「も……ほんと……信じられない!」
ジョミーは涙の滲んだ目で斜め後ろ、自分の肩口に置かれたブルーの顔を睨み付ける。
「普通あんなことする!?リオにバレたらどうするつもりだったんですか!」
「君が怒っているのは場所の問題かい?それとも、行為のことかな?」
「どっちも!……ん、また……やめ…っ」
再び緩やかに握られて、ジョミーはその動きを止めようと、上から両手でブルーの手を押さえつける。
「場所の問題なら、この時間ここに来るのは、ほとんど子供たちしかいない。その子供たちは今頃ハロウィーンを満喫中だ。それから行為の問題は」
上から押さえつけて、擦り上げられることは止められても、握る力に強弱をつけて刺激されることまでは防げない。おまけに、指先の細かな動きに至っては。
「ああ……っ!」
掌の位置はそのままに、伸ばされた指先に敏感な先端の割れ目を擦られて、ジョミーは耐えきれずに背をしならせて嬌声をあげた。
耳元で、小さく笑う声が聞こえる。
「君がその色めいた声と表情を押さえられたら、気付かれはしないだろう。何しろリオのいた場所からは君のここは見えないからね」
爪の先で与えられる刺激が強すぎて、指が動くたびにジョミーの身体は激しく跳ねて身を捩らせる。
「ぶるぅ……っ、やめ、て……も、本当に……あっ!」
「出る?いいよ、手で受けてあげるから一度楽になるといい」
耳朶に直接囁き掛けるブルーの声が酷く熱い。
「やだ、お願い、こんな、とこ…で……」
ブルーの手を押さえた力が知らず強くなる。その甲に爪が食い込んでいるはずなのに、ブルーはまるで支障などないかのように指先を滑らせて、先端の膨らみの裏側を擦る。
「ジョミー、我慢せずに解放するといい。僕にその痴態を見せてくれ」
「いや!やだ、こんな、あ、あぁ……ブルー、もう……っ」
ここはこんなことをする場所ではない。普段は子供たちが遊んでいて、非番であったり仕事の合間であったり、とにかくシャングリラの皆が憩う場所で、こんないかがわしい楽しみ方をするなんて。
ぞくぞくと背筋を駆け上る悪寒にも似た感覚に、もう耐えられない。
最後の抵抗に、絶対に声だけは出してなるのかと唇を噛み切るほどに強く歯を立てる。
「――――――っ!」
大きくしなり、跳ねたジョミーの身体を、ブルーは後ろから強く抱き締めた。



「は……っ……ふ……」
解放の余韻に浸るより、羞恥と悔しさがジョミーの中で渦巻いている。
ブルーの手を押さえる力はもう既にほとんどなくなっていて、ブルーはジョミーの出したもので濡れた掌を握って擦り合わせ、湿った音を立てる。
耳に届くその音がこんなところでひとり絶頂を迎えたことを嫌というほど思い知らせた。
ジョミーは頬を赤く染めて、込み上げる涙を懸命に堪える。
「……なんで、こんな……酷いよ……っ」
「そうかい?けれど、気持ちよかっただろう」
「ブルー!」
堪らず大声で咎めるが、ブルーは濡れた掌を上げて、白く汚れた指をジョミーに見せつけるように擦り合わせた。
「見てごらん。たくさん出したね。気づいているかい?今日の君はとても感じやすいようだよ。ほら、自分で出したものを見て、また少し硬くなりつつある」
ブルーは濡れた手をジョミーに見せつけながら、もう一方の手も残っているものを搾り出すように擦り上げていやらしい音を立てる。
滑りが良くなった原因が、自分が吐き出したものが濡らしているからだという事実に、ジョミーは耳を塞いで逃げ出したくなる。
「うそだっ……いやっ、も、もうやだっ!」
こんなところで、こんなこと。自分ばかりが乱れて、欲望を吐き出し、それでもなお足りないと身体が訴えていると指摘されて。
白濁した水を絡めた指先がジョミーの顎を捕らえ、後ろから首筋に口付けを落とされる。
「ジョミー、もう少し思念を押さえないと、ここは僕の部屋ではないから、君の快楽が外に漏れてしまうよ?」
喉を反るように辿り登る指が頬を汚しながら、ジョミーの口の中に捻じ込むように入ってきた。
「んぅ………っ」
口内に広がる苦い味に、ジョミーは目の端に涙を滲ませる。
自分が出したものなんて汚い。その汚いものが、ブルーの指を汚している。こんなところで絶頂まで登りつめて、そんな浅ましい行為が汚い。
「ジョミー、汚くなんてないよ。これは君の欲だけど、それ以上に僕の欲望だ。僕が欲した、君だけにしか僕に与えることもできない。僕にとっては神聖ですらある……」
熱の篭った声で囁きながら、何度も項にキスを繰り返す。湿った音を立てるキスは時折小さな痛みを覚えたけれど、それ以上に口内を暴れる指が苦しい。
ジョミーの口内をぐるりとひと撫でした指がゆっくりと引き抜かれ、顔をしかめたジョミーの顎を捕らえた。
「うーん……君には口に合わなかったかな。僕はこれが大好きなのだけどね」
半濁色に汚れていた指は、口腔を荒らしたせいで少しだけその色を落としてはいたものの、代わって今度はジョミーの唾液が交じり合っていて、どちらにしてもブルーの手がジョミーのもので汚れていることに代わりはない。
ブルーは濡れた指先で頬を撫で、その視線を向けるようにと示唆をしながら滑らせて、茫洋としたままそれに従い少し首を後ろに捻ったジョミーの前で、濡れた指を口に含んだ。
「や………やだっ、やめてっ!」
ジョミーのもので汚れたその指を、ブルーは舌先でゆっくりと舐め上げる。
「き、汚いよっ」
「僕には甘露のようなのだけどね」
到底信じられないことを口にしながら、ブルーはくすくすと笑う。口の端を汚す白い液体を舐めとって、いつの間に取り出したのか包みを剥がした青いキャンディーをジョミーの唇に押し付けた。
「僕はとても好きなんだけどね。君には口に合わなかったようだから、甘い飴で口直しをするといいよ」
濡れた指先で、甘いキャンディーを押し込められる。
ブルーの手を汚していたもので苦い味が広がったのは最初の間だけで、すぐに甘いキャンディーの味がジョミーの口内を満たした。
「ん……」
何をされたのか忘れているわけではないけれど、あまりにも信じられないことを繰り返されたせいか、ジョミーはぼんやりとキャンディーを口の中で転がして歯を立てた。あるいは、甘い味で何もかも忘れてしまいたかったのかもしれない。
けれどそれが夢でも幻でもないと知らしめるように、ブルーの手が再び大きく開いた胸元と下肢へと滑り降りる。
しかも今度は濡れたせいでより肌に吸い付くように滑らかに動き、ジョミーは身体をしならせて声を上げた。
「……んっ……や………だ……め……」
音を立てて何度も項に口付けを落とされ、ぬるりと滑る手で再び立ち上がったものを握られて大きく震えた。
「あ、ふぁ……っ!」
だらしなく開いた口から、堪えきれずに漏れた声と、舐めていたキャンディーが零れて床へ落ちる。
かつんと音を立てて転がるそれに、ブルーはおやおやと息を吐いた。
「どうやらジョミーは飴も上手く舐められないようだね。粗末にしてはいけないと言ったのに」
全部、わざとなくせに。
悔しくて唇を噛み締める。けれど反対に身体からは力が抜けて、ジョミーは東屋の壁に手をついて吐息を漏らした。
「ね……部屋、行こ………そ、したら……ブルーの、好きにして……い、から………」
ここはいやだと、何度も繰り返しているのに、ブルーはそんなことまるで聞こえていないかのように手を止めてくれない。
下肢に触れる冷たい空気に、スラックス部分を下げられたのだと頬を染める。
「やだ、ここ、で……だめ……」
こんなところで最後までだなんて、そんなの絶対に駄目だと逃げようとするジョミーの腰に腕を回し、項から肩へと押し付けた唇を滑らせながら、ブルーの指先がジョミーの秘所を撫で上げる。
「ジョミー、こちらの口でなら、上手に食べられるかい?」
「え………?」
何を言われたのか、首を捻ってブルーを返り見ようとしたジョミーは、自分の中に押し込められるものを感じて東屋の壁を握る手に力を込めた。
「あっ、や……っ、な……なにっ……?」
ブルーの指ではない。指先も確かに感じるけれど、そうではなくて、その前に、指で何かを押し込めれられた。
耳元で、こりっと何かを噛む音が聞こえる。
首を捻るジョミーの目の前で、いつの間にか口にしていたらしい赤いキャンディーを指先で摘んで取り出して見せたブルーは、欲を滲ませた笑みを浮かべながらそれを下へと降ろす。
それがどこへ行くのか、最後まで見なくても、再び襲った衝撃がジョミーの身体に教え込んだ。
「やっ………そ、そんなの」
指先で押し込められる異物。
ブルーの持っていた、いつくかのキャンディー。
それがゆっくりと、ブルーの指に押されてジョミーの中へと入ってくる。
「やだっ……そんなの、入れな………んっ」
ぐっとキャンディーを押し込めた指も、そのまま根元まで一気に突き入れられて、ジョミーは握っていた東屋の壁に肘をついて縋りついた。
そうしないと立っていられない。けれど、これでは駄目だと言っているのに、自分から腰を突き出して差し出したようなものだ。
「い…た……ま、待って、痛いっ」
指を無理やり捻じ込まれて、じんじんと熱を持ったように痛む。
ブルーは下肢を擦りつけるように後ろから身体を重ねながら、ジョミーの中に入れた指をゆっくりと動かした。
「はっ……あ…ぁ……っ」
「ジョミーの中、すごく熱いね。大丈夫、ちゃんと解してからだ。まだ、僕のは入れなから、まずきちんと飴を味わって」
指先が、丸い異物をぐるりと混ぜる。
「あっ、あぁ、い、や……だ……そんなの、気持ちわる、い……」
指で内壁を擦られるだけでも身体が何度も跳ねる。更に押し込められた二つの丸いキャンディーは、時折ブルーの指で混ぜられながら予想もしない方へと蠢き、ジョミーの中を激しく刺激した。ビー玉ほどもない小さな球体は、けれど今どこにあるのかを、いやと言うほどジョミーに主張して羞恥を煽る。
ぎゅっと唇を噛み締めるジョミーの目の前に、赤い色が入り込んできた。ジョミーのマントだ。
「すまない、このままだとこれを濡らしてしまいそうだ。赤に白は目立ってしまう。裾を汚さないように、君が持っていて」
目の前に差し出されたマントに、ジョミーはこくこくと頷いて裾を落とさないように握り締めて東屋に手をつく。
だったらここでやめようと言えばよかったのかもしれないけれど、このときのジョミーの頭には、ただマントを汚してはいけないという、それだけが浮かんでいた。後で思えば、もうまともにものも考えらないところで上手くブルーの思う方向へと誘導されたに違いない。
「ジョミー……ジョミー、もうひとつ、食べるかい?」
ブルーは耳朶に、項に、肩に、何度も音を立ててキスを繰り返しながら、鼓膜を直接震わせるかのように、熱い声で囁く。脳が蕩けそうだ。
「やっ!いれないで、入れないで、やだぁ……っ」
ブルーの手はジョミーの胸をまさぐり指の腹で突起を押し潰すように撫でる。
小さく跳ねるジョミーの身体に後ろからぴたりと重ね合わせたブルーは、下肢を擦りつけながら更にもうひとつ、キャンディーをジョミーの中に押し込んだ。
「は…ぅ……」
膝が震え、まともに立っていられない。東屋の壁についた腕に頬を押し付けながら、ジョミーは長いブルーの指を体内に感じて身悶えた。
「ジョミー、思念が零れている。誰かが来てしまうよ?」
「だ……て………」
「ほら、息を整えて。そんなに感じた可愛い顔を、僕以外の者に見せてはいけないよ。先ほどリオに見せた辺りが、僕の許容できるぎりぎりのところなのだから」
『誰か』の『誰』に、具体的な名前を挙げられてジョミーは大きく震えた。
あんな、あんな風に、誰かが今ここに来たら。
今度は誤魔化せない。もう表情を取り繕うことも、声を抑えることも、どちらもジョミーには不可能だ。何より、この身体に燻る感覚を強制的に共有させてしまうのだ。
冗談じゃない!
「ふっ………」
ジョミーは唇を噛み締めて、強く目を瞑る。
思念を閉ざさなくては。
青の間は常にシールドが張られているから、いつも途中から思念の制御はブルーに対して強くぶつけないことだけを気をつけていて、それすらもそのうち訳が分からなくなっていた。
けれどここでは、湧き上がる感覚を零すことも完全に閉ざさなくては。
「ん………」
集中しようと目を閉じると、今度は中で暴れるブルーの指とキャンディーが気になって、意識がそちらに持っていかれる。
「ブルー、お願い、抜い……指……キャンディー、も……」
「なんだい?もう一つ食べたいの?」
「ちがっ……」
ジョミーは小刻みに震えながら首を振る。違う違う、わかっているくせに、違うって、わかっているくせに。
「うん、こちらでは上手に食べているね。もうひとつくらい、いいかな。次は何の味を食べたい?」
「………ブルー!」
わかっているくせに、酷い、酷い、酷い!
小さな子供でもあるまいに、同じ悪態しか出てこない。
酷いと心の中で繰り返しながら、荒い呼吸を繰り返すことしか出来ないジョミーの金の髪を、優しい手つきでブルーがさらりと撫でた。
「ふむ……そうか、次は僕を食べたいのか。君も積極的になってくれて嬉しいね」
「違う、ブルー……や………」
無体なことを強いながら、その手つきはどこまでも優しく。
ジョミーの髪を掻きあげて、こめかみにキスを落としながら熱く脈打つものが、ジョミーの腰に押し付けられた。
「これも上手に食べるんだよ?」
「待っ……」
熱い楔の侵入に、ジョミーは声を上げて喉をしならせた。






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