夜回り散歩


「ほい、報告書」
「……ああ」


 ゼルが差し出した一枚の紙を受け取って、スコールは緩慢な返事を返した。

 スコールの反応が鈍いのは、いつもの事だ。
元々自分の感情を表に出さないタイプであるから、先の“魔女戦争”によって絆を新たにした幼馴染相手であっても、それは変わらない。
───しかし、ゼルは今のスコールの反応の仕方に、微かな違和感を感じた。

 じい、と見詰めるゼルの視線に気付いて、スコールが顔を上げる。


「……なんだ」
「いや。何っつー程でもねえんだけど……」


 眉間に深い皺を寄せて睨むスコールは、用が済んだなら出て行けとばかりに不機嫌なオーラを放っている。
それもスコールと言う人間を思えばいつもの事であるから、ゼルは特に応える事もなかったが、それでも感じる違和感を消す事が出来ず、なんと言ったものか、と言う表情で頭を掻く。
そうしている内、スコールの眉間の皺は益々深いものになって行く。

 はあ、とスコールはこれみよがしに溜息を吐いて見せた。


「書洩らしでもあるなら、早く言え。俺が書き直して置く」
「あ、いや。それはない…筈。うん」
「なら、なんだ?」


 何も要件がないのなら、いつまで其処に立ち尽くしているのか。
睨むスコールの青灰色からは、そんな問いがありありと浮かんでいる。

 ゼルはがりがりと頭を掻いた後、指揮官デスクの椅子に座っているスコールの顔をじっと見詰めた。
スコールはいつものファー付の黒いジャケット、白いアンダーに、グリーヴァのペンダントを首に提げている。
ゼルがよくよく見慣れたスコールの姿で、常と特に変わった所はないのだが───と思ってから、いや、やっぱり違うな、とゼルは確信した。


「スコール、顔が赤いぜ。風邪でも引いたか?」
「……別に」


 幼馴染の指摘に対し、スコールはやはり鈍い反応だった。
今の「別に」って、どの意味の「別に」だろう、とゼルは首を捻る。
誤魔化されたような気がするが、ゼルはスコールが天より高いプライドの持ち主である事を思い出し、これ以上言及するのは止めた。
不機嫌メーターを表す眉間の皺はいつもの三倍増しになっているし、これ以上藪を突いて、蛇どころかヘッジヴァイパーでも出て来られたら大変だ。


「あんまり無理すんなよ、スコール。キスティスがいなくて、居残り補佐が使い物にならなくて大変なのは判るけど」
「何か言ったか、チキン野郎」


 ゼルの背後から、大きなものが伸し掛かる。
小柄なゼルをそのまま押し潰さんばかりの重石は、“魔女戦争”の後、未成年である事を理由に保護観察処分となり、ガーデンに戻って来たサイファー・アルマシーであった。
彼は現在、バラムガーデンが誇るSeeDの指揮官であるスコールの補佐として、スコールが彼の監督を預かる形で、更生している最中、とされている。

 未成年とは言え、“魔女戦争”を先導した人物であるから、世間からは“戦犯”だ。
しかし、元々同じ場所で生活していた事や、更に───記憶が薄れていたとは言え───幼馴染であるスコールやゼルにとっては、サイファーの暴走など今に始まった話ではない。
表向き、体裁として上官に当たるスコールやキスティスは厳しく接する事もあるが、一目さえなければ、幼馴染メンバーやリノアと言った面々は、サイファーとは以前と変わらぬ距離感で付き合いを続けていた。

 伸し掛かっているサイファーを、ゼルは腕を振り回して振り払う。


「だああっ!重てぇな、このデカブツ!」
「お前がチビなだけだろ。ま、ヒヨコなんだから仕方ねえか」
「誰がヒヨコだ!」
「……あんた達、煩い」


 にやにやと揶揄うサイファーと、今にも掴み掛らんばかりに眉尻を吊り上げるゼルの下に、水を打つ一言。
地の底からの様な低い声に、ゼルが視線を落とせば、椅子に座ったままのスコールが米神に青筋を立てている。


「仕事が溜まってるんだ。ゼル、特に要件がないなら早く出て行け。サイファー、あんたも大人しくしてろ」
「あ、ああ。悪い」
「へいへい」


 じろりと睨む蒼の瞳に、ゼルは慌てて詫び、サイファーはひらひらと手を振って自分のデスクへ戻る。
スコールは白いコートを翻す男の背中を射殺さんばかり睨んでいたが、その内溜息に流された。

 溜息を吐いたスコールの横顔が、酷く疲れ切っているように見えて、ゼルは心配そうに彼の貌を覗き込む。


「スコール、無理すんなよ。時間ももう遅いし、後はサイファーに任せて、少し休んだ方が良いんじゃないか?」
「……そうだな」
「そうそう。俺も明日から手伝えるから、今日はちょっと位サボっても大丈夫だろ」
「……ああ」
「よっし。じゃ、俺はお先に。サイファー、後は頑張れよー」
「うっせえよ、チキン!」


 デスクを叩いて言い返すサイファーから逃げるように、ゼルは駆け足で指揮官室を出て行った。
ドアが閉じる間際、もう一度「無理するなよ」と言う声が届く。

 賑やかなゼルがいなくなると、指揮官室にはスコールとサイファーのみが取り残される。
時刻は夜の十二時を既に越えており、ガーデン全体の消灯時間もとっくに過ぎている。
廊下やグラウンドの明かりも夜間照明がぽつぽつと灯っているだけで、指揮官室の窓から見える景色も、日中に比べると随分と落ち付いていた。
生徒の殆どが眠っている時間である所為か、ガーデン全体が静寂の蚊帳に包み込まれているようだ。

 スコールとサイファーがこの時間まで起きている事は珍しくない。
指揮官として、その補佐として、あれこれと仕事に追われていると、いつの間にか時間は過ぎて、とっぷり夜更けになっている事は日常的な出来事だ。
いつもと違う事と言えば、もう一人の指揮官補佐であるキスティスが、任務でこの場にいない事位だろう───と、誰もが思うに違いない。


「……っん……」


 デスクで書類にサインを記していたスコールの身体が、ふるり、と不自然に震えた。
眉間に深い皺が刻まれ、かたかたと小刻みに躯を震わせながら、いつも白い頬はほんのりと紅潮している。
その様子は、風邪の発熱症状に伴う寒気に苛まれているように見えた。
ゼルがスコールに「風邪か?」と訊ねたのは、これが理由だろう。

 しかし、スコールの表情には苦悶や苦痛と言った色よりも、何処か艶が含まれており、時折零れる小さな吐息にも、仄かに熱が篭っているように見える。

 サイファーはそんなスコールを見ながら、にやにやとした笑みを浮かべていた。
意地の悪い表情を浮かべるサイファーに気付いて、スコールが唇を噛んで彼を睨む。
途端、


「───ひっ…あぁっ……!」


 びくん、びくん、とスコールの身体が跳ね、甘い声が漏れる。
デスクに縋るように俯せになり、机の表面に爪を立てるスコールを見て、サイファーは益々人を食った笑みを浮かべる。


「バレなくて良かったなあ、スコール?」


 くつくつと笑いながら言うサイファーの声を聞いて、スコールは伏せたままで歯噛みした。
誰の所為だ、と怒鳴りつけてやりたいが、口を開いたらみっともない声を上げてしまいそうだった。

 体の奥底から湧き上がってくる感覚を押し殺そうと、スコールは自分の体を掻き抱いて、腕に爪を立てる。
革ジャケットの上から、グローブを嵌めた手で幾ら爪を立てた所で大した意味はないのだが、何でも良いから気を紛らわせないと、頭が可笑しくなりそうだったのだ。
しかし、それだけで沁み付いた本能に躯が逆らう事は出来ず、スコールは体内で暴れる熱に翻弄されて、知らず知らずの内に椅子に座っていた腰を浮かせていた。


「んっ、んんっ…!ふ、くぅ……っ」


 デスクに伏して身悶えるスコールを、サイファーは如何にも楽しそうな表情で眺める。
サイファーは自分の手をコートのポケットに入れると、其処に納めていたものに触れた。
カチ、カチ、と小さな音が聞こえたかと思うと、ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、と言う羽音が静かな指揮官室だ微かに響く。


「あっ、ああっ…!やぁああっ…!」


 くぐもった羽音が鳴り始めたと同時に、スコールが俯せていた頭を持ち上げて天井を仰ぐ。
喉仏を反らしてビクビクと体を震わせるスコールに、サイファーは笑みを深める。


「気持ち良さそうだなあ?スコール」
「ひっ、はひっ……!んんっ…あぁあっ……!」


 徐にデスクを立ち、スコールへとゆっくりと歩み寄るサイファー。
スコールはサイファーの言葉にゆるゆると頭を振ったが、直後に強くなった羽音に、甲高い悲鳴を上げる。


「やぁあっ!サイ、ファ……あっ、あっ、あぁあっ…!」
「あまりデカイ声出すなよ。チキンが戻って来たらバレちまうぜ」
「は、んんっ……うぅんっ…!」


 サイファーの言葉に、唇を噛んで漏れそうになる声を殺そうとするスコールだが、それが反って体内の熱の激しさを煽る。

 天井を仰ぐスコールを、サイファーは傍らに立って見下ろした。
熱と涙で熟れた蒼が、頭上の男を縋るように見詰める。
指揮官然とした、或いは無表情を常としたスコールが、それを崩している事が、サイファーの欲望を刺激する。

 サイファーの視線が、スコールの顔から体へと移る。
ジャケット下のシャツにはぐっしょりと汗が滲み、喉や鎖骨周りと言った露出した箇所は、彼の頬や耳と同じく赤らんでいる。
更に視線を落として行けば、シャツの裾からすらりと覗く白い肌が見えた。
耳障りな羽音は、その白肌の奥から聞こえて来る。


「…あっ、あっ…あんんっ……!」


 椅子の縁を握り締めて悶えるスコール。
サイファーの手がスコールの頬を撫で、喉を、鎖骨を辿る。
ジャケットの肩が落ちて行くが、スコールが逆らう事はなかった。
シャツを押し上げる胸の蕾をサイファーが摘むと、ビクビクと細い躯が跳ねる。


「んぁっ、あぁっ…!」
「乳首が勃起してるぜ。チキンにバレそうになって興奮したんじゃねえか?」


 しこりのように膨らんだ乳首を、シャツの上から転がしながら、サイファーはスコールの耳元で囁いた。
スコールはふるふると首を横に振るが、シャツの裾を捲り上げてやれば、すっかり反り返った雄が露わになる。


「興奮してねえってんなら、これはどう説明する気だ?」
「はっ…あ、あ……いやぁあ……っ」
「乳首もちんこも勃起させやがって。気付かれたらどうする気だったんだよ?え?この露出狂」


 サイファーの罵倒の言葉に、スコールは背筋をぞくぞくとしたものが奔るのを感じていた。
反り返った雄がぴくぴくと震え、先端から先走りの蜜が溢れ出す。

 スコールは、下半身に何も履いていなかった。
黒革のパンツも、下着も履かず、生まれたままの姿を晒している。
下半身で身に付けているものと言ったら、足下の靴と靴下だけだ。
上半身をいつも通りに着こなしていただけに、その違和感は尚更で、常通りの表情を浮かべて見せていた事が、次第を知る人間にとっては滑稽に思えてならない。


「あっあぁ…っ!さい、ふぁ……サイファぁあ……っ!」


 スコールの腕が徐に浮いて、傍らに立つサイファーのコートを掴む。
ぎゅう、と握るその手を好きにさせながら、サイファーはスコールの胸を摘んで遊んだ。
コリコリと両の乳首を弄ばれて、スコールはびくびくと体を震わせながら、細い腰を揺らす。


「チキンのいる間、何回イきそうになった?」
「はっあ…んんっ…!あ、わ、わからな…いぃんっ!」
「じゃあ、何回イった?」
「ひぃいんっ……!」


 きゅう、と両の乳首を摘まみ引っ張られて、スコールは天井を仰いで喘ぐ。
ひくひくと躯を痙攣させるスコール見下ろし、サイファーはくつくつと笑いながらスコールのシャツを捲り上げ、直にその白い肌に触れる。

 桃色の乳首が、サイファーの指の狭間でクニクニと形を変える。
ぷっくりと膨らんだそれが歪む度、少年の細い躯が跳ねるのが面白くて、サイファーは乳首の先端に爪を立ててやる。


「あぅ、ん……あっ、はぁん……!」
「で?」


 何回イった?と、サイファーはスコールの耳を食んで問う。
胸を弄る快感に身を悶えながら、スコールは震える唇を開く。


「ん、あ……い……かぃ……」
「あぁ?」
「あひんっ


 聞こえない、と咎めるように乳首を摘まれて、スコールは背を弓形に撓らせる。
尖らせた乳首の先端を、ぐりぐりと爪先で穿るように弄られて、スコールはびくびくと体を跳ねさせながら、もう一度唇を開く。


「あっ…あっ…、ん、ふぅんっ…ん、……か、い……」
「ん?」
「ああ…っ!い、…ん、かい…っ、いっか、ぃいぃ……っ


 はふ、はふ、と熱の篭った吐息を漏らしながら、スコールは頬を朱色に染めながら答えた。


「へえ。一回、ね」
「あっ、あっ…!乳首っ…、乳首だめぇえ……
「本当に一回だけか?三回くらいイったんじゃねえの。お前のちんこ、ドロドロじゃねえか」
「んあぁあっ……!」


 ぎゅうう、と強く乳首を引っ張られて、スコールは痛みと快感で顔を顰める。

 サイファーの指摘の通り、スコールの陰部は彼自身の放った蜜液で濡れそぼっている。
太腿を伝い落ちる蜜が椅子の革クッションに沁み込んで、色を変えている。
一度や二度の射精ではないだろう、と言うサイファーに、スコールはゆるゆると首を横に振ったが、羽音が強く響いた瞬間、スコールはびくびくと体を震わせ、陰茎の先端から蜜を溢れさせた。


「あっあっ、だめっ…!だめぇえっ…!」


 白い太腿を強張らせて震わせ、スコールはサイファーのコートを強く握り締めた。
びゅくっ、とスコールの雄から精液が放出され、スコールの太腿と腹を汚して行く。
その様を見て、やっぱりな、とサイファーがほくそ笑んだ。

 サイファーは、射精によって放心状態となったスコールを無理やり立ち上がらせた。
しかし、スコールの足は自分の体を支える力すら持たず、その場にへたりと座り込んでしまう。


「やっ…さい、ふぁ……あぁあっ!」


 机から離れたくない、と言う表情でサイファーに縋るスコールだったが、下部を襲った羽音に、背を強張らせて喘ぐ。

 デスクから離れた事で、裸身のスコールの下半身が晒される。
今まで自分の有様が誰にも気付かれずに済んだのは、デスクによって人目から隠されていたからだ。
そのデスクから離れてしまったら、指揮官室に入って来た人間に、自分のあられもない姿を見られてしまう。
今日はゼル以降の任務帰還者はいない筈だが、それはあくまで立てられたスケジュール内の話であって、予定より早く帰還して来る者は間々在る事だった。
十二時を越した今、指揮官室の明かりが点いているからと言って、遠慮なく入って来れる人間は少ないが、皆無と言う訳ではない。
だからスコールは隠れていなければいけないのに、このままでは────

 今の自分が、指揮官として有るまじき姿を晒している事を、スコールは自覚していた。
隠れないと、見られないようにしないと、と思っているのに、サイファーは赦してくれない。
縋る少年を見下ろす男には、そんなスコールの泣き出しそうな表情さえ、興奮材料でしかない。


「だ、め…サイファー、お願い……お願いだからぁっ……!」


 掴む腕を振り払い、デスクへ逃げようとするスコールだが、確りとした力で握られている為、叶わない。
それ所か、サイファーはスコールの腕を引っ張り、デスクの前へ───指揮官室の真ん中へと引き摺り出した。


「や、あ……あぁああんっ!」


 ヴヴヴヴヴ、と強い羽音が響き、スコールは一際高い声を上げる。
膝が崩れ、高く掲げられた腰を揺らすスコールの露わにされた陰部には、太いアナルバイブがずっぷりと挿入されていた。
根本まで挿入された淫具は、激しく振動しながらその先端をぐるぐると回転させ、スコールの直腸内を掻き回す。
これが今日一日、ずっとスコールの陰部に埋め込まれ、常に彼を快感で翻弄していたのである。

 がくがくと体を震わせて快感に悶えるスコールの姿に、サイファーは己の中心部に熱が篭って行くのを感じていた。
済ました表情の裏側で、彼がどれだけの快感と羞恥に耐えていたのか───それを想像するだけで、サイファーは愉しくて堪らない。


「あひっ、あっ、あぁっ…!だめ、んぁ…っあぁあ……っ」


 淫具に攻め立てられる秘部を隠そうとするように、スコールは蹲ってシャツの裾を引っ張る。
しかし、興奮し切って反り返ったペニスも、卑猥な玩具を咥え込んだアナルも、隠す事が出来ない。

 サイファーはスコールの前に片膝をついて、スコールの顔を上げさせる。
涙と涎と汗で濡れた貌に、サイファーは己の顔を近付けて、濡れた眦をゆったりと赤い舌で撫でた。


「今チキンなりセンセーなり帰って来たら、お前のこんな情けねぇ格好を見て、どう思うだろうな」
「ひ…はっ……やっ、いや……あぁっ、あっ、あっ…!」


 脅し地味たサイファーの言葉に、スコールは嫌だ、と首を横に振る。
しかし、それに反してスコールの陰部はヒクヒクと物欲しげに蠢き、更なる快楽を貪るように反応を示す。


「あんっ、あっ、あぁあ……っ!見るな、見るなぁあっ…!ひ、ぃいんっ…!」


 ビクビクと下肢を震わせるスコールの視線は、虚ろに彷徨い、まるで夢現の中にいるかのよう。
それを見たサイファーは、想像してんのか、とスコールの耳元で囁いた。


「見られんの想像してアヘってんじゃねえよ」
「ひっ、ひぃっ…!そんな、あっして、してないぃ…っ!」
「一回、鏡で自分の面見てから言うんだな」


 そう言うと、サイファーはスコールの腕を掴んで立ち上がった。


「おら、立て。行くぞ」
「んんっ……、イ、く……?」


 何処に、と戸惑うスコールに構わず、サイファーは腕を掴んだままで歩き出す。
引き摺られるままにスコールはよろよろとその後をついて行った。
足を動かす度、陰部に埋められた玩具が角度を変え、回転する先端に内部をごりごりと掻き回されて、スコールはサイファーの腕に縋りながら、膝を震わせる。

 玩具に内部を抉られる感覚に身を震わせ、サイファーに促されるまま、スコールは覚束ない足取りで歩いた。
その足が指揮官室の扉へと向かっている事に気付いて、スコールの顔から血の気が引く。


「や、やっ…サイファ……あぁんっ!」


 廊下に出ようとしているサイファーに、スコールはその場に踏ん張って抵抗しようとしたが、秘部に埋められた淫具を締め付けてしまい、反って嬌声が出てしまう。


「ひっ、ひうっ…!んぁぁあっ……」
「夜中だからな。静かにしてろよ」
「そ、そんな、待っ……あうっ、んん…!」


 ぐりゅっ、くりゅぅっ、と奥壁を掻き撫ぜられて、スコールは溢れかけた声を噛む。
片手で口元を抑えて声を殺すが、サイファーはそんなスコールに構う事なく、指揮官室と廊下を繋ぐドアを開けた。
蒼くなるスコールの手を引いて、サイファーは廊下へと出て行く。

 廊下は、指揮官室と同じく、煌々とした明かりに照らされていた。
暗闇を映した窓に、自分の姿が綺麗に映り込むのを見て、スコールは顔を真っ赤にする。
其処には、下半身を露わにし、シャツの裾縁から反り返ったペニスを覗かせる、自分の姿が映し出されていた。


「ひっ……サイ、ファ……」
「こっちだ」
「嫌、やだ……んんんっ!」


 手を引くサイファーに訴えると、羽音が響いて、スコールの陰部が掻き回される。
唇を噛んでビクビクと震えるスコールの腕を引いて、サイファーは歩き出した。

 ふらふらと、一歩を踏み出す度に、スコールの直腸内でバイブが角度を変える。
絶え間なく与えられる振動で媚肉を刺激され、何度となく迎えた絶頂で覚醒しきった官能のポイントを抉られる感覚に、スコールの頭はすっかり蕩けていた。
しかし、窓に映り来む自分の姿を見た事で、微かに戻った理性が、この状況の可笑しさを具にスコールに教えて来る。


「あっ…あっ……!サイファー、頼む、から…んんっ…!戻ら、せ……んんっ!」


 涙の滲んだ声を訴えるスコールだが、サイファーの足は止まらない。
その上、彼は引き返すどころか、突き当りのエレベーターホールへ向かおうとしていた。

 サイファーは無言でエレベーターのスイッチを押すと、扉が開いた筐の中へ、スコールを押し込んだ。
ふらふらと倒れ込むようにエレベーターに乗ったスコールの後に、サイファーも乗り込む。
円柱型の筐の中で、スコールが透明な窓ガラスに縋っていると、後ろから肩を掴まれて立たされる。


「サ、サイファー……あんた、何考えて……」


 膝を震わせ、窓に寄り掛かる事で、スコールはようやく立っていた。
サイファーはそんなスコールの細い腰を撫で、臀部の形を掌でなぞると、陰部で震えている玩具に手をかけた。

 根本まで埋められていたバイブが、ぬぷぷ…とゆっくりと抜けて行く。
スコールはふるふると躯を震わせ、脾肉を擦られる感覚に躯を震わせる。


「んぅっ、はぅんんっ……!」


 冷たい壁に顔を寄せ、体の熱を誤魔化そうとするスコールだが、温度差の所為か、余計に自分の体の熱さを再認識してしまう。

 エレベーターが下降を始め、扉ガラスに映る光景が動いて行く。
ガーデンの一階フロアは夜間照明のみが灯されており、各施設の案内掲示板も昼間よりも幾らか明度を落としている。
その薄暗い夜間照明の中でも、人の気配は感じられ、時折、案内掲示板の前を人型のシルエットが通り抜けて行くのが見えた。

 抜けて行こうとしていた玩具が、先端だけを挿入した状態で止まる。
ひくん、ひくん、とスコールのアナルが疼くように伸縮を繰り返し、サイファーが手の中で玩具を遊ばせる度、悪戯に角度を変える先端に穴口を広げられて、スコールは声を殺して身悶える。


「ひ、ぅ…んんっ……ふ、くぅっ…」


 くちっ、くちっ、と密着する肉穴を押しながら、穿るように回転運動を繰り返す玩具。
赤い色に熟れたアナルが伸縮するのを見下ろしながら、サイファは抜こうとしていたバイブをもう一度奥へと押し込んで行く。


「ああっ、んっ、ひぅうんっ……!」
「美味そうに食うじゃねえか。ほら、もっと奥まで入れてやるよ」
「あぅんんっ…!」


 直腸の道を掻き回して広げながら、バイブは奥へ奥へと沈んでいく。
壁に縋るスコールの手に力が篭り、吐息に篭った熱が冷たい壁の表面をぼんやりと曇らせる。

 エレベーターが教室のある二階で止まった。
扉が開いた瞬間、スコールはぎくりと体を強張らせる。


「やっ、あっ…!」


 エレベーターが止まったと言う事は、誰かが二階にいたと言う事。
ドアが開けば、其方に背を向けたままのスコールの姿が、乗り込んでくる人間に見られてしまう。
下半身を晒し、陰部に卑猥な玩具を咥えた、スコールの姿が。

 しかし、蒼白になったスコールの予想に違い、二階エレベーターホールは無人だった。
体を強張らせ、無人のホールをじっと見詰めるスコールの傍らで、壁側に設置された操作パネルに触れているサイファーがにやにやと意地の悪い笑みを浮かべる。

 呆然とした表情を浮かべるスコールに、サイファーが躯を寄せる。
体躯の良いサイファーの体は、幅広のコートを着ている事もあって、スコールをすっぽりと覆い隠した。


「見られると思って、興奮しただろ?」
「そ、んな……」
「バイブ咥えて離さねえじゃねえか。これ、見て欲しかったんだろ」


 アナルに埋めたバイブに手がかかり、ぐちゅぅ…っ、と引き抜かれて行く。
ビクビクとスコールの腰が震え、抜けて行く玩具を追うようにスコールは腰を突き出した。

 サイファーはスコールの腰を押さえ付け、アナルバイブを激しく抜き差しし始める。
ぐぽっ、じゅぽっ、ぬぽっ、と卑猥な音を鳴らして抽出されるバイブに媚肉を激しく擦られて、スコールは窓に縋りながら膝を震わせて泣き喘ぐ。


「ひっ、あひっ、はひぃっや、だめ、さいふぁあぁ…っ!」
「こうやって、バイブでケツまんこ掻き回されてる所、見られたかったんだろ?」
「違、ちがっあぁん…!あっ、あっ、んほぉおっ…!そこ、そこだめ、だめえぇっ


 震えるバイブをずぽずぽと抜き差しされて、スコールは白目を剥きながら舌を伸ばして咽び喘ぐ。

 バイブの先端が肉壁の行き止まりを押し上げ、ぐりぐりと回転する。
肉ヒダが広げられて直腸の奥を抉られ、スコールの身体が歓喜するように震えた。
反り返ったペニスの先端から、とろとろと蜜が溢れ出し、今にも射精せんばかりに膨れ上がっている。

 エレベーターの扉が閉じて、筐が再び下降を始める。
窓から見える景色の変化に、エレベーターが一階に向かっている事に気付いたスコールは、縋る瞳でサイファーを見上げた。
教室のみがある二階は夜になると無人であるのが当然と言えるが、一階は違う。
ガーデン内の照明は夜間照明に切り替わり、生徒の殆ども就寝しているが、バラムガーデンでは夜間にも使用できる訓練施設がある。
その奥には、生徒達のデートスポットである秘密の場所も在る為、利用者は決して少なくない。
そうでなくとも、夜半に寮を抜け出して遊びたがる不良生徒はいつの時代もいるもので、人の気配は其処彼処にちらほらと感じられるものだった。

 今度こそ、エレベーターホールに誰かいるかも知れない。
下降していくエレベーターは、何某かの事故でもない限り、一階に到着するまで止まる事はない。
背後にサイファーがいる為、彼の影に隠れたスコールが一目で見つかる事はないかも知れないが、乗り込まれたら終わりだ。


「サ、サイファ、あっ、あっ…!や、め、ひぅっ!んんぅっ…!」


 ぐぽっ、ぬぽっ、と秘部を掻き回され、突き上げられる音がする。
羽音も止められない。
若しも誰かが乗り込んで来たら、その時点でスコールは己の痴態を衆目に晒してしまう羽目になる。


「はうっ、はぅんっ…!お願、あぁっ…!もう、止め……!」
「聞こえねえな」
「あ、んんんっ!」


 ぐりゅぅっ、と秘奥を強く抉られて、スコールは上げかけた悲鳴を口を押えて殺す。
しかし、ビクビクと反応する躯を抑える事は出来なかった。

 びゅくっ、びゅるっ、とスコールの陰茎から精液が噴き出し、窓ガラスに飛び散った。
てらてらとしたものがガラスの表面で糸を引くの見て、あーあ、とサイファーはこれ見よがしに溜息を漏らす。


「なんつートコでイってんだよ、お前」
「は、う……」


 くつくつと笑いながら囁くサイファーの声に、スコールは顔を赤くし、呆けたように天井を見上げて熱の篭った吐息を零す。

 サイファーの手がスコールのペニスに触れる。
何度目か判らない射精をしたにも関わらず、其処は未だ膨らんでおり、サイファーが手淫を施してやると直ぐに勃起した。
アナルに埋められたバイブも動き続け、ヒクヒクと震えるスコールの肉壁を攻め立てている。

 エレベーターの筐が揺れて、下降速度が落ちる。
スコールの背に覆い被さるように体を重ねていたサイファーが、体を退かした。
重なっていた体温が離れた事に気付いて、スコールは慌ててサイファーを引き留めようとするが、遅かった。
サイファーは操作パネルを背にして壁に寄り掛かり、開くドアを横目に見ている。
その為、スコールの存在を覆い隠してくれるものは何もなく、スコールは色付いた尻を扉に向けて剥き出しにしていた。


「やっ、ひっ、ひぃっ……!」


 円柱型のエレベーターのドアガラスは、内部が見えるように全面透明ガラスになっている。
だから、一階に到着した時点で、ホールにいる人間はエレベーターに乗っている人間の姿が見えてしまう。

 このまま一階に着いたら、ホールに誰かがいたら。
見られてしまう。
下肢を晒し、陰部を晒し、こんな異常な状況で興奮してペニスを勃起させている、浅ましい姿を見られてしまう。

 エレベーターの下降が停まり、到着音が鳴って、ドアが開く。
スコールはぎゅうっと目を閉じて、顔を真っ赤にして壁に縋った。
淫具を深く咥え込み、攻め立てられる下肢を曝け出したままで。


「───残念。誰もいねえな」


 扉が完全に開き切った所で、サイファーが至極残念そうに言った。
スコールが恐る恐る振り返ると、彼の言葉の通り、エレベーターホールには誰もいない。

 あられもない姿を誰にも見られずに済んだ事に安堵して、スコールはずるずるとその場に座り込んだ。


「は…あっ……あふっ……」
「惜しかったなぁ」
「んんぅっ……!」


 座り込んだスコールの髪をぐしゃぐしゃと掻き撫ぜて、サイファーは言った。
唇を噛んで睨もうとするスコールだったが、アナルを掻き回される感覚に、目尻は直ぐに力を失う。

 バイブの振動に身を震わせるスコールを一瞥して、サイファーがコートを翻す。
サイファーがエレベーターを下りても、スコールはその場から動かなかった───動けなかった。
スコールは下肢から上って来る刺激に唇を噛み、快感に耐えながら、早く扉が閉まる事を願う。
しかし、サイファーはエレベーターの扉口に寄り掛かり、扉が閉まる事もエレベーターが上昇する事も赦さない。


「サ、イ、ファー……あっ、んっ…!んんっ…」
「あん?」
「そ、そこ…退け……っ」


 いつまでもエレベーターの扉が開いていたら、誰かがホールを通りかかった時に見付かってしまう。
早く扉を閉めて欲しいのに、サイファーが其処に立っている限り、パネルを押しても扉は閉じてくれない。

 なけなしの気力でサイファーに要求するスコールだが、サイファーはその場から動かない。
それどころか、意地の悪い笑みを浮かべてスコールを見下ろし、


「何言ってんだ。お前もさっさと降りるんだよ」


 そう言うと、サイファーは座り込んでいるスコールへと近付き、肩を掴んで無理やり立ち上がらせた。
アナルで淫具がぐちゅっ、と淫音を鳴らし、スコールは開きかけた口を手で押さえる。
下肢を震わせるスコールを引き摺って、サイファーはエレベーターを降りた。

 エレベーターホールは、夜間照明に切り替わったこの時間でも、十分明るかった。
遠目から見ても、其処にいる人間の姿形が判るであろう程の光量は確保されている為、スコールの身体を隠してはくれない。
目の前にいるサイファーには、スコールが躯は勿論、顔も引き攣らせている事が判る程だ。

 夜半のひんやりと冷えた空気が、スコールの足下から上って来て、太腿を撫でる。
体に熱が篭っている所為か、殊更に触れる外気が冷たいように思えて、スコールはふるりと体を震わせた。


「や、だ…サイファー、離せっ……!」


 手を引いてホールの中心へと連れ出そうとするサイファーに、スコールは弱々しく首を振って抵抗を示す。
しかし、何度も昂った躯は碌に力が入らず、特に力を入れずに掴んでいるだけのサイファーの手を振り払う事さえ出来ない。

 ホールの真ん中に立たされて、照明の下でスコールの姿がくっきりと映し出される。
下肢を曝け出した自分の有様が、煌々と照らされている事に気付いて、スコールはシャツの裾を引っ張って下肢を隠そうとする。
若しも今、生徒か当直教師か、誰かが近くを通りかかったら───想像して、スコールはぞくぞくとしたものが背中を奔るのを感じた。


「はっ、あっ、あぁっ……!あぁんっ……!」


 背筋を丸め、伸び切ったシャツの裾を掴んで太腿を擦り合わせるスコールに、サイファーがくつくつと笑う。
コートのポケットの中にあるものを弄れば、スコールはがくがくと膝を震わせ、弱々しく首を横に振る。


「い、やっ…あぁっ…!んっ、あふっ、うぅん…!」


 ぐりゅっぐりゅっ、と直腸内を抉るように掻き回され、スコールはグローブの指を噛んで声を殺す。
額から珠のような汗が噴き出し、スコールの白い頬はすっかり朱色に染まる。
シャツの裾から、ぽたぽたと蜜が床に落ちて、小さな水溜りを作っていた。

 薄暗い間接照明の中で、淫靡に腰をくねらせるスコールを見詰めながら、サイファーは悪戯にアナルバイブの振動の強弱を切り替える。
強い羽音が鳴ったかと思うと、それは途端に止まり、かと思えばスコールが呼吸を整える前に再び強く震え始める。
その振動の変化に連動するように、ビクッ、ピクン、ビクッビクッ、とスコールの身体が跳ねるのを、サイファーは面白がるように見詰めていた。


「んっ、んんっ…!ひ、ふっ…サ、イ、ファ……」
「尻振ってるぜ、スコール」
「んぁっ、う…ふ……んぐぅうっ…!」


 バイブの回転に皮肉を抉られる度に、スコールは無意識に逃げ場を求めて腰を揺らしていた。
羽音を立てるバイブを挿入された尻を突き出し、ゆらゆらと尻を振るスコール。
サイファーはそんなスコールの周りを観察するようにぐるりと回りながら眺め、スコールの背後で足を止めた。

 ヴヴヴヴヴ……と音を立て、スコールの下腹部を攻め続けるバイブ。
それを咥え込んだ秘穴がヒクヒクと伸縮しているのを見て、サイファーは埋めたバイブの持ち手を掴んだ。
ずるり、と引き抜こうとすると、スコールの背が撓り、媚肉が締まってバイブに絡み付く。
ぴったりと張り付いた肉壁を、小刻みに震えるバイブが刺激して、スコールは自分の体を掻き抱く。


「んっ、んっ…!ふ、くぅうんっ…!」
「そんなに気に入ったんなら、そのままで良いな」
「は……あ、サイファ…ぁっ…?」


 背を向けて歩き出したサイファーを、スコールは戸惑いの眼で見詰める。
待って、と伸ばしかけた手は、陰部を襲う快感に漏れそうになる声を堪えようと、自分の口を押える。

 サイファーの白いコートは、薄暗い照明の中でも十分に映える。
間接照明の中に取り残されたスコールは、白コートが遠退いて行くのを泣き出しそうな瞳で見詰めていた。
その視線を感じ取ったのか、コートが翻ってサイファーが振り返り、緑碧眼がスコールを捉える。
くい、と顎で示すサイファーが、「来い」と言っている事に気付いて、スコールは俯いた。


(こんな…こんなの……誰かに、見られたら……っ)


 決まった人間しか来訪しない指揮官室や、教室しかない二階と違い、一階はガーデン生徒にとって半ば居住スペースである。
夜間に出入りする業者もいるし、当直教師や守衛もいる。
指揮官と言う立場上、スコールの事を知らない人間は、このバラムガーデンにはいないだろう。
その指揮官が、夜半の校内でまるで露出狂の如く下半身を晒して立ち尽くしている場面など、絶対に見られてはならない。

 そう思いながら、スコールの身体は燃えるような熱を抱き始めていた。
こんな状況にも関わらず、スコールのペニスは腹に触れそうな程に反り返り、先端から先走りの蜜を零す。
無機物を咥え込んだアナルは、その内部を弄る狂気にまるで悦ぶように壁を震わせていた。
その場に頽れそうになりながら、戻らないと、と自分に言い聞かせて、スコールの脚はその場に根が張ったように動かない。


「あ、う…んっ……はぅうっ……!」
「いつまで其処で突っ立ってんだ?校門の方から誰か来たら、直ぐ見付かるぞ」
「や……あひっ、んんっ…!サイ、ファ、あ……っ」
「見られたいなら、好きにしても良いぜ。ほれ、向こうから人が来る」
「……!」


 向こう、と言ってサイファーが指差したのは、図書室側へと続く廊下。
カツ、カツ、と一人分の足音が聞こえるのは、生徒のものか、それとも教師の。

 見つかる。
見られる。
見られてしまう。

 かたかたとスコールの身体が震え、熱を帯びていた体の奥が、今度は急速に冷えて行くのを感じる。
縫い止められたように動かない躯が、不意に強い力に引かれて、スコールは促されるままにスポットライトの下から逃げた。
覚束ない足取りでリズムの乱れた靴音が鳴って、通路の向こうから聞こえていた足音は遠退いて行く。
それでも、心臓は口から飛び出しそうな程に早い鼓動を打っていた。

 先を歩く背中を、スコールはふらふらと追いながら、自分の手を引く男の金糸を見上げ、


「サ、イファー……あっ、うんんっ…!待、あっ…!」
「きりきり歩け。マジで見付かりたいなら別だけどな」
「やあっ……!」


 冷たいサイファーの一言に、スコールは首を横に振って、コートの背中に縋り付いた。
それでも歩き続けるサイファーのコートに捕まって、スコールは彼の後をついて歩く。

 しかし、大股で歩くサイファーに対し、スコールは上手く足を動かす事すら出来ない。
一歩を踏み出す度にアナルに挿入されたバイブが角度を変えて動き、スコールを快感で以て振り回す。


「はっ、あっ…!あふっ、ぅうんっ……!サイ、ファ…待て、待って……ぇえっ…!」


 シャツの裾を引っ張りながら、スコールはサイファーの後を追う。
自分の歩いた後に、ぽたり、ぽたり、と蜜と汗が落ちて、点々と軌跡を残している事に、スコールは気付かない。

 グラウンド、食堂、保健室へと続く分かれ道を通り過ぎて、寮へと続く分かれ道前に来て、スコールは足を止めようとした。
量前は人の出入りが得に激しい場所だ。
いつ誰が出て来るか、ひょっとしたら渡り廊下を通り掛かっている者がいるかも知れない。


「サイファー……っ!」
「問題ねえよ。さっさと来い」
「や、いやっ……ぅうんっ!」


 サイファーの命令に逆らおうとすると、アナルバイブが振動を強くする。
下肢を襲う快感に、スコールが漏れそうになる声を堪えている間に、サイファーはスコールを連れて寮へと続く通路前を横切る。

 スコールはサイファーの背に身を寄せた。
自分よりも体躯が良く、コートのお陰で目隠し範囲の広がるサイファーの存在は、今のスコールが唯一頼れるものだった。
サイファーは己に身を寄せるスコールの気配を感じながら、くく、と喉で笑う。

 サイファーの手がスコールの肩を掴み、ぐいっ、と寄せられる。
肩を掴んでいた手が下りて、スコールの細い腰を撫で、尻を辿った。


「ふぅ、んっ……!」


 汗ばんだ腰、尻をゆったりと撫でられて、スコールの身体が緩やかな官能に反応して震える。
バイブを咥えたアナルがきゅう、と締まり、バイブの振動がよりリアルなものになって伝わって来る。


「バイブ、落とすなよ。まあその様子なら、そんな心配も必要なさそうだけどな」
「ひっ…や、触る、な…あんっ…!」


 サイファーの指がスコールのアナルの縁をなぞる。
根本まで咥え込まされたバイブの所為で、其処は玩具の形で広がっており、肉皺がみっちりと支柱に食い込んでいた。

 バイブと肉壁の隙間に、サイファーの指が埋められる。
増した圧迫感にスコールは顔を顰めたが、回転するバイブの先端にぐりぐりと淫部を抉られて、スコールは唇を噛んだ。
そのまま、歩け、と言うように肉壁を押され、スコールは震える膝で足を動かす。


「ひっ、ひぅっ……んっ…くぅん……っ」
「もうちょいだ。頑張れよ」


 くちっ、くちっ、と陰部で卑猥な音を鳴らしながら、スコールは前に進む。
いっそ頽れてしまえたら楽になるのに、挿入された指と、その持ち主である男が赦してくれない。


「っうん……!あっ、…あうっ……はぅんっ……!」


 押し殺せない喘ぎ声を漏らしながら、スコールは一歩、一歩と歩く。
サイファーは気紛れに指を曲げてはスコールの陰部を苛めながら、スコールを先へ先へと誘導する。

 寮と駐車場へと伸びる通路前を通り過ぎて、訓練所の案内板の前まで来ると、サイファーはスコールの腰を抱いて歩を止めさせた。
促されるままに虚ろな意識で歩いていたスコールは、ぽっかりと暗い穴を開けている訓練所への入り口を見詰めた後、傍らの男を見上げた。
意地の悪い笑みを浮かべた男の顔を見て、きゅうぅ…とアナルが閉じる。
バイブと一緒に指を締め付けられるのを感じて、サイファーの熱の篭った眼がスコールを射抜く。


「行くぜ」
「なっ───あぁんっ!」


 このままで訓練所に入れなんて、冗談じゃない───と思ったスコールの言葉は、一つも声にならなかった。
アナルに埋められた指が、バイブと肉壁の隙間を縫って深く突き入れられ、スコールは思わず甘い悲鳴を上げてしまう。


「あっ…あっ…あぁっ……!」
「ほら」
「やっ…あっ……んんっ…あぅんっ……!」


 弱々しく頭を振るスコールだが、陰部を弄られる快感に思考能力を奪われて行く。
命令された通りにスコールの足が前に踏み出すと、そのまま、一歩、また一歩と歩き出す。