ブルーの眠りは深い。
ジョミーが知る限りでは、いつもほとんど身動きひとつすることなく眠っている。
人が寝返りを打つなどをするのは主に眠りが浅いときだという話を聞いたことがあるので、ブルーは浅い眠りの時間が極端に短い……つまりは夢を見ないということなんだろうか。
ブルーの眠るベッドの傍らに膝をつき、その寝顔を眺めながらジョミーは軽く不貞腐れたように唇を尖らせた。
ブルーのことだから、きっと短時間で効率よく睡眠を取るためにそんな風に眠るのだろうと思うと、どうしても溜息が零れそうになる。
「ぼくに全部任せて、あなたはもっとゆっくり眠っていいのにさ」
あなたが夢を見る時間くらい、ぼくが守ってみせるから。
「だから……いい夢を。ブルー」
そっと額に口付けを。


目を覚ますと、愛しい子供の優しい思念に包まれていた。
ブルーは寝起きで億劫な身体をゆっくりと起こして、思ったとおりの光景に苦笑する。
ジョミーがベッドに背中を預けて、床に座り込んだ体勢で転寝をしていた。
眠るのなら部屋でゆっくりと休んだほうが疲れも取れるだろうに、ジョミーはときどきこうやってブルーの様子を見に来たまま寝入ってしまう。
それにしても。
「いくら相手がジョミーとはいえ、誰かが入ってきても目覚めないなんてね」
そっと手を伸ばしてベッドに掛かる金の糸のような髪をさらりと撫でても、ジョミーは目を覚ます気配すら見せない。
「疲れているから、身体が深い睡眠を欲しているのだろう。だから部屋に戻って休みなさいと言っているのに」
言っているのに、目が覚めてすぐ傍にジョミーの姿を見つけることができたとき、強く幸福を覚えてしまうのだから厄介だ。
「君がいてくれて、僕はようやく深く眠れるようになった」
何があっても、常に迅速に対応できるように。
長年ブルーはそうやって眠りを浅くするようにと無意識に心掛けてきた。寝起きだからといって身体を動かすことが億劫だなんて、ジョミーがいなかった頃には考えらないこと。
それがどうだろう。今では傍にジョミーが来ても目覚めないほどだ。
ソルジャーという重責を肩から降ろしたということもあるのだろうけれど、なによりそれでも安心できるこの愛しい存在があるからこそ、深い眠りに落ちることができる。
「ああ……本当に……僕はなんて君に甘えているのだろう」
誰よりも、愛しく眩しい、そして優しい子。





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この後、目が覚めてブルーの睡眠に苦言を呈したジョミーは
誤解を訂正されて大いに照れるといいと思います。
そしてそんなにもブルーのことばっかりジョミーが考えてと知って、
ブルーが幸福を噛み締められると更にいい。