幽冥、流転 2


 オークションの参加者には、最初に写真つきの商品リストと、参加者である事を示すバッヂが配られる。
此処で顔を合わせた者の事は、一切他言無用である事は、暗黙のルールであった。
決して表沙汰に出来るオークションではないのだから、当然の話だ。

 オークションには、様々な商品が並べられる。
何十年も前に有名な美術館で盗まれた曰く付の宝玉であるとか、ある大陸の遺跡から盗掘されたと思しき歴史的遺産であるとか、無銘なものにそれらしい名前を付けた何某とか言う芸術家の遺作であるとか────中には王家だの政府だのと言った者のサインの入った保証書や証明書が添えられるが、それも眉唾物である。
競売の参加者達には、それらの真贋を見極める眼も必要だと言う事だ。

 商品リストの全ての競売が終わった後、地上で行われていたそのオークション会場は無人となる。
人の流れは二つに別れ、一つは会場の外へ、もう一つは人目を忍ぶようにひっそりと、会場の地下フロアへと消えて行く。

 地下へ降りた者達は、照明の落ちた部屋へと通された。
其処は今までの世界とは一線を隔しているかのように、重々しく、何処か非現実めいた空気に包まれていた。
まるでこれから魔女の儀式でも始まるかのようだと、誰かが呟く。
そうした潜めきがさわさわと広がって行く中、コォン……と甲高い木槌の音が響き、会場内のステージの隅に照明が当てられる。
其処には髭を蓄えた男が立っており、空間は静寂に包まれた。


「只今より、オークションを開始します。どれも選りすぐりの商品となっておりますので、皆様、奮ってご参加下さい」


 簡潔な挨拶を述べ、一例すると、男は舞台の裾へと消えた。

 ステージ全体に照明が灯り、奥の壁には大きなスクリーンが設置されている。
舞台袖から一人の少年が首輪を繋がれ、連なる鎖を引かれて現れると、その面がスクリーンに大きく映し出された。
まだ十代の半ばにもならないであろう細い肢体に、申し訳程度の布を巻き、気だるげに佇む姿は、幽鬼にも似て、しかし何処か神秘的なものにも見える。
雪のように白い肌に、背中にかかる程に長く伸びた銀糸の中、血のように赤い瞳が映える。

 少年の鎖を引いていた男が幕袖に引き上げると、少年は肌を隠していた布を床へと落した。
発展途上の躯の全てを晒し出す少年の姿に、あちこちで感歎の吐息が漏れる。
少年は、首に繋がる鎖を抓み持ち上げると、まるで其処に人の手があるかのように、愛おしげに頬を寄せて見せた。




 競売に出された異端者達は、閉ざされた世界から少しでも自由な世界へ抜け出そうと、一人でも多くの参加者に気に入られようと、己の全てを曝け出して行く。
己の存在以外に何も持たない彼らに、他に魅せられるものはないからだ。
自ら躯を開く者、他者の手によって暴かれる者────全ては生きて行く為に。

 高値で買われて行った者に、必ずしも幸福な未来が約束されている訳ではない事は、判っていた。
それでも薄暗がりの部屋の中で、いつ終わるとも知れない停滞した時間を過ごし、異端者のままで生き続けるよりは、一縷の望みのように外の世界への解放を願わずにはいられないのだ。

 舞台袖から見えるステージの中心で、腕のない少女が肥え太った男に抱えられている。
聞こえる声は、喘ぎと言うよりも、明らかな悲鳴であった。
可哀想に、とレオンは思う。
檻が近い所為で、時折他愛のない話をしたが、彼女はとても優しく微笑む子だった。
スコールとは会話らしい会話をしてはいないようだったが、目が合えばやはり微笑んでいて、スコールも憎からず思っていたようだ。
願わくば、少しでも優しい場所へ行けると良いのだけれど。

 ぎゅ、と隣の存在が縋るように抱き着いて来たのを感じて、レオンは其方に目を向けた。
舞台上を見ていられない、とレオンの肩口に額を埋めたスコールの肩が、カタカタと震えている。


「…スコール」


 名を呼ぶと、びくん、とスコールの体が震えた。
レオンは弟の細い身体を抱き寄せて、柔らかな耳朶に舌を這わせた。


「う、んっ……」
「大丈夫だ……な…?」
「ん、ぅん……あっ…」


 かぷ、とレオンが耳朶を甘噛みすれば、甘い吐息がスコールの唇から零れた。
直ぐにレオンが顔を離すと、今度はスコールの方がレオンに擦り寄り、唇を重ね合わせようとする。

 しかし、


「レオン、スコール。座長がお呼びだ。直ぐに行きなさい」


 舞台袖で進行の補助をしていた男に呼ばれ、レオンとスコールははっと我に返る。
直ぐにレオンは立ち上がったが、スコールは拗ねたように蹲ってしまい、不服そうに補助の男を睨んだ。
だが、レオンに促されると、不承不承に立ち上がり、二人で手を繋いで舞台袖の隅で盛況となったオークションを眺める座長の下へ向かった。

 いつもの通り、二人寄り添う兄弟を見て、座長は薄く笑みを浮かべる。


「後ろを向け」


 命令されるがまま、兄弟は男に背を向けた。
座長の左右を固めていた男達が、それぞれレオンとスコールの首に首輪を取り付け、二人の間を鎖で繋ぐ。
鎖は1メートルもない程度の長さで、限界まで伸ばしても、二人が互いの手を伸ばしあうよりも離れる事はないだろう。

 スコールが不思議そうに首輪と鎖を指先で弄んでいると、するり、と武骨な手が臀部を撫でた。
ぴくっ、と肩を跳ねさせたスコールの隣で、レオンの腰が引かれ、座長に抱かれる。
太い腕に閉じ込められたまま、レオンのペニスを男の手が包み、上下に扱いて官能を与える。


「あっ、はっ……ふ、ぅうん…っ」


 淡色の唇から甘い声が零れるが、此処が舞台袖である事を思い出したレオンは、掌で口を覆ってそれを殺した。

 スコールの下肢を撫でていた男の手が、秘孔口へと宛がわれる。
ひくん、と疼いた其処に、男はゆっくりと指を埋めて行った。
ぎゅう、とスコールは自身の体を抱き締め、零れそうになる音を喉で押し留める。


「お前達には期待しているぞ」
「う、んっ…んんっ…!」
「ん、く……ふぅっ……ん、ん…っ」
「これがお前達の最後の稼ぎになるんだ。確り働いてくれよ。そうすれば、お前達の今後も悪いものにはならんだろう」


 二人を抱き寄せ、愛撫を施しながら、座長は卑しい笑みで悩ましげな肢体を堪能する。
長い時間をかけて染め上げ、躾け、寵愛して来た二人を手放す事は実に惜しかった。
それだけに、この最後の勤めでは十二分に働いて貰わなければ。


「はっ……あ、ん…!んっ、んっ…ふ、ぅうんっ…!」
「や、ん…!あっ、ふぅっ…ぅん、んっ…!」


 男の手によって与えられる官能に、二人の躯がビクッ、ビクッ、と痙攣したように戦慄く。
レオンのペニスはすっかり頭を持ち上げており、スコールの秘孔も男の指を誘うようにヒクヒクと蠢き始めていた。

 座長の男の手で官能に溺れて行く二人の姿に、左右を固めている若い男達が息を飲む。
日焼けのない白い肌が、熱を持って赤らみ、汗を滲ませて行く。
濡れた沫色の唇から、苦しげな吐息が零れ落ち、青灰色の瞳で男を見詰める様は、まるで高級娼婦のように妖しく映る。


「んんっ……!」
「あ、ぅん…っ!」


 ずるり、とスコールの秘孔から指が抜き去られ、レオンの陰茎を手淫していた手も離れる。
抱きかかえるように支えていた腕が離れると、二人はくたりとその場に崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 絶頂を迎えるには足りず、このまま何もなかったように治てしまうには、昂った官能は無視できる程に容易くはない。
ヒクヒクと躯を震わせて悶える二人を、左右の男達が強引に抱え起こし、立ち上がらせる。
もどかしげに太腿を擦り合わせるレオンとスコールのアナルに指を這わせ、


「んっ…あっ、何……っ」
「ひぅ、ん…、ぬるって…や、あ…っ!」


 ぬるりと滑る感触が内壁を撫でる感覚に、二人は怯えるように体を震わせた。
ぬちゅ、ぬぷ、と脾肉全体を弄られて喘ぐ二人に、座長は笑みを浮かべて見下ろす。


「気持ち良くなる為の薬だ。そんなものがなくても、お前達はきっと気に入られるだろうが、折角だからな。餞別だと思えばいい」
「そん、な…ひっ、あっ、ああぁっ…!」
「やあっ、あっ、ん、だめ、あっ…!ふぁあ…っ!」


 ぐりぐりと秘奥の壁を押し抉られて、甘い悲鳴が響き渡る。
静かにしろ、と男達が言ったが、官能に浚われた二人にその声が聞こえる訳もない。
無理、駄目、とうわ言のように繰り返す二人に、男達も己の下半身が熱くなって行くのを感じていた。

 秘孔を十分に濡らすと、男達は今度は前部に触れた。
膨らんだレオンのペニスと、頭を持ち上げようとしていたペニスに、ぬるぬるとしたものを塗って行く。
じん…とした感覚が下肢から上って来て、レオンは爪を噛んだ。
それを見た男が、レオンの両腕を取って背中へと回し、手錠で繋ぐ。


「んあっ、あっ…!ひ、ぅん!や、あ…、んぐっ、」


 嬌声を大きくしていくスコールの口に、男の手が潜り込んだ。
苦しげに喉を逸らすスコールの後頭部を掴み、固定すると、ボールギャグを噛ませてしまった。


「ん、む、ぐ…ふ、あふっ…!」


 陰茎を手淫され、喘ぐスコールの声がくぐもったものになる。
眉根を寄せて苦しげにもがきながら、手淫の手に自らの手を添えようとするスコールだったが、これもレオンと同じように背中へと回され手錠で戒められる。
二人は腰を高く上げた格好で地面に這い蹲り、与えられる手淫に悶えるしか許されなかった。

 丹念に秘孔を解され、陰茎にも塗り込まれた薬が十分に浸透した頃には、青灰色の瞳に理性のは光はなく、甘い熱に疼く躯を持て余し、ヒクヒクと肢体を悩ましく揺らすばかり。
そんな兄弟をじっくりと観察し、眼に焼き付けた後で、座長の男は彼らを舞台上へと送り出した。




 まともに歩く事も出来ない程の、熱い躯を持て余して、ステージに連れ出される。
二人を繋ぐ鎖に引かれ、照明の眩しいステージの真ん中に誘導される中、あちこちから吐息の零れる声がした。


『皆様、お待たせ致しました。本日の目玉商品、見目美しい奴隷の兄弟で御座います。彼らの故郷は、皆様も記憶に新しいでしょう、あの凄惨たる戦争で焦土となりました。行く宛も、頼る宛もない彼らは、着の身着のままで、二人寄り添い合い、荒れ果てた故郷を彷徨い歩き、────』


 司会進行の男が長々と喋っている内容など、レオンとスコールには聞こえていない。
彼の語る商品達の出自と言うものは、真実半分と言うのが良い所で、場所によって語り口も変わってしまうものだった。
今日はどうやら涙頂戴路線のようで、参加者達からは可哀想に、とばかりに啜り泣く声があった。
しかし、体の熱に翻弄され、思考を奪われた彼らに、そんな周囲の反応が見える訳もない。

 延々と続く語りを横目に、レオンとスコールは、ステージの中心に置かれていた柔らかなクッションシーツの海に座らされた。
腕は相変わらず拘束されたままで、体の熱を慰める手段がない。
レオンは、ボールギャグを噛まされ、息苦しげに喘ぐスコールに顔を寄せ、宥めるように、しかし煽るように白い肌に舌を這わす。
スコールもまた、疼く下肢を揺らめかせ、レオンの足に自分の足を絡み付かせていた。


「んっ、ふ…うぅん……ぁ、ん…」
「ふぐ、ぅ、むぅっ…んんん…!」


 レオンの舌がゆったりと鎖骨を舐めれば、ピクッ、ピクッ、とスコールの躯が面白いように跳ね上がる。
そのままゆっくりと上に向かい、顎を伝う唾液を舐めとり、唇の傍を舌で撫でる。
熱に溺れた青灰色がレオンを見詰め、もっと、と強請っているのが判った。


『────それでは、麗しき兄弟愛、どうぞご覧下さい─────』


 ハウリングの音が一度鳴って、マイクの電源が切られた。
それを合図に、レオンの腕の拘束が解かれ、スコールのボールギャグが外される。


「れ、ぉん、……れおん…っ」
「うん……」


 甘えるように繰り返し名前を呼ぶスコールに、レオンは口付けた。
ちゅぷ、ちゅ、と言う音が酷く大きな音になって響く。
クッションの海の周りには、小さな集音マイクがあちこちにちりばめられており、二人の吐息すら拾い上げていた。

 疼く熱を分け合うように、互いに煽るように、舌を絡め合う。
淡色の唇の隙間で、赤い舌が互いをなぞり合って撫で合って、二人の唾液が混ざり合う様が、背後のスクリーンに大きく映し出されている。
レオンの舌がスコールの咥内へと侵入し、スコールは戒められたままの腕で、クッションの端を握り締めた。

 ちゅく、と音を立てて、レオンはスコールの舌を吸った。
ひくん、と震えるスコールの頬を撫でて宥め、ゆっくりと、名残の銀糸を引きながら唇を離す。


「スコール……」
「レオン…んっ…や、ぅ……」


 レオンがスコールの足を抱えて開かせると、ざわめくような声が上がる。
それを嫌がるように、スコールが肩を縮こまらせた事に気付いて、レオンはスコールの眦に触れるだけのキスをする。


「大丈夫……いつもと同じだ」
「……でも…や…レオン……」
「…怖くない。お前は、俺だけ感じていればいい…」


 レオンは、スコールの白い頬を両手で包み、殊更に優しい声で囁いた。
視界を全て兄の存在で満たし、見つめる青灰色に思考の全てを浚われるのを感じながら、スコールは「……ぅん」と小さく頷く。

 レオンは身体を屈め、スコールの下肢を抱き寄せようとして、己の背中に突き刺さる沢山の視線に気付いた。
スコールには「いつもと同じ」と言い聞かせたものの、決して同じではないのだと思い出し、レオンはスコールの前から体を退かせた。
兄の躯に隠されていた、少年の細く淫靡な躯が衆目に晒される。
カメラがスコールの下肢を捉え、巨大なスクリーンに反り返った陰茎がクリアに移し出されると、スコールは小さく体を震わせながら、白い肌を羞恥に赤らめていた。
レオンはスコールの隣から、そっと彼の薄い腹を撫でて、立ち上がった雄に触れる。


「あっ…!」


 ピクン、とスコールの躯が仰け反る。
燻り続けた熱と、沢山の衆目に見つめられている事で、いつもよりも感度が高くなっている。

 レオンはスコールの淫部に顔を寄せ、つぅ……と赤い舌でスコールの中心部を舐め上げた。


「ひあっ、あっ…!」
「ん……はっ…」
「あぁ……っ!」


 竿を撫でるように、下から上に舐めながら、亀頭の膨らみの裏を指先で擦る。
ヒクッヒクッとスコールの躯が跳ねて、逃げを打とうとする腰をレオンは腕で抱えるように固定させる。


「や、レオン……!」
「…ん、ふ……ちゅ、んんっ」
「ふぁっ……!」


 レオンがスコールの中心部を口に含むと、スコールがビクッと天井を仰いで喘ぎ声を上げる。
いやいやと首を横に振るスコールだったが、レオンは構わずに先端を舌先でぐりぐりと刺激してやる。


「やっ、あっ!んあ、あ、あ…!」
「ん、ん、…ふっ、んふっ……」


 レオンの咥内でくぐもった吐息が、スコールの熱を煽る。
自分の中でスコールの中心部が膨らんで行くのを感じながら、レオンはそんな弟の反応に悦を覚えていた。
うっとりとした表情で弟の雄を食むその姿に、観客達が唾を飲む。

 レオンはスコールの片足を抱え止せ、限界まで開かせると、頭を上下に大きく動かし始めた。
じゅぽっぐぽっと彼の口から出入りする陰茎は、ピクピクと耐えるように震えている。


「んはっ、あっ、あっ…!レオ、ン…!だめ、だめぇ…!」


 ピンと伸びた爪先がシーツの波を引っ掛ける。
ふるふると首を床に振るスコールだったが、その声は拒絶と言うには酷く甘く、誘っているように聞こえる。
少なくとも、レオンにとっては誘われているも同然であった。

 レオンは、根本まで食んだスコールのペニスを、ゆっくりと咥内から抜いて行った。
ぬらぬらと舌が撫でて行く感触に、スコールの太腿がピクピクと震え、狭間の蕾が疼く。
スコールのペニスはすっかり反り返って膨らみ、先走りの蜜とレオンの唾液で濡れそぼっていた。
レオンは自身の愛撫で成長したスコールの雄を、愛でるようにそっと掌で撫でてやる。


「あっ…あ…レオン、ぅ……」


 後少しだったのに────と切なげな声を漏らすスコール。
レオンは首にかけられた鎖を伸ばして跨ぎ、スコールの上に馬乗りになった。
頭の位置はそれぞれ逆になり、レオンの前にはスコールの、スコールの前にはレオンのペニスがある。

 レオンがスコールのペニスの太い部分を舌先で遊ぶ。
スコールは小さく息を飲んで、舌を伸ばし、レオンのペニスの先端を掠めた。


「んっ…」
「ふ、ぅ……っ」


 レオンはスコールの陰茎を根本まで口に含ませると、ゆっくりと腰を落とし、スコールの咥内へと己の中心部を沈めて行く。
両腕を背中に戒められたままのスコールは、体を起こす事も、レオンの腰を抱き寄せる事も出来ない。
だからレオンが導いてやる必要があった。

 レオンの陰茎を半ばまで咥えると、スコールは咥内で脈打つ肉棒に舌を這わせた。
ちゅ、ちゅぱ、と水音を鳴らしながら、一所懸命に奉仕しているのが判る。


「んふっ…ふ、う……」
「んっ、んっ……んあっ、ふぅん…!」


 スコールは不十分な呼吸に苦しげな喘ぎを漏らしながら、夢中でレオンのペニスをしゃぶっていた。
ステージに上がる以前から、焦らされ、我慢を強いられていたのは兄も同じ事だ。
背中の腕でシーツを握り締めながら、スコールは頭を揺らしてレオンのペニスに愛撫を施す。

 弟の拙い、懸命な奉仕に、興奮して行く。
スコールの咥内で、むくむくとレオンの中心が体積を増して行った。
同じように、レオンの口の中で、スコールの中心も熱を帯びて大きくなって行く。


「ん、ん……ぢゅっ、ふっ、んんっ」
「んむっ…!う、う、ふぁ、あふ、んっ、んっ!」


 ぢゅぅ、と強く吸いついたレオンに、スコールの体がビクッと大きく戦慄いた。
スコールはレオンのペニスを口に含んだまま、ふるふると首を横に振る。
がくがくと震える弟の太腿を肘で押さえつけて、レオンはペニスから顔を離すと、身を乗り出してスコールのアナルに顔を近付けた。
つん、と指先で秘孔を突いてやると、レオンのペニスを食んだスコールの喉が息を詰めたように窄まる。


「んむ、ぅ、うぅん…!」


 嫌、駄目、と言うように震えた声を漏らすスコールに、レオンは薄く笑みを浮かべる。


「でも、此処は欲しがってるぞ…」
「────んぅっ…!!」


 つぷ、とレオンの指がスコールの秘孔に埋められる。
途端、ヒクヒクと伸縮して絡み付いて来る内壁に、レオンは誘われるままに奥へと侵入して行った。


「んっ、んっ!ふぁっ、んぐぅ…!」
「ふふ……スコールのお尻の穴、気持ち良さそうだな……」
「んぁう……っ!」


 否定するように首を横に振るスコールだったが、アナルの脾肉はレオンの指に吸い付いて離れようとしない。
檀上に上がる直前、塗り込められた薬がじくじくと疼きを助長させる。
関節を曲げて内壁を押してやれば、ビクッと細い腰が跳ねて、悩ましげな吐息がレオンの中心部に吐きかけられた。


「あっ…ん、スコール……っ」
「んぅ、う……」


 もどかしげなスコールの声に、レオンは彼の口にペニスを沈めたまま、ゆらゆらと腰を揺らし始めた。
ちゅぷ、ちゅぽ、とスコールの唇からレオンの雄が小刻みに出入りして、時折先端が舌先に擦り付けるように当てられる。


「ほら、いつも、みたいに…んっ……、じゃないと、此処…」
「んんんっ…!」
「触ってやらないぞ……?」


 くちゅぅ…!とレオンの指がスコールの敏感な箇所を押し潰す。
ビクン!とスコールの体が跳ねて、細腰が揺れ、もっと強い快感を欲しがるように、自らレオンの指を望む場所へ導こうとする。

 スコールは頭を持ち上げると、レオンの中心部を根本まで口に含んで、舌で全体を撫で始めた。
ぬろぉ、と生暖かく艶めかしい感触がペニスを包み込む感覚に、レオンはぞくぞくとしたものを感じて、甘い吐息を漏らす。


「あっ、あぁっ……スコール…っ、スコールの舌…っんんっ…!」
「ふ、んぷっ…れお、れおん、……ん、ふ、……は、ゃふぅ…」
「あふっ、うん…っ!ん、ふ……」


 急かすように竿の裏筋を舌でなぞられて、レオンは唇を噛んで零れかけた声を殺し、スコールの秘部に埋めていた指で、脾肉の膨らみを擦ってやる。


「んひっ!ひっ、んぷっ…!」
「ん、ふ…っ!あ、は、スコール、此処、好き…?」
「ふ、ひゅき、…んっ、んっ!あふ、ぢゅ、ふ、んちゅっ…!」


 だからもっと。
もっと欲しい。
そんな言葉の代わりに、スコールは無我夢中でレオンのペニスにしゃぶりつく。

 レオンはスコールの淫部に埋めた指を抜き差ししながら、空いていた手で秘孔の口を撫で、指を引っ掛けて広げる。
ヒダが拡げられていくと、赤く色づいた脾肉が露わになり、大きな画面に映し出され、沢山の眼がそれを食い入るように見つめた。


「スコールの中、見られてる、……んんっ!」


 レオンの言葉に、スコールの喉が窄まり、ペニスを締め付ける。


「あふっ、うっ、うぅんっ!ひ、ふ……!」


 ねっとりとした粘着質な視線が纏わりついて来る気がして、スコールは激しい羞恥に苛まれていた。
兄と、快感を教えた座長以外には見せていなかった筈の秘所が、沢山の顔も知らない人間達の前に晒されている。
嫌、とスコールは声にならない悲鳴を上げるが、拒絶したがる心とは裏腹に、脾肉はその眼差しさえも悦ぶようにヒクヒクと疼き、レオンの眼を楽しませる。


「可愛いな……」


 そう呟いて、レオンは二本目の指を挿入させた。
ぬぷぬぷと抵抗もなく咥え込んで行く姿が、カメラで捉えられている。
解され、焦らされていた淫部は、侵入者の来訪を痙攣して悦び、


「んぁっ、うっ、んんっ!」


 二本の指がバラバラに動いて内壁を擦ってやれば、昂っていた躯は呆気なく絶頂へと導かれる。


「んっ、あっ、んふぅっ!んぷっ、んひぃぃいっ!」


 ビクッ、ビクッ!と細い体が跳ねて、全身の筋肉を強張らせ、レオンの目の前でスコールの雄から蜜液が吐き出される。
強く閉じたアナルの脾肉が痛いほどにレオンの指を締め付けた。
同時に、悲鳴を上げた弾みで、スコールは咥内のレオンのペニスに歯を立てる。


「んんっ、あっ、だめ、あっ!ふぅうんっ!」
「んぷっ、うぅん……!」


 持て余し続け、弟の痴態を見て昂ったレオンの躯が、これ以上た切れる訳もなく。
レオンは絶頂の幸福感に身体を震わせ、スコールの咥内へと濃い白濁液を注ぎ込み、スコールの口端から浮き止め切れなかった蜜がどろりと溢れ出す。

 二人分の熱の篭った呼気が繰り返される。
そのまま崩れ落ち、重なって動かなくなった兄弟の下へ、舞台袖から現れた男が近付いた。
男はレオンを抱え起こすと、シーツの波へ仰向けに寝かせ、次にスコールの肩を掴んで引き起こした。
腕を背中に戒めていた手錠を外し、体の前に戻して、もう一度手錠を嵌める。
抱き上げられたスコールの体は、レオンの腹の上に乗せられる形で下ろされた。
ちゃり、と二人の首を繋ぐ鎖が音を鳴らし、白い肌の上で銀色が光った。