑んでいた。 続く Next Line「Power to starve」 |
鴎
2010年11月22日(月) 08時27分19秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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