数十分後、風呂場で絶句している望月の姿があった。言われるままにシャワーを借りたのは良いのだが、小林が貸してくれた着替えは、彼のシャツのみ。とにかく、裾を常に引っ張っていないと同性とは言え、余り見せたくない箇所が見えてしまう。しかし、折角貸してくれた服を嫌だと言って断る訳には行かず。
「あ、あの、小林さん……」
体が温まったせいか、恥ずかしいせいか、何処となく頬が赤く染まった望月がソファーに座って待つ小林に恐る恐る声をかける。とりあえず、タオルを下半身に巻いた状態でシャツの裾を引いているのだが、やはり何となく恥ずかしい。
「裾が結構短かったようだな」
立ち上がって望月に近付き、頭の天辺から足の先までじっくりと眺めた後、望月にとって理解し難い台詞を吐いた。
「予定通りだ」
「えっ!? ……あっ!」
どう言う事ですか? などと聞く間など無かった。小林の指が素早く自分の体を数箇所突いたかと思うと、自分は床にへたり込んでいたから。
「ど、どうして……体が……」
「ちょっとした手品だよ。ただ単に、身体を麻痺させる効果のあるツボを押させて貰っただけだが」
クスクスと笑いながら、姫を抱き上げる王子のように望月の身体を軽々と抱え上げてベッドまで運ぶ。ベッドに横たえると同時に、腰に巻いていたタオルを剥がされると望月は悲鳴に似た声を上げた。
「やっ、な、何をするんですか!!」
満足に身体も動かせない為にシャツの裾を引っ張れず、例の箇所がチラチラと見える状態に顔を赤く染め、目を潤ませる。だが、小林の表情は相変わらず笑ったままだ。その視線は、一番見られたくない箇所に注がれている。
「何をって……昼の続きに決まっているじゃないか」
サラリと答えながら上着を脱ぎ捨て、動けない望月の上に覆い被さるとヒッと言う高めの悲鳴が上がった。もし、身体が動かせれば身を海老のように縮めていたのかも知れない。
「昼の続きって、そんな……あっ!」
頬、瞼、唇の順に小林の唇が接触してくる。昼と同じ、甘くて暖かく感じてしまうキス。早くも頬を上気させて、薄く目を閉じてしまう望月に小林の唇の端が僅かに吊り上がった。思った以上に単純だな。まぁ、その方がやり易いのかも知れないが。言いたい台詞をぐっと飲み込み、少しづつ望月の抵抗の意思をキスで消していきながら、さりげなく肩に手を回して抱き寄せても、相手は抵抗する様子は見せなかった。それどころか、うっとりとした表情を浮かべ、熱い吐息を漏らし始めている。その姿は小林の接触を歓迎しているかのようだったが、その歓迎は次の瞬間に中止になった。
「こ、小林さんっ! そ、そんなトコ、やだっ!!」
叫びながら辛うじて瞳を動かす望月の視線は自分の下半身に触れて来る小林の手に向けられていた。それでも身体は動かせず、ベッドから逃げる事も小林の手を振り払う事も出来ない。そんな望月の視線と裏返った声を心地良さそうに感じながら、躊躇する事なくシャツから引っ張り出したそれを擦り上げる。手の中の屹立が熱く、堅くなっていくのと同時に望月の抵抗の声は嬌声混じりの微妙な吐息と化した。
「はぁっ、んっ……はっ……小林、さん……」
「何も言うな。気持ちいいだろ? 他人にして貰うと」
「は、はい……」
余りにも素直な返事に小林はクッと詰まったような笑いを漏らした。全く。少しは逆らってみたらどうだ? 感じていない、と言う一言でも言ってみたらどうだ? まぁ、お前らしい反応ではあるが、もう少し“楽しもう”と言う意思はないのか?
素直な望月の反応に少し物足りなさを感じつつも、手は止めずに本体を弄び続けていると動けない筈の相手の身体が小さく震え始めた。
「小林さぁんっ! お、俺……俺……!」
はぁはぁと派手に喘ぎ、いつの間にか流していた涙で赤い頬を濡らし、口から僅かな唾液を漏らしながら何かを訴えようとする。彼の訴えを小林は十分理解していた。赤く染まった顔が、裏返った声が、己の手の中でヒクヒク震え出した本体が全てを語っている。
「分かってる。出してしまえ」
耳元で囁き、耳朶に軽く歯を立てた後、御目当ての箇所を咥えて軽く啜り上げると、悲鳴に似た声が耳に飛び込み、同じタイミングで口中にも独特の苦味があるそれが飛び込んで来た。
「ふあっ! あっ、小林、さ……」
涙混じりの荒い吐息が聞こえる中、何事もなかったかのように口の中でべた付くそれを飲み込もうとしたが、ふと恍惚の色がやや浮かんでいる望月の半泣き顔を目にした瞬間、計画は変更された。
「えっ……!」
素早く半泣き顔の少年の身体を抱き上げ、僅かに開いた口に自分の口を接触させる。そして、そのまま人工呼吸をするかのように口移しをした。送り込んだのは空気ではなく、飛び込んで来た精だったのだが。
「!! んっ、ぅっ……んーっ!!」
大粒の涙が浮かんだ瞳が一瞬見開かれ、即座に拒絶するかのように硬く閉じられる。口に含む事自体信じられない己の体液は小林の口から容赦なく流れ込み、感じた事のない感触と苦味が口の中で暴れだす。
「ぐっ、ううぅっ……!!」
そんな状況の中でも相変わらず身体は動かず、顔を横に向ける事も小林を突き飛ばす事も不可能。それでも、口の中で暴れるそれを飲み込む事も出来なくて。
「がっ……かはっ…! ゲホゲホゲホッ!!」
小林の口が離れた一瞬の隙を突いて激しく咽返り、口の中に溜まっていた己の精を吐き戻す。白濁液は目の前にいる男の顔にも散った。
「……」
頬に付いた白を人差し指で取り、口に含みながら咳き込む望月を観察する。その瞳は冷たかったが、奥では欲望の炎が燃えていた。
「言っておくが、これで終わりではないからな」
至近距離にいる望月にも聞こえない位の声でポツリと呟き、抱き上げていた手を離すと支えのなくなった身体は再度ベッドに沈んだ。
「はぁ、はぁ……どうして……」
「さぁ、どうしてだろうな」
漸く咳も落ち着いた相手の質問をサラリとかわしながら、顔の筋肉以外微動だに出来ない肉体に近付く。不安の色が濃くなって来た顔に冷たい微笑を返しながら小林は茶色がかった髪を掴み上げた。
「痛っ!! こ、小林さ……っ!?」
乱暴な扱いに痛みを感じ、どうにか瞳で小林を見ようと動かした時に目に入ったのは小林の顔ではなく屹立だった。息を呑み、拒絶の声を上げようとして開いた口に躊躇なく捻じ込まれて来るそれに篭った悲鳴を上げる。
「うんっ……っ、うぅっ……!」
八の字になった凛々しい眉毛。苦しそうに細められ、涙を止め処なく流す瞳。さっきの絶頂の余韻が残っているのか、恥ずかしいのかは分からないが熱病のように高潮した頬。そして、さっき達してしまったにも関わらず、再度猛りを取り戻しつつある彼の一物。その全てが小林の胸を高鳴らせ、身体を熱くしていた。昼とは比べ物にならない独占欲。欲望は完全に暴走し、こうして望月を痛め付けている。この後、彼は自分から離れてしまうかも知れない…と言う恐怖も心の何処かで感じていた。だが、止める事が出来なかったのだ。
「舐めてみろ。出来るよな? お前なら」
「んんっ……」
辛うじて動く舌先が先端を刺激し始めるが、矢張り自分が強要されている行為が信じられないのだろう。それは奉仕としては非常に拙く、思わず小林を舌打ちさせた。
「もういい。何もするな」
無感情な声が望月の動きを止め、恐怖で固まった表情を一瞥した後に髪を掴んだ手を激しく前後させる。
「ぐっ……!! うッ、うううーっ!!」
一物で塞がれた口から漏れる悲鳴と口内の温もりが的確な快楽を与えてくる。それに激しい興奮が手伝ったのだろう。大した時間もかからぬ内に望月の喉の奥まで生温かい精が叩き付けられた。
「……っ!!」
再度口内を襲う例の苦味に目を見開くが、自分の髪を掴んでいる男は快感による微かに震えた溜め息を一度だけ吐いたきり微動だにしなかった。さっき口移しで流し込んだ時と同じように苦しげな表情を浮かべているであろう自分をじっくりと観察し、なかなか解放してくれない。
「飲み込めないか?」
口だけ開いて話す彼は精密な人形の様だった。本当に彼は、俺が知っている小林さんなのだろうか?不安と恐怖と苦しみで顔が歪む。その表情の変化に“人形”の瞳が僅かに人間味を取り戻した。彼が何を考えているのか推理する事は不可能だったのだが。
「ほら」
さっきよりは人間らしい声が聞こえたかと思うと、口から一物が引き抜かれ、自分の顎の下に手を広げて来る。その行動と台詞で分かった。この手の上に吐き出していいと言う事なのだろう、と。そう判断した瞬間、口の中に広がり続ける苦味は一気に耐えがたい物となった。
「ぐっ……げほっ!!」
口を開いて大きく咽ると白い粘液が飛び散り、口の端からもダラダラと流れ出た。滴り落ちる精を小林の手が受け止める。白く汚れた己の手を見ながら、小林はフッと微笑んだ。手の平にもう片方の手の指を近付け、手を汚しているそれを指先で掻き回す。そして。
「ひあっ……!! 嫌ぁあっ!!」
幾度目かの甲高い悲鳴が部屋に響くが、その声に特に躊躇する事なく、小林は望月の両足を広げ、その間にある御目当ての箇所に精で濡れた指を押し当てていた。
「ひっくっ……小林、さんっ……そ、そんな、そんなっトコぉ……っ!」
悲鳴が泣きじゃくりに変わって行為を拒絶するが、涙声は彼にとっては甘い媚薬に等しく、達したばかりの本体の猛りを瞬時に取り戻し、求める場所の刺激を促す。本能に促された指は引き締まっている蕾に無遠慮に侵入し、其処の準備を整える為に指を濡らしていた体液を塗り込んだ。
「くっ……あふっ、…あぁっ……」
指が蠢く度に、熱の篭った声が耳に飛び込んで来る。もし身体が動かせていたら、彼は身体を捩じらせ、シーツを強く掴んでいた事だろう。だが、今の彼はそれも出来ない為に目を硬く瞑り、歯を食い縛って耐えている。身体が緊張し、力が入っているのは明らかだった。力が入っていると言う事は……
「少し力を抜け……と言っても無理そうだな。仕方がない」
指先でトントンッと素早く相手の両肩を突くと、ピクンッと両腕が動いた。自由になった望月の両腕は、そのまま上にいる小林を突き飛ばす……事など出来ず、彼の予想通りにシーツを固く掴んで皺を刻み込んだ。
「これで少しは力を抜けるよな? 余り力を入れられると、正直入れ難いんだ」
「はぁっ、はぁっ……い、入れるって、何を……? ま、まさか……っ!」
「そう」
その、まさかだよ。と言う言葉が終わる前に望月の両足を抱え上げ、白く濡らした蕾に先端部を押し当てる。まだ、力を入れているのだろう其処は痛い締まりとなっており、その“拒絶”に小林は小さく舌打ちをした。止めてと言う叫び声が聞こえて来たような気がしたが、敢えて無視して無理矢理先端を捻じり込み、そのまま勢い任せに奥まで貫いた。
「嫌ッ……! あっ……うあああぁぁああぁああっ!!」
耳を劈くような、自分が彼を殺してしまったかのような悲鳴。自分がずっと聞きたかった、求めていた声。それは、自分が今まで聞いてきたどの名曲よりも甘美だった。
「いい声だな」
恍惚の表情で呟きながら、シーツを引き裂かんばかりに握り締めている望月に軽い口付けをして付け加える。
「もっと聞かせてくれ。もっと私を愉しませてくれ」
甘い口付けから一変、乱暴に腰を掴み上げ、自分の下半身も突き出して奥深くまでの侵入を試みる。熱い締め付けに思わず笑みが漏れる小林に対し、望月は感じた事のない痛みと奇妙な熱さに泣き叫んでいた。
「い、嫌だぁっ! 痛い……痛いぃぃ!!」
幾度も襲う衝撃を受け止めている箇所からは熱い血が溢れ出し、突き刺さっている逸物を伝ってベッドシーツにパタパタと落ちて行く。その感触に、出血に気が付いた望月は改めて泣き叫び始めた。
「もうっ、もう嫌だああぁぁっ!! 抜いてよぉっ!!」
子供のように金切り声をあげ、自由な両腕で泣き顔を隠すが、即座に上にいる男の手が伸びて顔から腕を引き剥がす。不安と恐怖に満ちた泣き顔を暫く観賞した後、開きっ放しの口に顔を近付けて幾度目かの口付けをし、そのまま舌を挿し入れて口内を貪った。
「はあっ、はふっ……! んんっ……!!」
口内で暴れる舌の生温かさに震えながらも、おずおずと自分の舌を絡ませると小林の瞳が僅かに丸くなり、瞬きをする間に細くなった。まさか、目覚め始めたか?全く、何処まで単純で扱い易いんだお前は。
「ああっ、あっ! やぁあっ……!!」
口を離せば漏らす嬌声。時折、“痛い”だの“嫌だ”だの“抜いて”だの叫んでいたが、その回数も少しづつ減っていった。シーツを掴んでいた手もいつの間にか小林の背中に移動している。腰も動けるようにすれば良かったか、と小林は少し後悔した。一方的に腰を動かすと言うのは味気がなかったので。
それでも彼の中は熱く引き締まっていて。それでも彼の侵入物は熱く膨張していて。寝室内に響く水音が、荒い吐息が、嬌声が二人を高揚させる。快楽に理性の殆どを飲み込まれている二人は相手の顔以外視界に入ってはいなかった。
「小林っ、さん……俺、もう……!」
先に音を上げたのは望月だった。目を固く瞑り、口端からだらしなく唾液を流して絶頂が近い事を知らせる。その顔を見つめる小林の鼻先からは汗が伝い落ち、望月の頬を流れる涙と重なり合った。
「私もお前と同じ状態のようだな……」
喉の奥から搾り出すような声を出し、そのまま下にある肉体を抱き締める。そして、喘ぐ相手を抱き締めたまま暫く下半身を揺さぶっていたが、全ての熱が本体に集中した時、抱き締める腕の力が異様に強くなった。
「ふゎぁあああっ……! あっ、熱いいいぃぃいっ!!」
痛いと感じるまでに抱き締められた瞬間、流れ込んで来た小林の熱。その感触が望月に絶頂を促し、彼は促されるままに小林の腹部に流し込まれたそれと同じ熱を吐き出した。
「くっ、はぁ……はぁ……」
彼にしては珍しく荒い呼吸をしながら下にいる望月から身体を離す。ゆっくりと引き抜かれた一物には様々な体液が混じっていた。
「はぁっ、はぁっ……こ、小林さん……」
「……」
下で同じように荒い息を繰り返す望月に近付き、トントンッと指先で身体の各所を突いて麻痺を解除する。だが、身体が自由になったにも関わらず、望月は全く動かなかった。動けなかった、と言うべきか。
「すまなかったな」
動かない身体を抱き上げる小林の声は、望月の知っている小林の声だった。さっきの人形とは違う、自分が尊敬する人間のそれ。
「……」
何も言わず、何も言えず、ただひたすら小林を見つめていると、ふっと彼の表情が悲しげになった。
「幻滅したか? 私が憎いか?」
悲しげな顔に戸惑う望月に顔を近付け、涙に濡れた頬に唇を当てる。その唇は耳元に移動し、そっと開かれた。開かれた唇から囁き声が漏れる。
「好き、なんだ。お前が。ずっとお前を見てきた。眼を離したくなくて、私はお前を四天王として自分の配下に置いた。勿論、お前の実力も認めている。だが、お前をずっと見ていたい、と言う気持ちが強かった」
「えっ」
突然の告白に目を丸くし、何かを言おうとした唇に小林の指が押し当てられる。まだ、話は続くんだと言う意味を込めて。
「お前を、お前の笑顔を見ている内に妙な独占欲が湧いて来た。お前を私だけの物にしたい、と言う独占欲がな。だが、お前が離れるのが怖くて耐えて来た。結局、耐えられなくなってしまったがな。だから、お前を抱いた。いや、お前にとっては“犯した”になるか」
指が離れる。悲しげな顔の口の部分が微かに吊り上がり、微笑に変わる。だが、切なげな眼は変わらなかった。
「幻滅したのなら、私が憎いのなら、もう、私から離れてもいい。悪いのは私だ。お前じゃない」
「…………」
気が付けば、悲しげな顔を引き寄せていた。気が付けば、悲しげな微笑の唇に唇を重ねていた。気が付けば、相手の身体を抱き締めていた。気が付けば、自分の正直な気持ちを述べていた。
「離れる訳ないじゃないですか。だって、俺だって、小林さんが……」
そう。自分の小林に対する好意は愛情だったのかも知れない。だから、自分は常に小林の近くに居たのかも知れない。その証拠に、小林が“無理矢理犯した”と思っている行為は彼にとって温かかった。それは彼によって刻み込まれた証。彼が自分を愛している。自分が彼を愛している証。
だから、彼の腕は、身体は温かく感じた。抱き締めている今でも、それは温かい。
そう、彼の全てが温かかった。温かかったのだ――。
<To Be Continued......?>
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<後書き>
すみません、とうとうやってしまいました
…と言う訳で、自分の中の「聖域」に土足で踏み込んでしまいました。
何か「くにおくん」シリーズでエロ小説書くのは何となく気が引けますね。
でも、小林×望月は王道カップリングだと思います、ハイ。
かなり、小林や望月の性格を都合良く弄っています。
私の中では小林は望月に対してはタメ口なんですよ。
で、普段はクールなんだけど一回感情が高ぶると暴走してしまうタイプ。
今回は、望月に対する独占欲が暴走して彼を犯してしまった…と
望月はお子様。健気で小林を尊敬していて、いつも一緒にいたがる人間。
オフィシャルとは微妙に違う(と思う)ので誤解のなき様。
今回の小説、結構難産でした。テンポ良く文章が進まなかった
受けの身体を動けなくすると色々と限られる(何が)のも原因の一つかも知れません。
楽そうかなぁ、と思ったけど……やっぱり受けも身体動かせる方が幅が広がって良いみたいです。
とにかく、小林は人体のツボも理解しているんだぞ、と言う事で。
最後までお付き合いいただき有難うございました!