「するときの恥かしさはどこでも一緒だよ!」 ブルーの膝の間に座って膝を抱えたジョミーは、暖かい湯の中に時折口を沈めそうになりながら拗ねたように唇を尖らせた。 「でも、自分の部屋なんて後で思い出したら、すごく居たたまれなくなるじゃないか」 「それがあんなに嫌がった理由?」 まさかそんな理由だとは思っていなくて、そんなつもりはなかったけれど呆れた声になってしまったらしい。ジョミーは背中を丸めたまま、肩越しに鋭くブルーを振り返る。 「ぼくはブルーがまったく気にしないほうが不思議だよ!恥かしくないの!?」 「いや、まったく」 指先で振り返ったジョミーの濡れた髪を軽く弾くと、水滴が飛んで湯船に落ちた。 家の前で押し問答をした挙句、ブルーに強かに平手打ちを食らわせたジョミーはもういいと叫んで一人で家に閉じこもろうとした。 ブルーは慌てて閉まりかけたドアに押し売りさながらに足を挟んでそれを阻止すると、家に入り込んで真っ先にジョミーを連れて風呂に向かい、湯船の蛇口を捻るとそのままジョミーを押し込めた。 そうして、ジョミーが服を脱いで脱衣所を出た頃を見計らって、自分も服を脱いであとを追った。 平手打ちはもう一発食らったものの、ゆっくり話をするためと、ふたりで湯船に浸かればすぐにお湯がたまるという理由を押し付けて、結局一緒に入浴タイムとなった。 ジョミーが押し切られたのは、告げられた二つの理由にはなくて、ジョミーほどではなくてもブルーも冷えていることを心配してだということを、言われなくてもブルーは分かっている。 そうでなくて、ジョミーが大人しくブルーの腕の中で一緒に湯船に浸かっているはずが無い。なにしろ、恥かしいから自分の部屋は嫌だと逃げ続けていたくらいなのだから。 「僕らが身体を繋ぐのは、快楽のためがまったく無いとは言わないが、一番の理由は愛情を交わす為だ。思い出して楽しくはあっても恥かしくはないな」 「そんな言われ方したら、ぼくがひとりだけエッチみたいじゃないか!」 愛情の交換で恥かしくないのなら、恥かしいのはそれよりも違う理由が行為にあるからということになってしまう。 「いや……そういうつもりでは。けれど恥かしいかと問われると、僕は特には恥かしくないからこう言うことしかできない」 「やっぱりブルーが変なんだよー!」 わっと両手で顔を覆うようにして嘆くジョミーに、やれやれと風呂の天井を見上げてブルーは湯船に背中を預けた。 そのまま、後ろからジョミーを抱き込んで自分にもたれさせる。 「わっ!ちょっと、やめてよ!」 「だけど生活空間だから恥かしいというのであれば、生徒会室や教室はいいのかい?」 「ぼくがいつ、生徒会室でしていいって言った!?教室でしたいって言った!?」 「いや、君から誘ってくれたのは今日が初めてだから、いいとは一度も言ってはくれなかったけれど」 「誘ったとか言わないでよ!」 手を振り回そうとして水面を波立たせて暴れるジョミーに、あれを誘ったと言わなければ、どこまですれば誘ったことになるのだろうと心の中だけで考えた。押し倒して服を剥ぎ取るくらいまではいかなくてはならない気がする。 「だってさ、学校とかだったら、ちょっと思い出しちゃって恥かしくなったって、近くに誰かしらがいたり、することが一杯あるからすぐに頭の隅に追いやれるじゃないか」 「つまり……」 実はかなり大胆な告白をしているという自覚が、ジョミーにはあるだろうか。 ブルーはジョミーの腹の上で組んだ指を解いて、左右の手をそれぞれ上下に分けてジョミーの肌を滑らせた。 「ちょ………ど、どこ触って……!」 「自分の部屋でして、そのことを後で思い出したら、またしたくなるから嫌だったのか」 「そんなこと言ってないっ」 「言ったようなものだと思うけどなあ」 昨日の夜と同じく、後ろから抱き込んだジョミーの項に唇を落とした。昨日と違うのは、二人で暖かい湯に浸かっていて、ブルーの身体が冷たくないことだ。 「やっ……!こ……こんなとこで変なことしないでよ!部屋の方がまだマシ!」 「今夜か、明日か、一人で入浴しても、思い出してしたくなるから?」 「ブルー!」 「部屋より風呂場の方が、思い出してひとりするのもやり易いんじゃないかい?汚す心配も無いし」 そう囁き滑らかな肌を愉しみながら下肢に手を差し入れると、ジョミーはくわっと歯をむき出しそうなほどに大きく口を開いた。 「君はときどき酷く狂暴だ」 くっきり歯型のついた左腕を擦りながら溜息をつくと、ベッドの上に出来た蓑虫は小さく震えた。怒って先に風呂を出たジョミーは、ブルーに掴まる前にとバスタオルを掴んで部屋まで逃げ帰ってしまった。後を追ったブルーは一応は服装を整えておいた。すぐに脱ぐのだとしても一応ポーズは必要だろう。特に、ジョミーにとっては。 濡れた髪を拭きながら椅子に座ってベッドの蓑虫に苦笑していたブルーは、組んだ足を解いて立ち上がる。 「ジョミー、そろそろ僕を中に入れてくれないか。湯冷めしそうだ」 優しい君は、勝手に風邪でも引いていろなんて絶対に言わない。例え口では言ったとしても。 蓑虫が揺れて、その一部が開いて中の空洞を示す。 口では言ったとしても、結局は入れてくれる。それが口実であって、事実でもあるから。 ブルーは笑いを噛み殺しながらシャツだけを脱ぎ捨てて、子供のようにその開かれた掛け布団の中に、頭から潜り込んだ。 頭まで布団を被って薄暗く温かいカマクラもどきのような中で、ジョミーは拗ねたように頬を膨らませている。 「ブルーはさ、見下ろしてばっかりだから気にならないんだよ。分かってる?ぼくは見える光景が同じなんだからね!」 なるほど、ベッドに入れば見える風景は部屋の天井ということになる。押し倒されて見えるもの、もちろん天井だ。 「よし、分かったジョミー。では今日は君が上になりたまえ」 「は……?」 「君が好きに動いていい」 「え……?」 蓑虫になっていた布団を払い落として、ジョミーの身体を抱き寄せてベッドの上を回転した。そのまま落ちないように、中央に身体をずらしながら、背中を抱き締めていた手を下へと滑らせる。 「ん………」 触れ合わせた肌が、ぴくりと震えた。 「ま、待ってブルー……好きにって……」 「言葉通りの意味だよ。君はうつ伏せに眠る癖はないし、僕を見下ろす形なら天井を見上げなくていいだろう」 「え、で、でも……ぼくが……あなた、に……?」 「そう。君が僕に」 背中を撫で下ろしていた手を更に下へと滑らせて、風呂上りの艶々とした可愛い双丘を軽く掴んだ。 「この奥に、自分の手で。ね?」 「ぼくが上ってそういう意味!?」 ブルーの胸に手をついて身体を起こしたジョミーは、図らずも自分から割り開かれた奥をブルーの指に差し出した格好になる。 軽く掴んでいたブルーの指先がまだ固い蕾に触れて、ジョミーはびくりと大きく震えた。 「いいね、ジョミー。その調子だ」 爪先が、襞の数を数えるように入り口をぐるりと掠める。ジョミーは震えながらもう一度ブルーの胸にしなだれかかった。 「や……あ……っ」 目を閉じてブルーの胸に頬を擦りつけて、拳をぎゅっと握り締める。 身体を重ねる相手がジョミーでありさえすれば、別にどちらをしても構わないつもりなのだが、人には向き不向きがあると思う。 眉を寄せて、悶えるように吐息を漏らす恋人の可愛らしさは、こう……ジョミーをこのまま喘がせて、激しく鳴かせたいという欲求を最大限に煽るのだ。 どちらにしろ、恥かしさが先に立っているうちは逆を要求される心配はないなと考えながら、ブルーは白い尻を撫で回すのとは違う右手をジョミーの口元に運んだ。 「ジョミー、舐めて」 「………え……?」 ブルーの胸の上で悶えていたジョミーは、差し出された指に戸惑うように目を瞬く。その目元は赤く染まって本当に愛らしい。快楽を隠しきれていない。 「舐めて。君の部屋にはローションや潤滑油になるようなものはないだろう?用意してくれているかい?」 ジョミーは潤ませた瞳に、その一瞬だけ力を取り戻して、唇を噛み締めて強くブルーを睨みつける。 だが結局何も言わずに、赤い舌を出してブルーの指に軽く触れた。やっぱり、誘ったわりには何の用意もしていなかったようだ。 こんなことになるならこちらが用意しておいたのにと思わなくもないけれど、ブルーの上で羞恥に悶えながら今から自分の中へ入ろうとする指を懸命に舐めて濡らすジョミーを見るのもなかなか楽しく、差し引きで言えば間違いなくプラスだ。 赤い舌が淫靡に絡みつく、その感覚も、音も、色も、動きも、すべてが淫らがましい。 「ん……」 指先から根元まで、ジョミーは両手でブルーの手を握り、その人差し指と中指を丁寧に濡らして口腔に含む。 そろそろ下肢が窮屈から痛いに変わってきて、ブルーは眉を寄せて濡れた指をジョミーの口から引き抜いて頬を撫でた。 「ジョミー、僕のを服から出してくれないか」 「え……う、うん……」 不安に触れた瞳に、ちょうどブルーの膨れた下肢の上で揺れるジョミーの蕾に濡れた指先を移動させる。 「大丈夫、まだ入れない。ここをまだ解していない。君のここを傷つけたりしないよ」 ジョミーの唾液で濡れた指先に少しだけ力を入れて押し上げると、つぷりと濡れた音が小さく聞えた。 「んっ………」 ジョミーは途端きゅっと眉を寄せる。 「ジョミー、僕のを。僕の顔を跨いで」 受け入れるジョミーも、侵入するブルーも、道具が無い以上は互いに濡らしておく必要がある。 少しだけ侵入を果たしていた指を引いて促すと、ジョミーは少し迷った様子で眉を下げた。 「う〜〜〜」 「ジョミー?」 快楽と羞恥で紅く染まった頬を両手で覆って、ジョミーは唇を噛み締めて小さく唸る。 「ぼくの部屋でするの、恥かしすぎるーっ」 「僕はいつも用意が良すぎると怒るくせに」 自分でブルーの顔を跨げと言われたことに、よほど抵抗があるらしい。今さらだろうと思わなくも無いが、そういえば今までは同時にしたことはなかったかもしれない。 「今更買いに行くなんて無理なんだから、諦めてくれ」 「〜〜〜〜分かってるけどー……」 両手で頬を押さえたまま、ジョミーは低く唸った。 「やっぱり上ってやだ……」 「今更そんな」 「今更でもなんでも!出来ないものはできないよ!」 せっかくジョミーに乗ってもらえると思ったのに。少し残念なことではあったけれど、このまま放置されるのもつらいので、それは次の機会を待つことにして、ブルーも身体を起こした。 いつものようにジョミーを組み伏して、舌と指で散々に身体中を愛して、ふやけるほどに蕩けさせてから、ブルーは思い出したように、ジョミーの下肢から顔を上げた。 指と口で愛されていたものを中断されて、ブルーの唾液で濡れたジョミーの花芯は不満気にふるりと震えた。 「……ぶるー……?」 腕で目を覆い、顔を半分隠すようにして羞恥と快楽の狭間に酔っていたジョミーは濡れた瞳を見せて伺う。 そろそろブルーがジョミーの中に入る段階なのだが、その前に許可を得ておくことがある。 「ジョミー、ゴムが無い」 「………え………?」 「昨日の今日で君を怒らせるとまずいと思って、実は今日は財布から抜いてきたんだった。君はもちろん……持って無いね?」 「……お、お風呂上りだから大丈夫……だと、思うけど……」 昨夜、部屋ですることを嫌がった理由の一つなので、ジョミーはしどろもどろで視線を彷徨わせる。 「いいんだね?よかった」 このまま黙って進めたって今日のジョミーが怒ったはずもないけれど、ジョミーの口からいいと言わせたかった。ブルーは満面の笑みを浮かべて、ジョミーの足の間に腰を進めた。 「入るよ?」 「ん……」 細いジョミーの腕が背中に回り、誘うように抱き締められた。ブルーの口元に笑みが滲む。 ゆっくりと腰を進めると、十分の解したジョミーの中は熱くブルーを迎え入れた。 「………っは……」 組み敷いて抱き寄せた身体が大きく震える。 違和感や、まだ僅かに感じるだろう痛みや、息苦しさ、そのすべてがジョミーに圧し掛かっているのだろう。眉が寄せられる。 「ジョミー……」 額に張り付いた濡れた髪を指先で避けると、金色の睫毛震え、固く閉じられていた瞼が開いた。 濡れて揺れる、翡翠色が覗く。 「だい……じょう、ぶ………だよ……」 はっと大きく息を吐き出して、ジョミーは苦しそうな表情のままで微笑んだ。 「奥、に………」 最初の苦しさだけは、今をもって慣れないらしい。 ブルーは話に聞くだけで、しかもジョミーは詳しく語りたがらないので推測しかできない けれど、我慢強いジョミーがこうも表情を歪めるのだから相当苦しいのだと思う。 「苦しくて我慢できないようなら、ちゃんと言うんだよ?」 いつもの決まり文句に、ジョミーはこくりと頷いた。 「へいき……」 少しずつ慎重に深く侵入するブルーに、ジョミーは背中に回した手に力を込めた。 初めての頃に比べて、もちろん随分と慣れたはずだ。これは口にされなくてもブルーに絡みつく中の動きが教えてくれる。押し出そうするよりも奥へと誘い込もうとする動きは、初めの頃にはなかったことだ。 ゆっくりと律動を始めるブルーに、ジョミーの腰が揺らめいた。 「あ………」 唇から漏れる声に、ただ愛撫だけを施していたときと同じ艶が含まれる。きゅうきゅうと締め付けつけながらジョミーは軽く喉を反らせた。 「ジョミー、いい?」 「ん……」 僅かに首が盾に振られる。 「気持ちいい?」 もっと確かな言葉で返して欲しくて軽く耳朶を食むと、ジョミーは艶やかな吐息を漏らした。 「い……よ……」 「気持ちいい?」 もっとはっきりと。 そう求めると、ジョミーは言葉の代わりに何度も頷いてブルーの肩に頬を押し付ける。 強く抱き締められて、中が一層狭くなる。 「っ………ジョミ……中で、いい……かい?」 「うん、いい………出して……っ…あ……はっ……ぁ!」 組み敷いた身体が一層大きく跳ねて、ブルーの腹に熱い飛沫が掛かる。 「ジョミーっ」 ジョミーが達したことで一層奥へとうねる襞へ誘われながら、ブルーもジョミーの奥で後を追うように果てた。 疲れたようにシーツに埋もれ、うとうととまどろみかけていたジョミーの頭の下に腕を敷いて髪を梳きながら、ブルーも心地良い疲労に身を任せていた。 ふと、ジョミーに腕枕をしていた方の指に布が引っ掛かる。 目を向けて見ると、それはブルーのシャツだった。 こんなところに脱いだんだったかと、ジョミーの髪を梳いていた手を伸ばして違和感に首を傾げた。 今日着てきたシャツではない。 だが間違いなくブルーのシャツで、しかも最近見た……というより昨日のシャツだ。 ジョミーが抱き締めていたから置いていったものなのでこの部屋にあるのは当然として、随分皺だらけでベッドの中にあるのはどう解釈するべきか。 ブルーは考えるように一度天井に視線を彷徨わせて、都合よく解釈することにした。 「ジョミー」 「……んー……?」 半分まどろんだまま返答するジョミーの髪を梳きながら、そのこめかみにキスを落とす。 「僕のシャツを抱き締めていたら、少しは夜も寂しくないかい?」 「うん………でも……本物がいー……」 「……それは誘ってる?」 「……………ん……」 十中八九寝惚けた上での返事なのは分かっているが、誘っているとか訊ねたら肯定で返ってきたからいいだろう。 腕枕を解くと、寝惚けたジョミーはそれが不満だったのか自分からブルーの胸に擦り寄ってくる。 「ぼくらの初めてのクリスマス・イブは、ベッドから出られそうもないね」 耳元で囁くと、ジョミーはようやく再びちゃんと瞼を上げて、まだ状況がわかっていないらしい翡翠色の瞳を見せた。 |
その後、ブルーはジョミーに上に乗ってもらおうと 色々説得を試みるのではないかと。 しかし初のクリスマスデートがベッドの中だけて…… いや、ジョミーの合意の上ですけど(^^;) |