「は………っ……あ、つ……」
無理に中へ押し入ってくる灼熱の楔に、ジョミーは空気を求めるように口を開閉させて吐息を漏らす。
認めたくもないけれど、どうすれば少しでも楽になるのかを、身体が覚えているのだ。
「ブルー………あつ…い……」
体勢のせいなのか、いつもより苦しい気がする。ジョミーは浅い呼吸を繰り返しながら東屋にしがみ付いた手に頬を押し付ける。
「……っジョミー、もう少し力を抜いて……」
少しずつ中へと侵入を試みるブルーの手がこめかみを掠めるように、さらりと髪を撫でる。
指が通り過ぎるその感覚が気持ちよくて、ジョミーは小さく震えて掌に押し付けるように頬ずりをする。
「ん……もっと……」
もっと撫でて欲しい。
ブルーは酷く乱暴に揺さぶるときでも、時折こうして宥めるように頬を撫でる。繋がったところが熱した鉄の棒を押し込められているように熱いのに、その掌はいつも心地良く温かい。
こんなところで、こんな時間に、こんな格好なんて。
恐怖と羞恥を綯い交ぜにしたところを快楽に追い立てられて、ジョミーはその温かな掌にほんの少しの救いを求めて切望する。
それなのに、ジョミーの腰を捕らえて少しずつ先へと進むブルーは、指先をつと項へと滑らせて楽しそうに笑う。
「うん、もっと僕をあげるよ。すごいね、今日はまだ慣らし足りないだろうと思ったのに、君のココは飲み込むのが上手だね」
「ちが……あ、ああっいやっ!」
腰を押し付けるように揺らされて、ブルーに押されたキャンディーが内壁を強く擦って中で回転する。それがダイレクトに伝わって、ジョミーは悲鳴を上げて首を振った。
痛いのか、気持ちが悪いのか、意図せずしてはらはらと涙が零れ落ちる。
「や、ぬい……て……キャンディー、は、やだぁ………」
中でブルー以外の物が蠢くたびに、ぎゅっとブルーのことを強く締め付ける。そのことがよりジョミーの羞恥を煽って、涙が止まらない。
「こわ……い……ブルー……おねがい……だして……」
涙を湛えて辛うじて首を捻って返り見れば、無体を強いる恋人は困ったような顔をしてジョミーの頬を優しく撫でる。
この掌が、好きだ。
「ジョミー……」
囁く声は甘く熱い。
身体の中にブルー以外のものを入れられて、恐いし、嫌悪に肌が粟立つ。それなのに、ブルーが腰を揺らすたびにまるで喜ぶように締め付けて、もっと奥へと意思に反してブルーを呼び込もうとしてしまう。
どうして。
「おねがい……キャンディー、やだ………」
自分のことなのに、自分の身体がわからなくてジョミーは涙を零し続けた。
「ぼく、ぶるーしか……ほしくない……よ……」
「ジョミー!」
「ああぁっ」
上から覆い被さるように背中に胸をぴたりとくっつけて抱き締められて、大きく揺さぶられたジョミーは背中を大きく弓なりに反らせた。
「ジョミー、可愛い。なんて可愛いんだ」
頬やこめかみや、耳の裏に何度も音を立ててキスをされて、そのたびに身体は小さく跳ねてブルーを締め付ける。
「あ、あ、やっ……んっ……」
耳に掛かる吐息に声が漏れる。
「僕を受け入れることに慣れた淫らな身体と」
「あっ」
ぐいっと上に押し上げるように更に奥を突かれて、ジョミーは東屋についた自分の手の甲に歯を立てた。
「羞恥に染まる表情と。裏腹なのにすべてが調和している」
ブルーの手が頬を伝い、甲を噛むことを咎めるように、噛み締める歯列に指が捻じ込まれる。
ブルーの綺麗な指に歯形をつけることなど出来なくて、自然と口を開かざるを得ない。
下から突き上げるように押し入られているのに、上からも口内を犯される。指先はジョミーが歯を食いしばることを許さず、力を込めるべき場所を失ったジョミーは逃げ場を求めるように懸命に押し込まれた指をしゃぶった。
顕わにされた双丘に、ブルーの肌がひたりと隙間なく押し付けられる。
「さあ、全部飲み込んだ。気持ちいいかい、ジョミー?」
「あ………」
中でブルーが主張するように擦り上げると、ブルーの形まではっきりと分かるというのに一緒にキャンディーまで動いて擦りつけられた。
身体中を電流が走るかのような感覚に、脳が奥から真っ白になる。
「ジョミー」
口内を荒らしていた指が引き抜かれ、ジョミーは知らず惜しむように舌でそれを追ってしまう。
ブルーがどうして笑ったのか、よく分からないその目の前に、ジョミーの唾液で濡れた手がジョミーの赤いマントを持ち上げる。
「裾を離さないで。汚れるよ」
そんなことを言われても、もうそれどろではない。
キャンディーは嫌なのに、ブルーの動きにあわせて動くそれに感じてしまって、浅く呼吸を繰り返す口は何か縋るものを欲している。
押し付けられたマントを震える手で握ったジョミーは、それを口に含んで強く噛み締めた。
そうして、両手は東屋の壁へ。
くすくすと楽しげな笑い声が背後から落とされて、欲を滲ませた吐息が鼓膜を震わせる。
舌がジョミーの耳朶の形を辿って、唇に甘く食まれた。
「それは、激しくしてくれと言うことかな?いいよ、しっかり掴まっていなさい」
両手で腰を掴まれて固定されたと思った瞬間、強く奥を抉られた。
「んぅ……っふ……んっ、く……んんっ」
強く揺さぶられるたびに激しい波が襲い繰るようで、壁にしがみ付く指は震え、マントを噛み締めた隙間から嬌声を漏らす。
内壁を抉り、擦り、暴くように激しく出入りするその動きと一緒に、キャンディーも更に奥へ転がり、あるいは一緒に入り口近くまで引きずられ、また奥へと激しく動く。
触れてもいないのに下肢の中央にはちきれそうな痛みが膨張して、ジョミーは首を大きく振って限界を訴える。
「ジョミー、達きそう?」
激しい行為とは裏腹に甘い声で囁かれ、ジョミーは強く目を閉じたままこくこくと何度も頷く。
「じゃあ一緒に。僕のものを全部飲んでくれる?」
「んっ」
こくりと頷いて、僅かに開いた目を首を捻って後ろに向けた。
すぐ傍にある紅い瞳に、吸い込まれるように魅入られる。
「ぶるーっ……」
開けた口から、唾液に濡れた赤い布が零れ落ちて、ジョミーは少し無理をして目の前の赤い唇に噛み付くようにキスをひとつ。
「ぜんぶ、ください………あなたの、ぜんぶ」
紅い目をした綺麗な人は、一瞬だけ息を詰める。
「――――君って子はっ……!」
その後は、激しく重ねて絡める唇と舌に吸い込まれて、ブルーが何と言いたかったのかは分からない。
ただ、触れて、絡み合い、繋がり、押し付け、受け入れ、暴き、奪われ、混じり合い、なおもそれぞれ互いを違うものとして感じる、そのすべてが言葉の代わりだ。
一層深く入り込んだブルーが身体の最奥で熱を放ち、その奔流に飲み込まれるようにジョミーも真っ白になるまですべてを解放した。



「……………信じられない…………」
東屋の床に半ば倒れ込むように壁にもたれて座り込んだジョミーは、己の格好を見るに耐えかねて腕に目を伏せた。
ブルーが中から出て行くと、一緒に少しずつどろりとしたものが体内から流れ落ちて床に溜まった、それを見ていられなかったのだ。
けれど見なくても、身体から出て行く感覚まで消えるものではない。
「こんなところで………最低だ………」
「おや、君も最後は乗り気だったじゃないか」
上をはだけさせ、下は膝までずり下げられて、好きに弄られ暴かれたジョミーとは違い、自分は最小限しか脱いでいなかったブルーは早々に服装を整えて、彼ひとりならここで何があったかなど、今すぐに人が来てもきっとわかりはしないだろう。二人分の精液と唾液で身体も服も、あちこちを濡らしよれよれになったジョミーは、見る影もないけれど。
「だから最低だって言ってるんでしょう!?」
嫌だと言って始まったはずなのに、ブルーの指はしゃぶるし、中に欲しいと言ってみたり。
思い出すだけでもここから消え失せたくなる。
ジョミーが自分で認めたことに、ブルーが驚いたように目を丸めたなんて気づきもせずに、意を決して腕に伏せていた顔を上げたジョミーは、想像以上の惨状に嘆きの声を上げた。
「どーするんですか、これ………すっごくベタベタする……」
己の腹を汚したものも酷く情けないけれど、足の間から流れ落ちるブルーのものは、ひどくべたつく。
キャンディーが溶けてまじっているせいで。
咥えていたマントは唾液でべとべとな上に、結局最後に口から落としてしまったせいでやっぱりジョミーが放ったもので白く汚れていて、下に下げていただけで完全に脱がしていなかった黒いスボンは二人のものでやはり白く濡れていた。
「床も掃除しなきゃ……ん……っ」
のろのろと腰を上げようとしたジョミーは、身体の中に残る違和感にぴくりと腰を揺らして再び床にへたり込んだ。
「ジョミー?」
さすがにやりすぎたと思ったのか、今更気遣わしげな表情で傍らに膝をついたブルーに、ジョミーは恨みを込めた視線を送りつける。
「……………中……残ってる……」
「え?」
「だっ……から!キャンディー……残ってる!」
ブルーが床に視線を落とし、ジョミーも見たくもないけど一緒に床を見た。転がっている球体はは黄色と緑のふたつ。何を中に入れたのか、ジョミーに見せつけた赤いキャンディーがない。
「………………………ブルー」
「いや、心配ない。ちゃんと掻き出してあげるから。どうせ僕のものも処理しなくてはいけないし、一緒にしてあげるよ。おいで」
怒るなというように片手を上げたブルーに制されて、ジョミーは口を引き結ぶ。
後始末をブルーにしてもらうことは酷く恥ずかしい。けれど、自分ですることも大層つらい。おまけに今回は、キャンディーなんて異物まで入っている。
激しい葛藤はあったものの、いつまでもこんなところでこんな格好をしているわけにもいかない。急ぐなら自分でするよりブルーにしてもらったほうがいいと、仕方なく腰を浮かしたジョミーは、誘われるままにブルーの腕の中に身を寄せた。
床に膝で立ち、ブルーの肩に手を置く。
「早くしてくださいよ!さっさとここを綺麗に片付けないといけないんですから!」
「……さっさとって、余韻がないなあ」
「そんなものが欲しかったら、場所を考えてください!ぼく怒ってるんですからね!」
怒ったような乱暴な口調になるのは、照れ隠しも入っている。そうと自覚があるから余計に居たたまれない。
ブルーの指がつぷりと中へ侵入して、ジョミーは肩を掴む手に力を込める。交わったばかりのそこは、抵抗なくブルーの指の侵入を許した。
中の異物を掻き出そうとする指は、当然ながら内壁を擦るようにして動く。掻き出す湿った音と、太股を伝い落ちる感覚に、頬が真っ赤に染まる。
込み上げるものを受け流そうと、唇を噛み締めて耐えていたジョミーは中の指がキャンディーを見つけ出したときに大きく震えてしまった。
丸い異物は扱い辛いらしく、ブルーの爪先はそれを引っ掛けては何度も取り逃がす。
「………っ……ブルー……早くっ………」
「うん、待ちたまえ。それがなかなか上手く………」
「変なもの入れるから!大体、粗末にするなって言って、あなたが一番粗末にしてるじゃないか!」
未だに中で動いているものはもちろん、床にブルーのものに混じって転がっているキャンディーは、当たり前だがもう到底食べられるはずもない。
「だけど君、すごく美味しそうに食べてくれたのに」
「………ブルー?」
肩を掴む手に力を込めると、指が僅かに食い込んだ。
「いたたっ、ジョミー、痛いっ」
「ぼくはもっと痛かったんです!出してって何度も言ったのにっ」
「けれどいつもとは違う感覚も、少しは楽しかっただろう?」
そんなものを感じる余裕が、どこにあったって言うんだ。
場所だとか、行為だとか、そっちに気を取られてそれどころじゃなかった。
そう怒鳴りつけようとしたジョミーは、今更ながらに気づいて血の気が引く思いで青褪める。
「………ぼく……思念を遮蔽してない……」
あれほど強い快楽に流されて、あれが館内放送になっていないなんて、到底思えない。
一体明日から、いや、今からどんな顔をして過ごせばいいのか。
こんな昼間から、公共の場所で、こんな不道徳的な交わり方。
「あっ、それに子供たち!あ、あ、あ、あの子たちにまでこんな思念が……っ」
それが何かを具体的には理解していなくても、あんな感覚が子供に伝わったらなんて、想像だけでも卒倒しそうだ。
「やっと気づいた」
ふと息をついたブルーは、ようやくジョミーの中からキャンディーを引きずり出して、その感覚にジョミーは震えて目を閉じる。今度は思念を閉ざしたけれど、当たり前だがもう遅い。
「どうしよう………」
青褪めて、床にへなへなと座り込んだジョミーに、汚れていないほうの手でこめかみを撫でるように髪を後ろに流して、ブルーがそっとキスを瞼に贈ってくる。
その感覚は気持ちがいいけれど、今はそれどころではない。
「心配ない。君が遮蔽を失ったときから、僕がこの辺りを閉ざした」
「え……」
今にも泣きだしそうに涙を浮かべていたジョミーは、軽く息をつくブルーの紅い瞳を見返して、間の抜けた声を上げた。
「本当はね、どんなときでも思念を塞げるようにならないといけないんだよ。今回は特別だ。わかったかい?」
元はといえば一体誰のせいなんだ、とか。
恩着せがましいこと甚だしい!とか。
言いたいことは山ほどあったけれど、今は身体中から力が根こそぎ抜けそうな安堵で声も出ない。
あまりの安堵に、翡翠色の目を開いたままぼろぼろと涙を零すジョミーに苦笑して、ブルーは額の髪をそっと払って優しく唇を当てた。
「また今度、訓練しよう。これだけは僕が特別講師だ」
今度は機関室辺りでどうだろう、なんて呟く人、力が入りさえすれば絶対に殴り倒したのに。




翌日、ジョミーはハロウィーンを満喫したという子供たちにささやかな癒しを覚えた。
せめて子供たちが楽しんでくれたなら、あの性質の悪い大きなお化けに美味しく頂かれてしまったことも、どうにか許すことができる。
けどね、とニナが溜息を零す。
「ヒルマン先生にちょっとだけ怒られちゃった」
「どうして?ひょっとして教授はお菓子を用意してなかったのかい?」
それで悪戯をしたらしすぎたとか、そんなことだろうかと首を傾げたジョミーに、トキが肩を竦める。
「お菓子を零して、片付けてなかったんだって。でもそんなの誰も覚えがないのにね」
「お菓子を?」
「うん。ジョミーと一緒に食べたあそこ」
ユウイが指差した方向に、昨日のあの東屋の屋根が見えて、ジョミーは途端に激しく咳き込んだ。
「どうしたの、ジョミー?大丈夫?」
心配そうにカリナに覗き込まれて、ジョミーは目を逸らして視線を泳がせながら子供たちの誰も見ないでどうにか咳を納める。
「……ぼ、ぼくも誰かが零して食べていた覚えはないけど……い……一体、なんのお菓子が」
「キャンディーだよ」
裸足で逃げ出したくなった。それでは子供たちは濡れ衣だ。
ジョミーがさっと顔を逸らしたなんて気づかずに、ショオンは頭の後ろで手を組んで溜息混じりにぼやく。
「青いソーダ味だよ。ぼくらみんなその味好きだから、落としたら絶対に気づくのに」
ねー?と顔を見合わせて頷き合う子供たちに、掃除し損ねたキャンディーがせめて口から零したものでよかったと思うべきなのか迷いながら、とにかく心の中で子供たちに深く謝罪した。



「……と、いうことなんですが、何か言いたいことはありませんか?」
青の間にひとりで訪れたジョミーの恨めしげな声に、ブルーは身体を起こしてベッドに腰掛けながら、深く頷いた。
「そうか、子供たちには可哀想なことをした」
「そうですね。濡れ衣です。本当に可哀想です。教授にそれとなく、零したのはぼくかもしれないとは言っておきましたけど、それでも!それも!あなたのせいですよね!?」
眉を吊り上げて拳を握り締めるジョミーを見上げて、ブルーは再び深く頷いた。
「ところでその話、聞いたときはとても動揺しただろう?」
「当たり前ですよ!生きた心地がしなかった!あんな、あんな跡を誰かに見つかったのかと、ぼくは本当に……っ」
「けれど僕にその動揺は届かなかった。傍にいた子供たちにも届かなかったから、君の動揺に気づかなかったのだろう?」
うんうんと何度も頷くブルーに、ジョミーは眉を寄せて低く唸る。
「……何が言いたいんです?」
「思念を閉ざすコントロールが少しはついたのかなという話だよ。昨日の悪戯も楽しいばかりではなかったようで、本当に良いことだよ」
ジョミーは思わずブルーの傍にあった枕を掴み、それを持ち主に向かって投げつけた。






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楽しかった……です。ごめんね、ジョミー!(脱兎)

飴の件がどうしても書きたかったので出来たハロウィーン話でした。
あとは公共の場という外でするのと(そして最中に誰かと会う)、
自分のマントの裾を噛み締めて後ろからいたされるジョミーも外したくなかったのでした。
そういうわけで、今回は後ろからオンリー(^^;)
サイト初の正真正銘の年齢制限話が異物挿入に青○とはどういうことだ…!(笑)