幽冥、流転 3


 男が舞台袖に消えると、スコールはぼんやりとした面持ちで、レオンに顔を近付ける。


「レオン……」
「……どっちが、いい……?」


 レオンの手がそっとスコールの首筋を撫でる。
猫がくすぐられるように、スコールは嬉しそうに眦を細めた後で、自身の淫部をレオンのペニスへ擦り付けた。


「あっ、ん…レオンの、入れて、欲しい……」
「ああ……いいぞ…」


 言って、レオンはスコールの腰を優しく掴んで固定させ、絶頂を迎えた直後にも関わらず、萎える様子のないペニスを淫部に宛がう。
スコールはレオンの腹に両手を突いて体を支えると、ゆっくりと腰を落とし、レオンの雄を体内へと受け入れて行く。


「や、ん…!レオンの、んんっ…、おっきぃ、よぉ……!」


 毎日のように受け入れているから、その形も熱も、何もかも覚えている筈なのに、いつもよりもずっと大きいような気がする。
それが常とは違う環境の所為なのか、舞台上に上げらる前に施された愛撫の所為なのかは判らない。

 半ばまで腰を落とした所で、スコールは動きを止めた。
もっと欲しいと言う願望と、これ以上は────と言う微かな羞恥心。


「どうした?スコール……もうお腹一杯か…?」
「ん、んっ……うぅんっ……違う、の…でもっ……」
「…恥ずかしい?」


 沢山の人間に見られながら性交をするのは、いつもの事だ。
けれど、それは狭くて小さくて、暗い檻の中での話。
此処は広い空間で、天井も高く、煌々とした明かりに照らされていて、お互いの躯の何もかもが見えてしまう。
その上、スコールが見上げたスクリーンには、二人が繋がり合っている場所が生々しく映し出されていた。

 恥ずかしがるスコールなんて久しぶりだな────そんな事を思いながら、レオンは鎖を引いて、スコールの体を引き寄せた。


「あっ…!」


 アナルに咥えたペニスが、微かに脾肉を擦る。
ぞくん、と肩を震わせるスコールを、レオンは抱き留めた。


「大丈夫、な?ほら、」
「あっ、あっ…や、あん…レオン、揺らさなっ…あっ…!」
「お前は、俺の事だけ感じていればいいんだ……」


 緩やかな突き上げで秘孔内を擦られて、スコールは兄に縋り付いて懇願する。
しかし、レオンは攻めを止める事はせず、スコールにもっと受け入れろと促すばかり。

 スコールはレオンに縋りながら、震える膝をどうにか立たせると、もう一度腰を落として行く。
ぐにゅぅ……とアナル口が拡がって行く感覚の中に、痛みや苦しみはなく、あるのは兄と繋がっていると言う充足感だけ。
レオンもまた、恍惚とした笑みで自身を受け入れる弟の姿に、うっとりとした笑みを浮かべていた。


「あ、あっ…奥っ……入って、届いちゃうぅ……っ!」
「ん、ぅ……はっ…スコールの中、んっ、イイ……っ…!」


 レオンのペニスを根本まで咥え込むと、スコールは天井を仰いで、下肢から上ってくる悦楽に酔いしれる。
待ち侘びていた熱をようやく与えられた喜びで、スコールは幸福感に満ちていた。

 吸い付いて来る淫肉の熱さを感じながら、レオンは吐息を吐き出す。
その息が縋るスコールの頬を撫でて、ひくん、とスコールの体が小さく震え、レオンのペニスを緩く締め付ける。


「あん、ん、……スコー、ルぅ……」
「ふ、あ……レオン、レオン……もっとぉ……!」
「あ、待っ…あっ、あっ、スコールっ…!」


 くちゅっ、ちゅぷっ、ぐちゅっ、とスコールの秘孔から、淫水音が響く。
膨らみが秘孔内を擦り、抉る度に襲い来る快感に、スコールはあっと言う間に意識を浚われた。

 嫋やかな細い腰が悩ましく揺れ、レオンのペニスがスコールの体内から激しく出入りする。
ヒクヒクと痙攣する肉ヒダがレオンのペニスの形を確かめるように纏わりつき、奥へと招き入れる度、迎え入れるかのように開いて誘う。
どくどくと脈打つ熱く生々しい感触に、レオンはシーツの波を握り締め、はくはくと唇を震わせて喘いだ。


「あっ、ひぃ…スコール、待、待って…あっ、んあっ、」
「ふあ、んん、だめ、待てない…っ!レオンの、もっと…奥、入れて、もっとぉ…!」


 スコールはレオンの胸に手を突いて、四つ這いの格好になり、夢中でレオンの熱をねだる。
レオンの言葉通り、レオンの存在だけを確かめるように、彼だけで全てを埋め尽くそうとするかのように。


「レオン、レオン…、レオン…っ!レオンの、おちんちん…っ!もっと、欲しいの……、ああっ、あっ、お願い…だからぁ…っ!」


 円を描くように腰を揺らめかせ、ペニスで秘孔の全体を掻き回しながら、スコールはレオンから与えられる刺激を求める。


「はっ、あぅ、あっ…!スコール、スコール…っ!あ、ひぁ…!」
「早く、お願い、あっ、ふ、あぁん…!レオン、早くぅっ…!」
「や、あ、きつ……待って、スコール、激しいっ…あっ、あっああっ!」
「んぅ、あ、ん…!足りない、よぉ……っ!」


 自ら貪るだけでは、求める熱にすら足りない。
もっと確かで、もっと強くて激しい熱を欲しがって、スコールはレオンを急かす。


「レオ、ン…あっ、ひぅっ……突いて、お願い…っ!」


 もっと感じさせてほしい。
もっと、もっと、もっと。
縋るスコールの声は、レオンの気持ちと何も変わらない。

 レオンはスコールの細い腰を掴んで、下から彼の淫部を強く突き上げた。


「ひぃんっ!」


 ビクン!とスコールの躯が跳ね、二人を繋ぐ鎖が音を鳴らした。
スコールの呼吸が落ち着くの待たず、レオンはそのまま、スコールの躯を攻め続ける。


「ひっ、あうっ、あっ…!んあっ、あっ、レオ、あっ!」


 スコールの膝が震え、がく、と崩れ落ちる。
自重と共に落ちたスコールの淫部を、レオンの雄が最奥を貫いた。


「あんっ、あっ、ああっ!深、いぃっ!ひっ、あぁん!」
「ふっ、あっ、んくぅっ!ん、んっ、あっ、あっ…!」
「レオン、レオンの、ああっ!奥に、届いてるぅっ…!」


 スコールの腰を支えていたレオンの手が、そっとなだらかな双丘を撫でる。
ぞくん、とスコールが肩を縮こまらせて、レオンの胸に縋り付いた。

 レオンの手が、雄を咥え込んだスコールの秘部に触れる。
指先で皮肉を集めるように摘まみ、広げれば、男を咥え込んで悦ぶ少年の淫肉が人々の前に晒される。
ざわり、とさざめき合う人の声を聞いて、ヒクン、とスコールの内壁が疼き、レオンのペニスを締め付けた。


「ひ、やっ…レオン、それ、いやっ……!」
「でも、さっきと同じで…っ、お前の此処は、嬉しそうだぞ…?」
「んあっ、あっ、違う、違うの、や…!あっ、あっ、見られて、いやぁっ…!」


 じろじろと見詰める無数の視線。
それを意識する度に、スコールの秘孔は強く締まり、熱を持って、レオンを誘う。

 ペニスが一気に引き抜かれていく感覚に、スコールは肩を強張らせて身を震わせる。


「あっああああっ!や、あ、だめぇ……!」


 その言葉が、擦られて感じる官能への拒絶か、求めている熱が去ってしまう事への寂しさなのかは、スコールにも判然としない。
けれど、レオンにとってみれば、弟が寂しがっているようにしか見えなくて、


「く、ふっ!」
「あぁああんっ!」


 先端まで引き抜いた男根が、一気に根本まで挿入される。
そのまま、どちらともなく激しく腰を振り、互いの深い場所を求めるように二人は淫行に耽った。


「あひっ、はっ、ああっ!レオン、あんっ、ああっ!奥、奥きてっきてるぅっ!」
「ん、ん、ああ…っ!締まって…!スコール、熱いぃっ…!」


 ぐぷっ、じゅぷっぬぢゅっ!ぐちっぐぷっ、ちゅぷっ、ぬちゅっ!
絶え間なく響く淫水音が響いて、兄弟のあられもない声が広い空間に反響する。


「イく、イくぅっ!レオン、俺、もうっ…!」
「んぁ、あ、ぅん、んっ!俺も、出る…ひぅうっ!」


 耐えるようにレオンが唇を噛んで、スコールの腰を掴み、ペニスを抜き去る。
ずりゅぅううう……!と太い亀頭が締め付ける肉を押し広げながら遠退いて、アナルの内壁全体を擦られたスコールが、ビクッビクン!と腰を戦慄かせて絶頂する。


「やあっ、ああぁああんっ!あぁあーっ!」
「あひっ、ひっ、あっ、出るっ!イくぅうううっ!」


 電流でも流されたかのように、激しく痙攣しながら、スコールの限界まで膨らんでいたペニスから、白濁液が溢れ出す。
同時にレオンの陰茎からも白濁液が吐き出され、スコールの秘孔と臀部、太腿をどろりと汚した。


「あっ、あっ……ん…ふ……」
「んん……っ」


 濡れそぼった互いの太腿を重ね、絡め合わせながら、スコールはレオンの唇にキスをする。
仔猫がじゃれるように、唇を舐めながら口付けるスコールに、レオンは弟の背を抱き締めて撫でてやる。

 口付けを交わしながら、レオンはそっと起き上がり、スコールも逆らわずに上半身を起こした。
クッションシーツの波はすっかり皺だらけになり、二人の下肢から滴る蜜液でぐっしょりとシミが出来ている。
白い肌を伝う蜜が、二人の肌の上で絡まり、滴り落ちて行く様に、観客達は魅了されていた。
其処で繰り返されている淫行が、男同士の、増して兄弟同士の背徳の行為である事すら忘れ、男も女も、二人の絡み合う躯に心を奪われている。

 躯を支配する火照りは、一向に収まる気配がない。
それ所か、もっと欲しくて、もっと注いで欲しくて、もっともっと繋がりたくて堪らない。


「ん、ふ、…スコール……」
「れ、お……」


 口付けの隙間に名を呼ばれて、呼び返そうとしたスコールだったが、開いた唇の隙間から舌が滑り込んでくる。
ぎゅ、と互いに手を握って、艶の吐息を交換し合いながら、舌を絡めて咥内の熱を共有する。
そのまま、レオンはスコールの肩を押して、シーツの波へと縫い付けた。


「あっ、ん…!レオンの、まだ、大きい……っ」
「うん、…ん……、スコールも……まだ、足りない…?」


 レオンの言葉に、スコールは答えないまま、自ら足を開いて見せる。
色付いたペニスがピクピクと震え、その下では狭間の蕾が物欲しそうに伸縮を繰り返している。

 スコールは自身の腕を下肢へと持って行き、疼く秘孔を指先で広げて見せた。
くぱ、と蜜の糸を垂らして開いた其処に、レオンは自分の下肢が熱くなるのを感じながら、もう一度其処にペニスを宛がう。


「う、ん……っ」
「あう…あっ、ひ…あぁあ……っ」


 レオンはまとわりついて来る淫肉を堪能するように、ゆっくりと腰を進めて行った。
欲しい場所まで中々届いてくれない熱のもどかしさに、スコールは悩ましい声を漏らして、もっと、と兄を誘う。
しかし、レオンは意地悪く殊更に緩慢な進みで雄を沈めて行き、物足りないと赤い顔で涙を浮かべてねだる弟の顔を、何処か嬉しそうに見詰めていた。


「だ、め、らめ……レオン、早、く…早くぅう……っ」
「ん……まだ、もっと……お前の中、気持ち良い、から…もっと…」


 もっと長く感じたい、もっと長く繋がっていたい。
囁いたレオンの言葉に、スコールも嬉しそうに笑みを浮かべる。
けれども、やはり快感への欲望は耐え難く、スコールは開いていた足をレオンの腰に絡めてねだる。

 スクリーンには、レオンのペニスがゆっくりとスコールの内側へと侵入して行く様子が映し出されている。
スコールは視界の端にそれを捉えて、恥ずかしさで肩を縮こまらせ、兄の影に隠れるように密着して縋る。


「や、あっ…レオンっ……!」
「う、ん…は、あぅん…っ」


 きゅう、とアナルが強く窄まって、レオンの雄を締め付ける。
ひくん、ひくん、と蠢きながらペニスに絡み付いてくる肉ヒダを感じながら、レオンはぞくぞくと腰を戦慄かせた。

 ぬぷ、くぷ……とゆっくりと進められるもどかしさの中で、スコールもまた、レオンのペニスの形をまざまざと感じ取っていた。
物足りなさげな甘える声を漏らしながら、スコールも体内の熱を感じてか、うっとりとした表情で顔を赤らめている。
互いの熱の酔う二人の表情は、酷くいやらしく、濡れた唇で呼び合う度に、ひくひくと陰茎と淫部がそれぞれ疼くのが判った。

 レオンのペニスの先端が、窄まった壁の行き止まりを押した。
ヒクン、とスコールの背が仰け反って、ふるふると体を震わせる。
ようやく最奥に到達した肉棒の熱に、スコールは蕩けるような表情で虚空を仰いでいた。


「あふっ…ひ、ん……っ…奥…きたぁっ……」


 赤い舌を伸ばして喘ぐスコールに、レオンは顔を近付けて舌を絡め合わせる。
そのまま唾液を交換し合いながら、レオンはスコールの足を持ち上げると、細い身体を折り畳むように押して、その上に覆い被さった。
律動が始まると、ぐちゅっくちゅっ、と卑猥な水音がマイクに響き、官能に喘ぐ二人の表情がスクリーンに映し出される。


「あん、あっ、ひぃん…!レオン、そこぉっ…あっ、擦れっちゃ、ひぁっ、ああっ…!」
「スコールの、中っ…ぬるぬるして、ん、あっ、熱くて……はっ、吸い付いてるっ…!」
「ん、ひぅ…っ、あっ、あっ、あっ…!」


 レオンが腰を打ち付ける度に、スコールの足が跳ねて遊ぶ。
その細くなだらかな足を抱えると、踝にキスをする。
ぴくん、とスコールの足が小さく震えたのが判った。

 淫靡にして神域的な、何処か犯し難い空気を纏う兄弟の性交に、その場にいる誰もが飲まれていた。
白く細い躯で身を寄せ合い、互いの存在を確かめ合うように絡み合う彼らを手に入れる事が出来れば、世の至宝を手に入れたも同然。
傷一つない肢体、痛みがちだがきっと整えれば柔らかであろうダークブラウンの髪、深く澄んだ青灰色の瞳────そして淫らに染まり、あられもない声を上げ、見る者を誘う淡色の潤んだ唇。
兄の欲望を咥えて喘ぐ弟を腕に抱き、貫き、犯したならば、どんな顔をして啼いてくれるのだろう。
弟の熱だけを求めるように夢中で貪る兄は、違う熱を知った時、どんな姿を見せてくれるのだろう。


「あっ、あん、あうっ…!レオンの、俺の中で…あっ、びくびくしてるっ……ひぁんっ!」
「はっ、あっ、スコール…スコールの中、俺の、締め付けて、っんん……!」


 再三の高みへと昇ろうとする兄弟に、人々は食い入るように見入った。
しかし、それを遮るように、コォン、と高い木槌の音が響く。

 現実に返った人々が音のした方を向けば、司会進行の男が昏い笑みを据えた表情で立っている。


『見ての通り、彼らは互いの熱を確かめ合う事で、支え合って来ました。そうして官能の世界へ溺れた彼らの躯は、触れるだけで甘い調べを奏でる程になりましたが、まだまだ未知の可能性を秘めております。お買い上げ頂いた方には、彼らを自分のお好みのままに染める事も出来るでしょう』


 視界の男がそう語ると、舞台袖から男が現れ、絡み合う兄弟へと歩み寄る。
夢中で熱を貪る二人は、第三者の介入に気付く様子はない。


「んあっ、あっ、ひぅ…!あ、う……んんっ…!」
「はっ、はぁっ…あ、あ、…ん、スコール……ん、あっ……!?」


 突然、背後から臀部を撫でられて、レオンが肩の肩が跳ねる。
律動を止めたレオンに、スコールがもどかしげに腰を揺らし、先を促すように腕を伸ばす。
しかし、レオンはそれに応える事が出来なかった。

 レオンの狭間の蕾に、男の指が這う。


「や、あっ、やめっ」
『兄の躯も、きっと皆様のお気に召す事でしょう。それを今からお見せ致します』
「やだ、ひっ、あっ……!ああぁっ…!!」


 ぬぷ……とレオンのアナルに指が埋められていく。
青年の脾肉は侵入者を拒む事はなく、寧ろ悦ぶようにして蠢き、奥へと誘う。
スクリーンに映し出されたレオンの表情は、苦しげに眉根を寄せてはいるものの、蒼の瞳には光悦とした熱が灯っている。

 二本の指がレオンの秘孔を押し広げて行く。
レオンはスコールに覆い被さったまま、シーツの波を握り締めて、震える躯で快感を押し殺そうとする。


「レオン…?」
「ん、うっ……んんっ……!」
「ん、レオ、ン……」


 しっとりと汗を滲ませて、苦悶と快感に歪むレオンの表情に、スコールは誘われるように首を伸ばして舌を差し出した。
反らされたレオンの喉をスコールの舌がくすぐると、レオンの秘孔がきゅうと窄まって男の指を締め付ける。


「あっ、はっ…んん…スコール……あ、んっ」
「ん、レオン……レオン、っふ……動い、て……」
「待、て……あっ、あぁっ…!」


 待ち切れなくなったのか、スコールはレオンの首に縋り付いたまま、ゆらゆらと腰を揺らし出した。
くぷ、くちゅ、とスコールの下肢で淫音が鳴り、レオンが息を詰まらせる。

 背後の男が、レオンの淫部に埋めた指を激しく抜き差しすると、ビクッ、ビクッ、とレオンの躯が大きく戦慄いた。
シーツを握り締める手が白む程に力が篭り、スコールの体内でレオンの雄がどくん、どくん、と脈を打つ。


「ひっ、はぅ、んんっ!やめ、あっ、あっ、……ぁあっ!」


 淫肉を拡げていた指が引き抜かれて、ずりゅん、と肉を持って行かれる感覚に、レオンは甘い悲鳴を上げる。
力を失った躯が弟の上に重なって、スコールは動かなくなった兄を抱き寄せ、頬にキスをした。


「レオン、レオン……」
「んっ……んんっ……」


 呻くレオンの淫部に、再び何かが宛がわれる。
それは人の熱とは全く違う、無機質で固い感触だった。
何が、とレオンが肩越しに下肢を見やると、笑みを浮かべた男が自分を見下ろしていて、────ぐにゅぅうううう、と冷たいものが一気に挿入され、レオンは眼を瞠った。


「ひっ、あっ、んぁあぁあああっ!」
「ひぅ、んっ!ああっ!」


 ビクン!とレオンが体を仰け反らせ、その弾みに深くなった挿入に、スコールが声を上げる。


「あう…あっ、ひ……んぁあ……」


 悩ましい喘ぎ声を漏らすレオンの淫部には、鈍色の玩具が深く突き刺さっていた。
男根を模したそれを最奥へ咥えたまま、レオンのアナルがヒクヒクと伸縮して熱を疼かせる。
比例するように、スコールの淫部を犯すレオンの雄も膨らみ、スコールは虚ろな瞳を彷徨わせ、掠れた吐息を漏らしていた。


『御覧の通り、兄、弟ともに、受け入れる躯として出来上がっております。皆様のお手を煩わせる事もないでしょう』


 観客の購買意欲を煽る声が、酷く遠くに聞こえる。

 男がレオンの淫部に埋めた玩具を掴み、ずるぅう……!と引き抜いて行く。
ぞりゅぞりゅと男根の形が脾肉を撫でる感覚に、ビクッビクッとレオンの躯が跳ねたて踊ったかと思うと、玩具はまた深くへと埋められる。


「んあっ、ああああっ!ひっ、ひぃん!だめ、らめぇええっ!」


 がくがくと下肢を震わせて叫ぶレオンだったが、その声は苦痛よりも快感の方が勝り、悦び善がっているようにしか見えない。
ぐぷっぐぷっ、と玩具を食んだ淫部から淫水音が鳴って、もっと、とねだるようにレオンの腰が高く掲げられる。


「ひっ、あひっ!ひぃん!だめ、奥っ…こすらな、いでぇっ…!」
「ん、う……んんっ」
「ふ、むぅっ…!」


 喘ぐ兄の下で、じっと埋められた熱を求め待っていた弟が、耐え切れないとばかりに、兄の躯に身を寄せて縋る。
唇を重ねてレオンを捉えると、スコールはレオンの雄を咥えたままの腰を大きく動かし始めた。

 ずりゅっ、にゅぷっ、ぐちゅっ、ぬぷっ!
ぐぷっにゅぷっ、ぬぢゅっ、ぐちゅっ!


「や、スコール、だめ、だめぇっ…!動かな、あっ、あっ!」
「ん、だって、レオン、ずるいぃっ…!俺も、気持ち良いの、欲し、ひっ、んっ、んんっ!」
「あっ、あっ、や、あ…!やめ、ひぃんっ!」


 ぐちゅ、ぐちゅ、にゅぢっ、じゅぷっ、ぐぷっ!
くちゅっ、ずちゅっ、ぬぷっ、ぐちゅっ…!


「レオン、動いて、動いてぇっ…!レオンの、欲しい、レオンのおちんちん、いっぱい、いっぱい、」
「んあ、スコール、スコールぅ…!ひぃんっ!お尻、駄目、らめぇえ…っ!」


 玩具による突き上げが激しさを増し、レオンがそれに合わせて大きく腰を動かす。
レオンが腰を引けばアナルを玩具が、勧めればスコールのアナルが彼を奥深くまで迎え入れる。
スコールは待ち侘びていたレオンから与えられる刺激に、表情を蕩けさせて喘ぐ。
うっとりと悦楽に染められた表情に、理性などと言うものはなく、ただ本能のままに快感に酔いしれる。
レオンもまた、陰茎とアナルとを同時に攻められる激しい快感に、頭を振って悶えながら、涎を垂らしながら喘ぎ鳴いていた。


「レオンの、レオンのおちんちん、おっきくなってるぅ…!」
「あっ、ひぅっ、ああっ!だめ、イく、イくぅっ!お尻まんこいじられて、スコールにっ、スコールの中に出ちゃうぅうっ!」
「あひっ、ひっ、出して、出してぇっ!レオンの、レオンのいっぱい、レオンでお尻まんこの中、いっぱいにしてぇっ!」


 ビクッビクッ、ぞくっ、ビクン、と二人の躯が大きく戦慄く。
ぐちゅん!とレオンのアナルを犯す玩具が、秘孔の最奥の壁を突き上げる。
その衝撃に、レオンは白目を剥いて絶頂した。


「あっ、ああっ、ああーっ!んあっ、ひぃいいんっ!」


 どくっびゅくっ、びゅるるっ!

 スコールの体内でレオンの雄が弾け、蜜液が直腸内へと注がれていく。
熱い迸りが流れ込んでくる快感に、スコールは至高の悦びを感じ、レオンのペニスを強く締め付けながら、自身も熱を解放した。


「んぁぁあああっ!レオンっ、レオンのっ!レオンのせーえき、いっぱいぃいっ…!」
「はっ、ひぃ、ああっ!や、止まんな、スコール、スコールぅっ!」
「あっ、んっ、ふあっ…あひっ、あぁああ……!」


 スコールのアナルは、レオンの全てを搾り取らんとするかのように、雄を咥え込んで離そうとしない。
レオンはその締め付けと、アナルに深々と埋められた玩具の圧迫感に浚われるまま、スコールの体内へと射精し続ける。

 レオンが自身の全てを放出して、ようやく、淫部に埋められていた玩具は引き抜かれた。
しかし、レオンはスコールの体内に己を挿入させたまま、離れようとしない。
スコールもまた、己の上に重なるように倒れたレオンに身を寄せて、秘孔内で脈打つ熱の塊をじっと感じ続けていた。

 木槌の音が鳴り響く。
ステージを照らしていた照明が落ち、進行の男がマイクのスイッチを入れた。


『お気に召しましたでしょうか。それでは、只今より競売を開始いたします。見目麗しく、愛に満ちた兄弟を手元に置き観賞するも良し、お好みに染め上げたるも良いでしょう。開始は五十万ギルからとなっております。それでは、スタート─────』


 コォン、と木槌の音が響き、あちこちで金額を掲示する声が響く。
その間に舞台袖に控えていた男達が、緞帳の降りた舞台の片付けに慌ただしく動き始めた。

 競りの声を煩いな、とぼんやりとした意識の中で感じながら、レオンはうとうとと瞼を閉じかけている弟の髪を撫でた。


「……ん…レオン……」
「……怖かったか?」


 いつもと違う環境での性交について問うと、スコールはゆるゆると首を横に振った。
スコールは甘えるようにレオンに体を寄せると、すらりと伸びた兄の喉に唇を押し当てる。


「…きもち、よかった……」
「……そうか」
「ん……なあ、レオン…」
「…うん?」


 囁き合う兄弟の声は、慌ただしく駆け回る男達には聞こえていない。
ひそひそと、シーツの海に埋もれた兄弟の下に、ゆっくりと座長の男が歩み寄って来ていた。


「……俺達、買われるのか?」
「…うん。そうらしい」
「……一緒にいられる?」
「座長は、そう言ってた。俺達は、同じ所に一緒に売るって」
「本当?」
「うん。でも、その後の事は判らないって」


 レオンの言葉に、スコールが眉根を寄せる。
ぎゅ、と抱き着いて来る弟の背を撫でて、大丈夫、とレオンは言った。


「今までと同じだ、スコール。同じようにしていればいい」


 レオンが体を起こすと、繋がったままの秘所から、くちゅ……と淫らな音が鳴って、スコールが小さく体を震わせた。
このまま繋がっていられたらいいのに、とどちらともなく思いながら、未だに燻る熱の拠り所を求めるように、肌を寄せ合う。
二人の躯の間で、絆のように首を繋ぐ鎖が音を鳴らした。

 寄り添う兄弟の前に、主であった座長の男が立ち尽くした。
全てはこの男の采配と、行く先の新しい主次第。
それでも、何処に行こうとこの手だけは離すまいと、その為ならどんな事でもして見せようと、繋いだ手に誓った。




えっちに積極的なレオンさんが書きたくて……
でもって快感にとろっとろになっちゃうスコールが書きたかったんです。
そして沢山の人間の前で公開セックスと言うシチュエーションに燃え滾ったのです。