2009年10月27日(火) 23時36分45秒,20091027233645,20091030233645,49UsIFyaau7xE,仮面ライダーintertwine 第1章 エピローグ5「終わりの始まり」,オリジナルライダー・リレー企画,,,
作:プラスマイナス
PM 19:35 住宅街
比良埼 藍と別れた草加 雅菜は、彼女や先の男子生徒(一之瀬 裕輔)のように夜道を出歩いている生徒がいないかと帰路に着きながら見回りをしていた。
好奇心からなのか、それとも自分のように何か事情があるのか、想像以上に夜の街を出歩いている生徒は多いようだ。
そんな中、雅菜は知った顔に出会った。
「神宮寺さん!!」
「草加会長!?」
雅菜が夜道で出会ったのは、ボード学園の制服を着た少女だった。
左の袖には『ボード学園生徒会』と書かれた腕章をしており、彼女が雅菜と同じ生徒会のメンバーだと一目で理解できる。
尤もボード学園で彼女を知らぬ人間は殆どいない。それほど彼女は有名だった。
神宮寺 千夏
ボード学園生徒会の副会長を務める高等部2年生の少女。
真面目で規律正しく少々口うるさい部分もあるが、同時に世話好きでもあるので生徒たちからの人気も高かった。
当然、会長を務める雅菜ともほぼ毎日会っている。だが学外で会うのは意外にもこれが初めてだった。しかも夜道で。
「神宮寺さん、こんな時間に一体何をしているの?」
「ああ、実はね…」
千夏の話を聞いたところ、どうやら千夏は華枝が行方不明になった事件以来、自主的に夜間の見回りをしていたらしい。
案の定、彼女の不安は的中し行方不明事件や怪物騒ぎが起こったというわけだ。
「そ、そんな話は初耳よ!?」
「あくまで個人的にやっている事だし…でも生徒会の腕章をしたままというのは職権の乱用よね、すぐに外すわ」
「いや、そういう事じゃなくて…神宮寺さんも危険よ、早く帰りなさい」
「大丈夫よ。護身用に…これを持ってるから」
そういうと千夏は警棒とスタンガンを取り出すが、雅菜はそれでも納得はしない。
(こんな物で怪人なんかに対抗できるわけない)
雅菜はそう思い、見回りを続けようとする千夏を引き止める。
彼女は現在この街で起こっている事件の真相を知らない普通の学生。危険な場所からはなるべく離れたほうが良いに決まっている。
しかし、それはあくまで雅菜の見解だが…
「と、とにかく。今晩は神宮寺さんも家に帰って。いいわね」
「わかったわよ。でも何そんなに焦ってるの?」
千夏は雅菜の態度を不審に思うように帰路に着き、雅菜もそれを見送ると自身も帰路に着くのだった。
「ふぅ、まさかこんな所で草加会長に会うなんて…本当に何かあったの?」
雅菜と別れてから千夏は人目を避けた場所にいた。
見回りをしていたのは本当だ。しかし彼女の目的はそれだけでは無い。
“ボード学園生徒会・副会長”としての神宮寺 千夏ではなく“一ノ宮財閥暗部・七つの大罪”としての神宮寺 千夏が“今の”彼女だ。
敬愛する一ノ宮 薫子からの密命を受け、街の様子を探っていたのである。
「何かあったと考えるべきよね。一応連絡しておくか…」
そう言うと彼女は懐から携帯電話を取り出し、街に潜入している実働部隊に連絡を入れた。
場所不明 時刻不明
謎の液体で満たされた巨大なシリンダー。
意味不明の数式が書き殴られた天井、壁、床。
日本語や英語、フランス語など多くの文字で書かれた書類が乱雑に散らばっている。
それ以外にも計器が様々な情報を知らせている。
そんな部屋にいるのはただ一人。
漆黒の服装に身を包んだ容姿端麗な美女だった。
美しい金色の長髪にモデル顔負けの長身に顔立ち。しかし表情は暗く、それがすべてを台無しにしているように感じられた。
瞳は虚ろで濃い隈が出来ており、顔色も良いとは言いがたい。
女の名はアリス。
人は彼女を“狂気の魔女”とも“史上最悪の天才”とも呼ぶ。
しかし彼女はそれを知らない。知ろうともしない。関心もない。興味もない。
他人のことなどどうでもよい。
彼女の目的はたった一つ。
己の研究の完成
それだけだった。
「くそっ…何故なの!何が間違っているというの!?」
アリスは何かの薬品の調合をしていたが、どうやら失敗したようだ。
そのまま薬品を無造作に投げ捨てると、小規模ながら爆発が起こった。しかしアリスはそれすら気にも留めない。
壁に書き殴られた数式の上にさらに新しい数式を書き出す。
壁には既に何重にも数式が書かれており、どれが新しい数式なのか常人には理解できないだろう。だが、アリスはそれらを全て判別し同時に理解している。
この行為だけでもアリスが途方もない頭脳の持ち主であると、想像に難くない。
「ちっ…」
アリスは苦々しく舌打ちをすると、数式を書くのを止めて書類棚へと歩を進める。
書類棚には乱雑にファイルや資料が突っ込んであり、整理整頓とはほぼ無縁の様子だ。
アリスはその書類棚に手を突っ込むと、次々と資料を引っ張り出す。時折タイトルを確認するが基本的には出しては放り、出しては放りを繰り返す。
「…………………これだ」
目的の物を見つけたのか、アリスは散らかり放題の書類棚をほったらかしにしたまま、手にしたファイルに目を向ける。
しばらく読み続けると、突如思いついたように部屋を出た。
広い廊下
研究室を見た限りではわからなかったが、そこはかなり大きな屋敷だった。
散らかった研究室とは対照的に廊下は塵一つ見つからないほど綺麗だ。いや、研究室以外は綺麗といった方がわかりやすいだろう。
アリスがファイルを読んだまま廊下を歩いていると、執事のように燕尾服を着た青年と出くわした。
青年はアリスを見つけると深々と頭を下げたが、逆にアリスは青年を見つけると苦々しい表情をする。
「…出かけるわ」
「では、お供いたします」
「ふざけないで!!お前たちがどうしようと勝手だけど私の邪魔をしないで!!」
今までの無感情さが嘘のように激昂するアリス。
だが青年はただ言われるがまま、頭を下げ続ける。
「承知いたしました。では、いってらっしゃいませ」
「……………」
アリスは無言のままその場を後にした。
青年はアリスが視界から消えるまで頭を下げ続け、アリスが完全に見えなくなるとようやく頭を上げる。
すると、いつの間にか青年の周りには四人の男女が現れていた。
「ちっ!言いたい放題だな。むかつくぜ」
「まぁ落ち着きなさい。アリス様は焦っているのよ」
「アリスさまはおこってるの?」
「…………」
上から
ボサボサの赤毛をしたボーイッシュな少女。
チャイナドレスを着た黒の長髪をした妖艶な女性。
ゴスロリ風の服装をした金のツインテールの少女。
フードを目深に被り右目に眼帯をした隻眼の少年。
「それで?本当にアリス様お一人で行かせるつもりなの?」
「まさか。お供するに決まっている」
チャイナドレスの女性が艶かしい笑みを浮かべながら執事風の青年に問う。
しかし青年は決まりきった事を口にするように言い放った。
それを聞いた女性は再び微笑を浮かべる。
「ねぇ?それ私に任せてくれない?」
「……いいだろう」
「ありがと。で?アリス様の行き先は?」
「例の街。“時雨養護施設”だ」
「そう」
そのまま女性はアリスの後を追うように去っていった。
「…………」
その後をさらに眼帯の少年が続く。
「…って、オイ!!何でオカルトまで!?」
「あたしもいきたい〜」
赤毛の少女とゴスロリの少女がブーブーと文句を言うが、青年はまったく気にしていない。
「我らは留守番だ。それとプテラ」
「あん?何かよ…ってイテェ!!!」
ふいに青年がプテラと呼ばれた少女の右腕を掴むと、彼女は絶叫と共に苦痛に顔を歪めた。実はプテラはシキとの戦いの怪我を隠していたのだ。
「これくらいだいじょ…イテ!!イテ!!イテェよ!!!!」
「なら早く治療しろ。すぐにだ」
「ちりょうしろよ〜」
そう言うと痛みに喚くプテラを置いて青年と少女は、サッサとその場を後にした。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
残されたのは激痛に苦しむプテラだけだった。
時刻不明 街の地下深く
街には古い都市伝説があった。
街の地下に地下鉄やライフラインとは異なる謎の空洞や道が存在する、という噂。
実際に記録にない地下道は確かに存在した。しかしその上に暮らす殆どの人間は、それを知らない。
それが特に害になるわけでもなく、謎の地下道や空洞はただ存在しているだけだからだ。
しかし…
そこは誰にも知られること無く恐怖の巣窟へと変貌を遂げ、今や異形の怪物たちが蠢く魔境と化している。
そして最深部にて静かに、絶望が時を待っている。
終わりの始まりを…
『…レ…ガモト…ハ…ラ……チ………ワ…ラ…ノゾム…マコ…ノ…カイ…』
,プラスマイナスです。
遂にアリスとカンケルが登場。
カンケルは台詞だけですが。
そしてアリスは時雨養護施設へ向かいます。これは次章への布石で、アリスは己の研究完成の為に“ある研究”を狙っています。
次章から各勢力がだいぶ荒れてくるので、他の勢力にも大きく影響する…のか?
第2章もかんばりましょう。,#000000,./bg_h.gif,p4124-ipbf2008hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp,0
2009年10月30日(金) 23時51分51秒,20091027215803,20091102235151,5iRAXl0gCLTds,仮面ライダーintertwine 第1章 エピローグ4『影達の会議/妹を背負い』,オリジナルライダー・リレー企画,,,『サイショ作』
PM 0:00 場所不明
その円卓には影がいくつもあった。
六つの席に座る影、その中心の大きな席に座る小さな影。その周りに二つの影。
そんな中。一人の影がポソリと呟いた。
その席は緑色で影は少し陽気そうにしながら手元にある資料を手にする。
「で、結局のところ……。僕達が利用する組織はいまだ決まって無い。てことかな? それってさ」
意味無いじゃん、この会議。
そう楽しそうに呟き手にしていた資料を何処からか呼んだ風でズタズタに引き裂いた。
「まぁそう騒ぐな『天風将』。まだ連中の本質がわからねぇんだ。迂闊に動くわけにもいかないだろ」
「確かに、この『震陸将』も現状維持が好ましいと思いますぞ」
そう言い老人と男性、いや驚は笑う。
ニュアンスは全然違いのにその笑いは明らかに若輩者である天風将を馬鹿にしている笑いだった。
「だまりなよ『烈焔将』。僕になにかを言っていいのは姫と『鏡雹将』姉だけだよ? 次喋ったら、お前ズタズタに切り刻むから」
笑い声が止まった。
だが直ぐに驚から再び笑い声が聞こえた。最も先ほどとは違いそこには怒りが混じっている。
目の前のフザケタ事を抜かす糞餓鬼を焼きつくそうと言わないばかりの殺意をその場にいるものは全員感じた。
最も全員特に気にしている様子は無いわけだが。
暫くして、大きな席の横に立っていた影。冥矢が前に立つ。
そろそろ会議を終わらせるために最終確認をするためだ。
「……御託は終わりか? なら続けさせてもらう。まず今回共闘する組織を見送ったのは三つ理由がある。一つは」
「単純にその組織の目的が不明確すぎる……からね。フリーディア」
言おうとした冥矢だったが水色の席に座っている影『鏡雹将』に遮られてしまう。
まぁ、フォローとしてはいいか。と判断し彼はさらに次を読む。
「その通りだ、次に」
「貴方とお姫様がとある人物達に関与をしたため。ですよねフリーディア様」
今度は白い席、『閃煌将』に妨害されるように遮られる。
少し苛立ちを覚えるが何とか堪え冥矢は更に続きを読むことにした。
「……あぁ、最後に……」
「最高位様からの命令が無いから……違う? フリーディア様」
最後に黒い席、『絶冥将』が呟き冥矢を見る……。
もう冥矢は手にしていた書類を握りつぶすことしかしていなかった。
「……お前ら、私をおちょくっているのか?」
気がつけば口元が引きつっていた。
怒る一歩手前なのは言うまでもないだろう。
「「「違います(う)」」」
「…………はぁ、とにかく。現状維持という事は分かったはずだ。不用意に他の組織へコンタクトをしないように各自行動。それでいいな?」
実のところ女性の姿をしている人物が苦手な冥矢は深くため息を履いた。
そして暫くして顔を上げ……周りを囲んでいる六人に確認をとることにした。
「おう、了解だ」
「うむ、問題は無かろうて」
「はいはーい」
「えぇ、問題無いですわね」
「此方も了承です」
「もーまんたい……」
約数名ほど割と適当だったが確認は取れたと判断し冥矢はその姿を変える。
ギルティ以上に黒い鎧、バイザーからは紅く鋭い光が輝く。
それが、ネームレス・ソードブレイダーである時の彼の姿だった。
「では……最後に、『我らが望みは唯この世界に存在す事だけ。故に我らが悲願を邪魔するものは……』」
『「「「「「「最上位の名のもとに消すことを許される」」」」」」』
七人の声が一斉に重なる。
それと同時に円卓となっていた机と六つの席が消え失せ、後にはソードブレイダーと少女そしてメッセンジャーだけとなった。
すると少女……シンガーがソードブレイダーから冥矢としての姿に戻った彼の手を引っ張る。
それに気付いた冥矢は先ほどとは打って変わってどこかやさしそうな表情で膝を折った後シンガーの頭を優しくなでた。
「大丈夫だ、お前が気に入った男とその妹は襲わないように言っておいた。ただ……」
それだけを言うと一息を履いて何処か、シンガーに見えないようにそして聞こえないように、まるで汚らわしい物を見つけたような眼と声で呟く。
「そいつ等の周りにいる魔女……そしてその取り巻きは潰すがな。アレ等の行為は我らが悲願の成就達成を妨げる障害でしかない」
最後に……と、冥矢が言いかけたところでシンガーは再び冥矢の腕を引っ張った。
再び引っ張られた為、何事かとシンガーを見ると。どこか悲しそうな顔をしていたので冥矢は再び優しく微笑む。
「……何度も言うが大丈夫だ。私も六将もそして全てのネームレスも必要最低限、生きる為以外には人間を狙わない。私が嘘をついた事があるか?」
「……」
フルフルっと首を横に振るシンガーを見て冥矢は満足そうに頷き立ち上がる。
そしてそばにいたメッセンジャーに後を任せたと言いその場を後にした。
「…………」
「分かっています。また後日あの人間と会いたいのですね?」
コクリとうなづくシンガー。
それを見たメッセンジャーは男性が見れば間違いなく魅了されそうな妖艶でありながら優しさを感じさせる笑みを浮かべる。
「えぇ、貴方様の為ならばどの様な命でも承ります。ブレイダー様には悪いですが……また破らさせていただきましょう。禁則を」
「…………」
不安そうにするシンガー。
恐らく怒られるのが嫌なのだろう、だがメッセンジャーはそんな彼女の不安を打ち消すようにシンガーの頭を優しくなでる。
「大丈夫です。ああは言いながらも貴方様が怪我をなさらない限りは許してくださるでしょう。以外と甘いのですよ、ブレイダー様は」
「……!」
「えぇ、それでは後日。また外に行きましょうねシンガー様」
嬉しそうにするシンガーを見ながらメッセンジャーは答える。
それを知るのは……物言わぬ椅子だけだったのはもはや語るまでもないだろう。
PM 21:00
彼、晃輝は割と疲れていた。
戦いでの疲れは比較的早く取れたのだが、その疲れに続いて、
妹を保護していた警官から事情聴取をされたのだ。
とはいえど中学生は割と家出をしやすい年、次から妹の事をよく見ておいてくださいね。といわれてその場は終わった。
とはいえど割と長い説教を言われていたのでここまで遅れたのだ。
「……たく、心配させるな」
はぁ、とため息を履いて晃輝はスヤスヤと眠っている妹を負んぶしている。
あの後、晃輝は再度列と連絡を取ったところどうやら列も妹を見つけたらしい。そう知ってやっと肩の荷が下りた感じがする晃輝だった。
「それにしても……華枝ちゃんと同時に俺の妹も……事件確定か?」
最悪だなぁ、と呟く。
それは巻き込まれることに対してじゃない妹や友人が巻き込まれる事に対してだ。
別に彼自身は事件に巻き込まれても平気なのだ、なぜなら解決できる力があるから。
だけど妹や妹の友人、そして自分の友人は違う。だからもし自分の力が足りなくて誰かが傷ついたら……それは恐怖でしかない。
『ならば、あのライダーへと変身した女と共闘すればいいだろ?』
ズォっと影が蠢きギルファリアスへと姿を変える。
とはいっても晃輝以外には何も変わって無いように見えるだろう。それが普通なのだから。
「……明らかに初めて変身したような雰囲気だった。それに……俺一人で事件を解決したい」
『……巻き込まないためにか? 不可能だな』
ギルファリアスが笑う。
当然晃輝だってそれが理想だが不可能だとわかっている。
だから別段ギルファリアスに対して怒りは特に湧かなかった。
「だとしても、だ。もう、誰も傷つけたくないんだよ。誰かが傷つくところを見たくないんだよ」
『……好きにしろ。最もあの女は巻き込まれる事は避けられぬ運命。それならば……貴様がそばにいて様々なアドバイスをすればいいだけではないか?』
「……、ホント最悪だな。お前」
まるで転校生を道具のように言うギルファリアスに対して少し毒を吐く晃輝。
だがギルファリアスはクッと悪魔の顔をゆがませて笑う。
『褒めるな、闇を』
それだけを言うとギルファリアスは再び影に消えた。
後に残るのは少しくらい表情の晃輝とやはりまだ寝ている妹の命李。
「闇……か、何で俺は選ばれたんだ? お前に」
返事は無い。
それはお前が気にする必要は無いと遠回しに言っていた。
だからなおさら晃輝は苛立ちを覚える。
「……気にするな、ってか? なおさらムカツクな」
返事は無い。
「ならいい、俺は俺の好きなようにやるだけだ」
返事は無い。
晃輝は暫く返事を待つが返事が来ないとわかると溜息を再び吐いた。
「まっ、これからもよろしくな。相棒」
『……あぁ、頼むぞ主』
帰ってきた返事にこたえることも無く、晃輝はまっすぐと我が家へと向かう事にするのだった。
,すみません、少し投稿が遅れました。
いやぁ……仕事仲間がインフルエンザにかかってその分自分が働く羽目になって……帰った後すぐに寝ちゃうのが続いてて……
こんなにも遅れました。
まぁ、それはさておいて。
それでは次の方どうぞ。
,#000000,,perseus.aitai.ne.jp,1
2009年10月20日(火) 22時03分42秒,20091020220342,20091023220342,3UMmYofc/8bqM,仮面ライダーintertwine 第1章エピローグ3「彼女の秘密」,オリジナルライダー・リレー企画,,,執筆者・ユルカ
深夜・EASE―
一つの机を挟んで、二人の女性が向かって話している。
エウリュディケとソフォクレス(豊桜 冥)だ。
「人間社会というのも、学んでみると楽しいものだろ? ソフォクレス」
「はい、そうですね……」
エウリュディケはソフォクレスに対して疑心を抱いていた。
先程からソフォクレスは何度も目線を外している。
「何か言いたげだね? ソフォクレス」
その言葉で安心したのか……
「はい。シグマについて……質問が」
一度自分の言葉を区切って、ソフォクレスは質問した。
同時刻・Dr.レッドリリーのアジト―
こちらでは、椅子に座る仮面の女性・Dr.レッドリリーと、
その靴をきれいに磨き上げているオブディアの姿があった。
「申し訳ありません、ドクター」
「過ぎたことはしょうがないわ。俄然興味が沸いて来たけどねぇ……」
「ドクター、奴について聞いてもよろしいでしょうか?」
靴を磨き終えたオブディアが、レモンティーを注ぎながら聞く。
「奴……変身した少女のことね」
「その通りです」
ここでオブディアは一呼吸置いた。
そして、一番聞きたかったことを聞いた。
「「彼女が他のライダーと違うというのはどういうことなのでしょうか?」」
EASE―
「確かに彼女は普通ではない。ライダーとして保有する能力以上に大変な力がある」
「大変な……力?」
「神と同等かそれすら超えてしまう力だ」
「創造だよ。あらゆる物を創造できる力。命すらもね」
「命までも!?」
答えに驚愕するソフォクレス。
「……そう。それこそ万人が得ることのできない『無限』の能力さ」
その時、ソフォクレスは思った。
この人はなぜ、そこまで知っているのにも関わらず、
すぐに動き出そうとしないのだろうか……と。
Dr.レッドリリーのアジト―
「彼女のデータだけを送られてきたときは最初誰だかわからなかったわ。けど、側にいた少年の顔で繋がった」
「少年……?」
「あの少年は……私の弟よ。義理ではなく実のね」
「え!?」
珍しくも、オブディアが叫んだ。
「私だって、木の股から生まれたわけではないわ」
「し、失礼しました。ドクター」
「説明を続けるわ」
レモンティーを飲みながらDr.レッドリリーは話を続ける。
「そうなると、彼女はあなたと関係のある人物になる」
「なんですって?」
「彼女はオブディア、あなたの姉に当たるのよ」
「ば、バカな!?」
先程よりさらに大きな声でオブディアは叫んでしまった。
「バカな事ではないわ」
Dr.レッドリリーは仮面を外し、妖しく微笑んだ。
「彼女も、私が作り出した存在なのよ」
Dr.レッドリリー……その素顔は……
志熊 京が「先生」と呼ぶ人物……
キール・B・時雨に瓜二つだった…………。
,遅れて申し訳ありませんでした。
まさか、ワクチン接種の前に季節性にかかるとは思ってもみなくて……。
つぎはもう、ちゃっちゃとやることにします。
いや、今回のことで懲りたので……。,#000000,./bg_a.gif,210-172-26-11.cust.bit-drive.ne.jp,0
2009年10月20日(火) 04時40分55秒,20091020044055,20091023044055,3hUwopqJpz/Do,仮面ライダーバルキリーたん 第28話「The buster steals up it」,鴎,,,「The buster steals up it」
Vライナー ラウンジ
電磁研究所の激戦を辛うじて乗り越え、追ってから無事逃げのびた慧たちはVライナーに乗り込み時の砂漠を駆け抜けていた。
しかし・・・列車全体はもはやズタボロの状態であり、所々に応急手当てで取り付けたツギハギだらけといった痛々しい姿となっていた。
線路を走るたびに風が車内に隙間から入り込み、スゥースゥーではなく、ビュンビュンと容赦なく吹きつけるため、車内のものがその度に倒れ崩れる。
まあ、車内も味方による斬撃と誤射による被害で天井や床、壁は穴だらけだわ、室内のソファやテーブルはそこら中になぎ倒され、穴があいていたり、脚が折れていたりと無残な姿をさらしているので、もはや何か倒れても気にしない方が精神的にも負担が少ないと判断されてしまうほどの凄惨っぷりであった。
琥珀「この後の片付け考えるとセブンズヘブンの相手の方がまだ楽かもしれないよ」
アメジスト「全く敵に翻弄されたとはいえ、ここまで派手にやってくれるなんて・・つくづく貴方達のバカさ加減には驚かされるわ」
エメラルド・サファイア「「いやあ、それほどでも・・・あるのだよ」」
そしてその元凶たるエメラルドとサファイアは乾いた笑みを浮かべるが、もはや突っ込む相手もなく、冷たい風が吹き荒れる。室内が白けた空気で無味乾燥とした世界となる。
トパーズ「笑っているあたり、いつかまた同じようなことをやらかすな」
ルーベット「全く・・・一歩間違えたら強制下車ものだぞ。少しは自重しろっ!」
エメラルド・サファイア「「・・・ごめんなしゃい」」
そういって、二人は正座してガックリと頭をうなだれる。
首に札をかけており、「あたしはバカです」とエメラルド、「私は色情魔です」とサファイアの首からかかっている札には反省文が書いてあった。反省文というよりも罰ゲームのようである。
琥珀「・・・それで?慧は慧であの状態か?」
琥珀が静かに指差す先には、全身の到る所に包帯を巻き、絆創膏を貼りつけ、青あざや擦り傷、痛々しくはれ上がった傷口が無残に刻みつけられた慧がいた。
しかし、慧の様子がおかしい。
まず、艶やかな黒髪のロングヘアはボロボロに乱れており、瞳は光を映さないうつろな闇が広がり、膝を抱えてブツブツと何かつぶやいているような状態であった。
着ていた服はまるでちぎられたかのように所々破けて肢体がむき出しになっている部分もあり、左腕の袖は完全に肩からなくなり、むき出しになった左腕には何か噛みつかれたような歯形がついていたり、引っ掻かれた爪の痕があったりしている。
慧「・・・・・ワニ・・・・ピラニア・・・・サル・・・・ヒル・・・・あ・・・ああああああああ・・・・・アスモデウス・・・・・!!!!!ああああああああああああああああああああああああ!!!」
トパーズ「アスモデウスから逃げている途中で川に二人揃って崖から転落して落ちた場所がピラニアやワニの巣のど真ん中だったらしくてな・・・・」
ルーベット「二人とも、ピラニアやワニに衣服かじられまくって、慧殿は必死で泳いでいたのですが、あの色情魔が抱きついてくるから上手く泳げなくてようやく必死で岸にたどり着いたかと思えば・・・」
エメラルド「サルの集団に襲われて木の実やら、石やら、投げつけられてフラフラになって洞穴に落っこちたら・・・」
サファイア「そこが吸血ヒルやら毒蜘蛛やら軍隊蟻とかいう女の子が見たら悲鳴上げるであろう気持ち悪い生き物の巣だったらしくて、頭から被っちゃって・・・」
琥珀「最終的にはパニック状態になって森中走りまくって転んだりぶつけたりして、怪我だらけになったってわけね・・・」
アメジスト「・・・・特異点・・・・どこまで堕ちて行くの、あんたの人生」
しかもそれが終始アスモデウスに胸をもまれ、お尻を触られ、頬ずりされ、耳を噛まれ、そこら中舐められまくっていたというから、もはや精神的ダメージなど破壊力抜群である。
慧「・・・・・真っ暗だ・・・・真っ暗だよ・・・ふふ・・・黒い太陽が・・・空一面広がってるよ・・・・赤黒い光が・・・・滲んで見えるよ・・・・」
ルーベット「・・・これでも大分回復したのですが・・・」
アメジスト「これで!?」
トパーズ「さっきまでは話も出来なかったぞ」
エメラルド「サファイアのセクハラで慣れているかと思ってたけどさ、やっぱり嫌だったんだろうね」
サファイア「それはあたしならOKってことかい?」
サファイアが嬉々として言うと、
全員「何でそうなるっ!!!!」
そう突っ込まれる。
そして、トパーズがアメジストが持ってきた緑色の光を放つ宝石をまじまじと見つめる。
そう、レヴィアタンの魂を現世につなぎ止めていた宝石のようなものであった。
トパーズ「しかし、この石一つであれだけの強い相手の命をつなぎとめていたとはな」
アメジスト「これがなくなった後、すぐさま骨になって消えてしまったわ」
エメラルド「これで蘇ったってことはさ・・・・」
ルーベット「誰かそのような事が出来る能力者がセブンズヘブンを操っているとみて間違いないでしょうな」
ルーベットの発言に慧もようやく意識を取り戻し、真剣な表情でうなづいて、残りの全員もその言葉の意味をかみしめる。
自分たちが新たに巻き込まれた「エニグマ」事件。
その背景にはセブンズヘブンをも動かせる強大な力を持っている能力者がいる。
そしてその敵の正体やセブンズヘブンのメンバーでさえもアスモデウスとレヴィアタンしか確認が取れていない状態であり、能力がどのようなものであるかとか、肝心なことが分からずじまいであった。
慧「とりあえず今はエニグマを潰すしかないしね。今自分が出来ること、それを全力で取り組もう」
傷だらけの顔で言っても説得力にいまいち欠けるのは置いといて。
彼女たちが目指しているのは・・「ハイドロニックカプセル」が保管されている地中海付近にある「海洋生命学研究所」が設けられている小島を目指していた。
Vライナーは間もなく目的地の研究所まで残り30qまでとなった。
慧たちは次の戦いに備えて準備を整えるべく、いったんラウンジを出ていく。
慧「やらなければいけないんだ。そうじゃないとみんなの大切な時間や記憶があと4日でなくなっちゃう…それだけは阻止しないと!!」
その時だった。
車内に警告音のような音が聞こえてきた。
発信源をたどってみると、それは運転席にあるSOS警報探知装置に入り込んできたSOS信号を受信した音であった。
画面を映し出すと、そこは何と自分たちが目指している海洋生命学研究所の中からだった。
サファイア「これって、生存者がいるってことかな」
トパーズ「おそらくな」
琥珀「助けを求める人々がいるってことだろうな」
アメジスト「この位置だとあたしたちの目的地からね」
ルーベット「生存者がいるのは間違いない」
エメラルド「じゃあそこまで助けにいくの?」
トパーズ「助けを求めている人々がいるとわかった以上、見過ごすわけにはいかん」
慧「・・・行ってみよう」
慧たちは決意を秘めた瞳を向け合い、うなづくと、Vライナーを目的地に向けて走らせる。
しかし、ラウンジの地下にある隠し部屋では・・・。
その様子を聞いていたアスモデウスの姿があった・・・。
アスモデウス(この様子だとマモンの姉さんの言ってた通りの展開になりそうだなぁ・・。あ〜、そしたらあたし、慧ちゃん切り刻めないのかなぁ?それだったら嫌だなぁ〜・・・誰か譲ってくれねぇかなぁ。第一、今の慧ちゃん相手にベルゼはやりすぎだぜぇ)
アスモデウスは未練たらしくトホホとため息をついた。
数時間前のことだ。
ワニやピラニアの巣に落っこちていたアスモデウスが、一緒に巻き込まれていた慧の行方を追って森中を走り回っていた時、持っていた通信機から連絡が入ったのだ。
それは新たなる作戦の展開であった。
アスモデウス「ええっ!?これからターミナルに攻め込むって・・・総動員で!?」
マモン「ああ、あいつらの戦力を調べつくした。もうあいつらを好き勝手に動かしておけばいい。その間に本丸を攻め込んで「デイライト」も分捕ってやる」
アスモデウス「あっ、やっぱりあたしたちが地方に散らばって警護にあたっていた仕事ってやっぱり時間稼ぎと戦力調査だったんだ。もう、マモンの姉さんひどいよ。これじゃまるでオトリみたいじゃないのよぅ」
アスモデウスがぷくっと頬を膨らませると、マモンのため息が聞こえてくる。
マモン「みたいじゃなくて、オトリだったんだ、バカタレ。いいか?じゃなきゃ切り込み隊長のお前を待機させたり、ベルフェやレヴィのような後方支援向きの奴等を前線に立たせるわけないだろ」
アスモデウス「ちぇっ・・・前々から知ってるけど、ホント、マモンの姉さんって頭いいけど性格最悪に意地悪よね・・・」
マモン「・・・ふん。レヴィのことに関しては俺の作戦ミスと奴の戦力不足が招いた事態だ。それについてはどうこう言うつもりはない。だが、今回の戦いを得て手に入れた情報をもとに今後の対策は打てる。それは信じてくれるか」
アスモデウス「・・・わーってるって」
マモンは7人の中でも一番頭がいいし、戦況に応じて様々な戦略を企てることに関しては天才的な知略を発揮する。その戦略と頭脳がなければセブンズヘブンはもっと早く全滅していたかもしれない。非情ともとれる仲間を犠牲にするかのような戦略も必ずと言っていいほど仲間が無事な形で助かるように裏打ちされた計略が入り混じっている戦略であり、一見目的のためなら仲間をも犠牲にするようなクールな言動が目立っているが、実は非情になりきれない甘さや優しさを秘めているのだ。
それを本人は嫌がっているようだったが、アスモデウスもルシファーもそんな彼女だから絶大なる信頼を置いているのだ。
アスモデウス「それじゃ、あたしはこのまま帰ればいいってこと?」
マモン「いや、お前は万が一の保険だ。バルキリーから目を離すな。近くにVライナーもある。そこに潜入して逐一情報を収集してこちら側に送ってくれ」
アスモデウス「おおっ!!マモンの姉さん、大好き〜♪性格と根性とことん性悪だけど、妹思いなところあるじゃんの〜♪」
マモン「俺の性格と根性の悪さは撤回しねぇのな。まあ、いい。お前はまず言われたとおり作戦を遂行しろ。頭カラなお前が考えたって時間の無駄だ」
そう言われてアスモデウスは軽快なスキップをしながら、Vライナーに戻ってきた。
そして、偶然にも見つけてしまったのだ。
アメジストがかつて忍び込んだ時に使った倉庫の壁に作っていた隠し扉を・・・。
アスモデウス「・・・隠し扉あったんだ」
そして、こっそり忍び込み、現在は慧を甚振りたいという欲望を必死で抑えて床下に潜んでいたのであった。
アスモデウス「兄さん・・・どうしてもあたし襲撃しちゃダメぇ?」
ルシファー「ああ。マモンの話だとあいつら、行動そのものが予測不可能らしくてな。情報は随時送ってきてくれだとよ」
アスモデウス「慧ちゃん襲うなら今がchanceなのに〜♪」
ルシファー「どうせテメェの片思いだろ。諦めな」
アスモデウス「ブーブー」
頬を膨らませながらもアスモデウスは倉庫に隠れて情報収集を続けていた・・・。
そして、数十分後・・・・。
Vライナーが地中海沿岸に差し掛かり、目的地の海洋生命学研究所がある小島へと到着した。
地中海に浮かぶ小島の洞窟から侵入すると、そこにある50mにも及ぶ巨大な縦穴があるのを確認し慧たちは驚きで目を見開く。
慧「こんなに広い穴の先に海洋生命学研究所があるのね・・」
ルーベット「かつては海賊の隠し財宝の宝物庫だったらしいですな」
アメジスト「なるほど・・・ちょっとそそられる話ね」
トパーズ「そして面白いことに、世界中の海流が流れ込んでくる不思議な海域がある。そこで世界中の海洋生物の研究をしていたということか」
エメラルド「さてと・・・どうやっていくの?歩いていくとかなり時間かかりそうだよ?」
するとそこに何やら光がともり、汽笛のような音が響き渡る。
その方に向かってみると、そこには作業用の地下鉄が置かれていた。
長い間使われていなかったらしい。車体全体に錆びが浮かんでおり、不気味な雰囲気を醸し出している。
慧「乗れってことかな・・・?」
ルーベット「十中八九ワナでしょうな」
セブンズヘブンの魔の手が及んでいないはずもない。
しかし、SOS信号が出ている以上、時間をかけるわけにもいかない。
トパーズ「慧、行くぞ」
トパーズが憑依し、金色のメッシュと瞳が光り輝きながら出現し、眼鏡をかけた知性的な顔立ちの慧となり乗り込んでいく。
慧が乗り込むと同時に電車がゆっくりと動き出し、線路を走りだした・・・。
それを見送るようにアスモデウスがふうっとため息をつく。
アスモデウス「はぁ・・・慧ちゃん、気をつけてね。というか、ベルゼなんかに殺されないでよね・・・でも・・・無理かな・・・ベルゼ・・・一番下っ端なのに・・・滅茶苦茶強いし・・・・・でもなぁ・・・」
電車の中は無人であった。無機質な車内の雰囲気はどこか底知れない冷たさを感じさせる。
その奥に進めば進むほど暗がりに潜んでいる闇に飲み込まれそうな感覚・・・。
慧が意を決してドアを開けた。
すると、そこにあるものを見つけて慧は目を見開く。
そして瞬時に身構えた。
それは人であった。
座席に腰を下ろし、新聞を読んでいるようだ。顔を隠しているから誰なのかは見えない。
慧が警戒していると、その人物がゆっくりと立ち上がり、新聞を折りたたんだ。
「・・・ハロ〜♪慧ちゃん、おひさ〜♪」
銀色のウェーブがかかったロングヘア、端正で可愛らしい顔立ち、吸い込まれそうな赤い瞳、濡れた唇、透き通るような白い肌をゴスロリドレスに包んでいる美少女・・・。
その姿に慧は見覚えがあった。
慧「・・・・真姫さん!?」
そう、そこにいたのは神代真姫・・・クイーンであった。
驚きを隠せず慌てふためく慧とは対象的に真姫は何故か不敵な笑みを浮かべている。
そしてその瞳には禍々しい赤い光が宿っていた。
慧「ど、どうして、こんなところに!?ここは・・・過去の世界なのに!!」
クイーン「どうしてぇ?・・・そうね・・・・古典的だけど・・・・言うなればぁ・・・・あんたを殺しにきた。OK?」
慧「えっ・・・・何ですって!?」
慧が一瞬何を言っているのかわけがわからない様子で聞き返す。
しかし真姫は狂ったようにゆがんだ笑みを浮かべて、腰に巻きつけていたワイバーンベルトにクイーンのデバイスを埋め込む。
クイーン「変身」
そして、赤い光がベルトから解放され全身を取り巻くと、見る見る始祖鳥を模したフォルムの仮面とアーマーが全身に装着され、仮面ライダーワイバーン・クイーンフォームに変身を遂げる!!
慧「なっ・・・・」
トパーズ「こ、これはどういうことだっ!?」
ルーベット「私たち以外にもライダーがいたのですかっ!?」
サファイア「聞いてないよ、つーか、反則でしょっ!!」
エメラルド「これ、ヤバすぎるって!!」
琥珀「くそっ、トパーズ!!全員集合でいくぞ!!」
そういって、全員が飛び出していった。
その様子を見ていたアスモデウスが興味深そうに窺っていた。
アスモデウス「マモンの姉さんの仕業だな・・」
さて、どうなりますやら。
そう呟いて、アスモデウスはアメジストが勝手に作った簡易式ベットを組み立てると寝転がり、次第に意識を遠のかせていった・・。
アスモデウス(まさか拉致ったチェックメイトフォーの3人にレヴィの毒与えていたから何をするのかと思いきや・・・こういうことか)
Qワイバーン「あっはっはあはははははっ!!!」
クイーンフォームが繰り出すクイーンボウガンから発射する無数の銃弾は狭い車内では避けきれない。それをアックスではじき返しながら応戦を試みるアックスフォーム。
刃が矢を弾き飛ばし、車体の壁や床に突き刺さっていく。
しかし次第に追い詰められていた。
Aバルキリー「くそっ・・・」
Qワイバーン「あっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!どぉしたのぉ?!反撃してもいいのよぅ!?いつもみたいに、チェックメイトとか洒落た台詞でも吐いて斧振り回して、あたしの脳天・・のぅてんかち割って脳みそだの何だの撒き散らしてみなさいっての!!ひゃあっはっはっはっはっはっは!!!」
完全に狂っている。
高笑いを続けながら無数の矢を容赦なく発射し続ける。
Aバルキリー「くっ・・・ここは・・・・持ちこたえるしかないな!!」
そのとき、
「Lance Ax Gun Sword Assassin Phantom・・・Climax Form」
するとバックルの6つの宝石がいっせいに光だし、中から6体のイマジンが全員いっせいに飛び出し、一度に慧の体の中に憑依した!!!
クライマックスフォームに変身したバルキリーは素早くガンモードに武器を切り替えると、無数の矢を正確な射撃で命中させる!!
矢が銃弾によって蒸発し、まぶしい光が車内を照らす!
あまりにまぶしい光に目がくらんでいるクイーンフォームを見て、素早くクライマックスフォームが電車から飛び降り、操車場へと無事着地を果たす。
電車が音を立てて洞窟の向こう側へと消えていった。
それを確認すると、クライマックスフォームは肩で息をしながら必死で混乱する頭を整理しようとする。
そのときだった。
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャッ!!!!!
線路が突然ゆれだす。
そして前を見ると、先ほど過ぎ去っていったはずの電車がなんとあまりにも速すぎる速さで戻ってきているではないか!!!
さらに後ろからも轟音と地鳴りが揺れだす!!
Cバルキリー「・・・う・・・後ろから・・・って・・・まさか・・・」
ゆっくりと振り返る。
そこで目を見開いた。
電車がまるで投げられているかのようにわずかに宙を浮かびながらものすごい速さで突っ込んできているではないか!!!!!
Cバルキリー「な、何!?挟み撃ち!?」
そして電車の中から一人の女性が顔を出した。
ゆがんだ笑みを浮かべているのは、褐色肌の健康そうな色香を漂わせている長身のボーイッシュな美女の姿があった。
ルーク「死ねええええええええええええええええええええっ!!!バルキリーぃいいいいいいいいいっ!!!」
神代塔子。
慧の知っている人物であったはずの彼女の面影はどこにもなく、狂った笑みを浮かべながら鋼鉄の凶器をものすごい速さで慧めがけて突っ込んできているではないか。
Cバルキリー「塔子さんっ!?どうしてっ!?」
ルーク「テメェをぶっ殺す・・・・・ヒャアッハッハッハッハッハッハ!!!!」
そういってルークがベルトを腰に巻いて、ルークのデバイスを埋め込んだ。
ルーク「変身!!」
その姿を見る見る漆黒の亀を模した甲冑に身を包み、重厚な戦士、仮面ライダーワイバーンルークフォームに変身を遂げると、すさまじい腕力と突進力を生かして超重量級のハンマーを振り下ろす!!!
ハンマーを咄嗟にアックスではじくが、アックスフォームでさえも気の遠くなるような痺れを感じる打撃に歯を食いしばる。
Rワイバーン「おらおらおらおらおらぁ!!!」
Cバルキリー「くっ・・・・と・・・塔子さんまでっ・・・・・」
Rワイバーン「呼び捨てすんじゃねぇ・・・ルークはなぁ・・・お前らクズの人間ごときが気安く呼べるような存在じゃねぇ。そう、ルークは・・・チェックメイトフォー・・選ばれた4人のファンガイアの戦士・・・最強無敵のルーク様だぁ!!!!」
邪悪な笑みを浮かべて、吐き捨てるように告げられた言葉に慧は打ちのめされたような気がした。
Cバルキリー「そんな・・・・嘘だ・・・・塔子さんはそんなこと言うような人じゃない・・・!」
一気に振り下ろし、ハンマーの衝撃に耐え切れず、クライマックスフォームが吹き飛んだ。
壁にたたきつけられ、そのまま地下へと続く階段を転がり落ちる。
Cバルキリー「きゃああああああああああああああっ!?」
すると、そこに一人の人物が倒れているクライマックスフォームに近寄ってくる。
慌てて武器を構えるクライマックスフォーム。
しかし、その人物の姿を見たとき、さらに慧は驚きで目を見開き、口をぱくぱくさせる。
「随分と派手にやってますねぇ?慧ちゃんをここまで痛めつけるなんて・・・私が切り刻むの忘れないでくださいよ」
そういって、ローブを下ろし、胸の前で十字を切って登場した美女。
金色の髪を風になびかせ、麗しい真っ白な肌と端正な顔立ちはまるで女神のようだ。
しかしその表情はゆがんだ笑みを浮かべ、瞳には赤く狂気の光が宿っていた。
Cバルキリー「ああ・・・・嘘だ・・・・嘘だ・・・!!神代・・・先生!!」
もう信じられないといったように慧が混乱して叫ぶ。
しかし目の前の神代聖・・・ビショップはそんな慧の様子を愉快そうにクスクスと笑っている。
しかしその瞳はまるで虫けらでも見るかのような侮蔑に満ちた冷たい瞳・・・。
ビショップ「慧ちゃん、お久しぶりですね」
Cバルキリー「そんな・・・・嘘だ・・・・あたしは・・・・信じない・・・・」
Rワイバーン「嘘じゃねぇんだよ、これがな」
Qバルキリー「あたしたちさぁ、マモン様の力をいただいて生まれ変わったのよねぇ」
Cワイバーン「マモン・・・!?セブンズヘブンの一人かっ!?」
ビショップ「慧ちゃんとはいえ、あの方を呼び捨てにするなど・・・許せません。ふんっ!!」
ビショップの指がぱちんとしなりを上げて乾いた音を立てると、真空の刃が生じ、容赦なくクライマックスフォームを切り刻んでいく!!!
Cバルキリー「きゃあああああああああああああっ!!」
そしてよろめいたところへ後ろからルークフォームがクライマックスフォームを押さえつけて、思い切り殴りつける!!!
顔面、胸、至る所に容赦なく拳が叩きつけられ、火花を散らしてアーマーが吹き飛んでいく!!
Rワイバーン「あの方にとってテメェは邪魔なんだよ」
Cバルキリー「と・・・・塔子さぁん・・・・」
Rワイバーン「だから・・・気安く呼ぶんじゃねぇよ!!!」
思い切り腕を振り上げて見事に顔面の右ほほに強烈なフックが炸裂し、マスクが音を立てて破損し、慧の顔があらわになった。
そしてそのまま変身が保てなくなったのか、慧の姿が元の姿に戻っていった。
慧「がはっ・・・ああ・・・」
Rワイバーン「あっはっはっはっはっは!!よえぇ、よえぇよ、このクズがよぅ」
ビショップ「今思えば、キングなどもはや恐るるに値しない・・・」
Qワイバーン「あんたぶっ殺して、時間も世界も滅茶苦茶にしてやんよ・・・」
次々と浴びせかけられるあまりにもつめたい罵声。
慧はもはや正常な思考さえ保てなくなる。
慧「嘘だ・・・嘘だ嘘だ・・・・あたしは信じない!!!!神代先生たちがそんなこと言うなんて・・・セブンズヘブンの仲間になったなんて・・・信じない!!!」
悔しくて涙がポロポロと零れ落ちる。
殴られた痛みではなく、心が痛くて苦しい。
Qワイバーン「あらら、泣いちゃった。泣き虫ちゃんでちゅねぇ、慧ちゅわんは」
Rワイバーン「へへっ、無様ったらありゃしねぇよな」
ビショップ「ふん・・・所詮おろかな人間などこの程度か。もういいわ、これ以上は見ているのも見苦しい・・・・」
ビショップは慧に近づき、座り込み、慧の顔を覗き込み、いつもと変わらないようなやさしい笑みを浮かべて見る。
ビショップ「慧ちゃん・・・・」
慧「か・・・神代・・・・先生」
次の瞬間、頭をつかみ、乱暴に持ち上げると慧の全身が足をぶら下げてつかみ上げられたような姿となる。
そしてビショップの顔つきがこれまでにない冷たい光を帯びた冷笑と狂ったかのような哄笑をあげて、慧に言い放った。
「消えろ。虫けら」
キエロ・・・虫・・・ケラ・・・・・。
キエロ・・・・・。
キ・・・・・エ・・・・・・ロ・・・・。
慧の頭の中で反射するかのように響くその言葉はあまりにも残酷で・・・。
その直後。
慧の足元から黒い風が渦を巻きだし、見る見る力を強めて、やがて慧を飲み込むかのように巨大な竜巻と化す!!
頭をつかまれたままの慧は身動きをとることも出来ないまま、真空の刃と舞い上がる石の破片で体中を切り刻まれていく!!!
慧「―――――――――――――――――っ!!!!!」
そして、その中、慧は見てしまった。
自分が切り刻まれていく光景を見ながら楽しそうに笑う3人の歪んだ笑顔・・・。
そしてそのまま意識を闇の中へと沈んでいった・・・。
悲痛と絶望に満ちた闇に彼女の心が堕ちていく・・・。
慧(どうして・・・・・・)
それから数十分後。
倒れて動かなくなった慧を見下ろして3人が冷たい笑みを浮かべている。
ルーク「けっ、あっけねぇな」
クイーン「うんうん。さーてっと、そろそろデイライトでも分捕りにいきますか」
ビショップ「マモン様からも早急にと言われてますからね」
そういって、3人が慧にきびすを返して立ち去っていく。
慧の姿はもはやズタボロであった。
何よりも一番傷ついたのは心であった。
彼女がこれまで信じてきた「仲間」。
大切な人たちだった・・・。
そのためならどんなに傷ついても戦える。
そう思って戦ってきたのに・・・。
ピクリとも動かない慧が横たわっている。
そんな彼女を一人のイマジンが見ていた。
光り輝く玉がふよふよと浮かび、やがて慧の体に憑依する!!
すると、慧がゆっくりと起き上がる。
髪型は・・・両側に縦ロールを巻き上げた髪型に変わり、右側には黄緑色のメッシュが宿り、黒い鳥の羽のようなマフラーが首に巻かれ、瞳の色が若草のような鮮やかな黄緑色に光り輝いた・・・・。
?慧「・・・酷いことするな・・・・まあ・・・・ようやく見つけた特異点だ。妾(わらわ)が手厚く手当てをしてあげるわ。ふふっ、感謝するがいいわ、人間」
傲岸そうな笑みを浮かべて高慢な口調で慧に話しかけるように、7体目のイマジンが静かに語りかけていた・・・。
続く
,さて!!
今回、物語の中盤に差し掛かり、新たなる展開を迎えました仮面ライダーバルキリーたん。
こうして書いていくと、読者の皆様に支えられて、ここまで書くことが出来、幸せと感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、その感謝の気持ちをこめてですが・・・・。
先日、黒様が投稿してくださった新フォームなのですが・・・一つ新しい登場キャラクターとして作ることを決定いたしました!!!!
その新フォームは・・・次回登場いたします!!!
第7のフォーム・・・そしてこれは予告ですが、決定事項として書きます。
セブンズヘブン側の武器として・・・黒様のアイディア、使わさせていただきます!!
どんな武器になるのか、どんな戦闘になるのかまだストーリーの構成は組み立てていませんが、ご期待くださいませ!!
>烈様
>特に“アスモデウス”と『バルキリー』の戦闘場面などが;(ルーベット以外のイマジンメンバー3人良いとこないっすね〜;)
本当ここ最近彼女たちの活躍書いていない・・・次回から活躍させてあげないといけませんね。
特にトパーズなんて久しぶりに戦ったような気がする・・・・。
>次回辺りで、琥珀さん達の身に何かが起こるのではないですか?
期待にこたえられず申し訳ございません。
ストーリーの展開を考えてそれもいいかなと思っていたのですが、今後の展開を早く書きたかったため今回は見送らせていただきました。しかし今後、ストーリーの展開で「ここはこうしたほうがいいのでは」「このキャラにもっとこうしてほしい」といった意見は次々と取り入れていくつもりなので、お返事お待ちしております!!
>彼女、次回辺り無事に“助かる”のでしょうか?色々と気になることが大きい。
助かるどころか、終始悲惨な目にあっている上に、7体目のイマジンに憑依される始末・・・。
彼女は次回正体が明らかになりますが・・・彼女が入ったことで更なる混乱とトラブルが舞い込んでくることはもはや必至です。
>黒様
今回、第7のフォームを思い浮かべることが出来たのは黒様のおかげです!!
心よりお礼と感謝の気持ちを込めて次回精一杯書かせていただきます!!
次回もご期待くださいませ!!
,#000000,./bg_f.gif,st0416.nas931.ichikawa.nttpc.ne.jp,0
2009年10月19日(月) 12時44分12秒,20091015210550,20091022124412,34X4198fEc76g,仮面ライダーセレナ 第壱拾五話・Drei「小さな私/ディストモード(一発屋)」,@PF,,,コレまでの仮面ライダーセレナは!
赤坂鷹音は改造人間であr(ry
*****
「見付けた!」
現在地は町から港へ続く、建物の少ない通り、車は今のところ通っていない。
公園から出て数分、途中でニムブルモードを使ってビルを昇ったり、ストレイトモードで走ったり飛んだりしつつ、目的地に急行した私は、ストレイトモードで町から外れた道路を走っている最中に、上空で羽ばたく人間大の鳥のような物体を発見したのだった。
『マスター、今のマスターのスペックは…』
「分かってる」
そう、ココに来る途中に説明されたのだが、今の私は、力が六割前後に下がり、代わりにスピードが二割り増しらしい。
これはどのモードになっても同じ影響を受けるだろうという話だった。
ついでに、新しいモードが追加されているという話だが、この状態で下手に使い慣れていない能力は使いたくない。
だからこの戦いでは封印しておく予定だ。
「でも、今は目立った行動は取ってないし、まずは呼びかけからだよ。
おーい!!そこの改造人間の人――!!!」
何にせよ、戦わずに済めば何も問題は無い訳で、私は呼びかけを開始した。
『あー、何かデジャブですねぇ』
何かセレナが憂鬱そうに呟いている。
「すいませーん!!少しお話をぉ―――!!!」
反応無し。
「おーい!おぉ――い!!おぉ――――いぃ!!!
聞こえてますかぁ――!!!?」
状況は変わらない。
『まぁ分かってましたよ?私は』
「………」
ああ、そうさ。
どうせシカトされるか聞こえない事は分かっていたさ。
だから最後通告。
「撃ちますよぉー!!!!良いですか―――!!!!?」
ヤッパリ反応はない。
仕方がないので、宣言通りスティンガンを起動、影に照準を合わせる。
「落ちろやぁ――――!!!!」
連射モードにして引き金を引く。
“バババババババババッ!”
マズルフラッシュが連続して瞬き、その度に銃弾が上空の影に向かって襲いかかる。
だが―――
「あぁっ!!?」
『何と…』
何とその影は左右に動いて、全ての銃弾を回避してしまったのだ。
「くぬぬぬぬ…!」
『まさか一発も当たらないとは…それにあの動き、明らかに意図的な回避行動でしたね』
「って事は」
『ええ、あっちは此方の声に気付いてますね』
ああ、ヤッパリシカトされてたのか。
そうかそうか、ならば…
「……叩き落とす」
『えぇ?どうやってですか?』
セレナの疑問を無視して右のボックスからオレンジ色のスティックを取り出し、スティンガンに刺し込む。
そしてオレンジ色に輝きながらスティンガンから変化したランスを両手でシッカリ持つと、頭上に掲げ上げて一回転、左手で逆手に持ち替えて右手は支えるように下から添えた。
丁度槍投げのフォームに似ているかも知れない。
『えっと…まさか』
少し引き攣ったようなセレナの声を聞き流し、脚部ローラーの回転数を最大にまで上げる。
そしてその慣性が全身に行き渡った事を感じると、左手を後に振りかぶり―――
「貫けっ!」“ギュオン!”
全身のバネを使って影目掛けてランスをブン投げた。
念のため、掛け声は小さめにしたけど。
腕力は大幅に下がっていた物の、私自身の速度と全身を使ったスローイングが功を奏したのか、ランスは影の進行方向に向かって真っ直ぐ飛んでいった。
我ながら会心の一投だね!
「?…ッ!?く、うおぉっ!!」
そしてランスと影の距離がゼロに成ったように見えた瞬間、影の動きが大きくブレたかと思うと、悲鳴を上げながら地面に真っ逆さまに落ちていた。
「っしゃあ、命☆中!」
それを見て私は思わず喝采を上げながらガッツポーズ。
『(マスター、結構荒んで来たなぁ…)』
「何か言った?」
『…別に』
まぁ気にしてもしゃあ無いので、落下地点にダッシュ。
10秒もしない内に、道路の真ん中で蹲りながら悔しげに呻く影を発見した。
「く…くそ、うぐ…」
その体は部分部分が毛むくじゃらで、腕には皮膜の様な物が張られている。
顔立ちは私に何となくコウモリを連想させた。
「追いついたよ」
『バットファクター…ですかね』
「武器の呼び戻しは出来る?」
『多少エネルギーを消耗しても良いのなら』
「…お願い」
『了解』
セレナが了承の意を示すと、目の前にオレンジ色の棒状の光が現れる。
それを掴むと光が四散して、中から先程ブン投げたランスが出てきた。
「おお、本当に戻って来た」
『正確には構成を一旦放棄して再構築しただけですけどね』
と
「そこのガキ…俺を攻撃したのはお前か!?」
蹲っていた影=バットファクターが勢い良く起き上がり、私達を糾弾してきた。
「あらら、気付かれた」
『あれだけビカビカ光ってれば当然ですよ。
ローラーの稼働音だって出ていましたし』
「光ったのはセレナのせいじゃん」
『マスターが武器を呼び戻せ何て言うから…というかランスをブン投げたのが原因ですよ』
「おい!聞いてるのか」
「安心して!聞いててスルーしてただけだから!」
「余計悪いわ、クソガキ!!コオァッ!!!」 “ゴオッ!”
「うひゃっ!」
怒鳴りながらバットファクターが大口を開けて不可視の何かを放って来た。
それを察知した私は、とっさに体を投げ出すようにして回避する。
あの距離で放たれた衝撃波を、とりわけ瞬発力が高い訳でもないストレイトモードでも何とか回避出来たのは、体が小さくなった影響かも知れない。
「このっ」 “ガンガンガンガゥンッ”
体勢を整える前に、ランスからスティックを引き抜いてスティンガンに戻し、バットファクターに向かって連射する。
「ガアァッ!!!」 “ドウッ!”
「くっ」 “バゴォン!”
だが、再度放たれた衝撃波に全弾撃ち落とされ、それどころか撃ち落として尚有り余った衝撃が私を襲った。
ローラーを再起動して無理矢理体を避けると、その直後に私の居た場所の道路が爆砕し、飛び散った破片が装甲表面に当たる。
「まさかあんな攻撃して来るなんて…」
予想外の能力に少し呆気にとられてぼやいた。
「こ、蝙蝠ってあんな生き物だったっけ?」
余り近くで見た事はないけど、そんなアグレッシヴな性質があるなんて聞いた事が無い。
だとしたらこれからは夜道で上空から飛んで来る衝撃波に警戒しなけりゃいかん。
『恐らくは超音波の照射能力を曲解、発展させた物だと推測されます』
なるほど。
「距離を詰めたのは失敗だったかな…」
『至近距離まで接近出来てしまえば話は変わってくるのでしょうけどね』
確かにあの衝撃波は、撃つのに少し“タメ”が有るように見える。
でも、さっきの道路を砕いた様子を見て分かったけど、あの衝撃波はそれなりに威力がある上に結構弾が大きい。
こっちの飛び道具は簡単に撃ち落とされる所か、相殺すら出来ない。
アレをまともに食らって耐えられるのはクラッシュモードだけだろうし、それだって普段ならの話で、パワーの下がっている今の状態じゃ分からない。
オマケに今はダメージで地面にいても、接近に時間を掛ければ再び飛ばれるだろうし、そうなったら再び撃ち落とすのは難しそうだ。
単純速度じゃストレイトモードが一番なんだけど、それじゃ速度が乗る前にインターバルが終わりそうだしそもそも回避に向いてない。
接近に一番向いてそうなのはニムブルモード辺りか。
そう考えた私はダイヤルを回す。
『ニムブルモード』
「よし!」
橙から蒼に装いを変えた私は、スティンガンをレイピアモードに変形させてバットファクターに向かって駆け出した。
*
接近する上で心得ておく事は、とにかく相手の正面に立たずに背後を目指す事。
あの衝撃波は射角が広い上に何となく空気の振動で感じ取るしかないから、ギリギリで回避するなんて芸当は今のニムブルモードでも些かキツイ。
それに紙装甲な上に、踏ん張りの効かないニムブルモードじゃ、一発でも食らったら大ダメージ+距離が開くから、喰らわない事が肝要。
だから、とにかく衝撃波の発射口である口とは、出来るだけ位置をずらして対処する事にしたのだ。
ううむ、自分でも言ってて分かり辛く成ってきた…。
とにかく、背後を取ろう取ろうと言う動きをするという事だ。
「って、私はモノローグで誰に説明してるんだろう…」
『マスターが少し危ない人風味なのは何時もの事ですから、私は気にしませんよ?』
「はは…ありがと、うっ!っと」
さり気なく酷い事を言われた気がしたが、今はそんな事を気にしている余裕はない。
それは、いざ突撃してみたら少し予想外の事態が発生したからだ。
衝撃波の間隔が短すぎて、思うように距離が詰められないのだ。
さっき衝撃波を撃つにはタメが有ると考えたけど、どうもそのタメは威力を考えなければ一呼吸程度にまで縮められるらしかった。
オマケに距離が開いているせいで、衝撃波がこっちまで届いて、それを避けた時には次弾の装填が終わっているという有様。
クロスレンジでの殴り合いなら、その程度のタメでも十分潰す自信は有るのだけれど、この距離で回避と接近を両立させるとなると十分すぎる程の脅威なのだ。
体が軽くなったお陰で何とか対処し切れているのは幸いといった所か。
「くっそう…厄介だなこの野郎め」
『少しずつ距離は縮まって居ますが、先程見えたバットファクターの傷の具合から計算すると、接近しきる前に完治してしまう可能性が高いです』
「それは拙いね…
あークロックアップとか欲しいなぁ」
『無い物ねだりしてもしょうがないでしょう。
大体アレは元々敵の持ってた能力に対抗して装備された物ですし』
(それでも出来るなら衝撃波を弾きながら接近出来る手段か、この距離でも有効打を与えられる武器が欲しい所だけど…)
前者には心当たりはある、ストレイトモードの「オーバーチャージ・ストライク(長い)」だ。
障壁を纏って音速を超えた突撃を放つあの技なら、衝撃波を突き抜けて接近出来る……と思う。
でもあの技は後の反動が厳しい上にエネルギーを消費しすぎるから体調が万全でも一発か二発しか撃てない。
小さくなっている今じゃ二発は厳しそうだ。
だから一撃で決める、無理でもダメージは与えたい所だけど、あの技はほぼ一直線にしか突撃出来ないし、急停止も出来ないと来た。
避けられたら逆にピンチ、と言う訳であるね。
後者はどうしようも無い。
唯一のスティンガンはさっき効かなかったばかりな訳だしなぁ…。
結論→打つ手無し(条件付き)。
「はは…参ったね、どうも」
考える程に状況の厳しさが浮き彫りに成ってきた。
残る可能性は追加された新モードだけど、どうにも思い切れない。
(ん?待てよ…)
大きめの衝撃波を避けた時、ふと思い当たる。
よくよく考えてみればスティンガンの弾丸が効かなかった訳じゃ無い。
撃ち落とされて当たらなかっただけだ。
だったら―――
「セレナ…アイツの足首辺りを狙って連射してみるのはどうかな?」
避けながらセレナにトーンを落として聞いてみる。
『……成る程、確かに衝撃波の射線と平行にならないように連射すれば、何発かは当たるかも知れませんね。
それに、今の機動力なら半秒程でも怯ませる事が出来れば、接近は可能です。
今まで思いつかなかったのが不思議な位ですね。
とは言え、それで相手が本当に怯むのか、どの位時間を稼げるのかは未知数ですが』
「それでも他にやり方が思いつかないならやってみるしかないよ」
『…ええ、そうですね』
セレナの賛同も得て、方針が決まった私はスティンガンを再び連射モードにして、斜め下向きに引き金を引いた。
“ガガガガガガガガガッ!”
「うお!?く、カアァッ!!」
「チッ、こんのぉ!」 “ガガガガガガガガガガガガッ!”
殆どの弾丸は撃ち落とされたけど、何発かはバットファクターの足下に着弾する。
だが、それで一瞬面食らわせる事には成功した物の、接近する前に再度衝撃波を撃たれてしまう。
向こうもこっちの狙いに感づいたのか、足を止めるのを止めて、少しだけど動き始めた。
その様子に舌打ちしながらも、私は引き続き引き金を引き続ける。
幸いまだ翼が回復していないのか、飛ばれる事はないようだった。
こうなればもう、後は根比べ運比べだ。
アッチの翼が回復するまでに当たるかどうかのね。
そして…
“ガガガガガガガ――ビシュッ” 「ッ!く…」
(やった!)
とうとう弾丸の一発がバットファクターの足首に当たって、目論み通り動きが止まる。
衝撃波を止めて崩れるバットファクターの姿に内心で喝采を上げながら、彼我の距離を詰める為、前に踏み出そうとしたその時――
「ひ、ひえっ」
『「!」』
後から聞こえてきた気の抜けた声に、思わず振り返ってしまう。
そこに居たのは
「な、何なの!?」
自転車に跨りながら私達を見て慌てふためく、公園で私にフリスビーをブチ当ててくれた女の子だった。
「な、何でここに!!?」
何故?なぜ??ナニユエ?Why?
予想GUYにも程がある!
何でさっきまで公園で駄犬と戯れていた子が、こんな所にいるんだ!?
時間的に、自転車を考慮しても私達の直ぐ後に公園を出て追って来なけりゃ計算が合わない。
あの子にそんなストーキングされる理由なんて無い筈だし―
『マスター!前を!!』
「ガアアァァァッ!!!」
「へ?」
混乱したままセレナの叫びに向き直った時には、バットファクターの口から放たれた不可視の空気の塊が私の直ぐ目の前まで迫っていて…
『く…―――!』
「や… “ゴウッ!!バキャアァァァァン…” ……あ」
「っ…きゃあああぁぁぁ!!?」
回避どころかガードする間もなく私の体を吹き飛ばす。
衝撃波がぶつかる直前、セレナの叫びと青い光を感じた気がした。
だけどそれを頭が認識する前に後から来た体を襲う衝撃と浮遊感。
そして何かが砕ける音と誰かの悲鳴に私の意識は埋め尽くされ…
……途切れた。
………
………………
………………………
***
「…お…………よ!お…て!ねぇ!」
「ん…」
「起きてよ!起きてってば!!」
「――――ぅ…い…ったー」
体を揺すられるのと、耳元に掛けられた声で目が覚める。
そこに居たのは、今の私より少しだけ年上に見える女の子だった。
「良かった!生きてたよ」
「えーと、貴女は……」
「ごめんなさい!私のせいでこんな…」
「ストップストップ!今ちょっと混乱してんの」
「あ、ごめんね」
んー、ちょっと状況が直ぐに思い出せない。
一つずつ整理して行こう。
私はバットファクターと戦っていた。
衝撃波で近寄れなかった。
突破法を思いつく。
実行する。
成功。
さあ近付こう。
後から声が。
思わず振り向く。
その時衝撃波が!
\(^o^)/
気絶
目が覚める←今ココ!
整理完了。
ココから得られる情報は――
(………えーと、つまり私がやられたのは?)
「………」
「あ…あの」
「おォ前が原因かあァァァァァァ!!!!」
「ひいいいぃぃぃ!
ゴメンナサイゴメンナサイ反省してますもうしません許して下さいぃぃぃx!!」
思わずキレた私は、目の前の女の子に飛び掛かり、その胸ぐらを掴んでガックンガックン揺すりまくりながら叫んだ。
女の子は涙目になりながら謝っているけど、そんなの知ったこっちゃねぇ!
こやつのせいで折角のチャンスがパァだ!
「って!そうだ、こんな事してる場合じゃ…」
「え、どうかしたんですか?」
「ねぇ、私ってどの位気絶してた?」
「え?えーと、一分も経ってないような…」
「……」
思わず手を離して振り向く。
「ひゃん!?」
女の子が尻餅をつくのも無視してバットファクターの方に眼を向けると、ヤツは今にも飛び立とうとしている所だった。
「ハハハハ!貴様達がのんびりお話ししてる間に、羽の修復は済んだぞ。
じゃあな!」
「っ…逃がすか!!」
その足だけでも掴もうと全力で飛び掛かったけど、後一歩という所で逃げられてしまう。
「こなくそっ!」
苦し紛れにスティンガンを撃っても見たが、体勢を崩した状態ではまともに当たらない。
当たりそうな弾丸だけ回避しつつ、悠々と飛翔して行くバットファクターの姿に、私は歯噛みするしかなかった。
「あぁ〜もぉー!」
それによって発生した苛立ちは、当然ながらこの状況を作り出した要因の一つに向けられる。
「何でココに来たの!?
しかもあんな最悪のタイミングで!
何?ストーカー?ストーカーか?私の個人情報を集めて悦に入るつもりか!?」
「ちちち違うよぉ!私、貴女が出て行ったトイレでアレを見付けたから…」
女の子は私の剣幕に怯えながらも、近くで横倒しに成っていた自転車の籠の辺りを指さした。
そこに有ったのは…
「私の……カバン?」
「う、うん。
お財布も入ってるみたいだし、無くしたら困るんじゃないかと思って。
それで電話では港の方に行くって聞こえたから…」
とにかく港の方に向かって、偶々あのタイミングで私達に遭遇してしまった…と言う事か。
(何てこった!)
全てを理解した私は、心の中で頭を抱える。
つまりこの状況を作り出した本当の原因は、私がカバンを置いてった事だという訳だ。
「う、うぅぅー……」
「え、大丈夫?」
私は泣いた。
自己嫌悪で泣いた。
声で唸っているだけだが、心の中で泣いた。
「ごめん、私のせいで…」
「えぇ!?」
いきなり掌返して謝りだした私に面食らったのか、女の子が慌てる。
よくよく考えてみれば、カバンの中に封印処理用のリングや、警察に連絡する為の携帯も入っていた訳で、カバン無しじゃ後処理に支障が出まくる事請け合いなのだ。
何時もはアクセラーに入れて持って来るから忘れてた。
『あのーマスター、いい加減バットファクターを追わないと…』
「あ、居たんだ」
『マスターが私を装備しているんだから、普通に居ますよ』
「今までずっと黙ってたから忘れてたよ…」
いきなり聞こえてきた、呆れたようなセレナの声に、少し気まずげに返すと、セレナの方も少し言いにくそうに答えてきた。
『あー、先程少し無理をしたせいで、システムのリカバリーに専念してましたから』
「無理?」
『後で説明します、今はバットファクターを』
「ああ、うん」
セレナに言われて今度こそ、もう大分小さくなったバットファクターに向き直る。
「ねえ、誰と話してるの?」
「少し黙ってて」
「ごめんなさい…」
気を取り直して、再度追跡する為にバックルのダイヤルを回そうとした所で、またセレナが口を挟んできた。
『マスター、恐らく同じ手は通用し難いかと』
「え、じゃあどうすんの?」
『この距離なら……今のマスターの身体的変化を計算に入れても追加されたモードで対応可能です』
「確か射撃戦用のモードだっけ?
……どうしてもしなきゃダメ?」
『現状で最も成功確率の高い手段だと思いますが』
そう言うセレナの回路内では私の知らないデータとかを使った計算がされてるんだろうけど、その内容を想像する事も出来ない私には同意しきれない物が有る。
それに冒頭でも言ったけど、新モードを使った時、異常な状態になっている今の私の体が、どんな反動を受けてしまうか不安で仕方がないのだ。
思い出して欲しい、今まで新しい能力を使う度に何だかんだでぶっ倒れていた事を!
まぁ、コレばっかりは、一度経験してみないと分からないし対策も立たないんだけど…。
……とは言えセレナはこう言う時に嘘はつかないし、新モードを使うのが一番だってのは本当だろう。
普段はアレだが、根は結構真面目だし。
保身と正義感を天秤に掛ける事数瞬、私が下した決断は――
「仕方がない…か」
『では、表示を参照してください』
「はいよ」
もうお決まりになってきた感が有るバイザーの案内表示に従って、ダイヤルを緑が上に来るようにセット、押し込んだ。
『ディストモード』
アーマー全体が緑色に輝き、そのカタチを変えて行く。
そしてその変化を終えると、光が弾けその中から新たな姿に変貌したアーマーがその姿を現した。
私は自分の新たな姿をザッと見回す。
まず四肢の装甲は一回り大きくなり、やや無骨な形状。
そしてボディの方はパッと見ニムブルモードの色違いのような形で、スッキリとした軽そうなイメージ。
でもってヘッドギアは自分じゃ見えないけど、触って確かめてみた所、さっきまでより少し大きめで、何かアンテナの数が増えていた。
『マスター、武器を』
「あ、わ、分かった!」
もう大体のパターンは分かってきてるので、バイザーの表示も気にせずボックスから緑のスティックを取り出して、それを直ぐ傍に落としていたスティンガンを拾って刺し込んだ。
『トランスフォーム…』
予想通りスティンガンは緑色の光に包まれ、その姿を変え始めた。
「…ん?」
だがそこで少し予想外の事が起きる。
スティンガンの放つ緑色の輝きが、突然赤と蒼の二色に変わったのだ。
右が赤で、左が蒼。
丁度真ん中で二分されたその光はその光度を増して行き――
『ディストジェミニ』
弾けた光の中から現れたのは赤と蒼の‘二丁の’大型拳銃で、蒼い拳銃は左手に現れたのに対し、赤い方は直ぐ隣の空中に出現する。
当然何の支えもない空間に現れたそれは寂しがりやな地球の重力に引かれ…
「あっ?」“カシャ―――ン”
当然地面に落ちるのだった。
「……」
「……」
『……』
沈黙
後の方で体育座りしている女の子も何か言いたそうだったけど、結局何も言わないで終わる。
『ちゃんと受け止めてくださいよ…』
「もう一丁出てくるだなんて私聞いてない!」
『バイザーには注意書きを表示したはずですが?』
「えぇ!?そ、それは…」
まさかもう慣れたと思っていたからスルーしていただなんて言えるはずもなく、私は少し肩身の狭い思いをしながら、そそくさと赤い銃を拾った。
「で、でさ!これからどうするの?」
『(はぐらかしたな…)一撃で決めましょう。
このモードの必殺技なら、この程度の距離、余裕でカバー出来ます。』
「へぇ」
セレナの言葉に、更に遠ざかっているバットファクターを見る。
素人考えでは既に一キロ前後の距離が開いている気がするのに、コレでも大丈夫とは。
まぁ、狙撃何てした事無い私に、正確な距離や当てやすさが分かるはずもない。
ココは大人しくしたがっておく事にする。
『では、キーを蒼い銃の方に刺し込んでください』
その言葉に従い、右腰にいつの間にか増設されていたホルスターに赤い銃を一旦収め、開いた右手でキーをバックルから蒼銃に刺し換える。
『コネクタ展開』
“カシュッ!”「うわっ!」
軽い音と共に、手に持った銃とホルスターの中の銃の前後が展開して突起や孔が露出してくる。
コレがコネクタなんだろうか。
何時もの変形に比べてかなり小さな変化だ。
『コレを赤が前、蒼が後になるように接続してください』
「了解……えい!」“ガチャン!”
『イグニション』“キイィィィ―――――ン”
指示通りに繋ぐと、繋いだ二丁の銃の全体が蒼く光り出して、スティンガンにスティックを刺し込んだ時のようにその形を変えて行く。
『パターン【クリスタルランチャー】』
そして現れたのは全長150p位の、澄んだ水色をしたビーム砲っぽいモノだった。
見ようによっては大口径のライフルの様に見えなくもない形だ。
それを砲身から生えている二本のグリップを握って、両腕で支える。
『バイパス解放、照準リンク、チャージ開始…マスター、バットファクターに向けて構えてください』
「分かった!」
何だか“ウィンウィン”と音を立ててエネルギーを溜め始めたっぽい水色のビーム砲――セレナ曰く【クリスタルランチャー】――を持ち上げてバットファクターに向けて構える。
『ターゲット補足…今度はバイザーに表示されている二つの十字が重なるようにしてください』
するとバイザーに映るバットファクターに合わせるように漢字の「田」みたいな表示が現れて、そこからずれた所に十字が現れる。
後から出てきた十字は、どうもクリスタルランチャーの動きに合わせて動くらしい。
多分、コレを合わせると照準が合うって事なんだろう。
『ある程度は適当で良いです。
微調整は全行程完了後に此方で出来ますから』
「ん」
セレナの言葉を信じて私は二つのサインを近づけて行く。
『チャージ完了、バレル解放、エネルギー反転開始』
“ブィンブィン”と音を立てていたクリスタルランチャーの先端の砲口から、蒼い光が漏れ出す。
同時に、何だか寒気がしてきた。
「〜〜…ねぇ、セレナ、何だか寒くなってきた」
『まぁ、撃つのはいわゆる「冷凍ビーム」ってヤツですから、その余波が漏れ出してるんですよ』
「はー、つくづくあのアホのテクノロジーは驚異的だねぇ…」
まぁ、変な所で詰めが甘い気はするけど。
『ん…全行程完了、照準を目標の予測進路上に調整しました。
トリガーロックスタンバイ…マスター、照準を』
「おっけー!」
セレナの声と共に、照準のブレが段々治まり、遂に……重なった。
『“ピボッ”トリガーロック解除、撃てます』
セレナのゴーサインを受けて、私は左手側のグリップについていたトリガーに人差し指をかける。
「……っ!」
そして左手の指に力を込め、一気に引き金を引いた。
“ドゥッ!!!”
クリスタルランチャーの砲口が爆発的に輝き、内包していた猛威が解放される。
そして解き放たれた輝きに、私達の視界は塗りつぶされた。
***
「ふぃ〜一時はどうなる事かと思ったが…。
しかしあの白い仮面ライダー、情報より背が低かったが、別人か?」
バットファクターは仮面ライダーセレナと戦っていた場所から一キロ近く離れた所で安堵の息を吐いた。
上からの命令で探索を任された時は、さっさと切り上げて何処かの仮面ライダーに見つかる前に変身を解けばいいと持っていた。
だがまぁ、全く探索しないのもアレなので、適当に飛んでいる内に、飛ぶのが気持ちよくなって来て、時間の経過を忘れかけてしまったのだ。
そんな所を襲撃されて、羽の一部を破壊されて後はご覧の有様と言う訳だ。
途中でやってきた女子に仮面ライダーが気を取られたお陰で時間を稼げた彼は、その間にCCC団に入って教わった傷の修復術で傷の治癒を早めて逃げ出せたのだ。
最も、今現在も完調には程遠い速度しか出せないのだが、さっきの仮面ライダーは空の敵に有効そうな武装は余り持っていない様子。
だから、ココまで離れれば大丈夫だろうとタカを括っていたのだ。
だからバットファクターは気を緩めて、振り向いてみる事にした。
「ハハハッ!ココまで来ればもう安心だな、どれ、アイツは今どんな様子か……な」
だが、振り向いたバットファクターの目に飛び込んできた物は、遙か後方から自分目掛けて伸びて来る青白い光の柱。
「んな!?ぁ、こっなくそおぉぉ!!!」
一瞬呆気に取られそうになるバットファクターだが、身の危険を感じて咄嗟に右方向に全力で飛翔、ギリギリで光の柱の範囲外から逃れる事に成功した。
引き替えに、傷ついた翼で無理矢理回避したせいで、翼がマトモに動かせない状態になってしまったが、この場はこれで良しとしておかなければいけないなと、割り切る。
「は、ハハッ、残念だっ……“バシュッ!”ウェ!?」
だが…
「う、嘘だろ……?」
その光の柱は、バットファクターに命中する前で爆発、何本もの光の矢に分かれて、より広範囲に拡散。
当然その拡散した範囲には、ギリギリで回避したバットファクターの位置も含まれている訳で、オマケに訳で…
“ドガガガガガガガガガ―――――!”
「ヒアアァァアァァァ―――――!!!?」
動かない翼で、空中では回避すらまま成らず、バットファクターは全身に光の矢を浴びる事と相成った。
***
「いったたたた…お尻打った…」
彼方でバットファクターが光の矢を受けている頃、私は道路に座り込んでいた。
『体重と筋力の減少による踏ん張りの変化は計算に入れ損なっていました。
本来なら支えきれるはずだったのですが…』
つまりはクリスタルランチャーをぶっ放した瞬間、私はその衝撃を支えきれずに尻餅をついてしまったのだ。
思わず「うきゃ!?」なんて猿みたいな悲鳴を上げてしまったぜよ、参ったね。
「かっこ悪いなぁ…よっこらせ!」
若干情けない気持ちになりながら、私は立ち上がった。
「えっとー…もう終わった?」
「ん?」
後から掛かる声。
そういやこの子が居たっけ。
「ああ、多分大丈夫だと思う、これから見に行かないと完全には言えないけど」
「そうなんだ…」
「それよりカバン返して貰って良い?」
「あ、ごめんなさい、どうぞ」
何だかすっかり腰が低くなって無いか、この子?
ともあれカバンを受け取り中身をさっと確認。
財布の中身も含めて無くなっている物は無さそうだ。
まぁ、何気に私に対して過保護な所があるアホ所長と巻奈さんの手によって、貴重品は直ぐに追跡出来るような仕掛けがされてる気がするけど。
「じゃ、ごめーわくお掛けしました!」
「あ、こちらこそ…」
呆気に取られる女の子を放って、私はストレイトモードに変身、後ろ手を振りながらバットファクターが墜落したであろう地点に急行する。
今回あの子には結構悪い事をしてしまったかも…と移動しながら反省。
私がカバンを忘れたばっかりに、親切心で来てくれたあの子は巻き込まれて、挙げ句原因を作った私は知らなかったとは言え、一方的に怒鳴ってしまった。
まぁ、私達が何をしていたのか、あの距離まで近付いて初めて判ったなんて事は無いだろうから、余計な好奇心を働かせたっぽいあの子に全くの責任が無いとも思わないけどね。
今回は幸いにも被害は出なかったし、次回以降はシッカリ気を付けよう!
少女との距離が離れて行くのを背中で感じながら、そんな事を心に深く誓っていた。
***
“ギュイィィィィィィィィィ――――――――……………”
足のローラーを回転させて失踪して行く仮面ライダーセレナを、見送った少女――那村静璃(なむらしずり)――は、その姿が殆ど見えなくなるまで遠ざかった所で息を吐いた。
「…っふへぇ〜、つ…疲れた」
因みに彼女は中学二年生で、鷹音より学年が一回り下なのだが、彼女は今の鷹音の事を自分より年下だと思っていた。
仕方無いね。
「全く…チャッピーのせいで面倒な目に遭っちゃったよ…。
あの子に、もっと迷惑掛けちゃったし」
鷹音は今回の原因が自分だと思っていたが、彼女にしてみれば自分の愛犬(チャッピー)が原因だったりする。
チャッピーが鷹音にのし掛かったから、彼女達は関わる事になり、そして鷹音は身嗜みの為に慌ててトイレに行く事になり、結果的にカバンを忘れて自分が持って行く羽目になった、彼女の中ではこんな図式が出来ているのだ。
(って、元はと言えばそれも私がフリスビーぶつけたからか……な?)
――反省しなきゃね、と溜息をつきながら自転車を起こす静璃。
(そう言えば結局あの子にお詫び出来なかったな…)
それどころか彼女としては、更に詫びる事が増えてしまったと言う心境だ。
また後日何かするべきか、と思った所で自分達がお互いの名前も知らない事に思い当たる。
まぁ、特別な理由も無しに、この現代、初対面の人といきなりプロフィールを交換する事なぞそうそう無い事だし、これも仕方がない事ではある。
かと言ってストーキングでもしよう物なら、余計に迷惑を掛ける事になる。
「…もしまた会えたら、その時何かしてあげよう」
アッチががっついてこなかったのならば、こっちも急がずにまた今度会ったその時に考えればいい。
最終的に貸し借り無しに出来ればいいのだから。
そう決めると、彼女は自転車に跨ってペダルを漕ぎ始める。
(でも、余計な事には首を突っ込まないようにしないとね)
好奇心は猫を殺す。
自分は猫でもなければ粘着質な新聞記者でもない、余計な事に近寄って自分だけじゃなく相手に迷惑を与えるなんて以ての外。
中学生ながらも、そう考える程度の分別は静璃にもあった。
「さーて、我が愛犬(チャッピー)を迎えに行くかな。
干からびてないと良いけど…」
冗談めかすようにそう呟くと、彼女はチャッピーを待たせている公園に向かって、自転車を走らせた。
***
所変わって走行中の仮面ライダーセレナ(=鷹音+セレナ)サイド
「ねぇ、そう言えばさっき少し無理したって言ってたよね」
走行中、私は黙っていたセレナが再び喋りだしたときのことを思い出していた。
『?…ああ、そう言えばそんな事もありましたね』
セレナはその問いに、少し考えるように沈黙すると、思い出したかのように相槌を打った。
「何でか聞いても良い?」
『その前に、マスター、衝撃波のダメージは?』
「え?…あ、うーん、そう言えばモロに喰らったと思ったのに、起きた時に殆ど痛くなかったっけ」
『ふむ、上手く行っていたようで何よりです』
顔があればホッとしながら微笑んでいる、そんな事を想像させるような声だ。
「へ?上手く?何かしたって事?」
『うーん、別に隠す事でも無いんで、答えます』
少し長いですが、と前置きをしてセレナは話し始める。
『簡単に言えば、衝撃波が命中する寸前、ダメージを緩和する為、装甲を追加で生成したんです』
「ふむ、でもそれじゃセレナが無理した理由にならないよね?」
なるほど、私が気絶する寸前に感じた光は装甲を形成した時ので、砕ける音はその装甲が砕けた音だったという訳だ。
しかしそこらに合点が行っても、そんな機能を使っただけでセレナが無理をすると言う結果が私の中で結びつかない。
『いえ、私が行ったのは、正規の機能ではなく、いわば“チート”の様な物でして…』
「?」
『内容は装甲の修復機能を利用したもう一枚の胸部装甲の生成、つまり身代わり用の装甲をボディに増設し、砕けて貰う事である程度ダメージを肩代わりさせたのです』
「……ん〜分かるような分からないような…。
車とかで敢えて壊れるように作っておく事で搭乗者へのダメージを可能な限り吸収させる感じ?」
『…まぁ、そんな認識で良いでしょう。
で、ココで問題になるのが、本来欠損した装甲を修復する為の機能を、アーマー以外の部分に、しかも欠損してもいないのに使った事なんです』
「ほうほう」
もう、黙って聞くしかない、何て言ったらいいか分からんし、今は走行中、安全第一の為に他に意識を割きにくいし。
『それを実現する為、私は“装甲が破損している”と意図的に誤認しつつ、“修復するべき装甲の形状と空間座標”を無理矢理有り得ない様な設定にしたんです』
「あー、何か結構無茶な事やってるように聞こえてきたんだけど…」
『ええ、無茶も良い所です。
オマケにそれをあの一瞬で行った物ですから、反動でその辺りのプログラムに大規模なエラーが出ましてね、しかも放っておいたら活動その物に支障が出そうだったので、処理能力の殆どを割いて修復していたんです。
まぁ、想定外のタスクを強要した代償なので、一旦システムを切って再起動すればもっと簡単に解消できたのですが、流石に戦闘中にそれはマズイですし。
暴走し掛かって道を外れた車を、止めも引き返しもせずに無理矢理元の道に戻す様な物ですかね』
微妙にニュアンスが違いますが、とセレナは苦笑する。
『だから通常稼働を何とか維持しつつ、リカバリーに当たっていたので、喋る余裕どころか外部の事を認識する余裕だってとてもとても…』
「成る程、確かに止まるのは困るね、だから黙ってたんだ……っと、丁度良いタイミング。
あの白っぽいのがバットファクター、って事で良いのかな?」
『ええ、そのようです。
しかしこのタイミングの良さ、ご都合主義的な物を感じますね』
「いいじゃん、説明をしつつテンポを維持するにはある程度はそう言うのも必要なんだよ」
セレナのぼやきに反論しながら、私はローラーを逆回転、白い塊の数メートル手前で急減速してブレーキを掛けた。
そこから白い塊に慎重に歩いて近付く。
そこに有ったのは――
「うっわ〜、すっごいカチンコチン…」
翼を広げたバットファクターの姿をした、靄を纏った白い彫像、否、氷像。
結構な高さから落ちたはずなのに、掠り傷程度で、表面が多少溶けかかっている物の、割れるどころかヒビも殆ど入っていない。
恐るべき硬さのようだ。
つーか死んでない、コレ?
『……生命反応有り…熱源反応微弱…ナノマシン稼働反応有り…。
生きては居ますね、熱源反応も有るようですし、気を付けて叩き割れば中身は無事そうです』
成る程、そうと分かればクラッシュモードd
『…………氷と一緒に生皮も剥がれるかも知れませんが』
うひぃ
『まぁ夏ですし、溶けるのも早いんじゃないでしょうか?
それに“多少”欠けても直ぐ治りますよ、キメラですし』
「うーむ、そう?」
『ぶっちゃけ殺さずに警察に渡せればどうとでも成りますからね。
最低限の注意を払って居れば良いと思いますよ?』
機械とは思えぬ適当な言葉、コレは成長と言うべきなのか、堕落と言うべきなのか…。
そんな益体もない事を考えながら、私は氷像の表面を軽く叩いてみた。
「“カンカン”ふむ…結構硬そうだね」
『氷の厚さはそれほどでもないのですが、活動を停止したナノマシンがそれを補ってしまっているようですねぇ』
「どうしよう、ヤッパリクラッシュモード?」
『そうですね、それで殴ってある程度ヒビを入れたら、そこにスティンガンを突っ込んで剥がしていきましょう』
「あいさー」
そうして私はバットファクターから氷を剥がす作業を始めたのだった。
***
それから30分程、封印するには首回りだけ氷を剥がせばいいと思いついたり、それじゃあ封印されて弱体化したバットファクターが凍傷に成ってしまうとセレナに突っ込まれたり、バットファクターの中の人の髪の毛が全部抜けてしまったり、股間の氷は放置したりした物の、最終的にはつつがなく作業を終えた私はその場を離れ、今現在は変身を解いてトボトボと町に向かって歩いていた。
「“きゅるるるる〜〜〜〜”
あ〜〜〜お腹減ったー!気持ち悪ーい!体いたーい!!」
体力消耗による強烈な空腹、ストレイトモードによる車酔い、クラッシュモードによる筋肉痛、の三重苦。
しかもそのどれもが気絶しそうでしないギリギリのラインなモンだから、私は延々と苦しむ羽目に陥っていたのだ。
どうせなら気絶した方がマシだったかも知れない。
さっきセレナから貰ったメールによると、今回の消費エネルギーは何時もに比べて少なめだったらしい。
しかし、体が縮んで体力の最大値その物が大きく下がっているせいで、それでも酷い反動になってしまうのだとか。
食べ物が手に入りそうな町まではまだ10分くらい掛かりそうだし…もういっそ殺せ!
「ううぅ…元々遊びに出掛けてただけなのに、どうしてこうなるの…?」
『……』
変身中じゃないので周りに人が居ないけどセレナは再びダンマリモード。
まぁ、この状態でコイツの相手をするのは辛いから良いけど。
「ああ…さっきの子に自転車の乗せてって貰えば良かった」
そんなプライドもない事を口走ってしまう位、追い詰められている。
迷惑かけた上、運転手までやらせるなんてどんなだよ!…って感じ?
(それにしても…)
しかし、まさか目が覚めて早々、戦う羽目になるとは思わなかった。
只でさえ夏休みを無駄に浪費してしまっているのに、この上戦いで更に自由時間が削られるんだとしたら…
(おのれCCC団、許せんっ!)
私はそんな少しずれた方面から悪(?)に対する怒りを燃やしていた。
だけどそんな事より今は…
「お腹減ったよぉ…」
“ぐごきゅるるるるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!”
Go to NEXT STAGE→,どうも、最近ロックマンDASHとエヴァンゲリオンにウッカリ嵌ってしまった@PFです。
何か最後が尻切れ蜻蛉…。
上手いオチが思いつかなくてこんな事に…ウッ
時間を掛けすぎると、後半に行く程やっつけになってしまう、私の悪い癖です。
関係無いけどW面白い
そしてポケウォーカーが池ポチャしてしまい、テンション只下がり…。
あああ、あと100Wで次のステージが出たのにぃ!
今回、新モード登場と言う訳ですが、現在鷹音の体調と、相手の能力故に殆ど一発屋状態になってしまいました。
一応設定に、詳しい能力を書き込んでおくつもりですが、正直これは自分の力不足故かな…。
後は静璃の事も。
正直、鷹音を戦わせて、新モード登場の切っ掛けの為だけに出したキャラに見えてしまう…。
まぁ、少しずつでもストーリー構成を上達していきたいので、見捨てないよう、お願いします。
んではレス返し
>鴎さん
えーと、ゴメンナサイ、最近感想書けなくて(才能有るクソガキ以来、書けた記憶が…)。
いや、自分が更新速度に追いつけてないだけなんですが。
もし追いつけたらきっと書くので、どうか、どうか平にご容赦を!
>セレナ面白いですね。いつも読ませていただいております。
>私にとってお気に入りの作品です!!
いや、こう言うストレートな感想は、貰ってみるとマジで嬉しいです!
自分が書く時はついつい奇をてらってしまいがちなんですけどね(苦笑)
>キツすぎるというか、セレナコアさん復活万歳。
>でもって、すぐさま玉砕・・・。
>本当機械でここまで場を盛り上げてくれるって素敵過ぎる存在ですね。
>そしてそんな彼女をかるーくあしらってしまう鷹音ちゃんナイス。
>息がぴったりのコンビですね。
まぁ、流石に弄られ続ければ少しは耐性が出来ます。
これも成長なのです。
>アメジスト「パートナーというより・・・漫才コンビに近いような気がしないでもないですが」
鷹「いやー照れるなー///」
セ『そこは喜ぶ所じゃないと思いますが…』
>おおうぅ・・笑いの女神の光臨ですか?(待て)
>しかしこうしてなつかれているということは鷹音ちゃんって結構動物や子供に好かれやすい体質なので しょうか?あの性格なら納得ですね。
記憶の問題もあって、結構鷹音はピュアです。
動物は本能的に敵か味方かを判断すると言いますから、犬も彼女のそんなよく言えば純粋(悪く言えば人生経験不足)な所が見えるのかも知れません。
>なんていうか、彼女は改造人間であり、自分自身の色々な悩みを抱えながらも何とか試行錯誤しながら前へ前へ歩いていく 前向きな姿勢がすごく好きです。
そう評価して戴けて幸いです。
とは言え、鷹音はまだ自分が本当に直面すべき問題に向き合えていません。
忘れてますから。
だからこそ、割と普通っぽい感じで居られる訳です。
鷹音と同じエレメントシリーズである灰斗と遊希は、深い狂気を宿したキャラ設定にしたつもりですし、むしろ鷹音のように前向きな方が不自然なのです。
その記憶が戻った時、彼女はどうなるのか、そこがこの物語の山場に成ると思います。
>青嵐昇華さん
ええと、此方もすいません。
現在朱凰を読み進めている最中故、珀羅に感想書くの尻込みしている所です。
全部読めた暁にはきっと…っ!
故に感想が遅くなった事はお気になさらず!
>元気な子を見てると何かいいなー、素直だし
>多分、鷹音ちゃんは和み担当なんだなと勝手に認定
>シリアスな問題にもくじけずガンバってもらいたいです
一応問題の中心人物の一人の筈なのですが、記憶が無いせいで何故か話の蚊帳の外、と言う不思議な事態にw
キャラ付けとしては、戦いながらも普通であろうとする子、といった感じ。
相方のセレナが弄りキャラなせいで、微妙に苦労性が入っていますが。
記憶故に精神年齢が見た目より低く、ませた子供みたいになっているのが、彼女を和みキャラたらしめているのかも知れません。
自分じゃちょっと分かりませんが(苦笑)
>濁った液体調味料でその内部を汚染されたディバイス・・・・じゅるり(←やめれ
>毒を塗りたくった日本刀のような切れ味を持つツッコミに定評のある彼女(?)が弄られてるのは・・・・イエスだねっ!(ぉ
鋭い刃ってのは、横からの衝撃に弱いらしいので、きっとセレナもそんな感じなんだと思います(どんな感じだ)
>>銃×剣
>あれは面白カッコイイですよねー
>やはり痛快活劇ってのはいいものです
>ええ、好きですとも痛快活劇
仲間がいて嬉しいです!
自分はアレを見て色々価値観が変わりました。
いやー、この年になってアニメに影響受けるなんて思わなかった…。
>YPさん
ハッサム…ハッサムは良いよなぁ…
でもさ…………………通信相手居ねぇ(泣)
>頭ではわかってても怖いものは怖いって、君はホントに人間くさいな……。
>つーか『不純物がつく』=『汚れる』なんだから、変身ベルトにはとことん向いてない性癖の持ち主だ。
>平成ライダーじゃ泥だらけの怪人にベルト引っぺがされるなんて日常茶飯事なんだぞ!
セ『大丈夫ですよ、何故か変身中はそんな事、気にならなくなりますから』
鷹「あれ?じゃあ、引っぺがされた時はやばいんじゃ?」
セ『……』
>>私服の予備が二着
いや、これは前回の修正版にも書きましたが、eが抜けた状態で変換した故。
でも、恥ずかしいけど言って貰えて良かった、このまま放置なんてゾッとしないぜ…(汗)
>身体に引っぱられてるのか、いつになく鷹音ちゃんがロリっぽい……。
ええ、引っ張られてます。
故に言動がガキっぽく成っています。
>セレナの毒舌はマヨネーズという切り札を得たロリ音ちゃんによって封印されちゃうのかなぁ。
>MOTTAINAIMOTTAINAI!
大丈夫、有る方法でセレナも鷹音を牽制出来るようにするので、ポジションは余り変わらない予定ですw
>ぴあのさん
>>スーパーボールとタワシ
>一体どんな拷問が行われていたっていうんだ……!?
それは…彼女達のみぞ知る、と言った所でしょうかw
>>マヨ
>ぶっちゃけた話、個人的には、自分だけは安全圏に退避してクールにツッコミを飛ばしまくる厨臭いキャラって見ててちょっとイラっとするの で、こういった弱点があるセレナさんは好感が持てます。
>きちんと鷹音ちゃんと対等って感じがするので。……いやまぁだから何だって話ですけど。
まぁ、上にも書きましたが、マヨはとある手段により、抑制される予定です。
もっとも、効かなくなる訳じゃ無いので切り札としては機能させるつもり。
>なんかロリ音ちゃんのロリ度がとんでもない事に。
>特に物食ってる時とか。
そこら辺は意識して書いてみましたw
元に戻った時、ちゃんと癖が抜けるか心配ですw(作者が慣れてしまう的な意味で)
えー、次回はちょっとした番外編の予定。
具体的に言うと、通りすがりのオリライダーがメインの話。
だから次回の1話だけしか出てこないライダーです。
補足しておくと、出てくるのは完全オリジナルと言うより所謂「キバ系統」のライダーです。
本筋に必要な話ではなく、ちょっとやってみたくなっただけ、と言う理由ですが。
本筋に関係無いとは言え、世界観の一部をちょっと説明する意味合いも込めた話になるはず……はず!
…あ、断っておきますが、半額弁当は関係無い予定です。
つーか巻奈の二つ名が「殺戮機械(キラーマシン)」だって事何人位覚えてるんだろ…?
「無駄話乙、それより本編やれ」とか「1話限定ライダーとか適当すぎだろJK」と仰る方は、書き込んでくださいな。
場合によっては止めますんで。
ではではこの辺で
,#000000,./bg_h.gif,i121-112-49-147.s11.a021.ap.plala.or.jp,1
2009年10月09日(金) 06時42分46秒,20091009063254,20091012064246,2wxTCV5hmxwwk,仮面ライダーバルキリーたん 第27話 「The unfathomed dark」,鴎,,,「The unfathomed dark」
―お前なんかに、あたしの気持ちは分からねえよ。お前みたいに強くて、他人からちやほやされるのが当たり前と思ってる奴なんかにはよ。
―どうせ、あたしなんか誰も振り向いちゃくれやしねぇ。70年近く生きてきちゃいるが、これまで誰一人、あたしを必要としてくれたことなんてねぇ。
他人の幸福を妬み恨み、決して得られない自分の人生をまるで呪うかのように暗く沈んだ気持ちで生きてきた。
幼いころに戦乱で顔の左半分を焼かれて、醜く焼け爛れたのは自分のせいじゃない。
しかし周囲から向けられるまるでゴミか虫けらでも見るかのような冷たいまなざし。
他人の幸福を妬んで、恨んで何が悪い?
どんなに追い求めても、どんなに努力していても、ただ「自分らしく生きたい」だけなのに、それすらも嘲り笑って、踏みにじって見下すようなお前らのほうが悪党じゃないか。自分みたいな役立たずなんか一族の名を汚すからとかいうわけの分からない理由で、まだガキだった自分がこの世界から消えてくれることばかりを願っていた実の親、一族を恨まないなんて出来るか。
しかし、その嫉妬に醜くゆがんでいた心を救ってくれたのは決して美談などではない。
この世で自分が一番強いと豪語する自分よりも明らかに年下のレジェンドルガの少年の傲岸不遜ともとれる傲慢さと、鬼のような強さ―。
あらゆる敵を槍一本のみで叩きのめし、地面を真っ赤に染め上げ、血の海と化した戦場で唯一立ち続けている歴戦の覇王のような少年。
彼は自分の名前を「ルシファー」と名乗っていた。
ルシファー「レヴィ、お前毒作るのホント上手いよなぁ。今回の戦争、お前の毒がなけりゃ正直危なかったぜ。ありがとうよ。頼りになる妹分だぜ」
レヴィアタン「・・・正直もうダメだと思いました・・・でも・・・兄貴が頑張ってくれたから・・・今回は生き残れたんです・・・・あたしなんか・・・・何の役にも・・・」
ゴンッ!!
すると、ルシファーはいつも自分の頭を小突く。
そして殴られた頭を抑えている自分にしゃがんで顔を覗き込んで話しかける。
ルシファー「お前よぉ、どうしていっつもすぐもうダメだ、どうせこんなもんだろうって言うんだよ?いっつも言ってんだろー?もうダメだ、どうせこんなもんだろうって諦めてしまったら、その時からそいつの魂は腐っていくんだ。そんなの、ただ死んでないというだけで、生きてるとはいえねぇんだって。俺の妹分のレヴィアタンはな、もはやレジェンドルガどころかほかの一族にもその名を轟かせている最強の毒使いなんだよ。それにだ、お前は俺の妹としてすごく頼りにしてるし・・・お前がいてくれてよかったって思ってるんだよ。俺は毒なんか作れないしな。だから、自分なんかっていうな。俺は毒使いはお前以外にいらねぇつもりだし、可愛い妹分としていると思ってるんだからよ」
そういって、最後には頭を優しく撫でてくれる。
ルシファー「お前を悪く言うやつがいたらいつでもいいな。そしたら、兄ちゃんがぶっ殺してやるからよ」
レヴィアタン「兄貴・・・・・ありがとう!」
この世で自分が一番偉いから、自分の大切な仲間を馬鹿にするやつは殺してもいい。
自分だけの理屈だけで我が物顔で戦場を渡り歩くようなゴーイングマイウェイな殺人鬼であろうけども、兄貴だけが自分のことを必要としてくれていて、自分が唯一この世で信じられる仲間だと思えた。
その「思い」が、ファントムフォームと対峙していても決して彼女が倒れずに立ち向かい続ける原動力となっていた。
レヴィアタン「あたしはもう迷わない・・・兄貴がいてくれる。それだけでもう負ける気がしない!!」
炎と瓦礫に覆いつくされようとしてる研究所内の一室。
レヴィアタンレジェンドルガとファントムフォームの激戦がさらに過熱している様子であった。
ファントムフォームの繰り出すハルバートの攻撃を避けながら、器用に杖の中に毒液を流し込み調合し、霧状へと作り変えていく。
レヴィアタン「いい加減・・・くたばれっ!!!」
Pバルキリー「お前がな」
レヴィアタンが杖から青色の霧を噴出する。
その霧に触れたものがドロドロと赤茶色の液体と化してとけ落ちていく。
レヴィアタン「きひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!あたしの毒は・・・兄貴が認めてくれた最強の毒だぁ!!あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!溶けろ!!苦しんで、もがいて、のた打ち回って絶望しろっ!!!」
次々と毒の霧を発射し、ファントムフォームは縦横無尽に部屋の中を飛び回るが瓦礫などの障害物に阻まれ、次第に不利な立場へと追い込まれていく。
Pバルキリー「・・・ちっ、しつこいわね・・・」
レヴィアタン「あひゃひゃひゃひゃ!!!あーっひゃっひゃっひゃひゃひゃひゃ!!!あたしをバカにするやつ、あたしを蔑むヤツ、皆死んじゃえばいいんだぁ!!!けひゃひゃひゃ!!」
今度は赤色の霧を噴出する。するとその霧が火に触れると同時に凄まじい音と共に火花を破裂させる!!その熱風と衝撃にファントムフォームは目を見開く。
そして、飛んできた瓦礫の破片をかわし、ハルバートを構えなおす。
Pバルキリー「起爆性の毒ガスとはね。これは・・・ちょっとキツかったかしら?」
しかし、その表情には余裕の笑みが浮かんでいる。唇の端を吊り上げ、にたりと笑う。
Pバルキリー(まあ、せいぜいあがいてみなさいよ。その自信も戦意もあなたの心の全部ぶっ壊して、そして止めを刺してあげるからね)
そのころ・・・。
森の中で待機していた慧たちも、目の前でオオカミのようなレジェンドルガの姿に化身したアスモデウスレジェンドルガと対峙しており、緊迫した空気に包まれていた。
アスモデウス「えっへっへっへっへ・・・・どこから切り刻んであげようかなぁん。顔だけは最後にとっておくからねぇん。おっぱいかなぁん?おしりがいいかしらぁん?」
慧「・・・こいつの目。見ているだけでゾクゾクする、人殺しが好きで好きで仕方ないっていう目だ。どこまでも真っ暗で冷たい闇が・・・・広がっているのに・・・・その中で宿っているものは・・・触れただけで焼き尽くされそうな狂気の炎。負けるわけにはいかない!!エメラルド、本気でいくよっ!!」
Sバルキリー「よっしゃあ!!」
ソードを構えて、一気に頭部を低く下げて地面を駆け出すと同時に、アスモデウスレジェンドルガが関節剣を振り上げる!!
剣が銀色の光を帯びて、縦横無尽に曲がりくねって地面を削り、木々を吹き飛ばし、予測不可能な動きでソードフォームを追い詰める!!
Sバルキリー「なめんなよ・・・・あたしの足の速さをよぉ!!!」
さらに加速する!!
そして一気に飛び上がると木々を飛び移り、幹を蹴り上げ、刃の猛襲を次々と避ける。
Sバルキリー「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
さらに加速する!エメラルドのバイタリティと足の速さは尋常ではない。
すばやいスピードでソードを構えるかと思いきや・・・・。
アスモデウス「はにゃっ!!」
Sバルキリー「くらええええええええええええええ!!」
蹴りを勢いよく繰り出した!!
ブオン!!
音を立てて、足がアスモデウスをかすめるが、その威力は凄まじいものであろう。
そして地面に着地すると同時に肘鉄を入れ、よろめいたところへソードを取り出し、一気に叩き込む!!
Sバルキリー「おりゃおりゃりゃりゃりゃ!!」
もはや剣を無茶苦茶に叩きつけている。
しかし、それが逆に効果的であった。
鞭として伸ばした剣が戻ってくるまでの間にすばやく踏み込んで急所となっている部分を徹底的に叩けばダメージを与えられる。
アスモデウス「おっと!あぶねっ!!」
Sバルキリー「一度走り出したら止まらないじぇえええええええ!!」
もはや止まらない暴走機関車と化したエメラルドのお得意のラッシュ戦法。
その極意とは・・・素早さを生かして敵の急所をつかみ、一気に切り刻む!!後先考えずに突っ込む!!それがエメラルドの戦い方である。
しかし、次の瞬間。
アスモデウス「ほいっ」
アスモデウスが横に飛びのく。それと同時だった。
勢いつけて猛ラッシュを繰り出していたままソードフォームは爆走し、ソードから次の攻撃に繰り出そうと一気に振るう。
Sバルキリー「くらぇええええええええええ・・・?あれ?」
その直後だった。
ドッガアアアアアアアアアアン!!!!!!
火花が轟音と共に炸裂する。
そして、彼女の先にあったのは・・・Vライナーの車体であった。
そしてアスモデウスに振り下ろされるはずだった剣の刃は見事車体を切りつけ、導線やらケーブルやら叩ききって車体に刃がめり込んでいた。
黒い煙をぶすぶす上げて無残な傷跡を作ってしまい、ソードフォームが呆然と立ち尽くす。
ルーベット「ぶーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
トパーズ「あ、アホかああああああああああああああああ!?」
サファイア「ま、周りをよく見ろよおおおおおおおおおおお!!」
慧「何やってんすかああああああああああああああああ!?」
Sバルキリー「あ・・・あれ?やっちゃった・・・みたいな?」
アスモデウス「きゃははははははははははははははは!!ひーっひーっ!!!な、何、何それ、何やらかしてくれちゃってるの!?自分の時の列車を間違ってぶっ壊してどうするのさ・・・きひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!あーっ、もうお腹痛い・・・ぷひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
もはやアスモデウスは大爆笑していた。
涙を浮かべ、地面をバンバン叩き、のた打ち回り転げまわっている。
一方。
自身の手で時の列車を破損させてしまったことで、慧はもはや放心状態であった。
いくらなんでもここまでツイてないとは、予想外だったらしい。
ふるふると全身が震えだし、込みあがってくる怒りを必死で押さえつけながら、慧はぶつぶつとつぶやく。
何でこう・・・次から次へとトラブルがこうも舞い込んでくる!?
慧「・・・エメラルド・・・・あとで・・・・おしおき(怒)」
エメラルド「ご・・・ごめんなすわいいいいいいいいいい(泣)」
慧「・・・サファイアさん、代わってくれる?」
サファイア「は・・・・ひゃい・・・・(怯)」
もう慧の顔は無表情で、瞳は完全に輝きを失い、ゆがんだ笑みだけが浮かんでいた。
慧「ナンパなんてしたら・・・・怒るからね」
サファイア「りょ、了解しましたっ!!」
「Gun Form」
そして青い白鳥が施された仮面と甲冑に身を包んだガンフォームへと代わる。
Gバルキリー「君のハートに・・・ロックオン!ばぁん」
アスモデウス「おろ?変わっちゃった?」
Gバルキリー「早く何とかしないとこっちの命が危ないからね・・・本気でいくよっ」
ダダダダダァァァァァン!!
無数の光弾(たま)が飛ぶ。それを避けながら何とか関節剣を振るうタイミングを見計らうがなかなか隙を与えない。
アスモデウス「よっと!ほっと!おうっと!!ほりゃっ!!」
Gバルキリー「早いね・・・もう」
ダダダダダァァァァァン!!
ダダダダダァァァァァン!!
ダダダダダァァァァァン!!
無数の銃弾が飛び交い、それを次々と避けていくアスモデウス。
それを追跡するかのように銃弾を発射する。
しかし、その時だった!!
チュンッ!!
ダダダダダァァァァァン!!
ダダダダダァァァァァン!!
頬を目にも見えない速さで何かが掠め、それが後ろへと飛んでいく。
Gバルキリー「・・・あり?」
後ろを見る。
すると、それを見て、サファイアの目が驚きで見開かれる。
飛んできたそれは光弾であり、そしてそれは木々によって跳ねて反射し、見事・・・電車の車体を穴だらけにしていた・・・。
蜂の巣と化した車体を見て、あんぐりと口を開く。
慧「・・・・・・・・・・・・・・・・!!?」
サファイア「あ・・・・あれ・・・・・・?」
そして車内では、飛んできた無数の光弾をテーブルやソファで必死の形相で防いで、顔を真っ青にし汗が全身から噴出して肩で息をしているエメラルドたちがいた。
そう、飛んできた無数の銃弾を必死で防いでいたのだった。
トパーズ「お・・・お前は私たちを殺すつもりか?」
ルーベット「い・・・・生きてて・・・よかった・・・・・死ぬかと思った」
エメラルド「このバカ!!ドバカ!!!エロ!!!ポンコツ!!!!オタンコナスッ!!!」
涙混じりに怒号が飛び交い、それを聞いてアスモデウスがお腹を抱えて顔を真っ赤にしながら地面に転がり大爆笑している。
一方慧の表情からはもはや無表情通り越して能面のようになってしまい、洒落にならない怒りが湧き上がっている。
慧「・・・なんで・・・どうして・・・・こうなるの・・・・?」
サファイア「・・・・・・・ごめんなしゃい」
慧「・・・・トパーズさん・・・・・いくよ」
トパーズ「やれやれ・・・だ」
そして、トパーズが憑依し、アックスフォームへと変形していく。
Aバルキリー「チェックメイト、待ったはなしだ」
もうこっちがある意味追い詰められてはいるが、それを感じさせないように冷静に努める。
斧を肩に担いで構えると、アスモデウスも目じりにあふれ出る涙をふき取り、剣を構えだす。
その時だった。
ふしゅう・・・・・。
細かい泡が湿疹のようにいくつも浮いた、まるで赤い血に灰か煤でも混ぜ合わせたかのような、毒々しい色の霧が一気に森中に吹き出てきたのだ。
それを嗅いでアスモデウスが顔をしかめる。
アスモデウス「こいつは毒?!レヴィのヤツかしら?くっ、いいところで邪魔しないでよね!!慧ちゃん!!一旦引くわよっ!!早くしないとあんたまで死んじゃうわよ!!」
そういうなり、突然アックスフォームの体を抱え込むと、一気に飛び上がる。
その強靭な身体能力と屈強な力に、アックスフォームは驚きを隠せない。
超重量級を誇る重厚なアックスフォームを軽々と持ち上げて飛び上がることが出来るなど、信じられないことであった。
Aバルキリー「おい!!何で私まで担いでいくんだ!!!」
アスモデウス「ふえ?だぁって、毒で死んだらあたしが殺せないじゃん。レヴィなんかに慧ちゃんあげないもんね。えっへっへっへぇ〜、こぉんなに可愛い獲物ほかに誰が渡してやるかっつーの!」
無邪気に笑いながらアスモデウスがいい、その屈託のなさにアックスフォームが混乱する。
人を人とも思わない残忍さ、人を殺すことに快楽を感じる残虐さに、子供のような無邪気さやあどけなさを併せ持つエキセントリックな彼女の思考回路が読めない。
Aバルキリー「ええい!!離せ!!離せ!!」
アスモデウス「離せっていってもねぇ、あんな毒の中にいたらイチコロだっつぅの。どうせなら安全な場所まで避難して、そこで続きやろっ!!」
Aバルキリー「おのれええええええええええ!!!」
アスモデウス「ああん、悔しがる慧ちゃんもかーわいいなぁ」
一方で、まるで新しい玩具を買ってもらった子供のようにはしゃいでいるアスモデウスを見上げて、一人の眼鏡をかけた知性的な雰囲気の女性が眉間にしわをよせ、それを親指と人差し指でつまむ。
つややかな黒髪を後ろで短く束ねてシニョンにしており、青い甲冑を身につけ、手には小型のハンドカノン(手製の片手大砲)を仕込んだ鎌を持っている。その銃口から先ほどの赤黒い霧が吹き出ていた。どうやら先ほどの霧は彼女が発射したものらしい。
セブンズヘブンの知将、マモン。
参謀的存在ともいえる存在であった。
マモン「アスモのバカが・・・・。連絡こねぇからどこで道草食ってやがると思ってきてみれば、このザマかよ。まあ、バルキリーはあいつに任せて、レヴィのヤツ、この様子だと何かトラブルに巻き込まれたな。早く行かないと」
まあ、あいつに目を付けられた時点でこっちが手を出さなくても悲惨な目に遭うだろうしなと、残酷にアックスフォームの末路を決定付けてマモンはきびすを返す。
「マモン・・・のぉ・・・姉者」
すると、そこへもう一人女性が現れた。
小麦色の肌をした健康な魅力と色気が特徴的な長身の凛々しい雰囲気の女性だ。
紫色の長い髪を後ろで紐でくくり、鋭く冴えた月のような光を宿した青い瞳を持ち、肩にはかなりの重量を誇る大剣を持っている。顔の右頬に仏教では真言を意味する青い紋章を刺青として刻んでいる。
セブンズヘブンきっての怪力の持ち主で大剣使いのベルゼブルである。
マモン「ベルゼ!!様子はどうだった」
ベルゼブル「・・・・研究所・・・崩れている・・・姉者・・・襲撃・・・受けている・・・かも」
少女は人間の言葉をまた片言でしかしゃべれないらしい。
たどたどしく、それでいて物静かに説明すると、事態を飲み込めたのかマモンの顔色が険しくなる。
マモン「ちっ!!入り口が崩れているとなると、搬送用のターンテーブルから脱出するつもりか?いずれにせよ、行くしかねぇな」
ベルゼブル「姉者・・・守る・・・・・」
そういって、防毒マスクを着用し、二人が霧の中へと飛び込む。
その頃。
地下での戦いは苛烈極まっている状況であった。
仕込み杖から放たれた刀の刃がハルバードと激しくぶつかり合い、そのたびに火花が飛び散る。だが戦いが始まってから数十分後にその戦いに変化が生じた。
レヴィアタン(まずい・・?!!毒がもうない!!)
そう、この激しい戦いで彼女の持っている毒薬は底を突きかけていた。
しかしファントムフォームは無数ともいえるカードや花、花火などを出しては幻惑し、ハルバートを突き、斬り、押してくる。
怒涛の攻めにレヴィアタンが徐々に押されているのだ。
しかし後ろをふと見ると、マモンが作ってくれたお手製のハンドカノンが残り一本おいてあった。
唯一の希望が見えた!!
あれならどんな化け物でもイチコロだ。
レヴィアタン「ぐっ!!!」
仕込み杖を一気に持ち上げてハルバートを振り上げようとしていた手を止め、後ろに飛びのいた。
そしてハンドカノンを取り出し、一気に身構える!!!!
Pバルキリー「ちっ・・・」
ハルバートを構えるが彼女のハンドカノンはもはや標的を定めていた。
レヴィアタン「死ねぇえええええええええええええ!!!!!」
その直後だった。
ザクッ!!!
胸に鋭い一撃が走る。見ると、胸から銀色に光る刃が赤い血を滴り落ちている。
何が起こったのか彼女が理解するのに、数秒かかった。
目が見開かれ、やがて止まっていた思考回路に何が起こったのか自覚する。
そして激痛が走り、口からごぼっっと音を立てて血液が逆流する。
そして振り返ると、そこにいた人物を見て恐怖で血の気が一気に逆流するかのような感じに襲われる。
その人物は憐憫の情など塵ほども感じさせない低い声で、たった一言だけ、言った。
「テメェ・・・・人の仲間に何してくれてやがる」
鋭い6本のカギ爪を持つ腕を持ち、手にはクナイを持ってそれを深々と彼女の胸に突き刺しているのは、琥珀であった。
しかしそこにいたのはいつもの温厚で姉御肌を利かせている琥珀ではない。
仲間をやられて、怒りと憎悪に満ちた氷のような冷ややかな視線を持ち、全身から吹き上がる青い炎のようなイメージを感じさせる。
そして振り返り、爪を振りかざす!!しかし、それをすばやく掴み取る。
「な………!」
目の前に迫っていた琥珀の、底の知れない琥珀色の瞳がレヴィアタンを見据える。そこに先程までの悠然さはなく、だからといってレヴィアタンの切羽詰った行為に焦燥した風でもない。ただ何事も窺えない無表情をその端整な顔に決め込み、そこに琥珀とは全く違う種の冷気を漂わすだけだ。
握り締めた手首を通して、細く華奢な身体が小刻みに震えているのが分かる。だが、レヴィアタンは自分のそんな状態までは気が及んでいないらしく、半ば無理やりといった様子で、猶も口元に歪んだ笑みを作った。
レヴィアタン「あ、あひゃひゃ、まだ、いたのかよぅ?で、でもぉ、もう遅いわよ!!もうすぐ研究所は崩れ落ちる!!仲間なんか見捨ててさっさと逃げればよかったのにぃ!!ベタな正義感とか熱血振りかざしてウザいったらありゃしな・・・あがっ!!!」
琥珀「・・・・変身」
アサシンフォームに変身し、言葉を紡ぐに連れ、落ち着きと余裕を取り戻しつつあったレヴィアタンの顔が、瞬間、苦痛と苦悶の表情に豹変する。手が、掴んだ細腕をぎりぎりときつく握り締めていたのだ。
レヴィアタン「やめっ…、離せっっ!! 痛いっっ!!!」
激痛に耐えかねて、女は喚きながら、自身を締め上げてくる手を、身体を引くことで無理やり引き離そうとする。が、いくら試みても、
それを剥がすどころか、微塵も動かすことさえできない。琥珀の力の前に、レヴィアタンの抵抗など全くの無意味だった。
Asバルキリー「へえ」
細い手首を手中にしてから、ずっと黙したままだった口が、感心と嘲りを込めた口調でそう言い、低く、笑った。
Asバルキリー「まだ痛覚は感じるか、ちょうどいいや」
背筋がぞっとするような冷たい声と、言葉。だが、それを感じる間も与えず、アサシンフォームはきつく締めた腕先を、さらにゆっくりと掌握した。
たちまち、レヴィアタンは苦痛に歪んだ顔で、手首から先以外の身を悶えさせながら、声にならない絶叫を発する。この時確かに、アサシンフォームを見る、その濁った瞳には全てを剥ぎ取られた後の「恐怖」しかなかった。
そこに映るのは、「冷酷」などという一言ではとても済まされない。
レヴィアタン「…っ、な、ぜ…」
震える、崩れ落ちそうな疑問詞。それに続く問いかけも、継続される痛みに伴って、切れ切れになっていた。
レヴィアタン「わ・・・あたし・・・セブンズヘブンなのに・・・どうして・・どうして・・・イマジンごときに・・・・―――ひぃっ!!!」
そこまで口にしたところで、レヴィアタンはまた短い悲鳴を上げて、喘いだ。アサシンフォームの指が寸分の容赦なく、その腕に食い込んだからである。
そのまま、加えた力を少しも緩めることなく、アサシンフォームは残酷な冷笑が浮かんでいる自身の口を、レヴィアタンの耳元に近づける。華奢な身体はそれから逃れようとするが、両手首が捕まった状態では、そんな事ができるはずもない。
Asバルキリー「お前がどこの誰だとかそんなの関係ねぇ。お前は・・・あたしの妹分を痛めつけた。お前がたとえ神だろうが悪魔だろうが、あたしは仲間を痛めつけるヤツは絶対に許せない。必ず追い詰めて・・・・ブチ殺す。慧じゃまだ甘いからよ、あたしはそう割り切ってるんだよ。守るって事はこういうダークなことも全部含めていうんだ。甘っちょろい情など時に全部切り離してでも守りたいもののために・・・あたしはどこまでも冷酷になってやる」
そして、パスを通す。
オレンジ色の光が飛び交い、クナイを突き刺したまま一気に空中に向かって投げ放つと、蜘蛛の巣にかかった獲物のように縛り付けられて動けなくなり、そのまま落下してくる。
Asバルキリー「アメジスト!!行くぞ!!」
Pバルキリー「・・・あんたも大概ブチキレてる性格だったってわけね。でも、ますます惚れたわ」
Asバルキリー「あん?なんか言ったか?」
Pバルキリー「・・・別に・・・いつでもいいわよっ」
Asバルキリー「おらぁあああああああああ!!」
Pバルキリー「はああああああああっ!!」
蜘蛛の巣にかかった獲物めがけてアサシンフォームの右足とファントムフォームの左足を一気にたたきつけられ、オレンジ色の光と紫色の光が全身を駆け巡り、傷口から原子崩壊を引き起こし、粉々に崩れ落ちていく。
レヴィアタン「ああ・・・・いやああああああああああああああああ!!!!」
爆発を起こし、火の中から緑色の光を帯びた手のひらくらいの大きさの宝石のようなものが落ちてきた。
それを手にし、アメジストがまじまじと見つめる。
アメジスト「・・・こんな宝石で蘇ったっていうの?」
琥珀「何だそれ」
アメジスト「ヘビ女を現世に繋ぎとめていたものらしいわね。回収して調査してみるわ」
琥珀「よっしゃ!それならもう脱出しようぜ!!カートリッジも手に入ったし、機関車も準備OKだ!」
二人が炎の海の中に消え、電気機関車で脱出し、炎の海が遠ざかっていく。
こうして、カートリッジを手に入れ、そしてセブンズヘブンの一人「嫉妬のレヴィアタン」を見事討ち取ったのであった。
その頃。
森の中では・・・・。
慧「いやじゃああああああああああああああああっ!!!!」
アスモデウス「待ってよぉん、慧ちゅわ〜ん♪」
慧が絶叫を上げて、涙を流しながら、後ろから迫ってくるアスモデウスから必死に逃げまくっていた。
慧「もう最悪!!最悪じゃあああああああああああああっ!!!もうイヤッ、もうバカとエロなんか大、大、大、大嫌いじゃあああああああああああああああああっ!!!!」
慧の絶叫が山脈内に響き渡った・・・。
続く
(現在の戦況)
仮面ライダーバルキリーAsフォーム○―×レヴィアタンレジェンドルガ(嫉妬)
仮面ライダーバルキリーPフォーム
戦利品:エネルギーカートリッジ
レヴィアタンの魂
時の崩壊まであと5日間。
,さて本日ついにセブンズヘブンの一人、レヴィアタンレジェンドルガが倒され、残り6人となったセブンズヘブン。
そして、アスモデウスにロックオンされてしまった不幸の権化ともいえる慧の今後の行く末およびアスモデウスの恋の行方を今後とも応援よろしくお願いいたします。
さて、いつも貴重なご感想ありがとうございました。
>烈様
>大切な仲間の事を馬鹿にされてしまったことにより慧の怒りに触れてしまったと同時に仲間達との“絆”の“力”と持ち前の周囲の様子などを良く観察をし、その結果敵対する相手の戦法の弱点などを見抜くなどの様子が結構かっこよかったです。
ありがとうございます!!そこは力を入れて書きたいと思っていたので嬉しかったです。
慧の長所が荒っぽくも熱血で仲間のために体を張ってでも助けようとする姿勢は難しかったです。でも、そう言って頂けると非常に嬉しく思います。
>それとアメジストの言うとおり琥珀さんのポジションというのはみんなの“ツッコミ&オカン&保護者役”というのはあながち間違っていないと思います(笑)
確実に心労および筋肉痛および頭痛は耐えないですけどね。
しかし今回の話で、この2人も普段はおとなしいけれども一度切れたら手がつけられないクセ者であることが判明、今後とも彼女たちは慧たちの見えないところではこういった黒い面があるといった話を書いていきたいと思います。
>敵といっても自分達の大切な妹分(仲間)を大切に思うところは実に男らしいと思いました。ある意味“ルシファー”は平行世界の“慧”ともいえる感じがします。もし、この二人が同じような思考の持ち主で同じような生き方であったのならば、仲良くなっていたように思えます。
慧とルシファーは確かに似ている雰囲気がしますが、決定的に違うのは慧にはないルシファーの「冷酷さ」でしょうね。戦場において、敵であったり、仲間に手を出そうものなら彼は確実に殺します。慧にはたとえ敵であろうとも「殺す」といった行為には否定的だし、アスモデウスにも抵抗はするけど殺そうとはしていないわけでして。これがルシファーだったら確実に殺されますしね。
>アスモデウス
実は彼女、セブンズヘブンの中でもかなりの強さを誇っております。
その上、子供っぽいし我がままだし、自分の欲望には忠実なのですが、そういった我がままを叱りつけながらも面倒を見てくれているルシファーなどの存在から結構悪役だけど憎めないキャラを考えながら作っております。
>“Pヴバルキリー”
読み直して驚きました。本当に誤字だったうえに、間違えてハルバートフォームの意味で「H」と書いてしまったのです・・・。
ご指摘ありがとうございました。
>黒様
リクエストありがとうございます!!
大変嬉しく思いまして、自分でも想像してみるとこれは面白い!!と思えます。
しかし・・・一度に15体は正直難しいです。Vガッシャーのほかにも武器を作ったりイマジンを憑依させたりする物語を考えていくと、自分でもストーリーが把握しきれなくなる恐れがありますので・・・ですが今後、このアイディアは使っていきたいと思います!!
本当にありがとうございます!!
今後ともバルキリーよろしくお願いいたします!!
そしてセブンズヘブンの一人「レヴィアタン」について少しだけ紹介いたします。
かつては毒や薬などを作ることに長けていたミドガルズオルム一族の娘だったのですが、戦乱で顔が焼けただれたせいで、両親をはじめとする一族全員から「戦乱で唯一生き残った恥知らず」という戦で追いやられた敵への怒りを理不尽にも受け続けて迫害を受けてきた彼女は、それが原因で卑屈な性格になってしまったのです。そして毒薬つくりの腕前も我流で生み出し、薬学者としては優秀な腕前を持っていたにもかかわらず、誰からも認められず、必要とされないまま生きてきましたが、彼女の一族の隠れ里を他の一族に襲われ焼き討ちにあった際、そこに偶然傭兵として世界中を旅していたルシファーと出会い、彼を一晩宿代わりに家を貸したという理由だけで彼はレヴィアタンを助け、毒使いとしての腕前を見込んで仲間にしたという過去があります。,#000000,./bg_f.gif,st0416.nas931.ichikawa.nttpc.ne.jp,1
2009年10月06日(火) 23時55分55秒,20091006235555,20091009235555,19Z6rZRlgiCos,仮面ライダーintertwine 第1章エピローグ2「はじまりの始まり」 ,オリジナルライダー・リレー企画,,,作者 深優
19:05 廃ビル前
「なるほど、パワーに関しては申し分ないな。
だが、変身体になるのに理性が無くなるのは些かマイナス面が大きいな。
それにおっと・・・。」
戸隠山紅葉は、緋色の変身体がスパイダーゼストを惨殺していた所を気配を隠して
観察していた。
ゆっくりと監視していた緋色が時間切れを起こし、衣服をまとわない人の姿に戻り意識を失っていた。
「それに投薬を長い間行っていないからタイムリミットも短いか。
・・・・・マイナス面が多すぎるな。」
紅葉は、その一部始終を見つつ、簡単に感想を述べる。
「とりあえず、あれを回収するかな・・・・・っ!?」
紅葉はつまらなそうな声を上げながら緋色に近寄るが、突如煙を上げて飛来する物に飛び引いて避ける。
「ちっ、たかだか煙幕なんかに俺が・・・・・ちっ...」
紅葉はその煙を上げて飛来した物体が旅行鞄と確認し、煙から漏れる臭いに瞬時に口と鼻を手で覆い、直ぐさま目を瞑りながら後ろにさらに飛び引く。
その煙はほんの10秒くらいで止み、周囲の視界が完全に確保できるレベルまで晴れると
紅葉は目を開け、周囲を確認する。
「・・・・・ちっ」
紅葉は、舌打ちをすると誰もいないその空間をにらむ。
「なるほど、「電脳の女神」ならば、俺の種族を調べ上げて弱点も調べられるか・・・。」
紅葉は苦虫を潰した様な表情をすると、拳を壁に叩きつける。
『はぁ〜い?・・・ってそっちも不機嫌そうね。』
玉藻は、おどけたような口調で紅葉が使っている通信機に通信を入れる。
「・・・・おかげさまでね。そっちも、良い知らせではなさそうだね。」
紅葉はいらいらした雰囲気を隠しもせずにいう。
『ええ、こっちも標的に逃げられた上に全滅させられたわ。』
「ほぉ、いくら俺が人員を借りたとはいえ
こちらがラビリンスの人形ごときに遅れはとらないとおもうが?」
紅葉は、玉藻の言葉に関心を抱いた声を上げた。
『それが今回の依頼はあの「死神」リサ・シュルフにも廻っていたみたいなのよ』
「なるほど・・・確かに、兵隊だけでは分が悪すぎるな。」
紅葉は納得した様子で頭を掻いた。
『それでも、今回は貴方があんな強引に人員をとらなければ分があったわよ。』
「どうだかね?死神が介入した時点で勝てないとおもうけどな。」
『うるさいわね。貴方だってひどく失敗したようだけど?』
「・・・途中まではよこったさ。」
『結果が残せなければ意味は無いと思うのだけど?』
「うるさいな・・・とりあえず、出来損ないの下見にしては上出来だよ。」
紅葉は鬱陶しそうに呟く。
『それで、どういった感じなの?』
玉藻も興味がわいた感じの雰囲気が声にもれた。
「とりあえず、判断力や思い切りの良さ、変身体のパワーその他云々は、Bクラスでもいいんだが・・・」
『だが・・?』
「変身体になると理性を無くして暴れているだけというのはマイナスすぎる。
あれじゃあ、血に飢えた獣と変わらないな。」
『そう。では詳しい経緯を知りたいから一度戻ってきてくれないかしら?』
「りょ〜かい。・・・・だるいな、おい。」
紅葉は通信を切ると、かったるそうにあくびをしながら歩き始めた。
19:30 高級住宅街
「・・・ここは?」
緋色は、膝辺りが熱く感じ目を覚ました。
「おはようございます。緋色様。」
フラウディアは、緋色が目を覚ましたのを感じると首だけを傾けて言う。
要するに、彼女が自分を負ぶって来たことを実感した。
緋色よりも頭2個分は小さい少女に背負われているのは何とも滑稽だった。
「・・・・もういい。」
緋色は、そういうとフラウディアからおり、よろめきながら自分の足でたった。
「・・・・体調はいかがですか?」
フラウディアは、よろめく緋色を見ながら淡々と語る。
「・・・よくはない。」
「・・・本来ならば絶対安静と告げるところですが・・・。」
緋色をじっと見つめながらフラウディアはいう。
「・・・そんなことをしている時間など俺にはない。」
緋色はそのフラウディアの目をさらに射抜くような決意の色を目に浮かばせていた。
「・・・そうですか。ならば本機からいえることはなにひとつありません。」
フラウディアは、緋色の瞳からの言葉を汲み取るようにこくんと頷いた。
「・・・そうか。」
「あっ・・それでは一言だけ、いい忘れておりました。」
フラウディアは、思い出したように呟く。
「なんだ?」
「お帰りなさいませ。緋色様。」
フラウディアはちょこんと自分の服のすそをつかむと一礼を緋色に捧げた。
,未だに新たな職場に慣れなく、日付が変わるまでの仕事が続いております。
結局、日ようも仕事でしたし、遅くなりどうもすいません。
,#000000,./bg_a.gif,em114-48-146-205.pool.e-mobile.ne.jp,0
2009年10月03日(土) 23時29分25秒,20091003232925,20091006232925,1gyvsuwp6tgSA,仮面ライダーバルキリーたん 第26話 「The deepening dark」,鴎,,,「The deepening dark」
時の砂漠。
もはや時間旅行する列車さえもその姿はない。
ただ乾いた荒野には風が吹き抜ける音が聞こえてくるだけの殺風景な風景が広がるばかり。
それもそのはず、史上最悪のレジェンドルガの集団「セブンズヘブン」が蘇り各時代で大暴れしているということで、もはやその状況を恐れてターミナルで各列車はいつ解けるか分からない待機命令が出ているのだ。
セブンズヘブン。
かつて、滅ぼされたはずの最強最悪のレジェンドルガ7体の戦闘集団。
その連中がいつ出くわすか分らない緊急事態に戦々恐々としており、かつてない緊迫感と危機が時の運行に迫っていた・・・・。
そんな中・・・。
唯一の希望の星、仮面ライダーバルキリーたんこと天童慧はといえば・・・。
アメリカ・クレイモア山脈近隣に広がる欝蒼とした大森林は昼間でさえ日の光が差し込まない薄暗くじめっとしている湿気が肌にまとわりつく感覚が離れない。
慧はその森林の中、警戒しながら歩いている。
森林の中には野生動物の気配も感じられない、不気味なまでの静寂に包まれている。
紫色のメッシュを入れ、七三わけに髪を分けた慧にはアメジストが憑依している。
A慧「静かね・・・」
そこへ、空を飛んでイカロスショットが慧の手元でカメラの姿に戻る。
偵察としてここら一帯の動画や写真を撮影してきたのだ。
慧が開いて、動画を見る。
A慧「・・・・ふむ・・・あら?この足跡は・・・・4人・・・・何かに向かって歩いているわね。北西か・・・・ふむ・・・・ふうん」
アメジストが動画を検分しながら見ていると、ある画面が射し変わったとき映像を停止させる。
ルーベット「これは・・・穴・・・・・?」
トパーズ「重そうな石で造られている蓋が被さっているな。おそらく防空壕じゃないか」
サファイア「しかし、足跡がここで途切れているってことは」
エメラルド「勇み足は危険だね。この穴の所、小型ナノマシンで内部を撮影してあるよ。見てみないと・・・」
アメジストがイカロスショットの動画を切り替えると、蓋がされている穴の内部が鮮明に美しく映し出される。光が閉ざされ暗闇に包まれているが、ライト機能を使っているため、中の様子が映し出される。
そこには穴の下へと続くハシゴがかかっていた。
やがて、5mほど下にいくと、防空壕にしてはやけに整備された簡単な作業場のような作りの空間が置かれ、その部屋から出て行き、通路に出る。
そして、その先にあるものを見つけ、目を見開く。
慧「これは・・・機関車かな?」
アメジスト「見たところ作業用の電気機関車ね」
エメラルド「・・・なるほどね。昔この先にある地下鉄から引き込み線を使って引っ張ってきた炭鉱開発用の地下鉄ね。ここにこれがあるってことは、その先にある重厚な扉こそがカートリッジが眠る電磁研究所ってわけね」
サファイア「しかしまあ、この先にもいるんだろうね」
トパーズ「だろうな。油断は禁物だ」
慧「・・・この足跡・・・まさかセブンズヘブンのものなのかな?」
ルーベット「・・・・・または救助者?」
慧「・・・そうだとしたら・・・対策が必要だね」
イカロスショットで動画や写真を注意深く見ながら慧たちは今後の作戦会議を立てている。る。
その様子を木の陰から身を隠すように一人の小柄な人物がうかがっている。
黒装束に身を包み、顔には顔の下半分を隠すような布が覆っており、蛇をイメージした飾りがついている。
「きひひひひ・・・・」
可愛らしい声帯とは裏腹に不気味な笑い声を上げて少女は背中に持っている筒の中に入っている液体を持っていた杖の中に注ぎ込むと、慧の方に先を向けて噴出する!
フシュウ・・・・・・。
白い煙が立ち込めてきた。
瞬時に琥珀がその霧に気づき、表情をこわばらせる。
琥珀「やべぇ!!アメジスト、飛べ!!」
琥珀が叫ぶと同時に、わけの分からないまま空高く飛び上がり木の上に足を置いて木の幹に手を置いて全体重を支える。
ルーベット「どうされましたか!?」
琥珀「この霧・・・毒だ!!それも神経毒だぜ。自然に噴き出すような成分じゃねぇ!!」
そして、その霧の中に飛び込んだ小鳥は哀れ空中で突然もがき苦しみだし、白目をむいて地面に頭から落下し二度と動かなくなった。
A慧「これは・・・!」
琥珀「どうやら、次の敵は毒使いか」
ルーベット「しかし、どうして気づいたのですか!?」
琥珀「匂いさ。毒の調合に使う薬草と鉱石の匂いがわずかだけどした。この森は天然の野草園みたいなもんだし、毒の調合に使う鉱石さえも豊富だ。これらを調合することでとんでもない毒薬にもなるし、薬にもなる」
サファイア「へえっ、詳しいね」
イマジンズが感心したかのように目を見開く。
琥珀「別に・・風呂に入れる薬草だの入浴剤だの調合しているうちに、何となく覚えていただけだ」
本来雑用としてVライナーの管理を任されていた琥珀だが、仕事には人一倍真面目だし、自分が興味を持ったことはとことん打ち込むのだ。
そしてほとんどがトパーズから教わったものであるが、我流で知識をさらに調べて行った。
トパーズ「琥珀は物覚えがいいぞ。吸収も早いしな」
サファイア「応用力もあるしね」
琥珀「それよりもそんな毒使いがいるってことは、ここも危ない。急いで避難しようよ」
A慧「待って。それなら、今回は全員で行ったら毒使いの毒にやられて動けなくなったところを残りの連中が襲い掛かってくるかもしれないわ。だとしたら・・・」
サファイア「今回は二手に分かれて行動したほうがよさそうだね」
ルーベット「伏兵を迎え撃つ部隊とカートリッジを入手する部隊・・・ですな」
慧「・・・そうなると、別行動でも安心して任務を全うすることを期待できるといえば・・」
結果。
10秒後だった。
慧「琥珀さんとアメジスト、実体化できるし、二人なら毒とかにも耐性があるなら、任せてもいい?」
はっきり言いやがった。
前置きを入れると、もはやどういった意味で分けられたのか一目瞭然だ。
琥珀「・・お、おう」
アメジスト「・・・了解」
ルーベット「やはり、慧殿の背中は私たちが任されておりますな!!」
バカです。
トパーズ「その通りだ」
こいつもバカです。
エメラルド「OK!!」
こいつもです。
サファイア「ふっふっふっふ・・ここまで信頼されているとなるとご期待にこたえなくてはね」
バカばっか・・・。
琥珀(・・・・こいつら、絶対慧の本心分かってない・・・)
アメジスト(本当、チームワークがあるんだかないんだか分からない連中ね)
琥珀(まあ、この場合、私たちが実体化できるからということで選ばれたと思っておくとしようぜ)
アメジスト(深く考えすぎるとハゲるわね)
こうして、ジャングルにおける探索活動は伏兵部隊とカートリッジを手に入れるための探索部隊の琥珀&アメジストに分かれたのだった。
しかしこのときの慧の予想は偶然とはいえ当たっていたのだ。
そして、ある意味最悪な展開を迎えているのかもしれない。
その地点から3キロほど離れた地点には、豊満な胸を大きく広げて肩まで着物をはだけ、すその片側だけ太ももからスラリとした長い足をむき出しにして歩いている妖艶で官能的な肢体を持ち、色香を漂わせている長身の和風系美女が歩いていた。
アスモデウス「レヴィに定期連絡終わらせたら、また待機かしら?あぁん、あたしも早く暴れたいわ」
すると、突如茂みからなにやらガサガサっと音が鳴る。
アスモデウスがそれに気づくと同時だった。
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!!!!
無数の矢が飛び出し、それを軽く後ろに飛びのいた。
すばやく背中に持っている西洋剣に手をかける。
アスモデウス「ん〜?」
見るとそこには矢を構え、殺気立った兵士らしき褐色肌で生気のない瞳を向けている集団が弓矢を構えていた。よく見ると、皮膚が乾いてひび割れている。その剥がれぶりから、泥人形のような感じである。
アスモデウス「はぁ・・・レヴィ・・・潜入してきた相手を誰彼構わず襲撃させるわけね。臆病者のあの子らしいわ。でもね、ここでやられるようなあたしじゃないのよ」
剣を鞘から抜くと、ひゅんと一振り構える。
すると、剣と剣の部分が分かれて見る見る鞭のような形態に変わる。
そして刃をれろりと赤い舌でなめると、その瞳を残虐な冷たい光が宿った。
アスモデウス「殺れるものなら・・・犯ってみなさいよ!!あひゃひゃひゃひゃ!!!」」
アスモデウスの全身が見る見る銀色の甲冑と毛並みで覆われているオオカミのような凶暴な姿に変化する。
再び弓矢を構える兵士たちを見て、関節剣を構える。
アスモデウス「はぁ・・・こぉんな泥人形くらいじゃ切り刻んでも楽しくないわね。さっさと終わらせてあげるわ・・・くたばりなっ!!!」
剣を振るうと銀色の光となって剣が伸び、曲がりくねって、遠くに離れた土人形を切り刻んでいく。細切れになり、霧散する。容赦なくあらゆるものを切り刻んでいくその姿は美しい羅刹そのものである。
その光景をカメラで見ていたレヴィアタン=セブンズヘブンの毒使いは呆れて見ていた。
黒いローブをはずし、顔の左半分を仮面で隠しているが、あどけなさが残るかわいらしい顔立ちをしている紫色の髪のセミロングヘアをしている少女だ。
レヴィアタン「アスモ・・何やってるのよ。人のところの兵士勝手に切り刻んでくれちゃってさ。まぁ、あいつが動いてくれるなら万が一バルキリーが忍び込んでも倒してくれるはずか」
その様子を天井裏から琥珀とアメジストが見ていた。
琥珀「どうやら、伏兵が出るかもしれないって話は大当たりだったってわけか」
アメジスト「嫌な予感ばかりが的中するわね、あの子の場合」
琥珀「それを言ったら慧泣くからな」
アメジスト「大泣きね」
天井裏を抜けて、電磁研究所内の施設をすばやく動き回り、一通り研究所内の施設を確認するとカートリッジがあるらしき保管庫の位置を見つけた。
琥珀「ここか?」
アメジスト「まずいわね。このエリア・・・地下4階・・・この階のさらに3階下・・・その上、今見ていたけど、カートリッジ保管庫のカートリッジが保管されている特殊ケース内での充電が十分行われてないわ。特殊な機器だからこれじゃないと充電できないのね。電力を回復させないと・・・」
琥珀「電力が回復しちまったら相手にも気づかれるよな」
アメジスト「でもね、方法はないわけじゃないわ」
琥珀「というと」
アメジスト「別に電力を回復させることを主体として行うわけじゃなければいい」
琥珀「はあ?」
アメジスト「この地図を見て。この近くにある緊急脱出用の電気機関車があるわ。つまり、外側の脱出口を封鎖して、この電気機関車で地上に出るしかない状況を作るわけ。そのとき、電気機関車を動かすには電力補給のための発電装置の回復が必要よね?」
琥珀「そうか!敵を誘導させて電力を回復させれば、どさくさにまぎれてカートリッジを奪い取ってこっちはこっちで別に設けた脱出ルートで出ればいい」
アメジスト「そういうことね。隠密ならではの任務、敵を倒すことも重要だけど、まずはカートリッジの確保が必要よ」
琥珀「よっしゃ」
アメジスト「つまり・・・・気づかれることなくド派手に暴れるわよ」
琥珀「・・・やってやるか。ストレスたまりまくりだったしな・・・」
そういって準備してきた無数の爆薬、ダイナマイト、焼夷弾・・・・。
二体のイマジンが心なしか黒く邪悪な笑みを浮かべ、すぐさま動き出した・・・。
そうっとう恨み辛みというかストレスがたまりまくりだったらしい・・・。
数十分後・・・・。
「侵入者だああああああああああああああああっ!!」
ドガンドガンドガンドガンドガアアアアアアアアン!!!!!!
ドガンドガンドガンドガンドガアアアアアアアアン!!!!!!
あちらこちらで爆薬が爆発し、研究所が見る見る黒い煙と炎に包まれて、瓦礫が崩れ落ちる。もはや地上に脱出するための方法は電気機関車の電力を回復させるしかない。
レヴィアタン「な・・・何よ、何よ、何なのよ、これえええええええええっ!!」
レヴィアタンは困惑していた。
突然何者かの手によって地下の研究施設が爆撃され、見るも無残な光景と化していた。
地上に脱出しようにももはや連絡口も完全に爆撃されて瓦礫に埋もれてしまっている。
「南F4エリアに侵入者ですわ」
「北F1エリアにも侵入者がいるぜっ!!」
どこからかいくつもの不審者が現れたという声が上がり、もうどこに誰がいるのか見当がつかない。さらに火に包まれ、研究所が崩れ落ちていくといった一刻を争う状態がレヴィアタンの冷静さを奪っていく。
無論この目撃情報もアメジストと琥珀の仕業であった。
琥珀「あーーーー!!今度はE3実験室エリアにもいるぜっ!!武器持っているようだ!!こりゃ丸腰じゃあぶねぇな〜?」
アメジスト「F2エリアにも確認!!敵の動きから見て・・・このままでは電気機関車のエリアにたどりついてしまうわ」
レヴィアタン「電気機関車がっ!?」
レヴィアタンは今度こそ顔が真っ青になった。あれを占領されたらもはや最後だ。
しかしこのままでは敵に見つかってしまう。敵は複数、さらに武器や火薬の類まで持っており、大掛かりな組織で動いているらしい。
自分ひとりでどこまで戦えるのだろうか?
押し寄せる恐怖、体が動かなくなる。全身から汗が噴出し、ガタガタと震えだしてとうとう座り込んでしまった。
レヴィアタン「どうしよう・・・どうしよう・・・!あたしの毒じゃ・・・どうにもならないよ・・・!!こんな地下じゃ・・・声だって届かない・・・森の奥に作られている基地だから・・・お兄様にも気づかれることなどない・・・・!!」
助けて・・・助けて助けて助けて!!!
レヴィアタンが頭を抱えてとうとううずくまってしまった。
どうやら精神的にはかなり脆かったらしい。
琥珀「・・・なあ、これ、やりすぎじゃねぇか?」
アメジスト「何が?敵なら遠慮することはないわ」
琥珀「ハタから見たら寄ってたかって一人のレジェンドルガ・・とはいえ女の子を襲撃している悪の怪人みたいじゃねぇか、あたしら」
アメジスト「情けは無用よ。第一、人の命なんて何とも思ってないから、こんなバカな計画立てるんでしょう?そんな自分だけの価値観だけでしか動けないバカは、死んだほうがいい。ううん、むしろこの世からいなくなるべきよ」
戦いに情を持つことは時として己を傷つけることになりかねない。
アメジストはこういうとき、敵に対して一切情を切り離し任務を全うする。
しかし琥珀はまだ甘さがどこか残っているのだ。
敵とは言えども、どこか気を使ってしまう。
アメジスト「琥珀、貴女は甘すぎる。こういうときにまで非情になれないで、何を守るつもりでいるの」
琥珀「!?そ、それは・・・」
アメジスト「時々不安になるわ。あなたの甘さが、あたし以外の誰かに向けられるのがすごく耐えられなくなる」
アメジストがぼそっと暗い声でつぶやく。その瞳に光はなく、まるで生ける死者のようである。しかしその声は琥珀には聞こえない。
アメジスト「貴女は・・・あたしのもの・・・身も心も・・・・頭からつま先まで・・・ぜぇんぶぜぇんぶあたしに向けていれば・・・それでいいのに・・・・あたしのものでいてほしいのに・・・・特異点にも・・・あのバカ共たちにも・・・渡すもんか・・・渡さない・・・あたしの心の・・・唯一の・・・ココロノヨリドコロ・・・・」
物々と何か危険な光を帯びた瞳を光らせて、アメジストが聞こえないようにつぶやく。
アメジストは床で泣き崩れているレヴィアタンを見て、憎憎しげに見つめる。
アメジスト(所詮この程度か。この程度の癖に・・・琥珀に心配される?同情される?)
アメジストの顔が見る見る怒りでゆがみ、歯軋りをし、眉間にしわを寄せる。
アメジスト「気に入らない・・・」
琥珀「アメジスト?」
アメジスト「琥珀、アイツ使い物にならないわ。電力を発電室で復旧させて。カートリッジを充電したら電気機関車で脱出するわ。脱出経路および電気機関車までの経路を確保しておいて」
琥珀「了解」
そういって、琥珀が飛び出していった。
見送ったアメジストは琥珀がいなくなったことを確認すると、きっと表情を引き締めて、床に降り立った!!
レヴィアタン「・・・!?お、お前、バルキリーの・・・!!」
レヴィアタンが涙を拭いて立ち上がり、涙にまみれた顔を怒りでゆがませる。
レヴィアタン「お前か!研究所をメチャクチャにしたのはっ!!」
アメジスト「・・・・・ええ、そうですわ。まあ、貴女のようなこういったトラブルの一つや二つ解決することが出来ず、錯乱するような無能なヤツが指揮官じゃいつかはこうなったでしょうね」
レヴィアタン「何っ!!」
アメジスト「貴女、本当は7人の中で一番弱いんじゃないの?そして戦略は陰でコソコソ隠れて毒薬使って不意打ち・・・・あぁ・・・貴女らしいっちゃ貴女らしいわねぇ。卑怯でズルくて、正面からトラブルに立ち向かったことがなくて、いつもお兄ちゃんやお姉ちゃんに助けてもらってばかりのどうしようもない甘えん坊・・・でちゅよねぇ」
レヴィアタン「!?な・・・な・・・・な・・・・・」
怒りと屈辱でレヴィアタンの顔色が見る見る真っ赤になっていく。しかしそれを嘲り笑うかのようにアメジストがさらに罵倒を続ける。
アメジスト「本当、これで傭兵?時の運行を破壊する?笑わせないで下さる?それでいて、やろうとしていることは今後取り返しもつかないようなことを平然とやろうとしている。バカな兄貴分たちに乗せられてのぼせ上がってるんじゃありませんこと?自分自身の実力もわきまえない・・・クソガキが・・・粋がらないでくださいよ」
レヴィアタン「・・・ああ・・・ああ・・・・・あああああああああああ!!!い・・・イマジンのくせに・・・イマジンの分際で・・・・よくも・・・・よくも・・・・あがああああああああ!!」
怒りを爆発させたかのように腹の底から吼えて、見る見るその姿を紫色のヘビのような頭部と無数の蛇がからみつき、鎌のように鋭い刃をジャラジャラぶら下げて、レヴィアタンレジェンドルガの姿へと変貌していく。
手には杖を握り締め、背中から取り出した筒から液体を流し込み、杖を向けて噴出する。
噴出した霧は猛毒の霧。地面を溶かし、空気を汚し、何もかもを毒で汚していく。
レヴィアタン「殺してやる・・・お前だけは許さない・・・・許せない」
アメジスト「許せない?殺す?ふん、貴女如きに何が出来る?もう手詰まりで泣きを入れている状態で・・・偉そうに言いますね。己の身の程知らずを思い知れ、己の弱さを恥じるならしゃべるな、にらみつけるな、これ以上この世に存在するなっ!!消してあげますわ!!変身!!」
狂気が入り混じった怒りの掛け声とともに、アメジストが持っていたベルトでファントムフォームに変身を遂げる。
長柄斧を構えて、一気に地面を蹴り飛ばし、レヴィアタンレジェンドルガに切りかかる!!
仕込み杖とぶつかり、激しい火花を散らせる!!
Hバルキリー「・・・・あんたは殺すわ。絶対にねぇ。くっくっくっく・・・念仏でも唱えなさいな」
レヴィアタン「ぐっ・・・・・!!」
そのころ。
慧「何か、音がしない?」
ルーベット「そういえば、先ほどから何か剣戟のような音が・・・?」
トパーズ「・・・少し離れているが・・・もしかして、セブンズヘブンの一人か?」
サファイア「やっぱりきたかぁ」
エメラルド「様子を見る・・・といっても、もう、近づいてきてるよ!」
慧「あの近くには琥珀さんたちがいるはず!!」
琥珀たちが潜入作戦をしている間に敵側の加勢は避けたいところだ。
慧「ここで・・・追い返す!!エメラルド!!行くよ」
エメラルド「よっしゃっ!!」
慧にエメラルドが憑依し、外に出ると、そこにはすでにいた。
Vライナーを物珍しそうに見ている和服を着込んだ妖艶な美女、アスモデウスが。
アスモデウス「へえ・・・キバライナー以外にもあったんだ。ふうん、お風呂まである。いいなぁ、ほしいなぁ」
E慧「なっ・・・・・」
アスモデウス「ふえ?」
アスモデウスが慧の気配に気づいて振り返った。
そして慧をまじまじと、じぃっと、舐めるようにじっくりじっくり見渡す。
アスモデウス「ふぅん・・・うん・・うんうん!!いい・・・もしかしてぇ、貴女が、バルキリー・・・天童慧?」
E慧「・・・そうだよ、もしかして、お前、セブンズヘブンかっ!?」
その直後だった。
アスモデウスの瞳が「らりーん」と怪しい光を放った。
アスモデウス「も・・・・萌えるじぇ・・・・きゃわゆい・・・・マキシマム萌えええええええええええええええええええええっ!!!!!」
そして、空に向かって吼え、鼻から勢いよく鼻血を滝のように噴出したっ!!!!!
慧「!?」
アスモデウス「ああ・・・・あああ・・・・こぉんな可愛い女の子をいたぶってぇ、いたぶってぇ、踏んで縛って叩いてぇ、焼いて嬲って・・・お仕置きし放題、エッチなことし放題・・・・もうあたし・・・・死んでもいいっ!!!」
鼻血を噴出しながら空に向かってぐっと拳を握り締めるこの美女。
もはや慧は理解不能であった。
慧「というか、そんなの本人の承諾がないと無理ですからっ!!!つーか、許可出来るか!!!」
アスモデウス「それでぇ・・・・刺して晒して吊るしてぇ・・・ああ・・・・あああ・・・素敵しゅぎます・・・・ご馳走様です!!というかこういうのってぇ、ジーザスっていうのよね」
慧「待て待て待て待て待て待たんかあああああい!!!!勝手に決めるなああああああ!!それにこっちがジーザスって言いたいよ!」
トパーズ「そうだな、それを言うならハレルヤとかだ」
慧「余計な知識、いらんわっ!!」
アスモデウス「ああ・・・もう・・・・素敵・・・しゅてきぃ・・・・えへっ、えへへっ」
ヤバすぎる。
鼻血をダラダラと流し、涎をツーっと垂らしながら妄想で独り言に入っている姿は明らかに「イタい」「変態」である。
顔がいいだけに残念すぎるよ、このレジェンドルガ。
慧「・・・倒します。変身」
緑色の光が走り、見る見るその姿をソードフォームの姿へと変わっていく。
ソードを構えると、アスモデウスが鼻をちんと鳴らして関節剣を取り出した。そして先ほどまでとは別人のようにきっと表情を引き締める。
アスモデウス「さぁて、どこから切り刻もうかな」
Sバルキリー「その言葉・・・後悔させてやんよ」
こうして、二つの場所で壮絶な(ある意味)修羅場が繰り広げられようとしていた・・・。
続く
,筆が進まず新作が書けず遅れてしまっていましたが、今回、26話書き上げました。
最初に言いますが、今回、書いていてアメジストと琥珀が「普通」という件について、「ツッコミ」は一人だけのほうが引き立つのではないかと考え、今回、アメジストのスキルに「ヤンデレ」「クーデレ」属性をつけました。
正直読んで不快な思いをさせてしまったら申し訳ございません。
そして今回登場しました「嫉妬」の毒使い「レヴィアタン」と、真の姿を見せ、慧にアプローチをかける「色欲」のオオカミエロ姉さん「アスモデウス」。
次回からの活躍もご期待くださいませ!!
烈様へ
今回登場しましたレヴィアタンの能力「毒薬を操る」ということで、「毒液」のほうが「嫉妬」をつかさどるレヴィアタンにいいのではないかと思い、マモンが水や冷気を操る能力はネタバレになるかもしれませんが、副将としてマモンが使う能力とルシファーの風を操る能力を組み合わせる合体技などを考えていたためです。
キバライナー・セイリュウについては、恐竜型のほうがいいかと考えたのですが、「青龍」といえばあの長い蛇のような体がいいと思い、イカヅチのようになってしまうのではないかと考えたのですが、敢えて青龍のイメージに近づけたかったのでこちらにいたしました。
答えになっていますでしょうか?
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2009年11月24日(火) 02時32分46秒,20091001001539,20091127023246,88xtj5C.wpzU2,仮面ライダー澪騎 第13話/前編,ひだり,,,遠く、大地を踏みつける音を聴いていた。
『来ましたね』
そう呟いたのは、全身を重厚なる白と、豪奢なる金で固めた鎧の騎士。
目を覆うバイザーは唯一の黒――その仮面の瞳で、騎士は遥か前方を見遣った。
そこには、異形がいた。
額から突き出す大きな角が特徴的で、岩石のように荒々しい意匠を見せるサイの異形――ライノセラスヘイズ。
ゆうに数十メートルは離れた騎士の下にまで地響きを伝えながら、真夜中の道路を走っている。
『来たね。準備を』
声が聴こえた。
それは鎧の騎士の内から――されど、先に上げた声とはまた、似て非なるもの。
『ええ』
騎士――仮面ライダーランスロット・ファーストフォームがそれに応える。
手に提げていたもの――散弾銃に似た形状の長銃――を構え、
《Full Charge》
バックル上部に備えられたボタンを押し込み、腰を低く溜める。
機械の声に遅れて、そこからバチバチと電流が猛る。
鎧の全身を伝い、やがて雷は銃口へ集結し、炸裂の瞬間<を待つのみだ。
『■ケ■――!』
気付けば、ライノセラスヘイズはもう10メートルもない距離にいた。
緊迫の瞬間、ランスロットはどっしりと構え、引き金を――引かずに<。
『ず、ォ、あああァアあアあアアアアアぁぁぁぁぁッ!!』
突進してくるその巨体を、正面から、受け止める――!
ギャリギャリギャリギャリギャリ――!派手な衝突音に続き、鉄靴がアスファルトを削る音が響く。
『ぐうううううううッ……!』
仮面の奥で歯を食いしばり、凶暴な角をも押さえ込み、ランスロットは懸命にその突撃を食い止める。
『次■■■へと……■魔すン■ゃねぇ!』
『お生憎様』『私達もこれが仕事なんですよ……ッ!』
憎らしげに喚き散らすライノセラスヘイズに、一つの身体から二つの声が返す。
そして十数メートルもの距離を削り、ようやく突進の勢いを殺し始めた頃に、その音は聞こえた。
鋭く夜の静寂<を裂く、鋼鉄の悍馬の嘶きだ。
『『来た!』』
一者二声が同時に叫ぶ。
そして腰の深くに構えていた銃を、一気に前に突き出す。
勢いの衰えたライノセラスヘイズの腹にそれを押し付け、今度こそは引き金を――
『飛ッ、べェええええええええええええええッ!!』
――引く!
『■ゴ■ッ――!?』
零距離で、光が爆ぜた。
圧縮・蓄積されていたエネルギーは刹那の間に、文字通り爆発的に膨張した。
そしてそのまま数十、数百、あるいは数千の光弾片と化してライノセラスの全身を叩いた。
やや上向きにした銃口のままに、その巨体は軽々と、そして高々と浮き上がる。
そこに、
「よくやったアー子!後はわたし達に任せとけっ!」
馳せ参じるは、鋼鉄の悍馬に跨る一人の騎士。
「ッしゃあ行くぜ行くぜ行どぅわおうのわ!?」
「おいこらまだ動くな暴れるな危ないだろうが!」
……正確には、鋼鉄の悍馬に跨る男の後ろにしがみつく、一人の騎士。
白と青でカラーリングされた、250ccのオンロードバイク。
名を『天馬』と言うそのバイクを駆るのは、黒髪の少年。
その後ろには、こちらも青や白を基調とした、可愛らしい衣装の小柄な少女。
《Full Charge》
後ろの少女がベルトのバックルに刺さっていた鍵を捻る。
そこから鮮やかな蒼の輝きが噴出し、粒子が地を駆ける天馬の軌跡を彩る。
空に打ち上げられたライノセラスヘイズ目掛け、少年――向坂 悠一はまた強くアクセルを開ける。
そして目標への距離が縮まった瞬間――
「悠一っ!」
「応!」
合図に合わせて絶好のタイミングでハンドルを切る。
後ろの少女がその勢いに乗り、天馬の腹を思い切り蹴りつけ――高く高く飛び上がった<。
『■■!?』
吹き飛ばされて自由の利かないライノセラスヘイズが、ただ声でのみ動揺を顕にする。
少女――蒼き騎士、仮面ライダー鈴騎は空中でその身体を捻り――
「ライダー……――」
放物線を描き落下するその方向に、無防備に滞空するライノセラスヘイズを――
「――オーバーヘッド<、キーック!」
――蹴りつけた!
『――――――!』
断末魔すら上げられず、二重の必殺技を直撃させた異形の身体は空中で爆裂、炎に塗れて四散した。
「よっと」
しゅたっ、と軽い身のこなしでレイキが着地する。
「伊織!」
後ろから、バイクを降りた悠一が駆け寄ってくる。
「悠一っ、やったな!」
変身を解いたレイキ――栗色のセミロングヘアーの少女、八坂 伊織が笑顔でそれを迎える。
パシン、とハイタッチを交わす二人に、今度は前方からランスロットが近付いて来た。
「お。アー子もおつー」
『おつーじゃありませんよ……」
白い鎧が淡く金に輝き、そのまま粒子と散れば、中からは金髪碧眼の少女、如月 アリスが不機嫌そうな顔を晒した。
「なんで私があんな怪力キャラみたいな役割を……私の美学に反します」
などと怒って見せるのだが、一方の伊織は「美学?なにそれ食えんの?」的なお気楽顔で伸びをしている。
「んーっ……しっかし、なんか久々だったなあ、ヘイズ」
「だな。でも苦戦もしなけりゃ連携も出来てた。油断は禁物だが……成長したな、お前も」
なでなで、と悠一が伊織の小さな頭を撫でる。
一瞬、脊髄反射の照れ隠しで蹴り倒そうかと牙を剥きかけたが、掌のぬくもりが存外に心地良かったので、されるがままにしてみる。
「うおーよっしゃーもっとほめろほめろ。わたしはほめられてのびるタイプだからなっ」
「そうかそうか。よしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
「うおあちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ熱ゥああああ!?やめろハゲるハゲるハゲるハゲればハゲるときハゲハゲやめろっつってんだろこのハゲ!!」
結局蹴り倒した。
そんな二人を見、やっぱやってらんねーとばかりにアリスはあくびを一つ。
「ふあぁ……、では私はもう帰りますねー。半日とは言え明日も学校ですし……」
「ああ、それもそうだな。じゃあ伊織、俺達も」
「うぃー」
と、解散の流れになった時、
「、そういえば」
悠一が動かしかけていた足を止める。
「ゎぷ。なんだよ悠一、急にとまんなよー」
すぐ後ろを歩いていた伊織がその背中にぶつかる。アリスも悠一に視線を向けている。
「いや、伊織。お前……勉強、してるか?」
「は?なんだ突然。してねーけど……テスト終わってすぐに勉強なんかしたくないし」
後ろでうんうんと頷いているアリスは意外と素行不良なのかもと思いつつも、悠一はあくまで冷静に指摘する。
「いや、お前赤点あったろ。追試は月曜だったと思うが、いいのか?」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
言い終えた悠一の目の前で、外気に触れたりんごのような伊織の頬から、熱が遠のく。
鼻の頭から耳の裏までが、さーっと青ざめ、かと思うと次には冷や汗をダラダラ流し、ガタガタと小刻みに震え始める。
動揺と焦燥と驚愕を凄い勢いで掻き混ぜたような表情へ遷移した伊織は、やがて小さな口を大きく開けて、
「わ、」
叫ぶ。
「「忘れてたああああああああああああああああああ!!」」
声は、二つ聴こえた。
仮面ライダー澪騎 第13話 光と陰
その部屋には、一人の男がいた。
豪奢な椅子に深く腰掛け、思索にふけるかのように目を閉じている。
その背後で、コンコンと扉を打つ音が鳴った。
「我が主“害群”。“炎環”アロケン、代行者を連れ参りました」
「入りなさい」
静かに扉が開く。
部屋に入ってきたのは、2mに届くかと言う程の巨漢――オーバーヘイズ、“炎環”アロケンが化身せし姿だっただ。
その後ろには、短い黒髪の、特徴らしい特徴の無い、ただ「男」と称する他ない、「男」。
「代行者・黒崎。わざわざ呼び出して済まないな」
“害群”と呼ばれた男が黒崎と呼んだ「男」は、フンと鼻を鳴らした。
「そう思ってるなら呼ぶなよ。普段から人目は避けろって言ったのはアンタ等<だろうが」
「ふむ。その私<が許可を出したのだから、何も問題はあるまい?」
「傲慢だな」
そうかね、と“害群”は言った。
「それで、首尾の方はどうだね」
「仔細ねぇよ。例機はヘイズを倒して経験を重ねてる。このまま順調に行きゃあ、八坂 伊織は遠からず器<として目覚めるだろうな」
「ふむ、良い報せだ」
ギ、と音を立て、“害群”が席を立つ。
「なんだ、もう行くのかよ。俺は今来たばかりだぞ」
椅子と同じく高級感漂うソファに腰を下ろそうとしていた「男」が不満げに言う。
アロケンは既に“害群”の後ろに着いていて、沈黙のまま立っている。
「『曲芸団<』を待たせている。それに私も暇では無いのでね。君の外出許可なら取ってある、早く来なさい」
傲慢だな、ともう一度呟く黒崎に、“害群”もやはり同じ言葉で返した。
◆
「第一回・追試なんて怖くない!ドキッ☆美少女だらけの一泊二日、大・勉・強・会〜〜〜ッ!~おばかもいるよ~」
見えないマイクを握りしめ、ドダンとちゃぶ台に片足を乗せ、進藤 姫子が高らかに叫ぶ。
わーぱちぱち。そんな彼女に拍手を送るのは、彼女の親友である皆本 ゆかり。そしてその横で小さくなってる「おばか」が二人だ。
まばらな拍手を身に受けてご満悦な風な姫子は、キョロキョロと室内を見渡し、
「……んで、エロ本どこー?」
「ねぇよ」
襖を開けて入ってきた悠一に即断のチョップを見舞われる。
「あ痛。こーさか先輩ひどーい。先輩ってオンナノコに暴力とか振るっちゃうキャラでしたっけ?」
「いい加減慣れたと言うか、疲れたと言うか……君にはこのぐらいで丁度良いだろ」
「ドキッ!せ、先輩……それって、あたしが特別ってこと……?」
「とは一言も言ってないけどな。あと、口でドキッ!とか言うのは止めた方がいいぞ、進藤さん」
「勉強になるなあ!」
と、いつになく騒がしい向坂家。詳しく言えば悠一の私室。
ここに姫子とゆかりが二度目の訪問を果たした理由、それは単純なものだ。
『神様ゆかり様姫子様(左から頼りになる順)!わたしに勉強を教えてくださいやがれ!!』
と、土曜の昼下がり、放課後の教室で「おばか」の内の一人、伊織に泣きつかれたからだ。
そして、その隣。ちょこんと所在無さげに正座しているアリス。
もう一人の「おばか」と称されてまで彼女がここに居る理由、それも至極単純なものだ。
『ゆかりさん姫子さん伊織さん(左から頼りになる順)!わ、私も混ぜて貰って良いでしょうか!?』
と、土曜の昼下がり、放課後の教室で二人に泣きつく伊織にしがみついたからだ。
聞けば、どうやらアリスも赤点と言う不名誉をいやしくも頂戴してしまったらしい。
実はものぐさと言う本性と、加えてここしばらくは向坂家に入り浸りだったのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
そんな理由で向坂家に集まった彼女達。
しかし当然と言えば当然、大人しく勉強を始める筈も無く、
「はあ、勉強やる気しねぇ……」「同感です……くそう、この学校では優等生キャラで通したかったのに……」「いや、それはもう色々と無理だろ、お前」「前来たときはすぐに出てっちゃったけど……こ、ここが向坂先輩のお部屋……ううっ、落ち着かないぃ……」「てかさーいおりんいおりん。なんで勉強会はこーさか先輩の部屋で?」「んぁ?だってわたしの部屋は狭いし、居間だとおとーさんとかに迷惑だし、まぁここが一番ちょうどいいかなーって」「、あれ伊織さん。その信護さんやお姉様は今いずこへ?居間の横を通りましたが、姿は見えませんでしたよ?」「あー、おとーさんは多分また外とかぶらついてんだろ。沙希さんは買い物。アー子達が泊まるって伝えたらすっげー張り切ってた」「お姉様が張り切りじゅるり!?」「……おねーさま?」「……って、言ったよね?」
姦しいことこの上無かった。
見ればちゃぶ台の上も、勉強道具は半分、残りは姫子の差し入れのお菓子が占拠している有様だ。
「ったく……ほら静かに。何の為に集まったのかわかってるのか?」
言われ、渋々と机の上を片し始める少女達。
「よし。じゃあまあ飲み物でも持ってくるから、先に始めておくように」
「あ、わ、私もお手伝いします先輩っ」
それに続くゆかりと「そうか?客なのに悪いな」「い、いえいえいえっ!」と言うやり取りをしながら、部屋を出て行く悠一。
壁掛け時計は午後二時近くを示している。
伊織とアリスの長く苦しい戦いが今、幕を開ける。
◆
御駒の街の外れ、現在<を忙しなく生きる人間の意識から置き去りにされた、小さな廃ビル。
窓ガラスはほぼ全てが割れ、内外の壁も所々に皹が入る危うい建物。
――そこに、四つの影がある。
三つと一つ、対峙するように分かれた影がある。
一つは、三つの先頭、スーツを着た細身の男――“害群”ダンタリオン。
一つは、“害群”の後ろに控える大男――“炎環”アロケン。
一つは、その更に後方で気だるげに立つ「男」――黒崎。
そして対する一つは、襤褸いタキシードを纏う酔狂ないでたちをした男――“遇奇の帥”ロキ。
「ハジメマシテ、で宜しいデスか?貴方が“害群”サン――ですヨね?」
「その通りだ。現在、彼の思考は私と同一化しているが故、今は私が“害群”だ」
淡々と“害群”が告げた。
「ハイ、そレデは改メてハジメマシテ♪“遇奇の帥”ロキと申しマス」
「吾は<“害群”ダンタリオン。私の<名は……名乗る意味も無い。構わないな?」
結構デスよォ、と“遇奇の帥”。
気がつけば、鎖された部屋の中に立つ四人の周囲で、幾つもの影が絶えず蠢いていた。
その毒々しいまでの紅を宿す幾つもの瞳が、強大なヘイズの支配者達を、ただ見つめていた。
◆
「とりあえず、だ。伊織、アリス。どの教科が出来てないのか、そこから教えてもらおうか」
持ってきた茶を啜り、悠一が切り出す。
「えー」「え゛」
対して不満げな伊織と、言葉に詰まるアリス。
「えじゃないだろ。わざわざ泊まりまでして厄介になるんだ。神妙に出せ。まずアリス」
「え゛」
再びの声。
その場の全員の視線を受けながら、あーとかうーとか、しばし百面相でうろたえるアリス。
しかし、やがて苦渋の決断と言った表情で鞄に手を伸ばし、ゆっくりと二枚の答案用紙を抜き出す。
「………………………………これです」
それを顔を伏せたまま、なけなしの作物を献上する農民のような動作で、ちゃぶ台の上に裏返しで置いた。
「じゃあ、失礼して」
「アーたんてば、カタクなーに見せてくれなかったもんネー。どーせ英語が赤点なんだろおらおらー!」
「ちょ姫ちゃんっ、失礼だよ!?まだ見てもいないのに……」
「いーから早く見ようってば。急ぐんだろ!」
最後に伊織に促され、悠一が紙をめくる。
そしてどれどれ、一同が揃って覗き込む。と。
英語R・41点
英語G・35点
「「「………………」」」
笑い事ではなかった。
12月9日、あの教室での伊織とアリスとの大喧嘩の日。
あの大立ち回りの最中の衝撃的な告白により、『アリス=英語が駄目』という図式はもはやクラスの共通認識となった。
特に仲の良い伊織や姫子は勿論のこと、悪ノリ好きな一部のクラスメイト達からもそれをネタにされることがある。
だがそれはそれとして、目の前の状況とは話がまるで違う。
静まり返る部屋の中、重苦しい空気の中。もういっそ殺してくれとばかりに沈んだ表情でベッコンベッコンに凹んでいるアリス。
その本人を前にして、いったい誰が笑えると言うのか――否。誰も笑えはしない。
笑えはしないから、気まずいのだ。
「……、………………い、伊織、は、どうだった?お前はばかだからな、もしかして全教科赤点とかじゃないのか?」
「(「(ナイスカバー!)」)!そ、そうだよ、伊織ちゃんのも見せてみて?」
「やー、いちお試験前は頑張ってたっぽいケド、いおりんのおばかっぷりは五大陸に響き渡るでほんま」
悠一の、相当苦しいながらも咄嗟の機転に、ゆかりと姫子が慌てて追従する。
今まさにノーコメントスルーの屈辱がアリスを襲っているが、おそらくはこれが最小限の被害だ。そう信じずにはいられない。
「なんだよお前ら人をばかばかと……さすがに全教科はねーよ」
ぷくーと膨れながら、伊織も鞄を漁る。
その様子を見ながら、悠一はふと、
「(そういえばこいつ、さっきのアリスの成績に対してノーリアクションだったな……)」
と思い、更なる思考の後、万に一つの恐ろしい可能性に至ってしまう。
「お、あったあった。ほれ、赤点はこの三つだけだよ」
「おい、伊織やっぱり待――」
「特に苦手な現国と、古文と、それと地理ー。あとは大体60点以上は取ってるし」
「みなさんおせわになりましたわたしはもうだめですあとのことはよろしくおねがいしますそれではさようなら」
「アーちゃん!?アーちゃあん!!」
「ちょっゆかりんダメダメヤバい!それ逆にヤバいってまず縄から下ろさないと!」
「えいごで……えいごでいおりさんに、まけ、まっ、まけぶくぶくぶくぶく」
「キャアアア!?アーちゃんが口から泡吹いていよいよ見せられない顔に!?」
「よかったー絵が無くて本当によかった!ってだからゆかりんしがみつくのは後にして縄をってば!!」
「このばか!伊織のばか!空気読め!ばか!」
「いたいいたいいたいいたいなんでー!?赤点取ったからってぐりぐりは酷いたいー!?」
「まだ分かってねえのかこいつ!?」
英国生まれ日本育ちの金髪碧眼巨乳少女の突発的な自殺未遂など、些細なトラブルはあったものの、その数分後、ようやく勉強会は始まった。
◆
「ソ・れ・デ。本日はどのようナ御用向きデ?」
ステッキをくるくると遊ばせながら、“遇奇の帥”が問いかける。
「来るべき時が近い。煩わしくはあるが、我々が顔を突き合わせる必要性が生じた、と言う事だ」
息を一つ吐き、真剣な目で“害群”が“遇奇の帥”を見据える。
「“遇奇の帥”。先ず、『曲芸団<』が今後どのような意思を持ち、どのような行動を起こすか。それを聞かせて貰うとしよう」
「目的、デスか。そうデスねェ……」
考え込む素振りの“遇奇の帥”は、やがてシルクハットのつばをクイと上げ、片眼鏡<越しの瞳だけで笑みを作る。
「当座の方針トしテは……様子見、トさセテ頂きまショウ。先日ノそちラの駒が容易に打ち倒さレた件ヲ考エレば、ご理解モいたダケるデしョウ?」
「……確かに、現時点での徒な兵の消耗は好ましくない。独断専行も避けるべきだろうな」
“遇奇の帥”の意見に同調する“害群”。それを受けて、“遇奇の帥”は更に言葉を続ける。
「『曲芸団』<を狙うランスロット<ハとモかク、ドウせ例機は殺しテはイケナいのデスし<、ナラバのんびィりトさせテ貰いまスヨ」
「そうだな、それも良かろう――ならば。今後も我々の計画に同調して動く、と解釈して構わないのだな?」
「エぇ。せッかくノお祭り、踊ルのナラより大キな舞台が良いデスからネェ♪」
「祭り……か」
その言葉を、“害群”が小さく繰り返す。
「確かに、我々の行いは結果としてこの世界を歪め、狂乱を齎すだろう。成る程、これは破滅を呼ぶ――宴だ」
「いいじゃねぇか」
壁にもたれかかっていた黒崎が、唐突に口を挟んで来た。
幾つかの視線が自分に向くのを感じながら、黒崎は胸中の淀みを現すように表情<を歪めた。
「どうせ生きててもしょうがねえ。生きてさえもいられねえ。……だから俺達は壊す。バケモノの実験に付き合ってでも、壊す。そうだろう、アンタも」
吐き捨てるような口調はしかしむしろ、どこか強い執着を感じさせた。
「――そう、だな。“遇奇の帥”、聞いての通りだ。私達はただ只管に目標を成す。その後の世界は、お前達の好きにすれば良い」
ハイ喜ンで――と。“遇奇の帥”は不敵に嗤った。
◆
カリカリカリカリカリカリ。
あれから一時間と少しが経過した。
当初の騒動も何とか収束し、今は静かにペンがノートの上を走る音だけが聞こえている。
「ええと……。あの、ゆかりさん。この単語のスペルってこれで合ってましたっけ」
「うん、大丈夫だよー」
伊織達と知り合ってからこっち、『人生最大の屈辱ランキング』を凄い勢いで更新しているアリスも、何とか冷静さを取り戻せたらしい。
今は真面目にゆかり先生(姫子提供の伊達眼鏡装備)の懇切丁寧な指導を受けて頑張っている。
「うーん、と……?ねぇねぇ悠一、ここなんだけどさー」
「どれどれ……。……それ以前に、こっちの「ぬ」と「を」が混じったような奇ッ怪な文字を直しておけ、ばか」
「あれー!?」
一方の伊織も、悠一の監督下でうーんうーんと唸りながら奮闘中だ。……前途多難のようだが。
しかしマンツーマンの指導のお陰か、思ったよりスムーズに勉強は進んでいる。
一晩かけて教えれば追試をやり過ごすぐらいは出来るだろう――と悠一は目処を付ける。
「せんぱーいこれ続きどこっすかー?」
「……ベッドの足元だ」
ベッドを占領して漫画を読みふけっている姫子を適当にあしらいつつ、勉強会は続く。
◆
「一応、我々の目下の計画も伝えておこうか」
ソれは是非トモ、と声を上げる“遇奇の帥”から視線を後ろへ送る“害群”。
その合図でアロケンが前へ出る。“遇奇の帥”を筆頭に、端から端と居並ぶ『曲芸団<』のヘイズ達を見渡し、
「先ず、リミッターを一つ<、外させる<」
告げる言葉に、ホぅ、と短い声。
「相応の舞台が必要となる。我が主の命により、戦闘には私自らが打って出る事となった」
「ナルホド。確カにかノ歴戦の勇士、“炎環”サン以上に相応シイ者はいナいでショウねェ」
随分と高く買われてるじゃねぇか――と後ろから黒崎が茶々を入れた。
首だけを向け、口だけで笑い、アロケンはまた“遇奇の帥”に視線を戻す。
「実行時の状況次第では『曲芸団<』からも手駒を借りるやも知れん、留意しておいてくれ」
「了解シマシタ♪」
あくまでふざけた態度を崩さない“遇奇の帥”に、アロケンは不敵に笑って見せ、後ろに下がる。
入れ替わりにまた“害群”が先頭に立つ。
「こちらからは以上だ。『曲芸団』<から何も無ければ、今日はこれで失礼させて貰うが」
「エエ、デは本日はコこマでと言ウこトニ。ほゥら皆さん、お客サマがお帰りデスよ♪」
ぱんぱんと手を打つ“遇奇の帥”に従い、奇怪な姿の異形がばらばらと散っていく。
扉の外れた入り口を、黒崎が一番に通り抜ける。その次に“害群”が出、最後にアロケンが“遇奇の帥”らに目礼を残し、その部屋を去った。
残ったのは『曲芸団<』。
不気味に揺らめく陽炎のような軍勢だった。
◆
「……よし、そこまで」
「「ぐへぇー」」
悠一の声に、伊織とアリスが仲良く同時に机に突っ伏した。
その額と机に挟まれた紙をゆかりが引き抜いて、さらさらと答え合わせを始める。
二人が今まで取り掛かっていたのは、過去の期末テストの問題だ。
学校を出る前に、教師に頼んで貸して貰ったのだ。
「じゃあ十分だけ休憩な。ああ皆本さん、一枚はこっちにくれ、俺も手伝う」
あ、はいと渡される答案。伊織のものだ。
書き込まれた解答と手元の正答とを見比べ、サッと赤ペンを走らせていく。
ジュースをストローでちゅーちゅーと啜りながら、伊織がその様子に意識を向けている。と、
「さてと……あ、バツ。これもバツ、ここも違うな、バツ。ここからここまでバツバツバツと……」
「ぅおおおおい!?」
聞きたくない声が聞こえてきてしまった。
「はいバツバツ……ん?どうバツバツしバツた伊織」
「マジでバツつけすぎ!?話してる時ぐらいペン止めてよ!」
「時間がもったいないバツ」
「なんかもう語尾みたいに!?」
いつも通りな掛け合いを繰り広げる幼馴染み同士の二人。
その様子を眺めながら、不適な笑みを浮かべているのはアリスだ。
「ふふふ、やはり伊織さんはおばかなんですね。対してゆかりさんの採点の静かなことと言ったら……」
どうやら少しずつ自信が取り戻してきたらしく、腕を組んで(胸が凄いことになってる)悦に浸っている。
「えと……はい、アーちゃん。さ、採点終わっ、た、けど……」
そんなアリスに、何故かおずおずと躊躇いがちに答案を渡すゆかり。
彼女の気まずそうな表情にはまったく気付かず、上機嫌なアリスがそれを受け取る。
「ありがとうございますゆかりさん。……そう、そうです、そうですよ。今回のテストは急な転校の直後だったのですから、多少点数が低いのも仕方が無いと言えるでしょう。そもそも私は御駒に来るまでは学校に行かず世界を転々としていたのですから?学業が疎かになるのは必然……と言うか、学業など復讐者である私にはまったくもって不必要なものですし……まあそんな私でもほんの小一時間でも勉強すれば昔のような、そう、成績優秀・容姿端麗な如月 アリスで通っていた中学時代のような華々しい結果を残すことなど朝飯前的にたやすいことなのですようふふあはは」
と、ゆかり達に聞こえてはいけないようなことまでブツブツブツブツと唱えながら、ピラッと受け取った紙を見る。
28点
「 」
絶句。そしてその後ろで、
「ほら伊織。こっちも採点終わりだ」
「ん、さんきゅ。……おおー、59点!」
「お前はせっかちだからな。むしろ最初の方の簡単な問題はケアレスミスが目立ったが、後はちゃんと出来てたよ。頑張ったな」
「ぅ、なでんなばかっ!みんな見てるだろ……っ」
仲睦まじく甘ったるい会話なんて聞こえてきた日には、
「もういきててもしょうがないじゃないですかぁー」
部屋の隅に投げ出されたロープに手を伸ばすしかなかった。
◆
昼の青空が、僅かに差す朱と交わり始めていた。
緩やかな紫色の空の下、人々の認識から外れて歩く三つの人影。
その先頭を歩いていた“害群”が振り返り、黒崎を見据えた。
「黒崎。今の内に君に問うて置かねばならない事があるが、良いかね?」
「なんだよ」
黒崎はあくまで退屈そうに、ぶっきらぼうに答える。
“害群”はほんの数秒何かを考えるように黙り、そして話す。
「一つ。最近の君の無断外出について」
ピク、と黒崎の肩が動いた。
「君は実験に於いて例機に次いで重要な役割を負っている。万が一にでもその命、喪う事は許されないぞ」
それを見逃さない“害群”の叱責はどこまでも淡々としているが、抗いがたい重みを持つ、強い言葉だった。
しかし黒崎はそれに一切動じず、むしろその言い草が気に入らない、とばかりに鼻を鳴らした。
「アンタにしちゃ珍しく、言葉を間違ってるな。重要なのは俺じゃねえ、俺の中身<だろ。違うか?」
「…………」
“害群”の沈黙に、黒崎が更に言葉を重ねる。
「もういっそ手足を千切って監禁でもしたらどうだ?それとも……そうだ、いっそ殺してみろよ。アンタなら死体をそのまま保存するぐらいワケねぇだろ?なァそうしろよ。その方が面倒も――」
「黒崎」
エスカレートする黒崎の言葉を止めたのは、アロケンだった。
数秒睨み合う黒崎とアロケン。しかし彼の強い視線に根負けしたか、舌打ちを一つ、黒崎がゆっくりと目を逸らした。
そこに“害群”が返答を示す。
「ふむ。監禁<も保存<も考えないでは無いが、だが止めておこう。まず時間の無駄であるし、君が我々を決して裏切らない事は知っている」
ふん、とまた黒埼が鼻を鳴らす。
アロケンが小さく安堵の息を漏らしたのを横目で見つつ、“害群”はまだ口を閉じない。
「だが遊びが過ぎるのも事実だな。“遇奇の帥”共々、先週の戦いで例機らの前に姿を晒したそうだな」
「それがどうした」
「君には他にも利用価値がある、と言う事だ。アロケンの指示で顔は隠したようだが、今後は私の命無しに例機と接触する事を固く禁ずる。良いな?」
「……――拒否権なんかねェんだろ、クソったれが」
小さく、誰にも聞き取れない声で呟き、黒崎が“害群”とアロケンに背を向けて歩き出す。
「どこに行く黒崎。お前は今日検――」
「散歩だ。時間までには帰る。いつも通り裏口開けとけ。じゃあな」
呼び止めようとしたアロケンの声を遮り、それだけを捲くし立てて黒埼が歩き去る。
アロケンが思わず伸ばしていた手は、少しの間だけ虚空を彷徨った。
◆
午後五時前。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
※勉強中です。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラおらっしゃあ終わったぞこらこんちくしょーい!」
叫び、乱暴に掲げた紙を悠一へ、パーン!勢いよく叩き付けた。
「……じゃあ、見せて、もらう、か」
言葉を一度区切るごとに、つまんだ伊織のほっぺを90度ずつねじりながら悠一。
いふぁいいふぁいごめんなふぁいと言う悲鳴をBGMに、大変リラックスしたご様子で採点をする。
「……ん、一応合格点だ。ほら」
ほっぺを離し、同時に答案も返却する。
「ふんっ、わたしが本気出したらこれぐらい晩飯前だ!……ぉぁー痛かった」
「そうかそうか。じゃあ晩飯までまだ時間もあるし、もう一枚」
赤くなった頬をさすりながらも、やたらと勝気な態度を崩さない伊織。
それを軽くあしらう悠一の手腕に、アリスとゆかりは感心しきりだ。
ともかく伊織は新しく受け取ったプリントを机の上にぺらりと乗せて、
「ふふん、今度も楽勝だぜオラオラオ!」
ガリガリガ!と。威勢よく書き出した伊織のシャーペンが、指が、身体が、ビタァ!と停止する。
「……?」
訝しむ悠一の前で、伊織は驚くほどの小顔をしかめて、しかめて、
「………………クソッ!今のわたしじゃあここまでしか埋められない!と言うわけではい提出!」
「どれ。……そうだね、名前だけだねってばかやろう」
チョップを食らう。
「いたーいー!だって分かんないし!いきなりレベル上がりすぎだし!」
「文句を言うな。分からない所はちゃんと教えてやるから、ほら」
「ぶー……」
悠一に促され、渋々とまた問題に取り組む伊織――
「羨ましいですね伊織さん……」
――に、横槍を入れたのは、意外にもアリスだった。
「あん?なにがだよアー子」
「私も国語のテストだったらいくらでも受けてあげますよ……なのに……ああっ、四字熟語が私を呼んでいます。古文が漢詩がありおりはべり!いろはにほヘトチリヌルヲヲヲォ……!」
「普通に怖っ!?なにこの日本語ゾンビ!」
「大体ねぇ伊織さん!」
「おう!?」
ゾンビ化の進むアリスに周囲が若干引く中、当の本人はお構い無しにヒートアップしている。
「国語って言うのは日本語を正しく知っていれば何も難しい事は無いんです!それなのになんですか赤点とか!日本人として恥ずかしくないんですか!?」
とか、バンバンと机を叩いて訴えてくる如月 アリスさん(英国出身)。
言ってることはもっともなのだが、金髪碧眼巨乳の少女にそんなこと言われても説得力が……と戸惑う面々。
と言うより、それ以前に――
「そったらなしてアーたんは英語でけひんのん?」
――そのものズバリ。どこの訛りか知らないが、姫子が言い放った。
「 」
ビシッと石化、派手にひび割れるアリス。なんとかフォローしようとあわわあわわしているゆかりが余計に哀愁を誘う。
「ねえなんでなんでなんでー!おせーておせーてオラその人の頭ぐらいありそうなおっぱいで答えてみろよヘイヘヘイふたつでひとつのおっぱいコノヤロウ!」
そこに傷口に岩塩を刷り込むように軽快なフットワークでアリスの周りをトンタン跳ねる姫子。
それを伊織の必殺サマーソルトキックで沈め、以降しばらくはとても静かに勉強が続いた。
尚、危険防止の為にあらかじめ荒縄は撤去されていた。
◆
“害群”・“炎環”・黒崎、そして配下のヘイズ達の去った空間。
“遇奇の帥”ロキと、彼の有する集団・『曲芸団<』の異形達だけが残った空間。
ぼうっと色の無い天井を仰いでいる“遇奇の帥”に、二つの影が近づく。
「おやぶーん。さっきは待機だなんて言ってたけど、本当はどうするの?」
声をかけたのは、あどけなさの残る顔立ちの少年だ。
身の丈に合わぬサイズの白く柔らかな質感のコートを羽織っており、首から提げた懐中時計が印象的だ。
「うフ。解ってしマいマした?」
「親分がご馳走を前にお預けなんて出来るタチじゃないってのは知ってるけどさ。“害群”さんを出し抜こうってのは、ちょいマズくない?」
「同意。頭目の思いつきで我々にまで累が及ぶのは遠慮したい」
白の少年に追従したのは、頭の先から足の先まで、至る所に様々な大きさ・太さ・長さの布を巻き付けた男だった。
片目と、あとは無造作に肌が覗くだけと言う、まさに「奇妙」と言う言葉の相応しい風体だ。
「おや手厳シイ。デは君達だケにタネを明かすトしましョウか」
“遇奇の帥”はそんな風に嘯いて、背後に控える異形の群れに身を向けた。
「実はコノ近くの山でとォッても大キナ揺らぎが発生したラシイのデスよ」
「質問。その情報の元は?」
「先日、暇ナ時に目を飛ばシてイたラ<、偶然♪」
「……まァたそんな悪趣味な」
肩を竦める白の少年。布の男も呆れたように首を振っている。
「デ、そノ揺らぎから生マレたヘイズさんが、ゆっクりとこの街ニ向カって来ていルようナのデス」
「へえ」
興味を持ったのか、白の少年が僅かに身を乗り出した。
布の男も静かにそれに耳を傾けている。
“遇奇の帥”は、そんな二人の同胞と、その奥の多くの影達に笑いかけた。
「私とシましテハ、そのヘイズさんトモお友達になりタイ、と言うワケデスよ♪アトナくん、トキトガミくん」
「意見。頭目をして大きいと感じさせる揺らぎならば、不用意な接触は危険では?」
「僕もアトナと同意権かなぁ。こないだのヤっちゃんさんはいー人だったけど、彼もやられちゃったしね」
二人――布の男はアトナと呼ばれ、白の少年はトキトガミと呼ばれた――が口々に言い、、そうだそうだと他のヘイズ達がそれに同調した。
『曲芸団<』の名の通り、収拾のつかない騒がしさを眺めながら、“遇奇の帥”は一人、やはり不気味に嗤うのだった。
「………………まァ、手段<は用意しテありマスからネぇ……♪」
◆
「……」
「……」
ちゃぶ台を挟んで、睨み合う二人。
伊織と悠一だ。
それを、休憩中のアリス・姫子・ゆかりが見守っている。
「行くぞ……」
ゆっくり口を開く悠一に、
「…………来い」
伊織が返し、
「………………」
わくわく、と書いてありそうな顔の姫子が、その手に何故か持っているおもちゃのゴングを――
――カーン!
ROUND1
「『寝耳に』?」「蜂!」「怖っ!」
「『泣きっ面に』?」「鞭!」「惜しいけど酷いです!」
「『犬も歩けば棒に』?」「うたれる」「普通に虐待だよそれ……」
「「「「「……」」」」」
ROUND2
「『風神』?」「ガイジン」「だけじゃないフウジン!」
「『朝令』?」「ながい」「言葉の響き的には近いですけどチョウレイ違いです!」
「『門外』?」「流出!」「つこうたら駄目だよ……」
「「「「「…………」」」」」
ROUND3
「『小豆島』」「あずきとう!」「予想通りにベタだ!」
「『御徒町』」「おとまち!」「期待通りにベタです!」
「『雰囲気』」「ふいんき!」「そんな伊織ちゃんそこまでベタな!?」
「「「「「………………」」」」」
「「「「「………………………………」」」」」
そして、五人の少年少女が一様に沈黙を重ねる。
アリスの答案ご開帳の時ほどではないが、どうにも居た堪れない雰囲気だ。
はらはら、と書いてありそうな顔の姫子がその手に何故か持っているおもちゃのゴングを――
――カーン!
「ぶへあー!」
ゴングに救われたボクサーの体でその場に仰向けに崩れる伊織。
そんな彼女を見る三人はいずれも沈痛な面持ちだ。
「い、伊織ちゃん……」
「これは……なんと言うか、想像以上ですね……」
「追試以前の問題だろこれ……と言うか、幼馴染みの学力低下をここまで見過ごしていた事がただ悔やまれる……!」
ゆかり・アリス・悠一が続けざまにこぼし、深く深く溜め息を吐いた。
特に悔しそうに歯噛みする悠一の両肩に、それぞれアリスとゆかりの手が乗せられる。
お前のせいじゃない、お前はよくやったよ――的な、健闘を讃える視線のおまけ付だ。
その労いさえも、虚しさを加速させるだけだったが。
兎にも角にも、伊織の精神的疲労が相当な所まで来ているので再び休憩だ。向坂 悠一、基本的に甘い。
脱力しきっている伊織とアリスを見、中々長続きしないなと嘆息する悠一だが、一朝一夕に身につくものではないなと諦めておく。
と、考え事中の無意識な視線が、伊織に眼鏡をかけて遊んでいる姫子とぶつかった。
「ぁそーいえば先輩先輩。あといおりんも」
「なんだ?」
「わたしはついでかよー……」
それぞれに返事をする二人を見比べて、姫子。
「二人って幼馴染みなんですよねー?いつからの付き合いなの?」
「いつから……と言われてもな。俺が生まれて、伊織が生まれて……まあ、それからずっとだな」
なあ?と伊織(姫子提供の伊達眼鏡装備)に言葉を渡す。伊織もうんうんそーだねそーですねーと無気力に相槌のバーゲンセールだ。
そして姫子の頭上にピコン!と豆電球が出現。瞳も猫目でなにやら悪戯っぽく、
「ふんははん。じゃーつまり、いおりん的には生まれた時からこーさか先輩と一緒なのん?」
「むゲッ!?そ、そりゃ大げさすぎだろっ、ばかヒメ!」
「おほう!?イイっ、今のイイ!なんか懐かしイイ!ねえもっかい、もっかい言っていおりーぬ!」
「うぎゃあキモい!?ののしられてどんだけ食いついてんだよこいつ!」
いつも通りのごく自然な流れで伊織を押し倒そうとする伊織と、姫子を押し返そうとする伊織。
その様子を眺めながら首を傾げるのは、この面子で一番の新参者であるアリスだ。
「……懐かしい?「ばかヒメ」が?どういうことなんですかゆかりさん」
「え?ああうん。えっと、伊織ちゃんと私達が知り合ったのは中学入ってからなんだけど、その頃は伊織ちゃん、姫ちゃんのこと「ヒメ」って呼んでたんだよ。私が「姫ちゃん」って呼んでるのを真似したんだったかなぁ」
「ああ、あったな。そんなことも」
相槌を重ねる悠一。その脳裏には当事、
『あのねあのね悠一!がっこーで早速ともだちが出来たんだよ!ゆかりちゃんとヒメってゆーの!』
とかエアしっぽをパタパタ振って嬉しそうに話していた伊織を思い浮かべている。……所為か、少々表情が緩い。
しかしそれとは対照的に、アリスの首は更に傾げられる。
「でもそれじゃあ、なんで今は呼び捨てなんですか?私につけやがった「アー子」よりは全然まともで可愛いあだ名じゃないですか」
根に持ってるのか?ええ割と、と言うやり取りに苦笑しつつも、ゆかりが言葉を整理しながら答える。
「んと、ね。伊織ちゃんって実は結構人見知りなとこあって、なのにちょっと、偏った考え方してるみたいで……「友達には必ずあだ名をつける!」、とか」
「「あー」」
納得が行ったとばかりに声を漏らす悠一とアリス。恐らく二人の頭の中には、豪快に笑う同じ女性の姿が浮かんでいるだろう。
「でもほら、その……姫ちゃんって、ちょっと、なんか、色々、………………アレじゃない?」
「「ああーー」」
先程よりも更に合点が行ったとばかりに長めに声を漏らす。確かに、アレだ。
「だからかな?途中でヒメって呼ぶのがばかばかしくなっちゃったみたいなの。知り合って2、3ヶ月もしたらもう呼び捨てになってたよ」
「へぇー……人に歴史ありと言いますか……」
しみじみ呟くアリスの視線は、伊織と姫子へ。悠一とゆかりも釣られてそちらを向く。
「ぐおおおおおあああああああああああ」
「ぼはあああああああああああああああ」
割といつもの事だが、貞操をかけた攻防がエスカレートしすぎて二人体制の大車輪のようになってる伊織と姫子を眺める。
十数分後、玄関から沙希の元気な声が聞こえてくるまで、無言で眺め続けた。
◆
「……我が主“害群”。先程は黒崎が失礼を」
黒崎が抜け、残った二人。
“炎環”アロケン。“害群”ダンタリオン。
「瑣末な事だ。あれもそろそろ時間が無い。焦りもするだろう」
前に出、頭を下げたアロケンの脇を、“害群”が通り抜ける。
「、それが分かっておられるのであれば、計画を少し前倒しにしても宜しいのでは」
――通り抜けて、立ち止まる。
「……“炎環”アロケン。勘違いをして貰っては困るぞ」
振り向きざまに放った言葉は、冷たい。
「重要視すべきは優先順位である。彼と私の計画(<に於いて、最も重要なファクターは例機だ。黒崎と、それに付随する特典<はあくまで手段の一つに過ぎない」
淡々と述べられる言葉<は、“害群”のものか、それともその依り代たる男のものか。
「……ッ」
小さくアロケンが息を呑むのが、しかし“害群”には瞭然と聞こえた。
そして、そのアロケンの後ろに潜む影が、“害群”には瞭然と見えた。
「客だ」
「客――?」
振り返る。
二人の視線を受け、その影が物陰から姿を現した。
それは年老いた男の姿をしていた。
皺の刻まれた顔に白い髭を蓄えた、深く落ち着いた物腰の老人だ。
だが“害群”は、老人の姿を見るなりに踵を返し、また歩き出す。
「我が主――」
「対応を任せる。私は先に帰らせて貰おう」
言葉に詰まっていたアロケンが慌てて引き止めようとするが、逆に言葉をぶつけ、“害群”はその場を立ち去った。
残されたアロケンの元に、老人が歩み寄る。
曲がった腰。低い目線からアロケンを見上げ、
「……久しいのう御大将。話を、少しよいか?」
「……ああ。場所を変えよう、“怜錬<の鎚<”ゴヴニュ」
◆
「今夜のテーマは『お泊り』!てェことで、シンプルにカレー&サラダだ!」
そう宣言して、沙希がじゃーんっ!と大鍋の蓋を開け放つ。
「わーいカレーだー!」
「うわぁ、すごくいいにおい……」
「すげえ!ぱねえ!んまそう!これ一般家庭の夕飯ってレベルじゃねーぞ!」
部屋中を満たすカレーの極上の香りに、乙女達が一様にドオオオと沸き立つ。
「うわひょう待てないからあたしも手伝うー!皿これ!?」
「ああもう姫ちゃんそんな勝手に!?で、でも私も手伝うっ、とりあえずサラダとか取り分けて……」
パタバタと準備に加わる客分二人。家人の悠一と伊織、それから出遅れたアリスは先に居間の方に落ち着く。
「そいえば、なんかカレーって久しぶり。だよね沙希さーん?」
居間から続く台所スペースの沙希に向かって声を投げる。
「おーぅ。最近は和食続きだったからなー。気合入ってるぜ?」
「あー、ほんとアー子が来るようになってから和食漬けだもんなー。美味いからいンだけどさーぁー?」
返って来た言葉に、伊織はなるほどと頷きアリスの横腹を肘でつつく。
「ぅぐ、そう言われると返す言葉も無いです……でも、カレーも美味しそうですね。ねえ悠一さん?」
「………………」
「?、悠一さん?」
伊織の追及から逃れようと話を振ったが、悠一は夕飯前の賑やかな雰囲気とは真逆、深刻そうな表情でそれに気付かない。
数秒遅れて、やや驚いたように悠一がアリスに気付く。
「……、ぁ、ああ。なんだ?」
「いえ、カレー。美味しそうですねって。もしかしてお嫌いとか?」
「いや、そういうわけじゃ、ないんだがな……」
「……?」
返す言葉もどうにも歯切れが悪い。
一体どうしたのかと更に尋ねようとするが、
「ただいまー。あれ、今日は賑やかだね」
「おわーパパさん何日かぶりです!姫子ちゃんです!」
「やぁ姫子ちゃん、何日かぶり。ゆかりちゃんもいらっしゃいだね、うん」
「ぁ、ぉ、おじゃま、してまスッ!」
「ゆかりん噛んでる」
「かか、噛んでにゃいヨッ!」
「うん、噛んでるけどね」
帰宅した信護と姫子らの騒がしい声に気を取られ、
「よーっしゃ出来た完璧。ホラお前ら座れ座れー」
更には料理を終えた沙希の一声が飛び、結局は訊けず仕舞いとなった。
「ほらお前ら手ェ合わせろー。…………うし、そんじゃーいただきます!」
「「いっただっきまーす!」」「「「「いただきます」」」」
沙希の号令に続く六人。
まずは伊織と姫子が、スプーン山盛りにすくったカレーを一気に口に放り込んだ。
その間抜け二人があふいあふいぃいいとのたうつのに遅れ、ゆかりもカレーを食べる。
続けて沙希と信護、そして悠一が妙にゆっくりと口に含んだ。
そして全員が一様に絶賛の言葉を口にするのを見てから、ようやくアリスはカレーを頬張った。
まずは驚くほどの熱気。次にスパイスのピリっとしたささやかな刺激。
大きめに切られた野菜の様々な食感や鶏肉の旨味が次々に流れ込み、アリスの全身を幸福で満たしていく。
コクン、と嚥下し、ほふぅ、と一息。
「ぉ、おいひいですぅ〜……」
うっとり頬に手なんか当てて、恍惚とした表情で絶賛の言葉を漏らす。
「(……はて、しかしこれだけ美味しいカレーを前に、悠一さんは何を憂い顔してらしたんでしょうか?)」
先程の疑問がまた鎌首をもたげたが、今はカレーの方が大事だ。
さてもう一口、とスプーンを運んで、はたと手を止める。
喉に、僅かな違和感がある。
そしてそれの正体を探る前に気付く。
「……?」
姫子とゆかりが、固まっている<。
「、姫子さん、ゆかりさん、どうし――!?」
そして<、熱が奔る<。
「「「ひ、ぁ、ぃ、ひはああああアアァぁァアぁああアぁアぁアアアあッッッ!?」」」
少女達の悲鳴が、見事な三重奏となり、響く。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@!?!?!?」
「ひぁうあ、み、ずっ、らめ、おみずぅ〜!?」
「辛っ!ぃや熱……痛!?な、んでずがっごれ゛……ガレ゛ーが喉に゛噛み゛付ぎま゛じだよ゛!?ぅぁうあふえあぐぅぅううっ!?」
ドッタンバッタンゴロゴログワアアアー!と。
のたうち暴れる乙女×3。
一部はスカートを履いているにも関わらず……と言うか、気にしていられないと言う様子で畳の上を転げ回っている。
「うん、相変わらず美味しいね」
「いや、でもこれは……沙希さん、味付け少し変えました?」
「おっ!よく分かったなーユウ。隠し味のバランスを変えてみたんだよ。見破られたのは悔しいけど、成功だなこりゃ」
対して向坂家の面々はなんとも平然とした様子で談笑までしながら箸を、もとい匙を進めている。
「ゆ゛。悠一ざん達は辛くなイ゛んでずが……?」
喉をやられたデスボイスでアリスが訊く。
「いやまあ、辛いが。ウチのカレーはいつもこうだからな。対処法ぐらい身につけている」
「た、たいしょほう……?」
と、涙目でヒーヒー言っているゆかりもちょうど近くに転がってきた。
大胆にスカートがめくれ上がっているのから目をそらしつつ、
「一口食べる毎にしっかり水を飲んで、一回ずつ辛味を消していく。辛さを勢いで誤魔化そうとがっつくと、そこで死にかけている進藤さんみたくなる。ほら水」
等と説明しながら、グラスに注いだ水を皆に手渡して回る。
がぼごぼと乱暴にコップを煽って、ようやく人心地がついたと息を吐く三人。
ぜーはーと苦しそうにしながら、その中でアリスが疑問に思ったことを口にした。
「び、びろいめ゛にあ゛いまじだ……」
まだ半ば舌が回っていない。
「げど悠一さん?ほうじでそんな゛、対処法を゛編み出しでまでぼん゛な激辛カレーを……?」
尋ねられた悠一は、食事前の様にまた言い淀み、視線を横へ流す。
「まあ、それは……家人にこのカレーが好きな奴がいるから、だが……」
どうやらその視線の先にこのカレーを好むと言う兵<がいるらしい。
アリス・姫子・ゆかりは悠一の視線を追う。
それは会話を楽しみながらカレーを食べる信護と沙希を通り越し――
「沙希さーん!おかわりっ!」
「「「うぅうえぇぇぇえええええぇえ!?!?!?」」」
――今まさに元気よく空っぽの皿を掲げる、八坂 伊織その人に向いていた。
「あいよー。てかペース早すぎだろお前。ちゃんと、ゆっくり、味わって食べやがれっての」
「カレーは飲み物!」
「どこのフードファイターだテメエ!?」
と言うやり取りをしてる伊織と沙希を他所に、アリス達が悠一に詰め寄る。
「ど、どういうことでふか悠一しゃん!」
「こーひゃか先輩!はれってひほひんのヒャラ的ひアリなんれすか!?なしっしょ!?」
「ひょ、ひょうでしゅよっ、私も、いおひちゃんがこんにゃにかやいもの食べへるとこりょ見たこおないでしゅ!」
未だに呂律の回ってない三人にズズイと迫られ、たじろぎながらも悠一が答える。
「あ、ああ。言いたいことは分かる。あいつは普段は「超」どころか「超絶」のつく甘党だからな」
「だったやなんれ?」
「さあ、なんでだろうな……なんでか、カレーにだけは並々ならぬ情熱を燃やしてるんだ……食べる方専門だが」
「うんうん。で、八坂家秘伝のカレーをうちの優歌が引き継いで、それに沙希が自己流にアレンジを加えちゃったものだから、それはもう物凄いんだよね」
悠一の説明と信護の補足を受け、はあ……と神妙に頷く一同。
その視線は、いつの間にか食べていた三杯目を過ぎ、四杯目に突入する伊織のニコニコ笑顔から離れなかった。
,ご無沙汰しています。Wが始まってめでたく名前を手に入れたひだり翔太郎です。おいおい。
さて、『レイキSA』の02-bを投稿したのが確か四月のはじめ……そこから約五ヶ月ほど開いてしまいました。
どうしてこうなった!?どうしてこうなった!?と、最近購入した背もたれ付の寝心地抜群な椅子から立ち上がって踊りたくなる気持ちを抑えられません。
それでも俺ニ今敢エテ問オウ――どうしてこうなった!?と。
答えは一つ。真実もじっちゃんもいつも一つ。
バイク超楽しい。
………………………………………………………………………………………………………………いやもうほんとなんてーかすいませんっていうかごめんなさいっていうかもうしわけないっていうか。
生まれてきて御免なさいレベルの酷い言い訳を繰り出させて貰ったわけなのですが。
いやほんとバイクとか近所に買い物行くだけでも楽しくてー!この五ヶ月免許取ったりバイク乗ったりバイト行ったりと、暇以上多忙未満な日々だったのですよよよ。
しかしそれはさて置いても、最近自分の実力不足を改めて痛感する次第で。
全然筆が進まないので数日放置→数行書く→数日放置→放置→書く→数日放置→……を、繰り返しました所、各キャラのセリフ回しなども忘れかけたりと、とんでもねえ体たらく。
チミチミ。ひだりクン。さすがに10月超えたらあかんよーと心の偉い人に言われたので、とり急いで今書いてる辺りまでで無理やりケイジバンに、シュウゥウー!超!エキサイティンッ!
ので、前編と後編の長さのバランスは、おそらく7:3か、6:4ぐらいになるんじゃないかと予測されます。動きのねえ前編だ。
◆
そんな13話。サブタイトルは光と陰。
人間サイド⇔ヘイズサイドを交互に描くという、まーたひだりが読み辛ェことはじめやがった、と言われること請け合いな構成となっております。
第三部の始動編というか、助走というか。いろいろ騒がしくなる前の一幕を描写し切れればいいなあと思ったり。
えーととりあえず、五ヶ月も新作書き切ってないのに書き上げてない話の解説をウダウダ垂れ流すのもアレなんでここでお話打ち切り!以下SA02-bに寄せられた感想さまのお返事!
◆
・DarkMoonNightさん
>感想にいかせてもらいますぜ強敵(とも)よ!!
俺とお前は、戦うことでしか分かり合えないッ!!(クワッ)
>いくらなんでも
まあ背が低い、低すぎる、低すぎて泣けるのが伊織の最大のコンプレックスなので。
人にどう見えるかとか気にせず、デカくデカくってのが理想なのでせう。
>せめて160ちょいで
………………、ああ、そこの金髪碧眼巨乳ドM。お前(161cm)じゃない。座ってろ。
>びっくりしたんだぜぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!?
ゼェェェェェェェェェェェェェェェェェット!!!
甘えん坊は……うん、SA03に期待してくれ!!!!!
わ、私のためなんかに無理して長文なんて書かなくていいんだからねっ。
で、でもっ……、………………ぁりがと。うれし、かった……
はいはいツンデレ。ご感想ありがとうございましたー!
・Aヨスケさん
>沙希さん関連
最初に言っておく!信護はこれでもかーなーり、丸くなったほうだ!!
優歌の献身的な調kゲフン。健全的なお付き合いの成果と言えましょう。ボロがボロッボロ出てますけど。
優歌は本編には出せないので、好き勝手に最強系お母様キャラで。こういうキャラって使い勝手よすぎて困る。
何故彼女が故人なのか……それは悠一・信護親子、そして桐生辺りのキーポイントですね。今後に乞うご期待。してくださいおねがいします。
>ドMちゃん
めでたく設定に載りました(載せました)。
三部からのドMっぷりに君は目が離せない!!
>生エリス
まあたぶん、彼180cmぐらいあるしね。あとイケメン。ギギギ。
ご感想ありぁっしたー!みすてないでー!(切実)
・YPさん
>こんなオイラでも
五ヶ月も新作投下してないこんなオイラでも、続き書いていいかな……?
>自演乙
まあ夢だし。とばっさり両断しておきます。
………………実は本編終了後、未来の伊織の背を伸ばすか伸ばさないかで、ひだりの脳内では連日協議が繰り返されています。
>グッと
本質的にはこっちが素の伊織さんです。
意地と根性で今のキャラクターを作り上げて……おっと、ここから先はいえねえなあ。
>本編以上 の ガチ描写
ひだりんの本気はまだまだこんなもんじゃないのだわよ!!!
いやほんと、アリスのキャラはどうしてこうなった。騎士サイドの人間なので、バトルな場面でもテンション高い方の常識人としてツッコミが出来るのは強みです。
>ベン・トー4巻
買ったよ会長……あれ?今メガネかけてないんでよくわからないけど、わぴたんなんかお毛けが……?まさかインm
五ヶ月もほったらかしでサーセンっしたー!
・青嵐昇華さん
>ゆっくりし過ぎ
読者様が「自分は書くのが遅い」と思わせない為に、その遥か上を行く遅さで筆を進めるひだりさんかっけー!ごめんなさい。
>ありすはーど
間違ってないゾ、このうっかりさんめっ☆
しかし、本当にせーらんたんは出来ないのかな?
出来るのにやらないなんてことはないかな?
もっとえちぃお話が書けるんじゃないかな?
自分を信じて指の動くままに書けばいいんじゃないかな?
もっと熱くなれよおおおおおおおおおおお!!
>あの頃の信護さんなのか?
答えはNO!「あの頃」はこれから更に数年さかのぼります。
ぶっちゃけ(37)的にも相当のトラウマを残すレベルの暴君っぷりでした。
それを調kゲフン矯正する優歌さんかっけー!
>はちぃさい
今でも小さいけどなっ!!
ひだり的には、でもまあ今の伊織の方が好みです。悠一はどんな伊織でもたぶん好き。
>まさしく愛か!
まさしく愛だ!!
考えてた当時はひだりの中で中村悠一がアツかったんですよよよ。
この度は大変長らくお待たせしてサーセン!
◆
ふぃー。こんなもんですかな。
これ書いてる時点で残念ながら日付が変わって10月突入。
でもめげない負けない泣いちゃダメ。いけいけガンコちゃーん!って懐かしくないですか?
もう十分ウダウダしてますが、これ以上ウダウダ書き連ねるのもアレなもので、そろそろ退散をば。
この五ヶ月間……というか、ここ数ヶ月。他の作者様の作品に感想を一つもつけられずすいませんでした。
これだけ長期間放置している自分に、人様のところでヒャッホウいぇーいなんて書く資格があるものか……とか考えちゃいまして。
同様の理由で交流温泉にも何も書いてないわけです。劇場版みたのに!!
とにかくなにより、この『仮面ライダー澪騎 第13話/前編』の投稿を、ひだりの生存報告と変えさせて頂きます。
11/23 タグ修正
11/24 タグ修正。不毛だ……,#000000,./bg_h.gif,p3212-ipbfp202takakise.saga.ocn.ne.jp,1
2009年09月24日(木) 23時44分19秒,20090924232903,20090927234419,0d827jqjJl5pg,仮面ライダーバルキリーたん 最新設定,鴎,,,概要
西暦2010年。
突如上空から襲来してきた無数の光の玉。それは未来から侵略を仕掛けてきた「イマジン」であった。
私立天神学園に通う高校1年生の天童慧(てんどう・けい)は偶然女性がスパイダーイマジンたんに襲われている現場を目撃し、女性を守るために勇敢に挑みかかる。
しかし、負傷して逃げる途中に彼女の勇猛果敢な姿を見て惚れこんだホークイマジンたんに憑依されてしまう。
その時、かつて時の運行を守るために仮面ライダーになって戦っていた母親・愛から「バルキリーベルト」を授かり、ホークイマジンたんの「ルーベット」の力を受け、慧は仮面ライダーバルキリーたんへと変身する。
時の運行を守るために「V(バルキリー)ライナー」に乗ってバルキリーたんの戦いが始まる。
天童慧(16)仮面ライダーバルキリーたん
バルキリーベルトで仮面ライダーバルキリーに変身する高校1年生。
身長167cmといった長身で、モデルのような端正なプロポーションが取れている黒髪ロングヘア美少女。運に見放されているかのような人生を送ってきており、その不幸なネタはもはや日に日に内容が凄まじいものになっているが、決してメゲない強い心と精神力を持っている。
性格は温厚で争いごとを好まないが、一度スイッチが入ると生来の熱さを発揮し、熱血モードとなる。かつてはヤンキーとして腕を鳴らしており、その実力はかなりのもの。
趣味はサイクリング(しょっちゅう自転車を壊してはいるがそれでも自転車は好きらしい)。
好きな食べ物はカレーライス。
大友 晶(16)仮面ライダーワイバーン・キングフォーム
ワイバーンベルトで仮面ライダーワイバーン・キングフォームに変身する高校1年生。
その正体はこの世界とは異なる次元の世界でファンガイア一族の王である「ティラノファンガイア」。見目麗しい美少女のような可愛らしいルックスと小柄で華奢な体つきから美少女と間違えられることも多い。一見素直で屈託のない明るい性格だが、自分たちの一族を滅ぼしたレジェンドルガや敵対する存在に対しては蔑視するといった冷酷な一面も併せ持っている。チェックメイト・フォーのキングでもある。
趣味は裁縫で、よく服を汚したり破損させている慧の服の世話を一身に請け負っている。真名は「荒れ狂う雷光纏いし牙の王」。
好きな食べ物はジャンバラヤ。
(イマジン)
ルーベット:ホークイマジンたん(ランスフォーム)
「その罪、閻魔に代わって斬る!!」
慧のイメージした「サヨナドリとタカ」のタカから具現化されたイマジン。イメージカラーは赤。武器は薙刀「ルビーランス」。
古風な言葉遣いをし、お淑やかかつ何事にも動じない気丈さを兼ね備えている大和撫子のようなイマジン。武術をはじめとするあらゆる技能面において慧をサポートし、また慧を立てることを忘れない良妻賢母タイプ。しかし慧を尊敬するあまりにおかしな妄想をして暴走したり天然ボケを見せたりといった一面もある。
趣味は料理、掃除、洗濯などの家事全般・・・だが最近はサファイアたちとよく暴走しているため琥珀がフォローすることが多い。好きな食べ物は和食。
R慧
ルーベットが憑依している慧。髪に赤いメッシュがかかり、ポニーテールにして簪など和風のアクセサリーをつける。赤く瞳が輝き、和服などを好んで着る。
トパーズ:オウルイマジンたん(アックスフォーム)
「チェックメイト。待ったはなしだ」
ピアニストの霧山小夜子のイメージする「フクロウと鳥たち」のフクロウから具現化されたイマジン。イメージカラーは金。武器は斧「トパーズアックス」。
一見クールで近寄りがたい印象を受けるが、実は心優しく思いやりがあり頼りがいがある。沈着冷静かつ無口で、いつも本を読んでいるか寝ているかゲームに興じているかのどちらかである。一匹狼ではあるが、仲間思いで一度これと決めたら普段の冷静さからは想像もつかない大胆な行動に出ることもある。実は恋愛ごとに関してはかなりの奥手で、妄想しては暴走し、周りを引っ張りまわしてしまう。趣味はゲーム。好きな食べ物は紅茶にあうもの。
T慧
トパーズが憑依している状態。眼鏡をかけ、瞳が金色に光輝き、髪のひと房だけが長く伸びていて金色のメッシュが入っている。
エメラルド:ピジョンイマジンたん(ソードフォーム)
「あたしのビートでシビれさせてあげるっ!!」
慧のイメージした「アリとハト」のハトから具現化されたイマジン。イメージカラーは緑。武器は長剣「エメラルドソード」。
子供っぽくイタズラ好きで、陽気で明るく物事は楽しければOKといった無邪気な性格。大工としての腕前と手先の器用さは他の追随を許さないほどの腕前でVライナーの修理および武器の修理、改造などは彼女が手掛けている。音楽が大好きで、常に音楽を聴いたり、ダンスを踊ったりしている。Vライナーの修理や新しい兵器及び武器の設計・開発を一身に請け負っており、その技術は超一流の腕前を持つ。好きな食べ物はケーキ。趣味は特撮鑑賞、機械いじり。
E慧
エメラルドが憑依している状態。髪の両側にピンが止められ、右側に緑色のメッシュが入り、首にゴーグルをかけている。瞳の色は緑色に光輝く。
サファイア:スワンイマジンたん(ガンフォーム)
「君のハートに・・・ロックオン」
慧のイメージした「白鳥の王子さま」のハクチョウから具現化されたイマジン。イメージカラーは青。武器は銃「サファイアガン」。
他人を見下したような態度が鼻につく自信家。常に事態の様子を一歩引いた場所から冷静に見ている。女の子が三度の飯よりも大好きで、ナンパやセクハラを趣味と豪語するほどで、女の子が困っていると放っておけないほどのフェミニスト。ピアノや絵画、華道など様々な分野において得意とするスキルを持っている。アダ名は「変態青玉馬鹿白鳥」と呼ばれてしまうほどのお下劣な行動が目立っているが、本人は一向に気にしていない。事あるごとにトラブルを呼び込むトラブルメーカーでもある。
S慧
サファイアが憑依している状態。髪が長くなって三つ網になり、青いメッシュが入る。瞳の色は青く光り、チャイナドレスを好んで着る。
琥珀:スパイダーイマジンたん(アサシンフォーム)
「お仕置き地獄にようこそ」
「蜘蛛の糸」のジョロウグモから具現化されたイマジン。イメージカラーはオレンジ。武器はクナイ「アンバーブレード」とカギ爪「アンバークロー」。
かつてはバルキリーの敵として戦ったが、慧の戦いぶりを見て、自身の望む生き方を見極めるためにVライナーに乗り込む。6人の中では唯一の常識人。故に破天荒ぞろいの連中に振り回されて苦労することもしばしばある。クールでぶっきらぼうな態度や話し方が特徴的だが、実は繊細で思慮深く仲間思いの頼れる存在。慧からも絶大な信頼を寄せている。風呂の修理をはじめとするVライナーの世話を請け負っている。最近はあまりにも電車の破損が多いためか徹夜で修理したり掃除したりで肩こりが絶えないらしい。好きな食べ物はアイスクリーム。
K慧
琥珀が憑依している状態。髪がショートカットにシャギーが入った状態でオレンジ色のメッシュが入り、瞳の色がオレンジ色に光り輝き、蜘蛛の巣のデザインのピアスやドクロのデザインが施されたTシャツ、パンクファッションに身を包んでいる。
アメジスト:サンゲイザーイマジンたん(ファントムフォーム)
「貴方・・私の闇に染まってみる?」
「パーベルじいさんの小石」のトカゲのイメージから具現化されたイマジン。イメージカラーはバイオレット。武器はハルバート「アメジストハルバート」。
かつてはバルキリーの敵として戦ったが、慧の戦いぶりを見て、自分自身が生きる理由を探すためにVライナーに乗り込む。メンバーの中でも最もクールで冷静沈着、一歩離れた距離から接したり、慧のことを「特異点」と呼ぶなど干渉をあまり好まない皮肉屋で孤高な性格。その反面、自身が心を許した相手には惜しみない友愛の情を注ぎ込む。琥珀には心を許しており、ともに行動することも多い。時計や骨董品などを愛でることが趣味。好きな食べ物は野菜。
A慧:紫色のメッシュを編みこんだロングヘアを七三分けにしてポニーテールに縛り上げ、紫色の瞳をもつ理知的な雰囲気となる。カードや手品を用いて敵を幻惑する。
(チェックメイト・フォー)
ルーク<神代 塔子>:仮面ライダーワイバーン・ルークフォーム
ワイバーン・ルークフォームに変身する、大学でスポーツ健康学の教鞭をとっている教師。その正体はこの世界とは異なる次元の世界におけるファンガイア一族の「アーケロンファンガイア」。
色黒で長身の体躯を持つ健康そうな色香を漂わせる凛々しい女性。陽気で明るい性格で、人一倍正義感と行動力が強く、思い込んだら全力で突っ走り、時折失敗することもあるがめげない強い心を持っている。真名は「乾いた大地をかける殲滅の使徒」。
ビショップ<神代 聖>:仮面ライダーワイバーン・ビショップフォーム
ワイバーン・ビショップフォームに変身する、大学で宗教学の教鞭をとっている教師。その正体はこの世界とは異なる次元の世界におけるファンガイア一族の「サーベルファンガイア」。
柔和で物腰が柔らかく、のどかな性格をしており、慧からも信頼されている。頭脳明晰で、作戦の立案や戦略の考案に長けている非常に優秀な知力と新しい戦略を受け入れる柔軟さを併せ持つ。お酒を飲むと結構失敗をやらかしたりする。真名は「吹き荒ぶ風纏いし知皇」。
クイーン<神代 真姫>:仮面ライダーワイバーン・クイーンフォーム
ワイバーン・クイーンフォームに変身する、メイド喫茶を経営している若き経営者。その正体はこの世界とは異なる次元の世界におけるファンガイア一族の「アーケオプリクスファンガイア」。
ゴスロリドレスに身を包んだ銀色のウェーブがかかったロングヘアと縦ロールの美少女で、常に人を食ったような言動が特徴的。言いたいことはハッキリ言うため、キングが相手でも物怖じしない気の強さを持っている。反面自由奔放で思いついたら即行動するといった常人には読み取れない行動をとることが多く仲間たちをやきもきさせることもある。真名は「麗愛と猛る猛火の調律者」。
(セブンズヘブン&智)
智(スフィンクスレジェンドルガ)
スフィンクスの特質を持つレジェンドルガが化身した少女。武器は杓杖。
ゴシックパンクの服装に身を包んだ栗色の髪をポニーテールに縛り上げ、小柄な体躯だが豊満な胸など出ているところは出ている少女。明るく無邪気だが、時の運行の破壊をゲーム感覚で楽しんでいたり、傭兵集団セブンズヘブンを蘇らせて暗躍させるなど不気味で底知れない実力を秘めている。
ルシファー
ルシファーレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの首領。武器は槍。
残忍な性格だが、腕っ節とカリスマ性で仲間たちを引っ張り上げてきた頼れる兄貴分。
豪快で細かいことは気にしない大雑把な言動が目立つが、仲間思いで思慮深い一面もある。
アスモデウス
アスモデウスレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの副長。武器は関節剣。
妖艶な色香が漂う凛とした雰囲気の長身の美女。明るく無邪気だが、敵対するものを容赦なく切り刻むことを好む残虐な一面もある。ルシファーのことが大好き。
ベルフェゴール
ベルフェゴールレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの狙撃手。武器は弓矢。
大人しく控えめで気弱といった小動物系の美少女。敵対するものに対しては自身が絶対的に優位な立場からの予測不可能な弓とりで敵を撃ちぬき急襲を仕掛ける戦法を得意とする。
サタン
サタンレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの格闘家。武器は手甲爪。
肉弾戦を得意とし、強靭な怪力と常人離れした持久力で敵を圧倒する。普段は大人しく朗らかで心優しい女性だが、爪を手にすると人格が一変し、荒々しく凶暴で残忍な性格に豹変する。
マモン
マモンレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの参謀的存在。武器は双刃薙刀。
水や冷気の力を自由自在に操ることが出来る。
レヴィアタン
レヴィアタンレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの薬師。武器は仕込み刀がある杖。
毒や薬に関する知識と技術を持ち、植物の力を操る。
ベルゼブル
ベルゼブルレジェンドルガに化身するセブンズヘブンの剣士。武器は大剣。
末端だが未知数の実力の持ち主で、ルシファーでさえも一目置いているほどの凄腕の剣士。
(時の列車)
(Vライナー)
かつて愛が使っていた時の列車。パスを授かり、実質上彼女がオーナーとして引き継いでいたが戦いの終了後はターミナルで静かに眠っていた。
しかし、愛の招集により復活し、すべての権利は娘の慧に託される。
3両編成の新幹線型タイムマシンで、慧のイメージにより進化し、「フェニックス」と名付けられる。
1号車:運転車(司令室もある)
武器は先端の6門のバルカン砲。
2号車:食堂車
両側のウイングを開くことで空をマッハ3の速さで飛行することができる。
ウイングについているガトリングキャノンが武器。
3号車:寝台車
イマジンたちの個室も設けられ、シャワー室、風呂、ラウンジもある。
超高性能エンジンを組み込んであり、Vライナーを上昇、飛行させる。
Vライナー・ロードス
トパーズ専用車両。ドリルが先頭車両に装備されており、回転して一気に敵を刺し貫く。永久凍土や超硬度の岩盤でさえも粉々に打ち砕いてしまう。
Vライナー・キグナス
サファイア専用車両。車両に16門のミサイルポッドと4門の超陽性電磁キャノンを装備させた爆撃専用車両。
Vライナー・ハルピュイア
エメラルド専用車両。ターボブースターエンジンを装備しており、マッハ2の速さで一気に加速し、バルカン砲で敵をせん滅する。
超重連合体電車・ガルディウス
フェニックス、ロードス、キグナス、ハルピュイアの4両の車両が合体した超高性能新幹線。フェニックスの第2車両の側面から翼が生えて、巨大な鳥のような形になると、陸地、海上だけでなく、空中でさえも自由自在に走行することができる。必殺技は全台からフリーエネルギーを発し、巨大な黄金色の不死鳥となって敵をうち貫く「インパクトキャノン」。
キバライナー・セイリュウ
未登場。二両編成の青いラインが入った新幹線型タイムマシン。
前車両が龍の頭部、後ろが尻尾のような形状に変形。他の車両を間にはさむように連結することで、巨大な龍のような形態となって行動する。
キバライナー・スザク
赤いラインが入った新幹線型タイムマシン。
変形すると翼を広げて空中をマッハ3の速さで飛行する鳥型マシンとなる。
キバライナー・ゲンブ
紫色のラインが入った新幹線型タイムマシン。
変形すると二門の巨大な大砲を持つ重厚なつくりの亀型マシンとなる。
キバライナー・ビャッコ
銀色のラインが入った新幹線型タイムマシン。
変形すると四足歩行で鋭い爪と牙で敵を引き裂く虎型マシンとなる。
(ライダー)
(ランスフォーム)
ルーベットが憑依した姿で変身する。電仮面はタカをイメージした仮面が装着される。
Vガッシャー・ランスモードを用いたリーチの長さを活かした戦法を得意とする。
必殺技は槍をオーラでつなぎ合わせて穂先を発射し、敵のオーラのリールで閉じ込めて中央の敵を槍の穂先で縦横無尽に切り裂く「サラマンダーブレイク」。
デンライダーキック:上空に飛び上がり目にも止まらない速さで飛び蹴りを入れる。
(アックスフォーム)
トパーズが憑依した姿で変身する。電仮面はフクロウをイメージした仮面が装着される。Vガッシャー・アックスモードを用いた腕力と防御力を駆使した真っ向から力で圧倒する戦闘スタイルが特徴。近距離戦では無類の強さを誇る。必殺技は斧を構えて敵の体を居合の要領で叩き斬る(もしくは回転の勢いで斬る)「ガイアクラッシャー」。
デンライダーキック:体をひねって敵の頭部にかけて回転踵落としを炸裂させる。
(ソードフォーム)
エメラルドが憑依した姿で変身する。電仮面はハトをイメージした仮面が装着される。
Vガッシャー・ソードモードを用いた剣術とブレイクダンスによる予測不可能の動きで幻惑するトリッキーな戦いを好む。必殺技はダンスをするかのように踊りながら剣で何度も切り裂く「シルフィーヌワルツ」。
デンライダーキック:空中に飛び上がり、回転きりもみキックを炸裂させる。
(ガンフォーム)
サファイアが憑依した姿で変身する。電仮面はハクチョウをイメージした仮面が装着される。Vガッシャー・ガンモードを用いた射撃を主体とする戦法を得意とする。
一方的に攻撃し相手に反撃の隙を与えない戦闘スタイルをとる。必殺技は翼を広げ、無数の銃弾を発射させる「セイレーンレクイエム」。
デンライダーキック:敵に向かって走り出し、空中回転蹴りを炸裂させる。
(アサシンフォーム)
琥珀が憑依した姿で変身する。電仮面はクモをイメージした仮面が装着される。Vガッシャー・クナイモードとハンドアックスモードを用いた戦法を得意とする。
スピードに長けておりテクニックを生かした素早い戦法で一気に敵を殲滅する。必殺技はデンリールのクモの巣で敵を捕縛し動けなくなったところを切り刻む「デッドエンドレクイエム」。
(ファントムフォーム)
アメジストが憑依した姿で変身する。電仮面はトカゲをイメージした仮面が装着される。Vガッシャーは長柄斧で槍の役割をも果たすハルバートモードで戦況に見合った戦い方を得意とする。
予測不能な幻惑戦法を得意としており、敵の冷静さを奪い有利な状況に持ち込んでの勝負に長けている。必殺技はハルバートで敵の動きを封じて踵落としを炸裂させる「アブソリュートデス」。
イカロスショット
エメラルドが完成させたカメラ型アイテム。バックルに装填し、ボタンを押すことで一度に6体のイマジンを憑依させて「クライマックスフォーム」に変身する。
(クライマックスフォーム)
イカロスショットで6体のイマジンを一度に全員憑依させた慧が変身する。ルーベットの仮面が頭部に装着され、トパーズが右肩、エメラルドが左肩に装着され、サファイアが背中に憑依しそのまま仮面が青白い光を放つ翼となる。琥珀の仮面のアンテナがそのまま鋭いカギ爪となり左腕に装着し、アメジストの仮面が装甲と化して右腕に憑依して装甲と化す。
すべてのライダーの必殺技を使用することが出来る。
(ワイバーン・キングフォーム)
キングが変身するティラノサウルスの特質を持つ青色の仮面ライダー。
雷の力を自由自在に操ることが出来る。
武器は「キングジャベリン」。槍を用いたリーチの長さを生かした戦法を得意とする。
必殺技は「カラミティーライダーキック」。
(ワイバーン・クイーンフォーム)
クイーンが変身する始祖鳥の特質を持つ赤色の仮面ライダー。
炎の力を自由自在に操ることが出来る。
視覚、聴覚といった感覚神経が極限まで研ぎ澄まされた形態で、武器はボウガン「クイーンボウガン」。高精度の射撃の腕前の持ち主で百発百中の命中率を誇る。
必殺技は炎の矢で敵を撃ち抜く「フェニックスアロー」。
(ワイバーン・ルークフォーム)
ルークが変身するアーケロンの特質を持つ紫色の仮面ライダー。
大地の力を自由自在に操ることが出来る。
パワーや耐久力に優れた形態。あらゆるもを弾き飛ばす防御力を持っている。武器はハンマー「ルークハンマー」。凄まじい怪力で振り回して敵を叩き潰す。
必殺技はハンマーで敵を押しつぶす「グラビトンプレッシャー」。
(ワイバーン・ビショップフォーム)
ビショップが変身するサーベルタイガーの特質を持つ銀色の仮面ライダー。
風の力を自由自在に操ることが出来る。
跳躍力や瞬発力に優れており、武器の「ビショップセイバー」で敵を一気に切り刻む剣術を用いた戦法を得意とする。
必殺技は真空の刃で敵を切り刻んでしまう「レイジングストーム」。
,設定更新いたしました。
大変お待たせいたしました。
一部変更がございます。ご了承くださいませ。,#000000,./bg_h.gif,st0416.nas931.ichikawa.nttpc.ne.jp,1
2009年09月18日(金) 06時37分12秒,20090918063712,20090921063712,ZjR4LiwoUBROA,仮面ライダーitertwine 第1章エピローグ1「嘲笑う白の魔女」,オリジナルライダー・リレー企画,,,作者:空豆兄
PM19:02 工業団地へ続く道
工業団地へと続く、人通りのない夜の産業道路・・・・。
その途中に、一見すれば異常とも思える二人の女性が、道路の路肩に立っていた。
まるで、そこを通ろうとするものを見張っているかのように。
「そろそろ、私たちに追いつくと思いますよ?『シンガー』。」
艶やかな紫の長髪を揺らしながら、その女性『メッセンジャー』はその隣に立つ小さな少女に語りかける。
「・・・・・・・・・。」
『シンガー』と呼ばれた少女は、その綺麗な顔に何の表情も浮かべないまま、ジャラ、とその身に巻かれた鎖を鳴らした。
彼女の腕に、脚に、その鎖はまるで彼女を縛るように全身に巻かれていた。
「私の書き足しておいたメッセージ・・・どうやら彼は応えたようですね。」
「・・・・・・・・・。」
少女は何も語らない。
だがメッセンジャーは、その「声なき声」を理解し、その証として彼女の発した「言葉」を自分の口で紡いでいく。
「・・・・・・・・。」
「ええ。そうでないのであれば、むしろ彼は「異常」と言えるでしょう。」
「・・・・・・・。」
シンガーは首を傾け、メッセンジャーの言葉に相槌を打つ。
彼女の首に巻かれた不釣合いな大きな首輪が、その動きによってずれて動く。
それに合わせて首輪につけられ、そこから彼女の全身に巻かれた鎖がまたジャラ、と音を立てた。
「なにせ『シンガー』である貴女が、彼の為にたった今まで歌っていた・・・。」
「彼の望みである「妹を探す」事・・・その思いは貴女の歌で、彼自身の感じ取る力を強化した筈です。」
「・・・・・・・・・。」
「この町の学園に向かっていた彼を公園に導いたのも、貴女のスケッチブックを開いたのも、貴女の歌の影響でしょう。」
「ただの人間である彼に、実際にどこまで効果があったかは測りかねますがね。」
「・・・。・・・・・・。」
「ああ・・・。そうですね。実際にそうなったのは、彼・・・「風瀬 列」くんの思いが真剣だったからです。」
二人の視線は今見えている道路の、その向こうへと向けられた。
今からここを通り過ぎる、その人物を迎えるように。
「しかし、貴女のお兄様はどういうつもりなのでしょう?何の能力も持たない、あの少年を観察対象にするなんて。」
「・・・・・・・・・。」
「先ほどあの公園で、貴女が華枝さんに渡したスケッチブック。あれは兄である彼の手に渡ったことで、華枝さんの手元に戻ります、けど・・・。」
「・・・分からないと言えば貴女もです。何故華枝さんに肩入れするのですか?お兄様に黙って勝手に出歩いた事、彼女の「運命」を後押しした事・・・。」
「シンガー。貴女は何を考えているのですか?」
「・・・・・・・・・・。」
メッセンジャーの問いに、シンガーは答えない。
いかにシンガーの声が聞き取る事が出来るメッセンジャーでも、その心の内までは窺い知る事は出来なかった。
二人の問答が終わろうとした時、道路の向こうから一人の少年が走ってきた。
前だけを見つめて一心に走る少年。
不思議なスケッチブックに書かれたメッセージと、自分の感じた直感を信じて、今彼は工業団地に入ろうとしていた。
やがて彼は路肩に立つ二人の女性に気づき、一瞬その視線をそちらへと向けた。
「・・・・・・・・・・。」
その中で、小さな少女と彼の視線はピタリ重なった。
少女は彼がこちらを向くことを予想していたのか、互いの顔を認識しあう。
しかしそれも刹那の出来事で、少年は再び前を向いて駆け出していった。
少女はその姿を目で追い、離れていく少年の背中をじっと見つめていた。
PM19:25 工業団地 路上
遂に陽は暮れてしまった。
空は殆ど真っ暗で、寂れた工業団地の中の僅かな外灯と、空に煌々と光る月がこの世界の頼り。
公園で拾ったスケッチブックの導くままここに来たけど、本当にここに華枝はいるのだろうか・・・?
当てもないまま、とにかく団地を進む。
・・・しかし、なんだろう。
ここに足を踏み入れてから、何か違和感が拭えない。
誰もいない寂れた工業団地。
不況で潰れた工場の立ち並ぶこの地に、もはや働いている人などいない。
でも・・・。
どうしてこんなに、誰かに見られている感覚がするのだろう。
何処を見ても人影はない。だけど。
何か落ち着かない。
魔境に足を踏み入れてしまったかのような気分。
魔境・・・。
自分で想像した言葉だが、その言葉に自ら震え上がってしまった。
今日の夕方の事・・・。
俺と神歌ちゃんを襲った、恐ろしい怪物・・・。
ああいうのが住み着くとしたら、こういう人気のない寂しいところなんじゃないだろうか。
・・・一人でくるんじゃなかった。
今更ながら後悔する。
空を見上げた。
何が起こるかわからないこの魔境の中、優しい月の光だけは俺の味方のような気がして。
華枝もどこかで、この闇夜の中で月を見上げているんだろうか・・・。
そう思ったとき。
ブゥゥゥ・・・・・・!
「・・・・・・・!!!!?」
夜の中に、黒い影があった。
虫のような羽音と共に、俺の見上げる夜空の中、その影は俺を見下ろしているように見えた。
虫のようなといったが、虫にしてはアレはでかすぎる。
距離があるというのに、その大きさは目で見てはっきりと分かる。
明らかに虫のサイズではない。
まるで、人が飛んでいるような・・・そんな風に見える。
俺は我を忘れてその姿を見ていた。
相手も、俺を見ているのだろうか、身動き一つしない。
電柱の頂点ほどの高さから、それと俺は見詰め合った。
やがて・・・。
ブゥゥゥゥンッ!!
「あっ!」
影はその場から唐突に飛び去った!
「・・・・!」
気がつけば、俺はそれを追って駆け出していた。
反射的にそれが飛び去った方向を追う。
夜空を見続けていたお陰で夜に目が慣れ、飛ぶ方向ははっきりと見えた。
何が在るか分からないが、俺はそれを追った。
明らかに華枝とは関係ない、むしろ夕暮れに見た怪物と近しいものだろうと、その想像は容易だった。
でも、アレは俺を襲わなかった。
だから信じたというわけではないけど、俺はアレは何か違うと感じたんだ。
影の飛ぶ速度と俺の走る速さは比べ物になるはずもなく、俺は最後に見えたその影の進む方向を懸命に追った。
僅かに明るくなる道。
どうやら此の先に街灯があるらしい。
夜目が利く今ではまぶしさに目を覆ってしまいそうだ。
俺はなるべく光を避けてさらに前へと進む。
・・・そして。
行き着いた先は、寂れた工場だった。
光を放っていた街灯は、ここのものだったようだ。
それにしても・・・。なんであの影はここに向かっていたんだろう?
光の届かない闇の中に、妙に濡れた地面があるのが気になった。
雨なんてしばらく降っていないのにな・・・。
そこで、もう一度空を見上げた。
やはりあの影の姿は何処にもない。
ここより先に行ってしまったのだろうか。
暗い工場をなんとなく見ていると・・・。
ん!?
街灯の下に、見慣れた緑の髪があった。
小さな体が光の中で横たわっているのが見えた。
そしてそれは、俺の大切な妹のものなんだと、すぐに理解した。
「華枝ッ!!!!!」
俺は駆け寄ると、その小さな体を抱きかかえる。
朝に見たきれいな華枝のフィッシュボーンテイルはところどころほつれていた。
華枝のかける小さな眼鏡は、本人と一緒に地面に転がっていた。
華枝に何かあったらしい事は見て取れた。
しかし衣服の乱れはないし、体に傷も見当たらない。
強いて言うなら、汗を多くかいているという事くらいだが。
熱はないようだし、病気で行き倒れたわけでもなさそうだ。
でも、最初にここに辿り着いた時、街灯の下には誰もいなかったような気がするんだけど・・・。
俺も疲れていたから、見落としていたのかもしれない。
あまりそこは気にしない事にした。
・・・そうだ。
晃輝に連絡しておかないと。
あいつも華枝を心配してくれた。
ピッ!
携帯を取り出すと、そこには着信とメールの知らせがあった。
発信者は・・・どっちも雅菜。
『家に行ったけど二人ともいないので、連絡がほしいです。』
『待っていられないので探しに出ます。華枝ちゃん絡みでしょう?』
・・・さすがというか、付き合いが長いというか。
それだけで俺の事情を見抜いてしまっている。
生徒会長を務めるような人望厚い成績優秀な女子生徒ってだけでなく、俺の幼馴染って部分も大きいよな・・・。
・・・・・・・・・・・・。
ピッ!
晃輝と雅菜へのメールを打ち終わると、携帯を閉じる。
俺はとりあえず妹の無事に安堵すると華枝をおぶり、家に向かって歩き出した。
PM19:32 住宅街
「・・・・・はぁ。」
列からのメールの返信を確認して、どっと疲れが出た。
華枝ちゃんは、やっぱり行方不明になるところだったんだ。
でも、今度はきちんと見つけ出した、か・・・。
いい加減、一人で何でも抱え込むのはやめないようにきつく言わないとね。
そういうことなら、私がいくらでも協力してあげるのに。
・・・まあ、一度や二度言って聞くような相手なら、私も苦労してないか・・・。
ふぅともう一度ため息をつくと、その足で自宅へと戻ろうとする。
明日、列から詳しい話を聞かなくちゃ。
それに、華枝ちゃんからも話を聞いたほうがいいかも。
こうも立て続けに危ない目に遭うようじゃ、他の生徒達も危ないかもしれない。
そうでなくても、今この街では行方不明事件が多発しているんだ。
それと関連するのかは分からないが、最近のこの街は妙な気配に満ちている。
人を襲うオルフェノクが出没しているわけではないが、まるで過去それがいた頃のような血生臭さが立ち込めている気がする。
仲間達にも声をかけて、街の住人を守るように言わなければ・・・。
と、そこへ。
暗い夜道を、制服姿の女子生徒が私の歩く前の道を横切った。
いけない・・・!
ああいう人こそ、今は注意しなければいけない時だ!
「あの、そこのあなた!」
「・・・・はい?」
私が駆け寄ってその女子生徒に声をかけると、その人はゆったりとした口調で私の声に返事を返した。
「この辺は最近は危険なんです。ですからこの時間に出歩かないで、早く家に帰って身を隠してください。お願いします。」
私は簡単に、しかし真剣にその警告を示した。
その制服の女子生徒は少し考えるような素振りをすると・・・。
「はい。そうさせて頂きます。それに・・・貴女も早くお帰りになりますよう。」
「わたくしに忠告を下さった事、とても感謝します。でも貴女もまた、その危険に身を晒しているのですよ?」
「貴女にも貴女を心配してくださる家族や友人がいらっしゃるはず・・・その方々に心配をかけないようにしてあげて下さいね。」
「・・・・!」
なんだ。
私は警告をしたつもりが、逆に心配されてしまった。
でもその丁寧な物腰と、きれいな声がつむぐ優しい言葉に少しもイヤミな所などなく、
むしろ私こそ失礼な事を言ってしまったんじゃないかと、そんな錯覚さえ起こさせた。
「ではまた明日・・・。ごきげんよう。」
「え・・・・あ。」
私がうろたえている間に、その女子生徒は路地に消えていった。
あの人、誰だっけ・・・。
学年は私より一つ上なのは分かる。でも、・・・。
・・・・・。
比良埼、藍、先輩・・・。
ふっと、その名前が頭に浮かんだ。
綺麗な容姿とその清楚な雰囲気で、後輩達に慕われている、人だったはず。
しかし、そんな先輩が、この時間まで一体何を・・・?
PM19:40 商店街付近
この波乱の一日もようやく終わると、大きくため息をつく。
華枝を探して夢中で奔走して・・・。
団地を抜け、街の明かりが近くに見えてきた。
もう少し歩けば、家に帰り着く。
・・・それにしても。
こうやって華枝を負ぶって歩くなんて、何年ぶりだろう。
小学生の頃は、華枝は毎日のように泣かされていて、泣き止まない華枝を頑張って負ぶって帰ったっけ・・・。
懐かしいあの頃。
夕焼け。兄妹二人で歩いた帰り道・・・。
「う・・・・・ん。」
「華枝?」
背中で、僅かにうめく声が聞こえてきた。
華枝が起きたのかと思い、声をかける。
「おにぃ・・・ちゃん・・・?」
いつかのように、華枝は俺を背中から呼んだ。
泣き疲れて眠ってしまった時の華枝を思い出す。
「もう大丈夫だぞ。華枝。俺がついているからな。」
「おにぃ・・・ちゃん・・・・。」
「おにぃちゃん・・・。おにぃ・・・・。」
華枝の声に涙が混じり始める。
何度も聞いた、華枝の泣き声・・・。
「もう安心だからな。」
「おにぃちゃん・・・っ!ごめんなさい、ごめんなさい・・・・っ!!」
「華枝?」
「うう、うええええ、う、うわああああああ、ああああ・・・・・!!」
華枝は、俺の背中で声をあげて泣き始めた。
よほど怖い事があったのだろう。その安堵から泣いているのだと。
俺はその時はそう思っていた。
華枝は何年たっても子供のままで、俺がいないと何も出来なくて。
いつも俺の影で泣いているような子だから、俺が守ってあげないといけない。
きっとこれからもそうなんだと、俺は考えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
時刻不明 場所不明
この町の外れには、誰も近づかない「帰らずの森」と呼ばれる大きな森が広がっている。
そこは昔から「手出しの許されない場所」として、開発が進んでおらず、今でも迷い込んだ人間は、二度と出てくることがないといわれている。
「お化けの出る」と言う噂に拍車をかけているのが、この森の中にある「幽霊屋敷」の存在だ。
町の外の人間が建てたといわれる、何のために作られたのか分からない、謎の洋館。
森の中に立っているその古い建物は、蔦が朽ちかけた壁を侵し、ボロボロの屋根には不吉を告げるカラスが、啼き声を上げていた。
近くの住人もお化け屋敷と称して、誰も近づかないその館。
・・・その地下に、恐るべき実験を続ける、一人の「魔女」がいることを、誰も知らなかった。
・・・・・・・。
「ほうほうほう・・・・。ゼベイルの奴が生きておったか。」
「キヒヒヒヒヒヒヒ・・・・」
あやしげなツボや薬品棚、いかにも中世の魔女が使っていたようなそれらの器具と、それらとはまるでかけ離れた科学的な施設。手術用のメス。計器、手術台。
・・・手術台の上には黒い布がかぶせられ、それはその下に何かが入っているかのように、膨らんでいた。
奇声をあげて笑う、その部屋の主は、黒い法衣に身を包み、長い年月を刻んだ皺だらけの醜悪な顔を歪める。
それが彼女、この館の主、ウィッチ・ビアンコ。
・・・「白の魔女」、である。
「はい・・・おばあさま。」
その老婆と相対するのは、金髪の女。
先ほどまで、町で若い男を「ゴーレム」に襲わせ、誘拐を続けていた人物。
その名を「ガブエイア」という。
「この町に集まったいくつかの組織に、情報と金をばら撒いたところ、その有力な情報を得られました。」
「とっくに死んだものとあきらめておったが・・・、そうか生きておったか・・・。キヒヒヒヒッ・・・。」
「おばあさま・・・・?」
「「ウルエイア」!「ラフエイア」!帰っておるか!」
彼女が部屋の外に呼びかける。
「・・・あんだよババア。連日の「人間すりかえ」の仕事から帰ったオレらに、ねぎらいの言葉もなしかよ。」
「ボク達に、何か用なの?」
二者二様の返事を返して魔女の部屋に姿を現す、二人の女の子。
「おぬしらに新しい仕事じゃ。先日ここを逃げ出したゼベイル・・・。奴を始末し、その屍をここに持ってくるのじゃ。」
「ゼベイル・・・?ああ、あの失敗作の「ハエ」か。」
「あれ?それって確か、「ミクエイア」が追っかけて始末しちゃったはずでしょ?」
首をかしげる、ボブカットの少女。
大きな瞳に細い体、肩を出した服装に、ミニスカート。
「ウルエイア。これは先ほどの、お前達より早く帰ったガブエイアの報告じゃ。奴は生きておる。しかも並々ならぬ力をも蓄えたようじゃ。」
「私の仕向けた他の組織の戦闘員数十体を、軽々と倒しているのよ。」
「私の、目の前で。」
ビアンコに続き、ガブエイアも口を開く。
「他の組織の戦闘員だぁ?そんなの、何の自慢にもなりゃしねぇ。」
「だらしねぇ人間の出来損ない程度、オレだったら3分で50匹は軽いぜ。」
ウルエイアとは対照的に、老婆に乱暴に言葉を投げかけるショートカットの少女。
長袖のシャツの上にタンクトップ、下には黒いスパッツと、活動しやすい服装。
「こと戦闘においては、お前にかなうものは居まいて・・・。だがラフエイアよ。奴は私の目的もやり口も熟知しておる。」
「加えて私への恨みも募っておる。」
「この様子では、町に忍び込ませた擬態ゴーレムも破壊されるやも知れん。」
「ケッ・・・・。人間の姿をした泥人形(ゴーレム)。そいつと町の人間を「すりかえ」、ババアがそれを使って改造実験体を作る。」
「こんなことに、何の意味があるってんだよ。」
「お前たち「4姉妹」の完成以来、その後の私の研究は遅々として進まぬ。もっと実験用の人間が必要なんじゃ。」
「何の研究だか・・・・。」
「キヒヒヒヒ・・・・。おぬしらが知る必要はない。」
しわがれた声で、細い肩をすくめ笑う老婆。
その姿に、二人は大きく息をついた。
「・・・では頼むぞ。ウルエイア。ラフエイア。」
「っ!おばあさま!私も、ぜひゼベイル討伐に同行を!」
「ガブエイアよ。お前はこの町に入り込んだ他の組織との交渉を進めておいておくれ。」
「私たちは技術こそあれ、その組織の大きさは連中とは比べ物にならぬ。」
「表立って事を構えれば数に劣る我らはひとたまりもあるまい。そのための交渉じゃ。よいな・・・?」
「っ!・・・それは、確かに私は、あの二人のように戦闘向きではありませんが・・・。」
「・・・・表立って動く必要はない。私たちは深く静かに、粛々と事を成せばよい・・・。」
「私の悲願の成否如何は、お前の働きにかかっておる。」
「頼りにしておるぞ・・・。」
「・・・は、はい。」
魔女の言葉に、ガブエイアはゆっくりとうなずいた。
「大丈夫だよ!こられないガブエイアの代わりに、ボクがあのハエを殺してあげるから♪」
「・・・そうだぜ。お前が来るまでもねぇ。」
「えぇ。・・・二人とも、ありがとう。」
「ウルエイア、ラフエイアよ。ゼベイル討伐の一助となるであろう。こいつを連れて行くがいい。」
ウィッチ・ビアンコはこの部屋の中央の手術台の上にかぶされていた、黒い布を剥ぎ取った。
「完壁とは言えぬが・・・。ゼベイルに匹敵する戦闘力を持つじゃろう。こやつをうまく使って、あの女を始末してきておくれ。」
それは、黒い蜘蛛のような姿をした人間・・・。
片腕は蜘蛛の持つそれと同じ形をしており、その顔には赤い昆虫のような目が八個。
下半身は蜘蛛の腹のように大きくせり出し、胸からは人間の足が左右対称に6本生えていた。
「・・・悪趣味なもんこしらえやがって。」
「名は・・・そうじゃな。蜘蛛型の眷属、「スパイダーファミリア」としよう。」
「では、頼んだぞ。私の可愛い娘たち・・・。」
「はい!分かりました。おばあさま。」
ウルエイアが、ウィッチ・ビアンコに頭を下げる。
「キヒヒヒ・・・。そのように呼んでくれるのは、お前とガブエイアだけじゃぞ。それに引き換え・・・。」
「ばかばかしい。行くぜ。ウルエイア。」
機嫌が悪そうにきびすを返し、部屋を去るラフエイア。
それに、「スパイダーファミリア」がついていく。
「あ!ラフエイアっ!」
それについてウルエイアも去っていく。
「では私も・・・我々との接触を図る組織との調整をしてまいります。」
ガブエイアもまた、部屋を出て行った。
「ふむ・・・さて・・・・。」
魔女の研究室に、一人残されるビアンコ。
つかつかと歩を進めると、壁際に据え付けられた、この研究室のあらゆる器具を操作するパネルの前に立った。
パチッ
魔女がそのパネルのボタンの一つを押すと、床の一部が丸く開き、そこから人間一人がすっぽりと収まるような巨大なシリンダーがゆっくりとせりあがってきた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
重い稼動音とともに昇ってきたそのシリンダーは液体に満たされており、
そしてその中には丸くうずくまるような姿をした女性が一人、眠るように浮かんでいた。
その全身にはシリンダーの上下から幾つも伸びた生物的な管が繋がれており、特にその管が集中する背中の部分には、
青い色をした、千切れかかった大きな鳥のような翼があった。
青く長い髪を生やしたその女性は自分が呼び起こされた事に気がつくと、その体勢のまま白の魔女を見る。
「ミクエイアよ。傷の調子はどうじゃ?」
ミクエイアと呼ばれたシリンダーの中の女性は、魔女の言葉に僅かに頷いた。
『はい・・・ビアンコ様・・・・。回復には今しばらく、かかりそうです・・・。』
『私がゼベイルを仕留め切れなかったせいで、妹達に私の役割を押し付けてしまい・・・本当に申し訳ありません・・・。』
「急ぐ必要はない・・・。お前は私の大事な娘じゃ。」
「ゼベイル如きどうにでもなる。今はゆっくりと傷を癒すがよい・・・。」
『ありがとうございます、ビアンコ様・・・・。』
「ふむ・・・。ときに、今日は機嫌がいいようじゃな?」
魔女のその指摘に、ミクエイアはゆっくりと微笑んだ。
『私、夢を見たんです・・・。』
「夢・・・?」
『はい・・・。夢の中の小さな私は、とても幸せそうでした・・・。』
「そうか・・・・。」
・・・・・・・・・・。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。
ミクエイアは再び眠りに就き、シリンダーは研究室の下へと戻っていく。
「夢・・・か。」
「初期の改造実験体であるあの娘には、まだ人間だった時の記憶が残っておるようじゃな・・・。」
「しかし・・・ゼベイルめ。まだ生きておってくれたとは・・・!」
「その身に抱えた貴重な試作品のデータ・・・かような形で手に入れることが出来ようとはなぁ!」
「キヒヒヒヒヒ・・・・!年甲斐もなく、ワクワクしてきおったわぃ・・・。」
「ゼベイルよ。私とガブエイアの敷いたこの囲いからは逃れる事など出来ぬぞ・・・。」
「周囲のすべてを敵に回したおまえに未来はない・・・!」
「貴様は所詮、私のモルモット・・・。試験管の中からは解き放たれる事など有り得んのじゃ。」
「キヒヒヒヒ・・・・キィーッヒッヒッヒッヒッヒッ!!!」
,約10ヵ月かかった第1章も、ようやくエピローグです・・・。
新たなメンバーを加え、生まれ変わった仮面ライダーintertwine、最近くるようになった方はとっつきにくいかも知れませんが、一度目を通してほしく思います。
参加者一同、全力でこの7人の思惑の混在する作品に取り組んでいます。
というわけでまとめページはこちら
http://www42.atwiki.jp/intertwine/
宣伝がましいですが、ドウゾヨロシクw,#005100,./bg_a.gif,softbank220024150097.bbtec.net,0
2009年09月18日(金) 09時31分11秒,20090918012342,20090921093111,ZqPlejMfqQeww,仮面ライダーintertwine 第1章第35話「騒がしい夜半」,オリジナルライダー・リレー企画,,,
作:イシス
PM.23:26 八代薬局
日付も変わろうかという時刻でありながら、八代薬局の明かりはまだ消えていない。明かりはリビングからの
ものだった。簡素な造りの室内にこれまた簡素な木造テーブルを、紫のロングヘアーの麗人、ボロボロの白衣を
着た少女、そして中性的な顔立ちの美少年が囲う。
麗人、“暗殺者”の前には湯気を立てるティーカップが置かれており、“暗殺者”はそれを一口、口にする。ただ
紅茶を飲んでいるだけだというのに、その仕草は気品に溢れた美しさを感じさせる。静かにカップがソーサーに
置かれた。これが合図となり、まず“暗殺者”が口火を切る。
「さて、今日一日で集まった各々の情報を整理しようと思うのだけれど・・・棗は?」
「もう寝てるよ。なんか元気なさそうだったがな。」
「あら?」
“暗殺者”は意外といった表情を浮かべた。元気が取り柄の棗に限ってそれはないと思っていたからだ。右拳を
顎に当て、左手は右手を押さえるようにして考え込む仕草を取る“暗殺者”に、八代は少し茶化した声色で
彼女の逡巡を止めてやる。
「どうせ、学校ではしゃぎ過ぎて疲れたんだろ。明日にゃまた跳ねまわってるだろうさ。」
「・・・そうかもね。」
“暗殺者”もこれ以上追及しようとはせず、本題に戻ることにした。最初に情報を提供したのは八代である。
「ボード学園の方だが・・・ま、取り立てて怪しいのはいないな。“今は”。」
「そう。そんなものよね。あとはあなたがヘマをしないよう気をつけるだけね。」
「んあー・・・だな。どうも、勘の鋭いのもいるみたいだし。」
八代は溜息混じりに天井を見上げる。
思い出すのは、あの自称天才少女だ。かなりどうでもいいやり取りしかしていなかったはずなのに、彼女は
自分の“仮面”を一枚、見抜いてみせた。他にもそういう生徒がいるのかもしれないし、下手すれば正体に
気づく者だって現れるかもしれない。あの学び舎で生活していくということは、自分のような者にとっては
かなり神経を使うようなことになるだろう。
「ま、やるしかないさ。」
「そうね。ボード学園の情報はあなたの活躍にかかっているのだから。」
「おいおい・・・棗もいんだろが。」
「あの娘には、学生らしい生活を送ってもらわないと。まだまだ育ち盛りなのだし。」
「俺はいいのかよ・・・」
この麗人、いや毒婦はどんな時でも人をからかわねば気が済まないのだろうか。蝶を食い殺しでもしそうな、
誰の目にも残虐なサディストだと分かる笑みを作るのを見て、八代は重々しく溜息を吐く。
「あー・・・姉貴はどうなんだ?なんか変わったことあった?」
このままでは、またいつものように“暗殺者”のペースに飲まれるだけだ。八代は強引にでも話を進めることで
“暗殺者”をこれ以上、調子づかせないようにする。
「そうですね〜。」
相変わらずこのボロボロの白衣を着た少女は、マイペースそのものだった。八代の、早く何か話してくれという
期待を見事に裏切ってくれるぐらい、のんびりと長考する。情報交換をすると決めているのだから、ちゃんと
話す内容は決めておいて欲しいものだ。何十秒ぐらいしてからだろうか、ようやくアンナは言いたいことが
纏まったらしく、満面の笑みで語りだした。
「今日はぼちぼちお客さんも来て〜、売上はそれなりにありました〜。早く地域の皆さんに〜、も〜っと利用
してもらえるような〜、良い薬局を目指しますよ〜。」
違う、そういうことを聞きたいのではないと、八代は盛大な溜息を吐いた。
しかし冷静に考えれば、彼女から大きなネタが来ることを期待したのが間違いだった。アンナ・ルチルナは
その間延びした口調通りに、どこまでもマイペースな人間だ。そもそも、彼女の役割は八代薬局の店長として
表社会に溶け込むことだ。裏で暗躍する“暗殺者”や八代らとは違い、大きな情報が転がりこんでくることは
まずないだろう。せいぜい、近所の噂程度がいい所だ。
「あ〜、そういえば〜。」
と、アンナはぽんと手を打ち、間延びした声とは不釣り合いな驚いた顔を作る。
「今日ですね〜、あそこの〜、え〜っと、そうそう〜!白姫邸の〜、執事さんが来たんですよ〜。頭に猫さんを
乗せちゃって〜、なんだか可愛かったですよ〜。」
「白姫邸の・・・執事?」
白姫邸とは、あの白姫久遠の住む屋敷のことだろうか。そこの執事が白鷺緋色であることは知っている。しかし、
八代が彼を学園で見た印象としては、多くの人間が感じた通り、近寄りがたいというものだった。そんな彼が、
どうして頭に猫などを乗せているのだろうか。
もしかすると、八代が思っている以上に白鷺緋色という人間は、接していると楽しい人間ではないのだろうか。
そう考えると、明日から彼と接するのも少しは楽な気がしてきた。動物関係の話題、特に猫の話などをして
やれば、食いついてくれるかもしれない。
「でも執事さんですか〜。やっぱり主人の男の方と〜、毎夜〜、ねっとりとしたのを過ごしているのですかね〜。
見た目通りに攻めな気もしますが〜、彼なら受けでもいいと思いますね〜。」
とりあえず、この変態意見については黙殺の方針である。
しかし、仮に白鷺緋色が猫好きだとする。猫の話題で緋色に近づくことができれば、彼との友好関係だけでなく、
ひょっとしたら白姫の有力な情報を得られる可能性だってあるかもしれない。少ない可能性かもしれないが、
今はこれが最良の手段だ。
ひとまず、彼が猫好きという前提で八代は緋色と接触するシチュエーションを想像してみた。何事もまず思い
浮かべてみることは大事だ。ボクシングで対戦相手を想定し、シャドーをするような感じである。一番想像し
やすいものとして、休み時間に八代が緋色に話しかけたとする。緋色から話してくるようにはまず思えない。
「なぁ、白鷺君。君、猫が好きなんだって?」
「好きだ。大好きだ。」
流石にいきなりこんなストレートに言うとは思えないが、そもそも彼とは会話をしていないので、どう喋るのか
想像できない。だから、これは八代の勝手な緋色の口調である。
「頭に猫乗せるぐらいだからね。よっぽど好きなんだ。」
「ああ。猫さえいればいい。もう猫以外いらないぐらいだ。」
だんだんと想像が変な方向へ働きだした。彼の情報がアンナから仕入れたものしかないからだと、八代は内心
毒づかずにはいられない。
しかし、今はそんなことに気を揉んでいる暇はない。おそらく、ここまでで緋色との仲を築く寸前までいけた
ような気がする。あともう一押しだ。八代はいよいよ大勝負に出た。
「殺してでも うばいとる」
「な なにをする きさまー!」
待て。何でいきなり“ねんがんの〜”みたいな展開にならなければいけないのだ。そうではなく、もっと
フレンドリーに彼と接触し、自然と友人関係を結べるような展開にもっていかなければ。
再び八代は思考の世界を展開させた。
「なぁ白鷺君以下略」
途中までは同じようなのしか想像できなかったので割愛だ。なんだか自分の想像力は貧困なのではないかと、
八代は少し泣きたくなってくる。
先の失敗を反省し、今度はさらにイメージを練り直す。理想は彼と友好を結ぶことだ。共通の趣味で会話を盛り
上げいてく所までは上手くいった。あとは詰めをどうするかである。自然と、それでいて効果絶大なセリフで
彼の心を捉えなければいけない。
これまでの経験が、“人形使い”として数々の修羅場を潜り抜けてきた戦士の経験が、最良の言葉を紡ぐ。
「組まないかわたしと」
「ッッッッッ!?」
いつから自分は、握手をして腕の関節を外すような髭面のおっさんになった。と言うか、これはもう“人形使い”
とは何の関係もない。
結局、八代はロクな案が浮かばず、緋色との接触は現時点では断念せざるを得ないという結論に達した。
それはそれでいいとして、随分と想像の中とはいえ、学友で勝手に遊んでしまった感はある。
だから、八代は心の中でそっと
(すまぬッ)
と、何故か抜けきれぬ刃●イズムで謝罪するのだった。
馬鹿な想像もそこそこに、八代は話を元に戻すことにした。
「さて、残るはあんただけだ。一番動いてたのは“暗殺者”なんだから、何か収穫あったろうな?」
「あれ、それが人に話を聞く時の態度かしら。」
「説教は後で聞く。それよりも・・・」
「冗談よ。」
“暗殺者”は八代に蟲惑的な微笑が返される。彼女とて、悪戯が許されるレベルぐらいは弁えている。紅茶を
一口啜って舌を湿らせ、彼女の今日、見聞きしたことが語られようとする。今までの余裕ある表情とは少し違い、
緊迫感を感じさせるものとなっていた。八代もアンナも空気が一変したことを読み取り、自然と背筋が伸びる。
「まず、話が“G”のことになるのだけれどね。今日、アリシア・ステイトに声をかけられたの。」
「そういや、連中もこっちで任務中なんだったよな。」
“騎士団”と“G”こと“守護神機関”。共に似たような理念・行動を取ることから、両機関はどうしても
任務地が重なることがある。過去、そのことで何度か衝突し双方に被害が齎された苦い経験から、現在では
代表者が必要最低限の情報を交換し、任務に支障をきたさないようにしている。
アリシア・ステイトは“G”側の代表者として、“騎士団”との交渉の場に出てくることが多い。その際には、
偶然なのか“暗殺者”が彼女と取りあうことが多々あったため、二人は知らぬ仲ではなくなっていた。
「その内、詳しい資料も届くと思うけど、私たちが争うようなことにはまずならないでしょう。」
「だといいけどね。」
軽く返す八代だが、内心では“騎士団”と“G”との抗争だけは避けたいと考えている。どちらも強大な力を
持った組織だ。ぶつかればこの地で任務を遂行するどころではない、甚大な被害を受けることになるだろう。
「それにしても、相変わらず彼女は隙がないのね。それはそれで魅力的なのだけれど、もう一つアクセントが
欲しいのよねぇ。それって、どういうのがいいと思う?」
「俺に聞くなよ・・・」
これまで以上に麗しく、しかし抑えきれない猛獣のオーラを漂わせる“暗殺者”の笑みに、八代はそっぽを向く
しかない。何がアクセントだというのだ。いくら八代が若輩だとしても、今の“暗殺者”が企んでいることなら
すぐに想像できる。
“暗殺者”はアリシア・ステイトを困らせたいのだ。
怒らせたいのか泣かせたいのか。どこまで過激なものかは想像できないし、したくもないが、これまで彼女
相手に“暗殺者”が出し抜けなかったことを考慮すると、かなり虐めたいと思っているはず。アリシアも厄介な
女に目を付けられてしまったものだと、八代は心の中で憐れんだ。
「“G”に関してはこのぐらいね。まだ情報も少ないからね。それよりも、さっそく大きな収穫があったわ。
言わなくても分かると思うけど・・・」
「・・・“タンタロス”、だろ。」
一拍ほど間を置いてから、八代は宿敵たちの名を口にした。
“タンタロス”。“騎士団”が何代にも渡って争い、いまだ雌雄を決することができぬ異形のモノたち。絶えず
その体から群青の泡を放出し、人の命を喰らうことで自らの命を繋ぎとめ、そして“騎士団”の築く秩序を乱す。
今までも“タンタロス”との衝突はあったが、今回は訳が違う。これまでにない数の“タンタロス”たちが、
一斉にこの街に集結しているというのだ。どれだけの規模が潜伏しているかは不明だが、もしも一気に攻撃を
仕掛けてきたら、街はひとたまりもないかもしれない。そうなる前に、早く手を打たねばならなかった。
「さっそく、一体発見して討滅を果たした。あまり大したことない相手で良かったわ。」
「わぁ〜。さっすが“暗殺者”様です〜。」
にこにこと頬を緩みっぱなしのアンナから、ぱんぱんと気の抜けるような拍手が紫の髪の麗人に贈られる。
その“暗殺者”はというと、珍しく神妙な面持ちで顎に手を当てて考える仕草を取っていた。彼女がこのような
態度を取る時は、よっぽどのことなのを八代は知っていた。
「何かあったのか?」
「・・・その“タンタロス”には奇妙な点があった。一つは正体不明のシスターのこと。もう一つは、律儀に
守っていた紋様ね。」
「なんだそりゃ?シスターに紋様?」
八代は首を傾げる。それだけでは何を意味するか、さっぱり分からない。
「分からないのは私も一緒。シスターの方は“タンタロス”に宝石のようなものを与えていた。それを飲んだ
“タンタロス”は命の消耗をかなり抑えていたわ。」
「・・・そのシスターが“タンタロス”だと?」
「あるいはそれに準ずる“何か”。それと紋様の方だけど、こっちはお手上げ。どうにもできないから放って
きちゃった。」
「おいおい・・・いいのかよそれで。」
「どうにもできないのだからしょうがないじゃない。」
言わんとすることが分からない訳でもないが、そのまま無視するのもどうなのだろう。いきなり爆発する
とんでもない代物だったらどうするつもりなのか。もっとも、返事は決まってこうだ。
“その時はその時よ。”
弟分でもある少年の考えなどお見通しなのか、“暗殺者”は微笑を浮かべる。この笑みをされると、抱いている
心配事が些細なことのように思えて頼もしくなる半面、全て見透かされているようで、事実そうなのだが、
それでも少し複雑な気分になる。どちらが上かをはっきりと突きつけられた気がするからだろうか。
「画像はノアに送ってあるから、あとはあの娘に任せておけば大丈夫。そういえば、ナツメはどうだったの?
何もなければそれに越したことはないけど。」
「そういや、あいつも“タンタロス”を倒したとは言ってたな。友達との帰りだったらしいけど。」
途端に“暗殺者”の表情が怪訝なものとなる。
今の話は何かおかしい。何故ならナツメは学校で友達を作ることを非常に楽しみにしていた。そして八代の
口ぶりからだとさっそくナツメは友達を作っている。彼女の性格を考えるなら、興奮した様子で、八代に伝える
どころか自分の口で語ってくるはずだ。それが元気をなくして帰ってくるというのは、どうも腑に落ちない。
「ねぇ、“人形使い”。ナツメはずっと寝たまま?」
「あ?そうだと思うぞ。あれから部屋から出てきた気配もないしな。」
「・・・そう。」
“暗殺者”の目が僅かでも鋭くなったのを八代は見逃さない。彼女は何か勘づいている。それを突きとめる前に、
一瞬で“暗殺者”は表情を変えてしまったので、その機会は失われてしまった。
「・・・何か忘れているような気がするわ。」
「何か?何かって・・・・・・」
「ナニですか〜?」
アンナの危ない発言はさておき、この麗人が困ったような顔でこんなことを口にするのを、八代は久々に見た
気がする。それは彼女にとってとても愉快な出来事だったはずだが、今日一日のことが頭の中からその愉快な
出来事を忘れさせてしまったようだ。
頭のどこかへ行ってしまったその出来事が思い出されようとしたのは、こんな真夜中に近所迷惑になるのも
お構いなしに轟く爆音だった。意外にもそれは乗り物によって齎されたものではなく、何者かの足音だった。
おまけに悲鳴なのか雄叫びなのか判断しづらい声まで立てている。
唯一はっきりしているのは、声の主は女ということだった。
「ぎぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫と共に玄関のドアをぶち破ってきたのは、2m近い身長をした、薄水色の髪をおさげにした女だった。
その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、恥じらいというものが何一つ感じられない。長身の女は勢い余って転倒し、
鼻から地面を出迎えた。散々もいい所だ。
「あら〜。八雲じゃない〜。どうしたの〜?」
やはりマイペースなアンナに敬意でも表したくなるが、八雲と呼ばれた長身の女、“騎士団”のトラブルメーカー
“槍使い”はそれどころではない。涙と鼻水、さらに鼻血まで加えた酷さ満点な怯え顔の八雲は、ガチガチと
歯を鳴らし、指だけ後方を指した。
「あ、ああああああ、あれ、ああ、あれれれれ!!」
無敵と思われた女がこれだけ取り乱すのには、勿論訳がある。彼女には一人だけ太刀打ちできない者がいた。
そこにいたのは、まさに紅蓮の魔人だった。背後に炎でも湧き立たせるかのような凄味、隠すつもりもなく
堂々と発露させた怒気が、炎のイメージをより強くさせる。天然パーマに近いぼさぼさの髪は、炎そのものを
纏っているかのような迫力さえある。
魔人の正体は女だった。八雲に比べれば背は低いのだが、それでもモデルとして通用するぐらいの背丈はあるし、
何よりその肢体はしっかり鍛え抜かれていた。女の迫力と肉体の凄味は、その場にいれば八雲など蟻程度にしか
見えなくなるほどだ。
「や〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!何で、何でお師匠様がいるんですか〜〜〜〜〜〜〜!?!?」
沖島八雲の、“槍使い”の師匠。“騎士団”創世にも関わった、誉れ高き家の者。
彼女はディオナ・ユナレシア。“炎使い”と恐れられる、“騎士団”きっての女傑だった。
「またあなたという娘は任務をほっぽり出して遊んでばかり、しかもライダーシステムまで故障させて!
一体あなたはどこまで人様に迷惑をかければ気が済むの!?」
「ええええええ!?な、なしてお師匠様がそのこと知ってるんですか〜〜〜〜!ああ!さ、さては!
“暗殺者”でしょ!?あれだけお師匠様には言いふらさないでって言ったのに〜〜〜〜〜!!」
ここまできたら隠す必要もないのか、それとも気が動転してそこまで頭が回らないのか。八雲は“暗殺者”に
黙っているようにという約束を反故にされた怒りを、この局面でまき散らす。
理不尽極まりない長身の女に、それでも“暗殺者”は揺るがない。落ち着いて紅茶を啜る余裕さえ見せた。
「なに言ってるの。私は約束を守ったでしょ。」
「じゃ、じゃあなんでお師匠様が知ってるのよ!?」
「よく思い返しなさい。私は“ディオナには告げ口しない”と言ったの。でも、“他の誰かにしない”とまでは
言ってない。理解した?」
「・・・へ?」
沖島八雲という女は頭がからきしな方ではあるが、この危機的状況は彼女のあまり使われない脳をフル可動させ、
珍しく真相に行きつくことができた。血の気の引いた顔で、恐る恐る“炎使い”の顔を窺う。女傑の顔には
悪魔の如き迫力があった。
「私があなたの怠慢を知ったのは、ノアちゃん経由なの!これで分かったかしら!?」
「ひええええええ!?そ、そんなのズルじゃん!!“暗殺者”のバカ〜〜〜〜!!」
「仕事ぐらいは真面目にやらないあなたの所為だと思うけど。」
“炎使い”の告げた真相は、八雲の心の中に「オワタ\(^o^)/」と浮かべさせるのに十分だった。“暗殺者”も
突き放した言い方をするが、顔は満面の笑みだった。優しさなど欠片もない、サディスティックここに極まりだ。
八雲に救いの手はない。完全に悪いのは彼女なのだから当然だし、怒れる“炎使い”に挑むなど自殺行為だった。
ゆらりと女傑が一歩踏み出すだけで、八雲の寿命が急速に焦がされていく。お仕置きというにはあまりに酷く
手痛い一撃が、今まさに放たれようとする。
しかし、八雲は立ち上がった。それは誰も予想しなかったことで、“暗殺者”も「あら」などと口にしていた。
“炎使い”は器用に片眉を上げ、さらに眼光を鋭くして八雲を睨む。
「なんの真似?」
「・・・こ、こうなったら・・・ここでお師匠様を超えるしか、私に生き残る道はありません!
今ここで、お師匠様越えを果たしたいと思います!!」
“炎使い”を指さし、八雲は高らかに宣言する。だが、腰は完全に引けているし体は小刻みに震えている。
虚勢なのは明らかだった。
「大人しくゲンコツされなさい。じゃないと、もっと痛い目を見るわよ。」
「こ、こここ、ここまできたら自棄です!!私だって、少しは強くなったつもりなんですからね!?」
新たな日の到来は、長身の女と赤髪の女傑との決戦という、妙な形で迎えられた。じりじりと間合いを詰め
ようとする八雲と、一歩も動かず視線だけでその動きを追う“炎使い”。八雲が仕掛け、それを“炎使い”が
迎え撃とうする。分かりやすい構図だが、はっきりしているのは、勝負は一瞬で決まることだった。
(ねぇ〜、八代君〜。こういうの〜、なんて言ったかな〜。)
(あー。これは・・・)
異様な光景にあるものを連想したアンナが八代に内緒話を持ちかけた瞬間。それが二者の決戦の合図になった。
「だりゃああああああああああああああ!!!」
騒音レベルな絶叫は八雲のものだった。豪快に左腕を振り上げ、その長身を活かし打ちおろしを狙う。
(死亡フラグだ。)
そんなことを八代が思い浮かべると、“炎使い”の方はその腕を簡単に取ってしまう。並外れた腕力で自分の懐へ
一気に引きこむと、強引に八雲の腕を固めてしまう。見事なアームロックだった。まるで、モノを食べる時は
誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃダメ、というのが信条の男が今ここにいるかのようだった。
「がああああ」
「痛っイイ」
「お・・・折れるう〜〜〜〜」
この攻防でどちらが上なのかは証明され、八雲の心はもう折れていた。だからこんな気の抜けた悲鳴が出たの
だろうか。
「あ・・・やめて!それ以上いけない」
しかも八代まで気の抜けたような制止をする。それでも“炎使い”は聞く耳を持たず、より力を籠めて八雲の
腕をどんどん決めにかかる。
「あ〜。これはもしかしたら〜マズイかもしれませんね〜。あれ〜?“暗殺者”様〜?」
手に負えない状況の対応を聞こうとしたアンナだったが、いつの間にか彼女が師と仰ぐ麗人の姿はなかった。
ほどなくして、あまり耳にしたくない音がリビングに響き渡り、
「うっぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
長身の女の断末魔が絞り出される。
言うまでもなく、後日八代薬局に騒音の苦情が来て、客足は遠のき売上は崖から落ちるように落下した。
“暗殺者”は喧騒から一人抜け出していた。彼女の前には一枚のドアがあり、かけられたネームプレートには
可愛らしくハートなどがデコレーションされた、“棗”の文字が書かれていた。
中にいる少女が何をしているかが気になってここにいるのではない。そんなことを彼女は知りたいのではない。
彼女は伝える為にここにいる。“暗殺者”の手が、そっとドアに添えられる。
「ねぇ、ナツメ。これは私の独り言。何も返さなくたって構わないわ。」
そう前置きしてから、“暗殺者”は一言だけ呟く。
「“正義の味方”になるのは大変だと思わない?」
その問いに返ってくるものは何もない。構わず“暗殺者”は次を紡ぐ。
「それでも、あなたは自分の理想を追いなさい。どれだけの障害に遮られても、ね。“騎士団”にもそれぐらい
まっすぐな人間が必要なのよ。」
アドバイスかどうかも分からない、一方的な独り言。ナツメの耳は布団を頭まで被っていながらも、ドア越しの
独り言を確かに聞き入れていた。真意は知らない、分からない。今はそんなことを考える余裕もない。
友達ができたと思っていた。
“タンタロス”と戦えば誰もが自分を受け入れてくれると思っていた。
“正義の味方”になれると思っていた。
それがたった一日で、何もかもが終わったような気がした。これからだと燃える闘志が湧き立ってこない。
何をすべきか、何をしたらいいか。頭の中をぐるぐる回る“何”という言葉は、ナツメを苦悩の渦から抜け
出させてくれない。
薄目を開くと、視界の端に何かが見えた。照明のない暗闇であっても、それは見間違えない。彼女のトレード
マークとも言える、あの迷彩柄のバンダナだった。
このバンダナには彼女の信念の全てが詰まっている。このバンダナに誓ったはずだ。“正義の味方”になる、と。
揺らぐことないと信じていた決意が、今どれだけ頼りないものになってしまったことか。
(私は・・・間違ってたのかな・・・・・・)
遂にはこんな考えまでしてしまうようになっている。
この暗い部屋と一緒だ。明るく照らされていたはずの道も、照明が落ちれば行き先が全く見えなくなってしまう。
何も見えない恐怖は、進むことを躊躇わせる。ナツメにとって、これだけの葛藤は初めてのことだった。
少しはマシと思えそうな答えも見つけられないまま、ナツメの意識も闇に溶けていった。
,いやー、どうもすいません。遅くなりました。
そしてここでアップするのも久しぶりですね。イシスです。
今回は“騎士団”サイドのお話になります。情報を集めてたかと思いきや、やっぱり八雲さん大暴走w
彼女は学校で気絶してましたが、起きたら目の前にはお師匠様→The 逃走。こんな流れです。
あと、今回はネタが多めですね。特に緋色君がどうしてこんなにギャグな扱い何ですかねw(ぉ
深優さん、もしも気分を悪くされましたら申し訳ありません。
そして、ナツメちゃんの信念はどうなるのか。彼女はちゃんと“正義の味方”に
なれるのでしょうか?それは・・・二章以降をお楽しみに!!
さぁ、残るはエピローグですね!頑張りましょう!!
ここで宣伝。ご存じの方もいると思いますが、この『intertwine』にはまとめWikiが存在しています。
興味のある方は、是非こちらのページへ!
↓
http://www42.atwiki.jp/intertwine/
感想の項目などもありますので、読み手の方のご意見も待ってます!
んでは、またエピローグで。おーるぼわーる。
,#000000,./bg_g.gif,202-72-77-207.cnc.jp,1
2009年09月16日(水) 22時34分30秒,20090916223430,20090919223430,YMHExFDst90I.,仮面ライダーバルキリーたん 第25話「The Freeshooter」,鴎,,,第25話「The Freeshooter」
AM11:35 レーザー工学研究所 決闘の間
ベルフェゴール「行きます!!」
Gバルキリー「くっ!」
ガンフォームが銃を構えると同時にベルフェゴールレジェンドルガが左手に装備している大型アーチェリーからまぶしい光を放つとそれを矢のように細く練り上げて発射する。
光の矢はまぶしい光を放ちながら、ガンフォーム目掛けて6発打ち込まれる!!しかしそれをガンフォームが走って避ける。
避けながら銃を発射するが、相手は空を飛んでおり、銃弾は思ったよりも命中しない。
そして、ベルフェゴールレジェンドルガは手と手を合わせて光の玉を作り出すと、それを下にいるガンフォーム目掛けて放った!!
超高圧電流を帯びている光の玉はガンフォームが避けた後の地面に着弾し、「バチィン!!」という音とともに地面を高熱で焼き焦がす。
Gバルキリー「ありゃ食らったらひとたまりもないね」
ベルフェゴール「えええええええい!!」
弓矢を構えなおすと光の矢が発射される。
それをすばやくかわして、銃を構えなおす。
銃を撃って応戦するがベルフェゴールは雲がかかった空へと飛びまわっており、視界が悪く狙いが定まらない。
これがベルフェゴールの作戦であった。
ベルフェゴール「雲の中にいれば相手はどこにいるか分からず、疲労と苛立ちが募るたびにスキが多くなる。でもベルフェは・・・たとえどんな暗闇でも・・・・どんなに視界が悪くても・・・射撃はね・・・一度も獲物を逃がしたことないの!!行きます!!」
そして、ガンフォームが構えなおしたその時だった。
トパーズ「!?サファイア、危ない!!右だ!!」
Gバルキリー「ふえっ!?」
何といつの間にか右側には迫り来る光の矢!!
ガンフォームはすばやく飛びのくが、いつ発射されたのか、どこから発射されたのかまるで見当がつかなかった。
しかし容赦なく光の矢は天空からまるで雨のように降り注ぎ、ガンフォームを追い詰めていく。さらに足場の広さも限られているため、端へ端へと追い詰められていく。
ベルフェゴール「くすくすくす・・・・こぉんな頭悪いおバカさん、生きてたって何のためにもならないの・・・死んじゃったほうがその子のためになるかもしれないの・・くすくすくす・・・」
慧「・・・・何だって?」
一瞬慧の視線が険しいものに変わった。
しかしすぐさま光の雨が降り注いで襲い掛かってくる!
Gバルキリー「しゃ、シャレにならないって!!」
ベルフェゴール「死んじゃええええええええええええええええ!!」
そういうなり雲から飛び出し、鋭いカギ爪のついた足で押さえつけるとそのまま持ち上げて一気に地面にたたきつける!!地面に叩きつけられ、ガンフォームが激痛に耐えるように歯を食いしばって立ち上がろうとよろめく。
ベルフェゴール「おしまいですっ!!!」
しかし、そこへ上空から降り注ぐ無数の光の矢がガンフォームを容赦なく痛めつける!!
Gバルキリー「うわああああああああああああああああああああ!!」
ガンフォームのアーマーがところどころで火花が大きく噴出し、胸元のアーマーが派手な火花を上げると、青い光が離れ、慧の姿に戻ってしまう。
そして、列車内にはボロボロになったサファイアが息も荒く床に転がり落ちてくる。
エメラルド「サファイア!!」
ルーベット「こ、これはまずいですぞ!!」
トパーズ「くっ、予想外だった。こいつ、とんでもなく強いぞ!!」
サファイア「かはっ・・・・・・あああ・・・・・」
アメジスト「いったん撤退ですわ!!」
そして、アメジストが憑依した慧が紫色の瞳とメッシュを編みこんだ姿に変わると、トランプを無数取り出し、空中に向かってバラまいた。
ベルフェゴール「!?」
カードで視界がさえぎられ、目を閉じるが、すぐさま視界が開け、目を開けるとそこには誰もいなかった。どうやら逃げられたらしい。
ベルフェゴール「・・・まだ遠くには行っていないはずですよね。でも、一旦皆にお任せしてベルフェはレーザー兵器の見張りに戻ったほうがいいよね・・・目的は殲滅じゃなくて、あくまで妨害なんだから・・・それにあれだけの怪我ならまともには動けないよね」
あくまで慎重に慎重を重ねた緻密で冷静な分析を行うとベルフェゴールは人間の少女の姿に戻り、城内へと戻っていった。
一方。
城内にある排気塔の小屋に隠れこんでいた慧は壁にもたれながら撃たれた肩や、駆使しすぎた足腰の悲鳴を上げるかのような激痛に苦悶の表情を浮かべて苦しんでいた。
慧「・・・サファイアさん・・・大丈夫?」
ルーベット「かなり重症ですな」
トパーズ「こいつだって射撃に関しては私たちの中では一番なのに・・・」
サファイア「ごめん・・・今回ばかりはエロ抜きでやるべきだった」
エメラルド「・・・サファイア」
琥珀「シャレにならねぇ。どうするんだ?レーザー兵器だけかっぱらってさっさと逃げるか?」
アメジスト「命と引き換えにするとしては、いくつあっても足りませんわ」
そう、それが利口な判断なのかもしれない。
でも、私は違う。
今までの何かに流されている自分とは違う感情が胸の中で燃え上がってしまった。
不幸な目に遭うなんて分かりきっているのに。
もっとひどい目にあうかもしれないけど。
私の中で今ここで逃げたら・・・守れないものがある。
それを放っておいたままには出来ない。
慧「・・・・行こう」
慧が口元の血を拭い、ゆっくりと起き上がる。
そのいつもと違う慧の様子に全員が驚く。
ルーベット「ま、まさか、あいつとまた戦うつもりか!?」
トパーズ「無茶だろう!!」
エメラルド「お姉ちゃん、ムキにならないでよ!!」
慧「・・・ムキになんてなってない。しっかり考えてから決めたことよ。あいつは・・・許せないことをした。だから、私、あいつと戦ってあいつに新しい事実を刻んでやらないと気がすまない」
琥珀「許せないこと・・・?」
慧「あいつはサファイアさんをバカにした。私のために命を懸けてくれて、ついてきてくれて、戦いに正面から堂々と挑んでいくサファイアさんをバカにした」
そう、それだけは譲れない。
私のために命を懸けてくれる大切な仲間。
確かにスケベでバカでいつも皆を困らせているけど、私なんかにいつまでもついてきてくれて、今もこうして戦ってきてくれてきた大切な仲間。
慧「戦うには理由が要るっていうなら・・・・サファイアさんは私の大切な仲間なんだ」
サファイア「・・・慧?」
慧「私は大好きなんだ、サファイアさんは何だかんだ言ってバカばっかりだけど、私は大好きだ。そんな人をバカにされて・・・黙ってられるか・・・尻尾巻いて逃げられるか!!あいつに教えてやる!!サファイアさんが私にとって大切な仲間だって事をな!!」
力強く言い切った。その瞳には怒りとともに真剣な思いが宿っていた。
慧の本気モードの証だ。
こうなったら慧はもはや誰にも止められない熱血バカとなる。
しかしそのたびに奇跡を起こしてきたのだ。
慧「大事な仲間をバカにされてすごくムカついた。戦う理由なんてそれでいい!!」
サファイア「・・・・!!」
言い切った。
潔く言い切り、決意の表情を浮かべて慧が言い切った。
ルーベット「・・・・本当ここ一番で慧殿は・・・輝きますな!!」
トパーズ「これだ・・・この熱血ぶり・・・一番慧に似合っている顔だ。不幸だ不幸だなどと嘆いているよりもずっといい」
エメラルド「・・・まあ、こうなったらとことん付き合いますか」
琥珀「リベンジ上等ってな」
アメジスト「熱くなるのはいいけど、対策はどうするの?何もなしでいくとしては、相手は強いわよ?」
慧「エメラルド!イカロスショットって、動画記録も出来るってこの間言っていたよね?」
そうなのだ。
エメラルドの開発したイカロスショットはただの変身用ツールではない。
敵の弱点や行動パターンを読むために常に自動録画できるカメラ機能を搭載しており、それを操作することで再生することも出来るのだ。
エメラルド「まあそりゃそうだけど、あれにはあいつ、雲の中にいたからあまり映ってないよ?」
慧「そうじゃなくても相手の攻撃パターンとかそれだけでも読めればいいよ」
ルーベット「作戦会議ですな」
慧「それと、琥珀さんとアメジストにはちょっと頼まれてほしいんだけど」
琥珀「あたしたちが名指しってことは・・・」
アメジスト「レーザー装置の回収及び、城内の脱出経路の確保ね?」
慧「うん、いくらなんでも相手側だって絶対的な勝利を確信するほど自惚れてないはず。必ずどこかに、万が一のことを考えてレーザー装置や脱出経路とか保管してあるはず。そこを見つけてほしいの」
琥珀「今回はバトルはルーベットたちに花を譲るか」
アメジスト「任せておいて」
そういって、2体が実体化して飛び出していった。
そして慧がイカロスショットを開いて先ほどの戦いをもう一度再生ボタンを押して見始める。画面に食い入るようにしてみている。
サファイア(・・・・・慧)
数十分後。
慧がある場面を何度も何度も見返す。
それは最初のいきなり現れたレーザーで襲撃されたときの画像だ。
慧「・・・・」
エメラルド「そういえばさ、このレーザー、いつ、どこで発射されたんだろうね」
ルーベット「思えば、あれからサファイア殿の動きに乱れが生じたのですな」
慧「・・・・そうか、そうだったんだ」
映像を何度も何度も見直してみて、これまで分からなかった相手の戦略、そして対策方法が脳裏にクリアなイメージが映像として浮かび上がる。
慧「・・・もしかしたら、勝てるかもしれない。一か八かの賭けになるかもしれないけど」
エメラルド「・・・運が悪かったらどうなるの」
慧「100%死ぬね」
ルーベット「そんなご無体な・・・」
慧「でも、これなら勝てる。うん、これでいってみよう!!」
数分後、琥珀とアメジストが戻ってきた。琥珀の手にはなにやら光輝く光の玉が入っているカプセルが握られている。これこそがレーザー兵器のメイン動力となるカプセルなのだ。
琥珀「慧の予想通りだったぜ。地下の格納庫の中にあった」
アメジスト「脱出経路も確保いたしましたわ。でも、私たちの場合ごちゃ混ぜフォームで空を飛べば脱出は可能、つまり、そこを使うのは敵のみってことで・・・ちょっと面白い仕掛けをしてきましたわ」
琥珀「・・・悪趣味だけどな。まあ、あいつらに仕返しするには十分だろう」
慧「何をやったんですか?」
琥珀「こいつ、脱出経路の至る所に時限爆弾仕掛けまくってな、相手が脱出しそうになったときこれ使って絶望のどん底に叩き落すつもりだって」
アメジスト「ふん、あんなお子様にナメられてヘラヘラしていられるほど、出来てないので」
琥珀「何だ、結局お前もブチ切れてたわけか」
慧「お前もって・・」
アメジスト「琥珀こそ、サファイアがバカにされたこと、相当ご立腹じゃなくて?敵相手に相当冷酷というか、容赦なく倒しまくりだし、特異点が聞いたら泣きだすような発言かましまくってましたわよ」
ルーベット「聞いたら・・・泣く?」
アメジスト「琥珀がSに目覚めたとかだの、怖くて怖くて失禁するんじゃないかっていうくらいの罵詈雑言の嵐、聞いているこっちも冷たい殺気に震え上がりましたしね」
どれだけ恐ろしいまでに怒っていたのだろうか?
聞こうにも聞けない。
琥珀「それで?慧のその顔からすると・・・対策ありってわけか」
慧「うん。クライマックスフォームで私が行くことにしたの」
ルーベット「なるほど・・・」
トパーズ「一か八かというか、もはや正面衝突必至だがな」
琥珀「マジかよ・・・」
慧「うん、マジ。今回ばかりは命張っていくんで・・・そこんとこヨロシク」
そしてイカロスショットをバックルに差込、装てんする。
その時だ。
サファイアが寝かされているベットで、弱弱しい声でつぶやく。
サファイア「・・・・慧・・・皆・・・・」
そして、言った。
いつになく、弱弱しい表情で。いつになくしおれている様子で。
今まであった自信が粉々にされたからか、いつもの余裕とか自信は感じられなかった。
サファイア「ごめ」
慧「言わなくていい」
慧が優しく笑みを浮かべてサファイアをなだめるように言う。
その言葉の一つ一つがとても温かく、不器用でどこかくすぐったい。
慧「全部終わったら・・・また皆でバカやろうよ。いつもみたいにさ」
慧「私たちがいつも笑っているとき、サファイアさんが笑わせていてくれてただろ?また面白い笑い話聞かせてよ。私ね、いつもふざけているけど、いつも皆のことを人一倍考えてくれていて、世話を焼いてくれるサファイアさん、好きだよ?なのに、そんな弱気な表情じゃ調子出ないよ。いつもみたいに強気なままで見送ってよ」
ルーベット「お前がそんなに凹んでいたらこっちまで調子狂う」
トパーズ「慧を信じろ」
エメラルド「あんなチビスケ、本気モードでフルボッコにして、世間の厳しさってもん、教えてやんよ」
琥珀「大丈夫だ。これまでどんだけ奇跡起こしてきたと思っているんだ?あたしたちが契約した天童慧はよ」
アメジスト「・・・・もし慧が負けたら全員お陀仏ですわ。もはや貴方だけの問題ではなくてよ」
皆の力強い言葉が胸中に温かく響きあう。
これがこれまでの戦いを得て、手に入れてきた信頼というものなのか。
慧「・・・行くよ。変身」
「Lance Ax Gun Sword Assassin Phantom・・・Climax Form」
するとバックルの6つの宝石がいっせいに光だし、中から6体のイマジンが全員いっせいに飛び出し、一度に慧の体の中に憑依した!!!
Cバルキリー「いくよ・・・・ええい!!」
青い翼を広げて一気に飛び上がる。そして、敵が待ち受けているであろう、先ほどの決闘の間に一気に急上昇し着地する。
一方。
部下からその様子を聞いて、驚いているのはベルフェゴールレジェンドルガであった。
先ほど倒したはずの彼女が再び挑んできたのだから。
しかも自分が管理していたレーザー装置を奪い取られたという。
怒りと驚きで狼狽し、ギリリと歯軋りし、ベルフェゴールレジェンドルガがモニターに映っているクライマックスフォームの姿をにらみつける。
ベルフェゴール「・・・・もうこうなったら本気で殺してあげるの・・・」
ベルフェゴールレジェンドルガが決闘の間にやってきたのはそれから数分後。
怒りに顔を歪ませて、ぷくっと頬を膨らませて子供のようだが、その瞳は底知れない狂気めいた冷たさと憎悪が入り混じっていた。
ベルフェゴール「・・・・逃がしてあげようと思っていたのに、・・・付け上がっていい気になりすぎたの」
Cバルキリー「ベルフェゴール!!あんたに新しい事実というものを刻み込みにきたわ」
ベルフェゴール「・・・・新しい事実?」
Cバルキリー「サファイアさんが私たちにとって大切な仲間だってことをね」
ベルフェゴール「理解不能・・・なの。自分は自分、他人は他人。どうしてそこまでこだわるの?」
Cバルキリー「そんな考えじゃ一生分からないさ。私たちの絆がもたらす強さなんてね」
ベルフェゴール「・・・人間の癖に生意気なの。もう二度と歯向かえないようにしてあげるの!!」
ベルフェゴールレジェンドルガが空中に一気に上昇し、雲の中に隠れて、絶対的領域の中へと入り込む。しかしそんなこと、慧だって予想していた。
Cバルキリー「甘いね」
そういって、クライマックスフォームは何と円形状のリングの端ギリギリまでやってきて、そこで動きを止めたのだ。
まさしく背水の陣。
一歩でも後ろに下がったら下に落ちてお陀仏だ。
ベルフェゴール「・・・わざわざ不利な状況を作り出しておいて、何をするつもりなの?バカにするのもいい加減にしてほしいの!!」
ベルフェゴールレジェンドルガが左手に装備している大型アーチェリーからまぶしい光を放つとそれを矢のように細く練り上げて発射する。
それは雲を掻き分けて発射され、一直線にクライマックスフォームを狙って突き進む。
しかし、それを横に交わす。
すると、側面を通り過ぎるはずのレーザーが、いきなりこちらに向かって屈折した。
そしてそれをも避けると同時に飛び上がる。
すると、雲の中からベルフェゴールレジェンドルガが飛び出してきた!!
それを定めてガンモードの狙いを定めると銃弾を発射した。
ベルフェゴール「えええっ!?きゃああああああああっ!!」
銃弾の予想もしていなかった攻撃は無防備なボディを直撃しボディから煙が吹き上がる。
そのまますぐに、ベルフェゴールレジェンドルガの腕をつかむと、もう片方の腕で銃を腹部に押し付ける!!
ベルフェゴール「ええっ!?」
Cバルキリー「・・・・はああああああああああああ!!」
ダンダンダンダンダンダンダン!!!!!
無数の銃弾がゼロ距離射程で一気に叩き込まれる!!
高熱の光がベルフェゴールレジェンドルガの腹部を焼き尽くし、大ダメージを与える。
ベルフェゴール「ぎゃああああああああああああああああっ!!!」
ベルフェゴールレジェンドルガが勢いよく振り払い、後ろに飛び上がって着地するや否や、すぐさまベルフェゴールレジェンドルガが空中に飛び上がる。
そして、すぐさま矢を放った。
ベルフェゴール「今度こそ!!」
しかし、その矢をまたリングの端まで立って、再びその矢を避け、再び屈折してきた。
Cバルキリー「でも・・・・これこそが私の狙いだ!!」
光線を再び避け、雲の中から飛び出してきたベルフェゴールレジェンドルガを狙って今度はチャージしていた巨大な光線を容赦なく腹部に発射する!!
ベルフェゴール「あああああああああああああ!!」
光線が大爆発してベルフェゴールのボディが焼き焦げて地面に落下し、真っ黒になって落下する。ブスブスと煙を上げて羽すらも焼き焦げてもう羽ばたくことさえ出来ない。
Cバルキリー(あのレーザーは一度だけ相手の動きに対して反応して自動的に追尾する。でも、一回限りなんだよね。でも、それを雲の中から発射するからどこから飛んでくるか分からないし、避けても追尾する光線にやられて、油断している間に空中から攻撃を仕掛ける。状況的に言えばこっちが不利なんだけどさ、逆に考えてみれば、そこを突けばあいつの主体ともいえる戦法は一気に崩れるんだ)
ルーベット「なるほど・・・だからリングの端に!?」
トパーズ「簡単なことだ。相手は慧を殺そうと躍起になっている。間違いなく慧を狙うであろう。つまり、的が決まっている以上、相手はそこに打ち込むことしかしない。それを利用したのだな」
エメラルド「まず相手が矢を放つ。でもそれはリングの端まで寄っていれば、十分見渡せる視界で確認できるし、避けた方向も把握できているからそこからの追尾も回避できるってことだ」
琥珀「そして敵が出てきたところを総攻撃しかけるってことだ」
アメジスト「フェイント・・・ですね」
慧(うん、このリングはあいつにとって有利な状況となっている。でもね、逆に言うと、このリングの特性を利用した作戦に出られたら、一気に牙城は崩壊するってこと!)
ベルフェゴール「ど・・・どうしてよ?どうして!?セブンズヘブンのベルフェなのに・・・どうして!?どうして人間ごときに!?どうして!?」
Cバルキリー「これが・・・新しい事実って奴」
ベルフェゴール「何が!?」
Cバルキリー「あんたはサファイアさんをバカにした。でもね、これが仲間との絆がもたらす強さって奴。現に今のあんたをぶっ飛ばしている。どう?分かってもらえた?」
ベルフェゴール「ぐぐぐ・・・・」
Cバルキリー「時の運行を乱すって行為もほうっておけないけど、もっと許せないのは私の仲間をバカにしたこと。これだけは譲るわけにはいかないの」
ベルフェゴール「そんな・・・何よ・・・・絆って・・・・何なのよ!!」
Cバルキリー「・・・仲間と心と心がつながりあっていることで発揮する真の強さ・・それが絆。信じあうことで生み出せる力。これが・・・・あんたを倒した力の証だよ」
カッコよく決める。
今の姿が輝いて見える。
ルーベット「ああ・・・慧殿・・・・やっぱり素敵・・・・」
トパーズ「惚れ直すな・・・」
エメラルド「やっぱりカッコいいね・・」
琥珀「・・・なあ、あたしたち、重要なこと忘れてないか?」
アメジスト「重要なこと?」
その直後。
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
突然城の下から激しい音と衝撃がゆれだし、赤黒い炎が一気に噴出す。
城がぐらぐらと崩れだし、あまりにも凄まじい衝撃に壁がボロボロと崩れ落ちる。
城全体が崩壊していた。
琥珀「・・・なあ、爆弾ってどんだけ仕掛けたんだ?」
アメジスト「城の火薬庫に置きまくっていたヤツ、全部」
琥珀「まさかとは思うけどよ、この時代だ、導火線付きの昔なじみの爆弾とかいうヤツだよな?」
アメジスト「いかにも」
琥珀「・・・ヤベェ、今の戦いで火花が飛び散ったせいかな、誤爆したなこれ」
アメジスト「あー、しましたね。しかもアッタマきていたから、城が確実にぶっ壊れるように城中に爆弾仕掛けちゃいましたし。それも爆発しましたわね、これは」
琥珀「なるほど・・・・て笑ってる場合じゃねぇじゃねぇか!!あ、仕掛けたのあたしだ」
慧(何予想外の大ピンチを作ってるのさあああああああああああああ!!)
ルーベット「琥珀殿!!アメジスト殿!!アホですかあああああああああ!!」
トパーズ「ツッコミ役が慣れないボケなどかますな!!」
エメラルド「ツッコミはツッコミ、ジミーな二人組の琥珀&アメジスト、ジミーでツッコミな主体性貫けよ!!」
琥珀「あたしたちのポジションって何なんだよ!?」
アメジスト「さあ?琥珀はツッコミ&オカン&保護者役というのはもう確定でしょうけど」
琥珀「何一つ得しない地獄のフルコースじゃねえか、それ」
慧「早く脱出するのー!!」
もう泣きながら翼を広げると一気に空へと羽ばたき、燃え上がる城から脱出する。
城はもはや火に包まれ、完全に崩れ落ちようとしている。
Cバルキリー「・・・・結局私はこういう目に遭うのか」
もう泣きたくなる。熱血していたことがアホらしくなりもはや脱力さえする。
しかし、それでもいいんだ。
慧(でも仲間の名誉を守るために一生懸命になるっていい気分だよね・・・)
そう無理やり納得するようにした。じゃないと、よりによってこの二人がやらかしたことで、二人のおバカ属性がつくかどうかの瀬戸際が問われそうだから・・・。
一方で。
ベルフェゴールレジェンドルガがリングで横たわっていながら炎の海に包まれている。
ベルフェゴール「絆の強さ・・・・ベルフェ・・・には・・・・ないのかな?それで・・・負けた?・・・・・人間ごときに・・・・ぐすっ・・・・・ひぐぅ・・・・悔しいよ・・・ベルフェ・・・・ここで終わりなの?・・・・・もうそれでもいいか・・・・」
静かに瞳を閉じる。
もうどうなってもいい。
レーザー装置も守れなかった。城も破壊され、人間なんかにボコボコにされた。
これではもう自分はセブンズヘブンを名乗る資格さえもない。
ルシファーに合わせる顔もない。
それならこのまま死んでしまえばいい。
楽になりたい。
自分の罪「怠惰」に身を任せてしまえばいい。
「・・・・べる」
ベルフェゴール「ごめんね。お兄ちゃん、ダメな妹で・・・」
涙があふれ出る。
役に立ちたかったのに。結局泥を塗るようなまねをしてしまった。
「ベルフェ・・・」
お兄ちゃんの声?聞こえるはずないじゃない。お兄ちゃんがこんなダメな妹助けに来るはずなんてない。幻聴か。もうすぐ・・・死ねる・・・。
「オラァ、目を覚ませや、こらぁ!!」
バゴン!!!!!
頭に重く鈍い痛みが走り一気に視界が開かれる。
ベルフェゴール「いったぁい・・・・・」
頭に思い切り殴られたせいで、タンコブが出来ている。
両手でさすって、涙がにじみ出てくる。
目を開くと、そこには・・・・。
銀色の髪が炎の色を反射してオレンジ色に燃え上がっている。
きれいな顔立ち、心配そうに気の強そうな瞳をこっちにまっすぐ向けている。
ベルフェゴール「・・・・お兄ちゃん!?」
そこには、ルシファーがいた。アスモデウスやサタンもいる。
ルシファーがいつの間にかベルフェゴールを抱き上げている。
ルシファー「ったく、心配かけさせやがって。まあ、無事だったからよかったけどよ」
アスモデウス「無事じゃないでしょうよ。怪我して気を失っている女の子をゲンコツでたたき起こすってかなりスパルタだよ?」
サタン「それはいくらなんでもねぇだろ」
ルシファー「うっせぇな、声かけても起きないし、こうするほうが手っ取り早いんだよ」
サタン「兄貴の怪力じゃトドメになりかねないぜ」
ルシファー「アスモみてぇに頭カラじゃねぇんだ。こんくらい、どうってことねぇだろうが」
アスモデウス「ドサクサ紛れに何言うのよ・・・とほほ」
ベルフェゴール「・・・お兄ちゃん、もしかして、助けに来てくれたの?」
ルシファー「当たり前だろ。お前のこと応援しにいこうとしてたら、城燃えてるんだもん。何かあったかと思って飛び出してきちまったよ」
ベルフェゴール「この炎の中飛び込んできたの!?」
アスモデウス「あのね、この人の単純レベルはハンパねぇんだから」
サタン「お前のこと助けるんだっていって、もう炎の海の中真っ先に飛び込んだしね」
アスモデウス「仲間の危機なら真っ先に駆けつけるのが兄貴の務めだって言ってたしね」
二人の会話、そして、所々焼き焦げているルシファーの服。
アスモデウス「それであたしたちは可愛い妹分の救助」
サタン「右に同じだな」
そういって、二人の姉貴分も笑みを浮かべる。
ベルフェゴールはルシファーの胸に顔をうずめて、ぼそぼそとつぶやく。
ベルフェゴール「ごめんなさい・・・レーザー・・・とられちゃった・・・・」
涙が出てきて、最後は言葉にすらならない。情けなさと悔しさがにじみ出て、やりきれない気持ちでいっぱいになる。これで兄貴分たちにも呆れられて嫌われる・・・・。
ルシファー「・・・別にどうってことねぇよ。そのくらい。そのくらいで悩んでるんじゃねえよ」
そういって頭を乱暴にワシャワシャとなでられる。グシャグシャになった髪形にまみれ、呆然とその声を聞いていた。
ベルフェゴール「その程度・・・・?」
ルシファー「今までヤバい武器だの俺たちよりデカいヤツだの、戦いで相手側が有利な状況なんていくらでもあっただろうが。レーザー取られたくらいでやられるような俺たちじゃねぇんだよ。でもな、これだけは譲れない」
ルシファーがベルフェゴールに顔を向けていった。真剣でとても強いまなざし。
ルシファー「お前がいなくなったらダメだ。お前は俺が認めた最高の狙撃手だ。いやそれ以前に俺の妹分だ!兄貴として妹がピンチなら助けに行く。当然だろうが。だから、テメェが何度もミスやらかそうとな、俺たちが補ってやらぁ。だから、テメェのせいとか一人でウジウジしてんじゃねぇよ」
そういって、頭をなで上げる。
嬉しい気持ちで心がじわっと温かくなる。涙で視界がにじんできた。
ベルフェゴール「・・・はい・・・・・」
ベルフェゴール(これが・・・これが絆・・・?)
先ほど戦っていた相手の言葉がよみがえる。
その言葉の意味が今のルシファーたちの行動を見ていて、少しだけ分かりかけてきた。
ベルフェゴールはそう思って、顔をルシファーの胸に押し付ける。
ベルフェゴール(・・・天童慧か)
そういつか再び戦うことになるであろう宿敵の名前をつぶやいて、少女は眠りについた。
続く
バルキリーCフォーム○-×ベルフェゴールレジェンドルガ(怠惰)
戦利品
レーザー装置(バルキリー)
時の崩壊まであと6日間。
,こんにちは。
今回まずはバルキリーサイドの勝利、レーザー装置を手に入れた形で白星を挙げました。
そして慧の本領発揮とも言える本気モード、実は自分かなり熱血系好きなので力入れて書いています。
この後もどんどんハッスルする慧を書いていきたいと思っております。
>烈様
>前回の感想のお返しですが、キングのベルトは現在現状維持といった感じで保管されています。ルシファーはあの通り戦い以外興味を示さないですし、アスモはおバカですし、今後の行方はまだ作成中・・・・面白い作品にしていきたいと思います。
>サファイア
今回のことで、慧に対する意識や自分のあり方などに疑問を抱くようになっていくサファイア。実はかなり繊細な性格なのですが、今後、慧と彼女のつながりが彼女を成長させることに大きくつながっていくと思います。
次回も応援よろしくお願いいたします!!
,#000000,./bg_f.gif,p12137-ipbffx02funabasi.chiba.ocn.ne.jp,0
2009年09月13日(日) 20時43分43秒,20090913204343,20090916204343,YVlNbQUrE1t.g,仮面ライダーバルキリーたん 第24話「King deprivation」,鴎,,,「King deprivation」
慧「さて・・・・」
マシンハミングバードから体を下ろすと、慧は前方を眺めた。
目の前に広がっている光景は、中世のヨーロッパの城としか表現のしようがなかった。
だが間違いなく、ここは時の運行におけるレーザー兵器を開発するために極秘裏に作られたレーザー工学研究所である。
実を言うと、この研究所は、重要文化財であった城をモチーフとしてかつての研究所所長によって作られた施設であり、おとぎ話の発祥の地となった城ともいわれている。だがその面影は今微塵もなかった。外観は美しい純白のドレスを着込んだおとぎ話の姫君のそれを彷彿とはさせるが、中から強烈な邪気のようなものが発生させられている。
アメジスト「こんな事件でもなければゆっくりと見たいのに」
トパーズ「全くだ」
琥珀「行くぜ。慧、誰が憑依すればいい?」
慧「城内の至る所がもう見張られている。なら・・・正面突破!!」
エメラルド「よっしゃあっ!!」
慧「エメラルド、行くよ、剣の刃を飛ばして橋の鎖を落として一気に突き進むんだ」
エメラルドも慧の考えを察したらしく、納得したように頷いてから憑依する。
ウェーブがかかったように波打ちだし、後ろでシニョンのように縛りあげ、右目の目元には星をあしらったラメがついている。そして、その瞳は緑色に光り輝いていた・
E慧「派手に行くぜ!!変身!!」
「Sword Form」
彼女の周りを緑色のハトを模した装甲が装着し、仮面にはハトの電仮面が装着される。そしてその姿は緑色の光を放つ戦士の姿へと変わった。
Vガッシャ−・ソードモードに組み立てて、鋭い刃を伸ばすとバイクにまたがり、目の前に壁のように聳え立つ、城内へとつながる巨大なつり橋を見上げると、一気にエンジンをふかし、タイヤが高速回転して一気に走り出す!!!
Sバルキリー「あたしの・・・とびっきりのビートで・・・シビれさせてあげるっ!!」
気合とともに、刃が緑色の光を放って飛び出し、回転しながら橋を支えている鎖を断ち切り、橋が重々しい音を立てて傾きだす。ちょうどいい傾きの角度になると同時だった!!
Sバルキリー「おりゃあああああああああああああああああああっ!!」
橋を思い切りバイクで乗り上げ、そのまま減速もしないまま、一気に走る、走る、走る!
そして、目の前に一面の青い空が広がったかと思いきや、
慧「・・・・・飛ぶぞ!!」
エメラルド「OK!!!」
二つの声が重なると同時に、タイヤが持ち上がって一気に車体ごと浮き上がり、地面についていた感覚がなくなり、ふわりとした感覚になる刹那、風が頬を派手に打ちつけ流れ行く感覚を感じて、風を切って、宙に舞い上がった!!!
Sバルキリー「行くじぇえええええええええええええええええ!!」
空中に舞い上がる純白のバイクにまたがる、剣を構えたソードフォームの姿はまるで絵本に出てくるような白馬の騎士のように美しく勇ましい姿だった。
そして、バイクは華麗に城内に飛び込み、凄まじい音と地響きとともに華麗に着地する。
すると、やはり予想通り、城内には待ち構えていたかのように無数のイマジンやファンガイアたちが凶暴な光を瞳に宿して、それぞれ武器を構え、血に餓えているかのような獰猛な牙を見せ、うなり声を上げて威嚇してくる。
慧(・・・昔、喧嘩していたときのこと思い出す。あの緊迫感・・・あの時は一人でずっと喧嘩していたから、自分だけを守ることばかり考えていたから、自分だけ・・ううん・・・自分の殻に閉じこもって自分だけが不幸で、そんな人生嫌だった。だから自分の居場所を掴み取るためなら力ずくでやるしか考えられなかった。でも、今は違う。私を信じて、命をかけて、私のことを信じてついてきてくれる仲間がいる。私はもう・・一人じゃない。だから、こんなに、周りがよく見える。その先にある未来も。だから、もう怖くない)
慧「・・・どいつから地獄見たい?後が怖ぇぜ・・・・覚悟しろっ!!」
Sバルキリー「おっしゃああああああああああ!!!」
威勢のいい声とともにバイクのハンドルを片手で一気に回して走り出すや否や、ソードを振り回しながら敵をすれ違いざまに次々と切り裂いていく!!
切り捨てられた敵は爆発し、バイクが走り去ると同時に真っ二つになった敵が次々と炎を吹き出して倒れ行く。彼女たちが突き進む道なりに爆発が起こり、オレンジ色の鮮やかな光を放ちながら炎が舞い上がる。
Sバルキリー「行くぜ行くぜ行くぜぇえぇええええええええ!!」
敵の光線や攻撃をバイクで避けながらすれ違いざまに敵を切り捨て、彼女が通り過ぎた直後に切られた敵が斬られた傷口から光を放って爆発し、炎が再び舞い上がり、敵を飲み込み、永遠に沈黙させる。
Sバルキリー「うおおおおおおおおおおぉおお!!!」
バイクを華麗に乗りこなし、ソードを片手に敵を次々と切り捨てて、一気に城の中へと向かって猛突進する姿はまるで戦場を駆け抜ける武者を思わせる。
ルシファー「ヒュウ・・・・いきなり突っ込むか。思い切りのいいやつは嫌いじゃねえな」
アスモデウス「・・・見とれないでよ」
ルシファー「バカかてめぇは。しかしまあ、大した女じゃねぇか。度胸もあるし・・・こいつがベルフェの対戦相手か。面白くなってきやがった」
その様子をモニターで見ていたルシファーが感心したかのように口笛を吹く。
Sバルキリー「もうすぐ城内だよ!!」
慧(琥珀さん、いける!?)
琥珀「いつでもいけるぜ!」
城内につながる扉の前には門番らしき無数のイマジンたちが武器を構えて侵入を阻むように取り囲んでいた。
しかしソードフォームはバイクを減速させるどころか一気にエンジンを吹かせて走り出す!!
そして前輪を持ち上げると後輪だけで走っているウィリーの状態でなり、次の瞬間、
Sバルキリー「いくよ!!」
「Assassin Form」
バイクから飛び出し、オレンジ色の光に包まれ、その姿をアサシンフォームに変形すると壁を蹴り上げて、三角蹴りの要領で蹴り上げて飛び上がる!!
そして、バイクはそのまま敵陣に突っ込み―。
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
バイクが大爆発を起こして敵陣が一気に吹き飛び(エメラルドが作った爆弾込みの量産機のため運転用のは無事)、それを見下ろしながらアサシンフォームが素早い動きで城の屋根から屋根へと飛び移っていく。そして空からやってきた鳥型のイマジンたちを見るや否や、ハンドアックスをブーメランの要領で投げつける!!
Asバルキリー「テメェらの相手なんかしてられねぇよ!!」
円盤と化したハンドアックスが無数の敵を切りつけ、そして、クナイを片手に敵を次々と切り刻み、アサシンフォームが突き進んでいく!!
そして、城内の本丸といえる城のテラスに行き着くと、そこから侵入し、中に入り込む。
慧(・・・もうノンストップで行くよ・・・!!)
サファイア「安心しなよ。動き出したらとまらないのはうちらの専売特許だっつぅの」
「Gun Form」
青い光に包まれ、次はガンフォームに変身を遂げる。
城内にはもう通路中所狭しと敵が構えており銃弾や光線が次々と飛び交う。しかし、ガンフォームは弾道のそれを見切ると壁を蹴り上げて回転しながら敵の頭上に舞い上がり、一気に引き金を引いた!!
バンバンバンバン!!!
無数の銃弾を急所にぶち込まれ、敵たちが次々と爆発し四散していく。
ガンフォームは通路を爆走しながら天井、正面から襲い掛かってくる敵に無数の銃弾を発射し、乱射した弾丸は百発百中の命中率で敵の急所をぶち抜き、破壊していく。
Gバルキリー「そんなチャチな守りの姿勢じゃ・・あたしたちは止められないよっ!!」
慧「一気に突っ込めぇえぇえぇええええええ!!」
まさしく一騎当千。
その勢いはとどまることを知らない。
ルシファー「こいつぁ驚いた。統率力も戦闘力も申し分ねぇな。たかが人間のガキにしてはよ」
アスモデウス「ふぅん、でもぉ、それだけじゃ勝てないわよねぇ?」
ルシファー「まぁな。ただ、見ていればこれまでの口だけのやつらとは違うって分かるだろう?俺も戦ってみたくなってきたぜ」
アスモデウス「もう・・・すぐ強そうな相手見ると喧嘩売り歩こうとするんだから」
そういって戦いを見ているルシファーはまるで少年のように目を輝かせて楽しそうに見ていた。
そこへ、智が入ってきた。
智「キングたちも動き出したみたいよ。今、サタンから連絡入って、自分の統括しているエリアにキバライナーが乗り込んできたって」
ルシファー「サタンの所にか。・・・あー、それならちょっと寄り道してみっか」
アスモデウス「・・・・もしかして、ヒマつぶしに?」
ルシファー「まあな。ちょっとばかし腕鳴らしにチェックメイト・フォーでも軽くひねってくるか。智、寄り道するぜ」
もう言う前に勝手に「マシンレイヴン」に乗り、勝手にボタンを押すと、線路が変更され、列車は別の時間へと飛び込んでいった。
智「こら!!了承する前に勝手にやるな!!」
ツッコミを入れるようにいうが、ルシファーは鼻歌など歌っていて全然聞いてなかった。
アメリカ、グランドキャニオン郊外を暴走している超大型軍用列車。
列車の格納庫には膨大な量の武器や火薬、兵糧などの軍用設備が乗っている。
セブンズヘブンの物資補給を担当しているサタンと呼ばれる長針の女性は後ろから近づいてくるキバライナーに気がついても、表情一つ変えなかった。まるで予想がついていたかのように。赤い髪を後ろで縛り上げ、ノースリーブの黒いネックシャツに革のベストとパンツといった動きやすそうな服装には、鍛え抜かれたように引き締まった腕は呼ぶ余分な脂肪が削られている。端正な顔立ちからは中性的な魅力を漂わせており、一見美少年を思わせるようにも見える。
グローブを付け直して、ぎりりと音を立てて拳を握り締める。
サタン「・・・来たか」
サタンは敵が狙っている「オリハルコン」が詰まれた格納庫を見上げる。
オリハルコンは希少な金属で、現在一番硬度が高いハードセラミカルチタン合金より遥かに硬い(それも単体で)。それだけでなく、熱伝導率が極めてゼロに近いという、これまで科学者が追い求めた理想の性質を持っていた。大量に入手すれば夢の常温永久機関の設立が可能だが、あいにくそこまでの量は発見されていない。
ともかく、これをデイライトのエンジンに応用すれば理論上連射が可能なのだ。またこれを利用して武器を作れば破壊力抜群の武器をいくつも作ることができる。
不意に、部屋の扉が滅多斬りにされ、更に閃光が扉を吹き飛ばしたのを見て、その人物が誰か確認すると、「ああ、やっぱりな」とつぶやく。
晶「昔確かに倒したはずなのにまさか蘇っているなんてね。でも、今度こそ二度と生き返れないように徹底的に排除してやる」
チェックメイト・フォーのキング。
大友晶が険しい怒りを帯びた表情で立っていた。
サタン「ふん、チェックメイト・フォーの王が、わざわざ乗り込んでくるとは光栄だな」
全然敬意も示さないように言うと、晶の怒りが高まってくるのが肌で感じ取れる。
晶「お前たちには昔世話になったよな。俺たちの世界を滅茶苦茶にしてくれてよ。おかげで、俺は名ばかりのキング、そう、世界も一族も守れなかった無様な醜態を晒しながらしぶとく生きている・・・そう・・・生きていても死んでいるようなもんだ」
サタン「復讐?何のことだ?訳の分からんことで恨まれるほど付き合いきれんことはないぞ・・・」
本気でサタンは晶の復讐の理由が分からなかった訳ではない。多分逆恨みではないかと感づいてはいたが、わざわざ相手を怒らせて注意力を鈍らせる。その通りになったのか、相手の口調がより険悪になる。
晶「・・・本気で分からん訳じゃないだろう?忘れたとは言わせない・・・・・お前たち7人が俺たちの人生を狂わせたことをな・・・・」
サタン「あれはレジェンドルガ一族とファンガイア一族の戦争・・・お互い一族の繁栄のために、勢力の強大のために戦っていた。こっちだって死人が出なかったわけではない。そんなことで逆恨みされる筋合いなどない。ましてや、その後起こったあの世界が崩壊するさまなど、俺たちとて予想外の事態だったのだからな。まあ、俺たちとファンガイアとの戦いを利用して、世界を時間そのものからぶち壊そうとしたヤツがいて、それに利用される形で間接的にとはいえ世界を破壊させることになったとしても、それで俺たちを恨むのはお門違いというものだ」
そういって、冷たく笑うと、もはや晶の怒りは限界にまで膨れ上がってきていた。
サタン「それでわざわざ復讐で乗り込んできましたってか。どこまでも空しいヤツだ」
晶「何だと・・・!?」
サタン「簡単なことだ。力のある方が勝つ。主義も主張も関係ない。お前らの敗因はお前らが弱かった。それだけさ。それすらも分らないとは王が聞いてあきれる。まあ、ファンガイアごときの一族など滅んでしまって正解だったかもな。一族を犠牲にしてまで自分たちが生き永らえようとするような連中など、クズ以下だ」
ブチンッ・・・・・。
晶「・・・・あはは・・・ははははははは・・・・緒が切れた音が聞こえたよ・・・・あはははははははははは・・・・・ブッ殺す」
狂気の笑みを浮かべたまま、ベルトを巻いた晶が構えを取る。
晶「あはははは・・・・殺す・・・・くくく・・・殺すぅ・・・」
もはやまともな意識など完全に手放したかのように狂気に完全に支配された晶がゆらりとポーズを取る。
晶「変身!!」
サタン「ふん、ザァコが。軽くひねってやる」
サタンの姿が見る見る屈強な筋肉を頑強な鎧に覆われ、雄々しき凶暴なクマを模した鎧に包まれたサタンレジェンドルガの姿に変わり、両腕に構えた手甲爪を取り出し、飛びかかってきたキングフォームの槍を受け止める。
ガギィィイイイイイイイン!!!!!
青白い光がほとばしり、轟音と火花が飛び散る。
爪を盾のようにして攻撃をはじくと、キングフォームが後ろに跳びよけ、そのまま反動をつけて一気に槍を前方に突き出してきた。
Kワイバーン「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
サタン「ふんっ!!」
槍を力強く弾き飛ばすや否や蹴りが繰り出され、キングフォームの腹部にめり込む!!
Kワイバーン「がっ・・・」
息ができない。激痛に一瞬呼吸すら機能を停止させる。そして流れるように蹴りが繰り出され、最後には脳天に踵が振り下ろされ、直撃し、よろめいているところへ爪のラッシュを繰り出した。
ザシュザシュザシュザシュザシュッ!!!!
サタンレジェンドルガの爪は怪力も手伝ってかキングフォームの鎧でさえ難なく切り刻んでいく。
キングフォームが吹き飛ばされ、壁にたたきつけられる。
全身に激痛が走り、焼けるような熱い痛みが傷口からほとばしる。しかし歯を食いしばり、怒りと憎悪のみが今のキングフォームを動かしているかのようだ。再び槍を身構える。
しかしサタンレジェンドルガは一歩も動かない。キングフォームは腰を低く屈めたままダッシュした。そのまま低めにジャンプして、大きく槍をかざす。
サタンレジェンドルガ「ふん」
斬りこんできたキングフォームにむかって、サタンレジェンドルガは左手を大きく横に振り上げた。爪の先から、細かな光波が放たれていた。
Kワイバーン「!」
キングフォームが気づいた時には既に遅かった。槍を振り下ろす前に、彼の体に無数のエネルギー弾のようなものが直撃していた。
Kワイバーン「ぐあっ!!」
悲鳴を漏らして、槍を取り落とし地面を滑走する。怪我の痛みに耐えつつ立ち上がると、大きな足が頭上に現れた。
直後、のしかかってくる重圧に、彼の顔は地にめり込んだ。
サタン「話にならないな」
サタンレジェンドルガは右手をドリルに変貌させた。削岩用のドリルが、けたたましい機械音をたてる。
サタン「戦いとはこういうものだ。勝者が生き残り、敗者は去るまでよ」
Kワイバーン(危ない!!)
危険を察し、キングフォームは転がっていた槍に手を伸ばした。ドリルアームが頭部に達する前に。
サタン「弱いやつは死ね」
サタンレジェンドルガが本気でこちらを仕留めようとする直前、キングフォームは剣をとり、サタンレジェンドルガの足へと突き刺した。
サタン「このっ!!」
短く悲鳴をあげたサタンレジェンドルガは、踏み潰したままの足の下のものに向かってドリルアームを叩き付けた。
が、既に標的の姿はない。足に穴があいたせいで力が緩んだサタンレジェンドルガの隙を突いて一瞬で後ろに下がり、向こう側に移動していた。
彼は槍から超高圧電流エネルギーを放出した。しかし相手に察知され、ほぼ一回ほど爪が空を薙いだだけで、雷はかき消される。
サタン「ふん」
Kワイバーン「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
一方で。
列車の倉庫で無数のイマジンたちをルークフォームのハンマーが振り下ろされ、一気に吹き飛び、ビショップフォームの剣さばきがしなやかに敵を切り刻む!!
キングフォームが敵を見つけて激昂に駆られて飛び出し、慌てて追いかけてきたはいいものの、そこではまだ残っていた残党が牙を剥いて待ち構えており、狭い列車内という不利な状況で戦う羽目となった。
Bワイバーン「この先の部屋ですね・・!」
Rワイバーン「ああ、キング、勝手に飛び出しやがって!!ルークたちだって戦う目的は一緒なのによ!!」
いつになく3人は怒っていた。自分たちをおいて復讐の鬼と化し、怒りと憎悪に支配され一人勝手に突っ走りセブンズヘブンの一人に挑みかかっていたキングに。
かつて自分たちの世界を滅ぼした要因ともいえる存在。
自分たちの一族を滅ぼした存在。
しかし、それとこれとは話が別だ。なおのこと、どうしてこんな緊急事態に自分たちだけを置いていってしまうのか。
その時だった。
ゴオオオオオオ・・・・・。
ふと横を見ると、そこにはこの軍用列車に横に並ぶようにして一台の青い列車が走っているではないか。そしてそのデッキから身を乗り出すように銀髪の髪を風になびかせて、一人の少年がなにやら叫んでいた。
ルシファー「サタン!!!!おーい、返事しやがれっ!!!」
その声にサタンは「おいおい、マジかよ」と呆れたように目を細くして、キングフォームを蹴り飛ばし、無線で連絡を入れる。
サタン「おいおい、兄貴。どうしたんだよ。物資の補給は俺に一任するんじゃなかったのか?」
ルシファー「後部車両にネズミがいるからよぉ。始末しておいていいか?」
サタン「・・・暇つぶしで来たな。まあいいか。でもよ、あんまりサボってっとマモンに怒られるぜ?」
ルシファー「大丈夫だよ!!いいのか?いいんだな!!」
サタン「ああ、頼むぜ」
ルシファー「おうよ!!」
そういうと、ルシファーが取り出したのは槍の穂先が二股に分かれている長柄の槍である。
槍を回転させて身構えると、槍の穂先に静かに風のエネルギーが集まりだし、やがてそれは巨大な渦となって竜巻を生み出していく。
不敵な笑みを浮かべて、少年は狙いである後部車両の中にいるルークたちを見据えていた!!
その視線に気づき、彼が手にしている槍を見て、即座に状況を整理し、3人の顔色が青ざめる。
Rワイバーン「や、やべぇ!!!」
Qワイバーン「マジィ!?」
ルシファー「へへっ、派手にいくぜ!!」
ルシファーが瞳に凶暴な光を宿らせ、槍を思い切り振りかぶり、腰を低く身構える。
風の勢いはさらに強くなりもはやうなり声は悪魔の声のように聞こえてくる。
サタン「・・・お前の仲間ヤバいけど、どうする?尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ?」
サタンレジェンドルガは余裕たっぷりな様子で壁にもたれているキングフォームに言い放つ。すると、キングフォームが立ち上がるや否や、槍を構えてサタンレジェンドルガに突き出してきた!!!
Kワイバーン「レジェンドルガァアァアアアアアアアアアア!!!」
怒りに燃えるキングフォームの目は、既にレジェンドルガしか見えてはいなかった。
Rワイバーン「くそっ!!ロックかけられてやがるっ!!ドア開かないぞ!!」
Qワイバーン「あいつの攻撃なんて食らったら・・・確実にお陀仏だよね?」
Bワイバーン「くっ、壁を破壊して、飛んで逃げるしかない!!」
次々と上がる、仲間たちの声さえももう聞こえなかった。
Kワイバーン「レジェンドルガッ!!!」
ビュッ!!
そのサタンレジェンドルガに、キングフォームは恐ろしい勢いで襲い掛かってきた!!
サタンレジェンドルガ「ッ!!?」
ドガアアアッ!!!!
サタンレジェンドルガはその一撃で吹き飛ばされ、積まれていた荷物に激突する!
サタン「・・・・何のつもりだ」
Kワイバーン「うるさいッ!!」
ビュンッ!!ビュッ!!
矢継ぎ早に繰り出されるキングフォームの攻撃を、サタンレジェンドルガはかわし、いなし、直撃を避けていく・・・!
サタン「・・・このガキがぁ・・・!!」
Kワイバーン「うああああっ!!!!!!」
鋭い爪で、自分に殴りかかっていたキングフォームを吹き飛ばす!!
バキィッ!!
ガシイッ!!
Kワイバーンうああああああっ!!!」
サタン「テメェ・・・!!」
それを執拗に襲うキングフォームも槍の猛ラッシュを止めない!!
サタン「お前・・・仲間を見捨てるつもりか」
Kワイバーン「うるさい・・・うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇえええええ!!」
ガツッ!!!
キングフォームの正拳突きがサタンレジェンドルガの顔面を捉え、両者の間に空間が開く。
Kワイバーン「お前らだけは許せない・・・すべてを奪っておいてのうのうと生き永らえるなんて・・・俺は許せない!!王として・・・お前たちを処刑する・・・復讐するって心に誓ってずっとずっと生きてきたぜ!!お前を倒す!!その為なら・・・俺は・・・王としてすべきことを・・・全うするだけだっ!!!」
サタン「・・・ふん、どこまで愚かな奴だ」
Kワイバーン「後悔しろ・・・お前は俺が倒す!!!」
「Full Charge」
ボタンを押し、必殺の一撃の体勢に入るキングフォーム・・・!!
サタン「・・・・後悔するのは、お前だ」
Kワイバーン「黙れッ!!!」
バッ!!!!
キングフォームは青い稲光を光り輝かせて、一気に飛び上がった!
必殺の一撃を槍に秘め、サタンレジェンドルガに飛び掛っていくッ!!
サタン「終わりだな・・・・お前」
飛び掛っていくキングフォーム。
そのとき、その腰に変化が生じる。
キィン・・・!
そこに装着されていたワイバーンベルトが突然外れ、その場を飛び去ってしまった!
晶「何・・・ッ!!?」
当然変身は解除され、その体の装甲の素体は崩れて消えていく。
晶の姿に戻り、その場に崩れ落ちた。
ドサッ!!
晶「あうっ!」
晶はサタンレジェンドルガに向かって飛び掛っていたところを変身解除されたため、受身を取れずに地面に落ちてしまう。
晶「っ!どうして・・・どうしてベルトが!?」
起き上がった彼が見たのは、自分のその手にベルトは戻ろうとはしない絶望的な光景であった。
晶「戻・・・戻れええええええええええッ!!!!!」
晶の叫びもむなしく、ワイバーンベルトはサタンレジェンドルガの元へと飛び去っていく。
晶「そんな・・・・そんな・・・!!」
サタン「まだ分からないか。お前は今、「王」を見限られたんだよ。仲間が危機に陥っても助けにさえいこうとしない・・・自分だけの復讐に囚われているようなヤツ・・・誰が認めるんだ!?」
晶「うぐっ!!」
サタンレジェンドルガに強烈な一撃を見舞われる!
バギャアアッ!!!
その威力はやすやすと晶の体を飛ばし、近くのコンテナの壁を突き破り彼をその中へと落とす。
晶「うう・・・う・・・・。」
晶はひざを抱えて痛みに耐えていた。
その目は恐怖に怯えきっており、正気も保っているようには見えなかった。
そしてその左手にはもう「王」の証である紋章は浮かんでいなかった。
サタン「お前・・・どれだけあいつらのことを突っぱねていたんだよ。あいつらが哀れすぎるぜ。お前みたいなどうしようもないヤツなのに、信じて命がけでついてきていたのに、それさえもお前は裏切ったんだ」
晶「お前らなんかに説教なんてされる筋合いなんてねぇよ」
サタン「はっ、そうだろうな。俺たちだって自分がやっていることなどどういうことなのか分かっているし、恨みも多く買っているだろし、絶対地獄に落ちるだろうな。まあ、一度死んでみたけど、地獄に落ちたかどうかなんて分かるわけなかったがな。全てが一瞬にして真っ暗になってなくなるだけ、でも、その刹那に思い浮かぶ光景が自分たちが殺してきた連中の恨みがましい目をした腐った亡者しかいねぇなら地獄なんだろうな。でもな、そこにもし一人でも自分が心から思っている仲間が思い浮かべられるなら上等なもんだ」
サタンが人間の少女の姿に戻り、晶の顔面を蹴り飛ばし、晶が床に転がる。
サタン「お前それすらも見捨てたんだよな。大事なものまで捨てて何が王だ」
晶「ぐっ・・・・」
サタン「・・・俺は兄貴からそれだけは大事にしているぜ。兄貴は言っていた。仲間は何があっても見捨てるな。生きてから死ぬまでの間、何があって仲間と認めたやつは最後まで守りぬけ。兄貴は本当に俺たちを守るためなら命だってかけてこれまで守ってきてくれた。だから・・・俺は兄貴のことを信じられるし、こんな人生でも悪くはないと思っている。でもな、お前はいるのか?お前を信じてついてきてくれた奴を自分勝手な理由で投げ出して見殺しにするようなバカ野郎なんざ・・・絶望にまみれてとっととくたばりやがれ!!」
サタンが爪を振りかざしたのと同時だった。
ルシファー「オラァアアアアアアアアアアアアア!!!」
切り離された後部車両に向かってルシファーの槍が振り下ろされ、凄まじい風がおき、電車の車体が持ち上がり、そして壁に亀裂が無数入る!!!
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!!
そして電車が吹きとび、空中でまぶしい光を放って凄まじい音を立てて大爆発を起こした!!!あまりの振動に車内のありとあらゆる荷物が崩れ落ちる。
サタン「はあああっ!!」
晶「うわああああああああああああああああっ!!」
晶がサタンに殴り飛ばされて、電車から時の砂漠に向かって投げ落とされ、姿を消した。
サタンはふうっと息をついて、爪をはずす。
すると、これまで険しかった表情が一転して優しそうな雰囲気の柔和な表情の少女のそれになっていく。あまりにも劇的な変化であった。
ルシファー「おーい、サタン!!そっち終わった!?」
サタン「・・・あ・・・兄上様。はい、ただ今、任務完了いたしました」
ルシファー「おう!!あれ?お前、それ、何?」
きょとんとしてルシファーがサタンが持っているベルトを指差す。
先ほどまでとは打って変わっておとなしげで儚い雰囲気の美少女のように愛くるしい様子で答える。
サタン「キングのベルトです。回収いたしました」
ルシファー「マジかっ!?よくやったぜ!!すげえじゃねぇか、サタン!!」
ルシファーがまるで自分のことのように無邪気に笑って妹分をほめまくる。
相当うれしいのか、サタンまで笑顔を浮かべる。褒められたことが嬉しくて仕方ない。
ルシファー「お前本当やれば出来るヤツだよな。仲間にしてよかったぜ」
サタン「ありがとうございます・・・・すごく嬉しいです」
ルシファー「よっしゃ、次はベルフェのところだ。今、バルキリ―と戦っているはずだからな」
サタン「ベルフェちゃんがですか?大丈夫かしら・・・あの子まだ実戦も少ないのですが」
ルシファー「大丈夫だろ。あいつだって立派なレジェンドルガなんだからよ」
無邪気に笑いながら、少年たちは隣を走っている「カオスライナー」に乗り込み、時の扉を開いて消えていった・・・。
一方。
砂漠では傷だらけになったルーク、クイーン、ビショップが息も絶え絶えの状態で横たわっていた。
ルーク「ち・・・ちくしょう・・・・」
クイーン「あいたたた・・・・・」
ビショップ「キング・・・・・早く助けないと・・・・・」
しかし激痛に全身が支配され、やがて視界が真っ暗になり、そこで意識が途切れた。
一方。
城内の中を探索して、ようやく本城の塔のてっぺんまでやってきたガンフォームは部屋の扉を勢いよくあけた。
Gバルキリー「頼もう!!」
慧(いや、道場破りじゃないから)
すると、目の前には部屋の真ん中に通じる一本の細い通路のみが設けられ、それは真ん中の円形の足場へとつながっている。下を除くと、どこまでも深く続いている穴が広がり、まるで地獄のように思える。
Gバルキリー「・・ふふふっ、決闘の場としてはいい趣向だね」
不敵な笑みを浮かべつつも緊張しているのか、汗を一筋流し、ガンフォームがゆっくりと足場へとたどり着く。その時だった!!
ウィイイイイイイイン・・・・。
足場が急に動き出し、どんどん天井に向かって伸びていくではないか!!そして、足場はさらに上昇し、ガンフォームは床に座り込む。
Gバルキリー「なんじゃらほおおおおおおい!?」
そして足場が止まると、辺り一面に広がる雄大な景色に心を奪われそうになる。
どこまでも広がるうっそうとした森林。中世ヨーロッパの面持ちを残したような町並み、何もかもが美しかった。
Gバルキリー「・・・・ここで可愛い女の子でもいればもう死んでもいいかな」
慧(不吉な発言かまさないでください!!!)
そのときだ。
ベルフェゴール「ようこそ・・・・おいで下さいまして・・・ですの」
可愛らしい鈴を転がすような声がし、振り返るとそこには上空にゆっくりと浮かびながら上品な微笑を浮かべて一人の小柄な少女が背中から輝く七色の美しい翼を広げている。
まるで天使のように愛くるしくて・・・思わず一瞬見とれてしまう。
Gバルキリー「・・・・・プッツン」
慧(はい?)
Gバルキリー「ぎゃ・・・・ギャラクシー(宇宙最大級)萌えきとぅわあああああああああああああああああ(崩壊)」
エヘラエヘラと危ない笑みを浮かべて、バカが吼えた。
少女もあまりに危ない様子のガンフォームに何が何だか分からない、おびえているような顔を浮かべる。
Gバルキリー「・・・あははは・・・天使だ・・・こぉんなに可愛い天使があたしに声をかけてきてくれるなんて・・・・ああ・・・最高に幸せだね。敵陣でこんないい思いできるなんて夢のようだ。まさに地獄に仏、いや、最高級のビューティフルロリっ子天使の光臨じゃ・・・。ありがたやありがたや」
ガンフォームが跪いて頭を下げ、手を合わせる。
ルーベット「お前は幼女にまで手を出すつもりか!?」
Gバルキリー「大人の階段の上り方というものを教えてあげたいだけだい!」
琥珀「・・・・お前、最低」
Gバルキリー「あ、勘違いしないでね。あたしは、ロリコンでもあるからね?ロリコンと断定しないでね?もちろん年頃の女の子やお姉さままで守備範囲はグローバル級だからねん」
世界中の女は全て自分のもの扱いですかい。
慧(こんな状況でもそんな発言かませるあんたはある意味すごいです)
トパーズ「考えても見ろ。こんな敵陣の真っ只中で、お前なんかに天使が優しく微笑みかけてくれるなど、明日にでも時間が破壊されるほうがよっぽど現実的だ」
そういって、見上げると、少女の姿がまばゆい光に包まれて、見る見るその姿を猛禽類のそれを思わせる鋭いくちばしと瞳を持ち、虹色の翼を輝かせて大空から自分を見下ろしているベルフェゴールレジェンドルガの姿となっていた!!
慧(ほら・・・ね?)
Gバルキリー「・・・・・ふふ・・・何でよぅ?いいじゃないかよぅ、あたしにだって、ロリっ子可愛がる機会とか欲しいわよぅ・・・なのに敵?敵なの?嘘だぁぁあああああ・・・・もう嫌だ。泣いてなんかないもんね、くぅ、青春の汗が目にしみるぜ」
ルーベット「ある意味感心いたしますな」
慧(しなくていい)
アメジスト「さすがはバカとエロとキチガイの集大成ですよね」
どこまで堕ちていくのやら。
そして、ガンフォームが銃を構えると、先ほどまで流していた涙をぬぐい、きっと引き締める。
Gバルキリー「悪いけど・・・時間は消させない。悪い子にはお仕置きだね」
ベルフェゴール「くすくす・・・アタマ悪そうな鳥さんなの・・・やっつけちゃうの」
ベルフェゴールレジェンドルガが空中に舞い上がり、ガンフォームが銃を身構えた。
戦闘開始の合図だった・・・・。
続く
(現在の戦況)
サタンレジェンドルガ(憤怒)○―×仮面ライダーワイバーン・キングフォーム
ルシファーレジェンドルガ(傲慢)○―×チェックメイト・フォー
戦利品(サタン):キングベルト
時の崩壊まであと7日間。
,こんにちは。
今回はセブンズヘブンの強さを主体とする物語でしたが、チェックメイト・フォーが手も足も出ない状況下でありさらに、キングが離脱、王位を剥奪され力を失ったという最悪な状況となりました。しかし、ここで諦めないで時の運行を守るために立ち上がっていく4人の今後の活躍をご期待くださいませ!!
お返事返します。
>烈様
>《セブンスへブン》のメンバーの名前の由来が悪魔達を束ねる“七つの大罪”の『魔王』達の名前からつけられているとは正直驚き半分納得半分な感じがしました。……ところで質問ですけど、ひょっとしてですけど《セブンへブン》のメンバーは“ルシファー”以外は全員“女”なのではないですか?(“アスモゼウス”や“ベルフェゴール”が女性でしたのでたぶん読みとしては間違っていないと思っています。)
実は・・・ルシファーが兄で他の仲間たちが妹分として存在しております。
理由は・・・そういうのを書いてみたかったのです。
兄貴分として尊敬しており、そして恋愛の対象として憧れている少女たちの思いに気づかない鈍感で子供っぽいルシファーとのやり取りもバルキリーを盛り上げていくためのネタとして書いていきたいと思っております。
>チェックメイト・フォー
今回は4人にとっても、晶にとっても試練として書いていきたく、このように晶がキングの力を失う展開に持ち込みました。これまでの言動から分かるように晶はこのままでは王として「守る力」を軽視するか無視したままで戦い、大事な何かに気づかないと思い、失って、初めて何かに気づいていく晶の行動を今後書いていきたいです。そして残りの3人も辛うじて生きております。
次回もよろしくお願いいたします。,#000000,./bg_f.gif,p12137-ipbffx02funabasi.chiba.ocn.ne.jp,0
2009年09月11日(金) 22時08分48秒,20090910224103,20090914220848,YG/qAc3ziXPTk,仮面ライダーバルキリーたん 第23話「Beginning of event covered with uneasiness」,鴎,,,「Beginning of event covered with uneasiness」
8月15日
Vライナー ラウンジ
時の砂漠を駆け抜けていく時の列車「Vライナー」。
いつもと変わらない風景、そしてラウンジでは珍しく6体のイマジンたちがテーブルを囲んでなにやら真剣な表情で話し合っていた。
ルーベット「先日のあの・・・ごちゃ混ぜフォームですが、あれは意外と良かったですな」
琥珀「ごちゃ混ぜ言うな。まあ、あれなら一々変身する必要もないし、どんな敵に対してもオールラウンドに対応できるよな」
それは先日、エメラルドが作成したイカロスショットによる「クライマックスフォーム」のことだ。エメラルドいわく、「常に最高潮の状態で強くてカッコいい名前にしたい」という理由でこれになったのだが、6体や慧がかなり気に入ってしまったのだ。
トパーズ「しかし、心をひとつにしないとイカロスショットは発動しないのだな」
エメラルド「あの時はお姉ちゃんを助けたいって皆思ってたよね」
サファイア「うん」
アメジスト「しかし・・・あれと同じような形でいつでも変身出来るのかしら?」
ルーベット「それが出来るように、いつでも心をひとつに出来る練習はいかがかな?」
トパーズ「どうやってやるんだ?」
エメラルド「それが問題。つーか、お姉ちゃんのこと以外に関して、あたしたちの意見が合ったことなんて、これまで・・・なかったよね」
トパーズ「毎度毎度慧が怪我するのを期待するわけにもいかんしな」
サファイア「・・・いい方法があるよ」
「「「「「却下」」」」」
サファイア「今、何も言ってないのに5人揃ってハモって心をひとつにして総否定かいっ!?」
トパーズ「・・・お前が思っていること言ってやろうか?」
エメラルド「今から風呂場に行こう」
サファイア「えっ!?」
アメジスト「人と人とのふれあいは裸の付き合いから始まる」
サファイア「何ぃっ!?」
琥珀「そして生み出された友情は愛情に変わって・・・」
ルーベット「その愛情は自分への愛に変わるであろう」
「「「「「だから風呂場で皆でチチ繰りあって愛を育もうではないか」」」」」
5体がもはや分かりきっているというような、あきれ果てているような感じで言うと、サファイアは驚きを隠せない様子で言葉を失っている。
どうやら・・・ビンゴであったらしい。
サファイア「・・・一言一句同じだよ。何、君たち、人の心を読めるの?盗聴(タッピング)とかしちゃったりしたのかい?」
トパーズ「・・・・お前の考えていることなどお見通しだ」
エメラルド「つーか、サファイアって見た目一番色っぽくて大人なのに中身は一番お子様でバカだよね」
ルーベット「ああ、救いがないな」
琥珀「・・・・・マジでそんなこと考えていたのかよ」
アメジスト「・・・・至って真剣だからタチが悪いですね・・・」
全くこのサファイアだけは思考回路が何を考えて何を価値基準にして動いているのか分からない。というよりも、理解したくもない。
5人はこの時心がひとつになったという。
サファイア「皆冷たすぎるよっ!!いいかいっ、友情を育むのは愛、愛あれば愛に満ち、人を気遣い助け合い繋がりを作ることによって更なる愛が生み出される、愛とはすなわち古来より人間が、いや、地球上の生物たちが本能的に持っている種の生存競争で最も強みとされている神から与えられた大事なコミュニケーションだよっ!?」
琥珀「お前はやり方がズレまくっている方向にブッチギリで突っ走りすぎだ」
アメジスト「というか、エッチなことしたいからって神まで持ち出しますか」
サファイア「ああ、持ち出すね!!愛を語るためなら神でも仏でも連れ出すね!!」
ルーベット「天罰でも下ってしまえ、バカ」
その直後だった。
ラウンジにやってきた愛がいつものようにゆるーくほのぼのとした笑顔で入ってきた。
そして懐から取り出したものは・・・拳銃。
笑顔のままで天井に向けて思い切り引き金を引いた。
バアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!
「「「「「「うひゃああああああああああああああっ!?」」」」」」
6体が銃声に驚いていっせいに飛びのいた。
その直後、心がひとつになり、その姿が一気に消え去った。
愛はにっこりと笑いながら玩具の拳銃を収める。
愛「出来るじゃない。皆仲良しさんなんだから。うふふっ」
AM11:58
ホテル「イリスガーデンホテル」
屋外カフェレストラン「アルコバレーノ」
真夏の日差しが照りつけ、心地よい夏の風が吹いているお昼のひと時。
ホテルの屋外にあるイタリアンレストランのテラス席で晶に誘われてランチにきていた慧と晶が向かい合って食事を楽しんでいた。
晶「それじゃあ、全員まとめて変身出来るようになったの?」
いつものように、慧の前では100%猫かぶり状態・・・失礼、王ではない本来の大友晶としての素顔が出ている晶が驚く。
慧「うん、あれ、すごくいいよね・・・・」
晶「ふうん・・・かなり気に入っているようだね」
慧「うん・・・・・あれ、すごくいいんだ」
慧が珍しく心からの笑顔を見せる。そのあどけなく可愛らしい笑顔に晶は胸が高鳴り、顔が真っ赤になっていき、胸の鼓動が高鳴っていく。
慧「それでねぇ・・・新しいフォーム名・・・クライマックスフォームもいいけど・・・私もっといい名前考えているの」
晶「へえ」
慧「その名も・・・・!!」
慧が体を乗り出して、晶に端正で美しい顔立ちを晶に近づける。
甘い息が伝わり、晶がぎょっと驚いたように眼を見開き顔を真っ赤にする。
慧「ゴージャスウルトラプリンセスフォーム」
晶「・・・・・・」
一瞬にして百年の恋が冷めそうなあまりにもぶっ飛びすぎているセンスに、晶が脱力する。
しかし慧は目をキラキラ輝かせてハイテンションな様子で話しかける。
そのときだった。
晶「・・・いや、それはないでしょ・・・・て、あれ?」
慧の動きが止まり、一度に6つの光が飛び交い、一気に憑依したのだ。
そして、目の前の慧の姿が赤いメッシュが入ったポニーテールに、前髪を七三分けにし、眼鏡をかけ、右目に星のラメが入った異様な姿となった。
晶「ふえっ!?」
R慧「うむ・・・これはどうなのであろうか?」
アメジスト「なんだかごちゃ混ぜって感じ」
エメラルド「というか、皆重いよ!!太ったでしょう!!」
サファイア「失敬な!!」
琥珀「むぎゅっ・・・!!と、トパーズ、胸押し付けるな!!息出来ない!!」
トパーズ「好きで押し付けているものか!!ここが狭すぎるんだ!!」
サファイア「えー、いいないいな、トパーズの大きくて柔らかい胸揉み放題か!?琥珀ずるいぞっ!!」
琥珀「お前と一緒にすんじゃねえ!!」
トパーズ「不埒ものがあああああああああああああっ!!」
ルーベット「だああっ!!トパーズ殿、暴れないで下され!!」
サファイア「ごふっ!!」
琥珀「何であたしまで殴られるんだよっ!?ゲフッ!!」
トパーズ「お前らなどに・・・胸が大きいことがコンプレックスの女性の悩みなど分かってたまるかぁあああああああああああああああああああ!!」
アメジスト「不愉快な発言かまさないで下さる!?」
エメラルド「そうだよっ!!ちっぱいだって悩みはするんだぞ!!」
琥珀「・・・まあ、胸ないからな・・・がふっ!!!!!わ、悪かった!!二人とも!!悪かったから蹴るな殴るな飛び掛るなあああああああああああああっ!!!」
もう滅茶苦茶だ。
6体の光が滅茶苦茶に飛び回り、慧が翻弄されるかのようにテラス内をクルクルと回転させられ、おぼつかない足取りで踊り狂っている光景はホテルの客の奇異の視線を集めている。
そして。
慧が動きを止め、その場に立ち尽くす。
慧「らめ しぬ」
怪しい発言をかまして、慧が目をグルグル回転させながらぶっ倒れた。
晶があわてて駆けつけ、抱き上げる。
慧「がんだーら・・・・ほにゃらかほいほい・・・・」
晶「慧―っ!!!」
結果は大失敗であった。
そしてこの後、イマジン全員と愛が慧に滅茶苦茶怒られたのは言うまでもない。
しかし、この時、慧たちは気づいていなかった。
もうすでに、時の運行を脅かす強大なる悪の存在が動き出していたことなど・・・。
時の砂漠
どこまでも広がる果てしない荒野。
そしてその地に敷かれた唯一の道しるべである線路を、一両の列車が走っていた。
車体が青い色をして、1両のみの列車。曲線を描くような美しい流線型のフォルムをしている。
その電車の運転席で、目の前に広がる時の砂漠を見ながら、一人の少年が面白そうに見入っていた。
銀色のショートカット、赤い瞳、中性的で可憐な容姿と華奢で小柄な体躯から一見美少女のようにも見えるが、その吊り上っている瞳にはいくつもの修羅場を乗り越えてきたかのような鋭い光が宿り、肉食獣のそれにも思える雰囲気が漂っている。
そして、右肩に鷲を模した装飾が施された甲冑を着込んでいる姿はまるで侍のようであった。
「これが・・・時の砂漠か。ここで派手に暴れるってことか?悪くねぇじゃねぇか」
そこへドアが開いて、智と、艶やかな黒髪を簪で結わえ、両肩まで大きく着物をはだけて豊満な胸を強調しているかのような妖艶な肢体を官能的なしぐさでくねらせながら歩み寄ってくる長身の女性が来た。
智「ルシファー、今度の舞台、これでどうかな?」
ルシファー「ああ、悪くはねぇな。まっ、呆気なく終わっちまったとしても、お前のくれた報酬でいろいろな時代に行きまくって強そうなやつを手当たりしだい殺しまくれるんだからな。これはかなりいい仕事だぜ」
傲岸な笑みを浮かべて少年が楽しそうに笑う。
すると、女性が少年に歩み寄り、しゃがむと少年に抱きつく。その妖しい美貌は魔性の美しさを秘めており、蛇のような緩やかな動きでしなやかに腕を少年に絡みつく。
ルシファー「アスモ?」
アスモデウス「ねぇん、兄様ぁん。今度も思い切り殺しまくろうね。あたし、好きなんだぁ。人間の肉を切り裂くあの感触、血にまみれて腐臭とさび付いた鉄のにおいが入り混じった赤い液体に全身塗りたくって、死体の何が起きたのか分からないよう目玉、死にたくないって最後まで悲痛な叫びを上げていた断末魔を上げたままくたばった顔、ああん、どれも・・・たまんないわぁ」
ルシファー「お前の趣味なんて知ったこっちゃねぇが、まあ、派手にやるさ。暴れて暴れて何もかもぶっ壊してやるぜ」
アスモデウス「それでねぇん、出来ればぁ、やっぱ殺るとしたら、兄様のような可愛くて甚振ったらヒーヒーいい声上げて鳴いてくれそうなボウヤとかがいいわぁ。妄想しちゃうん。兄様・・・あぁん・・・兄様をこの関節剣(かんせつけん)でバラバラに切り刻んでぇ・・・血まみれになって・・・でも殺さないで死ぬ寸前まで抑えておいて、血だらけで激痛と死の恐怖にもだえ苦しみながらのた打ち回る兄様を見下ろして、あたしが呟くの。楽してあげようかって。そしたら、兄様は泣いてあたしにすがりつくの。そして言うわ。アスモ、優しく抱いてくれって。そしたらぁ、もう、たまらないわぁん!!」
ゴインッ!!!!!!
車内に鈍い音が響き渡り、運転席の床には頭にタンコブをこしらえたアスモデウスと呼ばれる女性が床にぶっ倒れており、ルシファーが拳をふるふると握り締めて、不機嫌そうな表情をしている。
ルシファー「後半から俺殺ってるじゃねぇか。このバカ」
アスモデウス「・・・うぅ・・・・痛い・・・・・兄様、手加減ホント知らないんだから。せっかく生き返ったのにこれじゃ頭潰れて死んじゃうわよぉん」
ルシファー「テメェは頭カラの割には岩石ばりにかてぇんだから、そうそう簡単に潰れるかってんだ」
アスモデウス「えへへ、それって、あたしのカラダのこと、気遣ってくれているのぉ?アスモ、嬉しい。えへへっ、兄様ぁ、抱っこ〜♪」
ルシファー「なんでそうなるんだよ」
ルシファーと呼ばれる少年が呆れたように言うが、アスモデウスは懲りない様子で嬉しそうに無邪気に笑みを浮かべてルシファーに抱きつく。もう少年もあきらめたのか抱かれたり、くっついてきたりするアスモデウスを止めるのはやめた。
その漫才のようなやりとりを智は半ば呆れた様子で見ていた。
智(こいつら、戦いのとき以外は本当にボケまくっているのよね・・・)
Priiiiiiiii・・・・・
無線から連絡が入り、ルシファーがとる。
ルシファー「おう、俺だ。あ、マモンか。何、うん、準備出来た?よっしゃ、それならサタンとベルフェ、ベルゼブルとレヴィは邪魔するやつらを迎え撃て。俺たちも今向かっているからよ」
そういって、通信が途絶えた。
アスモデウス「ターミナルに抑えてあるあれは奪い取ったって?」
ルシファー「ああ、エニグマだったか?智?まずはあれを分捕ることに成功した。マモンにパスワードは解析させてあるから、後は動かすだけだぜ」
エニグマ。
時の運行を侵略者の手から守るために作られた古代の最終兵器。
それは巨大な焼夷弾のようなものであり、発射し、敵に着弾すると同時に時の砂漠もろとも吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を有しているものである。
侵略者の手に渡る前に全てを敵ごと打ち滅ぼす、そんな過剰なまでの防衛策として作り上げられたがあまりにも危険すぎるために封印されていたはずだった。
ルシファー「エニグマを発射して時の砂漠をぶっ壊す。そうすればあいつらも黙っちゃいないだろうな、そしておびき寄せてぶっ殺す。こんな感じか?」
智「そういうこと。いい感じでしょ」
ルシファー「ああ、いい感じだ」
ルシファーが傲岸な笑みを浮かべて時の砂漠を見渡す。
ルシファー「楽しくなってきやがったぜ」
こうして、時の砂漠の崩壊のカウントダウンが刻み出した・・・。
8月17日
キングライナー 駅長室
キングライナーのターミナル。
慧と6体のイマジンズは朝早くに駅長に無線で起こされ大至急ターミナルに来てほしいと告げられ、今、駅長室に来ていた。
いつになく真剣で怖いと思えるほどの厳しい表情で駅長は頭を抱えていた。
こんな重苦しい状況下は初めてだ。
琥珀「何があったんだ?」
駅長「その件なのですが・・・・最初に説明しましょう。今時の運行がどうなっているかを」
慧「私も、それが聞きたかったんです。一体、何がどうなってるんですか?」
慧が興味深く尋ねた。駅長は残念そうな顔をしながら話し始めた。
駅長「『カイゼルライナー』・・・もうひとつのターミナルともいわれている施設の全職員及びお客様が・・・皆殺しにされた。それだけではなく、『エニグマ』が盗まれ、封鎖されていたはずの発射装置にかけられ、発射準備にとりかけられてしまっているのです」
その一言に、全員は驚愕した。
アメジスト「エニグマですって!?最悪の破壊兵器じゃないのよ!?何で破壊しなかったの!?」
サファイア「・・・破壊しようにも対策打てなかったんだろうよ。噂に聞いたほどの破壊力じゃ、開発者が処刑されて、設計図も解除方法も分からなくなっちまったような代物じゃさ。下手に誤爆させたら時の砂漠そのものが吹き飛ぶもん」
慧「な、何ですか、そのエニグマって!?」
サファイア「あたしたちを送りつけてきたどっかのバカが、これを使って時の砂漠を支配しろとか昔言っていたようなことがあるんだよ。言うなれば最強最悪の軍事兵器」
アメジスト「エニグマ。かつて時の運行を侵略者の手から守るために作られた古代の最終兵器。それは巨大な焼夷弾のようなものであり、発射し、敵に着弾すると同時に時の砂漠もろとも吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を有しているんです。侵略者の手に渡る前に全てを敵ごと打ち滅ぼす、そんな過剰なまでの防衛策として作り上げられたがあまりにも危険すぎるために封印されていたはずだったのですが」
サファイア「まっ、ようやくシステムを凍結させるパスワードを見つけ出して封印していたって聞いていたけど」
アメジスト「それを誰かが奪い取って作動させている!?」
駅長「はい・・・。そいつらは自らを「セブンズヘブン」と名乗っており、ターミナルを乗っ取ってそこを中心に各地に大勢のイマジンやレジェンドルガたちを率いて大暴れをしているのです・・・!!さらに最悪なことに・・・エニグマがすでに起動してしまっているのです!!」
「何ですってっ!?」
あまりにも急な展開に慧たちが言葉を失った。
駅長「エニグマが作動し、時の砂漠を吹き飛ばしてしまったら、ありとあらゆる歴史が崩壊し、時間そのものが滅茶苦茶になり、あなた方のいる世界もなくなってしまう。それどころか、動植物や人類の歴史なども抹消されて、すべてが・・・消える。文字通り、最初からこの世に存在しなかったということになってしまう・・・」
慧たちが想像するだけで全身に寒気と緊張が支配する。
もしそうなったら自分たちまで消えてしまい、何もかもが消滅してしまうのであろうか?
仮に消えなかったとしても、そこの世界ではセブンズヘブンと名乗る凶悪なレジェンドルガの集団によって支配されている世界。
駅長「そこで我々は作戦を考えました」
駅長がコンピューター・デスクのキーボードを叩いて、モニターに映像を映し出す。
駅長「一つはギガ粒子砲『デイライト』を使用する作戦です。名づけてデイライト(夜明けの光)作戦」
そのままだ、というツッコミはよした。そんなことを言っている場合ではないからである。ギガ粒子砲『デイライト』は、 数世紀前に造られた、現在でも世界最大出力を誇るビーム砲である。あまりの危険さに封印されてきたが、今は 仕方がない。これしか、方法がないのだ。
エメラルド「でもさ、これって、メインのパーツがなかったんじゃないの?あたし聞いたことあるよ」
駅長「そこで!慧さんたちに頼みがあるのです!あなた達にはそのパーツを回収してほしいのです!!」
そういうことか、といった感じで琥珀は嘆息した。自分達は、そのためにここに呼ばれたのだ。
駅長「回収するパーツとその所在地はモニターを参照して下さい。時の運行はもはやあなた方の手に委ねられたのです」
7人は確信した。今、時間の運命が自分達に握られていることを。
慧「・・・やろう。もう時間がない」
ルーベット「・・・・そうですな!」
トパーズ「これ以上好き勝手させられるか」
アメジスト「そうですわね」
琥珀「テロリストだと・・・?ナメんじゃねぇぞ」
サファイア「うちらを喧嘩相手にするなんてやってくれるじゃないか」
エメラルド「・・・よっしゃ、今から集めるパーツを説明するね!!」
まず、大量の水素を含んだ未知の鉱石が封じ込められている「ハイドロニックカプセル」。
次に超高出力のエネルギーを制御できる「エネルギーカートリッジ」。
そして、光線の機能を極限まで高める「レーザー装置」。
そして、レーザーの原料となる不思議な力を持つ鉱石「オリハルコン」である。
エメラルド「こいつを・・・残り7日以内に集めないといけないんだ!」
サファイア「1週間しかないのっ!?」
トパーズ「それまでの間、敵が何か仕掛けてこないわけがあるまい」
ルーベット「それも考えての上での行動が必要ですな」
琥珀「もうやるしかねぇっ!!」
慧「皆・・・・行こう!!」
慧の言葉に全員がうなづいた。
しかしこのとき、もうすでにそのパーツが置かれているエリアには魔の手が伸びていたのだった・・・・。
そのころ。
時同じくして、線路を走るキバライナーにはチェックメイト・フォーの4人が駅長から送られてきたメールを見て、一部始終を聞き、驚いていた。
そして、怒りと憎悪に満ちた様子で、忌々しげにメールをにらみつける。
ビショップ「まさか、ここまでやるとはね・・・」
ルーク「こいつら、自分たちだけ助かるなんて思ってるんじゃないだろうな。エニグマは下手すれば、自分たちがいた歴史まで吹き飛びかねないんだぜ!?」
クイーン「・・・自分たちがいた歴史がもともとなかったとしたら?」
クイーンが意味深な発言をつぶやく。
クイーン「うちらみたいに、別の世界から時の列車を使ってきたとしたら?」
ルーク「・・・そうか、そうすれば、消えずにすむのか!?」
晶「・・・クイーンの見解があっているかどうかなんて分からないし、そいつらがそこまで考えて行動しているかなんて知ったことではない。まずは、このエニグマを止めるためにデイライトを使うかもしれない。それを復活させるためのパーツを急いで回収するぞ」
晶が真剣な表情でつぶやくと、3人も神妙にうなづいた。
晶「カスが・・・・俺たちの守ってきた時間を・・・壊させなどしないぞ」
1886年6月13日
ドイツ バイエルン地方
慧「さて・・・・」
マシンハミングバードから体を下ろすと、慧は前方を眺めた。
目の前に広がっている光景は、中世のヨーロッパの城としか表現のしようがなかった。
だが間違いなく、ここは極秘裏に時の運行に携わる研究者が城に見せかけて作り上げたレーザー工学研究所である。
慧「まさかこんなところに、こんな時代に隠していたなんて」
サファイア「それだけヤバい研究だから、時代を別々に分け、絶対ありえないような場所を探し出して、そのエリアの時の砂漠の地点に研究所を分けて置いたらしいね」
トパーズ「実に荘厳な風景であるな」
ルーベット「ここにあるのですな。レーザー装置が」
慧「・・・行こう」
そんな様子で城に入り込もうとしている慧たちを城のテラスから見下ろしている一人の少女の姿があった。
青い髪を後ろで短く束ねこみ、フリルのついたかわいらしいリボンとゴスロリドレスを着込んだ小柄な少女だ。一見愛くるしいフランス人形のような少女であった。
陶磁器のような白い肌、愛くるしい大きく開いた丸い青い瞳をくりくりさせて、あどけない笑みを浮かべている。携帯電話を取り出すと、ボタンを押して話し出す。
ベルフェゴール「お兄ちゃん・・・?ベルフェです。あのね、あのね、ベルフェのお城にきましたよ。ばるきりぃ・・・」
携帯電話であどけない舌足らずな口調で話すと、向こうからルシファーの声が聞こえてきた。
ルシファー「そうか。あいつらはお前が保管しているレーザー装置を奪い取りに着たんだろうな。俺たちがデイライトの存在など知らないとでも思っているのかな?まあいいさ。丁重におもてなししてやりな」
ベルフェゴール「はい・・・・ベルフェ・・・・頑張ります」
ルシファー「よしっ、頑張ったら甘いお菓子山ほど買ってやるからよ」
ベルフェゴール「わぁい・・・・嬉しい・・・・お兄ちゃん・・・・だぁいすき・・・」
ルシファー「・・・頑張れよ。ただし、何かあったら絶対俺を呼べ」
ベルフェゴール「はぁい・・・」
ベルフェゴールと呼ばれた少女が嬉しそうに顔中を幸せそうな笑顔を浮かべて電話を切る。
そして、左手には鷹を模した巨大なアーチェリーが握られている。
ベルフェゴール「くすくすくす・・・・ばるきりぃ・・・・あなたはベルフェが倒すの。そして、ベルフェ、お兄ちゃんにいっぱいいっぱいいっぱい抱っこしてもらって・・・お菓子一緒に食べて・・・いっぱいお昼寝して・・・遊ぶの・・・くすくすくす・・・」
ベルフェゴールの笑みがやがて狂的な笑みに変わって見る見るその姿が猛禽類を思わせる鋭い光を放つ目を持ち、ハヤブサのような鋭いカギ爪と美しく広がる虹色の光を帯びた羽を持ったベルフェゴールレジェンドルガの姿へと変わっていく。
きらきらと輝く青い髪と抜ける様に白い肌をもつまるでアンティークドールの様な少女、しかし彼女こそセブンズヘブンの弓兵である「閃光のベルフェゴール」こと「ベルフェゴールレジェンドルガ」であった。
ベルフェゴール「くすくすくす・・・・・」
無邪気なまでに邪悪な魂を秘めた少女がおかしくて仕方ないように笑った。
そんな気配に慧が気づくよしもなく、慧が城内に潜入したのはその数分後であった。
続く
,こんにちは!!
最近ジャンヌダルクの「WILD FANG」や奥井雅美の「WILD SPICE」などの音楽にはまっている鴎であります。
作品を書くときこれを聞いていると、すごく筆が進むし、臨場感のイメージがわきやすくて好きです。
さて、今回は変身なしでしたが次回からはバンバン戦いを繰り広げていきます!!
>烈様
>今回の話はルークさんの見事な相手の気持ちを察する姐さんぶりと、クイーンさんの相手が自分達にとって一番大切な人であろうと間違っていると思うことは間違っていることだとハッキリと言えるところと、大切な仲間との“絆”の大切さと決して諦めずに戦う慧ちゃんの姿が印象的なものであったと思います。
ありがとうございます!!
そういっていただけると、本当に書いててよかったと心から思えます!!
>『クライマックスフォーム』なのですか?
クライマックスの響きがカッコよかったというか・・・その響きに私が弱かったためですね。クライマックス、常に最高潮でハイテンションな慧達にはある意味合っている名前かと思ったのですが。
>それはそうと晶君。今回のことを教訓として、今後は相手の気持ちをよく考えてもう少しわかりやすくことを説明するように努めていくことを忘れないようにしよう。
晶「・・・そんなこと分かってはいるけれど」
どうも晶はそういった人の心を考えたりする思慮深さが足りないようです。しかしこの後、仲間たちに支えられながらもキングとしての非情さと敵に対する恨みと狂気がぶつかり合い、苦労しそうです。
>虹の七色
そういったことは意識していませんでしたが・・・考えてみると面白そうですね。
そういったアイディアも今後どんどん取り入れていきたいですね。
ありがとうございます。
>銀狼様
今回のご指摘、そして、貴重なご意見ありがとうございます。
今回のことは今後ないように気をつけながら作品つくりに取り掛かりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
次回もよろしくお願いいたします。
次回はついにセブンズヘブンの一人、「閃光」の二つ名を持つ光の能力者、ベルフェゴールレジェンドルガとの戦いです!
,#000000,./bg_f.gif,st0416.nas931.ichikawa.nttpc.ne.jp,1
2009年09月20日(日) 14時36分03秒,20090908051457,20090923143603,ZhkyrC54BFKW6,仮面ライダーセレナ第壱拾五話・zwei「小さな私/フリスビーは周りの迷惑にならない所で投げましょう」プチ修正BAN,@PF,,, 前回の仮面ライダーセレナは
目が覚めたら白い天井だった。
何か体が縮んでいた。
どうしよう…。
***
「何がだ何でだどーしてだ!
原因と理由と過程と仕組みを分かり易く百文字以内で説明しろ!!」
“ガンッ!”と、私はタワシとスーパーボールを手に足下のヘルメットを踏みつける。
そのヘルメットからは白衣を着たややヒョロッとした体躯が生えていて、その白衣は全体的にボロボロに成っていた。
何度かヘルメットを踏みつけると、そこからくぐもった声が漏れ出し、側面のディスプレイに絵文字が表示される。
「『暴力反対』ううぅ…ま、まだハッキリとした原因は「良いから話せ」わ、分かった!
分かったからもうタワシとスーパーボールは勘弁してくれぇ!!」
私に踏みつけられているこのヘルメット男は要健一郎、言わずと知れた(?)要研究所の所長だ。
ちなみにコイツの白衣がボロボロなのは、私が両手に持つタワシとスーパーボールで取りお仕置きしたからだ。
何をどうやったかのはヒ・ミ・ツ(はぁと)。
理由は今の私を見て「ロリ音」なんぞと訳の分からないあだ名を付けようとしたから。
同罪が一人いたけど、そいつにもお仕置きしたら、現在精神崩壊し掛かっている。
ちょっとやり過ぎた、反省。
「まあまあ、幾らお父さんをいたぶった所で状況は好転しませんよ。
それで好転するんでしたら幾らでもお手伝いしますけど」
「『Σ (;Д;)』お手伝いって僕をいたぶるのをか!?
ひでぇよ、僕の味方は居ないのか!」
「知るか!」
少し経過
「えーとハフハフ…つまりあの戦いで私の体内のナノマシンが壊れすぎたのとモグモグ…生身の細胞が死にすぎたせいであむあむ…肉体の再生もナノマシンの補充も上手く出来なくなった私の体がもきもき…“現在”のナノマシンと細胞の量で生命を維持出来る状態かむかむ…に私を再構成したむにむに…。
要は私が小さいのはむしむし…“減った”からって事?プハー!」
数分後、私は寝起きでお腹が減っているだろうと巻奈さんがパパッと作ってくれた雑炊(数日ぶりの食事という事で私の胃腸を気遣っての選択らしい)を食べながら、幾つかの質疑応答を交えつつ所長ことアホメットの話を聞いていた。
因みに私が三日も寝ていたらしい事を知った時には、夏休みを無駄に消費してしまった事実に声が出そうになった。
「『(^▽^)』おお、理解が早くて助かるわ、ホント。
つーか食うか喋るかどっちかにしてくれ」
「“カラン”う〜む?筋が通っているようで、所々無理矢理な感じがするけど…。
大体減ったから縮むって…スライムじゃ有るまいし」
答えながらからになった器(小鍋)を巻奈さんに返却する。
そして巻奈さんは洗い物をしてくると行って部屋から出て行った。
「『不明』そこら辺は生命の神秘って事で。
ナノマシンの働きに関しては未だ分かってない部分も多いからね。
ま、ナノマシンは三割、肉体に至っては五割近くの部分が使い物にならなくなってたからねぇ、あの時点で死ななかった方が凄いって感じ?」
縁起でもねぇ…。
体の半分近くが死んでたとか冗談じゃない。
「……戻る見込みは?」
「『(´・ω・`)』分かんない」
「てめっ……!」
「はいはい落ち着いて。
最初は小学校入りたてくらいの背丈でしたけど、今は一廻り以上成長しています。
しばらくすれば戻りますよ、きっと」
「巻奈さん…」
激昂しかけた私をいつの間にか戻って来た巻奈さんが押しとどめる。
まぁ、その内戻れるってんなら落ち着こう。
確かにさっき見せて貰った三日前の私の写真は、幼稚園からようやくピカピカの一年生に成ったよって位の大きさで、今現在の私よりも小さかった。
まぁ、今の私も背の低めな中学生って感じの背丈で、下手したら背の高い小学六年生よりも低いかも知れない、最近のガキ共は妙に発育良いし…(背も、“胸”も)。
ふと思ったけど、私が起きた時の全身の痛みは急激な成長が関係する物だったのかも知れないなぁ。
「で、元に戻るのどれくらい掛かりそうなの?」
「『( ̄ε ̄ )』今までのペースなら早ければ4、5日位かな、遅ければ……分からないけど。
僕の作った機能補助シールを貼っていれば少しは早くなると思うけどね」
「機能補助シール?」
「鷹音ちゃんの中のナノマシンの中枢ユニットの機能を限定的に補うシールですよ。
起きた時おでこに貼って有りませんでしたか?」
「…おでこの?…これかな」
思い当たる事があったので、ポケット手を突っ込んでみた。
そして取り出したのは今朝方額から剥がしたよく分からないシール。
微妙に蒸れて不快だったので、剥がした後丸めてポケットに突っ込んだのだ。
「『(*゚∀゚)』おお、ソレソレ、取り敢えず返してくれ」
「このシールが?」
広げてみると、薄い半透明のシートの中に金色の線が何本か埋め込まれていて、何となく電子回路がイメージされる。
持っててもしょうがないのでアホメットに手渡しておく。
「『(* ̄ー ̄)v』確かに。
あと話す事は……あ、セレナを少しバージョンアップしておいた。
それに新モードの追加と、装着時の身体データの許容誤差もかなり広げておいたから、今の状態でもちゃんと変身出来るよ」
「へぇ…」
説明を聞きながら、横の机に置いてある白い携帯ゲームモドキ――変身ユニット“セレナコア”を見てみる。
『…ブツブツ………マヨ…白い…黄ばんで…ベトベト…。
………や、止めて!私の中に入ってこないでぇ!!
ア゙ッ―――――!!!「てい!“ガスッ”」ハッ!?…』
あ、殴ったら気がついた
『わ、私は何を…?』
「……」
「……」
「『……』……」
重い沈黙。
うーむ、やり過ぎただろうか。さっきお仕置きをしてから殴るまでずっとこんな状態だった。
ブツブツ呟いたかと思ったら突然錯乱したように叫び出す、この繰り返し。
「もしもし?」
『あー酷い目に遭った』
「大丈夫?」
『加害者がそれ言いますか…』
確かに自分でやって置いてなんだけど、まさかAIの癖に精神崩壊起こすなんて思わなんだ。
何でも学習によって精神構造が人間に近付いてきた弊害だとか。
トラウマとか出来ちゃうのかなぁ…。
『酷いですよマスター!貴女があそこまで心ない仕打ちを行うなんて思いませんでした』
「あっはっは、まぁ立ち直ったんだから良かったじゃない、ね?」
『ヒトに精神ブッ壊れるくらいの拷問しておいてその態度は無いんじゃないですか?』
「まさかマヨネーズ如きであそこまでおかしくなるなんて予想外だったんだって。
大体セレナはヒトじゃなくて機械でしょうに」
「『(´C_` )』作った僕が言うのもなんだけど、何故かセレナって自分に不純物が付くと錆びるって先入観持ってるんだよなぁ…。
ちゃんと防水、防錆、耐圧処理を施してあるって言い聞かせても直らないし」
『頭では分かっていても、恐い物は恐いんですよ!』
情けない事を声高に主張するその姿に、私は思わず思った事をそのまま口にしてしまった。
「ヒーローの変身アイテムとしてその発言はダメっぽいと思う…」
「私もそう思います」
「『同意』僕も」
『………』
黙りこくったセレナ。
表情とか分からないけど、落ち込んでるんだろうか。
「『THE・END』ま、取り敢えず話す事はコレで終わり、ホレ」
「あわわ、おっと!」
いきなり放り投げられたセレナを慌てて受け取る。
何かその様子を見た巻奈さんが何故かアホメットを睨んでた。
「じゃあ、もう帰って良いの?」
「『 OK 』ああ、構わないよ。
仕様の変更点は後でセレナに聞いといてくれ」
「りょーかいっと」
もう用はなくなった私は、何故か用意されていた今の私にフィットしたサイズの服を巻奈さんから手渡された後、部屋から出て行った。
***
「『(´-`)y-~~』うーん、思ったよりも簡単に行ったなぁ、もうちょっと不審がると思ったんだけど」
「感づかれていないならそれに越した事はありませんよ。
それより暴走時の記憶が無いらしい事が分かっただけでも良しとしましょう。
洗脳も“今の”鷹音ちゃんには影響が無いようですし」
「『(´・_・`)』まぁ、そうなんだけどね……」
「何か気になる事でも?」
「『(・´з`・)』…いや、ヤッパリいつかは知らないと行けないのかなぁ…ってね」
「……」
「『(-_-)』それを知った時、あの子がどうなるのか…いや、どう言う状況で知る事になるのか、かな」
「……その時、私達はどうするべきなんでしょうか」
「『@ @』ま、言い出しといてなんだけど、成るようにしかならんさ、きっとね」
「そう……ですね」
***
取り敢えず家に戻り、私の部屋の様子を確かめておく。
「うん、別に変わりはないか」
終業式の時に持って行っていた鞄は、机の上に置いてあって、中身も大体記憶通りだった。
変身した時に何処に置いておいたのかイマイチ記憶が無いのだが、巻奈さんが持っていてくれてたらしい。
後でお礼言わないと。
制服が一着無くなっていたのが気になるが、あの日私が着ていたのはどうなったんだろうか…。
「ねぇセレナ、戦ってた時に着てた私の制服どうなったか知らない?」
『私はダメなんかじゃない』
「………」
いかん、さっきとは違うベクトルでおかしくなってる。
つーか何だか妙に打たれ弱くなってないか?
「ねぇ私の制服って…」
『…前回の戦闘時、私は最後に破損してしまいました。
そのせいで服の復元に失敗しています』
えーと、つまり?
「私の制服、なくなっちゃったって事?」
『ええ、まあ』
「ふぅむ…」
まぁポケットとかに入っていた学生証やら財布やら携帯電話やらは、以前の教訓から変身前に抜いておいてあったからそこまで問題じゃない。
制服自体も予備があと二着有るし、まぁいいかという結論に達する。
念のためその内補充しておいた方が良いかもだけどね。
「ま、いっか」
押し入れから座布団を取り出して座り、携帯を操作してメールをチェックしてみる。
(柚乃っちからのが二件、獅堂君からのが一件、マッ○とミス○のメルマガが一件ずつ、架空請求が一件か…)
柚乃っちからのの内の一件と獅堂君からのは、私の安否を気遣う物、そして柚乃っちからのもう一件は、夏休みに何処か行こうと言うお誘いだ。
メルマガに特に変わった所はなく、最後の架空請求に関しては、少し送り主に同情した。
私の携帯にはあの所長が暇つぶしに作った“迷惑メール対策システム”が組み込まれていて、迷惑メールや架空請求・ウイルスが来ると、自動でメールを識別・無力化した上で送り主の素性を人員構成・本名・住所・家族構成・アドレス等まで調べ上げ、研究所のコンピューターに転送される様に成っている。
どう言う仕組みだか、串だとかダミーだとかネカフェを使用しての隠蔽だとかも突破し確実に送り主を探知してしまうと言うから恐ろしい。
因みにこのシステムはアングラでネット販売されていて、研究所の収入源の一つになっているのだとか。
その内プライバシー関係で捕まるんじゃ無いかしらん、あの金魚鉢頭。
(そんな事はどうでも良いね)
益体もない思考を中断し架空請求を消去、柚乃っちと獅堂君にそれぞれお返しのメールを送っておく。
そして座布団を枕にして寝っ転がると、今日の予定を立ててみる事にした。
現在朝の九時、結構日差しは強そうで、窓から見える青空には雲がポツリポツリと漂っている。
只でさえ夏休みを三日も無駄にしているのだ、我慢はしたくない。
「取り敢えず出掛けてみようかな…。
ねぇセレナ、何処が良いかな?」
『いや私に振られても…というか今の状態で外に出て大丈夫なんですか?
知り合いに出合ったりでもしたら…』
「……えーと?」
『いや、今のマスター縮んでますよね?』
「?………………あ」
『「あ」ってアンタ…。
マスターの頭髪と瞳は目立ちますからね、知っている人には縮んでいても関連を疑われるでしょう』
「う…うん」
確かに銀髪銀眼なんて結構珍しい。
髪だけならまだしも、銀色の瞳何て私以外に見た事も聞いた事もない。
『そんな時どう説明するのですか?』
「え、えーと……親戚…とか?」
本人だ、と主張するのも手かも知れないけれど、それで事情を説明したらその場で、黄色い救急車を呼ばれるかも知れない。
どうも私のような症状は前例がないらしいし。
『マスターの髪と眼の色は遺伝情報とは殆ど関係有りません』
「え、そうなの?」
『(気付いてなかったのですか…)とにかく血縁だからと言って同じになる訳じゃありませんよ。
特にその瞳は他に無い不思議な色合いですし。
まぁ、そんな事知らない人なら信じるかも知れませんけど』
「むう…」
ならどうしよう、良い天気なのに閉じこもってるのもアレだし。
……そうだ。
「ねぇ、髪だけならそれなりに珍しいで済むんだよね?」
『え?ええ、そうですね、それはそうかも知れません』
「ならさ、カラコン入れてけばどうかな?」
『ふむ、悪くないかも知れません』
「だよね!なら早速巻奈さん達に相談を…」
『少し待って下さい、何色を借りるつもりですか?』
「? 普通に黒だけど」
『マスターは結構色白ですし、髪もその色ですから、色素が薄いって事にして白っぽい色を選んだ方が良いと思います』
「う〜ん、成る程ね、あんまり変わらない気もするけど、その方向で」
『(カラーコンタクトを持っているか、と言う懸念は無いのですね)』
する事も決まったので一度研究所に戻る事にする。
そうして立ち上がった所で待ったを掛けるようにセレナが声を掛けてきた。
『あ、私も連れて行って下さい』
「え〜」
『「え〜」って、何か問題でも?』
「いや、外でセレナと話してたら私怪しい人じゃん。
大体何で連れてかなきゃ行けないのさ」
『良いですか?
もし、今の状態でキメラが出現してしまったら、その足で現場に向かうしか有りません』
「え、でも……」
この前みたいに巻奈さんにマシンアクセラー持ってきて貰えば、と言おうとしてはたと気付いた。
「あー今の体格じゃアクセラー乗れないわ、私」
体格が変われば乗り心地や操作感も変わる。
ようやく慣れてきたばかりの私じゃ、その変化に対応出来ずに事故る事請け合いだ。
大体今の外見でバイクに乗れば、初めて乗った時以上に痛い視線を集めてしまうに違いない。
『ええ、その通りです。
でも直ぐに変身出来れば移動力も上がりますし、ストレイトモードならアクセラー並みの速度が出せます』
「はぁ、そうだねぇ」
『会話に関しては出来るだけ控えますし、用事があれば携帯を通して伝えますから』
「……分ぁかった」
学校に行く訳でも無し、そこまで拒否する理由もないので、私は持ち物にセレナを加える事にして、お出かけ用の鞄に持ち物を入れ始めたのだった
***
「トゥばさ〜を〜広げて〜トゥ〜び〜たトゥんだぁ〜トゥメはきぃっトゥー現実(かな)〜うぅん〜だ〜♪」
現在午前11時13分、所長に借りた眼に優しい赤いカラーコンタクトを装着した私は、普段は歌わないような歌を口ずさみつつ歩いていた。
何だか体が軽くて気分が良いせいでテンションが上がってしまっているのだ。
夏休みだというのも手伝っているのかも知れない。
「諦めない力を〜トゥ〜ば〜さに〜変えてぇ〜今羽ばたこぉ〜ドゥリ〜ム・トゥ…ん?」
ふとうっすらとホットケーキに似た甘いにおいを感じた。
前方に看板を掲げたワゴン車が見えたので、歌を中断してよく見てみると、どうやら移動式のクレープ屋さんらしい。
これはうら若き乙女として突撃しない訳には行くまいて!
「すっいませーん!くっださーいな!」
叫びながらワゴン車にダッシュし、直前で急ブレーキを掛けつつ鞄の中からお財布を取り出した。
その無駄のない流れに、我ながら惚れ惚れする。
「っ…はい、どれに致しましょうか?」
店員のお姉さんは私を見て僅かに動揺しながらも、直ぐに営業スマイルを再構築して対応してきた。
お姉さんを驚かせてしまったようだ、反省。
そんな謙虚な気持ちになりながらメニューを見る。
「えーと……」
メニューにはフルーツミックス、マンゴー、ストロベリー、ピーチ、プリン、マロン、ケーキやアイスなんてものある。
チキンとかサラダなんていうデザートとは言い切れなさそうなのも。
でも私的にクレープの定番は…
「チョコバナナ下さい、トッピングはストロベリーアイスで!」
「ハイ、少しお待ち下さいね」
と
“毎日毎日ボクらは鉄板の、上で焼かれて、イヤんなっちゃうよ”
「ん?」
お姉さんがクレープを作り始めた直後に鞄から鳴り響く歌。
こんな歌は電話にもメールにも設定していないので、恐らくセレナからの着信だと思うが、それにしては音の選択が大人しすぎる気がする。
イヤ、十分変だけどね。
取り敢えず携帯を取り出してチェックすると、案の定メールが届いていた。
*
From:セレナ
件名:少し黙れ
天下の往来で大きな声でアホな歌を歌わないで下さい。
恥ずかしすぎます。
歌わないで下さい、むしろ喋らないで下さい、出来れば息もしないでください。
*
「………」
無言で返信のメールを送った。
文面は――
「[うるせぇ、またマヨに漬けるぞ] 送信…と」
『ッ!?』
送った瞬間、鞄の中からセレナが小さく呻いたのが聞こえた気がした。
「お待たせしました、チョコバナナですよ」
「あ、ありがとうございます!」
一矢報いた事にほくそ笑んでいた私は、店員のお姉さんの声で我に返る。
「440円になります」
「えーと、これで」
「丁度お預かりします、零さないように気を付けてね」
「はい!」
私は少し背伸びをしながらお金を払い、お姉さんからクレープとレシートとウェットティッシュを受け取った。
さりげなく子供扱いされた気がするが、外見が外見なので文句は言わない。
「う〜ん、美味しそう!て言うかクレープ食べるの久しぶりだなぁ」
包装紙越しに伝わるほんのりした温かさ、バナナやチョコの甘い匂い、焼き立ての生地の香ばしい香りが食欲をそそる。
「と言う訳でいざ!はむっ…ちべたっ!」
思い切りかぶりついたらトッピングのストロベリーアイスに逆襲された…
(侮り難し、ストロベリーアイス…っ!)
そうして私は駅前商店街に向かって歩きながら、クレープを食べ始めた。
***
「ふ〜おいしかった♪」
数分後、私は近くに有った公園のベンチに座っていた。
クレープはもう完全に食べきり、零れて手に付いた溶けたアイスやチョコレート、生クリームまで舐め取って、最後にウェットティッシュで手を拭いている所だ。
まぁ、後で公園の水道で改めて手を洗うんだけれども。
「良い天気だなぁ…」
ふとベンチに座りながら呟いた。
明日からしばらく雨だって予報で言ってたけど、陽光が照りつける空は青く、白い雲がぽつぽつ浮かんで居るのみで、そんな気配は微塵も感じられない。
「………」
そんな私の前方では、今の私よりも更に小さな子供達が遊具で遊んでいるのが見える。
小学校も夏休みなんだろうか。
だったら、あの子達はどうやって夏休みを満喫するのかな。
分からない、私には小さい頃の思い出なんて無い。
今の私は何歳くらいの私の姿なんだろうか…?
(私にも…あんな時代があったのかなぁ…」
と、途中から声に出していた事に気付いて思わず口に触れてしまう。
おかしいな、ついこの間まで自分の過去を気にした事なんて無かったのに、最近は少しだけ自分の過去を気にしてしまう様に成った気がする。
そう、丁度セレナで変身しはじめた辺りからだ。
今の私がおかしいのか、今までの私がおかしかったのか…。
「う〜ん…うん?」
悩み初めた私の目の前の遊具では、小さな女の子と、その子によく似た女の子が一緒に遊んでいた。
(姉妹かな?)
その姉妹っぽい子達は、とても仲が良さそうに見える。
妹らしき子が姉らしき子について行き、姉もそれに応えて、二人とも楽しそうだ。
(微笑ましい……あれ、私…何で)
気がつくと、知らず知らずの内に胸が苦しくなって、目頭も熱くなってきていた。
「〜〜〜〜〜〜っ」
涙が零れそうになるのを誤魔化す様に目をぐしぐしと擦っていると、少しずつだが治まってくる。
「っふぃ〜…一体何だったんだ、今の…?」
遊んでいる子供たちを見ていたら、急に胸が締め付けられて泣きたくなってきた。
あの妬ましい様な胸に穴が開いてしまったかのような感情は……寂しい?
……………。
いや、でも私は自分で言うのもなんだけど、それなりに満たされた生活を送っている筈だ。
巻奈さんを初めとして皆優しいし、最近は苛めも無ければ陰口も聞かない。
じゃあ無くした記憶関係かとも思えるけど、目覚めてからこの二年程、何を見ても記憶が刺激される事なんて無かった。
それが急に気になりだすなんて、やっぱり私はどこか変わってきているのかもしれない。
どうせ答えてもらえないだろうと思いつつセレナに聞いてみようとしたその時――
「ねぇ、セレn「あ、危ない!!」へ?…“バキィ”ごはぁ!!?」
声に反応して顔を上げた瞬間、視界がクリアブルーに埋め尽くされ、直後に眉間に何か硬い物がぶち当たったのだった。
(ほ、星が…)
だが、悲劇はそこで終わらない。
「ワンッ!」
「うく? ひ…わぎゃああぁぁぁっ!!“ゴツッ”ぴっ!?」
仰け反りから何とか復帰したと思ったら、今度は犬が私目掛けて突っ込んできた。
膝と顔面と頭を踏みつけられ、肌に浅く食い込んだ爪と、たまたま踏みつけられた目の痛みに思わず悲鳴を上げる私。
おまけに髪を乱された上に砂が掛かって、止めとばかりに犬の重みで下がった頭がベンチの背もたれにぶつかった。
「う…ううぅぅぅー……目が、目がぁ…」
何で私がこんな目に…と、頭を抱えながら涙目で唸っていたら、飼い主らしき女の子がこっちに向かって走ってきた。
「そこの白い子、大丈夫!?ああこら、チャッピー!」
「ワン!」
その子の足元に、クリアブルーのフリスビーを加えた中型犬がじゃれついている。
「だ、大丈夫ですぅ…」
「あ、良かっ…ってボロボロじゃないの!ちっとも大丈夫そうに見えないよ!?」
「ハッハッハ、ワォン!」
女の子はホッと息をついたと思ったら、私の姿を見てまた慌て出した。
むぅ、そんなに酷い有様なんだろうか?
そして犬は相変わらず褒めて褒めてと言わんばかりに、尻尾を振ってじゃれ付いている。
この駄犬め…っ!
「あー、良いです、確かに少し痛いけど、それを除けば少し汚れただけですから」
そう言って立ち上がり、バッグを持って公衆トイレ(“便所”という単語を使うのは抵抗があった、乙女的に)に向う。
「あ、待って、何かお詫びを…」
後から女の子が何か言ってきた気がしたが、私は気にせずトイレに駆け込んだ。
***
――シャァァァァァァァ…
(はぁ…酷い目に遭ったぁ…)
あの飼い主に悪気があった訳じゃ無いんだろうけど、他に人が居る公園でフリスビーのコントロールを見すらないで欲しいモンだ。
「ん〜おでこは…だいじょぶか」
鏡を見ておでこをチェックする。
流石改造人間だけ有って、フリスビーが直撃しても傷もなければ赤くなっても居ない。
髪が滅茶苦茶に成っているだけだ。
まぁ、たかが女の子の投げたプラスチックの円盤如きで、そこまで酷い事に成るはずもないか。
後頭部もコブは出来ていないようだった。
水に濡らした手で軽く髪を整えつつ、顔に傷がないかまじまじと見てみる。
あちこち汚れて、少しだけ血の跡も付いているけど、今は傷もない。
取り敢えず鞄からタオルを出して、それを濡らして顔を拭く事にした。
「ん…しょっ……む……っふぅー、コレで良いかな?」
再度鏡チェック。
うん、自分で言うのも何だけど綺麗になった。
流石に髪は適当に梳いただけじゃ完璧とは言い難いけど、別にそこまで気合いを入れておめかししてる訳じゃ無いし及第点かな。
――シャァァァァァァァ…
(あ、水出しっぱなし)
気付いて蛇口を閉めようとした時、ふと鏡の中の私の顔が眼に入った。
「……」
――シャァァァァ……――ァァァ…――………
ふと、水の音が聞こえなくなった。
視界も、鏡に映った私の顔以外、何も分からなくなる。
「…………」
私の、顔
正確には(多分)過去の私の、顔
過去の私
知らない私
無くした私
知っていた筈の私
この顔(過去)を持っていた時、私はどんな―――
「……!…うぁ!?」
――シャァァァァァァァ…
音が戻る。
ボンヤリと何かが浮かんできそうだった所で、一瞬だけ私と同じ顔――でも黒い瞳を持った――の女の子のイメージが浮かんで、何かに弾かれるように私の思考は中断された。
「く、うぅぅ…うぷっ!」
いきなり頭を叩き直されたショックか、どうにも気持ちが悪い。
体験した事はないけど、二日酔いってこんな感じなんだろうか。
だがそんな事より気になる事がある。
「い、今のは…?」
危うくへたり込みそうになった足に活を送りながら、今の現象について考え
“ピリリリリリリッ!”
「うぇ!?」
――ようとした所で鞄の中から味気ない着信音が鳴り響いた。
“ピリリリリリリッ!ピリリリリリリッ!”
「は、はわわわわ!」
慌てて鞄から携帯を取り出して、電話に出る。
「はい、もしもし?」
『マスター、キメラが出ました』
「はい?」
『場所は携帯にメールで送ったので、それを参照して下さい』
「あ?ちょ“プツッ”…おい」
話すだけ話して一方的に切りおった。
「ええい、もう!」
色々言いたい事は有るけど、今はそんな場合じゃ無い。
文句を堪えて新着メールに添付してある地図を開く。
「えーと…げ、港側か…少し遠いな」
場所は中心街の中の港寄り位置で、普通に行ったら三十分近く掛かりそうだ。
徒歩五分位が理想だったんだけどな…。
「ああ〜折角の夏休みだってのにぃ!!」
『はっはっは、きっとマスターはそんな星の下に生まれたんですよ』
「畜生め!!」
私は毒づいて、トイレの入ってきた反対側から駆けだしながら鞄から取り出したセレナを巻いて、中心のリングをオレンジ色の部分が上に来るように回した。
「変身!!」
『マテリアライズ』
そう叫び、バックルの装飾をスライドさせると、中心の珠からオレンジの光りが溢れ出し、周りの空気を吸い込み始める。
『ストレイトモード』
光が弾けた時には、私はいつもの白いアーマーじゃなくて所々にオレンジのラインの入った何処か騎士を思わせる“仮面ライダーセレナ・ストレイトモード”の装甲を装着していた。
「セレナ!」
『ルートを表示します。後は好きにして下さい』
「ありがと!じゃ、飛ばすよ!!」
そうして一頻り気合いを入れると、バイザーにルートの載った地図が表示されるのを確認、私は脚部ローラーをフル回転させて公園の裏から飛び出した。
***
そして――
「……あ…あの人…」
仮面ライダーセレナが公園から出て行った直ぐ後、彼女を追う様に公園から出て行った人物がいた事に、当然ながら彼女達は気付いていなかった。
To be continued…
,えー一ヶ月以上ぶりの投稿です。
生きてます、死んでません。
まぁ遅れた理由の三分の一くらいは、「ガン×ソード」に嵌っていたからですがw
あの伏線のちりばめ方と、回収の仕方には、身を見張る物が有ります。
いつの間にやらディケイドが終わって、Wが始まりました。
時が経つのは早いなぁ…。
まぁディケイドの評価は、完結編次第ですね。
次回は戦闘なので、少しは書きやすいかな
最初期は、この位の長さを2,3日で書いてたんだけどなぁ…
あと、他の人の作品にレスを書いたりしたいのですが、何しろクロス元を殆ど読んでなかったりして、下手に書くとKYに成りそうだった故に自粛してました
申し訳ない
何か卑屈っぽくなってしまいましたが、レス返しです。
失礼ですが、今回は少し短めに
>YPさん
>やっぱそんなオチですよネー、HAHAHAHA。
>あれ、目から変な汁が……?
ええと、コレはこう言う話だと思って、涙を堪えて貰うしか…。
>やっぱし和解はムリかぁ。
実は自分的にも難しい所です。
表と裏の鷹音の正体は、それぞれ決まっていますが、その結末は結構悩んでます。
どうやっても微妙にご都合主義が入りそうで…(汗
>ネタキャラ
やっぱり、強いのに小物だったり、奇行を繰り返したりするからじゃないでしょうかね?w
>冷静に考えると、前々回からまるで解決してないっていうw
>ロリ音ちゃんがセレナに変身したら、ロリセレナになるんだろうか?
もうしばらく解決しません(爆
>ぴあのさん
>蟹
いや、おもしろがって貰えて何よりですw
書いた甲斐がありました。
>まぁ確かにその若さで隊長なんて役を務めにゃならんので、ナメられんようにもキャラを作っとく必要も在りますよね。納得。
因みに彼、部下からは割とサディスト扱いさてれてますw
えーと、気に入らない所があったら、見放すのではなく“そんな書き方、修正してやる!”位に意見して貰いたいです。
無視されるのは…辛いよぅ
ではこの辺で
PS:うぎゃぁぁぁぁ――――ー!!?
予備が私服に成ってたぁ!!
こ、この誤字は洒落になんねぇ…。
恥ずかしすぎるぅ!
YPさんに言われて初めて気付いたよ(涙)
たぶんseifukuって入力したつもりがeが抜けてsifukuに成ってたんだな。
修正しておきました。
えーと、誤解無き様補足しておきますと(と言うかミスのフォロー)、鷹音は私服は普通に何着も持ってます。
とはいえ、バリエーションはかなり少なめで、夏服冬服合わせて10着ちょいって程ですが。
つーかマジ恥ずかすぃ…。
ああ、誤字って一目で分かる誤字はまだマシだって分かった今日この頃。
作者以外には誤字と分からず、読者に意味が変わって伝わる誤字の方が本当に恐ろしいのだな。,#000000,,i60-46-202-191.s11.a021.ap.plala.or.jp,1
2009年09月06日(日) 15時19分04秒,20090904221939,20090909151904,XyYk4G/wZFtxw, 仮面ライダーintertwine 第1章第34話「それぞれの夜」,オリジナルライダー・リレー企画,,,執筆者:岡島
21:15 路上
一台の車が夜の街を走っていた。運転者は蒼崎佐由理、助手席には黒招霧恵の姿があった。
「すいません、夕食までごちそうになった上、車で送ってくれて」
と申し訳なさそうな霧恵に対し佐由理は明るく気さくな様子で
「いいの、いいの」
と答える
夜も遅く加えて最近、物騒だということで佐由理が霧恵を家まで車で送る事となった。
そして佐由理は
「それより、聞きたいことがあるんだけど」
「はい?」
「これは推測だけど、あなたと志保ちゃんは怪物に襲われて、その怪物を
志保ちゃんが変身して倒したんじゃないの?」
「!」
佐由理の言葉に霧恵は驚愕の表情を見せる。
「その様子だと、どうやら正解のようね」
霧恵は申し訳なさそうに答える
「すいません、隠していたわけじゃ・・・・・・・」
「わかってるわ、説明しにくかったんでしょ、私も昔、似たようなことがあったから」
「・・・・・・・・」
この後、二人の間にしばしの沈黙があり、霧恵がそれを破るように
「あの・・・・・どうしてわかったんですか?」
「状況と、後は感よ。特に『志保ちゃんの変身』に関してはね」
「蒼崎・・・・・」
と言いかけて、霧恵は佐由理も「蒼崎さん」であることに気づき、名前のほうで呼ぶ
「志保さんは一体?もしかして仮面ライダー・・・・」
霧恵の言葉に佐由理は何かを想うように
「仮面ライダーか・・・・・・・・・確かにね・・・・・・・・」
と言ったのち
「でも志保ちゃんは何も知らない。自分の身に何が起こっているかもね」
「そうなんですか・・・・・」
この後、二人の間に幾つかの会話が交わされ、やがて車は霧恵の家に着いた
霧恵は車を降り
「今日は本当ありがとうございました」
と深々と頭を下げた。そして佐由里は
「じゃあね」
と手を振りながら別れの挨拶をし、車でその場から立ち去った
同時刻 蒼崎邸
皆が帰った後、私と幹也は夕飯の後片付けをしていた。私がお皿を洗っていると
隣で同じようにお皿を洗っている幹也が唐突に言った
「黒招さんの事だけどさ、なんか『出来すぎた偶然』ってやつだよね。街で偶然会った子が転校生で、同じクラスで席も隣同志なんて」
「あと、図書室のアルバイトも、確かに出来すぎてるなとは思ったけどね」
「まあ出来すぎていても偶然だと思うよ。でも物語だったらそういう出会いを皮切りに
劇的な展開があったりするんだよね。」
「でも、それは物語の世界でしょ」
「事実は小説よりも奇なりとも言うからね。姉さんもこれから気をつけたほうがいいよ。」
「そう?」
「現にとんでもない事があったんだろ。他人に説明しにくいほどのさ」
確かに、幹也の言うとおり、私は怪物と出くわした。最悪の場合、今ここには居ないかもしれない。
でも、どうして私は生きてるんだろう?あの時、私は怪物に殺されそうになっていた。
あの状況からどうやって助かったのか。まあ黒招さんに聞けばわかることかもしれない。
でも何があったにしても・・・・・・
「姉さん?」
幹也が心配そうに声をかける。
「なに?」
「いや、なんか様子が変だったからさ」
「何でもないわよ」
「そう・・・・・・・・・」
その時、私は悔しくて仕方なかった。何が起こったにせよ結果として私たちは助かった
でも私は黒招さんを助けることは出来なかった。それどころか怪物に襲われて、殺されかけた
結局、私は無力だったのだ。
(こんなんじゃ、正義の味方なんて・・・・・)
同時刻、ラビリンス本拠地、首領の部屋
「フェイト・・・・・・・・・・」
部屋で首領はパソコンのモニターに映るフェイトの姿を見ながら何かを想うように呟き
しばしの間、モニターを見つめた後
「これも、運命なのかな・・・・・」
と呟き、さらに少しの間、モニターを見つめながら沈黙していたが、突如、何かを思い立ったように
「フロスト、私だ。神羅月菜についてだけど・・・・・・・・」
フロストに連絡を取りある命令をだす、そしてそれが終わると、別の場所に連絡を取り始める。
「・・・・じゃあ頼むわ」
連絡を取り終えると
(さてと、そろそろ彼女にお灸を据えに行くか・・・・・)
そして彼女は部屋から出て行った。
21:30 蒼崎レーシング
佐由里は霧恵を家に送った後、寄り道せずまっすぐに自宅兼店舗である
オートバイショップ「蒼崎レーシング」に戻った。家に着くと
真剣な面持ちですぐにどこかに電話をかけ始めた。
「携帯は圏外か」
すると今度は別の番号にかける。受話器からは留守電のアナウンスが流れる
佐由里は、留守電にメッセージを吹き込んだ。
23:00 雑居ビル
13号の探索は、13号が深手を負っている可能性があり、当分被害が出ないであろうと思われるのと
加えて夜も遅いということもあり22時をもって、打ち切られ、
エージェントの多くは支部に引き上げていた。
その支部では、回収された13号の腕の鑑定が行われ、その結果を含めた報告がアリシアにもたらされた。
以下は、アリシアと、報告に来た職員との会話である。
「・・・・・については以上です。次に13号の腕についてですが、切り口から
13号のものではない微量のエネルギー反応を検出しました。
それをデータベースに照合したところ・・・・・・・・」
職員は、一枚の紙を取り出す。
「この武器のものと一致しました」
紙には二本の剣とそのデータが載っていた
それを見たアリシアは目をわずかであるが見開く
「ただ、切り口の形状が合わないんです。データを見る限りこの武器では、どうやっても同じ切り口になりません」
と職員は困った顔をしているが、アリシアは表情を変えず
「でも、エネルギーは一致した」
「はい、ですが切り口が・・・・・」
「切り口が合わないのは形が違うからよ。これはその武器のものじゃない、でも無関係でもない」
「はぁ・・・・・・・・・」
職員はわけがわからないといった様子だ。
「データをよく読みなさい」
とアリシアは言う。職員はデータに目を通し、最後に書かれてある武器の出自についての部分に目を通した
「これは・・・・・・・」
職員は驚きの表情をみせる。アリシアは落ち着いた様子で
「可能性としては、13号の腕を切り落としたのは・・・・・・・・・・」
その後、アリシアがいった言葉に対し、
「そんな、まさか・・・・・・・・・・」
彼女の言葉は職員を更に驚かせた。
22:20 ラビリンス本拠地 懲罰室
ここは、問題を起こした者に対し罰を与えるための部屋である。なお罰は首領自らが下す。
そして、部屋には、その首領(なお仮面は外している)と
「すいません、許して・・・・・・」
今にも泣きそうな顔をしたフレイムの姿があった
なおこの部屋を使うほどの問題を起こすものはほとんどおらず。フレイムはこの部屋の、
ただ一人常連がだった。
「あなた、自分が何をしたのかわかっている?」
と首領は問う。その口調は穏やかであるが、雰囲気は恐ろしさを醸し出す。
「首領の許可もなく勝手に突っ走って・・・・・・・・・でも・・・・」
「何?」
「あ、あの時は、そうしなきゃ・・・・・だって、急ぎの依頼でしたし・・・・・」
すると、首領は先ほどと口調を変えずに言った。
「実はね、風瀬華枝は、既に私たちの監視下にあったの」
「えっ、でもどうして・・・・・・・」
「彼女はMRDよ。ちなみに、あなたが依頼を受け取ったと思われる時間には彼女の素性は既につかんでいた」
「!」
この時、自分が犯した本当の過ちが何であるか気づいた。
「わかったようね。あなたが依頼を伝えていれば、他の競合相手よりも早く達成できる状況にあったの」
「・・・・・・・・・・」
もうフレイムには弁解の用地はなかった。
「まあ今日は、いい事があったから、壊れたノーハーツについては許してあげる。でも」
次の瞬間、フレイムの手足に黒いロープのようなものが巻きつく。
「ひっ!」
そして、首領はゆっくりとした足取りで、彼女に近づきながら
「お仕置きはいつも通り行うけどね」
この後、これまで幾度となく行われてきたであろうフレイムに対するお仕置きが執行された。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
懲罰室から響くフレイムの悲鳴、彼女がいかなるお仕置きを受けているかは
皆様のご想像にお任せする。
「ふう」
しばらくして部屋から首領(仮面は付けている)が出てきた。外にはローレライの姿があり
「終わりましたか」
と声をかける。
「まあ、今日はこれくらいでいいでしょ」
と首領は答える
そして部屋の中ではフレイムが地面に横たわり、震えながら
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・・・・・」
と、うわ言のように言っていた。
「まったく彼女も、懲りないですね。」
とローレライはあきれた様子で言う。
首領は
「普段は問題ばかりだけど、やる時はやってくれる。」
「確かに、大きな作戦だと、彼女は大活躍ですからね」
懲罰室にフレイムを残したまま、二人はその場から立ち去り、首領の部屋へと向かう。
その途中、何かを思い出したようにローレライが言う
「風瀬華枝の事ですが、なぜあなたは彼女の事が、気になったんですか?
『死神』の事だけじゃないような気がするのですが」
すると、首領はため息交じりの声で
「特に深い理由はないわ。確か七月ごろだっけ、彼女が行方不明になったのは」
「そんな事がありましたね。それが何か?」
「ニュースで事件を知った時、ふとこんな事を想像したの、私たちと同じような組織が
彼女を実験体にする為にさらったんじゃないかってね」
それは、報道番組で事件を知った無関係な人間が、あれこれとめぐらす想像のようなものであり、
時が経つにつれ、その事を考えることはなくなり、首領も今日まで忘れていた。
「彼女がMRDのリストに載った時、その事を思い出してね。それで気になったの」
「そうですか」
「まあ、確証は全くなかったから『死神』が現れなければ、あんな命令は出さなかったでしょうね」
と言ったのち、
「それより、第一次調査は、ここまでにして、第二次に移りましょう」
「では、『インビジブル』を投入するんですね」
「いいえ、まだよ」
「えっ?」
ローレライは少々、驚いた様子を見せる。
「神羅月菜にもう少し、働いてもらうわ」
「役に立つでしょうか。随分と深手を負ったみたいですし、彼女はもう」
心配そうにいうと
「大丈夫、手は考えてあるわ」
そして、首領は仮面の下で邪悪な笑みを浮かべた。
(さて蒼崎志保、いや新たなフェイト、最初の試練をどう乗り切る?)
,
,#000000,./bg_c.gif,p5019-ipad12wakayama.wakayama.ocn.ne.jp,1
2009年09月02日(水) 00時28分08秒,20090902002808,20090905002808,WjXPdVL6m7OLI,仮面ライダーintertwine 第1章第33話「破滅の夜は終わらない」,オリジナルライダー・リレー企画,,,
作:プラスマイナス
物語が始まる8ヶ月前。
20××年1月1日
新年あけましておめでとうございます。
この日、太平洋上のとある無人島で、ある事件が起こった。
“一ノ宮財閥”の私設軍隊が、同じく財閥の所有する無人島を爆撃したのだ。
爆撃は数十分間のみ行われたが、“一ノ宮財閥”の私設軍隊の大爆撃を受けた島は完全に焼け野原となり、地形が大きく変化してしまうほどの爪痕を残した。
この爆撃について、一般には『軍事演習』とされている。
しかし、これを不審に思った者たちも多く存在した。
“騎士団”や“G”を含めた多くの組織がこの事件の調査に乗り出し、爆撃された無人島に秘密裏に潜入し徹底的に調べ上げた。
が、破壊しつくされた島からは何も発見することはできなかった。
それもそのはず。“一ノ宮財閥”は島の爆撃だけでなく、その後現場に残っていたと思われる証拠もすべて処理していたのだ。
さらに“一ノ宮財閥”の内部に潜入する者たちもいた。
謎多き“一ノ宮財閥”に潜入することは、相当な危険を伴う任務でもある。
そしてそれは現実となる。
潜入した者は全員、不可解な死を遂げた。
一部では“一ノ宮財閥”の暗部“七つの大罪”の関与が噂されたが、結局のところそれを実証するだけの証拠も無く、どの組織も黙って引き下がるより他無かった。
結果、この事件は闇に葬られた。
後に『一ノ宮事件』と名付けられるこの出来事が、一体何を意味するのか。
それが明かされたのは、もう少し先の未来。世界の命運を左右する大事件の最中だった。
PM.19:55 場所不明
そこがどこかはワカラナイ。
そこは窓や扉などが一切無いが、かなりのスペースを持つ空間である。
そこには電灯などはないが、不思議と明るく同時に薄暗い。
そこには膨大な数の資料とモニターがあり、いくつかの場所に乱雑に置かれている。
広いが狭い。明るいが暗い。汚いが綺麗。
そんな矛盾だらけの場所。
それが“一ノ宮財閥”のトップである一ノ宮薫子の城であった。
その空間の中心にぽつんと置かれた豪勢な椅子と机。
机の上にはこれまた高価かつ高性能そうなパソコンと書類が置かれており、世界でも随一の権力を持つ者が座る椅子に腰掛けるのは、一人の少女。
その少女は整った顔立ちの美少女であり、育ちの良さを感じさせながらもどこか不気味な雰囲気も感じさせる独特の魅力を放っている。
彼女を知る者はこう語った。
―例えるなら“妖花”。見る者を惹き付ける魅力と触れる者に死を齎す魔力を兼ね備えた、世界一の“妖花”。それが一ノ宮 薫子である。
「ふふふ…」
妖花が微笑む。その目が見るのは二枚の書類。
その書類には、二人の女性について記されていた。
「ミシェル・フェオニールにアリシア・ステイト。“騎士団”と“G”は最強と最高の駒を用意してきたみたいね。うふふ…」
薫子が再び微笑む。その表情はゲームを楽しむ子供のように無邪気だ。
そのまま二人の書類を適当に放ると、別の書類二枚を手に取る。
今度はラビリンスとアトランティカに関する書類だった。
「ふーん…今回は依頼というよりも自分たちの目的の為に動いているみたいねぇ…」
膨大な字数の書類をチラリと見ただけで、薫子は全文を理解してみせた。
驚くべき才能だが、これは彼女が内容に関心が無いことを意味している。
それを示すように、手に取って僅か数秒で書類を放った。
次の書類を手に取ろうとするが、何かを思い出したようにその手が止まる。
そしてそのまま、あるモニターに目を向けた。
そのモニターには、病室で治療を受ける月宮刹那とそれを見守る二人の女性の姿が映し出されている。
それを見ながら薫子は机に頬杖をつき、珍しく呆れたような表情を見せる。
「はぁ…私の救世主様はどうして言う事を聞いてくれないのかしら?」
薫子は席を立ち、演劇で踊る舞台女優のようにクルクルと回る。
「ああ…世界の危機。それを救ってくださる救世主様。私の救世主様…」
誰が見ているわけでもないのに、大げさな振る舞いをしながら薫子は語り続ける。
「世界を救うのは“騎士団”でも“G”でもない。私の救世主様、月宮 刹那。貴方が私の、即ち世界の救世主…」
薫子は回るのをやめ、天を仰ぐように言う。
「貴方が救うのはこの世界。そして世界とは私そのもの。だから“騎士団”も“G”もみんな邪魔。その為に戦う私の盾そして剣。その名は大罪、“七つの大罪”…」
同時に宙を舞う七枚の書類。そこに記される七人。
“七つの大罪”。それは一ノ宮財閥の中でも特に闇の中にある、薫子直属の暗部組織。
数多の組織の力でもその実体を探れず、逆に多くの被害を被っているほどである。
モニターに映る病室の二人。刹那を見守るこの二人も“七つの大罪”の一員であった。
謎多き夜はまだまだ長い。
PM.20:00 一ノ宮財閥傘下の病院
裕輔が手配した医療班に預けられた刹那が運びこまれたのは、一ノ宮財閥の傘下である病院だった。
この街にはもうひとつSB社の病院施設が存在したが、当然こちらが選ばれる。
薫子は傷付いた刹那をSB社に預けたりはしない。必ず自分の眼の届く場所に置いておく。
刹那は基本的に自分勝手に行動するので、今だけでも檻の中に入れておこうというのだ。
刹那に用意されたのは、この病院で最も高い個室。普通ならば高名な政治家などが使用するほどの高級病室である。
当然、一般の病室とは比べ物にならないほど豪華な個室で、高級ホテルのスイートルームが霞んで見えるほどだ。
その病室のベッドで刹那は眠っている。治療はこの病院で最高のスタッフが行い、完璧とも思える処置を施した。
今のところ意識は回復していないが、じき目を覚ますだろう。
「……………」
小さな寝息をたてながら眠り続ける刹那。
医者の話では、怪我以外にも刹那の身体には相当な疲労が溜まっていたらしく、彼女が連日連夜に亘って“カンケル”を探し続けていたことが判明。
そこで刹那の護衛と監視を兼ねて薫子直属の暗部“七つの大罪”の中から薫子が“遊び心”を込めて選んだ二名が、刹那に付きっ切りでいる事になった。
それがこの二人。七瀬 百合子と露草 遥である。因みに二人とも刹那とは同い年である。その点も選抜の理由であろうか。
「刹那…」
刹那のベッドの横に座り、刹那の手を握りながら心配そうに刹那の顔を覗き込んでいる少女。
彼女は七瀬 百合子。“七つの大罪”の一員であり、仮面ライダーリリスというもう一つの顔をもつ少女である。
美しい蒼色のロングヘアーに清楚な顔立ち、全体的に気品の良さが漂い“良家のお嬢様”という言葉がピッタリとしそうな美女。
しかし彼女の内面を知る人間に、そう考える者は一人として存在しない。
「……………」
心配そうに見ていた百合子の顔が徐々に刹那へ近付いていく。
距離はどんどん縮んでいき、次第に唇と唇が…
「何してんのよ!!」
二つの唇が一つになろうとした瞬間、もう一人の少女がそれを強引に中断させた。
彼女は露草 遥。百合子と同じく“七つの大罪”の一員であり、仮面ライダークロスという別の顔をもつ少女である。
ショートカットで栗色の髪にあまり化粧っ気はないがそれなりの美少女、しかし何よりも目を引くのはその服装である。
何故か肌の露出が多く正直かなり際どい服装なのだ。尤も彼女の体型は…まあ…その…なので、色気をあまり感じさせないのだが。
「何かすっごい失礼な事を言われた気がする」
遥は何故か湧き上がる腹立たしさを疑問に思いつつ、百合子の暴走を止めようとする。
百合子は知的な外見から想像しにくいが、同性に対して愛情を注ぐタイプの人種なのである。しかも彼女は、刹那に対して特にお熱で隙あれば×××な行為をしようとする。
普段ならば刹那が百合子をボコボコにするか、逃げ出すかで終わるのだが、今回刹那は意識を失っている。つまり百合子にとっては絶好の機会である。
「放して!!これは神様が!!いや薫子様が用意してくれたチャンスなの!!これを逃したら刹那と一つになれない!!」
「いや、一つになる必要ないし!!僕たちの任務はこの女の護衛だから!!」
ドタバタの大騒ぎだが、その乱闘の最中、百合子の眼がキラリと妖しい光を放つ。
「ふっ!!」
「は!?ひゃあ!!」
百合子の雰囲気が変わったと思った次の瞬間、遥は一瞬の内に組み伏せられ床に押し倒された。突然の出来事に、遥の対応が遅れた。
結果、百合子が倒れた遥に覆いかぶさる状態になる。そしてそれを理解した遥から冷たい汗が。
「な、何して…」
「ふふふ…最近、遥ちゃんとはご無沙汰だったから今夜は久しぶりに…」
「ひ、久しぶりって…僕はそんなこと…ま、まさか!?う、嘘でしょ?冗談よね!?」
「ふふふ…」
自分の知らぬ間に、百合子は何かしらの行為に及んでいる!?
そんな考えが遥を恐怖のどん底へと叩き落す。そのせいか、百合子の束縛を振り解けない。
百合子は普段はこんな感じだが、戦闘となればプロとしての実力を見せる。一方の遥は直接的な戦闘は苦手であり、主に補助を担当する場合が多い。
つまり百合子に組み伏せられた時点で、遥に逃げ場はない。なすがままである。
「それじゃあ…」
「い、いやぁ…ちょっとまっ…んっ…ぁ…」
色欲の夜はまだまだ長い。
ヨルハマダマダナガイ
AM.02:00 繁華街・路地裏
『キシュゥゥゥゥゥ』
それはまさに“異形”であった。
全身が漆黒の外骨格に覆われており、鋭利で攻撃的な姿をしている。
甲殻類や甲虫に似た特徴をもち、鮮血よりも真紅に染まった眼からは“破壊の本能”しか感じ取れない。
両手には鋭い鉤爪が、身長と同じ位の長さをもつ尻尾の先端には鋭利な針が備わっている。
そしてこの異形はその身体を、鉤爪を、尾を血に染め上げている。
これだけ見ても、この異形がたった今“獲物”を殺したのだと理解できる。
それを証明するように、異形の前には物言わぬ肉塊が一つ、二つ、三つ…。
アスファルトの地面は一面が血の海となっており、犠牲者がどれだけ残酷な殺され方をされたのか、想像に難くない。
「ひぃ!!」
その凄惨な現場を見たのは一人の男。中年の酔っ払い。
何故こんな時間に?何故こんな場所へ?
ソンナコトハドウデモイイ
異形の赤眼に新たな“獲物”が映りこむ。これでこの男の運命は決まった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
深夜の路地裏に響き渡る、戦慄の断末魔。
人知れず、そして人以外の存在にすら知られずに不気味に世界を蝕む絶望。
真の恐怖とは、何の前触れもなく突然に、確実に忍び寄る。
破滅の夜は終わらない。
,どうも、プラスマイナスです。
今回は謎に満ちた一ノ宮財閥側に触れてみた内容となりました。
一ノ宮薫子はただの善人ではなく、事件の裏で一人勝ちを狙う強かさをもつお方です。
そして新たな影が…
エピローグではついにアリスが登場。
そして不気味に活動するカンケルに焦点を当てつつ次章への布石を、と考えています。
,#000000,./bg_h.gif,p4124-ipbf2008hodogaya.kanagawa.ocn.ne.jp,0
2009年09月01日(火) 21時22分27秒,20090901212227,20090904212227,Wd6iSpvP0BwKQ,仮面ライダーintertwine 第1章第32話『拾うは不思議なスケッチブック/ただ影は月夜に照らされ』,オリジナルライダー・リレー企画,,,作:サイショ
PM 18:30 中央公園
公園ではネクシアスは主の現在の状態にただ困り果てていた。
『……不味い。体力が殆んど回復していない……このままでは……』
起き上がることも困難……最悪一日は動けないだろう。
現に命李の息はほとんどか細くなっていた。
『敵対反応は……無いですが、一つ生体反応が来ています……一先ずはネクスライダーを戻して命李をベンチに移すことが先決ですね』
ユックリと命李は浮かびベンチへと降りる。
その姿はまるでベンチで寝ている少女だった。苦しそうに息をしていなければ誰もが「不用心だな」と思う位だ。
次にバイクがひとりでに消え……その場には命李を除けばふしぎな光景は消えていた。
暫くすると公園に一人の青年が息を切らせながら入ってきた。
『……人……ですか。随分慌てているようですけど……』
その青年はすぐに命李に気づき走り出していた。
「命李ちゃん!」
命李が座っているベンチに駆け寄り肩を揺さぶる青年……風瀬 列。
だが、命李は荒い息を口から漏らすだけで返事はなかった。
「くそっ、何で命李ちゃんが……と、とにかく救急車をっ!」
列は慌てた様子で携帯を取り出そうとするが手を滑らせてしまう。
落ちた携帯を拾おうと手を伸ばしたその時……スケッチブックのようなモノが落ちている事に気がついた。
「これは……スケッチブック。だよな」
列はふと気になり拾い上げページをめくっていく。
其処にはよく分らない絵が描かれていて……ただ困惑するだけだった。
途中でどこかで見覚えがある雰囲気の絵などもあるがさほど気にせずにページをめくっていく。
そして良く分らない二つに分かれた少しだけ妹に似た少女の絵をめくると……。
そこには『工業団地に行け』とだけ書かれたページがあった。
「…………」
あからさまにあやしい雰囲気が漂うソレ。
だが列はなぜかそれに賭けようと思った。
「晃輝か? 命李ちゃんは見つかった。警察も今から呼ぶから公園に来てくれ……後、俺は少し工業団地の方にも行ってくる!」
『は? ちょ、お前……命李の事は分かったけど。おい、きいてるの…』
自らの友人が何かを言っているがもう列には聞こえなかった。
警察に命李の場所を教え自らは工業団地へと駆け出していた。
友人の妹を放ってなぜ生きたいのか。
ソレは彼にはわからない、だが心で理解は出来かけていた。
即ち、自分の妹はそこにいると。
「華枝……っ! 無事でいてくれ!!」
心の奥底の思いを口にして列は工業団地へ走りだした。
PM 18:10 森林の手前の獣道
突然切れた携帯を手にして晃輝はただ携帯を見るだけだった。
だがすぐにこうしてはいられないと急ぎ足で公園へと向かった。
「……にしても何でまた工業団地?」
『さぁな……何か手掛かりでも見つけたのだろう』
ギルファリアスの言葉を聞きながら晃輝は公園へと走っていく。
何か嫌な予感を……感じながら。
「……くそ、いやな月だな……笑ってやがる」
晃輝は舌打ちをして月を忌々しく見上げた。
『三日月か……あの感じだとそろそろ新月だな』
ギルファリアスはどこか……憂鬱そうに空を眺め呟いた。
こうして彼等は森林の奥には行かずに公園へ向かった。
ソレが正しいか……正しくないかは別として。
PM 19:20 工業団地 路上近くの工場屋根
そこでは戦いを終え息を整えているゼベイルをただ見続けている青年がいた。
何が面白いのだろうか、その場から決して動かずに彼は戦いの一部始終をすべて見ていたのだ。
「……見事、といいたいが……。最後に出てきた下郎……もう少しあの場に居れば私が直々相手をしてやろうと思ったが……まさか、感づいて逃げたか?」
最後まで戦いきったゼベイルを見ながら青年は途中で割り込んできた赤い女と黒いローブを思い出す。
たしかラビリンスといった組織の幹部的な存在だったな。と思いだしてすぐに彼はそんな二人を忘れてた。
彼からすればラビリンスなど所詮人が作り上げた組織にすぎない。そして手を組むか組まないかは彼ではなく六将が決める事なのだ。
故に彼は我関せずでゼベイルを見ていたが……何かに気づいたのか空を見上げた。
「……ん? シンガーのスケッチブックを誰かが拾ったか……ほう……なるほどな、そのような運命となるか」
少し驚いた口調で彼は感じたことを口にした。
なぜわかるのか……答えは単純だ。
実は彼は妹の場所がいつでもわかるように自らの忠君であるネームレス中級を常に妹や妹に関連している人物に送っている。
当然彼等は襲い掛かるわけがない、ただ常時主である彼に連絡を送り現状を教えるだけだ。
戦う時は……やはり主である彼が攻撃を命じたときくらいだろう。
ソレくらいに忠君であり彼もまた信頼してその任を任している。なんとも完璧な主従関係である。
「……指示変更。フセ レツへの監視も開始しろ。代わりに闇の契約者の探索を一時打ち切れ」
了解、と言う合図は聞こえない。
だが彼はもう命令を言わない、なぜなら忠君である彼等が裏切ることはないのだ。
「……あぁ、それとシンガーのスケッチブックに『工業団地へ行け』っと……ほう、もう書かれていたか。大方メッセンジャー辺りか……仕事が早い女だ」
ゼベイルを見ながら彼は妹の忠君の一人である女性を思う浮かべやや関心しながらも呆れていた。
「さて、彼女の兄が来るまで何事も無ければいいが……」
そう言い彼は敵がいないか気配を読み取るために目を瞑ることにした。
月は……ただそんな彼を僅かに照らすだけに輝いていた。
,,#000000,,perseus.aitai.ne.jp,0
2009年09月01日(火) 21時08分07秒,20090901210807,20090904210807,WNyTdiLfEsttc,おとこレンタルってなんだよ(笑),日下部さん,,,って事で、試しに一度………、やべ〜!!
なんで、あんなキレイな人がおいらを買ってくれたのか今でも不思議ッすww
って言うかもう、おいらこれのとりこッすよww
女ども!!今のおいらは延滞料無料ですよ(笑)
,,#005100,,z41.124-45-50.ppp.wakwak.ne.jp,0
2009年08月29日(土) 21時01分16秒,20090829210116,20090901210116,WmkzcKyy70BSw,第2.5回 Piaララナギツヴァロットへようこそ♪ 〜 今回は、選択うんぬんじゃなくて単なるいいわけね【 随時更新予定 】,八兎ジャック,,,1.謝マレ! 〜 おことわり、あるいは言い訳の前払い
時村 冥(メイ)「――ぶゥっ!?」(いきなり飲んでいたコーヒーを吹きだした)
本条 勝壬「うわっ!? なによ時村いきなしっっ!!」
冥「い、いやその今回の青嵐さんとYPさんの選択肢……」
勝壬「? なんか問題あんの?」
冥「……ぶっちゃけるとね。ララナギチームの誤解を解く条件が、
『クロノスたん側(スミレか羽美)と、朱凰チームの両方から最低一人づつが弁明に行く』だったのよ。
今回、生原 羽美と雷刃が一緒に(というか、偶然かち合う形で)説得に行ったから……」
勝壬「早くも誤解が解ける、と。でも、それってなんか問題あんの?」
冥「……それだけなら問題はない。けど、例のBHS(秒数で・判断しちゃうぞ・システム)がちょっとね」
勝壬「んと――
YP(俺は怠惰(たいだ、なまけること)の王子)■2009-07-28 15:10:14
――下一桁が「4」ってことは、つまり失敗? 赤川さん蹴ってたチンピラからは
情報得られない、ってことよね。けど、それだってシステム想定のうちでしょ?」
冥「……そうなんだけどね。
その両方のフラグを満たすと、出てくるのよ…………真犯人の片方、あの女。」
勝壬「!? ……あー、何を心配してるかだいたいわかった。」
冥「……あの女とクロノスたんって、性格間逆でしょうが。しかも
某“序章”や“ロックマン〜”と違って場所的にも性格的にもストッパー役いないんだから……」
勝壬「……真っ正面から、黒野さんに慇懃無礼(いんぎん・ぶれい)に対応する……?(汗 」
冥「(……こくり。……)」
御簾 エリカ「(遅れてきた)? あれ? 本城さんも時村さんもなにしてんの〜?」
勝壬「……エリカ、ちょっとこっち来なさい。(手招き手招き せーの――――」
エリカ・勝壬・冥「「「すいませんYPさん、そういうわけでうちのキャラがそちらの娘(キャラ)に
失礼な口をきくやもしれませんので、お詫び申し上げます。」」」(ぺこりん
冥「……まぁいいわけさせてもらえるなら、そういうキャラクター性なものでね、あの女。
繰り返すけど、書き手がどう脳内シミュレートしてもクロノスたんとの相性最悪なのよ……(汗 」
勝壬「人を人とも思わない(例外一名あり)謀略家の上に、ヲタク軽視主義者だしねぇ……(タメイキ 」
エリカ「え? へ?? 何の話……?」(←今来たばかりで、状況が把握できてない)
★
冥「それと、もう一つ。
ララナギチームの追加メンバー、前回のユーザーサポートでは三上 了子が来るって書いてるけど」
エリカ「……ですね。」
冥「上の影響を間接的に受けて、追加メンバー、三上 了子じゃなくなる。
出番自体はあるんだけど、いきなり殴られて退場するから」
勝壬「……って。それじゃララナギチーム、広瀬(妹)さんの代わりに誰か探さなくちゃいけないんじゃ」
冥「そうね。その“更なる交代要員”も次回ちゃんと出てくるからそこは問題ないわ。
次回の『第3の選択肢』はそれを誰にするか、になる予定」
冥「……ところで、気づいてる?」
勝壬「? 何によ??」
冥「今回の話は、全6話構成。
試合開始⇒第一セット⇒インターバル⇒第2セット⇒インターバル⇒第3セット&エピローグ
といった流れになるんだけど……バレーのインターバルって長くても10分程度、
当然試合会場から離れるわけにはいかないから、普通に考えればインターバルで1話は作れないのよね」
エリカ「え? でも第3話はそのパターンですよね?? ……って、あ、そうか。
広瀬(妹)さんが倒れたからちょっと長めにインターバルを取る、って話でしたっけ」
勝壬「………………。って、ちょっと待てい。それで第5話のインターバルが存在するってことは……」
冥「そうね。試合中、誰かが怪我するのが確定、ってことよね」
エリカ・勝壬「「確定ですか/なんかぃ――――――――――――っっっ!!?」
冥「確定よ。(どきっぱり
実は第1話の選択肢、青嵐さんが1番か3番、つまり攻撃特化を選択していると、
『激しい攻撃の最中で絢斗くんが始穂ちゃんに突っ込んで行き、2人もつれ合う形で怪我をする、
始穂ちゃん、第2セットから無条件で了子ちゃんに交代』(強調以外は原文メモのまま)
――みたいなフラグが隠れてたのよ。回避されたけど」
エリカ「……まぁ、話の都合なら仕方ないんでしょうけど……大怪我したりはしないですよね?
冥「インターバル作るためだけのまさしく話の都合だから、それはないから安心しなさい、エリカ。
(ぼそっっ)……もっとも、怪我するのがララナギチーム側とは限らないけど。」
勝壬「おいっっ!? ……あぁぁぁ、青嵐さんも(どーなるかわからないけど、もしそうなったら)
ごめんなさいごめんなさい――――(ぺこぺこ 」
2.第3話予酷(よこく)編 【 BGM:Climax Jump 〜 インストゥメンタル 】
――売店:
エリカ「がんばってくださいね! 友達と一緒に、おーえんしてますから!!」
湊「……遼那。」
遼那「うん――なんだか、嬉しいわよね。
あんな風に率直に『がんばって』って言ってもらえると――――」
手を振り去っていく、エリカと名乗る少女。微笑を浮かべながら、その少女を見送る遼那と湊だった。
★
――地下駐車場:
あろうことか、そのチンピラはスミレの拳を真正面から受け止めた。
……オリヴィエが憑依した状態のスミレの拳を、ただのチンピラが、だ。
Oスミレ「――――!!? な、に……!」
その流紅(あか)い、目。その瞳孔に髑髏(どくろ)のような紋様が見えるのは気のせいか――?
★
――朱凰チーム控え室:
淳「ら、羅刹……やめてお願いやめてそれだけはやめてぇぇ…………、っっ(はらはら 」
羅刹「? なにを泣いている、淳――」
慎子「(ぼそっっ)……そりゃ、泣きますよねぇ……」
悠子「……俺が彼女の立場でも、泣かずにいられる自信はないな……(汗 」
★
――謎の少女と、対峙するスミレ:
?「『私たちの』敵の名前は……豪三興業(ごうさんこうぎょう)、その、残党です」
スミレ「あ、それ正確じゃないなぁ。アタシたち――アタシと、緑ヶ丘チームと選抜チーム。
その敵がそのゴースン興業残党と、……それと、アンタもだから。」
……断言する。イマジン相手以外でこれだけ冷ややかな対応をスミレが見せたのは、これが初めてだった。
★
――ララナギチーム控え室へ向かう、その途中の通路:
羽美「三上(了子)ーーーーっっ!? だいぢょぶ? だいじょぶ!?」
了子「あ、あはは……痛(た)ぁ。思いっきり殴られたけど、大丈夫ッスよ。
そっちのおねーさんたちが助けてくれたし」
絢子「悪ぃ、助かった。正直、俺……もとい、アタシ、ひとりじゃ逃げられてたかも――」
?A「お気になさらず。さくらさん――先輩の代わりに友達の応援に来た、たまたまの通りすがりですし」
?B「通りすがりって意味では、右に同じ。(ぼそっっ)……たくもーヒビキさんたら、
『あとから行くから先に行ってて』って、なんでわたしがあいつらの応援しないといけないのよ……」
★
――少女の話を、聞き終えて:
スミレ「………… 一つだけ、忠告しとくけど。あんまし蓮見っち……ぇと、今の選抜チームを
ナメないほうがいいと思うな。追い詰められたネズミはドラ○もんの耳だってかじるんだから。」
?「『窮鼠(きゅうそ) 猫を噛む』ですか……そう簡単に噛めると、いいですね。」
スミレ(……………………。)
オリヴィエ(? どうした、スミレ考え込んで)
スミレ(いや、いっしゅんネコミミルックにコスプレった一菜ちゃんの耳を甘噛みする
ネズミーマウスの着ぐるみった蓮見っちの姿を想像して、)
オリヴィエ(せんでいいっっ!?)
?「……それで『どっちにするのか』、結論は――出ましたか?」
冷ややかな笑顔に、若干あざけりのニュアンスを含ませて。彼女は、スミレに決断を迫る――――!
★
――そして、試合開始2分前:
絢子「ら……羅刹? あんたなにやってんだ……?(汗 」
羅刹「監督だ。(どきっぱり 」
湊「……うぁ、めっちゃ似合ってる。サングラスに赤ジャージに竹刀まで持って……」
慎子「てゆーか、どっから出したんでしょうかあの服……」 ※細かいことを気にしてはいけません。
悠子「――やれるか、赤川?」
赤川「…………、うん。」
遼那「さて、それじゃ剣崎さんたちとの仲直りもすんで、改めていい勝負を誓ったことだし――
ここから怒涛の反撃――開始よ!」
絢子・湊・悠子・慎子・羅刹「「「「「――応(おう)っっっっっ!!!!!」」」」」
―― 第3話 インターバル〜第2セット・反撃の章 に続く 〜
次回9月末〜10月中旬予定……は未定。(ぉぃ ――
----------------------------------------------------------------------
>>どうする?
>つよさ(今回のパラメーターは、疲労度修正前)
はるな (ゆみつかい) こうげき 3 ぼうぎょ 4 すばやさ 3 ひろうど ?%
けんと (せんし) こうげき 5 ぼうぎょ 2 すばやさ 3 ひろうど 13%
みなと (ぶとうか) こうげき 6 ぼうぎょ 3 すばやさ 1 ひろうど ?%
ゆうま (けんじゃ) こうげき 3 ぼうぎょ 5 すばやさ 2 ひろうど 8%
しんや (せんどうし) こうげき 4 ぼうぎょ 3 すばやさ 3 ひろうど 8%
あかか゛わ(すっぴん) こうげき 4 ぼうぎょ 2 すばやさ 4 ひろうど 2%
ほ゜し゛しょん:まだ せってい されていません。
とくしゅこうか:【レシーバー&リベロ ボーナス+1】
【エリカの応援/遼那&湊の好きな能力値に+1】
★
スミレ (あそびにん(ぉ )こうげき ? ぼうぎょ ? すばやさ ? ひろうど 0%
なかまじょうほう:いくはら うみ
タイプ/にぎやかし
とくせい/にげあし(あぶない めに あっても にげることができる)
トレーナーメモ/特性上敵に捕まることはないが、だからといって事態が好転するとは限らない
(逃げられることで相手が警戒を強くすることもありうる)ので、注意が必要。
なお、今回一菜ちゃんたちについては以下のとおり能力値を設定してあります。
遼那ちゃん達同様Intertwinの能力値表示に合わせてはありますが、全員の能力合計を10に合わせている
関係もあり、Intertwin劇中の能力値とは一致しないことを重ねてお断りしておきます。
一菜 攻撃4 防御5 速度1/始穂 攻撃4 防御1 速度5
いぬみ 攻撃5 防御2 速度3/レオナ 攻撃3 防御3 速度4
イブキ 攻撃6 防御1 速度3/??? 攻撃? 防御? 速度?
----------------------------------------------------------------------
おまけ:黙っときゃいいのに裏話・暴露編
冥「ついでにぶっちゃけるけど、実は今回の話って元々、某Intertwin乱入用のネタの流用なのよね」
勝壬「あ、それで朱凰チーム、能力値の設定がIntertwinまんまなんだ」
冥「そういうこと。……当時のメモによると、
・ある特定の異能者を殺すため、ボード学園に入りこんだアンノウン。
(その異能者が誰かはサイコロ振って決めるので、開始時点では書き手にすらわからない仕組み)
・そのパワーは強大で、かつアンノウンには珍しく正面から破壊活動を仕掛けてくる。
(実はある事情で暴走してるんだけど、その情報は途中まで明らかにされない。そして、この「暴走」が
「たくさんのライダー少女の集中攻撃受けてるのに、異様に強くてなかなか倒れない」理由でもある)
・このままだと異能者うんぬん以前にそのアンノウンが暴れてボード学園が破壊しつくされるから、
ライダー少女サイドがこのアンノウンを足止め、または撃破(可能だが、かなり難しい設定)しつつ
人間サイド※がその狙われている“異能者”を捜索する』
みたいな設定で。」
※この場合の「人間サイド」には、そもそも変身できない人だけではなく、変身はできるけれど
今回あえてしない人、も含む予定でした。つまり、戦闘と捜索の人数バランスは好きに設定できたわけです。
エリカ「あ、ライダー少女の戦闘がバレーの試合形式に、異能者の捜索が犯人の捜索になってますけど
たしかにシステム構造同じですねぇ。」
冥「元々、知る人ぞ知る某“人のエル”なんかは、その物語に対するお助けキャラとして
設定されたわけだけど――っと、そこまで言っちゃうと本気でただの余談だけどね」
(一同苦笑。で、気を取り直して話を続ける)
エリカ「……ところで、その暴走アンノウンって何ロードだったんですか?」
冥「当時の設定では、バッファローロード……つってもご存知のとおり『ディケイド』でバッファローロード
出ちゃったんで、もし仮に今このネタ書くとしても、バッファローロードでは確実になくなるけど」
勝壬「まぁそれは仕方ないかな。……ところでアンノウンってことは、特殊能力(ギフト)持ってるのよね?」
冥「えぇ。その能力の名前は『無い内臓十六(シックスティーン)※』。」
勝壬「……待てコラ。その微妙にも程があるネタネーミングは一体っっ!?」
※シブがき隊、という昔のアイドルグループのデビュー曲がこういうタイトルでした。(超余談
エリカ「……てゆーか、噂に聞くアンノウンの特殊能力ってそういうネーミングばっかりなんですよね。
『露骨な肋骨(ろこつなろっこつ)』とか『悲惨な蟻酸(ひさんなぎさん)』とか。」
冥「(目をそらしながら)……本来は、前方につむじ風を発射して、その風に当たった人間の内臓のみを
その場に残して身体を吹き飛ばす、みたいなグロい能力だったんだけど……」
勝壬「……『本来は』?」
エリカ「――『だけど』??」
冥「……えぇ。バッファローロード、暴走してるって言ったでしょ?
その暴走によって能力(ギフト)も変質しちゃって、
風に当たった人間のみをその場に残して、着ているものを吹き飛ばす能力に変わってるのよ。」
勝壬「/// ……何よそのエロネタ一直線バカ特殊能力は――――――――っっ!? ///」
エリカ「あ、でもそれってつまり、殺傷能力もゼロになってるってことですよね?
人死にが出るよりよっぽどいいと思うよ、本条さん??」
冥「エリカ、甘い。着ているものが消えるってことは、ライダー少女がこれ喰らったら
変身解除される、って意味と同義なのよ?」 ※変身解除と同義で扱う予定でした
エリカ「あ゙。」
冥「つまりほぼ完全に無防備状態で、暴走してるバッファローロードの前にいることになる。
しかも舞台がボード学園内だから、下手に人のいるところで戦ってこの能力喰らうと……」
勝壬「……すっぱだかで、衆目に正体晒し……?(汗 」
冥「そーゆーこと。だから戦う場所や戦い方も考えなくちゃいけない、というゲーム性だったわけ」
勝壬「うちの書き手、元ゲーマー&相方の人は現役だもんで、意外とこういうギミック好きなのよねー」
エリカ「というわけで、今回の話もそういうギミックの上に成り立ってるんで、ララナギチームの
能力値と疲労度、それからポジション表記には注意しといた方がいいですよ? >青嵐さん
てなわけで、今回はこのへんで“しーゆぁげんっ(see you again)♪」,,#0000A0,,35.234.210.220.megaegg.ne.jp,0
2009年08月27日(木) 22時15分42秒,20090827221542,20090830221542,WWmv2eqLOZIhA,仮面ライダーバルキリーたん 第22話「Climax of unpredictable」,鴎,,,「Climax of unpredictable」
PM23:00
星見港
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
Pバルキリー「きゃああああああああああああああっ!!」
大爆発が起こり、ファントムフォームが吹き飛ばされる。そこへピーコックイマジンたんが容赦なく次から次へと炎に包まれた矢を飛ばし、灼熱の爆風を起こしてファントムフォームを追い詰めていく。
ピーコックイマジンたん「ふふふふ・・・」
Pバルキリー「くっ・・・!どうやら長丁場になりそうですわね」
そういって、引き出したカードは「スコーピオンアンデッドたん」の絵が書いてある「クラブの8」であった。
意味は「遅滞」もしくは「着実なる幸運」である。
それでもこんなヤバい状況下においては皮肉としか受け取れないが、そんな暗示にさえも一路の希望を託し、余裕な状態で挑んでいくのがファントムフォームらしいやり方だ。
琥珀「アメジスト、あたしに変われ!!気配消して相手の様子を伺うんだ!」
アメジスト「琥珀・・?うん、分かりました」
「Assassin Form」
紫色の甲冑から見る見る銅色のクモを模した勇猛な戦士の姿へと変化し、ハンドアックスとクナイを構えてピーコックイマジンたんに向きなおる。
Asバルキリー「さーてと、ここから先はあたしが遊んでやるよ」
ピーコックイマジンたん「ふん・・・・」
Asバルキリー「クモの巣の処刑場に・・・ようこそ!!」
そういって、目にも止まらない速さで駆け出すと壁をけり上げて飛び上がり、羽をかわしながらハンドアックスをまるでブーメランのように投げつける。円盤と化したハンドアックスは楕円を描いてピーコックイマジンたんに切りかかるが、それを軽くよける。
しかし、次の瞬間目の前にはアサシンフォームがクナイを構えていた。
そして、クナイで切りかかり、そのままハンドアックスを受け取るとそのまま振り下ろす。
目にも止まらない速さと武器を自在に操る洗練された技のスタイルは暗殺者のそれを感じさせる。
ピーコックイマジンたん「くっ・・・!」
Asバルキリー「行くぞ」
そして再び地面をけり上げて、壁から壁、地面、天井など縦横無尽に飛び交い、やがて気配も闇にまぎれてなかなか感じ取れなくなる。
足音もしない。
しかし、確実に忍び寄る殺意と強い視線だけが暗闇の中からピーコックイマジンたんを追い詰めていく。
琥珀(エメラルド、最終的なデバックまであとどのくらいだ!?)
エメラルド(・・・さ、30分)
琥珀(オーライ。まずは相手を心理的に不安を与えることには成功だ。この広い港湾地帯、どこから攻めてくるかわからない以上確実に相手はスキを見せてくるはずだ。サファイア、目立つの好きかもしれないけど、今回は控え目に頼む)
サファイア(やれやれ、闇の中のスナイパーってやつ?まあ、エメラルドの発明の完成までの時間稼ぎならそのくらいでいいか)
「Gun Form」
再びガンフォームに変身すると、敵の姿を失い困惑しているピーコックイマジンたんを監視しながら暗がりに身を潜めた。その時だった。工場内にもう1体誰かが入ってきた。
その姿を見て慧が戦慄する。
針尾だった。刀を構えて先日のように狂気をあらわにしたかのような笑みを浮かべている。
Gバルキリー(そういえば、あいつもいたんだ。あっちゃあ、これ、30分逃げ切らないとアウトってヤツか・・・・)
PM23:45
星見大学 研究棟 東棟104号室
そのころ。
ルークに背負われて、さくらたちが港湾地帯から離れた大学の研究棟にあるルークの研究室についていた。部屋は半ばルークの私室となっており、ベットも冷蔵庫もテレビも完備されている。
部屋の鍵を閉めてルークとさくらがようやく一息ついたといった感じで座り込む。
ルーク「・・・・・・・・・」
さくら「・・・・・あの、お姉さん、お姉さんと天童さんって・・・・」
ルーク「・・・・見てのとおりさ。もうここまで来たら腹くくるか。ただし、記事にするならルークのほうにしてくれないか?その代り天童のことを見逃してくれるってことで」
さくら「え・・・?」
ルーク「ルークは・・・もういいんだ。それよりも天童のほうはまだ生きてもらわなきゃ困るしな。あいつが傷ついたり・・・死んだりしたら・・・悲しむ人がいる。あいつ自身だって、お前には言えないだろうけど戦わなきゃならない理由があるんだ」
さくら「・・・・」
ルークの真剣な訴えにさくらも黙り込む。
そしてずっと大事に抱えていたカメラを抱きしめて、うつむいたままぽつりぽつりと話しだす。
さくら「・・・・あたしのせいです。あたしがあんなこと言わなければ・・・お姉さんも天童さんもこんなことにならなかったのに」
それは悲痛な叫び。涙を浮かべて、もう耐えきれない様子だった。
ルークはそんなさくらの隣に近寄って、頭をなでる。不器用な感じでクシャクシャと髪を撫で上げる。
ルーク「自分を責めるな。お前が何を契約したかは、何を願ったかは知らないけど、あいつらはそういった願い事を自分勝手な解釈で解決するような奴らだから」
さくら「・・・・あたし、新聞部を復活させたかったんです・・・」
さくらの話はこうだった。
夏休み目前になり、3年生が受験で部活を引退する時、勝手に先輩たちが廃部届を提出して新聞部を廃部にしてしまったのである。
「受験で部活は新聞部で活動していましたって履歴書には書けるし、もう1年生が数人くらいしかいない新聞部なんていつ廃部にされてもおかしくないから、私たちが手続きしてあげる」
それは先輩たちにしてみればいつかは廃部になるであろう新聞部を自分たちの卒業を理由に幕を引かせたいというどこか押しつけがましい、方向性が間違った思いやりであった。しかし、1年生たちはもともとやる気がない上にそれなら別の部活にでも移動できるチャンスと言わんばかりに、一斉にやめてしまったのであった。
しかし、さくらだけはどうしても新聞部の活動を続けたかったのである。
さくら「それで、先輩たちに掛け合ってみたら、特ダネつかんだら考えてあげるって。でも、町中駆け回ってもなかなかそういうのがなくって・・・そしたら天童さんが変身しているところ見ちゃって・・・悪いとは思っていたけど・・・どうしても追いかけずにはいられなかったのです・・・・」
ルーク「それで、あのイマジンに“天童のスクープを撮りたい”と言ってしまったわけか」
さくら「でもそれは嘘だったのです!!さっき電話したら、もう退部届は受理されちゃったって!!あれは冗談のつもりだったって!!まさか本気にするなんて思わなかったって!!さんざん笑われちゃったのです!!もう・・・もう・・・どうしたらいいのか・・・分らないよぅ・・・・・結局天童さんやお姉さんに迷惑かけちゃった・・・・うえええええええええええええええええええええええええええええん!!」
とうとうさくらが声を大にして泣きだしてしまった。
あまりにも理不尽な先輩たちの振る舞いに怒りを感じずにはいられない。
そしてそんな言葉を信じて夏休み中特ダネを追いかけて走りまわっていたさくらが思い切り泣いている姿を見て、ルークはやりきれない気持ちになった。
ルーク(キング・・・・殺せないよ。やっぱり、無理だ。こんな子を殺すなんてキングは間違っているよ!!)
そう思って、さくらを抱きしめる。
さくらは暖かな胸の感触に、痛いくらい抱きしめてくる腕の感触に驚いたように目を見開くが、やがて大きな体に顔をうずめてさらに泣き出す。
ルーク「・・・・やりたかったんだよな?分かるよ。ルークだって・・・・今の自分がやるべきこと・・・戦うことも・・・・大切な人を守りたいって思うことも・・・命令だからじゃない・・・・自分で選んでそれを貫いてきただけだった。でも、なかなかうまくいかないよな」
それはルークの悲痛な叫びのようにも聞こえていた。
キングへの反抗。それは決して望んだことではない。しかし、今こうして一人の少女を守りたいという願いは決して譲れないものだ。だから故に辛い。しかしこんな少女を障害の対象などと割り切れるはずがない。
ルーク「でもなっ!!それでもやりきればいいんだよっ!!!さくら、お前のバイタリティと行動力、どんな状況下におかれてもあきらめない真っすぐな所はそんなバカな先輩とかイマジンごときに潰されるなんてダメ!!あいつらみたいな連中に認められないからって自分で自分の夢を失っちゃダメだよ!!お前の夢は!!お前のやりたいことはお前でしか出来ないことなんだよ!!お前がやらなきゃお前がかなえたい願いは叶わない!!お前の望み通りの夢はお前でしか叶えられないんだ!!」
さくら「・・・自分の願いは、やりたいことは自分のもの?」
ルーク「時には誰かと協力したり、妥協したり、信頼し合って作り上げていくことも大切だよ!!でもなっ!!自分の中にある“自分がやりたい”っていう熱い願いだけは胸に秘めておくんだ!!そうすればどんなつらい目にあってもどんなに嫌なことがあっても、負けないから!!自分の夢とかやりたいことなんてやったもん勝ちだ!!お前があきらめない限り、夢ややりたいことは必ず・・・未来に繋がるんだよ!!!」
熱い言葉だった。
ルークもその顔に赤みが帯びており、真剣にさくらの目を見ながら話している。
それがさくらにとっては嬉しかった。
自分のことをこんなにも真剣に考えて話してくれる人がいるなんて。
さくらは泣いた。
優しくて力強い言葉と真っすぐな心をもつルークの胸に顔をうずめて思い切り泣いた。
そしてこのとき、窓の近くの小窓に黒い影が一体2人の様子を伺うように見ていた・・・。
PM23:56
大通り
晶とビショップ、クイーンが荒く息を吐きながら走りまわっていた。
辺りを見回すが、ルークの姿はどこにもいない。
晶「ルークのバカ、どこにいったんだ!!」
ビショップ「港湾地帯もいない。アパートにも戻っていない。となると・・・」
クイーン「・・・・学校は?あいつ、レポートとか徹夜するときよく学校泊まってるから鍵持ってるよね?」
ビショップ「可能性は高いです!」
晶「OK。ビショップは万が一繁華街のほうを頼む!俺とクイーンは大学に行ってみる!」
ビショップ「はい!」
そういって、ビショップが繁華街へと走っていくと、クイーンがバイクにまたがって晶を後ろに乗せて走り出した。大型バイクのエンジンを一気にふかして、路上を目にも止まらない速さで走り出す。
晶「おい、これ、改造したのか?」
クイーン「ちょいとエンジンいじって、マフラー変えて、パーツ取り替えただけだって」
晶「明らかに違法改造じゃねぇか、それ」
クイーン「細かいことは置いといて」
湾岸地帯を一台のバイクが制限速度ブッチギリで突っ走っていく。
深夜の道路を弾丸特急と化したバイクが走り去っていく。
晶「まったく、ルークのヤツ、人の話くらい最後まで聞いてからいってほしいよ」
クイーン「・・・聞きたくても聞けなかったと思うよ」
晶「何でだよ」
晶が聞くと、クイーンがあきれたようにため息をつく。
クイーン「はぁ〜、女心分かっちゃいないというか、なんていうかさ、キング、キングが最近戦いのことばかりしか考えてないっていうか、おっかない様子だったってことに、気づいてないの?」
晶「え・・・?お、俺が?」
クイーン「・・・あたしさ、こういう性格だからぶっちゃけ言っちゃうけど、今のキング、マジで話しかけづらいよ。自分ばかりが一生懸命・・・一生懸命いろいろと考えているんだろうけどさ、自分のことだけで頭がいっぱいになっているから、話しかけづらいって距離置いているうちらのこと、気づいてなかったでしょう?」
晶「!?」
晶が驚いたように目を見開き、呆然とした顔つきになる。
そんな晶に背を向けたままクイーンはいつもの様子とは打って変わってどこかクールで突き放すような雰囲気の言動になっている。
クイーン「・・・ルークはね、キングのこと、好きだよ。無論あたしも、ビショップもね。王として尊敬しているだけじゃなくて、キングに憧れていて、そばにいたくてチェックメイト・フォーとして頑張ってついていきたいんだよ。だから、言い出せないじゃない。いつも張り詰めているような感じで・・・いつも似合いもしない冷酷非情なキャラ作って・・・・いつも人間はクズだのゴミだの言って・・・・大切な人のことを思うのはいいけど、それだけでいいの?それだけ守れれば世界なんてどうなってもいいって本当に言い切れる?それはね、傲慢だよ」
晶「傲慢・・・?俺が・・・?」
クイーン「・・・・それだけを守りたいって。それ以外をどうなっても構わないとか、踏みにじったりとか、やる前から自分の王としての責務を果たすべきことを放り投げて、誰かを嘲り笑って踏みにじって冷たい雰囲気作っちゃって・・・・似合わないんだよ」
晶「・・・・そんな・・・・」
クイーン「一を救えない奴が千を救えないってよく言ってるけどさ、あたしに言わせれば、守るべきものは一も千も関係なく全力で助けたいって願うのが普通じゃないの!?一とか千とか枠で囲みきれるようなものじゃないのよ、命って言うのは!!なのに、そんなことばかり言って冷たい雰囲気出してイライラピリピリしてたら・・・・ルークだって話しかけづらくなるわよ!!」
段々と怒気をはらんできているクイーンの言葉に晶の顔から少しずつ狂気が消え去り、本来の彼の素顔が偽りの仮面が剥がれ落ちて見えてきた。
クイーン「・・・お願い、キングが背負っているものがどれだけ大切なものか、それはあたしだって分かってる。でもね、キングは目の前の命が危機にさらされていたら、絶対知らん振りなんて出来ないヤツだってことも知っている。そんなキングのいいところ、なくさないで。ルークとちゃんと話をしてあげてよ・・・」
最後は真剣に願っているクイーンの様子に晶は完全に言葉を失っていた。
晶(・・・俺は・・・・間違っているのか?)
一方。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
爆発が起こり、壁をぶち破ってアックスフォームが転がり落ちる。
炎の海の中からピーコックイマジンたんとセルケートレジェンドルガが現れる。
Aバルキリー「ぐはっ・・・・!!」
慧(あう・・・・!!)
ルーベット「トパーズ!!」
エメラルド「くっそぅ、まだかよっ、まだなのかよぅ!!」
サファイア「こいつら・・マジで強い」
琥珀「慧もアバライッてやがる・・・!!このままじゃヤベェ!!」
アメジスト「くっ・・・・!!」
もはや何度も交代しながら戦ってきたが、この2体のあまりにも強い戦闘能力にエメラルドをのぞく5体がボロボロの状態であった。慧も口を切って血が滴り落ちて、アバラを折られ、激痛に歯を食いしばって何とか立ち上がる。
変身が解け、慧の姿になっても必死でアックスを杖代わりにして立ち上がる。
息も荒く、髪もほどけ、服のところどころが破けて血がにじみ肉が青黒く無残に腫れ上がっている。
セルケートレジェンドルガ「くっくくくく・・・。変身が解けてもなお闘志を失わないか。いいぞ、そのギラギラとしている血に餓えている獣の目。お前も狂気に墜ちてみろ。狂気に身をやつしてこそ真の強さを得られる」
慧「・・・一つ聞いていい?どうして、あたしを狙ってきたのか」
セルケートレジェンドルガ「・・・お主は強いからよ。お主の強さはこれからさらに強くなるであろう。どんな逆境に立たされてなお立ち上がることを諦めない、獲物を倒すまでギラギラ光り輝くケダモノのような凶暴な光をお前は持っている。しかし、それが仲間との絆とか優しさとか生ぬるいものであるのが気に入らん!!お主はこの先、誰一人失わず己の目的を全うできるのか?誰一人傷つかず甘えたことを抜かすのか?それが・・・許せん。お主はもう少し知るべきだ。戦いにおいて、最後まで頼れるのは己自身のみであることをな!!」
セルケートレジェンドルガが刀を向けて告げると、慧の口元が三日月を描くように吊り上げる。
ルーベット「・・・け、慧殿?」
トパーズ「・・・・慧?」
慧「・・・・誰一人・・・傷つかずに・・・・出来るなんて考えちゃいないさ。自分自身の悩みさえ解決できないし・・・いくら目の前にある嫌なことを振り払っても殴り飛ばしても、結局あたしは一人ぼっちになって・・・本当に欲しかったものまでなんだったのか、何でこんなにボロボロになってそれでも立ち上がって戦おうとするのかも・・・分からなかった。でも、それを何なのか、最近ようやくわかってきたような気がした。ルーベットたちに・・・出会って!!」
慧の瞳に力強い光がともり、アックスをソードに組み替えてそのまま生身の状態でフラフラになりながらもセルケートレジェンドルガをにらみつけて視線が離れようとはしない。
慧「ルーベット・・・トパーズさん・・・・サファイア・・・エメラルド・・・・琥珀さん・・・アメジスト・・・皆が教えてくれた。あたしが望むなら必ず光はつかめるって。闇しか見えてなかった。一人でずっといじめっ子をぶっ飛ばして、不良たちを殴って、傷だらけになってそれでもいつものことだって笑ってごまかしていたけど・・・・やっぱり戦いって痛い・・・それに一人ぼっちって・・・すごく苦しい」
ルーベット「慧殿・・・」
慧「でも皆は教えてくれた!!闇から目をそむけないで、闇は光が照らしているから生まれるものだって。その先にある光があるなら、いじけてないで、自分が欲しかったものなら我武者羅になって追い求めるものだって。そして!!こんなあたしの背中を押してくれている!!今だって!!あたしはルーベットたちがあたしといてくれるから!!今だってまだ戦いを諦めないで立ち上がることが出来るんだっ!!」
慧が地面を蹴り飛ばしてソードを構えながら飛び上がり、空中から切りかかる!!
それをセルケートレジェンドルガが大剣で受け止めるが、あまりの衝撃に腕が震える。
目にも留まらない速さでソードを振り回し、縦横無尽に剣戟を振るい、火花と轟音が飛び散る。
セルケートレジェンドルガ「ほう・・・!!」
慧「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
口から血を吐きながらも、獣のようにギラギラした光を両目に宿しながらセルケートレジェンドルガに勇猛果敢に立ち向かっていく慧の姿は迷いがない。
セルケートレジェンドルガ「いい目だ。そうだ。こういったケダモノのような目を持ちながらも、己の信念に殉する覚悟をも秘めたまさしく鋼のごとき研ぎ澄まされた魂・・!某はお前のようなヤツと戦いたかった!!」
慧「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
慧のソードが振り上げ、セルケートレジェンドルガの胸に当たり、肉を破り、骨を断ち、血が噴出した。
血にまみれながらも慧の怒涛のラッシュはもう止まらない。
しかし、セルケートレジェンドルガの一撃はあまりにも重く、ソードで受け止めているが、生身の状態ではあまりに負担がかかりすぎた。
激痛に顔をゆがめ、口から血を吐き出す。
そしてそのまま振り上げた剣の風圧に吹き飛ばされて地面に転がる。
慧「ふぅ〜・・・!!ふぅ〜・・・・!!ウガアアアアアアアアアアアアッ!!!」
慧がハルバートに組み替えてさらに地面を蹴り上げて思い切り振りかぶりセルケートレジェンドルガに向かって斧の刃を振り下ろす!!
それは防いでいた右腕の盾にひびを入れ、そのまま力押しに押しまくる!!
慧「あたしは・・・あたしは・・・・負けない・・・負けられないんだっ!!!この世界の時間を絶対守ってみせる!!!仮面ライダー・・・バルキリーとして!!ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
そして一気に振り下ろし右腕を一気にぶった切る!!!
右腕が吹き飛び、血が噴出す。
血にまみれながらも鬼のような形相で何度も立ち上がって武器を振るう姿にセルケートレジェンドルガは震えるような快楽に笑みを浮かべてしまう。
これほど楽しい戦いはこれまでになかった!!
それがただの人間ごときが信じられない力を出してレジェンドルガを追い詰めているのだ!!
セルケートレジェンドルガ「ふふふ・・・そうか。お前の強さはそれか。だが、某も件の道に入り修羅と化した・・・・その力とくとみろ!!」
左腕の大剣を振り上げて思い切り振りかぶると横なぎに振り上げて紫色の光る刃が無数発射されてそれが慧に直撃しそのまま壁ごとぶち抜かれて慧が投げ出される!!
慧「きゃああああああああああああああああああ!!」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
慧「ああ・・・・・けほっ・・・!!」
おびただしい血液を吐き出し、もう全身の至る所が激痛に支配されて悲鳴を上げている。
そこへセルケートレジェンドルガがやってきて剣を首筋に押し当てる。
デッドエンドだ。
慧は覚悟を決めた。
一方。
ピーコックイマジンたんが港湾地帯でルークたちを探しているところに、一台のバイクが轟音を上げてこっちに向かってものすごい速さで近づいてくる!!
そして、タイヤの前輪を上げてウィリーの状態で突っ込んだ!!
そして空中に飛び上がり、華麗に回転しながら地面に降り立ったのはビショップであった。
ピーコックイマジンたん「チェックメイト・フォーか!」
ビショップ「よくもルークを追い詰めてくれましたね。覚悟しなさい!!」
ベルトにソウルポッドを差込、銀色の光が解き放たれると、バックルを開放する。
ビショップ「変身!!」
「Bishop Form」
ビショップの姿が仮面ライダーワイバーン・ビショップフォームの姿になり、ビショップセイバーを構えると、地面を蹴り飛ばし、目にも止まらない速さで駆け寄り、ボディに剣をたたきつけ、切る斬るKILL――――――――――――――――――!!
Bワイバーン「はあああああああああああああああああっ!!」
よろめいたところへビショップフォームが渾身の蹴りを放ち、蹴り飛ばすと、そこへ銀色のウェーブがかかったロングヘアをなびかせながら美しい端正な顔立ちの美少女がバックルを装着したまま歩いてきた。
クイーンである。
クイーン「さーてと、おバカさんたちの喧嘩は本人たちの間で解決させるってことで、あたしも混ざるよ。変・身♪」
「Queen Form」
クイーンフォームに変身し、ボウガンを構えると炎に包まれた矢を一気に発射する。
命中率が精密的に正確な矢は右腕の羽にすべて着弾し、破壊する!!
ピーコックイマジンたん「ぐああああああああああああああああっ!!」
よろめいたところへ、クイーンフォームとビショップフォームが同時にバックルのボタンを押す。
Bワイバーン「クイーン!!」
Qワイバーン「派手にいくわよ〜!!」
「「full charge」」
ビショップフォームの全身に銀色の風が渦を巻いて取り巻き、クイーンフォームの全身に赤く透き通るような炎が取り巻き、二人が同時に飛び上がると、風に炎が渦に飲まれ、そのままピーコックイマジンたんの周りを取り囲む!!
そして、灼熱の竜巻に飲まれて身動きの取れないピーコックイマジンたんの頭上から足を振り上げたまま落下し、一気に振り下ろす!!!
「「はああああああああああああああああああああっ!!」」
かかと落としを炸裂し、ピーコックイマジンたんが全身を炎に包まれてのけぞり、そのまま倒れこんだ!!
ピーコックイマジンたん「バカなあああああああああああああああっ!!」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
炎が吹き上がり、ピーコックイマジンたんが爆発する。
Bワイバーン「さて次は慧ちゃんのところに!!」
Qワイバーン「まさかセルケートとぶち当たるなんてね。今頃死んでたりしてね。ナンマンダブナンマンダブ・・・」
Bワイバーン「縁起でもないこと言わないの!!行きますよっ!!」
Qワイバーン「アイヨ」
死に掛けてました。
慧(あー・・・ついに何か見えてきた。黒いフードをかぶってガイコツのお面かぶって鎌を持ってるお姉ちゃんと頭のてっぺんにわっかのっけている白い羽つけたお姉ちゃんが・・・あたしの手を引っ張っている・・・・つーか綺麗なお花畑と川へと連れて行こうとしている)
そのときだった。
エメラルド「出来たあああああああああああああああああああっ!!」
突然エメラルドの絶叫が響き渡った。
ルーベット「何が!?」
エメラルド「お姉ちゃん!!今いくぜ!!」
トパーズ「どこへだ!?」
エメラルド「皆!!準備はいい!?お姉ちゃん助けたいでしょっ!?これが一か八かの大勝負だ!!」
そして、時空を超えて、上空に何か羽ばたいている物体が飛び込んできた。
それは銀色の美しい光を放ちながら羽を羽ばたかせて飛び回っている鳥のようなもの。
そしてそれは羽に埋め込まれている赤、青、金、緑、橙、紫の宝石から光線を発射してセルケートレジェンドルガを打ち据える!!
セルケートレジェンドルガ「何!?」
セルケートレジェンドルガが吹き飛び、慧の下にその鳥が降り立った。すると慧の手の中で羽が折りたたまれ、見る見るその姿をカメラのような形へと変えていく。
慧「これはっ!?」
エメラルド「あたしの最高作品!!イカロスショット!!それをバックルはずして入れ替えて!!」
エメラルドに言われるがままにバックルが外れ、黒いプレート部分にイカロスショットを装てんする。そして、パスを通す!!!
「Lance Ax Gun Sword Assassin Phantom・・・Climax Form」
するとバックルの6つの宝石がいっせいに光だし、中から6体のイマジンが全員いっせいに飛び出し、一度に慧の体の中に憑依した!!!
ルーベット「なななななななななななな何だこれはあああああああああっ!?」
トパーズ「どうなっているんだっ!?」
サファイア「ほえええええええええええええええええ!!」
ルーベットの仮面が頭部に装着され、トパーズが右肩、エメラルドが左肩に装着される。
そして、サファイアが背中に憑依しそのまま仮面が青白い光を放つ翼となり、広がる!!
琥珀の仮面のアンテナがそのまま鋭いカギ爪となり左腕に装着し、アメジストの仮面が装甲と化して右腕に憑依した!!
ルーベット「ぎゃああああああああああああああああっ!!!」
琥珀「・・・・一度に6体憑依か!」
アメジスト「すごい・・・・エメラルド、貴方天才!?」
そして頭部の翼が6枚の翼のウイングが装着され、虹色の光を放ってその姿は現れた!!
エメラルド「これぞ全員集合!!!クライマックスフォームの誕生だぜっ!!」
セルケートレジェンドルガ「何・・・!?」
セルケートレジェンドルガは驚かずにいられなかった。
目の前に立っている慧は一度に6体のイマジンを憑依し、クライマックスフォームと化し、武器を構えて悠然と立っていたのだ。
Cバルキリー「力が・・・・湧き上がってくる!!」
エメラルド「お姉ちゃん。思い切り暴れてきな!!」
トパーズ「サポートは任せろ!!」
Cバルキリー「・・・うん・・・・行くよ!!!」
一方。
ルークの前に音を立てて一台のバイクが乗り込んできた。
ヘルメットをはずし、その顔を見て、ルークは震え上がりそうだったが、必死で恐怖を殺して前にいる相手を見つめ返す。
キングだった。
さくら「大友くん・・・?」
ルーク「キング・・・!!頼むよ、こいつのこと見逃してくれ・・・!!」
ルークが必死な形相で両手を大きく広げてさくらをかばおうとしている。
しかし不機嫌な表情を崩さないまま晶は忠告を無視するかのようにズンズンと近寄ってくる。
そして手に雷とともに青い光を帯びたキングジャベリンを取り出し、ベルトにソウルポッドを装てんする。
晶「変身!」
青い稲妻が全身をとり囲み、見る見るその姿を青い竜をイメージさせる甲冑と仮面を身につけた仮面ライダーワイバーン・キングフォームへと変身する!!!
そして槍を構えたまま、矛先を向けて一気に走り出す!!
ルーク(やっぱりルークの言葉は届かないのか・・・!?)
そう落胆し絶望しかけたときだった。
Kワイバーン「ルーク!!頭下げろ!!!」
そう叫んだと同時にルークがあっけに取られるまもなく、頭を下げるとキングフォームが槍投げの要領で一気に槍を振りかぶり投げはなった!!まっすぐ飛んでいく槍は青い光を帯びて稲妻のようにまぶしく輝きながら後ろにいる人物へと向かっていった!!
ギィン!!!
それをはじかれた音がすると、槍が地面に突き刺さり、そこへ小柄な少女がにやにや笑みを浮かべながら降りてきた。
Kワイバーン「ルークと鷹月さんをずっと尾行していたな。レジェンドルガ!!」
智「およ、最初からバレバレでしたか」
Kワイバーン「まあ、幸か不幸かこの馬鹿が勘違いしてくれたことと、油断しすぎたから、ようやく見つけたよ。スフィンクスレジェンドルガ!!」
キングフォームと向き合っている智の姿を見て、ルークはわけが分からない様子でおずおずと質問をする。
ルーク「ま・・まさか・・・障害って・・・」
Kワイバーン「・・・・お前が何を聞き間違えたのか知らないけど、俺は、鷹月さんとルークを監視していたこいつを倒せって言ったつもりだったんだよ!!それを勝手に勘違いして飛び出しちゃって・・・・本当に苦労したんだから」
キングフォームがため息をついて、ルークに向き直る。
そしてわずかに聞き取れなかったが確かにつぶやいていた。
「ごめん」
その言葉がうれしかった。
自分が信じてきたキングはキングのままだった!!
不器用かもしれないけど、自分の願いを聞き届けてくれていた・・・!!
窮地に追いやられているとき、助けに来てくれた・・・・!!
涙が込みあがってくる。うれしすぎて、全身が打ち震えている。
Kワイバーン「ルーク・・・。こいつは俺が倒す。お前は鷹月さんを・・・全力で守れ!!お前なら出来るはずだ。出来るか!?」
ルーク「・・・おおっ!!了解だあああああああああああっ!」
涙をぬぐって、ベルトを装着する。
ルーク「変身!!」
ルークの姿が仮面ライダーワイバーン・ルークフォームに変身を遂げ、さくらを抱えたまま工場の外に逃げていく。そしてキングフォームが槍を構えてスフィンクスレジェンドルガ・・・智に向き直る。しかし智はにやにやと不快な笑みを崩さない。
キングフォームが地面を蹴り飛ばし、槍を突き出す!!
Kワイバーン「はあああああああああああああああっ!!」
智「ほいよっ!!」
智が何と槍の穂先の上に飛び乗り、体を回転させて着地させると、キングフォームの背後を取る。しかし攻撃を仕掛ける気配はない。
智「今日は挨拶程度だったんだよねぇ。まあ、そういうことで、あたしもう帰るわ。そろそろアニメ始まっちゃうし」
Kワイバーン「何っ!?」
智「あ〜、でもねぇ、これからもっと面白いことになると思うよ?あたしねぇ、見つけちゃったよ。・・・・レジェンドルガきっての最強の7体の戦士たち・・・・セブンズヘブンをね」
セブンズヘブン。
その言葉を聴いて、キングフォームが戦慄するかのように表情をこわばらせる。
Kワイバーン「ば・・・・バカな・・・・あいつらをよみがえらせるつもりか!?お前ら自殺行為だぞ!!あいつらは自分たちの一族の王を退屈しのぎとか言う理由で殺そうとして、反乱を起こした最強最悪の傭兵集団じゃないか!!」
智「あたしだって、楽しければそれでいいもんね。それにもう封印解いちゃったし。あいつらの実力はセルケートなんて及びもしないだろうね。そんな奴らがこの世界に解き放たれて大暴れしたら・・・楽しいことになりそうだよねぇ」
Kワイバーン「そんなこと・・・させないっ!!」
智「無理だもんねー♪あっはははははははははは!!じゃあねん」
そういって、智は全身から光を放ってやがてその姿が見えなくなった。
Kワイバーン「お、おい!!」
キングフォームが慌てて駆け出すがもうその姿はどこにもいなかった。
「セブンズヘブン」
その言葉を聴いて、まだ震えが止まらない。半分怒りで、半分恐怖で。
あの7人が蘇った。
かつて晶たちの世界を滅ぼし、あらゆる命を奪い去った最強最悪の戦士たちが。
一方。
クライマックスフォームに変身した慧はソードモードでセルケートレジェンドルガと激しい剣戟を繰り広げていた!!
そして、相手が大剣を振り上げたそのときだ。
視界のレーダーに赤いカーソルが浮かび上がり、それが大きく腕を振り上げてガラ空きになった上半身を照らしている。
Cバルキリー「まさか、あれが弱点!?」
エメラルド「よっしゃあ!!トパーズ!!一緒に行くよ!!」
トパーズ「二人の力をソードに流し込む!!」
「Charge and up」
ソードの刃に緑色と金色の光が宿り、身構えると一気に走り出して懐にもぐりこみ、ソードの身軽さとアックスの重量を同時に放つ斬撃を叩き込んだ!!
Cバルキリー「クライマックススラッシュッ!!!!」
セルケートレジェンドルガ「ぐああああああああああああああああああああっ!!」
セルケートレジェンドルガが腕を切り付けられ、さらにそのダメージが全身に伝わり、6色の光が全身から放って、ついにセルケートレジェンドルガがひざを突いた。
そしてそのまま針尾の姿に戻る。
針尾「見事だ。某の目は・・・いつの間にか狂気で曇っていたらしい。お前たちの未来につながる絆というものを・・・・軽んじていた・・・某の負けだ」
Cバルキリー「あたしだってもし一歩間違えていたら・・・そうなっていたかもしれない」
もしルーベットに会わなければ今の自分はいない。
そうひしひしと感じる。
針尾「・・・・慧、気をつけろ。この先は地獄に等しい・・・。セブンズヘブンが・・・蘇ってお前たちを・・・狙ってくる・・・・せいぜいあがくがいい。地獄から見させてもらう・・・お前たちのゆるぎない絆の力というものをな」
そういって、倒れこむと体中にひびが入り、粉々に砕け散った。
Cバルキリー「セブンズヘブン・・・・?」
クライマックスフォームは聞いたことのない言葉に不安を感じずに入られなかった。
数日後。
ルークとビショップの計らいで大学構内のサマースクールの紹介で会報を作って欲しいと依頼が舞い込み、さくらは大学の広報委員会の学生たちと作業を行い新聞作業を続けられるようになったという。
続く
,こんにちは!!
ついに登場させました・・・てんこもりこと「クライマックスフォーム」!!
エメラルドが作ったカメラ型アイテム「イカロスショット」をバックルに装てんしてパスを通すことですべてのライダーの力を引き出せる最強形態に変身します!!
そして・・・すべてのライダーの技が使える上に、戦うのは慧の意識で、慧が実戦に出ます!!
そして智が復活させた「セブンズヘブン」は・・・次回から登場いたします!!
>烈様
>慧
慧の不幸はもう今に始まったことではないですが、書いているとここまでやるとあかんかな?とか思っちゃったりします。でも、慧はそんな逆境に立たされながらも必ず光をつかめるので、応援よろしくお願いいたします。
>そして、己の“狂気”をどうにかしていかないと、君は大切な人(慧)のことすらも傷つけ、失ってしまうことになるだろう……ということを断言しよう…。
晶「烈さん、ご忠告ありがとう。今回のことも俺がルークにちゃんと説明していればこんなことにはならなかったんだよな。・・・クイーンからはあの後説教地獄受けたし、鷹月の記憶を消すのも大変だったし・・・・申し訳ございません」
後、何ゆえに“セルケート”は慧ちゃんを狙っているのですか?彼女はいったい何が目的で彼女を殺そうとするのですか?そのことなどが気になってきます。
針尾「強いからよ、奴の強さを見ていたが、あいつの目には獣のようなギラギラ光り輝いている光が宿っておる。それを見て、某が刀を交えるにふさわしい相手と直感し、ずっと待っていたのよ」
次回から「セブンズヘブン編」始まります!!
よろしくお願いいたします!!
,#000000,./bg_f.gif,st0416.nas931.ichikawa.nttpc.ne.jp,0
2009年08月24日(月) 09時21分37秒,20090824091627,20090827092137,Vr1L9ia50g1VA,仮面ライダーバルキリーたん 第21話「Blade of murderous intent」,鴎,,,「Blade of murderous intent」
8月10日
PM23:45 廃墟のキャンプ場
夜空には満天の星空が広がり、辺りに何もない、山々に囲まれた静寂に包まれている。
そんな中、セルケートレジェンドルガ(針尾)は苛立ちを隠しきれない様子でコテージの中で暴れ狂っていた。
ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
コテージの壁を切り裂き、室内の装飾を蹴り飛ばし、窓ガラスを割り、あらゆる目に付くものを残骸を残さないように徹底的に切り裂いていく。
針尾「はぁ…あぁああああっ!!何が待機命令だ、ウォーサイズ!!もう、もう我慢の限界だッ!!!」
人里離れたアジトに叫び声が響いた。ドラム缶、鏡…雑多な小屋の中を暴れ回る針尾のせいで中は無残な状況をさらしている。
針尾「殺したぁい…慧ィ…我慢の限界だ!ぶっ殺したぁい・・・きひひひひひ!!」
針尾の顔が狂気に引きつり、視線が虚空をさまよう。まるで夢遊病患者のように虚ろな、それでいて空恐ろしい視線が。
ウォーサイズこと草薙から告げられた突然の待機命令。それは針尾にとっては耐え難いものであった。慧こと仮面ライダーバルキリー、およびチェックメイトフォーの実力を調査し、念入りに現在のレベルや実力、相互関係などを調べるまで待機するように伝えられ、一時はこれもレジェンドルガの切り札と揶揄され、しぶしぶ納得したのだが、彼女が倒され、彼女が生前に指揮していたエイプイマジンたんやクラブイマジンたんたちまでもが勝手な行動を起こした上に返り討ちにあい、新しい戦力を手に入れ、ますますの成長を遂げていくバルキリーに手が出せないことがもはや限界を迎えていたのだった。
そのせいか苛立ちが募り、快楽を得られない不満が爆発する。
針尾「…あぁああああああ!!つまんない…つまんないつまんないつ・ま・ん・ね・えんだよああああああああああああああァ!!」
「退屈しのぎ、させてあげようか?」
と、そこに愉快そうな声が響き渡る。見るとそこにはいつの間にかゴシックパンクの服装に身を包んだ栗色の髪をポニーテールに縛り上げ、小柄な体躯だが豊満な胸など出ているところは出ている少女・智(とも)が姿を現していた。針尾の血走った視線が智を捉える。獲物を狙う肉食獣のように。
針尾「お前・・・スフィンクスか!?何のようだ!!」
智「ありゃま、荒れてるね。でももういいんじゃない?我慢しなくてもさぁ・・。僕の配下をもう動かしている。そいつとうまく連携取れれば、間違いなくバルキリーをつぶすことが出来るよ」
針尾「・・・・何!?」
智「・・・・僕の言葉に釣られてみる?」
智がにぃっと無邪気ないたずらっ子のように笑う。しかしその影はスフィンクスをイメージしているかのような巨大で獰猛な赤い瞳をギラギラと光り輝き、牙をむき出しにしている邪悪なシルエットが浮かび上がっていた・・・・。
その頃、天童慧はというと・・・。
8月11日 AM6:30
星見海浜公園 遊歩道
朝焼けが美しく映える海沿いの遊歩道を新品の赤い自転車にまたがった慧が自転車を走らせていた。慧の瞳は金色に光り輝いており眼鏡をかけ、知性的な雰囲気を感じさせる。髪のひと房だけが長く伸び金色のメッシュが入り混じっている。
トパーズが憑依しているのだった。
T慧「ふむ、朝の散歩というのもなかなか楽しいものだな」
慧(でしょう?えへへ、買ったばっかりの自転車〜♪これで海沿いの道をかっ飛ばすのってすごく気持ちいいんだよね〜♪)
T慧「なるほど、確かにいいものだ」
慧(この先にね、早朝営業してる食堂があるからそこでご飯にしようよ♪)
T慧「ふふっ、ご機嫌だな、慧」
慧(うん!だってさ、バイトでお金貯めてようやく買えたんだもんね!!8万円もする最新機種のマウンテンバイク〜♪ここまで貯めるのに長かったなぁ・・・。スーパーでバイトすれば半額弁当争奪戦に巻き込まれてお客さんにネギやらゴボウやらでボカスカ殴られ、タイムサービスのおばちゃんたちのカートの集団に吹き飛ばされ、踏みつぶされて、毎日毎日赤チンと消毒薬が絶えない日々・・・。お母さんの部屋の掃除のバイトで積み上げられたエロゲーやギャルゲーの山に押しつぶされるわ、新聞配達すれば車にはねられるわ、喫茶店のバイトをすれば、なぜかコーヒーやスパゲッティとかが飛んできて頭から被るハメになるわ・・・・ううう・・・・何だか泣けてきた)
T慧「・・・もう思い出さない方がいい」
ここまで不幸な目にあいながらも、しっかりと貯金して欲しいものを買っただけでも彼女の努力が並はずれているものと感心させられる。
T慧「パトロールも一旦切り上げるぞ。とりあえず、朝ごはんだ」
慧(うん!)
そういって、自転車を走らせたその時だった。
目の前に突如紫色のロングヘアを後ろで縛り上げた少女がふらりと出てきた。
そして慧を見るや否や、腰に添えている刀に手をかける。
針尾「キヒヒヒヒ・・・・ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
狂った哄笑を上げながら、針尾は目にも止まらない速さで刀を抜きだす!!
T慧「来るぞ!!」
そういって、自転車から飛び出して芝生にかけこむと、乗り手を失った自転車にいくつもの光の筋がはいる。そして、次の瞬間。
ズバッ!!!ズバズバズバズバズバズバズバズバッ!!!
バキバキバキバキバキ―――――――――――――――ッ!!!!!
ガラガラガラガラガラガッシャ――――――――――――――ン!!!!
慧(ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!)
努力の結晶ともいえる自転車が粉々に切り裂き、粉砕され、見るも無残な残骸と化した。
慧(自転車がぁ・・・・あたしの自転車ぁああああぁああぁあああああああ!!)
慧がもはや狂ったように絶叫する。
しかし、刀を構えている少女・針尾はさらに刀を抜いて「きひひひ」とよだれをだらしなく垂らしながらじりじりと近寄ってくる。
針尾「やっと・・・やっと・・・・やっとぉ・・・殺せるううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!ヒャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハ!!!!!!」
そしてその姿を全身を紫色の甲冑を持ち、頭部に鋭い針を模した毒々しい色の毒針を携え、左腕が完全に巨大な剣と化している怪物、セルケートレジェンドルガに変化する。
T慧「レジェンドルガ!!くっ、行くぞ!変身!!」
「ax form」
金色の光が慧の全身を取り囲み、みるみるその姿を屈強なパワーファイター・仮面ライダーバルキリー・アックスフォームへと変身する。Vガッシャー・アックスモードを構えると戦意をあらわにして勇猛果敢に立ち向かう。
Aバルキリー「チェックメイト、待ったはなしだ」
セルケートレジェンドルガ「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!もう、もう我慢なんて出来ないわよぅ!!!早く、早く、殺してやりたいいいいいいいいいいいいい!!!」
狂ったように叫びながら地面をけり飛ばし、すさまじい勢いで大剣を振り回し、予測不可能な方向から繰り出される斬撃の猛ラッシュを、アックスフォームは斧の刃で防ぎながら体勢を変えて隙を窺う。
Aバルキリー「くっ、こいつ、強い・・・!」
セルケートレジェンドルガ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!キャーーーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!ひひひひひ・・・・死ね・・・死ね・・・死ね死ね死ね死ね死ね死ねジネェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」
もはや完全に正気を失っている。
アックスフォームは戦慄する。自分を殺すことしか考えていない、彼女の常識の範疇を超えた狂気と殺意に全身がふるえあがるような気がする。
Aバルキリー「生憎長丁場はできないな。君の相手は地獄の鬼にでも押しつけるとしよう」
そういって、パスをバックルに通して金色の光が発生する。
「Full charge」
Aバルキリー「ふん!!」
思い切り振りかぶって斧の刃を押し当てて、袈裟がけに一気に切り裂くべく、金色に光り輝く刃が炸裂する。しかし次の瞬間彼女は驚愕する。
Aバルキリー「何っ!?」
セルケートレジェンドルガ「あひゃひゃひゃひゃあ・・・いい・・・・痛い・・・痛いけど・・・気持ちいい・・・・あっはあ・・・・もっと・・・・もっともっともっとしようよぉ!!激しく!!!強く!!某を熱く燃えたぎらせろぉおぉぉおおおおおおおおお!!」
セルケートレジェンドルガの鎧に斧の刃がわずかな切り傷を作っただけで全くと言っていいほど効いていないのだ。渾身の一撃を与えたはずだったアックスフォームはあまりにも頑強な鎧に戦慄する。
Aバルキリー「くっ、こいつ、今までのやつとは比べモノにならん!!」
セルケートレジェンドルガ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!きひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!楽しい・・・楽しい・・・・もっとしようよ・・・・いっぱい遊ぼうよぉ・・・・ずぅっとお預け喰らってたんだからさぁ・・・もう我慢出来ないんだよ・・・・ケキャアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そういって、左腕の大剣に紫色の光が宿り、見る見るその形を巨大な刃のような形へと変えていき、それを大きく振りかぶると、巨大な斬撃となって地面を削りながら、アックスフォームに向かって猛然と放たれる!!!
Aバルキリー「くっ、南無三!!」
アックスフォームが斧の刃を構えなおすと同時に紫色の光が炸裂し、途端に視界が白くはじけ、轟音と共に大爆発が発生する。
やがて爆発の炎がおさまると、そこにあるものを見て、セルケートレジェンドルガは首をかしげる。
そこには爆発したガス灯が無残な姿をさらし、あらゆるものが爆風によって吹き飛ばされ、焼かれ、真黒になった無残な光景が広がっているが、アックスフォームはそこにはいなかった。
セルケートレジェンドルガは針尾の姿に戻ると、ようやく正気を取り戻したかのように冷静な表情に変わる。
針尾「・・・・逃げたか?あの攻撃を受けて逃れられるほどの体力があるとは、なかなかだ。やはり楽しませてくれそうだな、天童慧・・・・」
一方。
そこから離れた砂浜にずぶ濡れになったアックスフォームが重くなった体を必死に押して這い上がってきた。慧の姿に戻る。息も荒く、顔色も悪い。受けたダメージは計り知れない。
慧「はー・・・・はー・・・・・ぐぅ・・・・!!」
足がもはや立つことさえままならなくなり、膝をついて倒れこんだ。
その時だった。
「おい、大丈夫か!?」
力強い声と共に抱き上げられる。目をうっすらと開くと、そこにはハーフパンツとTシャツに身を包んだ健康そうな小麦色の肌を持つ長身の女性、ルークであった。
慧「あ・・・・塔子さん?」
塔子とは、ルークが人間体のときに名乗っている名前である。
ルーク「どうしたんだよ、ズタボロじゃねぇか!?誰かにやられたのか!?しっかりしろ!!」
ルークが必死の形相で声をかける。本気で心配しているらしい。
慧「・・・・大丈夫・・・です・・・・ちょっと・・・喧嘩・・・・。負けちゃったけど」
そういって、ルークから離れ、ふらふらと起き上がろうとしたその時だった。
ブチッ・・・・・
バサバサバサバサバサ・・・・ッ!!!!
慧「・・・・え?」
ルーク「・・・・・なっ」
慧とルークがその音に気付いたのは、慧の体を見た時だった。
斬撃のダメージはもはや甲冑だけでは防ぎきれなかったらしい。服の到る所に切り刻まれた跡があり、水で重くなった服の重みによって引きちぎられ、砂浜に落ちた。
均整のとれたプロポーションがあらわになり、下着のみとなっていた。
ルーク「・・・・あらら」
慧の顔が見る見る真っ赤になり、とうとう涙が眼に浮かびあがり、体を両腕で抱きしめるかのようにして座り込むと、もう限界だった。声を大にして叫んだ。
慧「い・・・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
(ちなみに慧の身長は167p、3サイズは86・58・85といった均整のとれているプロポーションである)
しかしその現場にもう一人、実はいたのである。
砂浜のテトラポットに隠れて、桃色のツインテールに縛り上げて、首に大きなゴーグルをかけた小柄な少女が一眼レフのカメラを片手にその一部始終を見ていた。
「はわわ・・・これは・・・これは大事件なのであります」
彼女の名前は鷹月さくら(たかつき・さくら)。
よりにもよって、慧と同じクラスメートであった。
AM9:30 坂の上団地6号棟 201号室(ルークの家)
晶「慧が狙われただとっ!?」
晶のいつになく焦りと驚きが入り混じった声が電話口から飛んできて、ルークはキィーンと耳に響くノイズに顔をしかめる。
ルーク「ああ、今のところは命に別条はない。ビショップの治療もあってか、今は落ち着いて寝ている。しかし、バルキリーをここまで追い詰めたヤツは初めてだぜ。今回ばかりは油断ならねぇ。キング、クイーンにはレジェンドルガの情報を集めてもらっている。この後、ビショップに治療を任せて、ルークとキングでクイーンの情報を頼りにヤツの行方を追ったほうがいいぜ」
晶「そうだな。ビショップに一任しよう。クイーンはいつ連絡すると言っていた?」
ルーク「30分おきにルークたち全員の携帯にメールで連絡するってよ」
晶「上出来だ。よしっ、俺もすぐ向かう」
そういって、電話が切れた。
そこへ、ビショップが心配そうな顔つきでやってくる。
ビショップ「ルーク・・・」
ルーク「ビショップ、バルキリーのこと、頼むぜ。何ていうか・・・あいつも女の子だしよ・・・色々と嫌な思いしただろうし・・・その・・・・・お前ならあいつにもフォロー出来ると思うし」
ルークが言葉を選びながら、心配している様子でビショップに話しかける。
粗野で乱暴な一面が目立つが、こういった人を思いやる心や気配りを忘れない人情家でもあるのだ。まあガサツで粗暴な面が目立つのは自分に正直なだけで決して悪気もないのだが。あと思い込みが激しく感情的になりやすい一面もタマに傷だが。
ビショップ「・・・・ええ」
ルーク「キッチンに野菜スープがある。紅茶とかコーヒーとかビールとかも一通り揃ってるし、グラスは冷やしてある。まあ好きに使ってくれ」
ビショップ「はい」
ルーク「・・・それじゃ、頼む」
ルークが出て行き、ビショップが慧のもとに冷やしておいたタオルを持っていこうと洗面所に向かっていく。布団で苦しそうに寝ている慧を心配そうにビショップが見る。慈悲深い優しさと母性がにじみでているような視線で慧を見ながら彼女はタオルを額に置いた。
PM15:00
児童公園内
まだうだるような暑さが残る夏の午後。ルークはジュースを買って休憩所の中に座り込むと同じように座っていたクイーンに冷えているコーラを投げ渡す。
ジュースの蓋を音をたてて開けて一気に飲み干し、頭が急速に冷えて痛みを感じながらもルークはクイーンの話を聞き入っていた。
クイーン「セルケート・・・・サソリの怪物みたいなレジェンドルガが慧を探しているみたい。おそらく慧の傷の様子からみてそいつの仕業かもしれない」
ルーク「セルケート・・・そいつも確かルークたちの世界をぶっ壊してくれた大バカ野郎の一人だったよな。くそっ、今度はバルキリーに手ェ出しやがったか。マジでシメないと次は何やらかすか分かったもんじゃねぇな」
クイーン「うん。一応わかったのは、そいつが現在この近くから港湾地帯に出没しているってこと。人気のいない所にアジトがある可能性が高い。そこを見つけ出して、戻ってきたところを奇襲を仕掛けよう」
ルーク「街中で戦うには周りの犠牲もありえないわけじゃないしな」
クイーン「そういうこと。それじゃ、もう少し頑張りますか」
ルーク「ああ」
そういって、ルークとクイーンが休憩所を出て行った。
そしてルークの後ろを桃色のツインテールの小柄な少女が身を隠しながら、コソコソと尾行していた。
数十分後。
人気のない裏路地。ふと、ルークが後ろに視線を感じ、立ち止まる。
そして、ドスの聞いた低い声でつぶやく。
ルーク「・・・おい、そろそろいい加減に出てこいや。ルークのイライラはもうリミット限界だぜ。ブチ殺されたくなけりゃ・・・・いや違うな・・・・一秒でも長生きしたけりゃ・・・出てこいやっ!!!」
凶暴な咆哮とともに地面を蹴りだし、気配のする人影の前に飛び上がって地面に降り立ち、その気配の主の頭をわしづかみにして持ち上げて、一気にギリギリ締め上げる。
そのまま頭を握りつぶしてしまわんばかりに。
さくら「あうあうあうあうあうあう〜!!!!痛い痛い痛いのです〜!!!」
泣きそうな甲高い声を聞いて、ルークが思わず目を見開く。そこには涙目でジタバタ暴れている小柄な人間の少女がいた。
ルーク「ゲッ、ガキかよっ!?わ、わりぃ!!!」
ルークが思わず手を放し、優しく地面に着地させる。
よほど痛かったのか万力のような手で締め付けられた頭を痛そうに両手で押えて、目から涙をにじませている小柄な少女を見て、ルークはいつになく慌てふためく。
さくら「あうあうあうあう〜、頭潰れるかと思ったのですぅ・・・」
ルーク「わ、わりぃ、ちょっとイライラしてたからって、本当にゴメンな!!ゴメン!!」
ルークが両手を合わせて頭を下げる。
真剣な表情で謝るルークを見て、さくらも声をかける。
さくら「いえ、さくらもお姉さんが怖そうな人だったからついついスケバンか犯罪者かと思ってつい尾行しちゃったのですぅ。ごめんなさい・・・・」
ルーク「こ、怖そう?スケバン?犯罪者?」
純真無垢な泣き顔で言われたあまりにも邪気のない言葉にルークは一気に打ちのめされる。
ルーク「スケバン・・・・犯罪者顔・・・・怖い・・・・ふふ・・・・うう・・・それで・・・何?ルークに何の用?」
涙をこらえ、震える拳を必死で抑えながらルークがきくと、さくらは思い出したように目を見開き、真剣な表情でルークを見据える。
さくら「あ、ああああああああなた、ててててててて、天童さんのお知り合いなのですか?」
ルーク「慧?ああ、まあ、そんなところだけど?」
さくら「え、えええええええええっと、あ、あれは、何なのですか!?」
ルーク「あれって?」
そう言われると、さくらは左手に何かをもったように構え、それを腰に通すような仕草をとる。
さくら「へ・・・変身!!」
ルーク「!?」
さくら「チェッ・・・チェックメイト!!待ったはなしだ!!これって、あれ、何だったのですか!?」
ルークはようやく事態を理解し、頭に稲光が落ちたような衝撃を感じた。
そう、慧は変身しているところを、さくらに一部始終見られてしまっていたのだ。
どこまで不幸なんだよ・・・と頭を抱えそうになりながら、ルークはしどろもどろになって答える。
ルーク「ええっと・・・その・・・・」
さくら「夢とか見間違いなんて言い訳は聞かないのです!!誰がなんて言おうと、自分が見たら、それが現実なのです!!その証拠に!!しっかりと写真も撮ってあるのです!!」
ルーク「写真!?」
またまた仰天した。見ると首から下げているのは一眼レフのカメラだった。
これで一部始終撮られたとでもいうのか。
ますます頭が痛くなってくる。
ルーク「あ・・・あのよぅ・・・・」
さくら「あれ何なのですか!?どうやってやったのですか!?」
ルーク「えーと・・・その・・・・あの・・・・」
もうチェックメイト・フォーのルークも叶わないほどの純真無垢な少女の次から次へと繰り出される質問に辟易していた。
しかし、もう限界だった。
そして、ルークがつい大声を出してしまった。
ルーク「だーっ!!!!あのなぁ、ルークは何も知らねぇ!!本人に直接聞けばいいだろうが!!!」
それを言われ、しばし考え込んだようにすると、さくらは「そうか!」と納得したようにうなづいて、ルークに向き合った。
さくら「そのとおりなのです!!怖いお姉さん、失礼したのです。あたし、失礼するのです!!天童さんに真相を突き止めに行ってくるのです!!」
そういって、止める間もなく猛然と走り去ってしまった。
しばし呆然とその後ろ姿を見送るルークだったが、自分で言った言葉の意味を振り返り、見る見るその顔が蒼くなっていく。
ルーク「・・・・ヤバい。ヤバすぎる。ルーク、何も考えないで言っちゃったけど、よく考えりゃそれってバルキリーの危険度が増しただけじゃねぇか!!!だあああああああああああああああああああああああああああ!!!こんなのキングにバレたら・・・殺される!!!」
晶「・・・・やってくれたな、このバカ」
後ろから冷たい一言が飛んでくる。しかしさらに感じるのはそれだけではない。
夏の暑さが一転して極寒の絶対零度を下回る苛烈な冷たさを感じさせ、全身の鳥肌が立つような怒りに満ちている低い声色。
恐る恐る振り返るとキング・・・晶の肩が小刻みに震えている。心なしか外気温が下がったような。そして、なんだ、大気が、鳴動している?
ルーク「!」
ゆっくりと面をあげた晶の顔は笑顔だったが、かんばせには、この世のものとは思えない憤怒のあかしともいえる血管が浮き上がっていた。そして容赦なく叩きつけられる負のオーラ。これは、紛れも無く、殺意ッ……!
晶「・・・・殺すぞ?」
ルーク「ご、ご、ごめんなしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい!!!」
晶「死ね、バカ」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
そして、その日、雲ひとつないはずの晴天に青い稲光が一閃落ち、凄まじい轟音と雷が落ちた時のあまりの衝撃に市民が驚き慌てふためいたという。
黒こげになったルークを容赦なく首根っこをつかんで引きずっている状態で、晶は憤然と歩きながら、さくらの一部始終の行動にどうしたものかと頭を悩ませていた。
晶「・・・ふう・・・・どうしよう。まあ、慧やこいつら以外の人間の命なんてゴミかクズみたいなものだから別に処刑するっていうのもありだけど、そうなるとますます事態がややこしくなるからなぁ」
無垢な表情のまま、恐ろしく冷酷な響きのある言葉を口にする。
しかしその眼には目に映る慧以外の「その他大勢」に対する命に敬意の兆しはなく、むしろ見下すかのように蔑視している、彼の歪んだ狂気が見え隠れしていた。
日に日に強くなってきている彼の本質ともとれる「純粋無垢なまでの狂気」が。
さくら「天童慧さん・・・・あれは・・・ここ最近この町で起こっている事件に何か関係しているのです!あたし、新聞部のエースとして今回の事件必ず挙げて見せるのですぅ!!エイエイオー!!なのです!!」
そういって、ガッツポーズを構えるさくらの後ろから何か光る玉が飛び込み、それがやがて砂となって噴出される。
さくら「な、何なのですかっ、この砂は〜!?」
慌てふためく彼女の前に砂が盛り上がり、見る見るその姿を「クジャクの舞」のクジャクからイメージされて生まれた「ピーコックイマジンたん」が姿を現した!!
さくら「あうあうあうあうあうあう〜!!!!かかかかかかかか・・・怪物なのです〜!!!!」
ピーコックイマジンたん「・・・・お前の願い・・・・聞き届けた」
その日の夜。
静まり返った港湾地帯には船の警笛しか聞こえてこない。暗がりの船着き場に、ルーベットが憑依し、赤いメッシュが入りポニーテールに髪を縛り上げた慧がやってきた。
R慧「このあたりから先ほどのレジェンドルガの匂いが致しましたぞ」
慧(つまりこの辺りにいたってことだよね)
いつになく真摯な顔つきで慧がうなづく。
その真剣なまなざしには幾分か緊張も見え隠れしていた。
手も足も出なかった。あのレジェンドルガはこれまでの敵とは比べ物にならないまでに強い。今のままの状態では勝ち目はないが、敵の潜伏先、もしくは目的が何なのかを探らない限り、足踏みの状態では相手が何をやるか分からないため、パトロールで町中を歩き回っていたのであった。
一方Vライナーのラウンジでは作戦会議室と化しており、慧の様子をうかがいながら今後の展開を考えるべく、作戦会議をしていた。
サファイア「まさかトパーズが手も足も出ないなんて・・相当ヤバいね」
琥珀「あいつの剣術、まったくと言っていいほど隙がない。何か倒すための秘訣でもあればなぁ」
アメジスト「特異点を狙っているのは間違いなさそうですね。何でだかは・・・知りたくないけど」
そんな中、エメラルドだけが会話に入らず、一人せっせと作業机で様々な部品を組み合わせたり、はんだごてで取り付けたりしていた。
そんな彼女の様子は真剣そのもので声をかけてはいけないような雰囲気に包まれている。
琥珀「・・・エメラルド、何作っているんだ?」
アメジスト「数日前から作っていたとかいうパワーアップアイテムの完成を早めているようです」
トパーズ「パワーアップアイテム・・・だと?」
サファイア「バルキリーの戦力強化に向けて、新しい発明を思いついたらしいよ。こんな事態になったから、急いで完成させようと必死になってるみたい」
エメラルドが図面を見ながら部品をいろいろと本体に取り付けている。
それは一見カメラのようにも見えるが、その性能や何を目的として作られているのかは全く分からない。
エメラルド「もうすぐ完成だ。お姉ちゃん・・・ムチャしないでね」
その時だった。
R慧「・・・?あれは・・・何だ!?」
慧が気づいた時には、目の前に凄まじい速さで飛んできた無数の火の玉!!!
慧が横に跳んでかわすと、次の瞬間、衝撃波が慧を枯葉の如く吹き飛ばした。うまく着地すると、目の前にはピーコックイマジンたんが立っていた。左腕に装着されている羽が炎に包まれている。どうやらここから発射されたらしい。
R慧「飛び道具には飛び道具だ!!」
サファイア「了解!!」
R慧「変身!!」
そう言って青いボタンを押して、パスを通すと、電子音が鳴りだす。
「Gun Form」
慧にサファイアが憑依し、みるみるその姿を青い鎧と美しいフォルムの白鳥の電仮面を装着したバルキリー・ガンフォームが登場する。
Gバルキリー「ふう、ずいぶんと派手なアプローチかけてくれるねぇ。それに応えてあげるがいいオンナの勤め。とびっきり熱い一撃をお見舞いしてあげるわ!!」
ピーコックイマジンたん「・・・・来い」
Gバルキリー「君のハートに・・ロックオン!!ばぁん!!」
そういうなり、Vガッシャー・ガンモードで飛んでくる火の玉を全部弾で打ち消すと、素早い動きで敵の急所めがけて次々と銃弾を乱射する。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!!
銃弾と火の玉が激しくぶつかり合い、爆音と火花を激しく散らしていく。
Gバルキリー「わぁお、久々に楽しいプレイになりそうね!!」
ピーコックイマジンたん「ふん・・・・ならこれでどうだ」
そう言って、ピーコックイマジンたんがカーソルのようなイメージを発するとそれをガンフォームに照準を合わせるように発射した。すると、それがそのままガンフォームの両腕、心臓、腹部の急所ともいえる場所にそのまま的のような形となって浮き上がってきた!!
Gバルキリー「ゲッ、何これ!?センス悪いなぁ」
ピーコックイマジンたん「こういうことだ」
そして、ピーコックイマジンたんが火に包まれた羽手裏剣を飛ばしてくる。それを横に跳んで交わすが、羽手裏剣はその直後、Uターンを描いてガンフォーム目指して再び向かってきた!!
Gバルキリー「嘘っ!?」
ピーコックイマジンたん「お前がロックオンされるほうだ。あたしの銃撃の的になれ」
そして、無数の銃撃を発射し羽手裏剣がいくつも爆発し、空中で炎が噴きあがる。しかし炎の中をかき分けるようにして3本の羽手裏剣が飛び出し、ガンフォームのボディをかすめて、爆発を起こす!!爆発に吹き飛ばされ、ガンフォームが地面に転がる。
Gバルキリー「・・・これ、メッチャヤバいでしょ」
そして立ち上がろうとしたその時だった。
カシャカシャカシャカシャッ!!!
フラッシュの光とともにシャッター音が響き渡った。
驚いてガンフォームが振り返ると、そこには・・カメラを構えて一心不乱に写真を撮っている一人の少女の姿があった。
慧(さくらちゃん!?)
慧が驚きの声を上げる。そこには自分がよく知っているクラスメートの姿があったのだ。
しかし、驚いている間もなく、ピーコックイマジンたんは無数の羽手裏剣を発射して、ガンフォームを追い立てる!!
Gバルキリー「まずいねっ!まさか変身しているところも撮られたみたいな?」
トパーズ(しかし、何でこんなところにいるのだ!?)
琥珀(今はそんなこと言ってる場合じゃねぇ!!アメジスト、お前の術であいつの眼を眩ませられるか!?今はあの子を非難させないと!!)
アメジスト(分かりました!!サファイア、代わってください)
Gバルキリー「了解!!」
紫色のボタンを押して、ハープが奏でるような美しい音色が響き、パスを通す。
「phantom form」
彼女の全身を紫色の光が取り囲み、みるみるその姿を竜を模したような紫色と銀色の甲冑が装着し、右腕に竜の頭部を模したカタールが装着され、頭部に紫色の竜の電仮面が装着される。
Pバルキリー「貴方・・・・私の闇(くろ)に染まってみる?」
そういって、無数のカードを取り出すと、それがまるでカードの吹雪のようにピーコックイマジンたんの視界を真白に染め上げる。
ピーコックイマジンたん「むう・・・・」
その直後だった。
カードが一気に爆発し、ピーコックイマジンたんを炎で飲み込んだ。
そして、その間にさくらを非難させようとさくらのそばに向かう。しかし駆け寄ってくるファントムフォームの姿を見て、さくらは驚いたように身をすくめると、回れ右をしてすたこらさっさと走り出した。
Pバルキリー「こ、こら!勝手に飛び出したら危険ですから!!」
さくら「はうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう〜っ!!!!!」
Pバルキリー「・・・・あっちゃあ、完全にパニくっちゃってる」
ファントムフォームがさくらを追いかけようと走り出した瞬間、無数の火に包まれた羽手裏剣が飛び出し、ファントムフォームをとらえる。ファントムフォームが気づいて、飛びのいてかわすと、そこにはピーコックイマジンたんが悠然と立っていた。
ピーコックイマジンたん「逃がさん・・・」
Pバルキリー「・・・全く、厄介なことになりましたわね」
ファントムフォームが憎々しげに毒を吐くと、ハルバートを構えてピーコックイマジンたんに向かって駆け出し、斧の刃を一気に振り下ろす!!しかしそれをピーコックイマジンたんが鉄扇で防ぐと、それを持ったまま回転して、ファントムフォームを薙ぎ払い、剣撃による高い音が鳴り響く!!
工場内
あわてて駆け込んできたさくら。息も荒く、ようやく床に座り込んだそのときだった。
そこへ後ろから誰かが肩に手をかけた。
さくらがビクッっとふるえて再び飛び出そうとするが、素早く腕をまわされて羽交い締めにされる!そこには、青いロングヘア、きりっとした怜悧な顔立ちと冷たい光を帯びている切れ長の瞳が特徴的の美女と栗色の髪をポニーテールに縛り上げ、小柄な体躯だが豊満な胸など出ているところは出ている少女が立っていた。
さくらは二人が放つ独特の雰囲気に恐怖を感じた。それは本能的な恐怖であり危険警報である。
針尾「貴様・・・・某とバルキリーとの戦いの場にもいたな。そのカメラで何を撮るつもりだぁ?」
智「ありゃりゃ、これはまずいね。下手に行動されて今後の活動の邪魔になっちゃったらあかんよね。・・・・ふふっ、さあて、ちょっとカメラに何を撮ったか見てみたいなって感じ?」
そういって、怯えるさくらから無理やりカメラを奪い取ろうとするが、さくらは激しく抵抗する。しかし針尾の拘束力はかなりの力でジタバタともがくだけになってしまう。
その時だった。
「待ちな!!」
工場の奥から声が聞こえてきた。
見るとそこには灯台の光を受けて、一人の長身の女性が浮かび上がっていた。
そしてゆっくりと歩き出し、その姿を明らかにさせていく。
ルークだった。
ルークはジャケットを脱ぎ捨て、腕をボキボキ鳴らしながら戦士としての凶暴かつ勇猛な力強い視線で針尾と智を睨みつけ歩いてくる。
さくら「お・・・お姉さん・・・」
ルーク「何寄ってたかって女の子襲っているんだ・・・レジェンドルガともあろうものがよぉ」
智「チェックメイト・フォーのルークか」
針尾「ふん、バカがわざわざ死ににきたか」
ルーク「その子から手ェ放せ」
(あー、ガラにもねぇこと言ってるよ。テメェでも言ってて引くかもな)
ベルトを装着し、I-podをバックルに差し込むと、紫色の光を解き放ちだす。
ルーク「・・・・ルークがキレちまったら、もう止められねぇからよぉ」
針尾「・・・ふん。愚かな駄犬風情がほざくな」
智「セルケート、任せるよ。あたし肉体労働嫌いだし」
ルーク「無駄口はいらねぇ。その子放せ・・・今すぐにな」
針尾「フン、死人に何も与えてやるつもりなどないな」
ルーク「そうかい。じゃあ、無理矢理でも取り戻させてもらうぜ」
(キングにも無視して出てきちまったしな。でも、今回ばかりはキングの命令であってもそれを飲み込みきれないんだ。納得できないんだ。だったら、まずはルークが思った通りのことを行動してから、それから困ったり悩んだりすればいい)
ルーク「さくら・・だっけ?よく見ておきな。あんたが何でバルキリーとかに首を突っ込みたいのか分らないけど・・・これは・・・そう簡単に首突っ込んじゃいけないものなんだ。特にあんたみたいに・・・未来を持っていてほしい人間にはな」
(そうさ。誰にも奪わせはしない。奪っちゃいけない。こいつの未来を奪う権利なんて、夢を奪う権利なんて例えキングであろうともありはしねぇ)
ルーク「変身!!」
「complete」
全身に重厚な紫色のカメを模したアーマーを装備し、仮面を装着させると、手には紫色の亀の甲羅を模した柄の先に巨大な鉄槌が埋め込まれたバトルハンマー・ルークハンマーを構えたルークフォームに変身する。そして、ルークハンマーを振り上げて飛び上がると、地面に思い切りたたきつける!!
凄まじい重量に地面が震え、砂ぼこりが舞い上がり、視界が何も見えなくなる。
針尾「ゴホッ・・・ゴホッ・・・・」
智「嫌―!!目が!!鼻が!!」
その間、さくらが針尾の拘束がほどけ、腕の間をすり抜けると、カメラを取り返す。そして、後ろからルークフォームに持ち上げられると、そのままルークフォームが一目散に逃げ出す!!
さくら「お・・・お姉ちゃん」
Rワイバーン「しっかりつかまってろ!!」
そういって、重厚な姿からは想像もつかない速さでルークフォームが逃げ出した。
Rワイバーン「うう・・・・これでルーク、処刑決定だ・・」
そのころ。
キング・・・晶は怒りでふるふると全身を震わせながら怒りでゆがんだ表情で口元をひきつった笑みを浮かべる。
晶「・・・あのバカ・・・・障害は排除しろっていう命令分かってないの?というよりも、俺の意見を聞かないなんていつものことだとかでいつまでも納得できると思ってないよね?」
その様子にビショップもクイーンも計り知れない怒りに震えあがっている。
キング・・晶の怒りは冷たいまでに苛烈な炎のように噴き上がっていた。
ビショップ「・・あ・・・あの・・・キング」
晶「・・・ビショップ、クイーン、ルークを探し出せ。俺はイマジンやレジェンドルガ側から攻める。どんな手段を使ってもかまわない。絶対見つけ出せ!!!」
怒りに満ちた声でキングから命令が下され、ビショップとクイーンが最悪の未来を予想せざるをえず、顔色が真っ青になる。
クイーン「き・・・キング・・・・・まさかバカなこと考えてないよね?」
晶「どうだろうね。ただ今回ばかりはもう許せない。あのバカの暴走にもケジメとらせないとね・・・!!」
ビショップ「キ・・・キング・・・・」
背を向けて宣告される言葉が「処刑宣告」のようにも聞こえ、二人は圧倒的な恐怖にただただかられるばかりであった・・・。
続く
,こんにちは!!
最近仕事が忙しい上に夏バテでなかなか筆が進まない鴎です・・・。
遅くなりましたが、新作上がりましたので投稿いたします!!
そして今回の話でありましたが、近々、エメラルドの新しい発明による新フォームを生み出すことを決定たしました!!
次回以降で明らかにしていきますので、よろしくお願いたします!!
後日改めて設定資料更新します!!
>烈様
いつも温かいご声援ありがとうございます!!
>二人目の常識人が表れたような気がします……。
実はそうなんですが、彼女の場合「甘えん坊」「ツンデレ」といった今までにない「慧に恋愛感情を抱いていない」といった至って淡白でクールな姿勢を崩さないキャラを書きたく思い、入れてみました。しかし、姉貴分であり憧れである「琥珀」には二人きりの時ベタベタ甘えまくるし、琥珀の言うことにはどんなことでも従う甲斐甲斐しい一面もあります。
>彼女;…とりあえず、琥珀さん。ファイト!!(サムズアップ!)
琥珀「ありがとうございます、烈さん。これからも怪我や病気に負けずに頑張っていきます!!この状態でも家事やらないとあいつら家事能力全滅に近いので・・・トホホ」
>何といいますか、このままいくと彼は近いうちに自分の心の内に抱える“狂気”という怪物に食われてしまうような気がしてきます・
本来の彼は心優しく思いやりがあるのですが、彼がかつて味わってしまった「世界の崩壊」をきっかけに、自分が大切なものを守り切れなかったという重責から自分を責め、その償いを果たすために彼は「守る」ために「非情」に徹し、そのプレッシャーとストレスは精神的に不安定な状況を生み出してしまっており、今の彼は完全に心が病んでいる状態となっているのです。それが「狂気」の引き金となっており、自滅の傾向が強まってきています。
>何で彼女は酒癖が悪いのですか?…そして、今回の話が終わった後、彼女は最終的にどうなったのですか?晶君の態度とか彼女の処遇などが気になってきます。
ビショップはチェックメイト・フォー唯一の常識人といっても過言ではない存在です。
キングは精神的に不安定で二面性どころか二重人格になりつつあるし、クイーンは骨の髄までアニメやゲームなどにハマっているオタクでマイペースで自由奔放で浪費家、ルークに至っては体力だけに身を任せて考えもなしに行動したりするから、そういったことによるトラブルの解決はすべてビショップが引き受ける羽目になっていたのです。
そのため、抱えているストレスや疲労はハンパではなく、酒を飲むと気分が高揚してついつい堪りにたまったものが爆発してしまうのです。
そして・・その後、ビショップはというと。
クイーン「イマジンも倒したことだし、今回のことは何とかあたしが誤魔化しておいてあげる〜♪その代り、今度の週末、あたしの店で“夏の天使降臨!!太陽のような眩しい笑顔とトロピカルスイーツ&スパイシーカレーフェア”やるから、ビショップ、金髪&巨乳&メガネな上にこの踊り子のような服着て手伝ってね」
クイーンは電気街で一番人気のあるメイド喫茶&レストラン「コロネット」の店長を務めてます。
ビショップ「うう・・・ビショップともあろうが、なぜこのような露出の多い服装でカレーやトロピカルフルーツ配らなきゃならないのでしょうか・・・」
そうこうで、1ヶ月こき使われることに決定されたそうです。
次回もよろしくお願いいたします!!
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2009年08月15日(土) 04時39分57秒,20090815043957,20090818043957,Uni/I4UgS9kho,仮面ライダーintertwine 第1章第31話「遭遇と決意」,オリジナルライダー・リレー企画,,,作者:ユルカ
PM19:15 工業団地 路上
ゼベイルが踵を返し、その場から離れようとした時だった。
「警戒を怠ると、あっという間に死に直面する……」
「!?」
ゼベイルが慌てて振り返ると、そこにはここまで追いかけてきていたエウリピデスの姿があった。
先ほど力を行使したばかりで、まだ得物である巨大剣を持っている。
「あなたも私を捕まえに来たの!?」
「おとなしくなさい。無闇に動けば、怪我をする事になるわ」
エウリピデスは巨大剣の代わりに大砲を取り出すと、ゼベイルに向ける。
「絶対……逃げきってみせる!」
ゼベイルは距離をとる振りをして、あえてエウリピデスへと近づき攻撃を仕掛けた。
大砲の攻撃範囲ならば、距離を離すより近づくほうが得策だと考えたからである。
だが、すぐに近づくのであれば再び巨大剣に得物を変更されるかもしれない。
そこで、いったん距離をとったように見せかけて大砲で狙わざるを得ないようにしたのだ。
「このっ!」
「っ!!」
とっさのことで狙いがつけられず、エウリピデスは防御の姿勢をとる。
ダメージは入らなかったが、ゼベイルを見失ってしまった。
だが、エウリピデスは怪しい笑みを浮かべていた。
「風瀬 舞夜。風瀬 華枝とは別の人格であり、ゼベイルに変身する。
彼女が生まれた原因は……白の魔女……なるほどね」
エウリピデスはゼベイルの体に一瞬触れたことで、彼女の情報を読み取っていた。
「今は情報を集める時……また会いましょう、ゼベイル」
同時刻 時雨養護施設・京の部屋
少し前から目覚めていた京は、自分の体に何が起こったかを明確に感じ取っていた。
「私は……オルフェノクとは違う化け物なんだ……」
カシスや木場社長を見ていたので、京は二人がオルフェノクであることは知っていた。
だが、自分に感じた力はそれとは全く別の異質な力だった。
「ここにはいられない……みんな私の力を恐れて……」
「誰がここにはいられないだって?」
「!?」
京の独り言は途中からカシスが聞いていたようだ。
「だって、だって!!! 今日は平気だったかもしれない、けど!」
「お前は、自分が怪物だって言ってる根拠は何だよ?」
いきなりの質問にちょっち戸惑う京。
「そ、それは、私がそう思っているから……!」
「……人間って言うのはな、自分が人間だと思ってれば人間なんだよ。
お前が自分の事を怪物だと思っているのと同じようにな……」
「!!!」
「重要なのは人からの答えじゃなくて、自分で決めた答えなんだよ」
「自分で決めた答え……」
一息ついて、カシスは言う。
「お前は、何だ? 京!!」
「私は……私は人間でいたい!!」
「じゃあ、それでいいじゃないか」
しかしながら京の表情は暗いまま。
「……ねぇ、カシス君。もし私が暴走したら、私を……こ」
「それ以上言うんじゃない。もしお前が暴走したら、俺はお前を連れ戻す」
「…………ありがとう……」
自分はなんて恵まれているのだろうと、京は思った。
そして、決意した。
この力がどんな力であろうとも、私は人を助けるために使いたいと。
そう、仮面ライダーシグマの力を……。
,……帰還いたしました。
最後のところで迷ったまま、旅行するものじゃないですね。
次回はもっと早く投稿致します。
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2009年08月15日(土) 02時50分40秒,20090815025040,20090818025040,UXq0VQ6B0RTm6,仮面ライダーバルキリーたん 第20話「phantom form 」,鴎,,,「phantom form 」
PM19:50
河川敷公園
人気もなくなった夜中の河川敷。
しかし、そこでは激戦が繰り広げられていた。
無数の泡がたちこめる巨大な白い塊のように集まった濃硫酸の泡によって全身の至る所からアーマーや仮面が溶け出し、地面に液体と化して落ちて蒸発する。
人間の肉体のままでは瞬時にして白骨と化し跡形もなく溶けつくしてしまうであろう。
Rワイバーン「くそっ、やべぇ。傷口にしみてきやがった…」
Kワイバーン「そろそろアーマーも限界か・・・」
クラブイマジンたん「あはははははははは!!!あたしと姉さんのゲームを滅茶苦茶にした上に姉さんを傷つけた罰です!!思う存分苦しんで・・・死んでしまいなさい!!」
余りにも身勝手な物言いで、高慢な高笑いが聞こえてくる。
キングフォームとルークフォームを仕留められる絶対的な勝利への確信ゆえか、彼女は完全に浮かれていた。
Rワイバーン「あのカニ女〜!!!カニ鍋にしてやろうか!?マジで!!」
Kワイバーン「食うか…本当は嫌だけど仕方ないな…」
キングフォームはふうっと溜息をつくと、意を決したかのように顔をあげてルークフォームを見やる。
その瞳には恐ろしいまでに冷たく鋭く突き刺さる鋭利な刃物のような冷酷さと怒りに満ちている。表情も真摯な表情の中に計り知れない狂気をはらんだ無表情と化している。
ルークも思わず戦慄する。全身の毛が一気に逆立ち、体が寒いわけでもないのに震えが止まらない。ガタガタと心の奥底から湧き上がるどす黒い感情。いつの間にか足を後ろに下がって、怯えと恐怖にかられた目で見やる。できれば目を背けたい。いや、この場から半径数百メートルは逃げて離れたい。
しかしそんな彼女の怯えを察してか、キングフォームの表情がわずかに緩んだ。
その笑顔もこの状態ではさらに震え上がらせるだけなのだが、この天然は気が付いていない。
Kワイバーン「・・・ルーク、ちょっと俺の後ろにいてね?大丈夫、すぐ終わるからね」
Rワイバーン「・・・お、おう」
Kワイバーン「間違っても俺のフォローとか考えないでね。今、俺の前に立ったら、殺しちゃうかもしれないから。ここを切り抜けないと慧が危ない。巻いていくよ」
真摯な表情で恐ろしく冷たい響きの言葉を言う姿は間違いなく本気の証しであった。
そして、キングフォームの全身から青い光がぼうっと光だした。そしてそれに呼応するかのように、彼の全身を取り囲むように青白い光が稲光と化して音を立てながら輝きだす。
そして、光は徐々に強く光り輝きを増していく。
Kワイバーン「ウウウウ・・・・グルルルルルル・・・・・・!!!」
クラブイマジンたん「な・・・何ですか?何の真似ですか?」
クラブイマジンたんも突然発光しだしたキングフォームの姿と彼から放たれる肌に突き刺すようなあまりにも冷たい感覚に驚き言葉を失う。
このとき彼女が本能的に察したものが「絶対的恐怖」であると知っていたら逃げ出して安全な場所まで避難するという行動に出ていればよかったのかもしれない。
しかし、もう遅すぎた。
キングフォームの全身に青いステンドグラスのような紋章が浮かび上がり、巨大な青い光がイメージと化して浮かび上がる。
Kワイバーン「・・・・はあああああああああああああああああああああっ!!!」
クラブイマジンたん「・・・ひっ、ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
その「暴君」の名にふさわしい姿はまさしく、あらゆるものを食いつくしすべての生命を奪いつくしてしまう巨大な口には無数の牙がギラギラと鈍く光輝いており、全身に竜を模したイメージの甲冑でおおわれており、強靭な筋肉でおおわれた太い四肢をもち、手にはキングジャベリンを握りしめている姿は全てを蹂躙する征服王のようないでたちである。
鋭い双眸から青い光が光放たれ、天に向かって顔をあげる。
「Gyaoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooh!!!!!」
その咆哮がまさしく天を震わせ、地を揺らすほどの恐ろしいまでに重みのある咆哮。
ビリビリと空気がしびれ、あまりの凄まじい雄叫びにルークもクラブイマジンたんも恐怖のあまり動けない。まるで天敵に睨まれて動けなくなったエサであるかのように。
しかしその表現がピッタリであったと気づくのはそう遅くはなかった。
キングフォームから化身したティラノサウルスの化身、ティラノファンガイアが荒く息を吐きながらズンズンと地面を踏みならして槍を構えて立っていた。
ティラノファンガイア「この世からチリ一つ残さないように徹底的に消し去ってやる!!」
クラブイマジンたん「ひっ、ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」
ティラノファンガイア「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
空気がビリビリと震える。王の怒りと狂気から発せられる狩りの合図ともいえる無慈悲な処刑宣告とともに、すべてのファンガイアの頂点に君臨するティラノファンガイアの雄たけびが響き渡った。
一気に両足で地面をけり飛ばすと、ティラノサウルスの頭部を模したバックラーを構えて泡を力任せにかきわけるとそこにいた。
哀れな獲物が。
そして、狙いに定めてバックラーの鋭い牙を振り下ろした!!!
ティラノファンガイア「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
同時刻
夜の商店街をゴシック風のドレスに身を包んだ銀色のロングヘアをなびかせながら、クイーンこと神代真姫(かみしろ・まき)と金髪のロングヘアに色白の肌、長身でモデルのような抜群のプロポーションを小さくうずくまるようにしてトボトボと歩いている女性、ビショップこと神代聖(かみしろ・さやか)を連れて歩いている。
クイーン「・・・あのさ、いつまでも落ち込んでいても仕方ないでしょう?その先生も電話で「自分の勘違いってことにしておく代わりに船盛りで許してやる」って言ってくれたんだし」
ビショップ「・・・ですが・・・・本当に情けないです・・・・チェックメイト・フォーのビショップ・・・・一生の不覚です・・・・」
悲痛な声を上げながら、顔をうつむいたままでトボトボ歩いてくるビショップを見て、クイーンが呆れたように溜息をつく。
そして、手の中に納めてあるキーピックだのガラス切りだの、錆が浮いている古ぼけた工具の数々を見て、納得したようにうなづく。
クイーン「にしても、まさか犯人があんただったなんてね、ビショップ・・・」
ビショップ「・・・うう・・・」
ビショップから話を聞き、ここまでの経緯を話しておくとしよう。
数日前の防犯学校の講師の昔の商売道具を盗み出した・・・いや実は勝手に持ち出していったのは、このビショップだったのだ。
飲み会でさんざんお酒を飲みまくって酔っぱらっていたビショップは石川先生を警察署内の防犯学校施設に寝かせた後、たまたま金庫を見て、つい同じように酔っていた防犯学校の生徒たちに持ちかけてしまったのだ。
ビショップ「ねぇねぇ、昭和の大泥棒たる者が、商売道具をこっそり盗まれたら、先生ビックリするんじゃありません?面白そうだし、やっちゃいましょ〜♪」
そんなおバカなノリについつい他の生徒たちもノリにノッてしまい、金庫を開けてこっそり持ち去ってしまったのであった。しかもそのあと、返しにいくという名目でビショップが引き受けてすべて預かったにもかかわらず・・・・翌日にはすっかり忘れてしまっていたのだった。
原因は・・・ビショップの酒癖の悪さと意外と抜けているおバカが原因だったのであった。
それを思い返し、ふうっとクイーンがため息をつく。
普段は理知的で冷静沈着、類まれなる優れた頭脳と統率力で仲間たちを支える名参謀も酒が入るととたんにお茶目で悪戯好き、かなり間が抜けまくっているダメ人間と化してしまうらしい。
クイーン「しかし、その先生が契約しているイマジンが気になるわね。バルキリーやキングたちとバッティングしてなきゃいいけど・・・」
ビショップ「・・・もし・・・・今回のイマジン事件の原因が自分の酒癖の悪さなんてバレたら・・・・!!」
クイーン「まあ、軽く済んでも半殺し、最悪の上でジ・エンド?」
キングがもしこの話を聞いた時の苛烈かつ凄まじい怒りぶりを想像し、ビショップの顔色が青ざめて血の気がうせ、ガタガタと震えだし、焦点が定まらない眼で唇をカタカタ震わせながら、涙が浮かびあがった。
クイーン「・・・短い付き合いだったわね。まあ、大丈夫じゃない?毎日神様に信仰してるんだから多分天国に行けるわよ!!うん、大丈夫、あんた、地獄に落ちるっていうような雰囲気じゃないし!!」
ビショップ「あ・・・あはは・・・ふふ・・・ふええ・・・・・ん」
フォローにならない、むしろ追い込んでしまっているかのような言葉にビショップの顔色がますます青くなっていき、どす黒く影が差していく。眼には涙まで浮かんでいる。
ビショップ「・・・どうしましょう、クイーン〜!!!!(大号泣)」
クイーン「冗談よ、冗談。それに、まずはこの事態を解決するためにも先生に謝って、イマジンをおびき寄せて、倒しちゃえばバレないって・・・・」
そう言いかけた時であった。
クイーンとビショップの脳に直接信号のようなものが走り、バッと同時に同じ方向をみると、河川敷のほうから何やら青白い光が稲光となって落ち、そして、
ドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaah!!!!!!
雷鳴と轟音にまぎれて、まるで巨大な獣の咆哮のような凄まじい雄たけびが聞こえてきた。
周りが雲もないのに、突然落ちた雷光に驚き、慌てふためく。
しかしその中で、クイーンは乾いた笑みを浮かべているが青ざめており、ビショップに至ってはもはや放心状態というか死刑宣告を受けた囚人のように茫然自失と座り込み、瞳からは希望の色が消えうせる。
これは怒りだ。
キングが本気で怒っている。
さらに、滅多にならないティラノファンガイアとなって荒れ狂っている。
これだけの怒りを発揮するということは、何かキングの身に何かが起ったのか、想定外のトラブルが発生したのか・・・・いずれにせよ自身の立場がますます危うい立場におかれていることを暗示するには十分すぎる出来事であった。
クイーン「・・・・・あはは・・・やばすぎ?」
ビショップ「・・・・・・・・・終わった」
ビショップがガクリと頭を垂れた。
同時刻
夜の街を歩き、石川先生の家に向かっていた慧も突然の稲光に驚いて避難していた。
自転車小屋から顔を出して空を見るが、満天の星空が広がるばかりだった。
怪訝そうな顔つきで首をかしげる。
慧「今の雷・・・・何だったんだろう?」
ルーベット(驚きましたな)
トパーズ(そうだな)
自転車をこぎながらようやく石川先生の家の前までやってきたそのときだった。
「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
家の中から悲鳴が聞こえてきた。慧があわてて家の門を開けて庭のほうに回ると、そこでは腰を抜かして座り込んだ老人の前にトンボをイメージしたドラゴンフライイマジンたんとエイプイマジンたんが仁王立ちしていた。
慧「イマジン!!」
エイプイマジンたん「来たな。バルキリー!!この間の借り返してやるぜ!!」
ドラゴンフライイマジンたん「やるとしますか。エイプ、頼みますよ」
エイプイマジンたん「おうよ!!行くぜ、分身の術!!!」
エイプイマジンたんが無数の分身を生み出し、慧を取り囲んだ。
エイプイマジンたんの群れ、群れ、群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ群れ――――!!
それを見て、慧が舌打ちする。
琥珀(慧、このままじゃ過去に飛ばれちまう!!あたしのネットなら少しは抑えられる!)
慧「・・・わかった!!行くよ!!」
琥珀(よっしゃ!!)
そういって、琥珀が憑依し、髪がオレンジ色のメッシュが入ったシャギーのかかったショートカットに目つきが凶悪そうな(おい)吊り目になり、瞳がオレンジ色に光り輝くとベルトを巻いて、パスを通した。
K慧「変身!!」
「Assassin Form」
慧の全身にクモを模した銅色の鎧と仮面が装着され、手にはVガッシャー・ハンドアックスモードとクナイモードを握りしめて構える。
Asバルキリー「お仕置きだ。クモの巣地獄に・・・ようこそ」
エイプイマジンたん「へへっ、来たね!!裏切り者!!!コテンパンにしてやるぜ!!」
Asバルキリー「よく言うぜ、仲間意識なんてないくせに」
アサシンフォームが呆れたように、それでもしっかりとクナイとハンドアックスを構えると素早く飛び出し、両腕の武器を巧みに操って次々と敵を切り倒していく!!
その素早い武器さばきはまるで嵐のように目にも止まらない速さでエイプイマジンたんを切りつけていく。ハンドアックスを大きくふるってブーメランのように投げ放つと敵を真っ二つに切り結び、その間にクナイで敵の急所を一突きで仕留めながら鋭いカギ爪で薙ぎ払い、カギ爪のような刃をつま先からも生やすと蹴り飛ばして、刃で敵の首をかっきり、その流れるような流麗な動きはまさしく「暗殺者」にふさわしい華麗な倒しぶりであった。
立ちはだかるエイプイマジンたんを容赦なく、そして易々と倒していく。
エイプイマジンたん「くっ、なかなかやるじゃねぇか・・・!!」
Asバルキリー「・・・・暗殺者相手に生きて帰れるなんて甘い考えだったね」
手からネットを放出すると無数の敵がからめとられ、身動き取れないまま苦しそうにもがいている。クモの巣には猛毒が含まれており、縛られているだけで徐々に毒に侵されていくのだ。そのクモの巣の上に降り立ち、パスをバックルに通す。
≪――Full Charge――≫
Asバルキリー「・・・・さよなら」
アサシンフォームの必殺技、アラクネエクスキュージョンが炸裂した。
オレンジ色の光がほとばしるクナイの刃をクモの巣に差し込むと糸を伝って、超高圧電流が流れ込み、敵を焼き尽くし、一気に消し去っていった・・・!!
爆発が起こり、分身のすべてが吹き飛んだ。
そして、ネットで縛り上げているのはエイプイマジンたんの本体。
彼女をネットで縛り上げて、同じようにクナイを差し込むだけで確実に彼女の命を奪い去る高圧電流を流しこむことができる。
エイプイマジンたん「・・・くく・・・あはは」
しかし彼女はなぜか不敵な笑みを浮かべていた。
アサシンフォームが怪訝そうな顔つきになる。
Asバルキリー「?」
エイプイマジンたん「おしまいなのは・・・・お前のほうだ!!!」
そういって、上空に向かって手を挙げる。
するとそこに浮かんでいるものを見て、アサシンフォームが驚いたような顔つきになる。
Asバルキリー「な・・・!?」
アサシンフォームの周囲に現れたのは――――無数のトンボ型ミサイルの群れ、群れ、群れ。
そしてその中央にいたのは、ドラゴンフライイマジンたんであった。
Asバルキリー「・・・・マジッスか(汗)」
ドラゴンフライイマジンたん「覚悟しなさい。フォーメーション・・・アタック!!」
指揮官の命令にミサイルが一斉に飛びかかり、一直線にアサシンフォームめがけて降り注いでいく。アサシンフォームが気づいた時はすでに遅かった。
ネットを切り離して飛び出そうとするが、近くには座り込んだ石川先生がいた。
Asバルキリー「ちっ!!」
アサシンフォームがエイプイマジンたんを解き放ち、石川先生を抱きかかえるとそのまま素早く飛び出した!!しかし、ミサイルがネットに直撃すると、凄まじい爆風によって吹き飛ばされた!!
Asバルキリー「かはっ!!!」
アサシンフォームが背中に受けた爆風と飛んできた障害物で背中を強打し、激痛に息が止まる。
それでも抱きかかえている石川先生を抱きかかえたままアサシンフォームが安全な場所までひたすら痛みをこらえて走る、走る、走る!!
Asバルキリー「ぐっ・・・・・・!!」
慧(琥珀さん、ひどい怪我だよ!!変わって!!)
Asバルキリー「そんなヒマさえくれないよ、あいつら!!」
そう、アサシンフォームのすぐ後ろからは無数のトンボ型ミサイルと無数のエイプイマジンたんの集団が怒涛の勢いで追いかけているのだ。
一瞬でも立ち止まったら速攻で攻撃を仕掛けてくるであろう。
Asバルキリー「くそっ、何が何でも守ってみせる!!!この爺さんには指一本触れさせないからなっ!!!」
ドラゴンフライイマジンたん「ほざけっ!!」
ドラゴンフライイマジンたんの指揮の下、無数のミサイルが次々とアサシンフォームに向かって飛んで行き、それをよけられ障害物に着弾しいくつもの高熱の爆風が生じ、そのたびに障害物の残骸が吹き飛び、アサシンフォームを容赦なく痛めつけている。
それでも石川先生は無傷だった。アサシンフォームが覆うようにして守っているからである。
石川「わ、若ぇの!!俺なんて置いて早く逃げろ!!じゃねぇと、姉ちゃんが・・!!」
Asバルキリー「大丈夫だよ、爺さん。しっかりつかまってろ。入れ歯落とすんじゃねぇぞ」
慌てふためく石川先生をからかうように語りかけるアサシンフォーム。
そして、公園の野外ホールにやってくると、石川先生を事務所の中に避難させて、傷ついた体を押して、ホールに向かう。するとそこにはもうすでに無数のトンボ型ミサイルとエイプイマジンたんの群れ、群れ、群れがわらわらと取り囲んでいた。
Asバルキリー「・・・あたし、ショーの主役なんてたりぃ役回りはゴメンなんだけどね」
慧(早く変わって!!)
Asバルキリー「ああ・・・サファイア、行けるか!?」
サファイア(ああ・・・今度ばかりはちょっとキレたかな?人の大事な仲間に、嫁入り前の娘に何寄ってたかって傷をつけてくれるんだか)
そういって、青いボタンを押してパスを通そうとしたときだった。
エイプイマジンたん「させるかぁ!!」
そういって、エイプイマジンたんが棍棒を投げ飛ばし、パスを弾き飛ばし、見事それをドラゴンフライイマジンたんが受け取った。
Asバルキリー「ああっ!!」
ドラゴンフライイマジンたん「残りのバカたちに憑依されたらやりづらいんですよ」
エイプイマジンたん「お前もあいつらみたいになりふり構わず暴れまわるようなバカならよかったのになあ!!冷静さが命取りなんだよっ!!」
Asバルキリー「・・・・バカ?テメェ、今、誰をバカっつった?あたしの・・・仲間に対してか?」
いつになく琥珀の怒りに燃えている冷たく低い声だった。
ドラゴンフライイマジンたん「ああ、お前だってうんざりしていたはずだ。時代錯誤も甚だしい大和撫子気取りで天然でやたら口うるさい単純バカのルーベット、頭でっかちで口先だけのハッタリだけの嫌味でいけすかないヘタレメガネ女のトパーズ」
エイプイマジンたん「その上、チビで発明だけが特技なんていう根暗なくせに、お子ちゃまで口やかましくて生意気なクソガキのエメラルドに変態ドスケベお気楽極楽頭のノータリンのサファイア!!はははっ!!!契約者が不幸の星の下で生まれたような不幸でバカでどうしようもない疫病神なら、イマジンもロクなのがいないねっ!!!キャハハハハハッ!!!」
ルーベット(・・・い、言いたい放題言ってくれますな)
トパーズ(全くだ。まあ、呆れてものもいえん。挑発の程度なのだろうがな)
エメラルド(琥珀が乗るわけないじゃん。いっつもあたしたちのことツッコミ入れてるんだし、このくらいどうってことないって)
サファイア(・・・だってそのくらいいつも迷惑かけてるしね。このくらい思われてて当然だろうし)
慧(・・・・皆)
Asバルキリー「・・・たい・・・・・のよ」
よく見ると、アサシンフォームがふるふると全身がふるえている。
拳を力強く握り締めてその表情は怒りでゆがんでいる。全身から発しているのは間違いなく怒りのオーラであった。
その怒りの形相に一瞬慧たちまでも驚く。
Asバルキリー「・・・そんなに・・・・死にたいのかよ」
その声は限りなく冷たかった。怒りで、憎悪で低く静かな口調でアサシンフォームが吐き出す。それを口火に一気に怒りを爆発させた!!
Asバルキリー「ざっけんじゃね―――――――――――ぞっ!!!!!あいつらはな、テメェらみてぇなゲスなんかにバカにされるほど・・・・バカにされて笑われていいような・・・奴らなんかじゃない!!!!それをヘラヘラ笑って聞くことなんてあたしは出来ない。何故ならな・・・あたしにとって・・・あいつらは・・・・Vライナーの仲間たちは・・・慧は・・・・・・!!」
一息ついてから、怒りに燃えた瞳で見据えながら叫んだ。
心の奥底から。
琥珀「あたしの・・・仲間なんだよッ!!!!!あたしの仲間をバカにすることは、絶対許せない!!!!!あたしの仲間を・・・大事な仲間を・・・バカにするんじゃねぇええええ!!!それだけは・・・あたしは絶対許せねぇ!!あたしの生き様(プライド)にかけてなあああああああああっ!!!!」
慧(琥珀さん・・・!)
ルーベット(・・・琥珀殿ォおおおおおおおおおおお!!<号泣>)
サファイア(・・・・意外と情に厚いのね。くすん<涙>)
エメラルド(・・・・・失礼しましたああああああああああああああ!!<号泣>)
トパーズ(やれやれ・・・・怒ってくれることはうれしいが、冷静さは失うなよ)
全員が感動に打ち震えて、涙を浮かべてしまった。
どんなにバカをやろうとも、琥珀にとって皆大切な仲間であり、いつも皆のことを心から心配し、思いやり、考えてくれている琥珀の優しさや温かさが胸に突き刺さり、自分を卑下していることさえも情けないと思えた。失敗しても、怒ることはあっても、琥珀は彼女たちを決して見捨てることなどない。それだけ情に厚く心やさしいイマジンなのだから。
その様子をサンゲイザーイマジンたんは見ていて、「ふうん」と思わせぶりな様子で見ていた・・・。
サンゲイザーイマジンたん「曲げてはいけない、自分だけの生き様(プライド)か」
そう言って、怒りに燃えたままアサシンフォームがハンドアックスを投げつけてエイプイマジンたんの本体に直撃すると、斧が光の粒子と化して縛りつけ動かなくしてから、一気に駆け出し、クナイで急所をすれ違いざまに一気に切り裂いた!!!!
Asバルキリー「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
エイプイマジンたん「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!バ、バカなあああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
目にも止まらない高速移動でエイプイマジンたんを華麗に仕留める。
糸に絡めとられたエイプイマジンたんが断末魔の絶叫を上げて爆発した。
しかしそれがまずかった。
一瞬隙が生じ、そこへ無数のミサイルが飛び交い、アサシンフォームへと直撃した!!
ドガンドガンドガンドガ―――――――――――――――――――――――――ン!!
Asバルキリー「ぐあああああああああああああああああああああああああああ!!」
アサシンフォームが全身から煙をあげて吹き飛び、丘を転げ落ち、駐車場のアスファルトの床に叩きつけられる。
ブスブスと黒い煙を立てて、アーマーはところどころヒビが入り、もはや動くことさえもままならない。全身に焼けるような激痛が走る。息も絶え絶えの状態でアサシンフォームが横たわる。
ルーベット「こ、琥珀殿ォオオオオオオオオオオ!!」
トパーズ「ヤバい・・!!このままじゃ慧も琥珀も危ない!!」
エメラルド「ど、どどどどうしよう!!」
そこへドラゴンフライイマジンたんがパスを取り出し、見せつけながら無数のトンボ軍団を後ろに笑みを浮かべて降り立つ。
ドラゴンフライイマジンたん「・・・とってみろよ」
Asバルキリー「・・・・それが・・・できりゃ・・・・苦労しねえっての・・。テメェみてぇな・・・・ザコ相手によ・・・」
ドラゴンフライイマジンたん「ふん、さあ、とどめよ!!」
その時だった。
突如鋭い痛みが走り、ドラゴンフライイマジンたんが手からパスが弾きとんだ!!
ドラゴンフライイマジンたん「ぐっ!!」
手を見ると、そこには巷で流行っているという「ラウズカードゲーム・アンデッドコレクション」と言われている怪人の絵が描かれているトランプの一枚「ビートルアンデッドたん」と書かれているカブトムシの少女の絵が描かれている「スペードのA」のカードであった。
そこには全身傷だらけでうずくまっている琥珀と、それをかばうように立っている一人の少女がいた。紫色のメッシュを編みこんだロングヘアを七三分けにしてポニーテールに縛り上げ、紫色の瞳をもつ理知的な雰囲気の少女だった。
琥珀「お・・・お前・・・さっきの?」
「スペードのA。暗示は不幸の知らせ。貴方にとっては吉報かもしれないけど、琥珀?」
そう、サンゲイザーイマジンたんが憑依した慧であった。
そして手にはパスを見事取り返していた。
ドラゴンフライイマジンたん「い、いつの間に!?」
「貴方の暴挙もう許しておけないわ。私も自分の生き様(プライド)は曲げられない主義でしてね、命を救っていただいた恩義は命をもって返す」
そういうと、アサシンフォームの変身する際に取りつく黄金のバックルに紫色のボタンが光り輝きだした。それをベルトのバックルにかぶせると、パスを通した。
「変身」
「phantom form(ファントム・フォーム)」
彼女の全身を紫色の光が取り囲み、みるみるその姿を竜を模したような紫色と銀色の甲冑が装着し、右腕に竜の頭部を模したカタールが装着され、頭部に紫色の竜の電仮面が装着される。
Pバルキリー「貴方・・・・私の闇(くろ)に染まってみる?」
妖艶な口調でそういい、仮面ライダーバルキリーたん・ファントムフォームが誕生した。
そして、Vガッシャーを組み立て、長柄の斧に先端から槍のような直剣を突き出した「ハルバートモード」に組み立てると、肩に構えて、右手でクイクイと挑発する。
ドラゴンフライイマジンたん「ほざけっ!!」
ドラゴンフライイマジンたんが一斉に無数のトンボミサイルを発射してくる。
それを全く動じることなくハルバートを構えると、紫色の光を発し、何と同じように無数のトンボ型ミサイルを生み出し、一斉に発射したのだ!!!
そしてそれを迎え撃ち、空中で爆発し吹き飛んで行った・・・!!
ドラゴンフライイマジンたん「な、何っ!?」
ルーベット「何で!?」
Pバルキリー「あたしの能力。一度見たものは一回限りだけど、武器として作ることができるの!!」
トパーズ「錬金術のようなものか・・!」
エメラルド「すげええええええ!!!お姉ちゃん最高!!」
そして地面に降り立ったドラゴンフライイマジンたんをファントムフォームは容赦なくハルバートの刃を振り回し、ホイールの部分を確実に破壊し、一気に攻め立てる!!
長いリーチを生かして、離れた距離からドラゴンフライイマジンたんを確実に攻め、攻撃は華麗にステップを踏みながら避け、刃で切りかかったかと思いきや、先端の槍で突き、なぎ払う。ドラゴンフライイマジンたんの急所を確実にじわじわといたぶり、ダメージを与えていく姿は敵の急所を見切っているようだ。
ドラゴンフライイマジンたん「く、どうして、どうしていきなりこんなに強くなった?!」
Pバルキリー「弱点を見つけるの得意なの。目が利くもので」
そして、体を回転しながら回しけりを放つとドラゴンフライイマジンたんを吹き飛ばした。
Pバルキリー「さて、そろそろショーも・・・クライマックス!!」
≪――Full Charge――≫
紫色の光を放ち、ハルバートを思い切り振りかぶるとまっすぐ投げつけて敵を光で全身を縛りつけ動けなくして、一気に走りだし、飛び上がる!!
Pバルキリー「はああああああああああああああっ!!」
空中で体を回転させると、紫色の光を放つかかとを思い切り相手の頭部に叩きつけ、強力な必殺技「アブソリュートデス」が炸裂する!!
ドラゴンフライイマジンたん「ぎゃあああああああああああああああああっ!!」
ドラゴンフライイマジンたんが絶叫を上げて大爆発を起こす。
ファントムフォームは自分が先ほど放ったカードを見て、一息ついて呟いた。
Pバルキリー「闇(くろ)に染まりなさい。真っ黒に・・・」
慧(・・・ひょっとして、君、魔術師・・・・とかいうタイプなの?)
Pバルキリー「魔術師。あら、いい響きね、特異点」
慧(特異点じゃないよ。慧だよ)
Pバルキリー「いいじゃない。こっちのほうが呼びやすいわ。よろしくね、特異点」
慧(ちょっと捻くれてるんだね・・)
琥珀「・・・おーい・・・・誰か・・・・助けて・・・・痛すぎて・・・動けない」
慧(ごめん、琥珀さんのことすっかり忘れてた!!)
Pバルキリー「あのねぇ・・・・思ってても口にしちゃダメよ、それは」
琥珀「痛いよー・・・・痛いよー・・・・うう・・・・あたしってつくづくツイてねぇ・・」
琥珀が涙を流しながら気を失ったのはその直後であった。合掌。
同時刻。
腕を食いちぎられ、左半身を失った傷口を右腕で抑えながらはクラブイマジンたんはがたがたと震えていた。死ぬ?自分は、こいつに殺されて死ぬのか?リアルサイズで迫り来る死のヴィジョン。
ティラノファンガイア「ふふふ・・・そろそろ終わりにしようよ。ゴミ掃除なんてたるいこと、あんまり長引かせたくないんだよ・・・」
そうだ。今この場で逃げてもどこかで殺される。だったら、殺される前に殺すしかない。そう、やるしかない…!
クラブイマジンたん「う・・・うぁああああ!!」
とっさにハサミを構えて発射する。その鋭い刃がティラノファンガイアに向かって飛んでいく!しかしそれは自身の居場所を教えるようなものであった。
ティラノファンガイアはにぃっと狂気にゆがんだ笑みを浮かべると一気に飛び出し、クラブイマジンたんを見つけると、バックラーでハサミを弾き飛ばし、拳を容赦なく顔面に叩きつける!!凄まじい勢いで殴りつけられ、クラブイマジンたんがのけぞる。
そして、飛び上がると咆哮とともに両足を広げてクラブイマジンたんの頭部をまるでハサミのように挟みこもうとその足を閉ざしていく!!
クラブイマジンたん「いやだぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」
ティラノファンガイア「はああああああああああああああああああああああ!!!」
泣き叫ぶクラブイマジンたんを容赦なく首を吹き飛ばし、爆発させる。
そして、晶の姿に戻ると、ふんと冷たく一瞥する。
晶「虫けらが・・・!さっさと死んでよね」
そういって、残骸を蹴り飛ばし、その場を立ち去ろうとする。
その後をルークが追いかけていく。
ルーク「おい、キング。大丈夫かよ!?」
晶「・・・はあはあ・・・・この姿嫌だよ、やっぱりさ。なんていうか、これが本来の俺みたいな感じでさ。俺・・・キレると本当自分でも何やるか分からないから怖いよ・・・」
ルーク「・・・・キング・・・・」
晶が青白い顔でぼそっと呟く。かなり疲弊しているようであった。
そしてどこか自分の奥底に秘めている狂気に怯えているようでもあった。
「今の俺は・・・・狂っているのか?」
自問自答を頭の中で何度も言い聞かせながら、晶はその場を後にした。
翌日
PM15:00 Vライナー 琥珀の部屋
琥珀の部屋はアンティークや小物、照明にこだわりを持つジャズバーのような部屋だ。
部屋のベットで寝ていた琥珀が目を覚ますと、そこには慧とサンゲイザーイマジンたんがいた。タオルを絞っているあたりからして、看病してくれてたらしい。
慧「あ、琥珀さん、大丈夫?」
琥珀「・・・・・痛い・・・けど・・・大分ましになったかな。あいたたた・・・」
昨日のけがで背中から生やしている腕の一本を失ってしまったらしく、折れちぎれた腕の部分が包帯を巻かれており、全身の到る所に包帯と絆創膏を張り付けている姿は痛々しかった。
琥珀「・・・・ありがとな。助けてくれて、えーと・・・」
「私は・・・私はアメジスト。アメジストって呼んで下さい・・」
琥珀「・・・ああ、アメジストか。いい名前だな・・・・」
アメジスト「あ、ありがとうございます・・・」
サンゲイザーイマジンたんが自分の名前を褒められて、照れくさそうに笑う。
慧「あたし、ちょっと水替えてくるよ・・・」
そういって、慧が部屋を出ると、アメジストが話しかけてくる。
アメジスト「・・・・・怪我は大丈夫?」
琥珀「・・・あ、ああ、大丈夫だ。このくらい、いつものことだし」
アメジスト「でも、腕が・・・!」
琥珀「・・・・安いもんだ。爺さんの命とあいつらの名誉に比べればな。あいたたた・・・」
傷に痛みを感じ、うずくまる琥珀にアメジストが心配そうに声をかける。
アメジスト「おとなしく寝ててください」
琥珀「・・・・・・おう」
そういって、横になろうとすると、アメジストが手を貸し、静かに寝かせてくれた。
アメジスト「今、何かほしいものがあったら持ってきます。何か飲み物とか食べ物とかほしいものあります?」
琥珀「・・・あー、特にねぇな。・・・ていうか、お前、そういうキャラだったか?」
琥珀が前のクールでどこか人を食ったような雰囲気とは違い、献身的で本気で自分を心配してくれているアメジストの態度に驚く。
アメジスト「・・・琥珀の言葉、曲げない生き様(プライド)を持つってことに、熱くなったの。あの一言で、決めたんです。貴方はあたしの線の内側に入ってきていい存在だって・・・。本音で接してもいいんだって。弱い部分を見せても・・・・いいって思える。安心できるんです」
琥珀「慧とかも違うのか?」
アメジスト「・・・まだ素直になりきれない。でも、少しずつ慣れていけるように頑張りますよ。琥珀が好きな仲間なら・・・いつかはきっと分かり合えると思う」
琥珀は察する。
一見クールでしたたかで現実主義で、お宝ばかりに興味を持っているような拝金主義で、シビアで冷めているような印象だがそれはこういった素直で心やさしい一面をうまく表現することが苦手なだけなんだと。
実際、今、心を開いているのは自分自身だけだが、いつかは慧たちと分かりあえて、本音で話し合える日が来るのかもしれない。
それを手助けするもよし、見守るもよし。
琥珀はそう思い、アメジストの頭を軽くなでる。
アメジスト「ふえ?こ、琥珀!?」
琥珀「・・・よろしくな。何かあったら遠慮なく言っておいで。よしよし、いい子だ」
アメジスト「・・・・・子ども扱い・・・・」
琥珀「・・あ、やべぇ、エメラルドの時のノリでつい・・・・嫌だったよな?」
アメジストが顔を赤くして、もじもじする。
そして言った。
アメジスト「・・・・もっとなでなでしてほしい」
琥珀「・・・・・あ、ああ、いいけど」
そういって、琥珀は頭をなでなですると、アメジストが甘えたように笑みを浮かべて琥珀に抱きついてきた。
アメジスト「えへへ・・・・」
琥珀「・・・甘えん坊だな、アメジストは・・・」
そう思い、呟いた。こういった子供っぽく甘えん坊な一面も仮面の裏側に隠している素顔なのであろう。
琥珀(まあいいか。お姉さん気取りも・・・妹も・・・悪いもんじゃない)
そう思ったその時だった。
ポタ・・・・。
何か冷たい液体が頭に落ちてきた。
それを手でぬぐうと、仰天する。
それは・・・・赤く鉄のにおいがするその液体は・・・・血!?
そして。
天井から何やらドタバタと騒がしい足音のような音が聞こえ、天井が揺れだした!!
ルーベット「バ、バカ、サファイア、鼻血を出すなっ!!!!」
サファイア「ツ・・・・ツンデレや・・・・ツンデレ最高!!!」
エメラルド「わ、わ、わああああああああああ!!天井ぶち抜ける!!!」
そういって、天井の板が外れ、
ドサドサドサドサ!!!!!!!
天井からエメラルド、サファイア、ルーベット、トパーズの4体が落っこちてきた。
琥珀の上に全員そろって。
琥珀「ぎゃぴ―――――――――――――――――――――――!!!!!」
全員に押しつぶされて布団にめり込んだ琥珀。
琥珀の上に4体が埃まみれの姿で乗っかっていた。慧が戻ってきて、仰天した顔つきで声を上げる。
慧「皆!?どうして!?お見舞いはあとにしてってあれほど言ったのに!!」
サファイア「い、いやさぁ、あまりに気になったもので、つい天井裏からのぞき・・・いやお見舞いにきたのだよ」
エメラルド「そしたらこいつがアメジストのツンデレ節に鼻血出して天井裏が血だらけさ!!このバカ!!」
トパーズ「全く気付かれないようにしていたというのに」
ルーベット「本当にロクなことしませんな!!」
慧「・・・それを言ったら天井裏に忍び込もうとすること自体ロクなことじゃないと思うけど」
すると、近くから何やら恐ろしく冷たい気配を感じて振り返ると、怒りで全身をふるえさせているアメジストが慧たちを睨んでいた。
それはもう憎しみだけで人が殺せるなら数十人は殺せそうな勢いで。
アメジスト「・・・特異点たち・・・・!!何病人下敷きにしてるんですか・・・!?」
その一言で、自分たちの足元で琥珀が両目から血の涙を流しながらペッチャンコになっているのを確認し、慌てて飛びのいたのであった。
アメジスト「アホですか、あんたたちはああああああああああああああああっ!!!」
「ごめんなさ――――――い!!!」
一方で、下敷きになった琥珀はさらに腕を複雑骨折させたうえに、全身打撲で寝込んだそうな・・・・。
琥珀「・・・あたしの怒りって・・・・一体・・・・何だったの?」
そう自分自身が信じてきたはずの友情とか絆とかに対する信念がガッタガタに揺らいできていることを感じながら・・・・。
続く
,さて、第20話投稿いたしました!!
ついに第6のイマジン、サンゲイザーイマジンたんこと「アメジスト(紫水晶)」が憑依する錬金術と奇術を操るトリック戦士「ファントムフォーム」の誕生です。
Vガッシャーは長柄斧で槍の役割をも果たすハルバートモードで戦況に見合った戦い方を得意とするイマジンとして戦いますので、今後とも応援よろしくお願いいたします!!
いつも貴重なご意見ありがとうございます!
>烈様
>例え罠に掛けたとしても、彼女達の絆の前では必ず崩れると私は感じているからです。
確かに絆は強いんです。結束力はあるんです。ですが、それが一度にトラブルを引き起こすと、凄まじいトラブルとなって一気にやってきますので、いいのか悪いのか、そういった微妙な関係がイマジンズの引き出すキャラというものと思っております。
>自重しろやこの変態大ボケ白鳥!!
自重させるべきなのでしょうが・・・・。
ボケといえば、彼女。変態と言えば彼女なので、今後もこのようなトラブルは絶えないと思います。もちろんアメジストというツッコミが新しく入ったので、これまで以上に厳しいツッコミとなりそうです。
>シーフフォーム
それもいいかと思ったのですが、どちらかというと彼女の「錬金術」「魔術」などショーの主役に等しいようなキャラなので、さらにそこからひねって不思議系の「ファントム(怪人や幻影などを意味する)フォーム」にいたしました。
次回もよろしくお願いいたします!!!,#000000,./bg_f.gif,lo66.041.geragera.co.jp,0
2010年08月25日(水) 22時17分34秒,20090813163205,20100828221734,JUzv1std.5p6g, 仮面ライダー珀羅 『炎の獅子と氷の月精《後編》』 ,青嵐昇華,,,
●
香織「よかったぁ、間に合いそう。」
香織は神社の近くの雑木林を歩いていた。
木が生い茂っているため、周りは暗くちょっと怖い気もしたがここを抜ければ神社まではもうすぐだ。
先ほど購入した本を大事に抱えて進んで行く。
《・・・・・・・ャ・・・・》
香織「?」
ふと何か音が聞こえて香織は立ち止まる。
《・・・ニャー・・・・・》
香織「ねこちゃん?」
耳を澄ませて見ると微かに鳴き声が聞こえた。
声の聞こえる方を見ると木の陰から長い二つの尻尾が見え隠れしている。
香織「・・・・?」
何だろうかと近寄ってみるとそれは木から飛び出してきた。
猫又《・・ギニャー・・・・!》
香織「っ!?!?」
人の丈より大きな猫・・・いや、猫のような形をした化け物だった。
その全身の毛は針のように逆立ち、長い爪は獲物を仕留めるナイフのように鋭かった。
香織「ぁ・・・ぁぁ・・・」
その化け物は足が震えて動けなくなった目の前の標的に向かって襲い掛かった。
猫又《ギニャァァァァア!!!!》
香織「きゃぁぁああっ!?」
パシュンッ!
猫又《ギッ!?》
その刹那、氷のつぶてが飛んで来て獣の顔を捉える。
混乱した獣はそこからぱっと飛び退く。
香織「え・・・何が・・・『さっ』きゃっ・・」
雪乃「香織、こっちよ。」
香織「せ、先輩!?」
香織が唖然としていると先ほど分かれた雪乃がその手を引き木の陰まで連れてゆく。
雪乃「驚いたわね、襲われてるのがあなただったなんて。」
香織「あ、ありがとうございました・・・でも、先輩どうして・・・・」
雪乃「ちょっとお仕事でね。これから見ることを内緒にしていてくれると助かるんだけど。」
香織「え・・は、はい・・・・」
雪乃「それじゃ、あなたはここに隠れてて。危ないから。」ぱっ
香織「っ!先輩、どうするんですか!?」
木の陰から雪乃が踊り出て周辺をうろつく猫又の前に出る。
猫又「ギニャーーーー!!」
雪乃「こうするの・・・」シュルルルルルル カチッ
雪乃はどこから取り出したのか、とても長い数珠を腰に巻きつける。
精神を集中・・・自身の霊力、周辺の霊気の調整を一瞬で行うと静かに言った。
雪乃「・・・変神!」
サァァアアアアアアアアアアアアアア
突如巻き起こる季節外れの豪雪が、雪乃を包み込む。
香織「えっ!?せ、先輩・・・!?」
月華「氷神月華・・・・見参よ・・・!」
月に照らされた氷のように華やかな美しさを放つ白く輝く鎧・・・・・
背中にはダイヤモンドのように煌びやかに光っている氷の羽
そして手するのは刃が鋭い氷で出来た長い槍。
『氷神月華‐乙型‐』・・・防御を重視する法士甲武の“甲型”を雪乃自身がアレンジ改良した砲戦特化の武装法術である。
月華「さぁ、行きましょうか。」たっ
月華は地を蹴り宙に踊り出る。
そしてくるりと身を捻ると獣に向け槍を突き出した。
月華「砲焉弾雨の陣!」サッ・・・シュバババババババ!!!!
猫又「ギッ!?」
月華が槍を円を描くように回転させると空中に術式が浮かび上がりそこから無数の氷の矢が獣に向かって飛んで行く。
だが、獣の方も反射的に脇に逸れ、氷の矢は何も無い地表を貫いた。
月華「やっぱり足が早いのを一人で相手にするのはキツイわね。」
月華は水晶で出来た笛のようなものを取り出す。
そして、それを鎧越しに口元に充てると・・・・・・何も聞こえない(ぉ
猫又「ギニャ?」
月華「ふふ、今日は何分で来れるかしら。」
○ 緩和休題
ピクッ
玉緋「ん?」
突然、玉緋の髪・・・両側の頭頂の辺りから少し大きめの“耳”が飛び出る。
ネコ耳ならぬキツネ耳というやつだ。
燎子「どうかしたk・・・・っ!?」
玉緋が何か反応を見せるとそちらを向いた燎子が固まる。
それもある一部のパーツに目を釘付けにして・・・・・
玉緋「・・・お嬢のやつ、結構近くでやっているな・・・・」ピクピクッ
かなり特殊な周波数で出してあるようだがその音は玉緋の耳にもバッチリ届いていた。
キツネはイヌ科であるため余計に分かりやすいのかもしれない。
玉緋(一応アレも完成している・・・・いい機会だ、行ってみるか・・・・)
玉緋「燎子、お嬢を待っているならこちらから行った方が早いかもしれないぞ。一緒に来るか・・・って、どうした?」
玉緋が燎子の方を向くとようやく異変に気付く。
燎子は何やらもの凄く目を輝かせて自分・・・・主に耳をじっと見ていた。
燎子「ソ、ソレちょっと触っていいか?」
玉緋「っ!?・・・ぬ、ぬ・・・・・・」
燎子「・・・・・・・」キラキラキラッ
玉緋「・・・・・・・」ピクピク
お目々をキラキラさせている燎子さんにびみょーーーーーーーーーな表情の玉緋さん。
それもそのはず、プライドが高い玉緋さん的には耳を触られるのはなんとも気が引けるのだ。
普段耳が出てないのはうまく人に化けるためでもあるが大事な所故隠しているせいもある。
燎子「・・・・・・・」キラキラキラッ
玉緋「・・・・・・・」ピクピク
なにやらお互いに無言のやり取りをしているようである。
ちなみに玉緋はその間始終『みみ☆ぴく』だった。
玉緋「・・・はぁ・・好きにしろ・・・・」
燎子「うぅぉおおおおおお!!!ぃよっしゃぁああああああ!!!!」ふにふに
戦いの果て、勝利したのは燎子の方であった。
やはり燎子さんにはモノ凄い目力が・・・・・・・なんか違うかな?
● 到着
シュタッ
紫苑「遅くなりました、お嬢さま。」
月華「ふふ、ジャスト二分なら紅茶が仕上がるのより早いわよ?」
月華が犬笛で呼び寄せたのは戌の式、紫苑だった。
彼女は矢倉邸で一緒に暮らす専属のメイドさん、雪乃が生まれてから最も長く傍にいる者でもある。
月華「紫苑、準備はいい?」
紫苑「はい、先に仕掛けます!」
紫苑は抱えた特注モップ(ぉ)を地に着けると一直線に走り出す。
それに反応して猫又も身を低くする。
紫苑「はぁっ!!」ブンッ!
猫又「ギニャッ!」サッ
紫苑「せぁっ!!」ブンッ!
猫又「ギニャッ!」サッ
第一撃は猫又が斜めに逸れて回避、第二撃はそれに続くように紫苑はモップを縦に滑らせるがそれも回避。
合わせて、六回の攻撃の後紫苑はモップを地面から離し横薙ぎに払う。
猫又「ギニャッ!」サッ
だがそれも獣が上空に飛び上がるという形で避けられることになる。
しかし宙に浮いたということはそれと同時に・・・・・
月華「流石ね、いい位置だわ。」しゅっ
太い木の枝にちょこんと座り氷の杖を獣に向けた月華がもう片方の手で取り出した霊札を地面に向かって投げつける。
そこに六角形の陣が浮かび上がり六角柱の光が獣を捕らえた・・・空中ではどうやっても避けられまい。
それは先ほど紫苑が描いた術の効力を上げる為の法陣であった。
カァアアアアアアア!!
月華「百華斉法・・・・」
猫又「ギニャッ!?」
月華「砲華氷結界(アイシクルバスター)!!」
ダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
猫又「ギッ・・・・・」
月華の操れる最大出力の冷気を撃ち出す法術、杖の先から放たれた冷気は獣を一瞬で氷付けにし氷の柱に閉じ込めた。
猫又「・・・・・・・・・」
香織「す、すごい・・・」
月華「もうすぐだから待ってて。」
木の陰に隠れていた香織も顔を覗かせその出来上がったオブジェに感嘆していた。
だが、月華が最後の仕上げにそれを滅しようとしたとき・・・異変は起きた。
《へぇ、悪くはないけどまだ・・・足りないかな。》
ゾォッ・・・・
月華「え・・・・・?」
猫又「ギギャ?!?!?!?ガァアアアアア?!??!!?」ドドドド
ゴォオォオォオォオォオォオォオォオォオォオ・・・・・・
突如、氷の中の猫又の霊気が跳ね上がりその形を変えてゆく。
猫のような姿は虎のような姿へ・・・・より獰猛に、より禍々しく変貌して行く。
妖虎「グルルルルルルル!!!!」ガンッ!
獣は氷を砕き地面に降り立つ。
月華「これは・・・・・!?」
妖虎「グォオオオオオオオ!!」ガンッ!
月華「きゃっ!?」
林を縦横無尽に駆け巡るその獣は月華に肉迫すると爪を振るう。
月華は衝撃で後ろに吹き飛んでゆく。
紫苑「お嬢様っ!!」
回り込んだ紫苑が月華を受け止めて地面に着地する。
紫苑「お嬢様、大丈夫ですか!?」
月華「え、ええ・・・でも、ちょっとマズイわね。これは・・・」
姿が変わってから相手はより積極的に攻撃を仕掛けてくるようになった。
乙型は雪乃の特長に合わせて砲撃戦仕様になっている。
逆に言えば体つきの小さい雪乃はどうやっても格闘戦には不向きなのである。
紫苑も居るが冢杏や蚩尤達ほどのパワー型ではないため当たり負けしてしまうだろう。
○
燎子「あ、あの白いのが先輩だってのか?」
玉緋に連れられて燎子は雑木林にやってきていた。
燎子は月華達の戦いの様子に固唾を呑んでいる。
玉緋「そうだ、特別な術を使って鎧を着込んでいるがな。」
燎子「はぁ・・・やっぱ先輩はなんか凄ぇ・・・」
玉緋「オレの見たところお前もそれだけの霊力はあるぞ?」
妖虎「グルァアアアアアアア!!」ダッ!!
紫苑「くっ・・・!」
月華「いけない!向こうには・・・!」
月華と紫苑を跳ね除ける獣。
二人が見えなくなると代わりに獣は真っ直ぐ突進し始める。
燎子「アイツどこに向かって・・・・なっ!?」
香織「は・・・わわ・・・・!?」
燎子「何で香織があんなとこに居んだ!?・・・クソッ!!」
獣が向かってゆく一本の木の陰から見えるのは怯えて動けずにいる親友・・
その姿が目に入った瞬間、燎子はただ走っていた。
燎子「クソッ!このままじゃ、間に合わ『ヴゥン』!?」
燎子の体が一瞬仰け反るとその眼が緋色に変わった。
そのまま走り続ける燎子はどこから取り出したのか長い数珠を腰に巻きつけ叫んだ。
燎子(?)『時間がないんだろ、行くぞ・・・変神!』カッ!
○
香織「わわわわ・・・・」
妖虎「ガァアアアアアア!!」ガバッ
獣が飛び上がる。
もうダメだと香織は目を瞑りその場にしゃがみ込んだ。
香織(燎子ちゃんっ・・・!)
「うぉらぁあああああああああ!!」どげしっ!
妖虎「ゲァッ!?!?」
だがそこに突然何かが突っ込んで来て獣の腹を抉るように蹴り飛ばす。
衝撃で吹き飛ぶ獣は近くの木にぶつかり少しひるんでいた。
香織「え・・・・先輩・・・?」
「大丈夫か、香織!?」
香織「そ、その声・・燎子ちゃん・・・!?」
目を開いた香織が見たのは橙色の鎧姿。
また雪乃かと思ったのだが聞こえてきた声は彼女の親友、燎子のものだった。
「声?・・・うわっ!?なんだこりゃ!?」
燎子は体を見てみると全身が見たこともない鎧に覆われている。
その橙色の鎧は所々から上がる炎が毛皮のように身を包んでいてどことなく獣のような感じがする。
例えるなら獅子のような雄々しさを持った姿だ。
これが玉緋の新しい憑依法術『炎神鈴音(リオン)』であった。
玉緋(そいつを守るんだろう?戦うなら鎧があったほうがいい。)
鈴音「タマさんか・・・そういうことなら使わせてもらうぜ。」
玉緋(た、タマ・・・・?)
鈴音「玉緋の【玉】の字とってタマさん・・・・可愛いだろ?(ネコっぽくて)」
玉緋(まったく・・・お前らと来たら・・・・まぁ、いい。それより・・・)
目の前の香織が先だ。
香織「燎子ちゃん、あの・・・あのね、私・・・」
彼女は話したがっていた燎子が現れ、混乱しつつも何か言おうとしている。
鈴音「ち、ちょっと待て・・ストップだ。」
香織「え・・?」
香織の言葉を燎子が遮る。
そう、初めから自分が不器用だっただけで彼女は何も言う必要はないのだ。
鈴音「あー、その・・・なんだ・・・」
言いたいことは山ほどある、様々な言葉が頭の中を駆け回っていたが・・・上手くまとめられず、結局燎子は一言だけ
鈴音「今度は後ろ取られるなんてヘマしない・・・だから、しっかりそこで見ててくれ。」
燎子らしい単純な言葉、しかしそこには燎子の気持ちがきちんと詰まっていた。
香織「燎子ちゃん・・・うん!」
鈴音「ごめんな・・・・・・・ありがと。」
香織の顔がぱぁっと明るくなって何度も何度も頷いていた。
それを見てようやく燎子の胸の中につかえていたものがとれた気がした。
鈴音「交代だ、“ゆっきー先輩”!香織を頼む!」
月華「ふふ、そういうことならお任せしようかしら。下がるわよ、紫苑。」
紫苑「わかりました。」
月華と入れ替わりに鈴音が虎の前に立つ。
すると神社の方から二体の獅子が飛来してきた。
赤獅子「燎子さん、私たちもお手伝いしますよー。お狐様だけじゃ頼りないですからね。」
白獅子「わかりますか?こっちがセキで私がビャクです。」
鈴音「お前ら・・・助かる!」
玉緋(まぁ、居ないよりは役に立つ。)
鈴音「よし、行くぜ!!」
掛け声と共に鈴音が走り出す。
鈴音「でぁあっ!!」ブンッ!
妖虎「ガルルルルルル!!」サッ・・ザンッ!
鈴音の拳を交わした妖虎は今度は長い爪で切りかかってくる。
ガシッ!
妖虎「ガルッ!?」
鈴音「なぁ、なんとなくだがコイツ・・・なんか苦しんでないか?」
爪の一本を掴み、鈴音は相手の動きを止める。
虎は振り放そうとしているが燎子はぴくりとも動かない。
玉緋(霊力が器に入りきれていない、苦しいだろうな。言っておくが助けたいなら倒すしかないぞ。)
鈴音「そっか・・・・ならよ!!」ブゥゥン!!
妖虎「グァッ!?」
鈴音は一本背負いのようにして妖虎を投げ上げると腰の日本刀『紅鬼灯』を引き抜き言った。
鈴音「セキ、ビャク!上げてくれ!即効で片付けるぞ!」
赤白獅子「「合点承知です!」」
指示を受けた二匹の獅子は妖虎に向かって空中で体当たりをする
その繰り返し行われる攻撃で妖虎は空高くまで弾き上げられた。
赤獅子「ビャク、パスです!」ダンッ!
妖虎「ガァッ!?」
白獅子「はいっ!そろそろですよ兄者!」ダンッ!
赤獅子「オーケィです、行きますよ燎子さん!」ダァン!!
タイミングを見計らって最長というところで赤獅子が妖虎を叩き落とす。
それは猛スピードで落下してゆき、ちょうど鈴音の真上に向かって落ちてくる。
一方地上、鈴音は刀を下段で構えて精神を集中していた。
鈴音「一刀両断・・・・!」リィン・・・・カッ!!
刀が揺れると淡い鈴の音が響き、鎧からさらに激しい炎が上がる。
特に背中の辺りの出力が上がり翼のようにそれが揺れ動くと鈴音は大地を蹴り上げ大きく跳躍する。
そして刀に炎が灯ると、一閃・・・・!
鈴音「熱風咆哮斬(フレイムレイヴ)!!」リィィィンンッッ!!
妖虎「っ!?」
ドガァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアァア!!!!!
真っ二つに獣が裂かれると、それと同時に巻き起こった炎が凄まじい爆発を起こした。
○ 蓬縁神社
燎子「(ごくり)・・・・お、おい・・・香織・・・こいつは・・・」
香織「う、うん・・・・・・・・」
「「可愛い〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♡(はぁと」」(でれぇっ)
色々片が付き、二人は香織の持ってきた『超かわええわん☆にゃべ特盛』をベンチに並んで座り鑑賞していた。
今夜は満月で回りも明るく、外灯さえ灯っていれば屋外でも十分本が読める。
香織は頬を紅潮させ少し興奮しているようで、燎子に至ってはもう萌え死にしそうなくらいでっれでれになっている。
雪乃「どれどれ・・・・あら、ホントに可愛いわね。どう紫苑、あなたもお鍋に入って見ない?」
紫苑「遠慮しておきます。」
後ろから覗く雪乃がそう言うとさっぱりした返事が返ってくる。
待機状態でも大型犬くらいの大きさはあるため鍋なんかには入らない。
代わりに『ドラム缶in野外』とか言うのをさせられることになるのは後の話(ぉ
玉緋「沈んでいたのが嘘のようだな・・・・まぁ、それが何よりだが・・・」
やり残した掃除を片付ける玉緋は遠くから微笑ましくその様子を見守っていた。
目線の先にはにっと八重歯を見せながら笑う燎子の姿・・・そこにはここに来たの時の暗い雰囲気はもうない。
玉緋「フウ、お前の孫は元気にやっているぞ。」
見上げる月に向かって玉緋が報告するように呟くと・・・それは少し輝いたような気がした。
玉緋は少しだけ口元を綻ばせるとまた掃除に戻る・・・・
●
あらかたの掃除を終えようとしていた頃、玉緋は神木の陰に出来た深い暗闇へと目を向ける。
玉緋「・・・・そこにいるやついい加減出て来たらどうだ・・・」
《へぇ、やはりキミにはわかるか。》
闇の中から一枚の仮面がすっと浮かび上がる。
それは神々しくもどこか不気味で・・・・存在しているのか、いないのか曖昧な調子のその仮面に玉緋は見覚えがあった。
玉緋「お前は・・・あの時・・・!」
忘れもしない・・・・そいつは昔自分を封印したその仮面だった。
《やぁ、キツネさん。随分力をつけたみたいだね。》
玉緋「おかげさまでな・・・お前、何者だ?」
月読《ボクの名はツクヨミ【月読】・・・れっきとした神族だよ。最も、この世界のではないけどね。》
玉緋「何・・・?」
月読《凶星に破壊されたずっと前の世界の神ってことさ。ほら、ボクにはもう精神しか残ってない。》
それは霊体で自身を地上に降ろすことも出来ないほど存在が弱いということだった。
だがそんな状態になっても感じる何とも言いがたい妙なプレッシャーからは元々そうとう上位の神だったことが伺える。
玉緋「その前の世界の神が何のようだ。」
月読《手伝って欲しいことがあるんだよ。昔からこの世界の神は色々縛りが効いてるからろくに動けないし、ボクもこの体じゃ大したことは出来ない・・・せいぜい・・・・》
玉緋「死霊を変生させるくらい・・・か?」
月読《・・・・・へぇ・・・・》
その仮面を睨みつけながら玉緋が言ってのけた。
表情こそ分からないがその声色は僅かながら変化したように感じられた。
月読《気づいてたのかい。流石だね・・・・でもまぁまぁ、キミ達の力は分かったよ。》
玉緋「ふんっ、お前のような怪しい奴の言うことをこの八神の守護神、空狐玉緋が聞くと思うのか?」
月読《そうかい?ボクはこの世界の為を思って動いてるんだけどな・・・キミ達も真の凶星とは戦いたくないだろう?》
玉緋「真の凶星・・・だと?」
玉緋がその言葉に反応を見せると仮面は話を進める。
月読《今の凶星は力を分けられているんだ。ボクの弟の働きでね。弟、スサノオ【素盞嗚】は開闢(かいびゃく)の化身・・・光と闇、陰と陽、天と地、海と陸・・・混沌(カオス)を切り裂き、始まりの道を分かち開く・・・新たな世界を築く創生の神だった。遥か昔のまだ“創造”と“破壊”だけで“維持”という道がなかった時だ。ボクら創生側の神と破壊側の凶星とで激しい戦いがあった・・・・スサノオはその戦いで自らの魂と引き換えに凶星の力を割いたんだ。》
玉緋「あの羅喉でもまだ半分というのか・・・!」
月読《羅喉・・・キミ達が戦ったラーフのことだね、奴もだけどもう一つの方が危険なんだよ・・・・ケイトゥ、計都とも呼ばれるもう片方は元の姿に戻りたがっているんだよ。》
玉緋「・・・どうやって戻るつもりだ?」
月読《この世界には阿修羅という神族がいるだろう?あれはこの世界に逃れて生き延びたボクらの姉、アマテラス【天照】の一族なのさ・・・・ケイトゥはおそらく弟の魂を目覚めさせる媒介としてそれを使ってくるだろうね。》
玉緋「阿修羅族・・羅刹天・・・・いや、アイツか・・・」
月読《心当たりがありそうだね。キミたちにも弟が目覚めるのを止めて欲しいんだよ。たとえ“その阿修羅を殺してでも”ね。その分の力は持ってるはずだよ?》
その緋色の眼がギョロリと動く。
この仮面が自分の運命を変え、神になるように施した理由がようやく分かった。
そして仮面はそれを当たり前のように言ってのけたのが玉緋には・・・・・・
玉緋「ふんっ、やはり気に食わんな。」
月読《・・・・・どうしてだい?ことの重大さがわからない立場でもないだろう?》
玉緋「・・・・・・・」
暫く仮面をじっと見ると、今度は集まっている燎子達の方に顔を向ける。
玉緋「この立場だからこそだ。例えお前から与えられたものだろうと今のオレの力は壊す為のものじゃない・・・人々の幸せ・・・繋がり、絆を護る為のものだ。お前が何を恐れているかは知らん、オレはただ護りたいものを護る。」
月読《・・・・ふぅん・・・・》
調子こそあまり変わらなかったが、自分の力を分け与えた言わば子供に裏切られたのだ。
言霊には微かな落胆の色が混じっていた。
月読《警告はしたよ・・・・・?》すぅ・・・
仮面がまた闇の中に下がって行きそして見えなくなる。
玉緋「・・・・・・・」
玉緋「始まるか・・・・・」
仮面の消えた暗闇を見つめ玉緋は静かに呟いた。
,うん・・・・・そうだね、半年後ぐら『もうええっちゅうねんっ!!(どげしっ!)』ぐはぁっ!?
紗魅「いつまでもウジウジしとらんとスパッとせなな、ええ加減ウザいわ。」
フィナ「まったくですぅ〜。切り替えを大事にってよく言いますよぉ〜?」
檬瑠「ち、ちょっと二人とも・・・(焦々」
紗魅「まぁ、これで下準備もだいたい整ったし時間が開いても連載始めればスムーズにいけるんやろ?」
はい、まぁ・・・その通りでございますです。
フィナ「フィナ達も早く出たいですぅ〜♪」
檬瑠「でも、あとがき以外で出番あるかわからないよ?」
紗魅「チョコちゃんも出張中やし・・・まぁ、早めに執筆に戻ることやなってことでっ。」
「「「バイバ〜イ(ですぅ〜)♪♪♪」」」
,#000000,./bg_f.gif,i125-201-166-25.s02.a040.ap.plala.or.jp,1
2010年08月25日(水) 22時06分36秒,20090813162139,20100828220636,JE9zt7MaK6V1w, 仮面ライダー珀羅 『炎の獅子と氷の月精《前編》』 ,青嵐昇華,,,
河川敷、日が落ちて来てだいぶ涼しくなった春の夕暮れ時。
一人の少女が数人の男に囲まれて立っている。
だんっ!
「ぐぁっ!?」ごろごろごろ
「岡本!・・・・・『シュッ!』は!?」
その内、男の一人が殴り飛ばされ盛大に転がって行く。
隣の男がやられた仲間に気をとられていると目の前にしなやかな足が迫っていた。
燎子「よそ見してんじゃねぇ!!」どげしっ!
「ぐはぁ!?」
なぎ払うかのような回し蹴りを受けさっきやられた仲間の上に被さるように転がる不良。
燎子「・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・」
彼女の名は蓮見燎子、この春から八神市内の私立高校、白桜学院通う一年生だ。
すらりとした長身と腰の辺りまで伸びた赤い髪、そして鋭い目付きが特徴的だ。
「藤田まで・・・くそっ、あんだけ居たのにもう半分かよ!?」
燎子「・・・雑魚がいくら群れようたってオレが負けるかよ・・!」
近くの敵を片付けた燎子は一度あたりを確認してみる。
少し間隔は開いているが周りにはまだ十数人の敵がこちらを囲んでいた。
燎子「チッ、今日はしつけぇな・・・!」
舌打ちする燎子の顔は明らかに疲労の色を浮かべていた。
いつもなら数人片付けたら帰っていくような連中であったためこんなに持久戦になるとは思っても見なかった。
香織「り、燎子ちゃん・・・」
あんまり喧嘩が長引くものだから橋の下に隠れさせた親友も心配そうに顔を覗かせている。
彼女は春野香織、燎子と同じく白桜に通う一年生だ。
髪は肩の辺りで切り揃えられたショートカットで少し膨らみがある。
なんとなく子犬のような印象を与える子であった。
燎子「香織・・・出てくんじゃねぇぞ・・・」
香織「で、でも燎子ちゃん怪我して・・・」
よく見ると、相手の攻撃を喰らったのか燎子の額から血が流れ出し片目を塞いでいた。
ただでさえ大人数相手で疲労が溜まっているのにそれがさらに動きを鈍らせているようだった。
香織の目から見ても燎子の動きはいつもに比べキレがない。
燎子「心配すんな・・もうすぐ片付け・・」
香織「っ!?燎子ちゃん、危ない!!」
ちょうど燎子の視界の外から金属バットを持った男が迫って来ていた。
燎子「クソッ・・・・っ!?」
燎子は振り向こうとしたところ使いすぎた足は限界が来ていてすぐに反応出来ない。
ガスッ!!
燎子「・・・・?」
やられると思った瞬間、何か鈍い音がしたが自分への衝撃は来ない。
振り返ると燎子の目の前にはバットを振り下ろしたまま固まる男と、その足元に頭から血を流してぐたっとしている親友の姿があった。
香織「・・・・・・・・」
燎子「か、かお・・り・・・・おい!?香織!!」
意識が無い・・・・血も止まらず流れ続けている。
元々白い肌がより青白くなってゆく親友に燎子は背筋が凍りつき、頭の中が真っ白になった。
「お、お前やっちまったのか!?」
「ちがっ、俺・・・や、あいつが急に飛び出して来て・・・全然そんなつもりじゃ・・!!」
男達の方はまったく予想もしてもいなかったことにあたふたしている。
双方共に分かってはいたがあくまで喧嘩であり相手の命を奪うつもりは毛頭ない。
男達からすればただ生意気な蓮見燎子にちょっと怪我を負わせてぎゃふんと言わせてやる
それだけだったのに・・・・・
燎子「・・・・・・」
一刻の猶予も無い、早く病院に運ばねば香織が・・・
そう思ったとき燎子は小柄な香織をおぶり前に進んでいた。
「は、蓮見・・・・・」
燎子「・・・け・・よ・・・・・」
「え・・・?」
男たちはまだ燎子を囲むような形でその場から動けないでいた。
燎子「どけっつってんだよ!!!!」ギンッ!!
「ひぃっ!?」
前髪の間から覗く血走ったその眼に、正面に立つ不良の一人が小さく悲鳴を上げる。
まるで肉食獣や猛禽のように鋭い狂眼は周りにいる邪魔者に明らかな殺気を放っていた。
燎子「どけぇええええええええええ!!!!!!」
夕日に染まった河川敷にその咆哮が響き渡った。
【仮面ライダー珀羅〜炎の獅子と氷の月精〜】
○
新学期も始まり朝の校門には様々な生徒が行き交っている。
夏休み気分も抜けずだらりとしている者もいるがそのうちのどの生徒も校門の真ん中に立ち微笑む女生徒への挨拶を欠かさない。
「ゆきのんおはよ〜、新学期早々大変だね〜」
雪乃「おはようございます。」
「おはようございますゆっきー先輩」
雪乃「おはよう。あら、あなたスカーフが少し曲がっているわ。」
そう言って生徒を呼び止め、彼女はその小さな手で向きを正す。
雪乃「これで・・・よし、いいわよ。」
「あ、ありがとうございますっっ!(////)」
彼女はこの白桜学院の生徒会長、矢倉雪乃。
端整な顔立ちでまつ毛は長い、髪は深い紺色で軽くウェーブがかかっているセミロングだ。
身長は比較的低く、人形のような可愛らしさがあった。
学院内では高い人気を誇り『ゆっきー』『ゆっきーの』『ゆきのん』だとか様々な愛称で呼ばれていて校内一のアイドルであることは間違いなかった。
香織「おはようございます先輩。」
雪乃「おはよう香織。」
同じ茶道部に所属する一つ下の後輩に声を掛けられ雪乃もにこにこと挨拶し返す。
香織「新生徒会の初仕事ですか?」
雪乃「そうなの。ふふ、これからが大変だわ。」
香織「応援してます、頑張ってくださ・・・・あっ・・・」
燎子「・・・・・・・」すたすた
雪乃と話していると香織の視界の端に反対側の校門の隅を通り過ぎようとしている友人の姿が映る。
香織「お、おはよう燎子ちゃ・・・」
燎子「・・・・・・」すたすた
香織が声を掛けるのだが、燎子の方は黙ったまま・・・・目を向けることもなく校舎内に入っていってしまった。
香織「・・・・・ぁ・・・・燎子ちゃん・・・・・」しゅん
雪乃「まだ続いてるの?」
香織「・・はい・・・・・」
彼女が行ってしまったあとしょんぼりしている香織を見て雪乃が言う。
香織は一言返事をすると俯いてしまった。
●
高校に入ってすぐのことだった。
いつものように燎子と二人で帰っていると中学時代から何かと突っ掛かって来た不良のグループが燎子に対し喧嘩を申しこんできた。
燎子は特に不良を名乗っていた訳でもなかったが、生まれ持っての赤髪と目付きの悪さから道行くヤンキーに声を掛けられていた。
しかし、燎子の強さは並でなくそうそう相手になる奴はいなかった。
もの心付く前から主夫で時間のある親父に剣道を習い、近所の道場では空手を学び暇な時には祖父から喧嘩のやり方を教わって育ったのだ。
本当に女の子かと疑われてしまいそうな育ち方だが、そんな燎子を生半可なチンピラではどうこう出来るものではない。
いつもは燎子が相手を泣かない程度にボコボコにして適当にあしらうようなところだったのだが・・・
その日は訳が違った。
今まで燎子にコケにされてきた不良のグループが同盟を結び、その場に集まった数はおよそ三十、いくら喧嘩慣れしているとは言えそんな数をいっぺんに相手するのは流石に骨の折れることだった。
その内疲れが出てきて怪我を負い、さらに状況は悪化した。
思わぬ苦戦を強いられた燎子だったが、燎子への攻撃を庇った香織が重傷を負ってしまったのだ。
・・・・不幸中の幸いにも香織は一ヶ月程度入院しただけで学校にも通えるようになったのだが
この一件から燎子は香織と関わりを持とうとしなくなった
○
燎子「・・・・・・・・」
昼休みになると弁当を食べ終えた燎子はいつものように教室の端で一人つまらなそうに外を眺めていた。
ふと、グラウンドでサッカーをしている数人の生徒の姿が目に映った。
何がそんなに楽しいのかと思うほどにはしゃぎ、笑顔を見せ合っている。
燎子「・・・・ふんっ・・・・」
学校の中でも蓮見燎子という生徒は浮いた存在だった。
はっきり言うと燎子には友達がいない、愛想も悪いし目つきも非常に恐い。
「オレに近づくな」と言わんばかりのオーラを放っているから当然ではあったが、とにかく燎子は他人と関わるのを嫌っていた。
加えて彼女は売られた喧嘩は全て買い、もれなく返り討ちにしているため周囲からは乱暴者と思われていた。
そんなことだから香織が入院したとき病院送りにしたのは燎子だという噂が流れもした。
(すぐに香織本人から説明されて一応誤解は晴れたが・・・・)
ふにふに
燎子「はにぁっ!?」びくっ!?
いきなり脇腹を揉み摘まれ、驚いた燎子が素っ頓狂な悲鳴を上げて飛び上がる。
燎子「な、なにしやがんだテメ・・・・ぇ・」
雪乃「ごきげんよう。」
燎子「ゆ、ゆ・・・きの先輩」
拳を握って振り返るとそこにはにこにこ微笑む上級生の姿が・・・・
生徒会長にして学院のアイドル、矢倉雪乃だった。
燎子「い、いつの間に・・・・」
気がつけば燎子の周りに漂っていた恐くて誰も入って来れないような空気《オレに近寄るなゾーン》に大穴が空けられ代わりに、絶対正義のほんわか空間《アイドルゾーン》が展開されている・・・・・恐るべしアイドル(ぉ
雪乃「あら・・・別にゆっきー先輩でもいいのよ?それともゆきのんがいい?」
燎子「・・・・・・」
にっこり言う先輩に燎子の方は対応に困っていた。
親同士が親しいこともあり高校に入る前から面識はあったのだが燎子はどうもこの人が苦手だった。
何と言うかペースを乱されるのだ・・・・・
燎子「そ、それより何の用っすか?」
どうにか調子を戻そうと燎子が尋ねる。
雪乃「あなたとお話したいことがあるの、今日の放課後少しいいかしら?」
燎子「別にいいですけど・・・・・」
燎子は一応剣道部には在籍していたが、あの一件の後は全く顔を出そうとしていない。
放課後は特に何もする気にならなかったのでとりあえず雪乃に付き合うことにする
雪乃「そうね・・・あまり人が来ない方がいいわ。蓬縁神社にしましょう、場所は分かるわよね?」
燎子「・・・うぃっす・・・」
雪乃「じゃあ、十八時ごろに神社で。」
燎子「はぁ・・・・・・」
にこにこと手をふって去ってゆく先輩、何故だか知らないがとても疲れた。
● 少し飛んで放課後
香織「あの・・・・先輩」
雪乃「何?」
燎子に用があったのは雪乃ではなく香織の方であった。
そして雪乃は一向に解決しない二人の仲を見かねて話し合いの場を設けたのである。
二人は神社までの道を歩いていたのだがその途中で香織が心配そうに言う。
香織「燎子ちゃん・・・私がいたら帰っちゃうんじゃ・・・」
雪乃「大丈夫よ、あの子は負けず嫌いでしょ?その場になったら絶対逃げないから。」
白桜学園の生徒会長には人気だけでは慣れない。
知力、洞察力と行動力など様々なものに秀でていないと駄目なのだ。
雪乃は燎子のことをよく理解していた。
周囲からどんな目で見られていようと彼女の本質を理解していたし、香織を避け続ける理由もだいたい察しがつく。
しかし、これは本人同士でないと問題の解決にはならないのだ。
プルルルルルルルルルゥ・・・・・
雪乃「電話だわ・・・・あら、ずいぶん珍しい人から・・・・」
携帯電話の液晶を見て雪乃が呟く。
そして香織の方を向き直り言った。
雪乃「ごめんなさい、先に行っててくれる?」
香織「え・・・」
雪乃「あの神社は知り合いが管理してるの、今日行くように言ってあるからお茶くらいは出してくれるわ。ちゃんとお話・・・出来るわよね?」
香織「ぅ・・・・・・・」
雪乃「大丈夫。」
少し心細そうにしている香織だが雪乃はそっと手を握りにっこり言う。
不思議なことだがこの先輩の言うことなら何だか上手くいきそうな気がしてくるものだ。
香織「・・・はい!それじゃ、後から・・・・」
先輩に香織はしっかり頷き、一度お辞儀してから一人神社に向かっていった。
雪乃「ふふ、頑張りなさい。」
雪乃は少しその後ろ姿を見送ってから電話に出る
雪乃「もしもし・・・久しぶりね、濠。」
○
燎子「ちょっと、早過ぎたか・・・・・」
待ち合わせの神社にはやって来たが時間までまだ30分以上もある、当然まだ雪乃の姿は見えない。
とりあえずと、燎子は隅にあるベンチを見つけドカっと腰掛ける。
燎子「・・・・・・・」
静かなものだった。
人が来ないようにと雪乃が選んだ場所ではあったが・・・こんなに静かだと改めて自分が独りなのだなと実感させられる。
燎子「・・・・・・・・」
辺りを見渡せば階段から賽銭箱へ続く道を挟んで二体の狛犬が据えてある。
赤狗《・・・・・・・》
白狗《・・・・・・・》
燎子「・・・・?」
気のせいか・・・その二体の視線が自分に向いているような気がする。
このベンチが入り口に近い為であろう、燎子はそう思ったが・・・・・
燎子「・・・・・」(じ〜)
とりあえず、目があったのでじっと見返して見る。
泣く子も更に泣き出す(ぉ)燎子さんのガン見はそれはそれは恐ろしいものだが・・・
この時の彼女の目はそうではなかった。
燎子「ふふ・・・・」
常にツンケンしている燎子であったが、心許せるものはある・・・そう、燎子は動物が好きなのだ。
例えそれが石であっても動物の形をしていると何か心和むものがあった。
いつからだったか香織と友達になったのも動物好きのおかげだった。
●
「うぬぅぅぅ・・・・・」
中学の時、燎子は本屋の平積みで見つけた『ぬこ○べ』と『かわええわ○こ』を凝視しどちら買うか本気で小一時間悩んでいた。
どちらも残っているのは一冊・・・・だが最近ちょっと小遣いを使いすぎて買えるのは一冊だけだった。
「うぐぉぉぉぉっぉぉ・・・・」
動物系雑誌コーナーを陣取ってうんうん呻っている燎子、他のお客さんもいい迷惑だ(ぉ
しかし燎子は決断出来ない・・・・だって『イ ヌ も ネ コ も 大 好 き だ か ら !!』
燎子は世間でよく聞く「ねぇねぇ、犬派?猫派?」という質問ほど愚かなものはないと思っていた。
どちらも等しく愛せばいい・・・それだけのことさ、と。(だが今の状況はそんなカッコいいものではない)
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」
なんか悩み過ぎてマヂで変な奇声が上がってきた(ぉ
放っておけば頭から煙が出てくるに違いがなかったそんなとき、燎子は肩をポンポンと叩かれる。
「うなぁぁぁぁぁぁ、っ!?・・ん、ん!?なんか用か?」
「あ、あの・・・ど、動物・・・・好き・・・なんです・・か?」
今からすれば香織も相当勇気を出していたんだなと燎子は思う。
元々気の弱い子で他人に声を掛けるというだけでも大変なことなのに相手は中学時代も割りとぶいぶい言わせていて悪名高かったはずの燎子だ。
後から聞くに香織の方も声を掛けるかどうか小一時間迷ったらしい。
「あ、あぁ・・・・悪いかよ?」
「ひっ!ご、ごめんなさい・・・!」ペコペコッ
「いや・・・別に謝んなくてもいいけど・・・」
いきなり声を掛けていきなり謝る少女。
燎子の視線が再び本に向かうとその少女はもう一度声を掛けてきた。
「・・・・ま、迷いますよね・・・」
「え?」
「私もすごく動物好きなんですけど・・・ねこちゃんかわんちゃんかいつも選べなくて困ってるんです。」
「へ、へー・・・・そうなのか・・・・」
その時燎子はクールに装おうとしていたが同じ考えを持ってる人に会ってちょっと嬉しかった。
だがその後の一言は彼女にとってもっと嬉しかった。
「それで・・・あの・・・・よかったら一緒に見ませんか?」
○
その後二人で二冊を購入して一緒に公園で“いぬこ”のよさを語りあったものだ。
それから意識し始めた為か学校でもよく見かけるようになり一緒に本屋に行く通う内にお互いのことも話すようになり気が付けば友達になっていた。
燎子「・・・・・・・」
自分から仕掛けるわけではない、だがそれでも売られた喧嘩は買わないわけにはいかない。
その時になるとどうしても体が逃げるなと叫ぶのだ。
そんな性格だからよく喧嘩する自分の傍にいるのは危険が付いてくる、それは燎子も分かっていた。
だが、自分ならいける・・・・一緒にいても巻き込まずに済ませられる・・・・・
その考えが親友に大怪我を負わせてしまったのだ。
香織が怪我したのは自分のせいだ・・・・原因は全て自分にある。
巻き込んでしまった考えの甘さも守りきる力が足りなかったのも・・・
自分に関わるとロクな目に合いはしない、だから燎子は周りを拒絶するようになった。
大事なものが傷つくのはごめんだ。
だけど・・・・・・
燎子「・・・・くそ・・・」
知らなかった・・・昔は独りでもそれが当たり前だった。
だけど今は違う、どこか寂しい気持ちが胸いっぱいにあった。
香織との関わりで燎子自身も変わっていたのだ。
家族ではない他人と一緒にいる楽しさ・・・・孤独に戻ることで燎子は改めてそれを感じていた。
だがどうしようもないのだ。自分と関わらない方が彼女にとっていいことなのだ。
少なくともまた危険な目にあわせてしまうよりは・・・・・
だけど・・・・・・
燎子「・・・はぁ・・・・・・・」
赤狗《どうしたんですか〜お若いのにため息なんかついて〜》
燎子「わきゃぁっ!?!?」
考えが堂々廻りを始めた頃、燎子はいきなり声を掛けられ驚き飛び上がる。
・・・・・・・どうも彼女は不意打ちの類に弱いらしい、しかもツンツンしてない素が出る(ぉ
燎子「な、な・・・・・!?」
声と共に突然狛犬の石像からポンッ、と煙があがり無機物っぽいゴツゴツから有機物っぽいもふもふしたものに変わる。
セキ《ため息をつくと幸せが逃げていくんですよ?》
ビャク《あ、兄者何をしているんですか!?急に喋ったり出てきたりしたらびっくりさせちゃいますよ!?》
セキ《いいじゃありませんか、聞いていたお嬢さまのお友達でしょうし。ビャクも気づいているかもしれませんがたぶんあったこともあります。》
ビャク《でもですねぇ・・・いきなりでは・・・》
燎「っ!?」
赤い方の犬だか猫だか分からない生き物(以降、狗とする)と白い方の狗が人語で話している。
燎子は動揺した・・・・・いや、いきなり石像が生き物っぽいものに変わって喋り始めたのももちろんだがそれよりなにより燎子にとって一大事だったのは・・・・・
燎子(か、可愛い・・・・・!)
そうなのです、ふっさふさなのです、ほわほわのふかふかなのです。
動物好きの燎子は特にもこもこのふわふわとかに目が無かった。
やっぱりこのもふもふ達も『動物奇想○内』とか『最高志村○一動物園』とか毎回録画している燎子にはグッとキた(ぉ
ビャク「驚かせてしまって申し訳ありません。私達はこの神社の番を仰せつかっている狛犬です。私は白獅子、こちらは兄者の赤獅子です。」
燎子「番って・・・・守り神とかそういうのなのか?」
セキ「そうそう、そういうのです。」
「へぇっ〜」ともの珍しそうに息をもらす燎子に狗達はちょっと得意そうな表情をしていた。
セキ「まぁ、いちいち赤獅子とか白獅子とか言うのも大変ですし、セキとビャクと呼んでくださいな。えぇっと・・・蓮見燎子さん。」
燎子「えっ、何で・・・」
「おい、馬鹿狗ども・・・・そこで何をしている?」
何故自分の名前を知っているのか、そう聞こうとしたとき凛とした声と共に境内から巫女さんが出てくる。
セキ「うるさいのが来ましたね〜・・・」
ビャク「それでは、また。」ポンッ
燎子「あっ・・」
また煙を上げると狗達はいつの間にか石像に戻っていた。
とっさに燎子は立ち上がるがその拍子にやってきた巫女さんと思いっきり目があった。
燎子(・・・・・・・紅・・いや、緋色?)
「ん・・・・?」
燎子「っ・・・ど、どうも・・・」
その眼は宝石のように綺麗な色をしていて燎子は思わずじっと見てしまった。
巫女さんは燎子より少し背が高く、銀色の美しい髪をしていた。
向こうも燎子の顔をじっと見ていたようで・・・・
玉緋「・・・ほぉ、お前か・・・・お嬢の友達と言うから誰かと思えば・・・」
●
雪乃と分かれた香織は神社への道を一人歩いていた。
これから燎子と仲直りしに行くのだ・・・・妙な緊張感が香織に降りかかる。
(別に喧嘩してるわけではないので仲直りというのもおかしな気はするが・・・)
香織「あっ・・・!」
本屋の前を通り過ぎようとした香織は店前に並べてあったものを見て足を止めた。
香織の目に止まったもの、それは本日発売予定だった『超かわええわん☆にゃべ特盛』だった。
どうやらちょうど今店員さんが並べ終えたところらしい。
香織「もう出てるんだぁ。」
買っていこう、きっと燎子も喜ぶだろうと一冊手にとって店に入る。
だが、レジが混んでいるようで結構な人だかりが出来てしまっていた。
ようやく本を購入し店を出たときはもう約束の時刻までそんなに時間はなかった。
香織「急がなきゃ、近道して行こう。」
●
雪乃「ふふ、ホントに何ヶ月ぶりかしら。」
幼馴染、そして同僚の霧島濠からの電話だった。
濠は今、八神から出て高天原(たかあまはら)という町で龍脈の調査をしている。
だが向こうから連絡を寄越すのは本当に希なことだ。
『あぁ・・・・唐突だがそっちで何か変わったことはないか?』
雪乃「本当に唐突ね・・・・そうね、変わったことと言えば仕事の数が増えたことくらいかしら。」
ここ数ヶ月の間で調伏した死霊、妖怪の数は例年のそれに比べて遥かに多くなっている。
今では一週間に一度のペースで退治に駆り出されているところだった。
雪乃「そっちで何かあったの?」
『・・・凶星が復活したかもしれない。先日その遣いの者と一戦交えた。』
雪乃「えっ、まさか・・・でも羅喉はお父様達が・・」
『羅喉じゃない。もう一つの凶星、計都と言うらしい・・・・俺にも詳しいことは分からないがもしかしたらそちらにも手が及んでくるかもしれない。気をつけてくれ。』
雪乃「・・ええ、ありがとう。こっちは私が見てるから心配しないで。」
その後ニ、三度言葉を交わし、電話を切る。
雪乃「ちょっと大変なことになってきたわね・・・・」
とりあえず神社へと足を運びながら雪乃はこれからのことを考える。
今までは自分の『月華』と式のサポートだけでもなんとかやっていけたが話しに聞く凶星が復活するともなると明らかに戦力が足りない。
だが、以前凶星と戦っていた父達は一部を除いて戦いを離れてからもう長い。
急に動けるはずもないし、それに雪乃の父は今海外に居る。
雪乃「玉緋は・・・・・まだ無理ね・・・・」
以前、時季によって術の効力が変わってくる『月華』には限界があると感じた雪乃は自分と組んで『影月』を使うことを提案していた。
町の守り神である玉緋は神になってまだ年月が浅い、その為未だに強力な力を使うには人間と協力し“封奇の数珠”を用いて『影月』の術を使う必要があった。
先代、玉緋と一緒に戦っていた人間ももう前線で戦えるわけがない・・・・はずである(汗
しかし玉緋はこの術に特別な思い入れがあるようでなかなかに返事を渋っていた。
その代わりに違う術を開発するということだったがどこまで完成しているのか分からない。
雪乃「どうしようかし・・・・・っ!」
急に立ち止まる雪乃は仕事の顔になる。
やわらかい表情は残っているものの少し締まって見えた。
雪乃「・・・死霊の気配、近いわね。」
○
玉緋「なるほどな・・・・・それで元気がなかったのか。」
燎子の隣に腰掛けた玉緋は話を聞き終えると持ってきた茶を啜った。
玉緋「そのこと、家の者には相談したか?」
燎子「母さんや親父にはあんまし心配掛けたくない・・・・」
隣に座るこの玉緋という巫女さんは自分のことをこの土地の神だと名乗った。
普段なら到底信じられないような話だが、先ほどの狛犬達を見た後だと本当のことだと分かる。
色々話を聞いていると玉緋が言うお嬢、燎子の先輩である雪乃とも浅からぬ縁があり彼女の父とも深い繋がりがあるらしい。
また覚えてはいないが自分も幼いときに両親に連れてこの神社に来たことがあるらしい。
玉緋は話している内に今度は燎子のことも聞いてきた。
最初、燎子は自分のことなんかどうでもいいと言っていたが何故か玉緋は興味を持っているようだった。
仕方なしに話をしていた燎子であったが、話しているうちに止まらなくなり結局全部喋ってしまった。
本当はずっと誰かに聞いて欲しかったのだろう・・・自分でも驚くくらい素直に話すことが出来た。
玉緋「・・・・・それにしても人を傷つけない為に孤独を選ぶか・・・・オレとは反対だな。」
燎子「え?」
玉緋「オレはな・・・孤独になるのが嫌だからたくさん人を傷つけてしまったことがある。」
玉緋「昔のオレは本当に独りぼっちだった。もう三千年ほど昔になるか・・・何者だったかは今でもわからないが偶々出会った怪しげな面に『キミには素質があるようだ』とか何とか訳の分からんこと言われていきなり封印されてな。封印が解けて外の世界に出た時にはもう百年も千年も経っていた。周りに何一つ知ってるものが無くてな、とにかく不安だった・・・それで・・・」
燎子「・・どうしたんだ・・・・?」
玉緋「里に降りてはよく人間を化かして遊んでいた。そうすることで気を紛らわしたかったんだろう。封印されたときに一緒に霊力を上げられたりもして、強力な術が使えるようになってたから色々試しもしたんだがまぁ・・・そのときに失敗してな、術が暴走して里にまったく雨が降らなくなってしまった。」
燎子「そ、それ大丈夫なのか?」
玉緋「いいや、大丈夫じゃない。あの頃に雨が降らないともなると作物にも大きな被害が出て大変なことになる・・・・」
燎子「・・・・・・・・」
玉緋「まぁ、通りかかった旅の法師に術を止めてもらって助かったんだがな。そのときはオレも若くて捕まるまいとその人に勝負を仕掛けたんだがこれがまぁ見事に惨敗だった。霊力だけならオレの方が勝っていたはずだったんだがな・・・・」
苦笑交じりで玉緋が言った・・・でもどこか満足そうだった。
少なくとも燎子にはそう見えた。
玉緋「その人が言ったんだ。守るモノがある、守りたいと願う気持ち・・・それこそが何ものにも代えがたい力になる、だから負けないってな・・・・そして一緒に来るかと手を差し伸べてくれた。そのおかげでオレはたくさんの仲間を得たし、護りたいものも出来た。・・・だからオレはこの町を護っている。」
燎子「凄ぇな・・・・・・オレには・・・・」
玉緋「燎子、お前も持ってるだろ?」
燎子「・・・・・・・・・」
玉緋「確かにお前の傍にいたことでその友達は怪我をしたかもしれない。だがそれはお前が守りきれなかったんじゃない、その友達がお前を守ったんだ。その子もお前と同じ、例え自分が傷ついてでも友達を守りたかったんだろう。お前はその強い絆を捨ててしまう気か?」
燎子「オレは・・・・・」
玉緋「次はお前が守る番だろ?・・・今度こそ、な。」
燎子「・・・・・・・・」
燎子は俯いていた、考えることがたくさんあって気持ちの整理がつかないようだ。
暫くはその調子だったがやがてふと、呟くようにして言った。
燎子「・・・なぁ、なんでオレなんかに・・・」
玉緋「・・・・・・・まぁ、家族みたいなもんだからな。」
燎子「えっ?」
驚いたように燎子が顔を上げる玉緋は何故かちょっとそっぽを向いている。
玉緋「柄にもなくベラベラと長話をしてしまったな、待ってるだけじゃ暇だ、掃除するぞ!お前も手伝え!」ぐいっ
燎子「ぅおいっ!ち、ちょっと!?」
そして何故か神社の掃除を手伝わされるはめになった燎子であった・・・・・
,え、冬眠って一ヶ月程度?と思われた方おはこんばんにちは。
相変わらずの嘘八百、青嵐昇華でございます。
嘘付きついでに前回のお話でいくつか訂正したところもございますのでご了承下さいorz(ハイパー土下座)
前編あとがきでは前回のお返事を
To 元祖(?)Aヨスケさん
>ども〜、お久しぶりです。
お久しぶりですww
やっぱり初期から馴染みのある方から感想をいただけるとほっとします。
お返事お待たせして本当に申し訳ありませんでした。
>一話目にして既に「変神」が出来るうえ、さらには強化形態である「転神」まで会得しているとは
まぁ、ちまちま始めてる余裕もないので『朱凰』で言う中盤辺りの勢いで進行させていただきました。
>名前の「濠」も、淳さんからしっかり「さんずい」をもらってるところが良いですね。
どんどん水とか関わって行ってもらうのでw
向こうじゃカタカナになりますけど(ぉ
>嵐羽/鴉美ちゃん そして初っ端からのサービス。飛べる女の子のお約束、浮遊パンちr
恭也「パンチラなくしてナニが浮遊かってなwそして、あれはモロだぜ!」
鴉美「お、お黙りなさい!!(////)」ふるふる
>恭也くん 軽過ぎず、冷静過ぎずの相棒の様なやつですね。
濠が真面目君なので必然的にこんなんになりましたw
反省はしていな(ry
>計都 『朱凰』のラスボス「羅喉」と同等の力という事は、想像する限りかなり強大な敵。
羅喉神《羅喉王+髏龍》+計都(神)=真の凶星
という感じなのでこの人も最初からクライマックス的な能力持ちではあります。
>なにはともあれ新作は期待が高まるもの、今後の物語の展開が楽しみです!
ありがとうございます!・・・・・あぁ、でも次回こそはホント新年度あたりになりそうです・・orz
To わぴたん会長
>『ベン・トー4/花火ちらし305円』の表紙がネ申すぎる件について
ま、まさかわぴたんがメガネっ子萌えだったなんて・・・メガネっ子萌えだったなんてっ!(←何故二回言いたし
>俺は『シンケンジャー』と『ディケーィ』を見ようとテレビをつけたら、鳴滝さんが愛してやまない『プリキュア』のOPだった……!
ちなみに今更ですが最萌えはパッション、会長と言えどこれは譲れませぬな・・・!(直したメガネがきらりっ)
>KOOLな16歳
そうそう高2だからまだ16・・・って、ぬかった!?
誕生日は四月後半(牡牛座)という裏設定の為彼はとりあえず17歳でした・・・!(あんまり重要ではないけど)
>ジュンオネーサマは霧島家の長女なわけで、ゆくゆくは濠くんが霧島家を継ぐんですねわかりました!
わはー、そうなのかー!(ナニ
>前メンバーあの人は今
淳/バイトしてたケーキ屋さんから独立してお店立ち上げてます。
慎弥/教員免許とって白桜の体育のせんせー、剣道部顧問
湊/姉のケーキ屋手伝いつつ道場開き、ちなみに師範(燎子のせんせー)
悠麻/すっかり社長、海外出張中
親父/フィナ、檬瑠と三人暮らし(喧嘩してきた燎子は自宅に帰らずよくこっちに泊まる)
絢斗/やっぱり主夫、空いた時間で道場の一画借りて剣道教室とか
あの娘(ヒドッ)/町役場に就職(安定収入)今頃選挙で大忙しとか(?)w
>…………はて、何か、誰か忘れているような……?ま、思い出せないってことは大したヒトじゃぁないってことですね!w
遼那「ふぅっふっふっふ・・・・ライダースキル発動」ぴきゅんっ
【人から忘れられるということ】(元はゼロノスAのスキル/相手(わぴたん)の防御−150)
朱凰「スカスカのわき腹にゲキレツアタックVerの紅蓮幻影弓をくらいなさい!」シュッ!
どがぁーーーーーーーーーーーんっ
【YOU LOST】
後ろのお友達に代わってくれぃ!(ぉ
>パンチラ天狗 とかいう面白アダ名をつけさてもらおう、返事はイエスで(ry
鴉美「絶対ヤですっ!」
そうです、彼女はパンモr(風速50mの突風
>………………………………………ロリっ子体型の紫苑さん、とか。(ゴクリ
雪乃「あら、それもいいわね。」
紫苑「お、お嬢様・・・・・」
>海賊セカイ…………もやし、もといもしや。“向こう”に行くのか、“こっち”に来るのか?
飛んで開いて飛ばされて出会って出会います(ナニ
To 勇者王ヤサぴあのさん(ぉ
>お前はいいよなぁ……<ヤサグルマ風に…………僕なんか、そろそろ二千円近く眼薔薇井戸に貢いでるのに
甘ったれるな勇者よ!!私は今現在既に“一万”近くは投資したっ!!!(←ちょおまっw
ガンバッて友人にvsEX天道&かがみんの外道タッグ戦を見せたのですがアレには隣で覗き込んでたお子様もビビッてましたww
五つ星のディケイド、王蛇、タイタンフォームがボクのお宝さ。(by海東
みんなもガンバライドしようぜっ!
>こういった続編モノにありがちな、前作のキャラが出張り過ぎ現象も発生せず、かと言って全く登場しない訳でもなく、非常にバランスの良い仕上がりの作品になっていると思います。
ありがとうございますです。
大体は出揃いましたのでこんな感じで進めて行きたいと思います。
>速攻で新フォームにチェンジしちゃった濠君トバしすぎだろー、と思いましたが今後しばらく間が空くそうなので、ある意味読み切りモノと考えればOKですね(何が
OKです!
もともと海賊との繋ぎの話が増長した感じなのでたぶん連載しても10回ないです。
>えー、文章能力皆無なんで失礼な感じになってたらすみません。続きを楽しみに待たせていただきます。パンツ的な意味で。
いえいえ、こちらこそお楽しみいただけるなら幸いです。パンツ的な意m(疾風一閃
To 烈さん
>初めまして
いいえ、お久しぶりです・・・・・・・・・・・・・・・夢で会って以来ですね(ぉ
>『仮面闘士「珀羅」』に“変神”しているところは『霧島 慎弥』と同様という辺りも結構驚かされました。
それはオマージュですw
というか、いずれは濠も霧島の力を集約した感じになります。(クライマックス的な意味で)
>『嵐羽』に“変神”しているというところはなんだか『羅刹』氏が“変神”する『羅刹天』に酷似している感じがすると思いました。
え、そうなんですか?(ぉ
自分的には鎧の色が黒いとこ以外あんまりイメージが合いませんけど・・・鬼と烏だし
>超質問のオンパレード
せーらん式一問一答っ!
>伏線/イエスでいい(ぉ
>白澤との出会い/色々ありつつ現地でスカウト
>鴉美/こいつはジャスティス!って娘を書きたかった
>おとんorおかん/せーらん的イメージに寄ればおかん(たぶん重要ではない)
>恭也との出会い/骨董屋は霧島家でもご贔屓だったとかなんとか
>親/普通に他所でお勤めしてる(以前恭也のみ故郷の高天原に越して来た)
>祖父何者ぞ/非常に変わり者のジィ様
>前作組/省略
>計都の目的/省略
>前回の終わり/作品を隈なく読んでる人には想像に難くないが後々分かるので現時点では重要度は低い→想像出来る人は黙ってニヤニヤしながら待つのが正解(ぉ
んー、作品についてよく考えていただけるのは大変ありがたいことですがねー
多少はご自身で想像補完していただけると助かります。
自分的にはそれがこの作品の醍醐味でもあると思ってますので
それに待っていれば重要なものは大概後でわかりますから心配なさらずとも大丈夫です。
>今後も頑張ってください。
どもです。・・・・ただまぁ、次は半年後ぐらいに・・・orz
To 八兎のお師匠さま。
>「ふたりはてつをキュア」キター!!
見事なまでの白黒できゅあっきゅあでしたね(どっちもブラックなのにw)
>ネクストジェネレーション……つーか羅刹パパと淳ママの息子が16歳なら、蓮見Jrや矢倉Jrはもっと年下だよなぁ……
>それとも、今回登場してないだけで高校卒業直後に頑張ってこの年齢のお子さんこさえてたりするのかしら(殴
それについては私のミス&誤算で濠については誕生日的なもので17歳です(後の二人は合ってます。)
で、ちょっと駆け足過ぎた17年後は20年後と改めさせていただきました。申し訳ありません。
当初は濠達、星志館(高天原)組だけでことを終わらせようと考えてたのですがやはり「〜神○○」シリーズを四人揃えたい衝動に駆られまして・・・・雪乃や燎子達白桜(八神)組も考慮するなら20年後ぐらいがベストでした。
ちなみに察しがついてる方もいるとは思いますが四人目は「雷神」です(名前未定)。
・・・・・最初に言っておきますがシン○トリカル○ッキングはしませんよ?(ぉ
>ダーメダメダメダメ人間♪ 恭ちゃん いや、こういうバイプレイヤーて必要でスよ?
>16歳にしてどんだけ固ゆでハードボイルドなんだよ、な濠くんの相棒としてはこんくらいがちょうどえぇのんかなー。
恭也「デスよねーw濠は年サバ読むくらい精神年齢老けてるし、やっぱオレくらいフレッシュなほうがいいんだよ。」
濠「サバ読んでない・・・あれは作者側のミスだと何回(ry」(以下くどくど説教)
>変身後の、珀羅との息の合い方もグッド。
単体としては微妙でもセットで真価を発揮する感じで、相方まだですけど(ぉ
>……どうでもいいが、嵐羽(ランバ)っつーと、思わず4体合体のロボットの
鴉美「勝手に飛ばすなーーっ!」
>ちー姉さん、乳のサイズもちー姉さん(殴りまくる
冢杏>フィナ≧檬瑠>>>>超えられない壁>>>>紗魅
い、いえ、もちろん身長ですよ?
紗魅「うるさいわボケェ!いっぺん豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいんやーっ!」ぺちぺち!
あぁっ!?やめてお豆腐が、あぁっ!?
>実に正しい前作キャラだと思います(ぇ ……いや、真面目な話
ふぁっはっは!だが、正月版は続編にライオンさんチームが出てくるという伏線だったのですよ!(ぇー
>問題は七曜の残りの連中のパワーレベルかなぁ。話を蒸し返すようですが、あんまし先代頼りのパワーバランスにもできないだろうし。
濠がパワーアップするのはあちらさんとしても願ったり叶ったりだとか・・・・・
To SS掲示板東方パイオニアまたの名をイシスさん(ぉ
>一体どれだけ遅れて感想入れるのでしょうか私は。馬鹿な奴だと罵ってやってください。
この巫女好き!脇好き!サラシ好き!(←褒めです
>主役があの淳さん、羅刹さんのお子さんとは・・・!やはり前作の主人公(空気)では荷が重かったとしか・・・(死
まぁ、遼那よりも濠が、濠よりも燎子と雪乃が動かし易かったのは内緒でs(炎上
遼那「ぅぅぅ・・・・頑張って燎子、あなたは下克上を果たすのよ・・!」
燎子「か、母さん・・・それ主役だった人の言うことじゃないぜ・・・・」
>濠君は最初から“変神”ができたりと、親譲りの才能を感じさせますね。
混じってるものから言えばべらぼうにハイスペックです。
>パンチラ天狗になっちゃった\鴉美ちゃん!!/
\10ドル〜?/ /コーヒー代ぃ?\ \え、コーヒー代ぃ?/
鴉美「会話すんなお前ら!」
>すっかり頑張り屋さんな彼女の姿は、読んでいて心が燃えてきますね。仲間の天狗を救いたい一心で行動に出る所とか好きです。
鴉美「ありがとうございます!これからも天狗にならないように精進します!(ぉ」
>前作から冢杏ちゃんも姿をちょっと変えて登場したりと、前作からのファンには嬉しい展開も盛り込んだり
全部見て貰えてたらさらにお得みたいな感じで作りましたw
.>んでは、海賊もこちらも次回があれば、また感想書きます!最近、ねんどろ霊夢を予約しfigma霊夢を今か今かと待ち続けるイシスでしたwww
また東方トークしたいものですw
ちなみに青嵐は友人に『幻想之宴』を買ってきてもらいました!早くアリスのスリーブが欲しい・・・!
後編に続く⇒
,#000000,./bg_f.gif,i125-201-166-25.s02.a040.ap.plala.or.jp,1
2009年08月12日(水) 04時24分04秒,20090812020900,20090815042404,TuBdElWSJ8KK2,R15くらい推奨だぜ!,Mr.G,,,
某日 21時30分 ホテル“SUPER−1”前
ばくんばくん、と心臓の鼓動が聞こえ、携帯電話を持った手に力が入る。
今日、俺――田淵稔(たぶち みのる 24才 フリーター 童貞)は大人の階段を一気に駆け上がるべく、“ここ”に来たのであった。
「…………」
背中に汗を滲ませ、呼吸を若干荒くして、きょろきょろと辺りを見回す。
辺りは路地裏という事もあって人通りがまったくない中、挙動不審な自分を見たら即通報ものだろう。
だが、今の俺に自分を客観的に見られる余裕など、これっぽっちもなかった。なぜなら――
ちらり、と上を見上げると、そこにはこの殺風景な場所において異彩を放つ、煌びやかなネオンの輝きがあった。
ここはホテル“SUPER−1”。俗に言う“ラブホテル”というやつだ。
ごくり、と唾を飲み、思う。
――行くぞ。
俺が今ここにいる理由はもろわかりだと思うが、ここ、ホテル“SUPER−1”において“行為”をすることだ。
その意味は説明するまでもないだろう。その相手は――
ボタンを操作し携帯電話のブックマークを開く。
そこには“デリヘル検索サイト「アクセスフラッシュ!」と書かれていた。
そう、俺のような童貞ボウヤの相手をしてくれるのは、デリヘル嬢くらいなものだ。
処女は貴重でも童貞は無価値。
金を払ってでも童貞とやりたいなんて女は、出会い系等の釣りサイトやエロマンガくらいなもん。現実は非情である。
検索サイトから適当な店を見つけるべく、詳細検索に“コスプレ”と入れる。
……キモオタ趣味全開だな、と自嘲気味に思いつつ、ヒットした店のHPにアクセスしてみる。
まず初めに基本でもあるデリヘル嬢をチェックしようとして――
「ハズレだな……」
はあ、と落胆のため息を吐いた。
――なんつうか、合成写真だって丸わかりなくらい、あからさまな加工がしてあった。
それに“利用者の声”って部分。
『いや〜耳元で、「中○ししてあげるからピル飲んで☆」なんて囁かれちゃって〜』
……釣るならもっと上手く釣れよ。いつ男性用のピルが実用化したんだよ。馬鹿だろ。
気を取り直して次に移る。次は――
その店の名前を見た瞬間、俺の中の何かがうずいた。
――“DANSE MACABRE”。
名前の意味は分からないが、とにかく惹かれているのは事実だ。
HPにアクセスすると、中身はどこかゴシック風な雰囲気のするものだった。
――もしかしてSM系?
一瞬、そう思い。プレイ内容をチェックする。
たしかにSMプレイも可だが、一般的なプレイ(といっても利用したことがないのだが)や、安価なコースもあった。
もちろん。本番はないが、童貞をアピールすればタダでしてくれる嬢もいるらしい。(デリヘル歴3年の友人談)
次にデリヘル嬢のチェックをする。
「マジかよ!」
思わず声が出てしまい、慌てて辺りを見渡した。
どうやらだれもいない。助かった。
デリヘル嬢の顔写真は、はっきりいって今まで見てきた中でトップクラスだった。
それだけでなく、身に纏ったゴシック調のやや透けたレースのドレスが、ビスクドールのような可愛さと女性本来の持つ色香を十二分に引き出していた。
確かにプレイにかかる値段は他店よりも一回り高価だが、出す価値は十二分にある。
むしろ、この値段で良いのかというくらいだ。
――ここにしよう!
興奮とともに息を荒げ、内心でガッツポーズをしながら、女の子を選ぶ。
そのどれもが美しく、可愛らしく、甲乙つけがたいものだった。
しばらく鼻の下を伸ばしながら女の子のリストに目を通していると、
「ん……?」
ある女性の名前が目にとまり、思わずそんな声が漏れた。
――ソフィア。
あきらかに日本人の名ではなく、源氏名にしても周りに比べて異端な名前に興味を惹かれた。
――これで顔が悪かったらうけるな。
そう内心で笑いながら、顔写真を確認して、
――うそだろ!
一瞬、我が目を疑った。
その女の子は、高レベルな嬢の中でも群を抜いて美しかった。
まず、彼女――ソフィアは日本人ではなかった。
腰の辺りまで伸びたふわふわとした巻き毛の金髪に、ぬけるような白い肌。大きく丸い青の瞳。
まるで、絵本の中から飛び出してきたかのような女性だった。
さらに豪奢な印象を受ける黒のコルセットが女性のすらりと伸びた足と滑らかな曲線を描いた肩の白を強調させ、
あどけなさの抜けていない女性(プロフィールでは19才らしい。そうは見えん)の童顔と相まって、倒錯的な色香を醸し出している。
――なんでこんな事を、といったら働いている方々に失礼だが、彼女が風俗という仕事に身を置いていることが不思議でならなかった。
「…………」
俺の目はソフィアに釘付けだった。
同時に、俺は思う。
こんな綺麗な子が穢されているのか、と。
嫉妬にも似た理不尽な怒りがこみ上げてくるのを俺は感じた。
そして同時に俺はこうも思った。
――この女を抱きたい。
そう、俺の“男”が熱望していた。
しょせん俺も想像した下卑な連中と変わらないことを自覚し、嫌気がさした。
――今日は帰ろう。
そう思い、携帯電話を閉じようとして、
「うぁ」
画面に映ったソフィアの瞳と俺の瞳とが重なり、間の抜けた声を出して動けなくなった。
どくん、どくん、どくんどくん……。
心臓の鼓動が聞こえてくる。
気付けば店の電話番号を記憶し、その番号を打ち出していた。
――どうしちまったんだ。俺は?
思いとどまろうとするが、打ち出す手は止まらない。
発信ボタンを押し、息を吐きながら耳元に当てる。
「…………」
数回のコール音が耳に響き、そして――
「ご利用ありがとうございます。“DANSE MACABRE”でございます」
「――――!?」
若い男声が聞こえ、息を呑んだ。
「もしもし」
「え、あ、あの……」
初めてと言うことと緊張とが相まって、ろれつが回らず、上手く言葉が出ない。
「あっ、もしかして初めての方ですか?」
そんなこちらを察してくれたのか、それとも似たようなケースを経験済みなのか。
男は柔和な声でそう言った。
「は、はい!」
「そうですか。誠にありがとうございます。コースの方はソフト、ヘルス、SMの3コースがございますが?」
「え、あ、ヘルスで、お願いします」
「ヘルスコースですね。かしこまりました」
身体が熱くなり、汗が噴き出してくるのがわかる。
電話だけでこれだけ緊張するなんて、実際に嬢と会ったら卒倒するんじゃないか?
そんなことを考えていると。
「指名の方はいかがいたしましょう?」
「――――!?」
再び緊張が走った。
ソフィアの名前を言おうとして気付く。
――出勤表のチェックしてなかった!
もしかしたらソフィアは欠勤かもしれないし、他の嬢の名前なんて、ソフィアの印象が強すぎて、全く覚えていない。
「お客様? もし迷っているのでしたら、プレイ、容姿、性格等の好みからこちらでおすすめしましょうか?」
「え、あ、は――!?」
はい、と言いそうになるのを慌てて呑み込む。
――いや、ダメだ。
そう内心で叫び、首を横に振る。
知人から聞いた話では、もし迷って〜云々で呼ばれた女の子は出番なしのハズレであるパターンが多いらしい。
それに今、俺にはソフィア以外見えていない。
――ええい、ままよ!
十字を切って神に祈り、
「そ、ソフィアさんという方、お願いします」
言った。言っちまった。
「はい。ソフィアさんですね。準備に一時間程かかりますが、よろしいでしょうか?」
「は、はい!」
男の言葉に、まるで背中に羽根が生えたかのように身体が軽くなった。
よかった。これで俺はソフィアと――その……。
「それで、待ち合わせ場所に致しましょうか?」
「はい?」
予想外の言葉に素っ頓狂な返事が出た。
――待ち合わせ? そういうシステムだったの!?
「失礼ですが、お客様は今、どちらからおかけでしょうか?」
「えっと、今、ホテル“SUPER−1”の前にいるんですが」
言うと、男はああ、と前置きし、
「それでしたら、そちらの前で待ち合わせして、そこに一緒に入るという形にしましょうか」
と言った。
「い、一緒に、ですか?」
ひく、と唇が引きつる。
――ラブホに一緒に入るだなんて、そのなんていうか恥ずかしいというか……。
これから行為に至るというのに、このくらいでヘタレてどうする! と思いつつも、前に踏み出せないのが童貞という生き物なのだ。
童貞はリスとかウサギみたいに弱いんです。やさしく食・べ・て。
と、異次元に思考を飛ばしていると、
「ホテルの部屋を借りていただいて、そちらに向かわせるということもできますが」
と、ノミのように矮小であわれな俺の気持ちを察してくれたのか、男はそう提案した。
この電話の人、とってもいい人だ。
正直、最初はヤクザ屋さんみたいなドスの利いた人が応対するのとばかり思っていたのだが、違うらしい。
こういう仕事でも、まず第一印象を大事にして、“お客様は神様”的な扱いをしてくれるんだなあ。
「それで、いかが致しましょう?」
「はい、そのような形でお願いします」
慌てて返事をすると、「かしこまりました」と、電話越しから頭を下げているように思わせるほど、丁寧に返し。
「それでは、お部屋に着きましたらお電話下さい。失礼します」
と言って電話を切った。
俺はほう、と息を吐き、抜けそうになる膝に力を入れ、
「〜〜〜〜〜〜っ!」
言葉にならない喜びの勝ち鬨をあげて拳を握った。
◆
「ふう……」
はやる気持ちを抑え、深呼吸をしてホテルに入る。
「いらっしゃいませ、休憩ですか? 宿泊ですか?」
「休憩でお願いします」
「お部屋は洋室と和室とがありますが?」
「洋室で」
「かしこまりました。前金として5000円頂きます。それではごゆっくり」
事務的な口調で話すフロントのおばさんに金を払って鍵を預かり、指定された部屋へと向かう。
誰かに会ったら気まずいなあ、と思いつつの移動だったが、幸い誰にも会うことがなかった。
「んしょ」
鍵を回し、入った部屋は、大きめのダブルベッドと小さなテーブルとソファーのある意外と落ち着いた部屋だった。
もっとピンクの照明だったりとか、これみよがしに大人のオモチャが置いてあったりするのを想像していたのだが、そんな事は全くなかった。
とりあえずソファーに腰掛けて一息つき、携帯を取り出して店に電話を掛ける。
「ご利用ありがとうございます。“DANSE MACABRE”でございます」
出たのは先ほどと同じ男だった。
よかった。同じ人ならいくらか話しやすい。
「あの、先ほどソフィアさんを指名したものですが、209号室で待っています」
「はい。かしこまりました。あと30分ほどでそちらに着くと思います。少々お待ち下さい」
「あ、はい。わかりました」
「それでは失礼します」
電話を切り、ソファーに背を預ける。
――いったい、ソフィアってどんな声をしてるんだろう? あったらまず何を話そう?
色々なソフィアへの期待と不安が押し寄せる。
――あの写真、合成だったらどうしよう。性格悪かったりしないだろうか。
初めはネガが多く、段々と。
――あったら、どんなことして貰おうかな? あんな可愛い顔して意外と激しかったりするんだろうか? うえへへ……。
ポジティブというか、盛った中学生の妄想となっていった。
「…………」
ついでに俺の“アレ”も有頂天……と。
「……テレビでも見るか」
どうも落ち着かず、リモコンのスイッチを押してテレビを付ける。
『あ、いやっ、そこは……ダメぇ!』
「…………」
隣の部屋に聞こえないかと不安になり、音量を下げるチキンな俺。
だよなあ。普通のホテルと違って、30分なんぼで見れる番組とかじゃないしな。
適当にチャンネルを変えると、ニュース番組がやっていた。
一応、普通の番組もやってるわけね。と思っていると――
『今日、18時30分頃、○×町で中年の男性の変死体が発見されました。殺害されたのは〜〜』
という原稿を読むキャスターから切り替わった映像は――
「ここって……」
そこは、ここから車で30分くらいしたところにある、どこだかの社長の豪邸だった
自分には関係ないとは思いながらも、どこか妙に不安を覚え、テレビの画面を食い入るように見ていたときだった。
――コンコン。
「――――――!?」
と、ドアがノックされる音が耳に入り、俺は慌ててテレビの電源を切り、ドアへと向かった。
ごくり、と唾を飲みながら、内鍵を回し――
「ど、どうぞ」
「はい、失礼します」
開いたドアの先に金髪の天使の姿があった。
◆
同日 21時45分 ホテル “フロイライン”前
「どうです? よかったですか?」
「ああ、最高だったよ、フォルテちゃん」
そんな会話をしながら出てきたのは、白のワイシャツ姿の男性と、甘えるように頭を男性の肩にこすりつけるセミロングの女性の二人組だった。
「そうですか。ありがとうございますぅ。フォルテもっとがんばるからぁ、またいつかよろしくお願いしますね♪」
「ああ、もちろんさ。それじゃあ」
「バイバイ。オキャクサマ」
ぶんぶんと勢いよく手を振り、ひまわりのような笑顔を男性に送る。
ややあって男の姿が消えたところで――
「――ったりぃ。短小のくせしてイクのがおせえから、腕に乳酸溜まりまくりだぜぇ。
あれだな。(自主規制)のやりすぎで遅●になってやがんだな」
女性の態度が一変し、柄の悪いチンピラのように変化した。
身体のラインが浮くようにワンサイズ小さめのブラウスにフレアスカートを合わせ、ハイヒールを履いた女性。
源氏名はフォルテ。年齢は21 職業はデリヘル嬢兼――
「――っと。電話電話っと。時間に厳しいからなぁ。“テンチョさん”はよ」
呟き、肩に担いだ大きめの鞄から携帯を取りだしてコールする。
数回の呼び出し音の後出たのは、低い男性の声だった
『もしもし』
「あ〜もし、アタシアタシ」
『……アタシアタシっていう知り合いはいないんだがな』
「んだよ、声聞きゃあわかんだろ。アタシだよ、フォルテちゃんだよ」
『……店長に対する口の利き方か? そりゃあ』
「へいへい。お仕事終わりました。ただ今戻ります、店長。これでOKだろ?」
なおも電話口でぶつぶつ言う店長の声を耳に入れ、にししとフォルテが笑う。
『……クビにすんぞ』
「クビにしたら、餓死した美少女の死体が路地裏辺りで見つかるぞ。
んでもって、天下のケーサツさまが動いて、アタシを働かせてたテメエの店も心中だな」
『……おまえと差し違えるってなあ、割に合わねえな』
「だろ? だから、こまけえこたぁきにすんなよ、テンチョ。いんや――」
フォルテの顔が意地の悪いものに変わり、
「“飼い主”サマ」
『――その呼び方、店で使ったらぶっ殺すぞ』
艶のある声でフォルテが言う。
電話の主があきれ顔で頭を掻いているだろう姿を想像し、
――ホント、からかい甲斐のあるやつだぜ。
と内心で呟く。
『ったく。おまえだけ俺にその口調だったら、他の連中に干されんぞ。店長がお前だけに特別扱いしてるってな』
「大丈夫大丈夫。アタシ、猫かぶんの得意だし。オキャクサマにも良い子だってよく言われるぜ。
媚び売るのも得意だし。好きでもねえあるラノベも、そいつがここでそれなりの権力をもってるなら褒めちぎるしな。人間関係もバッチリだ!」
『……そうか。そいつは重畳だ。それより、だ。次の客だ。ホテル“SUPER−1”に一時間以内』
「い、一時間だぁ? ふざけんな! アタシは今終わったばっかだぞ」
『少しでも金が必要といったのはおまえだぞ。なんなら、ヘルスコースに変えるか?
オプション付けまくればそれなりには稼げるぞ』
「いやじゃ! アタシは処女だぞ!」
『うちはというか、デリは本番禁止が基本だぞ。ああ、オプションでA●なら一万だが』
「後ろも素●も口もいやじゃ!」
『胸は小さいから無理だしな』
「うがああっ!」
くつくつと電話口から笑い声が聞こえ、「仕返ししやがったな」と顔に不機嫌の色を浮かべる。
『おっと、こうしてる間にも時間は待ってくれないな。お客様は神様だ。待たせるな、さっさと行け』
「アイアイサー! 桃源郷に連れてってやりますよ、サー!」
半ば投げやりな言葉に電話の主はため息を吐き、
『そうか、その意気だフォルテ。早く金を貯めて俺のところから出て行きたいんだろう?』
「――――!?」
その言葉にフォルテは大きく目を見開き、やがて、ぎり、と奥歯を鳴らして怒りをあらわにし
「チッ! ああそうだよ! 即行出てってやるよ! 切るぜ、クソ飼い主!」
電話を切ってそれを乱暴に鞄にしまうと早足でホテルの駐車所に向かい、
「なんかしらねえけど、無性に腹が立ってきた」
一台のビッグスクーターのトランクを開けてヘルメットを取ると、鞄を叩きつけるように入れ、
「ああ、ムカツク!」
ビッグスクーターに跨ろうとし、
「ああっ! この格好じゃ乗れねえじゃねえかクソったれ!」
トランクの鞄から引っ張り出したジーンズにホテルのトイレで着替え、スニーカーに履き替え、
「……時間は? あと40分しかねえじゃねえか!? 飛ばすぜ、ケーサツ居んじゃねえぞ!」
呟いてクランキングし、
「どいつもこいつもてめえのせいだ! 馬鹿飼い主!!」
怒声と共に豪快にエンジンを吹かしてバイクを走らせた。
◆
同日 午後15時20分 某社社長宅
「さあ、たのしませてもらうよ、お嬢ちゃん」
「……ええ。どうぞご自由に」
ベッドに横たわる女性を覆うように四つん這いになり、息を荒げて下卑た笑みを浮かべた中年に少女はそう答えた。
すると、中年はその口の半月をさらに大きくし、
「そうかいそうかい。ぬふふう」
女性の顔から足までなめ回すように視線を上下させた。
女性は美しかった。
その幼さの残った顔は女性の実年齢より下回らせた少女と呼べるもので、禁忌的な興奮を与え、
抜けるような白の身体は白磁で出来た芸術作品を思わせ、それを自分の手で汚すという倒錯的な興奮を与え、
その小降りだが美しい二つのふくらみは確かに“女”を意識させ、性的な興奮を与えていた。
――ごくり、と中年が唾を飲む音が響く。
無理もない。彼女という極上の一品を前にして、我慢しろというのは酷なものだ。
「ぬふふ。では――」
女性に覆い被さり、厚く大きな舌を首筋から胸へと這わせようとした瞬間だった。
――しゅ、という音が中年の耳に入り、女性の顔の周りに赤黒い飛沫が飛び散った。
……なんだ? と思った瞬間、じわりと喉に痛みを感じ、
「か、かひゅう?」
空気の漏れた声と共に、ぐるりと白目を剥いて男の身体が脱力した。
◆
「お金になりそうなのは、このくらい、かな?」
中年を細切れにして肉片へと変えた後、サイフから現金を抜き、適当に家の中を物色し、金目のものをかき集めて女性が言う。
「ごめんなさい。と言っても許されないとわかってるけど、言います。ごめんなさい。私が生きるためには、お金が必要なんです」
その異様に伸びた爪には今もなお中年の血が滴り落ちていた。
「ごめんなさい」
再度謝罪の言葉を呟き、女性は家を後にした。
,どうも、Mr.Gというものです。最近の荒らし?さんにインスピレーションを受けて書きました。
問題でしたら管理人さま、削除のほうお願いします。
これは短編の為、次か次の次くらいで終了します。
それでは、失礼します。
,#000000,./bg_c.gif,p3104-ipbf602aobadori.miyagi.ocn.ne.jp,1
2009年08月07日(金) 08時29分56秒,20090807082956,20090810082956,T0aLl95V3fCdQ,仮面ライダーバルキリーたん 第19話「Thief's wish」,鴎,,,「Thief's wish」
7月22日
PM16:25
夕暮れ。会社員や学生たちでにぎわう大通り。
その中のビルの屋上で身をひそめながら2体のイマジン少女、エイプイマジンたんとクラブイマジンたんが作戦会議を行っている。
クラブイマジンたん「本当にやるつもりなんですの?エイプの姉さん」
エイプイマジンたん「あったりめぇよ!!バルキリーやワイバーンにイヤというほど、徹底的に痛めつけられたんだ。この恨み、晴らさなきゃ気がすまねぇってもんだ!!」
もはや逆恨みでしかないのだが。
とはいえ、バルキリーとワイバーン・キングフォームにあそこまで追い詰められ、半殺しにされて尚戦いを挑んでいくバイタリティだけは大したものかもしれない。
クラブイマジンたん「でも、どうするおつもりで・・・?」
エイプイマジンたん「いい?正直あいつらまとめて倒すのはあたしたちだけじゃ無理だ!そこで、まずはバルキリーからだ。この写真に写っている女、天童慧。こいつが司令塔だ。しかし、こいつに憑依しているイマジンたちがかなり強い連中ばかりだ。だが、逆を言うとそこを突けばバルキリー側が勝手に自爆するっていう展開に持ち込みやすいんだ」
クラブイマジンたん「イマジンたちからまずは倒していこうかと言うことですね?」
エイプイマジンたん「そう!!そして、この5体の中でも一番統制力のある奴を罠にハメて倒したほうが効率的でないかいって話だ。そこで、あいつらの周りを見張っていて確認してみたところ、一番倒しやすいのは・・・この琥珀ってやつだ」
そういって取り出した写真には琥珀が憑依し、髪の毛をシャギーを入れたショートカットにオレンジのメッシュを編みこみ、パンクファッションに身を包んでいる慧の姿があった。
エイプイマジンたん「他の4体はバカだけど妙にカンが働きやがる。それよりも唯一の常識人かつ4体の勝手な動きを抑えることができるこいつがいなくなったらあいつらはもうガタガタってわけだ」
クラブイマジンたん「なるほど。彼女を押さえておけばあとはあっちが自滅するのを待つばかりですか」
エイプイマジンたん「そう!そして、こいつを罠にハメるためにもうイマジンの手配も済んでいる。もうそろそろ来るころだ・・・」
そういったときだった。
・・・次の瞬間!
ドドドドォーン!!
轟音と共に巨大な土柱が上がる!
突然、何が落下してきたのだ!
もうもうと立ち上る土煙が収まると、一体のイマジン少女が、両足を地面にめり込ませて立っていた。
クラブイマジンたん「な、なんですの!?」
落下してきたイマジン少女を、クラブイマジンたんは咄嗟に後方に飛んで避けていたようだ。
エイプイマジンたん「お、お前よぉ、もうちょっと大人しく登場できねぇのかよ!?」
そう言われて、「とんぼの宿り木」のトンボからイメージされた「ドラゴンフライイマジンたん」が顔を向ける。
ドラゴンフライイマジンたん「あー・・・わりぃ・・・・飛んでる途中・・・うぷっ・・・・酔って・・・・気分悪くなって急降下しちまった・・・・うえっ・・・・」
顔が青白く、その場でよたよたと座り込む。どうやら空を飛んでいて酔ったらしい。
エイプイマジンたん「・・・空飛べるくせに酔いやすいって・・・」
クラブイマジンたん「姉さん、本当に大丈夫なんですの?」
エイプイマジンたん「まあ、このあたりは戦力外だけど、こいつには隠れた才能があるのさ。直に分るぜ・・・へへへ・・・・覚悟しろよ、裏切り者。真面目ぶってるお前みたいなやつが一番嫌いなんだよ。とことん追い詰めてやるぜ」
そういって、琥珀の写真を握りつぶし、エイプイマジンたんが不敵な笑みを浮かべた。
Vライナー ラウンジ
AM3:00(?)
慧「火事に気付いた場合、最初にどんな行動をとるかで生存率が変わってくるという…と」
慧は夏休みに入ってから毎日徹夜で社会の自由研究で社会における犯罪や事件を犯罪心理学を用いた自己分析しまとめたものをレポートに書き上げている。
母親の愛が所長を勤めている科学捜査研究所の心理課で慧が宿題でまとめたレポートが以前心理課の課長の目にとまり、課長でさえも絶賛するほどの出来具合だったため、また書いたら見せてほしいと言われ、寝る間も惜しんで頑張っているのだが。
近くにあるコーヒーメーカーもコーヒー蒸発を通り越してメーカーそのものが溶け出している。
慧「正確に火を消せるかは疑問・・・よし、もう一頑張り」
姉ちゃん、気付け。コーヒーメーカーが火元になって火事になっているぞ。
慧「火事の恐ろしさには…はにゃ?」
やっと気付いたが時既に遅し
。
慧「うわ!火事!?火事!どうしよう!」
必死に消そうとするが、消えない。全く消えない。それどころか延焼している。
慧「消防車!消防車ぁ!救急車!!いやああああああああああっ!!」
翌朝。
食堂車で朝食を作りながら、朝飯当番のトパーズと琥珀が話しこんでいる。
意外と仲がいいようである。
琥珀「泥棒や強盗ばかりを狙った襲撃事件だって?」
琥珀が味噌汁に刻んだ豆腐を入れながら声を上げる。
トパーズ「ああ。今朝のニュースでな、この町だけでもう4人襲われている。全員窃盗や強盗の現行犯だったがな。しかし奇妙なことに犯人は被害者から盗みの道具を盗んでいる」
琥珀「強盗や泥棒からか?ワケわかんねぇな」
トパーズ「天罰ともとれる話だが、もしイマジンの仕業だとしたら、放っておくわけにもいくまい」
琥珀「しかし、泥棒の道具なんて持ち去ってどうするんだ?アピールとか犯人の心理的な象徴を連想させるものみたいなものか?例えば、自分は泥棒恨んでます。逮捕するだけじゃ飽き足らないから泥棒から盗みをして恨みを晴らします、とかか?」
トパーズ「どうであろうな。まあ、今日愛が来ると言っていたから、その時話を聞いてみるのもいい」
琥珀もイワシを網で焼きながら「全くだ」と頷く。
ちょうど釜で炊いていたご飯も炊きあがった。
厨房に美味しそう匂いがほわっと漂う。そして、琥珀がさつま揚げを炭火で焼いたものを皿に盛り付ける。
琥珀「これこれ。醤油たらせば最高だね」
トパーズ「お前のさつま揚げは絶品だからな」
琥珀が笑みを浮かべて皿に盛り付けを始めたそのときだった。
「火事だあああああああああああああああああああああああああっ!!!」
ラウンジからの絶叫に二人が派手にズッこける。
そして、しばし呆然としていたがいち早く声の主に気づいたのはトパーズだ。
トパーズ「慧の声だ!」
琥珀「マジかよっ!!」
二人が慌ててラウンジに飛び込んだ。
トパーズ「なっ・・・!」
琥珀「ゲッ・・・・」
二人の表情がその場で凍りついた。
慧「火事だ…火事だ!」
慧が消火器を室内にぶちまけながら全身を真っ白にして暴れ狂っていた。
近くでは止めようとしたのか、ルーベットとサファイアが消火器で殴られて出来たタンコブを後頭部に作って床にぶっ倒れている。
サファイア「ああ・・・朝も早くから騒がしいねえ。でも君の声はまるで小鳥のさえずりのように美しく可憐だよ、慧・・・・・」
どうやら1名は心配の必要はないらしい。色んな意味で。
琥珀「ちょっ、何やってるの、慧!」
慧「火どこ!?火、火、火!」
思い切り消火器をぶちまける。寝ぼけているようだ。
トパーズ「夢の中でまでロクな目に遭わないのか・・・」
琥珀「冷静にキツいツッコミ入れるな!!ああもう、落ち着け!!」
慧「あああああ!うああぁぁぁぁ!!」
寝ぼけて未だに消火器をぶち撒ける慧。いい加減目を覚ましてもよさそうなものだが。
琥珀「いいかげん目を覚ませこのバカ!」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
琥珀が助走をつけて駆け出し、飛び上ってドロップキックを見事慧に直撃させて、慧を倒れこませた。
「火事ですって!?どこよ、どこ!!」
そういって、突然床下がぶち空き、扉が倒れていた慧の頭に直撃する。
バアアアアアン!!!と派手な音をたてて慧の顔面に直撃し、床をゴロゴロと回転しながら壁にぶち当たる。そして、口から泡をぷくぷく吹きながら慧が目をぐるぐる回転させて倒れこむ。
天童慧、K.O. 。
そして、声の主に全員が振り向き、再び凍りついた。
そこにいたのは、紫色の鋭い刃のような鱗で全身を覆い、誇り高き竜をもイメージさせるようなトカゲのイマジン、サンゲイザーイマジンたんであった・・・。
「「「「あああああああああああああああああっ!!?」」」」
サンゲイザー「・・・・見つかっちゃった」
サンゲイザーイマジンたんがペロリと悪戯っ子のように舌をちろりと出した。
エメラルドが朝の特撮番組を見て二度寝して起き上がってのろのろとラウンジに向かってやってきたのは11時過ぎであった。
エメラルド「1から〜10まで〜シン●ンだぁ〜♪」
眠そうに眼をこすりながらラウンジの前にやってくると、いつもと違うラウンジの雰囲気に足を止める。
エメラルド「・・・え?何これ?」
ラウンジの扉には「取り調べ中」という張り紙が貼ってあった。
「丼物はかき揚げ丼(残り物の節約のため)しかありませんぞ」だの「田舎の母ちゃん泣いてるぞ(←イマジンの母ちゃんなどどこにいるんだ?byトパーズ)だの「今宵君のことを身も心もすべて取調べしたい」だの訳のわからない張り紙が貼りまくってある。
エメラルド「あいつらって本当にバカだよね。はあ、コドモなんだから」
一番のガキンチョにここまで罵られているイマジンズって。
恐る恐る、まあ、若干呆れつつもラウンジのドアを開ける。
そこに広がる光景を見て、エメラルドの顔に縦線が3本入ってどよよんとした重い雲がのしかかる。
エメラルド「ヴァ」
すぐ閉めた。
そして、目薬をつけて、再び扉を開く。
そこでは・・・。
サンゲイザーイマジンたん「あの、すみません。これ、取り調べですよね?取り調べにしては、決して必要ないというか、目の前にあるだけで精神的に負荷がかかるというか、おぞましいものを連想せざるを得ないというか、もしそれで何かされたらと思うだけで冷や汗が止まらないという代物を片づけていただけませんこと?そうしたら、おとなしく何でも話しますわ」
ラウンジの内装はお洒落なそれではなく、取調室のようなものなどでもなく、床に魔方陣を書いた妖しげなワインレッドの絨毯がしかれ、机の上に無数の蝋燭が火を灯らせて揺らめいていて、黒いカーテンで光をさえぎっている。これではまるで魔法使いが呪いをかける時につかうような部屋ではないか。その魔方陣の中心にイスに座っている――というか、手錠で背もたれにつながれているのはサンゲイザーイマジンたんであった。
そして目の前には上半身をバランスの良いプロポーションの上半身の胸元を大きく開いた軍服、皮ズボンに軍帽をかぶった扇情的な恰好をしている青いメッシュが入った慧がこれまたサディスティックな笑みを浮かべて鞭を赤い舌でれろりと舐めながら立っていた。
ルーベット「こ、これが最も効果がある取調というものですか・・・」
トパーズ「鼻血が出てるぞ。しかし、これは、効果的かもな」
ルーベット「と、トパーズ殿こそ、鼻血をおさえなされ・・・」
S慧「ふふふ・・・イケない子にはおしおきしなくてはねぇ・・・ああ・・・しかし見れば見るほどかわゆいねぇ・・・。でもぉ、でもねぇ、勝手にVライナーに忍び込むなんて・・・そぉんなに・・・・お姉さんにかわいがられたのかしらぁん?」
ルーベット「な、何だそれはっ!?」
S慧「ウッフッフッフッフッフッフッフ・・・・。分るよ、分かってるんだよ、そう君はこのあたしに会いに来てくれたんでしょう?あぁん、なんて澄んだ紫色の瞳をしているんだろう、このミステリアスなバイオレットの瞳に深く深く吸い込まれそうだよ、ハニー・・」
サンゲイザーイマジンたん「こ、この方、頭のねじぶっ飛んでいるんですの!?」
サンゲイザーイマジンたんがあまりにぶっ飛びすぎているサファイアの妖艶なしぐさに驚きのあまり、血の気がうせて狼狽する。
第一ねじがあるであろうという時点でお門違いだ。
そもそも彼女の頭にねじなどない。
というか、一番本能に忠実だし制御など思考回路にあるわけもない。
S慧が怯えるサンゲイザーイマジンたんの顔に舐めるように顔を近づけて、甘く温かい吐息を吐きながら尋問を続ける。
ルーベット「おい、トパーズ殿。これが本当に取り調べなのですかな?」
トパーズ「私たちの尋問では歯が立たなかったんだ。サファイアが取り調べならこれだと豪語するあたり、託すしかあるまい」
エメラルド「ぜってーちげぇって・・・・」
エメラルドが呆れたようにガックリと肩を落とす。
やっぱり馬鹿だ、この3人は。
ルーベットは単純おバカだし、サファイアは論外、トパーズもしっかりしているようで実は意外と抜けているところが多い。
S慧「ねえ・・・・おとなしく本当のことを言ったほうがいいよぉ?それとも焦らされるのが好きなのかなぁ?でもさ、それならもう真相なんていいわ。それよりもぉ、お姉さんといろんなことして遊ばない?楽しくて気持ちいいこと・・・しない?」
サンゲイザーイマジンたん「ヴぁ、ああああああああああああああっ!?」
ヤバい。マジで色々な大切なものが奪われそうだ。
この未知とも取れるガチ百合趣味の変態青玉馬鹿白鳥のいやらしいセクハラ尋問トークがどんどんエスカレートし行動も徐々に体を触りだしてきた。
目もとろんとしてるし、危ない光を帯びている。ほほも赤らめており、息も荒い。
サファイア「ふぅー・・・ふっふっふっふ・・・怯えているのかい?ますます可愛いねぇ・・そそるんだよねぇ・・・・こういう子を優しく甘くとろけるような快感に堕として共に貪りあえるなんて・・・はぁはぁ・・・愛は偉大だねぇ・・さあ・・・・お姉さんとイイことしようよぉ!!ガオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
サンゲイザーイマジンたん「い、いやああああああああああああああっ!!」
とうとう泣き出した。
顔面真っ青で椅子の縄を引きちぎらんばかりに暴れだすが全く無駄であった。
エメラルド「ねえ、さっきからどこにいるの!?唯一の常識人でツッコミと家事全般を担当して、サファイアを制御できるかなりハイスペックなフラグのあるパンクな家政婦、琥珀はどこよ!?」
トパーズ「愛と話をしている」
ルーベット「イマジンがらみの事件らしいのです。それで事情を聴いているのですが」
そのころ食堂では。
琥珀と愛が何やら真剣な表情で話し合っていた。
愛が琥珀に差し出したレポートを琥珀が読みながら状況を整理する。
琥珀「やっぱり、今回の事件イマジンがらみだったのか。泥棒ばかりが狙われる事件」
愛「うん。その契約した人、1年前から警察署の地域課で試験的に始まった防犯学校の講師を務めてくださった石川大次郎(いしかわ・だいじろう)さんというんだけど・・」
琥珀「この爺さんが契約をしちまったわけだ。イマジンと。自分の昔の商売道具を取り戻してほしいって」
話はこうだった。
昨日、愛のもとへ防犯学校の運営などで知り合った石川大次郎から頼まれたのだった。
石川大次郎。現在は警察が試験的に行っている防犯学校の講師を務めているが、かつては「昭和のねずみ小僧」と日本中にその名をとどろかせていた伝説の大泥棒だったのである。
不正を行う企業や悪徳商人、政府の役人から大金や財宝を大胆不敵かつ鮮やかな手口で盗みだし、証拠を何一つ残すことなく姿を消し去り、盗んだ金は貧しい人たちや病院や孤児院などに全額寄付していた。当時の警察機関が総動員で追いかけていたが、ある日突然引退し、姿を消した。時効を迎えるまで捕まえることはできなかったのである。
琥珀「へえ、すごいな。ここまで来るともう泥棒の天才ってやつか」
愛「それを捕まえたのがうちのおばあちゃん。あたしのお母さんだったの。お母さんも警察官でね、まあ、企業の不正を暴いたり、国家的大犯罪を未然に防げたこともあって、うやむやになっているうちに証拠不十分で釈放されたんだけど、それがきっかけで付き合いがあったのよ。今回の防犯学校も犯罪者の更生および犯罪を未然に防ぐ防犯対策の一環として始めたの」
琥珀「しかし、ここまですごい爺さんが何で泥棒にあっちまったんだ?」
愛「うん、事件は1週間前。防犯学校が終わった後、その日、石川さんの誕生日だったの。それで、飲み会でお祝いしようって居酒屋で飲みにいったんだけど、その後、石川さんべろんべろんに酔っ払っちゃって終電も逃しちゃってね。皆酔っぱらってるから車も使えないから、防犯学校で使っていた警察署の駐車場の一角に設けてある実技演習用のプレハブハウスに寝かせてあげてたの。それで翌朝、目を覚ましてみたら・・・」
琥珀「金庫の中に入っていたはずの泥棒用の道具が全部なくなっていたってわけか」
愛「警察としては複雑なことになっているの。立件したくても、上層部がうるさくてね、元大泥棒が防犯学校で盗難事件なんてバツが悪すぎるからどうにかしてくれって」
琥珀「市民よりも面子をとったか・・・警察もご苦労なことだね」
琥珀も呆れながらもまあある意味そうだろうなと思った。
琥珀「それで?爺さんから砂が出ていて、聞いてみたわけか。最近変な夢とか見てないかとか、何か願い事してないかとか」
愛「うん、そしたら・・・・したって。泥棒のときに使っていた大切な道具。あれを他人に利用されて犯罪に利用されたら、世間さまに申し訳がないって悩んでいたわ」
琥珀「・・・しかし、そのイマジンは誰が盗んだかは分らない。それで、手当たりしだい強盗や泥棒を狙っていたってわけか。しかし、誰彼構わないにしても、数日間の間やっているってことはそのイマジン契約は守る主義みたいだな。そうなると、先に泥棒の道具を盗み出した犯人を見つけ出す必要があるな」
愛「琥珀ちゃん冴えてる!!慧ちゃんみたい!!」
琥珀「・・・あたしは理論的に考えてみただけ。まずはこれを慧たちに伝えないと。・・・そろそろ、あいつらも暴走し始めるころだから様子見たいし」
愛「はにゃ?どうして?」
愛が首をかしげると、琥珀が苦笑いをする。
琥珀「長丁場が苦手なんだよ。単細胞だから」
その直後だった。
「いやああああああああああああああああああああああ!!!」
悲痛な絶叫に琥珀が「ほらな」とつぶやいて、ラウンジに向かって走り出した。愛が「なるほど」と納得をする。
ラウンジの扉を開くと、そこでは予想通りというか混沌した光景が広がっていた。
サファイアが憑依した慧が縛られて必死でもがいている涙目のサンゲイザーイマジンたんに抱きついてラウンジの床で転がりながらあっちこっちをもみしだくわ、舐めまわすわ、触りまくるわといったあまりにも常軌を逸した扇情的な行為にふけっているのである。
一方で、近くではルーベット、トパーズ、エメラルドが三人折り重なるようにして倒れこんでいた。段差に足をひっかけてラウンジの下の階に落下、頭をぶつけて仲良く気を失ってしまったようである。
琥珀「・・・・・はあ・・・予想通りというか・・・・さーてと・・・そろそろこのカオスな展開にも終止符を打つとするか。せーの・・・・このバカッ!!!!」
そういって、琥珀が取り出したのは巨大な木製のハンマー。
「100t」と書かれた超重量級のハンマーを振り上げて、一気にサファイアの脳天に振り下ろし、すさまじい地響きとともに列車全体が揺れだす。
そして、数秒後。
ハンマーの下敷きになったサファイアと慧が泡をぶくぶく吐きながら床にめり込んでいた。
目をぐるぐる回転させて完全に気を失っていた。
琥珀「はー・・・・・本当バカなんだから」
そういって、サンゲイザーイマジンたんの縄をほどき、声をかける。
琥珀「大丈夫か?ごめんな。怖い思いさせちまって。こいつらにはあとでビシッと言っておくから・・・本当にごめんね。でも、もう大丈夫だから」
そういって、見せる笑みは暖かく優しさと男気に満ちている。
漢女(おとめ)のような優しさと温かさを琥珀は持っている。
サンゲイザーイマジンたんが目に涙をポロポロと浮かべると、琥珀に抱きついてボロボロと泣き出す。相当悲惨な目にあったらしい。
琥珀が一息つくと、6本の腕を取り出して、頭を優しくなでながら涙をぬぐって、ヨシヨシとなだめてやる。
琥珀(はーっ・・・あたしっていっつもこんな役回りかよ・・・まあいいけどさ)
PM14:30
大学構内 バス乗り場
そのころ。
大学のバス停で帰路につこうとしていた大学教授・神代聖ことビショップは新聞を読みあげて、ある記事に目を止める。
それは例の泥棒ばかりが狙われるといった事件であった。
ビショップ「自業自得ですね・・・」
そういって、新聞を閉じようとしたとき、同じく大学で体育を教えているスポーツインストラクターでありスポーツ健康学の助教授を務めている神代塔子ことルークがやってきた。
ルーク「おう、お前も今帰りか」
ビショップ「ルーク。お疲れ様です」
ルーク「あ、そういえば、お前さっき着替えている時事務所に忘れ物してたから持ってきたよ」
そう言って取り出したものを見て、ビショップは首をかしげる。
それは「ガラスカッター」とも言われているガラス専用のカッターであった。
かなり専門的なことにしか用いられないのだが、ビショップは見当もつかない。
ビショップ「・・えっと、それは私のものなのでしょうか?」
ルーク「間違いないよ。お前カバン落としたとき、床に落ちていたから拾ったんだよ」
ビショップが首をかしげている。
自分はこういうものを使ったことがないのだが・・・?
ビショップ「もしかしたらキングかクイーンのものが紛れていましたか?あとで聞いてみますか」
ルーク「そうだな。あ、そうだ。キングから報告だ。ビショップ、お前がこの間行ってた防犯学校の爺さんがイマジンとニアミスだってよ。捜査に入ってほしいって」
ビショップ「石川先生がですか!?それで!?契約とかは?」
ルーク「キングの話だと、防犯学校で盗まれたらしいんだって。その爺さんの泥棒の道具」
ビショップ「それを取り戻したいと・・・?」
ルーク「らしいぜ」
防犯学校・・・?
盗まれた泥棒用の道具・・・?
何かが頭の中に引っかかる。
ビショップの頭の中で靄がかかったように何か見えるようで見えない思い当たる節が感じられる。ビショップはバスに乗り込みながら今回の事件のことを考えることにした。
Vライナー ラウンジ
ようやく落ち着きを取り戻したサンゲイザーイマジンたんをとりあえずは寝かしつけ、慧たちは琥珀から話を聞いて今度の事件の対策をとっていた。
サファイア「つまり、その泥棒の道具を盗んだ犯人を見つければいいってことか」
ルーベット「しかし、途方もないな」
エメラルド「手がかりないしね」
慧「そのイマジンが過去に飛ぶ前に見つけ出さないと」
琥珀「いやさ、これ、あたしの考えなんだけど、わりかし犯人は絞られそうだ」
トパーズ「ああ、この状況や事件の文献を見ていると、それが妥当かもな」
全員が驚いて目を丸くする。
慧「で、でもさ、石川さんがいた防犯施設は防犯設備が完ぺきだったんだよ?」
そうなのだ。
監視カメラや侵入者が近付くと電源がつくライト、鋼鉄製のシャッターに二重構造となっている窓ガラス、さらにドーベルマンまで門柱においているのだから、これ以上の防犯対策もあるまい。ましてや、警察署内部という領域内からして、心理的に泥棒ができるような環境ではない。
トパーズ「目の前の環境で判断するな」
琥珀「ひとつだけ、例外があるんだよね。こういった設備が一切全く役に立たなくなるそういった人物」
エメラルド「誰だれ!?」
琥珀「防犯学校の生徒さんたちだよ。彼らなら鍵をつかってドアから堂々と入ればいいだけだし、防犯設備なんてあってないようなものだ。番犬のドーベルマンも彼らには懐いていたようだったからな」
トパーズ「まず、愛が許可してこのプレハブに被害者を泊める許可を与えた。これで防犯学校の生徒たちは石川さんを部屋で寝かせておいて、部屋に置いてある金庫から防犯の授業で見ていた金庫破りの方法で覚えておいたキーを入力することで盗みだせる。そして、その犯人は寄せ書きまで置いてあるこの人物の中にいるってことになるな」
二人の推察に全員が感心したようにうなづく。
トパーズ「まあ、推察にすぎないがね」
琥珀「しかし、このプレハブ周辺の監視カメラを見る限り、こいつら以外にこのプレハブに出入りした人間はいないんだ」
慧「有力的な容疑者ってことね・・・」
ルーベット「ところでその人物とは?」
琥珀が色紙をコピーした捜査資料を見せる。
そこには色とりどりのサインペンで書かれた「誕生日おめでとう!!」とメッセージが書かれている。
その中にある一人の名前に慧が目を止める。
慧「これ・・・?」
「神代聖」
慧「神代先生・・・?」
その名前に慧は驚きと戸惑いを隠せないようだった・・・。
そのころ。
ルークがキングとともに夕暮れに染まる茜色の街をパトロールしている。
キング・・・晶は誰もが振り向かずにはいられない可愛らしい顔立ちに良く似合うサマードレスに身を包んで歩きながらルークの話を聞いている。
晶「ビショップの様子がおかしい?」
ルーク「例のイマジン事件の話聞いたら何か考え込んじまってよ」
晶「あいつが物思いにふける癖はいつものことでしょう」
ルーク「そうなんだけどさ、なんていうか、こういうとき嫌な予感がするんだよね」
晶「というと?」
ルーク「何ていうか・・・ビショップが・・・今度の事件に何か絡んでいるんじゃないかって」
晶「うん?」
ルーク「何かやらかしちゃったみたいな?」
晶「お前がやらかす頻度と比べれば、天と地の差もあると思うけど」
ルーク「おい!あたしゃそれじゃまるでトラブルメーカーみてぇじゃねぇか」
晶「みたいじゃなくて、そのものでしょ」
冷静に断定されて、ルークがガックリと首を垂れる。
人気のない夕暮れの河川敷公園。
晶の足がぴたりと止まった。そして、ルークも足を止める。
二人の表情に緊張の色が浮かぶ。
晶「感じた?」
ルーク「ああ、イマジンの匂いだ!」
そういって、振り返る。
すると、空中からすさまじい速さで無数の鋼鉄製のトンボを模したミサイル弾がこっちに向かって飛んできた!!
ルーク「危ねぇっ!!」
晶「ぐっ!!」
二人が間一髪で飛びよけると、ミサイルが着弾してすさまじい爆発を起こす。爆風の勢いは凄まじい破壊力で、当たった河川敷公園の遊具を粉々に吹き飛ばし、無残な残骸へと変えていった。
ルーク「上かっ!?」
晶「来る!!」
二人が再び飛びよけると、そこに両足のホイールを高速回転させて地面を激しくえぐり、ドラゴンフライイマジンたんが降り立った!!ウイングを利用した高速移動能力に加えて体の各所に装備しているホイールを高速回転させることで破壊力のあるパンチやキック攻撃を繰り出すことができるのだ。
ドラゴンフライイマジンたん「へえ、あんたがチェックメイトフォーのキングにルークか。結構強いと聞いていたけど・・・・なかなかだね、今の攻撃をよけるなんて」
ルーク「テンメェ・・・ナメてやがるな。ぶっ飛ばしてやる!!」
晶「俺たちに喧嘩を売るとはやってくれるよね」
ルークと晶がワイバーンベルトを装着して同時にベルトを装填する。青い光と紫色の光が全身をつつみこんだ。
「「変身!!」」
ルークが仮面ライダーワイバーン・ルークフォーム。そして晶がキングフォームに変身を遂げると、キングジャベリンを構えてキングフォームが右から、そしてルークフォームが左側から挟み込むようにルークハンマーを構えて走り出し、襲いかかる。
しかし、ドラゴンフライイマジンたんは足にホイールをすばやく装着させると、地面をものすごい速さで回転しながらその攻撃を除けた。そして足を振り上げるとホイールが分離してチャクラムの要領で鋭い刃が高速回転しながら襲いかかっていく。
ドラゴンフライイマジンたん「喰らいなっ!!」
Rワイバーン「くそっ!!」
ルークフォームがルークハンマーを楯のように構えてはじく。見た目とは裏腹に鈍い衝撃としびれる感覚が全身を襲う。そして見ると、今の一撃でルークハンマーに無残な傷跡ができていた。高速回転する刃によって超硬度のハンマーも耐えられないほどの破壊力だ。
Rワイバーン「嘘だろっ!?ルークハンマーがっ!?」
ドラゴンフライイマジンたん「あはははははは!!」
ドラゴンフライイマジンたんが空中を滑空するようにウイングを広げて地面すれすれに二人に向かって体当たり攻撃を仕掛けてきた。
二人はすれ違いざまに数メートル吹き飛ばされる。
Kワイバーン「ふうん、ちょっとはやるんだ」
その時だった。
クラブイマジンたん「バブルケイジ!!!」
突如現れたクラブイマジンたんが放った大量の泡が二人を取り囲み、みるみる視界が極彩色のサイケデリックな世界へと変貌していく。
その中に取り込まれた二人が敵を見失い、武器を構えたままその場で背中と背中で隣り合わせになるように構える。
Rワイバーン「おいおいおい、何だよこれ!?」
Kワイバーン「どうやら、まんまと罠にかかっちゃったみたいね・・」
クラブイマジンたん「くふふふ、この間は姉さんが世話になりましたね。その仇、討たせていただきますよ。この泡はすべて濃硫酸の泡…どんどん鎧や仮面が溶けて行き、最後は骨の髄まで溶かしてさしあげますわ」
Rワイバーン「冗談こいてんじゃねぇぞ!!!どこにいやがるっ!!」
Kワイバーン「そういって、出てくるようなバカはいないでしょう」
いきりたつルークフォームを諌めるようにキングフォームが諭す。
しかしこの状況はさすがにキングフォームも危険な状況であることを痛感していた。
徐々にであるが、アーマーの表面が少しずつ溶けてきているのだ。
その時だ。
ヒュンッ!!!!!!
Kワイバーン「!?」
キングフォームが風を切るような音とともに飛び出してきた真空の刃を槍で弾き飛ばす。
それは地面に着弾し、刃の形そのものに削れる。
クラブイマジンたん「さあ、処刑(おしおき)の始まりですよ。硫酸で溶かされるか、私のハサミで切り殺されるか、どっちがお好みですか?」
容赦ない声に二人が戦慄する。
Kワイバーン「・・・ちょっと、厄介だね」
Rワイバーン「全くだぜ・・・!」
一方。
Vライナー ラウンジ
慧とイマジンたちが話し合っているところへ、ようやくサンゲイザーイマジンたんが目を覚ましてやってきた。
全員が緊張と警戒の色を隠せないでいる。
サンゲイザーイマジンたんが座ると、琥珀が紅茶をいれて差し出した。
それを一口飲むと、慧が話し出した。
慧「・・・どうして、Vライナーに乗っていたの?」
サンゲイザーイマジンたん「・・・まあ、わかるかもしれないけど、私、イマジンサイド、クビになりましてね。他のイマジンからも命を狙われだす始末な上に、契約者もこの間、事故で亡くなりましたの。それで、消滅を待つばかりだったはずだったんですけど、貴方方と出会ったせいで、消えるのが嫌になったんですの。それで、勝手とは存じておりますが、特異点、貴方に憑依してずっと隠れていましたの」
慧「全然気がつかなかったよ・・・」
サンゲイザーイマジンたん「気配消すのは得意なんです。泥棒だからね」
ルーベット「それで?目的は何だ!?」
トパーズ「逆恨みの上での、電車の乗っ取りでも画策していたか?」
サンゲイザーイマジンたん「・・・そうですね。単刀直入に申しますわ」
紅茶を飲みほしてサンゲイザーイマジンたんが向き合って笑みを浮かべながら言った。
サンゲイザーマジンたん「私を仲間に入れて」
慧「・・・・え?」
イマジンズ「何ィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!?」
全員が目が飛び出るほど驚き、ぶっ飛んだ。
サンゲイザーイマジンたん「・・・・貴方達のせいでもあるんですからね。カオスゲートだの時の運行を守る戦いだの、毎日毎日信じられないアクシデントに巻き込まれているというか、逆境に追い込まれることが日常茶飯事とかいう、見ていて引き込まれてしまった貴方達の前向きに生きようとする姿勢が・・・私がずっと追い求めていたものなのですから。私は今まで死とか消滅とか意味が分からなかったから何も感じなかったけど、今は怖い。このまま消えていくのが。貴方達のようにデッドラインをギリギリで生きている生き方・・・この世でもっとも“生”を感じられる生き方・・・・私が追い求めてやまないもの。だから、今回だけは手に入れる資格があるかないか悩んでいたけど、こうなったら腹をくくって頭を下げますわ。仲間に入れてくれる?」
口調は礼儀正しいが傲岸な態度は崩さない。それが彼女なりのプライドなのであろう。
しかしその本質には彼女の生死にかかわる悲痛なまでの心の叫びが慧には聞こえてならなかった。
慧「・・・・・・分かった。いいよ」
一瞬、悩んでから決意を固めたように告げた慧の言葉に全員が止まった。
驚きの表情で。
サンゲイザーイマジンたん「・・・・え?」
慧「・・・私でよければ、契約しよう」
そういって、自分の答えに迷いを吹っ切るように笑顔を見せる。
イマジンズ「ええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!?」
そのとたん5体のイマジンたちの絶叫が時の砂漠に響き渡った・・・。
続く
,こんにちは!!
今回ついに6人目、サンゲイザーイマジンたんが仲間入りいたしました!!
盗賊のスキルに長けている彼女は俊敏性と素早さ、そしてイマジンの中でも類まれなる頭の回転の速さを生かした能力を駆使して闘っていくスタイルで今後とも闘ってまいります。
そして・・・次回第6のフォームが登場します!!
力を入れて書きますので、お楽しみくださいませ!!
感想をお返しいたします!!
いつも貴重な感想をいただきありがとうございます。
>烈様
>『ウォーサイズレジェンドルガ』ですけど、何故に物語のラストに“イマジン”でもないのに“ギガンテス”化したのですか?
これは・・・キバライナーを初披露したいがために無理やりでしたがレジェンドルガからギガンデスに派生させて登場させたかったためです。本筋のストーリー設定から外れてしまいましたが、考えた末にこのようなことになりました。
>彼が劇中に使っていた能力は“雷”と“青い炎”の二つだったのですけど、その辺りはどのように考えていますか
チェックメイトフォーの能力はイメージとして自然災害、もしくは彼らがよく夢で見ている世界の崩壊時に引き起こされる「地震」「雷」「竜巻」「炎」から成り立っております。
ちなみに、能力を分けていくと・・。
キング「雷」を主体とし、「炎」「地」「風」の力を操ることができる。
クイーン「炎」の力を操ることができる。
ルーク「地」の力を操ることができる。
ビショップ「風」の力を操ることができる。
このように考えております。
>こんごもがんばってください!!
大変有り難いお言葉感謝いたします!!
今後ともがんばりますので、応援よろしくお願いいたします。
それでは失礼いたします。,#000000,./bg_f.gif,lo66.041.geragera.co.jp,0
2009年08月05日(水) 04時39分53秒,20090805043953,20090808043953,SjasaLTVUd6f2,仮面ライダークロノスたん・特別出張盤 ver.“G”-02,YP,,,
???「い゙―――――っ!」
???「い゙―――――っ!」
???「い゙―――――っ!」
――――宵の闇を隠れみのに、うろつく複数の人影。
その姿は、一言で言えば“アリ”だった。
全身を真っ黒なアリを模したコスチュームで包み、腰部分には赤く光る小さな奇石(きせき)。
そしてアリ型怪人少女たちは、全員が寸分違わぬ容姿をしていた。
ガサゴソと何かを探すかのように練り歩くアリ少女たち、そんな彼女らに話しかける女性が一人。
闇に溶けるかのようなアリ少女たちとは対照的に白衣で身をつつみ、その白は髪にまでおよんでいる。
彼女の名前はドクトルK、とある悪の秘密結社の中核をなすメンバーの一人だ。
くぃっ、と眼鏡のズレを正すドクトルK。
K「どう? なにか見つかったかしら、“G”の足取りは?」
アリず「「「い゙―――――っ!!」」」
Kの問いに、しかしアリ少女たちはブルブルと首を横にふった。
そのジェスチャーに落胆したのか、Kは肩を落として深いため息をつく。
Kが懐から取り出したのはスマートパッドという小型のデバイス、スマートブレイン社が開発した市販品だ。
K「おっかしいわねー。報告によれば、脱走した“2nd”が消息を絶ったのは、この辺りのはずなんだけど……?」
ボヤきつつ、Kはスマートパッドを操作する。
液晶画面に映っているのは市販のデジタル地図、Shi15uya周辺だ。
K「“2nd”の“外見年齢”はだいたい高校生程度。何処かしらの教育施設に身を隠すことも不可能じゃない、わね」
アリず「「「い゙―――――っ!!」」」
K(……だとしたら、社会的身分の存在しない“G”を匿った協力者がいるってことかしら? 仮に“G”が協力者に組織の情報を流していたとしたら、ちょーっと厄介なことになるわね……)
Kは一人で考える、今後の身のふり方を。
二人で立ち上げた組織だ、Kは指揮系統に関与してこそいないもののそれなりの権力と発言力がある。
そもそも、同志でもある“首領”たっての頼みでなければこんな小間使いのようなことしないのだが。
K(……ま、いっか。私は目的が達成できればそれでいいし。それに、そろそろ潮時だしね)
……嫌にドライなベクトルで自己解決するKは、指示を待ちきれずにうずうずとしているアリ少女たちに檄を飛ばした。
K「今までは“G”も目立つことはしないだろうと思って深夜にだけ調査をしてきたけど、それも今日で終わりよ。
明日からは大っぴらにやっちゃいなさい、アンタたち! 邪魔するものがあれば、叩き潰しちゃいなさい!」
アリず「「「い゙―――――っ!!」」」
びしぃっ! と敬礼すると、アリ少女たちは解散した。
その様子を満足そうに見ていたKは、ニヤリと笑う。
K「ふふふ、首を洗って待ってなさい、“2nd”。すぐに見つけ出して、あなたのその身体、隅から隅まで思う存分調べてあげるからねっ!
はははは、はぁーっはっはっはっは――――、へ、へ、へぶしっ!? ……うー、夏が近いとはいえ、夜はやっぱり冷えるわね……。あぁ、あったかいコーヒーが飲みたいわぁ……」
……実にしまらない決意表明だった。
★
スミレ「うー、ちこくチコク!」
緑ヶ丘学園へと続く道を自転車こいで走る少女の名前は黒野 スミレ、どこにでもいそうな何の変哲もない普通の女の子。
人とちょっと違うところがあるとすれば、アニメや特撮に少ーし興味があるってところカナー。
そんな彼女は体力ゼロ、裏技を使って急勾配な坂を上りきる。
ここまで上れば、学園はもう目の前だ。
スミレ「んー?」
そんな彼女の目の前に、見覚えのある後姿。
緑色の髪とゴツいカメラがチャームポイントのクラスメイト、石森 マドカだ。
マドカは後ろを走るスミレにまったく気づかない、それにどこか慌てている。
マドカ「あわわわっ、遅刻です遅刻ーっ!?(涙 」
泣きべそかきながら(……)歩道をバタバタと走るマドカに、スミレはママチャリに跨ったまま声をかけた。
スミレ「おーい、マドカちゃーん」
マドカ「……? あっ、クロノさん、お早うございます!」
声に気づいたマドカはわざわざ振り向き、ペコリと頭を下げてお辞儀をした、それはもう深々と。
転校初日から変わることのない彼女の対応に苦笑いを浮かべたまま、スミレはママチャリのブレキーをかける。
上手いぐあいにママチャリはマドカの真横に止まり、それに合わせるかのようにマドカは下げていた頭を上げた。
そんな彼女は――――
スミレ「うん、おはよ――――って、どうしたのそのケガ!?」
マドカ「はい?」
――――怪我をしていた。
頭から血を流している。
スミレが心配というよりドン引きな表情になるのも仕方ないぐらい、血を流している。
マドカはポン! と手をたたいて、頭を指さしながら口を開いた。
マドカ「あぁ、これですか? さっき車に轢かれそうな子犬を助けたら、ちょっとドジしちゃいまして。
子犬は無事だったんですけど、代わりにワタシがはねられちゃいました」
スミレ「…………いやその。そんな『やっちゃった☆ZE!♪』みたいな感じで言われても(汗
えぇと、大丈夫なの? 救急車、喚(よ)んだ方がいい?」
マドカ「はい、カメラには傷一つついてません!」
スミレ「いやいや、そこぢゃないから」
こんなコントを披露している間にも、だらーっと血は流れ続けているのがちょっとしたホラーだ。
よくよく注意して見れば、怪我をしているのは頭だけではない。
あまりにインパクトが強くて見落としていたが、マドカはところどころ怪我しているではないか。
本人はいたって平静っぽいけど、これはさすがに病院へ連行した方がいいんじゃないの?
スミレがそう考え始めたころ、マドカは思い出したように慌てだす。
マドカ「――――って、こんなことしてる場合じゃないですよクロノさん! 急がないと遅刻しちゃいます!」
スミレ「大丈夫、まだ 慌てるような 時間じゃない。てか、ホントに病院行かなくても大丈夫なの?
救急車とか呼んだほうがいいんじゃない?」
マドカ「大丈夫です! ワタシ、病院とかには行けませんし、それにこれぐらいの怪我ならすぐに治っちゃいますから!」
スミレ「……え?」
マドカ「それじゃ、お先に失礼します。あぁっ、遅行しちゃう〜〜〜〜〜っっ!!?(涙 」
スミレ「ぁ、ちょ、ちょっと! ……行っちゃった」
呼び止める暇(いとま)もあらばこそ、マドカはあっという間にスミレの手の届かないところへと行ってしまった。
そんなマドカを見送るスミレの表情は、堅い。
スミレ「…………なーんか、ヤな感じ」
オリヴィエ(なにがだ?)
そんなスミレの意識にダイレクトに聞いてくる声、その正体は彼女に憑(つ)いているイマジン少女が一、オリヴィエ。
単純なパワーなら仲間の中でもナンバーワンなのだが、 ちょっとおつむが足りない 猪突猛進なのがたまにキズである。
スミレ「いや、明らかにオカシイでしょ、あれだけケガしてるのに『CHA-LA HEAD-CHA-LA〜♪』って。
アタシならぜーったいサb――――もとい、療養してるね、うん。ラノベとか読みながら」
アリサ(はぅあぅ〜〜、スミレは普段から休んでるから、きゅーけいしてるひまなんてないのですよ)
スミレ「……アリサ、そーいう嫌なツッコミは止めてくんない? いや、そりゃまぁ『破』を三日続けて見に行ったり、『リベンジ』とか『謎のプリンス』とかハシゴしたけどさ。
あー、『サマーウォーズ』も見に行きたいよネー。でも今月は『ネ申知る』と『花火ちらし寿司』も読書用、保存用、布教用と三冊ちゃんと買ったからお金が……!」
激しくどーでもいい話を、オリヴィエと同様にスミレに憑いているイマジン少女アリサ――自称おおかみさん(笑)――と脱線していると、軌道修正するかのように別の声が聞こえてくる。
シャル(はいはい二人とも、路線変更もホドホドにしないとイけませんよー? さて、石森さんのことですが――――まぁ、十中八九ただの人間というワケではないでしょうね)
スミレ「やっぱし、どーしてもそういう話になっちゃうよネ。そもそも、最初からなんか様子がおかしかったし」
オリヴィエ(……そうだったか?)
アリサ(ぜーんぜん、わかんなかったのです……)
ふぅ、とスミレはため息をついた。
スミレ自身は別に『悪・即・斬!』な心意気をもっているワケではないが、マドカが人間以外の何か――例えば、怪人少女、とか――なら、見過ごすわけにはいかない。
友だちを疑ってかかるのは、いくら大義名分があるとはいえキモチのいいものではないのだけれども。
なんとなく重い雰囲気になり、誰ともなく口をつむぐ。
オリヴィエ(――――で、どうするつもりなんだ、スミレ。始末する、のか?)
アリサ(!? ……なにも、そんな言い方、しなくたって……)
どうやらオリヴィエにとって怪人少女とは、あくまで“倒すべきもの”でしかないらしい。
ただその歯切れが悪いのは、オリヴィエもマドカに対して親愛の情を多少なりとも覚えてしまったからのようだ。
マドカがわかりやすい悪人だったなら、彼女の言葉に躊躇はなかったはずだ。
スミレ「とりあえず、アタシがそれとなく探りを入れてみるよ。仮に怪人少女だったとしても、話し合いで解決できそうなら、そうしたいから。
――――だからさ、結論を出すのは、もうちょっと待ってくれない?」
シャル(……ワタクシは構いませんが――――くれぐれも、ミイラ取りがミイラになることの、なきように)
言って、シャルはスミレの意識内から離脱する。
それに追随するようにオリヴィエも抜け出し、アリサはダウナーな感じで消えていった。
スミレ「『ミイラ取りがミイラにならないように』、かぁ。……それが出来れば苦労はないんだけどね」
ボヤきつつ、スミレは自転車を押しながら歩き出す。
その足取りは当然重く、スミレは遅刻してあやしー先生にこってり絞られることになるのだが、それはまぁ、また別のお話(?)である。
★
スミレの独自――オリヴィエたちの声はスミレにしか聞こえない――を、盗み聞きしているものが、いた。
★
スミレ「とゆーワケで、キング・クリムゾン、時は吹っ飛ぶ! あっという間にもう放課後だヨ」
マドカ「? クロノさんは誰に向かって喋ってるんですか?」
絵美里「気にしないほうがいいよ。スミレちゃん、たまにおかしくなるの」
マドカ「はー、大変なんですねー」
帰り道、メタな発言をするスミレとそれを軽くスルーする絵美里――どうやら何だかんだで慣れつつあるらしい――、加えて問題のマドカ。
時にスミレの漫画トークだったり、時に絵美里のミュージックトークだったり、時にスミレのアニメトークだったり、時にスミレの特撮トークだったり。
スミレ(うーん、『探りを入れてみる』とは言ったものの……一体どーすればいいのやら? アニメや漫画みたいに上手くはいかないモンだねー。
ていうか、朝はボロボロだったはずの制服がきれに元通りになってるのはどーいうコト?)
絵美里「そういえば石森さんって、ドコに住んでるの?」
マドカ「えっ!? それ、その……と、遠くのほうですよ! 学校から離れてるから、朝はもう大変なんです! ラッシュとか、痴漢の人とか!」
絵美里「ふーん。電車通学なんだ? ところで前の学校の友だちと別れて寂しかったりしないの?」
マドカ「えっと……それは、寂しいですけど、」
スミレ(……ダメだ、怪しいと思って観察すると、全部アヤしく見えてくる)
言葉に詰まったり、何故か視線を合わせなかったり。
そんな感じで「怪しいかも……」だの「いやいや、考えすぎなのカナ……?」だのと堂々巡りがとまらない。
さっきから絵美里の話も右から左へ受け流すぐらい考えに没頭していたスミレは――――
二人「「ひっ、……!?」」
スミレ「え、なになに? なんかあったの?」
――――絵美里とマドカ、二人の絶叫によってその意識が現実(リアル)に帰ってきた(……)。
???「「「い゙―――――っっ!!?」」」
スミレ「! イマジン……ぢゃない、よね?(汗 」
そこにいたのは全身黒タイツのアリを模した怪人少女、腰には鈍く光る奇石。
まるで型抜きで作ったクッキーみたいにそっくりなその容姿(すがた)、少なくともスミレには見覚えがなかった。
そもそもイマジン少女ならオリヴィエのイマジン感覚(センシズ)に引っかかるはずだが、その報もないということはきっと違うのだろう。
スミレ「って、悠長に構えてる場合じゃないね、二人とも下がってて! ――――変身!」
≪――Gun Form――≫
瞬時にスミレの姿が正義のライダー少女、仮面ライダークロノスたん・プラットフォームの駅員コスに変わり、さらに制服コスが弾け飛ぶ。
同時にクロノスベルトから赤い光があふれ出し、それは犬耳&メイド服としてクロノスたんに蒸着される――――!
もちろん謎の怪人少女たちがそれを黙って見逃すはずもなく、鋭いツメでクロノスたんに襲い掛かった――――!
???「「「い゙―――――っ!」」」
クロノスGF「……とぉーっ!」
四方八方から迫り来るツメ、それらを上空にジャンプして回避、くるくるくると回転しながら着地するクロノスたん・GF。
謎の怪人少女たちは互いにぶつかり、スっ転んでしまった。
上手い具合に絵美里・マドカと怪人少女たちの間に立ちふさがり、振りかえってあどけなさの残る顔で言った。
クロノスGF「ここはボクに任せて、すたこらさっさなのですよ!」
マドカ「クロノさんが、変わった……!?」
絵美里「! 石森さん、こっち!」
目の前の事態にビックリ仰天しているマドカの腕を引っぱり、絵美里は近くの物影に隠れる。
それを見ながらクロノスたんは手早く自前の武器――――クロノガッシャー・ガンモードATを組み上げた。
クロノスGF「それで、ボクはどーすれば?」
スミレ(とりあえずマドカちゃんのことは後回し、二人に怪我させないように距離とりながら蹴散らして!)
クロノスGF「りょーかい!」
もぞもぞと、謎の怪人少女たちは起き上がる――――が、そうはさせまいとクロノスたんは狙いを定めて。
クロノスGF「討つべし射(う)つべし撃つべしぃーっ! 弱いものいぢめする悪ーい怪人さんは、このボクが冥土に送ってあげるのですよ!!」
???「「「い゙―――――っっ!!?」」」
ズババババ――――! と、さながら雨霰(あめあられ)のように散弾をぶっ放すクロノスたん。
あくまでも敵の射程外から、自分は安全な場所に居つつ攻撃する……そこ、まるで悪役みたいとか言わない。(ぉ
どうやら耐久力はそれほどないらしく、そこそこの数がヒットした時点で謎の怪人少女たちは「「「い゙ぃ゙―――――っっ!!?」」」と爆発してしまった。
スミレ(って、弱っっ!?)
プスプスと煙を上げる燃えカスを見つつ、スミレは思わずツッコミを入れた。
なんだか妙に後味の悪い殲滅戦を終えたクロノスたん、そんな彼女を労うかのように物陰から出てくる二人。
……そして、どこからともなく聞こえてくる喝采の証、拍手の音。
???「えぇ、弱くて当然。その娘たちは量産型、ガンダムで言うところのボール、戦隊で言うところの戦闘員レベルだもの。これぐらいは、まぁ、ね」
クロノスGF「……だれ?」
???「私? 私は悪ーい組織の、悪ーい科学者おねえさんよ、フフフ……。そうね、『ドクトルK』とでも名乗っておきましょうかしら」
くぃっ、と眼鏡のズレを正しながらドクトルKは不適に笑った。
まぁまず味方ではないだろうから、クロノスたんは二人を庇いつつ立ちふさがる。
そんな彼女の様子を見てKは、ふぅ、とタメイキをついた。
K「参ったわね、用があるのはそこの娘ただ一人なんだけど。……クロノスたん、だったかしら? 邪魔立てするつもり?」
クロノスGF「当たり前、なのです。コーラを飲んだらゲップが出るくらいに当たり前なのです」
スミレ(いやアリサ、アタシが思ったことイチイチ声に出して言わなくていいから)
クロノスたん――というよりアリサ――がやけに強気なのは、ドクトルKが超弱そうだからである。
疑いのあるマドカとは違い、こちらは明らかにただの人間だ。
少なくとも、その身体のほうは。
K「そう、なら仕方ないわね。“時を越える”って噂のあなたも無傷で捕らえて、隅々まで調べつくしたいところけど――――」
スミレ(うゎ、マッドサイエンティスト……(汗 )
K「とりあえず、この場は仕事のほうを優先させてもらうわ。お出でなさい、ホッパートリスたん、あーんどアントトリスたんたち!」
クロノスGF「――――!」
Kの召集に応じて現れたのはホッパートリスたん――メタリックブラウンの飛蝗を模したデザイン――と、先ほどと同じアリ少女たち。
どうやら怪人少女としてのカテゴリーは“トリス”というらしい。
どひゅぅうん! と風斬音だけを残して、ホッパーたんは空高く飛び跳ねた。
K「さぁ、やぁーっておしまい!」
アント「「「い゙―――――っ!」」」
アントトリスたんたちはクロノスたんのすぐ後ろ、絵美里とマドカのいずれかを狙って走り出す!
クロノスGF「そうはさせな――――」
ホッパー「おっと、アンタの相手はこの私よ!」
クロノスGF「って、うわわっ!!?」
ガッシャーガンを構えるより早く、ホッパーたんはクロノスたんの眼前に降り立った。
それにビックリしている隙に、クロノスたんを羽交い絞めにする。
アントたんたちは易々とクロノスたんの横を通り過ぎる――――!
スミレ(二人を助けないと――――)
クロノスGF「このっ、このっ!」
とりあえず、クロノスたんは眼前の敵より二人を救うことを優先する――――のはいいのだが。
いかんせん羽交い絞めにされている状態では命中率が悪すぎる、散弾のほとんどがあさっての方向へと放たれた。
おまけにホッパーたんが邪魔をして、クロノガッシャーを落としてしまう。
ホッパー「ちょと大人しくしててもらいましょうか。ホッパー、ローリング、クラぁぁー―――――――――ッシュっっ!!!」
クロノスGF「……きゅ〜〜〜〜〜……」
羽交い絞めにしたままホッパーたんは再び跳びあがり、きりもみ回転を加えながら急降下してクロノスたんを地面に叩きつける!
ゴロゴロとクロノスたんは地面を転がり、ぐったりとして動かなくなった。
絵美里「スミレちゃんっ!」
アント「「「い゙―――――っっ!!」」」
マドカ「こ、来ないで! 来ないでくださいっ!?」
手にした鞄で防戦しつつ、絵美里はスミレの名前を叫ぶ。
マドカはそんな余裕がなく、ただうずくまって怯えるのみだ。
ホッパーたんは横たわるクロノスたんに近づき、止めを刺そうと鋭いエッジの生えた左手を振りかぶる。
ホッパー「これで、終わりよ――――!」
クロノスGF「そんな細いモノで、このワタクシを昇天させようなどとは、ナメられたものですね!」
ホッパー「! 白刃取りぃっ!? って、うぎゃっ!?」
がしぃっ! と、クロノスたんは両手で刃を挟んで止めた!
そのまま腕を回して、ホッパーたんを投げ飛ばしつつ刃をへし折る。
ホッパー「ぐぐぅ、……アンタ、気絶してたはずじゃないの!?」
クロノスGF「えぇ、確かに気をヤっていましたよ? ただし、それはワタクシではありませんがね」
≪――Sickle Form――≫
言いつつ、クロノスたんはその姿を変えた――――いや、本来の姿にもどった、と言うべきか。
青い光は赤いメイド服をかき消し、ブルーが映えるスク水コスへと姿を変える。
薄いローブを身にまとい、現れたるは仮面ライダークロノスたん・シックルフォーム――――!
クロノスたんはクロノガッシャーをシックルモードに組みかえると、不適に笑ってホッパーたんに言い放った。
クロノスSF「悪に染まりしその悲しき性(さが)、性技の鎌で断ち切ってさしあげましょう」
ホッパー「小癪なぁぁあ!!」
こうして激闘の火蓋は再び切って落とされた――――!
★
まるでショートしたかのように目の前に火花が飛び散る。
身体は熱く、特に腰のあたりが一番ひどい。
何かが奥底から湧き上がってくるような、奇妙な感覚。
マドカがその感覚に苛まれたのは、アントトリスたんたちを見た瞬間からだった。
マドカ「うっ、うぅ……ダメ、来ないで、来ないで……!」
目をきつく閉じ、歯を食いしばる。
それでも感覚は遮断されず、より鋭敏さを増した気さえしてきた。
絵美里が何とか防戦しているが、それが一体なんの役に立つのか。
マドカ(逃げ、なきゃ。ここにいたら、ワタシがワタシじゃなくなっちゃう!?)
そう考えて、ふと疑問に思う。
何故そんなことを思うのか、と。
違う、知っていて当然なのだ。
だってマドカとアントトリスたんやホッパートリスたんは同じ“奇石”を持っていて――――いや、違う、“同じ奇石”じゃない。
マドカ(『違う』? 『違う』って、一体なにが――――)
ドクン! と、まるで爆弾のように心臓の鼓動が大きくなる。
身体が熱い、目の前がチカチカする、何かオカシイ。
絵美里「きゃぁっ!?」
一体のアントトリスたんが絵美里を突き飛ばした。
アント「い゙―――――っ!」
両手をあげて、マドカに襲いかかってくる。
その手がマドカに触れたとき、彼女の意識は途切れた。
マドカではない“ナニカ”が目を覚ます。
To be continued……?
,時間ないのでまたいつか(あとがきだけ)書き足します?
こんかいは駆け足だったなー。(汗,#000000,,i125-201-53-27.s11.a028.ap.plala.or.jp,0
2009年08月04日(火) 08時01分26秒,20090804080126,20090807080126,SgH9Cmk/qEiRM,仮面ライダーザベル 第九話,アジモ,,, 光と鈴が以前より懸念していた、誰かに戦っているのことが
ばれてしまう事態が起こってしまった。
それが級友二人であったのは幸か不幸か。
無理に隠しても仕方ないと、正直に話したら、
理解ある友はすんなりと納得し、さらに協力してくれると言い出した。
ただし、
「水臭いじゃないか。こんな面白そうなこと黙ってたなんてよっ」
いささか動機は不純だが。
「……一応言っておくけど遊びじゃないからな。
危ない目にあうし、それで怪我もするかもしれないぞ。」
「分かってるって」
駿二が陽気な笑顔を向ける。
本音をいえば巻き込みたくはないが、この二人のことだ。
悪魔の正体を調べに、特に優香は間違いなく一人突っ走る可能性が高い。
それなら共に戦うといっておいた方がいい。
どの道今の彼らに戦う術がないのだから。
「それでこいつが……」
駿二がじろ、と光の脇で浮かぶザベルに目を向ける。
ザベルも負けじと睨み返す。
見た目大して変わらぬ表情でどちらが偉いのか分からせようと
威圧しているつもりなのだろう。
じーっ、とにらみ合い、駿二がおもむろにザベルを握り取った。
「こっこら貴様離せ!」
「ん〜どうみても不細工なぬいぐるみにしか見えないがな」
「なにおぅ! 男にそんなことを言われる筋合いはないわ!」
手の中でもがくザベル。
興味がうせたように駿二が開放した。
肩で息をつくザベルは光の頭をぺしぺしと叩きながら、
「全くお前の友達はアレか!? なんだもうっロクなのがいないな!」
光は憮然とした表情で、ザベルをデコピンで弾いた。
余計なお世話である。
「こいつのことはいいとして、それよりも……」
駿二が横を向く。光とザベルもつられるように向ける。
「ふふふっ……妖精ちゃーん動かないでね〜」
「ひっ、ひぃ〜!」
おびえるポリンを、獲物を狙うようにデジカメを構える優香がいた。
紹介した瞬間から彼女は心奪われたように、熱心なアタックが続けていた。
「あの娘は……やばいな」
女性には甘いザベルも、さすがに優香の
熱い視線に何かを感じ取ったのだろう。主に悪い方向で。
しばらく追いかけっこが行われていたが、
ポリンが涙目になりながら光の背に隠れることでようやく収まった。
光は黒いオーラが渦巻く優香に対し冷や汗が流れる。
「あ……あんまり脅かすなよ?」
「脅かしてないわよ! ねー?」
愛想よい笑顔を向けるもいまさら効果なし。
完全に背中に隠れてしまった。
ポリンから見れば肉食獣の類にしか思えないのだろう。
自業自得だが、彼女の落ち込む姿が哀れだ。
「でも負けないわ! これからよ!」
鼻息荒く高らかに宣言する様は勇ましいが、
散々な結果に終わりそうに見えた。
そんな優香を尻目に、
「しかし悪魔か。本当にいるんだな」
「えっ……ああ、俺も最初は驚いたけど、
ザベルとか、まあ……話せば分かる奴もいるから」
「ねぇ蔵で眠ってる人……って言ってもいいのかな……
あの人も悪魔なんでしょ? 耳とか除けば本当に人間っぽいよね」
「ああいうのは俺も始めてみたよ」
「そのお嬢さんは、まだ起きないかのな……?」
あの後、気絶した悪魔を駿二の家につれて帰り、今も眠ったままである。
ちなみに改めて傷の具合を確かめようとして、
そこで初めて女性であると分かった。
怪我の治療のためとはいえ、駿二は女性の体を見たとして
優香から非難の嵐受けることになったのはいうまでもない。
弁明虚しく駿二ととばっちりを受けた光は蔵を追い出される羽目になった。
後から優香に聞けば、頭部の獣耳以外はさして人間と変わらないという。
今までであった悪魔と大分違うが、さすがに調べようもない。
とりあえず光は二人に悪魔についての説明を、
鈴には看病についてもらっていた。
そんなわけでやることもなく三人がしばらく雑談をしていると、
襖がゆっくりと開き鈴が顔を出した。
「彼女、起きたよ」
「そうか。それじゃあ病み上がりで悪いけど事情を聞いてみるかな」
光達が立ち上がる。そのときポリンが光から離れ
一目散に鈴の元に飛んでいった。
胸元に飛び込み、服に入り込むと、
頭半分出して優香をじっと睨んでいた。
「どうかしたの?」
「……さあ?」
鈴が聞くが、どう答えていいものか。
こういうときは駿二が笑いながら、
「優香に食われるところだったんだよ」
と、予想通りの返答をした。
当然鈴は首をかしげながら、彼の台詞に震えるポリンを見る。
「ほんと?」
「嘘にきまってるでしょ!」
優香は駿二の背中を思い切り蹴り飛ばした。
蔵へと入ると、薄暗い中女性の悪魔はぼうっ、と宙を見ていた。
光たちに気づくと居住まいを正し、しかし体の傷に顔をしかめる。
「大丈夫? まだ横になってても……」
「いえ、お気になさらずに……。
まずは命を救っていただいたこと、感謝しております。
私の名はマリスと申します」
「俺は光。で、こっちが鈴。それと友達の駿二と高橋。
俺達もああいう奴らに好き勝手させたくないから
戦ってるんで気にしないでよ」
「そうですか。しかし……なぜ、
人間であるあなたがあのような力を……?」
今まで戦ってきた悪魔も思ったであろう疑問をマリスは口にした。
やはり目にしたことのないことなのである。
光は手短に今までの戦いを彼女に伝えた。
初めは驚愕し、そしてだんだんと感心した表情へと変わっていく。
しかしどうしても信じられないこともあった。
「その……ザベルという悪魔は……」
「私だ」
出番を待っていたかのようにザベルが前に進み出て、
マリスがその姿を直視する。
そこから読み取れるのは、やはり疑念。
「お前の考えていることはよぉく分かるのだが、ひとまず置いといてだ。
私はお前とどこかであった気がするのだ」
「ありえん。ザベル様は……」
そう、死んだと。国が大変な事態になっていた時にも、
一度も姿を現すことがなかった。
誰も彼もが、ザベルという悪魔が死んだと認めていた。
それがよりによって、このような奇妙な姿の悪魔が名乗るなど。
ふつふつと怒りすら込みあがってくる。
「……私は自分のことに関する記憶がなくてな。
なぜこの世界にいるのか、この姿なのかも分からぬ。
憶えているのはザベルという名のみ。
そして、お前はそんな私の記憶に引っかかるのだ」
しばらくの沈黙。マリスはザベルの言葉を吟味する。
確たる証拠もない。しかし、もし本物であるのなら――
あることを決心したマリスが床に頭をつける。
突然のことに光たちが驚く中、
「あなた様がザベルならどうか!
仕えてきたものたちの無念をおはらしください!」
「どういうことだ?」
ザベルが尋ねると、マリスが話し始めた。
今現在、魔界はようやく収まったはずの戦乱が
各地での反乱により、再び始まっていた。
理由は不明だが、丁度同じ頃ザベルの死という噂が広まり、
戦争を収めるべく戦うザベルを慕うマリスの主人、
そして同じような悪魔達はろくな準備のないまま劣勢を強いられていた。
多くの悪魔の命が失われ、マリスの主人も
志半ばに命を奪われた。それが今自分を狙うブルートの仕業だという。
マリスが一通り話し終えると、
今度はザベルが押し黙る。なんのことか記憶にない。
自分に仕えてきたもの。身に憶えなし。
しかし彼女の真摯な態度は、
確証のない自分の言葉を信じようとしてくれていた。
「……信じてくれるのはありがたいが、今は魔界にもどるすべがないのだ
それにこの姿ではどうしようもない」
「戻れない……そうですか。夢中でこちらに来たので
知りませんでした……」
「まずはそのブルートという悪魔を倒す。今は休むがよい」
「はい……」
マリスが再び横になると疲れたのかすぐに眠りついてしまった。
全員が蔵をでる。駿二と優香は大きく息をつき、
溜まり積もった緊張感を吐き出していく。
「何の話かさっぱりだったわ……」
「ああ。戦争とか……全然想像つかんな。
ただ、あいつを助けるってのは変わらないんだろ?」
「もちろんさ。頭まで下げるくらいだ。よほどのことだろうな」
「なら先も言ったとおり、マリスを狙う悪魔を倒す」
ザベルが四人を前に腕を組む。
「でもどうする? 相手が何処にいるかは分からないだろ」
「簡単だ、おびき出す。直にこの居場所をかぎつけられる可能性は高い。
まさかこの家を巻き添えにしたくはないだろ?」
「確かに俺が困る」
肩をすくめる駿二。ならおびき出すのはいいとして。
光はもう一つの疑問を思う。
聞いた話ではローダスのところに現れた悪魔と鈴が遭遇した悪魔。
ほぼ同じ時刻に現れ、そして自分が戦った相手は
ブルートの部下かもしれない。ということは四対一では
防戦一方になってしまうのではないか。
「おいおい、こっちにも味方はいるだろ。ポリンよ、ローダスに伝えろ」
ザベルが小耳に伝える。ポリンは頷くと
急いでローダスの元へと飛んでいった。
ローダスなら快く承諾してくれるだろう。
「ボーグアイはどうするんだ?」
「あ? あいつはほっとけ」
「なんでさ。言えば戦ってくれるんじゃないか?」
「あんな生意気な奴は呼びたくない。どうせほっといても来るだろ」
ザベルはぷいっ、とそっぽを向いてしまう。
光も、子供の屁理屈をこねるザベルに呆れながら、
戦いの匂いを嗅ぎ付けてやってきそうだと思った。
「とにかくだ! あやつと約束した以上、必ずやこの戦いに勝利するぞ!
エイエイオー!」
ザベルが腕を高々と振り上げた。……ただ一人だけ。
いきなりの奇行に皆黙ってその姿を見ていた。
ザベルは、頬を紅く染めながら咳払いする。
「……意外と、ノリ悪いな……」
「そろいもそろってなめてんのか!」
鼓膜の破れんばかりの怒声に萎縮する三人。
ブルートの持つ鎖つきの鉄球が、今にも部下達を
叩きつぶさんと小刻みに震えている。
「す、すいやせん……邪魔する悪魔と人間がいたもんで」
「そんなわけわからんことを……
それでおめおめと帰ってきたってのか!」
「ぐへぇ!」
案の定、馬鹿正直に答えたドッグデモスの腹部に鉄球が投げ込まれる。
盛大に吹っ飛ぶがまだ息はあるようだ。
「全くどこの馬鹿が騒いでいるかと思えば……」
ドッグデモスの側を何者かが通る。ブルートたちに近づくにつれ、
暗闇に差し込む僅かな光がその姿を照らす。
「てめえ貴族の……確かオーゼ! 何しにきやがった!」
「口の利き方に気をつけろ。
騎士から落ちぶれた愚者らしい貧相さよ」
「ふざけんな! あっ、もしかしててめぇが邪魔してんのか!」
ブルートが吼え、鉄球を構える。
殺意を両腕に込めた、威力は当たれば先ほどの比ではないだろう。
オーゼは眉一つ動かさず答えた。
「なんの邪魔かは想像つくが……
それは悪魔と共に戦う人間のことだろう」
「人間……さっき言ってたのはマジだったのか」
「だから言ったじゃないですか……」
「うるせぇ! ……それで、お偉い貴族様が何の御用でしょうか?」
「別に。騒ぐ馬鹿を確認しにきただけよ」
「ぶっ殺してやる!」
と、言った同時に鉄球を投げ込んだ。
ぎゅるぎゅると唸りを上げながら突き進む鉄球を
オーゼは半身を開いて回避する。
ブルートは鎖を操作し、横から叩きつけるようにしながら引き戻す。
空中へ飛び出し、後方へ退避するオーゼ。
彼ほどの力量ならばいくらでも打ち込む隙があろうに、
しかし一度も剣を握ろうとはしない。
オーゼにしてみれば戦う価値のない相手ということであった。
「……貴様では私を殺すのは無理だ。
無論、あの人間に勝つこともな」
「俺が人間如きに負けるってのか!」
「奴は強い。今はまだ片鱗を表すのみだがな。
だがいずれは我が敵手として立ちはだかる者。
練習相手には貴様が丁度いいわ」
オーゼは小さく笑みを浮かべながら闇の中へと消えていく。
すかさず鉄球が放り込まれるが、手ごたえはない。
ブルートは全身で苛立ちを表し、血走った目を部下に向ける。
「があぁ! てめぇらその人間ごとひっとらえて来い!
八つ裂きにしてやる!」
血に植えた獣の咆哮が夜闇の中に木霊していった。
「なあ、悪魔ってさ、
人間のこと前から知ってるみたいな様子だけど、なんでなんだ?」
朝も早く、人通りのない道を行く光とザベル。
そしてその隣にはフードを目深にかぶったマリス。
そのままの姿では目立つため、駿二から借りていた。
昨日のザベルが言ったとおり、悪魔をおびき出すための行動である。
駿二たちは戦いには参加できないので、待機しているよう言っておいた。
大変残念がっていたが、こればかりは仕方がない。
だがこうして作戦を始めたはいいが、相手がすぐ来るわけではない。
光は時間つぶしをかねて、マリスに尋ねてみた。
「それは魔界では、昔から異なる世界が存在すると
信じられてきました。詳しくは知りませんが、
私達が通ってきた魔方陣のように、大昔にも
人間の元へ訪れていた悪魔が知恵を授けていた、という話もあります」
それを聞き光は優香が好きそうな話題だと思った。
「今はできないの?」
「すいません。私も勉強不足で……」
どのような理由でできなくなったかは思いつかないが、
当然、自分達が戦っている相手とは違うということだろう。
かつてから人との交流があったというのは神秘的な話である。
「じゃあさその、魔界ってどんなところなの?」
「……そうですね、なんていったらよいのでしょうか。
森があって、山があって、海があって……街もあります。
でも空は日中は赤いですね」
「赤……なんか気が滅入りそうだな」
つまり夜がくるまでは毎日夕焼け空が、
一日の半分を支配しているということか。
「そういうものですかね……。でもこの青い空を見た後だと、
たしかにそうかもしれませんね」
マリスはまだ白む空を見上げる。今日の天気予報は快晴だった。
これから、真っ青な空が拝めることだろう。
「私はこの世界の空が気に入りました。とても落ち着くような青色で」
その表情は昨日までとは打って変わって穏やかである。
そうすると、人ではないとはいえ女性らしい柔和な笑みを浮かべる。
光も小さく笑みを浮かべながら、傍らのザベルに向く。
「お前もなんか聞いてみたらどうだ?」
「ううむ……。ではおぬしの知るザベルについて聞きたい」
「文武に優れ、礼節を知り、誰からも慕われる偉大な英雄……
私も一度くらいしか会ったことがないのですが、
恐らく皆こう言うでしょう」
これまでも聞いたとおりの人物らしい。
そうすると、ますますこの傍らを飛ぶ悪魔と同一なのかと疑いたくもなる。
「では、おぬしのことを聞かせてもらってもよいか?」
ザベルが言うと、マリスの顔が一転して厳しくなる。
それはつらい出来事を思い出させること。だが、そこから自分の
正体に近づけるきっかけになるかもしれなかった。
「私が物心つくころは、いまだ魔界では
数多くの争いが起こっていました。数年後ほぼ収束していたとはいえ、
多く死者や戦災孤児を出しました。
私もその一人で、気づけば焼けた町を一人さまよっていました。
そのとき出会ったのがこの私の主です。
そして主が仕えていたのが戦争を終わらせた
英雄ザベル様です皆彼を慕い国王からも一目置かれるような悪魔でした」
マリスは自分のことのように誇らしく言った。
それほどの存在なのである。
「しかし昨日もおっしゃったように、
あるときザベル様が死んだという噂が広がり、
同時に各地で争いが起こりました。理由は全くの不明です。
そして戦いのさなか……よりにもよって
あのような野盗崩れに主の命が奪われて……」
「それがブルートってやつのことか……」
「自分の活動の邪魔だったんでしょう。だから罠にかけて……」
マリスは苦しさにキッ、と表情を閉める。
そして、彼らの仲間になったと見せかけ
ザベルの臣下にひそかに情報を流し、倒してもらうようにした。
組織は半ば壊滅状態となったが、肝心のブルートは生き残り、
そして裏切り者のマリスを狙い続けていた。
彼女は手に持っていた魔道具を顔の前に掲げる。
精緻な意匠の施されたそれは、ベルトのようにも見えた。
「それは? 何かずっと持ってたらしいけど」
「主の形見です。強力な魔力が宿っているそうですが、
私には使えません。恐らくブルートはこれも狙っているでしょう。
……私にはもうこれしかありません。
つぎこそは絶対に、主の仇を討って見せます」
「……俺達も手伝うよ」
「ありがとうございます……」
光の言葉にマリスがはにかむ。
自分がこの決意に応えるため、
改めて戦いに勝利しなければならないと決意した。
その直後、待ち構えていたかのように三つの影が二人の前に躍り出た。
「へへーそれじゃあ早速討ってもらおうか?」
「テメェの匂いは憶えてたからな。のんきに散歩か?
こっちは後がないんで都合が良いんだけどな。
さっさと用事を済まさせてもらうぜ」
クロウデモス、ドッグデモス、フロッグデモスが、
武器を片手に迫る。三対一という条件に余裕綽々だが、
「下がってて。ザベル!」
「おいおい、一人でどう戦う?」
「一人じゃないさ」
「うむっ。ローダス!」
光の笑み。ザベルの呼びかけに、三体が警戒するが何もが見えない。
が、クロウデモスが僅かに歪む景色の場所に気づきそこに魔法の刃を飛ばす。
刃は素通りせず、固い何かにぶつかったのか四散していく。
すると、ローダスが斧を構えた状態で徐々に姿を現していく。
「いつの間にいやがった!?」
「ああやっぱ気づかれちゃったか。
でも不意打ちなんて好きじゃないからいいか」
「こらっ、のんきなこと言ってる場合か!
せっかくの作戦が台無しだろうが!」
「ああっ、すいません!」
ザベルの叱責にローダスが頭をかきながら謝る。
「くっ、だが一体増えたかところでまだこっちが有利だってこと――」
ドッグデモスが牙を怒らせて叫ぼうとしたとき、
自慢の鼻が何かを捕らえる。火薬のような鼻につく匂い。
刹那の発砲音。ドッグデモスは身を捩じらせて、飛来する弾丸を回避する。
血走らせた視線の先にはボーグアイがライフルを構えていた。
「ちっ、はずしたか」
「ボーグアイ……やっぱ来たんだ」
「なんのことだ? お前ら見張っときゃ出くわすだろうと思ってな、
遠くでずっと見てたのよ」
実際彼の言う通りなのかもしれないが、
それでも味方が増えたのは頼もしい。
「別にお前を呼んだ覚えはないんだがな」
「ああ、なんだと?」
「こんなときに喧嘩すんなよ! いくぞ!」
ボーグアイとにらみ合うザベルを引っ張る光。
ザベルはぶつくさ文句を言いながら光と融合する。
巻き起こる黒き疾風が光を包み込み、
腕の一振りで風を吹き払い変身を完了する。
光たちの側にローダスも駆け寄り、ボーグアイに声をかける。
「君も光君の仲間のようだね。僕はローダス。よろしく」
ローダスは握手を求めるが、
「勝手に仲間にするな。たまたま相手が一緒なだけだ」
ボーグアイは手を払い相手の方へと向いてしまう。
ローダスは手のやり場に困りながら、光の側に寄る。
「彼はなぜ怒っているんだい?」
「さあ……会うとあんな感じだよ」
「……おまえらごちゃごちゃ喋ってんじゃねぇ!」
ドッグデモスが無視されたことにいらだたしく叫んだ。
しかし三対一があっという間に三対三に。
「ちっ、めんどくさいことになったなぁ」
「まあいいじゃないか。それぞれ借りを返す機会ができたからな」
三対の悪魔が各々武器を手に、それぞれ再戦の相手に狙いを定める。
光たちも武器を手にする。戦いの準備がそろい、六人が駆け出した。
「ぎゃぁ!」
「つえぇ……」
「まずいぞ……」
戦闘開始から数分、三体の悪魔が叫び声を上げながら地面を転がる。
決して相手を侮っていたせいもあるが、
こうも早々と戦局が決まってしまうとは思ってもいなかった。
だが、三体ともここで引くわけにはいかなかった。
あの恐ろしい男にこの状況を見られてはまずいからだ。
しかしその願いはもろくも崩れ去った。
皆の足元で地響きが起こる。それはどんどん大きくなり、
あわせてドッグデモスたちの顔色が真っ青になっていく。
「なにがまずいんだぁ?」
彼らの背後にたった巨漢。
真っ黒な影を落としながら手下を見下ろし、躊躇なく蹴り飛ばした。
その様子を光は呆気に取られながら見ていた。
でかい。他の悪魔より頭一つ分ほどだが、倍以上の巨大さを思わせる
分厚く無骨な体躯。暴力的な気配をこれでもかと撒き散らしている。
「なんだあいつ……」
「ブルート……!」
マリスが、今にも飛び掛りそうになる心情を抑えながら言った。
「使えねぇ手下どもだ。おい、てめぇだな? 今まで俺の手下を
散々可愛がってくれたのは」
指を指された光は威圧に飲み込まれぬよう踏ん張る。
「そっちこそ、関係のない人々を襲いやがって。覚悟しろ!」
「上等だ! 八つ裂きにしてやる!」
鉄球を振り回しながら接近するブルート。
まるで巨大な壁が迫るようである。
ボーグアイがライフルで先制。
銃弾が突き刺さるも、それは全て鎧部分に阻まれ肉体には届かない。
しかし幾分か相手の動きが鈍る。その隙に光が正面から走り出し、
ローダスが側面から攻撃を仕掛ける。
両手足、胸の一部分を鎧で覆っているため、狙うはむき出しの部分。
ブルートもそこを狙われるのは読んでいる。
先んじて正面の光めがけて前蹴り、巨木のような足が
予想以上の速さで襲い掛かる。
光は体制を崩しながら回避、掠るだけでも
かなりの威力を発揮しそうであった。
次に足を上げた状態のブルートに肉薄するローダス。
斧を構え、肌の顕となった腿へと蹴りつけようと飛び上がる。
しかし眼前に現れる巨大な鉄球。空気の壁をぶち破るような重量感。
ローダスは斧を真正面に据え、鉄球の一撃を防ぐも
背中から地面に叩きつけられる。
全身に駆ける衝撃にローダスは身動きが取れない。
ブルートは牙をむき出して笑みを浮かべ、
虫を踏み潰すかのように、ローダスへと足を振り上げる。
「させるか!」
光が跳躍、大上段に構えた剣には燃え上がる紫炎。
左腕を上げて防御するブルート。刃と手甲がぶつかり合う。
力は相手が上。徐々に押される光は押し込むように力を入れる。
「こ……のおぉりゃ!」
「なにぃっ!?」
押し込む力に合わせて激しく燃え盛る刀身。
ビシッ、と響く異音。ブルートの手甲は互いの力に押し挟まれ、
勢いひび割れていく。そして離れる間もなく粉砕される装甲。
「よくも……死ねぇ!」
体勢を崩すブルートはそれでも右腕を引き絞り、
一気に鉄球を真横へと薙ぎ払う。
空宙で身動きの取れない光は剣を構えて防御。
だが、直撃する寸前、両者の間を風が通り抜け鉄球に衝突する二発の弾丸。
風の魔法で放たれた弾丸は、鉄球の軌道を逸らす。
そして、さらにバランスを崩し仰向けに倒れるブルート。
だが巨大な岩石が転がるように、巨体に見合わぬ素早さで
後方へと移動。そのまま両者は離れて対峙した。
この一連の様子をマリスは驚嘆しながら見ていた。
悪魔の力を得た人間がここまで戦えるとは思ってもいなかった。
他の悪魔と共に戦い、憎き仇に善戦している。
あの小さな悪魔がザベルだからこそ、あそこまで戦えるのか。
それとも光自身、特別なセンスが備わっているのか。
ともあれ、今こそ主君の仇撃ちが果たされる様子に。
マリスは期待から知らぬうちに魔道具を握り閉めていた。
「ちっ……思ったより強いぞ……」
ブルートは歯噛みしながら呟いた。
三対一とはいえ、ここまで押され自分の鎧まで破壊されるとは。
なにより、あの憎たらしいオーゼの言ったとおりになるのが
たまらなく苛立つ。ならばどうするか。必死に周囲を見渡し、
あっさりと見つかった形勢逆転の駒。
ブルートが姿勢を低くして身構える様子に
光たちも次の一手を狙うように構える。
しかし三人とも集中していてブルートが
狙っているものに全く気づいていなかった。巨体が駆け出した。
暴走するトラックのように、身を低くして一直線に。
光たちはすぐさま左右に回避。
しかし通り過ぎる相手を目で追い初めて気づいた。
「なっ!」
「はははぁぁ! どうだこれで手も足も出まい!」
光たちの背後にいたマリスは一歩も動けずにその豪腕に握り締められた。
マリスもまた戦いに集中していて、捕らわれるなど考えてもいなかった。
「くっ……離せ!」
「ぐふふ……そうはいかねぇ大切な人質だからな!」
「あぐっ……!」
もがくマリスに対し、握り締める手に力を入れる。
ミシリ、と締め付けられる音が聞こえてきそうであった。
「くそっ――!」
「おっと、手を出せばこいつがどうなるか……分かるだろ?」
「くっ……」
光が助けようとするも見せ付けるようにさらに締め付ける。
ブルートの膂力ならばマリスを握りつぶすのもたやすいこと。
ここはおとなしくするしかなかった……が、
「そうそう、それでいい――うぉ!?」
突然の銃声。銃弾はブルートが間一髪避ける。
光の振り返る先、ライフルを構えたボーグアイは外したことに舌打ちした。
「何をするんだ君は!?」
光より先にローダスが食って掛かる。
今しがた、下手に動けばどうなるか思い知らされたところ。
ボーグアイは煩わしそうに肩をすくめながら答えた。
「生憎だが、俺はあいつのことなんざどうでもいいんでな。
つか誰だか知らんしな。それに手心加えて殺れる相手でもねぇだろ」
「君は彼女の命がどうなってもいいって言うのかい!?」
「……ああそうなるな」
あまりの言葉にボーグアイの肩をローダスが掴みかかる。
と同時にボーグアイも掴む腕を引き剥がそうとする。
「お、おいっよせっ!」
一触即発の空気に慌てて仲裁に入る光。
それが相手に大きな隙を与えてしまった。
「仲間割れかぁ? ならチャンスだな!」
敵前で揉め事を起こしている様子をにやけながらブルートは
鉄球で攻撃する。当然避ける暇もなくまともに受けてしまう光たち。
立ち上がることすら間々ならない。
「ザベル様! 貴様……!」
「恨むなら捕まった自分を恨めっ。
はははは! よしお前らやっちまえ!」
怒りの溜飲が下がったのか、後を手下に任せて自分は見ているだけ。
三体の悪魔はやられたお返しとばかりに攻めかかる。
光たちは応戦するも、防ぐだけで手一杯である。
「どうすれば……」
マリスが悔しさに無意識に唇をかむ。
血が滲むもの、自分のふがいなさに比べれば痛みのうちにも入らない。
せめて腕だけでも動かせれば……依然きつく閉められたままの状態。
手にした魔道具――いま状況を打開するならこれを光に渡すしかない。
再び拘束を解こうともがこうとした矢先、視界の端に人影がうつる。
「鈴さんたち……なぜ……?」
家で待っているはずの三人が忍び足でこちらに近づいてきていた。
彼らの性格を考えれば、おとなしくしているはずはなかった。
マリスがブルートを見上げると、戦いの悦に入っていて全く気づいていない。
「いいよ、ポーちゃん」
「わっ、分かりました……!」
鈴の合図で、ポリンが力を込めて火球を放つ。
場所は手甲の破壊された左腕。
火球は狙い通り、マリスを握る手に当たる。
ブルートが熱さに声を上げる。
彼にしてみればチクリとほんのわずかな痛みだが、
マリスが脱出するには十分であった。
緩んだ拳から滑る様に落下し着地する。
「こっちだ!」
駿二がマリスの手を取り引っ張る。
先では優香が催促するように手をふっていた。
「ふざけやがって!」
下からすくい上げるように鉄球を放るブルート。地を削りながら迫る凶器。
「守屋避けて!」
優香の声が届くが、駿二は後ろを確認する暇もない。
勘を頼りに、マリスとともに横に飛ぶ。
先ほどまでいた場所を鉄球が通り過ぎる。風圧が二人を吹き飛ばす。
「人間如きが!」
振り上げられた鉄球が駿二に狙い定められる。
いまだ立ち上がられぬ駿二に容赦なく振り下ろされる。
「あぶない!」
駿二がその叫びを耳にしたとき彼の体は
マリスによって突き飛ばされていた。
その直後に起こる悲劇に皆凍りついた。
彼女の背中を鉄球の一撃が突き刺さる。
盛大に地面に叩きつけられたマリスはバウンドしながら地面を転がる。
駆け寄る駿二はマリスを抱き上げる。掌にぬるりとした感触が伝わる。
「お、おいっ、無事か!?」
「これを……光さんに……」
「あ、ああ! それより早く――」
マリスは震える腕に上げて、手にした魔道具を駿二に渡そうとする。
駿二はそれを受け取りながら、彼女を肩を貸し立ち上がるが、
背後にはブルートが怒りの形相で立っていた。
「守屋君っ、こっちに!」
「守屋、早く!」
鈴と優香が叫ぶ。だが、足取りは遅い。
ブルートが二人を叩き潰そうと鉄球を振り上げ、
「このおぉ!」
間一髪手下の悪魔を振り切った光が、ブルートに切り攻撃を防いだ。
「駿二早く行け!」
光が回避しながら叫ぶ。ブルートは最早駿二に一切目もくれない。
光の相手をしているおかげで、鈴たちの元へと到着した。
「マリスさん……」
「酷い傷……!」
駿二がマリスを下ろすと鈴も優香も絶句する。
マリスの背中は目を背けたくなるような怪我であった。
急いで治療をしなければ命は助からないだろう。
しかし、マリスは駿二の腕を握り締め、
「これを、光さんに……」
「……光!」
マリスから手渡された魔道具を駿二は力を込めて投げる。
繰り出されたブルートの腕を掻い潜り受け取る光。
「これは……」
「こし……に、まいて……」
「光! 腰に巻け!」
一つ頷いて、光は腰に魔道具を装着する。
あつらえたように巻かれたそれは、
中央の宝玉から全身を包む光が放たれる。
目の眩むような白光。誰しも光から逃れるように目を隠す。
光は収束され、両手足、胸部を包み込む。眩い輝きの銀の手甲に足甲。
鎧は銀に紅の意匠がちりばめられる。
剣の柄が伸びる。刀身は長く、幅広くなる。
まるで槍の様であった。
「すげぇ……!」
光は手を何度か握り締め感触を確かめる。
全身を駆け巡る力の奔流を感じていた。
(うむ、これならいけるぞ!)
ザベルも勝利を確信したかのように叫ぶ。
「くそぉ! 人のもん勝手に使いやがってぇ! やっちまえ!」
ブルートが肌を刺すような力に焦りだす。
「いくぞっ!」
光は頭上で剣を旋回させて構え駆ける。
ブルート以上に恐怖している三体はがむしゃらに接近してくる。
その三体を走り抜け様に一閃。瞬く間に霧散していく。
そのままブルートへと走る。
轟音振りまく鉄球が一直線に投擲され、光はそれを横飛びで回避。
体が軽い。羽が生えたようだ。
光の突撃。鉄球が引き戻される前に体を横回転させ、
剣を一文字に振りぬく遠心力のついた斬撃。
ブルートの鎧を真一文字にやすやすと切り裂く。
ブルートはたまらず後ずさりし、ようやく引き戻した
鉄球を投げずに直に叩きつける。
光は体を横に開いて回避。アスファルトが粉砕。
ブルートの怒り心頭のままの連打を光は懸命に回避。
そして破片が舞う中、光を捕らえる攻撃。柄を両手で持ち鉄球を受け止める。
大轟音と、足元がひび割れ沈む体。ブルートのしてやったりの表情。
しかし光が両腕に力を込めると徐々に押し戻されていく。
ブルートが負けじと押し込めるが動かない。
顔を紅潮させ、一度鉄球を戻す。
そこを光が隙を突いて柄頭で顎を殴りつける。
仰け反るブルート。目を血走らせて体を戻す勢いで鉄球を振り下ろす。
一気に切っ先を突き出し、鉄球の中心にぶつかると勢いが止まる。
ひび割れていく鉄球。そのまま破砕され、驚愕の表情のブルート。
光は縦回転させて下段から斬撃。
胸部を縦に切り裂き、横旋回からの逆袈裟斬り。
柄を両手に持ちさらに袈裟斬り。間髪いれずにとどめの突き。
「ぐあぁ!」
全身から血を流し体を抑えて呻くブルート。
光は刀身に紫炎を生み出す。
今までのものと違う炎が渦を描きながら刃を包む。
ブルートの突進。もはや策も何も無い破れかぶれ。
光は剣を引き、すれ違い様に突き出した。
一瞬の交差。背後のブルートが一気に燃え上がった。
悲鳴を上げる暇もなく霧散して巨体からソールが浮かび上がっていった。
「おい……しっかりしろ!」
駿二がマリスの体をゆする。最早彼女の命はわずかであった。
自分達がこなければ、もしかしたらこのような事態が避けれてのでは
ないか。そう思うと、たまらなく後悔の念が湧き上がる。
光も駿二の表情を見ていると怒ることも出来ない。
いや、そもそも自分がしっかりしていれば……光も唇をかみ締めて苦悩する。
だが、マリスは穏やかな表情で、
「良いんです。これで、ようやく主の下へいけます……。
皆さんと、別れるのは、辛いですが……。
最後にあなた方のような人間に会えて嬉しかったです」
晴れ渡るような清清しい笑みをこぼすマリス。
たった一日の出会い。これからもっと仲良くなれるはずだった。
光たちはその笑みに答えようとするも、皆悲しみに涙を浮かべる。
「ザベル様……どうか魔界の平和を……」
そう呟いて、マリスの体は霞のように消えていった。
「ねえ、これ何……?」
マリスのソールを見つめながら優香が呟いた。
「悪魔は死んじゃうと、この光が残るんだって」
「……魂みたいなもの?」
鈴の答えに優香が言った。光はその言葉になんとなく、納得がいった。
人の言う魂が、悪魔の世界ではソールと呼ばれているのかもしれない。
目の前では、ザベルがマリスのソールを取り込んでいるところ。
魂を受け継ぐ、なんて言葉があるが、まさに悪魔……いや、ザベルは
その相手の思いすべてを受け継いだといえよう。
「また……マリスみたいな悪魔がこっちにくるのかな?」
「さあな。だが、人間を襲う奴らは来るかもしれない。
彼女との約束を守るためにも、力を取り戻さねばならぬ。
お前もこの街の人間が、マリスのように命を奪われぬためにも精進せねばならぬな」
「ああ……そうだな」
光が空を見上げた。はるか上空では、
依然として巨大な魔法陣が妖しげな光を煌々と放ち続けていた。
,お久しぶりです。アジモです
言い訳は地獄で言っていきます。
大分かかってしまいましたが、
ようやく九話です。
まだまだ先は長いですが、
がんばって書いていきたいと思います。
フォームチェンジの道具ですが、
もともとベルトそのものにしようと
決めておりました。
やはり仮面ライダーですから
変身ベルトはつきものです。
マリスというキャラも、
早々に退場させるつもりでした。
早すぎる気もしますが……
まあ、後々後悔しないようにしたいです。
……長々と間を空けた割には
書くことがないのですが……
まずは早く次の話を投稿できるように
しましょう。
それではこの辺で……,#000000,./bg_c.gif,nz158.net220216036.thn.ne.jp,0
2009年08月02日(日) 18時53分31秒,20090802185331,20090805185331,SB.VMaRvVmjNY,仮面ライダーイズモ〜第二章「カナリアは籠の外」〜,豪翔,,,
あなたは外と籠、どちらの世界が好きですか?
小鳥は何も答えません。
23時30分 公園前道路
「はあはあ……」
熱い吐息を漏らし、ただでさえ色白な顔をさらに青白くさせながら、莉亜は右足を引きずり歩いていた。
「ううっ……っく!」
焼け付くような痛みに顔が苦痛に歪む。
莉亜の右の太ももの裂傷からピンク色の肉が覗き、そこからが血が滲んでいる。
明らかに重傷とわかる怪我を負っているが、それを気にとめるものは誰もいない。
普段、子供連れやカップルで賑わう公園前の道路も、さすがに深夜という時間帯では人影が全くない。
それが莉亜にとって幸か不幸かと問えば、幸と答えるだろう。
なぜなら、莉亜は小心者だから。
自分の痛みよりも、誰かに見られるのではないかという恐怖にも似た不安が勝っていた。
莉亜は思う。なぜこのような傷を負ったのだろう? と。
あの“鳥の姿”になったとき、自分は強烈な食衝動に駆られ、自我を手放してしまっていた。
少し前まではある程度は自分の意志で行動できていたのだが、今では記憶すら残っていない。
――鳥頭になっちゃったってことかなあ。
という、どこかずれた思考に苦笑する。
明らかに自分の理性が失われ、野生の本能のままに動いている。
そのことに莉亜は恐怖を覚えるが、それ以上に喜びにも似たものを感じていた。
籠の世界で他人の思うとおりに生きるより、自由気ままに空を飛ぶことが莉亜の『望み』であるからだ。
――でも……。
ただ一つ残念に思うことがある。
――もう、誰にも会えないかもしれないね。
そう思い、眉を落としたときだった。
「あっ」
くう、と長く大きい空腹音が響いた。
「お腹空いたなあ……」
呟き、照れ隠しに微笑みながら腹を押さえる。
結局、自分は“餌”をとることが出来なかったのだろうか?
もしかしたら、この足の怪我は狩りに失敗してできたものなのかもしれない。
だが、それも仕方ないと思う。
籠の中とは違い、外の世界は“弱肉強食”。
皆が皆、生を勝ち取るために必死なのだから。
だから、仕方ないとは理解している。だが――
――ダメ、もう我慢できない。
ぐうぐうと胃が蠕動し、唾が溢れ、脳が真っ白になり、傷が悲鳴をあげる。
「――食べなきゃ、この傷……治らない。食べなきゃ。食べなきゃ……」
そう、ぼそぼそと狂ったように呟いたときだった。
「――あれぇ?」
どこかおどけたような男の声が聞こえ、振り返るとどこかおぼつかない足取りの男たちがそこにいた。
男たちの外見は20代前半といったところで、男たちの顔色と人間離れした嗅覚が捉えたアルコール臭から察するに、かなりの酒が入っているようだった。
男たちはにやついた笑みを浮かべ、下卑た言葉を交わしあうと、莉亜の方へと歩み寄ってきた。
その表情から、男たちがろくでもないことを考えていると莉亜は判断する。
周りには当然、助けを求められるような人物はおらず、普段の莉亜であるならば、
すぐに逃げるか、混乱し、涙を流して蛇に睨まれた蛙のように立ち尽くしてしまうところだが、今の莉亜は冷静そのものだった。
「お嬢ちゃん、なにその格好? もしかしてあれ? ヤられちゃったりしたわけ?
げひゃひゃ!」
そう、男の一人が不愉快きわまりない口調で莉亜に問う。
男が莉亜の姿を見て、その発想に至るのは、酔っていずとも勘違いをするのは無理もなかった。
街灯の明かりに照らされた莉亜の格好は、ブラジャーを付けたのみの上半身に、白い生足をぼろぼろのパジャマから覗かせた半裸なのだから。
「可哀想によう。なんなら俺らが慰めてやろうか? なあ、おまえら」
「そうだな。俺らはやさしいからな。ぎゃはは」
男たちが汚らしく笑う。
莉亜は無言で動かない。だが、恐怖しているわけではない。
「ふふっ」
嗤った。莉亜は嗤った。口を半月にし、舌を柔らかな唇に這わせて嗤った。
「……優しく、シテくれますか?」
そう言った莉亜の、あどけない顔立ちと相まってアンバランスな妖艶さと淫靡さに、男たちが生唾を飲み込んで興奮をあらわにする。
「おいおい。可愛い面してとんだ痴女だぜ、こいつ。俺らのこと誘ってやがる」
「ああ、やっちまおうぜ! 俺もう我慢できねえよ!」
「うぜえな。童貞丸出しなんだよ、おめぇは」
「んだとコラ? どうせ、デリのババアで済ませたんだろうが!」
「ああ!? 潰すぞてめえ」
「やめとけよ。仲良くやろうぜ。みんな仲良くヤるのがお嬢ちゃんの『望み』らしいからよ」
滑稽な会話をする男たちに潤んだ瞳を向け、頬を紅潮させ莉亜は嗤う。
そんな莉亜へと男たちが、まるで屍肉に群がるカラスのように、莉亜という極上の肉を啄みに近づいていく。
莉亜は動かない。
男たちはそれぞれが欲望のまま、自分たちの都合が良いように動かぬ莉亜を解釈する。
男たちは気付かない。目の前の少女は、狩られる側ではなく、狩る側だということに。
自分たちが食虫植物に誘われている、哀れな羽虫であることに。
莉亜は嗤い、思う。
――この人たちは私にひどい事をしようとしている。だからアレは、食べても良い人間だ。
男の一人が無遠慮に伸ばした手が、莉亜の肩を掴もうとしたその瞬間だった。
「なにやってんだ? アンタら」
その男の手を、莉亜の斜め後ろから伸びた手が掴んだ。
「ああ?」
「――?」
男が酒の赤とは違う怒気の顔となり、莉亜が後ろを振り向くと、そこには金髪で背の高い男が立っていた
「なんだ兄ちゃん、兄ちゃんもまざりてえの――ぶべ」
言うなり、顔面に裏拳が突き刺さり、男の身体が転がる。
「酒くせえ息かけんな。そこらの犬猫じゃあるまいし、アンタら童貞と違ってこんなところじゃあヤんねえよ」
金髪の男は、格好こそ飾り気のないシャツにジーンズといった地味なものだが、
その気怠げに細められた三白眼の双眸が、どこか物騒な世界に身を置く人間を思わせていた。
事態を飲み込めず、残りの男たちはぽかんとしていたが、やがてハッとなり、それぞれがけんか腰の視線を金髪の男に送った。
「――あっ」
ちらり、と莉亜を見た金髪の男と視線が重なり、そんな声が漏れた。
男の表情は変わらず剣呑なものであったが、なぜか莉亜は安心のようなものを覚えた。
「アンタら、そんなに盛ってんなら、そこの公園でエロ本でも拾って自家発電でもしたらどうだ?」
くつくつと笑いながら金髪の男がゆっくりと莉亜の前に出る。
街灯の明かりによって、男たちに金髪の男が全貌を見せ、
「あ、アンタは――まさか!?」
一人の男が酒で赤くした顔を真っ青にして驚愕し、
「伝説の暴走族“BLUESEED”十三代目ヘッド、スサノヒデ――ぎゃぴ」
「過去の恥部をでかい声で暴露すんな」
げんこつを喰らって悶絶した。
「な、あ、アンタが――」
するともう一人がゆっくりと後退り、
「藤高の“爆走悪鬼”と呼ばれたスサノ――いだだだっ」
「……わざとか? わざとなんだな?」
耳を引っ張られて悲鳴を上げ、
「ゼッツーで700キロ出したっていう伝説の男、ス――」
「出るか!!」
「ひいぃ!」
最後の一人が一括に身をすくませた。
「ったく、ヤンキーなんてやるもんじゃねえなあ……」
「――ぷっ」
複雑な表情でポリポリと頬をかく、暴走族“BLUESEED”十三代目ヘッドにして藤高の“爆走悪鬼”、
ゼッツーで700キロ出した伝説の男の様子に莉亜は吹き出し、慌てて口を押さえた。
それを見た伝説の男は、はあ、と重いため息を吐くと、3人を三白眼で見据え、
「さっさと、そこに伸びてる奴連れて帰れ」
「っりあしたあっ! ヒデオさん!!」
伝説の男――ヒデオに対し3人は腰を90度に曲げ、伸びた男を担いで走り去っていった。
「あの?」
「?」
「ひゃ!」
消え入るような声に振り向いたヒデオと視線が交わり、驚いた莉亜が尻餅をつく。
慌てて立とうとすると、目の前に手を伸ばされ、
「あー。大丈夫か?」
視線の先にしゃがんだヒデオのぶっきらぼうだが、どこか柔らかな表情の顔があった。
「あ、ありがとう……ございます」
尻すぼみになりながら手を取る。
莉亜は頬に熱がたまっていくのを感じた。
どくん、どくんと心臓の鼓動が早鐘を打ち、ヒデオから目が離せない。
今までに体験したことのない不思議な感覚だった。
莉亜はそれを不快とは思わず、むしろ快いと思った。だが――
――ダメ!
引き起こされ、莉亜はすっ、ヒデオから目をそらした。
莉亜はこう思ってしまったのだ。
――この男を喰いたい。と。
莉亜の怪物の本能が、そう莉亜に命じてきたのだ。
これが意味するのはつまり――
――ダメ! この人は絶対ダメ! はやく帰らなきゃ。
そう、心の中で首を横に振り、立ち去ろうと思った時だった。
「えっ――」
ふわっとした暖かさが莉亜の身体を包み込んだ。
その正体はヒデオが着ていた半袖のオーバーシャツだ。
「今夜はちょっと暑いけど、さすがにその格好はマズいだろ?」
「?…………きゃあ!」
その言葉に、自分が今どんな格好をしているかを思い出し、慌てて胸元を腕で隠す。
「ま、なんだ。とりあえず落ち着こうか」
そう言って、ヒデオが公園を親指で指す。
その意図に莉亜は気づき、迷い。
「すみません」
そして選んだ。
「ああ、気にすんな。きみの意見無視して勝手にやった、迷惑行為だからな」
「そんな。迷惑だなんて」
莉亜がそれを否定すると、ヒデオは「そうか」とだけ言うと、こちらに背を向けて片膝立ちになり、
「――?」
「おぶうよ。足、怪我してるんだろ?」
莉亜に背に乗るよう促した。
「え? ええっ!? あ、それはさすがに……」
――恥ずかしいですよ。
と、莉亜は顔を朱に染めてヒデオの申し出を断ろうとする。
「……そうだな。すまん。いきなり馴れ馴れしくすぎたかな」
「え? あ! そんなことないです。あの、私、重くて迷惑かけちゃうし」
「……どう見ても重そうには見えないんだが。むしろもう少し肉を付けた方がいいと思うが?」
「えっと。それはちょっと……」
女の子だから、と苦笑しつつ、莉亜は思う。
……私も、女の子だから。少しくらいは夢見てもいいよね?
「あの、それじゃあお願いしても良いですか?」
「ああ。気にするな」
気持ちを確かめるように、うん、と頷くと、ゆっくりと首に手を回して、自分をヒデオの広い背中に預ける。
家族以外の異性との密着という、初めての経験に心臓の鼓動が高鳴り、体温がどんどん上昇していく。
自分の身体、特に胸のふくらみが押し当てられ潰れているということと、
自分や照子とは全然違うヒデオの匂いを意識し、目がぐるぐると回り出す。
それでも、莉亜の表情はほころんでいた。
誰かに優しくされているということが、他人が自分という存在を気にかけてくれるということがとても嬉しかった。
莉亜は気づき始めていた。
自分がヒデオに惹かれていることに。それが恋慕というものだということに。
そしてこの時間がいつまでも続けばいいと思ったし、この温もりを自分だけのものにしたいとも思った。
――それが叶わぬ夢だとしても。
◆
「何か飲みたいものあるか?」
公園に入り、近くのベンチに莉亜をおろすとヒデオがそう聞いてきた。
「そんな、そこまでお気遣いしていただかなくても」
「気にすんな。俺はきみにそう言ったぞ」
「すみません。それじゃあ炭酸以外の甘い物があれば」
「それでいい。子供が大人に気を使うもんじゃない」
そう言って手を振ったヒデオを見送り、
「私はヒデオさんにとって“子供”でしかないんですね」
ため息を吐いてうなだれた。
そんな自分の思いが無茶苦茶で、ヒデオの言うとおり自分は子供だと莉亜は自嘲する。
――そう、自分は子供だ。
一人では何も出来ず。周りに媚びを売り、自分の弱さを利用する、籠の中のカナリアだ。
だから私は“翼”を『望み』、それを手に入れたというのに何も変わらない。
何も変わらないまま、自分が自分でなくなっていく。
それが悔しくて、たまらない。
「ミルクティーで良かったかな?」
その声に顔を上げると、ヒデオがこちらに缶を差し出していた。
「いただきます」
「ん」
受け取ると、ヒデオが隣に腰掛け、ぷしゅ、という炭酸の抜ける音が響いた。
「…………」
「…………」
……間が持たない。
なにか会話をしなければと思うが、積極性に欠けるため上手く会話が出来ない。
ちらり、と横目でヒデオを伺う。
――格好いい人だなあ。
改めて見るヒデオの顔は無愛想ながらも整った顔をしていた。
決して人を見かけで判断したりするタイプではないが、莉亜といえども年頃の女の子だ。
今まで意識していなかっただけで、男性の顔の好みはある。
ヒデオの容姿は莉亜の眼鏡に十二分にかなうものだった。ただ――
――ちょっと、怖いかな。
ヒデオの気怠そうな三白眼の双眸が、自身をやさぐれたチンピラのように見せ、
生来の一匹狼な気質も相まって、“カタギではない人物”といった印象を与えていた。
――でも、いい人だよね。
と、莉亜はヒデオという人物を評価する。
「……何か用か?」
「えっ!? いえ、なんでも!」
ヒデオの顔を凝視していたことに気づき、顔を真っ赤にして下を向く。
その態度はあまりにも失礼だったのでは、嫌われなかっただろうかと思い、上目遣いで見ると、特に変わりなく、ごくごくと喉を鳴らしてジュースを飲んでいた。
ヒデオのそれはいつも通りなのだが、莉亜はこう思った。
――私に興味がないのかな。
それはあまりにも身勝手な思いだが、ヒデオに自分を意識してもらいたかった。
出来ることならば女性として、だ。
「…………」
「…………」
しばし二人の間に沈黙が続く。
まるでこの空間だけ時間が遅くなっているのでは、と莉亜が思った時だった。
「なあ」
「? なんでしょう?」
ヒデオが話しかけ、莉亜の表情に喜色浮かんだ。が――、
「話したいことがあるなら話したらどうだ」
「――――えっ?」
ヒデオの声は先ほどまでとは打って変わり、どこか冷たさがあった。
突然の変化に戸惑う莉亜に追い打ちをかけるようにヒデオは言う。
「俺は鈍感なほうだが、きみが何か言いたげだというのはわかっている。
きっかけは作った。話をするしないはきみの自由だ。ただ、これだけは言っておこう――」
目が合い、すっと目を逸らしてしまう。
聞きたくない、と耳をふさいでしまいたくなる。
だが、ヒデオはためらわず莉亜に言う。
「いつも、他人がきみのためになんでもしてくれると思うな」
「――――!?」
その言葉はナイフとなって莉亜の心臓を切り付けた。
莉亜が最も怖れるもの。それは――拒絶。
――いや。
心が悲鳴をあげる。
――いや。
ヒデオがさしのべてくれた手が、つながれたその手が放されていく。
――どうして?
その疑問に答える者は誰もいない。
救いを求めるような視線を送る。
「…………」
だが、ヒデオは何もしない。してくれない。
姉のように鳥籠となって周りから守ってくれはしない。
照子のように手を引いて外の世界に連れ出そうとはしてくれない。
ただ、黙って莉亜を見ているだけ。
――見ているだけ。
「あっ」
そこで莉亜は気付いた。
ヒデオは莉亜を見てくれている。
自分を拒絶した人間は、父は、母は、自分を見てくれなかった。
だが、ヒデオは違う。
ヒデオはその気怠げな瞳を決して莉亜から逸らさない。
「――うあっ」
涙が溢れた。
それは恐怖からではなかった。
自分の弱さへの悔しさと、それ以上の――
「…………ますか」
ヒデオは手をさしのべない。だから――
「私とお話ししてくれますか?」
その手を懸命に伸ばした。
その背の翼をはためかせた。鳥籠の世界から外の世界へ。ヒデオがいる世界へ。
――飛ぶために。
「ああ。俺でよければ」
その手をヒデオは取った。
力強い笑みを見せ、痛みを感じるほどにその手をぎゅっと握りしめた。
「――ありがとう、ございます」
「俺は何もしていない。選んだのはきみ自身だ」
その痛みが、莉亜にとってはかけがえのない幸せだった。
「一つ、聞きたいことがあるんです」
「何だ?」
「人に飼われた小鳥にとって、危険な外の世界で得る自由と安寧な籠の世界の不自由のどちらが幸せなのでしょうか?」
それは、莉亜が何度も思い、誰にも打ち明けたことのない問いだった。
その問いにヒデオは一瞬、戸惑いのような驚きのような表情を浮かべ、
「俺も昔、小鳥を籠から出してやろうとした事がある」
「ヒデオさんも鳥を飼っていたんですか?」
「いや、飼ってはいない。ただ、その小鳥のいる籠が窮屈そうだったんで、出してやろうと思ったんだ」
そう言ったヒデオの目は、どこか遠いところを見ているようだった。
「綺麗で、それでいて儚くて、愛らしくて。俺はその小鳥が大好きだった。
だからある日、俺はその大好きな小鳥が狭い鳥籠に押し込められているのが可哀想に思えて鳥籠から出してやった。
そうしたら小鳥は嬉しそうにぴいぴい鳴いて、勢いよく翼をはためかせて空へと飛び立ったよ。
だから俺は勝手にこう思った。小鳥は今、きっと幸せだってな。けど――」
そこで言葉を区切り、ふう、とため息を吐いた。
その表情はどこか悲しげで、その原因となったのが自分の問いのせいだと莉亜は自責する。
「あ、あの――」
「いや、きみが気にする事じゃない。それに俺はもう、色々とふっきれているから心配ない」
口ごもる莉亜にてのひらをみせて笑い、話を続ける。
「籠の中で育った小鳥は厳しい外の世界では耐えられなかったんだろうな。
その小鳥はひどくボロボロになって恨みの籠もった視線を俺に向けてきたよ。
その視線に耐えきれず、俺はみっともなく泣いて謝りながらこう思ったよ。
こんなことなら、むりやり籠の外に出すんじゃなかった、ってな」
「…………」
ベンチに深く身体を預け、ヒデオが天を仰ぐ。
「俺は大事な事を忘れていたんだ」
「大事な事、ですか?」
「ああ、俺は小鳥と話をしなかった」
「話……?」
莉亜は頭に疑問符を浮かべた。
当然、小鳥が言葉を発するはずがない。
かといってヒデオがメルヘンな性格だとも思えない。
なら、と思い、莉亜は推測する、
もしかしたら、ヒデオのそれはたとえ話なのではないかと。
だとすれば、その小鳥というのは――
「もし、その小鳥が外の世界を望むと言えば、俺は喜んで手を引いたし、
現実に打ちのめされて途中で挫折しても、小鳥が選んだことだと割り切れただろう。
もし、小鳥が籠の世界を望むと言えば、俺は小鳥の弱さをせめず、名残惜しげにその場を去っただろう。
だけど、俺は小鳥の声を聞かず、身勝手なわがままを通して、小鳥はボロボロに傷ついてしまったんだ」
悪い膿を出すように紡がれた言葉とヒデオの表情はとても悲痛で、
何度も目を背け、耳を塞ぎたいと思った。
けれども莉亜は真っ直ぐにヒデオの話を聞いていた。
「だから、俺はこう思う。小鳥の幸せを決めるのは他人じゃない。小鳥自身が決めることだと。
そしてこうも思う。他人に選ばれるのではなく、自分で選んだ選択肢でもって人生を歩んで貰いたいと。
外と籠どちらの世界を生きたいかを選び、もし選んだ選択肢に後悔したのならば」
真っ直ぐにヒデオの顔を見つめ、
「一人で傷つく前に、それを誰かに話して欲しいと、俺はそう思う」
口を震わせ、
「……はい!」
笑った。曇りのない笑顔で。
◆
「本当に送らなくていいのか?」
「はい。大丈夫です」
「だが――」
「大丈夫です。そう言いましたよ、私は」
「……確かにそう言った」
胸を張ってヒデオの口調を真似て返し、「冗談です」と言って、意地悪そうに舌を出した莉亜にヒデオが苦笑する。
「それにこれは、私が決めたことですから」
「なら、きみにとやかく言う権利はないな」
そう言ってヒデオが背を向ける
「あの――!」
「?」
気付けば莉亜はその背を呼び止めていた。
そして――
「莉亜、織沢莉亜っ!」
少しだけ、ほんの少しだけ強気に一歩を踏み出してみた。
「それが私の名前です」
「――そうか。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はヒデオ。須佐野英雄(すさのひでお)だ。またどこかで会えると良いな、織沢莉亜」
「――はい。またいつかお会いできると良いですね、須佐野英雄さん」
互いが互いの本名を呼び、その名を記憶に刻む。
その他愛もない行為が、莉亜にとっては婚約指輪の交換のように思えた。
◆
「行っちゃったか」
ヒデオが去り、誰もいなくなった公園のベンチに、莉亜は一人腰掛けていた。
「あれ?」
ぽたぽたと温かい液体が膝の上に落ちていく。
視界が水の膜に覆われて、胸が軋む。
「なんで、泣いてるんだろう。私……」
嬉しいのに、悲しい。
そんな真逆の感情を同時に覚えたのは初めてのことだった。
その原因となったのは、間違いなくヒデオだろう。
だが、決してヒデオを責めたりはしない。むしろ感謝している。
「あ、そっか。これが『失恋』なんだ」
口にした瞬間、堰を切ったように涙があふれ出してきた。
それをぐっとこらえ、涙を拭い、ヒデオが去った方を見る。
本当は、送って欲しかった。慰めて欲しかった。甘えたかった。ヒデオのものになりたかった。ヒデオをものにしたかった。
だがしかし、莉亜の恋情よりも、妖鳥の本能が強まってきている。
ヒデオという至高の餌を喰らいたいと、そう身体が命じている。
自分の恋が叶わないのならば、ヒデオが誰かのものになるまえにその存在を消してしまえばいいと思った。
ヒデオを喰らい、自身の血肉とすることで、身も心も“一つになる”。それは最高の幸せなのではと、身を震わせた。
だが、今の莉亜は――多少なりとも“強さ”を得た莉亜はその誘惑を良しとしない。
「…………」
立ち上がり、ズボンを捲って足を見る。
傷口には膜が張られ、ぐちゅぐちゅと肉が蠢きながら塞がれていっていた。
痛みはもうほとんど無い。
恐怖はある。だがもう慣れた。
怪物としての自分に。
「――っく!」
羽織っていたオーバーシャツを脱ぎ、露出した肩胛骨から、みちみちと音を立て大きな翼が生えてくる。
強烈な痛みに意識が飛びそうになるのが、中指を噛んで堪える。
「はあ、はあ……」
呼吸を荒げる莉亜に、それ以上の変化はない。
醜い怪物の姿はそこにはない。
あるのは背に翼を持った少女の姿だけだ。
もしこの翼が見目麗しい白ならば、その姿は天使に見えただろう。
しかし、その鳶色の翼は猛禽のものだ。だが、それは莉亜が『望んだ』ものだ。
莉亜が求めるものは、想像の楽園たる天上の世界ではない。
現実にある、自由だが明日が知れぬ広大な空だ。
もし、ヒデオともっと早く出会えたなら、この姿を望む必要がなかったのだろうか。
そう思いを馳せても、時は決して戻らない。
それに、愛するヒデオはそんな弱気な自分を好きになってくれない。
たとえ叶わぬ夢だとしても、せめて愛しい人の理想でいたい。
これは莉亜が選んだ道なのだ。自分の弱さの一部は愛する人に吐露し、受け止めてもらった。
だから今の自分は決して後ろを振り返らない。
自分の『望み』のままに、歪んだ愛をこの身に刻み、懸命に生を勝ち取っていく。
「ん、れろ、んちゅ、はぁ……」
血の垂れた中指を咥えて舌を這わせ、恍惚の味に酔いしれる。
――喰らえ。
そう本能が命じ、莉亜は答える。
「――うん。食べるよ。でも、今日はあなたに私をあげない。
私の意志で人を食べる。ルールも特に決めない。目に付いた奴から、お腹いっぱいになるまでみぃんな食べちゃう」
莉亜が食人を行うのには明確なルールがあった。
それは莉亜が決めた“悪い人間”だけ食べるというものだ。
だが、それは莉亜が求める野生にはほど遠い。
そのルールに縛られていれば、弱肉強食の明日を勝ち抜けない。
それに、莉亜の食衝動はもう理性の鎖では抑えきれない。
「それにね。あなたに私をあげたら、きっと“これ”を落とすでしょう?
それは絶対にダメ。これは私の大事なものだから。大事な温もりだから」
強く握りしめた手に持つものは、ヒデオが莉亜に羽織らせたオーバーシャツ。
それを愛おしげに顔に近づけキスをする。
「――ん、はぁ。えへへへへ。ヒデオさんの、匂いがするよぉ。
私はあなたなんかにあげない。私をあげていいのはヒデオさんだけ。うふふふ。
愛する愛するヒデオさんだけなの。あははっ! ヒデオさん愛してる。愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してるあいしてる愛してるアイシテル愛してるアイシテル愛してるぅ……」
嗤う。頬を紅潮させて、ハルピュイアが嗤う。
「さようなら、ヒデオさん。もう二度と逢いたくない最愛の人」
呟き、大きく翼を広げて夜天へとハルピュイアが飛び立った。
,駅前でリアルゴスロリを見て、なんとも言えぬもやもやを感じました。豪翔です。
なんといいますか。顔はそこそこなのですが、服に着られているというか、安っぽいコスプレA○っぽいっていうか。
やっぱゴスロリは二次限定ですねw
あと、ド○ールで女子高生にアイスカフェオレぶちまけられたのですが、
「あの、拭いてあげます」イベントが起こらなかったのですがバグでしょうか?
パッチ修正はまだでしょうか?(切実)
〜お返事〜
>イシスさん
・フィギュア…私も買いたいけど金が…。最後に買ったフィギュアなんだったかなぁ?
・兄貴…私も買おうか迷ったんですけど、やめました。かなり売れたみたいですねアレw
・男の娘…準にゃん。瑞穂おねえさま。るい智の智ちゃんだったら、俺、俺えぇぇぇっ!
男でもいいっ! 避妊するからぁっ!
と、暴走しかけたところで、今回はこの辺で。
マイナーだけど、“マージ”の糾くんでも…。ハアハア…。
,#000000,./bg_b.gif,p3104-ipbf602aobadori.miyagi.ocn.ne.jp,0
2009年08月29日(土) 21時29分09秒,20090727225616,20090901212909,WvDhJNHhoe1Wg,仮面ライダー朱凰&クロノスたん何じゃこりゃ外伝(ぉ ララナギはりけ〜んTwei 〜 〜 第2話 第一セット終了&インターバル(後編) ,八兎ジャック,,,――その頃。アリーナ(試合場)では、いままさに第一セットに決着がつこうとしていた――
「……えぃっっ!!」 湊が、渾身の力を込めたスパイクを放つ!! だが、
「甘いです――パワーカウンター!!」――どむンッッ!! 「イブキ」のゼッケンをつけた少女の
ブロックにあっさりとそれを跳ね返され、自軍コートにボールを落とす結果となってしまう。
「しまっ……っ!?」「あ――――」「そんな……!?」 口々に悔恨の声を上げる遼那たち。
だが……もはやどうしようもない。“ピィィィィリィィィィィィーーーーーーーー!! ”と
高らかに、第一セット終了の笛の音が鳴り響いた――――!
結局、第1セットは朱凰チームの負けだった。点数は、25−9。
……こちらがほぼ素人集団であることを考えれば検討したといえるだろう。
実際、その粘り強い試合内容から観客の評価自体はそう悪くないようではあり、わりとあちらこちらから
「よくやったー!」「第2セットはもうちょっとがんばんなさいよー!」という応援も聞こえてくる。
――とはいえ、単純にバレーの試合として見ればボロ負けであることは否定しようもない。
「――ふむ。まぁ、こんなものか」
ある程度のデータは集まったようで、満足げに頷く悠子……
だが、朱凰チームで満足そうにしているのは彼(女)ひとりである。
「……っくしょぅ……もう少しいい勝負が出来ると思ってたんだが……」と悔しげにつぶやく絢子。
その彼(女)を慰めるように「うん……、次セットは、がんばろうね?」と声をかける遼那。
「そうは言っても……相手、攻撃も防御も連携も強いですよ。あの隙につけ込むのは難しいんじゃ……」
と表情を硬くする慎子に、「だいぢょーぶ! だったら相手の防御を超えるイキオイで
攻撃するだけだから!」とそんな彼(女)を鼓舞する湊……ちなみにそうすることへの具体策はない。(ぉ
そして――何に対してだか(少なくとも、この時点の絢子たちは)知らないが、
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」と明らかにやり場のない焦りを抑えている様子の赤川。
どちらにしろ、第1セットの決着はついたのだ。数分のインターバルを挟んで
第2セットが開始される――かと、思いきや。一つのハプニングが起こる。
――――バタンッッ!! 床面(コート)を叩きつけるような音。そして、
「――――栞ちゃんっっ!!?」
「ど、どうしたのよいきなり、トライアルBの妹――!!」
「…………だ、から。妹とか、じゃなくて、名前で呼べって、いってるでしょ…………!(ぜぇはぁ 」
「そんなことより!(※って、それで済ませんなw) へとへとじゃありませんか、広瀬さん――!?」
「広瀬さん」「栞ちゃん」――そう呼ばれている、パワーだけなら相手チームでも随一だった娘が
いきなり倒れたのだ。
「!? お、おい、あれって…………」
「落ちつけ、絢子。おそらく単なる疲労だろう――」
自らのことのように驚く絢子に対し、悠子の反応は――むしろ当然、と言えばそうだが――落ち着いたものだ。
だが単なる疲労であろうと、いきなり倒れこむほどの大騒ぎである。相手チームの「乾」のゼッケンを
つけた娘は審判の元へと事情の説明に行き、残りのメンバーはその倒れた娘を支えるようにしながら
いったん控え室へと帰っていく……程なくして、「第2セットの開始まで、しばらく時間を空ける」
旨の放送がアリーナ内へと流れた。
――かくして、インターバルを少し長めに挟むこととなり、朱凰チームも控え室へと帰っていく。
「……まぁ、こう言っちゃ相手に悪いけど、体を休める時間ができたのは私たちにはラッキー、ね。
反撃するにしても長丁場になりそうだから、体力は温存しとかないと」
「とりあえずこれからプリーフィング(作戦会議)だ。
伊達に1セット潰してデータ集めしたんじゃないことを見せてやらないとな」
「んじゃ疾風怒濤の反撃開始ーっ!♪
…………って、あ、あれ、赤川さん? どしたのー? 暗いよ??」
表情を硬くした赤川に、そのご機嫌を伺うかのように顔を覗き込みながら声をかける湊。だが、
「なんでも、ない――――ごめん、ちょっとトイレ。第2セット開始までには戻るから」
赤川はそうとだけ答えると、湊たちの返事も待たず、そそくさと先にアリーナ(試合場)を後にした。
「ぇ? お、おい、ちょっと? ……赤川!?」
「どしたんだろ、赤川さん……なんだか試合中からこっち、様子がおかしいんだけど……」
「……まぁ、赤川さんにはいろいろ思うこともあるんでしょ。私たちシロウト集団連れて
オリンピック出場チーム(緑ヶ丘)と対戦しなきゃならない状況で、
たぶん正規の選手じゃない人たちに第1セットは負けちゃったわけだし、」
「…………それだけなら、いいがな。」
――そんな、赤川の様子に違和感はぬぐえなかったが。
とりあえずこの場はそれで話を終え、自分たちだけで控え室に向かう朱凰チームの面々だった――――
★
――観客席。
そんな朱凰チームを難しい表情で見下ろす、羅刹の姿があった――さすがと言うべきか、
ああも見事に女装させられた絢子たちの正体を、彼はあっさり見抜いている。
「………………ふむ。この場は負け、だな」
無論、バレーのルールを羅刹はよくは知らない。だが試合展開を見て大体のところ――3回以内の
打ち返しで相手コートにボールを落とせば点が取れる。そうでなければ点を取られる――は把握できた。
そして、ことその方面において、相手方の力量が明らかに遼那たちを上回っていることも。
「だが、勝負を諦めてはいない――当然か。
この程度の不利で諦めるようならば、そもそも最終決戦(あのとき)の勝利自体がありえない」
羅喉神との戦いの過程を思い出しつつ、羅刹はつぶやく――口元をかすかに、
だが確かに嬉しそうに結び曲げていることに、果たして本人気がついているのかどうか。
「――ここで俺が座して見ているだけ、というわけにはいかんな。
控え室……更衣室の、あの出口からだと、右側(R)か。いくぞ、淳。」
そう言って、隣で同じく試合を見物している淳の方へ視線を向ける…………の、だが。
「……………………。(呆 」
「…………? どうした、淳。あいつらのいる控え室に向かう、と言っているんだが?」
「…………。な? なんで――なんで慎弥、あんな格好してバレーの試合なんかに……?
しかも他の2人まで…………??(大汗 」
「!? おい……どうした、淳。
顔に縦線が入って額に大汗をかいて目が点になって、口から霊魂っぽいものが出ているぞ!」
「は、はは、は……はぅ。(きりきりばたーん 」
「!! 淳、しっかりしろ、おい――――!!」
……まぁ、すぐに復活して羅刹と一緒に控え室に向かうことになる淳さんだが、
とりあえずなんだかまぁ、いきなり弟たちが女装――それもすっげー似合ってる(笑)――かましてた
ショックはそれなりに大きいようだった……合掌。(ちーん/☆)
★
『黒野ー。体育用具倉庫異常なしー』
「あー、はいはい次はどうしてもらおうかなー」
羽美から、調べ物にまわってもらった体育用具倉庫には異常がなかったと聞き※、
次に行く場所を指示し、スミレは地下駐車場へとやってきていた。
※YPさんへ。選択肢によっては、こんな風に軽くスルーされることもありえるのでご了承ください。(ぉ
(……で、いきなり地下駐車場まで来た理由はなんだ、スミレ?
今までの話の中で、『地下駐車場が怪しい』なんて情報はなかったはずだが――)
「(ちっちっち)甘いねー、オリヴィエ。地下駐車場っつったら厄介ごとのメッカだよ?
人を食べる紫色の巨大な蛇のバケモノとか、携帯電話(フォンブレイバー)が爆発物で人間襲ってたとか
そーゆー都市伝説には事欠かないんだから」
(そんな理由かっっ!!?)
ツッコむオリヴィエ。緊張感の感じられない状況、かと思いきや――その時。ざ、と人の気配――――!
「!? ……とと。」
慌てて車の陰に隠れるスミレ――ここでスミレがそうしてしまったことには、実はたいした理由はない。
単に「捜査とかしてるんだから、極力姿をみせない方がいいよネ☆」程度の反射的な判断である
……だが少なくとも、今回はその判断が正解だったようだ。
その場に姿をあらわした人物の一人に、見覚えがあったからである。
「え――――?
あ、あれって確か、蓮見っちのチームの……、えーと、湯川さん? 赤坂さん? 金剛寺さん??」
(赤川さん、ですスミレさん……というか、そういうお約束なボケはどうかと思うんですが)
……その、赤川さんが、誰かと一緒に駐車場のまんなかあたりに歩み来る。
この時点ではスミレは知らないことだが、広瀬 栞が倒れたことによりちょっと長めに
試合の空き時間をとることになるや否や、赤川は朱凰チームと別れ姿を消したのである。
なので朱凰チームもその行き先を把握していないわけだが――
だがその赤川が、なにゆえいきなり脈略なく地下駐車場なんざに来るのか。しかも隣にいるのは――
見るからにチンピラ、といった風情の若い男。いまどき染めた金髪にアロハにグラサン、と来れば
知能と羞恥心の両方ともごく低レベルな人間だと判断してもさほど失礼でも間違いでもあるまいが、
そのチンピラに――
「……ぁンにチンタラやってやがんだ、手前ぇッ!」 ――――バシィン!!!
「――――ぁぅっ!?」
――そんなに強い勢いではなさそうだが、蹴飛ばされ倒れこむ赤川!!
……さすがのスミレも、そしてシャルたちもまさかいきなりそんな展開になるとは思っておらず、
「――――――――っっ!!」
車の陰に隠れたまま思わず叫び声まで上げそうになるのを、どうにかこうにか押さえ込んだのだった――
―― ララナギはりけ〜んTwei 続く……さ、シャレにならなくなってまいりました。 ――
【 BGM:「Super Driver」 song by Aya Hirano 】,……ようやく、体調がご返信できる程度にまで戻ったんで、今さらながらにオレ、さんじょ。
>YPさん(ライダーに車なんて……そう思っていた時期がボクにもありました)
>>最終ラウンドにペナルティ
>(`・ω・)b<オイラのおかげで回避だぜひゃほーい!
そうですねー(ちっっ) ……イエナンデモナイデスヨ?
冗談はさておき、今回はまだしも次回の選択肢にも
トラップ仕込んでるんでよろしく!(←悪びれてない)
>なんかいぬみちゃんがまとめ役っぽいのは、一番先輩(放送順的な意味で)だからなのかしら?
んにゃ。単なる八兎さんの贔屓補正。(ぉ
……冗談はさておき、まとめ役ってのはメンバー中一番視点が
公正な人がやるもんだからねー。妥当な立ち位置では
あると思いますマジで。
>目覚ましドッキリ的な元ネタ?
……うぅっ、こういうネタがすんなり通らないのが、
(決してバカにするわけじゃないが)ぜねれうそんぎゃっぷかのう。。。
>鴎さん
どもー。はじめましてですー。
>>「更ー衣室こーいしつ♪ 行為をするからこーいしつ♪♪ と――」
>琥珀「何をするつもりなんだ、何を」
シャル「もちろんそれは、ナニを」
オリヴィエ「/// 黙れお前はっっ!? ///」
【 子供は寝る時間です 】
>大切な彼女を守るためだったのに、どうしてもこういう展開に・・・。
>それでも彼女を守るために一生懸命な彼の男気には頭が下がります。
今さら言うまでもないですが、絢斗くん、
本当に いぢりがいのある いい男だよねー。
今回の話、女装自体はまぁネタとして許してもらうとして、
あんまし男気のあるところが掻いて上げられないのが申し訳ないです。
>選択肢ですが・・・「よい子」でお願いいたします。
りょーかい。
まぁ(自分で選択肢提示しといてなんだけど)
その方が遼那ちゃんたちやスミレちゃんの
テンションも上がりますやね。
>青嵐昇華さん(トランスフォーマーは、スーパーリンクが好き)
>遼那は本気で怒ると無言無表情になるのでこれはデレ隠し・・・もといテレ隠しですね、わかります(ぉ
なるほど、諒解。今回のコレはそういうことで。
……じゃ、次回マジ激怒する時はそのパターンで(ぉぃ
>まぁ淳姉も慎ちゃんが素敵に無敵に究極化粧させられている姿を見れば倒れたくもなりますね
……はーはーはー、淳さんごめん。
次回予酷(じかいよこく)読んでもらえばわかるとおり、次の回にさらにもう一押しあるw
>ぴあのさん
>僕は「基本的には善人だけど、ちょっぴり魔がさした(普通の子)」で。
……あー、ごめん。
書いとかないこっちも悪かったけど、コレ先着なんです(苦笑)
自戒もこの手の選択入る予定なんで、そのときにでもまた。
では、このへんで。,#E10000,./bg_h.gif,35.234.210.220.megaegg.ne.jp,1
2009年07月27日(月) 22時51分23秒,20090727225123,20090730225123,RBvo1soItm6P6,仮面ライダー朱凰&クロノスたん何じゃこりゃ外伝(ぉ ララナギはりけ〜んTwei 〜 〜 第2話 第一セット終了&インターバル(前編),八兎ジャック,,,――浅草総合体育会館・事務室前――
「……まぁ、ワシの仕事なんざしょせん閑職なんだけど世間では最近の風潮でやれ天下りだの縁故就職だのと
非難が絶えないのが辛いところだけどワシとしても仕事に対する意欲はあるわけでなけなしの気概を持って
せめて誠心誠意仕事にあたりたいと思ってはいるんだけど世間というのはままならないというか
その仕事自体もほとんどないのが哀しいもので例えば今日のバレー大会なんかでも実務は全部
実行委員会かなんかがやってるしお昼の弁当の受け取りなんかも各自でやってるしで
我々のやることといったらせいぜい玄関口であからさまな不審者を見張ることなんだけれど
そんなあからさまに不審な行動をとりながら入ってくる犯罪者予備軍が簡単に見つかれば苦労はないわけで
それはもちろんいまのところは不審者が入って来ていないという証拠ではあるんだけれど
(以下十数行省略)」
……今回のバレーの試合の裏に潜む、何者かの陰謀。
それを察知した黒野 スミレは友達である生原 羽美を いやいやながら パートナーに迎え、
とりあえずはその陰謀を暴(あば)くべく捜査を開始、手始めに浅草総合体育会館入り口・事務局での
聞き込みをしようと二人してやってきたはいいのだが……
(ヤバいこれはマジヤバい……! 『守秘義務うんぬんで何も教えてもらえない』みたいなパターンは
想定してたけど、まさかこんな斜め上のパターンで来るなんて……、っ!?)
事務員・勅使河原田吾作さん(68)の愚痴に延々とつきあわされ、がっつり足止めされるスミレと羽美だった。
……一応、「お昼の弁当の受け取りなんかも各自でやってる」=つまり事務局は無関係、という情報が
得られたのが収穫といえばそうだが、それ以外のほとんどの言葉、そして時間が無駄だった。
「だいたい最近の若いモンは年長者に対する敬意はおろか最低限のマナーすら把握しておらんものが多すぎて
(以下二十数行省略・文字容量の軽量化にご協力ください。)」
「(ぼそ)……黒野。」
「(ぼそ)……なに?」
「この次、控え室調べる予定なんだよね?」
「うん。羽美ちゃんには緑ヶ丘(ララナギ)チーム側を調べてもらうつもりだけど、」
「そっちはまかされた。てなわけで、あとはまかせた。(だっしゅ! 」
「って、あ、こら――」
――あまりの長話に耐えかねて、スミレを残して一人逃げを打つ羽美。
普段のスミレなら素早く捕まえるなり一緒に逃げるなりするところだが、長話に絡めとられ
急に反応できずに見事に取り残される(……)のだった。
「……って、人を生贄(スケープゴート)にして逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!?」
「あぁまったく人が話をしている最中に叫び声を上げるってのはこれがゆとり教育の(以下三十数行省略)」
「……たっっ、たぁすけてぇぇぇぃぃっっ!!?」
……こうして、脱出するまでにかなりの時間を要したスミレちゃんだった……合掌(ちーん/☆)
で、一方まんまと逃げ出した羽美ちゃんはというと。
「更ー衣室こーいしつ♪ 行為をするからこーいしつ♪♪ と――」
……なんだか謎の歌を歌いながらララナギチーム更衣室へと駆けている。だが――どしぅんっっ!!
「……わきゃぁぁぁぁぁぁっっっ!?(ごーろごろごろ 」
「何か」にぶつかって派手に転がる羽美ちゃんだった。【 教訓:前は良く見ましょう 】
「あ痛たたぁ……」
「すまない……大丈夫か?」
倒れこんだ羽美に、ぬっ、と――酷い擬音だが、少なくとも羽美にはそんな感じに思えた――
大きな手を出すその人影。そして、
「どうしました、羅刹?」
「……あぁ。ちょっとぶつかってしまってな……」
(『らせつ』? ……変な名前。)※青嵐さんごめん。(謝 まぁ「人名としては」ということで……(汗
その後ろから出てきた、見るからに「優しいお姉さん」といった風情の女性。
少なくとも羽美の目には、その2人は奇妙なカップルに見えた。「美男美女」というには男の方に
野性味がありすぎるし、「美女と野獣」というには男の瞳は理性的すぎる――
そんなとりとめもないことを考えながら、思わず呆けた表情で羅刹を見上げる羽美。
「……どうした、ぼぅっとして? まさかとは思うが、どこか痛めてしまったか――」
「……あ、うぅん、別になんでもないしだいじょーぶだから。あんがと&ごめんねおじさーん☆」
羽美のその態度を心配したか憂いげな表情を浮かべる羅刹にぱたぱたと手を振って、
跳ねるようにぴょこんと立ち上がり、駆け去っていく羽美だった。
「………………。いま何かものすごく失礼なことを言われたような気がしたが」
「……ま、まぁまぁ羅刹……。(苦笑 」
珍しくも渋い顔を浮かべる羅刹だったが、こほん、とひとつ咳払いをして気を取り直す。
「……それで、淳。『ここに湊たちが来ている』という話だったな」
「えぇ。もちろんあの娘バレーやってないし、選手じゃなくて観客ですけどね。
どうせ近くまで来たんだし、この際みんなで一緒に試合見るのもいいかな、と思いまして」
「そうだな……行くか。観客席を適当に探し回ればいいんだな?」
「――――はい」
こうして、仲もむつまじく観客席へと向かう羅刹と淳……だがさすがの羅刹といえど、
この時点ではまだ、観客席ではなく試合場の方に見知った顔を見つけようとは思いもしなかったのである――
【 註:あたりめぇです。 】
★
その試合場――遼那に襲い来る一撃、その名もスクランダークロス※!!!!
※もう一度言っておきますが、必殺技名がまにやくさいのは元ネタがそうだからです念のため。
「…………!! きゃ――――――」
「!!? ――は、遼那ぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
ダッ!――考えるより先に、跳ねるように身体が動く。
「危なぇっ!」
「――きゃぁっ!?」
遼那にボールが直撃する寸前! 絢斗……否、女装した絢子※は遼那を抱え込むようにしながら
すんでのところで遼那をその一撃から救い出した――だむんっ! とコートに叩きつけられるボール。
それはすなわちまたも相手方に点を奪われたことを意味していたが……それも仕方ない。
あんなものの直撃を受けて、遼那が怪我をするよりマシだ。
※正式名称絶賛大募集中。……なお花の女装トリオ(ぉ の名前に限り、
「なんて酷ぇネーミングだ。」との意見及び、青嵐さんによる新たな命名は座して受けたまわります。(ぉ
「大丈夫か遼那!(むにっ ……………………。 むに?(汗 」
「/// 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ…………!! ///(ふるふる 」
……嬉しくも不吉なその音から始まる、お約束にも程があるハプニング。
絢子の右手は、遼那の胸の上に乗っかっていて――
「……(涙目でぎっとりと睨みつける遼那)……(ふるふる 」
「――――――――ッ!? わ、わ……」
――その 嬉しい 不幸な事故に絢子が弁明するより早く、
ふいに遼那が“にこり”と絢子に微笑みかける――周囲の気温が上がったような気が、なぜか、した。
「……安心して、絢子“ちゃん”。私だって状況はわかってる。
不可抗力なのは理解してるつもりだし、いまここで悲鳴あげてひっぱたくなんてしないから」
「ぇ、あ、あぁ。いやすまん、そういってもらえると――」
「――この仕打ちに対する報復はあとでするけど。」
「………………。ソウデスカソウデスネ。」
蛇に睨まれた蛙、まな板の上の鯉、屠殺場に送られる豚。
……脳内でドナドナのテーマを再生しながら、思わず天井を仰いでしまう絢子だった。
そんな2人の元に、タイム(試合一時中断)を取った朱凰チームが集まってくる。
「って、なにやってんのよ蓮見っ!? ……そりゃ確かに『無理に勝つ必要はない』とか言ったけど、
だからってボールから逃げてちゃなけなしの勝ち目までなくなるじゃない!!」
「落ちつけ赤川。あの判断は悪くない――正直、あのアタックは受け切れなかった可能性が高いからな。
下手にレシーブして手首とか傷めて、最終ラウンドにペナルティ喰らう※よりはマシだろう。」
「……矢倉先輩、それ微妙にメタな発言……(汗 」
※そうなる予定でした……ちっ。引っかからなかったか。(←ぉぃ)
遼那たちの元に来るなり、絢子に食ってかかる赤川。
それを諌(いさ)める悠麻……もとい、悠子の発言に、慎弥……じゃない、慎子が軽くツッコミを入れる。
「………………。」
赤川はまだ不満そうだったが、ここで口論していても仕方ないと考えたかしぶしぶながらも黙り込む。
それを受けて悠子はさらに続ける。
「そこを踏まえて改めて言うが――勝つ気があるなら、このセットは捨てる覚悟をするべきだ。」
「!! す、捨てるってゆーちゃん!?」
「いやだから! 負けるつもりで試合されちゃ流石に困るんだけど……!!」
「あぁ、違う違う。湊も赤川も落ちつけ。
――緑ヶ丘チームと俺たちを比べて、基礎能力的にはたいした差は見受けられない。
つまり今の点差は、そのまま彼我(ひが)のバレーへの熟練度の差だと考えられる。」
「うん、それはわかる。……それで?」
「その絶対的なハンデを埋めるには、相手の弱点を探し出してそこを突くようにしていかなければいけない。
そしてその弱点を見極めるには、一手でも多くあちらに攻撃させること、
そして一手でも多くあちらに防御させることが必要だ。そのためには――」
「……つまり、防御主体で粘ることを念頭に置くわけですね、矢倉先輩?」
「そうだな。そしてそれは、相手の疲労を誘うことにもつながる」
流石に、悠子の判断は理路整然としており説得力がある。遼那たち4人は素直に頷くが、ただ一人――
「……あっちが疲れるってことは、こっちも疲れるってことなんだけど、矢倉?」
「だけど赤川さん、このままじゃ本当に勝ち目ないもの」
「――勝とうと思う気持ちは大事だが、それだけでどうにかなるほど
甘い相手でも状況でもなさそうだしな。ここは我慢のしどころだろう」
遼那と絢子にも諌められ、「…………わかった。」と明らかに不承不承という風情でうなづく赤川だった。
★
さて。朱凰チームがインターバルをとるということは当然緑ヶ丘――通称・ララナギチーム側も
同じだけの作戦タイムが持てるということだ。剣崎 一菜たち6人はいったん集まり円陣を組む。
「…………みんな、ちょっといいかな?」
そこで、おずおずと小さく手を上げる一菜。
「どうしたのよ、一菜?」
「うん……始穂ちゃん、さっきの、見た?」
「『さっきの』って……あっちのちょっといかつい女(※絢斗くん)がスクランダークロスから
向こうの娘(※遼那ちゃん)をかばったってだけでしょ? そりゃ見たけど……それがどうかした?」
「うん、そうなんだけど。自分の身を挺(てい)して、仲間をかばったでしょ?
だからもしかしたら、実はそんなに悪い人たちじゃないんじゃないかなぁ、とか思ったんだけど……」
「……あのね一菜。そんくらいで善人悪人の判断なんてつくわけねーでしょうが……」
――かくん、と肩を落とす相川 始穂だった……お人よしなのは一菜のいいところなのは間違いないが、
それも時と場合による。というか、本来の緑ヶ丘チームに食中毒弁当を振舞った――と、少なくとも
始穂たちはそう思っている――敵チームのメンバーが、「悪い人たちじゃない」もなにもないもんだ。
だが。その一菜の言葉に、意外なところから相槌が打たれた。
「――いえ。わたくしも、今は剣崎さんの意見に同意します。」
「い、イブキちゃん!?」
「全否定までする気はないけど……まず根拠から聞いていい?」
あごに手を当て、考え込むかのような仕草をとりつつ口を開くイブキ(和泉 伊織)。
そのイブキに驚いたように問いかける天川 レオナ、そして努めて冷静にその理由を確認しようとする
乾 いぬみ。イブキは言葉を選びながら、かんで含めるように言葉を紡いでいく。
「そうですね――なんというか、うまい説明にならないかもしれませんが。
あの人たちの動きには、邪気がないんです。こちらに食中毒弁当仕込んだということは何かしら
こちら――本来の緑ヶ丘チーム――に対する悪意的な感情があってしかるべきだと思いますが、
そういう気配がないというか……ただ純粋に、勝ちを拾いにこようとしている、みたいな。」
さすがは鬼系ライダー少女というべきか。遼那たちに悪意がない――まぁ当然だが――ことを
その動きから感じ取ったようだ。そしてさらに言葉を続ける。
「京極様たちを陥れるようなちょっかいをかける理由がある相手は、あちらの『陣営』以外にはないでしょう。
だから今回の犯人はあちらのチームに縁(えにし)を持つ何者かには違いないのでしょうが
……ただ、そうだったとしてもあの娘たち自身は無関係のような気がします」
「……いやちょっと待った。『邪気』だの『気配』だの『気がする』だのって、そんなあやふやな――」
「――えぇ。もちろん、相川さんの仰るとおり現時点では関係のない証拠はありません。
けれど関係ある証拠もないわけで……わたくしたちも、少し冷静になるべきかと。」
「なるほどね――」
イブキの意見を脳内でていねいに反芻(はんすう)し、考えをまとめるいぬみ……確かに一理ある。
ただまぁ、そうだとしても――いや、そうだからこそ。
「……まぁ、実際そんなことをしたかどうかは、試合後でも問い詰められるわ。
いまはとりあえず京極さんたちのためにも、全力で勝ちを拾いにいくってことで」
「そうですね――」「当然よ。」「うん……わかってる」「異議、ございません」
いぬみのまとめに、それぞれ頷くレオナ・始穂・一菜・イブキの4人…………って、あれ?
「――? 栞ちゃん?」
そう、バレーの選手は6人であり、その最後の一人である広瀬 栞が返事をしない。
「……広瀬さん? どうかしたんですか?」
「! ……あ、う、うん。いや別に――なんでもないから。」
レオナの問いかけに、ようやく気づいたかのようにすはぁ、と肩で大きく息をして答える栞。
ほんの数年前まで病弱だった彼女は、――これは一菜たちも詳しくは知らないことだが――
実姉にしてアンデッド研究の第一人者・広瀬 香里によりアンデッド細胞を移植されることで
見事に病気から回復し、かつ常人離れしたパワーまで手に入れたという経緯があった。
それゆえか瞬間的な運動能力は一菜たちに勝るとも劣らないものの――やはり基礎的な体力が違うというか、
持久力では大きく劣る。その影響が、徐々に出始めていた――――!
★
――そのしばらく後。朱凰チーム側の……つまり本来は選抜チーム側の控え室(R)。
「……おぅはよ〜〜ごぉざいま〜〜〜〜すぅ」
(……そのネタは、もうわからん人の方が多いぞスミレ。)
どっから持ってきたのか知らないがおもちゃのマイクを手に、部屋にこっそりと入って行くのは
言うまでもない、事務局の勅使河原さんの魔の手(……)から逃れたスミレちゃんである。。
……結局、あの長話からの収穫といえば「あからさまに不審なヤツは入ってきた様子がない」という
事実の確認だけだった。
「……あーもー、無駄な時間を過ごしちゃったねー。気を取り直してさくさく推理ってみよーか。」
(推理るのはいいと思うのですけど……なんでまた、ここにもどってきたのですか〜?)
「『現場百遍(げんばひゃっぺん)』『犯人は現場に戻る』って言うじゃん?
もしかすると、毒弁当使うのに失敗した犯人がトゥシューズに画びょう入れに戻ってくるかもしんないし、」
(……トゥシューズとかどこに存在するんだ……)
それは別のバレェです。……とまぁ、そんなベタなネタは置いといて。
室内では、症状も落ち着いたらしく本来の選抜チームのメンバー、そのほとんどがすやすやと
寝息をたてており、またわずかに起きている娘たちも脱力し体を横たえている。
(いまならシ放題ですが……さすがにそういう場合じゃないですね。)
(/// “シ放題”って、何をだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!? ///)
(もちろんナニをですが――って、オリヴィエさん、
ワタクシにそんなことを口にさせようだなんて、なんてハシタない人でしょう貴女は。)
(/// 黙れこのドエロ死神――――――――ッッッ!!! ///)
「あーはいはい2人ともそういうお約束のネタは置いといてねーそれどころじゃないから。」
脳内の言い合いに投げやりにツッコミを入れて――このあたりのスルー加減は、いいかげん
慣れたものである(ぉ ――スミレはつかつかと、まずはおもむろにゴミ箱のほうへ向かう。
そしてゴミ屑の中から拾い上げたのは――お弁当の、包み紙。「ファイナル弁当」と銘のうたれた
それを持って、今度は意識のあるメンバーの一人に問う。
「……ねーねぃ、ちょっと悪いんだけど。 このお弁当、誰がどこで受け取ったわけ?」
「え? ……ぁ、あの……」
「宅配業者――ファイナル弁当――の人が持ってきたのか、それともチームの誰かが
受け取ったのか。チームの誰かが受け取ったのなら、そのチームの人にお弁当を渡した誰かが
いるはずでしょ? それが誰なのか教えて欲しいんだけど――――」
……弁当を誰が発注して、誰が控え室まで持ってきたのか?
それがわかれば犯人に繋がるかもしれない――スミレはそう考えて聞いてみた……のだが。
「わからない……お弁当の注文は事務局の人たちがしてくれたはずで……
たしか『佐藤弁当店』さんに頼んでたはずだけど……ここにお弁当運んできた娘は、
『ファイナル弁当』に変更になったって言ってたけど……」
「…………。それじゃ、そう言ってここにお弁当運んできたのは誰?」
「それは………………、って、あれ?」
ぐるり、と室内を見渡すその少女。赤川一人が無事で、それ以外は全員が『ファイナル弁当』に
やられた。つまり赤川を除く選抜チームの全メンバーがここにいるはずなのだが――
「あの娘……いない!? なんで――確かにこっちのユニフォーム着てたのに」
「……………………。あー、だいたいわかった。
つまり、本来はその『佐藤弁当店』さんに頼んでたけど、その謎の誰かさんが
『ファイナル弁当』の弁当とすりかえて持ってきたわけね。そしてその『謎の誰かさん』は
そのためだけにこっちのチームのユニフォーム着てた、と。」
――なにしろこっちのチームは各校の選抜チームである。全員の顔の把握はしてないのも無理はない。
そしてユニフォームといっても、その実、単なる体操服と赤ブルマである――
メンバーになりすまして紛れ込むのは簡単だっただろう。
つまり今度は、その『謎の誰かさん』を探すことになるわけだが……その手がかりは、今ここにはない。
スミレは、その『謎の誰かさん』――長身のロングヘアだったそうだ――の人相だけを
とりあえず確認して、今度は別のアプローチを試みることにした。
「……んじゃさ、その話はとりあえず置いといて。
赤川さんの荷物って、どれ? ちょっと持って来て欲しいモノがあるって頼まれたんだけど」
「……あ、あっちのピンクと紫のバッグ……」
スミレの言葉に――疑いを抱くこともなく――素直に頷いて指を指す少女。
スミレは「ん、ありがと。」とつぶやいて、おもむろにその赤川のバッグをあさりはじめた。
(……って。なにやってんだスミレ、そんなこと頼まれていないだろう……?
というあ、最初ここ(控え室R)からこっち、蓮見絢斗たちとすら会ってないはずだが。)
「ん。もちろん頼まれてないよー。けどさ――ちょっと、気になってたこともあってねー」
(気に『なってた』こと……なのですか?)
不思議そうに確認を入れてくる、オリヴィエとアリサ。
スミレは――さすがにこれ以降は、選抜チームメンバーに聞かせるには早すぎる話なので――
脳内のみで答えを返す……というか、問いを返す。
「……なんで赤川さん、『腹痛弁当の解毒薬』なんてものを都合よく持ってたと思う?
……普通の胃薬とかなら、そりゃ不慮の場合を考慮して救急箱に入れてきてると思うけど。」
(ですね。普通に考えて、使う用もないのに用意するものじゃありませんよねぇ。)
さらに、シャルの補足。それを受けて、アリサとオリヴィエもその事実が示す状況に思い当たる。
(!! は、はぅあぅあぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!? そ、それじゃスミレ、
まさかこっちのチームに毒弁当用意したのは……赤川さんってことなのですか〜〜〜〜!?)
(……待てスミレ。それはおかしくないか? 赤川はこの試合、勝つか勝てないまでもいい試合をするために
努力してきた人間だって話だったよな……そんな人間が、自分のチームに毒弁当用意する意味なんて無――
――あ!? そういうことか!!?)
(さすがのオリヴィエさんも、気づきますか)
(やかましい「さすがの」とか言うなッッ!?)
オリヴィエとシャルの言いあいを脳内で聞きながらスミレは考えをまとめつつ、
それを小声で言葉にして紡いでいく。
「……確かに赤川さんがこっちに毒弁当仕掛ける理由はないんだけどさ。
緑ヶ丘側にそれをする理由はあるんだよねぇ――自分たちが勝つか、少なくとも有利に試合を運ぶために」
つまり本来はあの『腹痛弁当の解毒薬』、こっち(選抜チーム)じゃなくて
あっち(緑ヶ丘チーム)に使う予定だったんじゃないかなって」
そう考えれば、赤川が万一のために脈略なくあんなものをもっていた理由に説明がつくのだ。
もちろん現段階では、自力で用意したのか、はたまたさらになんらかの背後関係が
あるのかまでは不明だが――さらにスミレは続ける。
「緑ヶ丘チームに毒弁当食べさせて――当然メインメンバーは交替になるだろうけど、
事件が表ざたにできない(第1話参照)以上、無理やりにでも代役メンバーを立てる。
そうなれば……赤川さんたち選抜チームの勝ち目は大幅に上昇するから――」
……もちろん、実際はそこまで思惑通りには行っていない。
緑ヶ丘チームの代役に剣崎 一菜たちが入っているせいで、結局こちら側は終始押されぎみだし――
なにより、何者かによって自分のチームにファイナル弁当が与えられてしまったのが
最大の予想外だったろうから。
――おりしもその時、スミレの携帯電話が着メロ(※お好きなアニソンをご想像ください(ぉ )を奏でる。
「はい、もしもしー……羽美ちゃん?」
そう、その電話は控え室(L)……緑ヶ丘側の控え室の捜査に行った生原 羽美からだった。
『黒野ー、なんかジッチャンの名にかけて推理できたー?』
「……いやジッチャンとか(少なくとも、現在本編に出てきてる分には)いないし。
つか、まだ情報集めてる段階だってば……(かくかくしかじか)……てなとこ。」
『……へ? 「長身のロングヘア」の娘……??』
「あれ? 心当たりあるの、羽美ちゃん??」
『あるっていうか……その人だと思うよさっき訪ねてきたの。』
「!!? ……訪ねてきたぁ!?」
――ということは、その『謎の誰かさん』はまだここ(浅草総合体育会館)にいるということか。
「そ、それでどーなったの!?」
『どーなった、って……こっちに「らいすぴ亭」のお弁当持ってきた人の人相とか、
剣崎たちと京極たちの関係とか聞いて、そのまま去っていったけど……?』
「――――。去って、どこに行くとか聞いてない……よね?」
『うん全然。』
「……………………。」
……まぁ、羽美は『謎の誰かさん』の存在自体を知らなかったのだから、それを責めるわけにも
いかないか。だが、選抜チームにちょっかいをかけた何者かがまだ活動しているという事実は、
スミレの警戒レベルをさらに引き上げた。
とはいえやはりここで『謎の誰かさん』についてはそれ以上の手がかりが出そうにないので、
スミレは話題を切り替える――ちなみにこのときも、荷物あさりの手は休めていない。
「……そんでさ羽美ちゃん。さっきアタシが確認してほしいって言ってたことはどーなったわけ?」
『あ、そっちは確認が取れた。』
スミレが羽美に頼んだこと――それはさっきスミレがこちら(控え室R)で聞いたのと同じ、
『誰が緑ヶ丘チームに、らいすぴ亭の弁当を渡したか。そもそもらいすぴ亭に頼んだのは誰か』
の確認だった。もっとも、この段階ではほぼそれも予想がついたが。
『んーとね、まず「誰か」ってのは具体的にはわかんなかった。京極たちは、
「ここ(浅草総合体育会館)の関係者の人かな?」くらいにしか思わなかったって。
その人の人相は――――』
羽美がひとつひとつ挙げていく、その「誰か」の特徴。目元がどうの、口元がどうの、と。
それはスミレの予想通り、赤川さんその人の特徴と一致して――そして、同時。
「…………。確定、だねぇ」
赤川のカバンをあさっていたスミレも、目的のものを探し当てる。それはていねいに折りたたまれた、
らいすぴ亭――再確認するが、緑ヶ丘チーム側に弁当を納入した業者。つまり普通に考えれば、
選抜チーム側の赤川がそんなものをもっている理由はどこにもない――の弁当受け取り証書。
――(朱凰チームの)身内が、緑ヶ丘チームを陥れた犯人……最低でもその関係者。
そしてそれとは明らかに別勢力の、選抜チームにちょっかいをかける『謎の誰かさん』。
一気に混迷していく状況に、「――――――。」とマジな表情で考え込むスミレだった。
…………「似合わねぇ。」とかいうなそこ。(ぉ
―― 後編に続く ―― ,正直、前後編に分けるほどのボリュームかは微妙だけど、
まぁ長い上にザッピングしまくる話なんで、せめて少しでも読みやすいように。
てなわけで、後半に続く。,#E10000,./bg_h.gif,35.234.210.220.megaegg.ne.jp,0
2009年07月26日(日) 04時18分02秒,20090726041802,20090729041802,RSNCpiO.MedjM,仮面ライダーintertwine第1章第30話「人ならざる者達」,オリジナルライダー・リレー企画,,,
作者深優
18:45 白姫邸 談話室
「ひー君、いくらなんでも」遅いよ。」
葵は、帰りの遅い弟を心配してか落ち着かない様子で部屋をぐるぐると何度も廻っていた。
「緋色だって子供じゃないんだから・・・全く、落ち着きなさい。」
久遠は、葵を見ながらため息をはきながら、葵をなだめるようにいう。
「落ち着いていられないよ!!探しにいかなきゃ!」
普段温厚な葵には珍しい反応で、なだめようとしていた久遠に、きっっと噛み付くようにほえる。
彼女のその反応は多少過保護すぎる反応かもしれないが、一度そのような状況で誘拐に合い、さらには謎の失踪事件がおきているこの町では不安が強くなるに決まっていた。
「あなたは自分の立場をお忘れですか?・・・お嬢様もおっしゃいましたが、
落ち着いてください。」
フラウは、音もなく現れてその両手にティーセットを両手に持っていた。
「そんなの関係ないよ!」
葵はその程度の言葉では心に響かないようだった。
「あなた一人が外にでてなんになるというのですか?
・・・今あなたが外に出たら格好の的とされてしまいます。」
フラウは、今にも出て行きそうな葵のウデをつかみ、その小柄な体躯では考えられないほどの力で強引に葵を座らせる。
「けど・・・。」
葵は、幾分冷静になったのかそれでも、納得いかないようだ。
「・・・自分の弟を信じなさい。
緋色は、少なくともそんじゃそこらの奴には負けないわよ。」
久遠は、フラウが用意した紅茶を飲みながら苦笑する。
「まあ、確かにお帰りの時刻が遅いのも事実。
・・・ここは本機があたりを見てまいりましょう。
お嬢様達は、こちらでお茶でも飲んでお待ちください。」
フラウは日が傾いて沈みそうなのにかかわらず、かなり大きめな黒い日傘と
小柄な体格には不釣合いな旅行鞄を手にしていた。
「えっ・・・でも・・・一人だけじゃ危ないんじゃ・・・。」
葵は外見的に自分より更に幼いフラウを心配している様子だった。
「心配しなくても大丈夫よ。
フラウは、この町を脅かす化け物なんかにも負けないわよ。」
久遠は、再度紅茶に口を付ける。
「その期待を裏切らぬ様に、行って参ります。」
フラウディアは、ちょこんと頭を下げると、すたすたと屋敷から出て行った。
19:00 裏路地 廃ビル前
普段ならしんしんっと音もしない廃墟ビルは、夜の闇を焦がすような紅の炎に包まれた。
その炎の世界にこの世の物とは思えない異形の物が二つが並んでいた。
それは六つの黄色と黒の縞模様の腕を持ち、六角形の八つの黄色い目をした化け物。
「シュシュシュゥゥゥ」
それは、冷えて固まった溶岩のように黒い体躯に、全身に駆けめぐる血管のような深紅の模様、猛禽類の様な鋭い眼光に、猛獣の様な牙を生やした凶悪奈フォルムに、口からぼたぼたと流れる体液は、コンクリートの地面を易々と穴を開けている。
「ウラァァァァァァァァッ!!!」
それはゼストの変身体は人類の発展したオルフェノクとは違似た存在である。
外見的に人工的に作り出したオルフェノクといっても差し支えはない。
ただ、彼らには使徒再生の能力などは存在しない。
彼らも、人工的に作り出された彼らも不安定な存在であり
定期的に投薬をしなければ、その拒絶反応が発生する。
変身体の姿は、その個体によって変化が生じるのがオルフェノクと同じく、
変身した物によって個体差が生じる。
「シュッッ!!!」
蜘蛛の化け物は、緋色が変身した黒い化け物に背中から映えている部分を含め四つの腕で
殴りかかる。
「グラァァァ!」
緋色は、その腕の左右の腕でつかみとり、通常の人間ではあり得ないもう二本の腕を
一本は払い飛ばし、最後の一本はその凶暴な牙で深くかじりついていた。
そしてそのまま、その腕をかみちぎる。
「シュユユユ!!!」
蜘蛛は悲鳴ともいえる声を上げた。
「グラファ!!!!!」」
緋色は、その怯んだ瞬間を見逃すはずもなくその組み合っている腕をあらぬ方向にへし折る。 ボキッっと生々し音を立てているのを気にせずに緋色は、蜘蛛の化け物に頭突きをたたき込みそのまま地面にたたきつける。
「スシュッ・・・・シュッ!?」
蜘蛛の化け物は立ち上がろうと顔をあげた瞬間、視界が黒い何かに遮られた刹那
緋色の足が蜘蛛の化け物に振り落とされる。
「シュッ!!!シュッ!!シュッ!・・・・」
その振り落とされる足は、蜘蛛の化けものが戦意を無くし気を失っても変わらない。
「グウゥゥゥゥ・・・・・・ラァァァァッ!!」
緋色は、変身の解けた蜘蛛の化け物であった服を身につけていない少女の頭を鷲掴みにすると、何の容赦も無く握りつぶし上半身と下半身を無理矢理引きちぎり壁へ叩きつけた。
「ウラァァァァァァァァッ!!!!」
緋色は、その惨状に酔いしれるように咆えた・・・・。
18:45 町郊外
「現状把握・・・・了解。」
フラウディアは、電信柱によじ登り高圧電線に素手で握る。
端から見ればただの自殺行為だが、普通では無い彼女にはそれなりに意味があった。
見た目はただの少女だが、彼女は古代文明が残した遺跡の中枢である。
現在は、ヒューマンインターフェースとしてこの身体で動いてはいるものの本来は、
人が決して感知そして入ることのできない電脳世界に住まう住人なのだ。
そして、その彼女は屋敷の帰宅をまだにする同僚友呼べる人間を捜していた。
その手始めが、この奇行だ。
「レンゲルにギャレン、デルティ・・・その他にも多数のライダーの出現。
それに伴う怪人の出現・・・騒がしい町です。
それに、アトランティカ・・。」
フラウディアは、ふむふむと頷きながら電柱から飛びおりる。
先ほどに説明したとおり、フラウディアの本体はあくまでCPUであり彼女の本来の居場所は電脳世界といっても良い。そこにかえるためにはどのようなバイパスでも良いのだ。
その世界で短期間の間に、彼女はこの町にある全ての監視カメラにアクセスし、今日一日のその映像記録を入手してきたのだ。
無論、全ての情報のプロテクトを突破する事ができるわけではないが、
少なくてもこの程度のことなら彼女にとって紅茶を入れることよりもたやすい。
そのことに対し通常の人間では、その様なことをされたことも分からず、
凄腕の人間には、気づいたとしても痕跡を一切残さないそれを追うことすらかなわない。
人類が彼女の故郷ともいえる電脳世界に踏みいるまでに至らぬ限り、
世界に還った彼女はある意味この世に敵が存在しないであろう。
「ふむ。また一部の人間にばれましたか・・・
ますます、騎士団とGの彼女達に目を・・・・つけられ・・・ますよね。」
フラウディアは、持ち物である黒い日傘と旅行鞄を片手に悪びれもなくうれしそうに言う。
彼女の存在に気づいた者達も、実際の追ってこれる訳ではない。
ただ、あまりにも綺麗にいなくなりすぎる為その様なことができる人間などフラウディアしかいないことに気づくのだ。
それもありフラウディアは多数の二つ名を持ちその一つが「電脳の女神」である。
無論、その二つ名に対してフラウディア自身は気に入っていない。
「・・・おや?」
フラウディアは現在、緋色のいる場所の最短ルートを考えていると人が倒れている事に気づく。その女性のライダースーツは鋭い刃物の様な物で切り裂かれていて血だまりができるほどの夥しい出血をしており意識も様だった。
「なるほど、これが「仮面ライダーシキ」の月宮 刹那ですか。
・・・・一ノ宮財閥に恩を売るのも良いかもしれません。」
フラウディアは今日一日の情報と一ノ宮財閥を調べた際に出てきた情報である
「一ノ宮薫子がカンケルと呼ばれる存在を追っており、その協力者」と出てきた。
カンケルについては、名前以外の情報は得られなかった。
フラウディアの時代にも名前は存在していたのだが、
フラウディア自身よく分かっていない。
月宮刹那に対しては、情報が操作された形跡があり詳しい事は分からない。
「ふむふむ。年頃の女性にしては余程の経験を積んでいる様ですね。
黒服に露出のない服にこの無数の傷・・・まるでどなたさんかに似ていますね。」
フラウディアは、手慣れた手つきで服を脱がせて的確な止血を行いつつ、
彼女の身体に刻まれた傷を見ながら我が家の執事を思い描く。
「応急処置はこの程度で十分ですね。
後は適切な医療施設に連れて行けば大丈夫でしょう。
・・・・・さて、いい加減鬱陶しいので出てきてください。」
フラウディアは、刹那を服をまた着せ治してから壁によりかかる様に寝かせる。
そして、振り返る動作もせず普段道理の抑揚のない声を上げる。
「「エサダ、エサダ」」
「「アレヲタベレバツヨクナレル。」」
そこには、鋭い牙を口元から生やした二本足でたっている猪、
茶色い羽に人の目のような模様が描かれた人間大の蛾。
そのどれもが血走った様な目でよだれを垂らしながら、フラウディアの言葉を無視して
目の前のえさの味の話を始めていた。
「当機に迎撃の用意あり。
当機及び彼女に機外を加えれば自衛行為に移らせていただきます。」
普通の人間なら悲鳴の一つも上げる所なのだが、銀色の髪を靡かせながら
ぱっちりしたスカイブルーの大きな瞳がきりっと覇気が帯びる。
「「アタマガイイ」」
「「アシカライタダク」」
化け物達はまたもフラウディアの言葉などまるで聞いておらず、
食の算段を始めている。
「オレガイチバン!!!!」
一番のりに飛びつこうとした猪が、フラウディアに向かって突進を始めた。
速度は既に人の領域は超えており車すらぶち抜きそうな勢いだ。
ましてや、人間などたやすくつぶれてしまうだろう。
「勧告は受け入れなかった為に迎撃行動に移行する。」
フラウディアは、避けようともせずに日傘を猪に向かって差した。
「ソンナモノデ・・・オゴッ!オゴッ!!!オゴッ!!!」
猪は、そのままフラウディアごと押しつぶそう気にせずつっこもうとするが、
その瞬間、かつて無いほどの衝撃が自分を襲った。
日傘の先端部分が吹っ飛んだ先には、柄の部分が暴徒鎮圧用散弾銃に偽装していた
フラウディアが引き金を引いたまま銃身の下にあるフォアエンドを引き矢継ぎ早に
三発叩き込んでいた。猪は青白い炎を上げながらもう勢いは失われていた。
その際、「ガチャッ」というけたたましい威嚇音に、ビクッと動けないでいた。
「一つ目。」
フラウディアは、勢いの失った猪に銃床部で顎を的確に振りぬいた。
「ウゴゴッ!!!!」
猪は顎から砕けるような音を立てながら宙に浮かび上がりながら灰に消えた。
「アレヲタベレバ!」
蛾の化け物は、目の前のフラウの頭上を飛び超えようと空に飛び刹那を目指す。
「もっと高く飛ぶべきでしたね。」
フラウは、見上げることなく銃口を上に向けてフォアエンド再度引き、
空になったケースを飛ばし、そのケースが地面にカランっと音を立てた瞬間
再度引き金を引いた。
「!!!!???」
蛾は何が起こったかわからず、バッと自分の左羽を見ると綺麗に下半分が吹き飛んでいた
そしてそのままよろよろと高度を落とし落ちた先、
自分の顎に身を焦がすような熱に戦慄した。
「ヤメッ!!」
蛾はガシャンっと言う音に自分の顎が上下にゆれたの感じる。
そして、懇願するように不安定な姿勢で器用に支えている少女に訴えた。
「二匹目」
フラウディアは、ためらいもなく引き金を引いた。
ガの化け物は、空ケースが地面にカランっと音を立てると同時に青い炎と共に灰に消えた。
「盗み見とは、いい趣味ですね。」
フラウディアは、散弾銃を曲がり角に向ける。
「すいません。怖くて足がくすんでいました。」
物陰から出てきたボード学園の制服を着た少年は、両手を上げて出てきた。
「つまらない演技入りません。・・・それに、これが弾が切れていることも
貴方がこれでは死なないことぐらい察しが着いているのでしょう?エンド」
フラウディアは、淡々とした口調で散弾銃の銃口をおろす。
「僕の名前は一之瀬裕輔です・・・・。「電脳の女神」・・・どうして貴女がここに?」
裕輔はフラウディアに人懐っこい笑みを浮かべながら手を下ろした。
「では、裕輔。私はフラウディア・リヴァーレ。
その質問には・・・横瀬に当たりに来ました。・・・貴方は彼女ですか?」
フラウディアはいつもの無表情の顔で銃口を刹那に向ける。
「・・・・・これはあなたが?」
裕輔は、フラウディアの動向をうかがうようにいう。
「応急処置は済ませてあります。適切な医療機関に処置していただければ大丈夫です。」
フラウディアは、銃を下げると旅行かばんを拾い上げる。
「・・・何が目的ですか?」
裕輔は、刹那を背負うといぶかしげな目でフラウディアを見る。
「・・・貴方方に貸しを作っておこうかと思いまして。」
フラウディアはそっけない態度で裕輔を見る。
「・・・わかりました。」
「それでは、ごきげんよう。」
「ええ、さようなら。」
裕輔はフラウディアからきびすを返していった。
「・・・当機も急がねば.・・・。」
フラウディアも裕輔とは逆の道を急いでいった。,,#000000,./bg_a.gif,em114-48-13-196.pool.e-mobile.ne.jp,0
2009年08月15日(土) 23時02分29秒,20090725200020,20090818230229,U1LXNk6pZg5qU,仮面ライダーイズモ キャラクター設定とチラ裏,豪翔,,,1. 主な登場人物。
・村雲光(むらくもひかり)
本作の主人公。16歳、大和高校2年生。
犬の化け物に襲われている子供を助けようとして重症を負うが、
『イズモ』なる存在によって助けられ、『仮面ライダーイズモ』として戦うことを決意する。
容姿は整っているが、中性的であり、176cmの長身とハスキー気味な声から、
男と間違えられるのが、コンプレックスとなっている。
特技は祖父から教わった剣術で、中でも『居合い』を得意としている。
好きなものは、マンガ、アニメ、特撮、ゲーム、時代劇、甘いもの。草薙さん。
匂いフェチ?
初期段階ではハナチラの赤音みたいなキャラにしようかと思っていた。
名前の元ネタは『イズモ』『ヒカ“リ”』でわかる人にはなんとなくわかると思われ。
さあ勇気を出して〜♪ この手離さないで〜♪
・イズモ
光に『イズモ』の力を授けたもの。
姿はなく、澄んだ女声のみの存在。
人間を守るために存在している。
元ネタは『破壊魔貞光』のポンコツ。
・仮面ライダーイズモ
光の変身した姿。
鳥を模した仮面のような顔をし、白い鎧を身に纏った女性的なシルエットをしている。
高速戦闘に特化し、武器は棒状のもの変化させた日本刀のようなもの。
サラマンダー(オロチ)よりはやーい!
・草薙龍人(くさなぎりゅうと)
筋肉バカの27歳、独身。童貞。ロリコン。百合好きな、197cmの巨漢。
とある出来事を境に、『オロチ』の力を手に入れ、
『仮面ライダーオロチ』として生きることを決意する。
特技は、格闘技で、幼少より祖父に、中国拳法をベースにした『草薙流』を、
叩き込まれている。炎を操ったりはしない。
『正義の味方』に憧れを抱いており、アニメ、特撮などの台詞をよく引用している。
現在、BLルート一直線。あんだ〜ざだ〜くねす。
最初は名前つながりで『エックス』の草薙さんみたいなキャラにしようとしたが、パクリ過ぎはいけないのでやめた。
マッチョドラゴン〜♪ 燃え上がれ〜♪ マッチョドラゴン〜♪ 風を呼べ〜♪
・オロチ
龍人に『オロチ』の力を授けたもの。
姿はなく、男声のみの存在。
自然を守るために存在し、自然破壊を行う人間を滅ぼそうとする。
女ボイスのツンデレにすれば良かったと後悔。
・仮面ライダーオロチ
筋肉質の男性的なシルエットに、新緑色の装甲を纏った、は虫類然とした姿。
顔、両肩、両腕、胸、両膝に、龍を模した装飾が施されている。
武器は持たず、己の五体のみで戦う。「武器は持たない、拳法だ!」
・ファントム
漆黒のタキシードを身に纏い、顔を仮面で覆った謎の男。『亡霊』。
“プシュケー”曰く、“変態仮面野郎”。
首をはねられても死なない怪人。
過去に何かがあったらしいが、詳細は不明。
インフェルノのトップスナイパー。アニメ絶賛放送中!
剣崎さん(リンかけの方の)の最強ブロー。
どうでもいいですけど、ファントムクラッシュってゲーム、名作ですよね。
最近、邪気眼&厨二病併発中。
・プシュケー
本名は天原夢芽(あまはらゆめ)。15歳。
とある『望み』を叶えるために、“ラドクリア”によって、“最悪な力”を与えられた。
見た目は普通の少女だが、感情が高ぶるか、能力を行使しようとすると、
背中に虹色に光る蝶の羽が、頭には同色の触覚が生える。
格闘技好きで、しばしばファントムに技を放っている。
“ファイナルファンタジー”の略し方は“FF”よりファイファン派。
体型のせいで、年齢より幼く見られるのがコンプレックス。
実はエロい耳年増。
「プシュケーもプネウマも消え失せるがいい!」って銀さm…じゃなくてリーゼロッテさまが言ってた。
関係ないけど、『プシュケの涙』っていうラノベは結構好きです。
・ラドクリア
金髪碧眼のグラマラスな、女吸血鬼。
誰かの『望み』を叶えるためと、自身の快楽を得るために画策している。
本人曰く、吸血鬼として有名な『ドラクリア』を、少し変えて『ラドクリア』。
本名は不明。
我慢すれば、太陽の下でも行動できるらしい。
ミルクティーに砂糖は十杯入れる。
外見イメージは『そんな奴ァいねえ!!』の相田母のロリじゃない方。と言って伝わるだろうか?
・ミノス
サングラスをかけ、ダークスーツを身に纏った。二メートル近い身長の大男。
“対等に戦える敵が欲しい”という『望み』を叶えて貰うためラドクリアと契約し、彼女を陰から守護している。
その正体は、牛の頭部を持った半獣の怪物。
○主人公は2重人格だ →主人公じゃありませんが、それっぽいです
○実は家は旧家だ→地下室があるくらいには立派です。
○しかも殺人衝動がある →己の敵になるものとの死闘を望んでいます。
○ヒロインが最強レベルだ→ヒロインではありませんが、ラドクリアは最強(笑)レベルの吸血鬼です。
×妹がいる。呼び方は兄さんである可能性が高い →いません。
×メイドがいる場合もある →いません。
○出合って即効コンビを組むことになる →即行コンビを組みました。
×主人公が正義漢だ →いいえ。
○トラブルがおきても「ほっておけない」と言い、首を突っ込む。 →それがラドクリアの、自分の為ならば、突っ込みます。
○そして自己犠牲もいとわない。 →はい。
○人外のものがいる。 →います。
△やたら裏設定が詳しい →複線はそれなりには…。
×主人公の武器はナイフだ →拳です。
○一撃必殺系の攻撃がある →変身後の一撃はほぼ即死レベルかと。
○登場人物がやたら自分に酔っている →かなりイってます。
○魔術が出てくる →ラドクリア辺りが使えるかと。
○超能力も出てくる →ラド(ry
×言ってみれば伝奇モノだ。しかも新伝糸奇だ→違うと思われ
よってミノスは月○の影響を受けています。
2.その他の登場人物。
・月村詠美(つきむらえみ)
光の同級生であり、親友。
『臆病者』。
過去の事件により、“呪い”をかけられていた。
とある事件をきっかけに、川名との仲は回復した模様。
川名とは恋人関係。
・川名満宏(かわなみつひろ)
おなじく同級生。詠美に屈折した愛情を抱いていた。
現在は、別人のような好青年になっている。
詠美とは恋人関係。
・天野照子
シャギーの入った黒髪の理知的な印象を受ける少女。
本人曰く、成績優秀で超絶美少女な完璧超人。昔はDQNだったらしい
超人強度は7500万パワーくらい。
普通にエロい。
元ネタは『目覚まし時計』。
・織沢莉亜(おりさわ りあ)
照子の親友で、儚げな雰囲気を漂わせた純粋な少女。
引っ込み思案で人見知りのため、友達は照子しかいない。
姉の佳奈に決して埋まらぬ劣等感を抱いている。
その正体は、上半身が人間で下半身がかぎ爪を持った鳥の、大きな鳶色の翼を持った怪物。
名前の元ネタは、クローバーハアーーッ!!
・織沢佳奈(おりさわ かな)
莉亜の姉。
容姿は莉亜と瓜二つだが、印象は活発で人当たりの良い莉亜とは正反対のもの。
とある事情から莉亜に負い目を感じている。
莉亜の正体を知っているようだが……。
名前の元ネタは~kissからはじまる物語~
・美佳(みか)
茶色がかったウェーブ髪の少女。
とある誤解から、莉亜を逆恨みしている。
・宮下樹里(みやした じゅり)
短髪で長身な少女。
美佳の取り巻きその1。
・久実(くみ)
後ろで二つに結った髪型の少女。
美佳の取り巻きその2。
・アウグストゥス・ノクタニア
裏社会を支配する吸血鬼集団『穏健派』の長。
ラドクリアをも圧倒する、最強(笑)のアリスマチックあふれる吸血鬼。
・じいや
ノクタニアの執事。
糸使い……かもしれない。
ハーフエルフで銃剣付き回転式拳銃を持ってたりはしない。
・須佐野英雄(すさのひでお)
元、伝説の暴走族“BLUESEED”十三代目ヘッド(笑)
藤高の“爆走悪鬼”(笑)と呼ばれていた。
ゼッツー(KAWASAKI−750RS)で700キロ出した伝説の男(笑)
※例を挙げると、クルーザー(Xライダーのマシン)と同じスピード。
という大変痛々しい異名&逸話を持った元ヤンキー。
とある事件以来更生したのだが、持って生まれた悪人面と物腰が、“そっちの筋の方”という印象を与えている。
,設定とチラ裏です。ちょこちょこ更新します。
,#000000,./bg_b.gif,p3104-ipbf602aobadori.miyagi.ocn.ne.jp,1
2009年07月23日(木) 16時39分25秒,20090723163925,20090726163925,RT2yAOc.mZ6oo,仮面ライダーバルキリーたん 第18話「Pure intention」,鴎,,,「Pure intention」
7月17日
PM23:10
深夜の公園の屋外ステージ。
ウォーサイズレジェンドルガは苦戦に動揺を隠しきれなかった。
しかしそれは己の慢心ゆえに敵を侮ったことが誤算であることを認めきれないことが原因である。
キングを抜いているとはいえ、彼らも百戦錬磨の戦士。
チェックメイト・フォーの称号は伊達ではなかった。
それを思い知らされているのだ。
Rワイバーン「オラアアアアアアアアアアッ!!!」
Bワイバーン「はああああああああああああっ!!」
ルークフォームが超重量級のハンマーを軽々と振り回して、当たったら一撃で肉体を粉砕しかねない勢いで攻めてくる。しかし、それをビショップフォームの素早い剣術に阻まれて思うように動けない。さらに戦略的撤退を図ろうとしても、後方からのクイーンフォームの無数の銃弾が縦横無尽の方向から襲いかかってくる。
息の合った連係攻撃だ。
ウォーサイズ「オノレ・・・・・!!」
Rワイバーン「おいおい、息上がってるんじゃねえのか?そんなんじゃ、ルークたちは倒せねえぜ!!」
Bワイバーン「生憎キングをお守りし、ファンガイア一族の繁栄を統制するという大役を任されている以上、貴方のような三下に負けるわけにはいきません」
Qワイバーン「覚悟してよね」
ウォーサイズレジェンドルガが鎌を構えて、空中に舞い上がると体を回転させながら巨大な一撃を放ってきた。
ウォーサイズレジェンドルガ「これでも・・・クラエ!!」
巨大な緑色の刃が3人に向って振り下ろされる。
当たったらもはや致命傷は免れない。
Rワイバーン「このままじゃ逃げられるな。ビショップ、クイーン、しのげるかっ!?」
Bワイバーン「お任せを」
Qワイバーン「ルークこそしくらないでよネ―♪」
Rワイバーン「おうよ!!」
ルークフォームが走り出すと同時に、ビショップフォームが剣を構え、クイーンフォームが弓矢を構えると二人の体の後ろにそれぞれビショップとクイーンの紋章が浮かび上がり、ビショップの周りには黒い風が渦を巻きだしてやがて辺りのものを何もかもなぎ払うかのように吹き荒れる竜巻と化し、クイーンが右手を開くと、紫色の巨大な炎が一気に吹き上がり、やがて形を変えて巨大な炎の球を作り出す。
ウォーサイズレジェンドルガ「ナニ!?」
Bワイバーン「・・・チェックメイト・フォー、風の力を司りし白虎(びゃっこ)のビショップ」
Qワイバーン「チェックメイト・フォー、炎の力を司りし朱雀(すざく)のクイーン」
そして同時にルークフォームが大地を蹴り飛ばしてハンマーを構えたまま空中高く飛び上がった。そして満月をシルエットにハンマーを上げたまま敵の頭上に舞い上がる。
Rワイバーン「そして、チェックメイト・フォー、大地の力を司りし玄武(げんぶ)のルーク」
「「「その力、受けてみろ!!!」」」
二人が同時に竜巻と炎を発すると巨大な猛火の渦が刃を飲み込み、空中ではじけとび、爆発する。
その衝撃にウォーサイズレジェンドルガが体勢を崩した。
ウォーサイズレジェンドルガ「ナニッ・・・・」
そしてその直後。
上からハンマーを振り上げながら落下するルークフォームのルークハンマーに紫色の光を放ちながらいっきに振り下ろされる!!
Rワイバーン「調子こいてんじゃね――――ぞッ!!グラビトンプレッシャー!!!!」
ウォーサイズレジェンドルガ「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
超重量級の一撃をくらったまま地面に落下し、大地の強大な破壊エネルギーを注ぎ込まれ、ウォーサイズレジェンドルガが絶叫を上げて大爆発を起こす。
そしてあまりにも凄まじすぎる衝撃に公園の床が地面ごとぶち割り、椅子は吹き飛び、ステージは完全に地盤ごと陥落し見る影もなくなった。
Rワイバーン「・・・ヤベェ、やりすぎた」
Bワイバーン「手加減出来ないのが貴女の辛いところでしょうねえ」
Qワイバーン「・・・あれっ、あの懐中電灯、ひょっとして、見回り!?」
Rワイバーン「おいおいおいおい、これ逮捕じゃねえかっ!?」
Bワイバーン「一旦引きますよ」
3人が変身を解くと、その場で散らばり、ボロボロになったステージからいなくなっていった・・・。
その荒れ果てたステージに転がる無数の残骸が光りだし、異様な気配を放っていることも知らず、そしてそれがまるで意思を持っているかのように集まりだしていることにも気がつかなかった。
ルーク「キングの力を感じるぜ。山のほうからだ。でも、このまま3人で突っ込んだらちとヤベェ気がするんだが、どうよ、ビショップ!!」
ビショップ「ナイス判断。山から得体のしれない気を感じます。一気に攻め込むより、その気がどのようなものなのか、そして抜け道はあるか別々の方向から調べましょう!」
クイーン「アラホレサッサー!!」
一方。
ランスフォームがドアを開くと、そこはなぜか厨房の冷蔵庫につながっていた。
どうやら完全に空間のつながりがメチャクチャになっているらしい。
目の前に広がる荒れ果てている上に暗闇に閉ざされている厨房は不気味な雰囲気に包まれている。
Lバルキリー「・・・・・怖・・いや・・・・いきますぞっ」
慧(ルーベットお化け大の苦手なら、無理しないほうが・・・)
Lバルキリー「ここはいつ何が出てもおかしくはありません。変身さえさせてくれるかどうか分りません。油断は禁物ですぞ」
慧(でも・・・足震えてるし・・・)
そう完全に腰が引いてるし、足は震えてるし、やたら世話しない。
Lバルキリー「今はあの3人につながりさえとれないのですぞ。こうなったら慧殿をお守りするのは私しかいないんだから」
そういって、ランスを杖代わりにして床を叩いたり、机やロッカーを叩いて何もいないことを確かめる。
つか、ランスってこんなことのために使うものではないような気がするが。
Lバルキリー「・・・ふふ・・・しょせんこけおどしですな」
そういって、部屋を出ようとしたその時だった。
「うああああああああ・・・・・・・・!!」
突然窓ガラスのほうから何か声がした。
何かが落ちていくような感じだ。そして、ドサッと重い音がする。
そしてこれは「声」のようにも聞こえる。
Lバルキリー「・・・イ・・・・今の・・・・声・・・?」
慧(う・・・・後ろ・・・・?)
ゆっくりと振り返る。
しかし窓ガラスには・・・・何もない。
ほっとしたその時だった。
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
突如絶叫を上げながら外の窓ガラスに血だらけの男がベチャっと窓ガラスに張り付いてきたのだ!!頭部は完全に割れて潰れており、眼球が飛び出し、到る所に脳漿をぶちまけている。
Lバルキリー「ぎゃああああああああああああああああっ!!!!」
ランスフォームが絶叫を上げて部屋を飛び出すと廊下の奥からゴロンゴロンと物すごい音と振動が伝わってきた。見るとそこには巨大な鉄の玉がゴロンゴロンと押しつぶさんとばかりに転がってきているのだ。
Lバルキリー「ぎゃあああああああああああああああ!!」
慧(お化け屋敷みたいになってるよ〜!!)
Lバルキリー「逃げますぞおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
鉄球から逃げようと走っているが、階段に差し掛かった時、何かに足首をつかまれて、ランスフォームが体勢を崩して、そのまま階段を転げ落ちる。
Lバルキリー「ぎゃああああああああああああっ!!」
慧(今度は何〜!?)
Lバルキリー「足首をつかまれて・・・・え・・・・」
そこには、自分の足首をつかんでいる手。
そしてその手の主は血まみれで首があり得ない方向に折れ曲がっている。
頭も半分完全に割れている。
「うああああ・・・・あああ」
Lバルキリー「ぎゃああああああああああああああああっ!!」
ランスフォームが絶叫を上げながら階段を再び下りていく。すると、廊下にはなぜか無数の看護婦たちが青白い顔をあげて、手には注射器やメスをもって、集団で足並みをそろえながら迫ってきている。
「手術の時間ですよ・・・・」
Lバルキリー「どこも悪くはございません〜!!」
ランスフォームが泣き声で絶叫を上げて廊下を爆走して逃走を再開する。
その様子を見ているクラブイマジンたんとエイプイマジンたんは大爆笑していた。
クラブイマジンたん「盛り上がってきましたねぇ」
エイプイマジンたん「あれがバルキリーだってよ!!傑作だな!!」
クラブイマジンたん「さてさて・・・キングはどうなりましたかねぇ」
エイプイマジンたん「そうだよ、あたし、あいつに賭けてるんだからな、1万円!!負けたらただじゃおかねぇ」
クラブイマジンたん「さてさて・・・」
一方。
キング・・・晶は床のところどころが抜け落ちている荒れ果てた大広間にいた。
先ほどの戦いでテーブルはほとんどなぎ払われ、椅子も転がっており、あらゆる装飾品が破壊され無残な光景となっている。
Kワイバーン「ったく、何人いるんだろう。大元を叩かなきゃダメみたいね」
その時だった。
キングの紋章が紫色の光を帯び出す。
その気配にキングがその光が信号のようなものであると察する。
晶「ルークか?」
ルーク「キング、無事か!?」
晶「無事なわけないでしょう。俺としたことが敵の罠に完全にやられた」
ルーク「まあ、無事なら何よりだ。それと、ビショップが調べてみてわかったらしいけど、そのホテルの中で唯一元の世界とつながっている所がある!そこを通れば元の世界に戻れる」
ビショップ「場所は・・・1階付近です!!そこから異様な空間のつながりを感じます!!」
晶「1階?そこに何か出口につながる何かがあるってことか!!」
ビショップ「はい!!私たちも内部に侵入したいのですが、結界のようなものに阻まれて身動きがとれないです!!」
クイーン「中庭だと思うよ〜、なんだかここのマンホール、こっちの世界とつながっているみたい〜♪」
その一言に3人が一瞬「あれ?」と疑問符が浮かび上がる。
そして嫌な予感を感じ、恐る恐るビショップが尋ねる。
ビショップ「・・・あの、クイーン、今、ここのマンホールとかおっしゃいませんでしたか?」
クイーン「うん、だってあたし、今、そのマンホールから侵入してホテルの中にいるのだよ」
のんびりとしたいつものあっけらかんとした口調で言われ、その予感が的中したと確信する。
ルーク「あのさ、クイーン、外部調査するんじゃなかったのか?」
クイーン「いやさ〜、テキトーに歩いてたら道迷って地下水路行っちゃっててさ、そこ登って行ったらホテル内部のマンホールから侵入できたよ。つまりゴール、ここだよ。イエーイ」
このマイペースすぎる性格と類まれなる幸運はクイーンの最大の武器である。キングが敵の手中に落ちているにも関わらず、慌てることなくいつもののんびりぽわぽわした感じで簡単に解決口を明かしてしまうなど、天性の運がものをいっている。最も何事に関しても適当というかどこかいい加減な感じでやってしまうのがちょっと難点なのだが。
クイーン「キング〜、あたしすげーか?すげーだろ、褒めろー♪ブイブイ」
晶「・・・・クイーン・・・・感謝する!奴らに気づかれないようにお前は身を隠せ!」
クイーン「ラジャりました」
ビショップ「・・・出口を見つけてくださったことは大手柄なのですが」
ルーク「もうちょっとキングに対する敬意とかはねえのかよ」
二人の従者はもう溜息をつくしかなかった。
晶「出口は見つけた。あとは慧を脱出させないと!携帯で連絡しなきゃ」
携帯電話を取り出すや、画面が真っ暗になっている。
晶「・・・・壊れてる」
自分の体から発する高圧電流が携帯電話に流れ込み、もはや完全に壊れていた。
そのころ。
ランスフォームはもはや息も絶え絶え、顔面蒼白、ガタガタふるえながら廃墟のホテルを突き進んでいた。
それでも不思議なのが、ルーベットが頑として慧に変わらないのである。
いつもなら怖がりで慧に頼っていたのに。
Lバルキリー「・・・よしっ、何もいませんな!!」
慧(あのさ、ルーベット・・・)
Lバルキリー「うん?どうかされましたか?」
慧(本当はすごく怖いんでしょう?どうしてあたしに変わらないの?)
Lバルキリー「・・・それは・・・慧殿に今変わっていただいたら、自分の弱点克服できないでしょう。怖いからこそ、今、克服できるいい機会なのですから」
慧(無理しないでいいんだよ。あたしだって頑張るし・・)
Lバルキリー「いつまでもそんな風に甘えていたら・・・ダメなんですよ」
慧(・・・え?)
ルーベットが頑なに慧の意見を拒むなど初めてのことだった。
性根がまじめで一本筋が通っている頑固な性格だが、慧の言うことだけは素直に聞いてきたのに。
Lバルキリー「・・・この間、サファイア殿たちから肝試しの話を聞かされたのです」
慧(・・うん)
Lバルキリー「すごく怖い話でした。そんな怖い話があるような場所に慧殿が行かれると聞いた時は、どうすればいいのかと考えました・・・。慧殿が危険な目に遭ったら自分は助けに行けるのだろうかと。でも、私はこう考えることにしたんです。いつまでもお化けが怖いとかそんなこと言ってばかりいて、守りたい人を守れなかったらと思うと・・・すごく怖かったのです。そっちのほうがずっと嫌だし怖いし苦しいのですよ!!だから・・・だから・・・もう逃げないって決めた。だから・・・今あなたをお守りすることに全力で力を尽くしていたい・・・!」
慧(・・・・ねえ。どうして、そんなにお化けが苦手なの?)
慧が尋ねると、ルーベットが一瞬表情を曇らせて、ぽつりぽつりと話しだす。
Lバルキリー「・・・・似ているから」
慧(え?)
Lバルキリー「私たちと。幽霊というものの定義が似ているから」
意味深な発言だった。
Lバルキリー「イマジンは・・・契約者の記憶が唯一この世につなぎとめている存在。生きていたけど死んでしまった後少しずつ自分のことを覚えてくれている人がいなくなって・・・楽しかったはずの記憶や思い出も・・・怒ったことも悲しかったことも笑ったことも・・・・薄れていって・・・・最後に消えていく。でも、それが受け入れられないから化けて出るのでしょう?幽霊は。私だって・・・慧殿がもし私たちの存在を忘れてしまったら・・・消えてしまう。そういった存在なんです。だから、慧殿にすがりついているのかもしれない。自分が消えたくないから、自分のこともっともっと見てほしいから。記憶の片隅でもいい・・・忘れられたくない・・・・消えたくない・・・・でもそのために慧殿を利用しているようで・・・それが嫌だ。さっきの幽霊のように、自分たちもいつかあんな風になるのかと思うと、それがすごく怖い・・・・怖いけど・・・いつまでも逃げてばかりじゃ何も解決しないではありませんか!!」
慧「!!」
Lバルキリー「だから、今、できることは何でもやって、自分の弱さを克服して、慧殿をお守りしたい!!慧殿と一緒にいたい!!戦いたい!!それが、私の生きていてやりたいことだから!!」
そうだ・・・。
なんでもっと早く気付いてあげられなかったんだ。
ルーベットが心のうちで常に自分の「存在」の脆さに怯えていることに。
根が真面目で、何事にも一生懸命で、不器用なまでに実直だから憑依していることにも一緒に戦っていることにさえ慧を利用しているのではないかという罪悪感を感じていることに。
人一倍繊細で傷つきやすいにもかかわらず、そんな自分を奮い立たせて苦手なものと向き合って克服しようとする健気な心は実は不安の裏返しであることに。
慧は胸が締め付けられるような気がした。
自分はどうだ。些細なことで動揺して怒り狂って、結局は敵の手の内に陥っているではないか。「不幸」から逃げたい一心で、あえて不慣れな「ヤンキー」という仮面をかぶって突っ張って無理やり乗り越えてきたつもりだった。
でも本当は自分の心の闇と向き合ってなどいなかった。
逃げていたのだ。
しかしルーベットは常に自分の弱さと向き合って、怖いと思うものを素直に認めて受け入れようとしている。
それなのに・・・!!
Lバルキリー「・・・おしゃべりが過ぎましたな。うん、少し胸がすっきりしたような気がします。行きましょう」
ランスフォームが再びランスを構えて歩き出した。
相変わらず逃げ腰ではあるが、それでも確実に一歩ずつ前進している。
その眼は真っすぐ前を見つめている。
慧「・・・・うん、行こう。晶を助けなきゃいけなかった。あたしもがんばる」
Lバルキリー「・・・行きますぞ」
このとき、2人の言葉はそれきりだった。
でも、確実に心と心がつながりあった瞬間だった。
ドアを開くと、そこは中庭だった。
エイプイマジンたん「ゲッ!!!マジかよっ!?」
クラブイマジンたん「おやおや、出口にたどり着いたようですね」
エイプイマジンたん「あ、あたしの1万円がぁ〜!!!」
エイプイマジンたんが驚愕する。
そして自分の負けを確信し、その場に崩れ落ちた。
Lバルキリー「・・・このマンホール・・・・何かメモがあります」
開いてみると、「出口だよーん」と書いてあった。
Lバルキリー「・・・行ってみますか」
慧(・・・おう)
マンホールの扉を開くと、突如白い光が発し、何もかもが飲まれていく。
そしてホテルを取り巻いていた光が消え去っていった。
Lバルキリー「何ごと!?」
ランスフォームが自分の周りを取り巻いていた白い光を見てあたりを見回す。
そして白い光が晴れ、そこには先ほどまでいたホテルの中庭があった。
それと同時だった。
サファイア「どうしたのっ、慧!?突然連絡付かなくなったけど!」
トパーズ「まさか、またカオスゲートか!?」
ようやくVライナーの面々と通信がとれるようになった。
Lバルキリー「実は・・・・!!」
「うわああああああああああああああああああ!!」
ホテルから悲鳴が聞こえた。
Lバルキリー「晶殿!?」
慧(急がなくちゃ!!)
ランスフォームがあわててホテルの中へと回れ右をして戻って行った。
一方。
ダンスホールでは首を鎖鎌で締め付けられ、床に倒された晶の姿があった。
ワイバーンベルトを器用にも鎖鎌でなぎ払われ、部屋の隅に転がっている。
そこには、エイプイマジンたんが憎悪と憤怒に目を血走らせて晶を痛めつけていた。
エイプイマジンたん「テメェは死刑だ!!テメェのせいで大損だぁ!!死ね死ね死ねっ!!」
晶「ぐっ・・・・、このバカ力が・・・!!」
エイプイマジンたん「あーーーーーーーーーーっはっはっはっは!!!苦しめ、もっともっと苦しめ!!!あたしの賭けの負け分たっぷりと痛めつけてやるぜぁ!!!!」
鎖鎌に電流を流しこみ、晶が苦悶の表情でのたうち回る。
倒れこむ晶を踏みつけ、何度も蹴りつけていく。
晶(気配を感じる・・・。慧だ。慧がいなければファンガイアになれるんだけど・・!!)
エイプイマジンたん「ヒャーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハッハ!!!死ねやああああああああああああああああああ!!」
Lバルキリー「そこまでだっ!!」
ランスフォームが飛び込んでランスで鎖を断ち切ると、エイプイマジンたんが後ろにのけぞる。晶が解放され、慧が抱きかかえる。晶の顔は容赦なく殴られたのか、ところどころ赤くはれ上がっている。口元には血も滲んでいた。
Lバルキリー「晶殿っ!!大丈夫ですか!?」
晶「・・・うん・・・・なんとか」
Lバルキリー「貴様か。こんなふざけた迷路を作ってくれたのは!!どういうつもりだ!!」
エイプイマジンたん「ギャンブルだよ!!!お前たちをこの迷路に迷い込ませて賭け事やってたんだよっ!!どっちが先に脱出できるかってな!!なのに、そのガキ負けやがって!!おかげでこちとら大損だ!!!命で償ってもらうぜ!!!」
Lバルキリー「外道が・・・・・許さん!!」
エイプイマジンたんが鎖鎌を構えると同時にランスフォームが飛び上がってランスで勢いよく切り裂き、横なぎにふるって敵を窓ガラスからたたき落とした。
エイプイマジンたん「くっそおおおおおおおおおおおお!!」
エイプイマジンたんの攻撃をよけながらリーチの長いランスモードで縦横無尽に切り裂いていく。
体を回転させながら槍を振り回し、敵の攻撃を上手くかわすと、隙を突いて柄の部分で突き出し、よろめいたところへ槍の一撃を炸裂させ、そのままの勢いで斬りつけていく!!
ターミナルバックルからフリーエネルギーがVガッシャーに充填され、Vガッシャーを構えると、連結している部分が紅いオーラエネルギーの糸でつながれているかのようになる。それを一気に投げ放つと、縦横無尽に刃が飛び出し、それがまるでエイプイマジンたんを閉じ込めるオリのようになる。
そして一気に走りだし赤い光を帯びながら高速で蹴りを突き出そうとしたその時だった。
「バブルスプラッシュ!!!!」
突如無数の泡が吹き出し、それが爆発し、ランスフォームが吹き飛ばされる。
ランスフォームが転がると、そこへクラブイマジンたんが現れてエイプイマジンたんを担ぎあげる。
クラブイマジンたん「姉さん、ここはいったん引きましょう!!」
エイプイマジンたん「お前・・・助けに来てくれたのか・・・・」
クラブイマジンたん「はい!!」
そういって、泡の障壁にまぎれながらクラブイマジンたんたちは姿を消した・・・。
それと同時だった。
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
突如凄まじい咆哮が山全体に響き渡り、その声がする方向をみると、そこには小山ほどの巨大な紫色の装甲に全身を覆い、クワガタムシのような鋭い二枚の角の牙をもち、尻尾は蠍の様に毒々しい毒針がビクンビクンと痙攣させている怪物がいた。
慧「何あれ!?」
晶(・・・おい、ルーク、どういうことだ?)
晶が精神だけでチェックメイトフォーのルークに話しかける。
クイーン「トドメさし損ねた、このバカ」
ルーク「ウソだろっ!?マジッスか!?」
ビショップ「ツメが甘すぎるんですよ、貴方は!」
巨大な怪物・ギガンデス「恋人(ラバーズ)」は大地を爆走し、鋭い牙と針で町の建物を次々と破壊していく。このままでは町が火の海になってしまう。
クイーン「キング!!キバライナー出すよ!!」
晶(ああ・・・・頼む)
ルーク「来い!!キバライナー!!!」
パアアアアアアアアアアアアアン
「!」
突如空間に時空間の穴が開き、3両の新幹線型マシンが姿を現した。
しかし、列車は線路を走っている最中に、突如1両ずつ連結が外れていく。
その直後だった。
紫色のラインが入った新幹線、銀色のラインが入った新幹線、そして赤色のラインが入った新幹線がそれぞれ、その車体を次々と変形させていき、やがてその姿を一体は巨大な甲羅と二門の大砲を持つ巨大な亀のような姿に、一体は赤い翼を広げて、鳥のような頭部をせり出し、翼を広げて空に舞い上がる。
さらに銀色のラインの電車はみるみるその姿を銀色のトラの姿に形を変えていく。
完成すると同時に、3体の巨大な獣が一斉に雄たけびをあげる。
ビショップ「キバライナー・ビャッコ!!」
クイーン「キバライナー・スザク!!」
ルーク「キバライナー・ゲンブ!!」
「「「猛獣特急キバライナー、参上!!」」」
猛獣特急キバライナー。
それはトレインモード(列車)とアニマルモード(猛獣)の二つの形態をもつ新たなる特質をもつ時の列車であった。
慧「何あれ!?誰!?誰が乗っているの!?」
サファイア「というか、あれもう列車じゃないよね」
エメラルド「うおおおおおおおおおおおお!!発明家魂に火ィついたぜ、コンチクショオオオオオッ!!!」
琥珀「マジかよっ、誰か、あの列車にのっている奴が・・・いるのか?」
燃え盛る火の海の上で、サソリの姿のギガンデスは咆哮をあげる。
そこへビャッコが鋭い爪と牙で肉体を引き裂き、スザクが空中から無数の炎の羽を発射して無残に焼き尽くし、ゲンブがすべてを凍らせる液体窒素を詰め込んだ特殊弾薬を発射し、みるみるラバースを追い詰めていく。
「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
ラバーズが苦しそうな断末魔をあげながらも、針や牙から無数の光線を発射し、応戦してくる。
両者の間でなおも激しい砲撃の応酬が繰り広げられていた。ギガンデスが尻尾から光弾を撃ちだせば、ゲンブとスザクは冷凍弾やレーザーを発射して反撃する。
両者の攻防は、しかし地上と空中の違いもあり徐々にキバライナーが押し始めていた。
ルーク「それじゃあそろそろトドメといくぜっ!!」
クイーン「ルーク!!こんどは頼むわよ!!」
ルーク「任せろ!!」
そして、ビャッコとスサクが再び元のトレインモードに戻るとゲンブの後ろに連結する。
そして、ゲンブが口を開き、大砲をラバーズに向けて構えると、大地の力を吸収し、みるみる砲口に青白い巨大な光の玉が生まれる。
やがてそのエネルギーのすさまじさか、地面が震えだし、地盤が持ち上がって浮きあがる。
ルーク「トドメだ!!!!ゲンブ、いっけええええええええええええええ!!」
ゲンブの口と大砲から巨大な光の玉を3発同時に発射し、それが見事着弾すると敵の体が絶対零度の寒さによってみるみる氷漬けになっていき、やがて氷が全身を覆いつくすと粉々に打ち砕かれた・・・!!
ルーク「今度はちゃんとあの世に行きな!!」
ルークがそういうと、そのままキバライナーは光の中へと消えていった・・・。
慧「今の列車も・・・時の列車・・・!?」
今まで見たこともない時の列車に慧たちは驚きを隠しきれない。
つまり自分たちと同じように時の運行を守るために戦っている特異点やイマジンがいるということであろうか?
そこまでが慧の思考の限界であった。
慧たちはただただ目の前で繰り広げられた戦いに、新しいライダーの存在に、もはや頭の中が真っ白の状態で呆けて座り込んでいた・・・。
そのころ。
裏路地では全身に包帯を巻き、松葉つえをついたエイプイマジンたんを支えながらクラブイマジンたんが歩いている。
クラブイマジンたん「大丈夫ですか?エイプの姉さん」
エイプイマジンたん「あたしって・・・・ホント・・・ツイてねぇ・・・アタタ・・・」
クラブイマジンたん「姉さん、この恨みは二人で晴らしましょう!あたしも手伝います!!」
エイプイマジンたん「・・・ありがとよ、助けてくれて!!」
クラブイマジンたん「バルキリー・・・・この恨みは高くつきますわよ!!」
こうして、夜の闇に二人のイマジン少女姉妹たちが姿を消していった・・・。
続く
,こんにちは!!
さて、今回ついに初登場「キバライナー」!!チェックメイトフォーのそれぞれのモチーフであるサーベルタイガー、始祖鳥、アーケロンといったアニマルモードに変形する電車というモチーフで作らせていただきました。
これはトランスフォーマーを見て、こういうのがあったら面白いだろうなと思い、玩具店やアキバなど色々見回ってみて作り上げてみました。
近々キバライナー・セイリュウ(キング)も登場いたします!!
烈様へ
> “暴君竜”『ティラノファンガイア』のことを表している様に感じました。
ありがとうございます!!まさしくそれをイメージして作ったので、そう言っていただけると嬉しいです!!今後、晶の性格や正体がバレないようにどのような戦いを行うか、考えながら作っていきたいと思います!!
>『バルキリーイマジンズ』のメンバーですが、…なんといいますか、トパーズとエメラルドのある意味腹黒い一面を垣間見てしまったのがなんだか嫌な気分になりました。(……まあ、あの“変態百合馬鹿青玉白鳥”の影響を受けているのは間違っていない気がしてきますが……;)
根はいい子なのですがね・・・。
慧のことになるとエネルギーが間違った方向に暴走するのがこの連中の悲しい性なのですよ。
>主人公の慧嬢ですけど、彼女の場合は何で今回ヤンキー口調状態になったのですか?
慧は基本的に芯は強いほうですが、これまでの人生において自分の不幸ぶりにはもうかなり頭を悩ませていました。その中にはいじめられたり不良にからまれたりすることもあったのです。でも負けず嫌いの性格からかふさぎこまないで、自分自身で悩みを解決するしかないと悩んだ挙句、やられたら二度とやらないように痛めつけるといった策をとっていたのです。しかし、追い返すたびに仕返しがどんどん来て、そのたびに追い返しているうちに、暴力事件を起こしているだのヤンキーだのと周りから蔑視の目で見られたことがあり、それが原因で一時的にヤケになっていたことがある設定なんです。その名残からか、慧は自分自身に降りかかる不幸ゆえに、一番信頼を置いている晶やイマジン、愛から嫌われることを恐れており、感情のコントロールが利かなくなって暴力的になってしまうのです。
次回もよろしくお願いいたします!!
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2009年07月24日(金) 16時01分44秒,20090722025222,20090727160144,RMo90QkJxsp12,仮面ライダーセレナ壱拾五話・eins「小さな私/蟹と蛇と鏡と夢と」,@PF,,, 前回の仮面ライダーセレナは
セ『粗筋(?)以外私が少しも出ていない話なんて振り返る気にもなりませんね』
鷹「ちょ!?それは職務放棄過ぎるよ!折角今回は私も出番有るのに…」
セ『殆どシカトされてますけどね、はははは』
鷹「ええい黙れ、このポンコツが!ネタバレっぽい発言は自重しろ!
そんな事言ったらアンタだって遊んでるだけじゃない!」
セ『ハイハイやれば良いんですね、やれば。
え〜前回、引きこもってゲーム三昧だった獅堂某は、無謀にも半額弁当に手を出してフルボッコ。
その後、憂さ晴らしにチンピラを灰にしました、っと』
鷹「省略しすぎだよ…その後、謎の新キャラ“遊希ちゃん”が出たんだよね」
セ『どうせ獅堂某の元カノか何かってオチでしょう、スルースルー。
恋人キャラはバ鹿ップルでお腹いっぱいって読者の皆さんも言ってますし、誰も期待してませんって』
鷹「いや、過度の迎合は破綻を生むから自重してくんない?」
セ『ハイハイ取り敢えず今回の注意を。
作中の格ゲーの対戦カード、展開に嫌悪を抱く人が出る可能性があるので、取り敢えず覚悟して読んでください。
要望が出れば直ぐに差し替え、修正を行う用意があるそうなので、遠慮しないでください、だそうです』
鷹「今更だけど殆ど作者のメッセージ板だよねぇ、このコーナー」
セ『まぁ、この利用法は当初の想定外だそうですけどね。
ただ、タイトルに「グロ注意!」とか付けるのは不格好なので割と重宝してるそうですよ』
鷹「でも看板に偽りありは問題だと思う」
セ『読者から批判されなければ問題無いって事ですよ、調子に乗るのは禁物ですけどね』
鷹「そんなモンなのかなぁ……」
***
―――ヒュウウゥゥゥゥゥゥ――――
風が――吹いている。
強風が吹き荒れる、元は町だったと思しき廃墟。
私はそこに一人で立っていた。
「うん?何で私こんな所に?」
ココは何処だ?というか私は誰だ?
今まで何をやって、どうやってココに来たのか思い出せない。
見上げた空は、灰色の雲に覆われ、辺り一面を日光から遮っていた。
「あら、また来たんだ」
「はれ? 誰?」
後の方から聞こえた声に、私は振り向いた。
とにかくココが何処なのか知りたいし、何か知っていれば教えてもらいたい物だし。
「アタシは鷹音、赤坂鷹音」
振り向くとそこには、瓦礫の山の上に私より少しだけ背の低い銀髪黒眼の女の子が立っていた。
そしてその女の子は、私に向かって挑発するような笑みを浮かべながら名乗ってきた。
「タカネ…ちゃん?」
「……何の反応も見せないって事は、覚えてないんだ…はぁ、メンドクサ」
「へ?私の事知ってるの?って言うかさっき“また”って……」
「あーうっさいなーもー…コッチは予定外の事が起きてイライラしてるってのに…。
こんな時に貴女の顔なんか見たくないんだけど…いや、“今”だからこそなのかな?」
何だか不機嫌でいらっしゃる。
とにかく仲良くなる第一歩は笑顔と気遣いだ。
そう思って私は微笑みながら手を差し出してみた。
「え、えーと…鷹音…ちゃん?…何か困ってるみたいだけど私に出来る事って……」
「はぁ!?何で貴女如きに手伝って貰わにゃならんのさ!」
「ひぃっ、ゴメンナサイ!?」
怒られた…どうも鷹音ちゃんは私自体が気に入らないご様子。
まぁ、いきなり見ず知らずの人間に馴れ馴れしく話し掛けられて、すんなり友好的になってくれる人はレアだとは思うけど、それにしても刺々しすぎる。
何か理由があるのだろうか?
その事を聞いてみると…
「そうね、貴女がそれを覚えていないのはもの凄く癪だけどね!
出来るならこの場で貴女を消してしまいたい位!!」
と、不機嫌そうに足下のコンクリの塊を蹴って飛ばしてきた。
ヤッパリ何かしてしまったらしい、そして私はそれを忘れてしまっているのだという。
その後“まぁ、それはそれで都合良くはあるんだけど…”と聞こえたので、何の事とか聞いてみたら
「黙れ!盗み聞きしてんじゃない、クソが!!」
と言いながらわざわざ接近してスネを蹴ってきた。涙が出た。
涙目でスネを押さえていた私を見て、自称“赤坂鷹音”は不思議な事を聞いてきた。
「……所でアンタ、顔を見て、何とも思わないの?」
「え?顔?う〜ん…」
見覚えがあるような気はするけど、そのものズバリな思い当たりはない。
そう答えると、鷹音は少し呆れたような顔をして
「…じゃあ、アタシの名前聞いて何か感じた事は?」
「貴女の名前は“赤坂鷹音”だよね…赤坂鷹音…アカサタカネ…アカサカ…タカネ…」
「………」
「おお!そう言えば私の名前もそんなだった気がする!!」
「……はぁ…前より酷くなってるな…」
「もしそうなら私達、お揃いだね」
「はぁ!!?」
「え?だってそうじゃない?
貴女は鷹音、私もタカネ、ならお揃いだよね」
「…………お、お揃い」
私の発言に鷹音ちゃんはたじろいでいた。
むぅ、些か発現が幼稚すぎただろうか…、痛い子だと思われてなきゃ良いけど。
いや、痛い子だという印象が固定される前に友達になれば無問題!
そうと決まれば早速行動、いつもの私はこんなに積極的じゃない気がしたけど、何だかこの子は他人の気がしなかったのだ。
「ねぇ、私達友達になれない?」
「友達? アタシと?貴女が?」
「うん、何だか他人な気がしなくて…」
「…」
「えっと、だ、ダメ…か……な」
黙り込んだ鷹音ちゃんに、私はまた何かしてしまったのかと思い、言葉尻が萎んで行ってしまった。
「……」
「あn「……けるな」へ?」
「…巫山戯んなッ!!!」
「っ!」
「友達だぁ? アタシと、お前が!? 巫山戯るな、脳天気も大概にしろ!!」
「うぐっ!?」
突然血を吐くような声で叫んだ鷹音ちゃんは私に飛び掛かると、その体格からは信じられない様な力で首を締めてきた。
「お前がアタシに何をしたか、それも覚えてない癖に!
アタシがどんな思いをしたかも知らない癖に!!
都合の悪い事から逃げ出してのうのうと暮らしてる奴が!!!」
「あ…くぁ…」
「お前のせいでアタシは…アタシはぁ…」
目に涙を溜めて怨嗟の叫びを上げる鷹音ちゃんに、私は首を絞められているのとは関係無く何も言えなくなってしまう。
いきなりキレられて混乱してしまったのもあるが、それ以上に首に掛かる圧力とは裏腹に弱々しい鷹音ちゃんの表情と声が、私を責め立てていた。
かつての私は、この子をココまで追い詰めてしまうような事をしてしまったのか。
この子を苦しめておいて、私は忘れて居る事にすら気付かず、この子に笑いかけてしまったのか。
「ご、めん…ね」
「!…っ」
思わず出てしまった私の言葉に衝撃を受けたのか、鷹音ちゃんは私の首から手を解き、バツの悪そうに目を逸らして離れていった。
「…そう、だね……“今の”貴女を責めてもどうしようも無いもんね」
「けほっ、けほけほっ……“今”…の?」
「良いよもう…今も言ったけど今の貴女に責任がある訳じゃ無いし…」
「でも…」
「うざいなぁ…いきなりキレたのは悪かったけど、アタシが貴女を消したい程嫌いなのは変わらないんだし、何にせよ貴女とお友達なんて願い下げだよ。
というかさっきから貴女話が飛びすぎ」
「そんなぁ…でも私が鷹音ちゃんを泣かせちゃったみたいだし、何かしてあげたいんだけど…」
「!」
と、そこでようやく自分が涙目になっていた事に気がついたのか、誤魔化すようにもう殆ど涙の乾いた、でも少し赤くなっている目をぐしぐしと擦り、その後私のすねに向かって誤魔化すようにローキックをし始めた。
「このっ!このっ!」“ガスッガスッ”
「いたいっ!いたいっ!」
割と容赦のない攻撃だけど、その表情からはさっきまでの険が抜けて、今は頬を赤らめて恥ずかしそうにしている。
取り敢えず怒りは収まったようだけど、さっきの受け答えから依然嫌われている、少なくとも私はまだ心を許して貰っていないみたいだって事は分かった。
やっぱり以前の私はこの子に酷い事をしたらしい。
今の私には責任は無いとは言ってるけれど、気になってしまう。
“今の私には無い”って事は、逆に言えば“以前の私にはある”という事を意味して居るも同然だったからだ。
「何?その目は。
言っとくけど、アタシは貴女に教えてあげる事なんて無いからね。
どーせ言った所で理解なんて出来ないだろうし」
「え〜」
「今の貴女が知る必要は無い事だよ。
…どうせその内消えちゃうんだからさ」
「え、何?」
「何でもない、独り言。
それよりそろそろ時間切れみたいだね」
「時間切れ?それって…うわ、何だか周りが白くなってきた!!」
「正確には貴女ココからが消えてるんだけどね」
視界が靄に包まれるように段々白んで行く。
瓦礫も、雲も、目の前の鷹音ちゃんも。
慌てる私を見て、鷹音ちゃんは呆れるように溜息をつくと言い聞かせるように話し掛けてきた。
「……一つだけいっておくわ、“向こう”に戻ったら精々体を大切にしなさい。
アタシの為にもね」
「え?う、うん、分かったよ(“アタシの為にも”ってどう言う事だろ?)」
「……つくづく脳天気だね、貴女。こんな正体も知れない奴の話に頷くなんて」
「うーん、さっきも言ったけど、鷹音ちゃんって何だか他人な気がしないんだよね。
どんな関係かは覚えてないんだけどさ」
「前は何も感じてなかった癖に……何度も言ってるけど、アタシは貴女に消えて欲しいって思う位嫌ってるからね。
精々首を洗って悔いの無いように過ごしなさい死ね」
「酷い!?」
鷹音ちゃんは私に向かって、親指を立てた握り拳を下に向ける“地獄に堕ちろ”のジェスチャーをして来る。
それに私がショックを受けて居ると、鷹音ちゃんは笑い出した。
「あははは!冗談だよ」
「ホント?」
「ホントだよ半分は、死なれちゃアタシが困るしね」
「う〜…」
何か納得行かない、というか小さく“半分は”って聞こえた気がする。
そう思っている内に、視界は殆ど見えなくなってしまっていた。
「いい加減限界みたいね」
「さよなら、なの?」
「そうだね、アタシとしてはもう会いたく無いんだけど……」
そう言った鷹音ちゃんが私に向ける表情は、さっきの親の敵に向けるような物から、少しムカ付く知り合いに向けるような物に変わっていた。
「ま、会いたくなくてもまた会うわよ、アタシ達は。
その時お互いがどうなっているかまでは分からないけどね。
忌々しい奴等の呪縛も残ったままだし。
まぁ、アタシがこうやって貴女と話していられるのはそのお陰でもあるんだけど」
「え、それって――」
――どう言う事?――と繋げようとしたが、声が出せなかった。
何度か試してみても、口も喉も動いているような感覚がないのだ。
というか体の感覚も無い。
「おや、もう声も出せなくなってるのか。
じゃ、最後に改めて言っとくよ」
もう視界は完全に白に覆われ、意識が解けて何処かに引き上げられるような感覚を感じる。
「精々体に気を付けて――」
そんな状態でも、鷹音ちゃんの声は何とか聞こえていた。
「――日々を噛み締めて生きて行きなさい…」
塗りつぶされて行く意識の中で、私は最後の言葉を聞く。
「いつか――」
―――“私”達が殺し合うその日まで―――
***
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ――
真っ暗な世界の中、どこからか規則正しい電子音が聞こえてくる。
「……ん…」
ふと真っ暗な空間を横切るように光の線が走り、そこから上下に避けるように視界が開けて行く。
そこで私は初めて今まで寝ていたのだと思い当たった。
瞼を開けると最初に見えたのは、白くて高い天井、横の窓からは日の光が燦々と照り込んできている。
(はて?)
私の部屋はこんなだっけか?何か病室のような…
『くっ、会わない間に腕を上げましたね!』
「男子三日会わざれば刮目して見よ、ってね!」
『いや、クロさんはメスでしょうに』
「ふははは、そんな事はどうでも良い!
今日の僕には秘策があるのさ!」
『ほう、見せて貰いましょうか、その秘策とやらを』
(うるさいなぁ…)
機械っぽい女性の声と、小学生か中学生位の女の子が、妙にハイテンションに言い争っているのが聞こえる。
折角人が気持ちよく寝てた……ん?気持ちよく?
よくよく思い返してみると、それほど気持ち良い夢見でもなかったような……いや、覚えとらんけど。
そういや昨晩、寝る前は何してたっけ…。
まず私は赤坂鷹音、ピチピチの高校二年生、背の順は前から五分の一位、最近仮面ライダーとやらに変身するようになりました、まる。
……
よし、ここまではOK、次は何をしていたか。
ふむ…思い出せるのは、終業式と成績発表、それから…確かフードコートに行って、途中で連絡が入って、戦いに行って、右腕を……
「………」“わきわき”
右腕を動かしてみると、ちゃんと反応はある、違和感も感じない。
(確か斬られた気がするんだけど…)
まぁ、繋ぎ直したとかそんなだろう、自分の体がちょっとマトモじゃないのは百も承知だし。
見回すとどうも研究所の病室っぽかった。
今の家に来るまでは、ココで暮らしていたからそれなりに馴染み深いのだ。
何だかんだで今の家にお世話になる事になり、この部屋ともオサラバした筈なのだが、そんな私がココに居るという事は、何か治療を受けたって事だろう。
きっと右腕もその時に繋げたんだ。
目覚める時に聞こえた音は心電図のようだ。
(取り敢えず起きるか)
少し気怠いし、寝慣れないベッドで寝たせいか、何か体を動かす度にあちこちがバキバキと痛むが、とにかく上半身を起こす事にする。
「あーどっこいしょ…っと……おろ?」
何か、声に違和感が…ほんの少しだけどいつもより高いというか、幼いというか。
(まっ、寝起きに少し声が変わったりとかは無くもないか)
喉が乾燥したり、筋肉が弛緩していたりとかで変わるんじゃないでしょうかね?知らんけど。
鬱陶しいので、あちこちに繋がれていた線やチューブをプチプチ外しつつ、少し視線を横にずらすと
【STRIKE VENT】
「ほーれ、チョッキンなあぁぁぁ!!」
『くっ、武器を出した位で調子に乗らないでください!』
備え付けのテレビの前で、白い携帯ゲーム機モドキと、ゲームのコントローラーを持った黒いアニメっぽい服を着た女の子が騒いでいた。
「………」
数秒掛けて、“コレ”らが性格の悪い我が相棒セレナと、その友達、改造カラスのクロだと思い出す。
「えーと?……(ゲーム……してるのかな)」
テレビの中では、金色とカボチャの煮付け(皮じゃない所)の色の中間ぐらいの色(我ながらこの表現はどうかと思わなくもない)の蟹っぽい戦士と、紫色の何となくコブラのようなイメージの戦士が闘っていた。
見た所、蟹の方が右手の大きなハサミと、左手の銀色で小さめのハサミを使って怒濤の攻めを見せ、それを紫コブラが杖と拳で凌いでいる様だ。
ライフバーは紫コブラのアイコンがある1Pの方のみが三割程減っていて、戦況は蟹有利と言った所だろうか。
こうして防戦に徹しながらも、1P側のHPはじわじわと減っている。
格ゲーに興味無いんで、よく分からないけど。
テンションに影響されているのか、クロの羽根がパタパタ動いているのが、犬の尻尾を連想させて、和むような和まないような…。
大体鳥の羽って人間で言う腕みたいな物だろうに、それが犬の尻尾みたいに動くのはどうなのか。
「うりうり、右!左!右ィ!左ィ!も一つ右、と見せかけてキィーック!!」
『いや、五月蝿いんでその掛け声止めて貰えません?
大体掛け声と操作が全然合って無いじゃないですか』
「……こ、こう言うのは勢いサ!何かテンション上がってこない?」
『ウゼェ』
「………」
あ、しおれた。
まぁ、私もウザい…と言うか痛いと思ったけど。
「へ、へーんだ!何だかんだ言って僕の方が主導権握ってるもんねー!」
『減らず口を!』【ADVENT】
「くぅ、しまった!」
一瞬の隙を突き、紫コブラの戦士が杖で蟹戦士の頭を殴り、怯んだ所でバックステップで距離を取る。
そこへ紫色のロボっぽいイメージの巨大なコブラが突っ込んできて、蟹戦士を吹き飛ばし、追い打ちで口から液体(多分毒液)を吐きかけた。
【SWORD VENT】
更に読み上げ音と共に画面外から飛来した金色のドリルのような刀身のサーベルを紫の戦士が掴み取り、体勢を崩した蟹戦士に荒々しく斬り掛かる。
一人と一匹にフクロにされ、今度は蟹戦士のHPがジワジワと減りだした。
「うおおお!?ちょ…ええい!」【ADVENT】
コブラと紫戦士に同時に攻め込まれ慌てたクロが操作をすると、画面外から現れた蟹のような上半身のモンスターが紫戦士とコブラに体当たりをかまして、コブラを二人の戦士から引き離して行く。
紫が怯んだ隙に蟹戦士は両手のハサミによる攻撃を再開し、一進一退の攻防を始めた。
『チッ』
「やれやれ」
激しい攻防を続けていた双方だったけど、一瞬の隙を突いた紫戦士の左手が蟹戦士の首を掴み、その状態で体を何度も斬りつけ、最後にヤクザキックを入れて吹き飛ばした。
蟹戦士は地面に叩き付けられ、紫の方も自らも後方に下がって距離を取った。
『止めです』【FINAL VENT】
「………」
読み上げ音が鳴ると、紫戦士が蟹戦士に向かって走り出し、離れた所で蟹モンスターと戦っていたコブラが相手を弾き飛ばして、紫戦士の後方に就きその後を追う。
そして相手との距離を2/3位まで詰めるとその場でコブラの口元まで大きく跳び上がった。
【ハぁー…ダァッ!…おォらァ――――――!!!】
飛び上がった紫は、コブラの吐き出す毒液を推進力に、バタ足のように足を動かしながら(ちょっと「ねーよw」って思ったのは内緒だ)蟹戦士に向かってすっ飛んで行く。
一瞬で紫戦士は蟹戦士に到達し、毒液を纏った連続キックが、残りのHPを削りきる…。
かに思えたが――
「甘いわ!」【“ガッ、ピキーン!ピキーン!ピキーン!ピキーン!ピキーン!……”】
『な、何ぃ!?』
キックが命中した瞬間、蟹戦士が防御の態勢を取りながら一瞬だけ青く光り、何とダメージを0に抑え込んでしまう。
それがキックが命中する度に繰り返され、連続蹴りが途切れた時にカウンターで繰り出された蟹戦士のハサミの一撃が紫戦士を吹き飛ばしてしまった。
「ふっふっふ…ガード可能なのが仇になったね」
『い、今のは…』
「ふはははは!これぞ秘技・超反応連続ブロッキング『ウメ○ラインストール』!!」
『そのネタ分かる人居ないんじゃないですか?』
「うっせーわ!」【FINAL VENT】
恥ずかしそうに怒鳴るクロがコントローラーを操作すると、蟹モンスターが蟹戦士の後に移動、そして蟹戦士がジャンプするとその体をバレーのレシーブのように弾き飛ばした。
射出された蟹戦士は体を丸め、回転する砲弾となって紫戦士に襲いかかる。
(まぁ何の捻りもなく回転しているだけってのはビジュアル的にインパクト皆無だけど…)
「コレでトd【FINAL VENT】へ?」
クロの声を遮るように読み上げ音が鳴ると、紫戦士の地面にスクリーンのような鏡面が現れ、そこから赤いエイが長い尾を引きながら飛び出した。
そして紫戦士がそのエイに飛び乗ると、加速、大きく旋回し、丸まった蟹戦士に向かって一直線に突撃して行く(紫が乗った意味あんのかね?)。
「ファイナル」って事は切り札的な感じなんだろうけど、双方ともイマイチ凄そうには見えないなぁ…。
「くっ!」『……』
焦るクロに大してセレナは無言だ。
そんな彼女たちの目の前で、エイと蟹戦士の距離がゼロになり――
“ッドゴオォォン!!!”
――画面の覆い尽くす程の大爆発を起こし、双方共爆風に包まれ見えなくなった。
やがて煙が晴れる。
特殊な演出なのかライフバーはどちらも動いていない。
晴れる粉塵の中から現れたのは――
『……ふむ』
「……“ゴクッ”」
――悠然と立つ蟹戦士と、片膝をつく紫戦士だった。
同時に1P側のHPが一気にギリギリまで減り、2P側も一緒に減った物の、激突前の三割程残っている事にクロの表情も緩む。
「よかった、HP的にどっちが倒れるか微妙な所だったけど、防御力の差で僕の勝ちだったみたいだね。
それじゃ、今度こそホントにトド【“バキン!”】…め?」
だが、クロが勝ち誇ろうとした所で、小さく鈍い音を立てて蟹戦士の腰のバックルから何かの破片が落ちる。
同時に2P側のライフバーがキュッとゼロまで減った。
【何っ!?“シュウウゥゥゥゥゥ…”く、うぁ…お…】
すると蟹戦士の装甲の表面が泡立ち、苦しみ始めた。
【ア゙アァァァ…】
そして少し離れた後方で待機していた蟹モンスターがその直ぐ後まで迫って来て、蟹戦士に向かってかぶりつくように両のハサミを振り上げていた。
【ウア゙オ゙アァァァ…】
【契約が…馬鹿な!?】
そしてとうとう蟹モンスターは蟹戦士に襲いかかった。
【私は…絶対生き延びて!】
【ヴルオォアァァァ!】
“シュウゥゥ…ガシュッ…メキポキグチャクチャ…”
【うあぁ!あぁあ!!ああああぁぁぁぁあああ―――――!!!……】
最後には蟹戦士は悲鳴を上げながら画面外に引きずり込まれ、正直聞きたくないと思ってしまいそう、と言うか小さい子は泣き出しそうな生っぽい効果音が鳴った後、その悲鳴も途切れてしまった。
【1PWIN】
「……」
『……』
「……」
セレナの勝利を宣言するナレーション響く中、そのあんまりと言えばあんまりな演出にその場の誰一人として声を出せなくなってしまう。
一分位沈黙が続いた後、我慢出来なくなったのかクロが居心地悪そうに身じろぎして喋り始めた。
「………あー、その…ごめん」
『いや、何で謝られたのか分かりませんし、むしろこっちが謝りたいというか…。
それよりこの釈然としない気持ちはどう言い表すべきなのでしょうかね』
両者とも固まっている所に、私は自分の存在をアピールしてみることにした。
「……あのー」
「『!?』」
「ひっ!そ、そこまで驚かんでも…」
クロは飛び跳ねそうな程体を大きく揺らし、セレナも動かないながらも、声だけでこっちまで伝わってきそうな程に息を飲んでいた。
そこまで私は影が薄かっただろうか?
そう思うと何だか泣きたくなって来る。
「えーと、おはよう」
『マスター、起きたんですね』
「う、うんうん、起きたなら他に人に伝えて来なきゃ!」
慌てるように立ち上がったクロは、セレナを引っ掴み病室のドアから飛ぶように走り去ってしまった。
「………あ〜」
一人残される私。
一気にする事が無くなった私は、額に貼ってあったシールのような物を剥がしつつ、何とは無しに部屋の手洗い台の所に掛かっていた鏡に目を向けた。
「……へ?……あれ?あれれ?…………」
そこには――
「え?コレ…わた……し…?」
私によく似た、しかし小学生か中学生か判断しにくい位の年頃の女の子が映っていた。
「なんで?」
それは奇しくも数日前、自分を見てアホの所長とセレナが呟いたのと同じ言葉だった。
どうでも良いけどね、心の底から。
因みに私は十分後にクロ達に言われて私を見に来た巻奈さんに声を掛けられるまで完全に固まったままだった。
追伸:私をロリ音呼ばわりしたアホメットとセレナにはキッチリお仕置きをしておきました。
『…マヨネーズコワイ』
To be continued…,Q テスト間近だというのに自分は何をやっているのだろうか
A 現実逃避
まぁ、コレは冗談(?)としてこんばんは@PFです。
今回は鷹音が小さくなった話の導入と言う事で。
ホントは最後までやってから投稿するつもりでしたが、流石にテスト前にこれ以上続けるのはキツイので、ひとまず切って投稿しました。
何気に鷹音を書くの久しぶりなので何かキャラが安定しない気がするなぁ。
今回の対戦カードは1P王蛇、2Pシザース
簡単にキャラ解説を
王蛇:攻撃力、ラッシュ力が高いが、攻め込まれた時の切り返しが弱く、防御力も低め。
一応当て身技はあるが、持続時間が短く、タイミングがシビア。
但しセレナもクロ反射神経がかなり良いので、余り問題にはならず、実質防御力の低さだけが欠点となっている。
おまけに相手の特殊武器を奪う【STEAL VENT】を持っており、相手が特殊武器を装備している場合、それを奪って強引に隙を作る事が出来るという強みがある(相手がクウガの場合、奪っても使用出来ないが隙は作る事が可能)。
特徴として、カードの属性が武器系に偏っているが、キャラタイプが二種類存在し、通常のタイプと【ADVENT】を三枚【FINAL VENT】を四枚持っている(但し四枚目は【UNITE VENT】を使用後でないと発動不可)タイプがある。
ベノスネーカーの【FINAL VENT】“ベノクラッシュ”は他の【FINAL VENT】と違ってガード可能である物の、ノーガードで喰らえば途中で吹っ飛んで3,4発で済む所を、ガードすると吹っ飛ばない為に倍以上の数の攻撃を喰らう事になり、おまけに最初の5,6発でガードをクラッシュされて気絶してしまい、結局は3,4発喰らってしまう上、追撃のコンボまで喰らってしまう為、ガードしない方が反ってダメージが少ないと言う特徴を持つ。
また、攻撃を喰らっても怯まないスーパーアーマー持ちのキャラは、吹っ飛べ無い為にガードしないと七割以上のライフを削られてしまう、いわゆるアーマー殺しの特徴を持っている。
エビルダイバーの【FINAL VENT】“ハイドベノン”は普通に威力の高い体当たり。
見た目は地味だが範囲が縦に長い為、非常に避けにくい。
シザース:防御力が高いが、他は良くも悪くも平均的。
ボルキャンサーはAP自体は低いが、人を何人も喰って成長していると言う解釈なので、実際は他のライダーにそれほど遜色のない力を持っている事にしている。
【FINAL VENT】のシザースアタックは、発動・弾速は速いが、見た目も地味、威力も普通、範囲もそれなりでいきなり発動しても偶に避けられる。
【FINAL VENT】同士でぶつかり合って負けた場合、特殊な演出が入る仕様になっている。
このゲームでは【ADVENT】はAIで動くサポートキャラを呼び出すと言う物で、持続時間は40秒。
個別に設定されているHPを0にすると退却する。
王蛇は放っておくと最悪4vs1に成ってしまう為、対戦相手は注意が必要。
さて、早速レス返し
>YPさん
>引きニート
まぁそうですね、戦いがなければ普通に高校男子ですよ、彼は。
キメラは自制しないと必要以上に食べれてしまうので、自堕落に生きると余計に消費が速くなりますw
>弁当
まぁ自分達のやってる事が卑しく馬鹿らしいと理解して、それでもそこに全てを賭ける事を止められない者が真の狼だと拙者は思って居ます。
自分達の生き方のみが正しいと“勘違い”している内はヒヨッコ何じゃないでしょうか?
>エレメントシリーズ
コレに関しては仰るとおりです。
コイツら皆一人で町一つをアッサリ瓦礫に変えるような奴ばっかりです。
気分次第で町を壊滅させ、何百・何千もの人を虐殺出来るような存在が居ると知れれば、一般人はキメラ全体を過剰に恐れるようになり、最悪キメラと人間の戦争に発展しかねないという懸念から彼等の存在は秘匿されています。
幸い、前大戦で彼等と遭遇した一般人は、一人も生き残れなかった(遭遇=死)為、情報操作も楽だった、と言う訳です。
彼等を知っているのは、国のお偉いさん、一部の仮面ライダー、一部のキメラ研究者、各封印特区の管理者、CCC団、一部のハッカー位でしょうか?
>CCC団
この組織、元はキメラと一般人の関係をどうにかしたいと言うキメラが寄り集まって出来た組織です。
結束は割と硬いですが、繋がりがまばらで、ハッキリとした組織の体裁を取っていません。
>遊希
残念ながらそのリア充っぽいオチです…。
ただ、一筋縄ではくっつけませんよ?幾つかのルートパターンでは、どっちか死にますし。
彼女は現在CCC団の幹部に就いていますが、灰斗は人に仇成すキメラを全て殺す事を信念にしています。
少なくとも灰斗はCCC団を“悪”と認識していますから、その幹部である遊希も…。
二人の前途はかなり多難です。
因みに性格は、ヤンデレを目指してみた。
>ぴあのさん
>筋肉刑事
ですよねーw
主人公(?)であるサイトウ…間違えたサトウ…あれ?やっぱりサイトウだっけ?
とにかく彼の不幸の二割五分くらいはそれが原因じゃないでしょうか?
トリワフジユー!
鷹音ちゃんは鳥ですけどね。
>新キャラに関して
まぁ、流石に幼馴染みだったら顔を見て灰斗が何も感じないのはおかしいですから。
一瞬、その展開も考えましたけど、もう鷹音ちゃんには気になる人が居る設定なので、これ以上人間関係を複雑にはしたくない、と没になりました。
>テンションアップ
そう言えばライオン型のメダロットの頭部がこんな名前だった。
戦闘時に喋り方とキャラが変わるのは、仮にも分隊長と言う立場上、多少の威厳は必要だからという事で“作った”キャラです。
まぁ、演じている内にそれが定着してしまったと。
流石に次回を書くのはテスト後に成ります、多分。
,#000000,./bg_d.gif,i125-202-57-118.s11.a021.ap.plala.or.jp,1
2009年07月25日(土) 20時06分25秒,20090721040352,20090728200625,RX06jzA2UnYMs,仮面ライダーイズモ〜第二章「オロチVSミノス(1)」〜,豪翔,,,
「…………」
闇と静寂が支配する路地裏で、ミノスはオロチと対峙していた。
――『オロチ』。
ラドクリア曰く、神にも等しい力を持った強大な存在らしいが、眼前の男がそこまで大層なものだとは思えなかった。
そもそも“神”という存在自体を信じていないミノスにとって、想像上の力など興味の対象ではない。
こうして実際に相対し、拳を交え、策を巡らせ、互いの持てる力をぶつけ合う、弱肉強食のリアルこそがミノスの望むものなのだ。
数週間前のオロチとの初顔合わせは、ミノスを満足させられるものではなかった。
ただでさえ、契約主の女吸血鬼――ラドクリアに“殺さぬよう加減しろ”との命を受けていたというのに。
そのうえ、愚かにもオロチの契約者たるこの男は、脆弱なニンゲンの身で何の策もなく感情のままに仕掛けてきたのだ。それも二度も、だ。
“窮鼠猫を噛む”という言葉があるが、窮鼠どころか羽虫にもなり得なかった。
“加減をした自分のワンサイドゲーム”。これが初戦の結末だった。
ミノスは失望した。
契約者がこの程度では、オロチの力とやらを使ってもたかがしれている、と。
だが――
「…………」
ちらり、と視線を右腕へと移す。
――オロチの蹴りを受けた腕が熱く、そして重い。
右腕の違和感の原因となったものをミノスは思い、本人さえ気付かぬ喜色を浮かべていた。
奇襲と呼べる攻撃とはいえ、その一撃はミノスの身体を吹き飛ばし、久しく感じることのなかった“重い一撃”というものを与えたのだ。
ミノスは裡から感情の波が堰を切って押し寄せてくるのを感じ取った。
これもまた久しぶりのことだった。
久しぶりに、自分の“敵”になるかもしれない相手と出会えたのだ。
ぎちぎちと肉を軋ませながら拳を握り込み、再びオロチを見る。
「ホント、てめえにはずいぶんと恥をかかせてもらったなあ、おい!」
ごきり、と首を鳴らしながらオロチは言う。
確かにあの時までのオロチはミノスにとって、“命令がなければ捨て置く程度”の存在だった。
だが、今は違う。
――自分は今、この男に引き寄せられている。
そう、ミノスは自覚する。
「ホント、待ちわびたぜ。この時を」
――嗤う。オロチの仮面が愉悦する。
……待ちわびた。それはこっちの台詞だ、とミノスは口にせず思う。
本人さえも気付かぬ笑みを口にかたどって。
「仮面ライダーオロチ」
オロチが名乗る。“仮面ライダー”という言葉の意味はミノスにはわからない。
――だが、名乗られた以上、俺はお前に――“俺の敵”にこう返そう。
「行くぜ」
「来い、“仮面ライダーオロチ”」
――両雄、激突。
◆
「おおおっ!」
「おおっ!」
初撃。
怒号とともに打ち出されたものは、両者ともに右ストレート。
踏み込みの速さはオロチの方が速い、だが、ミノスのリーチがその差を縮め、且つ伸びを見せる。
まるで押し込められたバネを放したように、一気に伸びたストレートが先にオロチの顔面を捉え――ない!
「――!?」
打ち出された先にオロチの姿はない。
「ぐっ――!」
瞬間、脇腹に衝撃を受け、ミノスの表情が苦悶に歪んだ。
オロチの右ストレートはフェイント。
本命は、途中から強引に身体をひねっての左ボディーフック。
さらに、そのボディーフックに“纏糸”を加え、脇腹の肉を抉る。
「がああっ!」
即座に轟、とミノスの裏拳がなぎ払わんと迫る。
――速い。だが、その大振りは稚拙過ぎる。
「おらぁ!」
裏拳を掻い潜り、今度は強烈なローがミノスの左足に突き刺さる。
「おらどうしたよ? どうしたよどうしたよ、なあ? ミノっちゃんよぉ!」
ジャブ、ロー、ジャブ、ジャブ、インロー、ジャブ、ジャブ、ジャブ、フック、ロー……
ミノスを中心点とし、その周りでオロチがミノスの攻撃の間を縫って速射する。
回避を優先した、細かく、時に重い緩急を付けた攻撃が、相手を肉体的にも精神的にも追い詰めていく。
「っ――!」
防戦一方だった。
今、相対している男は、未だかつて戦ったどの相手とも違う。
自分を遙かに凌駕する怪力のある相手とも、速さのある相手とも戦った。
だが、ミノスは未だかつて“技巧”に優れた“格闘家”というものとの戦闘を経験したことがない。
それにだ、オロチはミノスと同じ“怪物”の身体能力を持ってなお、“技”を行使してくるのだ。
「はあっ!」
苦し紛れのフックを放つが、オロチには当たらない。
「甘ぇ!」
逆に、それに合わせたカウンターのアッパーが顎をかち上げ、ミノスの首を伸びきらせながら身体を後方に傾かせる。
「っしゃあ!」
間髪入れず、オロチが追撃する。だが――
「うおっ!」
踏みとどまったミノスの振り下ろすようなフックが、津波のごとくオロチを飲み込まんとする。
バック転の要領で、オロチは後方に転がりそれを回避。
肌を襲った拳圧に肝を冷やしつつ、一旦、ミノスから距離を取りはじめる。
「タフだなぁ、おい!」
オロチは失笑する。
対するミノスに、冷静さとは裏腹の余裕が感じられない。
予想外の苦戦だった。
――あの脆弱なニンゲンがこうも変わるとは……オロチの力とはこれほどのものなのか?
いや、オロチの力だけではない。あの男、戦い方が巧みだ。
ミノスは、オロチの持つ技術に対し、素直に感嘆すると共に疑問する。
――戦いの最中、自分は何を考えているのか、と。
不思議な感覚だった。“憎悪”の感情ばかり抱いていたミノスが、オロチに“好意”のようなものを抱いている。
「――面白い」
「ああ? んだ?」
無意識に出た言葉にミノスが驚く。
思いが自然と口をついたのは、ラドクリアとの会話以来のことだった。
――動揺しているのだろうか? 俺は……オロチの強さに。
ならば、“アレ”を“ラビリンス”から出すか? いや、アレはとっておきだ。
もし、アレを使うまでもなく勝利できる相手だとしたら、こちらにはデメリットしか残らない。
それに、俺はオロチを殺せない。ラドクリアはそれを『望まない』。
出せば、あの“ラビリンスの雄牛”は間違いなくオロチを殺すだろう。
“無”の時ならともかく、今の状態で解き放たれれば、抑える鎖は俺にはない。
そう、思考を巡らせていた時だった。
――あはははっ。
突然、ミノスの脳裏に高い少年の笑い声が響いた。
――誰だ?
ミノスが内心でその“声”に問う。
だが、“声”は答えない。
――創造されたものよ、声を上げて歌え。
“声”は歌う清らかな声で。
――貴様は誰だ?
声は答えない。
――創造主であり、その支配者である主である神を。
――誰だ。
ミノスは問う。
戦いの最中、こんな意味のない問答を繰り返している場合ではないことをミノスは理解している。
だが、なぜかミノスは無視できない。
――ふふふっ、あははははっ。
声は答えない。ただ楽しそうにソプラノで笑う。
――誰だと、聞いている!!
――幻聴か? それとも精神攻撃のようなものを受けているのか?
今、自分は無防備だ。そこをオロチに突かれれば……。
――あははっ。知っているよ、キミは。ボクの事を。
“声”は言う。だが、ミノスに声の主に心当たりはない。
――風よ、主を歌え。雲よ、主をほめよ。
歌う。“声”は歌う。耳障りな声で歌う。
清水のような少年の声が、ミノスには全てを喰らい尽くす濁流のように聞こえていた。
――じゃあ、教えてあげるよ、ボクはね。
笑う。無邪気に、オモチャを与えられたかのように“少年”は笑う。
―― だよ さん。ふふふふっ。あははははははっ。
笑う。 は笑う。そして歌う。
――朝日よ、さぁ歌え。夕月よ、さぁほめよ、主である神を。
「――ハレルヤ」
口から紡ぎ出された言葉と共に、ミノスは身を躍らせた。
◆
――なんだ?
ミノスの動きが突如として止まり、オロチは違和感を覚えた。
――俺を誘っている?
いや、そうではない。だとしたらあまりにも無防備だ。
――攻撃が利いている?
いや、そうでもない。たしかに、ある程度の手応えを感じてはいる。
だが、この程度であの無尽蔵な体力を削りきれるわけがないと、オロチは判断する。
――ならなぜ?
生まれる疑問に、敵の動きが止まるという好機をもってして、オロチは動かない。動くことが出来ない。
オロチの本能と龍人の経験が、オロチに“攻める”という選択肢を選ばせようとしない。
だが――
「ま、ここで慎重になる俺じゃねえわな」
己の死んでも治らぬ馬鹿さに失笑する。
だが、それが自分らしいとも思う。
「ハッハアーッ!」
下卑に笑い、身を前傾させながらオロチは行く。
視界に捉えたミノスに動く気配はない。
「ミノス上等ォォォ――ッ!」
吼え、拳を振りかぶり、
「――ハレルヤ」
「――?」
ミノスが何か言葉を発したのを聞いた。
それが何だとばかりに、全体重を乗せた拳を開放させる。
「っるああああっ!」
咆哮。そして、フルスイングした右フックが風を切り、円弧を描く。
――殺(と)った! そう、オロチは確信するが――
「甘いよ」
「――――!?」
がくん、と身体が横に傾くのをオロチは感じた。
ミノスがオロチのフックを、手刀で叩き落としたのだ。
「うおっ……!」
続けざまに飛んできた肘をとっさに左腕でガードし、その勢いのまま後方に飛んで距離を取り直す。
――やはり罠だったか。
そう、オロチが毒づきながらミノスを一瞥し、
「――――っ!?」
怖気を背に走らせ、戦慄した。
「ふふ、あははっ!」
笑う。ミノスが笑う。愉しそうに、オモチャを与えられた子供のように無邪気に笑う。
少年のようなソプラノの声で笑う。
――どうなってやがる!?
ミノスの変質にオロチは戸惑いを隠せない。
目の前のミノスはミノスではない。
言葉にしてみるとまったく意味が分からないが、漠然とオロチは確信する。
「さあ遊ぼうよ、お兄さん。やっとやっと出られたんだ、お父さんの作った迷宮から。
今、ボクはやっと自由になれたんだ。
そんなボクの目の前に、こんなに素敵なオモチャがあるんだから、思いっきり楽しまなくっちゃあ」
――なんだ? なにいってやがんだ? こいつは?
展開があまりにも突然すぎて、ミノスの言っていることがまるで理解できない。
だが、なんとなく頭が推測を導き出し始めている。
これと似たようなケースを、オロチは一度経験している。
そう、これは――
……ヒカリちゃんを操ってたイズモの嬢ちゃんと似た何か、か?
何者かがミノスの身体を操っているのでは、とオロチは推測する。
「さあ、踊ろうよ。暗い地下の迷宮から、赤い糸を辿って外の世界に出てきたんだ。
どうせ楽しむなら派手にやろうよ。ふふふ、あはははっ」
笑う。ミノスは笑う。ミノス“だった”ものが笑う。
オロチは思う。ミノスがなぜこうなったのか自分の理解が及ぶものではない。
ただ、今一つ思う事がある。それは――
「さあ、始めよう。レッツダンス・マカブル!!」
「“男の娘”じゃあるまいし、でけえ図体してきめえ声だしてんじゃねえ!」
――両雄、再度激突。
,はい。どうも豪翔です。生きてました。
今回はミノス対オロチということで、DB並の引き延ばしタイムに突入してます。
次回は莉亜と照子の話の予定です。
主人公(笑)の出番は全く考えていません。
光「作者って、本当に最低の屑だわ!」C.Vサトウユキ
〜お返事〜
>イシスさん
こちらこそお久しぶりです。これからもよろしくお願いします。
・私の応援…感無量です。その一言だけで豪翔はあと十年戦えます。
・変態龍人…下ネタ大好き人間ゆえ、許されたし…。不快でしたら申し訳ありません。
今後も下ネタは増加していくと思われます。
・ミノス…オーモイガー。
・にゃんにゃん…光の年齢を17にしたのが最大のミスでした。
…女キャラ増やそうかな。
こんな変態でよろしければ、これからもおつきあい下さいませ。
それではこの辺で失礼します。読んで下さった方に最大の感謝を。
豪翔でした
追記:誤字修正。魂スペックのテッカマンブレード買いました。
格好いいです。とくにペガスがやばいw
,#000000,./bg_b.gif,p3104-ipbf602aobadori.miyagi.ocn.ne.jp,1
2009年07月20日(月) 20時37分35秒,20090720203735,20090723203735,QQQGdM.MjhF66,仮面ライダーバルキリーたん 第17話「Testing courage」,鴎,,,第17話
「Testing courage」
視界に広がるのは突然空を割ったように白い光が降り注ぎ、やがてそれが爆発する。
何もかもが白い光に包みこまれていく。
そして、見えなくなる。
何もかもが包まれていく・・・。
空気が震える。
大地が震える。
やがて、それが静かになり、恐る恐る瞳を開く。
そして、目の前に広がる変わり果てた光景に唖然とする。
空に広がる黒い穴が周囲に渦を巻いてあらゆるものを飲み込んでいく。
それは黒い巨大な竜巻と化していた。
そして、赤茶けた空の所々で赤紫色の電撃がいくつも音を立てて荒れ狂い、雷が落ちて紫色の炎が舞い上がり、地面を焼き尽くしていく。
やがて地面は枯れ、乾き、砂塵へと変える。
崩壊していく世界の中に「俺」はいた。
「俺」だけを残して「世界」が滅んでいく。
ありとあらゆる「生命」が消滅していく。
「特異点」である「俺」は「時の変化に干渉されない」。
しかし、それはある意味この世の摂理からも踏み外れている人外の存在だとこういうとき思い知らされる。
絶望と虚無で心が食いつぶされる。
深い深い闇が思考回路の神経をペチャペチャと舐めつくす。
その時だ。
後ろから人の気配がする。
しかしその人物の気配に対して「俺」は振り返る気力はない。
いや、動けないのだ。
それは恐怖。
それは絶望。
それは、喪失感。
ありとあらゆる負の気に満ちたマイナスの感情を噴出させ、希望など全て奪い去ってしまう忌まわしい存在。
俺から「何度」も世界を奪っていった「元凶」。
「ご苦労様、晶。貴方はキングとして頑張ってきたわ。でもね、ぜーんぶ、全部無意味な行為だったのよ。キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
後ろで狂ったように高笑いをしている一人の女。
こいつが「誰」で「何をしたのか」俺は知っている。
それなのに心に残る感情は―。
「世界」を滅ぼされ「仲間」を殺されたことに対する怒りや憎しみなどではなく―。
安っぽい「正義感」などでもなく―。
ただ「絶望」という奈落の底に落ちていくような喪失感―。
ばっと目を見開き、蒲団から起き上がると、全身汗にまみれてシャツが肌に張り付いている。呼吸も荒く、心臓の鼓動も激しい。
晶「・・・・ちっ、またあの夢かよ」
晶は忌々しそうに舌打ちすると、蒲団から起き上がって部屋の机の上に置いてある水差しからコップに水を注いで一気に飲み干す。
晶(ったく、何度目だよ。つーか、時折見るからホント夢見が悪くなるのよね。あの時のことを思い出すようでさ。・・・俺はあの世界で何度も「すべて」を失っている。それをただ茫然と見ているだけしか出来ないままで・・・・)
ふと、コップを握りしめる手に力が加わり震えるコップに徐々にヒビが入っていく。
そしてそのコップに映る顔は憤怒と憎しみに彩られ、恐ろしい形相になっていた。
爬虫類を思わせるような縦に割れた眼球、全身の血液が抑えきれない興奮で噴き出す寸前にまで膨れ上がり、血管が浮き出ている。
晶「うわあああああああああああああっ!!!」
怒りに身を任せて、コップを壁に思い切りたたきつけると、パリーンとはじけるような音をたててコップが粉々の破片になって砕け散る。
もう何回目だろう。
荒れ果てた自分の部屋を見て、ふうっとため息をつく。
壁には無数の殴りつけてめり込んだ壁。何冊もの本を力任せに破り捨て、布団は引きちぎられ所々綿が出ている。壁に掛けてある時計も姿見も粉々に壊れており、すっかり荒れ果てている。
そこらじゅうの床に散乱しているストレス発散のために壊したコップやガラス製品の残骸。
晶の部屋と寝室は分かれて一室となっており、普段慧たちを入れる洋室とは裏腹に彼のすさんだ心を表わしているかのようだった。
晶「・・・イマジン・・・・レジェンドルガ・・・・全員・・・・ぶっ潰す・・・・殺してやる・・・・・ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
憎しみの呪詛を吐き出しながら、晶の姿が本来のファンガイアの姿に変わっていく。
鋭い無数の牙、全身を鋼の硬度を誇る竜を模した鱗の鎧に覆われ、筋骨隆々の肉体はあふれんばかりの力に満ち溢れており、細く引き締まった瞳は青い炎を宿しているかのようにギラギラと狂っている彼の心情を表しているかのようだ。耐えがたい怒り、憎しみが彼の心をむしばんでいた。
ティラノファンガイア。
それが彼の真の姿。
ファンガイア一族の頂点に立つ「王」の姿はどこまでも凶暴かつ絶対的な力を秘めていた。
全身から噴き出す青い炎はまるで彼の底知れない怒りを糧にするかのように燃え上がっていた・・・。
ティラノファンガイア「人間も・・・・イマジンも・・・・レジェンドルガも・・・どいつもこいつもエサ程度の存在でしかない虫けらの分際で・・・・・!!!!」
2009年7月17日
PM15:35 私立天神学園 1年B組教室
大友晶はいわゆる「人気者」の部類に入る存在であった。
ラフな性格であったし、ひと当たりもいいので、彼がたとえ女子の制服を着ていても、彼のことを見た目だけで疎んじたり軽蔑するものはなく、クラスメートが集まる輪の中にはいつも彼が笑って話しをしていた。
しかしそれはあくまで、自分の周りに敵をあえて作らず、衝突もせず、出来るだけ自分の感情を出さないでほどほどのボーダーラインを超えない付き合いを彼は心がけている。
晶(俺が本当の顔をさらけ出していいのは、俺のボーダーラインの内側に入ることを俺が許可した人間だけでいい)
それは、非常に少ない人物であった。
しかし彼はそれに満足している。
独善的で利己的かつ、大切な存在を追い求めて依存しているような歪んだ心情をおクビにも出さず、晶は今日も偽りの仮面をつけ、明朗快活な女装少年を演じ続ける。
―愛する人を「守る」ためだけに、俺は生きている―
―そのためなら命だって惜しくはない―
―大切なものを守れなかった者が再び100を求めるなどおこがましいのだ―
―1のために100を犠牲にできる決断力―
―そのポリシーのもとに戦う―
それが、俺のすべきことだ。
晶が帰り支度をしていると、晶のまわりに数人の男子生徒がやってきた。
その中心人物は小柄だが横柄な態度を露わにしているかのように偉そうに晶を見下ろしている。その取り巻きたちもニヤニヤ笑っている。
晶「何?遊佐(ゆさ)」
クラスメートの遊佐直樹に話しかける。
遊佐「おい、晶!!今日の9時絶対来いよ。来なきゃどうなるか・・・分かってるよな?」
晶「何の話かな?」
取り巻き1「あれ、知らないの?」
取り巻き2「いけね、本人に伝えてなかったわ」
遊佐「・・・・お前、天神山の麓にある廃墟のホテル、知ってるよな?あそこで今日、きもだめし大会やるんだよ。ナヨナヨしてるお前を男として磨いてやるためになっ!!」
晶「・・・はい?」
その様子を見ていたクラスの女子たちは訝しげな様子でヒソヒソ話し出す。
女子1「またあいつら、大友くんにからんでる・・・」
女子2「大友くんもてるし、勉強もスポーツもできるしね。男の嫉妬ってヤだよね」
晶「OK。面白そうじゃん?あそこ、出るらしいね」
取り巻き3「あれっ、知ってるの?」
取り巻き4「相当ヤベエんだぜ、あそこ!!なにせ、火事で宿泊客が全員死んじまってさあ、それ以来ホテルの取り壊しとか改装とか来ている業者とかが何人も原因不明の死を遂げているんだぜ?」
遊佐「ヒッヒッヒッヒ〜、こえーぞぉ、ションベンちびっても知らねえぞ〜。絶対来いよ。クラスの笑い物になりたくなきゃなあ」
取り巻き1「来なかったらクラス中に臆病者って言いふらすからな」
取り巻き2「モテるからっていい気になってんじゃねーぞ、バーカッ!!」
晶「ふふっ、楽しみにしておくよ(小学生以下だ、こいつら・・・・)」
遊佐「ああそうだ!!万が一ということも考えて、天童も誘っておいたから!!天童の前で恥かきたくはねーよなあ!絶対こいよっ!!」
取り巻き2「来なきゃ天童のことも臆病者の嫁ってことで、バカにしてやるからなっ!!」
取り巻き3「好きなカミさんは守らなきゃだよなぁ〜♪」
取り巻き4「くそっ、なんで天童みたいな美人がお前みたいなやつと・・!!うらやましいったらありゃしねえ、コンチクショウ!!」
思い思いに言いたい放題ぬかしてから、遊佐たちが去って行った。
その時、遊佐の袖からわずかだが砂のようなものが零れおちているのに気づいた。
晶「・・・・イマジンだ!!」
その夜。
慧たちはラウンジで晶から話を聞いていた。
サファイア「肝試しねえ・・・、晶も色々と大変なんだねえ」
トパーズ「それで、その遊佐とか言う奴がイマジンに憑依されているということか」
慧「何が起こるか分らないよね」
晶「・・・晶、頑張ってみるよ。慧たちは遊佐たちにイマジンの気配を感じ取られないように様子を見ていてほしいの」
サファイア「ところで、その肝試しで考えたんだけどさ、慧にこれ以上負担をかけさせないことと、あたしたちの連携プレー及び信頼関係を強化するにはもってこいではないかね?」
トパーズ「ふむ・・・・どういうことだ」
サファイア「その遊佐とかいうチビボケカスが抜かしてた肝試し、廃墟のホテル5階建の屋上に置いてあるものを持ってくればいいわけだろ?だから、肝試しで全員が協力し合えば連携も成り立つし、慧があたしたちを召喚するとき悩まずに済むし、強い信頼関係に勝る不安に対する良薬はない。これ、どうかなって」
エメラルド「おおっ、サファイアが珍しくいいことをいった。こいつぁ、明日は大雪だね」
サファイア「ちょっと、エメラルド!?」
トパーズ「いや、大地震だろう。それにな、珍しいは違う。初めてだ」
サファイア「・・・・うう・・・・風あたり辛いなあ。クスン」
琥珀「そういえばさ、ルーベットは?」
ルーベットの姿がない。
しかしサファイアとエメラルド、トパーズは邪悪な笑みをにやりと浮かべる。
サファイア「ヒッヒッヒッヒッヒ・・・一人脱落したか」
トパーズ「クックックックック・・・・ライバルは一人でも少ない方がいい」
エメラルド「アッハッハッハッハ・・・・さっき肝試しのコンセプトとか、怖い話をたっくさんたっくさん聞かせておいたから、今頃ガタガタ布団にくるまって震えてるかもヨ」
3人「頼りのないイマジンなど・・・無用なり。そして、あたしたちの株が上がれば、いつか、慧と強い信頼関係で結ばれてイチャイチャチュッチュッ、ラブラブ出来るってことさ。ふっふっふっふっふ・・あっはっはっはっはっはっは!!!」
琥珀「・・・・お前ら最低」
あまりにもドス黒すぎるというか、倒錯しきった頭の悪すぎる考えに、琥珀が呆れたようにこめかみを押さえる。
その時だ。
ルーベットが勢いよくラウンジに入ってきた。
ルーベット「戦闘準備完了ですぞっ!!!」
その姿を見て、全員があまりの光景に凍りついた。
慧「・・・・る、ルーベット?」
ルーベット「いつぞや、モモ殿のセリフ・・・使わせていただきますぞ。悪霊退治に、私、参上!!!!徹底的にクライマックスですぞっ!!!!」
そういって、手に持っている数珠だの玉ぐしだのを構えてポーズを決める。
頭には「ナムアムダブツ(本当は南無阿弥陀仏)」と書いたハチマキ、そして二本の蝋燭を指している。首には数珠だの十字架だのお守りだのにんにくの首飾りだの巻きまくり、全身にお経をかきまくっている異様極まりない姿。
ルーベット「ここここ、これでっ、お化けなど怖くありませんぞっ!!!」
サファイア「・・・・・おバカだ」
トパーズ「バカの極めだ」
エメラルド「ここまでバカだったなんて・・・・」
琥珀「バカすぎて何もいえねえ」
晶「・・・ねえ、ルーベットさん、ワラ人形でも打ちにいくつもりなのかしら?」
ルーベット「ふむっ!?いや、これは、文献などで悪霊退治はこういった服装でやるのがベストだと・・」
晶「どういった文献?」
ルーベット「サルでも出来る。萌え萌え良い子の悪霊退治ウソぴょん編、ですが」
晶「捨ててしまいなさい、そんな頭悪すぎるというかコンセプト不明すぎる電波本」
慧も晶もこんな連中と一緒に闘わなくてはならないのかと思うと頭が猛烈に痛くなってくるのであった。
もはや唯一の頼みの綱は琥珀だけである。
そんなこんなで。
PM21:00
山中 廃墟のホテル
壁は朽ち果て、窓ガラスはほとんどが割れ、落書きだらけ。いまにも何か出てきそうな感じだ。この廃墟になったホテルには、怖い物語が有って、どこかから結婚を反対されたカップルが逃げてきてこの山の中のホテルでこっそり結婚式をあげたのだが、反対していた両親に見つかり、発狂した花婿の父親に花嫁が殺されてしまったという物語だった。
その後、このホテルは、夜になると血ぬられたウエディングドレスを着た花嫁の幽霊が泣きながら歩く姿が見えるという噂が立ち、いつの日か肝試しに使われるようになったようだ。
遊佐たちが待ち構えている廃墟前にやってくると、そこにやってきた晶の姿を見て驚く。
普段の女子の制服ではなく、着崩した黒いノースリーブシャツにGパン姿はラフな格好は普通の少年のようであるが、どこか男装したボーイッシュな美少女のようにも見える。
慧「大丈夫かな」
琥珀「まっ、いざとなりゃあたしがいくしかねえだろ。唯一実体化出来るわけだし」
慧「・・・ルーベットたちは自分たちに任せろって言っているけど」
琥珀「あいつらの任せろはトラブルの予兆以外何物でもねえよ」
そう言っているのは麦わら帽子にサングラス、ワンピースを着こんで変装している琥珀だ。
遊佐「まさか本当に来るとはな」
取り巻き1「度胸あるじゃねえか」
取り巻き2「それだけは褒めてやるよ」
晶「さてと、ルールはどうするの?」
取り巻き3「・・・・ふっふっふっふ」
取り巻き4「きけ、勇者晶よ!!」
晶「勇者って」
遊佐「このホテルの屋上に、お前の大好きな天童慧の隠し撮り着替えの生写真があるんだよっ!!それとってこい!!」
晶「なっ・・・!!」
慧「なんじゃそりゃああああああああああああっ!?」
ルーベット「何ですとおおおおおおおおおおおおお!」
サファイア「ブラボオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
トパーズ「なんてすばらしい・・・いや・・・けしからん・・・いや・・・素晴らしい賞品だな!!」
エメラルド「すげえ、すげえすげえ欲しいいいいいいいいいいいい!!!」
琥珀「おい、それが男のやることか・・・て、おい、慧!?」
慧が絶叫し、遊佐の胸倉を掴んでおそいかかる。
慧「遊佐、テメェ、何のだ?何の写真だっ!?何を撮ったァ!?テメェ答えろ!!ボコボコにされねぇうちに、答えろッ!!!!」
遊佐「お、教えねえよ!!い、言ってもいいのかっ、取り巻き全員にバレたらド恥ずかしい写真だぜっ!?」
慧「ほーう、そんなに東京湾に沈みてぇか。殺す。マジ殺す。ホテルの幽霊の仲間入りでもしてくるか、この野郎!!!」
ブチキレまくり、ヤンキーの本性全開の慧が今にも殴りかからんとばかりに拳を握り締めて遊佐にかみついてくる。
晶「け、慧、落ち着いてよ!!それ取り返してくればいいんでしょっ!?」
慧「もしそれが下着姿とかパンツ丸見えだったりしたら、あたしゃ、恥ずかしすぎるわっ!!!晶、晶といえども、あたしの下着姿とかパンツとか見せるわけにはいかねえ!!そう、女はそうやすやすと男に素肌さらすわけにはいかねぇ。それが硬派一筋・ヤンキーの花道よっ!!」
晶「・・・・そうなの?」
わりとトラブルだらけの毎日で、慧が下着やパンツを事故とはいえさらしものになるのはいつものことなのだが。
それを言ったら本気で怒り狂いそうになるので黙ることにした。
慧「そう、そういうことなの。なら、あたしがいくわ。遊佐ァ、写真のネガの在りかも教えなさい。教えないとあんたの家のパソコンだのカメラだの片っぱしから・・・・ぶっ壊す。鉄パイプ片手に特攻服着てお礼参りに行くぞ、この野郎ッ!!!!!」
遊佐「わわわわわわわわ、分ったよ。ネガっつーか、パソコンのCDに焼いてあって、それが今回の賞品なんだよ!!このホテルの屋上にあるよっ!!」
慧「一枚だけじゃなかったのか、この野郎っ!!!」
遊佐「だだだだってよぉ!!お前、しょっちゅう川に落ちたり泥んこになったり、落ちてきたペンキ缶のペンキ浴びたりで、結構隠し撮りできる機会多すぎるし!!」
晶「うわっ、決定的なこと言っちゃった」
慧「上等よ。こうなったらこの肝試し、あたしがやる・・・」
慧が指をボキボキ鳴らしてホテルの奥へと消えていった。
猛スピードで走りだし、その後をあわてて晶が入口から追いかける。
その直後だった。
遊佐が起き上がろうとすると、突然大量の砂が噴出し、みるみるそれが2体のイマジン少女の姿に変わっていく。
取り巻き1「うわあああああああああっ!?」
取り巻き2「お、オバケエエエエエエエエエエエエッ!!?」
取り巻き3「に、逃げろおおおおおおおおおおお!!」
取り巻きたちが慌てて倒れている遊佐を置いて我先に飛び出していく。
それを見て、2体のイマジン少女たちがニヤリと笑う。
それぞれ、「サルカニ合戦」のサルをイメージしたエイプイマジンたん、そして、ワタリガニをイメージしたクラブイマジンたんである!!
エイプイマジンたん「へへへへ!!!上手くいったな!!」
クラブイマジンたん「そうですねぇ・・・。バルキリーと・・・チェックメイトフォーのキング・・・・二人にはあたしたちのゲームの手ごまになってもらうとしましょうか」
エイプイマジンたん「早速やろうぜっ!!大体さ、願い事叶えろだの、過去に飛べだの、やってられっかてんだ!!あたしたちはあたしたちのやりたいとおりにやらせてもらうってな!!あははっ!!」
クラブイマジンたん「ふむ・・・・おやおや・・・・あの子たち気の利いたものを買っていたようですね・・・。まずは、乾杯でもしましょうか・・・エイプの姉さん」
エイプイマジンたん「おおっ!!まだキンキンだぜぇ、これっ!!飲むぞ飲むぞ」
そういって、コンビニの袋から冷えに冷えた缶ビールを取り出し、ポテトチップスをツマミに缶を開けて、冷たいビールを飲み干す。
「「かんぱぁ〜い!!」」
エイプイマジンたん「ぷっはああああああああああああ!!!一度飲んでみたいと思ってたんだ、これっ!!」
クラブイマジンたん「それはそれは・・・・よかったですねえ・・・」
エイプイマジンたん「さてさて、早速始めようぜ!!あの二人なら面白いゲームになりそうだぜっ!!」
クラブイマジンたん「盛り上げるためにこんな場所まで探しましたもんねぇ・・・。さて、ルールはこの廃墟と化した幽霊ホテルをどっちが先に脱出出来るか・・・ですね?」
エイプイマジンたん「それそれっ!!ゴクゴクッ・・・プハーッ、それでよっ、賭けるものは・・・あたしは1万円!!」
クラブイマジンたん「私も・・・・1万円」
そういって、遊佐の財布から2万円抜き取ると、遊佐をホテルの玄関からぶん投げて転がり捨てた。
この極悪非道にしてイマジンとしての役目も放り投げている不届き(?)極まりない二人はどうやらこの先の人生を面白おかしくやりたいようにやるらしい。
まずは邪魔もののバルキリーとキングを葬り去るべく、ゲームの対象として遊ぶことに決めたようだ。
エイプイマジンたん「必殺!!」
クラブイマジンたん「メイク・ザ・ダンジョン〜♪」
そういって、ホテルに怪しい紫色の光を発すると、ホテル全体の空間自体が歪み上がって、やがて混沌とした空間を作り上げていった・・・。
その気配にイチ気付いたのはルーベットであった。
ルーベット「この気配はイマジン!?慧殿、憑依いたしますぞっ!!」
そういって、慧の体に憑依し、赤いメッシュを編みこんだポニーテールの髪形に変わる。
R慧「何か異様な気配を感じます。気をつけて進みますぞ!!」
慧(ご、ごめん、ちょっとあたしどうかしてた)
R慧「しかし・・・・今の気配は・・・何だったのでしょうか?・・・うん?あれ?」
ルーベットがおかしそうに顔をしかめる。
慧(どうしたの?)
R慧「トパーズたちと通信が取れない?どうなっているのでしょうか?」
慧(まさか!このホテルにいるイマジンが?)
R慧「それなら、晶殿も危ないですぞ!!」
慧(晶!!あたしのせいで、巻き込んじゃった・・・。探さないと!!)
R慧「落ち着きなされ。もしこれがイマジンの仕業ならこのホテル全体が奴の仕掛けたワナそのもの。迂闊に突き進むと、何が起こってもおかしくはないですぞ!!」
その時だった。
「Priiiii・・・」
慧のポケットに入っている携帯電話が鳴りだし、廃墟の静まり返ったホテル内に響き渡る。
慧がとる。
R慧「はい、慧です」
晶「その声はルーベット?晶だよ、慧は無事なの?」
R慧「おおっ、晶殿。無事でしたか!!」
慧(よかった・・・)
晶「今、慧を追いかけてきたはずなのに、いつの間にかホテルのダンスホールにいるの」
R慧「ダンスホールというと・・・4階ですぞ」
晶「なんだか階段もドアも繋がりがメチャクチャになっちゃってる。これ、イマジンの仕業なのかな?」
R慧「十中八九間違いないでしょうな」
晶「慧、どうしよう?」
R慧「晶殿。まずはそこから一歩も動かないで下され。私たちが貴方のいるダンスホールを目指せばよいのでしょう?今から迎えにいきますぞっ!!」
晶「ええっ!?け、慧はどこにいるの!?」
R慧「今、1階の廊下です」
晶「慧、あまり無茶しないで」
エイプイマジンたん「ははっ、通信を使ってお互いの状況を把握したってムダだぜ」
クラブイマジンたん「どうされるのですか?」
エイプイマジンたん「まあ見てろって!!いっけぇ、分身よ!!」
そういって、髪を数本とると、息を吹きかけて風に流れてホテルの中へと飛び出していった。
やがてそれらがエイプイマジンたんの無数の分身に変わり、武器の二本の長剣を構えて牙をむいた。
1階の廊下に集団のエイプイマジンたんが流れ込む。慧が身構えた。
R慧「ふんっ、とことん性根が腐ったイマジンのようですな。覚悟!!変身!!」
慧が腰にバルキリーベルトを巻きつけ、パスを通す。
慧の全身に赤い光が取り囲み、タカを模した仮面と甲冑をまといあげ、Vガッシャー・ランスモードを構えて仮面ライダーバルキリーたん・ランスフォームが構える。
Lバルキリー「その罪、閻魔に代わって斬る!!」
一方4階ダンスホールでは。
無数のエイプイマジンたんの集団を前に、晶がやれやれと言わんばかりに両手を開いて首を振る。
晶「ふうん・・・・・こう来ますか。それじゃ、クズはクズらしく・・・灰になって散りな」
同じく晶がワイバーンベルトを巻きつけ、ワイバーンソウルを装填する。
晶「変身!!」
晶の全身に青い稲妻がまとい、その姿を青い竜を模した甲冑と仮面を装着させ、稲光とともに鋭い刃を持つ槍・キングジャベリンへと変化する。
Kワイバーン「王の名のもとに・・・処刑するッ!!」
威勢良く掛け声をあげると同時に無数のエイプイマジンたんの分身集団が襲いかかってきた。
ランスフォームがランスを構えて、的確な槍さばきで次々と敵を切り、薙ぎ払い、突き上げる。猛然とランスを縦横無尽に振り回し、エイプイマジンたんを倒していく。
ダンスホールでも、キングフォームがキングジャベリンを構えるや否や、刃から青い稲妻を召喚し、それを敵に向けて発射する。青い高圧電流に当たった敵は断末魔の声を上げながら全身を青い炎で包まれてみるみる灰になっていく。
Kワイバーン「慧を探しに行かなきゃならないんだよ。お前らなんかさっさとくたばれっ!!」
キングジャベリンから勢いよく青い炎が竜の口から吐き出すかのように発せられると、そのまま槍を振り回し、周囲を円で囲むように群がっていたエイプイマジンたんに向けて大きく回転しながら一気に槍で切り裂く!!!
青い焔の刃で焼き切られたエイプイマジンたんが次々と爆発をあげて消滅していく。
そのころ。
ビショップ、クイーン、ルークは手の甲に宿している紋章が青い光を発していることに気づき、表情に緊張の色が浮かぶ。これは緊急警報のあかしだ。
ビショップ「キングに何かが!?」
クイーン「ギザヤバす!!」
ルーク「キング、何巻き込まれてるんだよっ!?」
3人が紋章の光を頼りに走り出そうとしたその時だった。
緑色のロングヘアを紐で短く束ねており、無表情ともとれる顔立ちは浮世離れしている妖艶な美しさが感じられ、一見美少年のようにも見えるYシャツに緑色のネクタイ、スラックスを着込んでいる少女が現れる。
そして、手を緑色の光を発すると、横に大きくふるい、鋭い切れ味のカッターとなって飛び出し、3人を襲いかかった。
3人が飛びのいてよけるが、近くの彫刻が直撃し、粉々に砕け散った。
草薙「ヤボなことするなヨ。今、お楽しみなんだからサア・・・・」
ルーク「テメェ、レジェンドルガかっ!!」
クイーン「変身よっ!!」
草薙「ふふふ・・・・あはははははははは!!!」
草薙が高笑いしながらカマキリをイメージしたウォーサイズレジェンドルガに化身し、鋭い両腕の鎌を構えて再びカッターを発射してきた。
ルークが紫色のワイバーンベルト、そしてビショップとクイーンがそれぞれベルトを持ち、ソウルポッドを装填する。
「「「変身!!」」」
それぞれが紫色、銀色、赤色の光が包み込み、クイーンには始祖鳥をイメージした赤い甲冑と仮面を装着し手にクイーンボウガンを握りしめたクイーンフォーム。
ビショップはサーベルタイガーをイメージした甲冑と仮面を装着しビショップブレードを構えたビショップフォーム。
そしてルークは全身に重厚な紫色のカメを模したアーマーを装備し、仮面を装着させると、手には紫色の亀の甲羅を模した柄の先に巨大な鉄槌が埋め込まれたバトルハンマー・ルークハンマーを構えたルークフォームに変身する。
Bワイバーン「さあ、神に祈りなさい・・・」
Qワイバーン「貴方に永久の安息と眠りを与えん・・・」
Rワイバーン「超特急であの世に送ってやるッ!!」
3人がそれぞれ武器を構えると同時に飛び出し、ウォーサイズレジェンドルガが再び緑色の光を鎌に宿らせ、一気になぎ払う!ルークフォームが躍り出てさながら重戦車のごとくものすごい勢いで突進し、タックル攻撃を仕掛けてくる。
さらに後ろからビショップフォームが出てきて、ウォーサイズレジェンドルガの横から剣を大きく薙ぎ払ってくる。そして後ろから精巧な命中率を誇るクイーンフォームの銃弾がウォーサイズレジェンドルガの体の各所部分を狙って発射される。
ウォーサイズレジェンドルガ「ふん!!」
Rワイバーン「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
Bワイバーン「はあああああああああああああああ!!」
ウォーサイズレジェンドルガの刃とルークハンマー、そしてビショップブレードの一撃がぶつかり合い、まぶしい白い光が何もかもを発し、あたりにあるものが衝撃波で吹き飛び、粉々になっていく。
今、ここに時同じくして激戦が繰り広げられようとしていた。
続く
,お久しぶりでございます!!!
新作ようやくできました!!!
ネタがなく、どうやって物語を進めるのか悩んで悩んで・・・大変でした。
面白いものを作ることはこうやって考えることも楽しいと思えることが大切なのかもしれないと考えさせられました。
今回からキングフォームとバルキリー、2大ライダーがそれぞれの思惑を胸に動き出す展開を書き出すことにしました。
次回からはどんどんキングたちの過去、晶と慧のつながり、イマジンたちの行方を書いていきたいと思います。
>烈様
いつも感想ありがとうございます。
キバライナーと慧の過去に関することですが、次回から徐々に物語の中で明かしていきたいと思いますので、ご期待くださいませ。
>それと普段の彼と“キング”としての彼の姿のギャップが結構すごいと思いました。
二面性のあるキャラを書くのはいかに相手にばれないように書くか、ばれそうになる展開とか本気で表現力の乏しかったため試行錯誤の繰り返しでした。今回の話でも少し書きましたが、晶は一種の「ヤンデレ」属性のようなものだと思ってくだされば結構です。慧以外の存在を「虫けら」か「カス」としか思えない冷淡で自己中心的なエゴイストな一面もありますが、見方を変えると
それだけ一人の相手を思うことができる純真無垢で繊細な彼の内面を表せるようにしました。
>『カラミティライダーキック』というのが結構派手な感じがしてなかなかカッコいいと思いました。
ありがとうございますっ!!そう言っていただけると今後の作品を書くときのエネルギーになりますっ!!
>4649様
はじめまして。
仮面ライダーバルキリーを読んでくださりありがとうございます。
今後とも長いおつきあいができるよう、よろしくお願いいたします。
次回もよろしくお願いいたします。
,#000000,./bg_f.gif,lo66.041.geragera.co.jp,0
2010年08月25日(水) 22時02分43秒,20090715210921,20100828220243,J1NG01ZRvHMAY,仮面ライダー珀羅 『翡翠の鬼と風の天狗《後編》』,青嵐昇華,,,
子供の頃は夜になるとよく父さんの所へ星を眺めにいった・・・
「お前は星が好きか・・・・?」
「うん、父さんは?」
「そうだな、美しい星を眺めるのは私も好きだ・・・・・・・・」
その森から見上げるのは黒い絨毯(じゅうたん)いっぱいに宝石を散りばめたような・・・・そんな綺麗な空だった。
その日、父さんは静かに俺に言った。
「・・・濠、お前に話しておかなければならないことがある・・・・・・・」
父さんは昔のことを・・・人間を守るために羅喉という凶星と戦ったこと、一部の神の裏切りで世界の敵になったこと、永い時を経て母さん達に救ってもらったこと、羅喉が人界を見守ると決めたこと、その全てを俺に話してくれた。
そんな話を聞かされて俺も最初驚きはした。
だが、すぐに受け止められたのは俺の中にも父さんと同じ血が流れているからだろう。
「計都・・・・」
その名前が出てきたのは話の最後の方だった。
「羅喉と共に降りて来たもう一つの凶星だ。」
父さんが計都を見たのはそれが最初に地上に降りてきた時だけ、それから先はただの一度も姿を現していないらしい。
それがいったい何なのか、父さんにも分かっていなかった。
ただ言えるのは羅喉とは違う凶星がまだどこかにいるかもしれないということだ。
「皆を守らねばならない私にはもう力が残されていない。私にはこの手が届く僅かな所までしか誰かを守ることが出来ない・・・・・しかし濠、お前は・・・・」
「お前の救いたい者を救い、守りたい者達を守れ・・・!」
「ん、ぅ・・・・・・・・」
ぱちっ
鴉美「あれ・・・・・ここは・・・・」
恭也「オレん家だ。濠のやつも一緒に住んでるんだぜ。」
鴉美が目を覚ますとそこには知らない天井があってすぐ横には先ほど知り合った少年が座っていた。
ここは恭也の家『雷鳴堂』の客間だ。
部屋の真ん中に布団を敷き、鴉美はそこで寝かされていた。
恭也「大丈夫か?こっぴどくやられたようだけど・・・」
鴉美「起き上がれないほどではありません。確か恭也さんでしたね、何故私はここに・・・?」
恭也「あんたが土の化け物にボコられた後気絶しちまってたんでオレと濠・・・・主にオレがおぶって来てやったんだよ。」
鴉美「そうだったんですか・・・」
背中で語らずそれを口に出しちゃう、自分に正直なのが恭也という少年だった。
恭也「あー、でも悪ぃな・・・・」
鴉美「え、何がです?」
恭也「いや・・もうちょい早く着いてりゃ・・・・」
鴉美「ぁ・・・い、いえ!その・・・・ありがとうございます・・」
正義を重んじ、常に真っ直ぐな生き方を信条とする鴉美という少女は他人の厚意とか親切というものが本当に嬉しかった。
恭也「まぁ、気にすんな。オレ運んだだけだし・・・・(´∀`)」
当然、率先しておんぶしてきたのは背中に当たる天然桃のやふとももの感触を楽しむ為ではない・・・・はずがない!(ぉ
思い出しながら少しニヤニヤしてるのがどうも情けない恭也だった。
鴉美「でもアイツはどうしたんです?襲われませんでしたか?」
恭也「んー、あいつか?濠が変神していざ尋常に勝負〜って時に逃げられちまったぜ?」
そうこうしているうちに外に偵察に出ていた濠が戻ってきた。
恭也「お帰り&お疲れさんっ。」
濠「あぁ・・・周辺は大丈夫そうだったが念のため家の周りに結界を張っておいた。・・・・目が覚めたようだな。」
鴉美「あなた、戦う力を持ってたんですね・・・」
濠「あぁ、故あってここの土地神と契約している。」
鴉美「ええっ!?あの白澤様とですか!?」
濠はあっさりしているが白澤は土地神の中でも八神の獬豸(カイチ)と並んで称される重鎮だ。
(カイチはもう土地神を空狐に譲り渡しているが)
一下っ端天狗の鴉美は相当驚いたようだった。
濠「話してくれないか、天狗達の間で何が起きたんだ?」
鴉美「・・・あなた達ならお話しても大丈夫みたいですね。」
鴉美「ほんの数日前から大天狗様を始めとする仲間の様子がおかしくなりました。普段はみんな穏やかで争いを好まないんですが・・・・急に気性が激しくなって人間を追い出してこの土地を乗っ取ろうと言い出したんです。」
恭也「土地なんかぶんどってどうするんだ?」
濠「おそらく狙いは龍脈だろうな・・・」
龍脈というのは地下を流れる霊気の通り道で、そのエネルギーは森羅万象の生命の源と言われている。
十数年前に八神で起きた凶星との最終決戦は黄龍が召喚されたことで羅喉は星の意思を理解し、戦いは終結した。
だが龍脈を司る黄龍を呼び出したことで様々な問題も発生していた。
代表的なのは完全に納まりきれず地上に残ったままの膨大な霊力に中てられ、一部の妖怪などが凶暴化したことや
今まで地中深くまで沈み込んでいた龍脈の一部が地表近くまで隆起して第二の八神のような土地を作ってしまったことだ。
この町は後者にあたり濠がやってきたのもその調査のためだった。
鴉美「お願いします!私に協力してもらえませんか!?みんなを元に戻したいんです!」
濠「分かっている。異変の解決は俺の仕事だしな。」
恭也「でー、その龍脈ぶんどった後は?よその土地もぶんどりに行くとか・・・・?」
濠「そんなことをすれば大きな混乱になる。人間だけでなく他の妖怪や神とも戦うことになるぞ。」
鴉美「ええ、だから私はこの団扇を持ち出したんです。」
確かに天狗の切り札とも言える風神の団扇は大きな力を秘めている。
逆にそれを失いさえすれば天狗は迂闊に動けなくなるはずだった。
恭也「だいたいの話は分かったぜ。とりあえず天狗達がおかしくなった原因探さないとな。」
鴉美「恐らくアイツのせいです。戦ってたときも私に『妖魔の中にも吾を拒むものが』とか言ってましたし、間違いないかと。」
恭也「そういや何で鴉美だけ取り憑かれねぇんだ?元から変な奴にはかからないとか?」
鴉美「私は変じゃありませし、あなたにだけは絶対言われたくありませんっ!」
恭也の言葉に猛反論する鴉美。
変な奴呼ばわりされるのは乙女のプライドが許さないらしい。
鴉美「・・・多分私が純粋な天狗じゃないからですかね。ハーフなんですよ。ほら、私ってちょっと他の天狗と違うでしょう?」
恭也「へー、言われてみればそうだよな。今は羽も出てねぇし丸っきし人間に見える。」
鴉美「って、そんなのはどうでもいいんです!兎にも角にもあの土の化け物をどうにかしないと!」
濠「・・・・・考えがある。少し電話をかけさせてくれ。」
濠はごそごそと携帯と取り出しどこかに電話し始めた。
トゥルルルルルルル・・・・ッ・・
濠「もしもし・・・・チー姉さんか?あぁ、俺だよ。・・・あぁ、いや・・・・こっちで少しな・・・あぁ、持ってきて欲しいものがあるんだ。」
鴉美「どこにかけてるんです?」
恭也「たぶん実家だろ、八神にあるアイツん家。」
察するにどうも天狗の中に入ってる者を引き剥がすのにちょうどよいアイテムがあるようだ。
濠「あぁ、それじゃたの・・・・−−『ジジジッ』−−・・む、姉さん、聞こえるか?姉さん?・・・・」
恭也「どうしたんだ?」
急に電波の繋がりが悪くなり、電話が通じなくなった。
その後家族の携帯にもかけてみるのだが一切通じることはなかった。
濠「まずいな・・・通信が遮断された。母さんにも叔父さんにも試したんだがどれも通じない・・・・どうやら町ごと結界か何かで封じられたようだ。」
鴉美「そ、それってどの程度まずいんですか!?」
濠「・・・用件は全て伝えた。この町に入るのに結界があったとしても姉さんは力尽くで破ってくるだろうから問題はないが・・・・・・」
恭・鴉「「が・・・・?」」
その微妙な言い回しに恭也と鴉美は同時に食いつく。
濠「・・・流石は天狗と言ったところか、よほど目の良い奴がいるんだろう・・・・このタイミングでの妨害、まず見られているな。」
鴉美「た、確かに・・・仲間の中には建物などを透視出来る千里眼を持つ者はいます!ここが見つかっていても不思議じゃありません!」
濠「やはりそうか・・・それならここに来るのも時間の問題だな。」
鴉美「・・・すみません、もっと早くに気付くべきでした。」
恭也「透視かー・・・なんか素晴らしい響きだな。」
鴉美「・・・あ、あのですねー・・・」
バカが一人違う所に食いついているようだ。
鴉美が引きつった顔をしていると・・・・・・・
ゴォン!ゴォン!
鴉美「っ!?」
外で何かがぶつかる鈍い音がする。
結界のおかげで家自体には損傷はないが、天狗の追っ手はすぐそこに迫って来ていた。
鴉美「ど、どうしますか?」
濠「・・・直接相手をして時間を稼ごう。恭也は家の中で待っていてくれ。」
恭也「おう、言われなくてもそのつもりだぜ。」
結界は内側からなら通り抜けられるよう細工しておいたので濠と鴉美は素早く外へ飛び出すことが出来た。
日は既に暮れていて辺りは夜の闇が支配する世界に変わっていた。
空では数十羽の天狗がこちらを見下ろしている。
スゥ・・・・・・
濠が月に手をかざすと光がその手に集まり一枚の札になってゆく。
それを腰に当てると光の帯が伸びて繋がり、ベルトのようなものを形作った。
濠「変神!」カッ!
鴉美「召嵐・・・・変神!」ブゥォォォ!
濠が翡翠色の宝石をベルトへはめ、鴉美が風神の団扇を振るうと二人に一瞬で鎧が装着される。
珀羅「ここでは家を巻き込みかねない。少し離れるぞ。」
嵐羽「了解です!」
町外れには昔から人の手の入っていないところがたくさんあり、中に入っても動き回れるような広い竹林なども数多く存在する。
二人が向かったのはやはりそのなかのひとつだった。
ビュン・・ビュン、ビュン!
珀羅「流石に速いな・・・・・」
足の速さは天下一品と謳われる天狗。
すぐに濠達に追い付き、周りを取り囲むと猛スピードで向かってくる。
「ちぇあああっ!」
珀羅「だが反応ならばこちらも負けない!」スッ
「消えた!?」
珀羅「はっ!」ドスッ!
「うっ・・・・・」
接触ギリギリのタイミングで相手を見失った天狗は目を回して一瞬ガードががら空きになる。
それを上手く利用し珀羅は天狗に一撃入れて昏倒させた。
嵐羽「はぁっ!」タンタンタン
「ぐっ・・・・・」
嵐羽「せぃっ!」タンッ!
「がぁっ!?」
こちらでも戦いは繰り広げられている。
嵐羽は軽い手刀を連続して打ち込み、天狗の防御力を削ってゆく。
最後の止めとして裏拳を叩き込みそれを戦闘不能にさせた。
珀羅「次は誰だ、自信のある奴からかかってこい!」
嵐羽「ごめんなさい、でも今は眠っててください!」
珀羅は無駄のない動きで天狗の攻撃を交わし、長く修行を積んだ天狗でさえも危なげもなく鎮圧。
嵐羽は素早い動きで相手を翻弄し、着実に無力化させてゆく。
そうやってすぐに最後の一羽を残すのみとなった。
ドスッ
「うぐぁ・・・・・・」バタッ
珀羅「とりあえず片付いたか。」
嵐羽「いいえ・・・来ます!」
ほんの数分で全ての天狗を倒し終わっても鴉美の警戒が緩むことはない。
当然、この後やって来るものを分かっているからだ。
パサァ・・・・・
倒された天狗たちから上る砂が魔人を形作ってゆく。
土《ゴウ・・・》
珀羅「話してもらうぞシャニ、お前達は・・・・計都は何をしようとしている!?」
土《・・・・・・》ジャキッ
魔人は黙ったまま武器を構えた。
話すことは何もないそう言っているかのように・・・・
珀羅「それならいい・・・お前達がどうあろうと俺が止めるだけだ!」
ずずずずずずず・・・・・・・
恭也「ふぅ・・・あいつらは大丈夫かねー・・・・」
既に濠達が出て行って数十分が経っている。
ただ一人で待つというのも退屈で何をしたらいいかわからないものだ。
(かといって付いていっても何も出来ないのだが・・・)
とりあえずと飲んでいたお茶も飲み終えてしまったので本当にすることがない・・・・
ガツーーーーーーーンッ!!
恭也「うぉぁ!?」
突然何かがぶつかるような音がして、まるで地震でも起きたかのように家が揺れる。
先程よりもだいぶ大きな衝撃だ・・・・
恭也「うわー、天狗戻って来たのか・・・どうするオレ!?ってライフカードも持ってねぇ・・」
喧嘩は弱い方ではないが、はっきり言って人外の相手を出来るほど化け物地味た体力は持ち合わせていない。
どこまでいっても恭也はそこら辺に転がってそうな男子高校生である。
ガツーーーーーーーーンッ!!!・・・・パリッ・・・・・
恭也「えー!?なんか嫌な音がしたんだけどーー!?『ガツーンッ!!』ちょっ、濠ー!!ゴぉーーー!プリーズカムバァァァアック!?」
パリィインッ・・・・・・・・・
恭也「あ。」
「お邪魔しま〜す♪」
どうやら結界が破られてしまったようだ。
玄関の戸がガラガラと開けられ、誰かが入ってくる声が聞こえる。
恭也「うわー!?どーする、どーするよオレ!?続きはウェブでとか言ってる場合じゃねー!?」
そしてとうとう部屋のドアが開けられ・・・・
「こんちゃ〜っす♪濠くん久しぶり〜♪」ひょこっ
恭也「へ?」
「およ、いないのか・・・・マカラもとばしてくれたんだけどな〜・・」
天狗かと思えば入ってきたのは恭也達よりも少し年上ぐらいの女性。
動きやすそうなTシャツにデニムのショートパンツ、茶髪のショートボブのお姉ちゃんはにっこり笑って恭也に言った。
「ねぇねぇ、そこのキミは濠くんのお友達かな?お名前なんての?」
恭也「お、大峰恭也っス。・・・えーと、お姉さんが濠んとこの?」
冢杏「そうだよ〜、ボクの名前は冢杏(チョウコウ)、呼ぶ時はチョコちゃんと可愛く呼ぶようにっ♪」
嵐羽「征嵐剣!!」サッ
嵐羽が腰から団扇を引き抜くとヤツデの葉のように分かれた鋼鉄の刃、その中央の一本が伸びて両刃の剣のになる。
空を疾走する嵐羽はシャニに斬りかかってゆく。
嵐羽「はぁっ!」
土《退け、扇を渡せば汝に用はない・・・・》
嵐羽「あなたに無くたってこっちにはあるんです!さっさと倒されてみんなから出てってください!」
ガンッガンッガンッ!
互いの武器がぶつかり合い火花を散らす。
最初はプレッシャーに押されていた鴉美も仲間を元に戻すためと気合が入ったようだ。
嵐羽「もらいます!」ザッ
土《それしきで・・・・》
嵐羽「くっ、堅いですね!」
嵐羽の一撃はスピードこそはあるものの重量感が足りず後一押しに欠けていた。
それでは二、三撃入ったところでシャニにはまったく効いていない。
珀羅「下がれ!!」
嵐羽の攻撃が通用しないとわかるや否や、すぐさま珀羅がその間合いに飛び込んでくる
土《ゴウ・・・・『シュルルル』っ!》
シャニも反応して斧を振ろうとするが、何かに絡みつかれて身動きが取れない。
それは嵐羽が操る風の糸だった。
嵐羽「今です!」
珀羅は二つのトンファーの刃先に念を集中させ完全に間合いに入り込んだ。
珀羅「念心爆砕・・・・!」
土《っ!》
珀羅「穿孔双角撃(バイコーンドライブ)!!!」ダァァンッッ!!
土《ぐぉっっ・・・っ!?》
ドガァアアアアアアアアアアアア!!!!
二つのトンファーを一点、シャニの胴体にぶつけるとそこで念が一気に膨れ上がり爆発が起こる。
シャニはその衝撃で大きく吹き飛んで行く。
嵐羽「やったんですか?」
珀羅「・・・・・・・いや、まだだ・・」
濠の視線の先にはゆらりと立ち上がる魔人の姿があった。
土《・・・・・・・》シュゥゥゥゥ
ボロボロになったシャニは微かに光を放ちながらその姿を消して行く・・・
砂に変わり再び天狗の中へ入り込もうとしているのだ。
嵐羽「みんなを隠れミノにするつもりですね!?」
珀羅「やはり奴を天狗達から引き剥がさなければ・・・−−『ヴゥンンッ』−−・・・む?」
ヴゥンンンッッ!!
珀羅「この音は・・・・・・」
響いてくるのは馴染みのある懐かしいエンジン音。
一台のバイクが竹林の向こうの方から走って来ていた。
冢杏「お〜い、濠く〜ん!」
恭也「濠ー、鴉美ー、頑張ってるかー?」
濠の父達が力を結集して作り上げた走行機龍、真空(マカラ)に乗っているのは八神から応援に来てくれた冢杏、その後ろには恭也が掴まっていた。
嵐羽「な、何で恭也さんまで・・・・」
恭也「なんかクライマックス臭がしてな。濠、しっかりやれよー!」
珀羅「分かっている。チー姉さん、“金輪”を!」
冢杏「ほいよっ♪」シュッ!
パシッ
冢杏が投げたそれを珀羅はキャッチして左腕にはめる。
珀羅「転神!!」
カァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
恭也「うぉっ、まぶしっ!?」
嵐羽「ご、濠さんの鎧が・・・・!」
翠と白を基調とした鎧が光り輝く金色に染まって行く。
頭の二本の角は左右に展開、拡張し雄々しい四本角になった。
珀羅(金)「珀羅『金剛』・・・・・!」
貔貅(ヒキュウ)の金輪、濠の母が以前力を借りていたもの
金気(ごんき)と破邪の力を操る聖なる神具だ。
珀羅(金)「はぁぁぁぁ・・・・!」ゴォォォォオ
『金剛』となった珀羅は光の波動を天狗達・・・それに取り憑いているシャニに向かって放つ。
・・・・・・・・バンッ!
土《何だと・・・!?》
すると弾き出されるように魔人は姿を現した。
再び戻ろうとしても結果は同じ・・・シャニは天狗への侵入を封じられた。
土《ゴウ・・・・!》
珀羅(金)「貔貅の力で天狗を清めた。逃げ場は塞いだぞ!終わりだ、シャニ!」
土《ならば、吾が滅びを以ってケイトゥ様が望みに足る証とせよ!》
珀羅(金)「言われなくても・・・・お前を倒す!!」
珀羅は周囲から金気を集め、手にしたトンファーを別の武器、刺又(さすまた)に作り変える。
珀羅(金)「はぁっ!」シュッ!
土《ぐっ・・・》ザクッ
珀羅はそれを投擲し魔人に突き刺した。
するとその身体はブロンズ像のように固まって行く。
珀羅(金)「鬼面嚇妖・・・・・!」
金の鬼の足に金気、そして邪を祓う聖なる覇気が集中する。
珀羅は大地を駆け出しシャニに向かって必殺の蹴りを放った。
珀羅(金)「覇皇穿掘脚(インペリアルケイブド)!!」ガァアアアアアア!!!
土《ぬぅぅぅ・・・・がぁっっっ!??!?》
ドゴォォォォォォオォオォオォオォオ!!
珀羅の足から黄金の波動が解き放たれシャニを貫いた。
土《ゴ・・・これで・・・・なん・・・じ・・は・・・》
珀羅(金)「計都が人界を乱す存在ならば、俺がお前達を調伏する。俺は・・・・・」
土《・・・・・・》サァァァァァァァァ
魔人の身体が光に変わり消えて行った・・・・
珀羅(金)「俺は阿修羅(アスラ)を継ぐ者だ!」
《ケイトゥ様・・・》
どこともわからないような不思議な世界、暗黒の中遠くの方で微かに光が瞬き合っている。
そんな空間を歩く白銀の魔人は玉座で眠っている白い衣を纏った男、“計都”に呼びかけた。
計都『ソーマ【月】か、どうした?』
月《・・・シャニが滅びました・・》
計都『・・・そうか。』
計都は無表情で何を考えているのかわからなかった。
変わりにソーマと呼ばれた魔人が言った。
月《ケイトゥ様は何故あの者を?》
計都『ゴウか・・・吾が半身ラーフ【羅喉】が認めし者、羅刹天の子・・・そして・・・』
月《・・・・戦神と名高い羅刹天では・・・・》
計都『羅刹天は既にその力のほぼ全てを失くしている。だがその子ならば・・・吾が望むに足るやもしれん。いや、その為に阿修羅の姫を転生させたのだ・・・そうでなくては。』
月《シャニを滅したとはいえ、あれしきでケイトゥ様の・・・・》
計都『奴の力はまだ目覚めていない・・・次を用意せよ。よいな。』
月《・・・・・・仰せのままに・・・・》
恭也「ふあ゛ぁぁ、よく寝た・・・・・・」
二学期最初の授業は朝から行われる化学の課外だった。
しかし大半の生徒はその授業をスルーして夏休みの課題を仕上げたり予習をしたり寝ていたりする。
熱量計算の説明をしていた担当の教師が「大学になったら〜」と今聞いてもしょうがないようなアドバイスをし出し、何故か途中からおいしいカレーの作り方を教え始めた為だ。
当然、恭也もばっちり寝て過ごした。(だいたいいつも寝ているが・・・・)
濠「・・・・・・・・」
恭也「おっ、なんだ濠も寝てたのか?」
ぱちっ
濠「いや、起きてるぞ・・・・今のは・・・」
恭也「別にいいって。少しは聞いてたけどケチャップにメープルシロップはねぇからな・・・・」
濠「だから、俺は・・・・」
恭也「はいはい・・・あー!そういやなんか今日転校生来るって!お前知ってたか!?」
恭也「っ、あぁ!?」
鴉美「転向生の蔵前鴉美です、よろしくお願いします!」キラッ☆
とびきりの営業スマイルで微笑みかけるのは天狗の少女、鴉美だった。
もちろん、翼も出していなければ高下駄も履いていないし、山伏装束でなく恭也達の学校の制服を着ていた。
「おぉー、ラッキー!可愛い子じゃん!」
「ばっか、転校生はみんな可愛いってのがお約束なんだよ!」
「どこの約束だよっ!?」
「ちょっと男子うるさい、まだあいさつの途中でしょ!?」
モブ男君、モブ子さん達がわいわいやってる中担任の先生が鴉美の紹介を軽く済ませる。
蔵前鴉美はこの町の出身だったが、父親の仕事の都合で暫く八神の学校に通っていた。
そして最近父の転勤に伴って戻ってきたという・・・とまぁ、設定はこんな感じだった(ぉ
鴉美「早く皆さんに馴染めるよう頑張ります!」
鴉美「先日はどうもお世話になりました。」
昼休みになって濠と恭也は鴉美を連れて屋上に出た。
恭也「いやー、びっくりしたぜ・・・・いきなりだもんな。」
濠「俺は今朝白澤から聞いた。」
濠の今朝のあれは脳内会議中だったようだ。
恭也「えーっと、何で?・・てか、どうやって入って来たよ?」
鴉美「ええ、実は先日のお礼をどうしようかと大天狗様と話していたらそこに白澤様がいらっしゃって『濠の手伝いをしてやってくれ』とおっしゃるので・・・」
それでどうせなら普段から近くにいた方がよいだろうと学校にまでやってきたらしい。
ちなみに出身とかその他諸々は土地神さまマジックでちょろまかしたそうだ(ぉ
苦労掛けっぱなしの相棒に少しでも楽をさせたいという白澤の配慮だった。
濠「はぁ、まったく心配性だな・・・・・ともかく、これからよろしく頼む。」
鴉美「はい!こちらこそよろしくお願いします。」
恭也「よし、お願いされた。」
こうして秋は始まりを迎えた
彼らにとって大きな変化をもたらす季節が・・・・・
再び凶星との戦いは幕を開ける・・・・
だがそれも濠の長い戦いの旅のほんの始まりに過ぎない・・・・
この先に待ち受ける運命、交錯する二つの世界の物語を・・・・
濠「・・・・・・」
異界の住人達との出会いを、彼はまだ知る由もなかった・・・・
,こんな感じで始めてしまうけどどうせまた長い冬眠期間に入るだろう青嵐昇華です(ぉ
このお話は『朱凰』の後、『海賊』の前の話になっています
まだ序章しかなく影も形もない状態だった霧島濠ですが・・・まぁ、それはいずれ(←いつだ)
ただ向こうの世界と関係がある(?)のはラストなので『海賊』抜きにしても普通の『朱凰』続編にはなったかと思います。
・・・・これでようやく計都さんが日の目を見ることが出来ましたw(ぉ
誤字脱字があったら申し訳ありません
,#000000,./bg_b.gif,i125-201-166-25.s02.a040.ap.plala.or.jp,1
2010年08月25日(水) 21時46分17秒,20090715200904,20100828214617,JzH1aOE3mpFR6,仮面ライダー珀羅 『翡翠の鬼と風の天狗《前編》』,青嵐昇華,,,
木漏れ日が降り注ぐ森を縦横無尽に飛び回る黒い影があった。
「もう追い付いて来ましたか・・・!」
後方からじわじわと近づいて来るそれらの気配を受け、少女は小さく舌打ちした。
いつの間にか目の前には山伏の格好をした背中に黒い翼を生やした大男達が立っていて、鋭い視線とともに彼ら武器の団扇(うちわ)を向けてくる。
『鴉美、それを返せ。大天狗様もお怒りだ。』
「流石に先輩達はお速いですね、まったく恐れ入ります・・・・」
『もう一度しか言わんぞ。それを返し、今すぐ里に戻れ。』
「嫌です!筋が通らないことを私は認めたくありません!」シュバッ!
漆黒の翼を羽ばたかせ少女は空へと加速した。
『ならば・・・!』ブゥン! ブォォォォ!
「くっ・・・・・・・あっ!?」ポロッ
『しまった・・・・っ!?』
男が団扇を振るうと即座に竜巻が起こり少女を飲み込んだ。
少女の持っていた団扇は手から滑り落ち風に乗って何処かへ飛んで行ってしまった。
『なんと言うことだ・・・・っ!?おい、鴉美はどうした!?』
『い、いない!逃げられたか!?』
「あー、もう!最悪です!」
少女は飛んでいった団扇を探しに町へ降りて行く。
「WHOが定める健康の定義は・・・・・」
8月の最後の週、秋が待ち遠しい今日この頃。
学生達はまだ抜けない暑さをしのぐ為クーラーの効いた家でだらぁっとして・・・いるわけでもない。
夏休み中でも課外授業という形で学校に来なくてはいけないのだ。
しかも今は一学期中に終わらなかった為、設けてあった自習の時間を潰して保険の授業なんかがあっている。
「えー、だから健康というのは病気や虚弱なだけでなく・・・・・」
カリカリカリカリ
しかもこの保険の授業を担当するのは授業中あくびをしているのを見るだけでも正座or廊下に出させるというラグビー部顧問の名物鬼教諭だ。
「でカナダの厚生大臣が・・・・」
カリカリカリカリ
それで一部の不真面目な生徒を除いてみんな一生懸命ノートを取っているのだが
恭也「・・うっひょ〜・・www」
その不真面目な生徒の一人がこの大峰恭也という少年だ。
窓際後ろから二番目という良ポジションもあってか保険の教材を盾に何か違うものを読んでいるらしい。
濠「・・・・・・・」カリカリ
その後ろに座っているのが霧島濠だ。
運動は出来るが勉強も割りと出来る、寡黙だが人付き合いは悪くない・・・そんな少年だ。
サァ・・・・・サァッッ・・・・・
濠「・・・む?」
「俺の授業ではクーラーは付けん!」という教師の指示で開けていた窓から風が入ってくる。
・・・・だが、そんな風に混じって微かに妖怪の気配を感じた。
そう断言出来るほどはっきりしたものではないが濠は一応確認を取ってみることにする。
濠(・・・・白澤、聞こえるか?)
白澤『気付いたのか、流石だな濠。』
濠が心の中で呼ぶと、それに答える者がいる。
彼が契約しているこの土地の神、白澤だ。
濠(何かあったのか?)
白澤『少し前に山の方で天狗がやりあっていたようだ。・・・すまないがそこまでしか分かっていない。』
濠(いや、白澤が忙しいのは知ってるさ。後は俺の方でやっておくから任せてくれ。)
白澤『・・・いつもすまないな。私の手が行き届かないばかりにお前には苦労ばかりを掛けてしまって・・・』
濠(気にするな、俺は・・・・)
ガタンッ!
「大峰ぇ!!なんだこのいかがわしい本は!?没収!廊下で正座していろ!」
恭也「えー!?」
「えー、じゃない!とっとと行け!・・・霧島もだ!!俺の授業で寝るとはまったくいい度胸だ!」
濠「・・・・・むむ・・・・」
【仮面ライダー珀羅〜翡翠の鬼と風の天狗〜】
これは八神という町で繰り広げられた戦い・・・・
その20年後、新たに綴られた仮面の戦士の物語である。
恭也「かぁ〜っ!あんにゃろー、トサカに来たぜ!」
太陽が西に沈んで行く夕暮れ時。
二人の少年が見晴らしの良い田舎道を歩いていると突然その片方が叫びをあげた。
恭也「木下のヤロー、エ○本読んでたぐらいで40分も正座させやがって・・・!」
濠「ぐらいでって・・・それは完全にお前が悪いだろう。少なくとも授業中にすることじゃない。」
恭也「いーじゃねーかよ、保健の時間だぜ?・・・てかお前だって寝てたじゃねぇか。」
濠「寝てはいない、仕事が入ったかもしれないから打ち合わせしていただけだ。」
足が痺れまくって大変だったと愚痴る恭也に対し、濠はあっさりしたものだ。
実際40分正座したくらいでは濠の足はどうにもならない。
恭也「・・・ん、あれは・・・・・・」
濠「どうした?」
恭也「ラッキー!いいもん拾った!ほらほら!」
道の端に駆け寄った恭也は何かを拾い上げると濠に見えるように掲げた。
それはヤツデの葉のような形をしていた。
濠「団扇・・・・・天狗の持ってるあれか?」
恭也「そうそう、ソレソレ。」
植物というよりは金属に近い手触り、普通のヤツデとは色々違うようだ。
恭也「向こうの方にでっかい山があるだろ?ウチの店にもな、じーちゃんの若い頃は結構そこの天狗が古くなった道具とかを売りに来てたらしいぜ。」
濠「天狗がか?」
意外そうに濠が呟いた。
天狗と言えば山の中で独自の社会を作っていて人間にはほぼ干渉しないというイメージがある。
実際、濠もこの町に来て一年ほどになるがまだお目にかかったことはない。
恭也「まぁ、最近じゃ珍しいんだよ。」
濠「そうか・・・・それで、持って帰るのか?」
恭也「当っ然!結構高値で売れたらしいから今なら・・ニヒwwwニヒヒヒww『まちなさーーーーーい!!』ん?・・・・っ、ぃいっ!?」
ニヤニヤと大変やらしく笑っていた恭也は響いてきた声に振り返っては素っ頓狂な声をあげる。
空を見上げればなんと女の子が浮かんでいるではないか・・・
「それ私のです!勝手に持ってかないで下さいよ!」
少女は空からそんなことを言ってきた。
その少女のショートカットの髪は夜の闇を思わせる艶やかで黒く、顔はなかなか整っていて・・・まぁ、そこそこの美少女に分類されるであろう少女だった。
恭也「・・な・・・・・・!」
濠「だそうだが・・・どうだ、恭也?」
山伏のものを改造したような衣装を纏った少女、その背中には黒い一対の翼が生えていて明らかに人外(おそらくは天狗)であることを主張している。
持ち主が見つかったことだし返したほうがよいだろうと濠は空を見上げ続ける恭也に促すのだが
恭也「あぁ、オレも驚いたぜ・・・穿いてても地味な白地とかかと思ってたけど、ピンクのレースとは中々可愛い『めしっ!』ぐぎゃっ!?」
凄く爽やかな笑顔でダメな台詞を吐く恭也の顔面に少女のおみ足が炸裂する。
須(すべか)らく天狗は高下駄を履いているのでかなり痛い。
なんか蛙の潰れたようなうめき声を上げて恭也は沈黙する。
「あなたって人は!人のもの持ってこうとしたり人のパ・・・パン・・(////)あぁ、もうっ!とにかくふてぇ輩です!!」
まぁ、袴も切ってスカート見たいに改造されてるんだしあんな高いところにいたからにはある程度仕方なくはある・・・・
濠「それで、君がこれの持ち主なんだな?」
「え?あ、いや・・・正確には預かりものなんですけど・・・そうなります。」
濠「そうか、なら返しておこう。」
「ど、どうも・・・・」
事もなかったかのように話を元に戻す濠に、少女も我に帰ってそれを受け取った。
鴉美「ありがとうございました。私は烏天狗の鴉美(アミ)といいます。」
濠「霧島濠だ。・・・・・とりあえずそいつから降りてやってくれないか?」
鴉美「?あっ・・・・・!」
濠の視線の先、鴉美の足元にはまだ恭也が踏み倒されているままだった。
恭也「むはぁ、まったくえろ・・・・・えらい目にあったぜ。」
なんか言い間違えそうになったようだが・・・・この場合前者でもあながち間違ってはいない(ぉ
とりあえず鼻血を拭け。
濠「恭也、団扇だが持ち主に返したぞ。」
恭也「えーーーーーー・・・・(じーーーーー)」
鴉美「そんな露骨に嫌そうな顔されても・・・・って、そういえばあなた達は私(天狗)を見ても驚かないんですね。」
不思議そうに鴉美が尋ねる。
今更だが天狗と面識のある人間なんてそうそういるものではなく
二人の反応は鴉美が思っていたものとはかけ離れていた(恭也など特に)
恭「んー、妖怪とかお化けとか見慣れてるからなー。ウチはその手の商品を専門で取り扱ってる骨董屋なんだよ。っと、オレは大峰恭也。よろしくなっ。」
鴉美「・・は、はぁ・・・どうも・・・・」
ワキワキと握手を求めてくる恭也に鴉美は苦笑いで後ずさる。
なんか手つきが非常にやらしくあんまり触れられたくない。
鴉美「あ、ご、濠さんは何で平気なんですか?」さっ
恭也「あれー!?(ガーン)」
濠に話を振って緊急回避。
妖怪最速、烏天狗は伊達じゃない。
濠「俺か・・・・そうだな、俺は・・・・」
「いたぞ!!」
話を遮るようにまた空の方から声がした。
見上げると数羽の天狗が群れを成してこちらに向かってきている。
鴉美「・・・・・・・・」
それを見た鴉美の顔はしだいに暗くなっていく。
恭也「あれはアンタのお仲間か?」
鴉美「・・・・・ええ、ごめんなさい。ゆっくり話してる暇はないみたいです。では、私はこれでっ!」シュバッ!
恭也「お、おぃ!」
翼を広げ地を蹴り羽ばたいた鴉美は逃げるようにそこから去っていった。
「向こうにいったぞ!」
「急げ!」
それを追って天狗達も空を駆けてゆく。
濠「・・・・・・・こういうことか。」
「こっちだ!回り込め!」
鴉美「はぁ、はぁ・・・・いい加減しつこいですよ!」
竹林に入ったまではよかったのだが・・・・奥の方の狭い所では翼は自由に使えない。
走って逃げ回るうちにどんどん体力が奪われ息が切れてきた。
一方で、数で勝る追っ手の天狗達は巧みな連携で徐々に鴉美の逃げ場を塞いでゆく。
そしてとうとう完全に取り囲んでしまった。
「さぁ、それを返せ!」
鴉美「・・・・・」
生きた年月も修行の量も断然向こうが上なのである。
力量の差は明らかだ、鴉美の実力ではこの場を突破するのはかなり難しい。
しかし、今鴉美が持っているのは・・・・・・
鴉美「扱いきれるかわかりませんが・・・・試してみる価値はあります!」
「な、何をする気だ!?」
鴉美「召嵐・・・・“変神”!!」
ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「こ、これはぁ!?」
団扇を振るう鴉美を中心に強烈な突風が巻き起こる。
嵐羽「風神嵐羽・・・見参です!」
竜巻を扇ぎ払って現れたのは漆黒の鎧を纏った忍者のようなシルエットの戦士だった。
それは鴉美の持つ『風神の団扇』に込められた術式が発動したもの。
古くから天狗に伝わる武装法術『嵐羽』だった。
「その姿は・・・・!?」
「嵐羽だと・・・・天魔様や大天狗様以外に・・・まさか、あの鴉美が・・・!!」
嵐羽「やった!上手くいくか心配だったけど・・・どうにか成功したようです!」
鴉美は難術の成功に小さくガッツポーズを取る。
「臆することはない!たとえ嵐羽でも中身は・・・!」
嵐羽「そんなに甘く見ないでくださいっ!」サッ
嵐羽は狭い林を抜け大空へ飛翔する。
天狗達もそれを追い空に出るのだが
シュン『ドスッ』・・・・・シュン『ドスッ』・・・・・
「なんということだ・・・我々が追いつけないなんて・・・・・『ドスッ』ぐはぁっ!?」
大空を滑るようにして飛ぶ嵐羽は高速の手刀や蹴りをすれ違いざまに天狗に打ち付けてゆく。
喰らった天狗がパタパタと落ちてゆくのが見えた。
嵐羽「最後です!」ドスッ!
「っ!・・・・・・」
嵐羽「ふぅ・・・・やっぱり慣れてないことをするのは疲れますね。」
一分も経たずに追っ手の全てを沈黙させた嵐羽はゆっくり辺りを見回してみた。
後続の追っ手も来ないし一先ずは凌ぎきれたようだ。
パサッ・・・・・・パサパサッ・・・・・・
嵐羽「何の音ですか・・・・・?これは・・・・下っ!?」
何かが擦れあうような妙な音を聞き、下を見てみると倒した天狗達から砂が溢れ出してきた。
それは空の一箇所に集まり人のような形を作り出す。
その口がゆっくり開かれた。
《妖魔の中にも吾を拒むものがいるとは・・・・いや、汝は“ヒト”か・・・》
嵐羽「なっ・・・・・」
それは土の魔人だった。
夕暮れ時の空に吹いていた風も急に止まってしまい暗雲が立ち込めてきた。
鴉美は相手から伝わってくる尋常ではない霊気を感じた。
嵐羽「あ、あなたは・・・いったい・・・・!?」
《“ケイトゥ”様の障害となる者よ、汝は今ここで滅びろ!》
魔人が手をかざすとその手のひらの真上に見たこともない模様が浮かび上がり空間に穴が開く。
そこには暗黒の世界が広がっていて遠くの方には青や赤の光が見える。
魔人は空間から柄の長い斧のような武器を引き抜くと嵐羽に向かってくる。
《塵に還るがいい!》
嵐羽「な・・・・・っ!?」
恐らくは避けられただろう・・・
だが感じたことのない凄まじいプレッシャーに負け、回避運動が遅れたのが命取りになった
ガンッ!
嵐羽「ぐぅ!ぅうっ!」
しなやかな風の鎧は高い防御力を持つが・・・・えぐるように打ち付けてくるその攻撃に嵐羽、鴉美の身体からは力が抜け落ちてしまった。
ガンッ!ガンッ!ガンッ!!ガァアンッ!!
嵐羽「っ・・・・がっ!?」
ドォオオオオン!!
容赦なく続く攻撃に嵐羽は地面に叩きつけられる。
土煙があがり、嵐羽が見えなくなった。
鴉美「・・・・・・・」
煙が晴れるとうつ伏せに倒れた鴉美の姿があった。
気を失っているようで術が解け鎧も消えてしまっている。
地上に降りた魔人は鴉美にゆっくり近づいてゆく。
《滅びよ!》
「待て!!」ブゥン!!
ギンッ!
魔人が斧を振り下ろした時、間に入ってそれを弾き返す翠(みどり)色の影
《っ!?汝は・・・・・》
「何があったかは知らないが、出会ったのも何かの縁だ。お前にこの子はやらせない!」
孤立無援だったはずの天狗の少女を救ったのは翠色の鬼
いや、翡翠(エメラルドグリーン)と白を基調とした鎧に雄々しき二本の角飾りを持つ仮面の戦士だった。
《・・・・そうか、汝がケイトゥ様の・・・》
「何・・?っ、“計都”・・・・計都のことか!?」
《答えよ、戦神の血を引く者。汝の名はなんと言う?》
珀羅「霧島濠・・・神霊獣白澤が闘士珀羅(ハクラ)!お前は何者だ!?」
土《吾はシャニ【土】、ケイトゥ様が七つの星“七曜”が一つ。》
珀羅「シャニ・・・・七曜・・・」
土《刻んだぞゴウ、汝の名を》スゥ・・・・
珀羅「待て!お前にはまだ聞くことが・・・・くっ!」
シャニと名乗る土の魔人は砂に戻り倒れている天狗の中へ戻っていく。
だが、それを濠にはどうすることもできなかった。
珀羅「・・・・・計都・・・だと・・・」
,お〜まえ〜はひとりじゃっな〜い♪
どうも、先日の日曜はガンバライドで頑張りまくった青嵐昇華です。
偶々デパートに立ち寄ったときめっさ空いてるのを見つけてダッシュ
第一弾の時はお試しでやってみて【電王GF】を一枚だけ手に入れたんですが
それから第四弾までずっと遠目で見てるだけでした。
でも、ファイナルアタックライドキャンペーン中の第4弾・・・・これは手に入れるしかないとカードを買うとなんと【クウガMF】のレア(?)と【FARククククウガ!!】を続けてゲット!?
さらには【アギトGF】のスーパーレア(?)まで出てくるという・・・・・
そのデパートに行く前の公園では羽化する前の蝉が歩き回って木に登るのを見かけたり、野性の兎さんを目撃したりと・・・・・・・何があった私の周りに!?
・・・・・本編にぜんぜん関係ないあとがきでしたが後編に続きますw
,#000000,./bg_b.gif,i125-201-166-25.s02.a040.ap.plala.or.jp,1
2009年08月13日(木) 15時57分24秒,20090715193648,20090816155724,UuV6VD2GFnNJ6,仮面ライダー珀羅 【設定資料】,青嵐昇華,,,霧島濠(きりしまごう)/仮面ライダー珀羅
性別♂
年齢17歳(牡牛座)
髪型/色 短髪/青
身長 174cm
淳と羅刹の一人息子。土地神、白澤と契約を結んでいる
人を思いやる優しい心とどんな困難にでも立ち向かう屈強な精神力を持っている
父羅刹の過去を知り、人界を守るために戦うことを決意し一人故郷の八神を離れた
新たに発生した龍脈の調査の為に訪れた町で恭也と知り合い彼の家に居候する
高天原の星志館高校の二年生でもある
大峰恭也(おおみねきょうや)
性別♂
年齢16歳(蠍座)
髪型/色 長めでツンツンしている/茶髪(光の当たりようでは金にも見える)
身長 168cm
明るくていろいろ元気な少年
濠の親友で彼が現在居候している骨董屋『雷鳴堂』の店長をしている
祖父と二人暮らしをしていたが祖父の他界後は店を継いで経営している(あんまり儲かっていないが)
その手の商品ばかりを取り扱っているためか一般人(?)ながら妖怪や霊具などには詳しい
また手先は器用で自分で材料を集めて(拾って)きては商品をつくることもあるらしい
鴉美(あみ)/仮面ライダー嵐羽
性別♀
年齢16歳(射手座)
髪型/色 ショートカット/黒
身長 161cm
濠達が出会った烏天狗の少女
強い信念を持ち、思ったらすぐに行動に出るアグレッシブなところがある
(多くの天狗は己を鍛え上げ正義を成そうとする傾向が強い)
長く修行を積まねばならない天狗の中では非常に若く仲間の天狗達からは一目置かれている(がまだまだ未熟のようだ)
仲間の身に起こった異変に気づき天狗の里から脱走、濠達に協力を求める
恭也によると着けている下着は意外に可愛いらしい(ぉ
蓮見燎子(はすみりょうこ)/仮面ライダー鈴音
性別♀
年齢16歳(獅子座)
髪型/色 ロングの流しっぱなし/赤茶色
身長 170cm
腰ぐらいまである赤毛にもの凄く悪い目つきをした少女
喧嘩において相当の猛者であり一度おもむけば一騎当千獅子奮迅の戦いっぷりである
いつもツンケンしている硬派だが実は可愛い生き物に目がない
また荒く見せてるのは傷つきやすいお年頃の為のポーズっぽくて、とっさに素の一面を見れることもしばしば
どう考えてもツンデレですね、本当にありが(ry
私立白桜学院在学中の一年生。
春野香織(はるのかおり)
性別♀
年齢15歳(天秤座)
髪型/色 ショートカット/黒
身長 156cm
とても内気だが心優しい少女。燎子が最も気を許せる友達である
燎子同様可愛い生き物が大好きでありその縁で燎子と仲良くなった
家は何気に高級マンションだがペット禁止であり、そのことを残念に思うも代わりにその手の雑誌を集めている。
高校では雪乃と同じ茶道部に入っている
矢倉雪乃(やぐらゆきの)/仮面ライダー月華
性別♀
年齢17歳(乙女座)
髪型/色 ウェーブのかかったセミロング/深い紺(ほとんど黒)
身長 145cm
燎子達が通う白桜学院の二年生で生徒会長
いつもにこにこ笑顔を絶やさない学院一のアイドル
なかなかにマイペースな性格で接していると気が付けば完全に彼女のペースになっていることもしばしば
八神での異変解決の最前線に立っていて父ほどではないがかなり法術にも長けている
紫苑(シオン)
性別♀
年齢不明(見た目19歳くらい)
髪型/色 ストレートロング/薄紫
仮面の法士甲武の戌の式
甲武の片腕のような存在で常に傍に控えていたが雪乃が誕生してからは
彼女のお世話役を任せられ、日夜雪乃の為に駆け回っている
なおメイドとしてのスキルも上達し現在、矢倉邸のメイド長を勤めている
容姿は変化していないがメイド服はメイド長仕様(装飾品アップ)に変更になり、
また霊木で出来た特注のモップ(雷鳴堂発注)を装備し戦闘でも雪乃のサポートを行う
冢杏(チョウコウ)
性別♀
年齢不明(見た目18歳くらい)
髪型/色 ショートボブ/茶色
仮面の法士甲武の亥の式
数年前まで幼い少女の姿をしていたが
弟分の濠の成長に合わせて体の新調を試み現在の姿になった(式の体はイメージで出来ている)
体が大きくなった為、式神一の怪力を十二分に使いこなせるようになっている
よく食べよく遊びよく寝る、子供っぽくて単純な性格は今も変わらない様子
またペットの貔貅(ヒキュウ)の世話は今も彼女の担当
玉緋(ギョクヒ)
性別 ♀(?)
(以下人間時のもの)
年齢3037歳(見た目20歳くらい)
髪型/色 ストレートロング/銀
身長 174cm
八神の町の護り神、三千年生きた空狐と呼ばれる狐で緋色の瞳をしている
人界では巫女さんの格好で神社の掃除をしている姿が見られる
師匠の『氷神月華−甲型−』や自身の『影月』を元に『炎神鈴音』の術を開発する
神としてはまだ未熟で月の満ちる晩のみ本来の力を解放する事が出来る
赤獅子/白獅子
甲武の開発した神社防衛用の式神。
魂のない防衛機能のみの式として作られていたが長い年月が経つうちに付喪神(つくもがみ)が宿り心を持つようになった
赤い方が少しお調子者の兄、白い方が割りとしっかり者の妹である
玉緋とは喧嘩ばっかりしている
白澤(ハクタク)
高天原町の土地神
強力な力を持っているが町が“八神化”したことにより龍脈への霊力的な干渉を引き起こす恐れがある為
カイチと同じように精神体のみを人界に降ろしている
精神体だけでも土地の様々な調整は出来るが最近の著しい霊気の変化にてんやわんやしている
なお濠に関しては保護者的な立場をとり頼りにはしているが無理はさせたくないらしい
月読(ツクヨミ)
玉緋の前に現れた謎の仮面
出現した凶星と何か関係があるのか・・・・・
風神の団扇(うちわ)
古くから天狗に伝わってきた秘宝
一振りすれば風を呼び、二振りすれば嵐を征すると言われている
強力な霊力が宿りその中には天狗の秘術が封じ込められている
封奇の数珠
甲武の作った霊力増幅補助装置。腰に巻きつけることで使用可能な108つの念珠を連ねた長い数珠型の緒
悪用を避ける為人間の体でしか発動しない仕組みとなっているが霊力の扱いが下手なただの人間では使った瞬間、己の霊力でパンクするという厄介な道具でもある
雪乃が持っているのは数年前に新しく作ったもので彼女は上手く使いこなしているようだ
なおオリジナルのモノは現在も玉緋の元にある
神霊札(しんれいふ)
その土地の神々、精霊の力を具現化させたもの
高位の神との契約を交わした戦士が作り出すことが出来る札
変神、武器の属性添加などの手助けをする
仮面闘士珀羅「ハクラ」
神霊獣白澤の加護を受けた翠(みどり)の鎧の闘士
凱卦と同じように念を武器にして戦う
近接戦闘に長け戦闘スタイルは蒼牙や朧牙に近い
主な武器はブレードトンファー『刃拐(じんかい)』
必殺技は二つのトンファーの刃先に収束させた霊力を
一点でぶつけその爆発力で敵を粉砕する『穿孔双角撃(バイコーンドライブ)』
仮面戦士嵐羽「ランバ」
風神の団扇に秘められた力が発動した武装法術「風神嵐羽」
空中戦でその真の力は発揮され、圧倒的なスピードで相手を翻弄する
鎧は闇に溶け込むほどに黒くシルエットは翼の生えた忍者のようにも見える
主な武器は団扇(扇/剣)『風神の団扇/征嵐剣(せいらんけん)』
団扇は風を自在に操ることができ、それが姿を変えた剣は風を纏った斬撃を放つことが出来る
仮面砲士月華「ゲッカ」
新しい封奇の数珠に秘められた力が発動した武装法術「氷神月華−乙型−」
冷気を用いた砲撃戦に長けていて、相手を凍結させるのを得意とする。
鎧は氷が月に照らされたように白くその姿は氷河の上で遊ぶ妖精のようにも見える
主な武器は氷槍『砲仙華(ほうせんか)』
周囲の冷気を凝縮し、一気に打ち出すことが出来る。
仮面剣士鈴音「リオン」
オリジナルの封奇の数珠に秘められた力が発動した武装法術「炎神鈴音」
主に炎を纏った打撃や斬撃と言った格闘戦を得意としている
鎧は燃えるような橙色で、炎に揺らめくその姿は獅子のようにも見える
なお本来玉緋は幻術、呪術特化に仕上げる予定だったが燎子の特長に合わせてその場で変更している
主な武器は刀『紅鬼灯(べにほおづき)』
その鋭い刃を振るえばたちまちに爆炎が巻き起こり立ちふさがるものを焼き尽くす
刀の柄の部分には紅い鈴が付いている
九曜(ナヴァグラハ)
計都達九つの星総称
また計都、羅喉を除いた七つの星を七曜ともいう
注)羅喉は既に彼は地上を去っている
計都(ケイト)
性別♂
地上に現れたもう一つの凶星
羅喉と対を成す存在で同等の力を持っている
また凶星は輪廻転生(羅喉で言う変生)を操る能力を持ち
その力で過去に一度倒れた阿修羅族の夜娑姫を転生させている
土(シャニ)
七曜の一星で強固な体を持つ土の魔人
今回の事件で天狗をおかしくした現況だと思われる
星志館高校(せいしかんこうこう)
高天原町にある公立高校
生徒の学力評価はよく言って並(ぉ)だが部活動が盛んでどの部活も大会出場率は高い
教員も「頭がダメなら体を動かせ!インテリ共に負けるなやー!」な思想である・・・それでいいのか公立高校(ぉ
文武両道で知れ渡っている白桜学院を目の敵にしてるとかしてないとか・・・・・・
濠、恭也、鴉美が通っている
高天原(たかあまはら)町
八神に負けず劣らず・・・というかそれ以上に田舎な町
未だに開発されていない竹林が数多く存在して夜はちょっと恐い
それに加えもの凄く大きな山が多く、文明化が進んだ現在でも妖怪が潜んでいるとか言われ続けている
(※実際人害のない天狗や河童など多くの妖怪が隠れ住んでいる)
白桜学院(はくおうがくいん)
八神市内にある名門私立校、学業推薦やスポーツ特待生を数多く取っている
充実した環境の下、生徒の自主性を伸ばすというのが方針で生徒会の権限はかなり強いらしい
ちなみに燎子は剣道の特待で学院に入っている
八神(やがみ)市
以前あった大きな戦いの舞台となった町
その地下には強大な龍脈(霊力の源)が流れている
この20年でようやく収まってきたかに思えた死霊の凶暴化も近年頻繁に起こるようになってきて
雪乃達が問題解決に駆りだされている
,このお話は『仮面ライダー朱凰』の20年後のお話です。
※訂正済み,#000000,./bg_h.gif,i220-221-120-140.s02.a040.ap.plala.or.jp,1
2009年10月28日(水) 19時49分14秒,20090715013251,20091031194914,4QPHkEzGeFLZE,SS投稿板・交流温泉 2の湯,交流場,,,
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はやくもスパムで埋め尽くされたので廃棄しました。,#000000,,proxy3111.docomo.ne.jp,1
2009年07月15日(水) 01時33分55秒,20090714180203,20090718013355,PZOnfYJXslNDw,いつもの事です,受け皿,,,いつもの事なら致し方ないな,仕方ないね,#000000,,softbank220024150097.bbtec.net,1