イジワルするのは、

好きだからだよ

















I want to bully a favorite person 前編



















閉め切った部屋の中で、繰り返し零れる呼吸と喘ぎ声。

皺だらけになった敷布の上で肢体をくねらせ、何度も絶頂を迎えて背を仰け反らせる少年と。
その少年を組み敷いて、何度も貫いて追い込み、自らも幾度となく高みへ上り詰める少年と。


彼らが情交を始めてから、どれ程時間が経っただろう。
最初の内は気にしていた、閉め忘れたカーテンの向こう。
宵闇が薄らいで来ている事に、彼らは気付いていない。

そんな事よりも目の前の快楽を追う事で頭が一杯で、少年達は無我夢中で躯を絡ませ合った。
組み敷かれた少年の方は随分前に体力が限界だったのだが、相手の少年が離してくれない。
この人物相手に力技は通じないから、彼も結局は快感を追う方を選んだ。




「…っは、あッあッ、ん……んぅぅッッ」




脚を大きく広げられて、組み敷かれた少年────京一は突き上げる律動に合わせて身を跳ねさせる。
漏れる声は既に擦れかけていて、自身も喉が痛んでいる事には気付いていた。
けれど噛み殺すには襲い掛かる快楽の波が強過ぎるし、疲労もあってだろう、開いた口を塞げない。

貫く少年─────龍麻はそんな相棒の様子に気付いていながら、律動の速度を緩めない。
京一と同じだけ龍麻も体力を消耗している筈なのに、彼は全くそれを感じさせなかった。



されるがままに躯を揺らし、京一は投げ出していた手を持ち上げ、龍麻の肩を掴む。
退けようとするように押してみるが、その腕にはろくな力が入っていない。


今の京一には、意識を保つ事さえようやっとの事なのだ。
龍麻が眠る事を赦さないから、意識を現世に繋ぎ止めているだけとも言える。

しかし本音、出来ればもう寝てしまいたいのだ。
この際気絶でもいいから、終わりにして休みたい。
なのに龍麻は離してくれない。




「うッ…あ……!!」




ドクン、と皮肉を押し広げるペニスが大きく脈打った。
直後にどろりとした粘着質のある蜜が直腸内に吐き出される。

龍麻の肩を押していた手が再び敷布の上に落ちて、投げ出される。
ドクドクと射精は続いており、それが流れ込む都度、京一の躯は痙攣した。




「は…ッ…は……ん、あッ!」
「きょーいち、気持ちいい……」
「あッあうッ! バカ、動くな……あぁッ!」




射精が終わったと思ったら、また直ぐに律動が始まる。
まるで底無し、絶倫だと一体何度思っただろう。


クラスメイトの何人が、彼のこんな顔を知っているだろう。
…絶対に誰も知らないと言い切れる、自分ただ一人を除いて。
だって学校中のほぼ全員が、あののんびりした眠そうな笑顔に騙されているのだから。

……いやあれも本物なのだけど、その奥に野獣と言うか猛獣と言うか肉食獣と言うか、そういうものが潜んでいるのだと誰も知らないのだ。
それを自分一人が知っていると思うと、優越感もあるものの、逃げ場も相談場所もなくて辛いと思わずにはいられない。




「あ、う、んんッ! はひッ、は、はッあッあんッ、んあぁッ」




龍麻と京一の腹の間で、京一のペニスが擦れる。
早い時期に龍麻と同じか、それ以上に射精した京一には、それだけでも辛い。
ヒリヒリと痛みを感じるように思うのは、果たして気の所為だろうか。


龍麻は更に高みに昇ろうとし、京一も同じ場所へ連れて行こうとする。
しかし京一はとうに限界に来ていて、吐き出す精子もない。

けれど情交が染み付いた躯は快感を与えられれば反応し、正直な躯は流されて勃起する。


もう無理だと、一体何度訴えただろう。
それもはっきりとした言葉で。

だが龍麻は(返事はするものの)一向にお構いナシで、激しい性交を続けた。
今も。




「ひ、ふぁッ! た、龍麻ッ…も、もう無理ッ! 死ぬ、死ん、じまうぅうッ……!!」
「大丈夫。京一、丈夫だから」
「そ、ゆ問題じゃ…ひィんッ! や、らめ、マジでぇええッ…!」




龍麻の雄が前立腺を攻める。

グチュグチュと卑猥な音がする。
緩んだ秘孔に穿たれた雄は未だ硬度を失わない。
その雄と皮肉の隙間から、何度も吐き出された龍麻の蜜が溢れ、股間を伝い落ちてシーツを汚した。


龍麻は京一の両足を肩に乗せて、彼の肢体に上から覆い被さった。
真下に見下ろす京一の顔は紅潮し、引き締まった体躯には汗が滲み妖艶さを醸し出す。

普段、何にも屈することのない光が、今だけは前後不覚に明滅して支配者に犯されている。
深く口付けて咥内へと侵入させた舌にも、無防備に絡めてくるだけで、後は貪られるままに抵抗しない。
体力が限界を訴えていた所で、結局若い躯は与えられる快楽に正直なのだ。



わざと音がするように、内部を肉棒でぐちゃぐちゃに掻き混ぜてやる。
京一はビクビクと脚が跳ねさせ、爪先が丸め、吐き出すもののない彼の自身が熱の放出を促すように打ち震えた。




「あひッひっい…! 龍麻、そこ、そこいぃッ…!」
「もっと欲しい?」
「死ぬ、もう死ぬッ…! あぁああッ! 龍麻ぁッ、死ぬぅッ! ホントに、ホントに死んじまうッッ」
「良すぎて死にそう? 僕もなんだ、京一の中、凄く熱くて気持ち良い…」
「んは、ひぅ、あ、んはッ! あ、ひゃめッあぁん! ふぐ、ふ、龍麻ぁあ……!」
「ずーっとこのままでいたい位……」




喘ぎながら、龍麻の囁きに京一は絶対御免だと内心で呟いた。



それこそ死ぬ、絶対死ぬ、体中の全部を根こそぎ吸い取られて死ぬ!
死んだ場合ってコレも腹上死になんのか? でも上じゃねェし、そういう場合はなんて言うんだっけ?

いや、ンな事どうでもいいんだ!



何度訴えても情交をやめようとしない龍麻。
今の今まで付き合っていられるのも、奇跡的な事なんじゃないかと京一は思う。
だってヤり初めてから何時間経ったよ────と胸中で考えていたら、




「あッん!!」
「駄目だよ、考え事したら」
「あッあッあッあッ! んは、はひッはッふッんッ、ひぃぃッん!」




龍麻の言葉は、子供の焼餅のようなもの。
京一が少しでも他方に意識を向けるのが気に入らなくて、深く内部を抉る事で、自分を今支配しているのは他ならぬ彼なのだと認識させようとする。



龍麻の表情が一瞬歪み、直後、京一は己の体内に熱いものが流れ込んでくるのを感じた。




「あ、あッ…う……は…っはぁ……ん……あぁあ……」




勢いが凄い。

夏の体育の授業後、冷水機で呼吸する間も惜しんで水を含んで飲み干す事がある。
それに似た勢いで、熱は京一の体内に流れ込み、内臓まで犯していく。
その流れにも快楽を感じて、開きっぱなしの京一の口からは悩ましげな嬌声が漏れた。


ずるりと秘孔から肉棒が抜けていく。
長い長い情交で、長い間其処を埋めていたモノがなくなり、京一に訪れたのは解放感とは違った。
ぽっこりと空いた穴の蓋がなくなって、なんだか無性に頼りなく感じてしまう。
本来、其処は慎ましく閉じている場所である筈なのに。




それでも、終わった事は終わったのだろう。
龍麻はもう貫いてくることはなかった。




「はッ…はぁ……う…く…ふ……うぅん……ッ」
「わ、凄い」




肩に乗せていた京一の脚を下ろしながら、その狭間を見て龍麻が呟いた。
その原因を京一も言われずとも理解している。

散々龍麻からの射精を受け、精液を流し込まれた其処は、とっくに許容量を超えていた。
それを龍麻が抜かずに何発も続けたから、内部は白濁で一杯で、蓋を失うと直ぐに溢れ出す。
どれだけ出したんだと京一が毒吐きたくなる程、それはとぷとぷと溢れ出して止まらない。




「凄いね、京一。こんなに一杯飲めるんだ」
「やッ…さ、わるな、バカ……ッ」




龍麻の指が悪戯に菊門の形をなぞる。
奔った小さな快感に、ピクッと京一の躯が跳ねた。



溢れ出る蜜液の感覚に身を震わせながら、京一は開きっぱなしのカーテンを見遣った。
正しくはその向こう、窓ガラスに映る空の色を。

其処に白んだ色と、消えつつある宵の色を見つけて、京一はぐったりと目を閉じる。




「マジか…朝じゃねェかよ……」
「あ、本当だ」




徹夜でゲームをして過ごしてました。
そんな風の龍麻の声色に腹が立って、京一は力の入らない脚で龍麻を蹴った。




「どーすんだ、テメェ。平日だぞ」
「うん」
「ガッコだりィじゃねーか……」




今日は平日。
自分達は高校生。
つまりは、学校に行かなければならない訳で。

おまけに朝で、時計を見れば午前七時前、今から寝れば確実に遅刻。
サボタージュが日々の常である京一でも、高校は卒業したいから、単位は最低限でも取って置かなければならない。
その為には、どんなに躯がボロボロだろうと、最低限学校には顔を出さなければ。



寝たい。
凄く眠い。

ってか、疲れた。



一晩中酷使されたのだと気付いたら、余計に疲れを感じる。
腰も痛いし、喉も痛いし、ダルいし、腹も減ったし、とにかく今は休息が欲しい。

でも起きて服を着て、登校する準備をしなければ。




「あー……ダリィ………」




のろりと京一は起き上がり、脱ぎ捨てていたシャツに手を伸ばす。
取り敢えずそれ一枚を着て、京一はぐしゃぐしゃになったシーツの上に胡坐を掻いた。

龍麻はシャツとパンツを履いて、狭いキッチンに立った。




「パンでいい? お米炊くの忘れてたみたい」
「……だろーな」




昨晩の有様を思い出し、京一は溜息交じりに頷いた。



昨日の夜。
いつものラーメン屋で夕飯を済ませ、それからこの龍麻の部屋に上がらせて貰った。

その時、龍麻は食事を始めた所だった。
お互い、其処にはお構いなしで、京一は風呂に入らせてもらった。
そして京一が風呂から上がって、食事を終えた龍麻はキッチンで粗い物をして。
敷かれていた布団の上で京一がのんびりテレビを見ていたら─────食器を片付けていた筈の龍麻が、予告なく襲い掛かってきた。


既に何度も躯を重ねているし、龍麻が一々「襲って良い?」なんて訊く筈もないので、これ自体は然程驚かなかった。
予告なく抱き付いて来て、あっというまに布団の上に引っ繰り返されて、キスされていると言う手の早さには驚くが。

それから暫くはいつも通りの情交だったと思うのだが、二人が何度か熱を吐き出した後。
京一が少し心地の良い倦怠感に身を任せて眠ろうとした時、龍麻がそれを遮った。
いつもならそろそろ眠れる筈なのに、と思った京一の事など構わず、以降は完全に龍麻の支配下だった。



食器の片付けを途中で放り出して来たのだから、明日の食事の準備なんて出来ていない。
いつものように夜半に行為を終えていれば、龍麻が少し早起きして炊飯のセットをしていられたのだろうが、生憎。




パンをトースターに入れる背中を、京一はぼんやりと眺めた。

自分はこれだけ疲弊しているのに、何故彼は平然としているのか。
ヤる方だって疲れるだろうよと京一は思うが、龍麻はそれを一切見せない。
……なんだか腹が立つ。


体力も底無し、性欲も底無し。
未だ下腹部に残る違和感に、京一は苦々しく顔を歪めた。





焼きあがったパンと、苺ジャムとマーガリンを持って龍麻が戻ってくる。
片付けていたテーブルを出すのが面倒で、畳に盆を置いてそのまま食べた。


食べたら着替える。
着替えてさっさと登校の準備。

風呂にも入りたいし、何より後処理もしたかったが、時間がない。
それでも幾らか落ち着いた躯に、京一は少しホッとした。
……躯が激しい情交に馴染んだようにも思えて、なんだか複雑な心境もあるが。



気だるさと眠さで京一がゆっくり着替えている間に、龍麻は着替えも食器の片付けも終えた(食器は水に浸けただけだが)。
京一が一足先に、薄っぺらい鞄と木刀を持って玄関に立った時、時刻は七時半を過ぎていた。




「おい龍麻、早くしろよ」




リビングで何かを探している様子の龍麻に、京一は声をかけた。
それに対して「ちょっと待って」と言われて、先に外に出る訳にも行かず、溜息を吐いて待ち惚け。

そのまま数十秒してから、ようやく龍麻はリビングを出て来た。




「あーダリィ……」




立っているのも辛い。
なんだってあそこまでヤる元気があるんだか。

思いながら京一はドアノブに手をかけた。



が。






「ッ!!」






後ろから伸びた腕に上半身を抱き竦められ、京一は一瞬硬直した。
自分以外で此処にいるのが親友ただ一人であると判っていても、幼少期からの癖だろうか。
背後から出現した物には、どうしても身構えてしまう。


原因を知らずとも、京一のその癖に、龍麻は確実に気付いている筈だ。
彼の観察眼はかなりのものだから。

だと言うのに、時々妙に底意地の悪いこの少年は、こうやって京一を揶揄う事がある。
今回もそうだろうと、京一は肩越しに背後の龍麻を睨み付けた。




「龍麻、お前な……」
「んーと……」
「って、おいコラ! 何してやがる!!」




一つ殴り飛ばしてやろうと思った矢先。
ごそごそと龍麻の片手が京一の下肢に伸び、先ほど締めたばかりのベルトを外している。

カチャリと手間取ることなく外されてしまったベルト。
スラックスのジッパーが下ろされ、緩んでしまったボトムは抵抗空しく床に落ちる。
それと一緒に龍麻の手がパンツまで下げてしまった。




「龍麻! テメェ、マジでぶっ飛ばすぞ!」
「いいよ」




睨んで怒鳴る京一に、龍麻は平然と言ってのける。
出来るものならどうぞ、と。

拘束する腕が強くて、重力に下げていた腕をそのまま、躯ごと抱き締められて捕まっている今、手に持った木刀を震える状態ではない。
抵抗なんて出来ないのだ、早い話。
………心底悔しい。


だからと言って、このままではいられない。
玄関先で下半身を丸出しにしているなんて、変態じゃないか、冗談じゃないと胸中で叫ぶ。

どうにか背後の色情魔を離せないかと、身を捩ってみる。
が、その程度で背中の悪魔が応えない事など、悲しいかな百も承知であった。




くちゅり、秘孔に指が埋まる。




「ひッ……ん!」




上がり掛けた高い悲鳴を、どうにか堪えて飲み込んだ。
しかし指はそんな京一に構わず、先刻の情交の痕を残す其処を執拗に弄る。




「ん、ん……! う、……っは……テメ、龍麻……ッ」
「まだ緩いね」




当たり前だ。
京一があの肉棒から解放されたのは、まだほんの数十分前の話なのだから。


くちゅくちゅと水音が繰り返され、京一の吐息に艶が篭る。
落ち着いていた筈の躯の熱がぶり返し、脚ががくがくと震えていた。
処理できなかった蜜が再び零れ出して、床に水溜りを作っている。

龍麻を睨んでいた瞳の鋭い光も、次第に揺らいでいく。
少し前まで激しい熱に身を任せていた躯だ、再び押し流すのは容易い事。



震えながら、辛うじて声は噛み殺す京一に、龍麻は彼に見えない位置で昏い笑みを浮かべた。
そして先刻リビングから持ち出してきた“モノ”を、指を抜いた京一の秘部に宛がう。




「あ……あ、あぁあぁあッッッ!」




思わぬ圧迫感と異物感、そして激しい快感に、甘い悲鳴が上がる。
玄関先で。




「ん、んあッ……や、…あぁあ……!」




一度漏れた喘ぎ声が抑えられない。

体内に、埋め込まれていくモノがある。
それは太く、冷たい、人工的なモノだった。




「テメ、何…挿れてッ……」
「直ぐ判るよ」




そう言って、龍麻は小さなリモコンのようなものを掲げて見せた。

『OFF・弱・中・強』と書かれた調整スイッチ。
なんだか見覚えのあったソレに、浮かび上がった過去の記憶に、京一の顔が蒼くなる。



止めろ、と京一が言うよりも早く。
カチリと無常な音が響いて、





「んぁッ、あッあぁあああ──────ッッッ!」





ヴィィィィィ、と無機質な振動音が響く。
京一の体内から。



拘束の腕が離れて、京一は玄関のドアに倒れるように寄り掛かった。
そのまま脚が力を失くし、ズルズル座り込む。
臀部を、異物を咥えた秘部を露にして。

ビクビクと全身を痙攣させ、艶やかな呼吸をする京一の顔を、龍麻はしゃがんで覗き込む。




「駄目だよ、大きい声出したら。外に聞こえちゃうよ」
「ん、う、ふぅぅッ……!」
「そしたら、京一の恥ずかしい声、皆に聞かれるよ?」
「んんんん………!!」




そんな状況を作り出している張本人に、言ってやりたい文句は山ほど、殴ってやりたい回数計測不明。
なのだけれど、口を開けば出てくるのは喘ぎ声で、躯は力をなくして腕も持ち上げられない。

唇を噛んで快楽に耐え、ドアに向いた姿勢で寄り掛かっている相棒を、龍麻は反転させた。
膝を割って晒された股間は、熱に再び支配され、激しく振動する物体を咥え込んで離さない。


京一を今犯しているのは、太いバイブ。
龍麻の一物程ではないが、菊門に挿れるには太い方だと言って良い。




「可愛い、京一」
「んぅう……!」




嬉しくない。

可愛いなんて褒め言葉は、誰に言われたって嬉しくない。
龍麻はどうか知らないが、京一はそうだ。
そしてこんな時に言われても、もっともっと嬉しくない!


激しく振動するバイブを掴んで、龍麻はそれを出し入れし始める。




「んッ、うッうぅんッ! てめ、龍……んぁうぅぅぅぅッ!」




振動する先端が最奥を抉った。
びくん、と京一の躯が大きく仰け反る。


まだ少年らしい幼さを失い切らない筈の、躯。
それは、激しい快楽に染められ、支配されるようになった躯でもあった。

与えられる快楽を貪るように仕込まれて、無意識にも更なる愉悦に沈もうと、脚が大きく開かれる。



娼婦のように秘部を曝して誘う京一に、龍麻は数十分前の劣情が再び込みあがるも、なんとかそれを耐えて、




「今日一日、このままで過ごしてよ」
「な……んんッ! う、うぁ……ッ!」
「学校行って、そのまま過ごして、夜までずっと」
「じょうだ、あッ、じゃ……ね……ひぃ、んッ…!」





嫌だと。
絶対嫌だと。


当たり前に否定する京一を、龍麻は尚も攻め立てる。
抜き差ししていたバイブを深く穿ち、一番深い場所を狙って、ぐるぐると円を描くように動かす。
振動と同時に掻き混ぜられて、京一は声も上げられずに唇を開閉させる。

京一が応と言うまで、龍麻は京一を追い込んだ。
嫌だと言えば言うだけ抉り、仰け反り露になった喉に舌を這わし、薄手のシャツの上から乳首をグリグリと押し潰す。




「んッ、んあッ、あッ、あぁあッ…! やめ、龍麻…ひ、ぃ…!」
「じゃあコレ挿れてていい?」
「そ、それはッ……ひッうん!」




龍麻が欲しい答えは応だけ。
その支配に従わなければ、躯は快楽拷問から逃げられない。


学校、遅れる。
歯車がズレて妙に冷静になった頭が、そんな事を考えた。
いつもはまるで気にしない事を。

遅れるから、早く行かないと、だからいつまでもこうしてられない。
だったらどうすれば良いのかは──────




「い、い…いい、からッ……も、離せぇ……!」
「本当? 抜いたら駄目だよ」
「ひぃんッ! んぁ、判った、判ったってぇ…! んぁあ、あ、あぁッ」




駄目押しと同時に、勃起した京一のペニスの先端を龍麻の指が擦る。
吐き出すものがないから、余計に辛い。



早くこの辛さから逃れたくて、京一は夢中になって首を縦に振った。

そうしてようやくペニスから龍麻の手が離れ、リモコンがカチリと音を立てる。
それだけで、激しく振動していたバイブは静かになっていった。


快感地獄から開放された京一は、下肢を曝け出したままで呆然とした顔で天井を見上げた。
龍麻は、自失状態の京一の額にキスを落として、バイブをそのままにパンツとスラックスを上げなおす。
ベルトを締めてしまえば、何事もなかったかのように秘部は綺麗に隠された。




「行こう、京一。遅刻するよ」




言って、手を引いて立ち上がらせる龍麻に、誰の所為だと叫びたかったが、そんな気力は随分前に失われていた。















≫ 後編