2014年10月20日(月) 14時03分27秒,20141020140327,20141023140327,/FcdF35Y4k88Q,,グッチ ベビーgucci 人気,,,,,,,175.44.6.116,0 2014年10月06日(月) 23時38分23秒,20141006233823,20141009233823,8Fg/nMuSYSTNI,仮面ライダーワルキューレ Mission24,鴎,,,Mission24「深紅の聖騎士降臨!!」

太陽と月が睨み合う空、その真下では熾烈な戦いが展開された。場所は校庭であったがそこはいつの間にか強風によって荒れ地に変わっていた。ハルピュイアヤミーが鉤爪を大きく振るい、そのたびにブンっと音を立てて風が目にも止まらない速さで吹き抜け、ワルキューレを吹き飛ばそうと強力な衝撃が叩きつけられる。前へ進もうとするが強風で思うように動けず、翻弄するような動きを繰り出すハルピュイアヤミーになかなか攻撃が当たらない。ランスと鉤爪が激しくぶつかり合い、金属と金属がぶつかり合う音と暴風が吹く音が重なり合い、何とも言えない轟音が校庭から響き渡る。

ワルキューレ・ストーム「これでどうだ―――――!!」

ワルキューレがセルメダルを3枚投入してフルバーストし、ランスに風が渦を巻きだす。そしてランスを突きだすと緑色の暴風が竜巻のようになってハルピュイアヤミーに襲いかかっていく!!そして渦がハルピュイアヤミーの周りを取り囲むと、右足からステゴザウルスの棘が生え出し、前へ飛び出すと一気に右足を振りあげる!!

ハルピュイアヤミー「・・・・その程度ですか。興ざめですわ!!」

すると、取り囲んでいた風を、鉤爪で一気に薙ぎ払い、風が消え去った!そしてさらに飛び込んできたワルキューレをカウンターの要領で強風が襲いかかり、吹き飛ばされて地面に叩きつけられる!!

ワルキューレ・ストーム「きゃあああああああああああ!!」

そこへ仮面ライダーファング・ライムフォームとシェリーフォームが駆け付ける!!

ファング・ライム「おい、大丈夫か!?」
ワルキューレ・ストーム「・・・・あいつ、今までのヤミーとはけた違いだ」
ファング・シェリー「・・・あれ、アベルのでもないしシエルのヤミーでもない、でも、カブキのでもないし、キールのでもない。一体何なの!?」

ハルピュイアヤミー「・・・そういえば、まだ貴方がたは「幻獣系」とはお会いしたことはなかったでしたね?」

ワルキューレ・ストーム「・・・幻獣系、だって!?」
ファング・ライム「何だそれは・・!?」
ワルキューレ・ストーム「幻獣系って、聞いたことないよ!?」

メイ「・・・・いや、お前ら、前に言ったから。幻獣系グリードのゼロっていうのがいるって、話したことあるから」
ファング・シェリー「・・・二人とも、忘れてたの?」

「「・・・・・・ソンナコトナイヨ」」

ハルピュイアヤミー「・・・・苦労してますわね、恐竜のグリードさん」
メイ「・・・・・まあな」
ワルキューレ・ストーム「メイ!ボクはこんなバカ虎と一緒にするな!!ボクは忘れてなんかいない!!たまたま思いだせなかっただけだ!!」
ファング・ライム「そうだ!!こんなまな板ツルペタ貧乳サルと一緒にするな!!私は記憶になかっただけだ!!」
ワルキューレ・ストーム「誰がまな板だ、ツルペタだ、貧乳だ、このエロ虎!」
ファング・ライム「誰がエロだ、このヌリカベ胸、絶壁胸、ペチャパイが!!」
メイ「ケンカしている場合か!!」

ハルピュイアヤミー「・・・・愚かな事ですわね」

ふうっと扇子を取り出してため息をつかれている。もう完全に舐められている。

ファング・シェリー「もう、バカやってる場合じゃないよ!!このままじゃお祭りがメチャクチャになっちゃうでしょっ!?戦闘態勢、仕切りなおさないと!!」
ファング・ライム「そうだな、せっかくの祭りを台無しになどされてたまるか!!」
ハルピュイアヤミー「ふふ、勇ましい事ですわね。ですが、勢いだけではこの私、由利カマノスケは倒せませんよ」

ワルキューレ・ストーム「百合だかオカマだかバカだか何だか知らないけど、あんたみたいなのを、自信過剰って言うんだよ!!一気に叩きのめしてやる!!」
ファング・シェリー「応戦するよ!!瑛子ちゃん!!」
ファング・ライム「おう!!」

シェリーフォームがシェリーセイバーを振るい、無数の赤いドクロの死霊が襲いかかっていく!それを扇子で払うと、払った直後に光の速さで切りかかってきたライムフォームの斬撃が放たれ、次々と繰り出される斬撃を涼しい顔でハルピュイアヤミーがかわす!

ハルピュイアヤミー「ただ振りまわすだけでは当たりませんよ?」
ファング・ライム「ああ、ただ振りまわしているだけじゃないからな!!」

その直後だった。背後に回り込んでいたワルキューレが青いメダルに変えてその姿をスプラッシュフォームに変えて、槍を構えて飛び込んできた!!

ハルピュイアヤミー「こざかしい・・!」
ファング・スプラッシュ「・・・その攻撃を待っていたよ」

ハルピュイアヤミーが鉤爪を振るって攻撃を繰り出す。しかしスプラッシュフォームは槍から水流を噴き出すとそれがまるで障壁のようにスプラッシュフォームを覆っていく!

ファング・スプラッシュ「フルカウンター!!!」
ハルピュイアヤミー「!?」

鉤爪を振るって放った暴風が障壁ではじき返されて倍の威力となってハルピュイアヤミーに襲いかかっていく!予想外の攻撃にハルピュイアヤミーが防御しきれず吹き飛ばされ土煙を上げながら校庭の端まで吹き飛ばされ、木々を折りながら全身を叩きつけられた!

ワルキューレ・ストーム「・・・おあいにく様、諦めが悪すぎるんだよ、ボクらはね!!」
ハルピュイアヤミー「・・・・そうですか、では、ここでやはり殺しておきますか。生かしておくと厄介ですわね!!」


一方、裏庭では・・。

テティス「はあっ!!やあっ!だあああああああああ!!」

怒りで完全に我を見失ったテティスが槍を振りまわし、カブキに切りかかっていた!!激情のままに槍を振るうがそれをカブキは右腕の触手を振るってかわし、弾き飛ばすと、左腕の銃でテティスのアーマーを撃った!!電撃弾が爆発し、テティスが吹き飛び地面を転げまわる!!

テティス「きゃあああああああああ!!」
カブキ「ふん、貴方なんかに用はないわ。私が用があるのは真墨ちゃんだけ。邪魔しないでくれる?」
テティス「・・・・そう言われて、はいそうですかって、親友を・・・渡さないわ!!」

テティスが槍を突き出すと青い魔法陣が浮かび上がり、超低温の冷気がカブキに発射される!!冷気によって触手が見る見る凍りついていく!!

カブキ「何!?」

身体が徐々に凍りだし、身動きが取れなくなるカブキ!

カブキ「・・・いい加減にしなさいよ、うざったいわよ、貴方!!」

カブキの全身に電流が走り、その高熱で氷が蒸発し吹き飛んでいく!!そして触手を振るってテティスを吹き飛ばす!!テティスの姿が茉莉の姿に戻り、裏庭に転げ落ちる!!

茉莉「きゃあああああああ!!!」
カブキ「ふん・・・」

その時だった。
どこからか飛んできたセルメダルの弾丸がカブキに直撃し、カブキも吹き飛んだ。見るとそこにはアスカが変身した仮面ライダールッカの姿があった。

ルッカ「大丈夫であるか、ちみっ子!!」
茉莉「・・・シェオロ・・・・!」
ルッカ「カブキ、いたずらが過ぎたのであーる!!今までアベルやシエルにくっついているだけの純真無垢だった君は今いずこ!?何があったであるか、世間の荒波にもまれて純真無垢でピュアな君の心はズタズタに荒んでしまった模様」
カブキ「・・・そうね、何も知らないままでいられるなら、それはそれで幸せだったかもね。でも、もうアタシはあの時のように、もう誰にも騙されない。誰も信じない。仲間なんて・・・仲間なんて・・・もう信じるもんか!!」
ルッカ「・・・何があったかは知らないが、もうこれ以上好き勝手はさせられない。大人しくお縄につきやがれである!!」

ルッカがクローを構えてカブキに飛びかかっていく!!打撃とともにマグマのエネルギーが身体に叩きつけられる!!カブキも触手を振るうがその攻撃を華麗なステップで避けてルッカが次々とパンチ攻撃を繰り出す!!壁に叩きつけられるカブキ!!すると、そこへものすごい勢いで突進してきたギュゼルがカブキを吹き飛ばした!!

ギュゼル「・・・悪い子供にはお仕置きだ」
ルッカ「大人しく捕まるである!!」
カブキ「・・・負けない、私は、強くなったんだ――!!」

カブキがよろよろと立ち上がり、触手を振りまわしてルッカに襲いかかる!!

するとその時だった。カブキを迎え撃つべくギュゼルが突進攻撃を繰り出そうとするが、そこへシエルが飛び出し、槍を突き出して吹き飛ばした!!

ギュゼル「シエルか・・・」
シエル「カブキ!!何無茶やっているんだ!!こいつらが相手じゃかなう訳がないだろうが!!」

ルッカ(こいつら、仲たがいしていたはずではなかったのであるか!?)
ギュゼル(・・・・どういうことだ?)

カブキ「・・・今更何よ。アタシのこと裏切ったくせに、アベルを殺したくせに、仲間ツラするなっ!!アタシは、あんたのこと、絶対に許せない!!」
シエル「どういうことだよ、アベルを殺したって、どういうことだよっ!?」
カブキ「今更とぼけるな、覚悟しろ――――――――っ!!」

カブキは問答無用で銃を構えてシエルに乱射する!!シエルも槍を構えるが反射をためらい、銃弾が撃ち込まれていく!!

ルッカ「・・・やはり、仲たがいしているようである」
ギュゼル「・・・・ああ。だが、様子がおかしいぞ」

テティス「今だ、スキあり!!はああああああああああああ!!」

テティスが槍にセルメダルを3枚投入して、青い魔法陣が浮かび上がる。そしてそこから凄まじい勢いで吹雪が放出され、シエルとカブキが見る見る凍りついていく!!

シエル「し、しまった!!」
カブキ「うわっ!!」

テティスが空中高く飛び上がり、両足を大きく開いて挟み込むように両足蹴りをシエルに叩きつける!!蹴りつけた衝撃で吹き飛び、そのままカブキを巻き込んで二人が吹き飛ばされ、地面に転がり落ちる!!

シエル「ぐっ・・・!!」
カブキ「・・・・どいつもこいつも、カブキの、邪魔、するな―――――――――――っ!!」

カブキが電光弾を地面にたたきつけて破裂し、辺り一面が真っ白になり、全員が目をつぶる。そして、目をあけると、そこには、カブキの姿はなく、シエルの姿もなかった。

ルッカ「逃げたようであるな・・」
ギュゼル「深追いは禁物だ。それに、さっきカブキに攻撃した時発信機をつけておいた。どこに隠れようが、後で突き止めてやる」
テティス「・・・はあ・・・・はあ・・・・はあ・・・」

テティスの姿が茉莉に戻り、槍を杖代わりによろよろと立ちあがる。アスカと真の姿に戻り、茉莉に駆け寄る。

アスカ「大丈夫であるか、ちみっ子!!」
茉莉「・・・全身バラバラになりそう・・・マジキツすぎ・・・それより・・・暁は!?それに、蘭も・・・!!」

その時であった。

香澄「黄司さん!!そんなところにいましたの!?」

意外な人物が声をかけてきた。それは何と宇津保香澄であった。

アスカ「ふおおおおおおおおおおおおお!?」
真「ほう、これは暁が見たら喜びそうだな」
茉莉「・・・・あんたさぁ、どうして、そんな、メイド服姿なわけ・・・?」

そう、宇津保のクラスの出し物は何とメイド喫茶だった。宇津保香澄は黒に白のゴスロリエプロンを身に付け、頭にリボンを巻いた、メイド服を着こんでいたのだ。その服装はよく似合っており、アスカが興奮し、茉莉も似あっているとつい思って感心してしまったほどだった。

香澄「そんなことどうでもいいですわっ!真墨と社さんが事故に巻き込まれて怪我していて、真墨がまだこの近くに貴方がいるというから探しに来たんですわ!!お怪我はありませんの!?」
茉莉「・・・え?あんた、アタシのこと、心配して来てくれたの?」
香澄「貴方は真墨の友人でしょう!!貴方がいなくなったら真墨が悲しみますわ!!私、大好きな友達の友達が傷ついて苦しんでいたら、自分の友達同然助けないと気がすみませんの!!真墨を悲しませるようなこと、絶対に見過ごしたりなんてしない!!」

そういって、茉莉を抱きかかえて保健室へと運んでいく。そして保健室に入ると、そこでは何と電撃を受けて倒れていたはずの真墨がベットで寝ていた蘭の看病をしているではないか。蘭は眠っているようで、軽傷だった。真墨も自分で巻いたのか、包帯とバンソウコウまみれの痛々しい恰好で、痛みを必死でこらえて蘭の額に置いた濡れタオルを取り替えていた。

茉莉「真墨!?」
真墨「・・・・・・・茉莉、大丈夫か」

茉莉が何か言おうとした時、真墨が茉莉を連れて部屋の隅まで引っ張って、声をひそめて話す。

茉莉(・・・あんた、あれだけ電撃食らってたのに大丈夫なの!?)
真墨(いや、それが、ここ最近落雷の直撃食らったり、台車で轢かれて配電盤叩きつけられて感電したり、笹が折れた時に電線引っ掛かってちぎれた電線に当たって感電ばかりしてたから、どうも電気に耐性ついていたらしくて、すぐ回復したんだけど・・・・)
茉莉(・・・・心配したアタシがバカだった)
真墨(ヤバいのはこの後だ。どうも、蘭に俺の正体、バレたかもしれない)
茉莉(えええええええ!?ど、どうして、だよ!?)
真墨(目を開けたら、胸元が脱がされていて、蘭が固まっていたんだ。それに、蘭が聞いてきたんだ)

蘭「ま・・・ますみ・・・・お前・・・お・・・男の・・・子だったのか!?」

真墨(とっさに持っていた睡眠ガスのスプレーをかがせて眠らせて、その後通りかかったけど、今、ゆっくり説明している時間がない。対策立てないと・・・!)
茉莉(・・・対策、考えないとヤバいよね、そりゃ)

香澄「何、ひそひそ話してますの・・・?」

香澄がいつの間にか近づいていて真墨と茉莉が吹っ飛んだ。そして、真墨の手を取り、両手で包み込むように握りしめた。

香澄「真墨、大丈夫ですの!?」
真墨「あ、ああ、俺は何て事ないけど・・・」
香澄「おバカ!!そんな怪我だらけしていて何て事ないわけないでしょう!!無理するんじゃないの!!大体どうしてこういっつも貴方は怪我ばかりしてますの!?いつも身の周りや行動には人一倍気をつけろとあれほど申しているでしょう!!もう、本当にいい加減になさい!!こっちはもう、気が気じゃないわよ!!」

胸倉をつかんで香澄に怒鳴られる、真墨は目をパチクリさせて香澄を見る。しかし、香澄の手が震えていた。そして香澄の声が、少し涙が交じったような声になっていた。

香澄「・・・・貴方に何かあったら、私、心配で心配でどうしようもないのに。そんな大怪我ばかりして、貴方がもし死んじゃったら・・・・そんなこと思いたくないのに、胸が張り裂けそうで・・・苦しくて・・・心配なのに・・・・お願いだから・・・もう少し・・・気をつけてよ・・・・」

香澄が涙を流していた。ポロポロと涙をこぼし、真墨に必死で自分の思いを伝える。香澄のそんな姿に胸がはげしく痛む感覚を感じた。自分のことを本気で心配し、怒り、涙まで流すほどに心配してくれている。ここまで迷惑をかけてしまったことを、真墨は激しく後悔した。

真墨「・・・わ・・・・わりぃ・・・本当に・・・悪かったよ」
真墨がすまなさそうに、頭を下げた。香澄が胸倉をつかんだまま泣きだし、やがて真墨の胸に顔をうずめて静かに泣きだした。戦いで受けた傷よりも、香澄の涙が身体にしみこみ、心まで激しくしみるような痛みを感じた。

茉莉(・・・・・・・アイツ、本気で真墨のこと、心配してるんだ)
いつも心のどこかで宇津保の事をバカにしていた。単純で猪突猛進でただひたすら物事を力任せに突っ込んでいくだけしか能のないバカだと思っていたが、茉莉の中で宇津保香澄という人物の評価が変わりつつあった。しかし胸の奥で心がチクリとする痛みを感じていた。それが「嫉妬」であることだと、この時茉莉はまだ知る由もなかった。

アスカ「とりあえず、ここも危ない。避難した方がよさそうである」
真「シェオロ、ここは任せるぞ。私はあれを翠ちゃんに届けてくる」
アスカ「おおっ!ついにあれを使う時がきたであるか!!」
真「まあな。チェックはすべて完了、問題ナッシングだ」

そういって、真が部屋を出て行った。

その頃。
校庭ではハルピュイアヤミーが羽手裏剣を無数発射し、ワルキューレたちを追い込んでいた。背中から生やした翼で空を飛びまわり、空中から容赦なく真下にいる3人に羽手裏剣を発射し反撃の隙も与えない。

ハルピュイアヤミー「うふふふふふふ、あははははははは!!」
ワルキューレ・ストーム「ちくしょ―!!バズーカさえあれば撃ち落とせるのに!!この間香澄ぶっ飛ばして使い果たしたからな―!!」
ファング・ライム「お前香澄様になんてことしてくれたんだ!?」
ファング・シェリー「・・いや、というかどうして護衛任務がメインなのに、バズーカとか爆弾とか普通に学園内に持ち込んでいるの?」
ワルキューレ・ストーム「派手なの好きだから!!“以上”!!」

「「お前の思考回路の方が“異常”だ――――――――っ!!」」
まあ、この姉(兄?何それ誰の事?)にして妹あり、である。

ハルピュイアヤミー「うふふふ、さあ、これでおしまいですわ!!」

ハルピュイアヤミーが翼をはばたかせて手に大きな渦を発生させる。そしてそれを放つと巨大な竜巻が拳とともに発射され、暴風の弾丸が地面に向かって高速で放たれる!!それを交わすが風圧で吹き飛ばされる!!

ワルキューレ・ストーム「きゃあああああああああああああ!!」
ファング・ライム「うわあああああああああ!!」
ファング・シェリー「きゃあああああああああ!!」

3人が吹き飛び、地面に転げまわる。そして暴風が放たれて直撃した地面は激しくえぐれていた。そのすさまじさを見て、3人が息をのむ。ハルピュイアヤミーが3人を見下すように笑みをこぼす。

ハルピュイアヤミー「くふふ、この程度ですの?やれやれ、これはゼロ様のお手をわずらわせるまでもない。ここで始末して差し上げますわ」
ワルキューレ・ストーム「ゼロ・・・!そうだ、どっかで聞いたことがありそうでなかったような名前だったけど、思い出した!!幻獣系ってゼロのことじゃん!!」

果てしなく失礼なことを言い、驚く翠。するとそこへ、真がやってきた。手にはジェルラミンケースを持っている。

真「翠!!」
ワルキューレ・ストーム「ギュゼ・・・いや、真さん!!」
真「これを使え!!ワルキューレの新しい武器だ!!」

真がケースを開いて、赤い盾型の武器を取り出す。盾には「バイソン」「キリン」「ヤギ」の黄金の紋章が刻まれており、盾には装てんされている剣「ジュラフカリバー」が差し込まれている。そして剣の柄の部分が開くと、3枚のメダル「バイソン・コア」「キリン・コア」「ヤギ・コア」がはめ込まれていた。

そう、真が「クジャタシステム」をさらに改良してその能力を最大限まで引き出すことに成功した新しい武器「バイソンシールド」と「ジュラフカリバー」のセット「クジャタドライバー」である!!

ワルキューレが装着すると、盾のバイソンの目が光り出し、メダルも赤い光を放って輝きだす!!

ハルピュイアヤミー「何ですか、この光は・・・!」

ハルピュイアヤミーが光の眩しさとその光から感じる得体のしれない気配に驚く。ワルキューレがバイソンシールドを装着して、ジュラフカリバーを静かに引きぬいた・・!!

ワルキューレ・ストーム「お前たちの好きにさせないよ!!」

「クジャタフォーム!!クリムゾン・レボリューション!!」

ワルキューレのアーマーが解除されると、深紅の光が全身を囲みながらまとわりつき、やがてその姿が深紅の甲冑を着こんだ騎士の姿へと変えていく!!バイソンを模した二本の黄金の角を持つ頭部、黄金のブレストアーマーを装着した上半身、ヤギを模した黄金のラインが施された深紅のアンクレットを装着した重厚な騎士、仮面ライダーワルキューレ・クジャタフォームが登場した!!

その全身から放つオーラに圧倒され、ハルピュイアヤミーが言葉を失い、余裕が表情から消える。近くにいたライムフォーム、シェリーフォームもその高貴ささえ感じる重厚な騎士の姿となった翠に圧倒される。バイソンシールドから取り出したジュラフカリバーの刃が伸びて、短剣から長剣へと変えると、それを突き出した!

ワルキューレ・クジャタ「はあああああああああああああ!!」

すると剣から赤い光が放たれて剣の形のように変わってハルピュイアヤミーの身体を貫いた!!予想外の攻撃にハルピュイアヤミーはよけきれず攻撃が直撃して胸部から爆発しながら地面に急降下して落ちてきた!!

ハルピュイアヤミー「きゃああああああああああああああ!!ば、バカな!!?」
ワルキューレ・クジャタ「祭りをメチャクチャにして、楽しみにしていた人たちを傷つけた、アンタのこと、絶対に許さない!!」
ハルピュイアヤミー「くっ・・・こざかしい!!」

重厚な姿からは想像もつかない俊敏な動きで駆けだし、ハルピュイアヤミーに近寄るとジュラフカリバーで切りかかる!!その一撃を鉤爪で防ぐが、その一撃で鉤爪が叩き折られた!!音を立てて爪の刃が吹き飛ぶ!!ハルピュイアヤミーの顔から色が失せる。

ハルピュイアヤミー「何!?わ、私の爪があああああああああ!!」
ワルキューレ・クジャタ「はああああああああああああ!!」

うろたえて隙だらけとなったハルピュイアヤミーに次々と切りかかり、バイソンのごとく猛然と攻め続けていく!!その怒涛の勢いに反撃する間もなくハルピュイアヤミーに剣を叩きつける!!

ハルピュイアヤミー「きゃあああああああああ!!」

バイソンシールドにセルメダルを3枚投入するスロットにセルメダルを入れる!!

「セル・バースト!!オリハルコンブレイク!!」

「鋼」を司るクジャタフォームの力の最大の特徴は、自身の持つ攻撃力や防御力を鋼の力で最大限まで引き出す事が出来る能力。切れ味、重さ、あらゆる能力が最大限まで高まり、神話上の伝説の鉱石「オリハルコン」のごとく破壊力を極限まで高めた剣を構えて、赤い光を放つと、一気に駆け出し、切りつけた!!

ワルキューレ・クジャタ「はああああああああああああああああ!!」
ハルピュイアヤミー「きゃあああああああああああああああ!!」

ハルピュイアヤミーに紋章が浮かび上がると、全身から火花を散らせてもんどり打つ。そして倒れ込んだ。

ハルピュイアヤミー「・・・・うふふふ・・・あはははは・・・・!!」
ワルキューレ・ストーム「何がおかしい!!」
ハルピュイアヤミー「・・・なかなかの強さですね。見くびった私の負けです。ですが、私以外の十勇士は私以上の実力の持ち主です。はたして、どこまでその勝利が続くか、学園の平和を守れるかどうか・・・・続きは地獄で、見守らせていただきますよ・・・」

そして倒れ込み、ハルピュイアヤミーが爆発し、巨大な炎が爆音とともに空に上がった。
爆発が上がり、煙が上がった後には“風祭さくら”が横たわっていた。ライムフォームとシェリーフォームが駆け付けると、風祭さくらの身体が砂となって崩れ落ち、白骨化した変わり果てた姿になった。

ファング・ライム「な・・・!?」
ファング・シェリー「・・・・これは、魂を喰われていたんですね。強力な力と意思を持つ霊の中には憑依した人間の魂を食らって自身の肉体として現世で自由に行動することが出来るものがあると聞いたことがありますが、彼女はきっと・・・」
ファング・ライム「・・・・・ふざけるな!!何が魂を食らうだ!!超高校級とまで言われるまで、彼女には彼女の人生があったはずだ!!それを・・どんな理由があろうと・・・どんな理由があったって・・・奪っていいはずが・・・ないだろうがっっ!!!!」

骨と化し、やがて粉となって崩れ落ちたさくらの死体のなれのはてを、風が吹き付けて天へと還って行くように舞い上がっていく。その光景を見て、翠も瑛子も美子も、そして真も、胸が締め付けられる切なさと、彼女の命を理不尽に奪ったゼロへの激しい怒りで、胸がいっぱいだった。


蘭「・・・・・・うん?」

保健室、目を覚ますとそこには茉莉、朱美、霧子、そして真墨の姿があった。

蘭「あ・・・あれ?こ、ここは、保健室・・・・。ボクは・・・?」
茉莉「突然竜巻が起きてさ、巻き込まれて気を失っていたんだよ。大丈夫?」
蘭「・・・・あれ?ボクさ、さっき、変な怪物とか、茉莉が仮面の騎士に変身していたと思っていたんだけど、あれ?」
朱美「・・・・貴方、何を言っているの?」
霧子「夢でも見ていらしたのではございませんか?」
蘭「ええ?ゆ、夢ェ!?そ、そんなことないよ!!ね、ねえ、茉莉!!」
茉莉「・・・・頭しこたま打って夢と現実の区別つかなくなったの?アタシ、そんな変身とか正義のヒーローとか、そういったの趣味じゃないし」
蘭「・・・そうだ!!もっと驚くことがあったんだ!!ま、真墨!!」
真墨(?)「な、何・・・じゃなくて、何だよ?」
蘭「・・・あのさ、お前って、その、あの・・・・男だったの?」

朱美「・・・・・・・はあ?」
霧子「蘭様?」
茉莉「・・・・・・やっぱり頭打ってたか」
蘭「だ、だって、さっき怪我していて!!手当てしようと胸見たら、ツルペタで!!というか、男の人の身体で!!ぼ、ボク、見たんだよ!!」
真墨(?)「お前さ・・・まだ寝ぼけているのか?一発ゲンコツ食らって目ェ覚ますか?」
蘭「で、でもさあ・・・!!」

そう言った時、蘭の手を真墨が自分の胸に押し付ける。すると柔らかい感触が蘭の手に伝わってくる。その感触に蘭が目を見開いて口をぽかんとあける。

蘭「・・・・おっぱい・・・・ある?」
真墨(?)「まったく、分かったかよ?」
朱美「もう、礼儀もなってないし女らしさも気品も欠片もないうえに、胸もあるのかないのか分からないから、混乱するのも無理はないけれど、真墨が男の子なわけないでしょう。じゃなきゃ即刻学校から追い出して警察に訴えて捕まえてもらってるわよ」
真墨(?)「・・・・・そこまで言う事ないじゃん、じゃない。マジで殺すぞ、色ボケババア」
蘭「そ、そうか・・・。ボク、夢みていたんだ」

蘭がぼんやりとした頭を抱えて、最後は自分に言い聞かせるように言った。その言葉を聞いて真墨が誰にも気付かれないよう、ため息をついた。


真墨・翠の寮。真墨が帰ってくると、部屋からなんと真墨・・・いや、大友暁が出てきた。
そして真墨がはあっとため息をついた。

真墨(?)「・・・・はあ、お兄ちゃん。無事、終わりましたよ」

そういって、ロングヘアのウィッグを外すと、それは翠だった!そう、先ほど蘭と話していた真墨は翠が変装していた姿だったのだ。双子だからこそ出来る変わり身の術であった。真墨と茉莉から蘭に正体が気付かれたかもしれないという話を聞いた翠がとっさに思いついた作戦、それは一連の騒ぎを夢だと言う事で誤魔化すというものであった。この騒ぎが広まって任務続行が難しくなることを防ぐための作戦だった。そして蘭を危険な目に遭わせないための作戦でもある。

翠「もう、冷や冷やしたよ。朱美さんからは散々言われるし、蘭には胸揉まれるし」
暁「・・・本当にすまねぇ。マジで謝る」
翠「・・・まあ、いいけどさ。それにしても、お兄ちゃん。幻獣系のヤミーが出てきたってことは、本格的に敵も動き出したってこと?」
暁「・・・十中八九間違いねぇな。そうなると、ゼロっていう親玉もいつ出てくるか分からない。それに、真田十勇士って言っていたな。あのヤミー、あの後分析してみたらこれまでのヤミーとは比べ物にならないほどに強い。そんなのがあと9人、いるんだ。そしてそのボスのゼロはそれ以上の力を持っている。油断は出来ないぜ」
翠「・・・そうだね。それに、あんなふうに、魂を喰われてヤミーにするなんてひどすぎる。そんなこと、ボク、許せないよ。もう、あんな犠牲者出しちゃダメだ」
暁「・・・・ああ」


その夜。
茉莉は人気がなくなった夜のカフェで一人紅茶を飲んでいた。しかしその表情はどこか優れない。庭園を彩る薔薇も、夜空を彩る星も、今の彼女の心をときめかせてくれない。
そこへ翠がやってきた。

翠「茉莉ちゃん!どうしたの、こんなところで」
茉莉「・・・うっさいな、一人になりたかっただけだよ」
翠「あ・・・ごめん。じゃあ、ボク、行くよ」
茉莉「・・・・いいよ、ちょっとあんたに聞きたいことあったし」

そういって、翠のカップを用意して紅茶を注いだ。翠も茉莉の向かいに座って紅茶を飲みだす。

茉莉「・・・あのさ、翠」
翠「・・・何?」
茉莉「・・・・暁のことなんだけど」
翠「お兄ちゃんのこと?」
茉莉「・・・・・暁って、どういう女の子が好みなのかな」
翠「お兄ちゃんの好み・・・?そういえば・・・・ボクもよく分からないなぁ・・・」
茉莉「・・・・喧嘩強い子が好きなのかな。ワガママで強引だけど面倒見がいい子が好きなのかな。おっぱい・・・大きい子が好きなのかな。・・・・・アタシみたいなひねくれてて、背もちびっ子で、ワガママで、中二病こじらせている女の子なんて、眼中にないのかな」
翠「茉莉・・・ちゃん?」

茉莉が泣いていた。涙をぽろぽろこぼして、それを拭うこともせず静かに涙を流していた。

茉莉「・・・・宇津保みたいな子が、好きなのかな。でも、それならいいんだよ。真墨が、暁が本当に好きな女の子ならさ、アタシは暁が好きな女の子と一緒に結ばれた方が幸せだっていうのならそれでいいよ。でもさ、でも、そうじゃないんだったら、暁は、アタシのこと・・・どう思っているの?もしかして手がかかる生意気でどうしようもない子で、仕方なく面倒見てくれているんだとしたら・・・」
翠「そんなことないよ。茉莉ちゃんのこと、お兄ちゃんは大事に思っているよ」
茉莉「それは友達として!?あくまで、暁はアタシのこと友達としてしか見てないじゃん!!友達・・・友人でしかないんだよ。妹のような存在で・・・決して女の子として見てくれないじゃない・・・。あいつはそれでいいかもしれない。でもさ、アタシは・・・アタシはね・・・・・好きなんだよ。あいつのことが、暁の事が」

片思い。
暁が決して気付くことがない、気付いてもらえない、熱い思い。
茉莉は絞り出すように自分の思いを打ち明ける。

茉莉「・・・・男の人として、好きなの。恋人として、愛してほしいの。友達じゃ、ダメなんだよ。友達のままで、はっきりしないままなんて、嫌なんだよ。自分のこと、どう思っているのか、気になって仕方ないの。あいつの顔を見ているとそれだけで胸がほわってして、暖かい気持ちになれるの。あいつがバカやるたびにいつの間にか心の奥底から笑えるようになったの。あいつが無茶やるたびにあいつを叱っているうちに、本気で他人を心配して怒ることが出来るようになったの。こんなアタシにあいつは生きることの楽しさや大切さを教えてくれたの。アタシ・・・暁が好き。好きで好きでどうしようもないの。でも、暁は・・・宇津保と話している時、アタシには見せない顔をしていた。すごく・・・嬉しそうで・・・・楽しそうだった。あったかい何かを感じたの。だから暁は宇津保の事が好きなんじゃないかなって思って・・・でも・・・そう思っていたら・・・すごく苦しいし・・・・辛いよ・・・」

翠が茉莉の隣に座り、優しく抱き寄せた。その姿はまるで本当の姉妹のように見えた。翠自身もその気持ちは痛いほどわかった。血がつながった実の兄妹。ゆえに絶対に結ばれることのない恋心やあこがれ、分かってはいてもこの気持は抑えきれるものではない。

翠「・・・・・ボクも分かるよ。本当に、あの人は女心に鈍すぎるというか、皆対等な友人関係で付き合っちゃう人だからさ。なのに、優しすぎるし、まっすぐで何事にも一生懸命でさ。あんないい男そうそういないもん。それなんだから、もうちょっとそういうことにも・・・興味持ってほしいよね」
茉莉「・・・・翠」
翠「・・・今夜はとことん、付き合うよ」

今宵のティータイムは長くなりそうだと、翠は新しい紅茶を用意した。


一方その頃・・・。
寮の外にある休憩所で、真墨はデッキチェアに座って本を読んでいた。そこへ、香澄がやってきた。

真墨「・・・おう、どうした?」
香澄「・・・怪我の具合、痛むかしら?」

見ると果物やお水など袋には入っていた。お見舞いにきたらしい。

真墨「・・・もう大丈夫。俺、怪我とかすぐ回復しちゃうタイプだし」
香澄「もう、いつもそう強がって。少しは休まなくちゃダメよ」
真墨「ヘイヘイ」

香澄が桃を剥いて皿に盛る。夜空には夏の星座が宝石箱をぶちまけたようにキラキラ光り輝いている。

香澄「文月祭、延期になっちゃったわね」
真墨「しゃーねーだろ。いきなり事故やら嵐やら起きたんだから」
香澄「でも、七夕の日に織姫と彦星のイベントはやってほしかったわね。たとえ女の子同士でもそういったイベントって結構楽しみだったりするわけだし」
真墨「そういうもんかね」
香澄「ねえ、真墨・・・」

香澄が桃を差し出して上目遣いで真墨の枕元によってくる。そして桃をフォークに刺して差し出す。

香澄「あーん♪」
真墨「・・・へ?え、ええ!?」
香澄「んもう!あーんよ、あーん!!口開きなさいな!!」
真墨「あ、ああ、マジか!?あ、あーん(ざくっ)いってええええええええええええ!!フォークが!刺さった!!刺さったぁあああああああああああああ!!」
香澄「んもう、おバカなんだから!!本当、もう、おバカなんだから・・・可愛くて可愛くてどうしようもないくらい・・・バカで・・・・可愛いわ」

そういうと、香澄が真剣な、切なげな表情になり真墨の顔を見る。その真剣な瞳に真墨も言葉を失い、吸い込まれるようで目と目が離せなかった。

香澄「無茶ばかり、しちゃダメよ?本当に・・・心配したんだからね」

まるで聖母のように優しく微笑んで真墨の手を両手で優しく包み込むように言う。真墨の表情が真っ赤になり、激しい胸の高鳴りを感じ、鼓動が聞こえてくる。

真墨「・・・・・あ、あのさ、香澄!!」
香澄「・・・・・何かしら?」

その感情が何なのか、まだよくわからない。だが、その感情は憧れや友情とは違うもっと強い、相手のことを深く思う心の高ぶり、もう冷静に考えている余裕はなかった。

だから、言ってしまった。
今まで、自分から言ったことがない、自分自身でも信じられない言葉を。

真墨「・・・今度の休み、その・・・“二人で”・・・どっか遊びに行かねえか・・・?」
香澄「・・・・二人?それって・・・デートのお誘いかしら?」
真墨「・・・・・・・・・・・・・・・・そう、だよ」

信じられないくらい顔が真っ赤になり胸がドキドキしている。目の前の香澄の顔を見ることさえ恥ずかしくて出来なくなる。最高潮まで心臓が高鳴り飛び出しそうになる。

香澄「・・・・・いいわよ。実は真墨のことね、一度でいいから独り占めしたかったの。誘ってくれて嬉しいわ、ありがとう」

香澄が満面の笑みを浮かべて優しく話しかける。その返事を理解するのにどのくらい時間がかかったであろう。そして、その言葉を理解した時、真墨の精神は限界を迎えた。その場で目を回してぶっ倒れてしまったのであった。

続く

,さて、この物語も中間地点まで来ました。今回ワルキューレの強化フォーム、クジャタフォームが登場しました。「鋼」の力をつかさどり、ワルキューレの攻撃力、防御力がパワーアップした姿となって白兵戦を得意としております。そして今回、これまでの暁とは思えない大胆な行動、香澄にまさかのデートの誘いをかけて、見事OKをもらいました。今まで女の子のことを「友達」や「家族」の感覚でしか付き合ってこなかった暁が自分ではまだ気づいていないでしょうが「恋愛感情」の対象として香澄を思う暁の表現をもっとうまく書けるよう頑張ります。さて、次回は香澄と真墨の初デートとなるのですが、大騒ぎになることは間違いありません。次回もよろしくお願いいたします。

感想ありがとうございます!

>その可能性が高そうですな。……しっかし、朱美嬢ことキールは何をしているのやら……。自身が楽しむ為に色々と学園の催し物に関わりまくっているって……; 百合好きもとんでもないレベル……;

朱美「ただ楽しんでいるだけじゃないわよ。こういったイベントや催し物には欲望が強く発せられるいい機会。その中でも最も強い欲望を持っている子を見つけてヤミーを生み出し騒ぎを起こす。それがゼロ様からの命令ですからね」
真墨「さらに本音を言うと」
朱美「イベント大好きな翠ちゃんとイチャコラチュッチュ出来るチャンスを逃すアホウがどこにいるって話よ」
真墨「アホウはテメェだよ、ドアホウ」

>要するに、どの様な動植物も存在しない荒野な様な状況こそ、争いも起こる事がない静寂で平和な状況という事になるという……。単に面白味の無い悲しい世界と言うことですな。霧子さんは孤独な世界をお望みなのでしょうか?

霧子「うふふふ・・・それはそれで面白そうなお話ですねぇ。争い事がなければ誰かが傷ついたり悲しんだりすることがないということでしょう?素晴らしいじゃないですか。それに、そういったことは私よりも強く願っている人がいるのではないでしょうか?」
凛「・・・そういう世界にしか争いや戦いがない平和な世界だと思っていたけど、それは間違っていたんだよな。俺の中のもう一人の俺は、そんなこと教えたつもりないんだけどな・・・」
暁「ここまでこじれてるんじゃ、説得には骨が折れそうだぜ・・・。とにかくもうかかわっちまったんだ。そんな理想なんかよりも仲間がいて一緒にバカやって過ごす毎日の方がよっぽどいいってこと教えてやるよ」

>カグヤ「本当にどうなっているのやら……。後、『ハルピュイアヤミー』は幻獣系“グリード”である『ゼロ』の部下のはず。それがカブキに協力をしているのはどうして……」

カマノスケ「これはですね、ゼロ様から「カブキが邪魔なライダーやグリードを倒そうとしているから手を貸してあげて。でも今までの展開から大混戦になるかもしれないからみんなやってきたらカブキごと全員そこで始末して」と命令があったんですよ。ですからライダーやシエルたちが出てきたら全員しとめるはずだったんです」
ゼロ「でも失敗して早々にリタイア、さらに十勇士の存在すら知られちゃって、バカだね―、本当に。まあ、このくらいどうってことないけどさ」

,#000000,./bg_f.gif,kd106160036142.ppp-bb.dion.ne.jp,0 2014年10月06日(月) 22時26分58秒,20141006222658,20141009222658,8IHfJi1cB7PZE,,gucci 財布 星 グッチ 長財布 ,,,,,,,213.203.77.222.broad.pt.fj.dynamic.163data.com.cn,0 2014年10月06日(月) 19時40分17秒,20141006194017,20141009194017,8rIgi7BWJtdd.,,グッチ バンブグッチ 長財布 ,,,,,,,213.203.77.222.broad.pt.fj.dynamic.163data.com.cn,0 2014年10月06日(月) 13時02分20秒,20141006130220,20141009130220,8meoki6pVBl5U,,バッグ gucciグッチ 財布 ナ,,,,,,,213.203.77.222.broad.pt.fj.dynamic.163data.com.cn,0 2014年10月06日(月) 10時37分13秒,20141006103713,20141009103713,8j6OmHIMbYzSw,,gucci 財布 おgucci 財布 茶,,,,,,,213.203.77.222.broad.pt.fj.dynamic.163data.com.cn,0 2014年10月04日(土) 19時46分10秒,20141004194610,20141007194610,8YDz3V5zPS6.g,仮面ライダーワルキューレ Mission23,鴎,,,Mission23「波乱万丈の文月祭!」

文月祭の日にちが近付いてきた。
学園内では笹や色とりどりの短冊が飾られて、教室ごとの模擬店や展示会の準備で大忙しであった。しかし生徒たちは楽しみにしているらしく、騒がしくもかしましい、元気な声が聞こえてくる。

翠「お祭りだ―――――――――――――――♪」
蘭「七夕だ――――――――――――――――♪」

翠と蘭が頭にねじりはちまきを縛り、はっぴを着こんで、両手に団扇を持って高らかに叫んだ。お祭りが大好きな二人はもう楽しみで楽しみで仕方ないと言った感じで大はしゃぎであった。

文月祭とは、祭りで屋台が出たり、男装した繚乱会のメンバーがゲームで勝ち残った女子生徒と一緒に七夕デートを行う「彦星と織姫コンテスト」を行ったり、軽音部のライブや文化系部活の出し物をやったりして、大いに盛り上がろうと言う企画であった。

朱美「もう、二人とも元気なんだから」
茉莉「しかし、本当にやるんだね、うちらが男装して彦星になって、織姫に選ばれた女の子と花火見物なんてさ。本当、ギャルゲーかよって感じ」
朱美「この企画、実は私が考えたの。そしたらもう大当たりでね。4月から文月祭では絶対この企画をやってくださいって依頼が殺到していたのよ」
蘭「繚乱会と生徒たちが触れ合ういい機会だもんな~。うちら、生徒会ってことでなかなか皆と気さくにこうして一緒に遊んだりする機会少ないもん」
茉莉「とか言って、本当は女の子とお祭りで堂々とイチャイチャ出来るからでしょ」
翠「・・・・・朱美さんらしいっちゃ、らしいよね」
霧子「あらあらまあまあ・・・・」

朱美「あ、そういえば、真墨はどうしたの?」

朱美がふと、生徒会の面々を見るとそこにはいつも憎まれ口を叩いてくる真墨がいない。すると、蘭が気まずそうに顔をそむけ、茉莉がため息をつき、翠が苦笑いをする。

霧子「・・・何かありましたの?」
蘭「・・・・あのさ、真墨なのだけどね、その、色々あって、文月祭、その・・・」
茉莉「クラスで笹に短冊下げて願い事するでしょ?それで真墨が短冊下げたら笹が続けざまに3本も突然折れたり落雷で丸焼けになったり短冊を吊るしている途中で機材はこんでいた台車に吹っ飛ばされて怪我しまくって・・・」
翠「・・・・・七夕なんて誰が参加するかって、怒ってクラス飛び出しちゃって、それから戻ってきてないの・・・・・」

朱美「・・・・要するに、勝手にキレて仕事サボってどっかに行っちゃったと・・・・」
朱美の額にヒクヒクと血管が浮かび上がる。霧子も苦笑いするしかない。

朱美「翠ちゃん。いつも香澄ちゃんを吹き飛ばす時に使っているバズーカ、あとで貸して下さらない?あとでバズーカを交えた話し合い、いえ、果たし合いをする必要がありそうだから」
翠「朱美さん、果たし合いっていいませんでしたか?生身の相手にバズーカって決して穏便に片づける気はないっすよね?」
茉莉「・・・もう、携帯も電源切っているよ。本当につまらないことですぐカッカするんだから。こういうところがお子ちゃまなんだっつの」
蘭「・・・今頃、屋上で寝ているんじゃない?あとで見に行ってみるよ」
霧子「真墨様・・・・大丈夫でしょうか?」
蘭「大丈夫だって。アイツすぐ怒るけど、冷静になったらちゃんと反省できるし根は素直だからさ!ボクに任せて」


そのまさかであった。保健室で自分で手当てを済ませて、全身にバンソウコウや包帯を巻いた痛々しい姿で真墨は給水塔にもたれながら両手を頭の後ろで組んでサボっていた。

真墨「いっててててて・・・・。全くどうしてたかだか笹に短冊吊るすだけだっつのに、折れた竹の下敷きになるわ、落雷で感電するわ、台車に轢かれて吹っ飛ぶわ、ここまで悲惨な目に遭わなきゃならねーんだよ。不運すぎるだろ、おい・・・」

怒って教室を飛び出してきたが、屋上でしばらく頭を冷やしている間に頭が冷静に戻り、どうやってクラスや繚乱会に戻るものかと真墨は頭を抱えていた。

その時であった。

「はい・・・はい・・・・分かりました。ボクも学校終わり次第、病院に行きます。あの人のことについて、今後どうするか、お話しできるお時間、いただけませんか?いつも無理言ってすみません・・・はい・・・はい・・・」

聞き覚えのある声がした。屋上から下の方にこっそり顔だけ出すと、そこにいたのは、「超高校級のギャンブラー」こと磯貝汐里(いそがい・しおり)であった。いつになく深刻そうな顔つきで誰かと話している。電話を切って、ふうっとため息をついた。ひどく疲れている様子だ。顔色も悪く、その場に座り込んでしまった。思わず声をかけようとするが、どうもかけづらい雰囲気だ。眉間を右手で抑えながら、胸ポケットから生徒手帳を取り出すとそれを開いて何かを見ている。真墨がいる場所からは見えない。

その時だった。屋上のドアが開いた。

蘭「おーい、真墨―。もう怒ってないで出てこいよ―」
蘭だった。突然の訪問者に汐里も驚いて手帳をしまった。

蘭「あ、君は6組の磯貝さん!こんなところでどうかしたの?」
汐里「ちょ、ちょっと風に当たりたくなっただけさ。君は確か白薔薇・・・社さんだったかい?」
蘭「うん、よろしくね。君とは編入の時の挨拶以来だよね―。あれからクラスで上手くやってるか気になってたけど、ここの学校はどう?クラスメートの子たちもお嬢様って言われているけど結構気さくで明るい子多いしさ、友達出来た?」
汐里「ま、まあ、ぼちぼちかな・・・」
蘭「あ、そうそう。ここで真墨見なかった?」
汐里「真墨って・・・百合川のこと?いや、見てないけど」
蘭「そうか、いやさ、ちょっと探しているんだけど、もし見かけたらボクが探していたって伝えといてくれないか?生徒会の手伝いもそろそろ参加してもらわないと困るってさ」
汐里「あ、ああ、構わないよ。それじゃ、ボク、用事あるから、それじゃあね」

そう言って、汐里が走り去って行った。その時彼女の手帳から一枚の写真が落ちて、汐里は気付かないまま屋上を出て行った。蘭がその写真を拾い上げる。するとそこへ真墨が給水塔から降りてきた。

真墨「蘭!」
蘭「あ、真墨―!もう、サボるなよ。朱美もうカンカンだったぞ。あとでバズーカ覚悟しておけとか言っていたんだから」
真墨「そしたら何百倍にして倍返ししてやるっての。つか、それ、何よ?」
蘭「ああ、これ?うん、さっき磯貝さんが落としていった写真なんだけど・・・あとで届けておかないと」
真墨「写真?それなら後で俺が届けておくよ。どれ―・・・」

写真を見た瞬間、真墨の表情が凍りついた。驚きで目が見開かれ開いた口がふさがらないまでにショックを受けている様子だった。

その写真に写っていたのは―。
黒い革ジャンを着こんだポニーテールの長身の美女、そして磯貝、そしてその間に茶髪で露出が多い派手な服装をしているダンサー風の女の子が満面の笑顔で写っていた。しかし、そのうちの一人に真墨は心当たりがあった。

真墨「・・・・アベル・・・・!それに、この間、翠が言っていた派手な服装をした女の子で自分のことをカブキって言っていた子の似顔絵にそっくりじゃねえか・・・・それじゃあ・・・磯貝の正体は・・・・!」

真墨が驚きで呆然と立ち尽くしていた。その様子を怪訝そうに見ている蘭。そしてその光景を陰で隠れるように、カブキが見ていた。しかしその表情は冷たい光を宿し、口元にはにやりとこの状況を楽しむかのように唇の端を吊りあげ、赤い舌でちろりと舐めている。

カブキ(・・・・・バカね。とうとうばれちゃったみたいね。でも、これもこの後の祭りを盛り上げる前座にすぎない。真墨ちゃん・・・いいえ、大友暁くん?君にはこれまで私たちの邪魔をしてくれた分、たぁっぷりと可愛がって上げるわ・・・)

するとそこへ、一人の女子生徒が暗がりから現れた。つややかな黒髪のおかっぱ頭、日本人形のような可愛らしい顔立ちをした小柄な美少女だ。手に持っている桜が描かれた扇子を広げて煽いでいる優雅なしぐさが良く似合っている和風系美少女だ。

「・・・カブキ様」
カブキ「・・・・カマノスケ。貴方がまさか手伝ってくれるとは思わなかったわ。手筈通り、貴方はワルキューレたちを頼むわよ?」
カマノスケ「・・・・仰せのままに。この真田十勇士が一人、“風忍(かぜにん)の由利カマノスケ”。ワルキューレたちに至上の舞いをささげますわ・・・」

そういって、桃色の一陣の風が吹き、カマノスケと名乗る女子生徒の姿は闇に消えていった。カブキは目の前で写真を見て呆然と立ち尽くしている真墨を見て、獲物を狙うどう猛な肉食動物のようにぎらついた光を瞳から放っていた。

こうして様々な思惑や知略、謀略が陰でうごめく中、ついに文月祭を迎えることになる。


その夜。
翠「え―――――――――――――――――――――――――っ!!!?」

壁は裂けよ、窓は割れよと言わんばかりの翠の大声がコテージから響き渡った。その大声で見事真墨はひっくり返り、茉莉はいつの間に耳栓をつけていて、メイやシェオロこと華藤アスカ、そしてギュゼルこと鬼島真(きじま・まこと)も驚きのあまりに目をぱちくりさせていた。香澄を寝かしつけた後、報告に来ていた瑛子と美子も茉莉からもらった耳栓をつけているが、あまりの大声と剣幕に言葉を失うほど驚いている。

茉莉「声デカい」
メイ「さ、暁が、ひっくり返っているぞ」
翠「で、でも、一体全体どうなっているんだよ~!?」
瑛子「話を整理すると、今現在解ったことがその磯貝汐里の正体がグリードのシエルであること」
美子「そして、仮面ライダーディオネの正体が青薔薇様・・・・菫谷霧子さんってこと」
メイ「・・・しかし、これは厄介だぞ」
真「そりゃそうだ。護衛しなくてはいけない相手が敵として襲ってくるんだから」
アスカ「しかし、なぜに霧子は吾輩たちを敵として襲いかかってくるのであろうか?」
茉莉「それでさ、以前彼女には気をつけろって冷牙さんたちが言っていた話があったじゃない。それでその時の映像を調べてみたんだけど、明らかに人間離れしている運動神経だったし、まるでグリードみたいな変な技使っていた。それでその時の画像、本部でもチェックしてたんだけど、どうやら蒼真さんや真夜さんは見当がついたらしいんだよ。そしてそいつがかかわっているのなら自分たちに敵対する理由にも心当たりがあるって」
メイ「・・・・・・それが、神代聖(かみしろ・さやか)」

翠「神代聖って・・・確かこの間父さんや母さんとも戦ったことがあるっていう、邪神に操られてこの町を何度も危機に陥れてきた、シスターだったっけ」
メイ「そう、そして、暁の・・・・親友だった新海凛が生み出したもう一人の人格だ」
瑛子「え・・・?そ、それじゃあ、神代聖が別人格だったとはいえ、暁と神代聖は・・・」
翠「・・・・親友同士だったってこと!?」
メイ「・・・そうなるな。しかし、最期には神代聖の人格が邪神ごと消滅して、事件は解決したのだが・・・邪神の魔力を宿し続けてきたせいか凛の身体はもうボロボロで・・・」
翠「・・・・この間、死んじゃったんだよね」
瑛子「ふん、邪神を生み出し何度も街の平和を脅かしたのだ。自業自得であろう!!」
美子「瑛子ちゃん、言いすぎだよぉ。そりゃ、私たちも神代聖に一族滅ぼされたけど、でも、もうそのことでいくら恨んでいてももう故郷も家族も帰ってこないんだよ?それじゃあ、もう、神代聖を恨むのも悪口言うのもやめようよぅ。私たちがこれからどうするかって事考えたら、過去にとらわれて成長できなくなるなんて、嫌だし自分のためにならないじゃない」
瑛子「・・・そ、それはそうだけど」
真「美子くんは強いな。自分の心の傷や怒りを乗り越えられるなど強い心を持っている者でなければ出来ることではない。しかしそれは生きていくことにおいては欠かせない、誰もが乗り越えなくてはならない試練だ。君は・・・その試練に勝ったのだな」
美子「・・・自分でもわかりませんよ。でも、香澄様や暁ちゃんに出会う前だったらずっと過去の苦しかったことに縛られて神代聖をずっと恨んでいて、今みたいなことも言えなかったかもしれません。でも、香澄様や暁ちゃんに会って、どんなに苦しい事があっても悲しい事があっても、それでも諦めないで前向きに頑張ってやるぞ―って人を見ていると、なんだか、香澄様や暁ちゃんみたいに自分も前へ進むことができるかなって思ったんです。それで元気をもらったというか・・・」
瑛子「香澄様・・・・そうか・・・そうだな。過去にとらわれて腐って前向きに頑張ろうとしないものなど、香澄様が好まれるはずがない。それだけ前向きで一生懸命に何事にもぶつかっていくあの人に一生をかけてついていくと決めたのに、それではいかんな」
翠「・・・・・まあ、それはそれで置いといて、そうなると引き続き護衛活動は周囲に気をつけながらやったほうがいいかな?」
メイ「・・・・思い切ってぶつかってみるのも一つの手かも知れんが、それなら物事を常に冷静に分析して状況を素早く判断できる相手に一任したほうがいいかもしれんな」
茉莉「・・・そうなると・・・・翠と武田と上杉、それに、真墨はダメだね」

「「「何でさ――――――――――!?」」」

納得できないと言ったように、翠と瑛子、美子が抗議の声を上げる(真墨は気絶している)。しかしグリードの3人は納得したようにうなづく。

アスカ「まあ、翠ちゃんは感情に流されやすいところがあるし」
メイ「武田は熱血ギンギンバカだし、上杉はすぐオロオロして落ち込みやすい」
真「暁くんなどその場で大乱闘になって大騒ぎになりかねないからな」

「「「・・・・・・・反論できましぇん」」」

交渉や暗躍には完全に不向きと見なされ、3人ともガックリ落ち込み(1名は気絶していたが)、部屋の隅で膝を抱えて座りこんでしまった。頭の上からどよよんと暗い影がかぶっている。

メイ「そうなると、茉莉、君が少し調べてみてくれないか。菫谷霧子に関することを」
茉莉「はいよ」
真「あ・・・そうだ。翠くん、ちょっとあとでいいかな?話したいことがあるんだが」
翠「・・・・・・・・・・・・・ふえ~い」

こうして夜は静かにふけていくのであった。


そして文月祭当日。
繚乱会は「彦星と織姫コンテスト」の準備で朝から大忙しであった。

朱美「翠ちゃん、最高ォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!王子様の衣装もメイクもよく似あってるぅうううううううううううう!!!ヒャッホォオオオオオオイ!!」

翠は緑色の派手な服職が施された王子様が着るような服装に身を包んでいた。そのボーイッシュで中性的な美少年にも見えるルックスは確かに凛然としていてよく似合っていた。朱美が鼻血を鼻から噴き出しながらクネクネと激しく踊り出す。朱美も銀髪をリボンでまとめており、赤いバラを胸元に刺した王子様のような豪華な服装を着こみ、男装している。蘭や茉莉、霧子もそれぞれが王子様のような豪華な服装に身を包んでおり、繚乱会の面々は華麗な男装と化粧を施した姿となっていた。

朱美「お持ち帰りぃいいいいいいいいい!!この子、お持ち帰りぃいいいいいいいい!」
茉莉「いいよ―、持ってけドロボー」
蘭「おいおい」
霧子「・・・あら?真墨様は?」

そういえば、今日も真墨がいない。

蘭「ああ、真墨なら・・・ほら、着替えて出てきたよ」
真墨「おう、翠、呼んだか?」

翠「OK My brother I had been stabled Lets go my honey!!」
真墨「落ち着け。日本語失っているぞ、バカ」

呆れるような口調だがツッコミありがとう。しかし、もうこんな真墨の姿を見てしまったらもうバカだろうと何だろうと言われてもかまわなかった。
軍帽をかぶり、黒い軍服のような服装をびしっと着こみ、外套を羽織ったその姿はまさしく男装の麗人という言葉がふさわしい。胸元には黒い薔薇をさしている。飾りとして腰には軍刀を差し込んでおり、しわひとつない軍服姿に思わず見とれてしまう。

朱美「・・・・なかなかやるじゃない」
蘭「・・・おお!」
茉莉「・・・・・・ふうん(あとで絶対写真撮って永久保存しとこっと)」
霧子「あらあらまあまあ」

真墨「・・・こういうのは嫌いじゃねえな。露出少ないし(男性用の服、久しぶりに着れてよかった~♪)」
翠「結婚しよう、よく似合ってるよ、お祭り頑張ってね」
茉莉「言いたいことが本音と建前ゴチャゴチャだっつの」
真墨「お友達のままで、ということで。じゃあ、俺会場のチェック行ってくるよ」
朱美「生徒たちに気付かれないように裏道通って行きなさいよ―」
真墨「おう」

後ろでガックリと頭を下げている翠を置いて、廊下を抜けて校舎の裏手に出ると体育館へと続く裏道へと向かって歩いていく。

その時だった。

「黒薔薇様♪」

裏道に行くと連絡通路に一人の女性がいた。ウェーブがかかった茶髪のロングヘア、琥珀のように澄み切った黄金色に輝く瞳、そして黒と赤を基調としている露出が派手な服装に身を包んだ長身で褐色色の肌を持つ女性がいた。

真墨「・・・・誰だ、アンタ。ここは立ち入り禁止だぜ」
「・・あらあら、随分と真面目というかお堅いのね。でも、そういう貴方だってこの学園そのものには本来は立ち入り禁止なんじゃないかしら?」
真墨「・・・・何?」
「・・・どうして、男の子の君が女装して女子高に潜入しているのかしら?ねえ?“大友暁”くん?」

真墨「!?」

女性の目つきが妖艶な目つきから獰猛な獣のそれに代わり、舌なめずりをする。有無を言わせない迫力に真墨も言葉を失い呆然と立ち尽くす。


同時刻。
翠「そろそろボクたちも会場に行かなくちゃ。蘭、そろそろ行こう!」
蘭「おう!茉莉も一緒に行こうよ!」
茉莉「はぁい」

その時だった。

翠「あれ?校庭の方に誰かいるよ?」
茉莉「あれは・・・超高校級の日本舞踊家の“風祭さくら(かざまつり・さくら)”じゃん」
翠「確か、海外でも公演したことがある、期待の若手舞踊家」
茉莉「京都でも名家育ちで由緒正しい日本舞踊の家元の次期後継者の座が約束されているんだって。それも幼少のころから厳しい修行を積んで、実力でつかみ取ったんだって」
翠「すごいねえ、それ。あ、こっち見て笑っている!うーん、日本人形みたいで可愛いなあ」
蘭「そうだよなあ。なんというか、守ってあげたくなるって感じ」
茉莉「はいはい、そろそろ行くよ・・・・え?」

茉莉の動きが止まった。窓の外の方を見るとさくらの姿の周りに黒い風が吹き出し、彼女の周りに渦を巻いた。そして、その姿が極彩色の翼を背中から生やし、頭部にも黄金の兜を身に付けた、鳥のような怪人の姿・・・・「ハルピュイアヤミー」へと化身する!両腕には鋭い鎌の刃のような鉤爪を装着している怪人の姿に変貌した!!

蘭「な、何だよ、あれ!?」
茉莉「嘘でしょ・・・・・」
翠「くそっ!!」

翠が飛び出した。

蘭「お、おい、翠!」
翠「茉莉ちゃん!蘭と先に体育館まで避難してて!!あと、チョンマゲと泣き虫メガネに連絡!!」
茉莉「合点!!」

茉莉に連れ出されて蘭が体育館の方に向かっていく。そして翠が校庭に出ると、凄まじい勢いで風が吹き荒れ、鋭い切れ味の風の刃が校庭に設置された屋台のテントを吹き飛ばし、モニュメントを切り裂き、無残な光景が広がっていた。生徒たちが慌てふためいて悲鳴を上げながら逃げまどう。その中にまぎれて翠が校庭に出て、校舎の陰に隠れてメダルを準備した。そこへメイも駆けつける。

メイ「翠!」
翠「学園祭メチャクチャにしやがって。もう許せない!変身!!」

翠の姿が仮面ライダーワルキューレ・ストームフォームに変わり、校庭へと飛び出す!

ハルピュイア「・・・来ましたね。仮面ライダー」
ワルキューレ・ストーム「この間といい、今回といい、せっかくみんなが楽しみにしていたお祭りなのに、もう許せないよ!!覚悟しな!!」
ハルピュイア「・・・ふふ、御覚悟をされるのは、そちらですわ!」

ワルキューレがアンキロランスを回転させて飛び出し、槍を次々と突き出して攻撃を繰り出す!それを鉤爪ではじいて、素早く攻撃を繰り出し、斬撃と打撃が派手に何度もぶつかりあう!!ハルピュイアヤミーの優雅で変幻自在な動きの攻撃にワルキューレが槍をいくら突き出しても隙が生まれず、動きに翻弄され、攻撃がまともに当たらない!!

ワルキューレ・ストーム「ちっ!!」
ハルピュイア「単調な動きですこと。踊りとしてはまだまだ半人前ですわね。本当の踊りというものを教えて差し上げますわ」
ワルキューレ・ストーム「うるさい!!」


そして体育館へとつながる通路を蘭と一緒に向かっている茉莉は・・・。

茉莉「瑛子と美子にはメール送ってっと・・・とりあえず、皆を体育館に避難させないと」
蘭「なぁ!!前から聞こうと思っていたけど、一体何が起きているんだ!?ここ最近、この学校で変な事件が次々と起きているだろう!?翠はどこかに飛び出しちゃうし、何がどうなってるんだよ!?」
茉莉「ごめん、アタシもうまく説明出来そうにない!!とりあえず今は、生徒たちを体育館に避難させたほうがいいよ!」

そして裏道に差し掛かった時だった。

真墨「テメェ・・・・何で俺のことを・・・まさかテメェもグリードか!?」
「・・・うふふふ・・・・そう・・・・貴方達とは前に一回会ったことがあったわね。自己紹介をするわ。私は・・・植物系グリードのカブキ!よろしくね、ファングの坊や・・・」

カブキの姿が黄色い光を放って怪人の姿へと変わっていった!!以前とは違い深紅のバラが頭部に開き、全身にまかれたイバラのトゲや左腕のホウセンカの形をした大砲、両足に怪しい光を放つビーム砲の役割を果たすキノコのような武器が装着され、完全体・・・いやそれをも超えた突然変異体となったカブキの姿を見て、その迫力に言葉を失う。

真墨「・・・・やるしかねえか!!」

その時だった!

蘭「あれ?おーい!!真墨―!!お前、何やってるんだよ―!」

なんと渡り廊下に蘭と茉莉が通りかかってしまったのだ!蘭は真墨に声をかける。すると、カブキが舌打ちして振りかえる。

蘭「な、なんだよ、こっちにも怪物がいる――――――――っ!?」
茉莉「ちょっ、シャレにならないって!!」
カブキ「・・・・怪物?うるさいわね、小娘はさっさと消えなさい!!」

カブキが手から電気の球を生み出して蘭たちへと向ける!!

真墨「なっ、や、やめろ―――――――――――――――っ!!!」
真墨が飛び出すと同時に電撃弾が発射される!!真墨が目にも止まらない速さで駆けだす!!そして電撃弾が着弾し、周囲がまぶしく光り、爆発が起きた!!

そして、黒煙がはれると、そこには、爆発した通路から少し離れた場所に座りこんだ蘭と茉莉の姿があった。二人とも、爆撃の直撃は免れたらしいが、衝撃で吹き飛ばされて身体が痛みで思うように動けない。しかし、爆撃された通路には・・・!

茉莉「・・・さ・・・暁・・・・・い・・・いやああああああああああああああ!!」
蘭「真墨――――――――――――――っ!!!」

爆撃の直撃を受けて、衣装がボロボロになり、黒こげとなった真墨が全身から煙を上げて倒れていた。茉莉と蘭を助けるために弾き飛ばして、自分が電撃を受けてしまったのだ!!

茉莉「う、嘘だ、真墨!真墨――!!真墨!!死んじゃヤダ、ヤダ、ヤダ――――――――ッ!!!真墨!!真墨――――――――!!」

茉莉が泣き叫んで真墨に駆け寄り必死で声をかけるが、真墨は苦しそうに口から血を吐き出し、悶え苦しんでいた。電撃で身体がマヒして思うように言葉も発せず、動くことさえかなわない。茉莉の顔色が青くなり、いつものクールな彼女とは思えないほどに冷静さを失っていた。

カブキ「・・・ふん、バカな男。正義の味方気取って自分から電撃を浴びるなんて。女装して皆のことを騙してどうせもてあそぶか情報収集に利用していただけでしょうに・・・。こういう自分の命をも顧みないで他人を助けても、自分が死んだら意味がないじゃない。所詮はその程度・・・かしら」

カブキが嘲り笑って、倒れている真墨をぐりぐりと踏みつける。真墨は苦しそうにうめきながら口から血を吐きだし、マヒして動けなくなった身体を必死で動かそうとする。そんな真墨を痛めつけるように、歪んだ笑みを浮かべながら足にさらに力を入れる。

茉莉「・・・・黙れよ、あんたなんかに何が分かるのさ。こいつはいつだって誰かのことを守るのに一生懸命で、優しすぎるくらい優しくて、真面目で頭堅くて融通きかなくて、それでも、心から本当の気持ちをいつもさらけだしてくれる、大事な友達なんだ。あんたなんかが・・・笑うな・・・バカにするな・・・!」

涙があふれて止まらない。悔しい。自分が大好きな人が自分を守って傷つき、そしてバカにされて笑われた。今まで感じたことのない激しい怒りが爆発した。

蘭「茉莉・・・」
茉莉「・・・よくも暁を・・・・・許さない―――――――――っ!!変身―――――――――――――――――――――っ!!!」

茉莉がテティスドライバーを召還して蘭とカブキの目の前で、仮面ライダーテティスに変身する!!蘭は目の前で変身した茉莉の姿を見て、驚いて言葉を失う。

蘭「ま・・・茉莉が・・・・仮面の騎士・・・・!?」
カブキ「へえ」
テティス「うわあああああああああああああああああ!!くらえ―――――――――――――――――っ!!!」

テティスが槍を地面に突き刺すと空中に魔法陣が浮かび、そこから無数の黄金の剣や槍、武器が現れる。その切っ先が全てカブキに向けられて、発射の体勢を整える!!

テティス「・・・串刺しにしてやる・・・・!!くらえええええええええええええええええええええええええええっ!!」

合図とともに無数の剣が雨のように打ち出され、カブキに向かって発射される!!蘭がとっさに真墨の身体を校舎の陰まで引っ張って隠れる。それと同時に剣の雨が降り注ぎ、突き刺すと同時に次々と爆発が起きてカブキがいる中庭を容赦なく吹き飛ばし、破壊していく!!爆風と衝撃で校舎が揺れて、パニックと化す校舎。そして、蘭が真墨を寝かせて常備している包帯を取り出す!

蘭「とりあえず、応急手当てしないと・・・!!真墨、いったん服脱がすよ!!」

そう言って、蘭が真墨の服をはだけた・・・。
そして胸元を見て、言葉を失い、驚きで座りこんだ。

蘭「・・・・・・・・・・・・・・え?真墨・・・・・胸・・・・・ない?これ・・・・男の人の・・・・・・・身体・・・・・?嘘・・・だろ・・・・?」

茉莉の変身、そして真墨の正体・・・あまりにも衝撃的なことが続いて起きて、頭の中が真っ白になり、考えがまとまらない。

蘭「・・・・どうなってるんだよ・・・・何がどうなってるんだよ!!!」

蘭の絶叫は混乱にかき消されて、誰にも聞こえることはなかった。

続く
,さて、第23話投稿します。
今回、ついに動き出しました「真田十勇士」。最初の一人「由利カマノスケ」こと「風祭さくら」が変身する「ハルピュイアヤミー」。風の力を自在に操る能力を持ち、ワルキューレを苦しめます!さらに蘭にはついに正体がばれてしまった真墨こと暁、そして茉莉。茉莉は普段はクールでどこかドライで仲間意識とかあまりないように書いていますが、実は非常に仲間思いで恥ずかしがり屋、かなりの甘えん坊でもあります。今回のことで激しく怒ったことから茉莉は真墨のことを本当に大切に思っています。しかし怒りで周りが見えなくなったとはいえ蘭の前で正体を明かしてしまった茉莉。さらに次回は真が翠に話しかけた相談の内容と、ワルキューレの新しいフォームが登場します!!

>カグヤ「調べたところによると、朱美からは強力なドロップキックを喰らい、【ワルキューレ】の翠にはコブラツイストとかを長時間くらいまくったらしいよ」

ちなみに真墨こと暁の弱点は「女の子」と「お化け」ですよ―♪
翠「それでお仕置きした後に、ウェディングドレス着せてお兄ちゃんのファンの肉食系の女の子が集まった個室に閉じ込めて、たぁっぷりと可愛がってもらったんだ。これでスッキリしたよ」
茉莉「・・・そのあと、ほとんど裸に近いボロボロのドレス姿で部屋から脱出して、自分の部屋に鍵かけて閉じこもっちゃったんだけど」
蘭「女の子怖い、女の子怖いってガタガタ震えてたな」

>雪奈「これもあちらの暁君の思いと香澄さんへの無自覚の恋心の影響でしょうか?」

暁「こ、こここここ、恋なんて、し、し、してねぇよ!!ゆゆゆゆゆゆ、ユッキー、ユキちゃん、ユキ様落ち着け!!落ち着け、落ち着くんだ、ラマーズ呼吸法で落ち着いて会話しましょう!!」
翠「一番挙動不審なのはお兄ちゃんでしょうに」

>一同『お仕事なども頑張りつつ、どうか頑張って書いていってください!!』

涙が出るほどうれしかったです。これ見て、嬉しくて仕事も趣味ももう一度頑張ろうと思えました。ありがとうございます!!
,#000000,./bg_f.gif,kd106160036142.ppp-bb.dion.ne.jp,0 2014年09月23日(火) 15時24分01秒,20140923152401,20140926152401,6cjpkeHDILoOY,仮面ライダーワルキューレ Mission22,鴎,,,Mission22「調和の紋章!ルシファーフォーム」

(真墨side)
全く・・・ひどい目にあったぜ。何でこうもまあ俺の周りの女性たちときたら、四六時中バイオレンスな騒ぎを起こさずにいられないんだ?巻き込まれて怪我するこっちの身にもなりやがれ。メイたちの誤爆ともいえる攻撃をもろ食らって、俺は保健室で瑛子に包帯を巻いてもらっていた。しかし、事態は厄介なことになっているには変わりはしないな。今の状況を整理すると・・・。

グリード3体が同時に攻めてきている、つまり敵も本腰入れてきたってことか。一体だけでも厄介だって言うのに3体もまとめて来られた日には今のイージス総動員でも厳しい。アルコバレーノのメンバーたちにも声をかけて応援の要請をかけないとな。今は一時撤退しているようだが、またいつ来るか分らない。これに関してはメイとシェオロ、それとさっき合流したライダー風の女性・・・メイたちが「ギュゼル」と呼んでいたから、おそらくグリードの一体だろう。あの様子だと、俺たちの敵というわけではなさそうだから、今はメイを信じて彼女にも応援を頼むしかないな・・・。

瑛子「暁の裸、暁の裸、暁の裸、暁の裸、ハァハァハァハァハァハァ///」

そして一番厄介なのが映画の中に閉じ込められた翠とよっぴーの行方だな。あの映画、ヤミーの気配がしたとメイが言っていたからあの映画に宿る欲望を明らかにしないとあの映画から翠たちを脱出させるのは不可能だ。映画のフィルムに宿る欲望となると、あの映画を作っていた当時のスタッフを探し出して話を聞き出すしかなさそうだ。それにあの映画、翠からの通信だと俺が通っていた「私立天神学園」が映っていたようだ。つまり昔セント・ローゼリア学園が撮影場所として私立天神学園を選んだ経緯を追っていけば当時何があったのか調べられるかもしれない。これは今、茉莉やアルコバレーノのメンバーに調べさせているから、これは連絡を待つとして・・・。

瑛子「暁の裸、暁の裸、暁の裸、暁の裸、ハァハァハァハァハァハァ///」

真墨「・・・・おい、こら、瑛子。俺は腕とか足とかにしか怪我してないはずなんだが?」
瑛子「暁の裸、暁の裸、暁の裸、暁の裸、ハァハァハァハァハァハァ///」
真墨「・・・なのにだ、なんで俺のパンツまで脱がそうとする必要があるんじゃ――――――っ!?」
瑛子「こ、ここここここも、け、怪我してるだろう!?だ、だだだだだ大丈夫だ、お、お姉さんが、や、優しく、ちちちちちちち治療、し、しししししししてあげるからな!!」
真墨「治療が必要なのはお前の脳みそのほうじゃ――――――――っ!!」

現在満身創痍のはずの俺は、なぜか俺のパンツを全力で下げようとしているバカ虎から必死でパンツを守っている状態だ。このままじゃヤバい、同学年の女子に素っ裸の状態など恥ずかしくて見せられるか―――――――――っ!!!

真墨「だから、やめろって言ってるんだ!!!今ふざけている場合じゃないだろうが!!急いで翠たちの救出をしなくては・・・!!」
瑛子「く、くくくく、昴とやらが言っていたぞ?その前にお前の体力の回復が先だとな。そしてお前の体力回復に最も効果的というのは、女性に素っ裸にされてイタズラされることで快感を得て回復効果を発揮する変態だとなぁ!!し、しか、仕方ないではないか。わ、私は、嫌なのだぞ?し、ししししししかし、親友を助けるためだ。こここここここは、私が一肌、ひひひひひひひとはだ、ぬぬぬぬ脱ぐというのが友情というものであろう!!」
真墨「お前のほうが行動を見れば変態じゃ―――――――――――――――っ!!」

あのバカ、いつか殺す!!とんでもないこと言いやがって!!誰がそんなことで快感と感じられるか!?俺はそんな性癖は持ち合わせてないわい!!
茉莉「・・・あのさ、お楽しみのところ悪いんだけど」

その言葉に俺は心臓が凍りつきそうな得体のしれない寒さを感じる。声のする方を見ると、そこでは茉莉が呆れたように俺たちを見ていた。それこそどこか軽蔑しているような冷たい氷のような刺々しく冷たい光を帯びていた。

真墨「待て茉莉!!違うんだ、誤解するな!!!俺は無罪だ!!!」
茉莉「といっても説得力ないっての。まさか、あんたが・・・そんな性癖持ってたなんてね―」
真墨「断じて違うんだ―――――――っ!!!!それは、あのバカが勝手に言っているんだ!!俺はあくまでノーマルだ!!普通に女の子が好きなんだ!!イタズラされて嬉しいとか感じる趣味なんぞ持ち合わせてないんだ――――――――――っ!!!!」

茉莉「女装して女子高忍び込んでいるっていう時点でノーマルとは程遠いって話なんだけどね」
真墨「Noooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!」

ごもっとも!!いくら任務とは言え、俺の今置かれている状況といえば、もう普通に変態じゃねえか!!俺は両手で頭を抱えてうずくまった。これは潜入捜査だ、決して他意はない、他意はないもんっ!!この学園の平和を守るために戦ってきたはずなのに、どうして、どうしてこうなるの!?俺は、俺は、そんな趣味はないんだ―――――――――っ!!

瑛子「・・・暁?」
真墨「・・・・なんだよ、瑛子?」
瑛子「・・・大丈夫だぞ?女装趣味の変態野郎でも、お前の男気や優しさ、可愛さ、ああ、どれをとっても可愛くて愛おしいぞ・・・?」
真墨「お前までそんなこと言うんじゃねえ―――――――――――――っ!!!!」

俺は滝のような涙を流して悲観にくれるのであった。もう、なんだか、疲れてきた・・・。
結局この後瑛子を拳骨で強制停止させて、茉莉をどうにか説得させて、俺と瑛子、茉莉は管理人室に向かった。


管理人室
ドアを開けるとそこには、メイとシェオロことアスカ、そしてもう一人の女性が座っていた。歳は俺たちより少し年上っぽい、クールで大人びた雰囲気の眼鏡をかけた知性的な女性だった。首のあたりで長い銀髪をひとくくりで縛り上げていて、凛然とした吊り目が特徴的だった。

メイ「暁!もう、大丈夫なのか?」
「・・・・先ほどは本当にすまなかった。君まで巻き込んでこんな怪我をさせてしまって」

暁「もう慣れたから気にしないでいいよ。それよりも緊急事態だ。翠たちを早く何とかしないといけない。これから全員で作戦会議を行おうと思う。いいか?えっと、その前に、確かあんたは・・・」
ギュゼル「挨拶が遅れて失礼した。私はギュゼル。メイやシェオロと一緒、グリードだ」

そういって、ギュゼルの姿が赤い光を放ってグリードの姿に変わっていく。頭部には雄々しき二本の角が生えている凶暴そうな顔つきをしたバイソンのような頭部、上半身には網目模様がいくつも張り巡らされている。まるでキリンのようだ。そして下半身の足元には曲がりくねった角がアンクレットのようについており、体毛がいくつも巻きついている。ヤギを模しているようだ。そう、牛系生物の王たるこの姿こそギュゼルの真の姿だった。

茉莉「マジでグリードだったんだ・・」
瑛子「こうして改めてみると驚くな」
ギュゼル「(人間の姿に化身する)ふう、さて、話の続きと行こうか。メンバーは揃っているのかね?」
真墨「ああ、今いるこのメンバーで今の状況を打破する。解決しなくちゃいけない問題が山積みだからな。それをメンバーで分担して素早く処理する」

そうだ、とりあえず今はこの状況をどう解決するか、手を打つところはもう打たなきゃならねぇ。翠、よっぴ―、必ず助けだしてやるからもうちょっともってくれ。そしてグリードども、いつまでもお前らの思いどおりになんかさせねぇぜ。


映画の中の世界
深夜の校舎の中、派手に火花を散らせて爆発音が響き渡り、仮面ライダーワルキューレ・ストームフォームがランスを振り回して大量のゾンビを次々と串刺しにして仕留めていた!仮面ライダーファング・シェリーフォームもシェリーセイバーで攻め入る敵たちを切り裂いていく!!しかしあまりに数が多すぎて二人は次第に押されつつあった。

ワルキューレ「だぁあああああああ!!もう、倒しても倒してもきりがないよ!!」
ファング(シェリー)「ここでゾンビを倒しても何の解決にもならない。一旦避難できる場所を探してそこで体力を温存しながら暁ちゃんたちからの連絡を待とうよ。このままじゃただ体力が奪われていくだけだよ!!」
ワルキューレ「それしかないよね!とすると、どこにいけばいいの!?」

真墨『翠、俺だ!!学校内で心霊現象に見舞われたら、調理室にいけ!』
ワルキューレ「お兄ちゃん!!調理室って・・・どこ!?」
ファング(シェリー)「どうしてそこが安全なの!?」
真墨『塩だよ!盛り塩に使える塩があそこにはある!!それを使って家庭科室に籠るんだ!俺たちも情報収集を急ぐ!!一時的にしかならんかもしれんが盛り塩を使えば霊たちが入れなくなる!!場所は旧校舎の1階の南はじだ!!鍵がかかっているかもしれないが、4年前って言ったら、家庭科室の外の窓の鍵が一部壊れているはずだ!!そこから入れ!!』

指示があるとおり、渡り廊下から外に出て家庭科室の窓を見ると、確かに鍵が壊れていた。

ファング(シェリー)「本当に開いてる!!」
ワルキューレ「よっしゃ、まずは盛り塩しないと!!塩ってどこ!?」
ファング(シェリー)「あの棚の中だよ!」

棚の中にあった塩の袋を取り出し、部屋の扉の前、そして窓の前に盛り塩をする。すると、ゾンビたちが窓の外で群がるようにうごめいているが、室内に入れないらしく、うめき声を上げながら窓を叩きだした。しかし、塩が放つ光を受けて弾き飛ばされていく!

ワルキューレ「・・・塩、すげー」
ファング(シェリー)「・・でも、どうしてこの事を暁ちゃんが知っていたの?」

真墨『・・・・心霊現象に関しては身を持って体験したから。それで鍵が壊れていたのは壊したのが俺だから。理由は心霊現象や幽霊のうわさ話を聞いてはすぐに確かめたがるバカたちに・・・・・やらなきゃ無理矢理着せられたメイド服やらスク水姿やらチャイナドレス姿の写真を学園中にばらまくって脅されたから・・・ううう・・・・・(涙)』

聞かなきゃ良かった。
この時から信じられないくらい不幸な霊体験や、昴や穏たちの破天荒ぶりに暁は振り回されまくっていたらしい。聞くも涙、語るも涙、哀れな体験談に二人は合掌するしかない気分だった。

真墨「・・・・・・さてと、まずは翠たちの安全は一時的に確保できた。次はこの映画にまつわる欲望の根源を突き止めないとな。4年前、この映画が撮影された時に、映画研究会の部員一人が原因不明の失踪を遂げている。それにまつわる話を、今、マリアさんやクリス、昴たちに集めてもらっている。俺と瑛子は、茉莉が言っていた、映画の中に入っていったディオネが翠たちと接触する前に足止めしなくてはいけない。そこで、茉莉とアスカ、メイ、それと、ギュゼルさんは引き続き情報を集めて、俺たちに送ってほしい」

アスカ「ラジャ!!」
茉莉「OK!」
ギュゼル「気をつけろよ。もうこの映画の中の世界はまともな状態ではない。映画のフィルムから感じる。あまりにも負の気に満ちた、怨念と憎悪、殺意、そういったものでいっぱいだ。さらにこの映画からは、満たされない欲望を満たしたいという願いであふれている。それが欲望の根幹と見て間違いないだろう」
真墨「満たされない欲望・・・・?」
茉莉「その映画、確か騒ぎがあったせいでお蔵入りしたんだよね?そうなると、映画を作る側とすれば・・映画を完成したくなるっていうのが実情だよね」
メイ「・・・その映画を作ったメンバーが気になるな」
真墨「よし、そこから調べてみるか」

そして、視聴覚室前廊下。
真墨と瑛子が翠たちの救出に向かうことになり視聴覚室に向かっていた。その時だ。

香澄「瑛子!真墨!!」

後ろから呼び止められ、振り返るとそこには汗だくだくになり両腕にスーパーの大きな袋を重そうにぶら下げている香澄が疲れた様子で立っていた。

瑛子「お、お、お嬢様―――――っ!?」
真墨「またかなりの荷物だな、おい」
香澄「・・・全く・・・・クラスの方たちときたら・・・・この私をパシリに使うなどいい根性ですわ・・・・・」

袋の中は学園祭で使う大量の道具が入っていた。これだけの大荷物を炎天下の中一人で買いに行ったのであろうか。

真墨「おい、お前大丈夫なのかよ!?」
香澄「・・・ええ、大丈夫ですわ。それより、真墨、貴方今夜8時からご予定はあるのかしら?」
真墨「8時だぁ?いや、今のところ予定はねぇけど・・・」
香澄「そう、それなら、今夜8時、必ず私たちの部屋に来なさい。いい、これは命令よ。すっぽかしたりなんてしたら・・・・・・泣いちゃうから」

恥ずかしそうに顔を真っ赤にして呟くその姿を見て、真墨は思わず胸が高鳴る。得体のしれない感じがした。悪い感じはしない。照れくさそうにロールを指で巻きながらそっぽを向いて、上目づかいで話しかけてくる香澄の仕草を見て、なぜか心臓が熱く締め付けられて鼓動が高鳴る。

真墨「・・・・あ、ああ・・・・・」
香澄「・・・・約束、なんだからね♪」

そういって、自分の手を取り、小指と小指を絡めて結んだ。その指の感触はとても柔らかく少し冷たい、しっとりとした感触だった。花のようないい香りがふわっと鼻をくすぐる。その仕草が、ますます真墨の胸の鼓動を高めていく。心臓の鼓動が高鳴り、顔が真っ赤になって熱くなる。目の前で指と指を結んでいる香澄が、とても綺麗に見えた。

香澄「ゆーびきーりげんまん、うーそついたら・・・」
真墨「・・・・はーりせんぼん、のーます・・・・」

「「指切った!!」」

そういって、指と指が離れて、香澄が結んでいた小指をちろりと舌でなめる。そして自分を上目づかいでまるで誘っているように妖しい魅力を放っており、思わず真墨は自分の心が香澄に飲みこまれていくような錯覚に陥る。

香澄「うふふ♪」
真墨「お、おう・・・・///」

瑛子は二人の様子を見て、戸惑いを隠しきれずにいた。二人の周りに綺麗なお花畑が咲き誇り、空から天使が何人も下りてきて、二人を祝福するかのように花びらをまき散らし、鐘が高らかに鳴り響いているような風景が浮かび上がっているからだ。

香澄「それじゃあ、待ってるからね」
真墨「・・・・オッケイ///」

笑顔を向けて香澄がご機嫌の様子で足取りも軽く帰って行った。そして真墨もしばらく香澄を見送っていた。そのときの真墨の顔が赤くなっていた。そして振り返り視聴覚室に向かおうとした時、瞬時に真っ青になった。正面からは鈍い光を放つ刀を抜き、振りかぶってくる黒髪ポニーテールの巨乳美少女の姿をした―バーサーカーがいたからだ。

瑛子「死ねぇぇええええぇぇええぇええええええぇえええええええッ!!!!!」
真墨「おいコラ待て、なんでいきなりお前は刀を抜いて俺に切り捨て御免かまそうとしてるンですかァ?トチ狂いましたかァ?トチ狂ってるンですかァ?」

とりあえず両手で刃を挟んで抑えながら俺は瑛子の説得をする。

瑛子「オジョウサマトユビキリ、オジョウサマトユビキリ、オジョウサマトユビキリ、ウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイウラヤマシイィイイイイイイ!!」
真墨「よーし、とりあえずグーで殴って元に戻しますかぁああああああああああ!!」

(拳骨による教育的指導中)

瑛子「・・・・すまない」
真墨「・・・・もう、いいよ。お前の頭固すぎ。いってぇ・・・・」

頭に三段重ねのたんこぶをこしらえて涙目の瑛子と、真っ赤に腫れあがった拳を痛そうにさすっている真墨。何だかんだいいながらも余計な力が抜けてリラックスした状態で二人は精神的に万全の状態で任務に取りかかろうとしていた(体力的には若干疲労の色が濃いが)。

瑛子「・・・・行くぞ」
真墨「ああ、必ず二人を無事連れ戻してみせる」

そう言って、真墨が不敵な笑みを見せた。その強気な笑みは勝利を信じて疑わない、絶対的自信に裏打ちされたものだ。彼の持つ「傲慢の罪」ゆえに彼はいかなる時でも自分たちが必ず勝つという自信とプライドに満ち溢れている。しかしそれこそが彼の持つ強さであり、仲間達が心から信頼し、引っ張っていく力なのだ。

真墨「香澄と約束したからな」
瑛子「・・・・・ああ!そうだな!!」

「「変身!!」」
仮面ライダーファング、そして仮面ライダーファング・ライムフォームが光とともに変身を完了し、部屋の中へと飛び込んでいった!!


一方そのころ。
家庭科室では翠と美子が二人、部屋の中に引きこもっていた。部屋の壁や窓をずっと大量のゾンビたちが入らんと力強く手で叩いているのだ。うめき声と壁や窓をたたく音の不協和音が鳴り響き、二人は精神的に疲労していった。

翠「・・・・もうしつこいなぁ。いつまで付きまとうつもりなんだろう」
美子「私たち、どうなっちゃうのかな・・・」
翠「どうもこうもないでしょ。情報が手に入って手がかり掴むか、お兄ちゃんたちの応援を待つしかないんだから。どっちにせよ下手に動けないっての」
美子「う、うん・・・・」

その時だ。通信機に通信の連絡が入る。

翠「もしもし・・・・あ、穏さん!」

穏『・・・・・翠、生きているか』

かかってきたのは、アルコバレーノきっての天才的諜報能力を持つムッツリスケベ、空條穏(くうじょう・のどか)であった。

翠「何か分かったんですか?」
穏『・・・・・・色々と分かった。時間もなかったから4年前まで時の列車・・・デンライナーの野上さんやイマジンたちに頼んで連れてってもらった。そこでこの学校中にカメラ仕掛けて撮影してきた。その時の映像調べて・・・・全部分かった』
翠「野上さん・・・良さんたちに!?よくOKしてくれたね」
穏「・・・・・事情を説明した。過去に干渉しないことが条件だったけど。そして、ウラタロスに力を借りて情報を当時の映画研究会の部員たちから聞きだした」

つまり、穏は過去の世界に飛び、ウラタロスと協力して事件の真相を突き止めたのだ。

穏『・・・・・・・過去に干渉なんてしちゃいけない。そんなこと分かっていたけど、私でも割り切るのに必死だった。暁やお前だったら絶対に破ってしまうほどのことがあった』
翠「何があったんですか!?」

穏『・・・・・・・暁たちに今、裏の森のプレハブ小屋に向かわせている。そこであいつらがこの映画に宿る欲望の真実を解き明かす。それまでは待っていて。絶対に動くな。そこへ、ディオネとかいうライダーが向かっている。鉢合せになったらまずい』
翠「ディオネが!?」

しかし、その時であった。

美子「・・・・・?あれ、翠ちゃん、あれ、なぁに?」
翠「え?」

ふと窓の外を見ると、学校の校庭に何かが光っている。いやそれはまるで燃えているように見えるものが空に一つ、また一つと増えていき、浮かんでいる。それはまるで鬼火のようであった、そしてその中央に一人校舎を見て、立っている人物がいた。

仮面ライダーディオネ。

仮面に隠されているが、その表情は狂気の笑みを浮かべているようにしか見えなかった。翠たちがその姿を見て凍りつく。そしてその浮かんでいるものが何か分かった。
無数の火の玉だった。もうそれは百以上増えたであろう、火の玉が校庭で妖しく揺らめきながら空中に浮かび上がっている。

翠「やばい!!!アイツ、学校ごとボクらを吹き飛ばす気だ!!!」
美子「ええええええええええ!!?」
翠「逃げろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

そう言って、部屋から飛び出すと同時だった。火の玉がものすごい速さで飛び出し、こっちに向かって飛んできたのだ!!!そして窓ガラスを割り、ゾンビたちを焼き払っていく!!火の玉が次々と校舎を吹き飛ばし炎に見る見る包みこまれていく!!

翠「嘘だろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
美子「嫌ぁあああああああああああああああああああああ!!」

窓ガラスが吹き飛び、きらきら光りながら炎とともに部屋の中に飛び散る。そして炎に包まれたゾンビたちが断末魔の叫びをあげて崩れ落ちていく。まるで地獄絵図のような光景だ。

翠「急げぇええええええええええええええええ!!」
美子「分かったよぉ――――――――――――っ!!」

ファング「行方不明になっている高校生が・・・・・殺されていただと!?」
穏『・・・・・・・茉莉が送ってきた映像を調べて、最初に出てきたあの女のゾンビが何か訴えているように唇が動いていた。それで、茉莉が言語解析プログラムで調べたら、助けを求めている声と分かった』
茉莉「それで穏が過去で撮ってきた映像を調べてみたら、4年前、映画の最後の仕上げの直前に部長以外の部員全員が部活を辞めてしまったの。それでメイク担当で部長と部活を立ち上げた時からの仲間であった部員を何とか残ってくれるよう頼んでいたんだけどダメだったみたい。それでせめて、ゾンビが主人公に迫るシーンだけでも完成させたいとお願いして、彼女をゾンビの代役として撮影したんだけど・・・・その撮影がとんでもないものだったの!!」

映像より
「部長!?な、何をするつもりですか、それは、硫酸!?」
「ねぇ、私の映画になにが欠けているのか、色々と考えたんだけど、ようやく分かったの。見る人の心の奥から震えあがるほどの恐怖を刻みつけるリアリティが足りなかったの!だから、作り物のメイクなんかじゃダメなのよ。この硫酸でお肌をドロドロに溶かして、見る人が目をそむけたくなるほどの醜くて恐ろしいゾンビを作らないと・・・!!」
「や、やめてください!!やめっ、ぎゃ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!最高のゾンビ、最高のゾンビ!!もっともっと恐ろしいものを作れば、最高の映画が完成するんだ!!!アヒャヒャヒャ、ア――――――――――――ッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

その時の部長は部員が辞めたことで精神的におかしくなり、素晴らしい映画を完成させれば部員たちも戻ってくると思いこんだのだ。そして部員の一人を硫酸で襲い、ゾンビのように変わり果てた姿にすると、そのまま撮影を敢行したのだ。そして、撮影が終わると、口封じに殺害したというのだ。そして死体を処分したため、未だに発見されておらず、行方不明となっていたのだ。

ファング「そうか、あの映画に宿っていた欲望は映画を作っていたヤツが映画を完成させたいという欲望と、自分の死体を見つけてほしいというゾンビにされた女子高生の二つの欲望がからんでいたんだ!!」
ファング・ライム「何てヤツだ!!穏、そいつは今どこだ!?そんな人殺しがのうのうと娑婆に平気な顔をしていられるなど、間違っているだろうが!!」
穏『・・・・・・・・・・もう、いない』
ファング・ライム「・・・・それは・・どういうことだ?」
穏『・・・・・・・・・映画の完成後、彼女は交通事故で亡くなっている。その映画を発表する前の日のことだったらしい。それで、行方不明者が出た上に部長が死んだということで気味悪がった部員たちがそのフィルムをお蔵入りにして・・封印した』
ファング「それを・・・俺が引き当てたってこと?」

よりによってたまたま仕事をサボって見ようとしていた映画がそんないわくつきの代物だったとは。どこまでもこういった心霊現象に関するものとは切っても切れない縁があるらしい。

そこで真墨の中で一つの結論にたどりついた。

(真墨side)
そういうことか・・・・!!
この映画の中にある「欲望」の正体が分かったぜ!!

ファング「瑛子・・・・翠たちと合流するぜ!あいつらが死体を発見すればこの映画に宿っている二つの欲望のうち一つは解決する!そうすれば、今回の事件の黒幕が飛び出してくる!」
ファング・ライム「それは・・・どういうことだ?」
ファング「・・・あー、つまりだ。分かりやすく言うと、今回、セルメダルによって引き出された欲望は二つあったんだ。一つはこの映画を作って部員を殺害し、事故死した部長の『最高の映画をつくりたい』。ここまではいいな?」
ファング・ライム「うむ」
ファング「ところがだ、この映画にはもう一つ欲望があったんだ。それは『この映画を見た人に自分の死体を見つけてほしい』ってこと。これはメイク担当の被害者だな」
ファング・ライム「ああ」
ファング「つまりだ。ここで二つの欲望はある一つの共通する欲望に結びつくわけだ」
ファング・ライム「・・・・・!!映画を、見てほしいということだ」
ファング「そう、しかし、映画は完成している。なのに、この映画を見た俺たちはこの映画の中の世界に飲みこまれた。これがどういうことを示しているか・・・・」

翠「つまり、二つの欲望がセルメダルのせいで暴走して「映画の中の世界に引きずり込めば死体になった自分自身を見つけてもらえる」っていうのと「ボクらをゾンビの生贄にすることで映画をより面白く作りたい」ってことになるわけ!!」
美子「そ、そんなの、メチャクチャだよ―――――――――――っ!!」
翠「だから、その欲望を発しているものを見つけることと、現実世界で死体を発見すること、この二つを同時にこなさないと、永遠に出られないってこと!!」
美子「で、でも、死体は見つかったわけだから・・・・!」
翠「ああ、そろそろ出てくるはずだぜ。ヤミーがね!」


そして現実世界。
カメラで捉えた映像を頼りに、穏が変身した仮面ライダーナパーム、そして大地昴が変身した仮面ライダーメルクが天神学園の裏の森、4年前にプレハブが置かれていた場所まで来ていた。手には二人とも巨大なスコップを持っており、ある場所をひたすら穴を掘りつづけていた。ライダーの姿でスコップを使って穴を掘っている姿はある意味シュール。

そして掘り当てたものを見つけて、二人が疲れたように溜息をつく。

メルク「こんな近くに死体があったなんてな・・・」
ナパーム「・・・・・・警察に連絡。ゴミ埋める用の穴を掘っていたら見つけたとでも言えばいい」
メルク「だわね」

そう、掘り当てたものは、ボロボロの制服を着こみ、白骨化した、女子学生の死体だった。


それと同時だった。無数のゾンビたちが苦しそうにうめき声を上げて、セルメダルとなって崩れ落ちていく。翠たちが裏の森につくと、そこでちょうどファング達もかけつけていた。

ファング「翠、よっぴー、大丈夫か!?」
美子「暁ちゃん!瑛子ちゃん!!助けに来てくれてありがとう!!」
ファング・ライム「しかし何があったんだ!?学校が火の海になっているではないか!!」
翠「ディオネだよ!!あいつがボクたちを倒そうと火炎弾学園にブチ込んだんだ!!」

しかしその時であった。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

辺り一帯に響く叫び声を上げて、コブラが頭に巻きついたような頭部に両肩にはハイエナのような頭部を模した肩当てを装着し、両足に黒いユリの花が毒々しく巻きついている異形が現れた。「コブラハイエナユリヤミー」である!!

ファング・ライム「3体分てんこもりだと!?」
ファング「ちくしょう、なかなかヤバいのがきたじゃねぇか!!」

美子「私たちも変身しないと!」
翠「うん!!」

二人がそれぞれ変身アイテムを取り出そうとしたとき、前から複数の火炎弾が飛んできた!!火炎弾は地面に着弾し派手に爆発する!!

美子「きゃあああああああああああ!!へ、変身!!」

美子がファング・シェリーフォームに変身し、地面を転がり、すぐさまおき上がると火炎弾がきた方向に身構える。しかし翠がそれを制した。

ファング・シェリー「翠ちゃん?」
翠「アイツ、もう頭にきた。いつまでも好き勝手やれると思ったら大間違いだ!!」

翠が完全にキレた。ワルキューレドライバーを持つと、火炎弾が発射された方向に向かって物凄い速さで駆けていく!!

ファング「お、おい!!一人で勝手にいくな、バカ!」
コブラハイエナユリヤミー「ヨクモワタシノエイガヲ・・・・メチャクチャニシテクレタナァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

後を追いかけようとしたファングの前に怒り狂ったコブラハイエナユリヤミーが飛び出し、長剣を取り出して切りかかってきた!!咄嗟に避けて武器を構えると両隣りにシェリーフォーム、ライムフォームが並んだ!!

ファング「あンのバカ・・・・!」
ファング・ライム「まずはこいつを倒さなくては進むことも追うことも出来ないだろうな」
ファング・シェリー「うん!」

ファング「それなら・・・倒さなくちゃ、だな」

ようやくここまで来たんだ。徹底的にクライマックスで暴れてやるぜ!!


深い森の中、仮面ライダーディオネは獲物を追い求めて静かに歩いていた。校舎を爆撃したが、肝心のライダーやヤミーは仕留めそこなった。しかしこの森の中に逃げ込んだのを見つけた彼女は、周囲を見回しながら獲物の行方を追う。そう、彼女はもう清楚で貞淑な「菫谷霧子」ではなく、一人の狂える狩人「仮面ライダーディオネ」なのだ。

その時だった。ふと、前の方から誰かが向かってくる気配を感じる。慎重にライダーアイの暗視カメラでその存在を確認する。

翠「どこだ―――――――っ!!ディオネッ!!ボクが相手になってやるぜ!!出て来いっ!!」

怒りの咆哮を上げながら森の奥から出てきた人物を見て、ディオネが驚いた。そして木の陰に隠れる。

ディオネ(・・・翠ちゃん!?どうして、ここに?私は・・ワルキューレとファングを追ってきたはずよ。まさか、あの二人と同じように翠ちゃんも映画の中に?・・・・翠ちゃんを泳がせておかないと、いつも事件に巻き込まれている翠ちゃんの周囲にいるライダーやヤミーの情報は掴めなくなりますね・・・仕方ありません)

ディオネが変身を解除し、霧子の姿に戻る。そして翠の前にゆっくりと現れた。

霧子「・・・翠、ちゃん?」

声をかけられた翠は驚きのあまり目をぱちくりさせる。

翠「き、霧子さん!?ど、ど、どうして、こげなところに!?」
霧子「視聴覚室に忘れ物をしてしまって・・・・映画が流れていたから見ていたら・・・・気がついたら・・・こんなところに」
翠「分かった。ボクと一緒にいて!!大丈夫、必ず守るから!!」

翠が霧子の手を取り、安全な場所へと避難させる。その顔は真剣で霧子を思いやるものだった。その様子を・・・霧子は翠に気づかれないよう、冷やかな目で見ていた。

霧子(ねえ、翠ちゃん?貴方って本当に他人のために一生懸命になれる、優しい心の持ち主なんですね?でも、私、そんな貴方のことが・・・・・殺したいほど嫌いなんですよ。どんなに善人面したって、所詮人間なんて自分のことしか考えていない偽善者かバカばかりですもの。そう、本当に誰かを救うことが出来る人間っていうのは、私だけなんですから。私が、この世の全ての人間を罪から解放してみせる。この力で。そう、『死』を以てね。皆死ねばいいのよ、死ねば苦しみからも悲しみからも解放される・・・・)

翠の真剣な思いも声も、霧子には届かないのか・・・。


コブラハイエナユリヤミー「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

コブラハイエナユリヤミーが口から炎を吐きだし、無数の火炎弾がファング達に襲いかかる!ファングとライムフォームが炎をかき分けてファングエクスカリバーとライムスラッシャーで同時に切りかかっていく!

ファング「コイツ・・・・かなり強ぇぞ!!」
ファング・ライム「ああ、連携でいくしかあるまい!!美子!!」

後ろに構えていたシェリーフォームがシェリーセイバーを構えると無数の赤いドクロが口を開けてヤミーに襲いかかっていく!!それが当たるとすぐさまライムスラッシャーの斬撃がヤミーを切り裂き、のけぞる!そこへファングが大剣を振り回して吹き飛ばす!!

ファング「くそっ、大してきいてやしねぇ!」
ファング・シェリー「このままじゃ、私たちがやられちゃうよぉ!!」
ファング・ライム「くるぞっ!!」

コブラハイエナユリヤミー「グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

大剣を構えて思い切り振るうと、炎に加えて電流が、そして闇の波動が3人に同時に襲いかかっていく!!3人とも、強烈な衝撃波を受けて吹き飛び、思い切り木の太い幹に叩きつけられてしまう!!もんどりうって、呼吸すら出来なくなり3人が苦しそうにうずくまる。コブラハイエナユリヤミーが不敵に笑い、静かに武器を構えてゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。まるでとどめを刺さんとせんばかりに。

ファング・ライム「ぐあっ・・・・・!ま、まずい・・・!!」
ファング・シェリー「・・・・うう・・・・・身体・・・・動かないよぉ・・・!」

衝撃波を受けて真墨も、瑛子も、美子も、全身を激痛が支配しまともに動くことさえもできない。敵はもう目の前まで迫ってきている。

ファング(くそっ・・・・かなりやべぇ!!このままじゃ・・・マジで・・・・やられちまう・・・)

その時、脳裏に声が蘇る。


―香澄(約束ですわよ?)

真墨「・・・・香澄?」

―香澄(ゆーびきりげーんまーん、うーそついたら、はーりせんぼん、のーます)

真墨「・・・・・そういえば、そうだったよな」

―香澄「待ってるからね・・・」

真墨「・・・アイツ、待ってるんじゃん。すっぽかしちゃ、ダメじゃねぇか」

あいつのいたずらっぽく笑う笑顔が、背伸びしているような偉そうな言葉が、どこか子供っぽくてくすぐったく感じるワガママが、すごくあったかく感じる。それだけで、なぜか、今相当ピンチのはずなのに、ヤバいって張り詰めていた感情が消えて、頭の中がクールダウンしていく。その度に、無駄な力が抜けてリラックスしていく。力がわいてくる。

ファング「・・・瑛子!美子!!お前ら・・・ここで倒れてて本当にいいのかよ?アイツが・・・・香澄一人にして、死ねるのかよ!!」
ファング・ライム「香澄様・・・・!」
ファング・シェリー「・・・・・香澄様」
ファング「・・・・俺、約束したんだ。アイツに呼ばれたんだ。アイツとの約束、守らないと・・・ダメじゃん。アイツが待ってるのに・・・・!」

ファングが静かに立ちあがる。満身創痍になった身体を必死で起こして、息も絶え絶えになり、口からむせかえる血を吐きだしながらも、その瞳に宿る光は衰えるどころか野獣のようなぎらつきを放っている。

ファング「こんなところでェ・・・・くたばれるかよォオオオオオオオオオオオッ!!!」

帰りたい場所があるなら、会いたいと思う人がいるなら、果たさなきゃいけない約束があるなら、何が何でも生き延びてみせる―――――――――――っ!!!

腹の奥底から力の限り猛り叫ぶ。喉が裂けんばかりに、身体を思い切りのけぞって目を大きく見開いて叫んだ!!

その時だった。
彼の右手に刻まれた、黒いチェスのキングの駒に薔薇が巻きついた「ファンガイア」の頂点の証である「キング」の紋章がまぶしい光を放ち輝き出す!さらに彼の左手に刻まれた「愛情の紋章」が淡く綺麗な桃色の光を放って輝くと、二つの紋章が飛び出してきた!!

真墨「な・・・・・なんだ、なんだ、こりゃああぁあああ!?」

「キング」の紋章と「愛情の紋章」が強い光を放ちながら交差し、やがてそれが一つに重なり合う!そして目を開けられないまでに眩しく光り出した紋章は、愛情の紋章と「キング」の紋章が一つに重なり合い、見たことのない紋章へと変化していた・・!そしてその紋章が光りだし、やがてそれが真墨の手のひらにおさまる大きさになって降りてきた。
そしてその光がスマートフォン型のアイテム「ソウルスキャナー」に変わっていく!

瑛子「それは・・・何だ!?」
真墨「お、俺が知りてぇよ!!うおっ!!なんだか、光り出したぞ!!」

<アブソーブ>

するとその光が真墨と瑛子、美子の3人を照らしてまるで読み取るようにすり抜けていき、光が機械の中に戻っていく。すると、3枚の見たことのないコアメダルが現れた!
一枚は黄金色のトラのメダル、一枚は深紅のカメのメダル、そして最後に青色の竜のメダル。それは今、光が読み取ったデータが機械の中でメダルとなって現れたもの、つまり、このアイテムは「3体まで能力や特性を光で読み取り、そのデータを基に疑似コアメダルを作り出すことが出来る」のだ。そしてそのメダルが一つに合わさっていく。

<スタンディング・バイ>

そしてそれが勝手に浮かび上がり、真墨の持っていたファングドライバーの横に装着される!真墨はファングドライバーをまじまじと見つめて、今これから自分が何をすればいいのか、察した。

真墨「・・・これで・・・新しい変身をしろってことか?」
瑛子「真墨!もう迷っている時間はないぞ!!」
美子「真墨ちゃん!!」
真墨「・・・・瑛子!よっぴー!!もし俺に何かあったら・・・フォロー頼むぜ!変身!」

<トリニティ!ファング・ルシファーフォーム!>

銃口から青、赤、黄色の光の銃弾が発射されると、それが立体化したスクリーンとなってファングたちの前へと映し出される!!それは変身した自分たち自身の姿だった!!そしてそれが一つに重なり合い、3人を包みこんでいく!

翠「へっ!?な、何、あれ!?」
霧子「!?」

その様子を戻ってきた翠が驚きのあまり声を上げ、霧子も目の前で何が起きているのか訳が分からない様子だった。コブラハイエナユリヤミーも眩しさに耐えきれず目を腕で覆い、うろたえている。

すると光の中で仮面ライダーファングの鎧が弾け飛び、黄色い光と共に左上半身がトラを模したアーマーで覆われ、巨大な鉤爪が生えだした!次に赤色の光が右上半身を覆い、カメを模したアーマーが装着され、二門の大砲が備わったガントレットを装備している。そして胸の部分に黄金のラインが入った美しい青色の竜の顔を模した装甲が装着され、仮面の額の部分には王冠を模した金色の装飾が施され、背中から白く眩い光を放つ翼と赤黒きコウモリを模したような羽が噴き出して広がるシルエットが浮かび、その戦士は現れた。手には柄の部分にトラ、カメ、竜の3体の絵とダイヤルとカードリーダーが備わった大剣「回転紋章剣ルシファーズセイバー」が握られていた。

仮面ライダーファング・ルシファーフォーム。
光の力と闇の力、相対する相容れないはずの力を両方自在に使いこなすことが出来る、全ての能力を受け入れ、調和し良き部分のみを引き出すことが出来る最強の戦士が誕生した!

ファング・ルシファー「・・・・・・・・・・・変身、しちゃったよ」
瑛子声「・・・・・・驚いたな、まさかこうなるとは」
美子声「・・・・驚いている場合じゃないよ!敵が来るよぅ!!」
ファング・ルシファー「あ、ああ、そうだったな。とりあえず、まずは、こいつ、ぶっ飛ばすか!!」
瑛子声「・・・ああ!そうだな、まずはそれからだ!!それから後で考えよう!!」
美子声「うん!!」

ファング・ルシファーフォームが手をかざすと無数のセルメダルがファングの頭上に集まり、それが一つの塊になると、一枚のカードとなって舞い降りてきた。見るとそこには「CELL MEDAL ×100」と書かれている。

ファング・ルシファー「これって、全部セルメダルか!?」
美子声「セルメダル100枚分のプリペイドカードってことじゃないかな!?」
瑛子声「おい、来るぞ!」
ファング・ルシファー「ちっ!!戦闘開始だ!!行くぜ!!」

コブラハイエナユリヤミーが大剣で切りかかってきたがその攻撃をルシファーズセイバーで弾くとそのまま無防備となった身体に強力な斬撃を横なぎに切りつけた!しかしその剣の動きを瞬時に見切って眩しい光を全身から放ちながら目にも止まらない速さでかわすと、空ぶった攻撃を繰り出して隙だらけとなった上半身にカウンターの要領でルシファーズセイバーを叩きこんだ!!聖なる光の力を帯びた刃がヤミーを焼きつくすかのように高熱の刃で切りつけると大量のセルメダルが噴き出しコブラハイエナユリヤミーが絶叫を上げてのけぞった!そこへ次から次へとルシファーズセイバーを叩きこみ、火花を上げながらコブラハイエナユリヤミーが吹き飛び、地面に転がっていく。あまりの猛攻ぶりに翠と霧子も言葉を失った。息つく間もなく繰り出される怒涛の攻撃の猛ラッシュは圧倒的だった。

翠「す、すごい、すごい力だ!」
霧子「・・・・まさか、こんな力があったなんて」

ファング・ルシファー「よっしゃあ!!そろそろ本気で決めるぜ!!!瑛子!よっぴー!!!行くぜ!!」
「おう!!」「はい!!」

とりだしたセルメダル・カードを回転剣の柄にあるスロットに装てんして、一気に柄のハンドル部分を引っ張る!!すると、ランプが次々と付き出し、とうとう最後の赤いランプまで光がともりだす!!

「セル・バースト!!フルブラスト・アタック!!」

ファング・ルシファー「はぁああああああ・・・・・・・!!!!」

ファング・ルシファーフォームが両手を胸の前で合わせ顔の前まで持っていくと、背中から眩しい光を放つ純白の翼と禍々しい赤黒い光を帯びたコウモリのような巨大な翼が生え出し、大きく広がった!!そして、アイマスクが青い光を放つと、その光を当てられたコブラハイエナユエリヤミーの動きが封じられた!!苦しそうにもがき、必死で光の拘束をほどこうとするがあまりに強い力で縛り付けられ動きがとれない!!そして翼を広げて空に向かって急上昇し、上空で体を一回転させて右足をつき出す!!そして、眩しい光のオーラと禍々しい闇のオーラが螺旋のように足にまとわりだし、それがドリルのように高速で回転する!!そして一気に急降下した!!

ルシファーフォームの必殺技「ヘブンズ・ジャッジメント」だ!!

ファング・ルシファー「オラァアアアアアアアアアアッ!!!」

右足の蹴りがコブラハイエナユリヤミーの体を貫いた!!コブラハイエナユリヤミーが絶叫を上げて崩れ落ち、大爆発を起こした!!そして大量のセルメダルがそこらじゅうに散らばった・・・!!

翠「やった!!!」
霧子「・・・・すごい」

そのとたん世界が、空が、大地が、風景が歪みだした。さらに空に切れ目が発生し、その切れ目の向こうには現実世界の視聴覚室が見えた。出口だ。

ファング・ルシファー「元の世界に戻るぞ!!」
翠「オッケー!!」

そういって、全員が出口のほうに向かうと光が全員を包み込み、やがて、いなくなった後で悪夢の世界は崩壊した・・・・。


その日の夜。
香澄の寮のゲストルーム。真墨は自分の右手の甲に浮かんでいる「上書き」された新しいキングの紋章を見て、首をかしげていた。

真墨「どうして、俺の紋章が変わったんだ・・・?新しい、調和の紋章として現れるなんて。俺はあの時はただ・・・・あいつのことばかり、考えていたような気がするのに」

いつも高圧的で高飛車で生意気で、わがままで、手がかかるわがままお嬢様。
しかし嬉しい時には一緒に笑い、悲しい時には自分の事のように悲しみ、怒り、一生懸命になってくれる優しい心を持つ女の子。

最近、どうも気になって仕方ない。あいつの笑顔を思うたびに、守りたいと願うようになる。あいつが悲しむ顔を見たくないから、守れるために強くなりたいと願う。さっきもあいつとの約束を必ず守りたくてそれだけを考えていた。

真墨「・・・・・宇津保・・・・香澄・・・・」

どうして。
どうしてこうもあいつの名前を読んだだけで胸がドキドキするんだろう。
どうして顔が熱くなるんだろう。
どうしてあいつの笑顔を思うだけで嬉しくなるんだろう。
どうして、俺は・・・。

あいつの、そばに、いたいと、思っているんだろう・・・。

仲間とは違う。家族とも違う。どれにも当てはまらないこの胸が焼き焦がされるような熱くてドキドキする感覚。苦しくて息もできなくなるくらい、強く、強く思う。

真墨「・・・・俺・・・・・・どうしちまったんだろう」

その時だった。

香澄「真墨!ご飯出来ましたわよ!!」

香澄がエプロンをつけてゲストルームに入ってきた。真墨は香澄の愛くるしい笑顔とエプロン姿にまた胸がドキッと高鳴る感覚がして、少し慌てだす。

真墨「あ、ああ、悪い。今いく」
香澄「?どうかしましたの?御顔・・・真っ赤ですわよ?」
真墨「ふえっ!?い、いや、なんでも、ねぇよ!ちょっ、ちょっと、お前のエプロン、か、可愛いなって、思って、て、ちげぇえええええええええええええ!そ、そうじゃなくて、あの、その・・・・・」

もうアタフタと慌てふためき、いつものクールで不良ぶった態度ではとてもいられず真墨が焦り出す。自分自身ですらどうしてこんなに冷静でいられないのか信じられないほどだ。香澄はきょとんとしているが、嬉しそうにほほ笑んだ。

香澄「そう、エプロン似あっているかしら?ありがと、嬉しいわ」
真墨「あ、ああ、にゃあ・・・・・・・///」
香澄「ほら!行きますわよ。今日は私特製のカレーですわ!!たくさんお食べなさい!!」
真墨「あ、ああ・・・」

自分の手を取りニコニコと嬉しそうに微笑んでいる香澄の事を見て、自分の中のもやもやの正体が少しずつ解りだしてきた。しかしそれは未だに真墨の中では正確な確認がとれない未知の代物であった。

真墨(・・・・俺、まさか、香澄のこと・・・・・好きだって思ってる・・・?)


一方管理人室で夕食を食べていた翠達は・・・。
翠「!!!」
霧子「どうかしましたの?」
翠「・・・いや・・・今なんだか・・・・すごく嫌な予感がして」
蘭「ほえ?」
朱美「風邪かしら?裸と裸で抱き合えばなおるかもしれないわ!!」
翠「却下で。何だろう・・・この嫌な予感・・・・」
茉莉「・・・・奇遇だね。アタシも、なんだか虫の予感っていうかさ・・・」
翠「何だろう・・・嫌な事がこれから何か起きようとしているような気がする」


同じころ。
廃墟と化した写真店。その暗室でカブキが写真用の光画紙を取り出し、自身の手から生えた触手を巻きつけて液体に入れる。すると、光画紙に写真として触手から得た映像が浮かびだす。そしてそれがはっきりと映りだすと、それを見て、カブキが妖艶にほほ笑んだ。

カブキ「そう、貴方だったの。ウフフ、前にもあったわねぇ。これも一つの縁ってヤツかしらぁ?さてと、まず、邪魔な仮面ライダーを潰すためにも、貴方から天国にイカせてあげるわぁん。ねぇ・・・・焼きそばのお姉ちゃん?いえ、仮面ライダーファング・・・百合川真墨・・・・いいえ・・・・・・「大友暁」くん?」

カブキが次のターゲットとして選んだ獲物。
それは・・・仮面ライダーファングに変身するためにポーズを構えている一人の美少女・・・いや美少女の姿に変装している黒髪の美少年。

大友暁。

映画の中の戦いで、変身している姿を見られ、瑛子や美子との会話を聞かれてしまっていたのだ・・・!

カブキ「まさか、オトコの娘だったとはねぇ。うふふ、可愛くて食べちゃいたいわぁ。貴方の事・・・・たぁっぷりと味わって味わって味わって・・・骨抜きにして・・・虜にしてあげるわぁ」

カブキの次のターゲットを見る目は、肉食動物のように獰猛で凶暴な光を放っていた。

続く
,さて、遅くなって申し訳ございません。このたび、退職兼再就職がようやく落ち着きました。今は実家に戻り再就職に向けてつかの間の休日および充電期間を送っております。今回、真墨こと暁の第3の紋章ともいえる「調和の紋章」が現れ、仮面ライダーファングの最強フォーム「ルシファーフォーム」が登場しました。「ライム」と「シェリー」、二人と合体して光と闇の力を同時に引き出すことができる最強形態であり、大剣を武器として光と闇の力を操る戦いを得意としていますが、欠点は長時間変身を維持できないことと、体力と精神力を異常に消耗してしまうこと、そして3人そろっていないと変身できないこと。制限は多いですが実力は相当強いです。そして「調和の紋章」が現れるきっかけとなった「宇津保香澄へのあこがれ」、実はこの時自分が強く思う気持ちと瑛子や美子が香澄を心から大切に思う気持ちが一つになったから現れた「奇跡」ともいえる紋章です。さらにその力は歴代のチェックメイト・フォーの「キング」の中でも「伝説」ともいわれるほどの貴重で最強の力を秘めている代物であり、真墨こと暁の今後の人生を大きく変えていくことになります。しかしそんな彼には次々と試練が降りかかっていきます。そして、自分にとっては怨敵である香澄に「恋心」を抱いてしまった真墨こと暁(まだ自覚はしていない)のことを嫌な予感として察知した翠やクリスたちはこの先どう動くのでしょうか?次回も女性陣が大暴走し、暁は悲惨なくらい巻き込まれることになりますが、今後ともよろしくお願い致します。

>烈様
いつも感想ありがとうございます!!感想への返事お返しします。

>正体ばらされかけ、ネット上に女装写真を公開され、最後には味方グリード二名による攻撃に巻き込まれると言う始末……何と言う酷さ

挙句の果てに同僚に貞操を奪われかけるわ、裸はガン見されるわ、日本刀で切りかかられるわ、カブキにターゲットとして狙われるはめになるわともう散々というか、彼の行くところもうトラブルだらけ。平穏とは程遠い人生ですが、どうか彼のことを応援宜しくお願い致します。しかし、これだけたくさんの女の子にモテまくっているのだから、いい加減女ごころには気付いてほしいですね。鈍すぎるというのも問題です。つまり彼に降りかかる不幸は・・・自業自得という事で。

>カブキ
「その前に私がアベルから託された“力”で消し飛ばしてあげるよ!!ただで死ねるとは思わないことね!!#」
カブキへ返信です。
真墨「そりゃお前にも言えるだろうが!!怪我しないうちにもうバカなことやめておけ!次来たら俺がテメェを消し飛ばすぞ!!」
翠「・・・いつもそう言ってるけど、なんだかんだ言って助けようとするじゃん。お兄ちゃん本当に甘いんだから」
真墨「うるせぇっっ!!!(顔が真っ赤)」
カブキちゃんからのお返事待ってます。


「……どうでもいいが……ここで争うな。よそでやれ!それも人の居ないところとかで!!」

真墨「それに、俺を巻き込むな!!!!」
翠「あ、目がマジだ」

>朱美(キール)
「例え別の世界でも、翠チャンの頼みですもん♪ 聞かないわけがないじゃない♪」

真墨「(翠の声色で)朱美さん嫌い、ダイッキライ!!変態、爆発しろ―♪クックック、翠に言われたと思って落ち込むが良いわ」
茉莉「・・・・朱美が相手だと本当に容赦ないよね、あんたは」
蘭「両方とも小学生レベルでやりあってるもんね」

朱美さん、翠さん、このおバカな黒薔薇様にお仕置きお願い致します。

次回も宜しくお願い致します。
,#000000,./bg_f.gif,kd106160036142.ppp-bb.dion.ne.jp,0 2014年07月15日(火) 10時31分28秒,20140715103128,20140718103128,WW8UlxqNWS0DQ,仮面ライダーワルキューレ Mission21,鴎,,,Mission21「忍び寄る影」

蘆瀬朱美・・・そして爬虫類系のコアメダルを持つグリード・キールは自室で夢を見ていた。どこまでも幸せで暖かくて、そして忌まわしい自分の過去の夢を。

グリードに転生する前、つまり人間だった頃。
彼女の実家は国内でも有数の資産家で、大きな屋敷に住んでいた。頼りになる父と優しい母、たくさんの使用人たちとともに。両親は仕事で忙しい人ではあったが、時間を作っては彼女が一緒に過ごしてくれた。そして、両親がいないときは、いつも、あの少年と少女が来てくれた。

「おーい!あけみー!!あそびにきたぜー!!」
「よぉ!!」
「あ、“さとる”−!!“りん”−!!」

心の底から友達と呼べる二人の親友。“おおとも さとる”と“しんかい りん”。
一人で寂しく遊んでいるところを、屋敷に探検といって勝手に忍び込んできた悪ガキ二人が彼女と出会い、彼女を自分たちと友達になろう、一緒に遊ぼうと言ってきてくれたのだ。彼女は心からこの二人が大好きだった。

そして。

「やぁ、こんにちは」

父の部下である青年、カッコよくて、優しくて、面白い。青年は家庭教師として彼女に接してきた。彼の話が彼女は大好きだった。そしてその大好きの対象が青年自身へと変わっていったのは思春期を迎えるころだった。

「ねえねえ、りん。どうして、あのひとがくると、いつもおこっているの?」
「・・・・べつに。ただ、どうもあいつのことは、きにいらないだけだ」
「どうしてあのひとのこと、わるくいうの!?もう、りんなんてしらない!!」
「ちょ、ちょっと、おい、あけみも、りんもおちつけっての!」
「さとるくんもだいきらい!!もうともだちなんかじゃないもん!!」
「・・・いくぞ、さとる。いまはなにをいってもむだみたいだ」
「お、おい、りん・・・!」
「かえれーーーーーーーーー!!もうにどとこないでっ!!!」

この時から、どうもりんは彼女に口うるさく、あの男には気をつけろとか、あの人と彼女が一緒にいることを快く思っていない、警戒しているようにも見えた。それが原因で、りんと口喧嘩することも多くなってきていた。そしてこれまでのようにいっしょにあそぶこともどんどん少なくなっていった。

初めての恋、彼女は必死だったのだ。何とか彼に振り向いてもらおうと一生懸命だった。
髪が長い子が好きと言われれば髪の手入れも大変だったけど伸ばしたし、お淑やかな子が好きと言われればさとるやりんと話していた気さくな話し方をやめて言葉遣いを直した。そうして成績、スポーツ、全ての分野において、彼に気に入られようと必死で取り組んでいた。それだけが彼女にとって全てになっていたのだった。

しかし、3年前―。
彼女が14歳の時、飛び級で「セント・ローゼリア学園」に入学することが許可された日。「超高校級のご令嬢」として成績優秀、運動神経抜群、品行方正、瀟洒にして清廉なお嬢様として成長した彼女は今や会社の経営にも取り組めるほどの優秀な頭脳を持つ頼れる存在と化した。しかしある日の夜、屋敷で寝ている時、違和感を覚えて目を覚ました。下で何か言い争いをしている声が聞こえる。そして。

バキューン!!
バキューン!!!

刑事ドラマでよく聞いたことがある銃声が聞こえてきた。心臓が飛び出しそうなほど驚きながら彼女は勇気を振り絞って下に降りて行った。無論気づかれないように。

すると、リビングから声が聞こえてきた。

「全く大人しく会社譲るか金を払えばいいっていうのに、抵抗しやがって。あれだけ儲けさせてやったんだ。少しくらい会社の金使いこんだっていいじゃねえかよ!」

下卑た声を荒げて、数人の男たちの中の一人が床に倒れこんだ一人の男性を容赦なく蹴り飛ばす。そしてその光景を見て、彼女は心臓が凍りつくようなものを見た。

床に赤い水たまりのような血だまりの中心に倒れこんでいるもの、それは・・愛する父親の変わり果てた姿。そして壁には胸からおびただしい血を流して死んでいる母親がいる。そして、銃を片手に鬼のような顔つきで立っていたのは・・・自分が愛していた思い人の父親の部下であった男性・・・・。

「ど、ど、どうして・・・・!?どうして、こんな、ことに・・・?」
「おやおやこれはこれはお嬢様。これはとんだところを・・・」
「どうして!?どうしてお父さまやお母さまにこんなひどいことを!?」
「ハッ!!いちいちうるせぇんだよ、クソガキ!!俺好みの女に育て上げて成長したらつまみ食い程度に可愛がってやろうと思っていたんだがよ、見られちまったら仕方ねぇわな。俺はな、最初からテメェの親父の会社を乗っ取って自分のものにするためにテメェの親父の部下になったんだよ。長年かけてようやく地位も資産も信用も得たから、それを利用して会社を乗っ取ろうとしていたら、先にあの親父が俺の動きに気づいて仕事の不正を訴えると言いやがった。だから、殺してやったんだよ。なぁに、会社乗っ取りは失敗しちまったがここにある財産や通帳、資産をいただいちまって海外にでも逃げれば当分遊んで暮らせる!!さて、そうなると、残りは・・・お前だけだわなぁ」

そう言って、銃を自分に向ける。冷たい銃口、そして怯えて震える自分を見て嫌らしく笑う男。

「い・・いや・・・いやっ!!!ころさないでっ!!!やめてぇっ!!!」
「いいかお嬢様、最期だから教えてやるよ。俺はな、お前のことなんか最初からこれっぽっちも愛してなんかいないんだよっ!!!お前が俺のために仲間を捨てて、俺の言う通りにどんな言うことも聞いて、俺に気に入られようとするお前のこと・・・すっげぇぇぇぇぇぇえぇええええええええええええ、うぜぇええええええええええええええええって思ってたんだよっ!!!!散々笑わせてもらったぜぇ〜!!!何も知らないで俺のことを信じきってさあっ!!!ヒャハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

その言葉を聞いて、彼女の中の何かが全て壊れた。そして、それが絶望と気づく間もなく、火花が噴き出し、鈍い音と共に心臓が熱く燃えるような炎を投げ込まれたような感覚に陥り、そのまま何故か自分は前へと静かに力なく倒れこんでいく・・・・。

最期に見たもの、それは自分に向けて銃を撃ち、おかしくてたまらないように笑う、かつて心底愛していた男の狂った笑み。そしてそのまま視界が真っ暗になり、男の笑い声が聞こえなくなり、全てが無に飲まれた・・・・。


朱美「いやあああああああああああああああああっ!!!!」

朱美がベットから飛び起きた。全身から噴き出た汗でパジャマが肌に張り付いている。息も荒く、もうないはずの心臓がバクバク激しく振動している錯覚に陥る。

朱美「・・・・もう嫌、またあの夢。・・・・もう、あの時の弱い私じゃないのに。グリードに生まれ変わって、今度こそ幸せを手に入れるって、私を心から愛してくれる人を手に入れるって決めたじゃない。もう、あんな男なんかっ・・・・・!!!」

コップに入れた水を一気に飲み干し、姿見に自分の姿が映る。その姿が黒い闇に覆われて、爬虫類系のグリード、キールの姿に化身する。その姿を見るたびもう自分が人間ではないと何度も思う。もうあの時のように、弱い人間だった時の私ではない。生まれ変わったんだ、自分の欲望を叶えるために、自分の命を救ってくれたゼロに恩義を感じ、彼女に言われるがままにこの学園に潜入し、生徒会長として生徒たちの行動を監視しながらヤミーを生み出し、この学園の生徒たち全員を欲望で食らい、あの計画に必要な生命エネルギーを手に入れるために。その暁には、自分の願いを叶えてくれると言ってくれた。

自分を決して裏切らない、心から愛してくれる人がほしい。
愛されたい、裏切られたくない。
その思いがキールの胸の中で激しい炎のように燃え上がっていた。

キール「・・・・ゼロ様・・・・・・必ず任務は果たしてみせますわ」


その時だった。

「おい、どうした!?何かあったのか!?」

ドアが激しく叩かれ、聞き覚えのある声が聞こえてくる。ドアを開けると、そこには目を見開いて全身を震わせて荒く呼吸をしている怨敵、真墨の姿があった。

朱美「ま、真墨・・・?どうしたのよ、こんな真夜中に」
真墨「どうしたもこうしたもねえよ、この階を見回りしていたらお前の部屋の方から悲鳴が聞こえてきたからよ。何かあったのか?」

いつもは自分に対して喧嘩腰な真墨が真剣な表情で朱美を心配していた。朱美は一瞬その顔を見て、ある人物を思い浮かんだ。

“あけみ、なにかあったらいつでもおれにいえよ。かならず、たすけにいくからよ!”

朱美「・・・・・・・さとる・・・・・くん?」

ぽつりと呟いた言葉、その言葉に真墨は一瞬朱美が何を言ったのか分からなかった。しかしその言葉を理解すると、目を見開いて驚きの表情に変わる。

真墨「・・・・なっ!?」
朱美「・・・あ、ああ、な、何でもないわ!!心配してくれてありがとう、でも、もう大丈夫だから!!それじゃあね!!おやすみ!!」

扉が閉じられた後も、真墨はただ茫然と立ち尽くしていた。

真墨「・・・・何でアイツ、俺のことを・・・・!?」

その様子を陰からシエルが眼鏡を光らせて隠れて見ていた。そしてカブキが昔ハッキングしたデータの写しを見る。

そこには、ある一人の人物のことが載っていた。他ならない百合川真墨・・・いや「大友暁」のことだった。

シエル「・・・・・・この間の遊園地の時といい、これまで彼女があまりにも不自然なくらいヤミーやグリード(ボクたち)がらみの事件に妙に絡んでくることといい、そして、彼女たちが転校してきてからだよな、仮面ライダーが現れたのは。さて、あとは、もう一人、この・・・『大友翠』も気をつけて様子を見てみるとするか」

どうやらシエルは仮面ライダーの正体、そして百合川真墨の正体に感づいたようである。
真墨たちの潜入捜査及び護衛に、不穏な空気が立ち込めていた・・・。


翠「はあ・・・・」

もうすぐ文月祭。テストも無事終わり、生徒たちも長かった期末テストから解放されたのか夏休み前に開催される夏祭りこと「文月祭」を前に大いに盛り上がっていた。しかしボクはというと、この間の事件からまだ立ち直れていなかったりしているのだ。

あの後も驚くことばかりであった。アベルがコアメダルを全て失い、骨となって発見されたこと、つまりアベルが死んだってことになる。確かにボクたちの学園生活をメチャクチャにしてくれたし、ヤミーを生み出したり、ボクたちに襲いかかってきたりと、もうナイアガラの滝に100回突き落としても気が済まないくらい腹が立っていたけど・・・いざこうなると・・・やっぱり後味が悪い。さらにボクたちに襲いかかってきたライダー、ディオネとかいうヤツが犯人だということも分かった。そりゃさ、セオリーで言うならば仮面ライダーは悪の怪人を倒す正義の味方なんだから、アベルを倒したディオネは仮面ライダーとして当然のことをしたに過ぎないだろう。
だけど・・・・ボクははどうもあのディオネというライダーという存在が、やっている行為が、戦う理由とか、とにかく、全部気に入らない!!戦いを止めるためにライダーもヤミーもグリードも皆倒してしまえばいいなんて、そんなの極端すぎるというか、それじゃ他の戦いがあったらその度に戦っている人たちを全員喧嘩両成敗で倒さなきゃならなくなる。しかもそれで自分が戦いを止めて平和な世界を作っているって自分で自分に酔っているようなことも言っていたし、それに、世界が破滅を望んでいるってどういうことさ!?そりゃ世界中では戦争をやっているところもあるし、人と人との付き合いで衝突したり、犯罪で財産や命を奪う悪人がいれば奪われて苦しんだり悲しんだり、命を失って理不尽な形で死んでしまったりと、嫌なことややりきれないことばかりあるかもしれないけど、それでもそんな世界の中でもやりたいことがあって、大好きな人がいて、その人たちと一緒に過ごしていきたいって思っている人たちだっているよ。人は一人じゃやっぱり生きて行けないもん。一人で生きてきているつもりでもどこかで誰かに助けられて生きている。そう言ったつながりがある限り、世界そのものを破壊して戦いをなくそうなんて、間違っているとボクは思うわけです。そう、お兄ちゃんに話したら。

「あんまり難しく考えるな。超ド級の大バカなお前じゃ、誰が何のために戦うのかなんて余計なこと考える余裕もなけりゃ分かりっこねーんだから。自分が何のために戦うのか、守りたいものはなにか、それだけ考えていればいい。世界だの人類の平和だのなんて、そのついでにすぎねーよ」

そう言っていた。自分のバカがこんなところで役に立つとは思わなかった。とりあえずお兄ちゃんにはボクをバカと言ってくれたお礼として女装写真(穏から買い付けた猫耳メイド服、ナース服、チャイナドレスのコスプレを無理矢理着替えさせられた暁の写真)をイージスの隊員専用ホームページ内にあるボクのブログにお披露目しておいた。イージス中のファンから称賛されるがよいわ(笑)。(バレたらまず命の保証はないが)


だというのに、どうもやっぱり気が晴れない・・・・。
仕方ない、こういう日は寮に帰ったらお兄ちゃんにたっぷり甘えちゃえ!!えへへ、妹ならではの特権だもんね♪お兄ちゃんに抱きつきまくったり、頭なででもらったり、ワガママ聞いてもらったり、お兄ちゃんと一緒にご飯食べたり、もうとにかく一緒にいるだけで・・・はぁ〜、考えるだけで気分が幸せになってくるよ!やっぱりお兄ちゃんって最高だねっ!!!え、ブラコンだって?上等ですがそれが?

そう考えると生徒会への足取りも軽くなってくるってもんだっ!!

そうして生徒会室の扉を開く。そこには、いつものメンバーが揃っていた。

朱美「翠ちゅわ〜〜〜〜〜ん!!!!愛してるわぁあああああああぁああ〜ん!!!」

朱美が座席から飛び出し、フライングダイブで翠に抱きつき、ほっぺにチュッチュッしながら翠を抱きしめる。翠はあまりの速さに眼で追うことも避ける間もなく、抱きつかれて地面に倒れこむ。

翠「ご・・・・ご機嫌よう・・・・朱美さん・・・・うぷっ・・・・」
朱美「翠ちゃん翠ちゃん翠ちゃん翠ちゃん、くんかくんかくんかくんか、スーハースーハー、はあ・・・ラブニウムが回復していくぅ・・・・」
翠「ら、ラブニウムって、何ですか・・・?」

蘭「朱美の生命エネルギーみたいなもんかな、一日一回は翠や可愛い女の子に抱きついたり匂いをかいだりスキンシップとらないと、調子出ないんだって」
茉莉「真性の変態だね」
霧子「ア、アハハハハハ、アハハハハハ・・・・」

翠「み、見てないで助けてくださ〜い」

蘭・茉莉「「面白そうだから却下!」」
霧子「も、申し訳ございません・・・・」

朱美「ああん、もう、今日は邪魔な真墨も用事でいないし、翠ちゃんをたぁっぷり可愛がっちゃうぞぉ〜〜〜♪ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ〜♪」

翠「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

その瞬間翠は頭をハンマーで殴られたような感覚に襲われた。翠の目が点になる。朱美が抱きつこうが胸をもみしだこうが、顔をなめ回そうがもうそんなこと気にしている様子もない。茫然とこの世の終わりを迎えたような表情に変わる。

翠「マスミガ、キョウ、オヤスミ・・・・?ドウシテ・・・・?ナンデ?」
蘭「おわっ!!?翠、どうした!?まるで燃え尽きているように真っ白になっちまって!!」
霧子「翠ちゃん!?」
茉莉「・・・・・いや、こうなることくらい予想つくでしょ」
朱美「ふおおおお・・・・ああん、いい香り〜♪もう、世界一可愛い、宇宙一可愛い♪」
茉莉「あんたもその辺にしておけっての」
霧子「黄薔薇様、なぜそんなに機嫌が悪そうなのでしょうか?」
蘭「あ〜、真墨が他の女の子と仲良くしているとたまにこうなるよな」
茉莉「べ、別に、そんなことないしっ!?なななな、何を言ってるのさっ!?」
朱美「・・・・顔真っ赤よ?もう、翠ちゃんも茉莉も、何でいつもあんな野蛮人のことばかり・・・」
蘭「・・・アハハ、確かに口悪いし喧嘩っ早いしとっつきづらいけど、本当はすごく面倒見いいし優しいし、いいところいっぱいあるんだよな。困っている時、いつも駆けつけてくれて助けてくれて・・・何だか頼りになるお兄さんって感じがするなあって・・・」
霧子「・・・そうですね。黒薔薇様、お料理も洗濯も掃除も何でもこなしてしまいますし、ガーデニングの腕前もすごく上手ですし、お茶もとても美味しく淹れることが出来ますし、あのように瀟洒で凛然といつも堂々としていらっしゃるあんな淑女になりたいものですわね」

翠・茉莉「「分かる分かる」」

朱美「う・・・・何だかものすごく人気あるし」
翠「朱美さんもいつか分りますよ。あのタイプはつき合ってみると、本当の良さが分かるタイプですもん。それに、朱美さんといつも大喧嘩してますけど、ああいう風に言いたいこと思い切り言い合えるのって、ちょっと羨ましいと思ったりしますよ?」
蘭「確かに、あそこまでバカだのアホだの真墨といい合えるのってお前くらいだよな」
茉莉「・・・・まあある意味すごいっちゃすごいんだろうけど、羨ましくはないな。その都度保健室に担ぎこまれるような大怪我したくないし」
朱美「・・・・・・・真墨、ねえ。生徒会で知り合ってから毎日喧嘩ばかりしか・・・というか翠ちゃんとのラブラブライフを邪魔されてばかりしか記憶がないけど、こうして聞くと、確かに当てはまることがあるようなないような・・・」

朱美(そうか・・・・アイツ、こんなに信頼されてるんだ。それに、昨日の夜も嫌な夢見たとき、悲鳴が上がったっていうだけで、急いで駆け付けてきてくれたし・・・まあ、少しくらいは見直してあげようかしら・・・?)

翠「あ、そういえば、真墨、どこに行ったんですか?」
茉莉「映画研究会の部室。今度の文月祭で研究会が過去に録った映画の上映会やるから、フィルムや機材の確認、何を上映するかをまとめてポスターの製作やるんだって」
蘭「映画研究会って、今度廃部が決まったあれか?」
茉莉「そう、昔は自主製作映画でいくつも賞を取っていて、この学園の中でもかなり有名な部活だったんだけど・・・今じゃすっかり廃れて過去の栄光のお情けで残っていたような幽霊クラブ。そこの部員がとうとう定員割れして廃部になることが決まったんだけど、顧問だった黒澤先生の願いで、映画研究会最後の舞台ってことで、過去に作ってきた自主製作映画を多くの人たちに覚えてもらいたいってことで映画鑑賞会をやることになったんだよ」
翠「へえ・・・そんな部活あったんですか」
霧子「それで、上杉様と一緒に機材の確認やフィルムの用意をされているようです。真墨様のお話を聞いて、お手伝いしてくださるということで・・・」

翠「上杉って・・・あの泣き虫メガネ!?まさか、宇津保と武田も!?」
蘭「いや、それが、宇津保は宇津保で学園祭の準備で別の仕事任されてな。相当ブーブー文句言っていたけど、真墨がようやく説得して今買い出しに行ってる」
翠「チョンマゲは?」
茉莉「期末で赤点とったから補習室で補習だってさ。追試確定だって、真墨に泣きついてた」

翠「つまり、今、あいつら二人きりじゃん!!」
茉莉「・・・・別にそんな慌てることなくね?あのバリバリの肉食系のバカドリルやチョンマゲなら話は別だけど、あの泣き虫メガネじゃ奥手だし小心者だし、真墨に変なことしないと思うけど・・・」
翠「甘い!甘いよ茉莉ちゃん!!あのバカドリルやチョンマゲの予測不可能な行動を先読みしてストッパーの役目を長年果たしてきた、かなり頭が回る狡猾な策士的存在なんだよ!?精神的に図太くなければアイツのフォローやサポートなんて無理に決まってるじゃん!!そんなアイツが真墨と二人きりのチャンスを見逃すはずがないって!!」

茉莉「・・・・説得力あるのかないのか」
蘭「う〜ん、よっぴーと真墨かぁ。結構お似合いかもしれないな!!奥手で大人しいよっぴーをいつも真墨がサポートして引っ張っていてさ、何かあっても俺が守ってやるって優しく笑いかけてさ、それで、二人きりの時には、そんなよっぴーに寄り添って甘えたり誰にも見せられない弱いところ見せたりする真墨をよっぴーが優しく抱きしめてベタベタに愛し合う・・・・うん、なかなかいいじゃん!!純愛系のエロゲーみたいで!」
茉莉「他に例えなかったのか、アンタは」

翠「・・・・エロ・・・ゲー・・・・?」

翠が固まった。その表情は目を見開きポカンと開けた口をワナワナ震わせてブツブツと独り言を言いだし、全身が震えだす。

蘭「あれ?どうした?翠」
茉莉「・・・ゲッ、ヤバい!!こいつ、暴走しかけてる!?」
霧子「翠ちゃん!?」

ブチンッ

何かが切れた音がした。
そして朱美を振り払い、静かに立ち上がると、ゆっくりと光を失った瞳を天井に向ける。天井を仰ぐように見上げている。そのあまりにも不気味な光景はまるで大津波が来る手前の静けさによく似ている。その場にいた全員が恐怖で凍りつくほど、翠の様子はヤバかった。

翠「・・・・・アカン・・・・・アカ―――――――――――――ンッッ!!!!そんなっ、そんなっ、高校生だというのに、そんな二人きりで、ラブラブチュッチュッで、エロエロな展開になったら、アカ―――――――――――――――――ン!!!!」

蘭「翠が壊れた―――――っ!?」
茉莉「アンタがぶっ壊したんでしょーがっ!!責任とって止めろ!!」
蘭「無理いうな!!」
霧子「翠ちゃん。落ち着いてください!!」
朱美「こ、これ、ヤバすぎない・・・・!?」

翠「“お兄ちゃん”早まるな―――――――――――――――――っ!!?人生の墓場に入るのはまだ早いぞ―――――――っ!!!ただでさえ運がなくて崖っぷちギリギリの人生歩んでるんだから、わざわざ残りの人生を宇津保軍団なんかに捧げることないわ―――――――――っ!!!!!今助けにいくぞっ、“お兄ちゃ―――――――――――んっ”!!」

訳の分からない絶叫を上げて、翠は部屋を飛び出していった。その光景をただ全員茫然と見送るしか出来なかった。しかし、この時翠はとんでもないミスをおかしていたのだ。

蘭「・・・・なあ、さっき真墨のこと、“お兄ちゃん”って呼んでたか?アイツ・・・?」
朱美「・・・・・確かにそう言っていたわよね?でも、どうして?」
霧子「・・・・分かりません」

茉莉(・・・・あンの大バカ・・・・・とんでもないこと、やらかしやがった・・・!!)

そう、うっかり真墨のことを「お兄ちゃん」と呼んでしまったのだった・・・。


その頃、映画研究会の元部室で、現在は視聴覚室倉庫となっている教室では。
妹の暴走により、正体がバレかけているという最悪の事態が起きていることなど予想すらしていない真墨と美子がフィルムや映写機、スクリーンの準備をしていた。

真墨「これで全部かな?」
美子「うん、これだけあれば大丈夫だと思うよ」
真墨「しっかしこれだけたくさんの自主製作映画で賞をとっている部活なら今頃大人気なはずなのに、どうしてここまで寂れちまったんだか」
美子「・・・前のボクシング部もそうだったよね。何かあったのかな?」
真墨「まあ、何があっても俺たちには関係ねぇんだろうけどな。それより、さっさと機材準備して、夕飯の準備しないとな。香澄も瑛子も今日はすっかり疲れてるだろうから、何か美味いものでも作ってやるか。よっぴー、お前何が食べたい?」
美子「ふえっ!?え、で、でも、私のリクエストなんかでいいの!?」
真墨「たまにはお前の食べたいもの何でも作ってやるよ。いつも香澄や瑛子のリクエストがほとんどだったからな」
美子「い、いいの、かな・・・」
真墨「おう、何でもいいぜ。まあ、いきなり満漢全席とかは無理だけどな」
美子「この間の香澄様のジョークだよね。ごめんなさい・・・」
真墨「まあ、作れないことはねぇんだけど、夕飯まで時間ねぇからな」
美子「時間や材料があれば作れちゃうっていうのも、すごいね・・・」
真墨「まあ、お前らの喜ぶ顔が見たいっていうのもあるからな。最近はそれが楽しみで家事やってるみたいなもんだし」

真墨が照れくさそうに笑いながら言う。その言葉に胸がドキンと高鳴り、暖かく、嬉しい気持ちでいっぱいになり、美子も頬を赤らめて両手の指と指を絡めてもじもじしながら嬉しそうに微笑む。

美子「さ、暁ちゃん・・・・♪えへへ・・・何だか・・・・すごく嬉しいな。暁ちゃんと・・・その・・・こうして二人でお話したり・・・・笑ったり・・・・・何だか・・・それだけで・・・・すごく楽しくて・・・・・幸せって感じがするなあ・・・・」
真墨への思いが胸の中であふれて、幸せな気持ちになり、美子が蕩けるような表情になって真墨を見つめる。好き、いつも優しくて暖かくて面倒見が良くて、頼りがいがある目の前のカッコいい暁が好きで好きで仕方ない。可愛くて可愛くて思い切り可愛がりたい。ベタベタに甘えたい。そう、美子は真墨を見て思いを募らせる。

真墨「・・・あん?どうかしたか?食べたいもの多すぎてどれにしようか迷ってるのか?」

美子が少しずっこける。

美子「ふえっ、あ、あの、そうじゃないんだけど、は、はうう、その、あのぅ・・・」
(暁ちゃん・・・鈍いというか女心もうちょっと察してほしいというか・・・・私ってそんなに色気より食気を優先しているように見えるかなぁ・・・・?)

つくづく乙女心を理解していない暁であった。


真墨「さてと、後は映写機が動くかどうかチェックするだけか。どうせだし、何か一本映画見るとするか。それでそのまま仕事ばっくれるってことで」
美子「そ、そんないい加減でいいのかな?」
真墨「たまにはサボらなきゃ身がもたねーよ(しょっちゅうサボりっぱなしのくせに)。よっぴーも一緒に見ようぜ。見つかっても機材が正常に作動するか確認してたとでも言えばいいんだし」
美子「う・・・うん、そうだね。確認だもんね。サボリとかじゃないもんね」
真墨「そうこなくちゃな。さてと、どれを見るとするか。恋愛メロドラマにアクション、推理サスペンスにコメディ、学園青春ドラマ・・・色々あるなぁ・・・」
美子「どうせならお薦めの映画見ようよ〜♪」
真墨「そうすると・・・・どれがいいかな」

二人で和気あいあいと笑顔で談笑しながら、どの映画を見るかフィルムの缶をチェックしている。美子の表情は頬を赤らめながらとても嬉しそうに、潤んだ瞳で真墨を見つめていた。
その時だった。

「〜♪(携帯の着信音)」

美子「あ、瑛子ちゃんからだ」
真墨「アイツ、もう補習終わったのか?」
美子「はい、もしもし、瑛子ちゃん?うん・・・・ええっ!?・・・・もう、何やってるの!分かった・・・・もう今どこにいるの?・・・・うん、うん、分かった。それじゃあこれから行くから、そこにいてね・・・・」

美子が疲れ切った様子で携帯を切り、ため息を吐く。

真墨「・・・どうした?」
美子「ごめん、暁ちゃん。ちょっと瑛子ちゃんと一緒に職員室に行ってくる」
真墨「何かあったのか?」
美子「・・・・瑛子ちゃん、数学の補習受けてたんだけど、あの子計算問題とか図形の証明とかすごく苦手なもんだから、とうとう頭がオーバーヒート起こしちゃって・・・気がついたら黒板を刀で微塵切りにしちゃって、現在学園内を逃げ回ってるみたい。さすがに一人じゃ出頭しにくいだろうし、行ってくるよ」
真墨「・・・まあ、香澄に聞かれたくはないだろうな」
美子「・・もう、本当に何でこういう絶好のチャンスだって時に・・・!瑛子ちゃん、私の補習は先生の百倍キツいんだからね。泣いてももう許さないんだから」
真墨「よ、よっぴーも落ち着けって。俺も行こうか?」
美子「ううん、大丈夫。暁ちゃんは生徒会のお仕事済ませといて。そしたら連絡ちょうだい。それでさ、その後、申し訳ないんだけど・・・・数学学年1位の暁ちゃんの頭脳を見込んでお願いがあるんだけど・・・・あとで瑛子ちゃんの補習付き合ってくれないかなあ・・・?」
真墨「・・・・・了解。お前も苦労してるな」
美子「・・・・・・・うん、ありがとう」

美子がトホホとため息をついて教室を出ていった。真墨も一息つくと、机に積まれたフィルムの山を見る。一人になると、どれを見ようかとワクワクしていた気持ちがどうも薄らいでくる。こういうのは友達とワイワイ騒ぎながらやるのが真墨は好きなのだ。しかしこうなるともう適当にフィルムを回して映写機の動作を確認して仕事を終わらせてしまおう。そう思い、一つのフィルムを取り出して準備を整える。そしてスイッチを入れようとしたが、ふと、コーヒーを飲みたくなった。気分転換でもしよう。それに香澄たちと合流したとき、飲み物を準備しておけばわずかだが気分転換にはなるだろう。スイッチを入れてすぐ動きだし、その時だった。

ダダダダダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!ドガ――――――――ンッッ!!!

何かを叩きつける音が何回も響き、やがて物凄い音を立てて重厚な分厚い鉄の扉が蹴りで吹き飛んだ。蹴り飛ばしたのは翠であった。息を荒げて目を血走らせ、鬼のような形相で、背後に燃え盛る炎をまとった鬼のイメージを彷彿させるものが浮かんでいる。

翠「お兄ちゃ―――――――――――――んっっ!!」
茉莉「だから、落ち着けっての、バカッッ!!!」

美子とすれ違いに翠と茉莉が乗り込んできたのであった。そして後ろから美子が何事かと戻ってきた!!

美子「翠ちゃん!?それに黄司さんも、どうしたの!?」
真墨「ブ―――――――――――ッ!!?(コーヒー噴き出した音)」

その時であった。
スクリーンに映し出されたある映像・・・。
それは、どこまでも続く深い深い森の中を歩いている映像。ただひたすらどこまでも森の中を必死で走っているような、息遣いが荒く、森の奥へ奥へとひたすら必死で木々をかき分け、突き進んでいく映像だった。そして後ろを振り返ると、そこにいたのは、ボロボロの制服を着こんで、ボサボサの長い黒髪をユラユラ揺らしながら、両腕を持ち上げ伸ばしながらゆっくりと、ゆっくりと歩いてくる・・・女子高生のミイラのような干からびた肌、白く濁った瞳、皮が剥けた唇と唇の間から「うう」とか「ああ」とかうめき声を上げて近づいてくる悪霊の姿であった・・・!!

翠「きゃ、きゃああああああああああああっ!!」
美子「いやあああああああああああああああああああ!!」

その直後だった。
にゅるんとスクリーンがまるで水面のように波紋を立てて盛り上がり、中から飛び出してきた大きな腕が翠と美子を掴んで、そのまま二人を一気にスクリーンの中へと引きずりこんでいったのだ!!!翠と美子は必死で抵抗するがあまりにすごい力で抵抗する間もなく二人の身体がスクリーンの中へと上半身が飲みこまれていった。

翠「な、何よ、これ!!!助けてっ、いやああああああああああああああ!!」
美子「きゃあああああああああああああああああああああっ!!!」

真墨「翠!!よっぴ―――――――――――――――っ!!!!」

真墨が咄嗟に二人の足を掴もうとするが二人はスクリーンの中へと飲みこまれてしまった・・・!!真墨がスクリーンを叩いて必死の形相で呼びかける!!

真墨「おい!!!翠!!!よっぴ―――――っ!!!!どうしたんだよ、何が起きたんだよっ!!?おい!!!何なんだよ、これはっ!?」
茉莉「・・・・これ、物に宿るヤミーってことは、アベル?」
メイ「いや・・・これは、キールにカブキ・・・色々なヤミーの気配を感じるぞ!」

騒ぎを聞きつけてメイがやってきた。

茉莉「メイ!?どういうこと!?」
メイ「複数のメダルを持っているグリードの仕業ということだ。この間倒されたアベルのメダルを受け継いでいるヤツがいるということだ。さらにキールのメダルも持っているな」

そこへ蘭、朱美、霧子もやってくる。その時、会話の一端が聞こえてきた。

メイ「キールがなぜアベルのメダルを持っているのかは謎だが、この能力と気配は色々な種類のメダルが入り混じっているから断定はできない。つまりこれはキールの仕業か、アベルとキールのメダルを取りこんだ誰かの仕業ということになるな」

その言葉を聞いて、キール・・・朱美は心の中で面食らう。

キール(朱美)(何よそれ、どういうことなの!?私が何をやったっていうの!?)

そう、今回の事態はキールではなかった。むしろ、自分のメダルとアベルのメダルの二つを持っているグリードが今回の事件を仕組んだ話など、寝耳に水であった。アベルたちを統括するキールにしてみれば自分に無視して勝手に作戦を実行に移した不届き者がいるということに不快感を感じる。しかも翠を巻きこむなどもはや言語道断だ。

そしてその存在に、思い当たる人物など一人しかいない。
朱美は誰にも気づかれないように、自分の足もとから影を浮き上がらせて全身に纏うと、気配を完全に消して静かにその場を立ち去った・・。


そしてその人物は裏庭で一人本などを読んでいた。磯貝汐里ことシエルであった。憤然と乗り込み、本を乱暴にひったくった。

キール「シエル、これはどういうことなのかしら!?私をナメているのかしら?言い訳や説明があるなら私が納得できるような代物を聞かせてちょうだいな。もし、納得できないものだったら、その時は・・・貴方のコアメダル、全部砕くわよ」
シエル「いきなりなんなんだい。藪から棒に。ボクが何をしたって?」
キール「貴方、アベルのメダルと私のメダルの力を使って、映写機とかフィルムの中にヤミー忍ばせていたでしょう!!その結果、まさか翠ちゃんが巻き込まれるなんて・・・!!ヤミー生み出してこの学園の生徒たちの欲望をエネルギーに変えてゼロ様に捧げるという任務をやるとしても、翠ちゃんには手を出すなと言ってあったはずよ!!」

シエル「知らないよ。第一、今日大友が映写機やフィルムをいじるなんて知るはずないし。それに物にメダルを宿してヤミーを生み出すなんてアベルしか出来ないはず・・・」
キール「だから変なのよ!!役立たずのワンちゃんは処分したのに、どうしてこんなことになっているのよ!?」
シエル「・・・・・・アベルのメダルを誰かが取り込んで利用している?思い当たるとしたら・・・でも・・・・メイやシェオロがやるとは思えないし、まさか、ゼロがついに動き出したのか・・・?」
キール「・・あと、あのおチビちゃん(カブキ)よね・・・」
シエル「まさか!?なんでカブキがそんなことを?こういったやり方は彼女らしくないから違うだろ」

その時だった。

「・・・・随分と見くびられたものねぇ・・でも・・・・今の私なら、それが出来るわ」

木の陰から長身で抜群のプロポーションを持つモデルのような栗色ロングヘアの女性が現れた。白を基調とする清純かつ胸元を大きく開いた大胆さが同居するサマードレスを着こなすその姿はまるでファッションモデルを思わせる。そして妖艶にぷっくりとした唇を吊上げて静かに微笑んだ。しかしその瞳は決して笑っていない。底知れない深い闇が広がっており、不気味な雰囲気を醸し出し、キールとシエルは思わず身構える。

シエル「・・・誰だ、君は!」
「・・・・・ウフフフフフ・・・・アハハハハハハハ!!ひどいなぁ、シエルぅ。もう分からないのぉ?ああ、でも、もうあの時のちっぽけで泣き虫でちんちくりんの芋虫のようだった私じゃないからねぇ。でもね、芋虫もいつかは、蛹になって、それを破り、美しいちょうちょになって舞う時が来るのよ・・・・?」
キール「・・・・!?まさか、このメダルの気配は・・・・!?」
「・・・ウフフフ・・・・キールは分かったみたいねぇ。そうよ、私だよ。“カブキ”だよぅ・・・・ウフフフフフフフ・・・・キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」

狂気が瞳に宿り、おかしくてたまらないように身体をよじらせてクネクネと官能的な動きをしながら乾いた笑い声を上げた!!

シエル「なっ・・・・・!?ば、バカを言え!!カブキは・・・カブキはそんな姿なんかじゃない!!」
キール「・・・いいえ、シエル。この気配は・・・信じがたいけど、カブキのメダルだわ。それに、私のメダルと、アベルのメダルを取りこんでいる・・・!!」
カブキ(大人)「そうよぉ。私はね、生まれ変わったの。アベルの敵を討つためにねぇ。アベル・・・・私の大切な仲間をあんな目に遭わせた奴らは・・・絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対許せなぁい・・・・どこまでもどこまでもどこまでも追い詰めて追い詰めて追い詰めてぇ・・・・・・・とことん苦しめて・・・・甚振って・・・アベル以上に苦しんで死んでもらうんだぁ・・・・・キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・・想像するだけで・・・・高ぶるわぁ・・・・・興奮してきちゃったぁん・・・・・・」

両手で頬をおさえてうっとりと狂気の微笑を浮かべる。その姿はまさしくアベルを失って、完全に正気をなくした狂気の怪物。復讐に酔った甘美な微笑みと一緒にどす黒く凍りつくような激しい憎悪と殺意が全身から発せられる。シエルとキールはカブキのあまりの豹変ぶりに言葉を失い、冷汗を垂らしていた。

カブキ(大人)「・・・でもでもでもでもでもでもでぇぇええええもぉおおおおお、まさか、キールとシエルが関わっていたなんてねぇ・・・・・・・・ねぇ、シエルぅ・・・・どうして裏切ったの?アベルを・・・・アベルをどうして・・・・・殺したのぉおおおおおおぉおおおお?信じてたのに、仲間だって信じてたのにぃいいいいいいいい」

カブキの表情が無表情に変わり、その姿がグリードの姿に変わっていく!!しかしその姿は頭部にオオカミの耳がつき、両肩には猟犬を模した肩アーマーを装着し、両足にはシェパードのような爪が備わった足に変わっている。そう、アベルのメダルを取りこんだことにより、カブキの姿がさらなる融合と進化を繰り返して今の姿に至ったのだ。

シエル「カブキ、これは・・・・!!」
カブキ(大人)「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!よくもよくもよくもよくもよくもよくもぉおおおおおおぉおお、裏切ってぇぇええええぇえええ、くれたなぁぁあああああああああああああぁあっ!!!信じてたのにィィィイイ、許せないィイイイイイイイイイイイッ!!キヒッ、キヒヒッ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!!」
キール「ちっ、来るわ!!!」

カブキのマシンガンと化したホウセンカの腕から、緑色の炎の弾丸が発射され、シエルとキールめがけて襲いかかっていく!!緑色の炎は木々に着弾すると、ドロドロと幹を溶かしていき、鈍い音を上げて木が倒れていき、地面に音を立てて崩れ落ちた!!緑色の炎はあらゆるものを溶かし、傷口から腐らせていく濃硫酸の性質を持つ炎であった!

木が腐り果てる。悪臭と泡を吹き出し、木が見る見る枯れ果てていく。もしあれを食らったら自分自身がああなるかと思うと戦慄する。

シエル「カブキ、やめろ!!やめてくれっ!!」
カブキ(大人)「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!!みんなみんなみィィイイイイイイイインな、死んじゃえエェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエッ!!!!!キヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


そしてその裏庭での騒ぎは、真墨たちの耳にも入ってきた。

真墨「な、なんだぁっ!?」
茉莉「裏手からだ!」

そしてそこへ瑛子が駆けつけてきた。

瑛子「一体何事だっ!?」
茉莉「あ、赤点先輩」
瑛子「赤●ン先生みたいに言うな!!」
真墨「やべぇな・・・・こんな事態だって時に収集つかないことになってやがる」
メイ「あれは・・・シエルとキール!?それに、あれは・・・カブキか!?何だあの姿は!?」
瑛子「あのアベルとかいうヤツとごちゃまぜになっているみたいじゃないか!!」
真墨「・・・これ以上騒ぎを大きくするわけにはいかねえ!!蘭、霧子!!・・・あれ?朱美は!?」

蘭「あ、あれぇっ!?どこにいったんだ!?」
霧子「先ほどまでこちらにいらっしゃったのに・・・!」
真墨「・・・ちっ、もう構ってられないか!!蘭、霧子!!お前たちは放送室に行って学園内にいる生徒たちを安全な場所に避難させるんだ!!避難用の講堂に全員集めろ!!蘭は運動部の連中や教師たちに先導を指示するんだ!!俺と茉莉、武田は部活棟のほうだ!!メイはアスカ呼んで寮の連中を地下道を通って避難指示を出してくれ!!」

瑛子「大友は!?それに・・美子はどうするんだ!?」
真墨「まずは生徒たちの身の安全を確保することが優先だ!!それに、あいつらなら大丈夫だ!!このくらいの危険、何度だって切り抜けてきたプロだからな!!」
メイ「武田、お前は宇津保の保護を頼む!!2年4組の残っている生徒たちも避難させてくれ!!」
瑛子「あ、ああ、分かった!!」

真墨「茉莉!お前は・・・」
茉莉「映画研究会に関する事件や事故の調査、だよね?」
真墨「マリアさんやアニキにも応援を頼む!!調べられる限り調べてきてくれ!!」
茉莉「頭脳労働はアタシに任せておけってね」

メイ「お前はどうするんだ!?暁!!」
真墨「今、エリザが出張先から戻ってきている!!そしたら合流してあいつらの動きを抑える!!もうそろそろ到着するころだ!!」

しかし、その時だった。

ボボボボボボボボボボボボボ・・・・!!!!

裏庭の方から凄まじい轟音が響き渡る!!
それは重厚なマフラー音。そしてギャリギャリギャリと地面を削る音がしたと思いきや、3体のグリード達に向かって一台の巨大な赤いバイクがものすごい速さで前輪を持ち上げながら突っ込んでいく!!!
黒いライダースーツに身を包み、赤い炎の中から雄たけびを上げる猛牛のイラストが描かれたヘルメットを被った謎のライダーが、巨大なバイクにまたがりグリード達を巧みなバイクテクニックで撥ね退ける!!!

シエル「うわあああああああ!!」
キール「な、何・・・・!!」

そしてライダーは背中にしょっていた巨大な銃のような武器を取り出し、大量のセルメダルが入ったバックパックを装填させて、狙いを定めて一気に発射する!!

「はぁああああああああっ!!」

ガウンガウンガウンガウン!!!!

セルメダルの弾丸が発射され、着弾と同時に大爆発を起こし、カブキを吹き飛ばす!そしてシエルやキールもなすすべもないまま次々と打ちこまれる銃弾に怯んだ!!

カブキ(大人)「き・・・・貴様ァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

そのライダーの戦闘能力は極めて高かった。特にグリード三体を相手にものともせずに攻撃を上手くかわしながら次々と銃弾を撃ち込み、吹き飛ばしていく!!

その様子を真墨たちは茫然と見ることしか出来なかった。

真墨「・・・・つぇぇ・・・・!!」
瑛子「アイツ・・・何者だっ!?」

メイ「!?この気配は・・・・アイツか!?」
瑛子「アイツ・・・?」

そう言うと、メイはクールな笑みを浮かべて言った。

メイ「・・・・・・頼もしいお助けマン、だな」


一方、そのころ。
深く暗く欝蒼とした森の中・・・・。
翠は生ぬるい風が頬をなでるように流れていく感覚と葉から伝って落ちた雨露で目を覚ました。ゆっくりと起き上がると、そこは、見たこともない不気味な森の中・・・。

翠「・・・・・・・・・・・何じゃ、これは」

そして後ろで美子がおき上がり、眼鏡をかけて飛び込んできた不気味な森の光景に言葉を失い顔が血の気が引いたように真っ青になる。

美子「ど、どこなんですか、ここは―――――――――――――っ!!?」
翠「カメラはどこじゃ、カメラはどこじゃ!」
美子「お、落ち着いて、モチついて!!これ、多分ドッキリカメラじゃないよぅ!!」
翠「・・・落ち着け、確か、さっき、スクリーンから手が出てきて引きずりこまれた・・・ということはここって・・・まさか・・・・」
美子「・・・・・映画の中の世界?」
翠「と、とりあえず、ここから動かなきゃ。じゃないと何も始まらないよ」
美子「う、うん」

森の中を静かに、慎重に草木を踏みしめて翠と美子が歩いていく。木々の間から月明かりが雲に隠れて所々を月明かりが照らしている。そう、血のように真っ赤な満月の光だ。

そして森を抜けて大きな建物が見えてきた。

翠「これって・・・・学校?」
美子「・・・・みたいだねえ」

目の前にあるのは大きな学校のような建物。しかしよく見てみるとこれは学校だ。
しかもこれは・・・・翠は覚えがあったようで声を上げる。

翠「私立天神学園・・・!!お兄ちゃんの通ってた学校じゃん!!」
美子「暁ちゃんが男の子だった時に通っていた高校!?」

美子よ、その言い方はなぜか複雑な思いにかられるからやめてあげてください。

翠「何言ってるの、泣き虫メガネ。うちのお兄ちゃんが男の子なのはあくまで戸籍上の問題だけであって、実際はあの通りクールでカッコよく、イジると可愛く泣きだす女の子じゃないのさ」

法廷に持ち込まれてもボクは勝てると言い切る翠に、美子が呆れる。

美子「戸籍上の問題って・・・」
翠「しかし、まさか天神学園を撮影場所に使うなんて。昔交流とかあったのかな?」


茉莉は映画で流れてくる翠たちの音声をオーディオ機器に接続してイヤホンで聞きながら、翠たちの様子を確認しつつパソコンで情報を収集していた。

茉莉「戸籍上の問題って・・・・。真墨にゃ黙っておこう。あとでキレたら厄介だし。それで、天神学園を撮影に使ったねぇ。ねえ、元番長さん。天神学園を映画の撮影で使った映画って何か知ってる?」

インカムで連絡を真墨にする。すると、真墨から返事が来る。

真墨「ああ、あるぜ。4年前に、確か、ホラー映画の撮影とかでうちの学校の旧校舎とか部室棟とか使っていたことがある。・・・・4年前?あれ?その時、確か何か事件あったな」
茉莉「ま、マジ!?」
真墨「・・・・・・・ああ、思い出した。その当時の撮影が終わった後、研究会に所属していた部員が一人、行方不明になってる!!」
茉莉「4年前の、行方不明事件。それ、かなりいい線いってるかも。もしこのメダルがアベルの力を持っているメダルなら、物に宿る記憶や欲望を餌に育つんだよね?それ、もうちょっと調べてみる!!」

しかしその時であった。

美子「え・・・?きゃ、きゃあああああああああああああああああっ!!?」
翠「ギャ――――――――――――ッ!ぞ、ぞ、ゾンビ―――――――――ッ!!」

突然翠と美子の悲鳴が上がったのだ。茉莉が映画の映像をスクリーンに向けて置いてきた小型カメラから視聴覚室で流れているスクリーンの映像に目を向ける。するとそこでは、顔を真っ青にして必死で逃げまどう翠と美子、そしてその後ろから校庭を埋め尽くさんばかりにあふれ出る、ボロボロの高校生の制服を着こんだ、もう生きている人間とは思えないほど青ざめ、肉の所々が腐り落ち、口からだらしなく涎を垂らし、どろりと濁った白目を剥きだしにして両手を前へ垂らしながらゆっくりと歩いて追いかけるゾンビの大量軍団がいたのだ!!

茉莉「・・・・・・・マジで、ヤバすぎじゃん」

真墨「頼むぜ!!こっちもこっちでしばらく手が離せなくなりそうだ!!メイ、俺もいくぞ!!」
メイ「ああ、結界の準備は任せろ。“ギュゼル”!!結界を展開するぞ!!」

ギュゼルと呼ばれたヘルメットを着こんだライダースーツを着こんだ相手はコクリと頷き、銃でグリード達の行く手を阻むように乱射し、土ぼこりを上げる。これにより、相手の視界がふさがり、何も見えなくなる!!しかし、こっちは2階にいるので、上からなら敵が丸見えだ!!

真墨「行くぜ!!変身!!」

ファングに変身し、2階の窓から飛び降りると同時に大剣を振り上げて一気にカブキに切りかかった!!袈裟掛けに思い切り斬られたカブキがセルメダルを大量に散らせる!!

ファング「グリード3体か。手加減はいらねぇな、暴れまくるぜ、このヤロウ――――――――ッ!!!」

もう大暴れならファングの独断場だ。1対3などものともせず、殴り、蹴り、切る。もう普段のストレスを一気に爆発させんといわんばかりに暴れまくる!!その暴れぶりにシエルやキール、そしてカブキもなぜか追い込まれていく!!

ファング「行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ――――――――――――っ!!!!」

もうモ●タロスが憑依したかのような派手な暴れぶり。シエルの槍の突きをかわし、キールの長剣の攻撃をかわして、大剣で叩き斬る姿はまるでシエル達の動きを読んでいるかのようだった。まあ実際は読んでいるのだ。これまで過去に戦ってきた経験から相手の動きや攻撃パターンが予測でき、また研ぎ澄まされた直感で攻撃を見切り、防御で防ぎ、またはかわして強力なカウンターを叩きこむ!!

シエル「どうなってるんだ、いつもと全然違う、強い・・・!」
キール「くっ、生意気ね!!」
ファング「いつまでもやられっぱなしだと思うなよ!!!こっちも鍛えているんでなあっ!!」

その様子をカブキが静かに見ていた。そして不敵に微笑んでいる。

カブキ(大人)「・・・・・ふぅん、アイツ、使えるかも・・・・ウフフフフ・・・・キャアアアアアっ!!」

カブキが油断しているとそこへギュゼルと呼ばれたライダースーツの人物が放った銃弾とメイの竜巻が同時に炸裂し、カブキが吹き飛ぶ。

メイ「カブキ・・・・何があったか知らんし知りたくもないが、その力、今後脅威となるだろうな。だから、ここで芽は早いうちに摘ませてもらおうか」
ギュゼル「闘いの途中でよそ見とは、これは退屈させてしまったようだな。ならばもう一切手加減しなくてもいい、ということだな」

声の感じから女性のようだ。クールで淡々としている、感情が感じられない平坦で無機質な感じの声で、それをさらに低くして死刑宣告をつげるその姿はまさしく非情なる戦士のようだった。

カブキ(大人)「ちっ、おばさん二人がこんなうら若い乙女を捕まえて集団いじめなんて、みっともないわねぇ。あんまり怒るとシワ増えるわよ〜?お・ば・さ・ん」

メイ「(ブチンッ)三途の川で頭冷やしてくるんだな」
ギュゼル「(ブチンッ)地獄の閻魔様にでも口のきき方というものを再教育されてこい」

そして。

ギュゼルがどこからか大量のセルメダルを生み出し、それをありったけブチ込んでフルパワーに出力を上げ、メイの手に今まで見たことのないおびただしい量の風がまるで嵐のように吹き荒れながら集まり出す!!それを見て、ファング、キール、シエルは本気で命の危機を感じた!!

ファング「やめろ、クソババア共――――――――ッ!!!こんな狭いところでそんな大技ぶちかましたら・・・・・!!!」

もう遅い。次の瞬間、凶暴なうねりを上げた嵐の渦と無数のセルメダルの弾丸がシエルたち目がけて発射される!!そして・・・・グリード3体と、ファングまで巻き込み裏庭を嵐があらゆるものを飲みこみ吹き飛ばし、セルメダルの弾丸によって粉砕され、無残な瓦礫や残骸と化した木々やコンクリート片が渦とともに舞い上がり、中に飲みこまれた・・ファングに次々と直撃していた。しかもよく見てみると、そこにはもうシエルもキールも、カブキもいなかったのだ。つまり食らったのはファングのみという状態だ。

メイ「・・・・・・・・・・あ」
ギュゼル「・・・・・・・・・・巻きこんじゃった」

そして、地面に叩きつけられ、ピクピクと痙攣を起こし、ボロボロになったファングがぶっ倒れていた。

ファング「・・・・あいつら、後で、覚えておけよ・・・・」

そして合掌の鐘の音とともに、気絶したのであった・・・合掌(ちーん♪)


一方その頃。

茉莉「まずいな、こりゃ翠たちが追い詰められるのも時間の問題か。まず、この映画に宿っている思いの正体を突き止めないと・・・うん?」

すると、小型カメラに一人の人物が映し出された。その人物はスクリーンの前に立つ。するとスクリーンの中から再び腕が伸びだし、その人物に迫っていた!!茉莉は慌てて視聴覚室に駆け込んだ!!

茉莉「ちょっとあんた、何やってるの!?危険だからすぐに離れて・・・!?」

そこにいた人物は、ディオネドライバーにメダルを装填し、静かに装着した後だった。
そして茉莉に気づかないのか、目の前で叫んだ。

霧子「・・・・・・変身!」

そう、菫谷霧子は言って、両腕を頭の上でクロスさせて一気に振り下ろした。するとその姿が赤い翼竜・ケツアルコアトルを模した仮面と鎧に身を包んだ、戦士の姿へと変わる。その姿を見て、茉莉は心底おどろき、その場に座り込んでしまった。その戦士の姿は忘れたことはない。自分たちを散々痛めつけて、自分の正義のためにライダーとグリード、全てを倒してしまえばいいと言い切り、アベルを言葉通り葬り去った狂気の戦士。

仮面ライダーディオネ。

そのライダーに、青薔薇こと菫谷霧子が変身していたのだ・・・!!そして霧子=ディオネは気づくこともなくスクリーンの中へと飛び込んでいった。

茉莉「・・・嘘でしょ、どうして、青薔薇が・・・・!?」

いつになく茉莉の顔色は青ざめ、全身の震えが止まらないくらい動揺していた・・・。

続く
,2話投稿致します。前回で記述したように、今回ついにグリードが仲間割れ、カブキがアベルの復讐のため、かつて仲間であったシエルにでさえ容赦なく襲い掛かり、アベルの力を取り込んだ「突然変異体」となって襲い掛かります。二つの属性、「火」と「植物」の力を使いこなし、触れたものをドロドロに溶かしてしまう緑色の濃硫酸の炎を自在に操り、カブキの力にアベルの属性が付加され、狂気に陥ったカブキ。そして色っぽい大人の女性の姿に成長した一味違うカブキの魅力、いかがでしたでしょうか?

そして今回、語られた朱美ことキールの過去。そしてグリードになった理由。それは初恋だった人に裏切られて殺されたことで、自分を今度こそ裏切らない人に愛されたいと思うようになり、自分を生き返らせてくれたゼロにその思いを抱くようになってしまったのです。しかしゼロにしてみれば彼女もただの道具に過ぎない存在。そして変わり果ててしまった朱美の正体に気づかないかつての親友が「暁」と「凛」だったのです。「真墨」こと「暁」が「朱美」の正体に気づいたとき同動くのか、今後の彼らの動きにも応援よろしくお願いいたします。

そして本当につくづくついてない真墨。今回も妹に正体をばらされかけるわ、女装写真をwebネットで公開されるわ、メイたちの攻撃に巻き込まれてボコボコにされるわ、本当にろくな目にあっていません。いつグレてもおかしくはないのですが、彼にも近いうちにいいことが起きそうな展開になりそうです。不幸だけどいつも一生懸命諦めずにたくましく生きる彼の活躍、応援よろしくお願いいたします。

烈様へ
お久しぶりです。もし、今回の作品の感想をいただけるようでしたら、「キール」こと「朱美」のメッセージと「カブキ」のメッセージもお願いしたいのですが、お願いできますでしょうか?,#000000,./bg_f.gif,f248-47.ip.avis.ne.jp,0 2014年07月15日(火) 10時17分16秒,20140715101716,20140718101716,WCx7ZYtDqkQEM,仮面ライダーワルキューレ Mission20,鴎,,,Mission20「狂気のライダー・ディオネ」

もはや訳が分からなかった。茉莉は必死で今の状況を何度も頭で理解しようとしたが、どうにもこうにも思考がまとまらない。自分たちをヤミーごと吹き飛ばし、今もなお大型ナイフの武器、ディオネブレードでライムフォームに斬りかかり、ライムフォームを助けようとしたシェリーフォームをライムフォームを蹴りつけた反動で振り返り大ぶりにブレードで切りつけていく謎のライダー。

茉莉「・・・ちょっと蒼真さん?これ、どう説明してくれるわけ?」

通信部にいた蒼真ももう普段の飄々としている様子はなく、予想外の事態に驚きを隠し切れていない。

蒼真「あれは、アスカから連絡を受けていたディオネシステムのライダー、仮面ライダーディオネ!!!システム上も何にも問題はなかった!!なのに、どうしてこんなことになってやがる?というか、テメェ誰だ!ディオネシステムの適合者、つまり紋章の持ち主なら分かるはずだろうが!!同じ紋章を共有しあう仲間なら!!お前たちは戦い合う敵同士なんかじゃねえんだよ!!仲間同士でやりあうんじゃねえ!!」

しかし、ディオネから帰ってきた返事はあまりにも抑揚のない低く冷たい、地の底から響くような静かな声だった。

ディオネ「・・・・仲間?・・・・・虫けらと一緒にしないで下さい。反吐が出ます」
蒼真「なっ、テメェ・・・!!」
ディオネ「私は争いをこの世からなくしたいだけですよ。その為に、争いを引き起こす存在をライダーも・・・怪物も・・・・・全てこの手で浄化しなくてはね・・・・」
真夜「・・・・・・・・・・・!!」

通信が切れた。あまりにも狂気に満ちた返答。最後には笑みさえ浮かんでいるように見えた、あまりにもおぞましく吐き気さえ感じるような蕩ける甘く、それでいて何が何でもやり通す信念で凝り固まった、まだうら若い女性の声。

蒼真「くそっ!!!翠たち、急いで合流してくれ!!!緊急事態だっ!!!」

一方で蒼真の後ろで真夜も怒りで顔を紅潮し、身体を震わせていた。先ほどのディオネの言葉はかつての怨敵がよく口にしていた言葉を彷彿させるからだ。

真夜「・・・・・・・・どうやら、ディオネシステムは渡ってはいけない人物に渡ってしまったようですね・・・・正義正義謳えば何をやっても許されると・・・?」

ガゴンッッ!!!!!

蒼真が後ろから響いた大きく鈍く重い音に驚いて振り返り、そこで見たものにさらに驚いた。壁に思い切り拳を叩きつけてまるでハンマーで叩きつけられたかのように壁一面に亀裂が入っており、そこには拳を壁にめり込ませ、憤怒の形相を浮かべた真夜の姿があった。その姿にグリフォンイマジンの姿のイメージが浮かび上がっている。・・・本気で怒っている。蒼真は血の気が一気に引き、逆に冷静さを取り戻したが今度は別の意味で混乱した。

真夜「・・・・・・・・・・・・・ふざけんな・・・・・・・・・!!!」

後に蒼真は語る。
「嫁さんが本気で怒ったら、怒らせたヤツはその日が命日確定だと思う。だから、俺は絶対嫁さんを裏切るようなことはしまいとメイド喫茶通いも夜遊びも自粛するようになった」と・・・。


真墨「通信部からの通信が途絶えた・・・!くそっ、こうなりゃ現場で現在の状況をどうにかするしかねえか!!」
翠「さっすが現場歴長いだけあるね!!急ごう!!」

蒼真の通信が途中で途絶え(真夜が通信システムのケーブルの一部を壁ごと破壊したため)←バカかテメェはああああああああああああああ!!!(by暁)
バイクを駆りだし、ショッピングモールの中に乗り込み、二人が同時に変身アイテムを構える!!

「「変身!!」」

二人が変身し飛び込んだ異次元空間の先には、ボロボロになったテティスたちを尚も甚振るように痛めつけている赤い見たこともないライダーの姿。

ブチブチブチブチッ!!!!!!(一気に血管がキレた音)
ファング「テ・・・テメェ、俺の仲間に何してくれやがった・・・・!ああ、もう答えなくていい。とりあえずぶっ殺すってことでいいよなァ?もう、キレちまったからよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

怒りの咆哮を上げて目にも止まらない速さでファングが飛び出し、あっという間に赤いライダー・ディオネの間合に入り、拳を振り上げるかと思うと、身体を素早く動かす。攻撃を身構えたディオネは不意を突かれた!フェイントだ!!左わき腹に拳が突き刺さる!!息が止まり、一瞬動きを止める。しかしすぐさま前にはもう一発繰り出そうとするファングが殴りかかっていく!!

ファング「嫁入り前の女の子、キズモンにすんじゃね――――――――よっ!!」

思い切り握りしめた右拳を本気でディオネの顔面に向けて放つ、しかし両肩のアーマーによってその拳が右肩でめり込む。あまりに重い一撃にライダーの装甲でも耐えきれず、ディオネは戦慄する!そして本能的に銃を構えてファングに至近距離で撃ちだす!!

ファング「がはっ!!!」

ファングから離れるとディオネは地面から黒い闇のような霧を噴き出し、視界が見えなくなる。そして姿が見えなくなった。

ファング「・・・・・ちっ!!茉莉!!瑛子!!美子!!しっかりしろ!!」

ファングが真墨の姿に戻ると、そこには見るも無残な姿に変わり果てた3人の美少女達の姿があった。アスカの改良した最新のライダーの装甲の防御力によって奇跡的にも傷つけられたのはアーマーのみであって無傷ではあったが、精神疲労と脱水症状を引き起こしていた。

ファング「翠!!お前はこの近くにいるヤミーを追え!!俺はこいつら一旦本部の救護室に連れて行く!!あのライダーの方は追うな!!いいな!!」
ワルキューレ「了解!!!」

ワルキューレがストームチェイサーにまたがりヤミーを追跡する!!


星見市内 ファミリーレストラン
アベル「・・・・・おい、一体どうなってやがんだよ。あの赤いのもライダー・・・だよな?」
シエル「そうみたいだね。ヤミーの様子見にいってみればこうなってるわけだ」
アベル「何でライダー同士でやりあってんだよ?!あいつ俺たちもライダーも全員倒すことが正義とかヌカしてたよなぁ!?そりゃどういう意味だよ!!」
シエル「そんなのつい今さっきのことだって言うのに分かるわけないだろ、まあ、ボクが考えるならば・・・第三者の勢力が動き出したってことか、もしくは、ゼロが動き出したか、かな」
カブキ「・・・・ゼロ・・・・怖い・・・・嫌い」
アベル「・・・・・・・ゼロか・・・・・・やばいな、それ」
シエル「まあ、ね。しかも、今のボクら、ゼロからすれば任務失敗ばかりのお荷物状態じゃん。キールの動きがなりを潜めているのもライダーの正体や動きを探っているからだからみたいだし。でももうここまでくれば自分が動いた方がマシ、そうなったら無能な部下は切り捨てるに限るって考えるんじゃないか?」
アベル「それじゃあ、なおさらライダーたちぶっ潰してメダル取り戻さなきゃ・・!」
シエル「・・・・それも怪しくなってきたんだよね」

シエルが一旦言葉を切り、黙る。アベルとカブキはシエルの様子に一種の嫌な予感を感じた。

アベル「・・・おい、それってどういうことだよ」
シエル「・・・・・うちら、メダルもし全部手に入れたとしても、アイツが、ゼロがボクたちの願いを叶えてくれるのかってこと。それどころか、メダルを全部手に入れることがアイツの目的なのだとしたら、ボクらの意思が宿っているコアメダルもそのうちの一つなんじゃないかってこと、集めるだけ集めたら・・・・ボクらがメダルとして回収されるんじゃないかって可能性もなくはないってこと」

アベルとカブキが言葉を失った。シエルもこの考えはあまりにも極端すぎる話ではないかと最初は鼻で笑っていたが、彼女の「ギャンブラー」としての危険を察知する能力がゼロの条件、キールがアベルたちがやられても手を貸さないこと、そしてなぜか表舞台に出なくなったキール、そして猜疑心の強い性格が一つの絶望的な未来に思いついたのであった。しかしそれはありえなくはない話であった。

シエル「少なくとも、ゼロの目的が何なのか、ボクらも知る権利くらいはあるよね。でも知ってるのはキールのみ・・・・」

アベル「上等じゃねえか・・・・!!」
アベルが乱暴に立ち上がり、机をバンと叩いた。怒りで顔を真っ赤にして全身が小さく震えている。

アベル「オレがアイツ締めあげて聞き出してやんよ!!!ゼロの目的をな!!」
そう言って、アベルが返事もしないうちに店を飛び出していった。

シエル「カブキ、アベルを追って!!アイツ一人じゃ何やらかすか分らない!!」
カブキ「シエルは!?」
シエル「ここの会計済ませてから後を追うよ!!見失わない内に早く!!」

そしてカブキがアベルを追いかけて出て行った・・・その後。

シエルは・・・・何故かソファに座り、大きくため息をついた。
すると、そこへ、一人の女性が向かいに座ってきた。その女性の姿を見て、シエルは眉間に皺を寄せつつ、鬱陶しそうな態度を隠さないで彼女を見る。

「・・・本当に単純なワンちゃんだこと。貴方の言うこと何でもハイハイ聞いちゃうんだから」
シエル「・・・・・・わざわざアベルの悪口言いに来たのかい?」
「違うわよ。私だってそんなにヒマじゃないわ。でも貴方があのワンちゃんにゼロ様の崇高で素晴らしい存在を汚すような暴言を例え芝居とはいえ、吹き込んだせいで、今の彼女は、カブキちゃんを守るためなら、何だってやるわよ?多少の無茶でもね」
シエル「宛てもないのに飛び出して、一人になったところを、仕留めるって話か。こんな陳腐な作戦、アイツくらいバカでない限り引っかからないよ。本当にバカだよアイツ」
「冷たいわね。昔はお友達だったんでしょう?」
シエル「・・・・・・・・・・・・・・・・事情が変わったんだよ!前にも話したはずだ!!それにお前にだけは言われたくないね。お前だって今の立場じゃ嘘だらけで大変なんじゃないのかい?キール・・・・いや・・・・」

目の前にいたのは。
銀色のウェーブがかかったロングヘアを黒いリボンで縛り上げ母性と上品さがあふれる美しいルックス、そして抜群のプロポーション、そしてセント・ローゼリア学園の制服に赤いバラのブローチ・・・!!

そう・・・・・!

シエル「・・・生徒会長、蘆瀬朱美。赤薔薇様?」

そう呼ばれ、朱美は普段の表情とはまるで別人のような冷たく相手を見下すような視線をシエルに向けながら、クスリと妖しく不敵な微笑みを浮かべていた・・・・。

キール(朱美)「ウフフフ・・・・・さて・・・・これからが面白くなるわ。そしてこの町の人間どもが絶望という名の地獄に叩き落として、欲望で埋め尽くされたこの町を、ゼロ様に捧げ、永遠の神になられる約束の日が楽しみだわ・・・・・ウフフフフ・・・」

その狂気をはらんだ笑みは見ただけで心臓をわしづかみにされそうな冷たくどす黒い微笑み、地の底から響く亡者の怨念の声のようにも聞こえてきた。シエルも冷汗をたらし、言葉を失っていた。その時携帯が鳴った。キールのものであった。それを取る。

キール(朱美)「誰よ・・・もしも・・・す、す、すすすすすすすすす翠ちゅぁわああああああああああああああああああああああああああん!!?わわわ、わわわわわわわわわ私の携帯に、ついに愛のラブコォォォォオオオオオォォオォオオオオォオオォオルをぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!?」

シエル「・・・・・・はい?(゜-゜)」

キール(朱美)「・・・怪我人が多数!?保健室使おうにも保健委員の菫谷さんがどこにもいないからマスターキー貸してほしい!?いいわよ、翠ちゃんのためなら例えカギだろうと全財産だろうと私の花の操だろうと全部捧げるわぁああああああああああ!!!!今すぐいくわぁあああああああああ!翠ちゅわん、待っててね!!!!」

電話を切るや否や、キール・・いや朱美は突然飛びあがり身体を回転させて踊りだし意味不明の歌を歌いながら店を飛び出した。あまりの変りぶりにシエルがついていけず茫然と見送っていた。

キール(朱美)「翠ちゃ〜ん、やっぱり私と貴方は小指と小指に結ばれた赤い有刺鉄線で惹かれあう仲だったのねぇ〜ん♪結婚式の準備もしなくちゃ〜♪あ、それと同時に真墨の葬式もついでにやっておきましょ〜♪その為には、結婚式の前にはまずアイツを殺らなきゃ・・・・ウフフフフ・・・イヒヒヒヒヒヒ・・・ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ〜♪」

決して糸ではないらしい。翠もとんでもない怪物に目をつけられていた。しかしその様子を見ていて、シエルは何かを思いついた。

シエル「・・・翠・・・大友翠のこと?あのやたら馴れ馴れしいガキか。ああいうの大嫌いなんだよね。希望だとか幸せだとか目指して頑張るぞって青春しちゃってる暑苦しいバカ・・・・いや・・・・・使えるな。ボクの願いを叶えるためなら、何だってやってやる。仲間を裏切ろうが、人を利用しようがな・・・・キール・・・・せいぜい今のうちいい夢見てな・・・!!」


学校
朱美(キール)「翠ちゅわぁあああああああああああああああああああん!!!鍵持ってきたわぁぁあああああああああああ・・・・・・・ん?」
そこにいたのは不機嫌な表情で立っている真墨だった。携帯電話片手に頭を抱えている。

真墨「・・・・まさか本当にきやがったとは」
朱美「翠ちゃわぁああああああああああああああああぁああ『どうかしたんですか?赤薔薇様?』え?」

後ろから翠の声がした。しかし振り返るとそこには真墨がいた。喉をトントン叩いて真墨が言葉を発する。

真墨(翠)『バ――――――――カッッ!!』

それを聞いて朱美は茫然とする。そうそれは真墨の声色だったのだ。真墨が傷ついた仲間を保健室で治療しようと連れてきたら今日は日曜だったため、学園全体が閉鎖されていて、さらに保健室の鍵を持っている菫谷もどこかに行ってしまっていて行方が分からず、マスターキーを使うしかないと考えたのだが、真墨の願いを朱美が素直に聞くはずがない。そこで今ヤミーを追いかけていて不在の翠に代わり、真墨が双子の特典を活かして声色を変化させて朱美を誘いだしたというわけ。(どこぞのバカシスターが怒りに任せて壁に八つ当たりしてくれたおかげでイージスの救護班への連絡回線までぶっ壊してくれたから救護室パニックになってたんだよっ!!by真墨)朱美は顔を真っ赤にして鬼気迫る表情で襲いかかってきた!!

朱美「ケキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――ッ!!!」
真墨「ほい、鍵借りましたよ・・・・あとは・・・・百合の楽園でも逝って一生乳くりあってろ、バカヤロ――――――――――――――――ッ!!!!!」

朱美がどこからか包丁を取り出し振り回してきたので手首を抑えて落とすと、そのままブンブン両腕を掴んで大きく回転して、一気に投げ放った!!

朱美(キール)「マワルワ!マワルワ!チキュウハ回ルノヨ〜キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!」

学園の裏の森の奥まで吹き飛んでいくのを確認し、真墨はふうっと一息ついた。

真墨「さて変態も消したしこいつらの治療しねぇと!!」
そういって、3人を保健室まで連れて行った。無論3人同時に背負って・・・である。

茉莉「・・・あ、あのさ、大丈夫だよ。もう、大丈夫」
真墨「・・・・怪我してるんだ。大人しくしておけ。すまねえ。俺がもっと早くきていれば・・・」
瑛子「お前が謝ることはないさ。私たちがまだ実力も弁えずに勝手に飛び出して返り討ちにあった。情けない話だろうが。笑ってくれよ」
美子「・・・まだまだ、身の程知らず・・・だったんだよ、ねぇ」

真墨「・・・あの商店街はな、この町の多くの人たちが毎日生活用品や食材を買いに来てる。屋内の遊園地ではガキどもが楽しそうに遊んでるし、俺らみたいな若いのも買い物したりダンスしたり好き勝手やってる、そんないつでも俺たちを受け入れてくれる居場所なんだよ。お前たちは俺にとっての一つの「居場所」を必死で守ろうとしてくれた。他の誰かがお前らを笑うなら、俺がそいつをぶん殴る。身の程知らずというならボコボコにシメ上げる。俺はお前らに、本当に感謝してる!お前らがいなかったらもっとひどいことになってた!お前らが戦ってくれたから!あそこは、守れたんだ!!心のあり方はもう俺たちにも引けはとってねぇ!あとは体を鍛えればいい。そのくらい付き合ってやるよ。だから、自分なんかなんて、言わないでくれ・・・!!」

“暁”にすっかり戻り、後ろに背負った3人に最後まで逃げずに戦い、商店街の被害を必要最低限まで抑えたことを心から感謝し、強くなりたいなら手伝ってやるとまで言ってくれている。美子の目から涙が流れて暁の右肩を濡らしていた。茉莉も小刻みに震えて必死で浮かんでくる涙がこぼれおちそうになっていた。そして瑛子も涙を流し、

瑛子「・・・・・やっぱり、選んで間違ってなかった。貴方こそ、私と・・・永遠に添い遂げたい真の強き男だ・・・・・!!」

美子「・・・さ、さとる、ちゃぁああん・・・・・・」

茉莉「・・・・参ったねェ、本当、青春ドラマじゃないんだけどさ、胸にぐっとくる言葉が・・・・合うんだから。ありがと・・・暁」

一方。
エビヤミーを追いかけて走ってきた翠は逃げ込んだ中央公園の広場までやってきた。日曜で露店も開いており、親子連れや友達、恋人たちでにぎわっている。この幸せなひと時をヤミーが現れて、顔を奪われたりでもしたら大混乱と化すだろう。そんなこと起こさせるわけにはいかない!!翠も焦りでどう動けばいいのか髪をバリバリかきだす。

翠「一体、どこに隠れたっていうんだ・・・・!」

その時であった。
後ろから誰かがぶつかってきて、翠もよろける。振り返るとそこには栗色の髪の毛をリボンで結んだ可愛らしい小柄な女の子がいた・・・・・・。

翠「す、すみません!」
カブキ「あ、あうー、カブキ、大丈夫。ごめんね、知らない子―」

翠が少女の手を取ろうとした時、彼女の小柄ながらも抜群のプロポーションを持つ体つきに言葉を失った。頭に稲妻が落ち、全身が打ち震えるほどのショックだった。

翠「(こ、こ、小柄なのに、おっぱい、大きい・・・・ボ・・・・ボク完璧負けてる・・・・これが所謂・・・・ロリきょぬー?うううう・・・・・)<ドイツ語です>何でボクの周りにはこうも胸が大きい子しかいないの?というか大きすぎる子しかいないのよ!?胸が大きけりゃいいってもんじゃないでしょ・・・そうでしょ・・・不公平よ神様・・・・」

ドイツ語でもはや言いがかりに近い恨み事を口走る。抜群のプロポーションの持ち主は急に発狂したかとも思われる鬼気迫っている翠に首をかしげる。
カブキ「ご、ごめんなさい、知らない子―。カブキ、アベル追っかけてたら、いなくなっちゃって、さがしてたの」
翠(だいたい女の価値は胸だけじゃないんじゃ、ゴルァアアアア・・・・ふえ?カブキ?アベル!?ま、まさか、この子!?)

翠の危険信号がすぐさま正気を呼び戻し、彼女から飛びあがって距離を保とうと思わず後ずさる。緊張のあまりに汗が流れる。まさかここでグリードと出くわすとは思っていなかったのだ。アベルの人間体の顔は以前のボクシング部の事件でおぼえている。そして今回はカブキ。しかしまだ「シエル」「キール」「ゼロ」がいる。迂闊に変身したら自分の正体まで相手に明かしてしまうことになる。そうなると後後かえって不利だ。ここで戦うことはもろ刃の剣。どうする・・・?

その時だった!!

ゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
緑色の風が翠を包みこみその場から翠が消えていった。カブキは目の前から翠が消えたことに目をぱちくり見開いていた。

翠「め・・・・メイ―――――――――――――――――――――!!助けにきてくれてありがとうううううううううううううううううううううううううううう!!」
メイ「全く無茶し過ぎだ。私も遅れてすまなかったけどな。こんな風に何が起きているのか分からない時こそ、自分自身が何をやるか、するべきことだけを考えるんだ。他人のためじゃない、自分のために何をやるのか、何をしたいのか、集中しろ。落ち着くんだ」

そういって、飛びながら野菜ジュースを翠に渡してくれた。翠がジュースを飲む。甘くほろ苦い野菜と果物のジュースが喉をうるおす。

メイ「ヤツは廃墟となった結婚式場に身を隠している。そこには奪ってきた顔もある」
翠「もうそこまで分かったの!?」
メイ「シエルのヤミーは寄生した人間の欲望を最も力強く映し出す。つまりそいつがなぜそこまで強く願うのか、過去の思い出とか経験とか反映されることも多い。今回もそのケースだ。あの寄生された女子高生は――――――結婚式場で自分の母親が父親を殺している現場を目撃してしまったんだ」

保健室
茉莉「茂手木美奈子は昔父親を亡くしてから、母親の女手ひとつで育てられてきたみたいね。彼女の母親はそこそこ名前が売れていた女優。お手伝いさんに任せきりでなかなか会えることが出来なかったけど、彼女は美奈子を愛していたし、美奈子もいつも美しく綺麗でカッコいい母親に憧れていた。ところが二度目の結婚を迎える結婚式当日に、新郎の男には別に愛人がいて、そこで浮気していたところを母親に見られたわけだ」

美子「それで、愛人の女が散々自分をなじる言葉をぶつけてきて、それを新郎だった男はニヤニヤ笑っているだけ。そう、最初っからその男は母親の持つ財産を自分に貢がせるだけ貢がせて、全部愛人にやっていた。そしてあろうことか美奈子のことまでバカにした。それに怒った母親が愛人と新郎を殺害し、自殺した・・・・ひどい・・・・ひどすぎるよ・・・・!!」

瑛子「それを見てしまい怒り狂った母親の姿が今まで抱いていた綺麗で美しい母親ではなくなってしまい、彼女の中での美しさの象徴が歪んでしまった。自分もいつかあんな風に醜く歪んだ顔をして死んでいくのか、年老いて骨と皮だけになって死んでいくのか、そう考えると彼女はもう自分の美貌を何が何でも美しく保たなければいられなくなった。それで必死でダイエットをして、メイクや美顔にこだわっていたのか」

あまりにも悲しく残酷な展開だ。彼女は気丈に振る舞いながらももう精神的に限界まで追い詰められていたのだ。そんな思いをヤミーに利用され、自分の美貌を永遠に保つために、今もなお女の子たちの顔を奪い続けている。

真墨「顔を奪っているのは、取り換えが利くようにするためなのかもしれねえな」
茉莉「・・・・・・・おそらくね」
美子「他人の顔なのに!?」
瑛子「・・・・・・・いや、もうアイツにとって奪った顔はもう自分の顔としか思っていないんだろう。醜くなった、汚くなったと思ったら取り換えればいいと・・・」

真墨が舌打ちをして、短くため息を吐く。生まれてついた自分だけの顔、誰でもない自分だけの大事なものであるはずなのに、彼女は自分自身の一部でさえもメイク用品のように他人の顔を被って偽りの美しさを取り繕って生きていくことが幸せだというのか。

真墨「・・・・・・・・終わりにしてやる。こんなの・・・続けたって・・・・意味ねえだろうがよ・・・・・」

真墨が保健室の扉に手をかける。

真墨「・・・すまねぇ。翠一人じゃ危ない。かならず戻る」
茉莉「・・・暁、アタシたちの分も・・・頼む!」
瑛子「無事を祈る・・!」
真墨「・・・・ありがとうよ。お前らのその言葉、心強いぜ!お前らの敵、俺たちが必ず討ってやるからな」
美子「気をつけてね!」

真墨が保健室を飛び出していった。


廃墟と化した結婚式場。その貴賓室の一室の中、茂手木美奈子は魂が抜けた虚ろな瞳で壁にかかっている無数の仮面のような「人の顔」をうっとりとながめていた。「顔」はまるで眠っているように白く無機質な彫刻のように壁にかかっている。20くらいはあるだろう。その一つ一つを愛おしそうになでたりなめるように見ている。

美奈子「私の顔・・・・永遠の美貌・・・・・ああ・・・素敵・・・」

その時だった。貴賓室に足音が聞こえて、3人が乗り込んできた。翠とメイ、そして真墨だった。

翠「悪いけど皆の顔、返してもらうよ!」
真墨「もうこれ以上あんたの好き勝手やらせるわけにはいかねぇ・・・止めさせてもらうぜ」

それを聞いて、美奈子の表情が憤怒で歪んだ。そしてその姿にエビヤミーの姿が重なる。

エビヤミー「どうして・・・どうして邪魔するのよぉ!!お前らの顔も奪ってやる!!」

翠「兄さんの顔はボクのもんだ!!誰にもやるかい!!変身!!」
真墨「何でお前のなんだよ!?俺ンだろうがよ!?変身!!」

翠の相変わらずのブラコン爆発発言に突っ込みながら、二人が同時に変身した!


同じ頃。
キールの匂いをかぎつけて、アベルが、ワルキューレたちが戦っている結婚式場の玄関に乗り込んできた。戦いが始まったのか、奥の貴賓室から甲高い音がけたたましく鳴り響き、武器と武器が激しくぶつかり合う轟音が聞こえてくる。

アベル「・・・・この奥にキールがいやがるのか!?」

その時だった。そこへ一人の少女が静かに歩いて入ってきた。菫色のロングヘアを風になびかせて目に映るものをまるで嘆くように、悲しむように、その瞳を深い悲しみと憂いを帯びているその表情は、廃墟と化したこの空間に響く戦いを嘆いているようだった。それは・・・菫谷霧子(青薔薇)であった。

アベル「お前は・・・?ここから先は危ねぇぞ、今すぐ引き返しな!」

アベルの注意にも耳を貸す様子はない。そしてバッグからあるものを取り出す。それは赤いライフルのような形をした巨大な銃器。楕円形をした特殊なトリガーの形、その形には見覚えがあった。それは今朝見かけたあの赤いライダーの・・・!

アベル「お前、それ・・!」
霧子「・・・・・・貴方はこの世界が滅びたがっているように思いませんか?だから、いつまでたっても戦いは終わらない・・・・・いくら平和や安らぎを追い求めても争いの戦火が踏みにじり焼き尽くしていく・・・・でもそれが神様の意思ならば・・・その意志を聞き遂行することこそがこの世界の逝くべき末路というのかもしれません」
アベル「・・・だから、お前は何がやりたいんだ!?」
霧子「・・・・・哀しいですけど、戦いを終わりにします。戦いを起こすものも、戦いを引き起こしてしまう世界も、何もかもを終わりにしないといけないんです・・・」

マガジンの形をしたメダルホルダーに「ナパーム」を模した赤色のメダル、「ヘルズ」を模した紫色のメダル、そして翼竜「ケツァルコァトル」を模したメダルホルダーを右手に持ち、それを持ったまま手首を返してホルダーを見せるように返す!

「トリニティ!!ナパーム!ヘルズ!ディオネ!!」
霧子「・・・・変身!」

メダルホルダーを銃のマガジン部分にスライドして装填する!!そして両手を頭の上でクロスして一気に横に振り下ろす!!すると、ナパームの魔法陣とヘルズの魔法陣が重なり合い、第3の魔法陣が霧子を包みこみ、その姿を赤き太古の翼竜をイメージした戦士・仮面ライダーディオネへと変身を遂げていく!!背中から赤い炎が翼のように噴き出し、それを右腕で大きく斜め上から下へと振り下ろすとそれが吹き消される。アステカでは神の使いとも言われている獰猛な瞳を司る翼竜を模した仮面の双眸からは彼女の感情をうかがい知ることは出来ない。しかし次の瞬間ディオネが静かにディオネドライバーと呼ばれるライフルの銃口を静かにアベルに照準を構える!!アベルもその場を飛び上がってその場を離れると同時だった!!

ドン!ドン!ドン!!

火炎弾を次々と目にも止まらない速さで乱射し、アベルを狙ってディオネが攻撃を仕掛けてきたのだ!!その正確無比な射撃はアベルの急所を確実に狙ってくる!それを犬系動物の王たる驚異的動体視力を生かして銃弾を次々とかわしていくが、銃弾は途切れることなくアベルに襲いかかってくる!!その無駄のない動き、正確な射撃、確実にこいつは自分を殺しにきている。それを確信する。

アベル「どこのどいつだか知らねぇが・・・俺はここでくたばるわけには、いかねぇんだよっっっ!!!!ウオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

アベルの全身から黒い炎が噴き出し、火炎弾を薙ぎ払うとそのまま高速で飛びかかり、大剣を取り出してディオネに切りかかっていく!!すると、ディオネもディオネドライバーの持ち手を変えると、腰に取り付けていたもう一つのパーツを取りつける!!するとディオネドライバーが大剣の形に変わり、それを構えてディオネがアベルを迎え撃つ!黒い炎を帯びた大剣と赤い炎を帯びた大剣が激しくぶつかり合い、火花を激しく部屋に散らせる!!


一方。
エビヤミーの放つ泡を避けながら、ワルキューレ・ストームフォームが高速回転するランスを次々と突き出し、その背後から挟みこむようにエビヤミーにファングがファングバスタードソードで切りかかっていく!!息の合ったコンビネーションにエビヤミーも翻弄され泡を次々と放出するもそれをランスの突風で吹き飛ばしながらファングが飛びかかっていき大剣で切りつける!

エビヤミー「くらぇえええええええええええええええええええ!!」
ワルキューレ・ストーム「このままじゃキリがないよ!」
ファング「翠、メダルチェンジだ!!上半身だけ変えれるか!?」
ワルキューレ・ストーム「・・・・なるほど!メイ!ホウセンカのメダル、ある!?」
メイ「そういうことか!ああ、あるぞ!!」

メイが投げたメダル、アンキロ・コアを取り、そこへホウセンカ・コアを入れる!!すると上半身だけがライトニングフォームに変わり、銃器と化した腕を突き出し電撃弾をマシンガンのように発射してエビヤミーを攻撃する!!槍との応戦で一瞬のスキをつかれたエビヤミーの上半身に電撃弾が炸裂し、エビヤミーが電撃でしびれながらよろける!!

ファング「今だ!!翠、決めろ!!」
ワルキューレ・ストーム「了解!!」

ステゴ・コアの光が輝きだし、彼女の両足から風がステゴザウルスの棘のように噴き出し、鋸のように高速回転して唸り声を上げる!!

ファング「オラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

ファングが大剣で吹き飛ばし、エビヤミーが空中に舞い上がると落下地点にいたワルキューレが巨大な緑色のオーラを放つ風のギロチンと化した右足を一気に振り上げて、落ちてきたエビヤミーの身体を両断した!!!

ワルキューレ・ストーム「セイヤ――――――――――――ッ!!!」
エビヤミー「ギャッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

エビヤミーが爆発し、そこから茂手木が投げ出されると大量のメダルが散らばった。茂手木を抱き上げると、息はある。命に別条はないようだった。そして壁にかけてあった顔も元の持ち主の元へと戻っていったのか、消えていった。

ファング「・・・はー、これで一安心か・・・・」
ワルキューレ・ストーム「・・・何だろう、そのはずなんだけど・・・」
ファング「・・・・みなまでいうな。俺も何だか嫌な予感がするんだよ。さっき、俺達以外で魔力を発動させていたヤツがいる。この近くで俺達以外誰かが戦っている」
メイ「・・・・気配が近づいてくる!?」
ファング「・・・メイ、お前は茂手木連れて逃げろ。この様子、ただ事じゃない。一般人まで巻き込むわけにはいかねえ・・・!」

しかしその時であった。貴賓室のドアが爆発によって吹き飛び、もうもうと立ち込める黒煙の中から地面に投げ出されるようにアベルが傷だらけで地面を転がってきた。もう満身創痍でボロボロであった。手に持っている大剣も刃が所々折られ無残な姿となっている。

アベル「・・・があっ・・・・・ああ・・・・・・・・!」

ファング「アベル!?お前何があった!?」
ワルキューレ・ストーム「気をつけて!!何かが・・・来る!!」

その殺気は黒煙の中から現れた。その殺気を放っていた主、仮面ライダーディオネの姿を見たとき、ワルキューレは驚きで目を見開き茫然と立ち尽くし、ファングが怒りで全身の血液が沸騰し今にも襲いかからんばかりに怒りのオーラを発する。そしてメイは見たことのない新しいライダーの存在、そして彼女の存在を気配で危険と察したのか、冷汗が流れ落ちた。

ディオネ「・・・・また、戦いの場に貴方たちがいるのですか。これからもずっとそうやって戦い続けるのですね。貴方達さえいなければ戦いもなくなる。貴方達がいる限りこの町に平和は訪れない。貴方達が争いを、災いを呼んでいるのですね・・・・」

ファング「・・・・・何寝言こいてやがる」
ワルキューレ・ストーム「君に関しては何で茉莉ちゃんたちにあんなことしたのか、聞きたいことがたくさんある。大人しく本部に来てもらうよ」

しかし、ディオネがディオネドライバーの銃口を静かにワルキューレたちに向ける。その瞳に映っているものが見えた。殺意と憎悪に満ちた炎が噴き出し紫色の双眸が静かにかつ苛烈に冷たく負の気が噴き出さんばかりに怒り狂っているのが感じられる。そのただならない様子にワルキューレもファングもメイも、瞬間的に彼女たちが自分たちを殺そうとしていることを本能で危険を察知した!!

メイ「まずい、逃げるぞ!!」
ファング「ちっ!!」

次の瞬間、彼女の前には無数の赤い魔法陣が浮かび上がり、燃え盛る炎の矢が無数魔法陣から召喚されていた。その数はもはや数えきれないほどの量であった。

ディオネ「・・・・・主よ。争いを呼び災いを引き起こす悪魔の子らに地獄の業火を以てその魂の汚れを浄化し救済を与えたまえ。“ジャハンナム”!」

ためらいもなくトリガーの引き金が引かれると、炎の矢が一気に解き放たれる!!無数の炎の矢は目の前にいるファングとワルキューレたちの前に巨大な炎の弾幕と化して揺らめきながらも物凄い速さで迫ってきている!!押し寄せてくる大量の炎の矢を容赦なく自分たちに向けて発射したディオネの行動の意図が読めず目を見開いた。無数の炎の矢が大雨のように降り注いでくる!!確実にこの部屋にいる人間もグリードも全て討ち滅ぼすことも厭わない、常軌を逸している全体攻撃であった!!

ワルキューレ・ストーム「きゃ、きゃああああああああああああああああっ!!」
ファング「ちっ、うわあああああああああああああああああああああああっ!!」
メイ「ぐああああああああああああああっ!!」

貴賓室から巨大な炎の塊が噴き出し、けたたましいガラスが割れ壁が吹き飛び崩れ落ちる轟音を上げて貴賓室内で次々と爆発が起こり、その都度炎の塊がそこら中から爆炎を舞い上げる。部屋中の調度品も、壁も床も天井も、ありとあらゆるものを飲みこみ溶かして灰へと変えていく赤い悪魔の怒りのダンスはさらに激しさを増し、貴賓室を火の海の地獄へと変えていった。

その様子を翠、真墨、メイが茫然と離れたところから見ていた。あの赤いライダー・ディオネは自分たちをも一緒に倒そうとした。躊躇いもなく必殺技を発動し、ヤミーやアベルごと無数の炎の矢で射殺し、貴賓室ごと火葬に仕上げようとまでしたのだ。人を殺す、そのことに何のためらいも感じず、むしろ自分の欲望に酔いしれているかのような先ほどのこの世界全てに絶望し、絶望そのものをまるで楽しむように話していた彼女の常軌を逸している言動や行動に言葉を失っていた。

翠「・・・・・何なの、一体、これ、どうなってるの!?」
真墨「・・・・・・分からない。ただ、あのライダーは、完全にイカれてやがる・・・」
メイ「・・・・ディオネ、か。何が目的なんだ・・・?」


その頃・・・・。
火の海と化した結婚式場。その中を、カブキが噴き出す炎を必死でかき分けながら誰かを探していた。この結婚式場からアベルの気配を感じたのだ。根拠はないがアベルがここにいる。直感のみを頼りにここまでやってきた。そして、カブキは貴賓室の壁が崩れて瓦礫がいくつも積み重なった山の下に、ある人物が横たわっているのを見つけた。駆けつけると、それはアベルだった。そして横たわっていたのではなく下半身を瓦礫の山に飲みこまれ、メダルと化していた。もう彼女のコアメダルは限界を迎え、ひびが入り割れていた。もう人間の姿を保つことも出来ない。身体が少しずつメダルへと崩れおちていく。カブキがアベルのもとへ駆け寄る。

カブキ「アベル!!アベル―――――――ッ!!」

アベルがうっすらと瞳を開けた。目の焦点は定まっておらず宙を泳いでいるが、カブキの姿が視界に入り、唇をパクパク重そうに開く。もう話をする気力すら残っていない。

アベル「・・・・・か・・・・ぶき・・・・・」
カブキ「アベル!!今すぐ、助けるから!!」

カブキがアベルの下半身を覆っている瓦礫を凄まじい力で退けようとする。アベルが止めようとするが、瓦礫がどけられる。そしてそこに飛び込んできた光景を見て、カブキが言葉を失う。

カブキ「・・・・・・あ・・・・・・べ・・・・・る?」
アベル「・・・・・・・もうオレは助からない。メダルやられちまったからな。オレはもう、元の死体に戻る時が来たんだ・・・・・」

メダルで構成されていた下半身が粉々に砕かれ、メダルが散らばっている。そして身体が少しずつメダルと化して崩れ落ちていく。これがグリードの末路、コアメダルを砕かれたらもう存在さえ保てず消滅する・・・。

カブキ「・・・嫌、嫌!!嫌だ!!カブキのメダルあげるから!!カブキのメダル、全部あげるから!!!だから、消えないで!!死なないで!!!アベルがいなくなっちゃうなんて・・・・嫌だ・・・!!嫌だ嫌だ嫌だ・・!!!」

床を這って気が狂ったように泣き叫びながらメダルを必死でかき集めるカブキ。自分の体からメダルを取り出し、それを添える。しかしもうそれはアベルの身体を再生することはない。なぜなら出来ない。コアがもう完全に打ち砕かれているのだから。

アベル「・・・カブキ・・・・・もう・・・いいんだ・・・・もう・・・・いいんだよ」
カブキ「嫌だ・・・いやだ・・・・・アベルがいなくなっちゃうなんて・・・・嫌」

カブキが涙を流してアベルにすがりつくように両手でアベルの右手を握りしめる。アベルが左手を上げて、カブキの頭を優しく撫でる。いつもお腹が空いた時や、ワガママを言った時、いつもこうして自分の行動をたしなめて、止めてくれた。アベルの左手のぬくもりにカブキがアベルを見る。アベルの表情は、死を前にしているというのに、どこか安らかに笑っていた。そして泣きじゃくるカブキを慰めるように頭を何度も撫でてくる。

アベル「・・・・・泣くなよ。お前に泣かれるのって・・・一番心にこたえる・・・」

そういって、右手を自分の胸に突き刺すと、そこから黒く光る「オオカミ」「シェパード」「リョウケン」の3枚のメダルを取り出して、カブキに与えた。

アベル「・・・・お前にやるよ」
カブキ「・・・・・アベル・・・・!」
アベル「・・・・強くなれ、カブキ。お前は・・・・優しいから・・・・争いごととか嫌いだから・・・・正直戦いに向いているとは・・・・思わない。・・・・でもな、お前もいつか、自分のために、ゆずれない何かをかけて、戦わなきゃいけない時が・・・必ず来る。・・・・その時、何もかも諦めて投げ出して・・・・・逃げるというのも・・・一つのやり方かもしれないし、楽かもしれない。でもな・・・・いつまでも逃げ続けていると・・・・あとで自分が落としてしまった大切なものを・・・・取り戻したくても・・・もう取り戻せなくなっちまう・・・・・そこで自分があの時逃げなければ、立ち向かっていればって後悔しても・・・・・遅いことだってあるんだ。お前は・・・オレみたいになるな。お前が今・・・・どうしたらいいのか分らないのだとしても・・・お前が逃げずに目の前の問題と向き合って戦いを挑み続ければ・・・必ずその先にお前が求めているものが・・・きっと・・・見つかる。だから・・・もうここから先は・・・・自分で選んで進め・・・・自分がやるべきことを、自分が進むべき道を、お前が見つけ出せ」

アベルが最後の力を振り絞ってカブキに語る。カブキの瞳から涙がぽろぽろとあふれ出て、頬を伝って流れていく。カブキがアベルの手を両手で強く握りしめる。そして涙を拭いて、力強く頷く。

カブキ「・・・・うん・・・!!分かった・・・・!!カブキ・・・・強くなる・・・!!強くなって・・・・・逃げないから・・・!!だから・・・!!アベル・・・死なないで・・・!!」

その言葉を聞いて、アベルが安心したように笑った。
アベル「・・・・・約束だぜ?」
カブキ「・・・・うん!!」

そして、風が強く吹いた。

―ありがとう、カブキ・・・―

最期の言葉、それと同時にアベルがメダルとなってくずれおち、そこには、犬飼美鈴だった白骨がメダルとともに床に散らばっていた・・・。握りしめていた手が骨となってくずれおち、カブキの手からすべりおち、乾いた音を立てて地面に落ちた。

カブキ「・・・・・・アベル・・・・・・?」

骨と化し、メダルの残骸のみが散らばっている。アベルの亡骸を見て、カブキが力なく声をかける。しかしもうアベルは笑わない。もう、いつものように微笑んでくれない。あの強気で乱暴で、口は悪いけど、それでも、いつでも自分を大切に可愛がってくれたアベルは・・・・もういない。

カブキ「・・・ああ・・・・ああああ・・ああああ・・・・・イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

カブキが気が狂わんばかりに身体を大きくそり上げ、両手で頭を抱えて叫んだ。涙を両目からあふれんばかりに流し、喉が張り裂けんばかりに、全身の力を振り絞って激しく慟哭し、泣き叫ぶ。その時だった。アベルの身体を作り上げていた大量のセルメダルがカブキの放つ強力な欲望に反応し、ゆっくりと動きだしカブキの周りで取り囲みだしたのだ。そしてさらにカブキの持っていたアベルのコアメダルも光りだし、それがカブキの全身を覆いつくしていく!!

カブキ「ああああああああああ・・・・・・アア・・アアン・・・あぁああ〜ん・・・」

カブキの声が徐々に大人の女性のような艶っぽい声に変化していく。そしてメダルが全て吸収されると倒れこんでいたカブキがゆっくりとメダルの山の中からかき分けるように出てきた。しかし、そこにいたのは、もうあどけない少女の姿ではなかった。

ブロンドのウェーブがかかった栗色のロングヘア、そして長身で抜群のプロポーションを持つ褐色の肌のナイスバディを持つ扇情的な雰囲気を纏った美女・・・・・。
そして瞳には金色の光が妖しく光り輝いていた。そう、それはカブキが大量のセルメダルとコアメダル、そしてあまりにも激しい感情の高ぶりにより、自身のコアメダルをも強力な欲望を持って「進化」させて、大人の女性の姿に急成長した姿だった・・・。

カブキ(大人)「・・・・・・アベル・・・・貴方のことを襲った奴らは絶対許さない。・・・・“私”、逃げないよ。逃げないで正面からどんな手を使っても、必ず仇をとってあげるわ・・・・例え誰だろうと・・・・・・とことん追い詰めてあげる・・・・ウフフフ・・・・アハハハハハ・・・・アアン・・・・興奮してきちゃったぁ・・・・・」

もうそこに無邪気な少女の姿はない。そこにいるのは怒りと悲しみ、それらが入り混じり、自身の親友を倒した相手をどう惨たらしく処刑してやろうか狂的な笑みを浮かべながら獲物を狩る狩人とかした妖艶かつ獰猛な美女、カブキであった。

カブキ「アハハハハハハハハ・・・・・キャハハハハハハハハハハ・・・・」

涙を流しながらも歪んだ笑みを浮かべて、ゆらゆらと静かに歩きだした。地獄の業火の中、絶望から生み出された狂気の狩人が凶暴な牙をむき出しにして、戦場に放たれた。

一方、アベルを不意打ちで打ち倒したディオネは変身を解除し、霧子の姿に戻っていた。そしてカブキが去った後、アベルの亡骸を見下ろして、彼女の瞳に何か光るものがあふれてこぼれ落ちた。それは涙。しかし、その表情は・・・・あまりにも禍々しく唇を吊上げてニヤリと常軌を逸している微笑み。それは狂人のような狂った微笑みであった。

霧子「殺した、私が殺した、うふふ、これでまた一つ、魂の、救済を、しましたわ。キャハハ、さあ、もっと、もっと、殺さなきゃ。もっともっともっと救われない人たちを“救済”しなくちゃ。皆、死ななきゃダメなんですから、ライダーも、グリードも、皆死んじゃえば、いいんです。そうすれば、戦いは、終わるんだから・・・・」

霧子が涙を流しながらカラカラと乾いた笑みを顔に張り付けておかしくてたまらないといったようすで身体を震わせて笑いだした。もはや彼女は正気ではない。心から湧きあがるどす黒い欲望が彼女を突き動かしていた。

続く
,お久しぶりです。投稿が大変遅くなり申し訳ございません。退職、転職を言い訳を理由にするつもりはございませんが、もしこの作品を長い間応援してくださった読者の皆様がこの作品を見て、感想を投稿してくださったら大変嬉しく思います。

長らくお待たせしました。仮面ライダーワルキューレ、身の回りが落ち着いたので投稿を再び始めます。今回から新しい展開に突入しました。今後の流れを軽くネタバレすると、まず、仮面ライダーディオネ=菫谷霧子は今までのライダーとは異なり、翠たちの完全な敵として今後も活躍します。今までは翠や真墨たちと敵対しながらも最後には分かり合って仲間になっていく展開がメインでしたが、霧子はもう翠や真墨でさえもどうすることもできない底知れない狂気と殺意を持つ、ある意味「神代聖」のような存在です。特に今後、霧子は「真夜」と対決することになりそうです。いつもは天然で温厚な「真夜」も、霧子に対しては神代聖を髣髴させるため、最初から敵意をむき出しにして霧子と対立することになりそうです。

そして・・・アベル、今回で退場です。短い間でしたがシエルやカブキとともに、敵キャラとして活躍してきましたが、最後はシエルとキールに裏切られ、ディオネに倒されるという壮絶な最期を遂げました。そして死の間際にカブキに遺した遺言が皮肉にもカブキを発狂、「突然変異体」という完全体を超えた脅威の存在として覚醒してしまいます。そしてカブキは今後、グリード陣をも敵に回し、一人で戦いに挑んでいくことになります。そしてシエルは何とキールと共に行動することになります。

そして、キールの正体、蘆瀬朱美がついに明らかになりました。次回は彼女の過去、そして本格的にグリードたちが、ディオネが、動き出します。いまだ正体を知らないまま、仲間として朱美と親しくしている翠と真墨たちにも試練が訪れることになりますが、どんな過酷な状況でも諦めずに立ち向かい希望を掴み取るのが翠たちのポリシー、今後ともおバカで熱血全開の彼女たちの応援よろしくお願いいたします。,#000000,./bg_f.gif,f248-47.ip.avis.ne.jp,0 2014年01月08日(水) 20時01分48秒,20140108200148,20140111200148,uCTAquEg9icgw,仮面ライダーワルキューレ Mission19,鴎,,,Mission19「乙女心とダイエット」

それは、6月、梅雨も明けていよいよ夏真っ盛りになろうとしていた頃のこと。

翠「・・・・・・・あれ?」

ボクは自分自身の異変に気づき、思わず声をあげる。鏡に映る自分の姿をふと見る。太ももや腰あたりに以前よりも肉がついているように見えるのだ。
袖を通したばかりの夏服が小さく感じる。

翠(・・・や・・・やばい・・・・・これはかなり・・・やばいヨ・・・)

全身から冷汗が噴き出し、顔色が見る見る血の気を失っていく。

真墨「ただいま。書類整理と校内の見回り終わった・・・・おわっ!!わ、わ、悪い!!」

お兄ちゃんが部屋に入るなり慌てて部屋から出ていく。しかしボクは逃がすまいとお兄ちゃんの手をとり、力強く引っ張りボクの元に引き寄せる!なぜかお兄ちゃんは顔を真っ赤にして腕を払おうとするがボクは離さない!

翠「お兄ちゃ――――――――――――――ん!!!!ぼ、ぼ、ボク、太ったのかなあ・・・?」
真墨「は、はあっ!?太ったって・・・どうしてそう思うんだよ」
翠「こっち見て話してよ―!!どうも夏服キツくてさ、腰回りとか太ももとか、ヤバくないか―!?」
真墨「見れるわけねーだろっ!!お前下着姿じゃねーか!!そんな下着姿でリビングにいるんじゃねーよっ!!」
翠「いいじゃん、そのくらい!!他の男の人だったら恥ずかしいけど、お兄ちゃんだったら・・・・別にいいもん///」
真墨「俺がよくね―ヨっ!!!お前だって年頃の女の子なんだから羞恥心持てや!!」
翠「だからお兄ちゃんだからいいって言ってるじゃん!!」
真墨「意味分からねえよ!!つーか、太ったかって聞かれたってお前・・・・」

(太ってないって言ったって、こいつ一度思いこんだら人の話聞きやしねえもんな。かと言って太ったって引導渡したって泣いて暴れるし・・・・どうせいよと!?)

真墨「・・・あ〜、その、なんつーかよ、お前胸大きくなったんじゃねえ?」
翠「ほへ?」
真墨「だからよ、成長期だろ?それで・・・その、背のびたとか、胸が大きくなったとか、そういうことじゃねえの?」

(もうヤケクソだ。ドン引きされようが嫌われようがこんな事態からはよ逃げたい)

翠「・・・そうか・・・胸が・・・身長が大きくなったのかあ・・・・」

お兄ちゃんから言われた言葉を聞いて、自分の胸を見て、思わず嬉しくなってくる。
ボクが笑顔を浮かべていると、お兄ちゃんが気まずそうに顔をそむけている。

翠「はっ、そ、そんなこと言って誤魔化されないんだからねっ!!もう、お兄ちゃんたらそんな女を手玉に取るような気障なセリフがボクに通じると思うてか!!」
真墨「バカかテメェは!?いつ誰が女を手玉にとるような発言かましたか!?」
翠「いいから先生に正直に言いなさい!!ボクは太ったか!?太りましたか!?実際に触ってつねって検証してみーや!そして真実を告白するのです!!ついでにボクへの愛の告白も!!兄妹の垣根を超えた禁断の世界へと旅立つために一歩踏み出せぇえええええ!!」
真墨「頭から煙噴き出してパニックになって訳分からないこと言ってるんじゃねえ!!!お前頭正気じゃねぇだろ!!!落ち着け−−−−−−−−−−−−−っ!」

その時だった。

香澄「大友翠!今日という今日こそ積年の恨みを果たしに参りましたわ・・・!!」

この時、香澄の視界に見えたものは。

下着姿の翠に押し倒されて迫られている真墨。どう考えたって「SYU★RA★BA♪」である。香澄の何かが「ブチン」と音を立てて切れた音がした。表情が凍りついたまま見る見るどす黒いオーラが全身から吹き出し、瞳から光が消え失せ、虚ろな瞳には憎悪や悲しみ、殺意というものがありありと伺える無表情に変わり、長い髪の毛が波打って浮き上がっているように見え、見る見る鬼のような形相に変わり、不釣り合いな唇の端を上げて歪んだ笑みを浮かべている。香澄が一歩、また一歩静かに翠たちに迫ってきている。その度に真墨の顔が「ムンク」の「叫び」のような顔に変わっていく。

香澄「・・・・マスミ、アナタタチ、ソウイウ関係デシタノ・・・・?アナタダケハ、ワタシヲ、ウラギラナイッテ、シンジテイタノニ・・・・・ユルセナイ・・・・ユルセナイ・・・ユルセナイ・・・・ユルセナイ・・・・・ユルセナイ・・・・ユルセナイ・・・」
真墨「やめろバカ!!!どう考えたってどう見たって俺は無実じゃ―−−−−−−っ!!だからそんな悪夢に出てきそうな恐ろしい顔で近付かないで!!というかどこから取り出したんだそんなバカデカいナタは!!!どこのひ●らしだ!!!綿●しは、●流しはやめて―−−−−−−−−−−−っ!!!」
香澄「翠翠翠翠翠翠翠翠翠・・・・殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!斬って縛って叩いて焼いて潰して嬲って折って徹底的に徹底的に徹底的に殺すぅううううううううううううううううううううううううう!!!」
翠「今取り込んでるんだ、邪魔するなぁああああああああああああああ!!」
香澄「死ね、死んでしまえええええええええええええええええええええ!!」
真墨「ちょっ、待て、お前ら、俺を挟んで、喧嘩、というか殺し合いするな、ギャッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!」

リビングの扉が締め切られ、翠の渾身の力を込めたパンチと憎悪と怨念を込めた香澄のパンチを両側から挟みこむように直撃を受けた真墨の叫びがゴングとなり、部屋中のものがけたたましく壊れる音、そして香澄の憎しみに満ちた怨念の叫びと翠の絶叫が響き渡るカオスな地獄が繰り広げられ、その地獄のような光景を扉から響き渡る絶叫と騒ぎから恐れて近づけない瑛子と美子が茫然と見ていた。

瑛子「・・・・真墨、生きて出られるかな?」
美子「・・・・無理だと思う」
瑛子「というか、もうこうなっては誰にも止められまい」
美子「・・・無力な私たちを許して」

二人の友人は親友であり思い人である真墨の最期を確信し、もう今の自分に出来るのは合掌して来世での幸せを祈るのみと判断したのであった・・・。

真墨「だずげでぐれ―−−−−−−−−−−−−・・・・ガクッ(気絶)」

結局数十分後、エリザベートが止めに来た時には、翠と香澄の攻撃のほとんどをとばっちりで食らいまくり、血の海に沈んだ真墨とボコボコに叩きのめされた香澄の無残な姿がリビングで横たわっており、部屋中のものが飛び散り、窓ガラスが割れ、壁には穴が開きまくり、壊滅状態と化したリビングと我に返り茫然と立ち尽くしていた翠の姿があったそうな。


真墨「・・・・・全くこれで何度目の保健室だよ」
霧子「だ、大丈夫ですか・・・?」

霧子に絆創膏を貼ってもらい、手当てを終えた真墨が全身の激痛に顔をしかめながら呟いた。そして、傍らで正座してうなだれている翠と香澄をにらむ。お互いの首には「喧嘩しません」「暴走しません」というプラカードがぶら下がっている。

真墨「・・・というか、お前ら喧嘩しないと会話すらできないわけ!?」

翠・香澄「「全部こいつが悪い!!」」「「それはこっちのセリフだ!!」」

もはや一言一句同じ、そしてもう交渉の余地がない状態。真墨は頭を抱える。

香澄「まあ、貴方のような貧相というか一見すると小学生と間違われかねない身長は小さいわ胸はもはやあるかないかわからない大平原のような胸では、真墨も振り向かないわよねえ」
翠「誰が小学生だよっ!!人が気にしていることを!!お前みたいに栄養が全部胸にいって、肝心の脳みそ空っぽじゃないんだよっ!!」
香澄「誰の脳みそが空っぽですってぇ!!」
翠「毎日毎日やられているのに学習能力もなくボクに勝負を挑んでくるところだっ!!」

そして再び向かい合い今にも掴み掛らんとしたその時だった!

二人の手を同時にとり、それを逆手にひねりあげて二人の動きが止まる!!

翠「へっ?い、いででででででででで!!」
香澄「あたたたたたたっ!!す、菫谷さんっ!?」

そう、それは霧子だった。霧子は目につかないスピードで二人の背後に回り、お互いの手を取り、見事な関節技を決めて動きを封じていたのだ。その鮮やかな動きは全く見えなかった。一瞬真墨の近くを、“風が吹き抜けたような感覚”がして、目にも止まらない動きだったのだ。しかしその時、わずかだが霧子から、黒い靄のようなものが噴出し、それが風のように彼女の全身を取り巻いていたように見えるのだ。

霧子「・・・・二人とも?もうその辺にしてください。お二人の争いのせいで真墨様が怪我をされてしまったのですから、いい加減ご自重なさいませんこと?」

ぎりぎりと手首を締め上げて今にも折らんとばかりにひねりあげて、翠と香澄が悲鳴を上げる。真墨も驚きで目を見開いたが言葉を失った。

香澄「わ、わかりましたわ!!いたたたたたたた!!ご、ごめんなさい!!」
翠「も、もう、やらないよっ!!あいたたたたたたたっ!!」
霧子「・・・・そうですか?分かりました。ですが今度やろうとするなら・・・折っちゃいますからね♪人を傷つけるための手なんてもげてしまえばいいのですし。私も、そんな手荒なことはしたくありませんわ。そうなる前に分かっていただけて・・・よかったですわ」

思わずぞっとするような言葉をいつものように柔らかい微笑みを浮かべて言い放つ霧子。そのほほえみに、真墨までもが戦慄して凍りついた。今、翠と香澄がもし意地を張り続けていたら、間違いなくその手を折ろうとしていた。そしてそれを笑いながら実行しようとする彼女の行為に、狂おしいゆがんだ感情が見え隠れしており、翠も香澄も言葉を失って顔を青ざめさせていた。しかし霧子はそんな様子にも気にすることなく、会釈すると保健室を出て行った。

真墨「・・・・・何だよ、アイツ・・・・」
翠「・・・・・怖かった・・・・・・」
香澄「・・・・あの子、笑いながら人の手を折ろうとしていた。繚乱会はあんな物騒な人をなんで置いてますのっ!?」
翠「ぼ、ボクだって、知らないよ・・・・。というか、今はやめておこう。もし霧子さんの言っていることがマジなら・・・・」
香澄「・・・え、ええ・・・・・」


保健室を出て、女子トイレで手を洗い、鏡を見る。そして霧子は静かにほほ笑んだ。いつもの柔らかい微笑みではなく、狂気を感じさせるゆがんだ笑み。瞳には底知れない闇が広がっておりその奥に冷たくぎらついた光が宿っていた。

霧子「・・・・争いのない平和な世界を作る。その為には、争いのもととなるものを、全て・・・排除すればいい。それが、正義の味方のすべきことなんですよね?シスター・サヤカ・・・・ウフフフフ・・・・そう・・・・・“僕”は・・・・正義の味方に・・・選ばれたのですから・・・ウフフフフ・・・・フフフフフフ・・・・」

熱病にかかったようなとろける瞳で、誰もいないトイレに、まるで誰かがいるように語りかけるように独り言をつぶやき、霧子は静かにほほ笑む。そしてポケットからあるものを取り出した。それは・・・・銃のパーツのようなものだった。その中には、赤いカブトムシのメダル、紫色のコウモリのメダル、そして朱色の見たこともない翼竜が刻まれたメダルがはめ込まれていた・・・!


その頃。
とある事務所ではセント・ローゼリア学園に通う現役高校生ファッションモデルの【茂手木美奈子】が、【超高校級の演出家】と呼ばれ、天才高校生演出家として業界で活躍している【白季光理】に詰め寄っていた。彼女の仕事は多岐に渡り、最近は夏に丸一日かけて放送されるテレビ番組のドラマ部分の撮影、及び毎朝八時頃に放送される連続ドラマ小説においての演出を手掛けていた。そして今回はこの夏に上映される大人気携帯小説を実写化した映画「今ドキッの女子高生恋愛日記」の演出面を手掛けていた。そして茂手木はその役者のオーディションに参加したが、落選をしてしまったのだ。その中の審査員の一人が光理だったのだ。彼女はどうやらこの結果に納得がいかないらしい。

美奈子「これはどういうことよっ!?どうしてパリコレにまで参加したことのあるこの私が落選で、他のイモのような女の子が採用なのよ!?」
光理「ですから、今度の映画ではいまどきのどこにでもいる、普通の女子高生からの視点や取り巻く環境とか、むしろ素人に近いほうがより原作のイメージに近いんです。そこを考慮して、幼稚園のころから雑誌モデルとして活躍されていて、パリコレや世界中のファッションショーに出演されている大人気の茂手木さんじゃ原作とはイメージが違うというか、今回はほかの監督さんやスタッフとの話し合いの結果、今回は縁がなかったということでして・・・!」
美奈子「この、世界一美しくて可憐でスタイル抜群の美少女ファッションモデルの!茂手木美奈子がわざわざ主演でなくてもいいからとお願いしているのよ!?本来なら主演でも務まるくらいだわ!!それが主演どころかエキストラにも入っていないですって!!?今回の映画のスタッフはどいつもこいつも目が節穴なの!?もういいわっ!!もうあんたの所には仕事は頼まないから!!」

通知書を光理にたたきつけて、美奈子が怒り狂って部屋から出ていく。

事務所から出ていき、しばらくすると彼女は突然動きが止まり、具合が悪そうに吐き気を催すように口に手を添えて、ビル近くの公衆トイレの中へと駆け込んだ。
その様子を見ていた、シエルが一人ほくそ笑んだ・・・。

美奈子「何よアイツ。今に見てなさいよ。この私が本気になれば、あんなしょぼい映画潰してやるんだからっ!!私が世界一美しい、これからもずっとモデル界の女王として君臨するのよ!!これからも永遠に美しく、あり続けてやる・・・!!」

シエル「・・・・随分とまた強い欲望だね。今回は期待できるかな?さて、君の欲望、どれほどのものか見せてもらおうか・・・!」

シエルがセルメダルを美奈子のうなじに投げ込む。そして美奈子の周囲に水柱が吹き出しみるみるその姿を異形の姿へと変えていく・・・・!!


そしてトイレを出るとそこにはアベルが立っていた。
アベル「新しい宿主を見つけたのか?」
シエル「ああ。もうそろそろケリつけないとね。これ以上戦いが長引いたらジリ貧は確定。あいつらが新しいライダーを見つける前に叩き潰しておかないとね」
アベル「カブキのヤツ、俺たちに何も言わないで出て行ったかと思えば、あんなボロボロになって・・・!これも俺たちが不甲斐ないせいだ!!あいつら、絶対潰す!!」
シエル「これ以上やられていたら、ゼロも黙ってはいないからね。今度ばかりは本気で行くよ・・・!」
アベル「今回はこいつも使わせてもらうぜ。どうせやられるならこれ使って何か起こるとしてもこのままよりはマシだ・・・!」



翌日の早朝。
翠「ということで!!ボン・キュッ・ボンなナイスバディを目指して!!ダイエットすることになりましたっ!!!」
蘭「なりました―――――――っ!!」

朝6時。イエイとハイタッチをして、翠と蘭が大いに盛り上がっていた。その近くでは眠そうにしている朱美と茉莉、さらに霧子といった繚乱会のメンバーが揃い、そして満身創痍といった全身包帯と絆創膏だらけの真墨がジャージ姿で立っていた。ここは学園内にあるトレーニングセンター。広大な学園内に設けられたスポーツジムのような設備が整っている建物である。

翠「目指せボン・キュッ・ボン!!最初から徹底的にクライマックス!!第1回絶対失敗してはいけないダイエット塾――――――――――――!!!」
朱美・蘭「「イエ―――――――――――――――イ!!」」

真墨「・・・・何だよそれ」
茉莉「深くは突っ込んじゃいけないでしょ」
霧子「ア、アハハハハハ・・・・・」
翠「ルールは簡単!!これからトレーニングセンターの中で数々のトレーニングマシンを用いたアトラクションをクリアしなくてはいけません!!もし!!クリアできなければ!!とんでもない罰ゲームが待っております!!」
茉莉「というか、こんなことのために朝6時から起こされる時点で何かろくなこと起きないって話でしょう」
翠「見事このトレーニングセンターでのアトラクションを見事失敗しないように一日を乗り越えて、健康的なナイスバディを手に入れましょう!!」
蘭「OK!失敗したらとんでもない罰ゲームが待ってるぜ!!覚悟はいいかい!?」
翠・蘭・朱美「「「イエ―――――――――――――――――――イ!!!」」」

もう嫌な予感しかしない。トレーニングセンターがもう茉莉、真墨には悪魔が待ち受けている処刑場にしか見えない。

翠「それでは、スタート!!」

そういって、先にドアを開けようとするが真墨が制する。

真墨「待って。こういうのって、何が起こるか分からない。だから、先に俺が様子を見る。お前ら、後に続けよ」

何が起こるか分からない状況において、ついいつものくせで仲間たちを守りに回してしまった真墨。そして入口を開く。すると、下駄箱があり、それを抜けると昇降口に入り、長い廊下に入った。一見何もない。真墨は赤じゅうたんが敷き詰められた長い廊下に足を踏み込んだ・・・その時だった。

ウィ〜ン・・・ウインウインウインウイイン!!!(廊下が急に後ろに下がりだす音)

突然真墨の視界が横に流れだし、なんと廊下がルームランナーと化しものすごい速さで真墨が流されていく!!

真墨「だあああああああああああああああああああっ!!?」

真墨が思わず踏ん張る!しかし突然壁が開き、巨大な扇風機が飛び出すとものすごい回転をして強烈な風を放出する!!その風に耐え切れず、真墨がよろめいて転げまわる!!

真墨「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」
そしてそのまま後ろにあるドアが開き、その中にあった巨大な浴槽の中に落ちた!!

真墨「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」

中には熱湯が入っており落ちた直後、悲鳴を上げて飛び上がり、浴槽から這い出して床に転がる真墨の無残な姿があった・・・!!

翠「廊下全体がルームランナー!!急いで走りスイッチを押さないと扇風機で吹き飛ばされて後ろにある熱湯風呂に落ちる!!超デンジャラス・ルームランナー!!その名も・・!」

そこへアスカが飛び込んできた!!

アスカ「明日をつかむために走れ!!ビクトリーロードである―――――――っ!!!途中でくじけて倒れたものには熱湯地獄という罰ゲームが待ち受けているのであるっ!!」
茉莉「あんたか、こんなバカなもん作ったの!?」
蘭「これ面白そう!!ボクやってみたいぞ!!アンタセンスあるじゃん、気に入ったよ!!」
アスカ「フハハハハハハ!!ボクのマッドで美しい芸術的発明が分かるとは愛いヤツよのお!!可愛がってやろう!!!もっと褒めたまえ!!たたえたまえ!!!この天才的なマッドサイエンティストの!!ドクタァアアアアアアアアアアアアア!!シェオロを『死ねやバカヤロ――――――――――――ッ!!!』ごぺぱあっ!?」

真墨が飛び出し、アスカの頭部にローリングソバットをかまして吹き飛ばす!!

真墨「殺す気か!殺す気かあ!?おいこら!!!」
茉莉「ダイ(die)エットとは、本当に命かけているってネタは笑えないんですけど?」
霧子「・・・でも、身体は鍛えられそうですねえ」
朱美「・・・そりゃあね。これだけやればいるだけで身が細る思いでしょうし」

そういって、朱美がトレーニングルームの部屋を開ける。全員ちゃっかり真墨が倒れて、ルームランナーが止まっている間に急いで移動していた。真墨も満身創痍の体を引きずって、文字通り腹ばいに移動して這ってきた。

真墨「お前ら本当にいい度胸してやがる・・・・!!」

その時だった。

朱美「きゃああああああああああああああああ!!」

朱美が悲鳴を上げる。見ると、部屋中の床がトランポリンとなっており、踏み込んだ瞬間天井高くまで飛び上がり、ポンポンと空中を舞うように飛び跳ねている朱美がいた!!

アスカ「ふむ、これはジャンプ力を鍛えるための、一室床張りの超強力トランポリンであるな!!天井にはぶつからないようになっておるぞ!!体操部の連中がトランポリンの競技で鍛えるための部屋じゃ!!ちなみにここでは3分以内に部屋の奥の解除ボタンを押さないと・・・・!」
朱美「あっ、これ!?」
朱美が押すと、部屋の床が戻り、朱美がしゃがみこむ。そして朱美が出てきた。

アスカ「さすがは学年最高位の運動神経の持ち主であるな」
朱美「それほどでも。それで?どうなるのかしら?」

その間に真墨が入っていった。そして、アスカがスイッチを取り出す。

アスカ「こうなるである」

スイッチを押すと、突如天井に蜘蛛の巣が張られて真墨がくっついたまま動けなくなる!!そして、蜘蛛の巣から無数のクモ型メカが飛び出し、真墨の体に入り込んでいった!

真墨「や、やめっ、キャハハハハハハハハハハ!!!ヒーッヒーッ!!!く、苦しい、ギャハハハハハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

体中をくすぐられて真墨がじたばたと逃れられない状況で爆笑していた。その光景を見て、全員が絶句する。

翠「・・・・蜘蛛は怖いからやだな」
茉莉「そういう問題か!?」
蘭「アハハハ、でも、なんだか楽しそうだね!!」
朱美「そうね。特に真墨が悲惨な目に遭っているから、もう最高!」
真墨「殺すぞ、テメェ・・・!!アハハハハハハハハ!!!ゲホッゲホッ・・・」
霧子「あらあらまあまあ・・・」

茉莉「・・・あ〜、アタシトイレ行ってくる」

そういって、こっそりと茉莉が抜け出した。むろんトイレなわけがない。トイレに行くふりをして体育倉庫から出て、そのままトレーニングセンターから足早に立ち去った。

茉莉「あのままじゃ真墨がブチキレて大暴れ、ダイエットは中止、あいつらも懲りるでしょう。もう付き合ってられないって」

その時だった!!

茉莉の持っているデバイスが反応したのだ!!この近くにヤミーが出没したのだ!!

茉莉「チャンスだね。といっても一人じゃ無謀だね。武田さん、上杉さん、呼ばないと」
茉莉が移動する!その様子を、静かにみている人物がいた。それは・・・霧子であった。

霧子「・・・・まさか、茉莉様も?」


騒ぎは繁華街で起きていた!!ショッピングモールで買い物をしていた買い物客たちは突然の来訪者に慌てふためき、パニックとなって我先に逃げだし、込み合っていた。そしてエビヤミーの槍から放たれる泡を受けてショッピングモールが次々と破壊されていく!!
そして逃げ惑う客の中に若い女性の姿があった。それを見ると、エビヤミーが女性の前に立ちはだかり、胸ぐらをつかんで動きを封じた!!そして右手から泡を吹きだすと、彼女の顔が見る見る真っ白になり、やがてその顔から何か光るものを取り出し、それを飲み込んだ!!

茉莉「やってくれてるね・・・!」

瑛子「はあああああああっ!!」
瑛子が刀を抜いて切りかかる!!エビヤミーが退き、人質を無事抱き上げると後ろに追いやり蹴りを繰り出す!!

美子「大丈夫ですか!?きゃああああああああああああああ!!か、顔が!!」
茉莉「どうしたの!?」

茉莉があわててその女性の顔を見ると、何と真っ白な仮面を取り付けられたように顔がなくなっているのである!!

茉莉「アンタ、一体何をした!?」
エビヤミー「この世界で一番美しいのは私。この世界のほかの女性はその美貌をすべて私に捧げるのよ。そして私は永遠の美貌を手に入れる。これさえあれば、世界中のだれもが認めて平伏し、虜にできる!!」

つまりこのヤミーは女性を襲い、美貌や顔を奪ってそれを自分の美しさに取り込んでいるのである!!

瑛子「最悪だな。自分が美しくありたいばかりに人を襲うか。この下郎が!!」
美子「茉莉ちゃん!瑛子ちゃん!!来るよ!!」
茉莉「行くよ!!」

3人が横に並び、それぞれ変身アイテムを取り出して構える!!

「「「変身!!」」」

茉莉の姿が仮面ライダーテティスに、そして瑛子が仮面ライダーファング・ライムフォーム、美子が仮面ライダーファング・シェリーフォームに変身する!!

テティスが飛び出し、テティスドライバーで攻撃を繰り出し、さらにライムフォームがライムスラッシャーで切りかかっていく!!その間、シェリーフォームが屑ヤミーを切り裂きながら逃げ惑う市民たちを安全な場所まで案内していく!!人気のなくなったショッピングモール、エビヤミーが長槍を振り回し、ライムフォームとテティスの攻撃をかわしながら泡を発射して翻弄する!!泡は受けると爆発する!!泡をよけるが、ショッピングモール内のものが次々と破壊されていく!!

エビヤミーは超硬度の甲冑をまとい、攻撃などびくともせず、槍でさらに攻撃を繰り出していく!!

ライムフォーム「かなり硬いな・・・!だが!!この一撃で砕いてやる!!」
ライムスラッシャーを構えてセルメダルを3枚投入すると、金色の光が3枚の刃に宿り、まぶしい光を放つ!!そして一気に駆け出し、光の弾丸と化したライムフォームが突進し、大振りで力強い一撃を放った!!斬撃を受けたエビヤミーは吹き飛ばされる!!さらにそこへメルクの力で強化された槍を突出し、エビヤミーがたじろいだ!!すると背後から無数の赤いどくろの形をした悪霊が弾丸のように発射されて、それが直撃し、エビヤミーが悪霊によって動きを封じられる!!

シェリーフォーム「動けないうちに宿主を!!」
テティス「OK!」


その時であった。

突如前から赤い光弾が数発発射され、それがエビヤミー、ライムフォーム、テティスに直撃し大爆発を起こした!!予測していなかった攻撃に全員が吹き飛び、たじろいだ!

テティス「な、何・・・!?」
ライムフォーム「・・・誰だ!?」
エビヤミー「・・・・ぐっ・・・・!!」

すると、光が差し込んでいるショッピングモールの奥から、足音が聞こえてくる。そしてその人物がようやく姿を現した・・・。

赤を基調とする翼竜の中でも最大級の大きさと凶暴さを持つ・ケツアルコアトルをイメージしたアーマーと仮面に身を包み、バイオレットの妖しい光がアイライトに灯っている。そして手にはライフル型の武器が構えられていて、無慈悲な銃口をこちらに向けている。そう、まるで自分が狙撃したといわんばかりに。そして、テティスたちの前に現れると、銃口を向けたまま、もう片方の手で十字を切るしぐさを取る。

「エイメン」

そして一気に銃口から無数の火炎弾を発射してきた!!火炎弾は当たると大爆発を起こして、エビヤミーが直撃を受けて吹き飛んだ!!さらに次々と銃弾を発射してテティス、ライムフォーム、シェリーフォームに襲い掛かっていく!!灼熱の火炎弾の猛攻にもはやよけるのが精いっぱいだが、正確無比な射撃は彼女たちのアーマーを直撃し、容赦なく破壊していく!!

テティス「きゃああああああああああああああああ!!」
ライムフォーム「うわあああああああああああああああ!!」
シェリーフォーム「きゃあああああああああああああ!!」

3人のライダーのアーマーの所々が爆発し、呼吸さえもできなくなるほどの激痛が全身を襲う。しかし動けなくなった3人にもその謎のライダーは容赦なく銃口を向けた。とどめを刺さんとばかりに。その瞳にはもう迷いもなく明らかに彼女たちを殺そうとしていた。

そのライダー・・・【仮面ライダーディオネ】は無慈悲かつ非情な処刑を執行しようとしていた・・・!!

続く
,新年あけましておめでとうございます。作品がどう書けばいいのか分からず、遅くなってしまい申し訳ございません。今年はもっと早い投稿ペースで頑張ります。今年もよろしくお願いいたします。さて、今回不穏な動きを見せ始めた菫谷霧子、そして第5のライダー・空の騎士である「仮面ライダーディオネ」が遂に登場しました。しかし彼女はなぜテティスたちまで襲うのか、彼女の目的は何なのか、彼女の正体は誰なのか、これからの物語、ディオネの存在が第3勢力としてライダーやグリードたちを倒そうと動き出します。今後とも応援よろしくお願いいたします。

レスをお返しします。遅くなって申し訳ございません。

>烈様
>シャナツネ
「そうだな。しかし、アスカ嬢自身も性別が変換する薬になるとは思わなかったようだな。実際のところ、どんな感じの薬になると思っていたのだ?」

アスカ「・・・有無、実は、全く何も予想できなかったのだっ!!!フハハハハ!!何が起こるかわからんから発明も人生も面白いものではないか、シャナツネ君よっ!!!君もいつか実験の機会があったら私の実験台になりモルモットになりさせてあげようっ!!ボクが切り開く新しい世界の幕開けの第一人者になるであるぞっ!!」
メイ「要は真墨は実験台だったのか。何が起きるか分からないものを飲ませたのか」

>んでもって、最終的なとばっちりを受けてしまう真墨さん……。本当に運が悪いですな〜……。ところで、何時頃に正気に戻って、【HW】のクリスとクロキバに連絡をしていたんですか?

暁「・・・実は明け方ごろには、な。つまり17話から18話になるまでには回復していて、こっそり電話しておいたんだ。それだけ時間があればクリスもクロキバも落ち着いて話の整理ができるからな。本当、こういったトラブルがあっても立ち直りが早いって徳だか損だか分からないもんだ。それで、誰が犯人か調べるためにおかしくなった演技をしてたってわけ」

>クロキバT世
「……しかし、霧子殿は一体、何者なのだ? 『ハスヤミー』の分身体を討ち滅ぼしてしまうだけの戦闘能力に、“青い炎”と“黒い風”を操るという異常さ……。その上、歴戦の戦士であるといってもいい【HW】の冷牙達三人の瞬時に奪ってしまった辺り、とんでもないぞ」

さらに今回、彼女の知られざる一面が発覚。彼女にとって「正義」とは、「平和を脅かすものを徹底的に排除すればいい」といったあまりにも極端で力任せかつ独善的な価値観で物事を推し進める傾向があるようです。しかしそれは決して揺らぐことのない自分の信念を貫くことこそが結果的に平和をもたらすのであれば少数の犠牲にも構わずに自分の正義を貫き通す、まさに「矜持」を貫くことにより「希望」をもたらすわけですな。しかし真墨や翠はこういった相手が大嫌いなので、衝突は免れないかもしれません。

>まあ、離れて暮らしていたということもあるんでしょう。尊敬してるところが多い兄に認められたいというのも、そういったところから来ているのかもしれませんね。そのことが原因で……宇津保さんとのいざこざが起っていると言ってもいいでしょうな……(苦笑)

今回さらにそれが原因で大暴走。こっちの世界の翠は暁のことを憧れのお兄ちゃんとして尊敬し、子供のころは「お兄ちゃんのお嫁さんになる」と夢を願っていたようです。そんな翠と大親友として尊敬している香澄との間の板挟みとあれば真墨も大変です。

さて、今回なのですが、今回から「宇津保香澄(エンヴィー)様」、そして「武田瑛子」「上杉美子」も感想に入れてもらってもよろしいでしょうか?本作品を見て、烈様のイメージで思った通りでいいので・・・よろしくお願いいたします!!


,#000000,./bg_f.gif,210.143.129.158,0 2013年11月22日(金) 21時01分06秒,20131122210106,20131125210106,ocKm77oei7xgM,仮面ライダーワルキューレ Mission18,鴎,,,Mission18「激流の防護兵!スプラッシュフォーム!!」

さて、あの衝撃的すぎる前回の最後より時間は過ぎて、翌日の早朝5時半・・・・。

翠「・・・・・・一睡も出来なかった」
リビングの床で上半身だけ起こした状態で、眼の下に黒く濃いクマが浮かび上がり、疲弊し切った様子で翠はため息とともに重苦しい一言を吐いた。そして目線の先には床に座り込んで焦点があらぬ方向を向いて不気味な笑みを浮かべながらブツブツと何かをつぶやいている真墨の変わり果てた姿があったからだ。髪は真っ白になり、はだけたパジャマの胸元は女性特有の豊かなふくらみがあり、丸みを帯びた女性の身体つきになってしまった真墨はもう現実を受け入れることが出来なくなったのか、放心状態となってしまっていた。

真墨「アハハハ・・・・・アハハハハハ・・・・・アハハハハハハ・・・・(崩壊中)」
翠「・・・・・・・・・・・・・・・・まさかこんなことになるなんて」

翠はかなり落ち込んだ様子で頭を抱え込む。真墨が女性になってしまったばかりか、変身まで出来ない状態にまでなってしまい、完全に精神が崩壊してしまったという最悪の事態を迎えてしまった。もうどう対応したらいいのか分からなくなり混乱していた。

翠「・・・・まさか、こんなことになるなんて・・・・そんなつもりなかったのに!」

翠は昨日のことを思い出す。

(回想)
シェオロが置いていった真墨の女性への苦手を克服させるための薬を見て、翠は「どうせろくでもないものだろう」と確信していた。こういう時にシェオロがまともなものを発明出来るとは到底思えなかった。もし飲んだら何かしら問題が起きそうだと翠は思った。
しかし、その薬を見て、翠に悪魔の声が囁いた・・・。

その視線の先には・・・真墨がいつも愛用していたドリンクのボトルがあったのだ。

翠「・・・・・・・・・・女の子が苦手じゃなくなる、か。まさか、飲んだら女の子になっちゃうとか・・・・?・・・・・・何さ、宇津保なんかと仲良くしちゃってさ、人の気も知らないで勝手なことばっかりやってさ!たまには、痛い目に遭っちゃえばいいんだ!」

今思い返すだけでも完全な八つ当たりだ。翠は自分自身のやってしまったことに頭をかきむしり、布団を拳で叩きつけて激しい後悔をしていた。自分はとんでもないことをしてしまった。いくらカッとなったからといって、どうして自分は大好きな兄にこんなことをしでかしてしまったのだ。あの薬のせいで真墨が女性の姿になってしまったのなら、自分は何という愚かなことをやらかしたのだ。

翠「・・・・・・・最低だ、ボク」


メイ「こンのポンコツマッドサイエンティストがああああ―――――――――っ!!!」

リビングから寮全体が揺れるほどの怒声が響き渡る。翠が慌てて階段を下りると、リビングではメイが鬼気迫る形相でアスカの胸倉を掴んで片手に持っている薬品が入っていた空のボトルを突きつけていた。近くでは瑛子、美子、茉莉、エリザベートが呆れた様子でアスカを睨みつけている。

メイ「お前はなんてことをやらかしてくれたんだ!!女性嫌いを克服するための薬がどうして女の姿になってしまう薬になるんだ!?どうしてそんなもんを暁に飲ませたんだぁあぁああああああっ!?おかげで暁が完全にぶっ壊れてしまっただろうがぁあぁあっ!!」
茉莉「女性嫌いを治すって、原因は暁の周りの女性陣の人格面に異常がありすぎるのが原因のような気がするけど」
瑛子「しかし、変身まで出来なくなるとはな。これはかなり厄介だぞ」
美子「そ、それに、暁ちゃん、まともな状態じゃないよぉ〜!!」
エリザベート「あんな暁見たことないぞい・・・」

真墨「喧嘩上等〜、どこからでもかかってこいや〜、どいつもこいつも皆殺しじゃ〜♪」

確かにここまで追い詰められた暁は見たことがない。目は完全にうつろ、不気味な笑みを浮かべて訳の分からない言葉をブツブツ言い続ける姿はもう壊れ切った美少女のなれの果てである。しかしその美貌は女性になってしまったせいか、いつもよりひときわ人の目を惹きつける退廃的な美貌と妖艶さがあった。

アスカ「ま、まさか、こんなことになろうとは。この天才的なボクの才能はとうとう性別を自在に変えられるものまで作ってしまったのかぁああああああああああっ!!天才的すぎる自分の才能に思わず興奮と震えが止まらないのであるっ!!!失敗から生まれた未知なる大発明!!転んでもただでは起きないこの執念深さと根性と熱血さとしぶとさにひれ伏すがよいわっ、愚民どもっっ!!とメガホンで屋上から声の限り大声で叫びたい気分であるっ!!!レッツ・エキサイティングゥゥゥゥゥゥウウウウウウッ!!!」
メイ「ほう、ならば叫ばせてやるよ。生涯最後の断末魔でもなぁああああああっ!!!」
アスカ「アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜ッ!!!」

メイがアスカの首根っこを掴んだまま外に出ていき、不気味な静けさがリビングに漂い出す。茉莉が携帯を取り出して電話をする。

茉莉「・・・あ、イーズさん?黄司茉莉です。こんな遅くにごめんね。ちょっと科学班に分析をお願いしたいサンプルがあるんだけど、大至急お願い出来る?うん、真墨の眼鏡の転送装置ですぐ送る。あとで、これを作った作成者を送るから、これの成分の分析と中和効果のある解毒剤の調合をお願いしたいの・・・うん、分かった。無茶言ってごめんね。お願いします」

瑛子「黄司、お前何を?」
茉莉「・・・・あんたら、本当にヴァカだね。どうして誰一人解毒剤を作ろうとか、鑑識に薬品の成分の分析をお願いしようと思わないの」

その場にいた全員がようやくこの状況を打破する対策を思いつかなかったことに気づいた。

エリザベート「・・・・・・お主のいう通りじゃな」
茉莉「うちらに出来ることはカブキとヤミーが何を企んでいるのか、捜査網を敷いて居所を掴むこと。真墨だったらきっとそうする。今、真墨がこんな状態じゃうちらで何とかするしかないよ!」
瑛子「・・・そうだな!」
美子「うん!」

そして茉莉がテレビのリモコンを操作すると、天井から大型のモニターが出てきて、6つのカメラ画面が映し出される。この星見市の6つの区域ごとに町中に放ったメダルアニマルのカメラで撮った画像がリアルタイムで見ることができる。事件や異常を察知すると、すぐその区域の事件現場を映し出すことができるのだ。

エリザベート「学園がある【中央区】から、そう離れているとは思えないの」
茉莉「中央区を中心に捜査したほうがいいね」
瑛子「湊区、天川区、梅原区、松島区、竹原区の重要施設にもメダルアニマルを送ったほうがよさそうだな」

こうして捜査が展開されていく。しかしその中で翠だけが顔を青ざめて覇気が消えていた。

その頃、梅原区(高速道路が敷かれている河川敷側の区域)のコンビニでは・・・。

カブキ「これ、くださいな―♪」
店員「・・・は〜い、いらっさっせ・・・どわぁあああああああああああああ!!!」

カブキの後ろにハスヤミーがついている状態でレジに並んでいて、店員がハスヤミーを見て絶叫して腰を抜かしていた。

ハスヤミー「・・・・ヤハリ、ワタシハ、マッテイタホウガ、ヨロシカッタノデハ?」
カブキ「でも、ハスちゃんだって食べたいもの食べたいでしょ?はい、これ!」

夜の公園、カブキとハスヤミーが公園で、家の形をした遊具の中で夜ご飯を食べていた。コンビニで買ったサンドウィッチやおにぎりを頬張り、お茶を飲みながら話をしていた。

ハスヤミー「ミズノアルトコロニ、ワルキューレタチヲ、サソイコムノデスカ・・・?」
カブキ「うん、ワルキューレとファング、ずっと戦って来たけど、泳ぎながらじゃ攻撃出来ないし、水の上歩くことも出来ないよね。でも、ハスちゃんは水の上を歩くこともできるし、陸の上でも戦えるよね?それに建物の中だったら空を飛びまわることも出来ないから、水のある建物の中に、呼んで勝負すれば、勝てると思うの!」
ハスヤミー「・・・・・プールトカ、オフロトカ、デスカ」
カブキ「それでね、それでね、ここ、どうかなあ?」

そういって、カブキが数枚のチラシを差し出す。そこには「スパリゾート」や「屋内プールのある運動施設」などのチラシであった。

ハスヤミー「・・・ナルホド、ココヲワタシノブンシンガドウジニオソッテ、ナカマタチヲ、バラバラニスルノデスネ?」
カブキ「うん!一人一人ずつ、じっくりいこう!まずはアベルとシエルのメダルを取り戻すことが一番だけど、その為にはメダルを取り戻せるようにしないと!」

一度にまとめて倒そうとするのは、連携プレーが得意なワルキューレたちには不利だと思い、戦力を分散させて一人ずつ倒そうとする作戦は悪くはなかった。カブキがお茶を飲んで、口元をぬぐうと表情を引き締める。

カブキ「皆のメダル、取り戻してみせる!」
グリードでありながら自分自身への欲望がほとんどなく、仲間を心から大切に思い守ろうとする姿はある意味異質の存在だ。彼女は自分のメダルを取り戻すことなど考えていなかった。あくまでアベルとシエルを助けられれば二の次らしい。どこまでも純粋に他人を助けたいという姿勢はどこか危うささえ感じられてしまう。そんなカブキの姿に少し危機感をハスヤミーは感じていた。


翌日。
2年4組。結局真墨は放心状態のまま翠と茉莉に手を引かれて学校にたどり着き、教室で相変わらず心あらずといった様子で座りこんでいた。今日は移動教室の授業がなかったことが奇跡的に幸運といえる。翠は授業が終わるたびに、休憩時間に真墨の様子を見に来ていた。

1時間目終了後。
「ねぇ、今日の黒薔薇様、いつもよりも何だか色香があるというか、妖艶な雰囲気ですわね・・・」
「えぇ、いつもは落ち着いていて物静かな方だと思っておりましたが、今日はあの端正な顔立ちから気品や儚さが感じられて・・・・何だか心が惹きつけられますわ」
「ああ・・・あの心をつかんで離さない微笑みを私にも向けて下さらないかしら・・・♪」

妖艶な色香が感じられるのは女性になってしまったからです。心をつかんで離さない微笑みというのは、完全に精神が崩壊してもう笑うしかないから笑っているように見えるだけです。

翠「・・・・・・・え?な、何だか聞き捨てならないことを耳にしたような・・・」

2時間目終了後。
「く、黒薔薇様!あ、あの、おはようございます!」
「きょ、今日は、いえ、今日も大変お美しいですわ・・・!」
真墨「・・・・ふふっ・・・・・おはよ〜♪」(崩壊中)
「!!(ふうっ・・・・ばたん)」
「く、黒薔薇様、私、こ、この間校内のカフェテリアで美味しい紅茶とケーキを見つけましたの。こ、今度、もしお時間がよろしかったら、ご一緒に・・・」
真墨「・・・ふふっ・・・・ふふふっ・・・・・ふふふふ・・・(錯乱して笑っている)」
「ああ・・・・・素敵ぃ・・・・・・お姉さまぁ・・・・」
「ああん、もう世の殿方なんて芥程度にしか思えなくなって来ましたわ〜♪」
「今夜、ご一緒に熱い夜をお過ごししたいわぁ〜♪」
「私の全てを捧げて差し上げたいですわぁぁあ〜♪」

翠「・・・・嘘・・・・まさかここまでもてるなんて・・・・・」

3時間目終了後。
瑛子「・・・・美子、何だか真墨の周り、妙に女の子たちが集まってないか?」
美子「何だか、今日の真墨ちゃんがいつもより綺麗だって、クラスどころか他のクラスからも真墨ちゃんのファンが押しかけてきているみたいだよ」
瑛子「・・・・といっても、20人以上はいるぞ。アイツ、女性になってしまってもあんなにもてるのか?」
美子「・・・まあ、真墨ちゃんって実は結構もてるんだよね。同じ学年はもちろん、先輩や後輩からも慕われているみたいだよ。ファンクラブもあるみたい。本人は知らないみたいだけど」
瑛子「・・・・何だか面白くはない話だな」
美子「・・・・瑛子ちゃん?あ、そうか、瑛子ちゃんも真墨ちゃんのこと・・・」
瑛子「・・・そういうわけではないぞっ!!!私は!!あくまでっ!!一人の武人として!!アイツを、暁を尊敬しているのだ、それだけだっ!!私が、生涯添い遂げたいと思えるのは、あくまで香澄お嬢様だけだっ!!ま、まあ、愛人としてどうしてもとあっちが頭を下げるのであれば、考えてやらんでもないがな!!強き男に惹かれる女は多ければ多いほど見栄えもいいというものさっ!!一夫多妻というものもアイツは考えるべきなのだがなっ!!そ、そしたら、愛人としてアイツを受け入れてやるし、私もアイツに抱かれても・・・・子供を宿しても・・・!!(プシュー・・・・!<頭から煙が上がっている音>)」
美子「・・・・お、落ち着いてよぅ・・・」

香澄「・・・・・面白くありませんわね。あの子たち、真墨を誰のものだと思っているのかしら?」

美子「お、お嬢様っ!?」
瑛子「全くです、どうにも不愉快だな・・・アイツは私の友人なのだぞ・・・!」
美子「え、瑛子ちゃんも落ち着いてよぅ。あれは、真墨ちゃんのせいじゃないじゃない」
香澄「・・・・ふん、いいわ。教えてさしあげないとね。身の程知らず共に、真墨は私だけのものなんだってことをね・・・!」
美子「お、お嬢さまも落ち着いてください〜!!ど、どうしよう〜!!」

翠「・・・・お兄ちゃん・・・・あんなにもてるのに・・・・どうして彼女作ろうとか思わないのさ・・・・いつも自分はもてないとか言ってるけどさ、自覚なさすぎでしょ」

この日の真墨は、非常にもてまくっていた。クラス中の女の子はもちろん、他のクラスから真墨に会いにきた女の子からお茶に誘われたり、購買で買ってきたクッキーやお菓子、キーホルダーやマスコットのプレゼントをもらったりちやほやされていた。しかし、悔むべくは真墨が完全に意識が吹き飛んでいてこの人生のうちに何度あるかないか分らないモテ期を楽しむことすら出来ずにいたことであろう。(大体いつもこんな感じで女の子に囲まれているが本人はあくまで「うぜぇ」としか考えてない)

お昼休み。
授業が終わると同時だった。

香澄「真墨っ!!」
いきなり真墨のところに乗り込んでくるなり、香澄が真墨の腕をとり、思い切り引っ張って教室を飛び出していったのだ!瑛子と美子も何が何だか分からず、すぐ後を追う。すれ違いざまに教室に40人以上の女子生徒が教室に押しかけてきたが、真墨がいないことを知り、教室から絶叫が響き渡った。

香澄「ふん、おバカさんたち。私の友人は私だけのものですわっ。第一、貴方達のような有象無象ごときが話しかけるだけでも許し難いのに・・・」

その時だった。

翠「何やっとんじゃ、こぉの、大ブァカ娘がぁああ―――――――――――っ!!」

翠が怒りの咆哮とともに、唸りを上げて細身の身体が宙を舞い、両足を前へ繰り出す!そして、翠の必殺技・渾身のドロップキックが・・・間違って真墨の顔面に直撃した!!!

真墨「ドロップアウト―――――――――!??」

絶叫を上げて吹き飛び、廊下を転がり、とうとう壁に思い切り激突し、丸まったままぴくりとも動かなくなった。

翠「・・・・・・ボクがバカだった」
香澄「あ、あ、貴方は一体何を考えてやがりますの―――――――――――っ!!?」
瑛子「真墨!!ダメだ、完全に気を失っている!!」
美子「ほ、保健室―――――――――――――――――っ!!」

結局真墨は瑛子と美子に抱きかかえられて保健室へと担ぎ込まれてしまった。そして、香澄は翠をぞっとするような怖い表情で睨んでいた。

香澄「・・・・貴方、どういうつもりなんですの?そんなに死にたいの?貴方のことは前々から気に入らなかったけど、今は、殺してやりたいほど憎く思えますわ」
翠「・・・・・・奇遇だね、こっちもだよ。あんたが来てから、真墨がおかしくなったんだ。あんたさえいなけりゃ、こんなことにはならなかったんだ・・・!」
香澄「・・・そう、お互いに憎み合っていましたものね。今更、ということかしら」
翠「・・・そうだね」
香澄「・・・・体育館裏で決着をつけましょう」
翠「・・・どっちかが死ぬまで、だね」

お互いにらみ合い、瞳と瞳との間に火花が飛び散っているような殺気と殺気のぶつかり合い。そして、翠が首をくいっと頷き、歩き出すと、香澄もそれに続いて歩き出した・・・。
そしてその日の午後、二人は授業に帰ってこなかった。いや、放課後になって、ボコボコに痛めつけられた香澄が校舎裏の森で倒れているのが発見されて保健室に運ばれることになったそうな。そして、香澄となぐり合った体育館裏、翠も顔面を相当殴られたのか真っ赤に腫れた頬を痛そうにさすりながら冷たいコンクリートの床に寝転んでいた。香澄を殴った拳がいつもより重くのしかかっているようでならなかった。

翠「・・・・何やってんだろ、ボク」

どうしてこうも怒っているんだろう。こうして怒って何になる?嫉妬のあまりに兄にイタズラしてしまったり、香澄と殴り合いをしたり、結局ただ拳も心も痛むだけ。激しい感情が心の中で渦巻いて荒れているのに、どうすればいいのか分からない。荒れ狂った感情のままに暴れて結局何も見出していないのだ。

そう思うと、瞳が滲み出し、風景が歪んで見えだす。そして、手で目を覆い、静かに泣き出していた・・・。


その時だった。

「・・・・翠ちゃん」

ふと、声が聞こえてきた。目を開けると、そこには、銀色のロングヘアを風になびかせて、銀色の瞳を見開いて心配そうに見ている美少女が、フレスベルグイマジンが人間の少女の姿に化身した暁の相棒、クリスの姿があった・・・。


クリス「・・・・そうだったんですか。それじゃあ、真墨・・・いや暁は」
翠「・・・つくづく情けなくてどうしようもなくなりますよ。自分がまさかこんな情けなくなるとは。他人だったら一発ぶん殴ってるかもしれない」
クリス「暁と同じこといいますねえ」
翠「・・・お兄ちゃんと?」

クリス「時々いうんですよ。上手くいかなくなったとき、落ち込んでしまったとき、はたから見ている自分っていうのはどうしようもなく惨めで情けなくて何度ぶん殴っても殴り足りない、自分ってその程度の存在だったんだなって思い知らされるって」
翠「・・・・ですよね」
クリス「でも、その後言うんです。今更分かりきったことをって」
翠「へっ?」

すると、クリスの表情が真剣な表情に変わり、目の色にもこれまでに見たことのないワイルドな野性を感じられる強い光を帯びた。そして暁になりきったようにいつもとは違う力強く言葉遣いの悪い口調になってまくしたてる。

クリス「そもそも、俺は何ができるってんだ!キングだがキンピラゴボウだかチンピラだか知らないがこちとら元々ヤンキー上がりの青春思春期真っ盛りのド生意気高校生ライフを驀進中のオッペケペーでアンポンタンな俺が失敗したりドジ踏んだり悩んだりすることがそんなにおかしいことか、いや、おかしくはない。失敗は失敗、自分の失敗は自分の落ち度から来たもの。誰のせいでもない、誰に負けたでもない、俺は俺に負けてこうなった。ならば、そんなアンポンタンでオッペケペーでさらにテメェの失敗から目をそむけて落ち込んでいるウジウジした自分なんぞまずお空のかなたまでアッパーカットで吹き飛ばしてサヨナラしてから、もう一度やり直すことを始めるとしよう。失敗して落ち込んで、結局誰かの同情を引いて慰めて甘えさせてくれるのをただ待つだけのオムツもとれてない洟垂れ小僧とか誰かのせいにして世の中憎んで誰彼かまわず八つ当たりするようなボケナスとは違うということを証明できるのはテメェでしかない!!ミスはミス!!ミスを覆すような結果をこれから出せばいい!!常識くそくらえ!!ルール無用!!時間無制限!!なりふり構わず敵も味方も関係なく殴りまくーりの暴れまくりーのでストレス発散がてら悪人退治に徹底的に取り組もうじゃないか。戦争じゃぁああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!カマ―――――――――――――――ンッ!!!」

身ぶり手ぶり、まるで演劇を演じるように暁になりきり、長いセリフをまくし立てて一呼吸すると、元のクリスの表情に戻る。

クリス「以上が、去年お酒を飲んで酔っ払った暁が悪酔いして演説された自己啓発です」
翠「というかそれ完全に開き直りですよね。しかもストレス発散としてライダーやってますよね。問題ありすぎですよね」
クリス「感動しました。その時は思わず涙が・・・」
翠「あんたバカだろ!!」

というかよく一言一句覚えていたものである。さすがは暁バカ一代。

クリス「誰だって失敗はする。その失敗をこじらせてどうにもならなくしてしまうのは、結局自分でしかないということですよ。でも、その失敗にこだわらずに、今の自分が何をするべきか、まずは何も考えないで自分の心の思うままにやりたいことやってみろと、いうことですよ。落ち込んでいても何もならないなら、落ち込まないでムチャクチャな行動に出たほうが今の自分を切り開けるかもしれないということです。悩んでどうにもならないなら考えないで行動することも時に大事ですよ。自分の心の思うままに動くことも」

翠はその言葉を聞いて、毒気を抜かれたのか、あきれ果てたのか、脱力して座り込む。しかし先ほどよりはリラックスしているようにも見える。

翠「・・・・ボク、兄さんを香澄に取られちゃったと思ったの。兄さん、香澄と出会ってからいつもよりも楽しそうに笑っていた。香澄のこと、見どころがある面白いやつだって、一緒にいて楽しいって笑っていた。香澄と一緒にいたとき、香澄も今まで見たことがない優しい笑顔で笑い合っていた。兄さんは人の悪いところよりも、人のいいところが先に見つけてしまえる人だから、ボクが知らなかった香澄のいいところを先に見つけたから、ボクといつも喧嘩ばかりして、いつも嫌味ばっかりで自信満々で威張ってばかりで、そんな嫌な奴だけど、それを知っていても一緒にいたいって言っていたから、ボク、捨てられちゃったのかなって。何だか遠くに離れていっちゃうような気がしたの。そしたら、すごくそれが悔しくて、悲しくて、どうしようもなくなって・・・・」

涙を流しながら、素直に自分の心の奥にたまっていたものを吐き出していた。

翠「・・・香澄のことだってただの嫌な奴とは思ってない。兄さんが認めたヤツだもん。それに・・・綺麗だし・・・・おっぱいは大きいし・・・・女の子らしいし・・・・ボクにないもの、いっぱい持ってるよ。なのに、いつもボクには自分にないものいっぱいあって生意気だって言ってさ・・・・そんなのボクだって思ってるよ!!ボクよりも、アイツのほうが兄さんのそばにいるし、距離が近いじゃないかよ。でも、取られたくないよ。ずっとずっと離れ離れで漸く一緒に過ごすことが出来るようになったのに、取られたくないよ・・・!!」

小さいころ、いつも一緒にいたかったけどなかなか会うことが出来なかった暁。ずっと会いたかった。そばにいてほしかった。いつでもぬくもりを感じられるところにいてほしかった。兄が認めている相手がだれであろうとも、兄を取られたくなかった。奪われたくなかった。一人ぼっちになりたくなかった。

クリス「・・・・・暁はいつでも翠ちゃんのことをちゃんと見ていますよ?言葉にはしないし、あの通り誤解されやすいですけど、翠ちゃんを大切な家族として見守っていますよ」
翠「でも・・・」

その時だった。

「これが証拠だ。見てみるがよい」

そういって、空を飛んできたのはクロキバことクロノスキバット3世であった。両足で持っていた一冊のスクラップブックを翠に手渡す。

それは、翠が日本に来る前からつけられていたようだ。

読むたびに、翠の目から涙があふれてきた。そこには、翠の大好物や苦手な食べ物をどうおいしく料理するか、ドイツの懐かしい手料理の作り方、そして、休日になったらどこに遊びに連れて行こうかといういろいろな遊園地や動物園、温泉などの記事がスクラップされていたものだった。

クロキバ「・・・・アイツ言っていたよ。ドイツから帰国してまだ間もないからいろいろと大変だろうから、何か力になれないかと。アイツの笑顔が好きだから、いつでも元気いっぱいで明るくて頑張っているアイツのことを応援したいから、出来る限りのことは何でもしてやりたいと。上手く言葉にはできなくて、不器用で口が悪くてどうしようもない兄貴だけど、アイツが俺なんかもういらなくなって大人になって一人立ちできるようになるまでは、俺がしっかり見守っていてやりたいって。巣立ってしまう時が来るときは寂しくて泣いてしまうかもしれないけど、アイツが自分のやりたいこと、自分が夢中になって打ち込めるものが見つかるといいと、願っていたよ」

見ると一昨日の夜、旅行代理店で出たばかりの温泉旅行の広告が入っていた。任務が終わって疲れ果てているはずなのに、いつも翠のために何かしてやれないかと考えていた暁。翠がいつも笑顔で明るくいられるように一生懸命にやってくれていた暁。そんな暁に自分は何てことをしてしまったのだろう。涙が止まらなくなり、むせび泣いていた。

翠「・・・ボグ・・・・謝らないと・・・・・ボグ・・・・なんてことしちゃったんだっ!!お兄ちゃんは・・・・女子高で女装なんてやりたくもないこと仕方なくやりながら、それでも、一生懸命頑張っていたのに・・・!!」

クリス「・・・翠ちゃん」
クロキバ「翠」


その時だった。

Biiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!

クリスの腕時計型通信機から警報が鳴り響いた!ボタンを押すと、立体映像で血相を変えた真夜の姿が映し出された!!

真夜「クリスですかっ!?大変ですっ!!大量のヤミーが街中に現れたんです!!」
クリス「なんですって!?」
クロキバ「町中だとっ!?」

そうなのだ。

中央区のスパリゾート、湊区の温泉町、天川区の市民プール、梅原区の小学校のプール、松島区の釣り堀、竹原区の公園の池など至る所にハスヤミーが出現したのだ!!

天川区の市民プール。この日、プールでは老人ホームの水中ウォーキングが行われており、インストラクターに交じって、菫谷霧子こと青薔薇も、水中を歩く初老の男性の手を取り、優しく声をかけながらリードをしていた。そんな霧子にインストラクターの一人が声をかける。

「菫谷さん、すまないねえ。忙しいのに、インストラクターが急に休んじゃったから代役頼んじゃったけど・・・」
霧子「いえ、私でお役にたてるなら喜んでお受けしますわ」

その時だった!!

プールの水面が盛り上がり、水中から無数のツタを出現させて泳いでいた人たちをプールから投げ飛ばし、ハスヤミーが出現したのだ!!

霧子「きゃああああああああああっ!!」

「きゃああああああああああああああああ!!」
「う、うわああああああああああああああああ!?」
「ママー!!助けてぇええええええええええ!!」
「誰か、息子を、息子を助けてぇえええええええええええええええええ!!」
「殺さないでくれぇえええええええええええええええええ!!」

町が大パニックに陥った。施設の入り口にツタが生い茂り出口をふさいで、閉じ込められた人々は混乱し、絶叫し、わが身の無事を必死で叫び続ける。その様子をハスヤミーが見ていた。

ハスヤミー「キガイヲ、クワエルナト、アルジカラノ、メイレイヲ、ウケテオリマス。オトナシク、シテイレバ、ナニモシマセンヨ。タダシ、ミョウナウゴキヲミセタラ、イノチノ、ホショウハアリマセン」

ツタから電流が流れてツタを引きちぎろうとしていた人たちが次々と電流を受けて倒れこみ、悲鳴と絶叫が室内に響き渡り、ハスヤミーの無情な言葉が更なる恐怖をあおり、建物の中に閉じ込められた人々はもうハスヤミーの言うがままにおとなしくするしかなかった。こうして、町の半分以上もの住民を人質に取ったハスヤミーの無差別集団籠城作戦が執行されたのである。この騒ぎに駆け付けたライダーや邪魔者たちを少数ずつ仕留めるために。


冷牙「おい、どうなってやがるんだっ!!街中同じヤミーがあふれかえっているじゃねえかっ!!」
流水「戦力の分散を図ったのかもね。厄介だね・・・!!」
雷斗「食い止める!!」

昴「とんでもないことやらかしやがったよ!!これ、逃がしたうちらにも責任あるよね」
穏「・・・・・・部隊を分けて、全員打ち倒すしかない!!」

アリス「でもよ、親玉倒さないとどんどん増えるんじゃねえか!?」
マリア「そうですね。相手は植物。いくら分身を倒してもきりがありません!!本体を倒さないと!!」

エリザベート「大変なことになりおった・・・!!メイ、シェオロ、手を貸してくれ!!」
メイ「カブキか・・・・、あのバカが!!」
アスカ「お仕置きが必要であるな!!」

クリス「私たちも行かないと!!」
翠「はい!!」
クロキバ「行くぞ!!」

すると、そこに茉莉がやってきた。

茉莉「行くんでしょう!?アタシも行くよ!!」
翠「中央区のスパリゾート!!そこにまずは行かないと!!」
茉莉「瑛子たちはすぐ近くの公園に出た方に行くって!!」
クリス「急ぎましょう!!」

その時だった。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」

すさまじい雄叫びが響き渡り、窓ガラスが吹き飛んだ!!そして、室内から長い黒髪を風になびかせ、ワイシャツのボタンをすべてはだけて、ノースリーブのみに覆われた胸を揺らしながら裸足で真墨が飛び出してきた!!目の色はもはや獣同然に血走っており息遣いも荒い。そして、空気中の何かを嗅ぐように鼻を鳴らすと、ある匂いに感づいたのか、そのまま物凄い速さで走り出した!!!それはまるで獲物を捕らえようとする凶暴な肉食動物のそれである。そのあまりに異様な光景に全員が凍りつき息をのんだ。
真墨「ギシャアアアアアアアアアアアアア―――――――――――ッ!!!」

クロキバ「・・・ま、まさか、本能で敵の気配を感じ取り、無意識のうちに攻撃態勢に入っているのか!?」
クリス「・・・・・というか、それって、もう完全にケダモノですよね!?」
茉莉「・・・・・ヤバすぎない?変身できないのに、あんな生身で特攻しかけるなんて無謀だよ」
翠「は、早く助けないと!!!」

血相を変えて全員が飛び出す。このままでは、大量のヤミーにまさか生身で、変身できない状態で突撃するというあまりにも無謀な突撃になりかねない。真墨の命が危ない!!


翠「・・・・そう思っていた時がありました」

そして今、スパリゾートに向かった真墨を追ってきた翠はもう全身の血の気が引きそうな真っ青な顔をして信じられない光景を前に呆然としていた。クリスもクロキバも、茉莉も、瑛子と美子も、呆然と立ち尽くしている。


スパリゾートに飛び込んで視界に入った光景は・・・・。

無数に積まれたハスヤミーの無残な屍、屍、屍、屍・・・・。
地面に頭から突き刺さったもの、壁や天井に頭を突っ込みそのままぶら下がったもの、もう100体はいるであろうヤミーが全滅していた。
そして、その原因である真墨がスパリゾートに立ち尽くしていた。無傷で。

真墨「・・・・あれ?俺、ちょっとやっちゃったかしら?」

「「「「「やりすぎだ―――――――――――っ!!!」」」」」

全員が一斉に突っ込んだ。そう、精神の崩壊によりコントロール機能を失った真墨が敵の気配を察知して瞬時に攻撃態勢に切り替わり、もう彼自身ですら自分を制御できなくなった真墨はスパリゾートに飛び込むや否や、ハスヤミーに次々と襲いかかっていったのだ。常人の数百倍の怪力と持久力を誇る真墨の強力無比なパワーの凄まじさや、まさしく一騎当千、重厚な装甲を誇る巨大戦車のごとく敵の攻撃をいくら受けても怯まず恐れず突き進み、殴り、蹴り、叩き潰しまくった。そして、ハスヤミーはなんとたった一人の暴君によって全滅させられたのだった。これぞ真墨こと暁の最強必殺技「誰彼かまわず大虐殺(やつあたり)の刑」である。一度切れたらもう晶や慧ですらも止められない暴君と化すのだ。

真墨「・・・あ、そうだ、俺昨日変なドリンク飲んで、気付いたら女になってて、それから・・・あ、あれ?あれぇええええええええ!?」

そういって胸を見ると、さっきまで豊満だった胸が真っ平らになっているではないか。そして、ズボンの中を見て、ほっと一息つくと、表情が喜びに変わる。

真墨「よっしゃぁああああああああああああああっ!!戻ってるぅぅううううううううううううううううううううう!!男だ、男の身体に戻った――――――――っ!!ヒ――――――――――――――――――ハァ―――――――――――――ッ!!!!」

全身で喜びを表すかのように奇妙な踊りを回りながらはしゃぎまくる真墨。あまりのハイテンションの高さに全員が絶句する。よほどうれしかったらしい。

翠「お、お兄ちゃん・・・・」
真墨「・・・・・同じヤミー・・・・・これは全部コピー・・・・つまり本体を見つけないといけない。ヤミーからわずかに魔力とエネルギー源の何かのにおいがする。この魔力が最も強く色濃く匂う場所・・・・・・日光と水と新鮮な空気がそろっていて、なおかつ隠れて行動できるアジトのような場所・・・・あそこじゃああああああああああ!!」

そういって、真墨が暴走したように叫びだし一気に走り出した!!もう誰もついていけずあとを追いかけるしかない。

瑛子「おい!!どこに行くんだ!!」
真墨「本体の居場所にこれから殴り込みをかけるんじゃああああああああああ!!」
美子「どこだか分かったの!?」
真墨「分からん!!」

全員がずっこけた。

クリス「それでどうやって突き止めるんですかぁああああああああああ!!」
クロキバ「根拠はあるのか!?」
真墨「一つだけある。これだけたくさんの当たり障りのないハズレどもなら難なく相手にできる、でも、俺の悪運ならいきなり最初からヤバいものばかり引き当てるモンなんじゃあああああああああああああああっ!!俺の不運ナメるな、アンラッキーパワー、全開じゃああああああっ!!!!ボンバ――――――――――――――――ッ!!!」

完全に運任せであった、しかし、なぜか妙に納得してしまう翠たちだった。しかし、まさか真墨があまりにも運から見放されているとはいえ、いきなりザコではなく、ラスボス級の強力な力を持つヤバいのと遭遇してしまうのであろうか?

そして走って、翠と真墨が並んだ。翠が気まずそうに顔をそむける。しかし真墨が話しかける。

真墨「・・・・・翠」
翠「・・・・・・・・・」

そして言った。

真墨「・・・・ごめんな」

翠は目を疑った。真墨がすまなさそうに謝ったのだ。どうして真墨が自分に謝ったのか分からなかった。

真墨「・・・・お前と香澄がそこまでこじれていたなんてな。お前にも色々とあったっていうのに、俺、お前なら話さなくても分かってもらえるとか甘えていたんだ。ちゃんとお前に話しておけばよかった。お前を傷つけちまったこと、本当にすまない」

翠「お、にい、ちゃん・・・」

真墨「でも、これだけは言わせて。俺、どうしても、宇津保香澄と友達になりたい。こうして知り合って一緒にバカやってきて、すごく楽しいし、一緒にいるだけで力が出る。アイツと一緒にいると、俺が昔なくしちまった何かを・・・取り戻せるかもしれないんだ」

翠「・・・・何かって?」

真墨の表情が遠くを見つめてさびしそうに笑う。

真墨「・・・・お前は俺の友達、新海凛のことを覚えているか?俺が最初にできた友達で心から惚れ込んだ・・・愛していた女の子だ。俺はアイツを・・・・守ることができなかった。アイツが苦しんでいたことにも気づけず、神代聖を生み出してしまって自分でもどうにもできなくなって苦しんでいたアイツを、助けることができなかった。俺は・・・ずっとアイツの隣にいたのにもかかわらずだ。俺はそんな俺が今でも許せない。好きな人一人さえ守れなかった俺なんかに何が守れるって、アイツがあんなに苦しんでいるのに何でもっと早く気付けなかったのか、今でも思う。俺はアイツを見殺しにしたようなものだって」
翠「そんな・・・・!そんなこと・・・!!」
真墨「そうなんだよ、だから、俺は今自分が何のために戦えばいいのか、分からなくなっていた。人の命を守らなくちゃいけない、この町を守りたい、自分はそのために戦っているんだって自分自身にいい聞かせることで、そのために戦わなくてはいけない、自分で選んだって言い聞かせてな。でも、宇津保に会って、アイツが何度も何度もお前に負けても挑んでいく姿を見て・・・・俺、気付いたんだ。正義のためとか、誰かのためとか、それだけじゃ強くなれない。なぜならそこに、自分の心が本気で打ち込めてないからって」

義務感とか正義のため、確かに大義名分を掲げて戦うのも一つの理由だが、それはあくまで信念でも誇りでもない。一度失いかけた熱い何かを、真墨は香澄と一緒に触れ合うことで気付いたのだ。

真墨「俺は・・・一人は嫌いだ。一人ぼっちが死ぬほど嫌いだ。だから一緒にいてくれる仲間が大好きで、仲間と一緒にバカをやる時間が、世界が好きだ。それを俺が守りたいって願った。失って二度と取り戻せない命の重みを知ったから、何が何でも消えてほしくない。例えそいつが死を覚悟の上で戦うというなら、俺はそいつが邪魔だといっても何が何でも一緒に戦う。自分が何が何でもやると決めたことなら、どんな障害があっても乗り越えていかなくちゃいけないんだってアイツを見て気付いたんだ。だから、アイツは、俺にとって何があっても守りたい、大事な親友なんだよ。アイツのこと本気で好きだし、尊敬もしている。だからアイツが間違った方向に突き進もうとしたら全力で止めるし、何かをやり遂げようとするなら力になりたい。お前のために、アイツと仲良くすることを止めるなんて、お前には悪いけど、出来ない。俺が心から尊敬して、認めた人だから。守れるように強くなって、アイツを守りたいから」

真剣に翠と向き合って真墨が話す。その言葉に、真墨は自分とは違う。自分で見出した相手の尊敬するところを素直に認めて、相手の存在を受け入れることができる。ここまで真剣に向き合って思いを言われては・・・反対などできないではないか。

翠「・・・・・そうなんだ」
真墨「・・・・・ああ」
翠「・・・・・今のところ、ボクは香澄に負けているわけか」

ははっとため息をついて、両手を大きく広げる。しかし、振り返った翠の顔は何か決意を決めた表情に変わった。迷いを吹き飛ばし凛とした笑みを浮かべる。

翠「なら!!ボクは香澄なんかよりももっと!!お兄ちゃんに認めてもらえるように!!唯一無二の相棒として意識してもらえるように!!誇り高い女騎士として認めてもらえるように!!大事な人たちを守れるように!!強くなる!!」

これは正義のためとかではなく、自分の心から願う願いのため。正義や悪に振り回されることがない、自分で決めた自分自身の戦う理由。大事な人に自分の存在を認めてもらいたい!!その思いが翠の葛藤や迷いを吹き飛ばした!!

真墨「・・・・・その言葉を聞いて安心した。その決意、確かに聞いたぜ。正義とか悪に振り回されない、“自分”を心にとどめておくんだ!!」
翠「うん!!」


その様子を遠くから見ていたクリスとクロキバが安心したようにうなづきあう。
クリス「・・・うまくいったようですね」
クロキバ「暁め、本当はもっと早く意識を取り戻していたが、翠の様子がおかしかったからもしかしてと思っていて様子を見ていたら、読みが当たったからと我らに相談を持ちかけてきたときは驚いたな」
クリス「自分が下手に何かを言ったら翠ちゃん萎縮しちゃって自分の気持ちに決着つけられなくなって苦しむだろうからって、上手く聞き出してくれって言ったときは、翠ちゃんのことすごく気にかけていたんだなって思ったんです。でもお互いに気持ちを言い合ってぶつかることもあるけど、それでもちゃんと伝えなくちゃいけない時があるんですよね」
クロキバ「俺の器量だけじゃどうにもならないから、助けてくれと言ってきたときは・・・アイツも自分一人だけで何もかも抱え込むのを止めて、誰かに助けを求めることをできるようになったかと嬉しくなったものだがな」

そう、翠が自分の気持ちに整理をつけて、自分自身と向き合えるようにするために、ずっと前に正気を取り戻していた真墨がクリスとクロキバに相談を持ちかけていたのだった。そして真墨はおかしくなった演技をして様子を見て、クリスとクロキバが見事翠の気持ちを聞き出し、翠が自分自身の間違いに気付き、再び自分に自信を取り戻せるように仕掛けたのだった。



そして二人がやってきたのは、自然公園の植物園の中にある休憩広場であった!!そこに飛び込んできたのはカブキとハスヤミーの本体であった!!

真墨「やっぱり引いたぜ、大当たりだ!!」
翠「・・・大した悪運ですこと!!」


結界を展開し、翠がメダルを手に取り、真墨がファングトリガーを取り出す!!
その時だった。
そこへメダルアニマル、クリムゾンビートルの大群が飛び込んできた!!背中には長槍型の武器・スプラッシュスピアと、サンヨウチュウ・エビ・カニのメダルがあった!

穏音声「・・・・・翠ちゃんへ。アスカがメンテナンス完了した。これ、もう使える」
長槍を取り、さらにメダルをホルダーに装てんする。そしてそれをワルキューレドライバーに装てんした!!

翠「・・・これで甲殻類の戦士だ!!変身!!」
真墨「変身!!」

翠の足元から水柱が噴出し、渦巻くように取り囲むと、その中から西洋の甲冑を着込んだ重厚な騎士を思わせるような戦士の姿に変わっていく!!

「サンヨウチュウ!!エビ!!カニ!!スプラッシュフォーム!!」

全身を爽やかな水色の甲冑に身を包んだ四番目の騎士・仮面ライダーワルキューレ・スプラッシュフォームに変身する!!ファングに変身した真墨もその姿に驚き、二人が同時にうなづくと、一斉に広場へと駆け込んだ!!

Sフォーム「そこまでだっ!!」
ファング「もうお前らの好き勝手はさせないぜ!!」

突如飛び込んできた二人の乱入者にカブキとハスヤミーが驚く!

ハスヤミー「ドウシテ、ココガ!?」
ファング「生憎運が悪くてねえ。一番最初に一番当たりたくない面倒くさいのに当たっちまった!!」
Sフォーム「さぁて、お遊びはここまでだ!!」
カブキ「お前、見たことない、誰!?」

Sフォーム「ボク?ボクは・・・激流の防護兵!!仮面ライダーワルキューレ・スプラッシュフォーム!!」
ファング「俺様もいるぜ」
Sフォーム「さあ、お遊びはここまでだ!!行くよ!!」

長槍を振り回し、水の力を宿した穂先を鋭く突き出して攻撃をハスヤミーに繰り出す!!ハスヤミーが盾を構えて槍の攻撃を防ぐ!!しかしその槍の硬さはハスヤミーの盾をはるかにしのいでおり、一撃一撃にこれまでにないダメージが次々と与えられていく!!

ハスヤミー「コイツ!?ツヨイ・・・!!」
Sフォーム「エビの突撃力とスピード、槍に宿して放つ!!!」

次々と打ち込まれる突き!!そしてとうとう盾にひびが入り、砕け散った!!そしてそのまま槍が体に打ち込まれて、ハスヤミーが吹き飛んだ!!

ハスヤミー「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

カブキ「こいつ・・・!!」
ファング「お前の相手は俺だぁっ!!今日の俺は完全にブチキレてるからよぉ・・・手加減一切できないぜぇえええええええええええええ!!」

マシンガンを乱射するカブキの攻撃を大剣ではじきながら猛然と突撃を仕掛け、強力な大振りの斬撃を放った!!カブキがよろめいたところへ突きを繰り出し、次々と強力な斬撃を踊るように繰り出していく!!その姿はまるで獲物を捕食する獣のようであった!!

そして、スプラッシュフォームが槍でハスヤミーを思い切り吹き飛ばし、地面に転がる!!

カブキ「ハスちゃん!!」

カブキがマシンガンを乱射しスプラッシュフォームに当たるが銃弾にまるでびくともしない!!重厚な装甲に覆われているスプラッシュフォームは全フォームの中で一番防御力が高いのだ!!カブキが驚いて目を見開く。そしてそこへファングが大剣で切りかかり、吹き飛ばした!!

ファング「翠!!一気に決めるぞ!!」
Sフォーム「OK!!」

ファングがセルメダルをファングトリガーに装てんしてカブキに向けて撃つと同時に、スプラッシュフォームが槍を突出し、水鉄砲を発射してハスヤミーに着弾すると青い結界に閉じ込められて動きを封じた!!そしてそこへ、ファングとスプラッシュフォームが同時に飛び上がり、ファングが右足を突出し、スプラッシュフォームが両足を大きく開いてとびかかり、ファングの蹴りがカブキに超高速で叩き付けられ、スプラッシュフォームの両足でハスヤミーを挟み込みそのまま粉砕する!!

「「ライダ―――――――――――ッ、キ―――――――――――ック!!」」

二人の同時の蹴りを受けて、ハスヤミーが全身から火花を散らせてよろめきだす!!

ハスヤミー「カブキサマアアアアッ!!!!モウシワケゴザイマセン・・・・!!」
カブキ「きゃあああああああああああああああああ!!」

ハスヤミーが爆発し、カブキも吹き飛ばされる!!しかし、炎の中からツタが伸びて、ワルキューレのベルトのホルダーのメダルをつかむと、奪い取っていった!!

Sフォーム「あ!!あいつ!!」
ファング「おいおい、しつけぇな・・・!!」

カブキを追いかけるが、姿を見失っていた。この時、ストームフォームのメダルとバーニングフォームのメダル(トゥプスメダル、アンキロメダル、オオカミメダル、シェパードメダル)を奪われてしまった・・・!!

翠「・・・ちくしょう!!」
真墨「・・・・これで本体は倒した。今はいったんそれで退くしかねえな」
翠「・・・・くっ!!」

翠が悔しそうに歯ぎしりをする。真墨がフォローするように肩をたたいた。


その時だった。

冷牙が変身した仮面ライダーヘブン・ヴォルファスフォーム、流水が変身した仮面ライダーヘブン・チューンフォーム。雷斗が変身した仮面ライダーヘブン・トーライフォームは信じられない光景に言葉を失っていた。自分たちが飛び込んだ市民プール、そこで目を疑うような光景が広がっていたのだ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・!!」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

ハスヤミーが次々と青い炎に包まれて黒こげになって動かなくなっていく光景。生きながら炎に焼かれて朽ち果てていく光景は地獄のようであった。そしてその元凶であるある人物の動きに言葉を失っていた。

その少女は音もなく素早く相手の急所に飛び込み、相手の喉元や心臓など急所に素早く青い炎を宿した手刀でまるでナイフのように切り裂き、切り口から敵を炎で包み込み焼き尽くしていたのだ・・・!!
やがてすべてのヤミーが炎に包まれて消え去り、そこには焼き焦げた跡もなく、静かなプールが広がっているだけだ。近くには気絶している人たちが横たわっていた。冷牙たちが駆け寄る。幸い、けがはない。気絶しているだけのようだ。

冷牙「おい、これ、どうなってやがるんだ・・・!?」
流水「・・・・あの子、普通の人間じゃないね」
雷斗「こっち、向いて、いるぞ!」

そう言っていると、その人物が冷牙たちに顔を向けた。思わず心を奪われそうになるほどの美少女だった。白く透き通るような肌を持ち、モデルを思わせるような美しいプロポーションを持つ青いロングヘアをなびかせている美少女だった。しかしその青い瞳にはどこか悲しげではかなさを宿しており、どこかその神秘的な魅力に吸い込まれてしまいそうな感じさえした。

「気絶しているだけです。この人たちの看病を・・・申し訳ございませんがお願いいたします」

そういうと、手をかざし、“黒い風”が部屋中を吹きすさび、やがて3人は意識を失った。
そしてその少女、“菫谷霧子”は、姿を消した・・・。


数日後の夜。
真墨「おらっ、出来たぞ!!」
すっかり元気になった真墨が回復記念ということで、コテージの前の屋外炊事場でパーティーを開いていた。繚乱会、そして宇津保軍団(真墨が呼んだ)でにぎやかに開かれたパーティーは大いに盛り上がっていた。炊事場では美味しそうなカレーと肉や野菜、シーフードの串焼き、そしてBBQコンロでは具だくさんのパエリアが何とも食欲を誘う音と匂いを漂わせている。

蘭「うんめぇえええええええええええええええええええええ!!!」
茉莉「あんたさ、レディたるものがそんなにがっつくなっての」
朱美「翠たーん♪はい、お肉食べるぅ?あ〜ん♪」
翠「アハハハ・・・・あ〜ん」
メイ「たまにはBBQで一杯っていうのも悪くはないか」
エリザベート「そうじゃな」
真墨「はいはい、ウーロン茶と野菜ジュースだけどね」
メイ「最高だ///」
エリザベート「そうだな///」
美子「これ、美味しいよ〜♪」
瑛子「まあ、なんにせよ、真墨が元に戻ってよかった」
真墨「すまねぇな。みんなに今回は迷惑をかけちまった」
アスカ「フハハハハハ、まったく気にしてないのである。気にするな!!」
真墨「お前は少しは気にしろ!!」

結局あの後、真墨は翠の決意を聞き、今回のことを珍しく許したのだ。そして今度あんなことをやったら翠にも同じ目に遭ってもらうと脅しつけてようやく事は済んだのだ。

香澄「・・・真墨、もう大丈夫ですの?」
真墨「ああ、今回は本当にすまなかった。お前にも心配かけちまった」
香澄「・・・真墨がだいじょうぶならそれでいいですわ」

そういって、真墨の横に椅子を移動させて寄り添うようにくっついてきた。まるで猫が甘えるようにとろけるような瞳で真墨を見つめている。ランプの明かりを反射する瞳が扇情的で真墨も思わず驚く。

香澄「・・・食べます?はい、あ〜ん」

そういって、ステーキ串から取り出したステーキを箸に挟んで真墨の口に運ぶ。

香澄「・・・おいち?」
真墨「あ、ああ、美味い・・・・よ///」
香澄「・・・えへへ///」

そしてそれを見た翠も真墨の隣に移動し、エビを挟んで口に運んできた。

翠「ぼ、ボクも!!あ〜ん!」
真墨「あ、ああ」

エビを口に運び、ぷりぷりとした食感を楽しむ。

翠「・・・お、美味しい?///」
真墨「・・・あ、ああ」
翠「・・・ニャハハ///」

それを見て、香澄も肉を取り出す。そして、翠も負けじと自分の皿の肉や野菜をどんどん真墨に突き出していく。真墨は二人に挟まれて身動きが取れず、ただ、口に運ばれてくる食べ物を食べ続けることしかできなかった。

朱美「・・・う・・うふふふふふ・・・真墨・・・・・私からも差し上げますわ・・・・さぁ、嫉妬と怨念が入り混じった真っ赤に焼きあがった炭でも召し上がれぁああああああああああああああああぇええええええええええええええええええ!!」

そういって、真墨が口を開けていたところへ、絶妙なタイミングでトングで投げ放った真っ赤に燃え上がる炭を放り込まれる!!一瞬動きが止まり・・・。

真墨「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!ぐ、ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!で、で、でべぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

炭で口内を大やけどして地面を転げまわり苦しむ真墨を見て、朱美は愉快そうに大笑いをした!!しかし完全にキレた真墨がとびかかり、朱美と真墨が派手な取っ組み合いとなった。髪の毛を引っ張り合い、ひっかき、殴りあう姿はもう完全にお嬢様とは思えない、小学生の喧嘩のようにも見えた。

朱美「こンの女たらしのムッツリスケベがああああああああああ――――――っ!!」
真墨「こンの色情魔のド変態バカお嬢があああああああああああ――――――っ!!」

この喧嘩をもう呆れたように見ている仲間たち。しかしその中に、霧子がいなかった。

茉莉「あれ?青薔薇は?」
蘭「うん、ちょっと着替えてから来るって」


その頃、霧子の部屋では・・・・。
霧子がベットに座り、ロケットを開いて中の写真を見ていた。何か思いつめたように真剣にその瞳からはうかがい知れない感情が闇のように広がっていた。

霧子「・・・・・・シスター・・・・・・・・」

そこに映っていたのは・・・・5年前の中学1年生の時の自分、そして傍らに映っていたのは・・・・・・・・。

透き通るような銀色のロングヘア、眼鏡をかけた知性的な顔立ちをしている、シスターの服装に身を包んでいる長身の女性・・・・。

神代聖(かみしろ・さやか)。

まるで別人のように慈愛と母性に満ち溢れた微笑みを浮かべて、霧子に寄り添うように映っていた。

霧子は瞳を閉じ、写真にキスを軽くすると、ロケットを閉じて首から下げ、部屋を出た・・・。


そしてその右手の甲には・・・・。
燃え上がる灼熱の炎のごとく赤き甲虫の紋章「希望の紋章」。
そして全てを深く包み込み飲み込まんとする闇のごとく、神秘的な紫色の蝙蝠の紋章「矜持の紋章」。この二つが合わさった紋章「忠実の紋章」が霧子に気付かれることなく静かに浮かび上がっていた・・・・!

続く!!
,さて、遅くなってしまい申し訳ございません。ようやくスプラッシュフォームの登場の第18話投稿できました。今回のテーマは「翠と暁の成長」と「戦う理由」です。私個人の主観かもしれませんが、ただ「正義のために戦う」とか「組織のために戦う」という理由で戦い、強いというのは確かに強いのですが、自分の心がその目的を受け入れているか、自分は何を思い、何のために戦うのか、そうした自分自身が願う思いのために戦うことこそが自分の弱さと向き合い、試練を乗り越えて成長につながる本当の強さだと思います。組織や正義は絶対ではない、自分をいつか裏切るかもしれない、その時、自分が立ち上がることができるための力、それこそが自分自身の思う強い願いにあると思います。今回翠は色々な経験を得て、「尊敬する兄に自分の存在を認めてもらいたい」と目標を掲げて、自分のためだけの誓いを立てることでそのために何ができるか考えるようになりました。真墨も凛の死で完全に落ち込んでいて、もうライダーとして戦えないところまで悩んでいましたが、香澄との出会いによって「自分が大好きな人たちを守りたい。死んでほしくない」と願いができ、立ち上がるのに自分に道を示してくれた香澄を尊敬していると翠に告白、これにより心からの告白に翠も心機一転し、香澄に対して「負け」を認め、香澄よりも頼れる存在になろうと元気を取り戻しました。そして暁も翠の元気を取り戻そうとこれまでできなかった、誰かに助けを求めるということをやり、クリスとクロキバを介して自身の思いを伝えて、翠を元気づけることに成功しました。これが今までの暁や翠の成長の第一歩として今回書き上げました。これからも彼女たちの成長をご期待ください。

>烈様
>礼(アスレイ)
「中学生の頃から飲酒をしていたって……; どれだけストレスが溜まってんだよ、オイ!? 原因は慧と婿殿か、及び契約イマジン共か!!?」
その可能性が高いですけど……それ以外には昴さんと穏さんのセクハラ発言や行動などもあるでしょうな……(苦笑)

暁「・・親父たちは親父たちで俺たちよりもずっと忙しいし、誰かを守るためにいつも一生懸命働いて大変だからストレスは感じてないよ。ただ、たまには家族で食事したいな。中学生の頃は、俺はいつも他人から女みたいとか言われるのが本当に嫌だった。それと、凛の姉さんが階段の転落事故で死んだショックから立ち直りきれてなくてな、その事で凛がよく悪口や陰口言われていた。そうやって陰で人を馬鹿にするヤツ、嘲り笑うヤツ、その時に撮られた動画を見てはしゃぐヤツらのことを思うとイライラしてて世界中が敵になったように思えてならなかったんだ。まあ、クリスやクロキバ、皆がそれは間違っているっていつもそばにいてくれたり、叱ってくれたから道を踏み間違えずにいられたんだ」

ちなみに酒を暁に教えたのはテレビの料理番組で「美味しいものを食べてお酒を飲んで元気になろう」という映像を見て、純粋だった暁は「お酒を飲めば元気になれる」と思い、お酒とお酒に合う食べ物を作り、それを凛に作ってあげて凛が元気になるようにと願って、一緒に晩酌をするようになったことがきっかけです。思えばこの時からもう夫婦のような感じだったそうです。そんな人を亡くしてしまい、今の暁は心が深く傷ついており、立ち直れていないのか時々悲観に暮れることもあるのです。

>礼(アスレイ)
「今まで女の子っぽい女の子と付き合ったりしていなかったせいかね?【ワルキューレ】の暁こと真墨君の場合、周囲に居たのが変態としか言えない女性が多かったしな…。あっちのクリス殿やマリア殿には悪いが……」

暁「というか、いつも一緒にいて、当たり前の家族のような感じだったからな。そばにいないと寂しいっていうか、一緒にいると落ち着くというか。昴と穏は本当にロクなことやらかさないけど、土壇場になったときこいつらのこと本当に頼りになる存在なんだよな。アイツらもなんだかんだ言って色々手貸してくれてたし、悪友って言葉がしっくりくる」

>蒼真(アスレイ)
「…いや、なんでもない……(……言えない。昔知り合いから妙な薬を飲まされて、一時的に女体化しちまったことがあるなんて……その上でコスプレをさんざんされて……(ガタガタ、ブルブル((((;゚Д゚))))))」

穏「・・・・・その時の写真、1枚300円でかなりの売れ行きだった」
昴「お前盗撮してたの!?命知らずというかなんというか・・・・」
穏「・・・・・・エロのためなら命の一つや二つ惜しくはない」
暁「あのメイド服着てたのアニキだったのかよっ!?・・・・・・俺一枚買っちまったじゃねぇか、野郎のコスプレなんか買うんじゃなかった、チクショウ(涙)」

ということなので、真夜さん、暁と穏へのお仕置き、スペシャルバージョンでお願いいたします。


次回予告
Mission19「乙女心のダイエット」
最近体重が増えてしまい、悩む翠。そしてダイエットをしようと決意をし、蘭、朱美、茉莉、そして真墨を無理やり巻き込み共にダイエットを開始する。そんな折、現役人気高校生モデルの茂手木美奈子(もてぎ・みなこ)は自分の美貌が永遠に続いて人の心を魅了することができるようにと並々ならない欲望を抱いていた。それに目を付けたシエルはあるヤミーを生み出す。そして、霧子も不穏な動きを見せていた。,#000000,./bg_f.gif,210.143.129.158,0 2013年11月07日(木) 18時28分55秒,20131107182855,20131110182855,mxWPS.StdCyog,仮面ライダーワルキューレ Mission17,鴎,,,Mission17「消えた神器と黒薔薇絶体絶命の危機」

むせかえりそうな濃厚な草木の匂いが、涼しく爽やかな風に乗って流れていく。清流の流れる音と蜩の鳴く声だけが聞こえてくる静かな世界が窓の外に広がっている。木製造りのお洒落なペンション「アネモス」の一室で、一人の少女が携帯を片手に何か話しこんでいる。シャギーを入れたウルフカットで後ろに一房だけ長いと言った独特の白髪を持ち、黒いタートルネックのノースリーブシャツの上から臙脂色のフードがついたパーカーを羽織り、ズボンを着こんだ一見どこにでもいる、眼鏡をかけた知性的な顔立ちをしたボーイッシュな美少女だ。

彼女の名前は「ギュゼル」。「鋼」の力を司る牛系生物の王たる、グリードの一体である。現在は「鬼島真(きじま・まこと)」という少女の姿に化身している。そして彼女は現在「超高校級の博物学者」として自然界に存在する動物、植物、鉱石、岩石など自然にかかわる森羅万象の研究においては高校生にして世界中の学会の研究者たちに注目されており、彼女が自然に対する知識を体系化した書物や文献、そしてそれをテーマに取り込んだSF小説、ノンフィクション小説など様々な書物は世界中の学者をはじめとする老若男女問わず多くの人々に親しまれている大人気小説家にして超天才美少女博物学者である。

真(ギュゼル)「しかしこうして数百年ぶりに君と話せる機会が出来るとはな。実に不思議な気分だ。それに、君も昔と比べると随分変わった。無論いい意味でね」
メイ『・・・・・私はそんなに変わったのか?』
真「ああ、今の君からは、生きることに希望を見出しているように思えるよ。余程今の環境が、居心地がいいと伺える。実のところ君のことは気にしていたんだ。グリードでありながら自身の欲望に疑問を抱いたり、悩んだりする君は人間のそれに近い存在だと思っていた。でも、それは私とシェオロにとってはそんな君のことは非常に興味深い存在であったよ。そんな君がずっと悩み続けていたらと思っていたが、その悩みと向き合って生きていこうとするその今の君のことを聞いて安心した。シェオロも君のことはずっと心配していたからね、まあ、ちょっと感情表現がエキセントリックで騒々しいのが難点だったが」
メイ『まあ、うるさいと思ったら容赦なく殺るし、あの騒々しさも退屈しのぎの戯れとでも考えていれば悪いものでもないな。10回のうち8回くらいだ、殺意がわくのはな』
真「どうやってシェオロを退屈しのぎの一環で処刑しようと考えることがそう悪くはないと常日頃から思っている君の思考回路もかなり物騒だがね。むしろ君の人格にも問題があるように聞こえるんだが」
メイ『そんなことはないと思うぞ?』
真「・・・・まあ、いい。もうすぐそっちに一度戻るつもりさ。その時、シェオロも一緒に話もしたい。そっちに戻る前に、シェオロを殺したりしないでくれよ?」
メイ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理』
真「思い悩んでそれかい!?一体何をやらかしたらそんな悲惨な目に遭うんだ!?」
メイ『2割がた冗談だ、テヘペロ(-.-)』
真「残り8割は本気か!?そんな棒読みで感情一切こもっていないのに茶目っ気たっぷりなことを言ってもむしろ不安を煽っているんだけど!?」
メイ『それより、ゼロが何か妙な動きを見せていると聞いたが?』
真「いきなり話題を強引に変えたか!?君の精神状態とシェオロの生存率がエライ不安要素を残しているのだが!?というか君本当にメイか!?いくらなんでも数百年の間に変わり過ぎだろう!?そんな冗談をいうようなキャラではなかったぞ!?」
メイ『冗談も覚えるさ。そうでもしないとすぐ息詰まるからな。まあ、現実逃避といってもいいんだろうけどね』
真「そんな毎日現実逃避してないとやってられない日常を送っているのかい?!あのね、まぁ、いい。手短に言うぞ。今私は長野県上田市に来ている。実は数日前、この町にある上田城の宝物館から真田十勇士が古来使っていたと言われている武具が10個全部盗まれた。それでな、調べに行ってみたら、その現場にわずかだが、ゼロの気配を感じた。そして、監視カメラのビデオをこっそり拝借して確認したら、間違いなくアイツだった」
メイ『アイツが?しかしどうしてそんなこそ泥みたいなことを・・・?』
真「どうせろくでもないことだろうな。君たちにアベルたちとかいう紛い物のグリードを差し向けたのもアイツのようだし、ここ最近の、君たちの周りで起きている事件はゼロの指示を受けたキールの指示の下で起きたものだ。しかし君たちの善戦のせいで、ゼロも重い腰を上げざるを得ない事態に陥ったのかもしれない。トリニティライダーシステムも、ようやく【ケレスシステム】と【ディオネシステム】に関する碑文の解析が済んで、参考に作った設計書をシェオロに送った。それを察して対策を練るとすると、援軍を作り出すというのが妥当な考えだろう」
メイ『真田十勇士・・・・まさかそいつらを蘇らせるつもりか?』
真「可能性はあるね。それも人ならざる異形の怪物として、だろう。ゼロのヤミーはキールと同じ死者の魂を現世に蘇らせる【死者蘇生(ネクロマンシス)】だが、その死者が生前に思い入れの強い物に魂を吹き込み、キールのようなゾンビではなく、生きている人間とほぼ変わらない状態で完全に蘇生させることができる。しかし、これはこの世における生死の定理を大きく覆してしまうまさしく究極の禁忌だ。下手をすれば古来伝承で語り継がれている【地獄門】を召喚しかねない事態になりかねない。そうなったら、この世界はもう終焉を迎えるだろう・・・・」
メイ『・・・・生きている人間が住む【現世(うつしよ)】と死者が住む【常世(とこよ)】の境界を隔てている異次元の結界【地獄門】か。それが召喚されて暴走したら、全ての理が崩壊し、無に還る・・・・・確か伝承ではそう聞いているが・・・・まさかアイツらの狙いはそれか!?』
真「・・それもどうなのだろうな。第一欲望の化身であるグリードが自身の欲望を満たすために喰らう欲望がある世界をわざわざ自分の手で破壊するなど考えられにくいのだが、もう少し調査が必要かもしれないね。またこっちから連絡する。それじゃ、またな」

そう言って、真が電話を切った。メイは電話をおき、ふうっと嘆息をついた。先ほどの話を頭の中で反芻し、メイの脳裏で思考が展開される。

メイ(確かにキールやゼロの能力【死者蘇生】【反魂】は禁忌の呪術として封印されている代物だ。生半端な術者が使えばその魂を食いつくされて自滅しかねないのだが、あの二人はその禁忌を使いこなしている。しかし、生と死の理を幾度となく覆し続けるということは、その都度代償として何かを消費しなければならないのだが・・・しかしそれを乱用し過ぎると【地獄門】が召喚され、生と死の均衡が崩れ去ったとみなされる。そして世界の均衡を正すために世界中の全てが無に還り、新しい世界が再生される。言い伝えでしかないが、もしそれがゼロの狙いだとしたら?破壊と創造、死と再生、不老不死、全知全能、永劫回帰、不可能と思われているものを支配しようとする途方もない欲望を叶えようとしているとしたら・・・?)

ゼロの底知れない欲望、それはこの世界を全て崩壊させてしまうほどの大いなる力を追い求めているのか?例えそれで世界が崩壊し、自らも滅びることになるとしても、それさえも顧みないというのか。それではまるで世界を道連れに自殺行為をしているようなものだ。しかしそんな破滅を追い求める欲望、つまり「破壊欲(デストルドー)」がゼロの欲望であるとしたら?それならばキールを使って死者を蘇らせる「死者蘇生」を繰り返し行わせているのも頷ける。例えキールがそれをやり過ぎて死者に魂を取り込まれて地獄に引きずりこまれても、全ての破滅と破壊を望むゼロならば、キールの存在など自分を満足させるための玩具でしかない。このままでは、キールは自分が心酔するゼロの思惑に気づかないまま破滅への道を歩んでいくことになるのではないか?そしてゼロは仲間であるはずのグリードまで犠牲にして何を成し遂げようとしているのであろうか。疑問が疑問を呼び、不安にかられていく。メイは煙草をくわえて火をつけると、胸のうちに溜まりゆく不安を吐き出すように白い煙を吐き出した。

メイ「・・・・・・嫌な予感がするな」


一方そのころ・・・。
翠「ふん♪ふふん♪」

翠が楽しそうに鼻歌を歌いながら足取りも軽く生徒会室へと向かっていた。

蘭「翠何だか楽しそうだな〜!」
翠「だってもうすぐプールが始まるんだもん!」

そう、身体を動かすことが大好きな翠にとって、夏の一大イベントであるプールは楽しみの行事であった。

蘭「ああ、そうだよな!夏の始まりはプールで始まり、プールで終わるというくらい、プールあっての夏だもんな!!」
茉莉「そこまで力説するほどのことではないでしょ」
翠「そう、それだよ、蘭!!(●ランチュラアンデッドのように)」
茉莉「同調しちゃうのかよ」
蘭「プールでくたくたになるまで泳いで、家に帰ってみれば・・・机の上には手つかずの宿題の山・・・・まさしく天国から地獄!!そして家族、友人、ありとあらゆる知り合いに泣きついて・・・!徹夜で宿題に取り組んで始業式の夜明けを迎えて・・・・!真っ白になって燃え尽きて感じるのさ!ああ・・・夏の終わりだ・・・いい締めくくりだよなぁ」

これまで一体どういう夏休みを過ごしてきたのだろうか。

翠「・・・いや、ボクそんな夏は嫌だな」
茉莉「・・・・・アホか」
霧子「あ、あらあらまあまあ・・・」

全くである。

霧子「・・・あら?赤薔薇様ですわ。ドアの前でどうされたのでしょうか?」

見ると生徒会室の扉の前で赤薔薇こと蘆瀬朱美が困ったように立ち尽くしていたのだ。

霧子「赤薔薇様、どうかなされたのですか?」
朱美「・・・・こんな張り紙が貼ってあったら、どうしたらいいか迷うわよ」

重厚な雰囲気が漂う扉に「入室厳禁 入ったら殺す 真墨」と筆で力強く書かれた張り紙が貼ってあったのだから。

翠「・・・・一体何をやらかしているの、あの人は」
茉莉「でもさ、何だか入ったらマジでヤバそうな空気が部屋から洩れてるよね」
蘭「・・・うん」
翠「でも、部屋に入らないと仕事出来ないよ」
茉莉「こういう時に、空気が読めないバカに先陣を切らせるのが一番なんだけどね」
蘭「こんな空気さえも読めないバカなんて・・・・・あ!」
茉莉「一人いた!」
翠「生贄にはもってこいのアホウがいたわね・・・・」


そして。
香澄「翠のヤツ、私に挑戦を挑んでくるなんてようやくやる気になったのね。『生徒会室で金属バットを持って貴様を待つ』とは、なかなかの挑戦状じゃない」

空気の読めないバカでアホウな生贄が登場。
そして香澄が何の疑いもなく、扉から発せられる部屋に入りがたいオーラをものともせず、扉に手をかけた。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

香澄の悲鳴が廊下中に響き渡った!陰で隠れていた繚乱会のメンバーたちが顔を出す。

蘭「やっぱり何かあったんだ!!」
茉莉「生贄出しといて良かった・・・」
翠「香澄、迷わず成仏してね。化けて出るなよ」
朱美「香澄ちゅわん!!何があったの、さあ、お姉さまの胸の中に飛び込んでいらっしゃぁあああぁあぁああいっ!!」

傍から聞くと何ともひどい会話である。霧子もどうしたらいいのか分らず、戸惑っている。

そして飛びこんだ生徒会室を見て、翠たちは思わず立ち止った。その部屋の中の光景を見て全身が凍りつくような異様な寒気に襲われ、目が見開いた。
香澄が腰を抜かして座りこんだ先には、異様な光景が広がっていた。

真墨「ハーラミーソ、ハーラミーソ、ソワカー、オンバサラン、ラーマー・・・」

真墨が陰陽師の衣装を着て一心不乱に不気味な呪文を唱えていた。壁には無数の御札が貼られ、変な匂いがするお香を焚き、魔法陣の上には無数の蠟燭に火が灯っていた。はっきり言って、不気味すぎる光景だ。真墨の表情は鬼気迫る迫力があり、目は完全に血走っている。

翠「何やっとるんじゃ、あんたはぁああああああああああああっ!!」

スパ―――――――――――――ン!!
翠がハリセンで真墨の頭を思い切りドツいた。

真墨「結界を踏むな―――――っ!!式神がっ、式神がっ・・!!」
翠「何を言ってるんだ、あんたはっっ!!」

いつになく真墨は取り乱している。

真墨「鬼どもに殺られる前に、悪魔に殺られる前に、運命なんかに殺られる前に、桃の木で作った霊符で奴らに呪いをかけて、皆殺しじゃぁああああああああああああああぁあぁああああっ!!テポドンじゃあああああああああっ!!パトリオットミサイルじゃあああああああああああああっ!!!」
茉莉「ありゃりゃ、こりゃまずいわ」
翠「だぁあああああああああああああああ!!真墨が壊れたぁああああああああっ!?」
蘭「お、落ち着けぇえええええええええええええええっ!!」
朱美「私に任せなさい!このスタンガンで電気ショックを与えれば落ち着くはずよ!」
茉莉「て、それ、改造してるヤツじゃん!!そんなバチバチいってるヤバいヤツなんかでやったらマジで死ぬだろっ!!?」
朱美「ちっ、バレたか。どさくさにまぎれて亡き者にしようと思ったのに・・・!」
翠「アホかぁあああああああああああああああっ!!!」
霧子「ど、どうしましょう、これ・・・・」

ブチンッッ!!!

香澄「あんたたち・・・・いい加減にしなさぁああああああああああああああいっっ!!」

香澄がキレた。ブッツリキレた。香澄が顔を真っ赤にして怒鳴り、全員が驚いて動きが止まった。そして真墨の頸動脈をキュッキュッと締めると気絶させておんぶして部屋を出ていこうとする。

翠「待てよ、真墨置いていけや、何ドサクサに紛れてお持ち帰りしているのよ」
香澄「先ほど廊下での会話、聞こえてましたわよ。自分たちの身の安全のために私をよくも利用してくれたわね。そんな身勝手な奴らなんかに真墨を、私の親友を預けられるものですか!」

その一言は繚乱会のメンバーたちに強大な衝撃を与えた!!!

蘭「し、親友・・・・?」
霧子「あらあら、まあまあ・・・」
茉莉「あ、そうなの?(一人だけ冷静な子)」
朱美「う・・・・・う・・・嘘よぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!何でっ、どうしてっ、香澄ちゅわんと、真墨なんかが、どうしてっ、なんでぇっ、ありえないっ、あってはいけないぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!わ、私というものがっ、ありながらっ、どうしてよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん・・・・・!!!(マジ泣き)」
翠「・・・・・・・・・・・・・・・・・にゃに?」
香澄「つくづくバカだらけですわね、こんなところに真墨がいたら、何されることやら。さぁ、保健室に連れて行かないと!!これで今日は失礼しますわ!」

そう言って、香澄が真墨を連れて生徒会室を出て行った。後に残された仲間達は茫然と立ち尽くしていた。嵐のように次々と信じられない出来事が起こりどうすればいいのか分らなかった。

翠「真墨と・・・・香澄が・・・・・真墨と・・・・香澄が・・・・親友ぅぅうううううううううううううううううううううううううう!?嘘だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!何で!?どうしてぇえええええええええええええええええええええええええっ!!?」

翠の混乱に満ちた絶叫が生徒会室に響き渡ったのだった。

保健室。
瑛子「相当疲れ切っているな・・・」
美子「うん・・・・・苦しそう・・・・・」

保健室のベットに寝かされた真墨が全身から汗を噴き出してうなされていた。香澄が絞った濡れタオルを額に置いた。そして冷やしたタオルで汗を拭きとっている。3人とも、真墨のことを心配しているのか、悲痛な表情だった。

香澄「・・・・・真墨・・・・・・・大丈夫だからね。何があっても私が守ってあげるからね。貴方は・・・・私の大切な友達ですもの。貴方をここまで苦しめたヤツは・・・絶対に許さない・・・・繚乱会のバカたちなんかに・・・・真墨を渡すものですか。真墨は私の・・・・私だけの大切な・・・・友達なんだから・・・!」
瑛子「お嬢様・・・」
美子「・・・・・・・」

特に香澄は真墨のことをとても大事に思っているため、彼女がこうなったのは繚乱会の面々が原因と思いこんでいるのか、繚乱会を憎んでいるかのような呪詛を吐き出す。そしてその瞳には憎悪と情念が入り混じった黒い炎が噴き出していた。


その夜。保健室でぐっすりと寝かされてようやく正気に戻った真墨がバツが悪そうに寮に戻ってきた。寮では翠が不機嫌そうに頬を膨らませて待ち構えていた。その向かいの席には茉莉が座っていた。

真墨「・・・・あー、さっきは悪い。その、昼休みに色々とあってな」
翠「・・・・・いつから、香澄と仲良くなったのさ」
真墨「そっちかよ。ああ、それはつい最近だ。遊園地の事件の後、俺が気に入ったから友達になりたいって言って、それで、友達になった」
翠「・・・・・ボク、何も聞かされてないのに」
真墨「言ってなかっただけだろ。それに、付き合ってみるとあいつ結構いいヤツだし、一緒にいると何だか安心するというか、楽しいぜ?まあ、お前は色々あるんだろうけどもさ」
翠「・・・・ふうん、そうなんですか、どうせボクと一緒にいたって迷惑かけっぱなしで楽しくなくてどーも悪うございましたねーだ!!はいはいはい、お邪魔虫は部屋にでも引き込もってますよ〜だ!!バカ――――――――――――――ッ!!!!」

そういって、翠が頬を膨らませてそっぽを向いて行ってしまった。部屋を出て行った翠の不機嫌な様子に真墨は首をかしげる。

真墨「あいつ、生徒会室でのこと、相当怒ってるのかな・・・?」
茉莉「怒ってるというか、ありゃヤキモチでしょ」
真墨「ヤキモチ?何で?」
茉莉「暁とバカドリルが友達になったからでしょ。まぁ放っておきなよ、あの性格だし一晩寝れば明日にはケロっとしてるでしょ」
真墨「・・・・今はそれしかないか。それもそうだな」

そういって、真墨がつくりおきの夏野菜のカレーをコンロで暖め直し、冷蔵庫から夏野菜のサラダを取り出し、サーモンの切り身の上に玉ねぎ、えのきなど野菜を載せて味噌と味醂、酒や塩などを混ぜ合わせた味噌だれをかけてホイルで包みオーブンで焼き上げていくと、美味しそうな匂いがリビングに漂う。翠は下りて来なかったため、茉莉と真墨は二人で晩御飯を食べることになった。一日中寝かせて味わいにコクが出た夏野菜のキーマカレーとサラダ、鮭の味噌風ホイル焼きがテーブルに並んだ。

茉莉「そういえばさ、今日どうしたのよ?いつもあんなバカやるようなあんたじゃないから驚いたよ?何かあったんでしょう?」
真墨「・・・・・・今度、水泳の授業やるだろ?それで、ちょっとヤバいことになってさ・・・」

真墨の表情がいつになくかなり落ち込んでいる。顔が青ざめていて、黒い影がどよよんと全身を覆っているように見えた。

茉莉「水泳?ああ、プールね。アンタもしかして・・・泳げないの?」
真墨「・・・違う。問題は・・・着替えなんだ」

茉莉はようやく察した。そうだ、真墨は・・・いや暁は男性だったのだ。これまでの体育の授業は空き教室や倉庫で着替えて、ジャージを着こんで何とかバレずに済んだのだが、今回は更衣室で水着に着替えなくてはいけない。たとえ、プールに行く前に着替えを済ませておいたとしても、そのプールは更衣室を通らないと中のプールにたどり着けない作りになっているのだ。教員用の出入り口をつかおうにも、体育の教師である久保田泉水(くぼた・いずみ)先生に怪しまれる可能性がある。シャイで恥ずかしがり屋で女の子が実は大の苦手な真墨にとって、女子高のプールの更衣室でほかの生徒たちが着替えをしている時にその中を通らなければならないことなど、想像するだに恐ろしい地獄の刑罰であった。ましてやそんな時に正体がバレたら、もう社会的にも生命的にも破滅である。

真墨「・・・それで、週末にさ、ついうっかり昴と穏に相談しちまって・・・・・そしたら・・・あいつら、女の子が苦手なところを治そうと言い出して・・・・プールに拉致られて・・・(ブルブルブルブル)」

どんどん声のトーンが低くなり震えてきている。茉莉はこの3か月(実際は3日間だがクロノポリスのタイムルームで外の世界で1日だと中では1か月過ごすことができる)で知り合ったルシファーズハンマーのメンバーたちと過ごしてきて、大地昴(仮面ライダーメルク)と空條穏(仮面ライダーナパーム)が性格に相当難がある問題児であることを知っていた。特に暁のことに関しては暁をからかい、弄び、イジることにこの上ない快楽を感じるという親友とはとても言い難い趣味を持っているため、暁が悩んでいて思考回路が低下していたためつい相談されてしまったら、こんなからかうチャンスを待ってましたと言わんばかりに何かやらかしたのであろう。

真墨「・・・・・気づいたら猫耳と女子用のスクール水着着せられてて・・・・・昴たちが呼んできたメイド喫茶の女の子たちに・・・・・俺を捕まえたら・・・一日中好きにしていいって言いだして・・・・・・目が血走ったメイドたちに・・・・・プールで追いかけ回されて・・・・・・・!!!ああああああああああああああああああああっ!!!!止めろ、近寄るな、両手をワキワキさせてくるな、涎をたらすな、人の身体にくっついてくるな、俺のパンツを下ろそうとするな、触っちゃ嫌だ、舐めるな、やめてぇええええええええええええええっ!!!!助けてくれぇええええええええええええええええっ!!」

思い出しただけで絶叫し、頭を抱えて床を転げまわるほどの恐怖を味わったらしい。そしてそのトラウマによって、思いつめた末にとうとう彼は苦しみから逃れるためにあんな陰陽師の恰好をして自分に振りかかる災難や災難をけしかけた昴たちを一心不乱に呪っていたのだ。茉莉は頭が痛くなってきた。必死で真墨こと暁の身体を狙って餓えた野獣と化したメイドたちから必死でプールを死に物狂いで泳いで逃げまくっている暁の光景が思い浮かんでしまう。

茉莉「・・・・ねえ、あんたたちって本当に親友なの?」
真墨「・・・・・・・・・・・・・・・一週間のうち7回は疑問に思っている」

ほぼ毎日である。

真墨「・・・それでさ、もうどうしたらいいんだろうって思って。色々と対策は練ったんだ」
茉莉「あ、考えたんだ」
真墨「・・・・輸血パック・・・・AED・・・・ザオ●クの呪文・・・ありとあらゆる治療器具や白魔術の知識や道具は準備した・・・・これだけあれば・・・・三途の川から生還出来るはず・・・」
茉莉「何で女子高の更衣室を通り過ぎるだけなのに生きるか死ぬかっていう極限的な状況に追い詰められるのさ。つか胡散臭すぎる代物混じっているよ」
真墨「・・・・それだけヤバいと思っていますから。高校生になってエロ本すら恥ずかしくて買えないほどのヘタレですから。グラビア直視出来ませんから。エロビデオ無理矢理見せられそうになったらすぐに気絶出来るスキル取得しましたから」

重症だ。まあ、あれだけの美少女に囲まれて生まれてきたにも関わらず、女の子がこれだけ苦手になるというのは、彼がいつも「女性の前では常に堂々としているのが男のつとめ」「男は硬派であるべき」「チャラチャラした軟派なことが大嫌い」といった古風な考えに囚われていることと、昴や穏による性的なイタズラを受けて散々酷い目に遭ってきたため、女性に対して恐怖心を抱いてしまったことが原因であるといえる。

真墨「それで、どうしたもんか考えてたんだよ・・・」
茉莉「つかさ、仮病使って休むとか考え付かなかったの?」
真墨「そんな時にヤミーやグリードたちが出てきたら、仮病で休んでいるはずの俺が動いていたら不審に思われるだろう?それに水泳の授業だけ休んでばかりいたら妙な勘ぐりをする生徒も出てくるかもしれない」
茉莉「潜入捜査も色々な方面から足がつかないようにするから大変だね・・・」
真墨「ましてやバレたらシャレじゃすまないからな」

複雑だねぇと茉莉はつぶやき、デザートの桃を頬張る。こんな状況なのにさらに翠が宇津保のことでヤキモチ焼いてブーたれていると来ればもう真墨の精神的負担はますます重なるばかりだろうと同情を禁じ得なかった。

その夜。
校舎の見回りに真墨と茉莉が出かけた後で、翠はリビングに下りてきた。最悪な気分だ。イライラが収まらず寝グセとかき乱してグチャグチャになったショートカットを手でかき、コップに入れた水を一気飲みした。喉が気持ち良い冷たさで潤うも苛立ちが消えない。
すると、ドアがノックされた。そして開かれて、シェオロことアスカが入ってきた。

アスカ「呼ばれてないのにじゃじゃじゃじゃ〜ん♪い〜ねぇ〜♪い〜よぉ〜♪イッツ・ア・ファンタスティック!!」
翠「・・・・アスカさん」
アスカ「何だ何だ何だ何どぇすかぁ〜♪そんな苦虫噛み潰した顔をしおって。太陽のように笑う君はどこだい♪WOW WOW♪」
翠「ちょっと気分が悪いだけです。アスカさん、それ何ですか?」

アスカが持っていた栄養ドリンクのような瓶に入った飲み物らしきものを指さす。

アスカ「よくぞ聞いてくれた!!!!これはあの小坊主の弱点を克服させるための最新発明品なのであるっっ!!!!」
翠「小坊主・・・・兄さんのこと?」
アスカ「イェェェェエエエエェェエェエエェエスッ!!あの青びょうたん(蒼真のこと)から小坊主の弱点を何とかして治せないかと相談を受けて、このボクが、汗と涙と血潮とちょっぴりの青春と愛情をこめて生み出したスーパーウルトラナイスな発明品だ!!まだ名前はない!!バーイ・アイアム・キャット!」
翠「吾輩は猫である、ですね。英語にせんでも。というか、兄さんの弱点って・・・・結構弱点多くて見当もつきませんね」
アスカ「・・・・・喧嘩でもしたのであるか?何だか、暁の話になるとどうも不機嫌度増してるようであるが」
翠「・・・・別に」

ほっぺたを膨らませてドリンクを弄んでいる姿はどうもいじけているようにしか見えない。しかしそれを見て、ふと、真墨のドリンクホルダーを見る。いつもトレーニングや夜寝る前にスポーツドリンクを入れて飲んでいる。そしてその瞳は何か思いついたようだった。

その頃・・・。
カブキは一人、セント・ローゼリア学園近くの公園まで来ていた。いつになく真剣な表情で歩いて学園に向かっている。目的はアベルとシエル、そして自分自身のメダルを取り戻すためだった。先日、シエルが帰ってこなかったことを不安に思ったカブキとアベルがシエルが向かった湊区区域を探し回っていたら、海岸に打ち上げられたシエルを発見したのであった。シエルのコアメダルはもう残り2枚しか残っていない。満身創痍でけがの回復もままならない彼女は彼女のマンションの部屋でベットに寝かされていた。アベルがシエルの看病をしている隙をついて、出てきたのである。

カブキ「シエル、ひどい怪我してた。メダルがあれば、怪我治る!カブキが守る!!」

敵であることが残念と思えるくらい、実に健気で純粋な心を持つ仲間思いな性格である。しかしただ闇雲に飛び込んでいっても倒されてメダルまで奪われてしまったら元も子もない。これまでにワルキューレたちと戦ってきて、カブキなりに学んだ戦い方を頭の中で思考をフル回転させて練り上げている。ふと、学園前の公園(アベルが生前、生徒に殺害された現場でもある)の巨大な池の前に通りかかるとそこに浮かんでいる蓮の花が浮かんでいるのが見えた。そしてそれを見て、カブキの脳裏に何かが閃いた。

その時だった。

昴「全くさ〜、冗談だって言ってるのに、くぅちゃんもマリアさんもあんなに怒るこたぁないじゃん・・・・アイタタタタ・・・・」
穏「・・・・・・・・・今度こそバレないように作戦を考えないといけない」

杖を突き、身体を引きずるように全身の激痛と悪態を訴えながら満身創痍でやってきたのは、今日暁へのイタズラがバレて激怒したクリスとマリアに町中追いかけ回され、捕まってお仕置きを喰らいまくりボッコボコにされた昴と穏の残念系美少女コンビであった。
その時、池に通りかかった時だった。

穏「・・・・・・・・?昴?あれは?」
昴「何?」

二人が見ると、そこでは怪人の姿に化けたカブキがセルメダルを自身の身体に埋め込むと、カブキからハスをモチーフとするハスヤミーが生まれた。カブキが何か指示を出すと、ハスヤミーが礼儀正しくお辞儀をする。何か行動に移そうとしているのは明らかだった。それを確認すると、昴と穏が頷き合う。そして昴が出て行った。

昴「はーいはいはいはい、こんな真夜中の公園でどんな悪だくみを企んでるのかな〜?」

カブキとハスヤミーが驚いて昴を見ると、穏がソウルトリガーを構えて後ろ側に回る。

穏「・・・・・・・・大人しくしろ。抵抗すれば容赦なく撃つ」
昴「ということで、じっくり話してくれるかなぁ?」
ハスヤミー「カブキサマ、ココハワタクシニ、オマカセヲ」
カブキ「ううん、ハスちゃんはカブキの仲間だもん。カブキも一緒に戦う。それに、こいつら、強いし、嫌な感じがする。倒さないと!」

カブキがマシンガンを構え、ハスヤミーが槍を取り出して身構えた。昴と穏が後ろに飛び上がり、同時にソウルトリガーにライダーパスを装填して二体に向けて発射する!!

「「変身!!」」

昴と穏の姿がそれぞれ、仮面ライダーメルクと仮面ライダーナパームの姿に変身する!!


そして同じ頃。
たまたまコンビニに買い物に来ていた茉莉のスマホに登録されていた、仮面ライダーに変身する資格者が変身したら半径5q以内の地域に入ったら反応するブザーが鳴る。

茉莉「マジかよ・・・!!翠と暁に連絡して、合流させないと!!」

スマホを操作して連絡をつけながら茉莉が走り出した!!


ハスヤミー「ふん!!」
メルク「うわあああああああああ!!」

ハスヤミーが突き出した槍の一撃を受けてメルクがのけぞる。さらに続けるように槍の連打が繰り出される!!メルクもメルクアックスで槍を弾きながら攻撃を繰り出すが、その攻撃をハスヤミーが左腕の巨大な蓮の葉を模した盾で防ぎ、反射された時に生じる衝撃波に弾き飛ばされ、メルクが地面を転がる!

ナパームがナパームキャノンを連射して無数の火炎弾がカブキに向けて放たれる!!それをカブキがマシンガンを連射して電撃弾を発射し相殺する!!そしてハスヤミーがもう片方の腕に装着している盾をカブキに渡す!!

ハスヤミー「コレヲ!!」
カブキ「ありがと!」

カブキが盾を装備して銃弾を弾きながら電撃弾を発射してナパームを追い詰めていく!!

メルク「随分と連携がとれてるじゃん、こいつら!」
ナパーム「・・・・あの盾かなり頑丈」

ハスヤミーの持つ盾は超硬度の頑丈さを持ち、さらに腕に装着しながら打撃用の武器として殴りかかり、もう片方の腕で持っている槍を巧みに操って攻撃を繰り出してくる!さらにカブキとハスヤミーの意志の疎通が通じ合っているため、連携の取れた変幻自在の攻撃にメルクとナパームが翻弄され、防戦に追い込まれる。しかし生み出したばかりのヤミーとここまで意志の疎通を図れるのはカブキがハスヤミーを信頼し、ハスヤミーがどんな戦い方が得意なのか、弱点は何かを瞬時に見極めて戦略を瞬時に練り上げて実行に移すことができるシエルを遙かに凌ぐ頭の回転が速い天才的戦略家の素質があるからである。しかもそれを天然で何となく感じるままに出来る上に、行き当たりばったりで引き起こした行動が何故か奇跡的に知略の深い参謀や軍師に匹敵する作戦と相似するのだ。欠点といえば、本人がまるでその素質に気付いていない超天然で脳天気な性格ということであろう。


茉莉「このままじゃやられちゃう!!やるっきゃないか!!」

茉莉が現場に到着し、右手の「思慮の紋章」が光り出すと手の中に光とともにテティスドライバーが召喚された!

「DRIVER ON」

茉莉がメダルを装填したメダルホルダーを取り出し、側面のボタンを押すと電子音が流れる。
「scanning up!メルク!セドナ!テティス!!」

茉莉「・・・・変身!!」

メダルホルダーをテティスドライバーに装填して金色と青色の紋章が茉莉の正面と背面から重なり合い、仮面ライダーテティスへと変身させる!!

テティス「それ!!」
「セドナパワー!スプラッシュレーザー!!」
そして迫りくるカブキとハスヤミーの不意を突いて、横から飛び出すと槍の穂先から水流を発射して吹き飛ばした!!カブキとハスヤミーが防御が空いていた身体の側面にもろに水流弾を食らい吹き飛んだ!

カブキ「きゃああああああああああああああ!?」
ハスヤミー「ウワアアアアアアアアアッ!!」

テティス「ブルーデンス・オブ・プロファウンス(深遠なる思慮)!海の騎士・仮面ライダーテティス!!」

名乗りを上げて槍を構えて戦場に降り立った!!

メルク「茉莉っち・・・!」
ナパーム「・・・・・・助かった」
テティス「・・・・・・何だあんたたちか。暁酷い目に遭わせたバチでも当たったんじゃない?助けるんじゃなかったかな〜、まあいいか」

するとカブキとハスヤミーがよろよろとおき上がってきた。

カブキ「新しいライダー?!お前もカブキたちの邪魔するの!?」
ハスヤミー「オマエモ、ココデ、シマツシテヤル!!」

テティス「・・・・・くくくく、有象無象の風情で高貴なる妾を始末する、とな?その無礼、万死に値するであるぞ。さあ、人生最後の舞踏会と洒落込もうぞ。操り糸が切れるまで派手に踊り、無様な断末魔を上げて狂い散るが良いわっ!!」

厨二病モードに入り尊大な態度に変わると、槍を構えて飛び出し、次々と突き、薙ぎ払い、二体同時の相手をものともせず攻撃を素早く繰り出していく!!攻撃をしながらセルメダルを器用に取り出し装填していく!!

「メルクパワー!ハードスピア!!」

槍の穂先が超硬度の硬さと重量化し、強力な打撃を放ってハスヤミーとカブキに繰り出す!しかし超重量級の打撃を受けても盾は火花を噴き出して爆発するが壊れない!!

テティス「・・・チッ、なかなかしぶといのぅ。ならば水の英霊の洗礼を受けよ!」

「セドナパワー!ウォーターウェイブ!!」

槍を地面に突き刺すと無数の水柱が地面から吹き出しカブキとハスヤミーを飲みこみ、強烈な水圧で動きを封じていく!!そしてメルクとナパームに目配りをすると二人もテティスが何を言いたいのか理解して構える。

メルク「なかなかやるじゃん。それじゃあ・・・・行くよ!!のん!!」
ナパーム「・・・・・・・・・・うむ!!」

ナパームが空中に飛び上がり全身から物凄い勢いで炎を吹き出し、巨大な火柱が発生する!そしてその中に向かってメルクが無数の剣を作り出し火柱の中をくぐり抜けると灼熱の眩しい光を放つ炎の剣が弾幕のように飛び出してくる!

「「合体奥義!!爆裂業火暴雨陣(ばくれつ・ごうか・ぼううじん)!!」」

無数の炎の剣が雨のようにカブキとハスヤミーに降り注ぎ、地面に着弾するたびに大爆発を起こし異次元空間の中の公園が炎で焼き払われ、剣により切り裂かれ、破壊されていき、所々を巨大な炎を上げて吹き飛ばす!!そして、ひとしきり攻撃が止むと・・・カブキたちがいた辺りには大きな穴が開いていた。そして二人の姿はどこにもなかった。

メルク「穴を掘って逃げたか・・・!」
ナパーム「・・・・・・・惜しい」
テティス「まだ遠くには逃げてないはずだよね。でも深追いは危ないか・・・」
メルク「こうなればどこに逃げたか調べてみるしかねーか」

そういって、メダルアニマル・サイの形をしている金色のメダルアニマルのゴールドライノスと、赤いカブトムシの形をしているクリムゾンヘラクレスを取り出し、公園の周囲に放った。

メルク「しかし、アイツらこんなところで何をやろうとしてたんだ?」
ナパーム「・・・・・・何かをやろうとしていたということしか分からない」
テティス「・・・・しかし警報が鳴っていたのに、どうして、暁と翠、来なかったんだ?」

そう、セント・ローゼリア学園から離れていないはずなのに、ヤミーやグリードが出現したはずなのに、真墨と翠が来なかったのだ。これは明らかに変だった。翠が不貞腐れて任務を放り投げるとは思えない。真墨が出る直後何かしらトラブルや不運に巻き込まれて怪我したとか動けなくなったとかは・・・可能性があるのだが(ヲイ!)

不安に駆られて茉莉がセント・ローゼリア学園に向かって行った。そして学園構内に入ると何やら声が聞こえてきた。誰かが誰かを必死で呼びかけているようだった。

見ると、噴水広場でその二人はいた。

翠「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!?どうしたんだよっ!?ねぇ、お願い!!返事してよ!!お兄ちゃん!!お兄ちゃんってばぁあああっ!!」

翠が泣きそうな声で必死に真墨に呼びかけているが、真墨の様子がおかしかった。地面に力なく座りこんで、目の焦点があっておらずどこかあらぬ方向を見ており、顔面蒼白で見るだけで正気とは思えないうすら笑いを浮かべたまま固まっているのだ。

真墨(廃人)「アハハ・・・・アハハハハ・・・・アハハハハハ・・・・」
茉莉「何これ、どうしたの、暁!?」
真墨「ある、ない、ある、ない、ある、ない、ある、ない、ある、ない・・・」
翠「お兄ちゃんが・・・お兄ちゃんが壊れたァアアアアアアアアァァアアッ!!」

そう言いながら右手は上半身の胸のあたりを、左手は下半身をさすっている。しかし奇妙な光景が広がっていた。普段はパッドでわずかに盛り上がっているはずの胸が、大きく盛り上がっているのだ。茉莉が恐る恐る真墨の胸元に手をやり、中を覗いた・・・。

茉莉「・・・・・・・・・・・・・え?ええ?ええええええええええ?」

茉莉が珍しく目を見開き口をポカンと開いて間抜けな表情になる。そしてズボンの中を見ると、さらにその表情が驚きで、まるでホラー漫画の劇画のような驚愕した表情に変わる。

茉莉「・・・・嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

茉莉が絶叫した理由、そうなぜなら、真墨の身体が・・・・。

翠「お、お兄ちゃんが、“お姉ちゃん”になってる―――――――――――――っ!!!」
真墨「・・・しかも、変身、出来ない。変身、出来ない、あ、あ、アハハハハハハハ!!」

そう、真墨こと大友暁の身体が・・・完全に女性の身体になってしまっていた上に、仮面ライダーファングに変身することが出来なくなっていたのであった・・・!!服の胸元からはみ出んばかりに膨れ上がった胸、丸みを帯びているが締まっているところは締まっているナイスバディのモデル体型となった黒髪ロングヘアの美少女となってしまった暁は、もう放心状態でただ壊れた笑い声を上げることしか出来なかった・・・・。

真墨「・・・・何でこうなるんじゃあああああああああああああああああああああっ!!!」

真墨の魂の叫びが夜の闇に虚しく響き渡った・・・・・。

続く!!

,さて、遅くなりましたが、ようやく完成しました。仮面ライダーワルキューレ第17話!今回は新しいグリード、牛系グリード「ギュゼル」が登場し、ついに動き出した幻獣系グリード「ゼロ」の計画に目をつけて、ワルキューレたちとは異なる方法で捜査を開始しました。彼女ももうすぐワルキューレたちと合流を果たすことになります。そして新しいライダーももうすぐ登場いたします!!そして今回、かなり大ピンチの展開を迎えた暁ですが、暁(真墨)と翠と香澄の3人の関係に新たなる変化が生じる回として書きましたが、恋愛表現とか嫉妬とかなかなか難しいですね。でも、今後も作品を大いに盛り上げていきますのでよろしくお願いいたします。

>烈様へ
いつも応援のメッセージありがとうございます。最新作遅くなってごめんなさい!!
>礼(アスレイ)
「……つうか……お酒は二十になってからじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!! 高校生が飲酒をしてどうする!!!!!!!!?」

翠「・・・でも、お兄ちゃんも昔は毎晩晩酌でお酒飲んでたもん・・・・」
暁「・・・・・・・・・・・・美味い食事には美味い酒が合うってか。そのくらいの楽しみがないとやってられんのよ、疲れることが多すぎてさ・・・(げんなり)」

ちなみにこっちの世界の暁は中学生のころから凛とよく飲酒していました。自分で作った料理に合うお酒を探しては食事と一緒に楽しむ趣味があります。(料理人としての素質が相当ある)でも今は学園内だし、緊急時に備えてお酒は控えています。


>例え、相手が“グリード”だろうとビビってしまうほどの気迫と信念……! それこそが暁(F)こと真墨さんの“覚悟”と言えるでしょうな。

翠(W)
「とはいえ、護り屋としては最後まで護るべき相手を命をかけて護るのは当然の姿勢と言えるだろうけど……」

イージス
「自身のことを心配してくれる人の気持ちとかも、やっぱり考えないといけないよな。茉莉ちゃんが涙を流していたわけだし……」

自分自身が一度決めた信念と覚悟に命を懸ける、それが「暁」という人間の基本的なスタイルとして書いております。ただ周りがなんて言おうと、一度自分が守ると決めたら決して止まらない、それだけ人の命の大切さを知っているからこそ守ろうと必死になるのですが、暁はもっと誰かを頼ったり、弱音を言える相手が必要なのかもしれません。いつも苦しみや悲しみを必死で押し殺して気丈にふるまっていますが、内面は自分のことを受け止めてくれる温もりを求めているのです。ただ感情表現が不器用でなかなか相手に伝わらないのですが・・・。


そして、香澄さんと真墨さんですけど……この二人がお互いの気持ちに本当に気づくことがあるんですかね?

>ネタバレになりますが、暁は香澄のことが好きになりつつあります。いつも強気で高飛車で高慢ちきで、翠への復讐のためなら何度返り討ちにあっても立ち上がる、ある意味方向性が間違っている熱血漢ですが、何度失敗してもあきらめない力強さ、そして自分に対していつも優しく気遣ってくれて、厳しく叱咤して立ち直らせてくれる彼女の存在を彼は必要としていると思い始めたのです。そして彼女をもう一人の妹のような存在として間違った方向に突き進まないように姉貴分として見守ろうとしているのです。

暁「・・・・・アスレイのエンヴィーは【百合川真墨】としての暁と、【大友翠の兄】としての暁をどう思っているのですか?ちょっと今後の作品の展開の資料としてお聞きしたいのですが・・・」


>礼(アスレイ)
「一方の翠(W)達が通っている学園ではプール開きが行われるが……女装をして通っている暁(F)にとってはやばいことではあることは間違っていないわな……。シェオロ殿は一体、何をするつもりなんだ? ここはお約束で女体化薬とかが出てくるのか?」

暁(アスレイ)
「それはそれで嫌じゃああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!?」

しかし、残念ながらそうなってしまいました。
暁、とうとう「女体化」そして「変身できない」、そして「精神崩壊」という最悪のトリプルコンボに見舞われてしまい、暁も彼の周りの人物も大ピンチに追いやられてしまいました。こうなると、暁の不幸ってある意味シャレにならない事態を引き起こすのですが、こんな不幸な事態を何度も切り抜けてきた暁と仲間たちの活躍を次回、ご期待くださいませ。
それと、今回の感想なのですが、前回ライダーに変身した「黄司茉莉」さんを登場させていただけませんでしょうか?いつも無理言って申し訳ございません。ちなみに茉莉は基本的に生意気かつ相手を突き放したような口調ですが、真墨(暁)が相手だと一転して親密で穏やかな口調になります。よろしくお願いいたします。

次回予告
「激流の防護兵!スプラッシュフォーム!」
カブキとハスヤミーはワルキューレたちからメダルを取り戻すために作戦を立てて攻めてきます。今回カブキも仲間たちのメダルを取り戻すために必死で頭を働かせて大がかりな作戦を展開します。その結果、真墨が戦闘不能な状態のワルキューレメンバーのみならず、ルシファーズハンマーのメンバーも窮地に追いやられてしまうのです。そんな折、真夜から「シエル」のコアメダルを分析して作り出した3つ目の武器が翠に託され、新たなる第4のフォーム・スプラッシュフォームに変身します!!甲殻類の特質を持つ頑丈な防御力が特徴的なライダーとなった翠の活躍をご期待くださいませ!!

,#000000,./bg_f.gif,210.143.129.158,0 2013年11月03日(日) 15時14分52秒,20131103151452,20131106151452,lD/XNb66eb456,激情版・LEANGLE-REVERSE!-Truth in the Lie-【01】,HICKY(Reformed by sui7kumo) feat.GG,,,
Suina.nakumo a.k.a HICKY presents


原案(嘘予告):LEANGLE-REVERSE! AFTER-REVERSE-STORYS!! Written by ゲロロ軍曹様









――― 激情版・LEANGLE-REVERSE! ―――




――― Truth in the Lie ―――

























――――――――――オネエチャン・・・オネエチャン



――――――――――ナガレナガレテ・・・ドコマデモ



――――――――――ソンナニオネエチャンヲモトメテイルノ?



――――――――――ダッタラ、カナエテアゲル



――――――――――ワタシニ、テヲカシテクレサエスレバ



――――――――――テトテヲトリアッテ、マジワッテ



――――――――――コンドハ、コンドコソハ





――――――――――オネエチャン・・・オネエチャン







姉さん、私は――――――――――














――― 01 REMOVE = Round × Reverse ―――














温泉旅行から5日経った、ある夏の昼下がり。


街から少し離れた火葬場の煙突から、ゆらり、ゆらり、煙が天にのびていく。

それを、学生服姿の凪介は、火葬場の入口から外に出て、静かに見上げていた。

沙菜:「・・・・・・ナギー」

凪介:「・・・・・・どうした?」

背後から聞こえる声に、凪介は振り向かずに答える。

振り向いても良かった。
でも、どうしてか、そんな気になれない。

天に向かっていくそれから目を離す事を、どうしてか憚られた。

沙菜:「始穂ちゃん、もう少ししたら戻ってくるって。ボク、咲耶ちんと帆希ちゃんとでロビーにいるから」

凪介:「・・・・・・分かった、すぐ行くよ」




――――――相川修造、享年、63歳。



発見された時点では、腹はえぐられ、顔がおびただしい血で真っ赤に濡れていたと言う。
監視カメラの映像によれば、


得体の知れぬ、白い化物


に一瞬にして命を握り潰される様が残っていたそうである。



始穂も始穂だ。

温泉街から帰り、搬送された西園中央病院の慰霊室から漏れてきた悲痛の泣き声は、
凪介たちメンバーも思わず耳を塞いだほどだ。

聞いていると、彼らまで泣き出しそうで。

しばらく立つことすら出来なかった始穂も今ではどうにか回復し、気丈に喪主を務めている。


そろそろその始穂も戻ってくる時間かと見計らって、凪介は踵を返しロビーに・・・・・・


ロビーに―――








ジリリリリリリリリリリリリッッ!!!



凪介:「はッ!?」

突然フロアー中に鳴り響くサイレン。
どこかで煙でも漏れ、火災報知機でも反応したか?


・・・・・・しばらくして、そのサイレンも止まり、軽くヒヨった凪介も落ち着きを取り戻す。



バァアアアアアンッ!!



その瞬間、遠くにあったホールへの入口が爆風と共に吹っ飛んだ!!


凪介:「・・・・・・・・・・・・え?」


急すぎて落ち着きを取り戻していた頭も追いつかず、凪介の目も白黒するばかりで。

沙菜:「ナギー!!」

するとそこに、ロビーで待機していた制服姿の3人もかけつける。

凪介:「何だよアレ!?」
沙菜:「分かんないよボクだって・・・」
咲耶:「でも、只事では・・・」
帆希:「あっ・・・始穂ちゃん!始穂ちゃんは大丈夫かなっ!?」


ビリッ


咲耶:「うくっ!?

突然、咲耶の身体に電撃にも似た痺れが走る。

沙菜:「・・・咲耶ちん?」
咲耶:「今の・・・何ですか・・・??」



≪すまない、それは我だ≫



声と共に、咲耶の背中から赤い風が舞い上がる。
それを振り払い、中から出てきたのは、巫女服を翻した、真紅の髪の“咲耶”。


クワガタのアンデッド―――ダイヤA・スタッグビートルアンデッド、サクラ。


咲耶:「『我だ』って・・・それどういう・・・?」
サクラ:≪気配を感じた。一万年前にも似た気を感じた事がある・・・来るぞ!


その途端、扉がふっとんだホールから炎が歩いて出てきた・・・・・・・

否、それは決して、単なる炎では無かった。


それに包まれているのは・・・・・・赤い身体のアンデッド!


サクラ:≪間違いない、ファイアフライアンデッドだ・・・ダイヤのカテゴリー6≫

沙菜:「カテゴリー6!?」
帆希:「なんか・・・すっごい燃えてるねっ・・・あはは・・・」
咲耶:「ほぼ全てのアンデッドが解放されたとは言え・・・こんな時に出なくても・・・!」

凪介:「ちょっと・・・アイツ、なんかこっち見てねえ?」

炎に包まれながら、そのオレンジ色の眼光は4人をしっかりを見据え、なお一層燃え上がらせる。



≪CHANGE RIDER CHALICE≫


≪SP ONE DRAGONFLY FLOAT≫




??:「ハァアアアアアアアアアアアア!!!!!



と、凪介たちの間をスレスレで通り過ぎ、アンデッドへ飛んでいく黒い影!

隙を突かれたアンデッドは飛んできた顔面キックを避け切れずよろけてしまう。
しかしそのまた隙を突かれ、黒い影の回し蹴りが顔面へまともに直撃し、遠くの防災ガラスに叩きつけられてしまった。
ものの数秒の出来事。

そしてその黒い影は4人の方へ向いてニッコリと、


カリスII:「お待たせっ☆」


凪介:「始穂・・・!?」


しかし、振り向いた先の4人は、一番離れていた帆希を除いて腰を抜かしていた。

帆希:「始穂ちゃんってば、お茶目なことをするねっ?」

沙菜:「お茶目ってレベルじゃ・・・・・・」
咲耶:「あわわわ・・・・・・」

カリスII:「何よだらしないわね・・・・・・帆希ちゃん手伝って。一気に畳み掛けるよ」
帆希:「ほいきた!」

唯一腰を抜かしていなかった帆希がポケットから取り出したのは、メタリックシルバーの定期入れ――もとい、ライダーパス。
呼応するかのように、彼女の腰にスロットドライバーが装着され、挿入口を開けて待ち構えている。


帆希:「いっくよーっ!変身っ!!


≪CHANGE RIDER STEILE≫


ライダーパスがスロットドライバーに差し込まれると、ライダーパスに登録されたこれまでの戦闘情報・環境情報がインストールされ、
装着者が身にまとうライダークロスの上に装甲として装着され、0.896秒で彼女たちは『仮面ライダー』に変身する!


これが、始穂と帆希、そしてもうひとり・・・・・が一時的に持っていたはずの新たな力、II(ツヴァイ)シリーズである。

葬式が優先されて依然としてバックルの封印が解かれていない今、現存する戦闘力は2人のこの力しか残されていなかった。


沙菜:「あれが・・・この前ナギーが言ってたやつ?」
咲耶:「みたい・・・ですね」
凪介:「あぁ・・・まさか、こっそりあんな事をやってたとはね」


D6:「グガガガ・・・・・・」

軽く脳震とうを起こしながらも、ユラリと立ち上がるアンデッド。
だが時既に遅し、2人の戦乙女にすっかり包囲されていた。

カリスII:「さて、観念してあたしに封印されなさい?」
ステイルII:「始穂ちゃん、封印出来るの?」
カリスII:「うん?・・・・・・フフ、抜かりは無いわよ?余ってたコモンブランクは常に携帯してたから」
ステイルII:「さっすが始穂ちゃんっ!」


D6:「グゥゥ・・・・・・ガァアアアアアアアアアアアア!!!


いきなり雄叫びを上げるや否や、アンデッドはその身を燃焼させ一気に火炎風をまき散らす!

カリスII:「うぉあっ!?」
ステイルII:「わああ!?」

間一髪で間合いを広げたものの所々火を受けてスーツが焦げていた。

ステイルII:「あちっ!あちっ!?ふーふーっ」
カリスII:「びっくりさせないでよこの火ダルマ!?」

D6:「・・・・・・ケッ」

アンデッド語は人間には理解できないが、それ抜きにしても、明らかに、2人を嘲笑っている。

カリスII:「上等じゃない・・・!」

対するカリスの目元もピクピク引き攣っていた。
それを遠くから観戦するしかない3人は・・・

凪介:「大丈夫か・・・あいつら?」
沙菜:「まぁ・・・・・・大丈夫だよ!だって、相手も普通のアンデッドだよ?」
サクラ:≪我には全く大丈夫には見えんがな?≫
咲耶:「サクラさんってば・・・」



??:「いいえ、全然ダメです



そこへ、遠くから様子を伺っていたデバイス無し組を横切る影。
黒髪のショートヘアで、背は帆希と同じくらいか。
彼らを見もしないようにサラリと過ぎ去り、始穂たちが戦っている先へと向かってしまった。

凪介:「・・・ってちょっと!そっちは危ないって!?見たら分か・・・」

??:「見て分かります。あの方達・・・・・・負けますよ?」

凪介:「なッ!?」
沙菜:「始穂ちゃんたちが負けるとでも!?


??:「・・・あなた方は、ここからすぐに離れてください。でないと、死にますよ?先輩たち・・・・


そう背中を向けながら冷たく言い放つと、ポケットから何かを取り出して・・・・・・


シュルルルルル・・・・・・カシンッ


胴を這うように彼女にベルトが装着されるのがはっきり見て取れた。

咲耶:「ベル・・・・・・ト?」
沙菜:「へ?・・・・・・え??」


凪介:「ちょっと待てよ・・・・・・そんな馬鹿な・・・!?」


??:「・・・・・・変身」



ROUSE UP






D6:「グガァアアア!!


なお一層燃え広がる炎風は、依然として2人のHPを削り続けていた。


ステイルII:「始穂ちゃん・・・これじゃどうにも・・・!」
カリスII:「あたしがアイツを惹きつける!帆希ちゃんはその隙にレイヴで・・・」


ドファッガガガガガガガガガガガ!!!


その時、別の方向から光矢が無数にアンデッドに突き刺さった!


D6:「グガァ!?

ステイルII:「な、何っ?」
カリスII:「誰!?」


そこに現れたのは、その場にいる誰もが知る由もない人物だった。


オレンジと白を基調とした装甲バリアスーツにオレンジ色の髪と翼。
アンデッドに向けていたその左腕には、ガントレット型の円状盾が備わっていた。
その盾は今、縁が左右に展開されて弓のような形になっている。

盾に接続されている円状のモールトが施されたバックルは、まるでカリスラウザーのそれにそっくりで・・・・・・

カリスII:「あれ・・・どこかで・・・?」

??:「一撃で仕留めます。そこの方々、伏せてください。巻き添えになりますよ?」

そう言い放ちながら、右腰のラウズバンクらしきものからカードを3枚取り出し、左腕の盾弓の上部に差し込まれたバックル=ラウザーユニットのスリットに通す。


HOMING

BRIGHT

PHANTOM


SHINY KANON


ステイルII:「えっ・・・今の・・・ラウズカード?」

カリスII:「それにしたって・・・あんなカードあった!?」


そうこうしている内に彼女の弓から大きな光矢が発射され、アンデッドに・・・・・・


D6:「グッ・・・・・・ギ?」




――――――咄嗟に防御体制に入るアンデッドの前で、その矢は姿を消した。




ステイルII:「あれ?」

カリスII:「・・・・・・あっ!?帆希ちゃん伏せて!!

ステイルII:「うぇええ!?


始穂が何かに気づいて帆希ごと地面に伏せる。


そう、その瞬間を、彼女は見てしまった。


最初の光矢は、幻――――――正体は、アンデッドをドーム状に囲む無数の光矢!!


そして無常にも、彼女の指パッチンを合図に、


パチン!


ズガガガガガガガガガガガ!!!!!


D6:「グガァアアアアアアアアアアアア!?!?


無数の矢に串刺しにされたアンデッドは、悲痛の叫びも虚しく小爆発を起こし、
彼女が投げたラウズカードに封印されてしまった。



??:「・・・・・・ダイヤ6、エンドロール



そう呟きながらカードをラウズバンクに戻すと、彼女は踵を返して帰ってい・・・


凪介&カリスII:「「ちょっと待(っ)てよ!?」」


間一髪のところで2人が彼女を挟むように引き止める。
しかし、振り向いた彼女はその感情をも悟らせないポーカーフェイスで・・・

??:「・・・・・・まだ何か?」

凪介:「アンタ・・・何なんだ?」
カリスII:「誰だか知らないけど・・・さっきのカードはBOARDの管理物よ?こっちに渡して!」

??:「BOARDの管理?・・・その管理も出来ていなかった結果が今の状況では?」

カリスII:「うっ・・・・・・と、とにかく、あなた、何でラウズカードを持ってるの!?」

??:「このカードは、今は私たちが・・・・管理しています。あなた方のように見す見す手放すような真似はいたしません」


そう言い放ち、再び入口から出て行こうとするその少女は、出る直前にもう一言・・・・・・


??:「これは忠告です。アンデッドの封印は今後私たち・・・が請け負います。
    ですが・・・あくまでマイスター・・・・の邪魔をするならば・・・・・・申し訳ないですが、容赦するつもりはありません




――――――――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――




始穂:「なによおおおおおおおあの女ァアアアアアアアアア!?


アヤメ:≪シホー!落ち着いてー!?


家に帰るなり、始穂は思いの丈を自分の抱き枕に八つ当たりしていた。

一度全員始穂の家に集合になった。
今回の件と、今後どうするかを話しあうためだ。もちろん、あの謎の戦乙女の件も含めて。

だが、始穂があんな状態なのでなかなか始めることが出来ず、凪介たちも始穂の部屋の前で手を拱くしか無かった。

凪介:「まぁ、あんな事があっちゃあなあ・・・・・・」
沙菜:「八つ当たりしたくなるのも分かるなぁ・・・」
帆希:「始穂ちゃんのアレはしばらくしたら治るよ。たまーにあるから、ああいうのっ」
沙菜:「さすが上の階の住人さんだね、慣れてる」

咲耶:「それにしても・・・・・・あの子、一体何者なんでしょうか?」


始穂:「フーッ!フーッ!・・・・・・ふぅ」


しばらく抱き枕をフルボッコにした後、やっと始穂の顔に落ち着きが戻ってきた。

沙菜:「あ、やっと落ち着いた?」
始穂:「まぁね・・・・・・もう平気。じゃあ、とっとと作戦会議始めるわよー」

そして何事も無かったかのようにニッコリ笑って、沙菜、咲耶、帆希の3人の背中を押してリビングに行ってしまった・・・・・・。

凪介:「とっととって・・・アンタ待ちだっつーの」

取り残された凪介の口からもため息が漏れる。


しばらくして、社長の秘書たちがアタッシュケースを持ってやってきた。
三つ子なので顔はそっくりだが性格は三者三様。

セツ:「よう!待たせたな!」

長兄のセツはテンションの高いムードメーカー。

ゲツ:「皆さん、お集まりですか?」

男装麗人のゲツは3人の中で一番冷静沈着でプロフェッショナル。

ハナ:「やっほーみんな、グーテンタァークッ!おっ待たせ〜♪」

末妹のハナはやんちゃでちゃきちゃき娘。


ゲツ:「指示通り、持ってきましたよ。全てのデバイスを」

3人は始穂に頼まれ、荒れ果てたBOARDから全員分のバックル+αを持ち出してきたのだ。
一応封印こそされていたものの、襲撃の際にその封印も破られ、ラウズカードのほとんどが解放されていたのだが・・・。

今テーブルの上で全てのアタッシュケースが開かれ、5人が思い思いに馴染んでいたはずのバックルを取り出す。

咲耶:「また・・・戦わなきゃいけないんですね」
沙菜:「こうして見ると、前は持っているのが自然だったのに、今じゃちょっと不思議な感じがするよね・・・」
始穂:「こんな事がなきゃ、あたしだってそう思ってたわよ・・・で、ラウズデータバンクの方は?」

ゲツ:「一応再調整も終わりましたから、連動しているアンデッドサーチャーも通常通り動くはずです。
    そして、今手元にあるラウズカードなんですが・・・・・・」

そう言って、ゲツがポケットから数枚カードを出し、テーブルに広げる。


『SPIRIT HUMAN』

『BITE COBRA』

『MAGNET BUFFALO』

『SCOPE BAT』

『MISTY ARIES』


始穂:「えっ・・・・・・これだけ!?


テーブルの上には、一人一枚ずつ、たったの5枚しか無かった。

ゲツ:「正確には、始穂様たちが持っていらっしゃるAのカードと絵札のカード、そして『REVERSE』、
    それらを加えて、全部で16枚です」

帆希:「これはまた・・・あははは・・・;;」
沙菜:「地味に単品じゃどうにもならないのが残ったね・・・」
咲耶:「この中で一応まともに戦えるのは・・・」

始穂:「残念ながら、ここにいるユルバカ野郎です」

そう言いながら、始穂は隣にいたユルバカのほっぺを人差し指でグリグリ突いた。

凪介:「何だよその言い草!?」

始穂:「ともかく!カードに関してはもうちょっと状況を調べる必要があるけど、
    それよりもまず、これを見て欲しいの」

すると、始穂は持っていた資料を一枚ずつ丁寧に並べ、全員に見えるように準備する。
それは設計図のようなもので・・・・・・

沙菜:「・・・・・・あれ?これって」
帆希:「どっかで・・・・・・見たような・・・・・・?」


咲耶:「これは・・・あの謎の仮面ライダーの?」


始穂:「そう、あのベルト、あの盾弓、全て、カリスのシステムの元になったものよ。
    いわば、プロトタイプね。道理で見たことあると思ったのよ。形はちょっと変わってたけど」


それを表現するかのように、設計図では、バックルのマークも、盾の形もハート型だったらしい。

セツ:「ほう・・・そうだったのか・・・じゃあ、何でその・・・謎のライダーが?このシステムを?」
ゲツ:「恐らく、襲撃された際に持っていかれてしまったのでしょう。保管していた部屋はまるごと焼かれていましたし・・・。
    このデータは仮BOARDにあったバックアップデータから引き抜いたものですが、襲撃の際、原本はBOARDにあったはずですから」
沙菜:「プロトタイプなんてあったんだね!」

ゲツ:「一応、ステイルを除く全てのシステムに、プロトタイプは存在します。
    もちろん、ブレイドにもギャレンにも、レンゲルにも。完成品が出来た際にほぼ破棄寸前でしたが・・・。
    これはあくまで、カリスの・・・・プロトタイプです」

沙菜&帆希:「「へぇー・・・」」

凪介:「あんたら、実は言うほど良く分かってないだろ・・・?」

咲耶:「じゃあ・・・あの謎のライダーは・・・BOARDの襲撃と何か関係が・・・?」

始穂:「十中八九、そうでしょうね・・・・・・」


咲耶の考えも鋭く、始穂もただ、先程の戦いを思い出しながら苦虫を噛み潰したような顔を浮かべていた。




――――――――――――――――――


――――――――――――


――――――




とあるホテルの一室。



そこには、先程火葬場に現れたあの黒髪ショートの少女がベッドで横になっていた。
ただじっと、天井を見つめながら。


??:≪大丈夫ですか、マイスター・・・・?≫


そこに、彼女に瓜二つで、髪色はオレンジ、同色を基調としたメイド服を見にまとった少女が風と共に現れる。
背中にはオレンジの翼。

彼女の身体は、透けていた・・・・・


??:「うん・・・平気。ちょっと疲れただけ」

マイスターと呼ばれた少女も、ただ天井を見つめながら答えるばかり。

??:≪この所アンデッドとずっと戦い続けていましたから・・・≫

??:「・・・うん、今日は代わってくれてありがとう、レン・・

??:≪でもそれは!優ちゃん・・・・が疲労を圧して現場に行こうとしたからで≫

??:「うん・・・分かってる。でも・・・」


少女はゆっくり立ち上がり、そばにあった紙パックのいちご牛乳を一口飲むと、大きく伸びをして・・・


??:「私は平気だよ・・・もっと強くならなきゃいけないし。そうしないと・・・目的も果たせない」

??:≪目的も重々承知の上です・・・でもわたくしは、優ちゃん・・・・も心配で・・・!!≫

??:「ありがとう、レン・・。でも、これは決めたことなんです。後戻りなんてしない。
    わたしには・・・やらなきゃいけないことがあるから・・・」



コンコン!



と、急にどこからかノック音が。


??:『やっほー。元気してるかナ?


どこからか、別の女の声が聞こえてくる。


??:「その声は・・・・・・あなたですか、ゼルス・・・


どうやら窓の外から声が聞こえるようだ。


ゼルス:『見てたよ、さっきの戦い。すごかったナ!カテゴリー6とはいえ、一撃で仕留めるとは

??:「・・・それが、どうかしたんですか?あなたの用事は、そんな事では無いはずでしょう?」

ゼルス:『まぁナ。シスターがお呼びだよん。明日の夕暮れ、いつもの所

??:「シスター・・・フィルジッヒですか。結局あの人は何者なんですか?」

ゼルス:『知っても無駄なことだと思うナー。というか、アンタは目的さえ果たせばどうでもいいんじゃなかったん?

??:「・・・・・・えぇ」

ゼルス:『じゃ、伝えたからナ!ちゃんと来いよナ!


・・・・・・それから、彼女の声は聞こえなくなった。


??:≪・・・・・・私、あの方は少し苦手です。どうにも掴めないと言いますか・・・≫

??:「いいんです、気にしなくても。あの人はただの操り人形・・・・・・・だから。ちょっと、シャワー浴びてきますね」

??:≪・・・はい≫






―――シャワーに身体を濡らされながら、私はいつも考える。


―――私のしていることは、本当に母様に通じる道なのかどうか。


―――母様が居なくなったあの日から、私は、狂ってしまったのかも知れない。


―――手に入れた力は、この為に使うもの?


―――そう運命で決まっているなら、私はどうなったって構わない。


―――これが例え、過ちだったとしても。





母様、私は――――――――――――









翌日。


暑い日差しの昼下がり、凪介はFLANKの入口の木陰でアイスを食べていた。
FLANK、過去に仮BOARDがあったビルの1階に入居しているゲームセンターである。


昨日の今日とはいえ、展開が急すぎて整理がてらぶらぶらしていたが、
結局、彼の中ではちゃんとした結論は出せなかった。


??:≪どーしたのよ?そんな干し芋みたいなだらけ顔になっちゃって≫


そこに、緑の風をまとって凪介の背後からチャイナ服のお姉さんが飛び出してきた。

緑の髪をイカリングのように束ね、霊態とは言えども凪介の首に後ろからあすなろ抱きをしつつニヤニヤしている。

その顔は、かつての彼の変身した姿――『相川初穂』と瓜二つだった。


蜘蛛のアンデッド―――クラブA・スパイダーアンデッド、カエデ。


凪介:「暑いだけですってば。二重の意味で」

カエデ:≪暑さなんて吹っ飛ばしちゃいなさいよ!男の娘でしょ!≫
凪介:「・・・今、不思議な違和感があったんですけど?」
カエデ:≪え?///・・・・・・そ、そうかな?いやぁね、私お手製のスパイスジョークだってば☆≫

凪介:「・・・・・・・毎度元気ですこと」


暑さでめんどくさくなったか、凪介もカエデのジョークに皮肉交じりに応答する。


カエデ:≪・・・まぁ、ナギー君が元気ないのも分かるけど・・・ね?昨日の今日なわけだし?≫

凪介:「カエデさんの事だから、おちゃらけてオレに元気出させようとしたんでしょうけど・・・。
    オレは大丈夫ですよ、自分の役割くらい、自分で探せます」


そして、アイスの棒を近くのゴミ箱に放り投げると、凪介は再び宛ても無く、てくてくと歩き出していった。

凪介:「もう昼過ぎか・・・ご飯どうしよう」
カエデ:≪あ、商店街に新しいパスタ屋さん出来たらしいの、行ってみたいなー?≫
凪介:「パスタねえ・・・」



プルルルルルルルルルッ!!




しかし、無常にもけたたましくサイレンが鳴り響いた。


カエデ:≪ナギー君!

凪介:「仕方ない・・・昼飯はお預けってことで」


ポケットから取り出したのは、小型のアンデッドサーチャーだった。


UNDEAD APPEARANCE!

SOUTHWEST 753m



行ってみると、コンクリートだったはずの地面に複数ヶ所穴が空いていた。

幸い人通りも疎らで被害は無かったようだが、これ以上増えられたら追加被害は免れない。


カエデ:≪コンクリートに穴・・・・・・ねぇ・・・ひょっとして、モグラか何か?≫
凪介:「カエデさん、たぶんそれだ」

カエデ:≪へぇ〜!面白いじゃない!だって確か・・・≫



C3:「ギガァアアアアアアアアアア!!!



外の気配に気づき、穴から一体の怪物が飛び出してきた。

それは正しくモグラを依拠するような姿で、彼にとっても思い出深いアンデッドだった。


クラブのカテゴリー3、モールアンデッド。柳田凪介が、初めて一人でアンデッドを封印した時の相手である。


凪介:「・・・道理で懐かしいと思った。じゃ、とっととやりますか」


ショルダーバッグからレンゲルバックルを取り出し、バッグを道端に一旦放る。
ポケットから2枚のカード、


『CHANGE SPIDER』

『REVERSE SNAIL』


2枚のカードをレンゲルバックルに装填。
独りでにバックルからベルトが伸び、瞬時に凪介のウエストにジャストフィットする。


凪介:「久しぶり・・・って訳でもないけど、一つだけ言っておくよ」


左手をバックルに添え、右手で顔を覆い、目を瞑る。


意識を集中し、今―――



凪介:「去年のオレとは段違いってこと・・・見せてあげるわ・・・・・・・変身!!




―――解き放つ!



OPEN UP



バックルから緑と白のフィールドが同時に飛び出し、瞬く間に彼の体をすり抜ける。

白のフィールドで彼の身体そのものに変化が訪れ、追って緑のフィールドが飛び出す。

緑のチャイナドレスをベースに、装甲とバイザーが彼女・・に融合。


今まさに、戦乙女、深緑の道士が再燃する!


C3:「ギッ!?」


レンゲル:「さあって・・・アンタをじっくり、ナギってあげる!はァッ!!」


彼、柳田凪介は人造カテゴリーA『REVERSE SNAIL』の適合者である。

このカードを使用しない限り、『仮面ライダーレンゲル』はこの世に存在し得ない。
何故なら、『REVERSE SNAIL』に封印されてしまったある少女の姿・・・・・・にならない限り、
クラブA『CHANGE SPIDER』に適合出来ないからだ。


彼は、戦う力を、『女性になってしまうこと』を代償に得ているのである。


背中にマウントされた醒杖・レンゲルラウザーを素早く外すと、地を蹴り、真っ直ぐアンデッドの身体を捉え、ラウザーの刃を突き刺す。


C3:「ウグァ!?

レンゲル:「ハァアアアアアアアアアア!!!


勢いは止まらず、アンデッドは宙を浮きながらラウザーに押し圧され、
アンデッドをそのまま奥の塀に叩きつけた。

崩れる塀にレンゲルは一旦間合いを離す。
しかし、アンデッドの姿は忽然と消えていた。突き刺してぶつけ飛ばしたまま、塀の向こう側にいたはずだが・・・?


C3:「ガァアアアア!!!


背後上空からアンデッドの声!
塀に当たった後、地下に潜って背後に回ったらしい。

だが、レンゲルにとってもそれは経験済み・・・・だった。


カエデ:≪ナギー君!!

レンゲル:「はいはい・・・・・・見え見えなのよっ!!


ダガーモードにしていたレンゲルラウザーを一気に引き伸ばし、先端の一本刃をクラブの形のトライデントへと変形。
すぐさま後ろを向き、斜め上にアンデッドを再び貫く!

・・・そこまで来ると、もはやリーチの勝負。
アンデッドのドリルがレンゲルラウザーの長さに勝てる訳も無く、返り討ちに遭い、無残にも地べたに倒れ落ちた。

カエデ:≪ナイス、ナギー君!≫
レンゲル:「んじゃま、これでトドメ」

ラウズバンクから、ただ1枚、残っていたラウズカードの中で唯一攻撃力があったカードを取り出す。


VITE


クラブ5『VITE COBRA』。


一気に上空に飛び上がったレンゲルは、アンデッド目掛けて素早く二段キックを繰り出す!


レンゲル:「でぁああああああああああ!!!!!


C3:「グギュァアアアアアアアアアア!?


小爆発を起こしたアンデッドのバックルが割れ、レンゲルが持つブロパーブランクによって封印されて行く。


クラブ3『SCREW MOLE』。


カエデ:≪さっすがナギー君!カテゴリー3相手に反撃も許さないなんて!≫

レンゲル:「まぁ・・・腹、減ってるんで」


ぐー。


カエデ:≪気持ちは分かるけど・・・そこまで本気だったなんて・・・≫

レンゲル:「さぁて、昼飯でも食べに行きましょう・・・・・・ん?」


と、数分後にやってくるはずだったご飯のことを考えていた矢先、彼女の背後へ、誰かが近寄ってくる。


??:「やっと見つけました・・・・・・仮面ライダーレンゲル、柳田凪介・・・・


レンゲル:「え・・・・・・ぇええ!?」


振り向いた先には、黒髪ショートの女の子が立っていた。


普通にしていれば可愛らしい顔立ちみたいだが、今はそれを感じさせないほどその目は、獲物を見つけた獰猛な動物のように鋭かった。


その少女は、まさしく火葬場に突然現れた、あの―――――


それよりも、何故、彼女の正体を知っているのか・・・・・・・・・・・・・・・・?


レンゲル:「あなた・・・火葬場にいた、あの仮面ライダー?」


??:「自己紹介がまだでしたね・・・・・・初めまして。私の名前は、優子・・・・・・諸星優子・・・・です」


レンゲル:「もろぼし・・・確かそれって・・・」


彼女は朧気に思い出していた。

それは、始穂と帆希から、アンデッドを封印した後の戦いを聞かされた後に聞いた話。



『初穂・・・あたしの妹を養子に迎えた後、自分たちも子供をもうけてたのよ・・・。
 でも本人も夫も2人とも会社の重役だったし、子供は親戚筋に預けられてたみたい。妹が知らないわけね・・・・・・えっと、確か名前は・・・・・・』



レンゲル:「じゃあ・・・アンタ・・・・・・まさかアイツの・・・・・・!?」



優子:「・・・お察しの通り、私は、諸星遥香・・・いえ、天王寺遥香の・・・・・・です」


少女は火葬場の時と同様、ポケットから何かを取り出した。

それは、デザインこそ違っていたものの、話に聞いた『カリスのプロトタイプ』。
ラウザーユニットと思われるそれを腰に添えると、それに沿うかのようにベルトが装着される。


次いで、取り出したカードを・・・


優子:「・・・変身」


ラウズ!


ROUSE UP


そのカードを前方に投げると、ラウザーユニットから発せられた橙色のフィールドがそれを吸収し、
彼女の身体を、火葬場の時と同じ、オレンジ色の戦乙女に変貌させる!


レンゲル:「なッ・・・!?」


??:「あなたが私を『仮面ライダー』と仰るなら、私もそれに倣いましょう。
    私は・・・・・・セルデ・・・。仮面ライダー『セルデ』


レンゲル:「せ・・・・・・るで?」


セルデ:「例えるなら・・・そう・・・・・・『黄昏の復讐者アヴェンジャー


レンゲル:「アヴェ・・・ちょ、ちょっと・・・・・・!?」



セルデ:「私の目的は最初から・・・・・・母様を殺した・・・あなたへの復讐!!!







―――――― Going To Next Act ――――――




――― NEXT LEANGLE-REVERSE! ―――




――― 02 CERDE = Crack × Crisis ―――




<Do you wanna ENCORE REVERSE?>
,■4年4ヶ月(最初の予告から)


長い時を経て、ついに『激情版』本格始動です!


ぶっちゃけた所、何話で終わるか現状不明です。。(エー

一応、第4話までは出来ているんですけどね。。
もうちょい書き溜めが出来たら第2話の投稿になるかと思います。

またしばらく時間が開きますが、何卒ご了承をば。




■レンリバ!ってなんやねん


このケイジバンで2006年1月から2008年5月まで投稿をしていました、
全61話、『仮面ライダー剣』を原案とした半オリジナルSSです。

また、レンリバのアフターストーリーとして2009年2月まで投稿していた、
『@びっくりそうだんしつ!→side:B→』。

この2作品のアフター、且つ、『完結編』が今回の『Truth in the Lie』になります。

『劇場』版、もとい『激情』版です。


2作品については、小生の個人サイトに掲載していますので、
もしご興味ありましたら『sui7kumo.com』でググっていただければ、と。



■ゲロロ軍曹さん


レンリバ連載の頃から、小生のSSを小生の個人サイトの方で応援してくださっていた方です。
(不思議なことにこのケイジバンには一度も書きこんでませんでしたね。。)

今回の激情版の原案としてご紹介いたしました『AFTER-REVSERSE-STORYS!!』。
こちらをレンリバを原案として書いて下さりました。

その時のメインキャラクターが、諸星優子ちゃん=新ライダー、仮面ライダーセルデでございます。


『AFTER-REVSERSE-STORYS!!』そのものについては、その投稿サイトが元々特撮×ネギま!の毛色が強いサイトでしたので、
ここでそのまま使用するのはケイジバンの特性上出来ません。
そのため『原案』とし、優子ちゃんのキャラをお借りすることで実現した計画が『激情版』です。


当時もいろんな設定の話をさせていただき、交流もあったのですが、
(先日の『ハロウィン仮面M』もその一つ)
小生が多忙やメンタルその他もろもろでSS書きから離れてしまって、今はどうしているものやら。。


そういった経緯が有り、これまでの敬意を表すため、クレジットとして『feat.GG』をつけての投稿と相成りました。



■新キャラ?


ゼルス? さて、誰でしょうねえ?


フィルジッヒ?  さて(ry



次回はディーズの第4話でお会いいたしましょう。アリーヴェデルチ!,#000000,,e0109-106-188-111-229.uqwimax.jp,0 2013年10月14日(月) 22時57分03秒,20131013220601,20131017225703,iWNr07SCSkmLc,【L-R!×@びっくり!ハロウィン外伝】超☆怪傑 ハロウィン仮面“M”,HICKY(Reformed by sui7kumo) feat.GG,,,【本編に関する諸注意】


・拙作『LEANGLE-REVERSE!』『@びっくりそうだんしつ!→side:B→』の流れを汲んでいます。
 当時ハロウィンの時期にやってたアレです。


・このお話は2010/04月にこっそり書いていたハロウィン回です(当時よりちょっとだけ修正)
 3年半前に書いているものですので、いろいろアレな感じですがご容赦のほど。


・原案元となったゲロロ軍曹(Geroro-Gunsou)さんに敬意を称しまして。


・最後にちょっとしたお知らせ付き。












Super Extraordinary Masked-Helloween “M”











Zero













ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・




滴る汗、暗がりの部屋。

殴れど殴れど現れるUnknown。



『チィッ・・・・・・『ファイア』!』



BURNING



燃え盛る炎を杖に集め、一気に振り撒く。


焼けるUnknown。

しかし、自分の身に襲ってくるこの感覚は、もうこんな物では抑えられない。


身体の奥底から無性に込み上げてくる衝動。

ついに私は壁際のスイッチを叩き、燃え盛りながらもうごめくUnknownを『消した』。

と同時に、身体から力が抜け、冷たい地面に転がり込む。


やはり制御したのがいけなかったのか、はたまたもっと制御すべきなのか。

中途半端に制御しかけた自分が甘かったのか。


露出していた口元に冷たい風が当たる。

息は荒く、顔が高揚しているのもすぐに分かった。


いつしか、自分の手があらぬ場所に伸びる。

身体の底から湧き出す衝動が全身を包み、もはや抑え切れないものとなっていた。

なんとかその衝動から脱するために、冷たい地面を転がりながら一心不乱に・・・・・・



『やっぱり・・・・・・こんな記憶なんて・・・あっちゃいけ・・・ ぁあああああああ!!!



身体を包む衝動が自らの身体から一気に昇華していく。

同時に、腰に巻いていた銀色のベルト―額に『MD』と書かれたカボチャエンブレムが中央にある―が外れ、
身体を縛っていたSuitsが光となって発散していった。












「やっぱり・・・自覚がある内はちゃんと動かせない・・・か」



シャワーを浴び、白衣を羽織ながら再び元の場所へと帰ってきた。

それでも、最初の内は先程のVisionが身体を支配し、出るまでに1時間もかかってしまったが。


「かと言って、全遮断したら“あいつら”に勝てる見込みはまず無い・・・・・・」


今回だって、出来る限りのLimiterを施して臨んだ“最後の”試験のはずだった。


「やはり・・・制限は無い方が返って扱いやすいのかも・・・・・・ね」


目の前の机には、先程のベルトと、もう一つ、それと瓜二つの―とはいえこちらは少し丸みを帯びている―ベルトが置かれていた。


「それに・・・・・・こんな後に引くような記憶・・・・・・あって欲しくないものね」


そう言う“彼女”の足に、つらりと雫が光っていた。



どうしたら・・・・・・あのお方に近づける・・・・・・のかな・・・・・・?



と、“彼女”はおもむろに携帯電話を取り出し、どこかへ電話をかけ始める。


「・・・・・・あぁ、もしもし?急な話だけど、ちょっと出てきてくれない?・・・・・・・・・えっ!?」






First






所変わって、とあるアパートの一室。少し開いた窓からトントンとリズミカルな音が漏れる。
西に面したその窓の外からはもう夕焼けが見えてきていた。


ところで音の正体は包丁だった。
隣では小鍋で水を沸騰させ、自分は商店街の八百屋さんで買ってきたカボチャを一口大に切り分けている最中。


??:「ん〜?何だか良い匂いが・・・・・・?」


すると、匂いにつられてキッチンに“毛布を被った何か”が、のっそりのっそりと歩み寄っていく。
静かに、それでいて大胆にも“それ”はそのままキッチンに近づいて・・・・・・


??:「うん?・・・・・・ダーメですよ、瑠華さん。もう少し待ってくださいね?」


しかし当の相手は作業をしながら背後の存在を戒め始める。

もう慣れているのか、驚愕、怯え、それに準ずるものが全く感じられなかった。

バレたら仕方ないと、“それ”は毛布からウェーブがかった茶色のセミロングをひょっこりと出し、
紫色の瞳を浮かべた眼をこすりこすりしながらまな板の上を覗き込んだ。


瑠華:「さすがに・・・・・・お腹が・・・・・・(ぐー」

??:「当たり前です。一昨日の晩からずっと寝ていらしたでしょう?」


そして彼女はようやく振り向いて、『瑠華』と呼んだ“それ”に微笑みかけた。
ただ、夕日に光る包丁を持ったままで。


彼女の名前は、諸星優子(もろぼしゆうこ)。ごく普通の女子高生。

少し前にこの西園市に越してきて、訳あって一人暮らし・・・・・・ではなく、
気だるそうに毛布を被っている彼女―『九条瑠華(くじょうるか)』と今は二人暮らし。
クールな印象を魅せる裏で性格はまさに『Pure』の字が似合う、黒髪ショートの少女である。


瑠華:「今日は・・・・・・カボチャですか〜?」

優子:「えぇ。いつもよりちょっと安くしていただけたんです」

瑠華:「なるほどぉ・・・・・・あっ、そういえば、明日は・・・」


壁にかかった日めくりカレンダーは『10月30日』。
それを確認して、ボソッと一言・・・


瑠華:「・・・・・・はるるぅん?


優子:「・・・・・・ハロウィン、です」




10月31日・ハロウィン。


それは、ある意味では悲劇の前触れなのかもしれない。


裏でうごめく“組織”の存在。
それらは着々と、この街に“またしても”近づき始めていた。




瑠華:「このカボチャの煮付け・・・はむはむ・・・食が進みますねぇ♪」

優子:「よほどお腹が空いていたんですね・・・;;」


完成したカボチャの煮付けを泣きながらご飯と一緒に食べつくす瑠華の横で、ふと優子はテレビに映っていたニュースを見ていた。

と、ちょうど全国ネットから地方局の時間に周る頃、その最初のニュースに優子はふと反応。
どうやら近くの商店街が舞台のようである。

ニュースによると、商店街の外れにある駄菓子屋を含め、西園市内で数件、お菓子を巡る強盗事件が多発しているというものだった。
先述の駄菓子屋はまさに2、3時間前に襲われたばかりで、現場検証の様子がリアルタイムで報道されている。


優子:「駄菓子屋さんを狙った強盗だなんて・・・・・・」

瑠華:「強盗?・・・・・・あ、ここ知ってます」

優子:「知ってるんですか!?

瑠華:「先週、サっちゃんズのお二方に連れて行ってもらったんです。今までに味わった事の無い感覚でした・・・♪」

優子:「いつの間に・・・で、でも・・・何で駄菓子屋さんなんでしょうか・・・?お菓子ばかりだなんて・・・」

瑠華:「ふぅむ・・・・・・あ、ごちそうさまでした〜。では、私はまた寝ますねぇ・・・・・・ぅわふぅ」


たくさんあった煮付けを残り7切れまで残して、瑠華は椅子にかけてあった毛布を再び被り、奥の部屋へと消えていってしまった。
優子の分まで微妙に残っている分だけ、彼女の優しさも微妙に垣間見れるところである。


優子:「瑠華さんってば・・・・・・でも、ちょっと気にはなりますね・・・・・・」


微妙に残った煮付けを頬張りながら、彼女は引き続きそのニュースを凝視していた。





―――――後に、その裏で動く事件に大きく関与する事も知らずに。








Second









今宵は満月。
優子は雲の無い綺麗な夜空と月を、ベッドに横になりながら観賞していた。
隣からは瑠華の静かな寝息が耳元で聞こえてくる。

それにつられるかのように、優子も少しずつまどろみの中に身を委ねる・・・・・・。



ガタンッ!!



・・・が、今宵はいつもと違っていた。

びっくりして跳ね起きた優子は、目を丸くしながら近くの窓から外を眺める。
しかしそこは普段と同じ、いつも通りの夜の風景。



ガタタンッ!!



またしても奇妙な音。まるで、何かが動いているような・・・・・・



ズガァアアアアンッッ!!!



そしてこの有り得ない爆発音。

いつしか、優子の足はベランダの方に向いていた。



―――そう遠くない先で、煙が立ち昇っていた。

方角的には・・・商店街の入口に近い。確かあそこには・・・・・・


気になって、パジャマの上にカーディガンを羽織り、優子は玄関から飛び出した。

嫌な予感がする。

何か、とてつもなく大きい・・・曖昧だが確実に存在するこの危機感。

それだけで、優子の足は現地に向いていた。


思った通り、そこは夕方に現場検証されていた駄菓子屋だった。

夕方のニュースであらかたの場所は掴めていたので迷うことなく着いたものの、駄菓子屋はすでに木造2階の家屋に火の手が上がっていた。
その刹那、暗がりから赤い車両が到着し、消火作業に入る。



―――キンッ!



ふと背後で聞こえる金属音。
路地の入口に背を向けていた彼女は、気のせいかと一度は思ったが、生憎家に帰るにはその道を戻るしか方法が無い。

仕方なく、恐る恐るその路地に戻・・・



バァアアアアアンッ!!



優子:「きゃああああああああああああ!?


目の前を黒影が横切り、右の壁に叩きつけられる。
急な事で優子は思わず悲鳴を上げ、その場に尻餅を着いてしまった。

黒影が飛び出してきた壁は崩れ、そこから別の影が姿を現した。


背後の火災のおかげで、その姿ははっきりと見て取れた。


オレンジのラインが入った黒いボンテージ、頭にはよく目立つお化けカボチャを模したメットの女性。
背は高く、胸は肌の部分が多くすごく大きい。


見るからにそれは・・・・・・どう見ても“ろしゅつきょう”と呼ばれるものだと最初に分かった。


??:「ハァ・・・ハァ・・・あ、あなた・・・てぃ、TOTの・・・残党・・・ね?こ、今年も・・・」


しかし、その女性はぱっと見傷一つついていないにもかかわらず、動きも鈍く今にも倒れそうだった。
顔が少し高揚しているようにも見える。



・・・・・・だが、優子の記憶はここで途絶える。


恐怖と吃驚が入り交ざり、そのまま気絶してしまったから・・・・・・。







Third







優子がその目を覚ますと、最初に視界に入ったのは暗いアスファルトの天井だった。
どこかに寝かされているらしい。


優子:「ここ・・・は・・・?」

??:「目が覚めたようね・・・・・・大丈夫?」

優子:「はい・・・」


傍らには、白衣を来たツインテールのメガネ少女。


??:「『あなたは誰?』とでも言いたそうね、あたしは、『ドクトル☆シホ』。
    しがないごくふつ――――うの研究者よ」


優子:「はあ・・・・・・」

Dシホ:「まぁ、あなたの言いたい事もおおよそ検討はつくわ。
    自分が何故ここにいるのか、あのカボチャ頭の女の人は誰?あの時、何があったのか」


自分で言う前に全て見透かされ、優子は呆然と彼女を見つめる他なかった。


そう、全てがおかしい。

駄菓子屋が次々と襲われ、裏ではあんなカッコをした女性が戦っていた。
間近で見たとは言え、にわかに信じがたかった。彼女、ドクトル☆シホという名前も含めて。


Dシホ:「・・・・・・奴らの名前は、TOT。ハロウィンの夜に軒並みお菓子をふんだくりまくるアダルトチルドレン集団よ。
     そして、あなたが見たカボチャ頭は、『ハロウィン仮面』」

優子:「ハロウィン・・・・・・仮面?」

Dシホ:「急でごめんなさい・・・・・・あなたに、やってもらいたい事があるの」


やってもらいたい事。急に言われて何のことが一瞬全く理解できなかった。

が、よくよく考えてみれば彼女から提示されたゴマ粒ほどの情報でも、
自分の身に起こりそうなことなど予想するには容易かった。


優子:「あの・・・・・・まさか」


Dシホ:「あなたもね・・・『ハロウィン仮面』に変身する資格があるの


・・・・・・やっぱり。


優子:「・・・・・・あの」

Dシホ:「まぁもうちょっと聞いて。一応根拠があるのよ。人間はね、理性と本能で出来ているようなものなの。
     でもね、あたしが作った『ハロウィン仮面』は、どうやら少しでも本能、
     つまり、ほんのちょっとでもえっちなことに興味津々だと・・・変身すると脳が耐えきれなくて廃人になってしまうの」

優子:「は・・・はいじん??」


Dシホ:「つまりね、えっちなことしか考えられない星人になっちゃうのよ


・・・・・・意味が分からなかった。というより、理解出来ない。


Dシホ:「初代の子も、あなたも、それを見極める検査をクリアしたの」

優子:「えっ・・・・・・そんなの、いつしたんですか??」

Dシホ:「うん?もちろん、あなたが寝ている間に、一応」

優子:「へぇえええええええええ!?//////

Dシホ:「いやいや、単におでこにコード着けただけだから・・・・・・。
     まぁそれはともかく、あなたにはすぐにでもハロウィン仮面になって・・・」


優子:「えっ・・・・・・いや・・・・・・です」


数秒もいらなかった。完膚なきまでに完全封殺。

しかし、その拒否でもドクトル☆シホは揺らぐことは無かった。




Dシホ:「そう・・・でも、ちょっと、試させて・・・ね?」






Fourth






お〜い、ゆ〜こさ〜ん?


気の抜けたコーラのような囁き声で優子が次に目を覚ましたのは、自分の家のドアの前だった。

視界には澄んでいる青い空、そこに、ルームメイトである瑠華が心配そうに彼女の顔を覗き込んできた。


優子:「あ・・・・・・れ?」

瑠華:「起きましたね〜」
優子:「わ・・・たし・・・?」


あれから自分はどうしたのだろう。

変な女性に助けられて、変な話を聞かされていたような・・・・・・?
これは・・・夢・・・だったのか?
頭の中をぐるぐると反芻し、なお一層わけが分からなくなっていく。


瑠華:「ドアが開かないから何事かと思いました〜(ぐー」
優子:「えっと・・・今、何時ですか?」
瑠華:「う〜ん・・・・・・9時くらい、ですかね〜?(ぐー」


すっとぼけたような声を上げ、さらにお腹の虫をしきりに鳴らしていた。


優子:「・・・・・・あぅ・・・」


やってしまったと自分自身に呆れ返る。

でも、そればっかりじゃ仕方がない。
目の前にお腹を空かせている同居人もいるし、とりあえず夢の件は後で考えることにして、
ひとまず朝ごはんを作ろうと思う優子だった。


だが、件の事をはっきりと自覚するまで、そう時間はかからなかったのである。


今日の朝ごはんはハムエッグと大根のお味噌汁、あとは朝用に取ってある高菜の漬物。


瑠華:「うんうん、今日も優子さんのご飯は美味しいですね〜♪・・・優子さん?」

優子:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


モリモリとご飯にありつく腹ペコ瑠華さんの横で、優子はずっと上の空だった。


瑠華:「ゆ〜こさ〜ん?」

優子:「はひっ!?・・・あ、ごめんなさい、何です?」

瑠華:「ちょっと元気ないですね?」
優子:「え?だ、大丈夫です!私は、今日も元気ですよ?そ、そうだ、TVでも着けましょうか・・・・・・」

と、誤魔化し半分でTVを着ける優子。

ちょうど、朝のワイドショーの時間だった。
そのコーナーでは、朝刊を元にコメンテーターが司会陣と論議を繰り広げている。



世紀の痴女、夜を往く!



・・・・・・そんな見出しの三面記事を元にして。


このご時世に痴女・・・ですかあ?

しかし、この女性、本日未明にあった西園駄菓子屋襲撃事件に絡んでいるとの見解もあります

ただの痴女ではない・・・と?

目撃者の証言ですと、頭がカボチャで、首から下がボンテージファッションであったと・・・
 身長は160cm前後であるとの声もあります


襲撃事件は夜中に集中していたにも関わらず、結局被害を受けたのが最初の1件だけとはねえ・・・
この謎の痴女・・・警察では、その行方を追うと共に発見次第・・・




ピッ!



優子:「・・・・・・・・・・・・」

瑠華:「優子さん、どうしてTV消しちゃったんです?」



理解出来なかった。



確かに、カボチャ頭のボンテージ女性なら自分も見た。

昨晩、いや、もう日付は変わっていたのかもしれないが、自分が見に行ったあの現場で。



でも、自分の記憶と、さっきのとで、食い違いがあった。



身長が160cm前後



被害を受けたのが最初の1件だけ




まず、彼女が見た女性は、明らかに自分より大きかった。

大きく見積もっても180cm有るか無いかだろう。


それに、あの後にも同様の事件があり、別の誰かがそこに行っていたとしたら・・・・・・




あなたもね・・・『ハロウィン仮面』に変身する資格があるの




瑠華:「・・・・・・優子さん?」



箸を取り零し、体を震えさせながら、次第と口からも言葉が溢れていた。



優子:「いやあああああああああああああ!?!?!?



それって・・・・・・・・・・・・自 分 の こ と ?







Fifth







??:「ちィッ・・・・・・参ったぜ、大丈夫かよ兄貴」

??:「まぁ・・・な」

とある雑居ビルの屋上で、同じく朝日を浴びた2人がいた。

軍服とも思える迷彩服で、胸に『TOT』と書かれたワッペンと星型の小さなバッジが3つ。
これは、TOTの中でも幹部クラスにならないと着けられない。
それを、兄弟揃って着けていた。

兄:「まぁ、大丈夫だぜ」

アホ毛が生えたボサボサ頭の男=兄幹部がよっこいせっと立ち上がり大きく伸びをした。

弟:「ホントか?さっきだってあの痴女にしてやられたんだぜ!?」

天然パーマの男=弟幹部はまだ座って兄の身を案じていた。

兄:「馬鹿か?俺たちは、最強の幹部だぜ?コレのおかげでな」


と、彼が弟幹部に見せたのは、一本のUSBメモリ・・・のようなものだった。『 B』と書いてある。

すると、弟も懐から似たようなメモリ―デザインが違うとはいえこちらも『 B』と書かれている―を取り出す。


弟:「確かに、あの痴女が来るまではこれと俺たちのコンビネーションで数々のお菓子をふんだくってきた。
   でも、さっきの襲撃で6部隊中俺たち以外の5部隊が任務失敗でお縄頂戴だぞ?これは・・・・・・ヤバいぞ」

兄:「大丈夫だ・・・・・・俺たちが、負けることはない。何故なら・・・・・・」


兄は、勇み良く誇らしげな顔で、手に持つメモリを朝日に掲げた。


兄:「俺たちは・・・・・・誰にも倒すことが出来ないんだからな!





【-B-】REAK









Sixth








優子は駆け出していた。

そう、今日はハロウィン。
仮にさっきのニュースで出た痴女が自分なら、夢だったはずのあの人もきっと実在する。
そう思い、宛てもなく、商店街中を探し回っていた。


そして、辺りが暗くなり始めた頃、ちょうど辿り着いたそこは、運命の地。

あの事件に遭遇した・・・・・・



Dシホ:「来ると思っていたわよ、諸星優子さん?」



・・・・・・見つかった。

というより、彼女に『見つけられてしまった』と言うのが正しいか。


優子:「ドクトル☆シホ・・・さん、あなた・・・私に何を・・・?」

Dシホ:「・・・・・・そんなに、知りたい?」


明らかにこの人は何か知っている。知っている素振りをあからさまに見せている。


Dシホ:「・・・・・・ついてらっしゃいな」




―――――そうして連れてこられたのは、一軒の喫茶店。


しかし、中に入らず素通りし、脇の道からどんどん奥へ・・・・・・。

着いたのはちょうど喫茶店の真裏に当たる位置。扉を開けると、すぐ下に下る階段があった。
地下の研究施設か何かだろうか。


ドクトル☆シホに手を引かれるままに、優子は再び、あの場所へと足を踏み入れる。


優子:「ここは・・・あの時の」

Dシホ:「優子ちゃん、これ、着けてみてくれる?」


と、急に優子の腰に押し付けられたのは、お弁当箱くらいの鉄の箱だった。

そこから急にベルトが伸び、優子のウエストのサイズにジャストフィットする長さで止まって装着された。
どうやらその鉄箱はベルトのバックルだったようだ。



Dシホ:「いい?今の時間、覚えておいて」


目の前にはデジタルの置き時計と、何故かビデオカメラ。

時計は・・・6時29分になったばかりだった。


Dシホ:「優子ちゃん・・・その“バックル”の両端を持って、引き伸ばしてみて」

優子:「はあ・・・」


言われるままに、そのベルトのバックルを引き伸ばして・・・


ガシャン!



MAXIMUM MAKE UP





―――――間。





REFORMATION COMPLETE




優子:「・・・・・・え?」


2種類の機械音の時間差は、ほんの1秒未満に感じられた。
瞬きも終わらない内に、目の前に変化が起きていた。


デジタル時計の時間が、6時39分になっている?


Dシホ:「よ、よーし・・・・・・」


優子:「ぇ・・・・・・ひゃあああ!?//////


視界を変えると、足元で大の字になってバテている、半裸のドクトル☆シホがいた。


優子:「な、何ですかぁ!?だ、誰が!?


Dシホ:「・・・・・・あなたよ?」


優子:「・・・・・・・・・・・・え?」



―――10分後。



優子はシャワーを浴びて帰ってきたドクトル☆シホと共に、先程録画したビデオを鑑賞することになった。


Dシホ:「いい?行くわね・・・・・・」


きっと拒否権なんて無いんだろう。

というより、今自分にある変なわだかまりと矛盾を晴らすには、これを見るしかなさそう。
そう素直に思った優子は、黙ってモニターを凝視していた。



>Play







Seventh








MAXIMUM MAKE UP


その機械音の後、優子の身体はバックルを中心に光に包まれ、
華奢な身体に沿ってスーツとカボチャ頭のメットが素早く形成される。


優子:「こ・・・これ・・・は・・・!///


次に見たそれは、正しく今朝のニュースの情報に見事に合致した、『痴女』だった。


ハロウィンの世界を翔けめぐりし、セイなる戦乙女!
二代目ハロウィン仮面改め、『ハロウィン仮面M』!再び推・参っ!!



『どう?そのスーツの着心地は?』


『うん・・・すっっっっごく、快感なんです///


『そうでしょうそうでしょう?夜の戦いはどうだったの?上手くいった?』


『そうですね・・・些か、ぬるかったです。みなさん、私を感じさせてくれなくて・・・
 結局、私が攻撃とは何たるか教えて差し上げました・・・良かったです・・・♪///


『初代のドSも良いけど、時代はやっぱりドMよねー』


『あの・・・御主人様・・・私、ちょっとまだ心残りがありまして・・・ですね・・・えへへ///


『え?いや・・・ちょ・・・』



お願いします!私を・・・いじめてk



ブチッ!



無意識に、優子の人差し指がモニターの電源を切っていた。








Eighth







優子:「今のが・・・・・・私・・・・・・なんですか・・・・・・??/////////



優子は驚愕していた。おそらく人生で一番。
この世のものではないものを見たかのような、しかもそれを信じたくなくなるような・・・。


Dシホ:「・・・・・・仕方が、無かったのよ」

優子:「ふぇ?」

Dシホ:「こんなの、あたしが作ろうとしている『ハロウィン仮面“像”』には程遠いわ。
     でもね、今の技術じゃ再現するにはこうするしか・・・・・・
     無理にでも脳内麻薬を出させて、身体能力を高めるしか無いのよ・・・・・・」


彼女の顔に、陰りが見え始めていた。

先程までの全てを見透かしたようで上から物を見るような態度ではなく、
まっすぐとした、いち研究者としての顔だ。


Dシホ:「それでも、TOTは懲りずにやってくる。こんなことでも上手く出来てしまったから・・・そうするしかないのよ・・・・・・」

優子:「シホ・・・さん・・・」



ファーン!ファーン!



突然研究室中のアラートが鳴り響く!

優子:「な、何ですかぁ!?

Dシホ:「TOTよ!ヤツら・・・最後の最後で仕掛けてきた・・・・・・!!」


バンッ!


それに合わせるかのように、2人の背後のドアが開く。

立っていたのは、緑髪のセミロングで大柄で巨乳のお姉さんだった。
所々ボロボロで、包帯が巻かれていたのがなんとも痛々しい・・・・・・。


優子:「え・・・・・・??」

Dシホ:「ちょ・・・・・・何やってるのよ!?無茶しないで!?

優子:「あの・・・あの方は・・・?」


Dシホ:「・・・・・・相川初穂、あたしが作った、初代・ハロウィン仮面よ。
    優子ちゃんが倒れたときに居合わせたのも、彼女・・・」


優子:「えっ!?じゃあ・・・・・・」

初穂:「このくらい平気だ・・・シホ、あれ、もっかい貸してくれ」

Dシホ:「ダメよ!『Mild』じゃあいつらには勝てない!

優子:「まいるど・・・?」

初穂:「その子が・・・『Maximum』の適合者?『Mild』はね、『Miximum』のプロトタイプさ。
    『Maximum』の体験版みたいなもんかな。脳内麻薬もそんなに出ないし」

Dシホ:「それは能力確認のために抑えているだけ・・・それでも出ないわけじゃないのよ!?
    アンタだって・・・変に記憶が残って大変でしょう!?それにその怪我だって・・・」

初穂:「このくらいの傷は平気だって。TOTを、倒すんだろ?」
Dシホ:「そうだけど、もうこれ以上・・・・・・!!」


その間、優子の中で色々な思いが渦巻いていた。


あの時、おそらくあの人が私を身を呈して守ってくれていたに違いない。

そして、まかりなりにも自分にも同じ力が備わった。




今、私に出来ることって、何だろう?




私に出来ること・・・・・・





優子:「・・・・・・シホ、さん」


Dシホ:「優子ちゃん?」




優子:「私・・・・・・やります








Ninth








優子は走っていた。


一目散に、アダルトチルドレンが蔓延るあの現場へと、がむしゃらに。


決めたんだ。


たとえ、あんな変な力だったとしても、それでも戦える力を手に入れた。


あの夜だって、昨日だって、いろんな悲痛を目の当たりにしてきた。


先週、サっちゃんズのお二方に連れて行ってもらったんです。今までに味わった事の無い感覚でした・・・♪



じゃあ、私に出来ることって、何?



私にしか出来ないことって、何?




―――――私にしか出来ない、あの連中を倒すこと!






よく言いましたね、もう一人の私





優子:「・・・・・・え?」



ふと、声が聞こえた。聞き覚えがあるような・・・・・・?



・・・・・・いや、さっきも聞いたじゃないか。



否、これは生まれてから、ずっと耳にしていた声じゃないか。



あとは、私に任せてください。セイいっぱい、TOTを打ちのめしましょう



・・・・・・幻覚でも構わない。



私は、彼女と、TOTを・・・・・・!




優子:「変身・・・!!




MAXIMUM MAKE UP




途端、光に包まれた彼女の身体は閃光となって、駄菓子屋に屯っていた多くの軍服アダルトチルドレンを一気にけちらしていった!


な、何奴ッ!?


月夜に映えるその、オレンジと黒のエシー。


HW仮面M:「ハロウィンの世界を翔けめぐりし、セイなる戦乙女!『ハロウィン仮面M』!堂々推参っ!!


キタァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

深夜に部隊を萌え殺しまくったヤツだぜえええええ!?

うっひょおおおおおおおおおおおう!


HW仮面M:「ふふっ・・・」


ハロウィン仮面が艶めかしく手招きすると、イき急いだ精鋭たちが立て続けに飛びかかる!


バシッ!


HW仮面M:「いやんっ♪」


バンッ!


HW仮面M:「あはっ♪」


ズビシッ!


HW仮面M:「うンっ♪」


次々にハロウィン仮面に襲ってくる百鬼夜行的攻撃に、早くも彼女はボロボロに近かった。

しかし・・・


HW仮面M:「あっはっ・・・・・・カイ・・・カン・・・!//////


「うへへへへ・・・噂通りのドMっぷりだな・・・!」
「このまま落としちまおうぜえええ!!」


HW仮面M:「・・・・・・なーんてね


不敵な笑みと共に取り出されたのは、彼女の武器・ニューパンプキンスター
そのリリカルでマジカルな杖の先を艶めかしく舐め、挑発する。


うっひょうおおおおおおおおおおおおおお!!


それに興奮したか、団員たちが一斉にル○ンダイヴ!


MAGIC SELECT


HW仮面M:「スライド!


HOVER


ハロウィン仮面の足が数ミリ浮き上がり、一気に地を蹴る!
まるでアスファルトがスケートリンクになったかのように、ハロウィン仮面は軽やかに彼らの着地点から離脱した。


・・・当然、何も無いところにダイヴしたところで行き着く先は人の山。


MAGIC SELECT


HW仮面M:「ちょっと、おイタが過ぎたと思いますよ・・・ウォール


PROTECTION


ウォールの魔法が、目の前に出来た人の山をすっぽりと覆い隠した。

団員はその中で、まるでフタをされたチャーハンのごとく身動きが取れない・・・!


HW仮面M:「一丁上がり、なのです♪」


??:「ほぉ・・・なかなかやるじゃないか」


HW仮面M:「え?」


団員がいなくなれば、当然残るは・・・・・・幹部。

ハロウィン仮面の前に、2人の大柄の男が立ちふさがった。


HW仮面M:「あらあら・・・」


兄:「まぁ、こうなることは予想済みだったがな」
弟:「アンタの噂はかねがね聞いていたぜ。一度、手合わせ頼むよ」


HW仮面M:「あなたは・・・私を気持ちよくさせてくれますか?///


兄:「あぁ・・・・・・死と言う名の快楽を叩き込んでやる!行くぜ!

弟:「おうよ!


2人は揃って懐からUSBメモリのようなものを掲げ、メモリのスイッチを押す。



【-B-】REAK


【-B-】OUNCE



メモリから機械音が発せられるや否や、それを首筋に突き刺す!

すると、2人の体が見る見る色を変えて様変わりし、
兄貴の方は全身トゲトゲしい鈍色の身体に、弟の方はタプタプした丸っこい白の身体に、
それぞれ変化を遂げた。


ブレイクD:『おっぱじめるぜ、弟ッ!

バウンスD:『ばっちこい、兄貴ッ!






Tenth






弟の身体が見る見る大きいな球体に変化し、兄の右腕が大きなハンマーに姿を変える。
そして、一気に―――――


バシュゥウウウウウウウッ!!


―――――弾くッ!!



HW仮面M:「あっ・・・・・・!?」


目算で150km/h。
さすがのハロウィン仮面も目で追えず、弟の身体に思いっきり跳ね飛ばされてしまった!


HW仮面M:「ぁあああああああ・・・!?」


大きく空中に投げ出されるハロウィン仮面。


ブレイクD:『まだ終わらないぜッ!!


と、ハロウィン仮面を跳ね飛ばしたばかりの弟の身体は文字通り地面で『バウンド』し、
それに乗った兄貴は、空中にいるハロウィン仮面目掛けて、跳ね上がる!


そして、ハロウィン仮面を軽々と追い越し、上から追撃!!


HW仮面M:「くぅぅぅぅっ!?」


バウンスD:『どうでえッ!?


ブレイクD:『喰らいやがれ。俺たち兄弟の、BB爆弾をよッ!





ハロウィン仮面の身体は未だに宙を浮き、月明かりに照らされていた。



その顔は・・・・・・ニヤけていた。






HW仮面M:「それで・・・・・・終わりですか?///






兄弟:『『・・・・・・は?』』



MAGIC SELECT



HW仮面M:「アイス・・・・・・マキシマム!!



BLIZZARD MAXIMUM



ニューパンプキンスターが強烈な光を放ち、先端から大きなつららが形成される!



HW仮面M:「あなた方の攻撃は・・・・・・気持ち良さが足りませんッッ!!



体を捻り、大きくふりかぶる!!




HW仮面M:「ブリザードワルツ・マキシマム!!




その360度の一振りは、上空にいた兄貴も、地上にいた弟も一瞬にして捉え、
彼らの胸板に大きく傷を付ける!


そうして、華麗に着地するハロウィン仮面をよそに、兄弟は仲良く地面に叩きつけられた。


HW仮面M:「今のは序章です・・・さぁ、私をもっと気持ちよくして!楽園へ誘ってください!///


ブレイクD:『くっ・・・こんにゃろう』

バウンスD:『ただの変態だと思っていたが・・・・・・想像以上だぜ。戦闘能力も、性癖も、異常(アブノーマル

)
だ・・・!!



HW仮面M:「ふぅううっ///・・・・・・アブノーマルだなんて、今の私には褒め言葉にもなりませんよ?♪」


ブレイクD:『ん?・・・・・・くっくっくっ、良い事を思いついたぜ。おい変態』

HW仮面M:『変態じゃありませんよ、雌犬と呼んでください・・・///

バウンスD:『それもどうかと思うぜ・・・』


ブレイクD:『知るかよ・・・お望み通り、“放置プレイ”でもさせてやるよ



ヒュッ!!



HW仮面M:「なッ・・・!?」


どこからか飛んできたクナイに身体を持っていかれ、数十本のそれによってハロウィン仮面の身体が駄菓子屋の壁に磔にされてしまった。


HW仮面M:「うぅっふぅっ!?///・・・・・・良いですね、ちょっと飛びそうでした///


それでも余裕そうなのはやはりドMだからか。

しかし、兄の矛先は彼女ではなく・・・



ブレイクD:『いつから見ていたんだか知らないが・・・・・・俺たちTOTの裏を知った奴に、命は無いぜ・・・!!』



と、あらぬ方向にクナイをもう一本投げつける。

それはストンと良い音を鳴らして・・・・・・



あわわっ!?



・・・・・・影の傍観者を誘き出した。




HW仮面M:「えっ・・・・・・・・・・・・!?




見たことのある顔だった。

茶色いボサっとしたセミロングに紫色の瞳。



ハロウィン仮面の頭も、途端に冷めて―――――




HW仮面M:「る・・・か・・・さん?」



瑠華:「え・・・??」



バウンスD:『あーあ・・・運の悪い奴だぜ、なぁ兄貴?』

HW仮面M:「くっ・・・な、何で、どうしてこんな所に・・・!?」


瑠華:「・・・わ、私、私は、この駄菓子屋を守りたかっただけ・・・!
    ここも、サっちゃんズのみなさんに連れてきてもらった、思い出の場所なんです・・・。
    だから、ここを守るためならお布団だって脱ぎます!


いつものグータラな姿も吹き飛ぶほど、今の彼女はどこか勇ましいように見えた。
ついうっかり、涙まで・・・


HW仮面M:「瑠華さん・・・あなた・・・」

瑠華:「それにしても・・・どうして私の名前を知っているんですか・・・?」


ブレイクD:『話は後にしてもらうぜ・・・続きはゆっくり、天国でしておけ。弟よ!』

バウンスD:『おうよ!』


再びボール状になった弟と、再び腕をハンマーに変えた兄。この流れは・・・


HW仮面M:「あれはBB爆弾・・・・・・瑠華さん、ダメ、逃げてぇええええええええええ!!!!!


ブレイクD:『もう遅ぇええええええええええええええ!!!!!!!

バウンスD:『吹っ飛んでおっ死ねええええええええええ!!!!!!



兄のハンマーが弟ボールを先程より強く叩き、弟は豪速球と言わんばかりにターゲットを狙い撃・・・・・・



HW仮面M:「だめえええええええええええええええええ!!!!!!!!!























―――――しかし、おかしい。









―――――音が、しない。









不思議なくらい、何も音がしない。



辺りに砂埃が舞っているが、ただそれだけだ。




ブレイクD:『やった・・・・・・のか?』




・・・・・・数瞬経って、




バウンスD:『ぐあああああああああ!?



弟ボールが悲鳴を上げて跳ね返ってきた!!

兄に当たる前に擬態を解除し、弟がその場に転げ回る。



HW仮面M:「・・・・・・え?」


ハロウィン仮面は驚愕していた。

自分がドMの変態淑女であることも忘れて、ただひたすらに、目の前の事が信じられなかった。



砂埃が晴れる。


そこから、妖艶に光る紫の瞳



すこし、おもいだせました



微かに聞こえるその声。




瑠華?:「私も・・・・・・やるべき事があったみたいです・・・・・・ふふっ///




その表情は、先程までの眠たそうな顔から一変して、妖艶に笑みを零すまでになった。




例えるならそう・・・・・・『痴女』。




そうして、彼女が取り出したのは・・・・・・













【-H-】ELLOWEEN












ブレイクD:『なん・・・だと!?

バウンスD:『俺たちの他にも・・・ガイアメモリを持つ人間がいたのか・・・!?


月夜に光る黄色いガイアメモリと、いつの間にか装着されているロストドライバー。

彼女は、大きく深呼吸し、吐くように、





瑠華?:「変身・・・・・・





HELLOWEEEEEEEEN!




メモリをドライバーに突き刺し、起動する!

瑠華の身体は銀色の風に包まれ、一瞬にして、今壁に磔になっている彼女を超えた、
妖艶で美しい、『真の』戦乙女を降臨させる!




Dシホ:「あ・・・あれは・・・!!



遅れて現場にやってきたドクトル☆シホと初代の初穂も、その光景にちょうど出くわす。


初穂:「あれ・・・何だよ!?あれはまるで・・・・・・“ハロウィン仮面”じゃないの・・・!?


Dシホ:「2年前まで、この街をTOTから救っていた英雄・・・
     そして、あたしが作っていた『ハロウィン仮面』シリーズの、全てのモデル!


初穂:「はァ!?




Dシホ:「あたしは彼女を・・・勝手にだけど、ハロウィン仮面Xと呼んでいるわ」





ブレイクD:『そうか、思い出した・・・こいつ、2年前に俺たちの親父たちのグループを壊滅させた・・・魔少女だぜ』

バウンスD:『なんだと・・・あれが俺たちの・・・仇か!!!』



HW仮面X:「さぁ立ちなさい、私の顔に泥を塗る気?」


見る見るうちにクナイが取り外され、ハロウィン仮面Mはモデルたる彼女に身体を抱きかかえられた。


HW仮面M:「瑠華さん・・・あなた・・・///


HW仮面X:「さぁ、共にイきましょう。今年もTOTを、駆逐するのです!


HW仮面M:「・・・・・・はい!!



ブレイクD:『親父の仇ィイイイイイイイイイイイイ!!!!!



バウンスD:『おんどらぁアアアアアアアアアア!!!!!



兄弟も。仇を打たんと発狂した頭で2人のハロウィン仮面に特攻を仕掛ける!

しかし、2人の戦乙女は、なおも妖艶な笑みを浮かべるばかりで・・・・・・



HW仮面X:「行きますよ、マイシスター」



HW仮面M:「はい・・・お姉様!」



今、ハロウィンメモリがドライバーから抜き取られ、右腰のホルスターにセットされる!



【-H-】ELLOWEEN MAXIMUM DRIVE



MAGIC SELECT


HW仮面M:「パワー・・・マキシマム!!


STRENGTH MAXIMUM




2人の足が閃き、同時に上空に舞い上がる!




HW仮面X:「ハロウィン・エクストリーム!!


HW仮面M:「マキシマム・ハロウィンライダーキック!!




2人の鋭いキックは兄弟の土手っ腹を大きく打ち抜き、



ブレイクD:『おとうとぉおおおおおおおおおおお!!!!!


バウンスD:『あにきぃいいいいいいいいいいい!!!!!





大きく爆発して、降ってきた2人のメモリは空中で崩壊していった・・・・・・。








REFORMATION COMPLETE



優子:「・・・ふぅ」



実を言うと、瑠華が出てきた辺りからあまりの出来事に脳が混乱を起こして、脳内麻薬がストップしていた。

そのおかげで、奇跡的にも自分の意志で行動出来たし、自力で変身解除も出来た。
二度と変身するもんかと誓いつつ。


優子:「あの・・・瑠華さん・・・なんですよね・・・??」


そう話しかけると、『本物の』ハロウィン仮面はクスリと笑って、


HW仮面X:「私は、以前のTOTとの戦いの影響で記憶を亡くしていました。
     今でさえ少し取り戻しましたが・・・たぶん明日には元通りです」

優子:「そう・・・ですか」

HW仮面X:「・・・どうやら、記憶を亡くしている間にお世話になったようですね。ありがとうございます」

優子:「いえ・・・その・・・」

HW仮面X:「私はまた記憶を亡くしてしまうかもしれません・・・またしばらく、お世話になっても・・・」

優子:「・・・はい、もちろんです!

HW仮面X:「・・・・・・ありがとうございます、誇り高き、私のマイシスター」



そうしてまたニコッと笑うと、彼女は屋根に飛び上がって・・・・・・



Dシホ:「待って!ハロウィン仮面!!


ギリギリの所で、シホが呼び止めた。


Dシホ:「あなたは2年前まで、この街でTOTと戦ってきた戦乙女・・・・・・
     あたしはあなたの大ファンで、あなたを追い求めるため・・・いや、あたしは・・・・・・
     あなたみたいになりたかった!だから、『ハロウィン仮面』を創り出した!


初穂:「お前・・・じゃあなんで私や彼女に・・・」

Dシホ:「そっ・・・それは・・・まだ実験段階だったから・・・」

初穂:「私たちはモルモットかっ!?


HW仮面X:「くすっ・・・ありがとうございます。でも、私になりたいと思っちゃいけません。
     私のこの身体はもう・・・『変態淑女』というキーワードには収まらないくらい酷いですよ?


Dシホ:「だがそれがいい!!


HW仮面X:「おもしろい人です・・・いじめたくなっちゃう・・・いやいじめて欲しいかも・・・迷っちゃうな・・・///
     来年また会える日まで、どうされたいか考えておいてくださいね?///


初穂:「おいおい・・・本物って・・・両方いけるんかい・・・」

優子:「あはははは・・・・・・;;」




そうして、彼女は姿を消した―――――









Final









―――――11月1日、朝の9時。



優子:「食後のデザートに、カボチャのゴマ団子を作ってみました!
     昨日のカボチャが余ったので、挑戦してみまして」

瑠華:「本当ですか〜?おぉ、おいしそう・・・ですね・・・じゅるっ


布団が恋しいのか、さっきまで被っていた布団をひざ掛けにして、瑠華は目の前のデザートに目を輝かせていた。


ところで、昨晩帰ってきてみると、瑠華は自宅のドアの前で寝息を立てていた。
そこからベッドに運ぶまでが重労働だったのだが、今となっては良い思い出の一部だと優子も思う。


加えて、彼女が起きてみると、彼女は夕べの記憶を全て失っていた。
優子自身も昨晩瑠華が出てくるまでの記憶がすっぽり抜け落ちていたが、考えるだけ恥ずかしくなりそうだったので止めておいた。


でも、それで良かったのかもしれない。

全部、ハロウィンの思い出として心の片隅にでも置いておけば、十分だった。



優子:「そうだ、瑠華さんが言っていた駄菓子屋さん、私も連れていってくれませんか?」

瑠華:「うーん・・・・・・うん、行きましょう〜♪あの感触、あなたに教えようと思いますよ〜?」

優子:「はい、楽しみです♪」


瑠華:「・・・・・・その前に、もうちょっと寝ても?」


優子:「・・・・・・はいはい;;」




だって、前よりももっと彼女が好きになった気がするんだもの。





Dシホ:「・・・さーてと、来年に向けて、ハロウィン仮面のシステムを改良するわよ!」

初穂:「もう止めとけよ・・・本物出たんだろう?」

Dシホ:「いいえ!あたしのスピリッツは燃えたぎっているわ!
    あたしがハロウィン仮面になれるまで、頑張ってみせるわよっ!!

初穂:「ハァ・・・・・・勝手にしてくれい」









Super Extraordinary Masked-Helloween “M”

Thank you very much for reading!












<特報?>



??:『フゥーッハッハッハッハッハッ!!!』


??:『えっ?私が誰かって?何で知らないの!?意味わかんない!!』


??:『・・・・・・って、名乗ってないんだから当たり前か』


??:『私の名は、堕聖人・ジャッコ☆ランターン!TOT総首領の、ジャッコ様よ!』


JOL:『今年のハロウィンは、私たちTOTがこの世のお菓子を支配するべく大活躍するわよ!』



JOL:『おまえら――!!言うこと聞かないとジャッコ様のおやつにしちゃうぞ――!!!!



沙凪:『させるかボケぇええええええええええ!?





L-R!×@びっくり! 4年ぶりのコラボ?新作!





良緒:『み、みなさぁん!!大変ですっ!!』


始穂:『いろんなパラレルワールドのハロウィンが・・・!?』


帆希:『この世界に・・・?』


アリス:『割り込んできたァ!?!?』



JOL:『フゥーッハッハッハッハッハッ!!!ジャッコ様のおやつにしてやろうか――!!!』



沙凪:『そんなことはさせない!!行くわよ!』



『GET SET MASKED HELLOWEEN』



『Z-EXCELSIOR SET UP』



【MAXIMUM MAKE UP】



『KAMEN-RIDE HELLOWEEN-KAMEN』



≪HELLOWEEEEEEEEN!≫



『HELLOWEEN ON! READY?』



【HELLOWEEN PLEASE!】



『カボチャ! LOCK-ON!』





< L-R!×@びっくり! スーパーハロウィン大戦・OVERBLAST! >





明里:『ここは・・・・・・・・・ど、どこ?』




 L-R!×@びっくり!×D's スーパーハロウィン大戦・OVERBLAST! 




― 2013 HELLOWEEN? ―






※諸注意

・投稿時期は未定ですが、これをやるために今回の話をリバイバル投稿しています。

・嘘予告にはならないと思いますが、気長にお待ちくださいますよう。
















<     ト      ク      ホ      ウ      >


















―――――そう、夢か現実か―――――





―――――そう、居るか居ないか―――――





―――――そう、存在するか否か―――――





―――――そう、それは、嘘か、真か―――――





再び現代に現れるアンデッドたち。


消えていく仲間たち。


現れる新たな戦乙女たち。


彼女たちの周りに渦巻くのは、真実か、虚偽か。




邪魔だけは・・・してほしくありません。センパイ


アンタも・・・あたしの闇に飲まれちゃいナ!!



もうやめてください!こんなの・・・あなたらしくない!


いいだろう。我が相手になる・・・・・・守護神を舐めるな!!!



聞こえなかった?Get out quickly little girl?


いーっぱい、遊んであげるんですぅ・・・・・・♪



ちょっくら・・・倒しちゃおっかなっ・・・☆


・・・・・・アンタは私が倒すってわけ、お分かり?



目を覚まして・・・そんな嘘・・・聞きたくないよ・・・!!


沙菜さんが嫌って言っているんです・・・・・・わたくしも、容赦はしませんよ?



『久々に・・・・・・昔の自分を思い出せそう・・・かも?』


『あたしは先に進む・・・・・・アンタを倒してでも!!』



あくまでマイスターの邪魔をするならば・・・・・・申し訳ないですが、容赦するつもりはありません



私信じてるよ・・・・・・ナギー君のこと




あなたが・・・あなたが私の母様を・・・!!




アンタ・・・・・・まさかアイツの・・・・・・!?




嘘が嘘を呼び、それらが真実を生み出す。





虚をひっくり返す(REVERSE)のは、誰だ!?




激情版・LEANGLE-REVERSE!−Truth in the Lie−




サヨナラ、アイカワハツホ―――――




凪介ぇえええええええええええええええええ!!!!!




――― 01 REMOVE = Round × Reverse ―――


――― November 3rd 2013 START!! ―――




――― Do you wanna ENCORE REVERSE? ―――



,●もうすぐハロウィンですね。


なくもすいなでございます。

D's第4話とレンリバ新訳を書いている最中ではございますが、表題の通りですが久々にやろうかと。

ただ、レンリバは完結しちゃったし、D'sはちょっと話数が足りないので、
今回は昔リクエストで書いたSSをリバイバルした次第です。


設定はこのあとがき欄の最後に載せてます。




●諸星優子ちゃん


これ書いてて思い出しましたが。。。まだ苗字出してなかったね!!


レンリバANOTHER-TUNEの第5話で出ていた『優子』ちゃんです。



先述でも書いてましたが、個人サイトの方でレンリバを応援してくださっていた、
『ゲロロ軍曹』さんより原案を、と申しますか、

まだレンリバ連載中の頃、別サイトでレンリバの嘘予告を書いてくださった方で、
そこに登場したキャラがこの『諸星優子』ちゃんです。



・・・・・・というか、その嘘予告が、激情版レンリバの原案でもあるんですけどね(爆



いろいろやり取りさせていただいた中で、『ハロウィン仮面M』のSSを書いてきて下さったことがあり、
この『ハロウィン仮面M』はそれを(ほぼ勝手に)原案にリメイクしたのが今回投稿したSSです。

九条瑠華さんの設定も(ちょっと違う形で)頂いてましたが、
ハロウィン仮面Mのリメイクに伴ってサプライズ登場させています。


とはいえ、もとの優子ちゃんは激情版のキャラです!向こうの優子ちゃんはなかなか手ごわいですよ?

大丈夫かなナギーくん?(ぇ


私がケイジバンを一度引退してからもやり取りはあったんですが、
私が仕事やらプライベートやらでハチャメチャになってSS書きから3年もの間離れてしまい、
今では見なくなってしまいましたが。。。本当に申し訳ないです。。。



●スーパーハロウィン大戦


予告は(敵キャラ含めて)即興です。書きながら決めました。あと企画も数時間前に立案しました。


ですので、ひょっとするとハロウィン過ぎちゃうかもしれませんが、
レンリバ・@びっくり連載当時の『The 〜 of Valentine』3部作を継承したようなアホさ加減お話にしたいです。


最後の機械音声・・・・・・ふふふ、もうネタにしますよ私。
ハロウィン仮面、既に頭にカボチャかぶってますもんね。




激情版レンリバ! 11/3(日)に第1話公開決定!!


ということでして、いやまだ全話出来てないんですが。

まぁ第1話くらいなら動かないだろうということで、ついに始動いたします。


発表が急(というか思いつき行動)なので、ちょっとリードタイム空けます。

リードタイム中にもしかするとD'sの4話行けるかも?


第1話は11/3(日)のどこかの時間で上げれたらと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。


・・・少なくとも、鎧武やってる時間より後になりますのでよろしくどうぞ。




そんなわけで今日はこのくらいで。アリーヴェデルチ!



追伸:D'sのレスはD'sの時に返答します。トレハさんもうしばしお待ちを。




>設定


・諸星優子(もろぼしゆうこ)

今回の主人公兼最大の被害者。
外見はクールビューティーさを醸し出しているが中身はいたってピュア。
初代ハロウィン仮面が負傷したことで、謎の研究者『ドクトル☆シホ』(後述)によって二代目=ハロウィン仮面Mに選ばれてしまう。


・ドクトル☆シホ

TOTを打ち砕くために『ハロウィン仮面』のシステムを開発したマッドサイエンティスト。
初代が負傷した代わりにすぐ二代目として優子に目をつけた。
白衣+伊達メガネ+ツインテール。正体は・・・?


・相川初穂

ドクトル☆シホに初代ハロウィン仮面として選ばれ、無理矢理活躍させられていた女性。
ドクトル☆シホと面識がある。


・九条瑠華(くじょうるか)

諸星優子のルームメイト。年齢不詳だが優子より上なのは確実。
過去の記憶も無く素性も不明で路頭をさ迷い歩いていたが、ひょんなことから優子に出会い、以来彼女と同居している。
基本腹ペコで寝るのが大好きなダルい子。ダルデレ。



>ハロウィン仮面M(aximum:えむ)

ドクトル☆シホが発明した二代目ハロウィン仮面の俗称。
『初代』のシステムから大幅に改良され、バックルを左右に開くと額にMの字が着いたハロウィンカボチャのエンブレムが現れる新機軸ベルト
『ハロウィントリッカー』(初装着者記憶&認識機能つき)で変身する。

基本的には初代と同じスーツだが、色が明るめのオレンジに変わっている。
(カボチャっぽいマスクを被っていたり、御用になり兼ねない程派手なボンテージを身にまとっていたり)

当然、初代同様脳内麻薬をドブドブ溢れさせるので変身中は羞恥心を完全に失っている(しかも変身中の記憶が失われる)が、
TOTに対抗すべく装着者の身体を『初代に近づけさせる』ことが出来る(身体強制助成長促進機能)。
ただ、初代との最大の違いとして、初代はドSであったのに対し二代目はドMであり、いろんな意味で最強と化している。

戦い方は初代からカスタムされたステッキ『ニューパンプキンスター』による魔法攻撃、及び格闘攻撃がメイン。
なお、格闘においては中国拳法のような無駄の無い鋭い一撃を繰り出す事ができる。

魔法に関しては初代(ファイア、アイス、パワー、アクア、ブライト、ウィンド)に加えて
『ウォール(PROTECTION)』、『スライド(HOVER)』が備わった。

※ウォールは『@びっくり〜』の沙凪版、いわゆる『派生初代(1.5)』で追加したものなので初代には無い


さらに二代目からの恩恵として『マキシマムスペル』を発動する事が出来、各能力を極限まで引き上げる事が出来る。

必殺技は『パワー・マキシマム(STRENGTH MAXIMAM)』によって右足を強化、相手を上空に蹴り上げてからサマーソルトキックを繰り出す『マキシマム・ハロウィンライダーキック』。

ただし、マキシマムスペルは通常のスペル50回分を一気に放つものであり、その威力と引換に代償も大きく、連続して使用することは難しい。
一戦闘に2回が限界。



>ハロウィン仮面(初代)

物語の一年前に活躍した初代のハロウィン仮面で、相川初穂が強制変身させられる。
前述の二代目の全てのモデルとなっており、性格はCHI女でドS。
今作では二代目制作のために凍結中。
ちなみにベルトの名称はハロウィンベルト(←地味)。


>ハロウィン仮面Mild

『二代目』のプロトタイプ。ベルトである『ハロウィントリッカー』の試作版(額にはMDと書かれている)で変身する。
『機能確認』のために試作されているため、二代目側とはいえマキシマムスペルの機能は制限されている。

装着者認識機能が無いため誰でも変身できるが、脳内麻薬はそれなりに出る。
ただ、プロトタイプなのでそれも制限されており、記憶が消えるほどではない(から戦闘向きではないのである)。
劇中ではドクトル☆シホが自ら装着してテストしていた節があったり、優子と出会う前の初穂が使用した。


・TOT(てぃーおーてぃー)

『Trick Or Treat』の略称で、毎年ハロウィンの日にお菓子をふんだくる馬鹿軍団。
しかし毎年のように壊滅させられてはケロリと復活するという、Gのようなしぶとさも兼ね揃えている。
まれに(特に幹部級は)怪人が混じっている。


>TOTの怪人

>ブレイクドーパント(兄)&バウンスドーパント(弟)

壊の記憶、弾の記憶をそれぞれ持つドーパントで、TOTの幹部兄弟が使用。
兄は全身が鈍器になっており、弟は身体を丸めて弾ませるトリッキーな攻撃が可能。
それらを生かした合体攻撃として、兄が弟を飛ばして攻撃することも出来る。


>ハロウィンドーパント?=ハロウィン仮面X(eXtreme:えくす)


少し記憶を取り戻した九条瑠華が、ハロウィンの記憶を持つハロウィンメモリとロストドライバーで変身。
何故彼女がハロウィン仮面に変身出来るかは今の所闇の中。

武器はロッド状のハロウィンロッド。6つ(ウォールとスライド以外)の術を”詠唱無しで”使うことが出来る。
必殺技はハロウィンメモリのマキシマムドライブ=ハロウィン・エクストリーム。

なお、本人は初代と二代目を足したような性格をしており、変態淑女というレベルには収まらない。
ドSでもあり、ドMでもある、真の変態淑女である。

2年前にも活躍していたが、それ以来現れることが無く(→2年前の戦いで記憶を無くしていた)、
彼女のファンだった少女が彼女をモデルに作り出したのが『ハロウィン仮面』シリーズである。

つまり、↑の少女は後のドクトル☆シホ。
言ってみれば、全てのハロウィン仮面の原型とも言うべき存在。名称は劇中の通りドクトル☆シホが命名。



<2013年10月13日(日) 22時06分>初回投稿
<2013年10月14日(月) 11時57分>一部修正しました
<2013年10月14日(月) 22時56分>一部修正と予告漢字変換ミス。。今回修正ひどい。。。orz,#000000,,e0109-106-188-98-9.uqwimax.jp,1 2013年09月29日(日) 17時24分17秒,20130929172417,20131002172417,gZktqMfIrrY0A,仮面ライダーD's【Diez】<3rd Folder>,sui7kumo,,,【Masked Rider D's】

Now Uploading―――――3rd Folder:『突入、電子の世界>>Dive into the Digital』









アイス:「なるほどね・・・・・・大体分かってきた」


透き通る青色のコンソール上のキーボードを打ちながら、青色ツインテールの少女・アイスはひとりごちた。


周りはクリーム色のシックな壁紙、アイスが背を向ける大きな出窓の外側は空色で所々電気が走る。
その部屋の中心に、青色のコンソールとウインドウに囲まれて、同じく青の透き通ったリクライニングチェアに座るアイスの姿があった。
目の前の画面には、ボロボロになったウルフウイルスが静止画で映っている。


ここは・・・ディーズアクセスの中、アイスのデジタルスペース。言い換えれば、アイスの根城。

ちなみにどうでもいい話だが、部屋の中の構造はアイスの一存で自由に変えられることを付け加えておく。
今はちょっとした探偵事務所風。

そこへ、作業中のウインドウに割り込んで別のウインドウが開いた。


明里:≪おはよう・・・お姉ちゃん・・・≫


しかし、ウインドウには鼻しか映っていなかった。


アイス:「うわぁああ!?ガキんちょ寝ぼけんな!?あと顔近い近い!!

唐突にポップアップされたので、アイスも驚いて危うく椅子から転げ落ちかける。
なんとかズッコケを回避しつつ、鼻しか写ってないウィンドウに触れ、摘むように指を動かすと、
一瞬でカメラがズームアウトされ明里の寝ぼけ顔が表示された。

明里:≪ぇ・・・・・・あぁ・・・ごめんなさい≫
アイス:「えっと・・・そっちの時間だともう6時か。おはよっ」

体制を立て直しつつ、別のウインドウで明里側の時間を確認しながら、ズームアウトした明里にご挨拶。
当の明里は、とても眠たそうに目をこすりながら細長い目でアイスを見つめていた。

アイス:「どう?気分は?」
明里:≪うんまぁぼちぼち・・・ねぇ、ここリンゴさんの家だよね?≫
アイス:「そうよ?」

明里:≪でも、えっと・・・・・・私、変身して・・・・・・?≫

アイス:「倒れたのに?って言いたいんでしょ?あの後リンゴが起きてアンタを回収したのよ。
まぁその後の処理が大変で遅くまで起きてたから、今はぐっすり寝てる頃だと思うけど」
明里:≪う〜〜ん・・・・・・ねぇおね・・・アイス、さん?≫
アイス:「呼び捨てでいいわよ。気兼ねなくって言ったじゃない」

明里:≪あ、うん・・・・・・私、結局どうなったの?≫

アイス:「・・・・・・は?」

思わずアイスも目を点にして呆けていた。質問の趣旨がいまいち不鮮明。


明里:≪私・・・・・・戦ってた時の事、あんまり覚えてないんだよね・・・・・・≫


画面の中で明里が苦笑いを浮かべる。そう言えば心なしか具合もあんまり良くないような気も。
すると、アイスはひとつ溜息をついて・・・

アイス:「やっぱりね」

明里:≪え?それって・・・・・・≫
アイス:「まぁ、説明はするけど、とりあえずこれ見て」

キーボードを軽やかに叩き、アイスは一つの動画ファイルを呼び出す。
そしてEnterキーを一呼吸置いて、



―――――>Enter



<少女閲覧中>



『おイタが過ぎたみたいね。悪い子には、お灸を据えなきゃ・・・ね?♪』

『舐めてもらっては困るわね!ちょっと痛いわよっ!』


さ−て、お注射の時間よっ!



<少女閲覧終了>



アイス:「・・・今のが、リンゴのバイクに仕込んでもらったカメラから撮った戦闘映像よ」

明里:≪今のが・・・私!?/////////


当の本人は画面の奥で耳まで赤く染めて今にも白目むいて倒れそうだ。

アイス:「今度はアンタ視点の動画もあるけど・・・・・・見る?」
明里:≪いや・・・心の準備が出来そうに無いよ・・・≫

先程の映像が自分のことながらある意味過激すぎて、明里はついに目を回してしまった。

アイス:「ふぅ・・・まぁいわゆる・・・データ酔い・・・・・、ね」

明里:≪データ酔い?≫

アイス:「そ。データ酔い!」


データ酔い。

それは、DFSが開発・実用化されてから問題視され始めたものの一つで、
要は車酔いなどの乗り物酔いに似た作用で、DFSを利用し続けることで同じように気分を悪くしてしまう症状である。


アイス:「データ酔いは強弱はどうあれ誰にでも起こるわ。もちろん、リンゴもディーズを30分も装着し続けたらデータ酔いでもう動けないしね。
     でも、アンタは特殊なのよ・・・・・・いや、異常よ、ぶっちゃけ」

明里:≪異常って?≫

アイス:「アンタ、それが開始5秒・・・・でやってきてんのよ。しかもかなり強力な」

明里:≪ごびょ・・・早っ!?≫

アイス:「でもって、その強すぎるデータ酔いのせいで、アンタが逆にデータを引き込んで、ディーズの情報がアンタの脳ミソへ一時的に逆流してたのよ。
     つまりは、アンタは変身している間、お酒に悪酔いしたみたいに動いたまま、あたしが教えてすらいないディーズの情報を駆使出来ていた・・・みたいな。
     それが・・・夕べのアンタよ」

明里:≪で、でも、今はあんまり覚えてないんだけど・・・///

アイス:「お酒に酔ってると、テンションがおかしくなる代わりにその間の記憶はたいてい忘れるらしいわね。
     あたしは良く分かんないけど、現に泣き上戸のリンゴがそうらしいから無いとは言えないわ。
     ・・・それと似たような理由じゃないかしら。推測ではあるけど」

お酒で酔うと、自分があんな感じになる。あんなハイテンションで自由奔放な・・・・・・。
動画で見たから今は内容だけは分かるものの、やっぱりアレが自分だとは明里にはなかなか理解出来なかった。

明里:≪・・・あっ、そうだ、女の人は!?あのウイルスの!≫
アイス:「随分唐突ね・・・・・・無事よ。DAT.A.の医療班を呼んで、今は安静にしてるわ」
明里:≪安静・・・?えっと、フリーズ・・・ってのは?≫
アイス:「アンタがウイルスを駆逐したでしょ?もう、被害者の身体には残ってなかったわ」

アイスがコンソールを軽く動かすと、明里側に病室の映像が映された。

右上に『LIVE』と出ているあたり今現在の情報らしいが、その女性・・・かつてウルフマジルスだった彼女がスヤスヤと寝息を立てていた。
その隣では、彼女がマジルスだった頃にフリーズさせた彼氏も横たわっている。

・・・明里が商店街で見た、顔面の青い模様がすっかり消え失せていた。

アイス:「やっぱりマジルスの時の影響があるからしばらくは入院だけど、命に別状は無いわ。
     フリーズ化された彼氏さんも、根源を退治した事ですっかり元通り。ガキんちょ、アンタが救ったのよ」

明里:≪よ・・・・・・良かったぁ・・・・・・≫

突然画面の明里の顔がフェードアウトする。力が抜けてしゃがみ込みでもしたか。
すると、その様子にアイスが噴き出して、

アイス:「アンタ、やっぱおもしろいわね・・・アハハハ!気に入ったわ!」
明里:≪えっ・・・あ、ありが・・・と///

アイス:「そうだ、ちょっと頼みがあるんだけど。リンゴに内緒で」

明里:≪え・・・?≫

そう言ったアイスの口元は誰から見ても分かるくらいはっきりとニヤけていた。



―――――5時間後=10:46am



幕窓町駅西口、商店街がある方とは正反対の方角。
そちら側は、東口側程では無いとはいえDFSによる恩恵を受けて発展している、一種の電気街である。

その電気街の外れ、とある雑居ビルの出入り口から、小太りの男性が意気揚々と出てきた。
満面の笑みで手に持つ紙袋を抱きしめ、この真昼間から恍惚の表情を浮かべている。

男性:「んゆ〜〜☆ついに出たぞナ〜『魔法剣士☆ソードサーナ』のDVD-BOX!!!
    今日という日を昼寝しつつ徹夜して待った甲斐があったァ・・・!
    さーて、帰って早速PLAYけって〜い!」

ちなみにその雑居ビルの2階と3階には、いわゆるアニメショップのチェーン店が入っている。
紙袋の中身も、パッケージに萌えキャラが大きく写るDVD5本セットパッケージである。
一応、どういう内容かは説明を自粛しておくが・・・・・・読者のご想像にお任せすることにする。


そうして、お腹を揺らしながら足取りも軽く去っていく男性を、遠くの方で見つめている存在があった。

背はあまり高くは無いが、真っ黒いローブを全身にまとい、フードを深く被っている。
その黒ローブの何かは、男性が去っていくのを確認すると、後を追うようにふらふらとその歩みを進み始めた。

まるで、その男性に標的を絞っているかのように。



―――――12:30pm=カフェテラスMisaki


一方、東口側の商店街の中にあるカフェテラス。
早番、つまり開店8時からのシフトだった明里は、ようやく休憩時間にありつくことが出来た。

近くのコンビニでお昼ご飯を買ってきてスタッフルームのデスク上に一度置くと、
踵を返してロッカーを開け、自分のかばんを引っ張り出した。
チャックを開け、中をごそごそと・・・・・・

明里:「・・・あった!おまたせ、アイス」

アイス:≪んもう!待ちくたびれたわよ!≫

それは、ディーズアクセスだった。
明里の声に応じて映った画面には、腕を組んでプリプリ怒ったアイスの姿が映し出されている。


『一緒に連れ出してほしい』と願ったのは、アイスの方だった。

それこそ、明里は突然の事に訳が分からず戸惑いと驚きが入り混じっていたが、
一度家に帰る必要があった明里に『家までのナビを買って出る』事を条件に突きつけ、強引ながら了承を得たのだった。

明里:「仕方ないよ。お仕事だもん。今日は16時までだから、今から1時間は休憩できるよ」
アイス:≪はァ?じゃあそれ終わったら・・・あと2時間28分15秒も待たなきゃいけないの、あたし?≫
明里:「ごめんね・・・そういうお仕事だから。でも、アイスの事だからそれくらい察しがつくかと思ったんだけど・・・違うの?」

から揚げ弁当のから揚げを頬張りながら、横目でアイスに問いかけてみる。
『連れ出して欲しい』とは言われたものの、さすがに仕事中にお相手する事なんて出来ない。

すると、画面のアイスがきょとんと呆けた顔になった後、顔を少し赤らめて・・・

アイス:≪あたしは・・・・・・アンタに興味があるのよ。
     AIのあたしでも理解しがたい事を、アンタはすんなりやってのけた。
     それに、あんな事になった自分の心配より怪物になった人の心配を優先するなんて・・・。
     だから、しばらくアンタを観察してみたくなって・・・・・・ね≫

明里:「アイス・・・」

アイス:≪あ・・・あたしは、自分の眼で見たものしか信じない主義なの!それだけなんだからね・・・!?//////

そう言ってアイスは、赤面しながらそっぽを向いてしまった。

しかし、それが早かったか否か、

アイス:≪・・・ちょ、何黙ってんのよガキん・・・・・・え?≫




明里:「―――――――――――――――――――――」




明里の意識はどこかへトリップしていた・・・・・・。






急に視界が吹っ飛び、目の前が真っ白になる。
そして、遠くから画面がいくつも飛んできては、明里の側を通り過ぎていく。




――――――――たくさんの女の子?


――――――――ヒモのようなもの?


――――――――緑色の板?


――――――――青色の影?





その全てが通り過ぎ終えた時、目の前の視界も元のスタッフルームに戻っていた。


明里:「――――――あれ?私・・・また・・・」

アイス:≪ガキんちょ・・・まさか、また何か見えたの!?≫
明里:「うーん・・・・・・??」

自分でもよく分からない。
明里が少しばかり頭をひねっていると、遠くからドタバタと足音が聞こえてきた。
その轟音は、一番近いところで止まり、


ドバンッッ!!


目の前のドアが勢い良く開かれた。

あきら:「ハァッ・・・ハッ・・・め、めーりん!」

突然、明里の幼馴染であるあきらがスタッフルームに飛び込んできた。
入ってくるなり肩で息をして呼吸を整えながらも、明里に迫る勢いは止まらない。

明里:「あ、あきらちゃん・・・!?どうしたの??」
あきら:「ハァハァ・・・・・・た、大変なの!外がすごいのよ!」
明里:「外・・・??」



―――――そして、訳も分からないまま明里はあきらに手を引かれて外に繰り出した。



『いやーん♪』

『おーっほっほっほっほっ!』

『ねぇねぇ、おにーちゃーん♪♪』

『みんなー!来てくれてあ・り・が・とー!愛し合ってるかーい!?♪』

『アンタは一生私についてくればいいってわけ、お分かり!?』

『まぁまぁ♪そんなにお母さんの事が好きなのぉ?♪』

『ら、らめぇ!?そんなところで・・・!!//////

『あたしを怒らせると・・・すごいことになるよ・・・ぶつぶつ・・・』

『ほらぁ!?いつまで寝てるのよ!学校に遅れちゃうよ!』



カオス、という言葉はこういう時に使うものなのだろうか。


商店街中に、ありとあらゆる女性、かたや小さい子供、かたや同い年くらい、かたや干支一周離れ、
金髪、茶髪、黒髪、青、赤、緑、銀、ピンク、ショート、ロング、ツインテ、ポニテ、おかっぱ、などなどなどなど。
それらが一斉に商店街内に溢れかえり、客に絡みまくっているのだった。



明里:「なに・・・・・・これ・・・・・・」


想像を遥かに超え・・・・・・否、こんな想像は普通は出来やしない。
明里の頭の中は一瞬にして真っ白になった。


あきら:「ドキドキするよねえ・・・・・・いろんな意味で」
明里:「いや・・・だってこれ・・・ありえないよ・・・??」

すると、その溢れかえった群衆から女の子がこっちにやってきた。
背は明里より低めでピンク色のショートボブ。ぱっと見、後輩あたりだったらしっくり来る感じで。

しかし、その少女の様子はだいぶおかしく、足をがくがく震えさせては明里の方を向いて惚けていた。


『嗚呼・・・見つけました・・・愛しのお姉さま・・・っ♪』


明里:「に゛ゃ――――――――――――!?/////////


そして急に抱きつかれて明里も思わず裏声が。


明里:「いやぁあああああああああ!?!?


そして気が動転して思わず少女を突き飛ばしてしまった。

あきら:「めーりん!?大丈夫・・・?」
明里:「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・あっ!?えっと・・・ごめんなさい!?」


『ああっ・・・・・・これが、愛のムチなんですね、お姉さまっ・・・!』


ジジッ


あれ?少女が少しかすんだような・・・・・・?


アイス:≪はっ・・・!?ガキんちょ!こいつ・・・DFSで出来た具現データよ!?

ポケットからアイスの声が小さく届いた。アクセスをバイブ機能で震わせながら。

明里:「DFS?・・・えっ、この子たち、データなの!?

アイス:≪何ですぐ気づけなかったのかしら・・・!
     でも、ここまで大量に出すものなら発信源くらいありそうなものだけど・・・この近くじゃ検知できない!


明里:「じゃあ、ここにいる女の子たちはみんなデータで出来ていて、それを作ったのは・・・

アイス:≪・・・・・・十中八九、マジルスの仕業ね


あきら:「何喋ってるの、めーりん?

明里:「ぅわああああああああ!?


間を割って入ったのは隣にいたはずのあきらだった。
そして、明里が持っていたディーズアクセスそれをまじまじと見つめては・・・


明里:「あの、えっと、それ・・・は・・・」

あきら:「何これ!?かぁいい―――――――――!!

明里:「・・・・・・へ?」

明らかに画面の少女に惹かれていた。もっと不審がってもいいのに意外な反応。

アイス:≪と・・・とーぜんでしょ!?あたしはネット世界一パーフェクトなAIなのよ?//////

しかも画面の少女はだいぶ調子に乗り始めた。

明里:「アイスったら・・・」
あきら:「この子、アイスちゃんって言うの?機械音痴のめーりんがこんなの持ってるなんてね!
     ボクはめーりんの幼馴染のあきら。大変だと思うけど、めーりんをよろしくね?」

アイス:≪お・・・・・・おぅ!あたしに任せておきなさいっ!!

もうだいぶ自棄になって胸を張っている自称・ネット世界一パーフェクトなAI。

あきら:「それにしても・・・この女の子たちがデータで出来てるなんてね・・・・・・」
明里:「え?・・・そこ聞こえてたの??」
あきら:「バッチリ。でもさぁ、こんなにたくさん、どこから出してきたんだろうね?めーりん分かる?」
明里:「わ、私に聞かれても分かんないよう!?・・・でもどうやって出てくるんだろ?」

アイス:≪え?・・・ったく、あんたら無知ねぇ・・・?
     具現データは、予め作っておいたデータフォルダからデータを取り出して、専用機器を通じて三次元へ具現化させるのよ。
     で、データを作る段階でいろいろいじる事で、いろんな物を・・・・・・それよ!!

大ボリュームでアイスの声が2人の耳にこだました。耳がキーン。

明里:「な、何・・・?」

アイス:≪この商店街にはDFSを投影する専用機器・・・DF(デジタルフィールド)ローダーがたくさんあるわ。
     そこから一気にデータ少女が溢れてきたとしたら・・・この商店街のどこかに出元のデータフォルダもあるはず!
     ガキんちょたち、この商店街に自由にパソコンが使える所はある?≫

明里:「え?えっと・・・あったっけ?」

あきら:「この近くにネットカフェがあるよ!この先のファミレスの上の階!」

アイス:≪でかした!後はこの場所をどうするかだけど・・・≫



プツンッ!



と、突然何かが切れた音が商店街中に響き渡った。

すると、目の前にいた女性集団データが、目の前にいた後輩ドM少女から奥の方へ見る見るうちに消えては光となって、遠くの方へ飛んでいってしまった。
絡まれていた客たちは疲れきったような顔でその場に倒れこみ、そうして見えてきた向こう側に・・・・・・

リンゴ:「まったく・・・・・・手間かけさせてくれちゃって」


黒いバイクスーツを見にまとったリンゴがPDA片手に息を切らしていた・・・さらに汗だくで。

明里:「リンゴさーん!?

アイス:≪商店街中のDFSフィールドがOFFになってる・・・リンゴ!いるならいるって言いなさいよね!?≫

リンゴ:「言えたらとっくに言ってるわよ!!こっちだって妨害受けながら必死だったんだから!!」

リンゴ自身もフィールドを何とかしようと少女群集を挟んで明里のちょうど反対側でせっせと活動していたものの、
しばらくしてやはりデータ少女たちに気づかれ、いろいろな所を絡まれながら作業を続けていたのである。
おかげさまで全身汗びっしょり。

あきら:「・・・知り合い?」
明里:「うん、まぁ・・・で、リンゴさんは何をしていたの・・・?」

アイス:≪簡単な事よ。この商店街のDFS機能を一時的に切ったの。
     それがすぐに出来るのは、DFSを管理しているD.A.T.A.の人間、つまりあそこにいるリンゴってわけ≫

つまりのところ、DFSの全機能を切断する事で、DFSで具現化されていたデータはそれを維持出来なくなり、
自動的に元のデータフォルダに戻る。
それが、先程飛んでいった光の理由である。

リンゴ:「明里ちゃん!早く光を追いかけて!ここから先は、あなたにしか出来ない!」

明里:「私にしか・・・・・・でも、私で・・・いいんですか・・・?」

リンゴ:「どうもこうも・・・・・・アイスがディーズの装着者情報を勝手に委譲しちゃったのよ、あなたに!

民間人=あきらの存在に気づいたリンゴは、素早く明里に近づき耳打ちする。
危うく特秘事項を口走りかける所ではあったが・・・。

明里:「じゃあ・・・あれを使えるのは私だけで・・・今のリンゴさんは出来ない・・・と?」

アイス:≪あたしは気に入ったらとことん愛でる主義なの!気合入れなさいよね、ガキんちょ!≫

リンゴ:「何が『気合入れなさいよね!』よ!!ドヤ顔しちゃってもう!!
     とにかく、今はあなただけが頼りなの・・・こうなったら、私もあなたに賭けてみる。同じインシュレーターであるあなたに・・・ね」

一瞬、明里がリンゴから目を逸らし、俯く。
その後ろであきらが声をかけようとしているが、かける言葉が見つからず口をもごもごさせている。


明里:「・・・・・・私、思いました」


俯いたまま、彼女は口を開く。

明里:「ずっと考えてたんです。ひょっとしたら、それをやることが、居なくなったお姉ちゃんに近づく道なのかなって。
    それに、アイスを見て思ったんです。これでひょっとしたら、一度切れたお姉ちゃんとの繋がり・・・その切れ端を見つけ出せるのかもって」

明里のディーズアクセスを握る手が強くなる。


明里:「もう・・・手が届かないのは嫌!だから、私は、お姉ちゃんに追いつきたい!!
    私はディーズこれで・・・お姉ちゃんの手をまた掴みたい!!!



顔を上げた明里の瞳に、光が満ちていた。
そうして、振り返りもせずに明里は地を蹴り、リンゴの横を過ぎ去ると、光の走った方へと駆け抜けていく。

リンゴ:「明里ちゃん!」

あきら:「めーりん・・・・・・一体・・・・・・?」


しかし光は、先程あきらが言ったネットカフェを何故か通り過ぎ、別の店舗の二階へと逃げていた。

階段を駆け昇り、辿り着いたそこは、何も無い、ただ広いだけの空間だった。
その部屋の真ん中に何故かノートパソコンが置かれており、光はそこに吸収されたらしい。

アイス:≪そういえば・・・外に出る前に何を見たのよ、ガキんちょ?≫
明里:「外に出る前?・・・あぁ、えっと、『女の子がいっぱい』『ヒモ』『緑色の板』『青い影』・・・かな?」
アイス:≪ヒモ?板?何言って・・・・・・伏せて!!≫


バシュルルルルッッ!!!


突然ノートパソコンからケーブルのようなものが飛び出し、明里に向かって飛んでくる!
それを明里はアイスの声で条件反射的にしゃがみこんでかわす。

アイス:≪DFSシールド展開!半径150cm!≫

と同時に、明里を球状の青いシールドが覆った。
さらにノートパソコンからケーブルが大量に飛び出し、シールドを割らんとびったんびったん叩き続ける。

アイス:≪気色悪っ・・・そうか、ヒモってこれの事だったのね!?≫

明里:「でも、明らかにおかしいよ、こんなの・・・その・・・マジルスだっけ?それもいないみたいだし・・・」

アイス:≪・・・・・・そうか、このバカガキんちょ!緑色の板って、電子基盤の事でしょ!?
     さすがのあたしでも気づけなかったわよ、情報が足りなくて!


明里:「そう・・・なの?」

アイス:≪これで繋がったわ・・・でも、とりあえずこのケーブルを何とかするわよ!≫

明里:「変身しろ、ってことだね・・・?」


おもむろにポケットから銀色のディスクカートリッジを取り出す。窓から差し込む日の光に銀色が少し映え、眩しく映る。
それを、ディーズアクセスにゆっくりと正確に差し入れる!


【D's SYSTEM STAND BY】


機械音と共に、現れたベルトパーツがディーズアクセスの両端に接続され、明里の腰に装着された。
露出したアクセス背面のモールトに模様が浮かび上がり、待機音が静かに鳴り響く。

左手をベルトに添え、右手を左上に突き出し、さらに真上に持ってくる。
意を決し、その右手をベルトのタービンへ振り落とす!

明里:「変身!


【DRIVE INSTALL】


音声と共にベルトから飛び出した3つの青いリングは明里を中心に回り、それに沿って青い光が集まってアーマーパーツを形作っていく。
数瞬経ってリングは明里に向かって収束し、パーツは明里の身体と融合して、彼女をディーズへと変貌させるのである。

スラリとした身体に密着する青いボディスーツのに這うように装着された銀色の装甲、右腕にライオンの顔にも似た大きな手甲、
同じくライオンの依拠を放つ、口だけ開いているメット。


改めて自分の意志で変身した明里は、その変わり映えに思わず目を輝かせていた。


ディーズD:「わぁ・・・・・・これがわたぎも゛ぢわ゛る゛い゛・・・」


が、途端身体を震わせ、どんどん顔色は悪くなっていく・・・。

アイス:≪データ酔い早っ!?5秒かかってないじゃない!?≫


ディーズD:「ちょっと待っ・・・・・・・・・・・・うふふふ・・・・・・あーっははははははは!


一度うずくまったと思うと、今度は顔色も戻って気が狂ったように高笑い。


ディーズD:「さぁ―――って!!お注射されたい子はだーれっ!?


アイス:≪あ・・・・・・この前と同じだ・・・ガキんちょ、平気?≫

ディーズD:「こらアイス!この前も言ったけど、私には『明里』っていうちゃんとした・・・」

アイス:≪その意気ならもう平気ね!?どうせやる事分かってんでしょ!?≫


この状態の明里とは、普段の関係がまったくもって効かないどころか反転すらされてしまう。
調子を狂わされ、アイスも半ば自棄になっていた。


ディーズD:「そんな自棄になっちゃダメよう。要は・・・ネットワールドに、飛べばいいんでしょ?


そうして左腰のケースから1枚のディスク・カートリッジを引き抜く。

透明のカートリッジに収められた緑色のディスクには、電子基盤の模様が描かれていた。
それをディーズドライバーの左手側に備わる専用挿入口に差し入れる。


【APPEND-DISK DOWNLOAD】


ディーズの持つディスク・カートリッジには、いろいろな種類がある。

特に透明のディスク・カートリッジは、ディーズ自身の機能を拡張する『アペンドディスク』と呼ばれており、
中に封入されたディスクによって能力が変わるのである。

そしてタービンを回して起動するこのディスクの効果は・・・・・・


【“ACCESS-DIVE” INSTALL】


アイス:≪そっち先!?ま、まぁいいか・・・アクセスダイブ起動!いつでも行けるわよ!≫


ディーズD:「待ってなさいマジルス・・・・・・イグニション!


すると、獅子の手甲、ディーズナックルの先から放射されたビームがシールドをすり抜けてノートパソコンに命中し、
シールド内に大きな門が出来上がった。

意を決し、ディーズは地を蹴って門の中へと飛び込む!


アペンドディスク『ACCESS-DIVE』は、ディーズをネットワールド、つまりデータ上に召喚させるためのツールなのである。


辿り着いたネットワールド。
地面は電子基盤のような緑色の道で埋め尽くされ、地平線の先までそれが伸びている。

しかし、その地平線は現在目視出来ないでいる。


『ご主人さま〜♪』

『おにいちゃーん!』

『フッ・・・未熟者めが』

『おかえりなさい♪ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・?』

『封印が今・・・解かれたッ!!我は、この世界を蹂躙する魔王となるッッ!!!』

『・・・・・・私に触れると、凍っちゃうよ?ふふふふふ・・・・・・』

『いやっ・・・それ以上されたらマゾくなる!マゾくなってまうー!!』


ディーズD:「いやはや・・・・・・ここまで酷いとは」

目の前の光景に、ディーズもさすがに苦笑いを禁じ得なかった。
先程まで具現化していた少女たちが目の前のフィールド上に勢揃い。
その場を可能なまでに埋め尽くしていた。

ディーズD:「アイス、マジルスの反応は?」
アイス:≪まだ無い・・・けど、ここから289m先にこいつらとは構造が明らかに違う別のデータがあるわ≫
ディーズD:「別のデータ?じゃあ、この少女軍団を掻き分けて行けって事?」
アイス:≪そういうことになr≫

ディーズD:「そうね、こういう時にDFSを有効活用しなくちゃだわ!

話もろくに聞かずに、ディーズは一度下がって助走距離を取る。
一呼吸置き、一気に助走をつけて・・・!

アイス:≪ちょ・・・アンタ何を・・・!?≫


ディーズD:「ぃやあああああああああああああ!!!!!!


アイス:≪ンな無茶なぁあああああああああ!?


地を蹴り、少女たちを思いっきり飛び越える!

足元に少女軍勢を見据え、ニヤリと顔を歪ませる。
いつしか、飛び上がったディーズの身体は下降へと移行していた。
そして大きく右手を後ろに回し、ボーリングの要領で・・・・・・


ディーズD:「DFS発動・・・名付けて、『データロード』!」


右手を振り切る!

胸のDFSコアが蒼く光り、そこから右手のDFSユニットに光が瞬時に走って到達すると、振りかぶった方へ向かって光の道がスピードを上げて伸びる。
少女軍勢の上空に鎮座したその光の道に降り立ったディーズは、真下で繁殖している萌えキャラ達を見下ろしながら一目散にターゲットへと走り出す!

アイス:≪よくもまあこんな事思いつくわねえ・・・・・・≫
ディーズD:「ナイスでしょ?♪さぁ、急ぐわよ!」


足下の萌えキャラーズを諸共せず、ディーズはデータロードを駆け抜ける。
そうして辿り着いた、『289m先』。


ディーズD:「・・・あれね?」

その場所はまるで月面のクレーターのように半径5m程のスペースが空いており、中心に三角錐を10段重ねた意味深なオブジェが鎮座していた。
しかし、萌えキャラーズはその円から何故かはみ出そうとせず、ディーズがそこに降り立ってもなお、彼女に襲いかかろうとはしなかった。

ディーズD:「ちょっとベタな展開だけど・・・これを壊せばこの娘達も消えるわね?」
アイス:≪・・・・・・何か変だわ、こんなすんなり行くわけがないじゃないのよ?≫
ディーズD:「でも、ここで何もしないよりはっ、やってから考えるのもありじゃないっ?」


ガチャン!


そうニッコリと言ってのけながら、ディーズはリオンナックルを待機状態にする。

アイス:≪ちょっと待っ・・・!?≫


ディーズD:「リオンナックル・チェンジロック!


chmod k+r LION KNUCKLEチェンジモード リオンナックル・ロック


リオンナックルを引き出すと、右手がロボットのようにゴツゴツした装甲が着いて返ってくる。
そして・・・!!



ガチャ――――――ン!!ゴロゴロ・・・・・・



アイス:≪あ――――っ!?



―――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――



オブジェが音を立てて崩れる・・・・・・が、何も起こらない。


ディーズD:「・・・・・・あれ?」

アイス:≪・・・・・・何も・・・起こらない?≫




つんつん



と、唐突にディーズの太ももを後ろから突っつく何かがそこにあった。
振り向いてみると、そこには青い髪のロングヘアーの幼女がニッコリと笑っている。


ディーズD:「うん?どうしたの、お嬢ちゃん?」


何とも可愛らしい笑顔を振り向いていた少女は、瞬間、一変して、




『・・・・・・・・・・・・や ら な イ カ ?




そんな事をいきなり真顔で言われ、



ディーズD&アイス:「≪・・・・・・へ?≫」



素っ頓狂な声を思わず上げてしまう2人の背後で・・・・・・




ズモモモモモモモモモモモ・・・・・・・・・・・・!!!!!



イカァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!



周りにいた萌えキャラーズが組み合わさり、巨大なイカに変貌した!!



ディーズD:「・・・・・・はい?」


アイス:≪何じゃありゃああああああああ!?






―――――Folder Save Completed―――――




―――――Next Folder  Now Download―――――



4th Folder:『一閃、真白き電子剣!>>Slash!Strike!Squid!』



―――DRESS THE DIGITAL! DRIVE INSTALL!―――

,■すみませんラブライバーになってて投稿が予定より1週遅れました

いきなり暴露から始まりましたが、なくもすいなです。


■初公開、ディーズ第3話

前回でも書きましたが、4年ぶりの新話です!

当時は書き溜めてからとも書いてましたが、まったり行くことに。


3話自体は4年前の段階でほぼ形は出来てはいましたが、
後編の第4話で苦戦しながらモチベがゼロになり。。。

というわけで、最近回復しつつあるモチベで4話の方向性が固まったところで、
先に第3話のお蔵出しと相成りまして。



■トレハ=サンありがとうございます。


◇>リオンナックル
◇きっと明里ちゃんは今後変身する毎にリオンナックルを用いてぴかぴかぴかりんじゃんけんぽんなどとあざとい行為をするに違いない。




さぁーって、今週もディーズさんのなっくる☆じゃんけんいっくよー♪
 なっくるじゃんけん♪じゃんけん・・・

 【chmod k+r LION KNUCKLE】

 はーいv 今日はロックのグーでしたー♪負けちゃったキミは、イカの触手に注意してねー♪






こうですか!?(ぇーーー




◇とまぁ本気なのか冗談なのか分かり辛い戯言はさておきまして、じゃんけんモチーフとかチビッ子達にも受け入れやすく、かつ個性的で実用性抜群そうなところがいかにもライダーって感じで素晴らしいと思います。

まぁここがオリジナル設定たる醍醐味ですね。
おもちゃとして出てもいいような感じで設定作ってます。まぁダメでしょうけどね、主にチョキ。


◇その内二号ライダーとか出てきて同じ装備付いてて、バトルの際にはじゃんけん相性が関係してきたりすると面白そうだなーとか勝手に妄想しましたが、
◇よくよく思い出してみるとここの掲示板のSSにおきましては全体的にライダー同士の仲が頗る良い傾向にあるので滅多にライダー同士本気でバトったりしないんだよなぁとか言ってもだから何だって話ですけど。

二号ライダー.........ふふふ、どうでしょうね。
言及はしませんが、ちょっと面白いことしようかと思ってます。
ほんとに面白いかは.........まぁそれはそれで。


◇>アイス
◇ディスプレイにタッチパネル機能とか付いてたら悪用されないといいですね!(ゲス顔
◇何と言いますか、二次元キャラにこういう事言うのは非常に無粋というのはわかっているのですけれども敢えて申し上げますと、
◇行方不明のお姉ちゃん、青髪ツインテールだったのか。明里ちゃんが茶髪なのにどんなDNAだよ。
◇まあモデルになったのは顔だけで髪の色はオリジナルなだけかもしれませんが、明里ちゃんの取り乱しようからして相当似てたんだろうなー、と。

お姉ちゃんの話は次回にちらっと出ますが...お姉ちゃんの全貌はその時に改めて。

タッチパネル?そのまんまの機能に決まってるじゃないですかー☆(ゲス顔


◇>ドンピシャ
◇アギトを彷彿とさせる索敵能力を発揮する明里ちゃんですが、同じインシュレーターである林檎さんが同じ事ができない以上、
◇インシュレーター特有の能力ではなさそう、もしやこれは伏線!?とか勝手に妄想。

これもふふふ対象ですね......軽い伏線かもしれないし、重要な伏線かもしれません。
どっちに転ぶでしょうねえ......


◇>お注射の時間よっ!
◇人・格・豹・変
◇初っ端からプトティラレベルの暴走っぷり(性格的な意味で)に不安を禁じ得ませんが、必殺技は取り敢えずゴツい剣を振り回して終了な風潮が蔓延る昨今、キチンとライダーキックで締めるってのはやっぱりいいなぁ、と。
◇果たして明里ちゃんには変身中の記憶とか残ってるのだろうか、もし残ってたら後で自分のはっちゃけっぷりに身悶えしてしまうんだろうか、そしてD'sとマジルスの戦いは今後どのような動きを見せてくれるのか、などと諸々期待しつつ今回はこの辺りで爆発四散!サヨナラ!

今回の話でアイス先生の説明がありましたが、つまりは...

明里はデータ酔いというものに異常なまでにかかり、変身完了してから5秒以内にアレになる

ということで、今回変化までのシーンも出てますがあんな感じになります。超酔っぱらい。
元は明里のままなので、酔っ払っても自分のことを明里だと自覚しています。
記憶が残っているかは、そのまま酔っ払いに置き換えた感じですかね。。



◇Next Folder:『一閃、真白き電子剣!>>Slash!Strike!Squid!』

次回のお話はイカの後編です。
ディーズにある変化が起きます。第3話でもちょっと伏線織り交ぜてたり。。


また、第3話にて過去の拙作からちょっとセルフオマージュ入れてます。
引用元まで全部分かるかなー?答えは第4話のこの場所で。


というわけで、次ホントにいつか分かんない状況ですが、気長にお待ちいただければと。。
アリーヴェデルcにっこにっこにー!


追伸 結局誰が好きかって?強いて挙げればミ●リンスキーさんと西木野総合病院様かな(イミフ
,#000000,,e0109-106-188-16-248.uqwimax.jp,0 2013年09月18日(水) 17時15分20秒,20130918171520,20130921171520,eyFLJ4/z0zIxE,仮面ライダーワルキューレ Mission16,鴎,,,Mission16「脱出と海の騎士と3人目の仲間」

(真墨視点)
どうも皆さんこんにちは、百合川真墨(大友暁)です。突然ですが俺は「運命」というものをこの世で嫌いなものベスト3のうち、ぶっちぎりトップにランクインしています。運命だか何だか知らないけどそんなものに振り回されるなんて御免だと思っているから。自分自身でどんな窮地に追いやられても絶望が自分に課せられた運命ならとことん悪あがきして払いのけてやる。この17年間、平和や安穏といったものとは遠くかけ離れている人生を送り過ぎてきたせいで、半ば自暴自棄になりつつありますが、今日も俺は強くしぶとくたくましく生きております。何でそんなことを言っているかって?それはですね・・・・。

真墨「・・・・・休日くらいゆっくり休ませろってんだ、このバカ共がぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

もう何十体くらい殴り、蹴り、ぶっ飛ばしたか数えるのもキリがないくらい、屑ヤミーが全員倒されるか、俺が力尽きて倒れるかというサバイバルゲームをせっかくの休日にやらなきゃならないのかという事態に陥っているからです。茉莉と一緒にアトラクションを回り、あの「超高速回転するコーヒーカップ」だの「水中に超急降下ダイブするウォーターライド」だの「絶景の風景を眺めながら地獄に急降下する体感を味わえるフリーフォール」だの破壊力ハンパねぇアトラクションの威力に精魂尽き果てそうになった俺と茉莉は休憩ということでショッピングモールが立ち並ぶメインアーケードにやってきたのだが、そこのカフェでお茶を楽しんでいた矢先に、突然大量の屑ヤミーが襲いかかってきたのでした。
パニックを起こして逃げまどう入場客、泣き叫び、我先にと逃げまどい、転んだ客を後ろから走ってきた客が踏みつけたり蹴り飛ばしたりと、騒然となる事態になっている。

真墨「・・・・ちっ、キリがねぇな!!」
茉莉「真墨ィ!!!この先に緊急避難用のシェルターがあるよ!そっちに避難しようよ!」
真墨「他の入場客もそっちに避難させた方がいいな!」

そう思っていると、アーケードの中にある建物の中から、3人ほどの遊園地のスタッフの服を着こんでいる人たちが血相を変えて飛び出してきた。そして入場客を押しのけてシェルターに向かって我先にと走っているではないか!そして、その施設を見て、俺は目を疑った。

茉莉「ゲッ!?あ、あいつら、ここのセキュリティシステムを管理しているスタッフじゃん!(茉莉はここのアトラクションやセキュリティシステムの開発に携わったことがあるからそのシステムを委託したスタッフのことを覚えていた)」
真墨「ま、マジかよっ!?」

何、あいつら、入場客に避難指示とかシェルターの操作とかそういったことを放り投げて我先に逃げ出したの!?入場客に指示出さないでどうするんだよ!!

茉莉「や、ヤバいよ!シェルターもセキュリティシステムもここで操作しないと起動しないのに!!・・・・・こうなったらアタシたちでやるしかない!!」
真墨「お前・・・そうか!!お前ここの施設のプログラムを開発したって言っていたよな!」
茉莉「セキュリティシステムや防犯対策用のプログラムをね!!」
真墨「OK!それなら、急ごうぜ!!」

コントロールルームに行くと、重苦しい扉が閉められて自動ロックがかけられていた。茉莉がバッグから遊園地スタッフ用のカードキーを入れて、指紋照合システムで指紋を照合し、網膜照合システムで網膜を照合してようやく扉が開いた。

茉莉「開発者やってる時のデータ残っててよかった〜」
真墨「・・・さすがは超高校級のプログラマー。伊達じゃねえな」
茉莉「それほどでもないけどね、それよりも、現在の遊園地の状況を確かめないと!」

コントロールルームに入ると、遊園地中につけられた監視カメラの映像が壁一面の大型モニターに映し出されている。無数の屑ヤミーに追われて逃げまどう入場客たちが映し出される。楽しい遊園地のはずが突然の異形の軍団が乱入したことにより混沌の状況に陥っている。

真墨「ひでぇことしやがる・・・」
茉莉「遊園地に残っている入場客にアナウンスで指示を出さないと!」
真墨「ああ、そうだな!」

真墨がアナウンス用のマイクを取り、スピーカーの装置を入れる。

真墨『遊園地の皆さん、各アトラクション近くの避難所に大至急移動をしてください!シェルターの中に避難してください!!シェルターは各施設、全員が入場できるようになっております!!慌てず押さず、女性や子供、お年寄りや身体が不自由な人を優先的に入れて下さい!!各施設のシェルターは全員収容確認後、シャッターを降ろして封鎖いたします!!』

そのアナウンスを聞き、瑛子と美子がこの異変の状況に気づいた。気がつくと自分たちがいるジェットコースターの近くにも何体か屑ヤミーが現れ出した。ジェットコースター乗り場にいた入場客たちが悲鳴をあげて我先にと出口から飛び出し散り散りに逃げだす!そんな逃げまどう客たちにヤミーが襲いかかっていく!

瑛子「ちっ・・・・この外道がぁっ!!!」

瑛子が刀を抜く!そして光がいくつも走り抜けたかと思うと、屑ヤミーが細切れに刻まれていく!!刀を次々と振り、遊園地の広場の中を駆ける姿は勇ましきサムライのごとく。広場にいたヤミーが次々と切り刻まれ、メダルへと戻っていく。

瑛子「・・・・・・また、つまらぬものを」
美子「瑛子ちゃん!!翠ちゃんと香澄様がいたよ!!いたけど・・・・」
瑛子「どうかしたのか!?二人に何かあったのか!?」

瑛子が駆け寄ると、そこには、ベンチの上で顔を真っ青にして、虚ろな瞳をして口から涎を垂らしながら息も絶え絶えになっている翠と香澄が寄り添って座り込んでいた。傍から見れば翠がボーイッシュな外見をしているから、美男美女のゾンビのカップルのようにも見える。

翠「・・・・・・うえ」
香澄「・・・・・おえ」

瑛子「・・・これはどういうことだ?」
美子「・・・・・二人とも、ただジェットコースターに乗るだけじゃ面白くないとか言って、乗る前にこれ飲んで乗ったんだって」

そういって、美子が呆れて取り出したのは・・・・何とウォッカのボトルであった。
どうやらこの二人はジェットコースターに乗る前にウォッカをコップで一気飲みしてから乗ったらしい。

瑛子「・・・そういえば前にもあったな。ドイツの遊園地に遠足に行ったとき、大友がその遊園地の目玉のジェットコースターを見て、怖そうだと言っていた時・・・」
美子「お嬢様が『この程度の子供だましでビビるなんてちゃんちゃらおかしいですわ』とか言って、『私なんかこのウォッカを飲んで乗ってもへっちゃらですわ、ワイルドでしょう?』とか言って、翠ちゃんを煽ったんだよね。で、それで二人とも喧嘩になって、ジェットコースターに乗る前にウォッカ一気飲みして乗ったら・・・・」
瑛子「二人ともグロッキーになって倒れて病院送りになったんだよな。確か救急車の中でも取っ組み合いになって、看護師数人が怪我したらしいからな」

二人揃って全然反省もしてなければ成長もしていなかったらしい。バカとしか言いようがない。

翠「・・・・・ど、どうだ、この野郎、ボ、ボクの、勝ちだからにゃ・・・」
香澄「・・・・バカ言わないで・・・下さいまし・・・・私は・・・まだ・・・負けてませんわ・・・・」

うめき声に近い低い声で尚も意地を張り合っているバカ二人。仲が悪いにもここまで来るとある意味天晴である。しかしもうこんな緊急事態でそんなことも言ってられない。瑛子が翠を、美子が香澄を担ぎあげると、避難所に向かって走り出した!

瑛子「事態は最悪だな・・・!」
美子「何とかして暁ちゃんたちと連絡を取らないと・・!」

二人がジェットコースターの近くにある避難所に入ると、中にはもうこのエリアにいた入場客であふれかえっていた。どうやらヤミーの襲撃から逃れてきたらしい。鍵をかけて分厚い扉を閉めるとドアを叩き割らんと屑ヤミーの大軍が押し寄せてくる!!

その時、瑛子の通信機に連絡が入った。

瑛子「こちら瑛子!・・・暁か!?」

真墨『さっきジェットコースターの方のカメラを見たらお前たちが翠と宇津保を連れているのを見つけてな!俺は今コントロールルームにいる!今から各アトラクションの避難所をシャッターで封鎖する!そしたら、その施設にある地下へとつづく階段があるからそれを下りてプラットホームに向かってくれ!!』

瑛子「プラットホーム!?どういうことだ!!」

真墨『この遊園地は、災害や緊急事態に備えて、地下に地下鉄がある。地下鉄はこの先にある巨大避難シェルターに繋がっているんだ!そこまで入場客を全員避難させる!地下鉄の地下道は各施設の避難所につながっている。地下道を伝って移動して連絡を取り合うぞ!!出来るか!?』

瑛子「了解だ!!」
美子「了解です!!」

真墨『地下に避難させたら、瑛子は入場客に落ち着いて避難するように呼びかけてくれ!美子はそのエリアにある変電所に向かってくれ!』

美子「変電所!?」

真墨『その地下鉄、今日に限ってメンテナンス中だったんだよ!大型メインヒューズとエネルギーカートリッジ、この二つが変電所に新しいものが届いていることが分かった!!これを中央エリアの地下鉄がある操車場まで持ってきてくれ!!あとの取り付けは俺が出来る!!急いでくれ!!』

美子「分かった!!」

美子が地下に続く階段がある部屋のドアを開けると、瑛子の指示の下、入場客が次々と押し寄せて避難していく!!

瑛子「落ち着いて!!大丈夫、この先は安全です!!!落ち着いて避難してください!!」
美子「瑛子ちゃん!こっちは任せて!!」
翠「・・・・ヤバい、ボクもいかないと・・・!」

翠がふらつきながら立ちあがる。そしてリュックに入れていた水を飲み、顔に思い切りぶっかける!!そして髪をかきあげてオールバックにすると、頬を思い切り叩いて気を引き締める!!

翠「真墨!!こちら翠!!ボクは上杉さんのサポートとしてついていくよ!!」
真墨『お前、体調は大丈夫か!?』
翠「こんな緊急事態なのに乗り物酔いで動けなかったなんて護衛失格でしょうが!!何が何でも成功させてみせる!!」
真墨『いい心がけだ、無茶はするんじゃねえぞ!!』
翠「はい!!」

翠と美子が確認し合うと、地下道に出て中央に向かって走り出した!!地下道の壁にあるライトを頼りに、暗い地下道に向かって走り出す!!

真墨「変電所のロックはここで解除できるか!?」
茉莉「OK!」

コンピューターのキーボードやパネルの上を茉莉が忙しなく動き回り、パスワードを打ち込み、セキュリティロックを次々と起動させていく。シェルターのシャッターが次々と閉まっていき、屑ヤミーがシャッターに阻まれて中に入れずにいる!

茉莉(・・・何だか変だな。ここのセキュリティシステムは私が作ったから、別に操作くらいなんてことないのに、このプログラミングが、セキュリティシステムが、いつもより軽々とこなしている。まるで手のひらで転がすように簡単に出来ている。というより・・・プログラムが頭の中に流れ込んでくる。そしてどれをどのように操作すればいいのかすぐに引き出せる・・・!?)

茉莉は自分自身がここまで情報処理のスピードが速く感じたことがない。この時、彼女は気づいていなかった。彼女の手のひらに浮かび上がっている“紋章”に。プレシオサウルスの紋章が浮かび上がり、彼女の中の「能力」が目覚めていたのだ。

その時であった。

瑛子「うわあああああああああああ!」

通信機から瑛子の悲鳴が聞こえてきた!!

真墨「瑛子!?どうした!!」

監視カメラで瑛子がいる避難所の映像が映し出される。そこでは、サンヨウチュウヤミーに襲われている瑛子の姿があった!

瑛子「貴様ァ・・・・!!ぐっ!!」
香澄「え、瑛子!」

瑛子が刀を弾かれ、壁に思い切り叩きつけられ、瑛子が力なく倒れこむ。そして、香澄の腹に拳を打ち込むと、ぐったりして動かなくなった香澄を抱きかかえてシェルターから出て行った・・・・!

瑛子「ぐっ・・・・・!」

茉莉「何だよあれ・・・!?怪物!?」
その時だった。

「ブチッ」

何かが切れた音がしたような気がした。すると、ゾッとする寒気を感じ、全身に鳥肌が立つ。見ると、真墨が・・・見たことない険しい顔つきで、憎悪と憤怒に満ちた瞳でモニター画面を見つめていた。歯ぎしりをし、握りしめた拳には血管が浮かび上がっている。しかしその様子に真墨が何を考えているのか茉莉は理解できた。怒りと同時に焦りを感じていて、どうしたらいいのか混乱しているのだ。茉莉は真墨にまっすぐ向かって言った。

茉莉「・・・・真墨!!しっかりしなよっ!!」
真墨「!?ま、茉莉?」
茉莉「ここでブチキレてる場合でも迷っている時間もないよ!!アイツ、アンタの大事な友達なんでしょう!?助けないとダメじゃんか!!ここは大丈夫、アタシが作ったプログラムがあればここにあんな怪物くらいじゃ入ることも出来ないよ!!だから、ここは任せて!!」

真墨は面くらった。一瞬怒りで我を見失いそうになったが、茉莉に喝を入れられて呆気にとられ、そして少しずつ冷静さを取り戻していく。

茉莉「・・・・大丈夫、アンタがアイツを助けに行ったって、アタシはアンタがアタシを見捨てたなんて思わないよ。だって、困っている人がいたら、自分の犠牲も省みずに突っ込んでいくどうしようもない大バカ野郎だけど、そんな大バカなところ・・・・嫌いじゃないんだから。クラブでアタシを助けてくれた時みたいに、アンタならきっとアイツを助けだせる!!だから・・・早く行きなよ!!」

強がりだ、目には涙をいっぱい溜めて全身の震えを必死で抑えている。これから一人でコントロールルームで作業し、助けが来るまで残るということは彼女にとってはいつ敵が襲いかかってくるか分らない状況は恐怖を感じずにはいられないだろう。それでも、真墨が動かずにいられない状況をどうしても打破したかった。その為に、真墨に全力で強がって発破をかけている・・・!!

真墨「・・・・・翠、俺だ。お前は大至急中央コントロールルームに向かってくれ。茉莉がいる。茉莉の保護を頼む」
翠『い、いきなりどうしたのっ!?』
真墨「宇津保がヤミーに捕まった。ヤツは俺たちがいるメインアーケード近くに来ている。俺が人質を取り戻す。お前は万が一のために茉莉の護衛を続けてくれ。美子、お前はジェットコースター近くの避難所にいる瑛子をプラットホームに運んでシャッターを閉じろ!そして手当して、引き続き変電所に向かってくれ!」
美子『お嬢様が!?瑛子ちゃんは無事なの!?』
真墨「時間がない、大至急向かってくれ!!俺はルシファーズハンマーに応援を要請する!!もしあいつが宇津保を人質にして逃げるつもりなら阻止しないといけない!!」
翠『了解!!』
美子『はい!!』

真墨「・・・・茉莉、すまねぇ。行ってくる」
茉莉「絶対助けだせよ!!そして・・・助けに来てね」
真墨「・・・・・・・ああ!!」

真墨が流れる涙をぬぐい、部屋を出て行った。茉莉がふうっと一息ついて、再びセキュリティシステムの操作に取りかかる。

茉莉「いつもアタシの気持ちを受け止めてくれた。今度はアタシがアイツの力にならなきゃダメじゃん。それが、お互いを支えて思い合う気持ち、友情だって・・・」

茉莉は真墨と出会って変わった。真墨を信じ、繚乱会の仲間達を信じて交流を深めるとことで、自分の気持ちを押し付けるだけではなく、相手の気持ちを汲み取りお互いに支え合い、思いやることがどれほど大切なことか知ったのだ。

茉莉「・・・だから、頑張って、真墨・・・・・・ううん・・・・“暁”!」


茉莉は見抜いていた。真墨の正体・・・・大友暁に!


その衝撃的な事実を知らず、真墨が遊園地の噴水広場に躍り出た。そこにはサンヨウチュウを模したヤミー・サンヨウチュウヤミーが香澄を抱えて立っていた。

サンヨウチュウヤミー「あらぁ、百合川さん?私に何か用?」
真墨「・・・・そいつを離せよ。俺の友達に手を出したらどうなるか分ってるんだろうな」
サンヨウチュウヤミー「それは出来ないわぁ。今から大友さんも捕まえて、二人で愛の脱出劇を演じてもらわないといけないんだから」
真墨「愛の脱出劇だと?」
サンヨウチュウヤミー「大友さんと宇津保さん、一見喧嘩ばかりで憎み合っているようだけど、本当はそれは熱い愛情の裏返し、このあたしが作り出したシナリオ通りに事を運ばせれば、二人は相思相愛、もう二度と離れられなくなることこの上なし!最高の百合カップルの完成なのよ!」
真墨「さっきから逆上せ上がったことばかり抜かしてんじゃねえぞ、このヤロウ!相手同士のお互いの気持ちも確かめあわずにテメェの勝手な理屈で無理矢理くっつけようなんてモテねぇヤツのやることだぜ、このボケが。そういう自分勝手な理由で宇津保を好き勝手にさせるかよ!!」
サンヨウチュウヤミー「・・・あたしの邪魔をするなら、容赦はしないわ!!」
真墨「・・・・宇津保を返してもらうぜ!!」

真墨が小石を素早く拾って投げつける。それをサンヨウチュウヤミーの顔面近くに飛んでくるのを思わず手ではじく。すると、もう目の前に真墨が飛び出していた!!サンヨウチュウヤミーの顔面に射程距離をとらえて、渾身の右パンチがめり込み、炸裂する!!甲殻類系のヤミーの超硬質の甲冑ですらもめり込むほどの重量級のパンチを受けてサンヨウチュウヤミーが吹き飛ぶ!!

サンヨウチュウヤミー「ぐはっ・・・・!!!!」

そして香澄が放り出される、それを真墨が抱きとめる。そして、香澄がうっすらと目を覚ました。

香澄「う・・・ううん・・・・」
真墨「宇津保!!大丈夫か!?」
香澄「・・・・ま・・・すみ?」
真墨「・・・よかった・・・・無事だったんだな・・・よかった・・・・」

真墨が香澄の顔を見て、涙を流した。熱い涙がぽたりぽたりと、香澄の頬に落ちる。

香澄「・・・・真墨・・・・どうして・・・・泣いてるの・・・・」
真墨「・・・う、うるせぇよ、あんたが無事だったからに、決まってるだろうがよ。あんたにもし何かあったら・・・・何かあったらと思ったらよ・・・・・」
香澄「・・・・・え?」

真墨が静かに、そして強く香澄を抱きしめた。服に真墨の涙がしみこむ。抱きしめられた腕の感触がとても熱く、強く締め付けられる感じがした。そして手を見ると、皮膚が裂け、赤くにじんでいる。痛々しいまでに腫れあがっていた。

香澄(・・・私が無事だったから泣いてくれる?私のために怪我までして?どうして?どうしてそんなことしてくれるの!?瑛子や美子みたいに私について来てくれる従者でもないのに・・・・!?)

香澄「・・・どうしてよ、どうして、私なんかを助けにきたのよ。どうして、私のために怪我までして・・・・」

真墨「・・・・・・・お前が誰かに傷つけられるなんて嫌なんだよ。どうしようもなくワガママだし、高飛車だし、口うるせぇし、人平気で振り回すし、人使い荒いし、しょっちゅう翠と喧嘩ばかりしてるどうしようもないバカだけどよ・・・・そんなバカなお前だけど、一度決めたら最後まで諦めないところとか、友達を大切に思うところとか、意外と優しくて思いやりがあるところが、たまらなく好きなんだよっ!!そんなお前が危ない目に遭っているのに、放っておけるかよっ!!!何があっても、絶対に助けてやる!!」

自分のことを褒めたたえるだけではない、むしろ自分の欠点をここまで言い当ててもそれでもいい所があって好きだから守りたいという気持ち、それはただ媚び諂いついてくるだけではない、相手の欠点もしっかりと見て、正面から真っすぐぶつかってくれる。そんな人間に・・・今まで香澄は見たことがなかった。ずっと蔑まれ疎んじまれてきた、瑛子と美子という自分について来てくれる護衛であり仲間はいるが、自分の欠点とか間違っているところとかあまり遠慮してなかなか面と向かって言ってくれないところを、少し不満を持っていた香澄にとって、真墨という人間の存在が大きく変わった。

香澄「・・・真墨・・・・・・(きゅん)」

すると、後ろでサンヨウチュウヤミーがゆっくりと起き上がってきた。

香澄「真墨!!後ろ!!」
真墨「ああ、こいつをどうにかせにゃならんな。お前は急いでこの近くの避難所に逃げ込め!!俺はこいつをブチ倒す!!」
香澄「真墨!!無茶よ、勝てるわけ・・・・!!」
真墨「勝てるさ」

そう言って、真墨が香澄に後ろ向きに強気な笑みを見せた。その笑みがとても力強く感じられた。

真墨「宇津保を守る。その為なら、誰が相手でも負ける気がしねぇよ!!」

決定的だった。香澄の心に稲妻が走ったような気がした。心臓の鼓動が速くなり、顔が熱くなり、全身が震える。真墨の瞳と瞳がだけでドキドキして息が苦しくなり、訳の分からない感情の高ぶりに戸惑いを感じつつも興奮が高まる。

香澄「・・・・・・・真墨ぃ・・・・・・(うっとり)」
真墨「早く逃げろ!!」
香澄「は、はい!!」

香澄が逃げだし、避難施設へと向かう。そして香澄が走って行った後の道をふさぐように真墨が構えてサンヨウチュウヤミーと向かい合う!!

真墨「おっと、お前の相手は俺だぜ?」
そうして、ファングドライバーを取り出そうとしたその時だった!

ドゴッ!!!!

突然背中に強烈な重圧を感じ、吹き飛んで真墨が地面を転がる!!!激痛が背中から全身に走り、息も出来なくなる。

真墨「ぐはっ・・・・!!」

シエル「まさかここまでやるとはね。でもこれ以上ボクの邪魔はされたくないんだ」
真墨「・・・て・・・テメェ・・・・・・!!」

それはシエルが放った水圧弾だった。しかしそれは岩をも粉々にする破壊力を秘めている。それを直撃し、真墨はよろよろと激痛が全身に走る。それでもふらつきながら立ちあがる。

真墨「・・・宇津保に手出しはさせねぇぞ・・・・お前らの思い通りになんてさせるかよ」
シエル「・・・ああ、もう、これ以上手間取らせないでよ!!これ以上抵抗するなら、痛い目に遭っても知らないよ!?」
サンヨウチュウヤミー「・・・よくも私の邪魔を・・・!!許さない!!」

サンヨウチュウヤミーが怒りの咆哮を上げて真墨に長剣を振るって襲いかかる!!真墨がそれを避けるが、シエルが後ろから錫杖を振り上げて襲いかかってくる!!

シエル「少し大人しくしてもらうよ」
真墨「ちっ・・・・・!!ここは踏ん張りどきかぁっ!?」
サンヨウチュウヤミー「うがあああああああああああああっ!!」
真墨「くそっ・・・!!!」

シエルの乱入で形勢は一転劣勢に追い込まれる真墨。さらにファングドライバーも弾かれて建物の隅に転がってしまう。サンヨウチュウヤミーの剣を交わし、拳を放つとシエルが錫杖を突き出して攻撃を繰り出してくる!!ファングになかなか変身出来ないまま、真墨は防戦に徹する!!


一方・・・!
美子「翠ちゃん!!大型ヒューズとエネルギーカートリッジ用意出来たよ!!」
翠『よっしゃ!!取りつけて動かそう!!』

翠がコントロールルームにやってくると、茉莉が画面を見て凍りついていた。見ると震えて涙をこぼしている。どうしたらいいのか分らず怯えている。

翠「茉莉ちゃん!!」
茉莉「す、翠―――――っ!!ま、真墨があっ!!」

茉莉が泣き叫んで翠に抱きつく。見るとそこではシエルとサンヨウチュウヤミーを相手に生身で必死で戦っている真墨の姿があった!翠も目を見開く!

翠「真墨!!」
茉莉「ど、どうしよう、このままじゃ、真墨が・・・・!!」
翠「茉莉ちゃん!」

その時だった。

真墨『がはっ・・・・!!す、翠・・・!お前、合流出来たのか・・・?』
翠「真墨ぃっ!!!」

見ると画面ではフェンスに叩きつけられ、殴られ、錫杖で突き上げられてボロボロになった真墨が通信機より会話していた。もう服もボロボロになり、頬も殴られ真っ赤に腫れあがり、口から血や胃液を吐き出す。

真墨『それなら・・・・お前地下鉄を起動させて・・・・・客を安全な場所に避難させろ』
翠「何言ってるんだよ!!あんたはどうするんだよっ!!!」
真墨『バカ野郎!!!お前、自分が今何をするべきか分ってねぇのかよっ!!!』

真墨が再び殴られ、地面を派手に転がる。額を打ち付け、血が滴り落ちる。額を押さえながら真墨がそれでも強い意志を失わない瞳を敵に向けて話を続ける。

真墨『俺たちはよ・・・誰かを守るために戦うことが仕事だろうが・・・・今も避難所でこれからどうなるか不安で震えている人たちもいる。助けが来るのを信じている人がいる。そういった人たちを・・・・守るのが俺たちの・・・・使命だぜ・・・・・・!俺達の仕事はいつ死ぬか分らない。だからこそ分かってなけりゃいけないんだ・・・命の重みを!俺たちは例え一つであろうと、一度零れ落としてしまったら・・・二度と取り戻せないんだ。だから、その命を一つでも多く守れるように戦うんだろうがよ・・・・!!それが・・・誰かを守るってことだ・・・・!!自分の命なんて・・・守りに入っちまったら・・・ただ腐っていくだけ・・・・!!譲れない信念があるなら・・・!!守りたい人がいるなら・・・!!未来を掴みたいなら・・・!!戦うんだ・・・・!!例えここで燃え尽きても・・・それでも最後まで・・・戦ってやろうじゃねぇか・・・・!!もう腹は括った・・・!!だからお前たちも・・・!!覚悟決めて救助に専念するんだ・・!!』

翠は言葉を失った。どんな危機的状況に陥っても、彼の心は決して折れない。一人でも多くの命を助ける。守るために戦う。それは自分が誓った「守る」という約束に命をかける覚悟を決めている。自分の命よりも誰かを守ることを優先し、戦っている。そして今、自分を置いて避難用の地下鉄に乗って入場客の安全の確保をしろと言っている。自分の任務に命を懸けて真剣に運命を乗り越えようとしている。

翠「・・・・分かった。ボク、行くよ!!」
真墨「それでこそ、俺の妹だ・・・・」
美子「・・・・暁ちゃん・・・!」
瑛子「・・・お前ってヤツは・・・!!」

瑛子が歯を食いしばって高ぶる感情を必死で抑え、美子が感極まって涙を流す。
そして茉莉は・・・・言葉を失い、涙を流してパネルの前で立ち尽くしていた。

翠「・・・行こう!!」
茉莉がコントロールパネルを操作し、地下鉄の起動スイッチを入れる!!地下鉄に電気が宿り、ライトがつくと、エンジンがかかり出す!!翠たちがプラットホームに下りて地下鉄に乗り込む!茉莉が運転席に乗り込み自動操縦機能に切り替えると、電車が動き出す!!各アトラクションの避難所を回って停車する。その都度、美子や翠が入場客に指示を出して電車に乗りこませていく。

瑛子「・・・黄司?」
運転席を見ると、茉莉が涙を流していた。その表情は悔しさで歪んでいた。

茉莉「・・・・アタシ、何も出来ないじゃんか!!今だって、真墨ずっと殴られてるのに・・・!!何も出来ない・・・!!どうして、何も出来ないんだよ!!!どうしてよっ!!!」
瑛子「黄司・・・!!」
美子「茉莉ちゃん・・・・」
茉莉「ここで避難してもアタシじゃ皆と一緒に避難してただ待つだけしか出来ない・・!!翠みたいに変身して戦うことも出来ないんだ・・・!!」

その言葉を聞いて、翠の目が驚きで見開かれる。瑛子や美子も驚きで言葉を失う。

翠「・・・・ま、茉莉ちゃん、どうして、それを・・・・!?」
瑛子「・・・・お前、まさか・・・・!?」

茉莉「・・・・・・知ってたよ。あんたと真墨・・・ううん、『大友暁』のことも、仮面ライダーのことも、そこまでは・・・・」

翠・美子・瑛子「「「ええええええええええええええええええええええっ!!?」」」

そしてイージス本部。
蒼真「何ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」
真夜「えぇええええええええええええええええええええっ!?」

蒼真と真夜が驚愕の表情で絶叫していた。

茉莉「・・・この学校、セキュリティシステムとか警備員とか全部イージスっていう警備会社に委託しているでしょう?最初はイージスの何か面白そうなデータはないかなって面白半分でハッキングしてみたんだ。そしたら、シークレットになっているデータを見つけてさ・・・プロテクト解除するのに時間かかったんだけど、ようやく解除して見つけたのが・・・・「マスクドライダーシステム」と、それを装着して要人警護の任務にあたる「シークレットサービス」があるって。そこで見つけたのが・・・「大友翠」と「大友暁」の二人・・・・するとその後すぐにうちの学校にアンタと「真墨」を名乗る「暁」が編入してきて・・・その後すぐに変な怪物と戦っているアンタたち(mission1、mission4参照)を見て、確信した。この二人が・・・仮面ライダーだったんだってことが。最初はお金もらって人のこと守る・・・偽善者だって思ったんだ。人の命さえもどうせ商売の道具としか思ってないって、だから、アンタたちのこと信用できなかった。・・・アタシ自身の命がお金よりも価値がないって散々思い知らされてきたから・・・どうにでもなれってヤケになってた・・・。でも、真墨は違ってた。クラブで怪物に襲われた時、命をかけて、身体を張ってボロボロになって助けてくれて・・・・それでも・・・・アタシのことを大切にしてくれて・・・・それからも色々と世話を焼いてくれたり・・・辛いときいつもそばにいてくれて・・・・・そんなことやっているうちに・・・・何だか・・・・意地張ってることが疲れてきちゃったというか・・・・・本当のアタシはどうしたいのか考えるようになっていた」

電車が避難用シェルターに到着し、乗客が次々と避難所に駆け込んでいく。そして全員の避難を無事確認した後、翠と茉莉は誰もいなくなった操車場を見回し、残っている人がいないことを確認しながら、翠は茉莉の話を聞いていた。

茉莉「・・・・アタシは寂しかったんだって。あの時家族にも使用人にも捨てられて、本当に一人になって・・・・そうなる前から誰からも相手にされなくて・・・心から信頼しあえる相手がいなくて・・・・・誰でもいいから・・・・・アタシを受け入れてくれる人が欲しかったんだ。そばにいてくれるだけでいい、それだけでもいいから・・・・真墨にそばにいてほしかった。たとえ、嘘でもいい、騙されてもいい、ずっと優しい嘘に騙されていたいってそう思っていた・・・・!!でも、今、真墨が苦しんでるのに、アタシは何も出来ないんだ・・・!!助けに行くことも出来ない・・・・!!どうして、アタシにはアンタたちのような力が・・・ないんだよ・・・・!!」

茉莉が吐き出した全ての心情を聴き、翠は言葉を失っていた。涙がこぼれおちていた。茉莉が今まで裏切られ続けて、誰も信じられなくなっていた中で、漸く信じることが出来るようになった存在が真墨こと暁だ。たくさん自分の心を救ってくれて、いつでも自分がワガママを言っても苦笑しながら付き合ってくれる、自分が間違っていたら厳しく叱って間違いを正してくれる、そしてそばにいてくれるのに・・・・それだけ世話になっているのに、自分は何も出来ない。無力さが涙となって、激しい感情に変わる。

その時だった。

茉莉の涙が右手に落ちる。すると、ぱあっと地下道を明るく照らすほどのまぶしい青色と黄色の光が輝き出す!!あまりの眩しさに目を開いていられない!!離れていた翠は目を凝らしながらその光を見る。そこには・・・「知識の紋章」と「友情の紋章」が二つ、重なり合って新しい一つの紋章が浮かび上がっていた・・・!!

翠「あれはっ!?昴さんの紋章とマリアさんの紋章!?」

そしてそれが組み合わさった「思慮の紋章」が輝き出す!!


そしてその放たれた光が地下から空へと飛び出し、目にも止まらない速さで空を裂き、飛び込んだ先は、セント・ローゼリア学園であった!!そしてロボット研究会に保管されていたテティスドライバーに飛び込む!!すると、金色の「メルク」をイメージさせるメダル、藍色の「セドナ」をイメージさせるメダル、そして中央にプレシオサウルスを模した紋章に、二つ巴で藍色の装飾に金色のプレシオサウルスの紋章が施されているメダルが輝き出す!!そしてテティスドライバーが光となって空中に浮かび上がり、研究会部室から飛び出し上空へと飛び出していく!!

アベル「な、何だよ、ありゃあ!?」
カブキ「キラキラピカピカ、飛んでった!!」

メイ「おい、あれは・・・!!」
ルッカ「説明は後であるっ!!今こそ好機である!!!」
メイ「そうだな!!」

一瞬アベルとカブキがテティスドライバーに目を奪われた隙をついて、メイとルッカが駆け出して、メイの腕に緑色の暴風が渦を巻きだし、ルッカがセルメダルを3枚投入してエネルギーを充電する!!

メイ「行くぞ!!」
ルッカ「ああっ!!」

メイが右腕を振るい、ルッカがルッカスターターを装着した左腕を大きく振るうと、メイの放った竜巻にルッカが放ったマグマの超高熱エネルギーが混じり合い、巨大な炎の竜巻が発生する!!!

「「竜虎共宴(りゅうこきょうえん)!天地無双焔舞(てんちむそうえんぶ)!!」」

炎の竜巻に飲みこまれ、カブキとアベルが大爆発を何度も繰り返しながら吹き飛ぶ!!

アベル「ち、チクショォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
カブキ「きゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

アベルとカブキからコアメダルが何枚かこぼれおち、それをメイとルッカがそれぞれ掴む。アベルのメダルが「オオカミ」「ハウンド」「シェパード」、そしてカブキが「バラ」「ホウセンカ」「キノコ」のそれぞれコンボが可能なメダルだ。
これで翠がシエルのメダル3枚を含めると、バーニングフォーム、ライトニングフォーム、そしてシエルの属性を引き出す新しいフォームに変身できる。

ルッカ「こ、この技を出すのも久しぶりであるな・・・」
メイ「よっぽど追い詰められた時くらいしか使わなかったからな・・・」
ルッカ「しかしあの光は・・・まさか!?」
メイ「一瞬見えたが、あれは・・・お前が作ったテティスドライバーだったな。どうやら、翠ちゃんたちに何かあったようだな!!」
ルッカ「行ってみよう!!」

ルッカとメイが満身創痍の身体を気合いで奮い立たせて走り出した。


その光が湊区に向かって目にも止まらない速さで飛んでいき、やがてそれが湊区巨大防災シェルターの上空につくと、矢のように一直線に飛びだし、地面をすり抜けて、地下の操車場に向かって降ってきた!!そしてそれは茉莉と翠の前に降って地面に勢いよく突き刺さった!!それは一本の槍。そしてそこに装着されていたメダルホルダーが飛び出し、茉莉の元に浮かび上がっている!

茉莉「・・・・これは!?」
翠「新しいライダーシステム!?まさかこれ、茉莉ちゃんの・・・!?」
茉莉「・・・・・アタシの・・・!?」

茉莉の前に、まるで彼女の前に現れるためにやってきたテティスドライバー。そのメダルホルダーからは藍色の光と金色の光がまぶしく光り輝いている。未知の力を前に、茉莉はそのメダルをつかむことはもう後戻りできないことを意味していることを察している。でも、もう、迷いはしない。

茉莉「・・・・真墨を助けるんだ。もう、誰も傷つけさせない!!アタシも・・・・戦うんだ!!」

メダルホルダーを掴んだ!!そしてその光がテティスドライバーに放たれて、テティスドライバーが地面から浮かび上がって茉莉の手の中に収まる!!

「トリニティ!メルク!セドナ!!テティス!!」

そしてそのメダルホルダーをテティスドライバーのスロットに差し込み、意を決したように装填する!すると、槍の穂先が飛び出し、穂先から放たれた金色の魔法陣と藍色の魔法陣が飛び出し、二つの魔法陣が茉莉を挟んで上下から重なり合う!!
茉莉の全身に藍色のボディスーツが装着され、その上からプレシオサウルスと三国志に出てくる中国の武将を組み合わせたようなデザインの白色に金色のラインが入っている甲冑テティスアーマーが装着されていく!!頭部にプレシオサウルスをモチーフとする兜を装着した仮面のテティスヘルムとテティスマスクが装着され、金色の金属製の辮髪が後頭部につく。ヒレをイメージした肩アーマーが装着され、アイライトの部分に金色の光が点る!!

海の戦士、仮面ライダーテティスとして茉莉が初めて変身を遂げた姿であった・・・!


テティス「・・・・う、嘘・・・・・!?」
翠「茉莉ちゃんも・・・紋章に選ばれた仮面ライダー・・・なの!?」

驚きで言葉を失っている翠と、テティスに変身し、何が何だか分からずうろたえる茉莉。
そこへ、通信が入る。

蒼真「翠!!」
翠「蒼真さん!これは一体・・!?」
蒼真「話は後だ!!暁がかなりヤバい!!急いで援護に向かってくれ!!」
翠「了解!!」

翠がワルキューレドライバーを構える!

翠「変身!!」

翠の全身を緑色の竜巻が包みこみ、見る見るそれが仮面と甲冑を全身に装着させた緑色の騎士、仮面ライダーワルキューレ・ストームフォームに変身する!そして地下道からマシンストームスレイヤーが轟音を上げて無人で走ってくる。それがワルキューレの下で止まり、ワルキューレが座席にまたがる!するとテティスが近づいてきた!!

テティス「・・・アタシも行く!!」
ワルキューレ「え・・・・でも・・・・」
テティス「お願い!!!連れてって!!」

テティスに懇願されて、ワルキューレは意を決したように頷いて後部座席に乗るように合図するとテティスが後ろにまたがり、ワルキューレにしがみつくと、エンジンを急速発進させて、凄まじい爆風と共に宙に舞い上がったストームスレイヤーが地上へ、上空へと飛び出し、アドベンチャーランドに向かって、全身が引きはがされそうな勢いで飛び出した!!

そしてアドベンチャーランドでは、サンヨウチュウヤミーの怒涛の打撃のラッシュを受けて真墨が吹き飛び地面を転がる。服はもうボロボロに引きちぎれていて、全身を打撲と擦り傷で無残な姿をさらしている。肋骨にもヒビが入り息が苦しくなる。至る所が出血し、激痛が全身に走り、高熱を帯びてくる。シエルもサンヨウチュウヤミーも息切れを起こし、何度殴っても蹴っても投げても立ちあがり続ける真墨を前に焦り出す。

シエル「くっ、何でそんなに必死になるんだい。たかが他人だろうがよ!!」
真墨「・・・・お前には・・・・・・分からないだろうよ・・・・・他人の命を・・・・守るって決めた・・・・・決意も・・・・覚悟も・・・・・半端じゃ・・・・ねぇんだよ」
シエル「いくら強がってもね、劣勢には変わりはないんだよっ!!何で自分を囮にして自分以外の全員を逃がすなんてことやれるのか、理解できないね!!ありえないだろうが!!どうして!!自分の命よりも!!他人の命を!!優先させられるんだ!!!それで、君が死んだらどうするんだ!!自分の命よりも信念や覚悟を取るのか!?」

シエルの口調が荒くなる。信じられない、理解できない、そして目の前にいる真墨に強大な力を感じ思わず冷静さが完全になくなっていた。どんな大金がかかった勝負であっても、命がかかった一発本番のギャンブルでも、こんな風に自分を見失ったことはない。しかし、真墨は不敵に・・・笑ったのだ。こんないつ死ぬのか分らない状況でも、それでも彼は・・笑った・・・!!シエルはもう理解できなかった。そして感じる。全身に冷汗が流れ落ち、彼から放たれる得体のしれないオーラに圧倒される。

勝てない。勝てるわけない。絶望的な考えが頭をよぎる。

真墨「・・・・ああ。だから、勝ち続けられる」

そう言って・・・・不敵な笑みを浮かべた。死を前にしても彼は・・・誰かを守ることを止めない。誰かの笑顔を守るためなら最期まで戦うことを止めない。強い覚悟を秘めた瞳で睨まれて、シエルが絶句する。シエルの心が折れた瞬間だった。

真墨「・・・それに、ただ俺が、殴られているとでも?」
そう言った直後だった。後ろから、二人静かに歩いてくるのを感じ、真墨がにっと笑った。

真墨「・・・・いいところは譲ってやるよ。下ごしらえは済んだからな。あれだけ殴られてお返しも何もしないままというのは、俺の流儀に反してる。だけど、もう一発も殴る力はない。だから・・・だから・・・あそこまで甲冑にヒビ入れまくったんだ。特に一番ひどいヒビから、あのヤミーの宿主を引きずり出すんだ!!頼むぜ、翠・・・!!」

そう言って、真墨が後ろから来たワルキューレとハイタッチをすると、同時に、倒れこんだ・・・。サンヨウチュウヤミーが慌てて自分の身体を見回すと、真墨の放ったパンチやキックによって全身にヒビが入っているではないか!!冷静さを失い真墨を痛めつけることに集中していたことと装甲の頑丈さに過剰なまでに自信を持ち、わずかばかりのダメージに気を配らなかった慢心さがこのような状態になっていることに気が付かなかった。

ワルキューレ「・・・・兄さん、よくここまで頑張ったよ。あとはボクたちに任せて。さて・・・・散々うちの兄さん痛めつけてくれたね?覚悟・・・・・決めろよ!!」
テティス「・・・・暁・・・・!」

ワルキューレとテティスが同時に駆け出した!!ワルキューレのワルキューレランスが回転して一気にシエルの身体を打ち貫く!!!錫杖で対抗するが怒りでヒートアップしたワルキューレはまさに暴風の如く止まることを知らない暴れぶりだ!槍を次々と突き出し、大きく横に振るって薙ぎ払い、シエルの装甲を次々と攻撃して火花が破裂する!!爆発するたびに装甲が破壊されていく!!

シエル「ぐあああああああああああああ!!」

テティスがテティスドライバーを武器にした「テティストライデント」を構える!!そして、テティストライデントをワルキューレの見よう見まねで振り回したり、突き出したりするが、サンヨウチュウヤミーが攻撃を避けてなかなか当たらない。

テティス「ああ、もう!!どうすりゃいいのさ!!」
サンヨウチュウヤミー「邪魔をするなぁ!!」

サンヨウチュウヤミーが剣を振りかざし襲いかかってくる!それをトライデントで防ぐが戦闘などやったことがないためどのようにすればいいのか分らないテティスが防戦に追い込まれる。そして渾身の一撃に吹き飛ばされ、地面に転がる!!

テティス「・・どうすりゃいいのさ・・・!?」
その時だった。
転がってきたところにいた、真墨が話しかけた。

真墨「・・・その声、茉莉、茉莉・・・なのか!?」
テティス「・・・真墨!?」
真墨「・・・・どういうことか、よく分からないけど、お前もライダーになったのか?」
テティス「・・・そうなんだけど、アタシ、喧嘩すらロクにやったことなかった!!だから、どうやって戦えばいいのか分らなくてさ!!」
真墨「・・・で、出たとこ勝負かよ」

その時、真墨の中で何かがひらめいた。

真墨「ま、茉莉・・・!!“吸血姫ニュクテリス・ネフェルティアス・皇姫(こうき)”だ」
テティス「ええ!?」
真墨「あの吸血鬼、調べてみたら大人気のアニメのキャラなんだろ!?あれと同じように動けば何とかなるかもしれない!!」
テティス「・・・・・・・・やってみる!!」

自分のために命をかけ、ここまで傷だらけになって戦ってきた真墨の言葉を無駄には出来ない!(真墨も半ばヤケクソで言っていたのだが)自分が大好きなアニメのメインヒロインのイメージを頭の中に思い描き、それを全身をもって全力で再現させる!!

テティス「・・・・・くくく、我の親愛なる友をよくもここまで傷つけてくれたものよ。この齢幾千年の時を生ける深き闇を支配し血族の長、新たなる力に覚醒めたり。この力を持って愚かなる罪人にふさわしき厳粛なる罰を与えてくれようぞ。我は偉大なる吸血姫、ニュクテリス・ネフェルティアス・皇姫なるぞっ!!!覚悟するがよいわっ!!」

そしてさっきとは打って変わってテティストライデントを構えて駆け出し、サンヨウチュウヤミーに切りかかっていく!!槍を素早く次々と突き出し、サンヨウチュウヤミーの甲冑を粉々に打ち砕いていく!!そしてテティスがセルメダルを取り出し、柄の部分にあるメダルホルダーに入れて、金色のボタンを押す!!

「メルクパワー!レベル1!!」

「鋼」の力を司る仮面ライダーメルクの力が宿り、槍の穂先が金色の光を放つ!!そして超硬度、鋭い切れ味が倍増された槍の穂先が甲冑を一気に打ち砕く!!
すると甲冑の中から一人の少女が見えた。取り込まれているヤミーの宿主、絵門であった。テティスが絵門をつかんで引っ張りだす!!

ワルキューレ「ナイス、茉莉ちゃん!!」
テティス「くくくくく・・・・これで人質は解放した。さて、それでは愚か者どもにそろそろ引導を渡してくれようかのぅ。行くぞ、ワルキューレ!!我と共にその力大いに振るおうぞ!!」
ワルキューレ「・・・え?ま、まつ、茉莉・・・さん・・・ですか?」
テティス「・・・・ああ、もう!!キャラ作りしてんだよっ!!そうじゃなきゃノリに任せて戦えないでしょうがっ!!じゃあ、もう、さっさととどめ行くよ!!」
ワルキューレ「あ、はい!!」

ワルキューレがワルキューレドライバーをランスに装着し、テティスがセルメダルを3枚装填する!!
「エレメンタルドライブ!!」
「テティスパワー!セルバースト!!ファイナルアタック!!」

ワルキューレ「・・・ライダー・キック!!」
テティス「餓え渇く鮮血の粛槍(しゅくそう)を受けるが良いわ!!」

テティスがテティストライデントに水のエネルギーが集まり、渦を巻いて巨大な渦潮を作り出しサンヨウチュウヤミーを飲みこんだ!!その中にテティスが飛び込み、渦潮の流れに乗りながら舞い上がり、渦潮の中で溺れながら身動きが取れないまま押流されるサンヨウチュウヤミーを次々と槍で切り裂く!!そして上空高くまで舞い上がると渦潮が爆ぜてサンヨウチュウヤミーが宙に舞う。その上空にテティスが槍をサンヨウチュウヤミーに向けて上空に舞っている!!そして渦潮のエネルギーが槍に集まり巨大なドリルと化す!!

テティス「テティス・ガルフストリーム!!!」

鋼の力を受けて超硬度と鋭い切れ味を誇る槍に、水の力を発動させて召喚させた渦潮を纏った強烈なドリルを腹部に突き刺し、そのまま鋼の力で全身の体重を1万キロまで倍増させて、超重量級の打撃を受けて、身動きの取れないままサンヨウチュウヤミーを地面に串刺しにする要領で一気に突き刺し、落下した!!地面に激突する直前に体重を元に戻し空中に舞い上がって着地すると、槍を突き刺したままサンヨウチュウヤミーが大爆発を起こした・・・!!

そしてワルキューレも両足に暴風を纏い、それがシエルを縛り上げて物凄い勢いで引きずって引き寄せると、射程範囲に入ると同時に、強烈な回し蹴りを炸裂させる!!

ワルキューレ「はぁあああああああああああああああっ!!!」
シエル「うわあああああああああああああああああああっ!!!」

シエルが大爆発を起こして吹き飛び、海の彼方へと飛んでいき落ちた・・・!!派手な水柱を上げて、シエルの姿が消えた・・・。


真墨「・・・・やったな。超・・・COOLだ!」
そういって、真墨が二人に称賛の声をかけると、そのまま意識を失った・・・・。


1週間後。
結局真墨はあの後病院送りになり、3日間の入院を余儀なくされ(骨折を2日で完治させるという驚異的な回復能力を見せた)、後遺症として全身の筋肉痛で苦しみながらもようやく学園生活に復帰できた。そして事の真相を全て茉莉に話し、翠と真墨はそれはもう土下座して謝りまくった。(茉莉曰く「ここまで綺麗な土下座が出来るまで、どんな人生送っていたの」と呆れていた)そして、蒼真と真夜に相談の結果、茉莉もイージスの隊員として入隊することになり、電脳犯罪対策・整備担当に任命された(ちなみに蒼真が長年かけて作ってきたセキュリティシステム、ホームページのプロテクトなどをわずか1時間足らずで全て解析し、新しいプログラムを組みこんでさらにバージョンアップさせたシステムを製作されたため、蒼真は少し落ち込んでしまった)。

そして、茉莉は・・・・。

茉莉「・・・・アタシ、今まで翠や真墨・・・・ううん『暁』にたくさん助けられてきたんだよね。だから、今度はアタシが翠たちの戦いで力になれるようにアタシも戦う!!戦いだけじゃなくて、色々なプログラムを作ってアンタたちの力になるんだ!!一生懸命やるよ!!」

そう言って、翠たちのことを許し、仮面ライダーとして戦うことを決めたのだった。そしてライダーとしての基礎体力および戦術を習うため、クロノポリスにあるタイムルーム(現実世界の1日で1カ月の時間が流れる特殊な部屋)に入り、土日祝日の3日間、つまり3カ月の新人研修を受けるため、クロノポリスに向かって行った・・・・。

休日、誰もいない学園内を真墨が全身の筋肉痛を必死で堪えながら見回りをしていた。
真墨「痛い・・・・マジ痛ェ・・・チクショウ・・・・あの貝殻野郎(シエルのこと)・・・・散々痛めつけてくれやがって・・・・今度会ったらパワーボムで沈めてやる・・・」

倍返しの復讐を誓い、何とか見回りを終える。そしてラウンジのソファに座り一息つく。すると、真墨の前に宇津保香澄がやってきた。

香澄「ここにいたのね、真墨・・・・」
真墨「おう、宇津保。今日学校休みだけど、何か忘れ物か?」
香澄「・・・・瑛子たちから、今日は生徒会の見回りでここにいるって聞いたから。貴方に・・・・・謝らないといけないことがあって」

いつになく神妙で、しおらしい様子の宇津保に真墨もついいつものように軽く返すことが出来なかった。宇津保が、もう泣きそうな顔をして頭を下げた。

香澄「・・・・本当にごめんなさい。貴方のその怪我、私のせいで・・・・本当に・・・・いつも・・・・貴方に迷惑ばかりかけて・・・・本当に・・・・ごめんなさい・・・!」

最後は涙交じりの声だった。真墨も面喰い、驚きで目をぱちくりさせる。しかし、バツが悪そうに頭をかく。

真墨「・・・・あー、その、お前のせいじゃねぇよ。これは、俺のいつもの暴走が招いたようなモンだからよぉ・・・。だから、その、あの、泣くなよ。その、俺も、お前にそんな風に思わせちまって悪かったよ」
真墨も泣く女の子をあやすことには慣れてない(女の子に泣かされたことは多々あるのだが)。つい気遣っているのだが、普段から口が悪いだけについ相手を突き放すような言葉になってしまう。

真墨「・・・その、お前、怪我とか大丈夫なのかよ?」
香澄「・・・・私は、怪我とかしてないけど、でも、それは貴方が助けてくれたから・・・」
真墨「・・・そうか、それならよかった。もしあの時お前が怪我して、傷ついたりしていたら大変だからな。本当に無事でよかった」

すると、香澄が顔を上げた。真墨はその顔を見て、驚いた。香澄の両目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちていたから。香澄がこんなに感情を露にして泣いている姿を真墨は初めて見た(翠も見たことがない)。

香澄「・・・・どうして?どうしてそういつも・・・優しいの?どうして私のせいでいつもひどい目に遭っているのに、そうやって優しくしてくれるの?どうして私なんかを、私なんかを、いつもそうして守ってくれるの?今まで私なんか、誰も相手にしてくれなかった。私なんか邪魔だって、いなくなればいいって、生まれてこなければよかったのにって実の親からまで言われてきた。こうして、私に言いたいことをはっきり言って、間違ったことをしたら叱ってくれたり、その後、フォロー入れてくれたり、優しく抱きしめてくれたり、命がけで守ってくれた人なんて・・・・・いなかったのに・・・・・」
真墨「・・・・そういうなよ、お前、結構愛されてると思うぜ?瑛子や美子だってお前のことを本当に大切に思っているよ。いつもあいつらからお前のことばかり話聞いてるもん」
香澄「・・・でも、私は友達なら遠慮なんてしないで言いたいこと思い切り言い合いたい、喧嘩しても、本当のことを何でも話し合える関係になりたいのに、瑛子も美子も自分たちは私に仕える身だからって遠慮してなかなか本当のこと話してくれない。それが寂しくて・・・私はそういった主従関係よりも・・・・同じ目線で対等に話してほしいよ。私はお嬢様なんかじゃない、どこにでもいる普通の高校生の女の子として向き合って欲しいのに・・・・!」

香澄が心の奥に秘めていた心情を吐き出す。それは、瑛子や美子に自分を「ご主人様」として接してくることに不満を抱いていたのだ。自分がワガママを言っても何でも聞いてくれて、自分の言う言葉に何でも忠実に従ってくれる、しかしそれだけでは不満だった。ワガママかもしれないけど、本当に香澄が欲しかったのは、間違ったことをしたら怒ってくれて、自分を「ご主人様」ではなく「対等な仲間」として時にぶつかり合い、お互いの気持ちを理解し合い、繋がりを確認し合えるそんな存在が欲しかったのだ。

真墨「・・・・宇津保・・・」

真墨が立ちあがって、泣きじゃくる香澄を優しく抱きしめた。そして頭を優しく撫でる。

香澄「・・・・ま・・・すみ?」
真墨「・・・俺も翠や生徒会の連中の前ではつい強がってカッコつけちまうからさ。まあ、そうでもしてないとあいつらすぐ暴走するし何やらかすか分ったもんじゃないし。でも、辛いとかやってられねぇとか思わないわけじゃないしな。そうして色々と言いたいことを言い合える仲間が欲しいって気持ち、俺も分かるよ。でもな、言いたいことがあれば言えばいいんだ。そこで喧嘩になっちまったりしても、あんな事言わなければよかったと後悔することがあっても、自分の気持ちをいつまでも言わずにいるとそのうち、パンクするぞ」

真墨は思った。自分もその気持ちが分かるから。自分もつい周りを不安にさせたくなくて強がったり虚勢を張って大丈夫だと言ってしまうことがあるけど、時に本当に不安な時や弱音を吐きたい時もあったりした。人知れず自分自身の弱さを嘆いたり、自分一人でどうすることも出来ず悩み苦しんだこともある。でも自分が弱いところ見せたら自分についてきてくれる仲間達が路頭に迷ってしまうかもしれない。だからこそ、自分が迷ったり悩んだりするところを仲間達に知られることがないように戦っている。でも本当の心を打ち明けられる存在を失った真墨には、今の香澄の気持ちが痛いほど分かるのだ。(真墨も4割がたトラブルの元凶であることがあったりするのだが)

真墨「・・・だからよ、まずはその気持ち、瑛子や美子にも話してみたらどうだ?それでもし何かあっても、俺がフォローしてやるからよ。それに、お前の本当の気持ちを打ち明けられたとして、あの二人がお前のことを嫌いになったりなんて絶対しない。そんなことで壊れちまうような脆い“絆”じゃねえだろ?」
香澄「・・・・・・絆!・・・そうだよね、うん、やってみる」
真墨「・・・・・・しっかしまあ、相当不器用だなお前」
香澄「・・・・貴方に言われたくないわよ」

二人がお互いを見て笑い合う。

香澄「・・・ねぇ、真墨。私・・・・もし何かあって・・・・一人で抱えきれないことがあったら・・・・愚痴りたい時や苦しくて仕方がなくなったら・・・そばにいてくれる?」

上目づかいに、真剣な表情で懇願する香澄。真墨は優しく微笑んだ。

真墨「・・・・いいぜ。俺でよければいつでも頼れ。俺ももし何かあったら、お前を頼っても・・・いいか?いつも偉そうで生意気だけど妙に愛嬌があるお前と一緒にいるだけで元気が出てくる。また頑張ろうって思える、勇気が湧いてくる。そんな気がするんだ」
香澄「・・・・・ふふっ、いいわよ。私も・・・・真墨とこうして話していると・・・・心がほわってなる・・・・・勇気が出てくる・・・・・また一から頑張れるって気持ちになれるの。というか、偉そうで生意気は余計ですわよ!」
真墨「あー、悪い。つい本当のことを」
香澄「んもう!!本当に・・・・おバカさんですわね♪」
真墨「アハハハハ!!お前には負けてねーよ!バーカ!!」
香澄「ぷっ・・・・アハハハハハハハハハ!!貴方こそ、“バーカ”♪」

そういって、二人が思い切り笑い合った。そして香澄はいつ、こんな風にお腹の底から思い切り笑ったのか思い出せないくらい大きく笑った。ひとしきり笑った後、ラウンジに一筋の光が差し込む。見るとそこには雨が上がり、一面の青空が広がっていた。空の色ってこんなに明るかったかな。香澄は久しぶりに心の底から晴れやかな気持ちになっていた。


その様子を真墨の眼鏡のレーダー越しに見ていた蒼真は驚いたように見ていた。

蒼真「こいつは驚いたな。暁が女の子のフラグをゲットするのは別に珍しくはないけど、まさかあの朴念仁のフラグを立てちまうとはな・・・この宇津保って子、もしかしたら、暁の何かを・・・・変えてくれるかもしれないな。ふふっ・・・楽しみじゃねえか」

どこか愉快そうに微笑みながら、香澄と一緒に嬉しそうに微笑んでいる真墨の笑顔を見て、蒼真は呟くのだった。

続く
,さて、第16話投稿しました。今回ついに登場しました「知識の紋章」と「友情の紋章」の二つの紋章を司る「思慮の紋章」の仮面ライダー、「仮面ライダーテティス」。今回の話でテーマとしたのは「友情とは何か」を考えました。茉莉は物語冒頭から暁や翠の正体を知っていてそれでも二人に黙って自分が信じるに値する人間か実は試していたのでした。しかし今回の真墨の「人を守ろうとすることに対する信念」「他人を命がけで守りたいという気持ち」「命の大切さを重んじる性格」が顕著に書いてみましたが、彼の言葉や行動に嘘偽りはなく、自分を守るためにいつも一生懸命になってくれるそんな真墨の存在に、茉莉は改めて人を信じることの大切さを思い出し、自分に真墨や翠のように大切な人たちを守れる力が欲しいと強く願い、テティスに変身できました。そして香澄も自分を守るために一生懸命になってくれて、自分と同じ目線で話しかけたり、間違ったことをしたら叱って正してくれる真墨に今まで自分が欲しかった「友達」という存在を求めるようになります。そしてその申し出を快く受け入れた真墨はこの後、香澄にとって最高の「親友」としていろいろと関わることになります。そして真墨もそんな何事にも一生懸命で一途で不器用だけどまっすぐな心を持っている香澄を慕うようになります。というか、真墨は香澄に自覚はないが恋愛感情のようなものを抱いています。なかなかお互いに気づいていないですが、今後の真墨と香澄のやりとりにもご期待ください。

新ライダー・テティスのデータを載せます。
仮面ライダーテティス
テティス:(ギリシャ神話に出てくるネレウスとドーリスの娘の一人で英雄アキレウスの母親)
高い機動力と柔軟性を誇り、水中戦では無敵の強さを誇るプレシオサウルスをモチーフとする中国の武将をイメージした甲冑に身を包んだ海の仮面ライダー。トリニティシステムライダー1号。武器は変身ツールにもなる三叉槍「テティスドライバー」。メルクの持つ「鋼」の力を操り武器の攻撃力や甲冑の
防御力を強化したり、金属製の剣や槍など武器を無限に練成して矢のように放ったり、セドナの「水」の力で鉄板をも貫通する水鉄砲や渦潮、津波などを発生させて攻撃することができる。黄司茉莉が変身する。戦闘はまるで素人だが大好きなアニメの主人公「吸血姫ニュクテリス・ネフェルティアス・皇姫」になりきることで強力な槍さばきを発揮することが出来ます。中二病が転じて福となった新しい戦闘スタイルです。


レスをお返しします。
>烈様

>雪奈
「《繚乱会》って賑やかな感じですね〜。……メンバーがかなり濃すぎますけど……」

茉莉「つか、こんな個性的すぎるメンバーがよくまとまって生徒会とかやっていけるよね」
蘭「歴代の生徒会長やOBからも学校創立始まって以来のクセが強い集団だって言われてるよ」
真墨「・・・お前うれしそうだけど、それ、褒め言葉じゃないからな」

>明久(電王)
「それほど朱美さんと蘭さんが茉莉さんのことを大切に思っているってことなんだろうけどね(苦笑)」
確かに蘭さんは実の妹のように可愛がっていますが、朱美(色情魔)は・・。
朱美「私の夢は将来美少女や美女をはべらせてハーレムを作ることよ?茉莉のような金髪色白ロリっ子美少女は真墨にはもったいないわ!私が可愛がってあげることこそが、茉莉にとっても幸せなのよぉ〜〜〜〜〜!!!」
という独占欲が強すぎる性格のせいです。ちなみにそれを言った後、真墨にチョップを食らって制裁されてます。

>優子
「……私としては、メイさん達の戦闘の所為でボロボロになっている校舎の方が気になるんだけど……」
メイ「木下、心配ありがとう。異次元空間をはっておいたからその中で暴れても現実での建物は壊れないんだ。まあ、窓ガラスが数枚割れたが、シェオロに直させた」


Mission17「消えた神器と黒薔薇絶体絶命の危機」
メイは連絡がついたギュゼルから長野で「真田十勇士」の遺骨と、彼らが使っていたと言われている10個の武具が何者かによって盗まれてしまったことを知らされる。ゼロらしき人物がそこにいた気配があるというのだ。一方、翠たちはもうすぐ始まるプールの授業を楽しみにしていて、盛り上がっていた。しかし真墨の顔色は優れない。泳ぐことには問題ないのだが女子更衣室で一緒に着替えなくてはいけないため、バレたら社会的にも生命的にも破滅を迎えると落ち込んでいたのだ。それを聞いたシェオロがとんでもない発明品を作り出してしまう。結果、真墨は地獄を見る羽目に陥ってしまう。

次回もよろしくお願いいたします!,#000000,./bg_f.gif,210.143.129.158,0 2013年09月15日(日) 19時13分51秒,20130915191351,20130918191351,eF7oZdS3ntK6M,仮面ライダーD's【Diez】<Setting>,sui7kumo,,,■Concept


デジタルフィールドシステム。

そのシステムが完成してから、世界は未来における大いなる電子世界への第一歩を踏み出した。
しかし、時同じくして現れた、実体化したコンピュータウイルス『マジルス』。
個々に意思を持つそれは、人間と同化し、形を形成し、現実世界に姿を現す。

システムが試験的に使われている限定特区『由宍市』で次々に起こるマジルス事件。
立ち向かうのは、一人の少女。


運命に導かれて手にした力で、少女は戦う・・・行方知れずの姉を求めて―――――。


Dress the Digital――デジタルを身にまとえ!



■World


・由宍市<ゆにくし:Yuniku-City>

物語の舞台。デジタルフィールドシステム(以下DFS)が限定的に使用されている限定特区。
DFSを開発した電気メーカー『D.A.T.A.』の本社がある。


・幕窓町<まくまどちょう:Makumado-Town>

由宍市の中心街で、町の隅に『D.A.T.A.』の本社がある。
いわば会社のお膝元で、DFSを積極的に活用している、電子に溢れた街。駅の前に大きな商店街がある。


・『D.A.T.A.(データ)』=『Digital And Technology Association』

DFS製作に協力した事で世界的に有名になったIT産業の先頭を行く電気メーカー。
本社は由宍市幕窓町の隅にある。


・カフェテラス・Misaki【CafeTerrace Misaki】

幕窓駅から徒歩3分ほどにある喫茶店。後述の三咲あきらの家でもあり、オープンカフェ式になっている。
2階建ての下階がカフェテラス、上階が居住スペース。
明里はここで高校1年からアルバイトを継続し、4年目の現在は正規スタッフに昇格。


・茶田邸【Sada's house】

茶田林檎の家。
幕窓町から徒歩10分程にある5階建てマンションの3階305号室。



■Charactor


・御城 明里【Meiri Oshiro】

158cm、88(F)-58-83
茶髪のセミロング+姫カット、左のもみ上げだけ三つ編み
一人称:私

この物語の主人公で18歳。右利き。
『やる気・前向き・元気』がモットーのポジティブ少女。
DFSを開発した世界的才女・御城菜々花は唯一の肉親であり実姉。

高校時代からアルバイトしている『カフェテラス・Misaki』で正規社員に昇格したばかりだが、
重度の機械音痴が災いしてDFSによる注文関係とレジ打ちだけは禁止されている。
それに反し、アナログによる速記能力と事務能力には特化している。

『インシュレーター』としての能力を買われ、アイスの命令で『D's』としてマジルスと戦わされる。
その際、何故か性格が本人のそれとはかけ離れたものになってしまった。


・御城 菜々花【Nanaka Oshiro】

明里の唯一の肉親にして姉。24歳。
IQ250の才女であり、物語開始の1年半前にDFSを開発した世紀のエンジニア。
後述の『アイス』のモデルでもある。
現在は行方不明。


・茶田 林檎【Ringo Sada】

170cm、79(B)-57-76
黒髪のサイドポニー
一人称:私

D.A.T.A.に所属するシステムエンジニアにして、『D's』の初代装着者。22歳。
バイクスーツが似合うスレンダー美女。
『インシュレーター』であり、明里と出会う前から『D's』を使用していた。


・アイス【ICE】

163cm、87(E)-59-83 ※人間換算時
一人称:あたし

D'sのデバイスをコントロールするコアシステムのAI。
画面上で表示される姿は青色のツインテールと電気基板の模様のように白線ついた青いワンピースで、
面影はモデルである明里の姉・菜々花を髣髴とさせる。
口が悪いのを除いて。
明里の事を『ガキんちょ』と呼ぶ。


・三咲 あきら【Akira Misaki】

165cm
明るめの茶髪ロングヘアー
一人称:ボク

幕窓町にある『カフェテラス・Misaki』のオーナーを父親に持つ。
明里の幼馴染で、幼稚園から小中高と全て明里と同じクラスだった。
大らかで細かいことをあまり気にしないせいか、多少うっかりさんな所がある。
明里共々カフェテラスの看板スタッフ。



■Rider


※『仮面ライダー』の名義は設定上のものです。劇中ではその名前は意識されていません。



・仮面ライダーD's(ディーズ)【Masked Rider D's(Diez)】


D's=『Digital Dress Driver』または『Digital Drive Dress』。

御城明里or茶田林檎が『デジタルドライブドレス』を身にまとった姿。
百獣の王・陸の頂点であるライオンをモチーフにしており、
インシュレーターの数値が大きいほど、より力を引き出すことが出来る。


*ドライブフォーム【Drive Form】

PUNCH 5t(左手)、7t(リオンナックル・ペーパー)、10t(リオンナックル・ロック)
KICK 8t
JUMP 一飛び30m
SPEED 5.3s/100m
DEVICE リオンナックル【Lion Knuckle】
PERSONAL COLOR:青
FINAL INSTALL:ブラスト・インジェクション【Blast Injection】


D'sの初期フォームで、銀の装甲に青いスーツ。
基本的には肉弾戦とDFS機能を駆使し戦闘を行う。

明里の場合は大人しい性格が反転して、少し大人びて活発であまり人の話を聞かない上、
決め台詞が『お注射の時間よっ!』など、専らナース系な性格に。

アイスの呼び方は『アイス(呼び捨て、ただし普段の明里と違って上から目線)』。

武器は右手に備わった巨大手甲『リオンナックル』。
利き手である右手のパンチ力が上がり、たてがみを模した手甲は重戦車の大砲をも反動無しに跳ね返す。

3種類のモードがあり、ナックルカバーの操作(ライオンの口のようになっており、右手がすっぽり食べられるような風貌)→音声入力で切り替えることが出来る。
ナックルカバーを閉じ、基本的には『チェンジ◯◯』の音声入力でモードを切り替える(○○のみも可)。

ペーパー(Paper):デフォルトモード。DFSを活用する際は主にこのモード。
シザース(Scissors):右手に鉤爪が装着される。伸縮自在。
ロック(Rock):ロボットのような装甲拳が右手に装着され、パンチ力が大幅に強化。


必殺技は『Final Disk』を使用して放つキック『ブラスト・インジェクション』。
これによりウイルスの身体にワクチンを注入し、ウイルスの原種だけをデリートする。


発動前に『バインドシールド』という束縛用フィールドを発射し、敵を束縛する必要がある。
これはバインドシールドに束縛の機能の他、技発動時に生じた衝撃と爆風を吸収する機能もついているためで、
これによりマジルスを元の人間を傷つけずに除去する事が出来る。



■Word【D's】


・デジタルフィールドシステム(Digital Field System:DFS)

別名『電子物物理出力システム』。
空気中の複数の物質を変化させて利用し空間上に電子物を具現化することで、
今まで電子機器でしか表現できなかった電子物を、立体化させ、可視だけでなく可触すら実現した。

現在は由宍市で一定時間の間『試験利用』という名目で限定使用されている。


・インシュレーター【Insulator】

マジルス化の原因となる特殊ウイルスを寄せ付けない所か身体に触れた瞬間これを消滅させてしまう、いわゆる『絶縁体』に当たる潜在能力。
マジルスに対抗するD'sシステムの適格者にあたり重宝されている存在であるが、逆にマジルスには目の敵にされている存在。


・DFSユニット

D'sの両手の甲・両足裏にある『DFSユニット』は、両肩・両膝に備わるDFS中継コアを経由して、
胸のDFSコアを通じバイザー経由で装着者の頭脳と直結しており、DFSの機能を頭で考えるだけで発動する事ができる。

主に、コンソール表示、AIシステム表示、それらを応用したシールドシステム。


・ディーズアクセス→ディーズドライバー

前者は明里が持つ、縦7cm横15cm厚さ2cmの楕円型小型デバイス。カラーは青と銀のツートン。

左右のキーはQWERTY方式のキーボードで、画面はタッチパネル。
AIシステムもこれでいつでも表示が出来る上、通信にも使える便利道具。

アクセスの背面にあるスロットに上から『Change Disk』を装填すると、DFSが起動し、
ディーズアクセスにベルトツールが装着された『ディーズドライバー』となり装着者の腰に装着される。
その状態で右手側に青のタービン(Enter代わりの別名『エンタービン』)を回すことで、『Digital Drive Dress』の装着フローが発動する。

前者背面はDFSコアを中心にモールト(凸凹)になっており、ドライバー時には模様が浮かび上がってバックルになる。
左手側にアペンドディスク(後述)を挿入する差入口がある。


・ディスク・カートリッジ

『Change Disk』を始めとする、システムを拡張起動するためのディスク。小型CDが半円型のカートリッジに入ったような形。
『Change Disk』以外の『アペンドディスク』(カートリッジが透明)はドライバー左手側の差入口から装填し、使用後は左腰のディスクケースに自動転送される。


・デジタルドライブドレス【Digital Drive Dress】

D's装着者の身体を包む強化装甲。
常にDFSによる身体能力強化と対撃防御が全身にかかっている。



■マジルス【MADIRUS:MAterialized DIgital viRUS】


突然変異したコンピュータウイルスで、DFSを経由して現実世界に実体化出来る『原種』が
人間に取り憑きデータ化させてしまう現象と、その対象者を示す言葉。

DFSが開発されて少し経った後に突然現れ、その目的は不明。
身体をDFSで包んで表皮が濃青の動植物のような強化態を採る事がある。

マジルス自体にはそれぞれ意思があり、元の人間の意識や記憶を生かすか殺すかも出来る。
強化態になる際、目の周りに電子基板の(電気が走った)ような紋様を浮かび上がらせ、青系の表皮になる。

共通して、マジルスは自分の身体から原種(見た目は球体状の青い光)を無作為に飛ばすことが出来、
人間に皮膚感染し、原種に適合できない人間はその場で身体が『フリーズ』し、一種の植物状態と化す。

D'sのシステムは、これを除去するために開発されたワクチンを打つ為の注射器のようなもの。
ただ、弱らせないと効果が薄い。



<Updated:20130915>
,仮面ライダーD'sの(備忘録を兼ねた)設定ページです。

偶数話消化ぐらいで更新かけます。

設定や人名の由来として、電子機器かIT用語が主に元になっています。
言及はしませんが、『あぁ、アレか』くらいでも特に問題ありません。
,#000000,,e0109-106-188-15-202.uqwimax.jp,0 2013年09月15日(日) 15時58分35秒,20130915155835,20130918155835,eCYldu39LR4EQ,仮面ライダーD's【Diez】<2nd Folder>,sui7kumo,,,【Masked Rider D's】


Now Uploading―――――2nd Folder:『変身!必殺のお注射>>Dress the Digital』











??:「言ったでしょう?・・・・・・絶縁体インシュレーター、って」


青い異形―ウルスマジルス―の前に立ち塞がる仮面の戦乙女。
道端でこっそり倒れる彼女に気づくこともなく、右腕の手甲に手をかける。

ウルフM:『インシュレーター・・・!?その言葉、なんか無性に腹が立つんだけど・・・!!』

??:「勝手に立ってなさいな。錯乱された方が、こっちとしても相手しやすいわ」

そう言って、右手の手甲をスライドする。
丁度右手がライオンに食べられたかのように包み込まれると、ライオンの目が淡く点滅を始めた。

ウルフM:『減らず口をッッ!!!

??:「さて・・・・・・“シザース”」


chmod k+s LION KNUCKLEチェンジモード リオンナックル・シザース


異形が伸ばした鉤爪を大きく振るい落とすよりも前に、
機械音に合わせ、彼女はしまいこんだ右手を再び露出させた。


ガキィィィンッッ!!!


大きな金属音。耳をも塞ぎたくなる軋む音。
異形の鉤爪に食い込ませるかのように、また別の爪が重なり合う。


リオンナックル。彼女の右腕にある手甲の名である。

その売りは、大砲の弾を反動もなしに弾き返す大きなボディだけではない。
右手に備わった装甲を、装着者の意志のまま、自由に切り替えることが出来る。


ジャンケンで言えば、『チョキ』。伸縮自在の鉤爪。それが、リオンナックル・シザース。


ウルフM:『―――――ッ!?』

??:「