秘密のおもちゃ


 例えそれが半ば押しつけ的に設けられた役職であるとしても、一応、スコールはバラムガーデンが誇るSeeDの指揮官である。
そんな彼のスケジュールは、魔女戦争の後、補佐官を務める事になったキスティスによって管理されている。
自分の管理程度は本人に任せても構わないのだが、生真面目なのか、容量が悪いのか、彼は自分のプライベートタイムを捻出するのが下手だった。
幾ら指揮官と言う立場と言えど、その中身はまだまだ十七歳の青い年頃である事に加え、案外と色んな事を溜め込み易く、吐き出す事が下手な彼を知っているキスティスは、折を見てはスコールに暇な時間を取らせていた。

 しかし、現在のSeeDは非常に人手不足である。
本来なら雑務と呼べるであろう物まで、指揮官自らが出張らなければ回せない程、主力ランクのメンバーは忙殺されている。
保護観察処分・更生の為にクレイマー夫妻が引き取ったサイファーも、本人の了承の上で駆り出し、多少は賄える事が出来るようになったものの、やはり、絶対数が足りない。
そんな最中に、スコールを安易に不在にさせる事は出来なかった。

 そんな訳で、最近のキスティスは、『とある依頼』に託けて、スコールに暇な時間を取らせている。
依頼主は派遣員をスコールに指名しており、要される実力に相当するのも、スコールを除けば先の魔女戦争を共にした面々のみだろうと言われている。
勿論、ゼルやセルフィ、キスティスが赴いても良いのだが、いつの間にかこの『依頼』は、スコール専用の『依頼』として認識されていた。
スコールはその『依頼』が来る度に、なんとも形容し難い表情を浮かべるのだが、決して依頼を突っ撥ねる事はしない。
一度、余りに渋い顔をするので、サイファーが「行くのか行かねえのかはっきりしろ」と言った所、やはり渋々とした顔で「……行く」と彼は言った。
あの時、彼の頭の中では、誰も行きたくないとは言ってない、報酬は破格の値段だし、今後のガーデンとの付き合い云々の為にも蹴る訳には行かない、どうせ俺が行かないと言っても聞かないんだろ───等々の言葉が目まぐるしく渦巻いていた事は、スコール研究家であるキスティスには容易に想像する事が出来るものであったが、彼女はそれについては気付かない振りをしている。
スコールがどんな表情を浮かべているにしろ、彼が『依頼』に応じる事に吝かでないのであれば、これを口実に彼に息抜きさせる事が出来るからだ。

 『依頼』は警備レベルを考えればこそ安易な人選は出来ないが、内容はとてもシンプルだ。
国際社会に復帰したエスタの現大統領ラグナ・レウァールを終日警護する事───その一点のみ。
隔月に一度の頻度で寄せられるその依頼は、各国首脳・外相との会談の予定が重なっていなければ、半分は「スコールの休暇」と同義と見做されていた。




 スコールがエスタに滞在している間、ホテル等に泊まる事はない。
依頼内容からして『終日警護』である事もあって、スコールは任務期間の間、常にラグナの傍にいなければならない。
それは別に構わないのだ。
ラグナは大国エスタの大統領であるから、朝から晩まで、更には夜間中まで警備が着くのは何も可笑しな話ではない。

 でも、これは絶対に可笑しい。
ラグナと褥を共にしながら、何度目か知れず、スコールはそんな事を考えていた。

 ラグナは裸身でベッドシーツに包まっているスコールを抱き締め、色の薄い肌に唇を当てては放していた。
鳥が啄むようなキスを背中越しに感じながら、スコールはむず痒くなる胸中を押し隠す。
肩口や項に触れる、ラグナの黒髪の感触にくすぐったさを感じては、こっそり身を捩った。


(……今、敵が来たら……)


 此処は大統領の邸宅であり、警備は外にも配置されているから、侵入者など滅多な事では現れまい。
とは言え、万が一でも億が一でも、その可能性がゼロではない事は事実。
その為の備えとして、スコールはラグナの身辺警護の依頼を受けているのだ────表向きは。

 部屋に入るなりラグナに取り上げられ、テーブルに置かれたガンブレードケースを見る。
目測で凡その距離を測り、窓やドアから侵入者が現れた時、どう動いてラグナを庇い、武器を確保するかを考える。
侵入経路は何も扉や窓からだけではない、天井をぶち破って来る無茶をする輩もいる。
あらゆる事態を想定し、それに対応できるように策を張り巡らせながら、スコールは不審な気配が存在しないか気を配っていた。

 ───が、そんなスコールが、背後の男には非常に気に食わなかったらしい。
啄んでいたキスが止んだ事すら気付かずにいるスコールに、ラグナは密かに眉根を寄せて、背中を向けたままの少年の首に歯を当てた。


「っ!」


 触れるだけのキスとは明らかに違う硬い感触に気付いて、スコールの肩が跳ねる。
抱き込む腕を振り解くように、がばっと勢いよく起き上がったスコールは、耳まで真っ赤になっていた。
それを見上げて、ラグナの唇が弧を描く。


「隙だらけだぜ〜、スコール」
「………」


 ニヤニヤと楽しそうに笑うラグナを、スコールは眉間に深い皺を寄せて睨む。

 首の後ろに違和感を感じて、スコールは其処に右手を当てた。
何かが微かに食い込んだような感覚は残っているが、指で触れる限り、歯型のようなものは残っていないようだ。


「妙な事をするな。痕になったらどうする気だ。キロスやウォードにでもバレたら……」
「俺は構わないぜ」
「俺が構うんだ」


 スコールが判り易く顔を顰めてやれば、ラグナは判り易くしょんぼりとした顔をする。
全く、と呆れを込めて呟いて、スコールは起き上がった。
ベッドを下りるスコールを見て、ラグナが慌ててスコールの手を掴む。


「おいおい、もうちょっとゆっくりしとけって。まだ夜なんだし」
「俺は仕事中だ。依頼内容は、『大統領を終日警護』だからな」
「今更だろ、そんなの」


 ラグナの言葉に、スコールの眉間の皺が深くなる。
確かに、つい先程まで恋人同士の営みをしていた事を思えば、仕事中だ等と言う言葉が、思い切り上滑りしているのは間違いない。
だが、ラグナが休息中の今も、警護任務を負うスコールは一応“仕事中”なのだ。
現実がどうであれ、その意識だけは忘れる訳には行かない。

 だが、スコールのそんな意思も決意も、ラグナには全く関係のない事であった。
滅多に一緒に時間を過ごす事が出来ない息子兼恋人と、依頼に託けてようやく共に過ごす時間を作る事が出来たのだ。
前に逢ってから一ヶ月強───必然的に、最後に体を重ね合せてからも同じだけの時間が流れている。
久しぶりに再会できたと思ったら、日中は仕事に追われ、スコールは警備任務に従事しており、話をする事は愚か、目線を合わせる事も叶わない。
夜になり、ラグナ自身の仕事が終わり、スコールと共に完全プライベートの時間になった所で、ラグナの我慢が擦り切れた。

 一ヶ月振りに抱いた華奢な躯は、ラグナをすっかり魅了し、夢中にさせる。
ラグナは仕事中だからと嫌がるスコールを半ば強引に褥に連れ込んで、手練手管で蕩けさせ、頑丈な理性で押さえ付けられていたスコールの本能を剥き出しにさせた。
良くも悪くも性に対して未熟な若い躯は、己に性を教えた男によって好きなように弄られ、何度も何度も絶頂を迎えた。
もう無理、と涙ながらに訴えながら、己を咥え込んで離さないスコールに、ラグナも何度となく彼の体内へと己の熱を注ぎ込んだ。
何度目かになるラグナの熱を受け止めた所で、スコールは気を失い、その間にラグナは彼を風呂に入れて清めてやった。
それから一時間弱の時間が経過して、スコールは目を覚まし、裸身のままの自分を抱き締めるラグナの腕を甘受していた───と言うのが、先程までの経緯だ。

 至るまでの出来事や、自分が酷く乱されていた事を思い出して、スコールの頬に朱が上る。
それを見たラグナは、可愛いな、と思いつつ、ベッド端に立っているスコールの手を掴んで引っ張った。


「うわっ」
「ほいっ、と」


 無警戒にしていた所為だろう、思わずと言った風で引っ繰り返った声を挙げ、スコールはベッドに後ろから倒れ込んだ。
ラグナが体でそれを受け止め、流れでスコールをベッドに寝かせ、その上に馬乗りになる。

 視界の変化について行けなかったのか、いつもの判断力や状況把握の優秀さは何処へ行ったのか、スコールは目を見開いて呆然としていた。
が、自分を見下ろすラグナの顔を見付け、我に帰ると、慌ててじたばたと手足を暴れさせる。


「退け、ラグナ!」
「良いじゃねっかよ〜。もう一回だけ、な?」
「そう言っていつも────っ」


 一回で済まないじゃないか、と言うスコールの抗議は、最後まで音にならなかった。
重ねられた唇の奥で、逃げる舌を追う舌が捕え、ねっとりと舐る。
スコールは遮二無二暴れてラグナを振り払おうとしたが、ラグナはスコールの両腕を捕えてベッドシーツに縫い止め、開かせた足の間に体を割り込ませて、抵抗を無効化させる。

 ちゅく、ちゅく、咥内で鳴る音に、スコールの肩がひくっ、ひくん、と震える。
真っ赤な顔で目を閉じ、咥内の性感に耐えようとしているスコールを薄眼で見詰めながら、ラグナはひっそりとほくそ笑む。
ジャンクションの力をもってすれば、スコールがラグナを跳ね飛ばすのは簡単なのに、それをしない時点で、彼はどう足掻いてもラグナに勝つ事は出来ない。
それでも抵抗せずにはいられない青さが、ラグナには愛おしくて仕方がなかった。


「ん、ぅっ…んんっ……!」


 もがく力が徐々に失われて行くスコールに、ラグナは彼の両腕を拘束していた力を緩める。
暴れていたスコールの足は、今ではシーツを踏んで滑らせるだけで、蹴る気力もないらしい。

 ラグナが舌先でスコールの舌の表面をゆったりと撫でてやると、ぴくん、とスコールの体が震える。
華奢な腰に腕を回して抱き寄せ、互いの中心部を押し当て合えば、彼の雄が緩く立ち上がっている事が判る。


「あ、ふ……ふぁ……」
「ん……気持ち良いか?スコール」
「……ふあ…ぁ……」


 唇を離せてラグナが問えば、スコールは銀糸を口端から零しながら、ぼんやりとした瞳で小さく頷く。

 スコールはラグナに開発されるまで、性的な事に関しては、知識はあれども経験は殆どゼロであった。
他者との関わりを徹底的なまでに避けて生きて来たと言うから、それも無理からん事だろうと思いつつ、ラグナは、よくぞ今まで彼が無事であったと思った。
何せスコールは、触れれば触れる程敏感に反応を示し、悩ましくその肢体を躍らせて男を誘うのだ。
その上、非常に快感に弱く、少しでも快感を与えてやると、いつもの強靭に思える理性は何処に行ったのかと思う程、呆気なく堕ちてくれる。
恐らく、人を避け続けて生きて来たけれど、その性根は酷く甘えたがりな性格だから、根底にある人の温もりへの餓えが、彼をそうさせるのだろう───と、ラグナは勝手に思っている。
だからラグナは、殊更に彼を甘やかす為に、彼に触れて、狂おしい程の熱い温もりで、彼を蕩けさせてやりたいのだ。

 するすると、ラグナの手がスコールの背中を滑り落ちて行き、引き締まった臀部を撫でる。
なだらかな双丘の形を確かめて、その谷間に指を滑らせると、流石にこれにはスコールも気付いたらしく、緩んでいた瞳がはっと見開かれた。


「ラグナ!」
「なんだ?」
「なんだじゃな────っ!」


 つぷっ、とスコールの秘孔口にラグナの指が埋められる。
気を失い、清められたとは言え、其処に男を受け入れてからまだ長い時間は立っていない。
秘部はひくひくと動いて、侵入者を拒絶する事なく、すんなりと根本まで受け入れてしまう。


「やっ…あっ……!」


 逃げを打つように捩られる細い躯を、ラグナは腰を抱いて捕まえた。
スコールの手がラグナの肩を押すが、抵抗と言うには余りにも弱々しい力であった。

 ラグナはスコールの浮いた鎖骨にキスをして、ちゅう、と強く啜った。
ちりっとした痛みにスコールが僅かに眉根を寄せ、唇を離した其処に赤い花が咲く。
いつものスコールの私服───白いシャツと黒いパンツ、ファーつきの黒のジャケット───なら見られてしまう所だが、ラグナの護衛に当たっている間、スコールは日中は常にSeeD服を着用している。
人前で着替えると言うような状況にでもならない限り、ラグナの残したキスマークが他人の目に見られる事はあるまい。

 アナルに埋めた指を、浅い位置で何度も抜き差ししながら、ラグナはスコールの胸を舌でくすぐった。
ツンと膨らんだ乳首を口に含み、ちゅう、ちゅく、と唾液を絡めながら吸ってやる。


「や、あっ…!んんっ……」


 スコールはふるふると首を横に振って、嫌、と小さな声で繰り返すが、ラグナの悪戯の手は止まらない。
埋めた指を曲げて、媚肉の天井を押し撫でてやれば、甘い悲鳴がスコールの唇から溢れ出す。


「あぁっ……!」
「すっかりエッチになったなぁ」
「んん、んっ……!」


 揶揄うようなラグナの囁きに、スコールはもう一度首を横に振る。
しかし、スコールのそんな抵抗とは裏腹に、彼の秘孔は物欲しそうにラグナの指をきゅうきゅうと締め付けている。


「若いって良いな。ほら、もう元気になってる」


 反り返ったスコールの雄が、ラグナの腹を押していた。
ラグナがそれを手の中に包み込み、上下に扱いてやれば、直ぐにスコールの息は上がって行く。


「あっ、あっ、あぁ…っ」
「こっちも、ちゃんと弄ってやんないと。好きだもんな、此処」
「はぅんっ……!」


 此処、と言って、秘孔内の壁の膨らみ───前立腺を押してやると、ビクン!とスコールの体が大きく跳ねた。
ラグナはそんなスコールの様子を眺めながら、スコールの雄全体を擦る。


「ひっ、や…、あぁ……っ!ラ、グナ、ぁ……っ」
「ちんこの先っぽと裏側、交互にされるの好きだろ?」
「あっ、あんっ……!ふ、あ……はぁんっ…!」


 スコールのペニスの先端を親指でぐりぐりと苛めながら、前立腺の膨らみを人差し指で押し上げる。
前と後ろの弱点を同時に攻められて、スコールは瞼の裏がちかちかと白熱するのを感じていた。

 スコールの膝が力を失い、耐えるように肉の少ない太腿が震えている。
ラグナの指が弄る先端から、愛液がとろとろと溢れ出し、スコールの竿と足の付け根を濡らして行く。
ラグナは、陰部に埋めた指に絡み付く媚肉が、奥へ誘おうとするかのように、ぐにっ、ぐにっ、と指を引っ張ろうとしているのを感じていた。


「スコールは素直じゃないから嫌だって言うけど、下のお口は正直だなぁ。もっと欲しいって言ってる」
「そ、んな、訳……んぁあっ……!」
「じゃあなんでこんなに締め付けてるんだ?」
「ひ、ひうっ……知らな、いぃ……っ!」


 ラグナの言葉に、スコールは顔を真っ赤にしながら、男の肩に額を押し付けた。
ひっく、と泣き声が混じるスコールの声に、ラグナはちょっと虐めすぎたかな、と苦笑しつつ、陰部を穿る指を激しくさせる。
内部でぐりゅっ、ぐにゅっ、くにゅっ、と肉を抉られて、スコールは強い快感に全身を竦ませる。


「ああっ、ら、めっ、ひぃっ!イ、イくっ……、イくぅううっ!」


 弓形に撓らせた躯を、ビクン、ビクン、と痙攣させて、スコールは絶頂を迎えた。
アナルがラグナの指を食い千切らんばかりに締め付け、ペニスの先端から噴水のように噴き出した蜜液が、スコールとラグナの腹に飛び散る。

 絶頂の余韻に酔わされて、スコールの躯が強張ったまま震えている。
ラグナは、反らされたスコールの胸に顔を寄せ、乳首を舌先で突いた。
ぴくん、とス細い肩が跳ねる。


「やっ…あ……」


 熱に翻弄され、ぼんやりとした蒼灰色の瞳が宙を彷徨う。
ラグナはそんなスコールをあやすように、項の髪の生え際に指を這わせながら、アナルに埋めたままだった指を再び動かし始める。

 が、己の体内でまたしても不埒な動きを始めた指に、スコールが我に返って、ラグナの肩に歯を立てる。


「あいって!」


 思いも寄らなかった形の反撃に、思わずラグナは悲鳴を上げた。
その拍子に、陰部に埋めた指がぐりゅっと内部を掻き回し、スコールは溢れそうになった声を、唇を噛んで殺す。


「んっ、んっ……!」
「いちち……ひでーよ、スコール」
「こっちの台詞だ……早く抜け!」


 さもなければ、もう一度噛み付く───と言わんばかりの形相を向ける少年に、ラグナは渋々顔で引き下がった。

 淫部に埋めていた指をゆっくりと引き抜いて行く。
その間、スコールの内部は、ラグナの指を引き留めようとするかのようにねっとりと絡み付いて、入り口の窄まりがより一層出口を狭くしていた。
抜く振りをして、もう一度根本まで入れようか、と言う欲望がラグナの脳裏を過ぎったが、それを読んだように肩の皮膚を抓られて、大人しく彼の意向に従う。

 ようやく指を全て引き抜くと、スコールはほっと安堵の息を吐いて、ベッドシーツに背中を埋めた。
ラグナは指先に未だ残る媚肉の感触を名残に感じながら、咥えるものを失ったアナルがひくひくといやらしく伸縮するのを見ていた。
しとどに濡れそぼった陰部を隠すように、太腿を擦り合わせるスコールを見下ろしながら、うずうずと、ラグナの欲望が鎌首を持ち上げる。


「おい……退け。邪魔だ」


 けんもほろろな態度で、スコールは己に伸し掛かっている男に言った。
しかし、ラグナはスコールを捕まえたまま離れようとしない上に、いきり立った雄をスコールの足の付け根に押し当てて来る。


「ラグナ!」
「だってよぉ、一ヶ月振りなんだぜ。もっとお前を感じたって罰当たんねえだろ?」
「や、バカ……っ!」


 ラグナはスコールの片足を掴んで、持ち上げた。
半身をベッドに押し付け、片足を大きく広げられたスコールの秘部に、ラグナの雄が宛がわれる。
ぐにゅう、と入口を押し広げて亀頭が侵入し、スコールは悲鳴と嬌声の混じった声を挙げた。


「あぁああっ……!」
「っく……ほら、お前も欲しかったんだろ?一気全部入っちまったもん」
「ば、か……あっ、あっ、動く、なぁっ!」


 挿入時の快感の波が収まるのを待たず、ラグナが腰を振る。
ぐちゅっ、じゅぷっ、と卑猥な音が響くのを聞いて、スコールは耳を真っ赤にし、ベッドシーツに取り縋る。

 長く太いペニスがずんずんと秘奥を突き上げる度、スコールの身体から抵抗の為の力が抜けて行く。
蒼灰色の瞳は忽ち劣情に攫われて、薄い色の唇からは甘い声だけが溢れ出す。


「はっ、んあっ、あぁっ……!」
「は……スコール…っ!」
「あっ、だめ、ひぃんっ!そこ……あっ、あっ、あぁっ…!」
「前立腺だろ?判ってるよ。そらっ」
「あぁんっ!や、ひっ、ひぅんっ!ラ、ラグナっあ…!」


 奥の膨らみをごつごつとノックされ、スコールは強い快感に逃げを打つように腰を捻る。
白い肌をほんのりと火照らせ、汗を滲ませながら悩ましく腰を揺らす少年の姿に、ラグナの雄が膨らみを増す。
体内で質量を増したそれを感じ取って、スコールはいやいやと首を横に振った。


「だ、め…だめって、言ってぇ……っ!」
「じゃあ、この一回だけ…っ!」


 此処まで進めて途中で止まれる訳がない、と言うラグナに、スコールは涙の滲んだ眦を尖らせ、ラグナを睨む。


「そ、んなの……あっ!ん、いつも、聞かない、ひぃん…っ!」


 この一回だけ、あと一回だけ、もう少しだけ。
触れるだけ、キスするだけ───そんなラグナの言葉を、スコールは聞き飽きる程に聞いている。
その回数の分だけ、約束がなし崩し的に反故にされ、離して貰えないのも判っていた。

 直腸を何度も前後に抉って耕され、スコールはひぅ、ひくっ、と情けない声を漏らしていた。
最奥を突き上げられる度、逆らい難い快感が下腹部から脳天まで一気に突き抜けるのが判る。


「あっ、んぉっ、あふっ…!は、はうっ、はくぅっ…!」


 持ち上げられているスコールの足が、ピンと爪先まで伸びて張り詰める。
攣りそうな程に強張るスコールの足に、ラグナは唇を寄せて、浮き出ている足の骨にキスをした。
かかる吐息やくすぐる髪にすらスコールの足は反応を示し、ビクッ、ビクッ、と躯を戦慄かせ、連動してアナルが締まってラグナを強く締め付ける。


「や、あ…ラグナ…っ!本当、に……あぁんっ!」
「んっく、くっ!」
「あひっ、ひぃん!お、大きく……っうぅん!らめ、ぇ……っ!」


 シーツを掴むスコールの手が震え、痛いほどに強い力で握り締められる。
躯は完全にラグナの支配下となり、彼にされるがままに揺さぶられていた。

 ラグナは持ち上げていたスコールの足を肩に乗せ、彼の細い腰を捕まえた。
姿勢が変わって、ぐりっ、とペニスが角度を変えてスコールの秘奥を押し上げる。
ラグナはスコールの身体を固定させて、彼の弱い部分を的確に狙って腰を打ち付ける。


「あっ、あっあぁっあぁあっ♡やっ、ラグナ、らぐなぁっ…!そこ、ばっかりぃ……っ!」
「気持ちイイか?スコール」
「は、はふっ、はぅんっ♡い、いぃっ……きもち、いひの…らめぇえっ…♡」


 陥落した体に対し、スコールはまだ理性を手放してはいないようだった。
なけなしの自我に縋り付いて、一刻も早い解放を求めるスコールの顔は、熱と羞恥心で蕩け、涙と汗と涎ですっかり汚れている。
あられもない顔を晒し、下腹部をどろどろに濡らし、もう駄目、もう無理、と繰り返すスコールの姿は可哀想なものだったが、同時に男の加虐心を著しく煽るものでもあった。

 ラグナが一際強く腰を打ちつければ、ずんっ!とペニスが最奥の壁を強く叩いた。
そのまま円を描くように腰を動かし、ぐいぐいと最奥を押してやると、スコールは零れんばかりに目を瞠って、はくはくと音なく唇を開閉させる。


「はっ、はっ…♡あ、あ……や、めぇ……♡」
「本当、意地っ張りだな、お前って」


 熱に溺れて殆ど虚ろな意識で、駄目、と何度も呟くスコールに、ラグナは眉尻を下げた。
濃茶色の髪を手櫛で梳いてあやしてやると、スコールはひくっ、ひくっ、と喉を引き攣らせながら、


「あ、した……ひびくぅっ……」
「大丈夫だって、お前なら。若いんだし」
「……っ!」


 ラグナの言葉に、スコールはふるふると首を横に振った。


「も…駄目……駄目、だから……っ、明日……立てなく、なる、から……っあ♡」


 訴えるスコールの声を聞きながら、ラグナが腰を揺らすと、ひくん、と若木の躯が撓る。
アナルがきゅうっと締まって、ラグナの雄を強く締め付け、ねっとりと肉が絡み付いて来た。


「お前の此処は、もっと欲しがってるみたいだけど」
「……あっ、あっ…ひぅうっ……♡」


 スコールの腰を掴んで、上下に揺さぶってやれば、亀頭のエラが肉壁の上下に当たるのが判る。
スコールは快感の手から逃れようと身を捩ろうとするが、それに合せてラグナが腰を揺すってやれば、呆気なく力を失って快感に従う。


「や…ラグ、ナぁ……っ!し、仕事…にぃ……ひっ♡」


 仕事に支障が出る、と言おうとしたスコールの声は、また最後まで紡がれず、喘ぎ声に取って変わられる。
腰を掴まれたまま、ぐちゅっぐちゅっ、と肉棒で淫部を掻き回されて、スコールは喉を逸らして喘ぐ。


「あっ、ああっ!はっ、あっ、んぁあ……っ!」
「本当に、お前って……仕事熱心、って言うか」
「ひっはひっ…!あぁっ!や、ラグナ…らぐなぁあ……っ!」
「真面目だよな。もっと肩の力を抜いて良いんだぜ?」
「んぁ、んっ……あ、あんた、は…抜き、過ぎ……ぃいんっ♡」


 前立腺を強く抉られて、スコールの躯が大きく跳ねる。
最早スコールは身を捩る力もなく、ラグナに突き上げられるまま、悩ましい声を挙げるしか出来なかった。

 ラグナは、みっちりと絡み付いて離すまいとする肉の熱を感じながら、スコールの白い喉に唇を寄せ、舌を這わす。
喉仏の膨らみに甘く歯を立てると、小さな悲鳴が上がると同時に、きゅうっ、とスコールのアナルが引き締まった。


「酷ぇなあ。俺だっていつも真面目に仕事してるんだぞ?」
「あっ、あっ♡あっ、あんっ、はぅん…っ!そこ、嫌、だって……ひっ、あっ、あぁ…!」
「だから、もうちょっと……ご褒美くれよ、な?」


 喉から顎へ、ねっとりと舌を這わせる。
スコールは、喉元に歯を当てられた小動物のように、躯を硬直させていた。

 下から上へと何度も首を舌でくすぐられ、スコールは眼を虚空に彷徨わせながら、はぁ、はぁ、と熱の篭った吐息を繰り返す。
最奥を穿つ雄は、益々質量を増して行き、どくどくと脈を打っていた。
ラグナの限界が近い事を、躯で感じ取ったスコールが知らず息を詰めれば、肉壁が雄の形に添うようにぴったりと嵌り、全体で持ってラグナの雄を愛撫する。


「あぁっ、あああっ…!」
「っく……やべっ……!」
「────っっ!!」


 ラグナが一瞬息を詰まらせたかと思った、次の瞬間には、彼はスコールの中へと吐精を果たしていた。
数時間振りに味わうどろりとした熱に、スコールの躯が歓喜に震える。

 ビクン、ビクン、と官能の波に流されて悶える少年と、痛いほどの締め付けに促されるまま、少年の体内へ己の欲望を注ぐ男。
スコールは腹の奥が精液で満たされて行くのを感じていた。
やがてそれは許容量を超え、注がれた道を逆へと押し戻されて行き、男根で栓をされた穴口の隙間から、とぷり、と蜜を溢れさせた。

 搾り取られるままに自身の欲望を吐き出し切って、ラグナはようやく息を吐いた。


「っはー……相変わらず、すげぇ締め付け…」
「……ん…あ……あっ……」


 ベッドシーツに身を委ねるスコールの頬を、ラグナの手が撫でる。
官能のスイッチが入ったままのスコールには、それさえ快感になってしまい、思わず甘い声が漏れる。

 スコールの体内に納められたままの男根は、まだ硬さを失っていない。
あれだけ熱を吐き出したにも関わらず、未だにペニスは固く、大きく、その存在感をスコールにまざまざと伝えている。
スコールは、腹の奥がじん……とした切なさを訴えるのを感じながら、小さく頭を振って、


「ラグ、ナ……もう…寝かせ、ろ……」
「もうちょい……」
「んんっ…!」


 くちっ、とアナルの中でペニスが角度を変えるのを感じて、やっぱりこうなった、とスコールは思う。


「あと、一回って……言った、だろ…っ」
「じゃあ、もう一回だけ……」
「ことわ、あっ、あぁっ……!」


 ぐりぐりと、亀頭の先端で最奥を押し抉られて、スコールは官能の声を漏らす。
呆気なく情けない声を漏らす唇を噛んで、両手で覆って声を隠す。

 ラグナはそんなスコールを見て、しょうがねえかあ、と呟いた。


「まあ、実際、スコールが動けなくなったら俺が困るもんなぁ」
「んっ、んっ…ふっ……動く、な……っ」
「お前の代わりに誰か別の奴が派遣されるって事になるのも、嫌だし」
「ひっ、んっ…!そう、思って、るなら……ぁんっ!」


 独り言のように呟きながら、くいっ、くいっ、と腰を捻って攻めるラグナに、スコールは遊ばれているような気がして、眉根を寄せる。
なんとかラグナの悪戯を止めようと、腰を抱く彼の手に爪を立てるが、ラグナは全く意に介さなかった。

 ぎしり、とベッドのスプリングが音を鳴らす。
ラグナが体を倒して、スコールの上に覆い被さると、挿入がより深くなり、スコールの喉から甘い悲鳴が上がる。


「あぁあああっ……♡」


 根本を強く押し上げられたままで留められ、スコールは白目を剥いた。
アナルの中で、媚肉がびくん、びくん、と痙攣するように震え、ラグナのペニスを揉むように締め付ける。


「や、あ…ラグ、ナ……も…や、めぇ……っ…!」
「判ってるって。今日は此処までで我慢する」
「は、はうっ……んんぅっ……♡」


 ラグナはスコールの最奥を突いたままで、涙目で見上げる息子の眦にキスをした。
きゅっ、と思わずスコールの秘部が反応するようにラグナを噛む。

 呼吸さえも儘ならない様子のスコールに、ラグナはあやすような手付きで触れる。
解放を求めるスコールの手が彷徨って、ラグナの手を捕まえた。
ぎゅう、と縋るように力を籠める手を拾い、握ってやれば、スコールは弱々しい力でそれを握り返した。


「ラ、グナ……早く、抜い、て、くれぇ……っ」


 淫部から絶えず感じさせられる、ラグナの存在。
このままではまた意識を持って行かれるのが判っていたから、スコールは陰部を支配する一物を早く抜いて欲しいと懇願する。

 しかし、ラグナは焦らすように唸った後、


「んー、それは駄目だなー」
「…やっ……さっき…ここ、まで、って……」


 ラグナの思いも寄らない言葉に、スコールは涙を浮かべる。
ぐす、と鼻を啜って子供のように泣きじゃくるスコールに、ラグナは額の傷にキスをして、


「これ以上はしないって、これは本当」
「んっ……ぅ…っ」
「でもって、此処もこのまま。お前を感じながら寝ようと思ってさ」
「…や……」


 耳元をくすぐるラグナの吐息と言葉に、スコールの息が上がる。
薄い腹が上下する度、ひくひくと陰部も蠢いて、その動きをラグナに具に伝えていた。

 ラグナはスコールの髪を撫で、喉を擽り、唇に指を当てる。
薄く開いたスコールの唇から、赤い舌が覗いていた。
それに指先を当ててやれば、スコールは仔猫が水を欲しがるように舌を伸ばし、ちゅ、ちゅ、とラグナの指を舐める。


「んっ、んっ…はふっ…んちゅっ……」
「俺、明日の朝まで、ちゃんと我慢するから、スコールも良い子で我慢してくれよ」
「は、ぅ……んん…っ……!」
「ほらほら、締め付けない。誘ってるみたいだぞ?」


 スコールの舌を指先で遊びながら、陰部の締め付けを感じ、ラグナは揶揄うように言った。
誘ってなんかいない、と言うスコールの言葉は、舌を弄ぶ指で奪われてしまう。

 指が口元から離れて行くと、スコールの唇から名残惜しげな吐息が漏れる。
腹の奥のじゅくじゅくとした疼きが増したような気がして、スコールは両腕で己の躯を掻き抱いた。
狂おしげなスコールの姿に、ラグナの陰茎が膨らみを増せば、それを感じ取ったスコールの躯がまた震える。

 膝を立たせ、腰を浮かせようとするスコールを、ラグナは抱き締めて制した。
身動ぎ出来なくなったスコールは、ただただアナルを広げる欲望の大きさだけを実感させられ、悩ましい声を挙げる。


「ラ、グナ……やぁっ……!」
「大丈夫、大丈夫。スコール、良い子だもんな。ちゃんと我慢できるって」
「は、あぁっ……や…むりぃっ……!」


 スコールに快楽に従順であるようにと躾を施したのは、他でもないラグナだ。
そんなラグナが、この状態のスコールがいつまで自我を保っていられるか、判らない筈がない。

 それでもラグナは、スコールを解放する事も、再び熱情に身を任せる事もしない。
悶えるスコールを抱き締めたまま、本当にこのまま寝入ってしまおうとしていた。


「ラグナ…ラグナぁっ……!」
「んー?」
「むり…っ!こんな、の……耐えれな…いぃっ……!」


 はぁ、はぁ、と熱に溺れた呼吸を繰り返し、スコールはラグナの背に取り縋る。
足をラグナの腰に絡み付かせ、ぴったりと身を寄せるスコールに、ラグナはうっそりと笑みを浮かべ、


「じゃあ、このまま朝まで良い子に出来たら、ご褒美あげるぞ」
「……ふっ、あ…っ…?ご、ほう、び……?」
「そ。気持ち良いご褒美。どうだ?」


 我慢できるか、と促すラグナの笑みの意味を、熱に溺れたスコールは理解していない。
スコールは縋る気持ちで頷いて、褒めるように頭を撫でる男の手に甘えながら、疼く躯が鎮まる事だけを祈って目を閉じた。