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 マルクク愛の劇場(?)
  scene 21 「バレンタインの戦い−2008−編 その2」
  scene 22 「過去に想いを馳せてみる編」
  scene 23 「変わらぬ君の想いに赤いバラの花束を編」
  scene 24 「」
  scene 25 「」

 

 

 ***「バレンタインの戦い−2008−編 その2」



「ククール、そこに座りなさい」

 火曜日の夜、ゼシカとリュウが寝静まった後にマルチェロが神妙な顔でそう言い放った。
 なんつーか、いつもよりも眉間の皺が一本多いような気がする。「これは何かの説教だな」と察したオレは、ソファーには座らずフローリングに正座してみた。
 この辺はぬかりねえぜ! だてにマルチェロと30年近く付き合ってねえからな。
「いい子だ」
 口の端を少しだけ上げて、マルチェロがニヒルに微笑む。腕組みをしたマルチェロに上から見下ろされ、ちょっと背筋がゾクゾクしてきた。自分のエムっぷりに涙が出てくるが、今はそれどころじゃない。オレの頭は、現在お説教の原因を考えるのにフル回転。いっぱいいっぱいだ。
 ドエスなマルチェロは、テンパってるオレの頭から足の先までをなめるように見つめている。本当、どうにかなんねーかなこの性格。

「さて、ククール。今月の14日は何の日だったかな?」
 パンッと軽く手を叩きながらマルチェロが言う。口調は柔らかくなっているが、表情は強敵と戦う前のべジータのように不敵に歪んでいる。いたぶる気満々なその態度が恐ろしくて、オレは頭に浮かんだ「バレンタイン?」という台詞を素直に言えずにいた。

「14日は……確か、兵士の自由結婚禁止政策に反対した司祭が……」
 苦し紛れに話を逸らしてみる。
「ほう、なかなか博識だな。しかし、普通の人間ならバレンタインと答えると思うが?」
 ――うっ! 確かに……。これはあまりにも不自然すぎる。
「そこに触れたくない理由でもあるのかね、ククール」
「そ、そんなこと!」
 ムキになって言い返してしまったが、それが後の祭り。マルチェロはオレの姿を見て何かを確信してしまったらしい。今にもグランドクロスを発動しそうなオーラを全身から発して睨みつけている。
「ククール、私に隠していることがあるだろう?」
 誤解だ! オレに後ろ暗いことなどありはしない。あるとすれば、正々堂々バレンタインデーをスルーする気満々だったということくらいだ。
 こんなことになるなら最初からバレンタインって素直に言っておけば良かった!と、オレは生涯何度目になるか分からない後悔をした。

「さあ、ククール。正直に言いなさい。私の娘を誑かす愚か者の正体をな!」


 ……ナンノコトデスカ?


 固まっているオレになどお構いなしで、マルチェロが身振り手振り熱く語り始める。こうなると誰にも止められないので、オレはおとなしく聞いていることにした。いい加減足が痺れてきたが、ここは我慢の子だ。
 オディロ院長、ククールはとても強い子になりました。天国で褒めてください。

「リュウが気付かねばとんでもない間違いが起こるところだった。ゼシカが親に内緒でバレンタインの贈り物を買っているとは! おそらくこづかいとして与えたお年玉の一部が残っていたのだろう。考えてみれば、リュウはスライムぬいぐるみ1分の1サイズを購入していたが、ゼシカは変なアザラシのレターセットのみだった。これがバレンタインへの布石だったとは、この私でも気付かなかった。不覚だ……悔やんでも悔やみきれん! 購入したのは先月末デパートに買い物に行った時だろう。私はリュウとモンスターバトルロードに励んでいたのでゼシカの行動まで目に入らなかった」

 お取り込み中悪いけど、改行くらいして喋ってくれねえかな。読み辛くて仕方ねえや。

「ククール! どうでもいいことを考えてる場合ではない!」

 すげえ。いつも思うけど、こいつオレの頭の中読めんのか?
 ……なんて感心している場合じゃない。矛先が間違いなくこっちに向き始めている。
 畜生、こんなときのためにマジックバリアを習得しておけば良かった!

「お前はまがりなりにもゼシカの母親だろう。見た目がどうであろうとも、だ。
 なぜ、ゼシカが子ども部屋のクローゼットの中の壁を剥がして黒いごみ袋(エロ本在中の張り紙つき)にバレンタインの贈り物らしきものを隠していることに気付かなかった!?」

 それは普通気付かないと思う。
 なんでリュウが見つけられたのか……壁を剥がした理由とかその他諸々の点についてマルチェロがスルーするのかオレには理解できない。
 今度は改行はしてくれたけど。って、そんなことはどうでもいいか。

「それとも、貴様もゼシカとグルなのか? そうやって女たちは隠し事をするから嫌なのだ。
 気付いた時には「お父さん、私いま妊娠してるの。彼と結婚することにしたから」などとほざくのだ。
 大体父親は事後承諾で、母親は最初から全部話を聞いてて知ってたりする。理不尽だとは思わんか!」

 話が逸れてきている。このぶっ飛びっぷり、今日のマルチェロは一味違うぜ! さすがオレのマルチェロだ。

「私は認めんからな。ゼシカに男など10年……いや、35年と4ヶ月早い! 私の目の黒いうちはゼシカに悪い虫など絶対につかせたりせんからな。覚えておけ。」
 35年も経ったらゼシカは40を超えるわけだが……突っ込んだほうがいいのだろうか。
「35年は突っ込まんか!」
 あ、やっぱり突っ込んだほうが良かったのね。オレとマルチェロのコンビもまだまだだな。
「ごめん、芸人のパノンを見て勉強する」
「そう、パノンを……と、ばか者! パノンはピン芸人だろう!」
 おお、見事なノリ突っ込み。さすがオレのマルチェロ(以下省略)

「さて、ククール。おふざけはここまでだ。今までの様子から察するに、どうやらお前も今回のことは何も知らなかったらしいので……今から任務を与える」
 何時の間に持ち出したのか、サーベルを弄びながらマルチェロが言う。
「なんでしょうか」
 オレも何時の間にか正座から片膝をついて傅く状態になっているが、その辺はノリと勢いだ。
「ゼシカが想いを寄せる相手を探れ」
「探るだけで宜しいので?」
 目を細めて、からかうように問いかけてみる。

「話は最後まで聞きなさい。お前はその人物を探り……相手がどんな男であろうと、潰せ」
「……分かりました」

 期待しているよ、ククール。
 そう言いながら、マルチェロがオレの顎を左手で撫で上げて笑みを漏らす。


 冗談なのか本気なのか分からない。コントとしても三流だろうその夜は、こうして更けていったのだ。





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ちょっと不真面目に走りすぎました……
続きます。


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 ***「過去に想いを馳せてみる編」



 気が付いたらもう五月。本当、時の流れってやつは早いもんだよね。
 リュウは年中さんに進級したし、ゼシカはなんと4月から小学生になったんだぜ。ランドセルを背負って学校に行く姿を見ると感無量。よくぞここまで成長してくれたもんだ。

 洗濯物を干していると、僅かに汗ばんできた。
 最近の天気は本当におかしい。昨日は雨が降ってえらく寒かったっていうのに、今日はすっかり初夏の陽気だ。長袖のシャツを半袖に取り替えようか……そんなことを考えながらオレは家の中に戻っていく。そして、その瞬間ぞくりと背中に寒気が走った。

 ……なんか、やばいかも。

 こめかみに手をおきながら、溜め息をつく。
 そういえば、今日は朝からだるいような気がしていた。夏物の服を買いに行こうかと思っていたけど、断念して家で休んでいたほうが良さそうだ。
 そこで、オレはふと花の水やりを忘れていたことを思い出す。今日は陽射しも強いし、これだけは欠かせないともう一度外に出た。

 うちにはまあまあな広さの庭があって、そこには沢山のプランターやら植木鉢やら小さな花壇がある。らしくないかもしれないけど、実はオレ花が大好きなんだよね。ガキの頃、院でオディロ院長とよく花壇の世話をしていたからかもしれないな。
 『ククールは花が好きか? わたしもなのだよ』
 優しそうな瞳を細めて、微笑む院長の姿を思い出した。
 マルチェロもオレが花好きだってのを知ってたんだろう。リュウが産まれてすぐ、内緒で買っていたらしいこの家に越してきたときのマルチェロの第一声は「花を植えろ」だった。ぶっきらぼうに、それも大層偉そうな物言いだったけどオレは嬉しかったんだよね。(ちなみにオレはマルチェロから花を贈られたことはないが、花の種を贈られたことはある。なんともマルチェロらしくて涙が出てくるね)
 花に水をやりながら、オレは苦笑する。
 この前まいたヒマワリの芽が出ているのが嬉しくて、ついつい外に長居をしてしまったオレの体調は、当然というか自業自得というか悪化してしまっていた。




 時計の針は午後12時を回ったところだった。
 私は上着を軽くひっかけて鞄を手に持つ。
「先生、どちらへ?」
 外出しようとしている私に気付いたのか、昼食をとろうとしていた部下が声をかけてきた。
「一度家に戻る。何かあったら携帯に連絡してくれ」
「分かりました。いってらっしゃいませ」
 見送られて、事務所を後にした。
 
 事務所創立からいるこのリカルドはとても優秀だ。余計なことは口に出さないし、詮索もしない。
「言い忘れましたが……先生、運転にはお気をつけて」
 追いかけてきかリカルドが、小さな袋を私に手渡しながら言葉をかけてすぐに去っていく。
 中身はスポーツ飲料とヨーグルトだ。事務所の冷蔵庫から引っ張り出してきたらしい。

 ………。
 リカルドは優秀だ。
 ただ、勘がよすぎるのは(私にとって)幸なのか不幸なのか分からない。

 赤信号を忌々しげに見つめながら私はひとつ溜め息をつく。
 その姿は周囲を怯えさせるほどに酷いものであったようだが、私自身には見えていないのでどうでもいい。
 いまはただ、あの馬鹿のことが気懸かりだ。
 朝の様子からして、あれはきっと熱がある。目測でしかないが、おそらく8度8分……いや、9分か? 現在では9度越えを果たしているに違いない。
 体調管理がなっていない証拠だ。丈夫であることだけがとりえである癖に。……待てよ、とりえは他にもあるか? 顔とか運動神経とか、それに……。いや、そんなこともどうでもいい。



 『お子様は何とか助かりました。しかし奥様は非常に油断のならない状況です』

 ―――あの、ばかめ。
 
 『覚悟は……しておいてください』
 『……あれが、死ぬと?』
 『最善は尽くします』

 ―――もう二度と、あんな思いをするのはごめんだ。


 ドアの鍵を開けて、家の中へと早足で向かう。
 リビングに倒れているククールが、”あの日”のククールと重なった。


 大企業での立場も、約束された未来も全てを捨て一緒になった。
 憎まれ口はたたくものの、文句ひとつ言わないで傍にいるククールに何かしてやりたいと必死に働いた。ククールと、ゼシカ……そして産まれてくるはずのもうひとりの子どものためにも。
 朝早く家を出て、帰りは深夜過ぎ。名のある大きな会計事務所で、いけすかない上司の言葉にも無理難題にも全て耐えた。ひとつも苦にはならなかった。
 しかし、私はそのために犠牲したものの大きさに気付かなかったのだ。

 『ギリギリまで我慢していらっしゃったようです』
 『おそらく、昨日あたりから兆候はあったと思うのですが……』

 ―――私は、あれの笑顔に騙されてしまった。



 ククールを抱き上げて寝室に寝かせてから、私は携帯を手にする。手短に、用件だけを一言。
「すまんが午後は留守にする。あとは頼む」
 電話の向こうからリカルドの気遣わしげな声が聞こえた。
『奥様は大丈夫ですか? お大事になさってください』
 私は何も言ってないはずだが……? 本当にリカルドの勘のよさは何とかならんのか。

 ベッドに横になったククールを見て、深く息をつく。
 その私の顔はとても他人に見せられるような表情ではなかったようだが、私自身には見えてないので(以下略)

「もう、騙されてはやらんからな」

 目を覚ましたククールが不思議そうな顔をして何かを言いかけたが、とりあえずその口は塞いでおいた。




  家を作ってやりたかった。
  ククールの好きな花が沢山育てられるような家を。






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ちょっと過去話にも触れていきますよっと。


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 ***「変わらぬ君の想いに赤いバラの花束を編」



 早いものでもう7月だ。
 雨が多くて腹立たしいが、仕方あるまい。梅雨時期に雨が降らないことには話しにならんしな。

 ゼシカも小学生になって4ヶ月目。随分と慣れて友達も沢山できたようだ。
 何……? 一年前も一年生だったと? 黙らんか。そういった細かいことを気にするようでは私の妻は務まらんぞ? うちのククールを少しは見習いたまえ。

 さて、そのククールなのだが、最近どうも挙動不審なのだ。
 ゼシカとふたりでコソコソどこかに出かけたり、部屋にこもって何かしていたりするのだ。
 気にしていないふりをしながら色々探っているのだが、リュウも何をしているのか知らないらしい。

 状況は芳しくないかと嘆息するも、私があるものを見つけたことで状況は一変する。
 リュウのモンスターバトルロードのファイルに見覚えのないカードがあったのだ。それもドラゴンライダー(レアカード)3日前にゲームに連れて行ったときにはなかったものだ。
 察するにククールあたりがリュウを懐柔するために与えたのだろう。

 そうと分かれば後は簡単だ。
 リュウを脅しても言うことを聞くわけがないので(あれは或る面誰よりもたちが悪い)予てから欲しがっていた鉄球魔人のカードをちらつかせて取引することにした。
 見事リュウはこちらがわに寝返り、知っていることを全て話すと言う。

「それがさ、僕も詳しいことは分からないんだよね。なにやら”イリエ”とかいう男のことで盛り上がってたのは耳に入ったりしたんだけど」

 イリエ? 人の名前のようだが……。
 やはり男か……?
 またおかしな男に口説かれているのか!? あの愚か者め(「お菓子のように簡単に」編参照)
 いや、ゼシカの方とも考えられる。バレンタイン事件という前例もあることだし……(ちなみにバレンタイン編の完結はまだ書いていない)
 何にせよ、そのイリエというのが何者なのか分からない私には分が悪い。

「ねえ、マルチェロ」
 ひとりで思案に暮れていると、まだそこにいたらしいリュウがのんびりとした口調で私に問いかけてくる。
「なんだ?」
「男の人が女の人と浮気してる時に証拠となるものを隠す場所ってどこだか分かる?」
「生憎私は浮気などしたことがないのでね。そのようなことは分かりかねますな」
 嫌味がましく答えてやると、リュウは鼻で笑いやがった。
「そう? じゃあ覚えておくといいよ。男はね、よく自分の車の中に隠すんだよ? トランクのシートを剥がしてスペアタイヤの隙間とか、工具箱の奥とか……普通だったら見ることがないようなところにね」

「……なるほど」
 などと素直に納得している場合ではない。

 リュウよ、お前はなぜそんな男の事情を知っているんだ!

 私はそう叫びたかったが、その時リュウははぐれメタルもびっくりの速さで逃げ出していた。
 逃げ足の速さはククールにそっくりと言うわけか……。成長したものだな。ひとしきり感動してから、私は気を取り直して先ほどのリュウの言葉を思い出す。
「ふむ……。中々興味深い発言だ」
 あの息子は性格が悪いが基本的に私の味方だ。何の意味もなく語っていったとは考えられない。

 決断力がある私は開き直りも早い。当然のように私はククールの車のトランクを漁り、リュウが言ったとおりの場所から納戸の鍵を見つけ出した。そして、納戸の奥から出てきたもの。それを見たときに、思わず絶句してしまったのだが。


 結果を語る前に、ひとつ昔話をしなければならないだろう。
 私がゲームの類を嫌っていることは既に知っているかもしれないが、実は漫画というものも好きではない。
 小学校の高学年くらいだったろうか……ククールが漫画を見ているのを発見して叱り付けた記憶がある。
 当然ながら、この家にも漫画は一冊も存在しない。ククールも院に居たときは持っていたかもしれないが、あれは私の「私にはもう何もない。だが、お前ひとつだけ持ってまた始めるというのも悪くない」という言葉を真に受けたのか、身一つで嫁いできたからおそらく処分したのだろう。

 今思えば本当に昔のククールは可愛かった! 基本的には私のいうことを聞いていたからだ。
 それが今ではどうだ? 結局ゲームを容認させ、その上……。
 くそっ! 私がククールに甘くなったということか? 認めん、絶対にそんなことは認めんぞ!

 納戸に隠されていたもの。ここまで言えば大体分かるかもしれないが……。
 それは十数冊の漫画と、同じ題名のDVD。
 ククールとゼシカはそれらを買い集めるためにコソコソと外出し、家でこっそり楽しんでいたのだろう。
 とすると、イリエというのは漫画の登場人物か? まったくそのようなもので盛り上がるとは低俗にもほどがある。

 私の知らないところで漫画に興じていたククールにはきついお仕置きをしてやらなければなるまい。
 大体ゼシカを巻き込むとは何事だ! ゼシカはまだ1年生、少女漫画など10年早いわ!

 私が押収した品を抱えて廊下を歩いていると、神出鬼没のリュウが現れて「見つけたんだー」などとニコニコ笑っている。(ちなみにククールとゼシカは電車で隣町まで買い物に出かけていて不在だ)
 その子どもらしい笑顔がふっと消えてあくどい笑みに変わる瞬間は、我が息子ながら誰に似たのかと頭痛がしてきた。
「忘れてないよね?」
「鉄球魔人だろう。既にオークションで入札済みだ」
「さすがマルチェロ。仕事が速いね」
 どこかの悪代官と悪徳商人の会話のようだが、こんなことは今始まったことではない。
 今の私はどうやってククールを苛め抜くか……あれこれ考えるのに忙しいのだ。リュウに構っている暇などない。
 もの言いたげな視線を無視して大股で彼の隣をすり抜ける。しかし、私の思惑などお構い無しで背中に飛んでくるリュウの言葉。

「ねえ、マルチェロ。せっかくだからさ、それ、読んでみたほうがいいよ?」
 誰が少女漫画など。くだらない。
「確かにくだらないかもしれないけどさ」
 漫画を読むのも嫌だが、私は人に心を勝手に読まれるのも不快だ!


「ククールが、マルチェロの言葉に反してまで読みたかったものだと考えると興味が湧かない?」


 その夜、ククールが私に叱られることはなかった。
 漫画とDVDも、元の場所に戻しておいた。
 ククールとゼシカが浮かれて部屋に篭るのにも、黙って口を出すことはなく。

「なあなあ、ゼシカ。やっぱり入江君ってマルチェロにそっくりだと思わねえ?」
「そうかしら。入江君の方が男前じゃない?」

 ちょっとだけ漏れてきた会話にも色々突っ込みどころはあったが、聞こえないふりをした。



『ねえ、ククール。漫画なんて読んでたらマルチェロに怒られない?』

『リュウ、頼むから黙っててくれよ! お前の欲しがってたドラゴンライダーのカード買ってやるからさ。
 オレさー、この漫画、小学生の頃に最初の方だけ読んでたんだけどマルチェロに怒られてから読んでなかったんだよね。だからこの前本屋で偶然見つけたときにどーしても気になっちゃってさ。
 なんか、このヒロインが他人のように思えなくて……。
 良かったよなー! 結局オレも琴子ちゃんも幸せになったじゃん!』



 こんな会話があったことを、リュウから聞かされたら……見ないふりをしてやるしかないではないか。

「ククールの誕生日には2人っきりでディナーしてケーキ食べて、赤いバラの花束でも贈ってあげたら?」
 苦虫を噛み潰したような顔で漫画を読む私に向かってリュウが言った。

 これでも私は毎年ククールにプレゼントを贈っている。
 入江とかいうヤツと比べられるのは心外だったが。
 たまには花でも贈ってやるのも悪くはないかと考え直していた。

 真っ赤なバラの花束を、ククールの歳の数だけくれてやる。





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その漫画とは「イタズラなKISS」だったり。元ネタ知らない人にはごめんなさい。
冷たくてイジワルな入江君を琴子ちゃんが6年も一途に追いかけて片想いして幸せになるというお話。ツンデレな入江君に何度も泣かされて不安になって、それでも入江君大好き!なわけですわ。
原作は作者急逝で未完だったのですが、DVDの方で完結したんですね。最後の方の入江君はすげー優しくなってて「あんた誰!?」って驚きます。
いやー私も昔少しだけ読んでたんですが、まさか結婚して幸せになってるとは思わなかったよ!
あの2人がなんとなくマルとククっぽくね? とか思っちゃったりして。
特にこのパラレルのマルククに(笑)
一途な想いが通じてくれると嬉しいっすよね!


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2008/02/12〜2008//