仮面ライダーPIRATES epW 『幕間』 |
○【異国】 高天原の空は、それと同じ名前を持つあの町の空によく似ていた。 その夜、濠は白沢の城にある自分の部屋、その縁側から星を眺めていた。 この高天原の地は霊的な力が強く、精霊の活動も盛んだ。 今夜のように星や月が美しく輝いている時などは特にそう、月影が差し込む部屋には淡い光に満ち、空気が優しく暖かいように感じられる。 その感覚は懐かしさにも似ていて、濠にはそれがとても心地よかった。 ――――-コッ――――-コッ・・・・ 「む・・・」 廊下から響く微かなもの音に気付いて、濠は立ち上がった。 「っ・・・・!?」 「む?」 戸をあけると枕を抱えた少女が驚いた様子でそこに立っていた。 気を利かせて先に開けてあげたつもりだったが、それがかえって吃驚させてしまったようだ。 決していきなり出て来た濠の顔が怖かったとかそういうことではないと・・・そう思いたい。 「・・・・・?」つんつん 「っ、あぁ・・・すまん」 色々考え込んでいた濠は腕を突かれはっと我に返り、その様子をじっと待っていた少女、エレナ・クエーバーを部屋の中に入れてやった。 先日の一件からエレナは海賊『竜宮』、つまり濠の所で一緒に行動するようになっていた。 だが海へ出る前に片付けなければいけないことは幾つかあって、暫くは様子を見る必要があった。 「・・・・・・」 「部屋は落ち着かないか?」 「・・・・・」こく 「そうか・・・」 エレナが高天原に来て数日経ったが、日中の大半は濠にひっついて離れなかった。 普段の彼女は大人しくあまり世話が要らないのだが、知らない者が多い所や暗がりなどでは怯えてしまうことがあり、濠の背中に隠れたり袖を握って離さなかったりする。 そして昨晩など、いつの間にか寝ている布団に潜り込んでいたりもしていた。 湶にそのことを話した所「一緒に寝る!」と力強く申し出ていたのだが、夕方あたりに少し体調を崩し周りの者から止められてしまった。 それで結局、今夜もエレナは一人で寝ることになっていたのだが、やはり昨晩と同じようにやって来たのだった。 「・・・・・・・・・・」 「・・・・昼間の続きをするか?」 「・・・・・・」こくこく この数日一緒に居て、エレナについて分かったことがいくつかある。 やはり年相応の女の子といった所で、甘いものには目が無いということ。 そしてもう一つは本、特に物語が大好きであるということだった。 何日目かに濠が仕事で外さなければいけないことがあったが、まだエレナを連れて行く訳にもいかず、その時は湶が面倒を見ると買って出た。 湶自身もここの所体調が優れず、海にも出られずにずっと屋敷の中にいた。 それであまり動き回ることが出来なかった湶がエレナを退屈させないようにと考えたのが読み聞かせだった。 これが中々どうして気に入ったようで、語られる森の外の世界は少女にとっての大きな興味の対象となっていった。 どのくらいのものかと言えば自分でも読みたいと、湶や濠に習って高天原の字の勉強を始めるくらいである。 「・・・・・・・」 「・・・学校か・・・・・・」 あれから昼間の復習を終え、新しい文字をいくつか教えた頃にはもう夜もかなり更けていた。 濠はいつの間にかすぅすぅと寝息を立てていたエレナに毛布を掛けた。 「恭也達はもう卒業してるな・・・・」 こちらの世界に来てもうすぐ3年になる。 そのことを考えると少しだけ感傷的になるが・・・やはり己の選択に後悔などはなかった。 今頃皆それぞれ新しい生活を送っているのだろう。 そこにはいつもどおりの日常と少しの非日常、そしてきっと変わらない笑顔があるはずだ。 そして、それこそ濠が守り続けたかったものである。 その中に自分が居ないのは少しだけ寂しくもなるが・・・・己の現状を悲観するつもりもなかった。 この世界に来た時、濠には既に支えてくれる人達がいたのだ。 その想いは最初、自分に向けられたものではなかったのだろう・・・だがこの地はその不思議な繋がりを受け入れてくれた。 だから、向こうの世界の人々と同じようにこの世界の為、湶達の為に自分がやれることをしようと思った。 もちろん帰りを待ってくれている人達の為にも、何としても帰り道は探し出す。 しかし、もう少しくらい寄り道をしてもいいのかもしれない・・・そう思い始めた自分もいる。 少なくとも今この時はこの少女を見守っていたいと思った。 ●【温泉】 「それは私の誕生日。本当に良く晴れていて、まるで空から王子様でも振って来そうな気持ちのいい天気だった。私は何か素敵な事が起こる事を確信していたわ」 白い花片がひらひらと湯気の中を泳ぎ、面に波紋を立てている。 その大きめの露天風呂には女性陣三人、サラに、アリア、エレナが居た。 「医者の仕事で忙しい父もその日は休みをとってくれて、一緒にある港町に出かけたわ。そこは古い人魚姫の伝説なんかがあったりしてずっと前から行ってみたかったの」 「そんな所があるんですね、私も行ってみたいです!」 「・・・・・・・」こくこく 温泉の暖かさと頬を染め、いつものようにトリップ中のサラ。 まるで詩でも歌っているかのように流暢に紡がれるサラの言葉を、長い髪をタオルでまとめた二人の少女達が熱心に聞いている。 「箱入りだった私は内陸寄りの自分の町から出たことがなくて、当然海も本やテレビや夢でしか見たことがなかった。でも初めて見た本物の海はそのどれよりも、本当にびっくりするくらいに綺麗だった。それが凄く素敵で、父が宿を取っている間に暫く一人で散歩をすることにしたの」 「私も初めて海を見た時はすっごく感動しました!」 「・・・・・・・」こくこく 「貝を拾ったりヒトデをつついたりしながら暫く歩いていると、海沿いに小高い丘を見つけたの。高い所から見ると遠くの方も景色もよく見えると思ってそこに向かおうとしたんだけど・・・・突然何かに足を引っ張られたの・・・!」 「っ・・・!?」そわっ 「何が起きたか考える暇もなかったわ、次の瞬間にはもう海の中に引き摺り込まれていたの。でも、なんとなくわかった気がした」 「な、何だったんですか・・・?」 「その海には住んでいたのよ・・・若くて可愛い女の子を捕まえてはここではとても描写出来ないような、それはそれは恐ろしい目に合わせてしまう凶悪なソレが!!そう、私は攫われてしまったのよ!!海の魔『ただお前がカナヅチだっただけだろうがっ!!』」 メルヘンな話からいきなり怪談に変わっても相変わらず二人ともいい食い付きのまま。 誰もツッコまないとこのままオチもなくノンストップで行きそうだったので(←怖すぎる) ここらが限界とフレッドが高い竹垣の向こうから声を張り上げた・・・のだが 『波に足を取られたドジをそんなに仰々しく言うじゃ「逃げなきゃっ!!あぁ、でも足が動かない!!私はいったいどうすればいいの!?」おい聞けよ!?』 「ずるずると底へと引き込まれていく身体・・・!か弱い少女の私にはもうどうすることも出来ない・・・!」 当の本人、完璧に自分の世界に入り混んでしまっている為あまり効果はない、というかどんどんヒートアップしてきた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ここで少し状況を整理、ここは高天原の白沢の城、その入浴場である。 女湯にはサラ、アリア、エレナの姿があった。 温泉に浸かっていい気分のサラがアリアに話すと約束していた嬉し恥ずかし(←後半フレッドのみ)エピソードを語り、それを聞くアリアは高天原に入ってから白桜の咲き乱れる美しい風景や温泉に感動しっ放しでナチュラルにテンションが高めだ。 人見知りの強いエレナも最初は少し警戒していたが、ほんわか天然で恐ろしさとは無縁のアリアや、色んな意味で未知の世界の人(サラ)にも興味を持てたようだった。 そんな感じでこっちは和気あいあいとしている。 対する男湯、げんなりしているフレッドの隣でニヤニヤしているのがキッド、なんとも言えない顔になっているのが濠、腹を抱えてけらけら笑っているのが白沢家お抱えの鎧鍛冶屋『雷鳴堂』の大峰恭護だ。 キッド達シーサーペントや、情報屋のサラがここで温泉に浸かっているのには訳がある。 先日の森の一件で濠の所で行動を共にするようになったエレナ、彼女は生まれつき声を発することが出来ない他にそのライダーシステムにも問題を抱えていた。 一緒に世界を見て回るという依頼を果たす為にもどうにかしてやりたいと濠は湶お付きの医師に診察を頼んだり、システムを恭護に見てもらったりした。その甲斐もあり、声に関しては身体の問題というよりも精神的な枷が大きいということが分かったのだが、システムの方はまったくのお手上げに近かった。 元々、鍛冶屋の仕事は武器や鎧を鍛え強化するだけでシステムの内部までは扱ってはいないからだ。 それで手詰った濠が思い出したのが、幽霊船の一件で知り合った情報屋のサラだった。 パイレーツライダーでもあり様々な情報を扱う彼女なら何か知っているかもしれない。 そう判断し相談した所、提供されたのがメッシーナ・コーポレーションと言う企業にシステムの研究をしている機関があるという情報。そして、その仲介ならばキッドを挟むのがよいと言うので、シーサーペント一行も高天原へと招かれたのだった。 今はその出発前、そんなに急ぐこともないだろうと温泉に浸かってゆっくりしている所であった。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「ああ、もう駄目なのねっ!死ぬ時は七人の子供に囲まれて棺の中で毒りんごって決めてたのに・・・このまま泡となって夢と一緒に儚く消えて行く運命なの!?」 『ツッコミが・・・間に合わんっ・・・!!』 「その時!!」 『・・・・・・・』orz どうやら話はクライマックスに近付いて来たらしい。 フレッドの方を見るともう半ば諦めていた・・・・ 「薄れて行く意識の中で私は見たの・・・!!こっちに向かって泳いで来る誰かの姿を・・・!!そして次に気が付いた時にはもう砂浜・・・彼はどこからともなく颯爽と現れてはあの水の檻に囚われた私を見事に救い出してくれたの!彼こそ私の王子様だったのよ〜〜〜〜!!!」 「お〜〜〜〜!」ぱちぱちぱち 「〜〜〜〜〜!」ぱちぱちぱち 『『『・・・・・・・・』』』ぱちぱちぱちぱち 『ぐぬぁぁぁ・・・・!!』 きゃっきゃと大変いい雰囲気の女湯と生温かい眼差しと乾いた拍手に満ちた男湯。 おかしな空気、堪らない羞恥と居た堪れなさで悶え苦しむのは当然一人だけだ。 「私は気付いたの・・・嗚呼、これが恋っ!!」 『“変”の間違いだっ!!』 ■【合流】 大陸西方のある有名な海狭を見守るように巨大な建造物が聳え建っている、それがメッシーナ・コーポレーション、通称メシコンの本社ビルだ。 設立当時から造船業界のトップを走り続け、更にここ十数年は『一本の釣り針からタンカーまで』と海に関連する幅広い事業で活躍している。 よほど内陸部、離島在住でなければ知らない者などいないほどの大企業である。 そのメシコンビルに今日もまた様々な来客が訪れていた。 多くの人々が行き交うフロアを掻き分け、受付までやって来たのはロングコートの男。 カウンターには二人の受付嬢、ソバージュかかった長い栗色の髪の女性と黒髪のセミロングヘアの大人しそうな娘が居る。 「いらっしゃいませ、ご用・・げっ・・・・」 「オゥ、出会い頭に『げっ』ってのは流石に傷付くな」 男の顔を見た瞬間、栗色の髪の受付嬢の笑顔が引き攣ったものに変わり、そんな様子に男は肩を竦める。 「い、いらっしゃいませ!ご用件をお伺いします!」 「ん、ランディに会いたいんだが、繋いで貰えるか?」 「ラン・・・?ぁ、ぁぁ・・・・少々お待ち下さい・・・」 様子のおかしい先輩に代わってフォローに入ろうとするもう一人の受付嬢。 だが、生憎とまだ研修期間中の新人の為、何か表情や言葉がぎこちない感じだった。 「も、申し訳ございません。ダイタロスは本日休みとなっております」 「そりゃマズったな。それじゃグレイスは?」 「グ・っ・・・・・あの」 「ん、そっちも居ないのか?」 「い、いえ!・・その、失礼ですが・・・アポは・・・?」 「アポねぇ・・・・それは君に取れるかい?」 「へ?」 ギュッと、受付嬢の手を握り、息の掛かるくらいに男は顔を寄せる。 「・・・どうだい?」 「や、ちょっ!?」//// 「今夜一緒に食事でも、最近ここらにレストランがオープンしたらしいんだが」 「え、ぇぇぇ・・!!?!?・・あの私・・・・!」//// ドンッ!! 「入るのでしたらこちらに記名を」 「お、オーケィ・・・あぁそうだ、オレの連絡先も一緒に「結構です」」 「社長はオフィスでランチ中です。くれぐれもお邪魔にならないよう、お願います」 「相変わらず手厳しいな・・・それとも、ヤキモチを焼いてくれるのk「後ろが痞えますので、早く行って下さい」オゥ・・・そいつはソーリィ」 そう言って男は肩を落とすと、その場から残念そうに去って行った。 「あの、先輩・・今の人、お知り合いですか?」 「“アレ”、社長のお従兄さん。しょっちゅう来てたからもう覚えたわ。口説いて来るのは挨拶みたいなものだから・・・本気にしちゃ駄目よ」 「そ、そうなんですか・・・」 「・・・・・・はぁ・・・・」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「最近はてんで駄目だなぁ、自信無くすぜ」 「遅いぞキッド」 「ソーリィ、ちょいと混んでてな」 「まさかナンパなんかしてたんじゃないだろうな?」 「・・・いやいや、そんな訳ナッシングだ。それよりも」 「皆さん忙しそうですね・・・!な、何か目が回って来ましたぁ・・・」きょろきょろ 「あぁっ!助けてフレッド!ストレスの溜まった会社員達に囲まれていけない深夜残業に(ry」 「・・・・・・・!・・・・・・・!」きょろきょろ 「ここは・・・流石に人が多過ぎるな」 「ぉぉ、生足もいいけどやっぱぴっちりしたスカートにタイツってのも中々乙だぜぇ」 「さ、ガールズ&ミスター&ブラザーがお待ちかねだ。早いとこナビゲートしよう」 「二人ほど置いて行っていいぞ・・・」 メシコンまでやって来たシーサーペント一行と竜宮一行はキッドの先導で先へと進んだ。 直通のエレベーターに乗り込むと社長室まで一気に数十階を昇り上がっていく。 「そう言えばキッドさん、社長さんってどんな人なんですか?」 「そいつは着いてのお楽しみだな。口で言うより見た方が早いさ」 そのフロアに着くと一行はオフィスの扉の前で立ち止まる。 キッドがドアを叩きコンコン、といい音を響かせる。 やがて「はぁ〜い、どうぞですの〜♪」と大変ご機嫌な返事が返って来て、一同は扉を開き中へと入るのだが・・・ 「わぁ・・・・・」 目に飛び込んだのは大きな机に並べられた和洋折衷様々な料理・・・そして、食べ終わって綺麗に積み重ねられた皿の山々、山々、山々(略 「・・・なぁ、これ宴会の後だったりとか?」 「いや、いつもこんなもんさ。」 「あら、今日はずいぶん賑やかですのね」 山の間から垣間見えるのはピンクのくるくるカール。 更に覗いてみるとそのディスクに座っていたのは長いまつ毛に大きな目の整った顔立ち、淡い紅色を基調としたドレスを纏った、人形のような可愛いらしい印象の少女だった。 「よぅ、グレイス。旨そうだな」 「ん、食べますの?」 「いや、今日はノーサンキューだ。・・・とりあえず、食べ終わってくれ。話はそれからだ」 「了解ですの♪」 満面の笑みでぱくぱくモリモリ料理を食べる少女はあっと言う間にもなく残りすべてを平らげて行った。 その後、ナプキンで上品に口元を拭いてお茶を一口啜った後、ようやく話が再会した。 「グレイス・メッシーナですの。ようこそメッシーナ・コーポレーションへ」 「そういうことで、こいつがボスってわけだ」 「私、社長さんってみんなケーキ好きなおじさんなのかと思ってました」 「ケーキも大好きですのっ」フンス 仰け反り返るグレイスの後ろで皿の山を片付けているスタッフ達の顔が綻ぶ。 信頼が厚い言うのかどうかはさておき、可愛がられているんだなぁというのはその場に居る皆が感じ取れた。 「さ、次はオレのターンだな。キャプテン・キッドの愉快な仲間達だ」 キッドは身内のクルーと高天原の面々の紹介を済ませて行った。 女性陣の紹介は露骨に長かったりするが・・・まぁ、そのくらいならご愛嬌ということで。 「そちらの方々はまた随分遠くからですのね」 「あぁ、実はちょっと頼みがあってかくかくしかじか」 「まるまるうまうまですのね。ん、おっけーですの」 「あっさり過ぎるだろ!?」 実際はこれだけではなかったが、それでもほんのいくつか簡単な説明を受けただけでグレイスは驚くほどすんなり事情を把握したようだった。 1を聞いて10を知るという言葉があるが・・・・グレイスはいわゆるそういった天才型なのだ。 「ぴっぽっぱ、っと・・・」 机のパネルを操作し、内線に繋いで何処かに連絡を取っている。 数十回に及ぶコール音の後、ようやく相手が反応を見せたようだ。 ピコンッとディスクの近くにウィンドウが発生し向こうの様子が表示された。 『・・・・・ハぁイ・・』 「あ、もしもし私ですの。おそよう、ランディ」 『お・・は、よう・・、なに・・グレイス・・・今日はゆっくり寝たいって昨日・・』 「でもランディにお客さまですのよ?」 『んん、・・・またキッドぉ・・?もぉ・・来る時は先に連絡してっていつも・・・・・・・・ん?あ、あれ?』 「・・・・恭護の部屋より凄いな・・・・・」 「はぁぁ、宙に映像が出るのかぁ・・・!やっぱこういうとこはハイテクなんだなっ!」 「・・・・・・?」 『あの・・・グレイ、ス?』 「あ、こちら例のぶっ壊した人とその技師さんと『モニ、モニター!!これ映ってるの!!?』」 床に這うようにして電話に出ていた茶色の短い髪をしたランディと呼ばれる人物。 その後ろには機材や段ボールがすっちゃかめっちゃかに散乱した部屋の様子が割とはっきり見えていた。 「そりゃテレビ電話だから映るに決まって『うきゃぁああああああ!?!??』」 ようやく目が覚めたのか、青い顔をして飛び起きた・・・のだが、くるまっていた毛布に足を引っ掛け、そのまま転倒。囲まれた中型機器や重ねられた段ボールに突っ込み、どしゃーーん!!と大きな音を立て、ダンボールの中身、替えの服や下着類などが飛び散った所で画面がブラックアウトした。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「うーん・・・・・暴走か」 幸い生きていたようで、一時間ほどするとランディはちゃんと自力で社長室までやってきた。 半袖のYシャツにネクタイ、社内制服を着ているとさっきの部屋が想像出来ないくらい小奇麗な感じだ。 今はキッドや濠達から事情を聴き、説明を受けている所だった。 「システムスキャンはいつもやってるから、とりあえず調べるくらいならすぐにでも出来るよ。直せるかはまだ分からないけど、とにかくやってみよう」 「そうか・・・よろしく頼む」 「・・・・・」ペコリ 「うん。あ、でも、今からやると夜中になっちゃうし明日の朝からがいいかな」 そうランディが言うので、濠達はグレイスの勧めで来客用の宿泊施設を借りることになった。 「オーケィ、これでオレの仕事はコンプリートだな」 「あぁ、今回は本当に助かった」 「そんじゃ、オレ達はとっととゴー・ホーム、と思ったが・・・ついでにこっちの要件も済ませとこう」 キッドがチラッとグレイスに目配せをする。 「ん、私にもデートのお誘いですの?ちょうど最近オープンしたお店があるんでしたわね」 「おいおい・・・・どこから漏れたんだソレ」 「キッド、お前やっぱりさっき・・・!」 「まぁまぁ、って、違う違う。せっかく人数も居るんだ。ここらでちょっと大事な話をしとこうじゃないか」 「そうだね、丁度よかったかもしれない」 「?・・・・何のお話ですか?」 「“パチモン”の件ですの」 「あっ、私ピカ○ュウが好きですっ!可愛いですよね!」 「・・・・・・」こくこく 「オーケィ、ガールズ。そいつはポ○モンだ」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「これは・・・・・」 会議室に集められた一同は、スクリーンに映し出されたものを見て声を漏らす。 キッドの証言を元にランディが作成した黒と白のパイレーツライダーの映像だった。 「偽物か、確かに森で見た奴はキールの鎧とよく似ていたが・・・・」 「・・・・・・・・・」 「こっちの黒いの-ゴースト-はミスター、あんたのにソックリだろ?」 「ん〜、ニセモンが出るのは人気者の性って言うじゃねぇか。ほら、ネズミ王国のアレとか、青狸とか」 「まぁ、そんなカワイイものならよかったんだがな・・・」 二度の戦闘を経験したキッドだから分かることだが、その性能は実に本物を凌駕し兼ねないほどのものだった。 それこそパイレーツライダーの力は一騎当千、並みの兵器では手も足も出来ず、それが悪用されれば大変なことになる。 それにあれが量産され、あちらこちらのマフィアに出回りでもしたら本当に収拾がつかない。 最悪の事態に陥る前に、一刻も早く手を打っておく必要があった。 「ボク達で色々調べてはいたんだけど・・・・残念ながら出所はまだ特定出来てないんだ」 「でも手掛かりのありそうな場所くらいならチェックしてますの。例えばココとか」 グレイスが電子板を弄るとスクリーンの映像が切り替り、ある海洋エリアを映し出した。 それは以前、幽霊船が出没した例の海域だった。 「前行った時は特に何も無かったと思うけど。ね、アリアちゃん」 「え、ええ・・・」 「狙い目はもっと“下”ですの」 「下とは・・・海底か?」 あの辺りは元々霧が発生しやすい場所で見通しは悪く、加えてその海面下の流れは非常に速くしかも複雑に入り組んでいる為、海底調査が難航している。 予測では海面下一万メートル越えの超深海層であるとされているが・・・・実は詳しいデータがほとんどないのだ。 「確かに・・・俺達が船の中で最後に見た部屋、あそこには何か計測器のようなものが備え付けてあったな」 「やっぱり潜って見るしかないか。だけどそんだけディープとなると・・・ランディ、行けるのか?」 「大丈夫、パイレーツライダーの装甲なら。たぶんギリギリ」 「オゥ・・・最後のが何か引っかかるな・・・」 「じゃあワクワクですの」 「何かいきなり楽しそうになったな」 「未開拓の地、ならぬ海底ですの。宝ものの一つや二つ落ちてるかもしれませんの」 「なるほど・・・宝探しか、そいつは確かにワクワクだ」 ◆【侵食】 「ここに居たの。探したのよ?」 「・・・何よ・・」 ある屋敷の階段の踊り場、壁にもたれ掛かるようにして休んでいるキルシェに白衣の女、レティが歩み寄る。 ポケットから取り出したのは歪な暗い輝きを放つ、銀色のドクロ。 「データの吸い出し、終わったからドライバは返すわね。また少し弄っておいたから後で見て置いて」 「そう・・・・・」 「顔色悪いわよ?調子が悪いなら診てあげましょうか?」 「・・・・・・・・」 「あらあら・・・・ご機嫌斜めね」 キルシェは何も答えず、ただ睨むだけであったが・・・・その眼の鮮やかな金色の中に、微かな濁りが生まれているのを女は見逃さなかった。 「本当に辛かったらいつでも言いなさい。それじゃあ・・・・」 「・・・・・待ちなさいよ・・・っ!」 立ち去ろうとするレティの腕をキルシェが掴んだ。 「・・・・なぁに?」 「・・・余計なこと、してくれたじゃない・・・!」 「余計なことって?」 「惚けないでっ!!家の周りに監視を付けたことよ!!その所為で、・・ッ!!?ぅ、げほっ、っ・・・・!!」 口を押さえて咳込むキルシェの、その白い指の隙間から流れ落ちたのは暗赤色の液体だった。 「・・・・・・・・・・・・」 「・・ぅ・・・・・」 「・・・・・・・・・それは、悪い事をしたわね」 「今更・・・何を「お詫びに」・・・?」 「いい事を教えてあげる・・・・次が最後のお仕事よ」 「最後・・・・?」 「そう・・・・次で、最後」 |
青嵐昇華
2011年02月03日(木) 20時16分45秒 公開 ■この作品の著作権は青嵐昇華さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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ようやくファッキンテストハリケーンも終了の兆しを見せたというかもう春休みに突入しましたので出遅れながらもシュシュっと参上の次第であります、旦那。 というか大学生ってこんなに春休み長くていいのかよと不安になりますがこれ幸いにとガンガン感想入れていきませう。…まあ、出来れば自分の投稿の方も頑張りたいのですがそれはともかく。 >昼間の続き なんかえろい事なんじゃねーのと期待してしまった僕の頭をいい加減なんとかしてください。 それにしてもエレナちゃんは濠君サイドに所属する事になったのですな。今後キッドさん側に仲間が増える事はあるのだろうかー、と期待してみたり。 >学校か >恭也達はもう卒業してるな・・・・ >今頃皆それぞれ新しい生活を送っているのだろう。 切ねぇぇぇぇ! キッドさん達の明るいテンションと濠君の馴染みっぷりからついつい忘れがちですが、やっぱこういう所で前作にて自己犠牲的な幕引きをされた濠君の境遇を思い知らされます。でもまあ、絶対に二度と帰れないって事ではないらしいし、美人な義理の姉と同棲したり無口な小動物っ子に懐かれて勉強を教えたりと悪い事ばっかって訳でも……あれ。なんか無性に壁を殴りたくなってきたんすけど。 >温泉 初見、フィールドが温泉にも関わらずガールズトークに突っ込みを入れるフレッドさんはなんでナチュラルに女湯にいてはるんだろうと首を傾げたものですが、読み進めてみたら男湯から突っ込んでたんですね。というかサラさんが女湯にいる時点でそんな事したらフレッドさんの貞操が無事で済む筈が無いので大いに納得しました。 >一本の釣り針からタンカーまで キャッチフレーズが海賊っぽくて思わずニヤリ。 >いけない深夜残業 安定のサラさんw(変態的な意味で >私、社長さんってみんなケーキ好きなおじさんなのかと思ってました アリアちゃんの知識が偏ってるw あのね、社長っていうのはね、五星戦隊の元道士だったり薔薇の怪人に変身してパソコンぶっ壊したりする人の事をいうんです。多分。 >新キャラズ ピンクドリルさんは安心の可愛さなので今更ながらの言及は避ける事にしまして(ぇー、メッシーナ・コーポレーションがブラック企業でランディさんがもう駄目かもしれなくて映画化されないか心配ですw ランディさんの私服(制服?)からプロファイリングするに、彼女がモニタリングされていた時の服装は裸Yシャツだったのではなかろうか(真顔で とまあ今回の感想はこの辺りで。 スーパー戦隊でも海賊モノのゴーカイジャーが始まりましたし、同じく海賊モチーフのパイレーツライダーの方々には今後もゴーカイに大アバレして我々読者をワキワキさせて頂きたいなとシンケンに思いつつ今日の所はこれにてガオ・ラオ!(無理のある締め |
50点 | トレハ | ■2011-02-21 19:59:58 | p657f2c.mie-nt01.ap.so-net.ne.jp |
今回の話もいろいろと意味深だった気がします。冒頭における現在の濠の心情の様子や、今のところのエレナちゃんの様子などが随分と印象的でした。……それにしても、前回の話の際に濠に甘えまくっているようですね、エレナちゃんは。まあ、そういう風になってもおかしくない感じでしたけどね。 にしても、濠も3年も居れば、結構今居る《世界》に愛着がわいているのも無理はありませんね。とはいえ、本来の《世界》で帰りを待っている人達の元に帰れることを祈っています。 んでもって、何やら《高天原》の白沢の城での温泉での“海賊”『ライダー』の皆さんの会話ですけど、ここで見事なまでにサラさんの(妄想も含めた……;)思い出話を語っているところと、そこにツッコミを入れているフレッドさんの様子が、実に笑えるものがありました(笑)……それにしても、白沢家お抱えの鎧鍛冶屋《雷鳴堂》の『大峰 恭護』氏ですけど、彼って濠が本来居た《世界》での悪友であった『恭也』の同一存在なのですか? 《メッシーナ・コーポレーション》というところにおけるキッドさんのナンパ……ではなく訪問。そこでのことですけど、始めてくる場所に驚きと怯えを見せている女の子二人はともかく、妄想バカ姉ちゃんやある意味エロ鍛冶師は確かに置いて行っても良いでしょうね…; っていうか、大企業の社長さんと従兄弟だというのはすごいですね、キッドさんって。……それにしても、何で大喰らい可愛らしい女の子が社長さんをやっているんですか? それよりも何故食いしん坊なの? ……それと、多分言ったのはアリアさんなんでしょうけど、全ての企業の社長さんがケーキ好きなわけ無いでしょう。っていうか、それは【仮面ライダーOOO(オーズ)】に出て来る企業の社長さんの様子とかが印象になるからですか? ……それにしても、グレイス社長さんのところに居る技師のランディさんですけど、その人は女性なのですか? 口調的にそう見えて来ますけど、実際のところはどうなのですか? ……しっかし、いきなりのテレビ電話で散らかしっぱなしの作業室の様子が見られれば、誰だって驚きますよね……; …んでもってエレナちゃんの『ライダーシステム』の解析及び修理や、キッドさんと濠が見た“ラプター”側によって作られた偽『ライダーシステム』についての話となりましたけど…………いくらキッドさんが“パチモン”って言ったからって、そこで何故“ポ○モン”が浮かんでくるんですか、アリアさんにエレナちゃん……; キッドさんの証言から見た限りの偽『ライダー』二人を見て色々と考える皆さんですけど、まさか“ラプター”側によって作られたものだなんて夢にもしないでしょうね……。それを知った時、彼らはどう思うのでしょうか? ……そして、話は海底に沈んだ“幽霊船”の話へと変わり、新たな冒険が始まるって感じですね。 一方の“ラプター”側ですけど、こちらでも何やら怪しき陰謀が怒ろうとしているようですね……。そして、その犠牲者になりそうなキルシェさん……彼女は一体どうなってしまうのかが気になります……。 そんな感じで、今回の感想は以上です。今後も頑張って書いて行って下さい。次回の話も期待しています。それでは。 |
50点 | 烈 | ■2011-02-06 06:26:22 | i121-118-227-204.s10.a044.ap.plala.or.jp |
月影が差し込む部屋 「・・・・昼間の続きをするか?」 に、何故かどきっとした自分は末期かもしれません。 今回は主要ライダーの資格者達が揃ったわけですが、メシコンのお二人が初登場にして新鮮味が無い…だと…?(←失礼 いや、すでにぞくらじで活躍しているので、親しみというべきですね。さらっと出てましたがキッドとグレイスさんて従兄だったんですね、マメ。 次回から話が動くみたいなので、今日は短かめにこの辺で、それではAヨスケでした。 |
50点 | Aヨスケ | ■2011-02-06 01:57:56 | pv02proxy03.ezweb.ne.jp |
合計 | 1020点 |