■□ 瑠璃 □■
×ロクス   成人向け

  

 もしかしたら、初恋かもしれない。
生まれて24年、物心ついた時にはすでに教皇庁の中にいた。ロクスは平凡な生まれでありながら平民の子として生きることを許されない特別を抱えて生まれてきて、それが露見してまもなく教皇庁の中枢に捧げられた。
そこに至るまでの経緯は力ずくというわけではなくて両親に捨てられたという憎悪に似た感覚はないけれど、自分は普通の男として生きてゆけない疎外感、腐敗しきった僧侶たちにいい様に利用される罪悪感と無力感から、汚れた聖人たちと同じに自らを汚す反抗の日々に身を投げた。
 初めて抱いた女の顔も今では思い出せない。
それは明らかに恋ではなくて、好奇心と反抗というくだらない子どもじみた理由で、すでに聖職者だった、紅顔の美少年ともてはやされるほどの自分を簡単に女に差し出した。
つまらない過去を思い出す理由は簡単な話で、恋多き男を演じてきた自分に、人生で初めての運命が舞い降りたから。汚れた聖人の元に舞い降りた美しすぎる少女の姿の天使様が、今彼の下でふるえながら目を閉じ覚悟を決めている。
 男としてこんなに激しい情欲を感じたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
これまで何度も、一糸まとわぬ女を前にしてもまるで寸劇の舞台をこなすかのような冷徹さで淫らな戯れに興じたロクスだけど、覚悟を決めてふるえながら肩を露にしたシルマリルを見ただけで襲いかかってしまいそうだった。天使らしく優美で簡単な構造のドレスを脱いだ彼女の裸体はまだ痛々しいほどのあどけなさを残しているけれど、愛する女性が覚悟を決めて生まれたままの姿で自分の下に横たわる様子に抗えるほどロクスの意志は強くない。
 ロクスも応えて自分を包み続けた法衣を、初めて覚悟を決めて脱いだ。
すべてを捨てても欲しいと、すべてを引き換えにしてもいいまで思いつめた存在を男として抱くということには覚悟が必要だと改めて感じさせられている。声をかけた女を片っ端から魅了し続けた男は容姿だけ、顔だけがよかったわけではなくて、ロクスという男はどこでどうあろうと生きてゆけるだけの特殊を神から与えられたと同時に、人とは次元の違う美しさを当然として存在している天使の隣に立とうと見劣りしない美麗さも与えられた。
そのやわらかく麗しくすらある顔立ちにふさわしい線の美しい体を持ちながらもそれは中性的ではなく、意外に広い肩、厚めの胸板や細くても筋っぽい腕などしっかりと男性らしさも持っていた。
そして彼が魅入られた天使様はまるで正反対の女らしさ、シルマリルは体ほどもある純白の翼をたたみ人と同じ姿になるとそれは小さくてか細くて、清純な乙女の彼女のはずなのにロクスはあどけない少女が隠し持っていた女に強く引きずられて丸裸にされてしまった。
 天使シルマリルが瑠璃色の闇の中そっと瞼を開き、丸い指先でロクスの頬をそっとなぞる。ロクスは小さな手に、細い指に自分の指を絡めながら言葉ではなく視線と唇で応えた。
純潔で高潔な天使様なのに、シルマリルは男の欲望にうなずき身を任せてくれている。彼女は人より上の存在である天使であることを、背中の翼を捨ててロクスを選んだ。
純粋で純真な彼女が自ら人間としての新しい生を望み、汚らわしい人間の男と生きてゆくことを選んだ。
「……ごめん。」
「え?」
「僕はどこまでもわがままだな……君は天使でいれば何不自由なく、今度のことで名誉さえ得られるというのに、僕という存在がそれを捨てさせた……」
 自ら欲しておきながら葛藤の中にあり後悔の言葉を口にしたロクスの声に、自分を差し出す側のシルマリルは蒼い瞳を闇灯りの中揺らしながらぎこちない笑みを見せた。
「私は何も捨てていません。得るばかりです。
 あなたが……恋を教えてくれました……。」
 ロクスが手を差し出したのと同じに、シルマリルがその手を選んだ。
清濁共に抱えて生まれる人間と触れ合うことで純粋な存在だったシルマリルの内側に灯がともり、彼女は知らない感覚を大事に抱いてロクスに寄り添った。
ひとつ目的を遂げることを使命と課され他の勇者たちの下へと駆けつけながらも、しばらくすれば彼女はロクスの元に戻る。ひねくれものが自分の感情をようやく認め、受け入れ、素直になった夜に彼女の恋心も解放され、翼を返し愛した男に寄り添い生きる自分を躊躇なく選んだ。
雰囲気に流されてうなずいたわけではない。シルマリルという天使、いや女はその見かけの愛らしさとは裏腹にこうと決めたらてこでも動かない頑固さを隠している。
 滑らかな柔肌に、男の指先が触れる。シルマリルのあごにロクスの親指が、白い、いや水色に染まる首筋に他の指が触れて彼はもう何度目かわからない口づけを落とした。告白した夜に天使の唇を求めた男、答えを返すということは覚悟も求められることをシルマリルは突きつけられて知り、それでも天使ではなく女としての感情に初めて従った。
そしてロクスはひとたびただひとりと決めてしまうと、それまでの不実さが嘘のように彼女だけを見るようになった。彼も瀬戸際にさらされて己の内で渦巻く熱量が思っていたより遥かに大きかったことを知り、すべて失われる前に愛した少女を欲しがり今肌を重ねようとしている。
明日には喪われるかもしれない自分たちだから、悔いのないように本懐を遂げたかった。
「……ロクス、訊いてもいいですか……?」
「ん?」
「人間は誰もがこうするのでしょうか……?」
 不安げに問いかける天使様のか細い声に答えるロクスの表情はやわらかく微笑んでいる。
天使には肌を重ねるなどという求愛行動はなくて、幼い天使が知らない恐怖にふるえるのは当然のことだから――――その問いかけにもロクスは唇で答える。
唇を重ねるだけではなく顎の角度を軽く変えてシルマリルのやわらかな唇を開かせ、まずは舌先で瑞々しい少女のそれをなぞった。そして息つく間も与えず男の舌を彼女の舌に卑猥に絡みつける。
初めての行為にシルマリルの体がびくんと大きく跳ねて固まってしまってもロクスは責める唇を舌を手を緩めない。
「他の奴は知らないけど僕はこうすることでしか確かめられない。する中身は変わり映えはしないだろうけど……」
「っ!?」
 ロクスの指がシルマリルの両腕で抱えきれないほどに豊満なふくらみに食い込んでいた。
立ち上がった紅い蕾が手のひらに擦られる感覚にシルマリルが息を呑む。
「これでも上手って言われる僕だ、知ってること全部君に味わってもらうつもりだから。」
 小さな耳たぶに甘ったるく熱っぽく囁かれて、シルマリルが頬を染めながら仰け反った。
「それにしてもずいぶん大きいな……清楚な君なのにここと細い腰がやたらいやらしく見えてしょうがなかったよ。
 少女嗜好の趣味はないけど君はずいぶん魅力的に見えたもんだ。」
「……ゃ……あっ…………」
「あの生真面目な君が同じ声で喘ぐから、なんだか悪いことをしてる気がしてならないよ。」
「!」
「けど僕らは愛しあってこうしてるんだからなにも悪いことなんかしてないんだよな。
 僕にとって君は天使であると同時にひとりの女性だ。そんな君に僕が惹かれた、……どこにでもある話だ。」
 ロクスの指先に捉えられた胸の蕾から甘い痛みが全身に走る。ほのかな思いを寄せるようになった男の声でねっとりと囁かれながらの優しく、しかし的確な愛撫に男を知らない肢体がふるえてほんのり色づいて甘い芳香を放つみたい、シルマリルの温度が上がり彼女が愛する花の移り香が香りを変えてロクスを誘っている。
女として感じている己をもてあまし指を軽く噛んで声を堪える少女の表情に、優しく扱い女として抱きたいと望むロクスの中に男としての獣性にも似た嗜虐性が芽生え始め、それが彼の指先まで伝わって
「声を堪えちゃ感じてるかどうかわからないだろ? ほら、よかったら素直になって。」
 強く弱く緩急をつけつつ意地悪に女の胸の蕾を弄び、不実な声で追い詰める言葉を囁いた。
言われたことでシルマリルは羞恥心をあおられた、頬を真っ赤に染めて指をくわえながらふるふると首を弱々しく横に振った強情な彼女の指をロクスの手が唇から外させて汗ばむ肌をわざと密着させる。
「あんまり興奮させないでくれ……ご婦人に無理強いしたことがないのが僕の自慢なのに、好きな女にはがっついて襲いかかった、なんてさすがに恥ずかしすぎる。」
 ロクスの体温と汗で湿った肌の感触と彼の体と体重が生む圧迫感、速い鼓動までもがシルマリルに生々しい。
微笑を添え余裕を見せていたロクスだけど、実は余裕なんて当の昔になくなってしまっていた。細いくせに肉感的な少女の肢体に触れて理性は砕けてしまいそう。
くだらない男の体裁や彼女に痛い思いをさせたくない望みだけで理性をつなぎとめている。
ただの男として彼女を抱いてはきっと壊してしまう。
「感じてる姿は人間と変わらないな。……綺麗だ、シルマリル。」
 熱っぽく囁きながら、ロクスは片手で胸を愛で、もう片方は少しずつシルマリルの体を下がってゆく。大きな手で素肌を撫でられてシルマリルがふるえてばかりいるけれど、彼女自身まるで大きな蕾のように薄紅色に染まっていた。
「処女は体を開かせる楽しみがあるって言うけど、こうしてると本当に花が咲こうとしてるみたいだ。君が花なら大きくて綺麗なんだろうな。」
「あ、の……、は、恥ずかしい……ん、ですけど……っ」
「じゃあ精いっぱい恥ずかしがっててくれ。そんな姿もいかにも君らしくて素敵だ。
 それとももっと恥ずかしい思いでもしてみるか?」
「――――っ!!」
 ロクスの愛撫が本格的に下半身へと移る。彼はおもむろにシルマリルの肉づきのよい太ももに手を伸ばし軽く抱えて片方だけ自分の肩に乗せ、手始めに膝に唇を這わせる。まだ羞恥心の方が強いシルマリルは股を割られそうになったことに反射的に反応して脚だけはしっかり閉じたけれど、ロクスは少しだけ力に物を言わせ片膝を押さえつけながら抱えている膝の内側を舌先で撫でた。
「ふふ……金髪の君はやっぱり下も金髪だな。思ってたよりしっかり隠れてて残念だ。」
「あぁいや……恥ずかし……っ……」
「ほら、胸は隠さなくてもいいのか? 大きな胸がさっきから揺れてるぞ。」
「!!」
「本当、無駄で可愛い悪あがきをしてくれるな。
 君がそんなにするたびに僕はどうにもいじめたくなること……わかってないだろ?」
 言葉に翻弄される。
ロクスは処女の素肌に唇を押し当てながら時折強く吸い所有のしるしを紅く刻み、嗜虐性と独占欲を隠しきれないほどふくらませつつ初心な小娘を追いつめてゆく。隠したい場所すべてを隠せないシルマリルはどうしようもなくなり両手で顔を隠し、しかしふるえる指の隙間からは真っ赤に染まった頬と恥じらいが潜む泣き顔が見えていた。
意地悪な唇は言葉を仕舞うと代わりに舌を出しじんわりと太ももを愛し、ついに不意を突いてシルマリルの両膝を大きく開きその奥に視線を注いだ。
「ふー……ん、人間と同じなのか。」
 天使様のそこは闇に隠されてよく見えないけれど、灯りを消した褥の中で何度も見た人間の女のそれと大差はなさそうだった。脚を開かれ当然シルマリルは閉じようとするし手で隠そうともするんだけれど、ロクスは妖艶に唇を笑いの形に歪めながらそれより先に男を知らぬ天使の谷間に手をもぐりこませ、彼女の抵抗を再び封じるべく覆いかぶさり軽く体重をかけた。
「無駄だって言ってるだろ。
 君の抵抗は可愛いけど、あんまりお預けばかりすると優しくしてやれなくなるぞ。」
 言いながら唇を重ね舌を絡みつけ貪りながら、男の指がまだ開きそうにない女の谷間を指先で何度も何度も撫でさする。ロクスの淫らな指先は撫でながらご機嫌を伺うふりして隙を窺っている、知らない感覚を一度に与えられたシルマリルはふるえてばかりで、下腹部に伸びているロクスの手を押し戻そうとするあまり、男の腕に爪を立て赤い痕を残しながら傷を刻みつけた。
それでもロクスは一切手加減などしない。傷つけない存在の天使様の刻んだ傷も痛みも浮かび上がる血も、彼女から返って来た愛撫に等しいからことさらに甘い口づけで応えるだけ。
「……そろそろ見せてくれないか。そんなにふるえてばかりいちゃ、入れるより先に失神されそうで怖い。」
 しつこいほど丁寧な愛撫を施しながら毒に満ちた口説き文句を口にするロクスだけど、彼はもういつでもかまわない。今すぐにでもかまわないほど彼自身はいきり立っている。
事実羞恥心と恐怖と未知の熱に支配されているシルマリルはいつ意識が飛んでもおかしくないほどにふるえてばかりいて、先に終わられてはいくら男と女の情事に非情ですらあるロクスもそこから先には進めなくなる。
少々強引に話を進めるべく、ロクスは執拗に貪っていた舌をほどいて唇を外し上半身を起こすと再度シルマリルの脚を開き、やわらかい谷間を今度は指で開いた。
 シルマリルの短い悲鳴が痛々しく聞こえたけれど、彼女の女は嫌がっていなかった。
力ずくでわずかに開かされたそこからとろりと初めて絞られた蜜があふれてこぼれ、不躾な男の指は自身に蜜を絡めながらさらに奥を求めて指を蠢かせる。
「やっぱり君のここは嫌がってなかったな。
 ほらわかるか、自分の恥ずかしい場所がこんなに感じて濡れてるのが……」
「いや……いやロクス……私、わたしおかしくなって……っ」
「泣くなよ。おかしくなってないし壊れたわけじゃない。
 僕に愛されて感じただけだから何も怖がらなくていい。」
「でも……こんな……恥ずかしい……」
「君は恥ずかしいだろうけど、僕にはそんな様子がたまらない。
 ごめん、先に一度抜かせてもらうから。」
「え?――――きゃっ!??」
 シルマリルの甘ったるい嬌声が闇に響く。ロクスはあろうことか天使の女陰を開き猛々しく天を仰いでいる己の若茎を彼女のそこに埋め挟ませて腰をゆるりと前後に使い始めた。
「待って、待ってロクスいったいなにを――――なに……ぉ……」
 人間の体の一部なのにロクスのそれは硬くて熱くて、シルマリルはいきなり谷間すべてを荒々しく擦られ襲い来た快楽の大波に呑まれて溺れそう。闇に溶けないロクスの銀の髪が激しく揺れて乱れてその奥の表情からは微笑が消えてしまい、恍惚とした表情を隠すことも装うことも抑えることも忘れて彼は無意識に舌なめずりをした。
「ほら聞いてごらん……僕のものが君のここで動いてるから……聞こえるよな、ほら……いやらしい音がしてる……。」
 あの弱みや追いつめられた様子を見られることを嫌がる男が。
どうにも隠し切れずに細い指でシルマリルの猫毛をかき分け丸い耳に淫らに熱っぽく露骨な言葉を囁きかける。絡み合う裸身とさらに深く絡みつく腰、お互いのそれで相手を愛撫する熱にまみれた戯れは男どころか行為すら知らない天使様の女の谷間を目覚めさせて滴りそうなほどに蜜をあふれさせてしまった。
「ロクス待ってください、そんな乱暴に」
「もう待てないよ。本当は君に入れたいのを堪えてこうしてるんだ、いかせた後入れるようにするから……頼むシルマリル……っ、僕のを飲んでくれ……」
「な、なにを……っ!?」
 突然シルマリルの蒼い瞳に正気が戻り、彼女は突きつけられたものの大きさとその形相の恐ろしさに目を見開いた。
ロクスは女の谷間で己を刺激して、放出の瞬間が目前に迫った瞬間にシルマリルの鼻っ面にはちきれんばかりにふくれあがってしまった己の男を突きつけた。
それは先端のくぼみに先走りの精を滲ませていて、シルマリルの蜜にまみれいやらしいにおいを放っている。
「その口で……優しくくわえてくれ。もう出そうなんだ……頼むよ。」
 ロクスは優しげな声色で、どこかサディスティックに見下ろしながらシルマリルのやわらかな髪をすきつつ彼女に口腔奉仕を請うた。請われたシルマリルはロクスの中心で雄々しくそそり立つ彼の男と、それのグロテスクさからは想像もつかぬほどに美麗でありながら淫らに歪み火照っている彼の表情を交互に見るばかりで何も出来ずに見上げるばかり。
愛しい男の顔しか見ずに彼の男からは目をそらしている。
 ロクスの細い指がいつまでも動かないシルマリルの唇に伸びる。
そして彼はシルマリルを見下ろしたまま瑞々しい唇を指先でなぞり指先を咥えさせた。そういう愛撫があるなど知るはずもないシルマリルはされるがままに受け入れて彼のお望みどおりに唇を開き、何も知らぬ処女を思うとおりに操ることに成功したロクスは解放を待ちわびる己を軽くしごいて頭を彼女の唇に押し当てた。
「んむっ」
「……何もしなくていい。優しくキスしててくれればそれで……」
 戯れならば、何度でも。女に己の不浄の象徴を咥えさせ奉仕を請うふりをして強要しひと時の淫蕩なふれあいにどれほど興じたかなど、もう思い出せない。けれど幼い天使様は違い、口づけていてくれればそれでいいと搾り出した声以上、シルマリルの唇が押しつけられたことで思わず先端を包み込み小さくうめき声をあげた瞬間、ロクスはびくりと思わず身を起こしわずかに仰け反り、そして――――
「あ…………はっ」
 シルマリルの唇からロクスの若い雫があふれて滴った。ロクスは肩で大きく息をして、どうすればいいのかわからぬまま粘る白濁を薄紅の薔薇の花びらみたいな唇から滴らせているシルマリルから己を引き抜きまた身を屈め彼女を抱き、彼女の豊か過ぎる胸もとに伝わる白濁液に指を這わせた。
「僕の精液をこんなにして……飲んでくれよ。」
「ふ…………」
「次は……ここで飲んでもらうから。」
「っ!」
 ロクスの手が再びシルマリルの谷間に伸びる。今度は遠慮なしで谷間を割り蜜を指に絡めて花びらをこりこりと弄んで、指先でさらに奥、彼女の入り口を探り始めた。ねだられて素直に生臭い白濁液を飲み干したシルマリルは一切抗わずに身を任せる。
 男が女に溺れる過程を、心穏やかな優しい天使様でいる限り知るはずもなかった領域を、シルマリルは自らの体で体験している。ロクスは女が放っておかなかったと自他共に認める容姿を持ちながら本気にならず、恋に遊び。
すべてを気晴らしにしかしなかった。
初めて本気になった相手はややこしいことに愛らしい天使様で、けれど数多の苦難を乗り越えて今憧れの女性を腕に抱き腰を絡めてやわらかな感触に夢中になっている。
抵抗はせず、しかし秘められた場所をまさぐられる羞恥心と開かれる痛みに体を強張らせたシルマリルの不安に重なるみたいにロクスは肌を、体を重ね、愛しいひとに口づけの雨を降らせ続ける。
天使様は人間の甘美な求愛行動を受け入れて人間の男に純潔を捧げる。
「シルマリル……」
 小さな蜜壷に男の指が入る。
「シルマリル、シルマリルっ………」
 異物感と痛みと羞恥心と少しの快楽にシルマリルの小さな体がはねる。
「ああシルマリル……っ……」
 淫らな蜜に純潔の証の赤を混ぜながら、ロクスの指がたとえ気休め程度だろうと小さな蜜壷に己が入っても痛みが軽くなるようにとゆっくりと抜き差しを始める。その間何度も何度も腕の中の愛しい女の名を呼び彼女の感触に酔い溺れて、自ら理性を怖し箍を外し覆いかぶさり指を蠢かせつつ唇が再び女の体を少しずつ下がり始めた。すべてが瑠璃色に染まる夜なのに、色をなくすほどの青い夜なのに、なぜだろうシルマリルの体はほんのりと薄紅色に染まっているのだとわかるし、それを思うだけでロクスはどうしようもなく燃え上がって仕方がない。
おそらく今彼女がやめてと請うても止められない。力ずくと言う暴挙に出そう。
 また舌が触れる肌を求めて姿を現した。ロクスの舌がシルマリルのやわらかな若草の茂みを淫らな動きで撫でてそのまま幼い谷間へ、指で開かせたそこに、指ではないもっと繊細な動きをするものが触れて花びらを弄びまだ薄い蜜を味わって……
「――――っ!?」
 当然のように跳ねたシルマリルの脚をロクスは両肩に乗せ、指を入れたまままた容赦なくそこを舐りまわす。
「やめ……やめ……っ……」
 全身を鮮やかに染めながら子どものようにいやいやをするあどけない天使様、そんなことをされては男は余計に本気になってしまうことを、人間ではない彼女は知らない。誰かを好きになったと初めて自覚したロクスは、己の知る限りの淫蕩な責めを何も知らぬ生娘にすべて与えるつもりでシルマリルの谷間で舌を蠢かせて女のもっとも弱い場所を執拗に責め続ける。
「やめて、ロクスそこ痛いっ」
 声での返答はない。それまでは舌先でちろちろと弄る愛撫だったのが、シルマリルに痛いと言われたなりにぷっくりと腫れあがったように大きくなった小さな芽を唇で包んで緩く、長く吸い上げた。
 ロクスの肩の上で白い脚が大きくふるえた。か細い悲鳴のような嬌声がどこか痛々しい。
しかしロクスは腰が逃げるシルマリルを逃がすまいと丸い尻に指を食い込ませて捉え、彼女の熱く濡れた谷間に深く顔を埋めて、止めでも刺すかのように小さな芽を一瞬解放し軽く、ごく軽くそれに歯を立てた。
 白い指がロクスのシルクグレイの髪に絡む。
それが女からの合図なのだと知っているロクスは責めを緩めない。優しいシルマリルの指が激しく強く痛いほどにロクスの髪をかき乱しかきむしり――――直後くたりと弛緩した。
それまでの経験とは違う反応、男に慣れた女の甘ったるい声もすがりつくほどの反応もなく、処女を先に終わらせたロクスが顔を上げると、そこにはまるで男に陵辱された直後のような、紅潮した、しかしどこか青ざめて見える、頬に涙の痕を残す放心した表情があった。その表情に愛しさと別の欲望が頭をもたげ、ロクスは涙の痕に労わる口づけを落としながら再び猛々しく立ち上がった己の男を収める場所に収めるべく腰を絡める。
腰を深く、深く絡め己の男の先端を、今度は谷間に埋めるのではなくまだ小さくいたいけな蜜壷の口に押しつけ、ロクスは彼女の足を両肩に乗せてゆっくりと体重をかけ始めた。
「いっ!?」
 やわらかな太ももがこわばる。
「力を抜いて。痛いだろうが壊れはしないから……僕を受け入れてくれ。」
 ロクスは返事を聞かない。
「あ――――くっ!!」
 不自然な皺が寄る白い寝床に純潔が散らされた。白に真紅の薔薇が咲く。
別々の存在でしかなかった男と女がひとつになり、破瓜の痛みにシルマリルの小さな体が大きくふるえた。しかし男にあるのは愛する少女を自らの男で女にした充足感と征服感、そして火照る体は頂点を求めロクスは小刻みに揺れ始める。
「あ、待って、待ってくださいロクス! 痛い!」
 抑えた悲鳴への返答はない。小柄な体に覆いかぶさり男は腰を小刻みに突き動かし、その揺れを少しずつ、少しずつ大きくし己の終わりを青い女の体で手繰り寄せようと試みるが、たった今男を知ったばかりの彼女相手にうまくいくはずがない。処女らしいぎこちない固さとそこの狭さにロクスの細い眉が歪み、反対に形の良い唇が嗜虐的な笑みの形を見せた。
饒舌な男が女のことで頭だけではなくその体すべてをいっぱいにして溺れ、貪り、言葉をなくす。言葉の代わりに唇で答える。
破瓜の痛みにふるえる小さな体を長い腕でかき抱き口づけを雨あられと降らせ続ける。
 男が己の中で暴れるような痛みは天使が知るはずもない感覚で、しかしシルマリルはきゅっと唇を噛み小さな悲鳴をこらえロクスの律動を受け入れる。そこにあるのは単純な種の保存の本能や牡の欲望ではなく彼の感情の襞で、彼が見せ続けた素顔の断片。
包み隠さない己自身をシルマリルになら見せてもいいと己を預けてきた想いに応えた彼女もまた、種族を越えひとりの女として己のすべてを彼に預けた。
「――――――っ」
「あっ」
 ロクスのわずかな動きにもシルマリルは大きく反応する。彼がびくんと身を強張らせたのは彼女にとって痛みに代わり、それまでは小刻みに揺れていた彼の腰が突然もっと深い場所を求め突き出され、逞しい怒張を受け入れさせられているそこも彼女自身も短い悲鳴をあげた。
「あ、あ……な、に……なにか……私、の……中にっ――――あ!?」
 直後胎内が満たされる感覚、途切れ途切れの嬌声、ロクスは遠慮も何もなく処女の中で果てた。しかもすぐに離れるでもなく、それどころか違和感に我に返ったシルマリルをロクスは開放せず、再び腰をくねらせる。
「ロクスいったい……んっ……あ……あぁ…………」
 小さな体を抱いていた腕が白い脚を抱え、ロクスはさらに深く己を突き立てる。
シニカルな紫の瞳は丸裸にされて情交の熱で燃え上がり、乾ききっていた感情は満たされて潤うみたいに艶めいている。それは人間の男ならではの変貌で、彼を魅入り魅入られたシルマリルも手の届かぬ存在から確かな存在に変化した。
たったひとりの男のために、純真無垢な天使様はひとりの女になると決めた。
 一体感を求めるあまり痛みばかりを与える男の体を細い腕が抱き返す。抱かれた男は受け入れられた喜びがふくれあがりさらに深みへとはまる。
瑠璃色の夜はいつまでも終わらぬ錯覚をもたらすけれど、東から西へと動き続ける月影だけが無常に見守りすべてを記して時を動かし睦事に終わりを告げる。の、だけれど――――

「シルマリル……愛してる。」

 せめて、夜が終わるまでは。朝が来るまでは。
すべてを忘れて溺れさせていてほしい。
お互いにすがり溺れてひとつにとけて重なるこの瞬間だけでは満たされないから、その先を求めたいから、この瞬間を胸に抱いて。

 伝説に刃向かう無謀だろうとやり遂げる力をお互いの中に産みつけたい。

  

2008/12/27