目を開けたら見知らぬ天井が飛び込んできた。ぼんやりとしたまま身を起こすと、見慣れないベットの端に腰をかけて紫煙を燻らすヒュンケルが居た。
おれが起きたことに気がつくと、銜えていた煙草をアシュトレイに押し付けて消し、立ち上がって近づいてきた。
何が起きたのか、頭はまだ上手く回らず近づいてくるヒュンケルをぼーっと見つめてしまう。

「気がついたか」

「ヒュン……?ひゃッ!?」

ヒヤリと冷たいものが頬に当てられ身を竦めながら見ればミネラルウォーターのペットボトル。
わざわざ頬に当てる事はないのに、と少し膨れながら差し出されたそれの蓋を開けて口をつける。
思った以上に喉が渇いていたらしい、一気に半分くらいを飲み干してしまった。
あまりに急いで飲んだせいか、唇から水が零れたらしく首筋を冷たい水が伝うのが分かる。

「零れたぞ」

「あ……」

ギシリとベットが音を立てたかと思うと唇から零れた水をペロリと舐められ、そのまま水が伝った場所を舌で辿られた。
身体がビクリと跳ね上がり、自分の身体がやけに敏感になっているのを教えられて、今までの記憶が戻ってくる。
ヒュンケルとホテルに泊まって、バスルームでエッチして……そして意識を飛ばしてしまったのだ。

「ぁ……ッ」

着せてもらったらしいバスローブの胸元を広げられ、舌が水の伝う場所とは違う場所を這い回る。
尖った乳首に吸い付かれ、甘い疼きが身体中へと散らばっていく。

「あ……ッ、や、んッ」

「気分は平気か」

「んんッ!あ……ッ、やッ!」

のぼせたんじゃないのか?と心配しているとは思えないほど胸の尖りを執拗に愛撫する舌と、話す事によって不規則に当たる歯に呼吸を乱される。
胸を弄られるのははっきり言って苦手だし、それはヒュンケルに何度も言ったのに止めるどころか最近は酷くなっている気がする。

「のぼせて……な、い……ッ、んぅッ!」

「なら、いいか……?」

「んあッ!あッ!」

胸に施されている愛撫のせいで気がつかなかったが、いつの間にかバスローブの裾からヒュンケルの手は侵入していて奥に指を突き立てられ身体が跳ねた。
ソコはヒュンケルの体液がまだ残っていて容易く指を飲み込んでいく。
胸を愛撫されながら指の動きを粘ついた物にされて、さっきの余韻がまだ残る身体にはひとたまりも無い。
身体を巡る熱と先ほどまでそこにあったヒュンケル自身の質量を身体が思い出して理性が焼き切れる。

「だい……じょ、ぶ……ッ……!」

肯定の言葉が簡単に口から零れてすぐさまヒュンケルへと吸い取られる。
上顎を舌で擽られると身体が跳ね上がって中の指をきゅうと締め付けてしまった。
一回そんな状態になってしまえば、身体は箍を外したように指を締め付け始める。
もうおれの意思ではどうにもならない。どうにかできるのは、ヒュンケルだけ。

「ふ、あ……ッ」

離れた薄い唇には淫靡な笑みが浮かんでいて、唾液に濡れながら怪しく光る。
けれど瞳を見れば思ったほどに余裕は無いようで、焦がれた色に染まっておれを映していた。
その瞳に射抜かれて身体の奥が熱くなる。先ほどの奥で放たれた熱を思い出して身体が震えた。

「…ん……ッ!」

「ポップ……」

ずるりと指を引き抜かれ、それを追いかけるように閉じていく内側に身体が震える。
ヒュンケルの手がおれの膝裏にかかって上へと押し上げられた。
膝頭が顔の側にある体勢。正気であれば顔から火が出るだろう格好にされるが、今のおれにはそんな事は苦にもならない。
酷いくらいに扱われたいと思ってしまうくらいに欲しくて、理性なんて焼き切れてる。なのに。


ヒュンケルが身を乗り出してきて、ギシリとベットが大きな音を立てたその瞬間、ふと思い出してしまった級友の言葉。


ホテルの人ってさ、どんなにベット直してもそーいうコトしたって判るんだって!
気をつけてね!


焼き切れたはずの理性が、音を立てて繋がるのがわかった。


「ぅわー!!!タンマタンマッ!!!」

「……ポップ?」

バチン!と音を立てて両手でヒュンケルの顔を押さえて侵入をブロックしてしまった。
我に返ってそおっと手を離すと訝しげな表情のヒュンケルと目が合う。
そりゃそうだろう、さあこれから合体!と言う瞬間に張り手をかまされたんだから。
しかも今までおれもノリノリだったわけだし。
しかし戻ってきてしまった理性が級友の言葉を脳裏で繰り返し呟いて、どうにも先には進めそうに無い。

「あ……えと……その……」

上手い言葉が見つからず口籠ってしまう。

「どうした?」

「いや、あの!その、な、やっぱ今日はこの辺にして帰らねえ?」

「は?」

ヒュンケルがぽかんとした顔をした。
おお、こんなヒュンケル初めて見た、とか関心している場合じゃないんですけど。
どうしようどうしようとそればかりが頭を巡り、言い訳も何も浮かばない。

「……やっぱり気分が悪いのか?」

途端、ヒュンケルが心配そうな顔になる。
心配させたくなくて違うと言ってしまってから、良い言い訳だった事に気がついても後の祭り。
じゃあ何故?という表情のヒュンケルにパニック状態のおれは今の状況も忘れてしまっていた。

「や、だから、姫さんが、」

「姫さん?……誰、だ?」

ヒュンケルの表情が影を帯びる。
パニック状態のおれにも分かる危険信号。
今までのどうしように違うどうしようが混ざって更にパニックになる。
当たり前だろう、真っ最中に他の女の話題、だなんて。
おれだったら激怒する。

「あ、クラスメイトで、いやだからそれはどうでも良くって」

「クラスメイトなのか?」

「そうなんだけど、そうじゃなくって、だからベットですると駄目なんだって!」

自分でも何を言っているのかが分からない。
理由にもならない理由を並べて、その度にヒュンケルの声が低く、表情に影が落ちていく。

「……ベットじゃなければいいのか?」

「へ?」

ヒュンケルは言うが早いか、おれの身体をベットからひょいと抱き上げた。
おれがぽかんとしているのも気にせずベットの隣にあったソファへと腰掛けた。

「ヒュンケル……?」

当たり前だとは思うけれど不機嫌な空気を醸し出すヒュンケルに恐る恐る声をかけるが、ヒュンケルは答えない。
謝ったほうが良いのだろうけれど、どう謝っていいかもわからない。
ヒュンケルの膝の上に横抱きにされたまま、おれは固まってしまった。
するとヒュンケルの腕が伸ばされ、ソファの側のスタンドライトの電気がつけられ部屋が明るくなった。
とは言っても部屋全体を明るくするための物ではないようで、部屋のすみがほんのりと明るくなるだけだった。

「ヒュ……んぅ……」

もう一度名前を呼ぼうと開いた口をヒュンケルの唇で塞がれる。
侵入してきた舌は少し乱暴におれの口の中で暴れて、ヒュンケルの不機嫌を身を持って知るけれどどうしていいのかわからない。
もともとヒュンケルにこんな風に荒々しく扱われた事もないのだ。
いつだってヒュンケルは優しく甘くおれを追い詰めて蕩けさせるから。

「……はぁ……うわッ!」

唇が離れて横抱きにされていた身体を持ち上げられヒュンケルに後ろから抱きかかえられるように体勢にされた。と思った途端。

「力を抜いていろ」

「ぁ……ッ!ッくぅ……、や……ッ!」

足を左右に広げられて、いきなり侵入された。
散々慣らされた奥は傷つく事は無かったけれど、あまりのことに心が拒絶を示す。

「やだ!やめ、ろ……ヒュンケル……ッ!」

「嫌がっているようには見えないが……?」

ヒュンケルの言うとおり身体は嫌がるどころか、受け入れた場所は待ちわびたソレに甘えるように絡みつき奥へと誘うように蠢く。身
体が受ける快感に心が付いていかない。
ヒュンケルの声も酷く冷たく響いて、頭も冷えたまま。
身体だけが熱くなっていく。

「い、やだッ!こんな、ん、や……だッ!やッ!?」

膝裏に手をかけられてぐい、と左右に開かれる。
あまりの恥ずかしい体勢になんとか足を閉じようとするが、ヒュンケルの力には叶わない。
なにより身体は確かに快感を受け止めてそれを追いかけてしまっているのだ。
力なんて入るわけが無い。
嫌だ、と頭を振って拒絶を示せば、後ろから顎を取られ固定された。その視線の前にあったのは。

「え……、あ……」

「ホラ、『嫌』じゃない」

ソファの前、大きな鏡。ドレッサーとかいうヤツだ。
鏡を縁取る飾りは美術の授業で見たような形だし、それと同じような背もたれのある椅子が対においてある。
大きな鏡は流石豪華なホテルだけあって綺麗に磨かれていて。
今のおれの姿を曇り一つ無く映し出していた。

「あ……ッ、や、ヤダ、嫌だッ!」

「だから『嫌』がってない」

「ひ……ッ、んッ!」

ヒュンケルが動き出して、自身を銜え込んでいる場所を撫でられる。
その指は酷く優しいのに声は冷たくて、でも身体だけはどんどん熱くなっていく。
撫でられた場所はもっとと言うように蠢きだすのに、今のおれを支配するのは快楽じゃなくて、恐怖。
何が怖いのかは分からないけれど、とにかく怖かった。
何か、知らない何かに犯されているみたいで、知らず涙が溢れて頬を伝う。

「やだ、……ッいや、だ……ッ」

顎を固定していた手が離れ、おれは狂ったように頭を振った。
怖くて、嫌で、逃げたくて、でもどうしていいかわからなくて。
身体だけが、熱い。

「や……、あ……?ヒュン……?」

ヒュンケルが動きを止めた。
そして後ろからおれの肩に額をつけ、抱き締めてきた。
もう先ほどまで纏っていた冷たい空気は無くて、恐怖で一杯だった頭に少しだけ冷静さが戻ってくる。

「ヒュンケル……?」

「そんなに泣くのはズルイだろう……?」

その言葉の意味を理解しようとした瞬間、ヒュンケルはおれを抱き上げると自身を引き抜いて向かい合うように膝の上に座らされた。
顔を見ればバツの悪そうな表情をしていて、おれの胸がぎゅうと痛くなる。

「ご、ごめ……、ごめん……、ホントにごめ……ッ」

「もう泣くな、脅かして悪かった。ホラ、鼻水が出るぞ」

「だ、って、おれ……ッ、怖くて……、でも、おれが……ッ、ごめん……ッ」

しゃくり上げて支離滅裂な言葉に一つ一つ頷いて苦笑で返してくれるヒュンケルに涙が止まらない。
いつもの優しいヒュンケルに戻ってくれたのが嬉しいのと、そこまで怒らせてしまった事と。

「ごめんッ、ホントに……ごめん……」

「もういい。オレも大人気なくて悪かった」

ヒュンケルが唇で涙を受け取ってくれた。どうしようもなくなって、ヒュンケルにしがみ付いた。
ヒュンケルはそんなおれを抱きしめて髪を優しく撫でて、それから口付けてきた。
あの乱暴な口付けじゃなくて、いつもの優しくて甘い、おれを駄目にさせる、あの唇。

「ん……はぁ……ヒュンケル……」

「……変な嫉妬をして悪かった。ただお前も悪いぞ。あんな真っ最中に……」

「う……ごめん……、でも、だってよ!」

「他の事を考えられる余裕を持たせたオレが悪かったんだろうな」

ヒュンケルは少し拗ねたような顔をしたかと思うと、おれの身体を抱き上げてゆっくりと侵入してきた。
少しずつ、ゆっくりと。
おれを犯すのが誰なのかをわからせるように。

「あ……、あ……ッ」

「真っ最中に、他の女の事を考えて……」

「ちが……そんな、ん、じゃな……あ、ん」

「挙句の果てに帰ろうなんて言われたら、誰だって妬くだろう?」

「あ、ん……ッ、ごめ……あぁッ!」

ヒュンケル自身がおれの中に全部納まった瞬間、突き上げられた。
自分の体重とその動きに奥のほうまでヒュンケルを感じて一気に快感が背筋を駆け上る。
バスルームでの残滓とおれから零れた体液とヒュンケルから滲み出るものでグチャグチャといやらしい音がまた更に快感を煽っていく。

「いつも……寂しい思いばかりさせてるからな……」

「え……?あ、ん……ッ!」

ヒュンケルが少し寂しげな表情になる。
何故?と思うけれど、突き上げられる快感にそれを言葉にすることが出来ない。
視線で伝えたくても顔を上げていられずに、ヒュンケルの広い胸に縋りつくことしか出来なくてそれも叶わない。

「いつお前に三行半突きつけられても仕方が無いと思っている」

「何言って……あ、やだソコ……ッ!」

ぐい、と腰を使われて前立腺を刺激される。
自分の声とは思えないような甘ったるい声が鼻を通って零れるのが嫌で、縋りつく腕に力を込める。
そうすれば声はヒュンケルの胸板にぶつかるから、ヒュンケルの耳には届かない。
そう思った瞬間、顎を取られ上を向かされた。

「あぁ……ッ、んッ……ぅ……」

突き上げられながら唇を塞がれる。舌が入り込んで歯列を割っておれの舌を吸い上げては口腔内を犯していく。息が苦しいのに入り込んでくる舌が甘くて、与えられるものに自ら絡みつくように迎え入れた。おれの腕はいつのまにかヒュンケルの首へと回り、唇を離す事を許さないようにしがみ付いていた。

「んッ!ん、ん……ッ!んーッ!!!」

突き上げられながら深い口付けをされて、更に自身をヒュンケルの大きな手で包み込むように刺激される。
親指で先端を割るように刺激されると腰が揺れて、ヒュンケル自身からもまた違った快感を与えられて、もう何も考えられなかった。
与えられる快感に従順になるしかなくて。

「ん、は……ぁッ、……ヒュン、お、おれ……も、う……ッ」

「……ポップ……、いい、ぞ……」

イっても、と耳朶を甘く噛まれ、突き上げと自身への刺激を同時に与えられたおれは。

「ああ……ッ!」

「……くッ」

白濁をヒュンケルの手に放ちながら達してしまい、一瞬遅れてヒュンケルもおれの中にその熱い思いを注ぎ込んだ。
叩きつけられるそれの熱さに身震いをしてしまい、ヒュンケルにそれを揶揄するように笑われた。

「……わら、う、な……ッ!」

「可愛いと思ったんだよ」

中に出されて感じたんだろ?と囁かれ体温が上がる。
達したばっかりなのに収まらない熱。
ヒュンケルはそっとおれを抱き上げると、ゆっくりと自身を抜いていった。
敏感になっているおれの身体が驚かないように。
そして触れるだけの口付けを何度も繰り返した。

「ヒュンケル……、ん……」

「……あんまりそんな顔をするな」

触れるだけの口付けは甘いけれど、どこか物足りなくてむず痒くて収まらない熱を燻らせる。
ちゅ、と可愛らしい音を立てて唇を吸われる度に身体が震えて、どうにかして欲しくてヒュンケルを見上げるとその瞳にもまた同じような熱が見えた。
きっとさっきの事があるから、ヒュンケルからは続きは仕掛けてこないだろう。
詫びじゃないけど続きはおれから強請る。
だって、まだ足りない。

「だって……まだ、足んねえもん……」

「欲張りだなポップは……」

今度降ってきた唇は簡単に離れずにおれの下唇を甘く噛んできた。
それだけで背筋にゾクリと快感が走る。
唇が離れた瞬間におれの口から零れたのは、強請る台詞。

「な……続き、ベットで……しよーぜ……」

「いいのか……?バレるんだろう……?」

ヒュンケルの言葉におれは少し我に返って悩んでしまった。
するとヒュンケルはひょいとおれの身体を持ち上げてベットへと連れて行く。
ゆっくりと降ろされて押し倒されて口付けられて。

「何にも、考えられなくしてやるよ」

「……ずっと前から、そうだよバーカ」

言葉じゃなくて、全部で伝えたかった。
どれだけヒュンケルで一杯なのか。
変な心配しなくていいって伝えたかった。
だってお前がおれをこんなにしたんだから。

「責任取れよな」

「……良く分からんが結婚でもするか?」

「何言ってんだ、馬鹿!」





目を覚まして身を起こすと眠っているヒュンケルの向こう、もうひとつのベットはめちゃくちゃで「直してもバレる」どころか「どこをどうしてもバレる」「直しようが無い」ほどで。
ヒュンケルのチェックアウトも待たずに、車に乗り込んで小さくなったりしていたのは、とりあえず思い出から消去しておこうと決めた。











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お疲れ様でした。
なーんか萌えタイミングを外して後編がいつにもましてグダグダになっちまいましたよ。
自分的にはひたすらポップをアンアン言わせて楽しかったですが(笑)

ポップが淫乱ちゃんすぎな気もしますが、若い男子なので大目に見てあげてください(苦笑)
ヒュンケルは…もうちょっと余裕持ったほうがいいよね、大分年上の設定なのにさ。
まあ設定では28くらいだから、じゅーぶん若造です。


このホテルエチ話は05年冬コミで相方と前泊したホテルのあまりのエロさに生まれた話だったりします。
完成までにどれだけ経ってんだ(笑)
しかし本当にエロかった・・・。特にバスルームが。




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