秘密のおもちゃ


「今日は随分と仕事が捗っているな」


 旧友の言葉に、ラグナは目を通していた書類から視線を外して、顔を上げる。
ラグナを見下ろす黒の瞳は、何処か楽しそうな雰囲気を含んでおり、時折、部屋の出入口横に立つ少年へと向けられる。

 キロスが見遣っているのは、SeeD服に身を包んだスコールだ。
先達てバラムガーデンに依頼した、『大統領を終日警護』の任務の真っ最中であった。


「やはり、彼がいると君のやる気に大分違いが出るようだ」
「まぁな!さっさと仕事終わらせて、スコールとのんびりしたいからなー」


 そう言ってラグナは再び書類に視線を戻した。

 いつも紙の束で埋め尽くされているラグナの執務机は、今日は綺麗さっぱり片付いている。
処理の終わった書類は、ウォードとキロスの手によって(時折スコールも手を貸す事もある)随時片付けられる事になっているのだが、友人達が急かさずとも片付ける書類が出来上がると言うのは、非常に珍しい事であった。
ラグナは嘗てジャーナリスト志望で、誤字脱字はあれど文章を書く事は決して嫌いではなかったのだが、ではデスクワークが得意なのかと言われると、少々怪しい所がある。
況して国の舵取りに関わる仕事となると、政治だの人心掌握だのと言った類の勉強をしていないラグナには、非常に遣り辛いものがあった。
その所為か、ラグナのデスクワークは度々滞り、駄々をこねる子供のような屁理屈を言っては、友人達に尻を叩かれると言う場面が度々見られているのだが、今日はそんな光景を招く事なく、着々と仕事を片付けている。
デスクワークが得意ではないとは言え、彼自身は決して頭の回転が鈍い人物ではないから、やる気を出せば相応の真価は発揮出来るのだ。
ただ、其処に至るまでの気持ちの持って行き方に、色んな意味でムラがあるだけで。

 キロスは残りの書類の枚数を確認すると、山を綺麗に整えて、デスクに戻した。
ラグナは早速その一番上の書類を手に取ったが、指先が滑ったか、書類ははらりとデスクの下に落ちる。


「取ろうか」
「平気平気。自分でが取れるよ」


 キロスの申し出をやんわりと断りながら、ラグナはデスクの下に身を屈めた。
────直後、


「……んっ……!」


 小さく押し殺す声を聞いて、キロスは振り返る。
視線の先にいたのは、無表情で扉横に立ち尽くすスコールだった。

 何気なくスコールを観察していたキロスは、ふとした違和感を感じて、おや、と首を傾げた。
亡き母に似たのか、スコールは男にしては肌が白いのだが、その白い頬が微かに赤らんでいるように見える。
昨夜は意外と冷え込んだから、寝冷えで風邪でも引いたのか。
任務中に体調を崩すなど、彼にしては珍しい事もあるものだ、と思っていると、ようやく書類を拾ったラグナがデスクから顔を出した。


「あった、あった。いやー、取れて良かった。再発行すると時間かかるから面倒だもんな」
「……そうだな。所でラグナ、スコール君が少々調子が悪いようだが、大丈夫なのか?」


 スコールはラグナの唯一無二の息子である。
その存在を十七年間知らなかったとは言え、現在は大切なものである事は嘘ではない。

 旧友の息子と言えば、キロスにとってもスコールの事は決して他人事ではない。
何と言うか───どう遡っても血の繋がりが見出せる訳ではないが、親戚のような心境とでも言えば良いだろうか。
ラグナとスコールの間で何某か事件があれば、須らく自分も巻き込まれると言う事もあって、キロスはスコールの変調には気を使っていた。

 キロスの言葉を受けて、ラグナが顔を上げる。
碧眼が蒼灰色とぶつかって、蒼灰色がふいっと逸らされた。
眉根を寄せ、微かに唇を噛んでいるスコールの横顔に、キロスはふむ、と嘆息し、


「無理をしているようなら、君から休むように言った方が良い。そうでもしないと、彼は任務に従おうとするからな」
「判ってるよ。でも、今直ぐ休めって言ったって、素直に言う事聞いてくれる性格じゃないだろ?スコールは」


 それが思春期故の父への反発心なのか、任務中に警護対象を放って置く訳には行かないと言う生真面目さなのかは、ラグナにもキロスにも判らない。
何れにせよ、もう少し様子を見てから、タイミングを見て言ってみるよ、と言うラグナに、そうしてくれとキロスは頷いた。


「では、私はこの辺で失礼する。明日もこの調子で頼むよ、ラグナ」
「はいよー」


 ローブの裾を翻したキロスを、ラグナは見ていなかった。
彼は書類を頭から最後まできちんと目を通し、サインする。
いつもの自暴自棄気味な書類捌きとは程遠いその姿に、この調子なら今日はもう心配いらないだろうと、キロスは胸を撫で下ろした。

 扉を開けて潜ろうとして、キロスは足を止めた。
キロスは、扉横で未だに顔を背けたままのスコールに声をかける。


「スコール君」
「……!」


 びくっ、と驚いたように肩を跳ねさせたスコールを見て、これは中々重症なのではないだろうか、とキロスは思う。


「少し体調が思わしくないようだが、大丈夫か」
「……すみません」


 気遣うキロスの言葉に対し、スコールの返事は少なかった。
赤らんだ横顔が、はぁっ、と押し殺した吐息を漏らす。


「調子が悪いのなら、無理をせずに休みたまえ。大統領の警護を依頼したのは此方だが、警備兵は他にもいるからね。自分だけで背負う事はない」
「……はい。お気遣い、有難う御座います」


 任務中だと言う意識からか、スコールの言葉は固かった。
視線は彷徨い、キロスと目を合わせようとしなかったが、これはスコールにはよくある事だ。

 お大事に、と言って、キロスはスコールの肩をぽんと叩いた。
ぴくっ、とスコールの頭が微かに揺れる。
無理をしている様子が伺えるその反応に、自分が長居をすれば尚更意地を張るだろうと見て、キロスは執務室を後にした。

 部屋に残されたのは、この大統領執務室の主とも言うべきラグナと、その護衛を任務として常に傍にいる事を義務付けられているスコールのみ。
外界は夕闇に満たされて久しく、このまま夜になろうかと言う頃合い。
閉じられた扉は次にいつ開かれるかは判らないが、色々と気を回せるキロスの事、ラグナの仕事に問題がないと確認した後なら、親子の為にと人払いもするだろう。
キロスがそうするのなら、ウォードも同様で、余程の火急の出来事でも勃発しない限り、今日はもう執務室を訪れる人間はいるまい。

 静寂に包まれた室内で、スコールが唇を噛んでいる。
両足を揃え、両腕を背中に回して直立不動の姿勢を取っている彼の腰には、ガンブレードが携えられていた。
若しも今、この瞬間、不穏な気配が一片でもあれば、彼は即座に反応してガンブレードを握るだろう───彼が常と何も変わらぬ状態であれば。
実際、今この場に所謂不審者が現れたら、彼はどうするのだろう、と興味が沸いたラグナだったが、それを確かめる術はない。

 ラグナは最後の書類にサインをすると、ペンを置いた。
それで今日の仕事は終わりなのだが、徐にサインを終えた書類を手に取って眺めていると、


「……ふ、……く……っ」


 押し殺す吐息が聞こえて、ラグナは顔を上げる。
視線の先には、先程まで唇を噛んで無表情を繕っていたスコールが、顔を赤らめて俯いていた。

 ラグナは右手をズボンのポケットに入れて、其処に触れたものを親指で押した。
途端、それまで直立不動の姿勢を保っていたスコールが、唇を噛んで膝を崩す。


「っあ……あぁっ……!」
「声出したらバレちゃうぞー」
「ん、っくぅ……!」


 揶揄うように、楽しそうな声で言ったラグナを、スコールが睨む。
しかし、その瞳は涙を滲ませ、情欲を孕ませ、覇気も何もあったものではない。

 ラグナは反対のポケットにも手を入れて、先と同様に入っていたものを親指でカチカチと押す。
ヴ、ヴ、ヴ、ヴ、と羽音のような音が鳴って、スコールは自分の身体を掻き抱いて蹲る。


「や、あっ…!ん、っふ……!」
「どっちが気持ち良い?」


 床に倒れ込み、唇を噛んで悲鳴を殺すスコールを遠目に眺めながら、ラグナは問う。
スコールはぎりっと拳を握り、冷たい床に転がったまま、もう一度ラグナを睨み付けた。

 ラグナが両手に握ったものを同時に指で押す。


「ひっあぁっ、ああぁっ!」


 ビクッビクッ、ビクン!とスコールの躯がのたうち、体を庇うように丸く縮こまる。
しかし、どんなにスコールが身を守ろうともがいても、服の内側から齎される刺激から逃げる事は出来ない。


「あっ、あひっ、ひぃいっ…!や、あ…ラグナっ……、止め、ろぉっ……!」


 スコールはSeeD服の上着の胸元と、ズボンのフロント部分を握り締めて言った。
床に転がり、芋虫のように躯を丸めて捩らせるスコールを眺めながら、ラグナは手の中のものを左右交互に押して離してと繰り返していた。
その度に、羽音は強くなったり小さく鳴ったりを繰り返す。


「あっ、あっ……あふぅうっ!嫌…あ……ひぃいんっ!」
「上の方が気持ち良さそうだな」


 そう言って、ラグナは左手に持ったものを大きく捻った。
ヴヴヴヴヴ、と羽音が強くなり、スコールは胸を仰け反らせて喘ぐ。


「ああぁっ!やっ、嫌っ…!やめ、ぇ……っ!」
「ん?上は嫌か?じゃあこっちかな」


 ラグナは左手のものを一度軽く押して、右手に持っていたものを強い力で押した。
羽音が消えた代わりに、ウィィィイ、と言うモーター音が大きくなり、スコールは床に爪を立てて腰を揺らす。


「あっ、だめっ、あぁあんっ!な、なかぁっ…!掻き回すなぁあっ!」


 ビクッビクッ、と四肢を悶えさせのたうち、叫ぶスコール。
そんな彼の前部は膨らんでおり、ズボンのフロントを窮屈そうに押し上げている。

 大統領警護と言う任務中にあるまじき痴態を晒すスコールを、ラグナは昏い笑みを浮かべて眺めていた。
ストイックを形にしたような、性的な色さえも押し隠すような堅苦しい服を着て、官能の声を挙げているスコール。
彼の頭の中は、キロスの前で見せていた凛々しく整えていた表情に反して、とっくの昔に茹で上がっている。
常日頃、褥であっと言う間に享楽に落ちる姿を見ているだけに、よく今まで持ったなあ、と件の原因であるラグナは、こっそりと感心していた。

 スコールはひくひくと全身を戦慄かせながら、唇を噛んで喘ぎ声と息を殺そうと試みる。
ふぅ、ふぅ、と荒い鼻息が、静かな執務室の中で反響する。
その中で、モーター音と羽音が交互に強くなっては消える度、スコールはビクッ、ビクッ、と躯を跳ね上がらせていた。


「んっ、あんっ…!ふ、うぅ……あふぅっ…!や、あっ……胸、だめぇっ……!」


 強くなった胸部への刺激に、スコールは天井を仰ぐ。
両手でSeeD服の胸元を掻き毟る仕草を見せながら、スコールは虚ろな瞳を彷徨わせていた。

 ラグナが手の中のものを捻ると、今度はスコールの下部がビクッビクッと跳ねる。
スコールは俯せになって床に這い蹲り、尻を高く掲げ、腰をゆらゆらと揺らめかせた。


「ひっ、あひぃっ…!や、あ…中、ぐるぐるしてっ……うごいてるぅうう……っ!」


 ウィイ、ウィィ…と言うモーター音が響いて、スコールは床に爪を立てながら、涙の滲んだ瞳でラグナが座るデスクを見詰める。


「ラ、ラグナ…ラグナぁっ…!」
「ん?」


 呼ぶ声に、どうかしたか?と言わんばかりに、いつもと変わらない表情でラグナが返事をすると、


「もう、もう駄目ぇっ…!こんなの…嫌、だ…あぁあ……っ!」


 縋る瞳で訴えるスコールの姿に、ラグナは自分の下部に血が集まるのを感じた。
全くどうして、彼の泣いている姿と言うものは、可哀想で助けてやりたいと思う反面、もっと苛めて泣かせてやりたいと言う衝動を生むのか。
本人はそんな自分の表情に全く自覚がないものだから、性質が悪い。

 ブーツを履いた足が何度か地面を蹴り、力を失って膝が崩れる。
殆ど肌を露出させないSeeD服の中で、彼の躯がどんなに熟れているのかを想像するだけで、ラグナは昂って行く。
普段は手袋をしている所為で見られる機会のない手の甲は、彼の白い頬と同様に赤らんでおり、じっとりと汗の珠を滲ませていた。


「ラグ、ナ……もう、止め、て……ひと…来たら…もう……っ」
「もう隠せない?」
「………っ」


 ラグナの言葉を、スコールはこくこくと首を縦に振って肯定した。
そうだろうなぁ、とラグナが思っている事を、躯を走る衝動を押し殺そうとしているスコールは知らない。

 ラグナはポケットに入れていたものをデスク上に出した。
手の中にすっぽりと隠れて収まるサイズの四角形が二つ。
それらには、半円状の細いボタンが左右対称に取り付けられている。
左右にそれぞれ『HIGH』『LOW』と記されたそれをラグナが押すと、羽音やモーター音が交互に大きくなり、小さくなり、スコールの躯を弄ぶ。

 スコールは自身の股間部分を両手で押さえ付け、ふるふると躯を震わせていた。
ビクッ、ビクッ、とスコールの太腿が何度も跳ね、唇の端から飲み込む事を忘れた唾液が零れ、床を汚す。


「も、だめ……だか、ら……このまま、だとっ……俺…ぇ……っ」
「誰かにバレるかもって事なら、気にするなよ。もう今日は誰も此処には来ないからさ。多分だけど」
「あぁっ……!っそ、そんな…事っ…じゃ、なくて……ひぃんっ」


 ビクン、とスコールの躯が一際大きく跳ねて、股間を押さえ付けるスコールの手に力が篭る。
フロントを押し上げるものを掴んでいる手を見て、ああ、とラグナは手を叩き、


「そっかそっか。スコール、イきそうなんだな」
「…は、ぁああっ……!」


 ラグナの指摘に、スコールの躯がビクビクと反応して応える。
最早スコールの身体には幾許の余裕もなく、早く止めて、と蒼灰色の瞳が涙を浮かべて訴える。

 ラグナは人懐こい笑みを浮かべ、デスクに置いていたボタンを手に取った。
それを見たスコールが、微かに安堵したようにほっと息を吐いた瞬間、ラグナはボタンの『HIGH』のスイッチを押す。
途端、ヴヴヴヴヴ、と言う羽音が鳴って、スコールの胸部に強い刺激が強制される。
収まるとばかりに思っていた刺激が一気に強くなったのを感じて、スコールは目を見開く。


「ああぁああっ!やっ、あぁっ!胸、だめっ、ひぃい!あひっ、ひっ、とめっ…とめ、てってぇ…あぁああっ♡」


 スコールは床の上を転がり、仰向けになって、背を弓形に撓らせた。
膝を立てて腰を浮かせ、ビクビクと全身を痙攣させ、強い刺激から逃げ場を求めるように両手で躯を掻き毟る。


「ああっ、やっ、嫌ぁっ…!嫌、なのにぃっ…!も、イくっ、イくっ…、イくぅううんっ♡」


 床に爪を立て、足を爪先まで張り詰めて、スコールの熱は弾けた。
甲高い甘いスコールの悲鳴が、広い執務室の壁に反響して木霊する。

 その後も振動音とモーター音は止まる事なく、スコールの躯を苛み続けた。
スコールがどんなに身を捩っても、体を揺さぶっても、掻き抱いても、音は消えない。
この音を止めるには、発信源がその力を完全に失うか、ラグナが手元にあるスイッチを切り替えるしかないのだ。


「あっあひっ、ひぃっ…!ラ、グナ…だめっ、てぇえ…っ!あぁあっ!」
「でも、気持ち良いからイったんだろ?」
「ひふっ、ふくっ、うぅ…違、あぁああんっ♡や、やだ、止めっ……、うぅうん…っ!」


 ラグナがスイッチを弄ると、モーター音が一際強くなって、スコールは細い腰を大きく捩る。
昂ぶりの最高潮を迎えて間もない躯は、身を焼き切る程の強い刺激を甘受するには耐えられず、只管解放を求めてラグナを見詰める。


「ラグナ、ぁ…っ!頼、む、からぁっ……、止め、て…ひぃうっ…!」


 ビクン、とブリッジするように大きく背を仰け反らせるスコール。
ズボンのフロントが大きく膨らんでいるのを見せ付けるように突き出され、ヒクヒクと下肢を震わせる姿に、ラグナはこっそりと唾を飲む。

 ラグナは二つ並べたボタンスイッチを眺めて、うん、と頷いた。
はぁ、はぁ、と蕩けた瞳を彷徨わせ、体を仰け反らせて悶えているスコールを見て、彼の名を呼ぶ。


「スコール。こっちにおいで」
「ふ、あ……?」


 自分が呼ばれた事を、スコールはしばらくの間、理解出来なかった。
熱に溺れた顔を持ち上げ、ようやくラグナと目を合わせると、もう一度「おいで」と言われた事でようやく理解に至る。

 のろのろと起き上がろうとして、その躯が途中で止まる。
腹の奥を押し潰すように圧迫する違和感に、スコールはビクッ、ビクッ、と躯を震わせ、涙の滲んだ顔でラグナを見上げた。
動く事も儘ならないと言う表情で、視線で縋るスコールに、ラグナはもう一度、


「おいで、スコール。こっちまで来れたら、止めてやるから」


 デスクに片腕で頬杖をついて、右手を差し出し、そう言った。
デスクは執務室の奥に設置されており、スコールがいるのは出入口から一メートルと離れない位置。
此処で手を伸ばしても、お互いの手が届かない事は判り切っているが、ラグナはその場を動かず、あくまでスコールに此方に来るようにと促した。


「このっ……覚え、てろ……っあぁあっ!」


 恨み言の如く呟いたスコールだったが、それも強くなったモーター音に掻き消された。
不意打ちのように襲う衝撃に、スコールはがくがくと膝を震わせる。

 スコールは唇を噛んで、振動音とモーター音が齎すものに耐えながら、体を起こして行く。
少し姿勢を変えただけで、スコールを苛むものは容赦なく牙を剥き、未成熟な躯を蹂躙する。


「ふ、ぁ……あぁうっ……」


 押し殺した声が、唇の隙間から零れてしまう。
よろよろと、赤ん坊が初めて歩いているような頼りない足取りで、スコールはラグナのいるデスクへ向かう。

 あと少しでデスクまで届くと言う所で、ラグナはスコールを呼んだ。
顔を上げた彼と目を合わせ、ラグナは椅子に座った自分の横を指差す。
こっちに来い、と言う無言の指示に、スコールは眉間の皺を深くしたが、ラグナが再びスイッチに手を伸ばそうとするのを見て、大人しく従った。


「ん、ぅ……」
「よーし、良い子だな」
「…あっ……!」


 覚束ない足取りのまま、這う這うの体で辿り着いたスコールを、ラグナは抱き寄せて褒めた。
スコールはラグナの執務椅子の肘掛に縋り、膝の力を失って崩れ落ちる。

 ラグナに抱き締められた事で、更なる苦痛がスコールを襲った。
ヴヴヴ、と言う羽音がくぐもり、スコールは音から逃げようと胸を反らす。
が、ラグナはそんなスコールを強い力で抱き寄せて、ぎゅう、と腕の中の檻に閉じ込めた。


「ふあっ、あっ、あぁっ…!や、ラグナ…っ」
「ん?」
「い、や……あ、当たって…押し付けるの…っ、止め、ろぉっ…!」


 抱き締められた事で密着するラグナの身体を押し返そうと、腕を伸ばして突き放そうとするスコールだったが、その腕は震えるばかりで、男の身体はびくともしない。
終いには、押し退ける力も失い、縋るようにラグナの草臥れたシャツの襟下を握るだけとなった。

 先程まで押し殺していたスコールの息が、再び逸って行く。
悶えるように何度も身体を捩るスコールを見て、ああ、とラグナが小さく笑う。


「そうそう、此処にあるんだよなぁ」
「あぁっ、あぁああっ…!」


 此処、とラグナの指が、スコールの胸を押し潰すと、スコールが甲高い声を挙げる。
其処には人の身体には先ず存在しないであろう、無機物的な硬質な感触があり、ラグナの指先にはっきりとした振動を伝えていた。

 ラグナの指が押さえているのは、厚手のSeeD服の下で震えている、リモコン式のローターだ。
スイッチを切らない限り、いつまでも震え続けるそれは、ビニールテープでスコールの左右の乳首に固定されている。
これの所為で、スコールは今日一日、絶えず乳首を攻められ続けていた。


「や…ラグナ…ぁっ…!そこ…んんっ!」


 ぐりぐりと指でローターを押し付けられて、スコールは振動の強さをより深く感じてしまい、びくっ、びくっ、と肩を震わせる。
ラグナは眉根を寄せて強まる快感を耐えようとするスコールの唇に顔を寄せて、ちゅう、と下唇に吸い付いた。


「んんぅっ……!」
「んー……」
「ふ、あふっ……くふぅんっ…!」


 ラグナがコツコツと指先で固い感触を突く度、スコールの身体がピクッ、ピクン、と小さく跳ねた。
口付けられたまま、スコールがもぞもぞと身を捩らせ、ラグナのシャツを握る手に力を籠める。

 ラグナの手でSeeD服の前が開かれると、火照ってほんのりと赤らんだ白い肌が露わになる。
ウェストラインを作るベルトを外していない為、スコールの躯が全て開かれる事はなかったが、胸元を大きく開けてやれば、ピンク色の乳輪と、その上にテープでぴったりと張り付けられた、卵型のローターがある。
SeeD服の下に着ている筈の、シャツやインナーの着用は、ラグナによって拒否された。


「良かったな、キロスに気付かれなくて」
「っあ……!」


 テープの端から覗く乳輪を指でなぞりながら言ったラグナに、スコールの顔が赤くなる。


「SeeD服、結構ごついもんな。だから気付かれる事ないって言っただろ?」
「…や、う……そういう、問題、じゃ……んんっ!」


 ぐっ、と左右のローターを押されて、スコールの身体が震える。


「そもそも……っ、あ、んたが…こんな、変態みたいな、真似…っ…しなければ…あっ…!」
「そんな事言うけど、スコール、昨日の夜はちゃんと良い子で我慢してたからなぁ。約束しただろ?良い子で我慢できたら、後で気持ち良いご褒美あげる───って。だから、コレ」
「あぁん……っ!」


 ラグナの手がリモコンスイッチを遊び、ローターの振動が強くなって、スコールは背を逸らす。
ラグナはスコールの背中を抱いて、逃げないように捕まえると、乳輪に舌を這わせた。
ローターのような機械と違い、生温く、ねっとりとした感触を残されて、スコールはぞくぞくとしたものが背中を上って行くのを感じていた。

 ラグナはくつくつと笑いながら、スコールの乳首を虐めるローターを固定しているビニールテープに爪を立てた。
皮膚とは違い、つるつるとした感触のするテープの角端を摘んで、人差し指の爪先でコリコリと擽ってやる。
くすぐるように触れる感触が判るのか、スコールはいやいやと頭を振って、ラグナの悪戯を止めようと彼の手を握る。


「剥がしてやろうと思ってるだけだよ。それとも、スコールはローターが気に入ったか?このままの方が良い?」
「…い…やぁ……っ…」


 テープの縁を爪先で遊びながら言うラグナに、スコールはふるふると首を横に振る。


「取って…早く、取ってぇ……っ!ちくび、ヘンになるからぁ…っ!」
「はいはい」


 ラグナの頭に縋るように腕を回し、涙を浮かべて懇願するスコールに、ラグナは子供をあやすような優しい声で答えた。

 火照ったスコールの身体は、全身から汗を滲ませており、それがSeeD服の中で空気を篭らせ、じっとりとした湿気を作っていた。
そのお陰か、ローターを挟んで乳首に貼られたビニールテープは、それ程苦もなく剥がされる。
しかし、ローターの所為で敏感になり切った乳首周りの皮膚がテープに引っ張られる感触に、スコールはヒクヒクと体を戦慄かせていた。


「んっ、んっ…んんっ……♡」
「ほい、片方取れたっと」
「ん……んんっ…!くぅん…っ」
「よし、こっちも取れた。おーおー、見ろよ、スコール。お前の乳首、腫れてるみたいに膨らんでるぞ」
「あ、う……」


 スコールの乳首のテープが剥がれ、振動していたローターが離れと、抑えるものを失くした乳首がぷっくりと膨らむ。
まるで勃起しているかのように自己主張をしている其処に、ラグナは剥がしたばかりのローターをもう一度押し当てた。


「あぁああんっ…!」


 ビクッ、ビクッ、とスコールの身体が跳ねて、ラグナの首にしがみ付く腕に力が篭る。


「や、だ……ラグナ、らぐなぁ…っ!もう……もう、乳首…っ、乳首いやぁあ……っ!」
「そっか?俺には気持ち良さそうに見えるけど」


 ラグナの言葉に、スコールは顔を真っ赤にして、首を横に振った。
本当に嫌だ、と訴えるように、スコールの細い指がラグナの白髪交じりの黒髪を掴んで引っ張る。

 ラグナがローターを胸の果実から放すと、はぁ、はぁ、と熱の篭った吐息が耳元で零れる。
こくん、とスコールは小さく唾を鳴らすと、唇を噛んで眉根を寄せ、顔を上げた。


「ラグナ……んっ、…こっちも、…早、く……」


 細い腰をゆらりと揺らめかせて、スコールは言った。
そんなスコールに口元を緩めながら、ラグナはデスク上に置いたままにしていたスイッチを掴んで、ボタンを押す。
ウィイイイ、とモーター音が強くなって、スコールは背を仰け反らせた。


「ひあぁあっ!あっ、やっ、いやぁあ…っ!」


 スコールの膝が崩れ落ち、床に着く。
スコールはラグナに縋ったまま、膝立ちの格好で、ビクッビクッと細い腰を戦慄かせていた。


「は、うっ…!や、だめ…止めっ……抜い、て…んんっ!」
「抜くだけで良いのか?」


 涙を浮かべて訴えるスコールに、ラグナは問う。
途端、スコールの身体が緊張したように一瞬強張って、ラグナに捉まる手に力が篭る。
スコールの潤んだ唇が戦慄いて、零れる熱の吐息がラグナの耳元を擽る。

 ラグナの手がスコールの腰を辿り、ズボンの上から尻を撫でる。
筋張ったラグナの手の感触を布越しに感じながら、スコールは己の躯の奥で燻っていたものが溢れ出すのが判った。
元より理性などと言うものは形骸化しており、この期に及んで意地を張る気力すらもないスコールは、遊ぶラグナの指が促すものに逆らう事は出来ない。
スコールはのろのろと顔を上げ、艶の篭った瞳でラグナを見詰め、


「ラグナ…の……ちんぽ、……欲、しい……っんん♡」


 双丘の狭間をラグナの指がくすぐって、スコールは喉を引き攣らせた。
ひくん、ひくん、と四肢を震わせる少年の言葉を聞いて、ラグナの唇が弧に歪む。