仮面ライダーD's【Diez】<3rd Folder> |
【Masked Rider D's】 Now Uploading―――――3rd Folder:『突入、電子の世界>>Dive into the Digital』 アイス:「なるほどね・・・・・・大体分かってきた」 透き通る青色のコンソール上のキーボードを打ちながら、青色ツインテールの少女・アイスはひとりごちた。 周りはクリーム色のシックな壁紙、アイスが背を向ける大きな出窓の外側は空色で所々電気が走る。 その部屋の中心に、青色のコンソールとウインドウに囲まれて、同じく青の透き通ったリクライニングチェアに座るアイスの姿があった。 目の前の画面には、ボロボロになったウルフウイルスが静止画で映っている。 ここは・・・ディーズアクセスの中、アイスのデジタルスペース。言い換えれば、アイスの根城。 ちなみにどうでもいい話だが、部屋の中の構造はアイスの一存で自由に変えられることを付け加えておく。 今はちょっとした探偵事務所風。 そこへ、作業中のウインドウに割り込んで別のウインドウが開いた。 明里:≪おはよう・・・お姉ちゃん・・・≫ しかし、ウインドウには鼻しか映っていなかった。 アイス:「うわぁああ!?ガキんちょ寝ぼけんな!?あと顔近い近い!!」 唐突にポップアップされたので、アイスも驚いて危うく椅子から転げ落ちかける。 なんとかズッコケを回避しつつ、鼻しか写ってないウィンドウに触れ、摘むように指を動かすと、 一瞬でカメラがズームアウトされ明里の寝ぼけ顔が表示された。 明里:≪ぇ・・・・・・あぁ・・・ごめんなさい≫ アイス:「えっと・・・そっちの時間だともう6時か。おはよっ」 体制を立て直しつつ、別のウインドウで明里側の時間を確認しながら、ズームアウトした明里にご挨拶。 当の明里は、とても眠たそうに目をこすりながら細長い目でアイスを見つめていた。 アイス:「どう?気分は?」 明里:≪うんまぁぼちぼち・・・ねぇ、ここリンゴさんの家だよね?≫ アイス:「そうよ?」 明里:≪でも、えっと・・・・・・私、変身して・・・・・・?≫ アイス:「倒れたのに?って言いたいんでしょ?あの後リンゴが起きてアンタを回収したのよ。 まぁその後の処理が大変で遅くまで起きてたから、今はぐっすり寝てる頃だと思うけど」 明里:≪う〜〜ん・・・・・・ねぇおね・・・アイス、さん?≫ アイス:「呼び捨てでいいわよ。気兼ねなくって言ったじゃない」 明里:≪あ、うん・・・・・・私、結局どうなったの?≫ アイス:「・・・・・・は?」 思わずアイスも目を点にして呆けていた。質問の趣旨がいまいち不鮮明。 明里:≪私・・・・・・戦ってた時の事、あんまり覚えてないんだよね・・・・・・≫ 画面の中で明里が苦笑いを浮かべる。そう言えば心なしか具合もあんまり良くないような気も。 すると、アイスはひとつ溜息をついて・・・ アイス:「やっぱりね」 明里:≪え?それって・・・・・・≫ アイス:「まぁ、説明はするけど、とりあえずこれ見て」 キーボードを軽やかに叩き、アイスは一つの動画ファイルを呼び出す。 そしてEnterキーを一呼吸置いて、 ―――――>Enter <少女閲覧中> 『おイタが過ぎたみたいね。悪い子には、お灸を据えなきゃ・・・ね?♪』 『舐めてもらっては困るわね!ちょっと痛いわよっ!』 『さ−て、お注射の時間よっ!』 <少女閲覧終了> アイス:「・・・今のが、リンゴのバイクに仕込んでもらったカメラから撮った戦闘映像よ」 明里:≪今のが・・・私!?/////////≫ 当の本人は画面の奥で耳まで赤く染めて今にも白目むいて倒れそうだ。 アイス:「今度はアンタ視点の動画もあるけど・・・・・・見る?」 明里:≪いや・・・心の準備が出来そうに無いよ・・・≫ 先程の映像が自分のことながらある意味過激すぎて、明里はついに目を回してしまった。 アイス:「ふぅ・・・まぁいわゆる・・・ 明里:≪データ酔い?≫ アイス:「そ。データ酔い!」 データ酔い。 それは、DFSが開発・実用化されてから問題視され始めたものの一つで、 要は車酔いなどの乗り物酔いに似た作用で、DFSを利用し続けることで同じように気分を悪くしてしまう症状である。 アイス:「データ酔いは強弱はどうあれ誰にでも起こるわ。もちろん、リンゴもディーズを30分も装着し続けたらデータ酔いでもう動けないしね。 でも、アンタは特殊なのよ・・・・・・いや、異常よ、ぶっちゃけ」 明里:≪異常って?≫ アイス:「アンタ、それが 明里:≪ごびょ・・・早っ!?≫ アイス:「でもって、その強すぎるデータ酔いのせいで、アンタが逆にデータを引き込んで、ディーズの情報がアンタの脳ミソへ一時的に逆流してたのよ。 つまりは、アンタは変身している間、お酒に悪酔いしたみたいに動いたまま、あたしが教えてすらいないディーズの情報を駆使出来ていた・・・みたいな。 それが・・・夕べのアンタよ」 明里:≪で、でも、今はあんまり覚えてないんだけど・・・///≫ アイス:「お酒に酔ってると、テンションがおかしくなる代わりにその間の記憶はたいてい忘れるらしいわね。 あたしは良く分かんないけど、現に泣き上戸のリンゴがそうらしいから無いとは言えないわ。 ・・・それと似たような理由じゃないかしら。推測ではあるけど」 お酒で酔うと、自分があんな感じになる。あんなハイテンションで自由奔放な・・・・・・。 動画で見たから今は内容だけは分かるものの、やっぱりアレが自分だとは明里にはなかなか理解出来なかった。 明里:≪・・・あっ、そうだ、女の人は!?あのウイルスの!≫ アイス:「随分唐突ね・・・・・・無事よ。D,A,T.A.の医療班を呼んで、今は安静にしてるわ」 明里:≪安静・・・?えっと、フリーズ・・・ってのは?≫ アイス:「アンタがウイルスを駆逐したでしょ?もう、被害者の身体には残ってなかったわ」 アイスがコンソールを軽く動かすと、明里側に病室の映像が映された。 右上に『LIVE』と出ているあたり今現在の情報らしいが、その女性・・・かつてウルフマジルスだった彼女がスヤスヤと寝息を立てていた。 その隣では、彼女がマジルスだった頃にフリーズさせた彼氏も横たわっている。 ・・・明里が商店街で見た、顔面の青い模様がすっかり消え失せていた。 アイス:「やっぱりマジルスの時の影響があるからしばらくは入院だけど、命に別状は無いわ。 フリーズ化された彼氏さんも、根源を退治した事ですっかり元通り。ガキんちょ、アンタが救ったのよ」 明里:≪よ・・・・・・良かったぁ・・・・・・≫ 突然画面の明里の顔がフェードアウトする。力が抜けてしゃがみ込みでもしたか。 すると、その様子にアイスが噴き出して、 アイス:「アンタ、やっぱおもしろいわね・・・アハハハ!気に入ったわ!」 明里:≪えっ・・・あ、ありが・・・と///≫ アイス:「そうだ、ちょっと頼みがあるんだけど。リンゴに内緒で」 明里:≪え・・・?≫ そう言ったアイスの口元は誰から見ても分かるくらいはっきりとニヤけていた。 ―――――5時間後=10:46am 幕窓町駅西口、商店街がある方とは正反対の方角。 そちら側は、東口側程では無いとはいえDFSによる恩恵を受けて発展している、一種の電気街である。 その電気街の外れ、とある雑居ビルの出入り口から、小太りの男性が意気揚々と出てきた。 満面の笑みで手に持つ紙袋を抱きしめ、この真昼間から恍惚の表情を浮かべている。 男性:「んゆ〜〜☆ついに出たぞナ〜『魔法剣士☆ソードサーナ』のDVD-BOX!!! 今日という日を昼寝しつつ徹夜して待った甲斐があったァ・・・! さーて、帰って早速PLAYけって〜い!」 ちなみにその雑居ビルの2階と3階には、いわゆるアニメショップのチェーン店が入っている。 紙袋の中身も、パッケージに萌えキャラが大きく写るDVD5本セットパッケージである。 一応、どういう内容かは説明を自粛しておくが・・・・・・読者のご想像にお任せすることにする。 そうして、お腹を揺らしながら足取りも軽く去っていく男性を、遠くの方で見つめている存在があった。 背はあまり高くは無いが、真っ黒いローブを全身にまとい、フードを深く被っている。 その黒ローブの何かは、男性が去っていくのを確認すると、後を追うようにふらふらとその歩みを進み始めた。 まるで、その男性に標的を絞っているかのように。 ―――――12:30pm=カフェテラスMisaki 一方、東口側の商店街の中にあるカフェテラス。 早番、つまり開店8時からのシフトだった明里は、ようやく休憩時間にありつくことが出来た。 近くのコンビニでお昼ご飯を買ってきてスタッフルームのデスク上に一度置くと、 踵を返してロッカーを開け、自分のかばんを引っ張り出した。 チャックを開け、中をごそごそと・・・・・・ 明里:「・・・あった!おまたせ、アイス」 アイス:≪んもう!待ちくたびれたわよ!≫ それは、ディーズアクセスだった。 明里の声に応じて映った画面には、腕を組んでプリプリ怒ったアイスの姿が映し出されている。 『一緒に連れ出してほしい』と願ったのは、アイスの方だった。 それこそ、明里は突然の事に訳が分からず戸惑いと驚きが入り混じっていたが、 一度家に帰る必要があった明里に『家までのナビを買って出る』事を条件に突きつけ、強引ながら了承を得たのだった。 明里:「仕方ないよ。お仕事だもん。今日は16時までだから、今から1時間は休憩できるよ」 アイス:≪はァ?じゃあそれ終わったら・・・あと2時間28分15秒も待たなきゃいけないの、あたし?≫ 明里:「ごめんね・・・そういうお仕事だから。でも、アイスの事だからそれくらい察しがつくかと思ったんだけど・・・違うの?」 から揚げ弁当のから揚げを頬張りながら、横目でアイスに問いかけてみる。 『連れ出して欲しい』とは言われたものの、さすがに仕事中にお相手する事なんて出来ない。 すると、画面のアイスがきょとんと呆けた顔になった後、顔を少し赤らめて・・・ アイス:≪あたしは・・・・・・アンタに興味があるのよ。 AIのあたしでも理解しがたい事を、アンタはすんなりやってのけた。 それに、あんな事になった自分の心配より怪物になった人の心配を優先するなんて・・・。 だから、しばらくアンタを観察してみたくなって・・・・・・ね≫ 明里:「アイス・・・」 アイス:≪あ・・・あたしは、自分の眼で見たものしか信じない主義なの!それだけなんだからね・・・!?//////≫ そう言ってアイスは、赤面しながらそっぽを向いてしまった。 しかし、それが早かったか否か、 アイス:≪・・・ちょ、何黙ってんのよガキん・・・・・・え?≫ 明里:「―――――――――――――――――――――」 明里の意識はどこかへトリップしていた・・・・・・。 急に視界が吹っ飛び、目の前が真っ白になる。 そして、遠くから画面がいくつも飛んできては、明里の側を通り過ぎていく。 ――――――――たくさんの女の子? ――――――――ヒモのようなもの? ――――――――緑色の板? ――――――――青色の影? その全てが通り過ぎ終えた時、目の前の視界も元のスタッフルームに戻っていた。 明里:「――――――あれ?私・・・また・・・」 アイス:≪ガキんちょ・・・まさか、また何か見えたの!?≫ 明里:「うーん・・・・・・??」 自分でもよく分からない。 明里が少しばかり頭をひねっていると、遠くからドタバタと足音が聞こえてきた。 その轟音は、一番近いところで止まり、 ドバンッッ!! 目の前のドアが勢い良く開かれた。 あきら:「ハァッ・・・ハッ・・・め、めーりん!」 突然、明里の幼馴染であるあきらがスタッフルームに飛び込んできた。 入ってくるなり肩で息をして呼吸を整えながらも、明里に迫る勢いは止まらない。 明里:「あ、あきらちゃん・・・!?どうしたの??」 あきら:「ハァハァ・・・・・・た、大変なの!外がすごいのよ!」 明里:「外・・・??」 ―――――そして、訳も分からないまま明里はあきらに手を引かれて外に繰り出した。 『いやーん♪』 『おーっほっほっほっほっ!』 『ねぇねぇ、おにーちゃーん♪♪』 『みんなー!来てくれてあ・り・が・とー!愛し合ってるかーい!?♪』 『アンタは一生私についてくればいいってわけ、お分かり!?』 『まぁまぁ♪そんなにお母さんの事が好きなのぉ?♪』 『ら、らめぇ!?そんなところで・・・!!//////』 『あたしを怒らせると・・・すごいことになるよ・・・ぶつぶつ・・・』 『ほらぁ!?いつまで寝てるのよ!学校に遅れちゃうよ!』 カオス、という言葉はこういう時に使うものなのだろうか。 商店街中に、ありとあらゆる女性、かたや小さい子供、かたや同い年くらい、かたや干支一周離れ、 金髪、茶髪、黒髪、青、赤、緑、銀、ピンク、ショート、ロング、ツインテ、ポニテ、おかっぱ、などなどなどなど。 それらが一斉に商店街内に溢れかえり、客に絡みまくっているのだった。 明里:「なに・・・・・・これ・・・・・・」 想像を遥かに超え・・・・・・否、こんな想像は普通は出来やしない。 明里の頭の中は一瞬にして真っ白になった。 あきら:「ドキドキするよねえ・・・・・・いろんな意味で」 明里:「いや・・・だってこれ・・・ありえないよ・・・??」 すると、その溢れかえった群衆から女の子がこっちにやってきた。 背は明里より低めでピンク色のショートボブ。ぱっと見、後輩あたりだったらしっくり来る感じで。 しかし、その少女の様子はだいぶおかしく、足をがくがく震えさせては明里の方を向いて惚けていた。 『嗚呼・・・見つけました・・・愛しのお姉さま・・・っ♪』 明里:「に゛ゃ――――――――――――!?/////////」 そして急に抱きつかれて明里も思わず裏声が。 明里:「いやぁあああああああああ!?!?」 そして気が動転して思わず少女を突き飛ばしてしまった。 あきら:「めーりん!?大丈夫・・・?」 明里:「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・あっ!?えっと・・・ごめんなさい!?」 『ああっ・・・・・・これが、愛のムチなんですね、お姉さまっ・・・!』 ジジッ あれ?少女が少しかすんだような・・・・・・? アイス:≪はっ・・・!?ガキんちょ!こいつ・・・DFSで出来た具現データよ!?≫ ポケットからアイスの声が小さく届いた。アクセスをバイブ機能で震わせながら。 明里:「DFS?・・・えっ、この子たち、データなの!?」 アイス:≪何ですぐ気づけなかったのかしら・・・! でも、ここまで大量に出すものなら発信源くらいありそうなものだけど・・・この近くじゃ検知できない!≫ 明里:「じゃあ、ここにいる女の子たちはみんなデータで出来ていて、それを作ったのは・・・」 アイス:≪・・・・・・十中八九、マジルスの仕業ね≫ あきら:「何喋ってるの、めーりん?」 明里:「ぅわああああああああ!?」 間を割って入ったのは隣にいたはずのあきらだった。 そして、明里が持っていた 明里:「あの、えっと、それ・・・は・・・」 あきら:「何これ!?かぁいい―――――――――!!」 明里:「・・・・・・へ?」 明らかに画面の少女に惹かれていた。もっと不審がってもいいのに意外な反応。 アイス:≪と・・・とーぜんでしょ!?あたしはネット世界一パーフェクトなAIなのよ?//////≫ しかも画面の少女はだいぶ調子に乗り始めた。 明里:「アイスったら・・・」 あきら:「この子、アイスちゃんって言うの?機械音痴のめーりんがこんなの持ってるなんてね! ボクはめーりんの幼馴染のあきら。大変だと思うけど、めーりんをよろしくね?」 アイス:≪お・・・・・・おぅ!あたしに任せておきなさいっ!!≫ もうだいぶ自棄になって胸を張っている自称・ネット世界一パーフェクトなAI。 あきら:「それにしても・・・この女の子たちがデータで出来てるなんてね・・・・・・」 明里:「え?・・・そこ聞こえてたの??」 あきら:「バッチリ。でもさぁ、こんなにたくさん、どこから出してきたんだろうね?めーりん分かる?」 明里:「わ、私に聞かれても分かんないよう!?・・・でもどうやって出てくるんだろ?」 アイス:≪え?・・・ったく、あんたら無知ねぇ・・・? 具現データは、予め作っておいたデータフォルダからデータを取り出して、専用機器を通じて三次元へ具現化させるのよ。 で、データを作る段階でいろいろいじる事で、いろんな物を・・・・・・それよ!!≫ 大ボリュームでアイスの声が2人の耳にこだました。耳がキーン。 明里:「な、何・・・?」 アイス:≪この商店街にはDFSを投影する専用機器・・・DF(デジタルフィールド)ローダーがたくさんあるわ。 そこから一気にデータ少女が溢れてきたとしたら・・・この商店街のどこかに出元のデータフォルダもあるはず! ガキんちょたち、この商店街に自由にパソコンが使える所はある?≫ 明里:「え?えっと・・・あったっけ?」 あきら:「この近くにネットカフェがあるよ!この先のファミレスの上の階!」 アイス:≪でかした!後はこの場所をどうするかだけど・・・≫ プツンッ! と、突然何かが切れた音が商店街中に響き渡った。 すると、目の前にいた女性集団データが、目の前にいた後輩ドM少女から奥の方へ見る見るうちに消えては光となって、遠くの方へ飛んでいってしまった。 絡まれていた客たちは疲れきったような顔でその場に倒れこみ、そうして見えてきた向こう側に・・・・・・ リンゴ:「まったく・・・・・・手間かけさせてくれちゃって」 黒いバイクスーツを見にまとったリンゴがPDA片手に息を切らしていた・・・さらに汗だくで。 明里:「リンゴさーん!?」 アイス:≪商店街中のDFSフィールドがOFFになってる・・・リンゴ!いるならいるって言いなさいよね!?≫ リンゴ:「言えたらとっくに言ってるわよ!!こっちだって妨害受けながら必死だったんだから!!」 リンゴ自身もフィールドを何とかしようと少女群集を挟んで明里のちょうど反対側でせっせと活動していたものの、 しばらくしてやはりデータ少女たちに気づかれ、いろいろな所を絡まれながら作業を続けていたのである。 おかげさまで全身汗びっしょり。 あきら:「・・・知り合い?」 明里:「うん、まぁ・・・で、リンゴさんは何をしていたの・・・?」 アイス:≪簡単な事よ。この商店街のDFS機能を一時的に切ったの。 それがすぐに出来るのは、DFSを管理しているD.A.T.A.の人間、つまりあそこにいるリンゴってわけ≫ つまりのところ、DFSの全機能を切断する事で、DFSで具現化されていたデータはそれを維持出来なくなり、 自動的に元のデータフォルダに戻る。 それが、先程飛んでいった光の理由である。 リンゴ:「明里ちゃん!早く光を追いかけて!ここから先は、あなたにしか出来ない!」 明里:「私にしか・・・・・・でも、私で・・・いいんですか・・・?」 リンゴ:「どうもこうも・・・・・・アイスがディーズの装着者情報を勝手に委譲しちゃったのよ、あなたに!」 民間人=あきらの存在に気づいたリンゴは、素早く明里に近づき耳打ちする。 危うく特秘事項を口走りかける所ではあったが・・・。 明里:「じゃあ・・・あれを使えるのは私だけで・・・今のリンゴさんは出来ない・・・と?」 アイス:≪あたしは気に入ったらとことん愛でる主義なの!気合入れなさいよね、ガキんちょ!≫ リンゴ:「何が『気合入れなさいよね!』よ!!ドヤ顔しちゃってもう!! とにかく、今はあなただけが頼りなの・・・こうなったら、私もあなたに賭けてみる。同じインシュレーターであるあなたに・・・ね」 一瞬、明里がリンゴから目を逸らし、俯く。 その後ろであきらが声をかけようとしているが、かける言葉が見つからず口をもごもごさせている。 明里:「・・・・・・私、思いました」 俯いたまま、彼女は口を開く。 明里:「ずっと考えてたんです。ひょっとしたら、それをやることが、居なくなったお姉ちゃんに近づく道なのかなって。 それに、アイスを見て思ったんです。これでひょっとしたら、一度切れたお姉ちゃんとの繋がり・・・その切れ端を見つけ出せるのかもって」 明里のディーズアクセスを握る手が強くなる。 明里:「もう・・・手が届かないのは嫌!だから、私は、お姉ちゃんに追いつきたい!! 私は 顔を上げた明里の瞳に、光が満ちていた。 そうして、振り返りもせずに明里は地を蹴り、リンゴの横を過ぎ去ると、光の走った方へと駆け抜けていく。 リンゴ:「明里ちゃん!」 あきら:「めーりん・・・・・・一体・・・・・・?」 しかし光は、先程あきらが言ったネットカフェを何故か通り過ぎ、別の店舗の二階へと逃げていた。 階段を駆け昇り、辿り着いたそこは、何も無い、ただ広いだけの空間だった。 その部屋の真ん中に何故かノートパソコンが置かれており、光はそこに吸収されたらしい。 アイス:≪そういえば・・・外に出る前に何を見たのよ、ガキんちょ?≫ 明里:「外に出る前?・・・あぁ、えっと、『女の子がいっぱい』『ヒモ』『緑色の板』『青い影』・・・かな?」 アイス:≪ヒモ?板?何言って・・・・・・伏せて!!≫ バシュルルルルッッ!!! 突然ノートパソコンからケーブルのようなものが飛び出し、明里に向かって飛んでくる! それを明里はアイスの声で条件反射的にしゃがみこんでかわす。 アイス:≪DFSシールド展開!半径150cm!≫ と同時に、明里を球状の青いシールドが覆った。 さらにノートパソコンからケーブルが大量に飛び出し、シールドを割らんとびったんびったん叩き続ける。 アイス:≪気色悪っ・・・そうか、ヒモってこれの事だったのね!?≫ 明里:「でも、明らかにおかしいよ、こんなの・・・その・・・マジルスだっけ?それもいないみたいだし・・・」 アイス:≪・・・・・・そうか、このバカガキんちょ!緑色の板って、電子基盤の事でしょ!? さすがのあたしでも気づけなかったわよ、情報が足りなくて!≫ 明里:「そう・・・なの?」 アイス:≪これで繋がったわ・・・でも、とりあえずこのケーブルを何とかするわよ!≫ 明里:「変身しろ、ってことだね・・・?」 おもむろにポケットから銀色のディスクカートリッジを取り出す。窓から差し込む日の光に銀色が少し映え、眩しく映る。 それを、ディーズアクセスにゆっくりと正確に差し入れる! 【D's SYSTEM STAND BY】 機械音と共に、現れたベルトパーツがディーズアクセスの両端に接続され、明里の腰に装着された。 露出したアクセス背面のモールトに模様が浮かび上がり、待機音が静かに鳴り響く。 左手をベルトに添え、右手を左上に突き出し、さらに真上に持ってくる。 意を決し、その右手をベルトのタービンへ振り落とす! 明里:「変身!」 【DRIVE INSTALL】 音声と共にベルトから飛び出した3つの青いリングは明里を中心に回り、それに沿って青い光が集まってアーマーパーツを形作っていく。 数瞬経ってリングは明里に向かって収束し、パーツは明里の身体と融合して、彼女をディーズへと変貌させるのである。 スラリとした身体に密着する青いボディスーツのに這うように装着された銀色の装甲、右腕にライオンの顔にも似た大きな手甲、 同じくライオンの依拠を放つ、口だけ開いているメット。 改めて自分の意志で変身した明里は、その変わり映えに思わず目を輝かせていた。 ディーズD:「わぁ・・・・・・これがわたぎも゛ぢわ゛る゛い゛・・・」 が、途端身体を震わせ、どんどん顔色は悪くなっていく・・・。 アイス:≪データ酔い早っ!?5秒かかってないじゃない!?≫ ディーズD:「ちょっと待っ・・・・・・・・・・・・うふふふ・・・・・・あーっははははははは!」 一度うずくまったと思うと、今度は顔色も戻って気が狂ったように高笑い。 ディーズD:「さぁ―――って!!お注射されたい子はだーれっ!?」 アイス:≪あ・・・・・・この前と同じだ・・・ガキんちょ、平気?≫ ディーズD:「こらアイス!この前も言ったけど、私には『明里』っていうちゃんとした・・・」 アイス:≪その意気ならもう平気ね!?どうせやる事分かってんでしょ!?≫ この状態の明里とは、普段の関係がまったくもって効かないどころか反転すらされてしまう。 調子を狂わされ、アイスも半ば自棄になっていた。 ディーズD:「そんな自棄になっちゃダメよう。要は・・・ネットワールドに、飛べばいいんでしょ?」 そうして左腰のケースから1枚のディスク・カートリッジを引き抜く。 透明のカートリッジに収められた緑色のディスクには、電子基盤の模様が描かれていた。 それをディーズドライバーの左手側に備わる専用挿入口に差し入れる。 【APPEND-DISK DOWNLOAD】 ディーズの持つディスク・カートリッジには、いろいろな種類がある。 特に透明のディスク・カートリッジは、ディーズ自身の機能を拡張する『アペンドディスク』と呼ばれており、 中に封入されたディスクによって能力が変わるのである。 そしてタービンを回して起動するこのディスクの効果は・・・・・・ 【“ACCESS-DIVE” INSTALL】 アイス:≪そっち先!?ま、まぁいいか・・・アクセスダイブ起動!いつでも行けるわよ!≫ ディーズD:「待ってなさいマジルス・・・・・・イグニション!」 すると、獅子の手甲、ディーズナックルの先から放射されたビームがシールドをすり抜けてノートパソコンに命中し、 シールド内に大きな門が出来上がった。 意を決し、ディーズは地を蹴って門の中へと飛び込む! アペンドディスク『ACCESS-DIVE』は、ディーズをネットワールド、つまりデータ上に召喚させるためのツールなのである。 辿り着いたネットワールド。 地面は電子基盤のような緑色の道で埋め尽くされ、地平線の先までそれが伸びている。 しかし、その地平線は現在目視出来ないでいる。 『ご主人さま〜♪』 『おにいちゃーん!』 『フッ・・・未熟者めが』 『おかえりなさい♪ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・?』 『封印が今・・・解かれたッ!!我は、この世界を蹂躙する魔王となるッッ!!!』 『・・・・・・私に触れると、凍っちゃうよ?ふふふふふ・・・・・・』 『いやっ・・・それ以上されたらマゾくなる!マゾくなってまうー!!』 ディーズD:「いやはや・・・・・・ここまで酷いとは」 目の前の光景に、ディーズもさすがに苦笑いを禁じ得なかった。 先程まで具現化していた少女たちが目の前のフィールド上に勢揃い。 その場を可能なまでに埋め尽くしていた。 ディーズD:「アイス、マジルスの反応は?」 アイス:≪まだ無い・・・けど、ここから289m先にこいつらとは構造が明らかに違う別のデータがあるわ≫ ディーズD:「別のデータ?じゃあ、この少女軍団を掻き分けて行けって事?」 アイス:≪そういうことになr≫ ディーズD:「そうね、こういう時にDFSを有効活用しなくちゃだわ!」 話もろくに聞かずに、ディーズは一度下がって助走距離を取る。 一呼吸置き、一気に助走をつけて・・・! アイス:≪ちょ・・・アンタ何を・・・!?≫ ディーズD:「ぃやあああああああああああああ!!!!!!」 アイス:≪ンな無茶なぁあああああああああ!?≫ 地を蹴り、少女たちを思いっきり飛び越える! 足元に少女軍勢を見据え、ニヤリと顔を歪ませる。 いつしか、飛び上がったディーズの身体は下降へと移行していた。 そして大きく右手を後ろに回し、ボーリングの要領で・・・・・・ ディーズD:「DFS発動・・・名付けて、『データロード』!」 右手を振り切る! 胸のDFSコアが蒼く光り、そこから右手のDFSユニットに光が瞬時に走って到達すると、振りかぶった方へ向かって光の道がスピードを上げて伸びる。 少女軍勢の上空に鎮座したその光の道に降り立ったディーズは、真下で繁殖している萌えキャラ達を見下ろしながら一目散にターゲットへと走り出す! アイス:≪よくもまあこんな事思いつくわねえ・・・・・・≫ ディーズD:「ナイスでしょ?♪さぁ、急ぐわよ!」 足下の萌えキャラーズを諸共せず、ディーズはデータロードを駆け抜ける。 そうして辿り着いた、『289m先』。 ディーズD:「・・・あれね?」 その場所はまるで月面のクレーターのように半径5m程のスペースが空いており、中心に三角錐を10段重ねた意味深なオブジェが鎮座していた。 しかし、萌えキャラーズはその円から何故かはみ出そうとせず、ディーズがそこに降り立ってもなお、彼女に襲いかかろうとはしなかった。 ディーズD:「ちょっとベタな展開だけど・・・これを壊せばこの娘達も消えるわね?」 アイス:≪・・・・・・何か変だわ、こんなすんなり行くわけがないじゃないのよ?≫ ディーズD:「でも、ここで何もしないよりはっ、やってから考えるのもありじゃないっ?」 ガチャン! そうニッコリと言ってのけながら、ディーズはリオンナックルを待機状態にする。 アイス:≪ちょっと待っ・・・!?≫ ディーズD:「リオンナックル・チェンジロック!」 【 リオンナックルを引き出すと、右手がロボットのようにゴツゴツした装甲が着いて返ってくる。 そして・・・!! ガチャ――――――ン!!ゴロゴロ・・・・・・ アイス:≪あ――――っ!?≫ ――――――――――――――――― ―――――――――――― ――――――― オブジェが音を立てて崩れる・・・・・・が、何も起こらない。 ディーズD:「・・・・・・あれ?」 アイス:≪・・・・・・何も・・・起こらない?≫ つんつん と、唐突にディーズの太ももを後ろから突っつく何かがそこにあった。 振り向いてみると、そこには青い髪のロングヘアーの幼女がニッコリと笑っている。 ディーズD:「うん?どうしたの、お嬢ちゃん?」 何とも可愛らしい笑顔を振り向いていた少女は、瞬間、一変して、 『・・・・・・・・・・・・や ら な イ カ ?』 そんな事をいきなり真顔で言われ、 ディーズD&アイス:「≪・・・・・・へ?≫」 素っ頓狂な声を思わず上げてしまう2人の背後で・・・・・・ ズモモモモモモモモモモモ・・・・・・・・・・・・!!!!! 『イカァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』 周りにいた萌えキャラーズが組み合わさり、巨大なイカに変貌した!! ディーズD:「・・・・・・はい?」 アイス:≪何じゃありゃああああああああ!?≫ ―――――Next Folder Now Download――――― 4th Folder:『一閃、真白き電子剣!>>Slash!Strike!Squid!』 ―――DRESS THE DIGITAL! DRIVE INSTALL!――― |
sui7kumo
2013年09月29日(日) 17時24分17秒 公開 ■この作品の著作権はsui7kumoさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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もう10月ともなると世間では秋、なんとなく物哀しい季節というイメージではありますが、ニチアサにおいては鎧武が始まる新たな出会いの季節でもありまして、というか10月でもクソ暑いというか上手い書き出しが思い付かなかったのでもうとっとと感想失礼します。 >データ酔い 何かと設定について小うるせぇ大友の僕でも納得の解説。 常人(リンゴさん)では戦闘続行不可能になる程の障害なのに、機械に弱過ぎるが故に症状が人格豹変にまで振り切ってしまい却ってそれが戦闘面ではプラスになる、ってのは皮肉というかなんというか… データ酔いの単語自体は二話から出ていた訳ですし、機械が苦手な明里ちゃんがリンゴさんを差し置いてディーズで変身する理由付けにも一枚買ってて色々とうまい事設定ぶん回してるなー、と。 >小太りの男性 KI☆MO☆I! メディアにおけるキモオタの描写ってのは誇張し過ぎな部分があるというか、実際こんなのいるわけないだろーとか思ってたら稀にそのイメージを遥かに超越するクリーチャーに遭遇したりするので侮れない。都会って怖い。 >具現データ なんだこの萌えキャラ酒池肉林 というか触れるのか 十中八九どころか十中十十発生させてるのは件の彼でしょうが、ここまで欲望垂れ流しなのもある意味すげーよ まあ萌えキャラ云々は置いておくにしても、こういった単純な戦闘一辺倒では儘ならない展開を序盤に持ってくる攻めのストーリー構成、嫌いじゃないわ!(ルナァ! >や ら な イ カ >青い髪のロングヘアー ぴかりんじゃんけ…じゃなくてイカ娘じゃねーか! 元ネタに関しましては……駄目だ、二キャラくらいしかわからぬ。 >Next Folder:『一閃、真白き電子剣!>>Slash!Strike!Squid!』 やっぱり剣かよ! とはいうものの無ければ無いで平成っぽさが失われるような気がするのでこれはこれで。 今回何気に黒幕っぽい黒フードさんが登場していましたが、果たして彼(彼女?)が人をマジルス化させてたりするのでしょうか、だとしたら何故よりによって彼を選んでしまったのか、あとラブライブとアイカツの区別がつかないとか言ったら殴られたんですけどこれって僕が悪いんでしょうか、などと色々と疑問に思いつつ今日はこの辺りで。 |
50点 | トレハ | ■2013-10-11 18:23:05 | p43cc44.mie-nt01.ap.so-net.ne.jp |
合計 | 50点 |