迷い猫、二匹 4


 どろり、と熱いものが体内を犯して行く。
それを履き出した肉の塊は、幾らか膨張率を下げたものの、未だ固く反り返ってレオンの淫部を圧迫していた。


「あっ…ふ、ぁ……」


 意味を持たない声が吐息混じりに漏れて、レオンが意識を留めていられたのは其処まであった。
音が消えきらない内に、虚ろに天井を仰いでいた瞳が瞼の裏側と隠される。

 目を閉じて動かなくなった兄に、スコールは顔を寄せた。
汗や涙を何度舐めても、レオンはもう目を開ける様子はなく、返事もしない。
ひょっとして───と嫌な予感が過ぎったけれど、微かに呼吸の音が聞こえて、ほっと息を吐く。


「……なんだ、寝たのか?」


 呟いて、クラウドがレオンの顔を覗き込もうとする。
スコールはそんなクラウドから庇うように、兄の頭を抱え込んでクラウドを睨んだ。

 碧眼が青灰色を見返せば、びくっ、とスコールが怯えるように肩を竦ませたが、スコールは唇を噛んでクラウドを睨み続ける。
責める瞳が何を思って憤っているのか、判らない程クラウドも鈍くはないし、現状を見れば明らかなことだ。
それでも、クラウドは平然とした表情を崩さない。


「……っと…」
「…っ……」


 クラウドが腰を引くと、ずるり……とレオンの淫部からペニスが引き抜かれた。
ぴくん、と意識のないレオンの体が震える。
ローションと精液でどろどろになったグロテスクな塊と、蓋を失ったレオンのアナルから白濁液が溢れ出すのを見て、スコールが顔を引き攣らせた。


「さてと。次はお前だ、スコール」
「……な、」


 目を丸くするスコールに構わず、クラウドは鎖を引いた。
抱き締めていた兄から腕を放し、スコールはクラウドの足下に倒れる。


「ほら、咥えろ」
「…ぃや、だ!」
「やり方が判らないか?ちゃんと見てただろ。レオンと同じようにやればいい」
「嫌だ!近付けるな、そんなもの!」


 ペニスを寄せて来るクラウドに、スコールは顔を反らして逃げる。
しかし、鎖を引き上げられて息を詰められる。


「ちゃんとしろよ。捨てられたいのか?」
「…あんたなんかにっ…あんたなんかの世話になんか、なりたくない!レオンにもこんな酷い事して…あんたなんか、大嫌いだ!」


 尻尾を膨らませて威嚇するスコールに、クラウドは溜息を一つ。


「やっぱりレオンに比べると子供だな。なんでレオンが俺の言う事を大人しく聞いてたか、判ってないのか?」
「そんなの……判らない、判りたくないっ!」


 ───精神的にも肉体的にも、レオンに比べれば幼いスコールだったが、レオンに似たのか、頭は良い方だと言える。
だから、どうしてレオンが必死で男の言葉に従事していたのか、理由が全く分からない訳ではなかった。
けれど、それで男の所業を受け入れて自分達が、兄が凌辱される事を赦せるかと言われると、そうではない。
レオンがスコールを守ろうとしていたように、スコールもレオンが辛い思いや痛い思いをするのは見たくない。
彼を傷付ける人間は、スコールにとって“敵”なのだ。

 信頼していた、信用していた人間に裏切られて、レオンもスコールも酷く傷つけられた。
それをこの上、支配者気取りで好き勝手に扱われようなどと、スコールは受け入れられない。

 足を開き、あられもない姿で横たわる兄を横目に見て、スコールは唇を噛む。
あんなに辛い顔で耐える兄を見る位なら、外の世界を行く宛もなく逃げ続けている方が良い────スコールはそう思う。
けれど、その途方のない道の先に何も見えない事を、死しかない事をレオンは知っていて、そんな辛さから弟を救いたかったから、屈辱を飲み込む方を選んだのだ。


「……別に、お前がどうしても嫌なら、俺はそれでも構わないけど」
「………」
「その代わりに、続きはレオンにやって貰う」
「な、」


 クラウドの言葉に、スコールは蒼褪めた。


「これ以上、レオンに酷い事するな!」
「酷い事?違うな、これはちゃんと話して決めた事だ。聞いてただろ?俺がお前達を養ってやる代わりに、性欲処理の相手をしろって。それで、スコールは免除する代わりに、レオンが二人分働くって」


 確かに、そんな話をしていたけれど、それもスコールは納得していないのだ。
クラウドとレオンの二人だけで話は一方的に進められて、スコールは何がなんだか判らないまま、レオンがクラウドの性処理を行うのを見せつけられる事になった。


「でも、結局レオンは二人分働く前に気絶したからな。お前に続きをして貰おうと思ったんだが……お前がどうしても嫌がるんなら、レオンを起こして」
「待、て!」


 仕様がない、とレオンの鎖を引くクラウドを、スコールは震える声で止めた。
うん?と碧眼が此方を見下ろす。
スコールはぎゅ、と唇を噛んで、眠る兄を伺い見た。

 施設にいた頃から、レオンはスコールの為に無茶をしてばかりで、何度も繰り返した脱走に失敗した後の拷問実験も、全て兄が背負ってくれた。
スコールは自分の為に無理をする兄の姿など見たくなかったのに、兄はいつでも先回りして、スコールの代わりに傷付いて行く。

 これ以上、レオンに自分の所為で、自分の分まで、辛い思いをさせたくない。
スコールは顔を上げると、眼前に突き付けられていたペニスに息を飲んで、恐る恐る口を開けた。


「ん……ぐ、…」


 臭い、熱い、気持ち悪い。
吐き気を必死で堪えながら、スコールはペニスに舌を這わせた。


「先っちょだけで舐めたってどうしようもないだろ。レオンの真似しろって言っただろ?」
「う……ふ、むぅ……っ」


 すえたような匂いに顔を顰めながら、スコールは息を詰めて、男の股間に顔を近付ける。
スコールは、記憶に鮮やかに残っている兄の姿を思い出しながら、ペニスの裏筋を根本から舐め上げた。


「んぁ……っは、う……」


 そろそろと手も伸ばして、竿全体を包み、上下に手を動かして扱く。
ねとねととした粘液が手にまとわりついて来るのが気持ちが悪い。


「それで?レオンはどうしてた?」


 それで終わりじゃなかっただろう、と更なる行為を促すクラウドに、スコールは必死で記憶を探る。
思い出したくもない光景ばかりだったけれど、今はそれしか、頼るものがなかった。

 口を開けて、恐る恐る、膨らんだペニスの先端を口に含んだ。
小さな口をあっと言う間に一杯にするペニスは、咥内でドクドクと脈を打ち、それが生き物である事をまざまざと感じさせる。


「それで?」


 更に先を促されたが、スコールに出来たのは其処までだった。
これ以上はレオンがどうしていたのかも明確に思い出せなかったし、頭が揺れていたような気がする、程度にしか見えていなかった。
フェラチオをどんな風にしていたのか、これが何の意味があるのかも、スコールには判らなかったのだ。

 スコールは口一杯に性器を含んだまま、じっと耐えるしか出来なくなっていた。
戸惑うように上目に伺うスコールを見て、クラウドは溜息を吐く。


「歯、立てるなよ」
「……?」


 クラウドの両手がスコールの頭を掴み、固定する。
何、とスコールが眉根を寄せたのに構わず、クラウドは腰を振り始めた。


「うっ、ぐっ、ふぐっ!…んぉっ、んっ、ふおっ!?」


 口の中をペニスが激しく出入りし、喉や上壁を擦られる。
息すら忘れる程の激しさで咥内を犯される感覚に、スコールは苦しさと靴上で涙を滲ませた。


「んぐっ、うっ、うぉっ、ふっ!む、う、うぅ、うっ」


 生理的な嫌悪感も相俟って、溢れ出した涙を止められなかった。


「泣きながらフェラさせるのもいいな……いや、この場合はイマラか。ま、どっちでも良いか」
「んぅっ、んぐぅっ!ふ、ぶ、んぶっんっ!」
「っ……こら、動くな。牙が当たるだろ」
「────ふーっ!!」


 押し付けられる行為の屈辱と息苦しさに耐え切れず、スコールは口を閉じて、咥内を暴れる肉棒に歯を立てた。
クラウドの表情が苦悶に歪み、髪を力任せに引っ張られて引き離された。

 清純な空気を取り戻そうとするように、スコールはその場にうずくまって激しく咳き込む。


「えほっ、げほっ、おえっ…!う、きもち、わる……げほっげほっ、」
「つ……この、」
「!」


 ぐっともう一度髪を引っ張られて、無理やり頭を上げさせられた。
顎を捉えられて、目を逸らされないように固定される。


「歯、立てるなって言っただろ?」
「…気持ち、悪いっ……!」
「その内慣れる。お前の兄貴だってそうだったんだろうし、最初だけだ。直ぐに自分で咥えるようにしてやるよ」
「そんなの、ならない…!」
「どうだかな」


 明らかに見下した目をする碧を、スコールはじろりと睨み返した。
クラウドの手がスコールの肩を突き飛ばし、床に背中から倒れ込んだと思ったら、力任せに体を反転させられた。

 四つ這いの格好にされて、スコールが肩越しに後ろを見ると、自身の指を舌で舐める男の顔が見えた。
その表情が酷く恐ろしいものに見えて、スコールは息を飲んで、本能的に逃げようと手足を暴れさせる。
じたばたと幼稚な抵抗を始めたスコールに、クラウドは面倒だな、と小さく呟いて、スコールの尻尾を強く握り潰した。


「ひぎゃんっ!!」
「悪戯ばかりする動物には、これが効くらしいな」
「い、ひっ…痛いっ!や、引っ張るな……!」


 尻尾を持ち上げるように引っ張られて、自重が尻尾の付け根にかかる。
動物とってさまざまな役目を持つ尾は、とても敏感に出来ていて、握られただけでもスコールにとって耐えられるものではなかった。
それをこうまで乱暴に扱われては堪らない。


「い、たい、痛いぃっ……!」
「大人しくしてれば、痛い事はしない。判ったか?」
「ふ、う……わ、かった…ぅ……っ」


 スコールが頷いて、ようやく尻尾から手が離れた。
しゅる、と尻尾が股の下をくぐるのを見て、くすくすとクラウドが哂う。


「尻尾巻くのは、降参って事で良いんだな?」


 スコールは何も答えなかった。
腸は煮えくり返っている気分だったが、言えばきっとまた痛い目に遭わされる。
それだけなら良い、ひょっとしたらレオンもまた酷い事をされるかも知れない。
結局、スコールに反抗する事は出来ないのだ。

 四つ這いになったスコールの臀部に、クラウドの凹凸のある手が這う。
尻尾の付け根を指で突かれて、ぴくん、とスコールの腰が震えた。


「尻尾も性感帯か?」
「し、知らないっ……」
「ま、試すのは後でいいか」


 先ずはこっち────と、クラウドの指がスコールのアナルに触れる。
唾液を絡めて濡れた指が、つぷん、と秘口を押し広げて侵入した。


「ひっ……!」
「ちゃんと息をしてろ。そうすれば痛くならない。レオンもそうしてたぞ」
「う、ふ…ふぁっ……ふぅっ…」


 兄の名を聞いて、スコールはそれに促されるように、深い呼吸を繰り返すように努めた。
異物感と嫌悪感で、喉元まで吐き気が来ているが、呼吸している内にそれも少しずつ和らいでいくような気がする。

 スコールの呼吸に合わせ、クラウドはゆっくりと指を埋めて行った。
第二関節まで挿入が終わると、第一関節を曲げて内壁を擦る。


「ひんっ!」


 ビクン!とスコールの体が跳ねて、膝ががくがくと震える。


「ほら、ちゃんと息をして」
「……っは…あ……ふ、ふぅっ…ん……!」


 スコールが深呼吸する度に、穴口がヒクヒクと震えて伸縮する。
指は内部でぐるぐると円を描くように動き、窄まろうとする壁の抵抗を押し返そうとする。


「い、たい……痛い、ぃ……っ」


 フローリングの床に齧りつくように縋り、痛みを訴えて涙をこぼすスコールに、クラウドは小さく笑みを浮かべると、二本目の指をやや強引に突き入れた。
増した圧迫感に悲鳴が上がるが、クラウドは構わずに指を左右に開き、穴口を拡げる。


「い、ぅ…あ……ひっ、や、冷たい…!」


 ぬる……と冷たいものが穴口に宛がわれた。
拡げられた穴口にそれが注ぎ込まれて行くと、肉壁の熱さの分だけ、注がれるそれの温度にスコールは身を震わせる。


「さっき見てただろ?ローションだ。これで滑るようになる。痛いのは嫌だろ?」
「や、ぅ…や……」


 痛いのも苦しいのも、嫌いだ。
けれど、この“ローション”が塗られた後に、兄が何をされたのかと思うと、体内への異物感はそっくりそのまま恐怖心へと変わる。

 アナルに埋められた指が動き出し、注がれたローションを内壁全体に馴染ませるように塗りつける。
あらぬ場所を強引に拡げられ、ぬるぬるとしたものが纏わりついて来る感触に、スコールは顔を顰めた。


「また息が詰まってるぞ」
「……ぅ…っは、はぁっ……んぁ…!」


 息を止めたら痛い、苦しい。
呼吸さえしていれば、少しは楽になる。

 そう覚えたから、スコールはクラウドが言うままに、呼吸を止めないように努力しようとしていた。
それは結果的に、体内への侵入者を受け入れようとしているのと同義であったが、性知識など殆どないに等しいスコールが、その事に気付く事はなく。


「う、ぁっ…あ、ひ…はぁっ……!んぁ、あ…は……っ」


 ぐちゅ、ぐちゅ、と壁を掻き回される度、溜まったローションが嫌な音を立てる。
溢れ出した液体が臀部の溝を辿り、スコールのペニスに絡み付いててらてらと光っていた。
それを見たクラウドは、スコールのアナルに埋めた指をじゅぽっじゅぽっと抜き差ししながら、スコールに問う。


「お前、オナニーは?」
「ふぁっ、あっ…は、あ…?お、な…?」
「さっき、レオンが自分でちんこ触ってただろ」
「んぁっ、あっ、あっ…!は、ない…知ら、ない…あっ、」


 指が奥へと突き入れられる度、スコールの体がぴくっぴくっと跳ねて、艶を含んだ声が漏れる。


「本当に何も知らない訳だ」


 呟いてたクラウドの口元が、笑みの形に歪む。
床に縋り付くスコールがそれを見る事はない。


「ふ、う…あっ、あっ…んん…!」
「やってみろ。オナニー」
「知、らない、知らないっ……!」
「レオンの真似をすればいい」


 白濁としつつある意識の中で、スコールは先のレオンの行動を思い出す。
クラウドに見せるように足を広げて、ペニスを手で包むように隠して、手を上下に動かしていた。
スコールは四つ這いの格好のままで、右手を下肢へと伸ばし、重力に従って垂れている自身のペニスに触れた。
ぴくん、と体と一緒にペニスが小さく跳ねる。

 ぐち、くち、と後ろで音が鳴るのを聞きながら、スコールはペニス痛くない程度に握って、上下に扱き始める。
すると、アナルからの圧迫感や異物感よりも、前部からの刺激に意識が持って行かれる。


「う、んっ…あ、ふ……何、これ…んっ、」
「どうだ?気持ち良いだろ?」
「わ、から、な……」
「裏の、凹んでる所あるだろう。指当てて擦ってみろ」
「はっ、ひ、うぅんっ…!」


 言われるままにペニスの裏筋に指を当てて扱き続けると、ぞくぞくとしたものが下肢から湧き上がってくるのが判った。
正体不明の感覚がおぞましくなって手を放すと、ぐちゅっ!とアナルの奥へと指が突き入れられる。


「ひぅっ!」
「続けた方が痛くないぞ?」
「う…うぅ……ん、ん…っ!」


 放した手をもう一度ペニスに添えて、スコールは自慰を再開させる。

 それを見て、クラウドはゆっくりとスコールの内部を指の腹でなぞり始める。
突きいれた時の痛みを慰めるように肉壁を撫でてやれば、ピクッピクッとスコールの背中が跳ね、ぞくぞくと上ってくる感覚にもどかしそうに腰が揺れた。


「お前の方が素直だな」
「んっ、あっ、…は、ふぁ……あ、ん…あ…っ」
「知らないからって言うのもあるんだろうな。お前は仕込むのも楽そうだ」
「あ、うっ、は…は、んっ…あっ、ひ、ふ……あうぅんっ!」
「と……此処か」


 クラウドの指が肉壁の膨らんだ部分を押して、スコールの体が魚のようにビクビクッと跳ね上がる。
体を電流のように駆け抜けた異常な感覚に、スコールは体を戦慄かせた。


「な、は……ひっ…」
「前立腺だ。さっき、レオンも気持ち良さそうにしてただろう。あれは此処を弄ってやってたんだ」


 言って、クラウドの指がぐりぐりと肉壁のしこりを刺激する。


「ああっあっあっ!や、ひ…!い、嫌、やああっ!」


 頭を振って逃げを打つスコールだったが、同じ場所を刺激される度に、下半身から力が抜ける程の快感に襲われる。


「や、んぁ、あっあ…!は…うぅんっ!」
「オナニー止めて良いって言ってないぞ」
「だ…てぇ!む、り…!ひっ、あっ、ふぁっ!ああっ、あああっ!」


 がくがくとスコールの膝が震え、今にも頽れそうになっている。
自慰など続けていられるような余裕はなく、ただ下肢から急激な速度で昇ってくる、堪えようのない熱の奔流に振り回されるしかなかった。

 ビクン、ビクン、とスコールの体が大きく跳ねるのを見て、クラウドはアナルから指を引き抜いた。
ずりゅりゅっ…!とわざと指を引っ掛けて肉壁を擦りながら抜けば、壁を、口穴を擦られる感覚に、スコールが体を震わせて甘い悲鳴を上げる。

 暴れる熱を残される形となったスコールは、がくがくと下肢を震わせながら、床に這い蹲っていた。
喘いで開きっぱなしになった口からは唾液が零れ、フローリングに沁みを作って汚している。


「さて……本番は此処からだ」
「ふ……や、あ……」


 ぐ、と異物から解放されたばかりのアナルに、堅く太いものが宛がわれる。
スコールは弱々しく首を振って助けを乞うが、背後の男は薄暗い笑みを浮かべるばかりで、スコールの訴えなど聞き入れてはくれない。
いつも助けてくれていた兄は、未だ意識を取り戻していなかった。

 クラウドの腰が押し付けられ、ぬぶ……と太い熱の塊がスコールのアナルへと埋められていく。
それはローションの滑りを借りて奥へ奥へと進んで行った。


「や、あ…やぁあああああ……!!」


 びくっ、ひくっ、と己の内側が拡げられ、暴かれていく感覚に、スコールは背を仰け反らせて喘ぐ。
ぐいっ、と鎖を引っ張られて無理やり上体を起こされると、スコールは膝立ちの格好で後ろからずんずんと淫部を深くまで抉られる。


「うっ、うっ、んっ、んんっ、」
「痛いか?」
「い、たい…痛いっ…!」
「息詰めるからだ。レオンもそうだっただろ?ほら、ちゃんと息してみろ」
「ふっ…く、んぐ、んっ…うっ、う……!」


 後ろから顎を捉えられ、口の中に親指が差し込まれ、強制的に口を開かされた。
逆らわずにされるがまま、ただ呼吸をする事に終始していると、少しずつスコールの体の強張りも解けて、下部からの痛みも緩和を始めた。

 言われるがままに男を受け入れようとするスコールに、クラウドは満足げな笑みを浮かべていた。
知識があるが故に、行為の意味や自分が奉仕する事に抵抗感に苛まれ、それを飲み込みながら従順に従うレオンも、クラウドにはかなり気に入るものだった。
強気な青灰色がどんな風に挫けて行くのか、どうすれば涙に濡れるのかと思うと、興奮が止められない。
しかし、そんなレオンとは別に、無知故に支配者の言葉に従おうとするスコールも、クラウドは気に入っていた。

 痛みと恐怖で萎えていたスコールのペニスをクラウドの手が包み、激しく扱いて刺激を与える。
裏筋を擦り、先端の穴口を指の腹でぐりぐりと押し潰してやると、スコールはあられもない声を上げて悶え始めた。


「ひっはっ、やっ、ああっ!んぁ…んっ、あっ、…ふぁ、ああ…!」


 自分で触れていた時とは全く違う。
無理もないだろう、スコールはただレオンの行為を意味も判らないままに真似ていだだけなのだ。
性感帯を狙って刺激する事など出来ないし、自慰行為の先に伴うものも、その前兆も知らない。

 クラウドは、スコールのペニスに手淫を施してやりながら、アナルに埋めた肉棒でスコールの中をぐちゅぐちゅと掻き回してやった。
びくん、びくん、とスコールの体は正直な反応を返し、前部への刺激で高められた熱が放出口を求めて暴れ回る感覚に打ち震え、スコールの思考回路を溶かして行く。


「んぁっ、あっ、ふ…あっ、ひっ……いっ、あう、あっ」
「ちんこ擦られるの、気持ち良いだろ?」
「あっ、あうっ、んっ…んんっ、ふ…く、ぁんっ!」


 ぐちゅっ、と埋められたペニスが、スコールの前立腺を捉える。
甲高い声が上がったのを聞いて、クラウドは笑みを深め、集中して同じ場所を激しく突き上げはじめた。


「あっ、ひっ、ひぃうっ!や、は、あっあっ!んぁ、あっ、やだ、やだ、あっ、」
「何が嫌なんだ?」
「あっ、そこっ、や!頭、ヘン、にっ、なるっ…!」


 頭の中が明滅する感覚に、スコールは頭を振って逃げようとするが、腰を捉まえられて叶わない。
前部への手淫も変わらず続けられている。

 スコールのペニスは完全に勃起し、腹に当たりそうな程に反り返っている。
包皮を被ったままのそれを見て、クラウドは可愛いもんだな、と囁いて、スコールの首筋に舌を這わせた。
それだけでスコールは喘ぎ声をあげ、アナルに埋められたペニスを強く締め付ける。


「や、あ、あぁ……っ!」
「そろそろイくか?イった事は……ないよな」


 判るか?と囁かれて、スコールはゆるゆると首を横に振った。
くく、とクラウドが哂う気配がする。


「じゃあ、これがは精通になる訳だ。良かったな、大人になるんだぞ」
「ふぁ…は、あっ、あっ、ひっ、ひんっ!や、あ、あう、あ、」


 ペニスを扱くクラウドの手が速度を増し、アナルを突き上げる律動もペースを上げる。
ぐちゅっ、ずぷっにゅぷっ、と淫猥な音が薄暗い部屋の中で響く。


「あ、あ、…は、へん、なんか、あっ…へん、に、なるぅ…っ」
「ああ。別に怖がるものじゃない。気持ち良いとなるものなんだ」
「はっ、ふ、う…れ、おん、も……」
「レオンもイったの見ただろ?」
「イ…った…?あっ、んっ、」
「ちんこから白いの、出てただろ。ほら、お前も出て来てる」
「ふ、ん…あっ、んん…!」


 スコールが己の下肢に視線を落とすと、クラウドの言葉通り、ペニスの先端からとろりとしたものが溢れ出している。


「精液って言うんだがな。ほら、言ってみろ」
「せ、えき……?」
「そうだ。精液が出るのは、気持ち良いから出るんだ。普通の事だからな、怖がらなくて良い」


 クラウドの囁きを受け止めるスコールの瞳は、熱に浮かされたように茫洋としており、思考能力などは蕩け切っている。
怖がらなくて良い、受け入れればいい───そんな事を囁かれて、ぞくぞくと背を昇ってくる正体不明の感覚への恐怖心が薄れていく。
普通のこと、自然なこと、レオンも同じだったから。
それが甘言になって、スコールは湧き上がってくる高揚感に身を委ねるように、天井を仰いで全身をふるふると戦慄かせ、


「ひっ、は、あ……んぁっ、あっ、ふ、あ…あ、あ…!」
「ほら、俺もイくぞ?俺のは、お前の中に出してやるから、お前は俺の手の中に出せばいい。このまま、な」
「う、ぁう、……あんっ、はっあっ…!あ…、ひっ、ひんっ、あん…っ、あっ、あっ、」
「出る時は、イくって言うんだ。いいな?」
「ん、…うん、あっ、…んんっ!は、あん、あっ、あっ、」


 ずぷっ、ずりゅっ、ずちゅっ!とアナルを激しく突き上げられながら、ペニスの先端をぐりぐりと爪で抉られる。
スコールはビクン、ビクン、と体を痙攣させると、


「はっあ…っ、出る、イく、イくっ…!せーえき、イくぅっ!!」


 言われた通りの言葉を反芻させるように繰り返し、がくがくと全身を大きく震わせながら、生まれて初めての絶頂を迎える。
体の内側から熱いものが全て吐き出されていくような、開放感にも似た感覚に、スコールは頭の中が真っ白に染められていくのを感じていた。