校舎を後にし、校庭の端を歩きながらポケットを探った早坂は中にそれがある事を確認した後、反対側のポケットから携帯電話を取り出した。

 居残りで受ける羽目になったミニテストの追試で漸く合格点と帰宅許可をセットで貰い、軽く伸びをしながら廊下を歩く望月のポケットから着信音が流れて来る。他の生徒の通行の邪魔にならないように端まで移動して電話を耳に当てると親友の声が聞こえて来た。
「もしもし?駿君…?」
「あ、良ちゃんか。お前、今日どうしたんだよ。学校休んだりして」
敢えて昨日の事は口にせず、何時もと変わらぬ態度で対応するが電話から聞こえる声は何処か元気が無い。昨日の“凌辱事件”を考えれば当然の事かも知れないが。
「ねぇ、駿君は今、何処に居るの?」
「俺?俺、今学校の廊下。追試やっとパスしたから帰るトコ」
「…そっか。僕、今校庭にいるんだ。……今から時間ある?電話なんかじゃなくて…君と真正面から話がしたい…」
早坂の予想外の言葉に望月は一瞬目を丸くしたが、親友と話が出来るという願っても無いチャンスに受話器に思わず齧り付いた。
「俺もだよ。俺もお前と話がしたい。今からそっちに行くよ」
「……うん…。じゃあ、僕クラブハウスの裏で待ってるから」
「あぁ、分かった。すぐ行くからな」
電話を切りながら待ち合わせ場所が人目の付かない場所である事に望月は小さく首を傾げたが、何となく早坂がその場所を選んだ理由が分かった気がした。きっと、他人には聞かせたくない話をしたいに違いない。例えば、昨日の事のような。
 謝ろう。携帯電話をポケットに仕舞いながら口の中で呟く。許して貰えるかは分からないけど一言だけでも伝えたい。ゴメンな、と。そして、笑顔で許そう。電話口で自分に嬌声を聞かせて来た事を。きっと、自分が彼を犯した所為で彼があのような行動に出たのだから。…全ては自分が悪いのだから。

 辺りを夕日の赤が照らす中、薄暗い影の中でボンヤリと立っていた親友の姿を確認した望月は彼の名を呼びながら駆け寄った。
「お待たせっと!待ったか?」
「駿君………」
1日会わなかっただけなのに何ヶ月も顔を合わせなかったような感触に捕らわれ、手がゆっくりと伸びて望月の頬を包む。突然の行動に細かい瞬きを繰り返す望月の瞳を見ている内に涙が込み上げてくるのを感じ、それを誤魔化すかのように眼を閉じて微かに開いている唇に自分の唇を押し当てた。触れている頬と同じ、温かい唇。
「…良ちゃん………?」
唇を名残惜しそうに離した途端に不思議そうな顔で声をかけて来る望月に笑顔を見せようとするが、その無理が逆効果となってしまい笑顔は瞬く間に泣き笑いへと変貌してしまった。
「…この瞳も……頬も…唇も……身体も心も何もかも僕だけのものになったら良いのに……」
涙ぐみながらも必死に見せていた笑顔も数秒持たず、嗚咽を漏らしながら望月の胸に顔を埋め、制服を強く掴んで皺を刻む。その言葉と行動に望月は漸く親友の隠された内心に気が付いた。
「………良ちゃん、まさか……俺の事…」
「…ぅんっ………好きっ…大好き………でも……」
望月の腕が自分の背中に回される前に身を離して視線を合わせる。その瞳はまだ涙で濡れていたが、新たな涙が溢れ出る事は無かった。
「駿君は……小林君の事が好きなんだよね?…君にとっての僕は……ただの幼馴染みなんだよね?」
「……………………」
視線を逸らして地面を見詰めながら望月は小さく口の中で呻いた。確かに彼が言っている事は真実だ。小林が愛情を抱く対象である事に対し、目の前にいる彼は幼馴染みであり、親友に過ぎない。恋愛対象としての情が全く無いと言う訳ではないが、彼に対しては愛情よりも友情の比率が余りにも大きすぎた。たった一人の“親友”。それ以上にもそれ以下にもならない存在。
「…ゴメン、困らせちゃったね」
ここ最近耳にしていなかった明るい声にハッと顔を上げると、早坂は特に落ち込んだ様子も見せずに笑っていた。その優しい笑顔が余計に自分に罪悪感を与えて苦しんでいる事を彼は気付いているのだろうか?それとも、わざと自分を苦しめるつもりで、そのような………
「そんな顔しないでよ。……僕、気が付いたんだから」
「……気が付いたって………?」
笑顔を維持している早坂が一歩近付き、フフッと声を出して笑うと望月は怪訝そうに眉を顰めた。その望月の姿を頭の天辺から足先まで眺めた後、唇を舌で濡らしながら口を開く。
「君が確実に僕のものになる方法」
「えっ………何だよそれ……――っ!!!!」
ドンッ。鈍い音と共に衝撃を感じたかと思うと、腹の辺りが熱くなって来る。心臓の鼓動に合わせてドクドクと熱が漏れ出るような其処に目をやると早坂の両手に握られていたらしき銀色のナイフが偶然なのか狙っていたのかは分からないが、肋骨の間をすり抜けて深々と突き刺さっていた。
「りょ…良ちゃ……どう…してっ……」
口からゴフッ…と血を噴き出し、白と赤の斑模様になってしまった歯を食い縛りながら必死に問う望月に早坂は表情を変えずにナイフを抜き、悪びれた様子も無く言った。
「…だって、こっちの世界には小林君がいるんだもん。どう足掻いたって君と僕は一緒になれないじゃない」
赤黒く染まっていく制服の腹部を押さえながら、膝を突いた望月が重たくなりつつある頭を動かして早坂の瞳を見ると、何時の間にかその眼は光に欠けた虚ろな瞳と化していた。狂人の瞳をした少年は目の前の想い人の血で染まったナイフと両手を見てククッ…と短く笑い、蹲る望月の顔を掴み上げて口付けをする。鉄の味が唇の隙間を縫って口の中に入り込んで来た。
「……でも、一緒に死んじゃえば誰にも邪魔はされないよね。大丈夫、僕もすぐにそっちに行くよ。天国で一緒になろう。…ね?」
「……りょ、良ちゃん…………」
何か話そうと口を開けば、言葉の代わりに血が溢れ出す。頬を伝う涙の原因は腹の痛みではなく、目の前で不気味に笑う少年に対する罪悪感。彼を抱きしめる為に手を伸ばそうとするが既に身体は鉛のように重く、言う事を全く聞きそうに無い。それどころか視界がボンヤリと霞み始め、意識も朦朧として来る。俺は死ぬのか……でも…でも待ってくれ。俺が死ぬ前に一言だけ謝らせてくれ。良ちゃんゴメンな、と。お前を巻き込んじまって、お前を犯しちまって、お前を友達としか見れなくて、そして…お前を狂わせちまってゴメンな、と―――――――――
「りょ……ちゃ…………ごめ……」
両の瞼と同じように唇までもが貼り付けられたかのように重く、まともに開いてくれそうも無い。無理矢理抉じ開けた血まみれの唇から何とか伝えたい言葉を紡ごうとするが、突然停電でも起こしたかのように目の前の景色が、親友がブツッと消えて真っ暗になった。

「……駿君…………」
地面に突っ伏して動かなくなった彼の顔を一目見ようと手を伸ばした時、バタバタと騒がしい足音が聞こえて来る。ハッと気が付いた時にはナイフを握り締めた左手首を誰かに押さえられ、他の誰かが何やら叫びながら自分や望月の周りを取り囲んでいた。
「離せっ!離せよ!!僕も死ぬんだ!邪魔するなああぁぁぁーーーっ!!!」
沈みかけた夕日が作り出した早坂の長い影がもがき、甲高い叫び声が放課後の学校に空しく響き渡った。


「君を殺して僕も死ぬ」と言うベタベタな展開…な割には中途半端な終わり方。
文章のシメが相変わらず苦手です。

…と言いつつ、このパターンCにはオマケ(?)のアフターストーリーがあったりします。
もうエロパロどころの騒ぎじゃない、管理人の趣味入りまくっている内容ですけど
それでも良いと言う方はそのままページの一番下までGo。

作品全体の言い訳後書きへ。

 

 

 

 

 

 

 

例によって(←…)鬼畜・輪姦モノですけど良いですか。言うまでも無く早坂受け。しかもペット調教ネタ。
もう激しく鬼畜。救いよう無し。ちとス●トロ入ってます。
OK!と言う方は怯まずに、このまま進みましょう。

…やっぱり止めとくよ……。

OK!!この後、早坂はどうなったの!?