金曜日。
まっとうな高校生なら翌日からの休みが楽しみで仕方が無いものだ。
しかしまっとうな高校生であるはずのポップは憂鬱で仕方が無かった。
憂鬱の原因は年上の恋人ヒュンケルと会えないどころか連絡がまったく途絶えてから4週目に突入し、もうすぐ1ヶ月、新記録達成というところにある。
学校があればまだ授業だのなんだので、そんなにもヒュンケルの事を考えずにすむのだけれど、休みともなれば、嫌が応にも考えてしまう自分を知っている。
ただ自分ばかりが会いたいのか、などと思ってしまうのが嫌なのだ。
ヒュンケルは年上で社会人で、しかも一応、刑事なんて職業についていて、忙しいのは当たり前。
分かっているのに、どこか拗ねたようなことを考えてしまう自分が嫌でたまらない。
ダイや友人を誘ってみたものの、もうすぐ部活の試合だとかなんだとかで断られてしまったし、更に母親は昨夜から単身赴任中の父親の元へと行ってしまっていて、家に戻っても一人きり。
学校を出て駅へと向かいながらそんな事をぼんやりと考えていたら、すぐに降りる駅に着いた。
けれどポップはそこで降りず、もうひとつ先の駅で降りた。
改札を出るのを少し躊躇い、けれど結局戻ることなく改札を抜けて。
たどり着いたのは、恋人のヒュンケルが住むマンションの一室。
合鍵を取り出して、ドアが開く乾いた音が誰もいない部屋へと響いた。
乱暴にスニーカーを脱いで、部屋へと上がり中を見回す。
独身男性の部屋だというのに小奇麗なのは、ヒュンケルが綺麗好きなのではなくただ単に物が無いだけだ。
無駄なものはほとんど無く、あるとすればポップが買ったり持ち込んだりしたものばかり。

「・・・帰ってきて無いみてーだなあ・・・」

部屋の感じからすると、あまり帰ってきてもいないようだ。
会うだけでもと思ったが、それすら叶わないのがすぐに分かった。
ポップは残念に思うと同時にどこか少しほっとしたのも確かで、もしも酷く疲れて帰ってきたとしたら自分の存在は迷惑以外の何でもないことは分かっている。
そしてきっとそんな自分を邪険に扱うことも無く、いつものあの柔らかい笑みで相手をしてくれるだろうことも。
分かっているから。
分かっているのに。

「ほんっと駄目だな・・・、おれ。」

会いたいというだけで、来てしまった。
だから帰ってこないことに少しほっとしている。

ポップは制服を着たまま、ぼすん、と音を立ててベットへとダイヴして目を閉じる。
少し湿気た匂いはするけれど、ヒュンケルの香りがするベットはポップを少し軋んだ音を立てて柔らかく受け止めた。

一人暮らしのクセに、ダブルベット。

どうせ家になんて寝るだけしか帰らないからな。
寝具だけでも上等なものを、と思って買ったんだが。

あの台詞を聞いたのはいつだっただろうか。
情事の後の汗で張り付いた髪を優しく梳く大きな手とセットで記憶が蘇ってくる。
その後、意地悪く笑ってポップの耳元で囁いたことも、一緒に蘇ってきて。

随分と、役立っているよ。

こうやって、と甘く囁かれ抱き締められて唇を塞がれて。
そうしてまた、あの甘い眩暈の園へと連れて行かれた。


髪を優しく梳いてくれていた大きな手が、ポップの自身を包み込み卑猥に攻め立て始めた。
もう何度奪い取られたかも分からないくらいなのに、もう一度見せろと強請られる。

「・・・もっ・・や、だあ・・・ッ」

鋭敏になった身体にはキツイ快楽を休むことなく施されて、ポップはしゃくりあげるがヒュンケルは許さない。
耳元で酷く甘い声で囁き、その唇で零れた涙を吸い取ってはポップを優しく追い詰める。
唇は頬を伝い首と鎖骨を辿り胸へと落ちる。
散々弄られ赤く腫れたポップの乳首を口に含むと、音を立てて吸い上げた。

「・・・あッ、んんッ・・・、いた、い・・・ッ!」

先ほど迄の愛撫で腫れ、痛いと訴えれば癒すように舌に舐めあげられる。
放して欲しかったのに、また違う快楽を与えられてポップは高みへと追い上げられてゆく。
けれど到達することができない。

「んんッ、あ、ヒュン・・・ッ、やッ」

名前を呼んで手を伸ばして強請るけれど、ヒュンケルは意地の悪い笑みを浮かべるだけ。
そしてまた甘い声で耳元で囁くのだ。

・・・ちゃんと、言ってごらん?

言葉にして言え、と知っているくせにヒュンケルはポップへと言い放つ。
ポップは嫌だ、と小さな子供のように首を振るが、ならばこのままだ、と自身を攻める動きが早くなる。
甘く強請る嬌声が喉から零れ落ちそうになって、ポップは慌てて手で口を塞ぐが、返ってそれは熱をこもらせる行為でしかなかった。
熱が放出先を求めて体中を駆け巡り、ヒュンケルの与える快楽にポップは全身をビクつかせる。
理性が焼き切れて、追い詰められたポップはヒュンケルの欲しがる言葉を口にした。
するとヒュンケルは凶悪なまでに甘い声で、囁いたのだ。

ちゃんと言えたいい子には、ご褒美をあげないとな。


その瞬間、けたたましい電子音がポップを一気に覚醒させた。


「おうわッ!!!・・・あ・・・ゆ、め・・・?」

ベットに横になって目を瞑っていたらどうやら眠ってしまったらしい。
電子音は枕元に投げ出した携帯電話からで、友人からのメールだった。
ヒュンケルから連絡があったらすぐに分かるように、と電車を降りた時にマナーモードから切り替えておいたことを思い出す。
飛び起きてメールを読めばたわいも無い内容。
携帯電話を放り出し、ふと我に返れば。
学ランにこもった熱と、じっとりと全身にかいた汗と。
下肢に溜まる重苦しい、熱。
ポップは全身を真っ赤に染め上げた。

こんな夢を見たのは別に初めてじゃない。
連絡が途絶えた4週間の前は、連絡はあったものの会えなかった時間があり、その前には会えたけれどゆっくり2人でいれる時間が無い期間があった。
簡単に言えば、肌を重ねたのは大分前になってしまっているのだ。
ポップもまだ高校生。
知らなければそこそこやり過ごせるかも知れないけれど、もう開かれることを知っている身体は快楽を求めてポップにもどうにもならない時がある。
甘い淫らな夢を見て、一人自慰に溺れることもあった。
でもこんな息遣いさえも聞こえるようなリアルな夢は初めてで、こめかみの辺りがガンガンと痛い。

「・・・ん・・・ッ!」

学ランにこもった熱と汗が不愉快で上着だけでも脱ごうかと身じろげば、既に立ち上がった下肢が下着を湿らせていることを知る。
恥ずかしさと情けなさでポップはベットへと突っ伏した。
すると立ち上るのはヒュンケルの香り。
それを自覚した途端、体温が一気に上昇する。

「くっそ・・・!」

もう、解放する以外にポップに術は無く。
誰もいないことは知っているけれどポップはベットの中に潜り込み、ジッパーをおろした。
自身を下着の中から取り出せば、それは待っていたかのように震えて滑った体液を溢れさせていた。
その体液を指で自身に擦りつけるようにすれば、ビクリと身体が跳ねる。
くびれた部分を愛撫して、先端を割るように指を差し入れる。
もう片方の手で柔らかい袋の部分をやわやわともんでは、身体を巡る快楽にポップは身体を震わせる。
酸素が欲しくて息をすれば、ヒュンケルの香りがして更に追い詰められた。

「んッ、んんッ、は、あ・・・あッ!」

とろりとあふれ出た体液が双丘の間を伝い、シーツへと落ちた。
ポップはビクリと身体を跳ねさせると、閉じた瞳を更にギュッと瞑る。
粘着質な体液が伝う感触のせいと。
そのせいで自覚した、本当に欲しいもののせいとで。
ポップは頭を大きく振ると、その考えを頭から追い出そうとする。
さっきの夢でもそうだった、と思いついてしまえば追い出すどころかますます自覚してしまう。

「も、や、だ・・・ッ」

自身だけの刺激では、達することができなくなっている身体を。


自慰なんて別におかしい行為ではないし、健全な男子高校生ならば仕方が無いというもの。
けれどいつからか、なかなか上り詰められない自分をポップは知った。
いつからか、なんて本当は知っている。
ヒュンケルと付き合いだして、この身体を拓かれたあの時から。
排泄のためだけの器官は、もうポップにとっては快楽を得る場所になってしまったのだ。
それでも自分で触れることは出来なくて、物足りなく思いながらも熱を解放すれば欲は収まった。
なのに今日は。
ヒュンケルの香りに包まれてしているからなのか。
ヒュンケルのベットでこんな行為をしているという背徳感からなのか。

上り詰めることが、できない。


いつの間にかポップを隠していたブランケットはずり落ちていたが、ポップは気がつかない。
快楽ではなく、達することが出来ない焦燥がポップを追い詰める。
痛いくらいに自身を擦るけれど、焦れば焦るほどヒクつく奥を自覚してしまう。
自分の身体の変化に怯えて、ポップが泣き出したそのとき。
ベットが、ギシリと音を立てて沈んだ。

「・・・え・・・」

一瞬、何もかも忘れてそちらを見やれば。

「随分と楽しそうだな。オレも混ぜてくれるか?」

先ほどの夢のように、意地の悪い笑みを浮かべたヒュンケルがいた。














NEXT











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無駄に長くなったので、ちょっと切りまする。

ようやく現パラエロ更新〜!
淫行刑事っていうかただのスケベ親父ですよヒュンケルさんたら!

・・・思ってみれば、H*P祭りに投稿したお話に似ておりますのう。
アハハハ。



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