湯けむり温泉獅子の受難 4


 一日何もせずにゴロゴロと過ごすのは、どうにも落ち着かない。
のんびりとする為に計画した温泉旅行であるが、だからと言って、家に帰るまでの数日をのんべんだらりと過ごすのは、レオンの性には合わなかった。
スコールの方は、暇な時は課題かカードゲーム、それが終われば温泉に入り、後はテレビを見て過ごすと言う、静かな時間で十分満足しているらしいが。

 朝食後、散歩に出ていたクラウドは、昼食前に帰って来、食事を終えるとまたいそいそと何処かへ出て行ってしまった。
彼がいるとセクハラ行動が絶えないので、不在の方が平和なので、レオンは其方の方は特別気には留めなかった。
暇を持て余して温泉に入ろうと思う度、彼の覗きを警戒してしまうと言う気苦労は続いたけれど。

 悠々とした時間が過ぎ、空が茜色になってきた頃、部屋に夕餉が運ばれてきた。
並べられる豪華な食事に、スコールも腹が減っていたのだろう、いそいそと広げていた課題を片付ける。
二度の散歩から帰って来た後、温泉に入っていたクラウドも湯から上がり、座布団に座る。

 一通りの食事を並べ、料理の説明も終わった所で、レオンは退室しようとする仲居を呼び止めた。


「すみません。近くに、何か……観光に行けるような所はありませんか?」
「観光ですか?そうですねぇ、見ての通り、温泉以外は何もない所ですからねぇ」


 レオンの問いに、仲居は困ったように眉尻を下げて笑う。


「民芸品を扱っている所でしたら、幾つかあるのですけど。人形作りの体験が出来る所もありますが」
「人形作りですか。それ、作った人形は持って帰れますか?」
「ええ。ご興味が?」
「少し。他には……食べ物とか、何かありませんか?」
「それでしたら、蜂蜜が美味しいですよ。養蜂場が近くに多いんです。取れたての蜂蜜を使った料理を扱う喫茶店もあります」
「蜂蜜……」


 レオンもスコールも、甘いものは苦手な方だが、エルオーネは女の子らしく甘いものが大好きだ。
新鮮なハニートーストも好きだし、美味しい蜂蜜を土産にすれば、きっと喜んでくれるだろう。


「後で、詳しい住所を教えて貰えますか?」
「はい。それでは、また後程……」
「どうも。ありがとうございました」


 頭を下げて退室する仲居に、レオンも会釈を返す。

 妹と一緒に、両手を合わせて食事前の挨拶。
クラウドは既に食事を初めており、魚のアラの甘露煮を掻き込んでいる。

 スコールは、豆腐に箸を通しながら、レオンに尋ねた。


「レオン、明日何処か行くのか?」
「ああ。折角の遠出なんだから、軽く見回る位はしないとな。土産物も…フロントにもあったが、街の土産屋ならもっと色々ありそうだし」
「………」


 口に入れた豆腐は、軽く解けるように溶けて行く。
ほんのりとした甘味を感じつつ、沈黙していたスコールを見て、レオンが言った。


「一緒に行くか?」
「……いいのか」
「家族旅行に来て、一人でぶらつくのも難だしな」
「俺も行くぞ」


 顔面につく程に勢いよく白飯を掻き込んでいたクラウドが、茶碗を下ろして言った。
レオンは判り易く顔を顰めていたが、


「5メートル離れて歩け。それなら良い」
「……まぁいいか、それ位なら」


 些か不満そうな表情を見せたものの、クラウドはレオンの言葉に頷いて、また食事を再開させた。




 今日一日だけで何度も温泉に入ったレオンとスコールだが、夕食後、もう一度入浴した。
ふやけそうだな、と言ったレオンにスコールが頷いたが、たまの温泉旅行なのだから良いだろう、と思う事にした。

 風呂から上がり、部屋に戻った二人を出迎えたのは、一升瓶数本と猪口。
夕食後は綺麗になっていた筈の座卓の上に、江戸文字の綴りの入ったラベルを貼った瓶が、どんと鎮座していたのである。


「おい、クラウド。これは?」


 壁に寄り掛かって携帯ゲームに勤しんでいた男に声をかけると、クラウドは耳に嵌めていたイヤホンを外して、顔を上げた。


「今日、街に行った時に買ってきた」
「…散歩で随分遠出したんだな」
「ああ。それで、造り酒屋を見付けて味見させて貰ったら、結構良い味だったんだ。折角だからレオンにも飲ませてやろうと思って」
「ふむ……」


 レオンが座布団に腰を下ろし、スコールもその隣に座る。
瓶の蓋はまだ空いていなかった。
並べてあった栓抜きで封を開け、猪口へと傾けると、こぽこぽと透明な液体が注ぎ込まれる。

 レオンは目を閉じて香りを堪能した後、舌触りを確かめるように、ほんの少しだけ口に含ませる。
柔らかな口当たりと、ほんのりとした甘味は、確かに美味であった。


「成程、いい酒だな」
「だろう。だから今日は酒盛りだ」


 クラウドはゲームのスイッチを切って、いそいそと卓に身を寄せた。
いつもほとんど表情を変えないクラウドだが、今だけは誰が見ても判る程に楽しそうだ。

 そんな傍ら、眉根を寄せている少女が一人。


「………」
「スコールは駄目だな。まだ未成年だから」


 一人、酒を飲める年齢に達していないスコールは、自分だけが仲間外れにされた気分になったのだろう。
眉根を寄せて睨んでくる妹に、こればっかりはとレオンは眉尻を下げて苦笑いを浮かべた。


「仕方がないだろう?」
「……いいだろ、ちょっとぐらい。他に誰もいないし」
「駄目だ。いい子だから、な?」


 くしゃくしゃと頭を撫でて宥める姉に、スコールは益々不満そうに唇を尖らせる。
スコールとて、どうしても今酒を飲んでみたいと言う訳ではないし、法で定められている事を率先して破りたがるほど不良娘ではない。
寧ろ、決められた事は守るべきと、姉に似て生真面目な所もある(頭に血が上ると、そうでもないが)。
今はただ、姉と連れの男の酒盛りに交じっていたいだけなのだろう。

 拗ねた顔で睨むスコールを、レオンが抱き寄せる。
ぽんぽんと子供をあやすように背中を撫でられて、スコールは表情こそ崩さないものの、大人しくそれに甘えていた。

 そんなスコールに、クラウドがグラスと透明な水の入ったペットボトルを差し出した。


「酒は流石に飲ませれないが、炭酸水ならある」
「………」
「此処らの山水から汲んできた水で作られたんだそうだ。サイダーなんかに比べてちょっと苦いけど、美味かったぞ」


 スコールは、クラウドの手からグラスとペットボトルを受け取ると、試しに、とグラスに半分程度注ぎ入れた。
く、と喉を通してみると、ぱちぱちと気泡の弾ける感覚。
キンキンに冷やされていた事もあって、スコールは喉奥の刺激に驚いたように身を縮めた。


「大丈夫か?」
「……ん。飲める」
「じゃあスコールはそれで。ほら、レオン」
「ああ」


 クラウドが酒瓶を傾け、レオンが猪口で受ける。
なみなみと注がれた透明な水を飲み干して、今度はレオンがクラウドの杯に注ぐ。
クラウドは一息にそれを飲み、はふ、と一つ息を吐いた。


「ああ、ツマミもあるんだ。酒饅頭」
「ツマミで食べるようなものでもない気がするが……まぁいいか」
「そうそう。細かいことは気にするな」


 荷物置き場にまとめられていた紙袋を開いて、クラウドは箱に入った饅頭を取り出した。
蓋を開けると真っ白な皮の饅頭が並んでおり、レオンは早速一つ手に取って口に運んだ。

 ほんのりと酒の匂いを漂わせる皮と、その皮に包み込まれていた漉し餡。
甘いものは得意ではないレオンだが、これなら食べられそうだ、と二口目。
それを見たスコールも、箱に手を伸ばし、一番端の隅に収まっていた饅頭を手元に寄せた。


「酒饅頭って……酒、入ってるのか?これも食べたら駄目なのか?」
「まぁ……確かに、酒粕を使ってるから、酒も入ってるな。物によってはそこそこのアルコール度数が検知されるらしいが……」
「お子さんにもどーぞって言われたから、大丈夫だと思うぞ」


 もごもごと饅頭を粗食しながら言ったクラウドに、「子供じゃない…」とスコールが呟く。
が、食べて良いと言われたのは嬉しかったようで、それ以上は何も言わず、包装を取ってぱくりと齧り付いた。


「匂い、凄いな」
「それで気分が悪くなるなら、止めておけよ」
「……平気だ。……多分」


 ────レオンは、あまり酒に対して耐性がない。
父親からしてアルコールには弱いので、これは遺伝的な体質なのだろう。
だから、酒を飲む時は必ず自分の許容範囲内で収まるように、ハメを外さないようにすると言う癖をつけている。
それでも時々、飲み会の途中で眠ってしまったり、記憶を失っていたりする事がある。
父程に調子に乗ったり、昏倒したりと言う事態には未だ起こしていないものの、時間の問題ではないかと囁かれていたりもする。

 そんな姉と父を持つのだから、スコールもやはり酒に弱いのではないかと考えられるのも、無理はない。
レオンが彼女に進んで酒を飲ませる事は滅多にないが、例えば正月の屠蘇だとか、甘酒だとかをほんの少し舐めさせただけでも、スコールは顔を真っ赤にしてしまうと言う経歴がある。
これでアルコール度数の高い酒を飲んだら、どうなってしまうか、レオンは今から心配で仕方がない。

 しかし、当のスコールはと言うと、控えめの甘味の饅頭が気に入ったのか、もくもくと食べている。
まだ顔が赤らんでいる様子もないし、そもそも子供でも食べられるように作られていたと言うし、今回ばかりはレオンの心配性が過ぎたのかも知れない。


(顔が赤くなって来たら、寝かせればいいか)


 隣で炭酸水と一緒に饅頭を食べる妹の様子をちらちらと確かめつつ、レオンは猪口に口を付けた。




 レオンが酒に強くない事を、クラウドはよくよく知っていた。
飲み会に誘われれば行くが、そうした機会でもなければ、自ら酒を口にする事はない。
飲むのもあまり度数の高くないものが殆どで、ハメを外す事もなく、出来るだけ自分のペースを守って飲もうとしている。

 が、やはり時々、酔っ払ってしまう姿が見られる事もあった。

 酔っ払いの在り様は人それぞれであるが、レオンは非常に性質が悪い、とクラウドは思っている。
酒乱だとか絡み酒だとか、泣き上戸とか笑い上戸とか、そういう表面化し易い性質の悪さではない。
問題なのは、常に凛としている面立ちから険が抜け、柔らかさや艶やかさが醸し出されてしまうと言う点だ。

 レオンは、会社の男性社員の中で、1、2位を争う程の人気を誇っている。
化粧など必要ない程の美人で、プロポーションも良く、特に大きな胸は世の男達にとって至宝と言って良い。
無論、彼女の魅力は外見だけではない。
姉御肌で面倒見が良く、気の付く性格で、上司への気配りに余念がなく、部下への指導・フォローも完璧。
確り者である筈なのに、ふとした瞬間に見せる天然な一面も、良い意味のギャップとして知られている。
そんなレオンに惚れている男は、一人や二人ではないのである。
しかし、多くの社員にとってレオンは高根の花である為、元々大学の後輩であったクラウドやザックス、彼女の入社当時に面倒を見たセフィロス以外の男は、話しかける事も気後れする程であった。

 しかし、それが飲みの席となると容易く崩れてしまう。
意思の強い眦が和らいで、心なしか潤んでいるようにも見え、アルコールの所為でほんのりと頬が赤らむ。
眠くなる事も少なくないので、座敷などでは、盛り上がっている傍らで横になって休んでいる事もある。
「大丈夫か」と声をかければ「大丈夫」と答えるが、その時の表情と言ったら。
潤んだ青灰色に見詰められた男は、漏れなくその眼差しに心を射止められ、淡く色付いた濡れた唇の虜になり、寝苦しさから時折零れる息遣いに興奮し……何より、アルコールの所為で彼女が無防備な姿を晒すのがいけない。
それでいて、まるで襲って下さいと言わんばかりに、誘うかのような色香を匂わせる表情を浮かべる事さえあるのだ。

 クラウドは常々、飲み会での彼女の無防備さの危険性について説いているのだが、自覚のない彼女の態度はいまいち改善しない。
自分の魅力に鈍い事は、妹と共通し、それも魅力の一つと言えなくもないのだが、クラウドとて独占欲はある。
レオンもスコールもクラウドの恋人なのだから、その恋人に他の男が近寄ってくるのは、我慢できるものではない(恋人が二人と言う時点で独占欲云々が言える立場ではないのだが、そんな事は彼の頭ではどうでも良い事であった。彼が姉妹2人を愛しているのは、確かな事実であるのだから。傍から見て、どう考えても可笑しい“お付き合い”の形であるとしても!)。

 ────しかし、今この時ばかりは、彼女の酒の席での無防備さに喜んだ。
いや、寧ろその無防備さあってこその、この光景。


「ん……」
「どうした?」
「……いや、……ちょっと、暑い気がして」


 もぞもぞと浴衣の襟元をもどかしそうに引っ張るレオン。
アルコールが回って、血行が良くなって来たのだろう。

 レオンは浴衣の前を緩めて、正座していた足を崩し、袷を広げる。
机を挟んでいるクラウドからは、じっとりと汗を滲ませた胸の谷間が見えていた。
机の下から覗けば、きっと太腿やその奥も見えたのだろうが、この状況で机の下を見るのは露骨すぎる。
焦るな焦るな、と自分に言い聞かせながら、クラウドは空になっていたレオンの猪口に酒を注いだ。


「おい……」


 じろ、とレオンがクラウドを睨む。
そろそろ自分の許容量を越えつつある事を自覚しているのだろう。
しかし、クラウドは気にしなかった。


「いつもみたいに、明日に差し支えるからとかなんとか、気にしなくて良いんだぞ。たまには本気で潰れるまで飲んでみろ」
「そんな事出来るか。スコールだっているのに……」


 妹にみっともない姿は見せられない、と言うレオン。
けれども、体の火照りはどうにも我慢ならないらしく、


「……っは……」


 零れた吐息に、艶が篭っている。
もぞもぞと小さく身動ぎして落ち着かない様子のレオンに、クラウドは緩みかけた口に猪口を持って行って誤魔化した。


「明日は街に行くんだぞ……」
「朝から出る訳じゃないだろ」
「そうだけど…」
「瓶の方もあと少しでなくなるし。これ位付き合ってくれても良いだろ?」
「………」


 生来、気が強そうで、押しに弱い所があるレオンだ。
アルコールが浸透して、上手く頭が回らない所為もあるのだろう。
相次いでくるクラウドの言葉に、レオンは何も言えなくなった。

 そのまま、一分少々の沈黙があった。
考え込んでいるだけにしては長いなと思って、クラウドが改めてレオンを見ると、青灰色がぼんやりとしている。


「レオン」
「ん……あぁ、悪い……なんか、…暑くて」


 会話が成り立っていない事に、レオンは気付いていないようだった。
先程緩めたばかりだった浴衣の袷をまた引っ張った所為で、浴衣は弛み、胸元が大きく開かれてしまっている。

 そんなレオンに、ぽすん、と寄り掛かる少女。
姉と男の酒盛りが始まって間もなく、会話に加わらず、もくもくと酒饅頭を食べていたスコールであった。


「……あつい……」


 姉と同じ言葉を、舌足らずに呟いたスコール。
此方は浴衣を崩してはいなかったが、お陰で余計に熱が篭っているらしく、零れる吐息も心なしか熱を帯びているように見えた。


「レオン、あつい……」
「お前……酒饅頭、食べ過ぎだろう。酔ってるだろ…」


 レオンの言葉に、スコールはふるふると首を横に振る。
しかし、スコールの白い頬はすっかり赤らんでおり、青灰色の瞳も、レオンと同じように潤んでしまっている。
姉妹揃って同じような顔をしていると言う事は、レオンも相当アルコールが回って来ていると考えて良いだろう。

 クラウドは猪口の酒を飲み干して、座布団から腰を上げた。
足下はしっかりとしており、頭もクリアだ。


「二人とも、大分酔ってるみたいだな」
「……ん…いや、暑い、だけ、だから……」
「そうか。じゃあ、スコールも?」
「…ん……あつい、……」


 スコールもレオンと同じように、浴衣の前を緩めようとするが、レオンが確りと着付けをしたからだろう、締められた帯が邪魔をする。
もどかしそうに浴衣の襟を引っ張るスコールに、クラウドは小さく笑みを漏らし、密着し合っている姉妹の傍らに膝を折った。


「ほら、二人ともしっかりしろ」
「ん……っ」
「う……」


 背中から二人を支えるように両腕に抱えてやると、レオンもスコールも、クラウドに体重を預けて来た。


「浴衣、緩めれば少しは涼しくなるだろ?」
「……まだ、暑い……」
「じゃあレオンはもっと脱げばいい」
「これ以上、は…無理だろ……」


 確かに、レオンの浴衣はもう十分に緩められている。
帯は解けかけ、袷を縫い止める力もない為、レオンが身動ぎすればするだけ、皺を作って彼女の肩からずり落ちて行く。
これ以上脱げと言われたら、もう裸になるしかない。


「スコールはどうだ?」
「……脱げない……」


 クラウドが思った通り、スコールの浴衣はレオンの着付けのお陰で、帯までしっかりと固定されている。
それは良い事なのだが、今のスコールにとっては窮屈なだけだ。


「じゃあ二人とも、俺が脱がせてやる」
「………は……?」


 何を言っているんだ、と頭の回らないレオンが首を傾げたが、クラウドは答えなかった。
緩んでいるレオンの浴衣の襟元と、スコールの浴衣の袖から手を入れる。
しっとりと汗を滲ませたレオンの乳房の下を撫でると、ぴくん、とレオンの体が震えた。


「んっ……!」
「汗ばんでるな。拭かないと汗疹になるぞ」
「う、んん……」


 乳房を救うように持ち上げてやると、重みの支えを得てか、レオンの肩から力が抜けた。
そんな姉とは反対に、スコールはクラウドの腕の中で身を固くしている。


「やっ、クラ……あ、ひゃう…っ」


 浴衣の袖から侵入したクラウドの手は、スコールの脇の下をゆったりと撫でていた。
逃げようと身を捩るスコールを、クラウドは更に腕を袖深くまで侵入させて、抱いて引き寄せる。


「う…やだ、あつい……っ」
「大丈夫だ、スコール。こういうのは、マッサージしてクールダウンさせるものなんだ」
「あ……っ!」


 ぴちゃり、と耳朶に舌を這わせると、ビクン、とスコールの肩が跳ねる。


「な、レオン。そうだろ?」
「んぁ…は、何、……あっ、やっ…!」


 ぼんやりとしているレオンに聞いても、彼女に他者の会話を聞くような余裕はなく、零れるのは甘い音ばかり。
当然、クラウドの言葉が口から出まかせであると訂正する事もしない。
下から持ち上げた乳房をやわやわと揉みながら、クラウドは歯で浴衣の肩口を噛んで引っ張る。
緩んだ帯は布を留めるものとしての役目を放棄しており、引かれた布地はするりと肩から滑り落ちた。

 レオンは、露わにされた己の胸を隠そうとはしなかった。
寧ろ何処か心地良さそうにも見えて、息苦しさから解放された気分なのだろう。


「一人で楽になってるのはずるいぞ、レオン」
「んあぁっ…!」


 きゅう、と乳首を摘まんで引っ張ってやれば、レオンの体が仰け反ってビクビクと跳ねる。
いつもよりも酷く敏感そうな反応は、アルコールの所為だろうか。

 クラウドはレオンの反応に気を良くしながら、スコールの肌をゆっくりと、じれったくなるほどの速さで撫でてやる。
ふるふると小刻みに震える躯を見て楽しみながら、やがて小さな膨らみへと辿り着く。


「お前も汗びっしょりだな」
「ん…早く……ぅ、…」
「早く?何が?」
「…あつい、から……まっさーじ……」


 もぞもぞともどかしそうに身動ぎしながら言うスコール。
やはり此方も、饅頭に含まれていたアルコール成分に思考を溶かされてしまっているようだ。
普段なら、姉に似て頭が良いので、クラウドの言葉が胡散臭い事に気付く筈。

 やっぱり酒だな。
すっかり身を任せている二人を見ながら、クラウドは思った。

 クラウドは、スコールを一旦解放すると、しっかりと結ばれていた彼女の浴衣の帯を解いた。
身動ぎ程度では解けなかった帯だが、固結びされていた訳ではないので、手元で解くには然程苦にはならなかった。


「スコール、マッサージするから、浴衣の前を開いて」
「……う、ん……」
「レオンも、そのままだぞ」
「ん……」


 スコールがしっかりと重ね合わせられていた襟を開かせる。
帯を完全に解いた訳ではなかったから、ほんの少し肌が見える程度にしか開けなかったが、それで十分だとクラウドは囁いた。





お姉ちゃん大好きスコール。妹大好きレオン。
念願の両手に花で浮かれてるクラウドを殴りたい。