仮面ライダーワルキューレ Mission16 |
Mission16「脱出と海の騎士と3人目の仲間」 (真墨視点) どうも皆さんこんにちは、百合川真墨(大友暁)です。突然ですが俺は「運命」というものをこの世で嫌いなものベスト3のうち、ぶっちぎりトップにランクインしています。運命だか何だか知らないけどそんなものに振り回されるなんて御免だと思っているから。自分自身でどんな窮地に追いやられても絶望が自分に課せられた運命ならとことん悪あがきして払いのけてやる。この17年間、平和や安穏といったものとは遠くかけ離れている人生を送り過ぎてきたせいで、半ば自暴自棄になりつつありますが、今日も俺は強くしぶとくたくましく生きております。何でそんなことを言っているかって?それはですね・・・・。 真墨「・・・・・休日くらいゆっくり休ませろってんだ、このバカ共がぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」 もう何十体くらい殴り、蹴り、ぶっ飛ばしたか数えるのもキリがないくらい、屑ヤミーが全員倒されるか、俺が力尽きて倒れるかというサバイバルゲームをせっかくの休日にやらなきゃならないのかという事態に陥っているからです。茉莉と一緒にアトラクションを回り、あの「超高速回転するコーヒーカップ」だの「水中に超急降下ダイブするウォーターライド」だの「絶景の風景を眺めながら地獄に急降下する体感を味わえるフリーフォール」だの破壊力ハンパねぇアトラクションの威力に精魂尽き果てそうになった俺と茉莉は休憩ということでショッピングモールが立ち並ぶメインアーケードにやってきたのだが、そこのカフェでお茶を楽しんでいた矢先に、突然大量の屑ヤミーが襲いかかってきたのでした。 パニックを起こして逃げまどう入場客、泣き叫び、我先にと逃げまどい、転んだ客を後ろから走ってきた客が踏みつけたり蹴り飛ばしたりと、騒然となる事態になっている。 真墨「・・・・ちっ、キリがねぇな!!」 茉莉「真墨ィ!!!この先に緊急避難用のシェルターがあるよ!そっちに避難しようよ!」 真墨「他の入場客もそっちに避難させた方がいいな!」 そう思っていると、アーケードの中にある建物の中から、3人ほどの遊園地のスタッフの服を着こんでいる人たちが血相を変えて飛び出してきた。そして入場客を押しのけてシェルターに向かって我先にと走っているではないか!そして、その施設を見て、俺は目を疑った。 茉莉「ゲッ!?あ、あいつら、ここのセキュリティシステムを管理しているスタッフじゃん!(茉莉はここのアトラクションやセキュリティシステムの開発に携わったことがあるからそのシステムを委託したスタッフのことを覚えていた)」 真墨「ま、マジかよっ!?」 何、あいつら、入場客に避難指示とかシェルターの操作とかそういったことを放り投げて我先に逃げ出したの!?入場客に指示出さないでどうするんだよ!! 茉莉「や、ヤバいよ!シェルターもセキュリティシステムもここで操作しないと起動しないのに!!・・・・・こうなったらアタシたちでやるしかない!!」 真墨「お前・・・そうか!!お前ここの施設のプログラムを開発したって言っていたよな!」 茉莉「セキュリティシステムや防犯対策用のプログラムをね!!」 真墨「OK!それなら、急ごうぜ!!」 コントロールルームに行くと、重苦しい扉が閉められて自動ロックがかけられていた。茉莉がバッグから遊園地スタッフ用のカードキーを入れて、指紋照合システムで指紋を照合し、網膜照合システムで網膜を照合してようやく扉が開いた。 茉莉「開発者やってる時のデータ残っててよかった〜」 真墨「・・・さすがは超高校級のプログラマー。伊達じゃねえな」 茉莉「それほどでもないけどね、それよりも、現在の遊園地の状況を確かめないと!」 コントロールルームに入ると、遊園地中につけられた監視カメラの映像が壁一面の大型モニターに映し出されている。無数の屑ヤミーに追われて逃げまどう入場客たちが映し出される。楽しい遊園地のはずが突然の異形の軍団が乱入したことにより混沌の状況に陥っている。 真墨「ひでぇことしやがる・・・」 茉莉「遊園地に残っている入場客にアナウンスで指示を出さないと!」 真墨「ああ、そうだな!」 真墨がアナウンス用のマイクを取り、スピーカーの装置を入れる。 真墨『遊園地の皆さん、各アトラクション近くの避難所に大至急移動をしてください!シェルターの中に避難してください!!シェルターは各施設、全員が入場できるようになっております!!慌てず押さず、女性や子供、お年寄りや身体が不自由な人を優先的に入れて下さい!!各施設のシェルターは全員収容確認後、シャッターを降ろして封鎖いたします!!』 そのアナウンスを聞き、瑛子と美子がこの異変の状況に気づいた。気がつくと自分たちがいるジェットコースターの近くにも何体か屑ヤミーが現れ出した。ジェットコースター乗り場にいた入場客たちが悲鳴をあげて我先にと出口から飛び出し散り散りに逃げだす!そんな逃げまどう客たちにヤミーが襲いかかっていく! 瑛子「ちっ・・・・この外道がぁっ!!!」 瑛子が刀を抜く!そして光がいくつも走り抜けたかと思うと、屑ヤミーが細切れに刻まれていく!!刀を次々と振り、遊園地の広場の中を駆ける姿は勇ましきサムライのごとく。広場にいたヤミーが次々と切り刻まれ、メダルへと戻っていく。 瑛子「・・・・・・また、つまらぬものを」 美子「瑛子ちゃん!!翠ちゃんと香澄様がいたよ!!いたけど・・・・」 瑛子「どうかしたのか!?二人に何かあったのか!?」 瑛子が駆け寄ると、そこには、ベンチの上で顔を真っ青にして、虚ろな瞳をして口から涎を垂らしながら息も絶え絶えになっている翠と香澄が寄り添って座り込んでいた。傍から見れば翠がボーイッシュな外見をしているから、美男美女のゾンビのカップルのようにも見える。 翠「・・・・・・うえ」 香澄「・・・・・おえ」 瑛子「・・・これはどういうことだ?」 美子「・・・・・二人とも、ただジェットコースターに乗るだけじゃ面白くないとか言って、乗る前にこれ飲んで乗ったんだって」 そういって、美子が呆れて取り出したのは・・・・何とウォッカのボトルであった。 どうやらこの二人はジェットコースターに乗る前にウォッカをコップで一気飲みしてから乗ったらしい。 瑛子「・・・そういえば前にもあったな。ドイツの遊園地に遠足に行ったとき、大友がその遊園地の目玉のジェットコースターを見て、怖そうだと言っていた時・・・」 美子「お嬢様が『この程度の子供だましでビビるなんてちゃんちゃらおかしいですわ』とか言って、『私なんかこのウォッカを飲んで乗ってもへっちゃらですわ、ワイルドでしょう?』とか言って、翠ちゃんを煽ったんだよね。で、それで二人とも喧嘩になって、ジェットコースターに乗る前にウォッカ一気飲みして乗ったら・・・・」 瑛子「二人ともグロッキーになって倒れて病院送りになったんだよな。確か救急車の中でも取っ組み合いになって、看護師数人が怪我したらしいからな」 二人揃って全然反省もしてなければ成長もしていなかったらしい。バカとしか言いようがない。 翠「・・・・・ど、どうだ、この野郎、ボ、ボクの、勝ちだからにゃ・・・」 香澄「・・・・バカ言わないで・・・下さいまし・・・・私は・・・まだ・・・負けてませんわ・・・・」 うめき声に近い低い声で尚も意地を張り合っているバカ二人。仲が悪いにもここまで来るとある意味天晴である。しかしもうこんな緊急事態でそんなことも言ってられない。瑛子が翠を、美子が香澄を担ぎあげると、避難所に向かって走り出した! 瑛子「事態は最悪だな・・・!」 美子「何とかして暁ちゃんたちと連絡を取らないと・・!」 二人がジェットコースターの近くにある避難所に入ると、中にはもうこのエリアにいた入場客であふれかえっていた。どうやらヤミーの襲撃から逃れてきたらしい。鍵をかけて分厚い扉を閉めるとドアを叩き割らんと屑ヤミーの大軍が押し寄せてくる!! その時、瑛子の通信機に連絡が入った。 瑛子「こちら瑛子!・・・暁か!?」 真墨『さっきジェットコースターの方のカメラを見たらお前たちが翠と宇津保を連れているのを見つけてな!俺は今コントロールルームにいる!今から各アトラクションの避難所をシャッターで封鎖する!そしたら、その施設にある地下へとつづく階段があるからそれを下りてプラットホームに向かってくれ!!』 瑛子「プラットホーム!?どういうことだ!!」 真墨『この遊園地は、災害や緊急事態に備えて、地下に地下鉄がある。地下鉄はこの先にある巨大避難シェルターに繋がっているんだ!そこまで入場客を全員避難させる!地下鉄の地下道は各施設の避難所につながっている。地下道を伝って移動して連絡を取り合うぞ!!出来るか!?』 瑛子「了解だ!!」 美子「了解です!!」 真墨『地下に避難させたら、瑛子は入場客に落ち着いて避難するように呼びかけてくれ!美子はそのエリアにある変電所に向かってくれ!』 美子「変電所!?」 真墨『その地下鉄、今日に限ってメンテナンス中だったんだよ!大型メインヒューズとエネルギーカートリッジ、この二つが変電所に新しいものが届いていることが分かった!!これを中央エリアの地下鉄がある操車場まで持ってきてくれ!!あとの取り付けは俺が出来る!!急いでくれ!!』 美子「分かった!!」 美子が地下に続く階段がある部屋のドアを開けると、瑛子の指示の下、入場客が次々と押し寄せて避難していく!! 瑛子「落ち着いて!!大丈夫、この先は安全です!!!落ち着いて避難してください!!」 美子「瑛子ちゃん!こっちは任せて!!」 翠「・・・・ヤバい、ボクもいかないと・・・!」 翠がふらつきながら立ちあがる。そしてリュックに入れていた水を飲み、顔に思い切りぶっかける!!そして髪をかきあげてオールバックにすると、頬を思い切り叩いて気を引き締める!! 翠「真墨!!こちら翠!!ボクは上杉さんのサポートとしてついていくよ!!」 真墨『お前、体調は大丈夫か!?』 翠「こんな緊急事態なのに乗り物酔いで動けなかったなんて護衛失格でしょうが!!何が何でも成功させてみせる!!」 真墨『いい心がけだ、無茶はするんじゃねえぞ!!』 翠「はい!!」 翠と美子が確認し合うと、地下道に出て中央に向かって走り出した!!地下道の壁にあるライトを頼りに、暗い地下道に向かって走り出す!! 真墨「変電所のロックはここで解除できるか!?」 茉莉「OK!」 コンピューターのキーボードやパネルの上を茉莉が忙しなく動き回り、パスワードを打ち込み、セキュリティロックを次々と起動させていく。シェルターのシャッターが次々と閉まっていき、屑ヤミーがシャッターに阻まれて中に入れずにいる! 茉莉(・・・何だか変だな。ここのセキュリティシステムは私が作ったから、別に操作くらいなんてことないのに、このプログラミングが、セキュリティシステムが、いつもより軽々とこなしている。まるで手のひらで転がすように簡単に出来ている。というより・・・プログラムが頭の中に流れ込んでくる。そしてどれをどのように操作すればいいのかすぐに引き出せる・・・!?) 茉莉は自分自身がここまで情報処理のスピードが速く感じたことがない。この時、彼女は気づいていなかった。彼女の手のひらに浮かび上がっている“紋章”に。プレシオサウルスの紋章が浮かび上がり、彼女の中の「能力」が目覚めていたのだ。 その時であった。 瑛子「うわあああああああああああ!」 通信機から瑛子の悲鳴が聞こえてきた!! 真墨「瑛子!?どうした!!」 監視カメラで瑛子がいる避難所の映像が映し出される。そこでは、サンヨウチュウヤミーに襲われている瑛子の姿があった! 瑛子「貴様ァ・・・・!!ぐっ!!」 香澄「え、瑛子!」 瑛子が刀を弾かれ、壁に思い切り叩きつけられ、瑛子が力なく倒れこむ。そして、香澄の腹に拳を打ち込むと、ぐったりして動かなくなった香澄を抱きかかえてシェルターから出て行った・・・・! 瑛子「ぐっ・・・・・!」 茉莉「何だよあれ・・・!?怪物!?」 その時だった。 「ブチッ」 何かが切れた音がしたような気がした。すると、ゾッとする寒気を感じ、全身に鳥肌が立つ。見ると、真墨が・・・見たことない険しい顔つきで、憎悪と憤怒に満ちた瞳でモニター画面を見つめていた。歯ぎしりをし、握りしめた拳には血管が浮かび上がっている。しかしその様子に真墨が何を考えているのか茉莉は理解できた。怒りと同時に焦りを感じていて、どうしたらいいのか混乱しているのだ。茉莉は真墨にまっすぐ向かって言った。 茉莉「・・・・真墨!!しっかりしなよっ!!」 真墨「!?ま、茉莉?」 茉莉「ここでブチキレてる場合でも迷っている時間もないよ!!アイツ、アンタの大事な友達なんでしょう!?助けないとダメじゃんか!!ここは大丈夫、アタシが作ったプログラムがあればここにあんな怪物くらいじゃ入ることも出来ないよ!!だから、ここは任せて!!」 真墨は面くらった。一瞬怒りで我を見失いそうになったが、茉莉に喝を入れられて呆気にとられ、そして少しずつ冷静さを取り戻していく。 茉莉「・・・・大丈夫、アンタがアイツを助けに行ったって、アタシはアンタがアタシを見捨てたなんて思わないよ。だって、困っている人がいたら、自分の犠牲も省みずに突っ込んでいくどうしようもない大バカ野郎だけど、そんな大バカなところ・・・・嫌いじゃないんだから。クラブでアタシを助けてくれた時みたいに、アンタならきっとアイツを助けだせる!!だから・・・早く行きなよ!!」 強がりだ、目には涙をいっぱい溜めて全身の震えを必死で抑えている。これから一人でコントロールルームで作業し、助けが来るまで残るということは彼女にとってはいつ敵が襲いかかってくるか分らない状況は恐怖を感じずにはいられないだろう。それでも、真墨が動かずにいられない状況をどうしても打破したかった。その為に、真墨に全力で強がって発破をかけている・・・!! 真墨「・・・・・翠、俺だ。お前は大至急中央コントロールルームに向かってくれ。茉莉がいる。茉莉の保護を頼む」 翠『い、いきなりどうしたのっ!?』 真墨「宇津保がヤミーに捕まった。ヤツは俺たちがいるメインアーケード近くに来ている。俺が人質を取り戻す。お前は万が一のために茉莉の護衛を続けてくれ。美子、お前はジェットコースター近くの避難所にいる瑛子をプラットホームに運んでシャッターを閉じろ!そして手当して、引き続き変電所に向かってくれ!」 美子『お嬢様が!?瑛子ちゃんは無事なの!?』 真墨「時間がない、大至急向かってくれ!!俺はルシファーズハンマーに応援を要請する!!もしあいつが宇津保を人質にして逃げるつもりなら阻止しないといけない!!」 翠『了解!!』 美子『はい!!』 真墨「・・・・茉莉、すまねぇ。行ってくる」 茉莉「絶対助けだせよ!!そして・・・助けに来てね」 真墨「・・・・・・・ああ!!」 真墨が流れる涙をぬぐい、部屋を出て行った。茉莉がふうっと一息ついて、再びセキュリティシステムの操作に取りかかる。 茉莉「いつもアタシの気持ちを受け止めてくれた。今度はアタシがアイツの力にならなきゃダメじゃん。それが、お互いを支えて思い合う気持ち、友情だって・・・」 茉莉は真墨と出会って変わった。真墨を信じ、繚乱会の仲間達を信じて交流を深めるとことで、自分の気持ちを押し付けるだけではなく、相手の気持ちを汲み取りお互いに支え合い、思いやることがどれほど大切なことか知ったのだ。 茉莉「・・・だから、頑張って、真墨・・・・・・ううん・・・・“暁”!」 茉莉は見抜いていた。真墨の正体・・・・大友暁に! その衝撃的な事実を知らず、真墨が遊園地の噴水広場に躍り出た。そこにはサンヨウチュウを模したヤミー・サンヨウチュウヤミーが香澄を抱えて立っていた。 サンヨウチュウヤミー「あらぁ、百合川さん?私に何か用?」 真墨「・・・・そいつを離せよ。俺の友達に手を出したらどうなるか分ってるんだろうな」 サンヨウチュウヤミー「それは出来ないわぁ。今から大友さんも捕まえて、二人で愛の脱出劇を演じてもらわないといけないんだから」 真墨「愛の脱出劇だと?」 サンヨウチュウヤミー「大友さんと宇津保さん、一見喧嘩ばかりで憎み合っているようだけど、本当はそれは熱い愛情の裏返し、このあたしが作り出したシナリオ通りに事を運ばせれば、二人は相思相愛、もう二度と離れられなくなることこの上なし!最高の百合カップルの完成なのよ!」 真墨「さっきから逆上せ上がったことばかり抜かしてんじゃねえぞ、このヤロウ!相手同士のお互いの気持ちも確かめあわずにテメェの勝手な理屈で無理矢理くっつけようなんてモテねぇヤツのやることだぜ、このボケが。そういう自分勝手な理由で宇津保を好き勝手にさせるかよ!!」 サンヨウチュウヤミー「・・・あたしの邪魔をするなら、容赦はしないわ!!」 真墨「・・・・宇津保を返してもらうぜ!!」 真墨が小石を素早く拾って投げつける。それをサンヨウチュウヤミーの顔面近くに飛んでくるのを思わず手ではじく。すると、もう目の前に真墨が飛び出していた!!サンヨウチュウヤミーの顔面に射程距離をとらえて、渾身の右パンチがめり込み、炸裂する!!甲殻類系のヤミーの超硬質の甲冑ですらもめり込むほどの重量級のパンチを受けてサンヨウチュウヤミーが吹き飛ぶ!! サンヨウチュウヤミー「ぐはっ・・・・!!!!」 そして香澄が放り出される、それを真墨が抱きとめる。そして、香澄がうっすらと目を覚ました。 香澄「う・・・ううん・・・・」 真墨「宇津保!!大丈夫か!?」 香澄「・・・・ま・・・すみ?」 真墨「・・・よかった・・・・無事だったんだな・・・よかった・・・・」 真墨が香澄の顔を見て、涙を流した。熱い涙がぽたりぽたりと、香澄の頬に落ちる。 香澄「・・・・真墨・・・・どうして・・・・泣いてるの・・・・」 真墨「・・・う、うるせぇよ、あんたが無事だったからに、決まってるだろうがよ。あんたにもし何かあったら・・・・何かあったらと思ったらよ・・・・・」 香澄「・・・・・え?」 真墨が静かに、そして強く香澄を抱きしめた。服に真墨の涙がしみこむ。抱きしめられた腕の感触がとても熱く、強く締め付けられる感じがした。そして手を見ると、皮膚が裂け、赤くにじんでいる。痛々しいまでに腫れあがっていた。 香澄(・・・私が無事だったから泣いてくれる?私のために怪我までして?どうして?どうしてそんなことしてくれるの!?瑛子や美子みたいに私について来てくれる従者でもないのに・・・・!?) 香澄「・・・どうしてよ、どうして、私なんかを助けにきたのよ。どうして、私のために怪我までして・・・・」 真墨「・・・・・・・お前が誰かに傷つけられるなんて嫌なんだよ。どうしようもなくワガママだし、高飛車だし、口うるせぇし、人平気で振り回すし、人使い荒いし、しょっちゅう翠と喧嘩ばかりしてるどうしようもないバカだけどよ・・・・そんなバカなお前だけど、一度決めたら最後まで諦めないところとか、友達を大切に思うところとか、意外と優しくて思いやりがあるところが、たまらなく好きなんだよっ!!そんなお前が危ない目に遭っているのに、放っておけるかよっ!!!何があっても、絶対に助けてやる!!」 自分のことを褒めたたえるだけではない、むしろ自分の欠点をここまで言い当ててもそれでもいい所があって好きだから守りたいという気持ち、それはただ媚び諂いついてくるだけではない、相手の欠点もしっかりと見て、正面から真っすぐぶつかってくれる。そんな人間に・・・今まで香澄は見たことがなかった。ずっと蔑まれ疎んじまれてきた、瑛子と美子という自分について来てくれる護衛であり仲間はいるが、自分の欠点とか間違っているところとかあまり遠慮してなかなか面と向かって言ってくれないところを、少し不満を持っていた香澄にとって、真墨という人間の存在が大きく変わった。 香澄「・・・真墨・・・・・・(きゅん)」 すると、後ろでサンヨウチュウヤミーがゆっくりと起き上がってきた。 香澄「真墨!!後ろ!!」 真墨「ああ、こいつをどうにかせにゃならんな。お前は急いでこの近くの避難所に逃げ込め!!俺はこいつをブチ倒す!!」 香澄「真墨!!無茶よ、勝てるわけ・・・・!!」 真墨「勝てるさ」 そう言って、真墨が香澄に後ろ向きに強気な笑みを見せた。その笑みがとても力強く感じられた。 真墨「宇津保を守る。その為なら、誰が相手でも負ける気がしねぇよ!!」 決定的だった。香澄の心に稲妻が走ったような気がした。心臓の鼓動が速くなり、顔が熱くなり、全身が震える。真墨の瞳と瞳がだけでドキドキして息が苦しくなり、訳の分からない感情の高ぶりに戸惑いを感じつつも興奮が高まる。 香澄「・・・・・・・真墨ぃ・・・・・・(うっとり)」 真墨「早く逃げろ!!」 香澄「は、はい!!」 香澄が逃げだし、避難施設へと向かう。そして香澄が走って行った後の道をふさぐように真墨が構えてサンヨウチュウヤミーと向かい合う!! 真墨「おっと、お前の相手は俺だぜ?」 そうして、ファングドライバーを取り出そうとしたその時だった! ドゴッ!!!! 突然背中に強烈な重圧を感じ、吹き飛んで真墨が地面を転がる!!!激痛が背中から全身に走り、息も出来なくなる。 真墨「ぐはっ・・・・!!」 シエル「まさかここまでやるとはね。でもこれ以上ボクの邪魔はされたくないんだ」 真墨「・・・て・・・テメェ・・・・・・!!」 それはシエルが放った水圧弾だった。しかしそれは岩をも粉々にする破壊力を秘めている。それを直撃し、真墨はよろよろと激痛が全身に走る。それでもふらつきながら立ちあがる。 真墨「・・・宇津保に手出しはさせねぇぞ・・・・お前らの思い通りになんてさせるかよ」 シエル「・・・ああ、もう、これ以上手間取らせないでよ!!これ以上抵抗するなら、痛い目に遭っても知らないよ!?」 サンヨウチュウヤミー「・・・よくも私の邪魔を・・・!!許さない!!」 サンヨウチュウヤミーが怒りの咆哮を上げて真墨に長剣を振るって襲いかかる!!真墨がそれを避けるが、シエルが後ろから錫杖を振り上げて襲いかかってくる!! シエル「少し大人しくしてもらうよ」 真墨「ちっ・・・・・!!ここは踏ん張りどきかぁっ!?」 サンヨウチュウヤミー「うがあああああああああああああっ!!」 真墨「くそっ・・・!!!」 シエルの乱入で形勢は一転劣勢に追い込まれる真墨。さらにファングドライバーも弾かれて建物の隅に転がってしまう。サンヨウチュウヤミーの剣を交わし、拳を放つとシエルが錫杖を突き出して攻撃を繰り出してくる!!ファングになかなか変身出来ないまま、真墨は防戦に徹する!! 一方・・・! 美子「翠ちゃん!!大型ヒューズとエネルギーカートリッジ用意出来たよ!!」 翠『よっしゃ!!取りつけて動かそう!!』 翠がコントロールルームにやってくると、茉莉が画面を見て凍りついていた。見ると震えて涙をこぼしている。どうしたらいいのか分らず怯えている。 翠「茉莉ちゃん!!」 茉莉「す、翠―――――っ!!ま、真墨があっ!!」 茉莉が泣き叫んで翠に抱きつく。見るとそこではシエルとサンヨウチュウヤミーを相手に生身で必死で戦っている真墨の姿があった!翠も目を見開く! 翠「真墨!!」 茉莉「ど、どうしよう、このままじゃ、真墨が・・・・!!」 翠「茉莉ちゃん!」 その時だった。 真墨『がはっ・・・・!!す、翠・・・!お前、合流出来たのか・・・?』 翠「真墨ぃっ!!!」 見ると画面ではフェンスに叩きつけられ、殴られ、錫杖で突き上げられてボロボロになった真墨が通信機より会話していた。もう服もボロボロになり、頬も殴られ真っ赤に腫れあがり、口から血や胃液を吐き出す。 真墨『それなら・・・・お前地下鉄を起動させて・・・・・客を安全な場所に避難させろ』 翠「何言ってるんだよ!!あんたはどうするんだよっ!!!」 真墨『バカ野郎!!!お前、自分が今何をするべきか分ってねぇのかよっ!!!』 真墨が再び殴られ、地面を派手に転がる。額を打ち付け、血が滴り落ちる。額を押さえながら真墨がそれでも強い意志を失わない瞳を敵に向けて話を続ける。 真墨『俺たちはよ・・・誰かを守るために戦うことが仕事だろうが・・・・今も避難所でこれからどうなるか不安で震えている人たちもいる。助けが来るのを信じている人がいる。そういった人たちを・・・・守るのが俺たちの・・・・使命だぜ・・・・・・!俺達の仕事はいつ死ぬか分らない。だからこそ分かってなけりゃいけないんだ・・・命の重みを!俺たちは例え一つであろうと、一度零れ落としてしまったら・・・二度と取り戻せないんだ。だから、その命を一つでも多く守れるように戦うんだろうがよ・・・・!!それが・・・誰かを守るってことだ・・・・!!自分の命なんて・・・守りに入っちまったら・・・ただ腐っていくだけ・・・・!!譲れない信念があるなら・・・!!守りたい人がいるなら・・・!!未来を掴みたいなら・・・!!戦うんだ・・・・!!例えここで燃え尽きても・・・それでも最後まで・・・戦ってやろうじゃねぇか・・・・!!もう腹は括った・・・!!だからお前たちも・・・!!覚悟決めて救助に専念するんだ・・!!』 翠は言葉を失った。どんな危機的状況に陥っても、彼の心は決して折れない。一人でも多くの命を助ける。守るために戦う。それは自分が誓った「守る」という約束に命をかける覚悟を決めている。自分の命よりも誰かを守ることを優先し、戦っている。そして今、自分を置いて避難用の地下鉄に乗って入場客の安全の確保をしろと言っている。自分の任務に命を懸けて真剣に運命を乗り越えようとしている。 翠「・・・・分かった。ボク、行くよ!!」 真墨「それでこそ、俺の妹だ・・・・」 美子「・・・・暁ちゃん・・・!」 瑛子「・・・お前ってヤツは・・・!!」 瑛子が歯を食いしばって高ぶる感情を必死で抑え、美子が感極まって涙を流す。 そして茉莉は・・・・言葉を失い、涙を流してパネルの前で立ち尽くしていた。 翠「・・・行こう!!」 茉莉がコントロールパネルを操作し、地下鉄の起動スイッチを入れる!!地下鉄に電気が宿り、ライトがつくと、エンジンがかかり出す!!翠たちがプラットホームに下りて地下鉄に乗り込む!茉莉が運転席に乗り込み自動操縦機能に切り替えると、電車が動き出す!!各アトラクションの避難所を回って停車する。その都度、美子や翠が入場客に指示を出して電車に乗りこませていく。 瑛子「・・・黄司?」 運転席を見ると、茉莉が涙を流していた。その表情は悔しさで歪んでいた。 茉莉「・・・・アタシ、何も出来ないじゃんか!!今だって、真墨ずっと殴られてるのに・・・!!何も出来ない・・・!!どうして、何も出来ないんだよ!!!どうしてよっ!!!」 瑛子「黄司・・・!!」 美子「茉莉ちゃん・・・・」 茉莉「ここで避難してもアタシじゃ皆と一緒に避難してただ待つだけしか出来ない・・!!翠みたいに変身して戦うことも出来ないんだ・・・!!」 その言葉を聞いて、翠の目が驚きで見開かれる。瑛子や美子も驚きで言葉を失う。 翠「・・・・ま、茉莉ちゃん、どうして、それを・・・・!?」 瑛子「・・・・お前、まさか・・・・!?」 茉莉「・・・・・・知ってたよ。あんたと真墨・・・ううん、『大友暁』のことも、仮面ライダーのことも、そこまでは・・・・」 翠・美子・瑛子「「「ええええええええええええええええええええええっ!!?」」」 そしてイージス本部。 蒼真「何ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」 真夜「えぇええええええええええええええええええええっ!?」 蒼真と真夜が驚愕の表情で絶叫していた。 茉莉「・・・この学校、セキュリティシステムとか警備員とか全部イージスっていう警備会社に委託しているでしょう?最初はイージスの何か面白そうなデータはないかなって面白半分でハッキングしてみたんだ。そしたら、シークレットになっているデータを見つけてさ・・・プロテクト解除するのに時間かかったんだけど、ようやく解除して見つけたのが・・・・「マスクドライダーシステム」と、それを装着して要人警護の任務にあたる「シークレットサービス」があるって。そこで見つけたのが・・・「大友翠」と「大友暁」の二人・・・・するとその後すぐにうちの学校にアンタと「真墨」を名乗る「暁」が編入してきて・・・その後すぐに変な怪物と戦っているアンタたち(mission1、mission4参照)を見て、確信した。この二人が・・・仮面ライダーだったんだってことが。最初はお金もらって人のこと守る・・・偽善者だって思ったんだ。人の命さえもどうせ商売の道具としか思ってないって、だから、アンタたちのこと信用できなかった。・・・アタシ自身の命がお金よりも価値がないって散々思い知らされてきたから・・・どうにでもなれってヤケになってた・・・。でも、真墨は違ってた。クラブで怪物に襲われた時、命をかけて、身体を張ってボロボロになって助けてくれて・・・・それでも・・・・アタシのことを大切にしてくれて・・・・それからも色々と世話を焼いてくれたり・・・辛いときいつもそばにいてくれて・・・・・そんなことやっているうちに・・・・何だか・・・・意地張ってることが疲れてきちゃったというか・・・・・本当のアタシはどうしたいのか考えるようになっていた」 電車が避難用シェルターに到着し、乗客が次々と避難所に駆け込んでいく。そして全員の避難を無事確認した後、翠と茉莉は誰もいなくなった操車場を見回し、残っている人がいないことを確認しながら、翠は茉莉の話を聞いていた。 茉莉「・・・・アタシは寂しかったんだって。あの時家族にも使用人にも捨てられて、本当に一人になって・・・・そうなる前から誰からも相手にされなくて・・・心から信頼しあえる相手がいなくて・・・・・誰でもいいから・・・・・アタシを受け入れてくれる人が欲しかったんだ。そばにいてくれるだけでいい、それだけでもいいから・・・・真墨にそばにいてほしかった。たとえ、嘘でもいい、騙されてもいい、ずっと優しい嘘に騙されていたいってそう思っていた・・・・!!でも、今、真墨が苦しんでるのに、アタシは何も出来ないんだ・・・!!助けに行くことも出来ない・・・・!!どうして、アタシにはアンタたちのような力が・・・ないんだよ・・・・!!」 茉莉が吐き出した全ての心情を聴き、翠は言葉を失っていた。涙がこぼれおちていた。茉莉が今まで裏切られ続けて、誰も信じられなくなっていた中で、漸く信じることが出来るようになった存在が真墨こと暁だ。たくさん自分の心を救ってくれて、いつでも自分がワガママを言っても苦笑しながら付き合ってくれる、自分が間違っていたら厳しく叱って間違いを正してくれる、そしてそばにいてくれるのに・・・・それだけ世話になっているのに、自分は何も出来ない。無力さが涙となって、激しい感情に変わる。 その時だった。 茉莉の涙が右手に落ちる。すると、ぱあっと地下道を明るく照らすほどのまぶしい青色と黄色の光が輝き出す!!あまりの眩しさに目を開いていられない!!離れていた翠は目を凝らしながらその光を見る。そこには・・・「知識の紋章」と「友情の紋章」が二つ、重なり合って新しい一つの紋章が浮かび上がっていた・・・!! 翠「あれはっ!?昴さんの紋章とマリアさんの紋章!?」 そしてそれが組み合わさった「思慮の紋章」が輝き出す!! そしてその放たれた光が地下から空へと飛び出し、目にも止まらない速さで空を裂き、飛び込んだ先は、セント・ローゼリア学園であった!!そしてロボット研究会に保管されていたテティスドライバーに飛び込む!!すると、金色の「メルク」をイメージさせるメダル、藍色の「セドナ」をイメージさせるメダル、そして中央にプレシオサウルスを模した紋章に、二つ巴で藍色の装飾に金色のプレシオサウルスの紋章が施されているメダルが輝き出す!!そしてテティスドライバーが光となって空中に浮かび上がり、研究会部室から飛び出し上空へと飛び出していく!! アベル「な、何だよ、ありゃあ!?」 カブキ「キラキラピカピカ、飛んでった!!」 メイ「おい、あれは・・・!!」 ルッカ「説明は後であるっ!!今こそ好機である!!!」 メイ「そうだな!!」 一瞬アベルとカブキがテティスドライバーに目を奪われた隙をついて、メイとルッカが駆け出して、メイの腕に緑色の暴風が渦を巻きだし、ルッカがセルメダルを3枚投入してエネルギーを充電する!! メイ「行くぞ!!」 ルッカ「ああっ!!」 メイが右腕を振るい、ルッカがルッカスターターを装着した左腕を大きく振るうと、メイの放った竜巻にルッカが放ったマグマの超高熱エネルギーが混じり合い、巨大な炎の竜巻が発生する!!! 「「竜虎共宴(りゅうこきょうえん)!天地無双焔舞(てんちむそうえんぶ)!!」」 炎の竜巻に飲みこまれ、カブキとアベルが大爆発を何度も繰り返しながら吹き飛ぶ!! アベル「ち、チクショォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」 カブキ「きゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」 アベルとカブキからコアメダルが何枚かこぼれおち、それをメイとルッカがそれぞれ掴む。アベルのメダルが「オオカミ」「ハウンド」「シェパード」、そしてカブキが「バラ」「ホウセンカ」「キノコ」のそれぞれコンボが可能なメダルだ。 これで翠がシエルのメダル3枚を含めると、バーニングフォーム、ライトニングフォーム、そしてシエルの属性を引き出す新しいフォームに変身できる。 ルッカ「こ、この技を出すのも久しぶりであるな・・・」 メイ「よっぽど追い詰められた時くらいしか使わなかったからな・・・」 ルッカ「しかしあの光は・・・まさか!?」 メイ「一瞬見えたが、あれは・・・お前が作ったテティスドライバーだったな。どうやら、翠ちゃんたちに何かあったようだな!!」 ルッカ「行ってみよう!!」 ルッカとメイが満身創痍の身体を気合いで奮い立たせて走り出した。 その光が湊区に向かって目にも止まらない速さで飛んでいき、やがてそれが湊区巨大防災シェルターの上空につくと、矢のように一直線に飛びだし、地面をすり抜けて、地下の操車場に向かって降ってきた!!そしてそれは茉莉と翠の前に降って地面に勢いよく突き刺さった!!それは一本の槍。そしてそこに装着されていたメダルホルダーが飛び出し、茉莉の元に浮かび上がっている! 茉莉「・・・・これは!?」 翠「新しいライダーシステム!?まさかこれ、茉莉ちゃんの・・・!?」 茉莉「・・・・・アタシの・・・!?」 茉莉の前に、まるで彼女の前に現れるためにやってきたテティスドライバー。そのメダルホルダーからは藍色の光と金色の光がまぶしく光り輝いている。未知の力を前に、茉莉はそのメダルをつかむことはもう後戻りできないことを意味していることを察している。でも、もう、迷いはしない。 茉莉「・・・・真墨を助けるんだ。もう、誰も傷つけさせない!!アタシも・・・・戦うんだ!!」 メダルホルダーを掴んだ!!そしてその光がテティスドライバーに放たれて、テティスドライバーが地面から浮かび上がって茉莉の手の中に収まる!! 「トリニティ!メルク!セドナ!!テティス!!」 そしてそのメダルホルダーをテティスドライバーのスロットに差し込み、意を決したように装填する!すると、槍の穂先が飛び出し、穂先から放たれた金色の魔法陣と藍色の魔法陣が飛び出し、二つの魔法陣が茉莉を挟んで上下から重なり合う!! 茉莉の全身に藍色のボディスーツが装着され、その上からプレシオサウルスと三国志に出てくる中国の武将を組み合わせたようなデザインの白色に金色のラインが入っている甲冑テティスアーマーが装着されていく!!頭部にプレシオサウルスをモチーフとする兜を装着した仮面のテティスヘルムとテティスマスクが装着され、金色の金属製の辮髪が後頭部につく。ヒレをイメージした肩アーマーが装着され、アイライトの部分に金色の光が点る!! 海の戦士、仮面ライダーテティスとして茉莉が初めて変身を遂げた姿であった・・・! テティス「・・・・う、嘘・・・・・!?」 翠「茉莉ちゃんも・・・紋章に選ばれた仮面ライダー・・・なの!?」 驚きで言葉を失っている翠と、テティスに変身し、何が何だか分からずうろたえる茉莉。 そこへ、通信が入る。 蒼真「翠!!」 翠「蒼真さん!これは一体・・!?」 蒼真「話は後だ!!暁がかなりヤバい!!急いで援護に向かってくれ!!」 翠「了解!!」 翠がワルキューレドライバーを構える! 翠「変身!!」 翠の全身を緑色の竜巻が包みこみ、見る見るそれが仮面と甲冑を全身に装着させた緑色の騎士、仮面ライダーワルキューレ・ストームフォームに変身する!そして地下道からマシンストームスレイヤーが轟音を上げて無人で走ってくる。それがワルキューレの下で止まり、ワルキューレが座席にまたがる!するとテティスが近づいてきた!! テティス「・・・アタシも行く!!」 ワルキューレ「え・・・・でも・・・・」 テティス「お願い!!!連れてって!!」 テティスに懇願されて、ワルキューレは意を決したように頷いて後部座席に乗るように合図するとテティスが後ろにまたがり、ワルキューレにしがみつくと、エンジンを急速発進させて、凄まじい爆風と共に宙に舞い上がったストームスレイヤーが地上へ、上空へと飛び出し、アドベンチャーランドに向かって、全身が引きはがされそうな勢いで飛び出した!! そしてアドベンチャーランドでは、サンヨウチュウヤミーの怒涛の打撃のラッシュを受けて真墨が吹き飛び地面を転がる。服はもうボロボロに引きちぎれていて、全身を打撲と擦り傷で無残な姿をさらしている。肋骨にもヒビが入り息が苦しくなる。至る所が出血し、激痛が全身に走り、高熱を帯びてくる。シエルもサンヨウチュウヤミーも息切れを起こし、何度殴っても蹴っても投げても立ちあがり続ける真墨を前に焦り出す。 シエル「くっ、何でそんなに必死になるんだい。たかが他人だろうがよ!!」 真墨「・・・・お前には・・・・・・分からないだろうよ・・・・・他人の命を・・・・守るって決めた・・・・・決意も・・・・覚悟も・・・・・半端じゃ・・・・ねぇんだよ」 シエル「いくら強がってもね、劣勢には変わりはないんだよっ!!何で自分を囮にして自分以外の全員を逃がすなんてことやれるのか、理解できないね!!ありえないだろうが!!どうして!!自分の命よりも!!他人の命を!!優先させられるんだ!!!それで、君が死んだらどうするんだ!!自分の命よりも信念や覚悟を取るのか!?」 シエルの口調が荒くなる。信じられない、理解できない、そして目の前にいる真墨に強大な力を感じ思わず冷静さが完全になくなっていた。どんな大金がかかった勝負であっても、命がかかった一発本番のギャンブルでも、こんな風に自分を見失ったことはない。しかし、真墨は不敵に・・・笑ったのだ。こんないつ死ぬのか分らない状況でも、それでも彼は・・笑った・・・!!シエルはもう理解できなかった。そして感じる。全身に冷汗が流れ落ち、彼から放たれる得体のしれないオーラに圧倒される。 勝てない。勝てるわけない。絶望的な考えが頭をよぎる。 真墨「・・・・ああ。だから、勝ち続けられる」 そう言って・・・・不敵な笑みを浮かべた。死を前にしても彼は・・・誰かを守ることを止めない。誰かの笑顔を守るためなら最期まで戦うことを止めない。強い覚悟を秘めた瞳で睨まれて、シエルが絶句する。シエルの心が折れた瞬間だった。 真墨「・・・それに、ただ俺が、殴られているとでも?」 そう言った直後だった。後ろから、二人静かに歩いてくるのを感じ、真墨がにっと笑った。 真墨「・・・・いいところは譲ってやるよ。下ごしらえは済んだからな。あれだけ殴られてお返しも何もしないままというのは、俺の流儀に反してる。だけど、もう一発も殴る力はない。だから・・・だから・・・あそこまで甲冑にヒビ入れまくったんだ。特に一番ひどいヒビから、あのヤミーの宿主を引きずり出すんだ!!頼むぜ、翠・・・!!」 そう言って、真墨が後ろから来たワルキューレとハイタッチをすると、同時に、倒れこんだ・・・。サンヨウチュウヤミーが慌てて自分の身体を見回すと、真墨の放ったパンチやキックによって全身にヒビが入っているではないか!!冷静さを失い真墨を痛めつけることに集中していたことと装甲の頑丈さに過剰なまでに自信を持ち、わずかばかりのダメージに気を配らなかった慢心さがこのような状態になっていることに気が付かなかった。 ワルキューレ「・・・・兄さん、よくここまで頑張ったよ。あとはボクたちに任せて。さて・・・・散々うちの兄さん痛めつけてくれたね?覚悟・・・・・決めろよ!!」 テティス「・・・・暁・・・・!」 ワルキューレとテティスが同時に駆け出した!!ワルキューレのワルキューレランスが回転して一気にシエルの身体を打ち貫く!!!錫杖で対抗するが怒りでヒートアップしたワルキューレはまさに暴風の如く止まることを知らない暴れぶりだ!槍を次々と突き出し、大きく横に振るって薙ぎ払い、シエルの装甲を次々と攻撃して火花が破裂する!!爆発するたびに装甲が破壊されていく!! シエル「ぐあああああああああああああ!!」 テティスがテティスドライバーを武器にした「テティストライデント」を構える!!そして、テティストライデントをワルキューレの見よう見まねで振り回したり、突き出したりするが、サンヨウチュウヤミーが攻撃を避けてなかなか当たらない。 テティス「ああ、もう!!どうすりゃいいのさ!!」 サンヨウチュウヤミー「邪魔をするなぁ!!」 サンヨウチュウヤミーが剣を振りかざし襲いかかってくる!それをトライデントで防ぐが戦闘などやったことがないためどのようにすればいいのか分らないテティスが防戦に追い込まれる。そして渾身の一撃に吹き飛ばされ、地面に転がる!! テティス「・・どうすりゃいいのさ・・・!?」 その時だった。 転がってきたところにいた、真墨が話しかけた。 真墨「・・・その声、茉莉、茉莉・・・なのか!?」 テティス「・・・真墨!?」 真墨「・・・・どういうことか、よく分からないけど、お前もライダーになったのか?」 テティス「・・・そうなんだけど、アタシ、喧嘩すらロクにやったことなかった!!だから、どうやって戦えばいいのか分らなくてさ!!」 真墨「・・・で、出たとこ勝負かよ」 その時、真墨の中で何かがひらめいた。 真墨「ま、茉莉・・・!!“吸血姫ニュクテリス・ネフェルティアス・皇姫(こうき)”だ」 テティス「ええ!?」 真墨「あの吸血鬼、調べてみたら大人気のアニメのキャラなんだろ!?あれと同じように動けば何とかなるかもしれない!!」 テティス「・・・・・・・・やってみる!!」 自分のために命をかけ、ここまで傷だらけになって戦ってきた真墨の言葉を無駄には出来ない!(真墨も半ばヤケクソで言っていたのだが)自分が大好きなアニメのメインヒロインのイメージを頭の中に思い描き、それを全身をもって全力で再現させる!! テティス「・・・・・くくく、我の親愛なる友をよくもここまで傷つけてくれたものよ。この齢幾千年の時を生ける深き闇を支配し血族の長、新たなる力に覚醒めたり。この力を持って愚かなる罪人にふさわしき厳粛なる罰を与えてくれようぞ。我は偉大なる吸血姫、ニュクテリス・ネフェルティアス・皇姫なるぞっ!!!覚悟するがよいわっ!!」 そしてさっきとは打って変わってテティストライデントを構えて駆け出し、サンヨウチュウヤミーに切りかかっていく!!槍を素早く次々と突き出し、サンヨウチュウヤミーの甲冑を粉々に打ち砕いていく!!そしてテティスがセルメダルを取り出し、柄の部分にあるメダルホルダーに入れて、金色のボタンを押す!! 「メルクパワー!レベル1!!」 「鋼」の力を司る仮面ライダーメルクの力が宿り、槍の穂先が金色の光を放つ!!そして超硬度、鋭い切れ味が倍増された槍の穂先が甲冑を一気に打ち砕く!! すると甲冑の中から一人の少女が見えた。取り込まれているヤミーの宿主、絵門であった。テティスが絵門をつかんで引っ張りだす!! ワルキューレ「ナイス、茉莉ちゃん!!」 テティス「くくくくく・・・・これで人質は解放した。さて、それでは愚か者どもにそろそろ引導を渡してくれようかのぅ。行くぞ、ワルキューレ!!我と共にその力大いに振るおうぞ!!」 ワルキューレ「・・・え?ま、まつ、茉莉・・・さん・・・ですか?」 テティス「・・・・ああ、もう!!キャラ作りしてんだよっ!!そうじゃなきゃノリに任せて戦えないでしょうがっ!!じゃあ、もう、さっさととどめ行くよ!!」 ワルキューレ「あ、はい!!」 ワルキューレがワルキューレドライバーをランスに装着し、テティスがセルメダルを3枚装填する!! 「エレメンタルドライブ!!」 「テティスパワー!セルバースト!!ファイナルアタック!!」 ワルキューレ「・・・ライダー・キック!!」 テティス「餓え渇く鮮血の粛槍(しゅくそう)を受けるが良いわ!!」 テティスがテティストライデントに水のエネルギーが集まり、渦を巻いて巨大な渦潮を作り出しサンヨウチュウヤミーを飲みこんだ!!その中にテティスが飛び込み、渦潮の流れに乗りながら舞い上がり、渦潮の中で溺れながら身動きが取れないまま押流されるサンヨウチュウヤミーを次々と槍で切り裂く!!そして上空高くまで舞い上がると渦潮が爆ぜてサンヨウチュウヤミーが宙に舞う。その上空にテティスが槍をサンヨウチュウヤミーに向けて上空に舞っている!!そして渦潮のエネルギーが槍に集まり巨大なドリルと化す!! テティス「テティス・ガルフストリーム!!!」 鋼の力を受けて超硬度と鋭い切れ味を誇る槍に、水の力を発動させて召喚させた渦潮を纏った強烈なドリルを腹部に突き刺し、そのまま鋼の力で全身の体重を1万キロまで倍増させて、超重量級の打撃を受けて、身動きの取れないままサンヨウチュウヤミーを地面に串刺しにする要領で一気に突き刺し、落下した!!地面に激突する直前に体重を元に戻し空中に舞い上がって着地すると、槍を突き刺したままサンヨウチュウヤミーが大爆発を起こした・・・!! そしてワルキューレも両足に暴風を纏い、それがシエルを縛り上げて物凄い勢いで引きずって引き寄せると、射程範囲に入ると同時に、強烈な回し蹴りを炸裂させる!! ワルキューレ「はぁあああああああああああああああっ!!!」 シエル「うわあああああああああああああああああああっ!!!」 シエルが大爆発を起こして吹き飛び、海の彼方へと飛んでいき落ちた・・・!!派手な水柱を上げて、シエルの姿が消えた・・・。 真墨「・・・・やったな。超・・・COOLだ!」 そういって、真墨が二人に称賛の声をかけると、そのまま意識を失った・・・・。 1週間後。 結局真墨はあの後病院送りになり、3日間の入院を余儀なくされ(骨折を2日で完治させるという驚異的な回復能力を見せた)、後遺症として全身の筋肉痛で苦しみながらもようやく学園生活に復帰できた。そして事の真相を全て茉莉に話し、翠と真墨はそれはもう土下座して謝りまくった。(茉莉曰く「ここまで綺麗な土下座が出来るまで、どんな人生送っていたの」と呆れていた)そして、蒼真と真夜に相談の結果、茉莉もイージスの隊員として入隊することになり、電脳犯罪対策・整備担当に任命された(ちなみに蒼真が長年かけて作ってきたセキュリティシステム、ホームページのプロテクトなどをわずか1時間足らずで全て解析し、新しいプログラムを組みこんでさらにバージョンアップさせたシステムを製作されたため、蒼真は少し落ち込んでしまった)。 そして、茉莉は・・・・。 茉莉「・・・・アタシ、今まで翠や真墨・・・・ううん『暁』にたくさん助けられてきたんだよね。だから、今度はアタシが翠たちの戦いで力になれるようにアタシも戦う!!戦いだけじゃなくて、色々なプログラムを作ってアンタたちの力になるんだ!!一生懸命やるよ!!」 そう言って、翠たちのことを許し、仮面ライダーとして戦うことを決めたのだった。そしてライダーとしての基礎体力および戦術を習うため、クロノポリスにあるタイムルーム(現実世界の1日で1カ月の時間が流れる特殊な部屋)に入り、土日祝日の3日間、つまり3カ月の新人研修を受けるため、クロノポリスに向かって行った・・・・。 休日、誰もいない学園内を真墨が全身の筋肉痛を必死で堪えながら見回りをしていた。 真墨「痛い・・・・マジ痛ェ・・・チクショウ・・・・あの貝殻野郎(シエルのこと)・・・・散々痛めつけてくれやがって・・・・今度会ったらパワーボムで沈めてやる・・・」 倍返しの復讐を誓い、何とか見回りを終える。そしてラウンジのソファに座り一息つく。すると、真墨の前に宇津保香澄がやってきた。 香澄「ここにいたのね、真墨・・・・」 真墨「おう、宇津保。今日学校休みだけど、何か忘れ物か?」 香澄「・・・・瑛子たちから、今日は生徒会の見回りでここにいるって聞いたから。貴方に・・・・・謝らないといけないことがあって」 いつになく神妙で、しおらしい様子の宇津保に真墨もついいつものように軽く返すことが出来なかった。宇津保が、もう泣きそうな顔をして頭を下げた。 香澄「・・・・本当にごめんなさい。貴方のその怪我、私のせいで・・・・本当に・・・・いつも・・・・貴方に迷惑ばかりかけて・・・・本当に・・・・ごめんなさい・・・!」 最後は涙交じりの声だった。真墨も面喰い、驚きで目をぱちくりさせる。しかし、バツが悪そうに頭をかく。 真墨「・・・・あー、その、お前のせいじゃねぇよ。これは、俺のいつもの暴走が招いたようなモンだからよぉ・・・。だから、その、あの、泣くなよ。その、俺も、お前にそんな風に思わせちまって悪かったよ」 真墨も泣く女の子をあやすことには慣れてない(女の子に泣かされたことは多々あるのだが)。つい気遣っているのだが、普段から口が悪いだけについ相手を突き放すような言葉になってしまう。 真墨「・・・その、お前、怪我とか大丈夫なのかよ?」 香澄「・・・・私は、怪我とかしてないけど、でも、それは貴方が助けてくれたから・・・」 真墨「・・・そうか、それならよかった。もしあの時お前が怪我して、傷ついたりしていたら大変だからな。本当に無事でよかった」 すると、香澄が顔を上げた。真墨はその顔を見て、驚いた。香澄の両目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちていたから。香澄がこんなに感情を露にして泣いている姿を真墨は初めて見た(翠も見たことがない)。 香澄「・・・・どうして?どうしてそういつも・・・優しいの?どうして私のせいでいつもひどい目に遭っているのに、そうやって優しくしてくれるの?どうして私なんかを、私なんかを、いつもそうして守ってくれるの?今まで私なんか、誰も相手にしてくれなかった。私なんか邪魔だって、いなくなればいいって、生まれてこなければよかったのにって実の親からまで言われてきた。こうして、私に言いたいことをはっきり言って、間違ったことをしたら叱ってくれたり、その後、フォロー入れてくれたり、優しく抱きしめてくれたり、命がけで守ってくれた人なんて・・・・・いなかったのに・・・・・」 真墨「・・・・そういうなよ、お前、結構愛されてると思うぜ?瑛子や美子だってお前のことを本当に大切に思っているよ。いつもあいつらからお前のことばかり話聞いてるもん」 香澄「・・・でも、私は友達なら遠慮なんてしないで言いたいこと思い切り言い合いたい、喧嘩しても、本当のことを何でも話し合える関係になりたいのに、瑛子も美子も自分たちは私に仕える身だからって遠慮してなかなか本当のこと話してくれない。それが寂しくて・・・私はそういった主従関係よりも・・・・同じ目線で対等に話してほしいよ。私はお嬢様なんかじゃない、どこにでもいる普通の高校生の女の子として向き合って欲しいのに・・・・!」 香澄が心の奥に秘めていた心情を吐き出す。それは、瑛子や美子に自分を「ご主人様」として接してくることに不満を抱いていたのだ。自分がワガママを言っても何でも聞いてくれて、自分の言う言葉に何でも忠実に従ってくれる、しかしそれだけでは不満だった。ワガママかもしれないけど、本当に香澄が欲しかったのは、間違ったことをしたら怒ってくれて、自分を「ご主人様」ではなく「対等な仲間」として時にぶつかり合い、お互いの気持ちを理解し合い、繋がりを確認し合えるそんな存在が欲しかったのだ。 真墨「・・・・宇津保・・・」 真墨が立ちあがって、泣きじゃくる香澄を優しく抱きしめた。そして頭を優しく撫でる。 香澄「・・・・ま・・・すみ?」 真墨「・・・俺も翠や生徒会の連中の前ではつい強がってカッコつけちまうからさ。まあ、そうでもしてないとあいつらすぐ暴走するし何やらかすか分ったもんじゃないし。でも、辛いとかやってられねぇとか思わないわけじゃないしな。そうして色々と言いたいことを言い合える仲間が欲しいって気持ち、俺も分かるよ。でもな、言いたいことがあれば言えばいいんだ。そこで喧嘩になっちまったりしても、あんな事言わなければよかったと後悔することがあっても、自分の気持ちをいつまでも言わずにいるとそのうち、パンクするぞ」 真墨は思った。自分もその気持ちが分かるから。自分もつい周りを不安にさせたくなくて強がったり虚勢を張って大丈夫だと言ってしまうことがあるけど、時に本当に不安な時や弱音を吐きたい時もあったりした。人知れず自分自身の弱さを嘆いたり、自分一人でどうすることも出来ず悩み苦しんだこともある。でも自分が弱いところ見せたら自分についてきてくれる仲間達が路頭に迷ってしまうかもしれない。だからこそ、自分が迷ったり悩んだりするところを仲間達に知られることがないように戦っている。でも本当の心を打ち明けられる存在を失った真墨には、今の香澄の気持ちが痛いほど分かるのだ。(真墨も4割がたトラブルの元凶であることがあったりするのだが) 真墨「・・・だからよ、まずはその気持ち、瑛子や美子にも話してみたらどうだ?それでもし何かあっても、俺がフォローしてやるからよ。それに、お前の本当の気持ちを打ち明けられたとして、あの二人がお前のことを嫌いになったりなんて絶対しない。そんなことで壊れちまうような脆い“絆”じゃねえだろ?」 香澄「・・・・・・絆!・・・そうだよね、うん、やってみる」 真墨「・・・・・・しっかしまあ、相当不器用だなお前」 香澄「・・・・貴方に言われたくないわよ」 二人がお互いを見て笑い合う。 香澄「・・・ねぇ、真墨。私・・・・もし何かあって・・・・一人で抱えきれないことがあったら・・・・愚痴りたい時や苦しくて仕方がなくなったら・・・そばにいてくれる?」 上目づかいに、真剣な表情で懇願する香澄。真墨は優しく微笑んだ。 真墨「・・・・いいぜ。俺でよければいつでも頼れ。俺ももし何かあったら、お前を頼っても・・・いいか?いつも偉そうで生意気だけど妙に愛嬌があるお前と一緒にいるだけで元気が出てくる。また頑張ろうって思える、勇気が湧いてくる。そんな気がするんだ」 香澄「・・・・・ふふっ、いいわよ。私も・・・・真墨とこうして話していると・・・・心がほわってなる・・・・・勇気が出てくる・・・・・また一から頑張れるって気持ちになれるの。というか、偉そうで生意気は余計ですわよ!」 真墨「あー、悪い。つい本当のことを」 香澄「んもう!!本当に・・・・おバカさんですわね♪」 真墨「アハハハハ!!お前には負けてねーよ!バーカ!!」 香澄「ぷっ・・・・アハハハハハハハハハ!!貴方こそ、“バーカ”♪」 そういって、二人が思い切り笑い合った。そして香澄はいつ、こんな風にお腹の底から思い切り笑ったのか思い出せないくらい大きく笑った。ひとしきり笑った後、ラウンジに一筋の光が差し込む。見るとそこには雨が上がり、一面の青空が広がっていた。空の色ってこんなに明るかったかな。香澄は久しぶりに心の底から晴れやかな気持ちになっていた。 その様子を真墨の眼鏡のレーダー越しに見ていた蒼真は驚いたように見ていた。 蒼真「こいつは驚いたな。暁が女の子のフラグをゲットするのは別に珍しくはないけど、まさかあの朴念仁のフラグを立てちまうとはな・・・この宇津保って子、もしかしたら、暁の何かを・・・・変えてくれるかもしれないな。ふふっ・・・楽しみじゃねえか」 どこか愉快そうに微笑みながら、香澄と一緒に嬉しそうに微笑んでいる真墨の笑顔を見て、蒼真は呟くのだった。 続く |
鴎
2013年09月18日(水) 17時15分20秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | ||||
---|---|---|---|---|
それでは改めて、新しい物語の感想です。 クリス(アスレイ) 「暁(F)こと真墨さんののモノローグから今回の話は始まったわけですけど、茉莉さんが既に真墨さんと翠(W)の正体や役職などことを知っていたとは……」 クロキバT世 「流石は超高校級プログラマー。《イージス》などのプログラムや情報なども既に調べているとはな」 とはいえ、最初の頃はお金の為に人助けをする偽善者と思っていたとは……。まあ、茉莉さんの場合、真墨達と会うまで疑心暗鬼になっていて、人をうまく信じられない感じが強かったようですからね。『仮面ライダー』として戦う真墨こと暁(F)と翠(W)のこともうまく信じられなくて当然ですわな……。 星(アスレイ) 「……だけど、そんな彼女も真墨との付き合いなどから、人を信じることと、誰かを好きになるって事の大切さを学んだってわけだ。そういった気持ちなどを理解したからこそ、彼女は“思慮の紋章”の持ち主として覚醒したと言えるな」 フェザー(アスレイ) 「結界内でのライダーとヤミーの戦いが見えた時点から、目覚めの予兆は第一話の頃から既にあったみたいですけどね」 話は変わりますけど……翠(W)さんと香澄さんは本当に何馬鹿なことをしているのやら……; 明久(電王) 「ウォッカを飲んだ状態でジェットコースターに乗って根比べって……; 乗り物酔い以前に、体に悪すぎるって!!?」 雪奈 「なんという馬鹿なやり取り!!?」 モモタロス(明) 「……なんつうか……俺でもしないぞ、そういったこと……;」 シャナツネ 「……ドイツに居た時もしたって……; いくらなんでもアホらしい……;」 カグヤ 「美子ちゃんと瑛子ちゃんも呆れていたわね……;」 礼(アスレイ) 「……つうか……お酒は二十になってからじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!! 高校生が飲酒をしてどうする!!!!!!!!?」 ……全くですな……(苦笑) 状況をよく見てから行動しなさいよ、行動を……。 イージス 「とはいえ、乗り物酔いをした状態であったにも関わらず、周囲の状況などを見て素早く自分のやるべき行動をした翠(W)の度胸などは凄いものだな」 全くもって同感です。……しっかし、シエルさん方もただでは避難させないと言わんばかりに、避難をしようとしていた香澄さんを人質に取るあたりなど、本当に抜け目のないもんですな。 冷牙(アスレイ) 「悪党らしいやり方だぜ……#」 流水(アスレイ) 「とはいえ、サンヨウチュウヤミーにされている人の“欲望”などもあっただろうね」 電 「……茉莉、ちゃん、の、後押し、も、あり、真墨、は、どう、にか、香澄、さんを、助け、出せ、た、のは、よか、ったが、ここ、で、シエル、自身、が出て、くる、とは……」 おかげで『仮面ライダーファング』に変身をする暇を与えられないという状況で、真墨さんはボロボロにされながらも、翠(W)達が来るまでの時間稼ぎをどうにかやっていったというのが凄いもんですわ。 美波 「ボロボロにされながらもどうにか攻撃して相手の硬い装甲に日々をいれておいたって……」 瑞希 「…ほ、本当に凄いです……!」 例え、相手が“グリード”だろうとビビってしまうほどの気迫と信念……! それこそが暁(F)こと真墨さんの“覚悟”と言えるでしょうな。 翠(W) 「とはいえ、護り屋としては最後まで護るべき相手を命をかけて護るのは当然の姿勢と言えるだろうけど……」 イージス 「自身のことを心配してくれる人の気持ちとかも、やっぱり考えないといけないよな。茉莉ちゃんが涙を流していたわけだし……」 暁(アスレイ) 「……そして、真墨を心配する茉莉嬢の思いが強くなった時、彼女の“思慮の紋章”が完全に覚醒し、それに呼応するように学園の方にある『テティスドライバー』が直接担い手となるべき人物の元に行くとはな……」 クリス(アスレイ) 「ある意味、当然といえば当然の流れではありますけどね」 クロキバT世 「まあ、茉莉嬢の元に向かう『テティスドライバー』の姿を見た結果、アベル達がそちらの方に気が向いてしまい、好機と言わんばかりに攻撃したメイ殿とシェオロ殿も流石というべきだろう…」 明久(電王) 「全くだね。それはそうと、『テティスドライバー』にセットされるメダルも、茉莉ちゃんの“紋章”が覚醒すると同時に出てきたのには驚きだね」 シャナツネ 「……この流れからだと、新たに生まれるだろう“空”と“大地”に司る『ライダー』なども同じ感じとなるのだろうな」 モモタロス(明) 「色々と、面白くなりそうだぜ♪」 海の戦士『仮面ライダーテティス』の覚醒! 大切な人を守りたいという思いが奇跡を生んだというわけですけど……戦いにおいて素人である茉莉さんが戦う為には、自身がよく演じることの多いアニメなどのキャラクターを演じてノリで戦わないといけないとは……; 星(アスレイ) 「それも致し方ないと言えるがな……」 フェザー(アスレイ) 「それで、どうにか勝つことができたんですから、結果往来ですね(苦笑)」 蒼真(アスレイ) 「……しっかし、あっちの俺は自身が作ったプログラムを茉莉ちゃんに破られちまったことが色々とショックみたいだったな。……まあ、無理もないけど……」 真夜(アスレイ) 「茉莉さんも茉莉さんで、真墨さん達と一緒に戦う道を選びましたね。彼女が選んだ道に良き光があらんことを……」 そして、香澄さんと真墨さんですけど……この二人がお互いの気持ちに本当に気づくことがあるんですかね? 蒼真(アスレイ) 「あっちの俺もメガネのレーダー越しで大体は察したみたいだけどな。真墨こと暁(F)の奴が香澄嬢と付き合っていくことでどう変わっていくのか、本当に楽しみだぜ♪」 真夜(アスレイ) 「……しかし、次の話ではそんな真墨さんにやばいことが起こるらしいですね……;」 前回の話で、『鴎』さんがあとがきで書いていたアイディアである《真田十勇士》の魂を宿した“ヤミー”10体の登場や、幻獣系グリード『ゼロ』が本格的に動き出すということを暗示させるようですけど……。 礼(アスレイ) 「一方の翠(W)達が通っている学園ではプール開きが行われるが……女装をして通っている暁(F)にとってはやばいことではあることは間違っていないわな……。シェオロ殿は一体、何をするつもりなんだ? ここはお約束で女体化薬とかが出てくるのか?」 暁(アスレイ) 「それはそれで嫌じゃああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!?」 それでは! 一同 『次の話なども楽しみにしています♪ 今後もどうか頑張って書いていってください!!』 〜……時と次元を越え……己の限界すらも超えて、推して参る!!〜 |
50点 | 烈 | ■2013-09-19 14:56:06 | i121-118-209-14.s10.a044.ap.plala.or.jp |
どうも、『烈』です♪ 新しい物語の感想の前に、感想返信の返信を投稿させてもらいます。 雪奈 「…歴代の生徒会長やOBからも学園創立始まって以来のクセの強い集団と呼ばれているって……;」 カグヤ 「……それほど人選が半端なく厄介ってことなのかしら?; ……まあ、生徒会長が生徒会長だもんね……(苦笑)」 明久(電王) 「……朱美さんって、本当に百合バカなんだね……; よくもまあ、こんな人が生徒会長をやっているもんだ……;」 暁(アスレイ) 「……本当に……どういう人選だったんだ?」 優子 「異次元空間だったからあまり問題はなかったらしいけど……それでも窓ガラスは数枚割れたって……;」 翠(アスレイ) 「……それだけ凄まじかったってことだろうね。シェオロことアスカさん、お疲れ様です(_ _)」 |
10点 | 烈 | ■2013-09-19 13:31:43 | i121-118-209-14.s10.a044.ap.plala.or.jp |
合計 | 60点 |