仮面ライダーワルキューレ Mission23 |
Mission23「波乱万丈の文月祭!」 文月祭の日にちが近付いてきた。 学園内では笹や色とりどりの短冊が飾られて、教室ごとの模擬店や展示会の準備で大忙しであった。しかし生徒たちは楽しみにしているらしく、騒がしくもかしましい、元気な声が聞こえてくる。 翠「お祭りだ―――――――――――――――♪」 蘭「七夕だ――――――――――――――――♪」 翠と蘭が頭にねじりはちまきを縛り、はっぴを着こんで、両手に団扇を持って高らかに叫んだ。お祭りが大好きな二人はもう楽しみで楽しみで仕方ないと言った感じで大はしゃぎであった。 文月祭とは、祭りで屋台が出たり、男装した繚乱会のメンバーがゲームで勝ち残った女子生徒と一緒に七夕デートを行う「彦星と織姫コンテスト」を行ったり、軽音部のライブや文化系部活の出し物をやったりして、大いに盛り上がろうと言う企画であった。 朱美「もう、二人とも元気なんだから」 茉莉「しかし、本当にやるんだね、うちらが男装して彦星になって、織姫に選ばれた女の子と花火見物なんてさ。本当、ギャルゲーかよって感じ」 朱美「この企画、実は私が考えたの。そしたらもう大当たりでね。4月から文月祭では絶対この企画をやってくださいって依頼が殺到していたのよ」 蘭「繚乱会と生徒たちが触れ合ういい機会だもんな~。うちら、生徒会ってことでなかなか皆と気さくにこうして一緒に遊んだりする機会少ないもん」 茉莉「とか言って、本当は女の子とお祭りで堂々とイチャイチャ出来るからでしょ」 翠「・・・・・朱美さんらしいっちゃ、らしいよね」 霧子「あらあらまあまあ・・・・」 朱美「あ、そういえば、真墨はどうしたの?」 朱美がふと、生徒会の面々を見るとそこにはいつも憎まれ口を叩いてくる真墨がいない。すると、蘭が気まずそうに顔をそむけ、茉莉がため息をつき、翠が苦笑いをする。 霧子「・・・何かありましたの?」 蘭「・・・・あのさ、真墨なのだけどね、その、色々あって、文月祭、その・・・」 茉莉「クラスで笹に短冊下げて願い事するでしょ?それで真墨が短冊下げたら笹が続けざまに3本も突然折れたり落雷で丸焼けになったり短冊を吊るしている途中で機材はこんでいた台車に吹っ飛ばされて怪我しまくって・・・」 翠「・・・・・七夕なんて誰が参加するかって、怒ってクラス飛び出しちゃって、それから戻ってきてないの・・・・・」 朱美「・・・・要するに、勝手にキレて仕事サボってどっかに行っちゃったと・・・・」 朱美の額にヒクヒクと血管が浮かび上がる。霧子も苦笑いするしかない。 朱美「翠ちゃん。いつも香澄ちゃんを吹き飛ばす時に使っているバズーカ、あとで貸して下さらない?あとでバズーカを交えた話し合い、いえ、果たし合いをする必要がありそうだから」 翠「朱美さん、果たし合いっていいませんでしたか?生身の相手にバズーカって決して穏便に片づける気はないっすよね?」 茉莉「・・・もう、携帯も電源切っているよ。本当につまらないことですぐカッカするんだから。こういうところがお子ちゃまなんだっつの」 蘭「・・・今頃、屋上で寝ているんじゃない?あとで見に行ってみるよ」 霧子「真墨様・・・・大丈夫でしょうか?」 蘭「大丈夫だって。アイツすぐ怒るけど、冷静になったらちゃんと反省できるし根は素直だからさ!ボクに任せて」 そのまさかであった。保健室で自分で手当てを済ませて、全身にバンソウコウや包帯を巻いた痛々しい姿で真墨は給水塔にもたれながら両手を頭の後ろで組んでサボっていた。 真墨「いっててててて・・・・。全くどうしてたかだか笹に短冊吊るすだけだっつのに、折れた竹の下敷きになるわ、落雷で感電するわ、台車に轢かれて吹っ飛ぶわ、ここまで悲惨な目に遭わなきゃならねーんだよ。不運すぎるだろ、おい・・・」 怒って教室を飛び出してきたが、屋上でしばらく頭を冷やしている間に頭が冷静に戻り、どうやってクラスや繚乱会に戻るものかと真墨は頭を抱えていた。 その時であった。 「はい・・・はい・・・・分かりました。ボクも学校終わり次第、病院に行きます。あの人のことについて、今後どうするか、お話しできるお時間、いただけませんか?いつも無理言ってすみません・・・はい・・・はい・・・」 聞き覚えのある声がした。屋上から下の方にこっそり顔だけ出すと、そこにいたのは、「超高校級のギャンブラー」こと磯貝汐里(いそがい・しおり)であった。いつになく深刻そうな顔つきで誰かと話している。電話を切って、ふうっとため息をついた。ひどく疲れている様子だ。顔色も悪く、その場に座り込んでしまった。思わず声をかけようとするが、どうもかけづらい雰囲気だ。眉間を右手で抑えながら、胸ポケットから生徒手帳を取り出すとそれを開いて何かを見ている。真墨がいる場所からは見えない。 その時だった。屋上のドアが開いた。 蘭「おーい、真墨―。もう怒ってないで出てこいよ―」 蘭だった。突然の訪問者に汐里も驚いて手帳をしまった。 蘭「あ、君は6組の磯貝さん!こんなところでどうかしたの?」 汐里「ちょ、ちょっと風に当たりたくなっただけさ。君は確か白薔薇・・・社さんだったかい?」 蘭「うん、よろしくね。君とは編入の時の挨拶以来だよね―。あれからクラスで上手くやってるか気になってたけど、ここの学校はどう?クラスメートの子たちもお嬢様って言われているけど結構気さくで明るい子多いしさ、友達出来た?」 汐里「ま、まあ、ぼちぼちかな・・・」 蘭「あ、そうそう。ここで真墨見なかった?」 汐里「真墨って・・・百合川のこと?いや、見てないけど」 蘭「そうか、いやさ、ちょっと探しているんだけど、もし見かけたらボクが探していたって伝えといてくれないか?生徒会の手伝いもそろそろ参加してもらわないと困るってさ」 汐里「あ、ああ、構わないよ。それじゃ、ボク、用事あるから、それじゃあね」 そう言って、汐里が走り去って行った。その時彼女の手帳から一枚の写真が落ちて、汐里は気付かないまま屋上を出て行った。蘭がその写真を拾い上げる。するとそこへ真墨が給水塔から降りてきた。 真墨「蘭!」 蘭「あ、真墨―!もう、サボるなよ。朱美もうカンカンだったぞ。あとでバズーカ覚悟しておけとか言っていたんだから」 真墨「そしたら何百倍にして倍返ししてやるっての。つか、それ、何よ?」 蘭「ああ、これ?うん、さっき磯貝さんが落としていった写真なんだけど・・・あとで届けておかないと」 真墨「写真?それなら後で俺が届けておくよ。どれ―・・・」 写真を見た瞬間、真墨の表情が凍りついた。驚きで目が見開かれ開いた口がふさがらないまでにショックを受けている様子だった。 その写真に写っていたのは―。 黒い革ジャンを着こんだポニーテールの長身の美女、そして磯貝、そしてその間に茶髪で露出が多い派手な服装をしているダンサー風の女の子が満面の笑顔で写っていた。しかし、そのうちの一人に真墨は心当たりがあった。 真墨「・・・・アベル・・・・!それに、この間、翠が言っていた派手な服装をした女の子で自分のことをカブキって言っていた子の似顔絵にそっくりじゃねえか・・・・それじゃあ・・・磯貝の正体は・・・・!」 真墨が驚きで呆然と立ち尽くしていた。その様子を怪訝そうに見ている蘭。そしてその光景を陰で隠れるように、カブキが見ていた。しかしその表情は冷たい光を宿し、口元にはにやりとこの状況を楽しむかのように唇の端を吊りあげ、赤い舌でちろりと舐めている。 カブキ(・・・・・バカね。とうとうばれちゃったみたいね。でも、これもこの後の祭りを盛り上げる前座にすぎない。真墨ちゃん・・・いいえ、大友暁くん?君にはこれまで私たちの邪魔をしてくれた分、たぁっぷりと可愛がって上げるわ・・・) するとそこへ、一人の女子生徒が暗がりから現れた。つややかな黒髪のおかっぱ頭、日本人形のような可愛らしい顔立ちをした小柄な美少女だ。手に持っている桜が描かれた扇子を広げて煽いでいる優雅なしぐさが良く似合っている和風系美少女だ。 「・・・カブキ様」 カブキ「・・・・カマノスケ。貴方がまさか手伝ってくれるとは思わなかったわ。手筈通り、貴方はワルキューレたちを頼むわよ?」 カマノスケ「・・・・仰せのままに。この真田十勇士が一人、“風忍(かぜにん)の由利カマノスケ”。ワルキューレたちに至上の舞いをささげますわ・・・」 そういって、桃色の一陣の風が吹き、カマノスケと名乗る女子生徒の姿は闇に消えていった。カブキは目の前で写真を見て呆然と立ち尽くしている真墨を見て、獲物を狙うどう猛な肉食動物のようにぎらついた光を瞳から放っていた。 こうして様々な思惑や知略、謀略が陰でうごめく中、ついに文月祭を迎えることになる。 その夜。 翠「え―――――――――――――――――――――――――っ!!!?」 壁は裂けよ、窓は割れよと言わんばかりの翠の大声がコテージから響き渡った。その大声で見事真墨はひっくり返り、茉莉はいつの間に耳栓をつけていて、メイやシェオロこと華藤アスカ、そしてギュゼルこと鬼島真(きじま・まこと)も驚きのあまりに目をぱちくりさせていた。香澄を寝かしつけた後、報告に来ていた瑛子と美子も茉莉からもらった耳栓をつけているが、あまりの大声と剣幕に言葉を失うほど驚いている。 茉莉「声デカい」 メイ「さ、暁が、ひっくり返っているぞ」 翠「で、でも、一体全体どうなっているんだよ~!?」 瑛子「話を整理すると、今現在解ったことがその磯貝汐里の正体がグリードのシエルであること」 美子「そして、仮面ライダーディオネの正体が青薔薇様・・・・菫谷霧子さんってこと」 メイ「・・・しかし、これは厄介だぞ」 真「そりゃそうだ。護衛しなくてはいけない相手が敵として襲ってくるんだから」 アスカ「しかし、なぜに霧子は吾輩たちを敵として襲いかかってくるのであろうか?」 茉莉「それでさ、以前彼女には気をつけろって冷牙さんたちが言っていた話があったじゃない。それでその時の映像を調べてみたんだけど、明らかに人間離れしている運動神経だったし、まるでグリードみたいな変な技使っていた。それでその時の画像、本部でもチェックしてたんだけど、どうやら蒼真さんや真夜さんは見当がついたらしいんだよ。そしてそいつがかかわっているのなら自分たちに敵対する理由にも心当たりがあるって」 メイ「・・・・・・それが、神代聖(かみしろ・さやか)」 翠「神代聖って・・・確かこの間父さんや母さんとも戦ったことがあるっていう、邪神に操られてこの町を何度も危機に陥れてきた、シスターだったっけ」 メイ「そう、そして、暁の・・・・親友だった新海凛が生み出したもう一人の人格だ」 瑛子「え・・・?そ、それじゃあ、神代聖が別人格だったとはいえ、暁と神代聖は・・・」 翠「・・・・親友同士だったってこと!?」 メイ「・・・そうなるな。しかし、最期には神代聖の人格が邪神ごと消滅して、事件は解決したのだが・・・邪神の魔力を宿し続けてきたせいか凛の身体はもうボロボロで・・・」 翠「・・・・この間、死んじゃったんだよね」 瑛子「ふん、邪神を生み出し何度も街の平和を脅かしたのだ。自業自得であろう!!」 美子「瑛子ちゃん、言いすぎだよぉ。そりゃ、私たちも神代聖に一族滅ぼされたけど、でも、もうそのことでいくら恨んでいてももう故郷も家族も帰ってこないんだよ?それじゃあ、もう、神代聖を恨むのも悪口言うのもやめようよぅ。私たちがこれからどうするかって事考えたら、過去にとらわれて成長できなくなるなんて、嫌だし自分のためにならないじゃない」 瑛子「・・・そ、それはそうだけど」 真「美子くんは強いな。自分の心の傷や怒りを乗り越えられるなど強い心を持っている者でなければ出来ることではない。しかしそれは生きていくことにおいては欠かせない、誰もが乗り越えなくてはならない試練だ。君は・・・その試練に勝ったのだな」 美子「・・・自分でもわかりませんよ。でも、香澄様や暁ちゃんに出会う前だったらずっと過去の苦しかったことに縛られて神代聖をずっと恨んでいて、今みたいなことも言えなかったかもしれません。でも、香澄様や暁ちゃんに会って、どんなに苦しい事があっても悲しい事があっても、それでも諦めないで前向きに頑張ってやるぞ―って人を見ていると、なんだか、香澄様や暁ちゃんみたいに自分も前へ進むことができるかなって思ったんです。それで元気をもらったというか・・・」 瑛子「香澄様・・・・そうか・・・そうだな。過去にとらわれて腐って前向きに頑張ろうとしないものなど、香澄様が好まれるはずがない。それだけ前向きで一生懸命に何事にもぶつかっていくあの人に一生をかけてついていくと決めたのに、それではいかんな」 翠「・・・・・まあ、それはそれで置いといて、そうなると引き続き護衛活動は周囲に気をつけながらやったほうがいいかな?」 メイ「・・・・思い切ってぶつかってみるのも一つの手かも知れんが、それなら物事を常に冷静に分析して状況を素早く判断できる相手に一任したほうがいいかもしれんな」 茉莉「・・・そうなると・・・・翠と武田と上杉、それに、真墨はダメだね」 「「「何でさ――――――――――!?」」」 納得できないと言ったように、翠と瑛子、美子が抗議の声を上げる(真墨は気絶している)。しかしグリードの3人は納得したようにうなづく。 アスカ「まあ、翠ちゃんは感情に流されやすいところがあるし」 メイ「武田は熱血ギンギンバカだし、上杉はすぐオロオロして落ち込みやすい」 真「暁くんなどその場で大乱闘になって大騒ぎになりかねないからな」 「「「・・・・・・・反論できましぇん」」」 交渉や暗躍には完全に不向きと見なされ、3人ともガックリ落ち込み(1名は気絶していたが)、部屋の隅で膝を抱えて座りこんでしまった。頭の上からどよよんと暗い影がかぶっている。 メイ「そうなると、茉莉、君が少し調べてみてくれないか。菫谷霧子に関することを」 茉莉「はいよ」 真「あ・・・そうだ。翠くん、ちょっとあとでいいかな?話したいことがあるんだが」 翠「・・・・・・・・・・・・・ふえ~い」 こうして夜は静かにふけていくのであった。 そして文月祭当日。 繚乱会は「彦星と織姫コンテスト」の準備で朝から大忙しであった。 朱美「翠ちゃん、最高ォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!王子様の衣装もメイクもよく似あってるぅうううううううううううう!!!ヒャッホォオオオオオオイ!!」 翠は緑色の派手な服職が施された王子様が着るような服装に身を包んでいた。そのボーイッシュで中性的な美少年にも見えるルックスは確かに凛然としていてよく似合っていた。朱美が鼻血を鼻から噴き出しながらクネクネと激しく踊り出す。朱美も銀髪をリボンでまとめており、赤いバラを胸元に刺した王子様のような豪華な服装を着こみ、男装している。蘭や茉莉、霧子もそれぞれが王子様のような豪華な服装に身を包んでおり、繚乱会の面々は華麗な男装と化粧を施した姿となっていた。 朱美「お持ち帰りぃいいいいいいいいい!!この子、お持ち帰りぃいいいいいいいい!」 茉莉「いいよ―、持ってけドロボー」 蘭「おいおい」 霧子「・・・あら?真墨様は?」 そういえば、今日も真墨がいない。 蘭「ああ、真墨なら・・・ほら、着替えて出てきたよ」 真墨「おう、翠、呼んだか?」 翠「OK My brother I had been stabled Lets go my honey!!」 真墨「落ち着け。日本語失っているぞ、バカ」 呆れるような口調だがツッコミありがとう。しかし、もうこんな真墨の姿を見てしまったらもうバカだろうと何だろうと言われてもかまわなかった。 軍帽をかぶり、黒い軍服のような服装をびしっと着こみ、外套を羽織ったその姿はまさしく男装の麗人という言葉がふさわしい。胸元には黒い薔薇をさしている。飾りとして腰には軍刀を差し込んでおり、しわひとつない軍服姿に思わず見とれてしまう。 朱美「・・・・なかなかやるじゃない」 蘭「・・・おお!」 茉莉「・・・・・・ふうん(あとで絶対写真撮って永久保存しとこっと)」 霧子「あらあらまあまあ」 真墨「・・・こういうのは嫌いじゃねえな。露出少ないし(男性用の服、久しぶりに着れてよかった~♪)」 翠「結婚しよう、よく似合ってるよ、お祭り頑張ってね」 茉莉「言いたいことが本音と建前ゴチャゴチャだっつの」 真墨「お友達のままで、ということで。じゃあ、俺会場のチェック行ってくるよ」 朱美「生徒たちに気付かれないように裏道通って行きなさいよ―」 真墨「おう」 後ろでガックリと頭を下げている翠を置いて、廊下を抜けて校舎の裏手に出ると体育館へと続く裏道へと向かって歩いていく。 その時だった。 「黒薔薇様♪」 裏道に行くと連絡通路に一人の女性がいた。ウェーブがかかった茶髪のロングヘア、琥珀のように澄み切った黄金色に輝く瞳、そして黒と赤を基調としている露出が派手な服装に身を包んだ長身で褐色色の肌を持つ女性がいた。 真墨「・・・・誰だ、アンタ。ここは立ち入り禁止だぜ」 「・・あらあら、随分と真面目というかお堅いのね。でも、そういう貴方だってこの学園そのものには本来は立ち入り禁止なんじゃないかしら?」 真墨「・・・・何?」 「・・・どうして、男の子の君が女装して女子高に潜入しているのかしら?ねえ?“大友暁”くん?」 真墨「!?」 女性の目つきが妖艶な目つきから獰猛な獣のそれに代わり、舌なめずりをする。有無を言わせない迫力に真墨も言葉を失い呆然と立ち尽くす。 同時刻。 翠「そろそろボクたちも会場に行かなくちゃ。蘭、そろそろ行こう!」 蘭「おう!茉莉も一緒に行こうよ!」 茉莉「はぁい」 その時だった。 翠「あれ?校庭の方に誰かいるよ?」 茉莉「あれは・・・超高校級の日本舞踊家の“風祭さくら(かざまつり・さくら)”じゃん」 翠「確か、海外でも公演したことがある、期待の若手舞踊家」 茉莉「京都でも名家育ちで由緒正しい日本舞踊の家元の次期後継者の座が約束されているんだって。それも幼少のころから厳しい修行を積んで、実力でつかみ取ったんだって」 翠「すごいねえ、それ。あ、こっち見て笑っている!うーん、日本人形みたいで可愛いなあ」 蘭「そうだよなあ。なんというか、守ってあげたくなるって感じ」 茉莉「はいはい、そろそろ行くよ・・・・え?」 茉莉の動きが止まった。窓の外の方を見るとさくらの姿の周りに黒い風が吹き出し、彼女の周りに渦を巻いた。そして、その姿が極彩色の翼を背中から生やし、頭部にも黄金の兜を身に付けた、鳥のような怪人の姿・・・・「ハルピュイアヤミー」へと化身する!両腕には鋭い鎌の刃のような鉤爪を装着している怪人の姿に変貌した!! 蘭「な、何だよ、あれ!?」 茉莉「嘘でしょ・・・・・」 翠「くそっ!!」 翠が飛び出した。 蘭「お、おい、翠!」 翠「茉莉ちゃん!蘭と先に体育館まで避難してて!!あと、チョンマゲと泣き虫メガネに連絡!!」 茉莉「合点!!」 茉莉に連れ出されて蘭が体育館の方に向かっていく。そして翠が校庭に出ると、凄まじい勢いで風が吹き荒れ、鋭い切れ味の風の刃が校庭に設置された屋台のテントを吹き飛ばし、モニュメントを切り裂き、無残な光景が広がっていた。生徒たちが慌てふためいて悲鳴を上げながら逃げまどう。その中にまぎれて翠が校庭に出て、校舎の陰に隠れてメダルを準備した。そこへメイも駆けつける。 メイ「翠!」 翠「学園祭メチャクチャにしやがって。もう許せない!変身!!」 翠の姿が仮面ライダーワルキューレ・ストームフォームに変わり、校庭へと飛び出す! ハルピュイア「・・・来ましたね。仮面ライダー」 ワルキューレ・ストーム「この間といい、今回といい、せっかくみんなが楽しみにしていたお祭りなのに、もう許せないよ!!覚悟しな!!」 ハルピュイア「・・・ふふ、御覚悟をされるのは、そちらですわ!」 ワルキューレがアンキロランスを回転させて飛び出し、槍を次々と突き出して攻撃を繰り出す!それを鉤爪ではじいて、素早く攻撃を繰り出し、斬撃と打撃が派手に何度もぶつかりあう!!ハルピュイアヤミーの優雅で変幻自在な動きの攻撃にワルキューレが槍をいくら突き出しても隙が生まれず、動きに翻弄され、攻撃がまともに当たらない!! ワルキューレ・ストーム「ちっ!!」 ハルピュイア「単調な動きですこと。踊りとしてはまだまだ半人前ですわね。本当の踊りというものを教えて差し上げますわ」 ワルキューレ・ストーム「うるさい!!」 そして体育館へとつながる通路を蘭と一緒に向かっている茉莉は・・・。 茉莉「瑛子と美子にはメール送ってっと・・・とりあえず、皆を体育館に避難させないと」 蘭「なぁ!!前から聞こうと思っていたけど、一体何が起きているんだ!?ここ最近、この学校で変な事件が次々と起きているだろう!?翠はどこかに飛び出しちゃうし、何がどうなってるんだよ!?」 茉莉「ごめん、アタシもうまく説明出来そうにない!!とりあえず今は、生徒たちを体育館に避難させたほうがいいよ!」 そして裏道に差し掛かった時だった。 真墨「テメェ・・・・何で俺のことを・・・まさかテメェもグリードか!?」 「・・・うふふふ・・・・そう・・・・貴方達とは前に一回会ったことがあったわね。自己紹介をするわ。私は・・・植物系グリードのカブキ!よろしくね、ファングの坊や・・・」 カブキの姿が黄色い光を放って怪人の姿へと変わっていった!!以前とは違い深紅のバラが頭部に開き、全身にまかれたイバラのトゲや左腕のホウセンカの形をした大砲、両足に怪しい光を放つビーム砲の役割を果たすキノコのような武器が装着され、完全体・・・いやそれをも超えた突然変異体となったカブキの姿を見て、その迫力に言葉を失う。 真墨「・・・・やるしかねえか!!」 その時だった! 蘭「あれ?おーい!!真墨―!!お前、何やってるんだよ―!」 なんと渡り廊下に蘭と茉莉が通りかかってしまったのだ!蘭は真墨に声をかける。すると、カブキが舌打ちして振りかえる。 蘭「な、なんだよ、こっちにも怪物がいる――――――――っ!?」 茉莉「ちょっ、シャレにならないって!!」 カブキ「・・・・怪物?うるさいわね、小娘はさっさと消えなさい!!」 カブキが手から電気の球を生み出して蘭たちへと向ける!! 真墨「なっ、や、やめろ―――――――――――――――っ!!!」 真墨が飛び出すと同時に電撃弾が発射される!!真墨が目にも止まらない速さで駆けだす!!そして電撃弾が着弾し、周囲がまぶしく光り、爆発が起きた!! そして、黒煙がはれると、そこには、爆発した通路から少し離れた場所に座りこんだ蘭と茉莉の姿があった。二人とも、爆撃の直撃は免れたらしいが、衝撃で吹き飛ばされて身体が痛みで思うように動けない。しかし、爆撃された通路には・・・! 茉莉「・・・さ・・・暁・・・・・い・・・いやああああああああああああああ!!」 蘭「真墨――――――――――――――っ!!!」 爆撃の直撃を受けて、衣装がボロボロになり、黒こげとなった真墨が全身から煙を上げて倒れていた。茉莉と蘭を助けるために弾き飛ばして、自分が電撃を受けてしまったのだ!! 茉莉「う、嘘だ、真墨!真墨――!!真墨!!死んじゃヤダ、ヤダ、ヤダ――――――――ッ!!!真墨!!真墨――――――――!!」 茉莉が泣き叫んで真墨に駆け寄り必死で声をかけるが、真墨は苦しそうに口から血を吐き出し、悶え苦しんでいた。電撃で身体がマヒして思うように言葉も発せず、動くことさえかなわない。茉莉の顔色が青くなり、いつものクールな彼女とは思えないほどに冷静さを失っていた。 カブキ「・・・ふん、バカな男。正義の味方気取って自分から電撃を浴びるなんて。女装して皆のことを騙してどうせもてあそぶか情報収集に利用していただけでしょうに・・・。こういう自分の命をも顧みないで他人を助けても、自分が死んだら意味がないじゃない。所詮はその程度・・・かしら」 カブキが嘲り笑って、倒れている真墨をぐりぐりと踏みつける。真墨は苦しそうにうめきながら口から血を吐きだし、マヒして動けなくなった身体を必死で動かそうとする。そんな真墨を痛めつけるように、歪んだ笑みを浮かべながら足にさらに力を入れる。 茉莉「・・・・黙れよ、あんたなんかに何が分かるのさ。こいつはいつだって誰かのことを守るのに一生懸命で、優しすぎるくらい優しくて、真面目で頭堅くて融通きかなくて、それでも、心から本当の気持ちをいつもさらけだしてくれる、大事な友達なんだ。あんたなんかが・・・笑うな・・・バカにするな・・・!」 涙があふれて止まらない。悔しい。自分が大好きな人が自分を守って傷つき、そしてバカにされて笑われた。今まで感じたことのない激しい怒りが爆発した。 蘭「茉莉・・・」 茉莉「・・・よくも暁を・・・・・許さない―――――――――っ!!変身―――――――――――――――――――――っ!!!」 茉莉がテティスドライバーを召還して蘭とカブキの目の前で、仮面ライダーテティスに変身する!!蘭は目の前で変身した茉莉の姿を見て、驚いて言葉を失う。 蘭「ま・・・茉莉が・・・・仮面の騎士・・・・!?」 カブキ「へえ」 テティス「うわあああああああああああああああああ!!くらえ―――――――――――――――――っ!!!」 テティスが槍を地面に突き刺すと空中に魔法陣が浮かび、そこから無数の黄金の剣や槍、武器が現れる。その切っ先が全てカブキに向けられて、発射の体勢を整える!! テティス「・・・串刺しにしてやる・・・・!!くらえええええええええええええええええええええええええええっ!!」 合図とともに無数の剣が雨のように打ち出され、カブキに向かって発射される!!蘭がとっさに真墨の身体を校舎の陰まで引っ張って隠れる。それと同時に剣の雨が降り注ぎ、突き刺すと同時に次々と爆発が起きてカブキがいる中庭を容赦なく吹き飛ばし、破壊していく!!爆風と衝撃で校舎が揺れて、パニックと化す校舎。そして、蘭が真墨を寝かせて常備している包帯を取り出す! 蘭「とりあえず、応急手当てしないと・・・!!真墨、いったん服脱がすよ!!」 そう言って、蘭が真墨の服をはだけた・・・。 そして胸元を見て、言葉を失い、驚きで座りこんだ。 蘭「・・・・・・・・・・・・・・え?真墨・・・・・胸・・・・・ない?これ・・・・男の人の・・・・・・・身体・・・・・?嘘・・・だろ・・・・?」 茉莉の変身、そして真墨の正体・・・あまりにも衝撃的なことが続いて起きて、頭の中が真っ白になり、考えがまとまらない。 蘭「・・・・どうなってるんだよ・・・・何がどうなってるんだよ!!!」 蘭の絶叫は混乱にかき消されて、誰にも聞こえることはなかった。 続く |
鴎
2014年10月04日(土) 19時46分10秒 公開 ■この作品の著作権は鴎さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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遅くなりましたけど、新しい話への感想です。 蒼真(アスレイ) 「その前に感想返信への返信だ」 暁(アスレイ) 「……真墨……色々と憐れな……」 翠(アスレイ) 「っていうかやり過ぎだって!! 【ワルキューレ】の僕も何やっているのさ!!?」 クリス(アスレイ) 「お仕置きにしても更に女性に対してのトラウマを強くしてしまうだけでしょう!!?」 優子(アスレイ) 「いくらなんでもそっちの暁君が可哀相だわ!!」 クロキバT世 「……薔薇道を歩む事になっても知らんぞ……」 礼(アスレイ) 「ってそれはヤバイから!!」 雪奈 「……恋愛について、本当に真墨さんことそっちの暁君は奥手ですね…(苦笑) ……とりあえず、そちらの翠ちゃんの言う通り落ち着いて。自分の恋心について、ゆっくりでも良く考えていけばいいと思いますよ。……こっちの暁君は鈍感過ぎますけど……」 クリス(アスレイ) 「……ですね……」 優子(アスレイ) 「……そうね……」 大変でしょうけど、どうか頑張ってください! 真夜(アスレイ) 「それでは、改めて新たに更新された話への感想〜♪」 ヒルデ(アスレイ) 「文月祭というお祭りの時期になった学園。そんな中で色々とグリード関係及び未だにある邪神関係の騒動が関わってくる事に……」 暁(アスレイ) 「蘭さんにとうとう真墨の正体がばれちまった事や、霧子さんが『ディオネ』の変身者って事が分かった事。磯貝が“グリード”の一人だと分かった事など色々と多いもんだ(苦笑)」 翠(アスレイ) 「蘭さんにばれたのはカブキの奴から彼女を庇って大怪我を負ってしまい、蘭さんがあっちの兄さんの手当てをしようとした為だけどね」 クリス(アスレイ) 「状況的に仕方のない事とはいえ、蘭さんにとっては色々と状況的に混乱してしまいますよね……。更に茉莉さんが真墨さんを傷つけられた上に怒って『テティス』に変身! ……彼女の混乱状況を納められるのは誰でしょう?」 イージス 「状況的に言えば、意識を取り戻した真墨ことあちらの暁殿になるだろうがな」 その可能性が高そうですな。……しっかし、朱美嬢ことキールは何をしているのやら……。自身が楽しむ為に色々と学園の催し物に関わりまくっているって……; 百合好きもとんでもないレベル……; 星(アスレイ) 「それにしても、真墨の奴が自身に色々と不幸な目にあって文月祭の準備をポイコットしてしまった際、偶然見てしまった磯貝嬢が誰かに電話をしているところだが……“グリード”として蘇った彼女には、誰か身内でもいるのか? 話の内容からして病院からの連絡のようだったけど……」 ヒルデ(アスレイ) 「……もしかしたら……磯貝さんがギャンブラーをやっている理由と関係があるのかもしれませんね」 アベルさんもそうでしたけど、“グリード”とはいえど元々は人間だったそうですからね。過去に何かあってもおかしくないでしょう。 蒼真(アスレイ) 「それはそうと、霧子嬢だが……『神代 聖』に育てられた過去を持っていると言うところから色々と感じさせられるわけだが……」 真夜(アスレイ) 「……あるライトノベルの登場キャラクターの台詞にありましたけど……“真に平和な世界は荒野のような状況”であると……それを霧子さんは実行しようとしているのでしょうか?」 要するに、どの様な動植物も存在しない荒野な様な状況こそ、争いも起こる事がない静寂で平和な状況という事になるという……。単に面白味の無い悲しい世界と言うことですな。霧子さんは孤独な世界をお望みなのでしょうか? 礼(アスレイ) 「その辺がわからんから何とも言えん。……しかし、かの《真田十勇士》の遺品から“ヤミー”として生み出された存在の第一号として登場したのが『由利カマノスケ』。風の忍ということもあって風を操り、それを主力とした戦法を得意としているか。“ヤミー”としての姿が鳥人『ハルピュイア』の姿をベースとしていると言うのも納得がいくな」 明久(電王) 「なお、真田十勇士のカマノスケさんは槍の名手だったという話だよ」 シャナツネ 「しっかし、何故にカマノスケという人物であった者が、超高校生級の日本舞踊家である『風祭 さくら』という人物になっていたんだ? 経歴もあるようだし、何故?」 モモタロス(明) 「……まさかと思うが……カマノスケって奴の魂がその風祭って嬢ちゃんに憑依して“ヤミー”化しているんじゃねえか!?」 雪奈 「……その可能性が高そうで怖いですね。……でも、どの可能性が高そうで怖い……」 カグヤ 「本当にどうなっているのやら……。後、『ハルピュイアヤミー』は幻獣系“グリード”である『ゼロ』の部下のはず。それがカブキに協力をしているのはどうして……」 ギュゼルこと真さんが翠(W)に何を話したのかってところも気になりますけどね。『ワルキューレ』の新しい姿に関わる事である可能性が高いですけど。 それでは、感想は以上です。 一同 『今後も忙しいでしょうけど、どうか頑張って面白い話を書いていってください!!』 〜……時と次元を越え……己の限界すらも超えて、推して参る!!〜 |
30点 | 烈 | ■2014-10-06 07:13:15 | i121-118-209-14.s10.a044.ap.plala.or.jp |
合計 | 30点 |