声が消える先


 脳裏に浮かぶ青年の顔に、スコールの眦に涙が滲む。
言える訳ない、と思って口を噤んだのは自分の方だ。
今更、彼に助けを求めるなんて、都合の良過ぎる話だろう。

 それでも、彼の事を思い出さずにはいられなかった。
あの手で触れて欲しい、撫でて欲しい、抱き締めて欲しい。
臭い匂いのペニスなんて吐き出して、彼の口付けて全部塗り替えて欲しかった。
そう思ったけれど、そうしたら彼まで汚れてしまう気がして、嫌だ、と思った。
名前も知らない男達に蹂躙されて、外も中もどろどろに汚れてしまった躯を、彼に見られるのも怖かった。

 どくん、と体の奥で肉欲が弾ける。
叩き付けるように注ぎ込まれる精液の感触に、ぶるりと腰が震えた。
背中を奔るぞくぞくとしたものが、悪寒なのか快感なのか、スコールにはもう判らない。
腰を抱いていた背後の男が退いて、ぬるぅ、艶めかしい感触を与えながら、アナルからペニスが抜けて行く。
ペニスをしゃぶらせていた男が場所を譲って、代わりに後ろに座った。
スコールの腰が引き寄せられて、栓を失って注がれた子種を垂れ流しているアナルに、またペニスが宛がわれる。
空いた口には、精液と腸液で濡れそぼったペニスがつきつけられ、スコールの唇をぐりぐりと割り開こうとしていた。


(……レオン……)


 虚ろな瞳で、声なく彼の名前を呼ぶ。
眦の雫が、つう、と頬を伝い落ちた時だった。


「────何をしている?」


 地を這うような、静かで重い声だった。
スコールの痴態に興奮しきっていた男達を、ブリザードのような冷たい気配が覆う。
ぞくりと恐怖を感じた男達が振り返れば、光を纏った刃が、文字通りの眼前を振り抜けて行った。

 突風のように噴き荒れた風は、長く伸びた刀身が巻き起こしたものだった。
振り抜いた形で止められていた光は、男達の傍らの本棚が滑り崩れた後で、ゆっくりと下ろされた。
残る風に揺れる濃茶色の前髪の隙間から覗く蒼灰色は、怒りを滲ませながらも、静かな光を湛えている。
それは彼の怒りの度合いがその程度、と言う訳ではなく、逆に臨界点を越えているからこその、絶対零度の瞳であった。

 ゆっくりと近付いて来るその背に、鬼か般若を見たのは、一人ではない。
幽鬼を思わせる足音に捕まれば、きっと命はない。
そう悟った男達は、囲んでいた少年を突き飛ばすように解放させると、辺りを囲う本棚に縋り付いた。
早く逃げなければいけないのだが、逃げ道は幽鬼の向こう側にしかない。
幽鬼に立ち向かう度胸などある筈もない彼等は、本棚を上ろうと焦っていたが、幽鬼はそんな男達には目もくれずに、床に転がされた少年に歩み寄る。


「……」
「あ……う……?」


 自分が解放された事は疎か、自分がどんな格好をしているのかも、スコールは判っていなかった。
虚ろな瞳で見上げる少年に、幽鬼が強く唇を噛む。
手に握り締めたグリップが、ぎしりと軋んだ音を立てた。

 幽鬼が興味を見せないのを良い事に、男達はこそこそと逃げ道に果せようとしていた。
が、抜けた腰で四つ這いに逃げていた一人の男の背を、ガッ!!と固い靴底が踏み付ける。


「ヒィッ!」
「答えろ。此処で何をしている?」
「あ、あ……何、何も……」
「ほう?」


 ゴリ、と靴底が男の背骨に食い込んだ。
このまま踏み追ってしまうのではないかと思う程、其処には力がかかっている。
更に幽鬼は、手にぶら下げていた刃を、男の顔の横に突き立てた。
かつて、この街を治めていた賢者の書庫は、本棚も含めて上等な素材で作られており、床も見事に磨かれた大理石が使われていた。
その床に、銀色の刃が突き刺さっている。


「その汚い格好で、何もしていないと」
「ひ、ひ……!」
「か、勘弁してくれ!」
「あ、おい待てよ!置いて行くな!」


 一人の男が情けない悲鳴を上げながら、仲間達を置いて走り出した。
他の二人もそれを追って行き、踏み付けられた男だけが取り残される。
残された男は、恐怖に染まった目で、自身を踏み付けている幽鬼を恐る恐る見上げた。


「あ、あの…あの……」
「………」
「ひ……!」


 幽鬼がゆっくりと刃を持ち上げるのを見て、男はガタガタと震えた。
細身に見えてしっかりとした体躯が出来ている幽鬼は、その剣一本で街の治安を守っている。
その刃は、普段は専ら街を脅かす影に向けられているが、必要とあれば───そう、正しく自分達のような俗物にも、向けられる事はある。
男の脳裏に、首と胴体が離れた己の体が浮かんだ。

 だが、刃が落ちて来る事はなかった。
ゆっくりと刃が下ろされると、背中に乗っていた靴底も離れる。
見逃されたのか、と男が怖々と顔を上げると、絶対零度の瞳に貫かれた。


「消えろ。二度と俺達の前に顔を見せるな」


 命は見逃されたが、許された訳ではない。
次に鉢合わせでもしようものなら、その時こそ、首と胴が離れる事になるだろう。
男はそれを理解して、縮こまったシンボルをぶらつかせながら、情けない悲鳴を上げて本棚の向こうに消えた。

 一人立ち尽くす男───レオンは、無人になった逃げ道の向こうを睨んだまま、ガンブレードを強く握り締めた。
グローブの中で手が白む程の力が籠められる。
やはり振り下ろせば良かった、と不穏な思考が過ぎり、そんな事をしている暇はなかった、と直ぐに理性を取り戻す。

 ずる、と衣擦れの音が聞こえて、レオンの意識が現実に返る。
振り返ると、スコールが体を起こしていた。
自分の状況が理解できていないのか、呆けた顔で自分の空の手を見下ろすスコールに、レオンは駆け寄った。


「スコール」
「……」


 名前を呼ぶと、スコールは顔を上げた。
その表情は、いつも寄せている眉間の皺も解け、酷く幼い印象になっていて、まるで見知らぬ場所で目覚めた子供のようだ。

 レオンを見上げた蒼灰色の瞳が、また自身の手のひらへと戻る。
手の中は空だったが、白濁液でぐっしょりと濡れていた。
生臭い匂いをまとわりつかせたそれを見て、光が戻り始めたスコールの瞳が、大きく見開かれて揺れる。


「あ……」
「スコール、」
「……!」


 零れた音に、レオンがもう一度名前を呼ぶと、スコールの肩がビクッと跳ねた。
宥めようとレオンが手を伸ばすと、ぱしん、と乾いた音がして、じんとした痛みがレオンの手に残る。


「あ……」


 振り払った後で、其処にいるのがレオンであると、スコールはようやく認識した。
手を彷徨わせるレオンを見て、スコールはかちかちと歯の根を鳴らして蒼褪める。


「レ、オン……ごめ…悪かっ……」
「……良い。それより、体は────」
「……!!」


 今一度、レオンが手を伸ばそうとすると、スコールは顔を引き攣らせて後ずさった。


(……怖い、か……)


 瞳に宿る恐怖の色に、レオンは自分が怯えられている事に哀しくなったが、その程度の事で、と自分を恥じる。
今この場で、最も傷付いているのは、スコールに他ならないのだから。

 レオンは伸ばしていた手をゆっくりと下ろした。
スコールは、そんな一挙手一投足すら見逃すまいとするように、見開いた眼でレオンを見つめている。


「すまない。もっと早く来るべきだった。いや、もっと早く、気付くべきだった……」


 スコールの様子が可笑しい事は、ずっと判っていた事だった。
彼を刺激しないようにと、しばらく見守ろう等と、悠長な事を考えるべきではなかったのだ。

 痛ましげに眉根を寄せ、目を伏せて詫びるレオン。
スコールはそんなレオンを見て、震える体を抱き締めながら、ふるふると首を横に振った。
声も上手く出ないのだろうスコールに、レオンは涙に濡れた頬を撫でようと手を伸ばそうとして、止める。
怯えきった色の少年の瞳に、これ以上怖がらせるのは酷だと思った。


「……立てるか、スコール」
「……」
「………」


 動けるのならこの場から離した方が良い、と思ったレオンだったが、スコールは答えない。
動こうともしなかった。
ひく、と喉が引き攣って、しゃっくりを零しているのが聞こえる。

 傍にいない方が良いのかも知れない。
複数の男に蹂躙された今のスコールにとって、レオンすらもあれらと同じ恐怖の対象に見えていても可笑しくない。


(……でも、一人にさせる訳には……)


 この部屋にはもう自分達以外には誰もいない筈だが、それでもスコールを一人にするのは抵抗があった。
このまま一人にしたら、スコール自身が何をしようとするか判らないと言うのもある。
出来れば傍にいてやりたい、とレオンは望んでいた。

 だが、傍にいるだけではきっと余計に怯えさせるだけだろう。
レオンの手を拒絶したスコールの反応が、その証左と言えた。

 レオンは唇を噛んで思案した後、立ち上がってジャケットを脱いだ。
シャツ一枚の見るも無残な格好にされているスコールの肩に、ジャケットを羽織らせる。
それだけで、スコールの体がビクリと震えたのが見えた。


「……其処で待っているから、落ち付いたら、一緒に帰ろう」
「……」
「………」


 他に言える言葉が見付からず、抱き締めてやる事も出来ず、レオンはスコールに背を向けた。
床に放られていたスコールの服を拾って、彼の傍を離れる。
此処は背の高い本棚ばかりが並んでいるから、スコールの視界から外れる場所には事欠かない。
突き当りを曲がった所で、スコールが追って来るのを待とう───と思っていた時だった。

 どん、とレオンの背中にぶつかる衝撃。
寄り掛かるように体重をかけるそれに、レオンが肩越しに背中を見れば、濃茶色の髪があった。


「スコール、」
「……っ」


 ぎゅう、とスコールの手がレオンのシャツの背を握る。
その手が酷く震えているのが伝わって、レオンは目を伏せる。


「……怖いんだろう、スコール」


 レオンの言葉に、スコールは背中に押し付けた頭を左右に振った。
違う、とスコールは答えたが、レオンにはそうは思えない。
レオンの手に、既に残っていない筈の、打ち払われた時のじんとした痛みが蘇る。

 しかしスコールは、もう一度首を横に振って、


「…違う……」
「……」
「違う……怖いんじゃない……あんたの事、恐いなんて…思う訳、ない……」


 ぎゅう、とシャツを握る手に力が篭った。
ひっく、ひっく、としゃくり上げるのが聞こえて、振り向くべきかレオンは迷う。

 レオンの背にしがみ付いたまま、スコールは涙を滲ませた声で言った。


「嫌だったんだ。あんたに触られるの、嫌だった。でもそれは、あんたが怖いからじゃなくて……俺、汚いから……一杯、汚くなったから……」
「……そんな事───」
「だから、…あんたまで、…汚れる、から……っ!」


 だから触れられたくなかった、だから振り払ってしまった。
その直後、その行為を拒絶のものと思ったのであろうレオンの表情を見て、しまった、と思った。
触れられるのが嫌だった訳ではない。
スコールが怯えていたのは、彼を汚してしまう事で、それさえなければ、汚れた躯でもそれが許されるのならば、レオンの温かい手で触れて欲しかった。
それから、触れようとしては止めるレオンを見る度に、違うのに、と言おうとしたけれど、喉が引き攣ってまともな声も出せなかった。

 スコールの嫌がる事を、レオンは絶対にしない。
だから、スコールが触れられるのを嫌がっていると思ったら、レオンはもう二度とスコールに触れる事はないだろう。


「あんたが怖いんじゃない……でも…、俺の所為で、あんたまで……汚したくないから……!」


 消え入りそうな、ようやっと絞り出した声で、スコールはそう言った。
それが自身の勇気の限界だったのだろう。
ひく、と喉を引き攣らせて、スコールはレオンの背に押し当てていた額を放す。

 スコールの目の前に、自分の涙を滲ませたシャツがある。
僅かに色の変わっている其処に、スコールは指先を引っ掛けて、直ぐに離した。
これ以上、汚れた自分がレオンに触れるのは赦されないと思ったからだ。

 だが、手を離したと思ったら、レオンが振り返って、スコールは強い力で抱き寄せられた。
突然の事に目を丸くするスコールを、レオンは腕の檻に閉じ込める。


「…レオ、ン……駄目だ…あんたまで、汚れる……」
「お前が汚いなんて、そんな事がある筈ないだろう」


 レオンの口調は、強いものだった。
スコールの後頭部にレオンの手が添えられ、小さな子供をあやすように、優しく撫でる。
それだけで、スコールの眦に大粒の雫が浮かんだ。


「ふ……う……っ」
「お前は何も悪くない。お前は何もしていないだろう」
「ひ…う……っ、うぅ……っ」
「何もしていないのに、お前がそんな事を怯える必要なんてない。俺は、お前が汚いなんて、思っていない」
「……レオン…レオ、ンぅ……っ!」


 泣きじゃくり始めたスコールの唇を、レオンは己のそれで塞いだ。
ついさっきまで、其処に逃げ散った男の一物があった事を、レオンも忘れてはいない。

 スコールの口の中は、唾液と誰の物か判らない苦い物で一杯になっていた。
レオンは微かに眉根を寄せたが、苦しげに眼を閉じているスコールの眦に滲む雫を見て、彼の頬を捉えて固定させると、スコールの舌を絡め取って啜った。
じゅるっ、じゅっ、と音がする度、ビクッ、ビクッ、とスコールの体が震える。
裸身のままの下半身が震え、元々碌な力も入っていないのであろう膝が頽れた。
レオンはスコールの腰を抱いて支え、彼の咥内を汚していた苦いものを舐め取って行く。


「ん、んぅ…っ…!は、ふぅんっ……!」


 口の中を隙間のない程に万遍なく弄られて、スコールの背がぞくぞくと粟立った。
レオンのシャツを握る指先から、次第に力が抜けて行き、最後にはただ添えられているだけになっている。

 スコールの咥内の苦い物を舐め終えると、レオンは一端唇を放した。
本能的に不足した酸素を補おうと、はっ、はっ、とスコールは肩で呼吸を繰り返す。
それが幾らか落ち着いて来ると、レオンはスコールの顎を捉えて、もう一度キスをした。
今度は貪るような激しさではなく、逃げようとする舌を捕まえると、舌先でちろちろとくすぐってやる。
ビクッ、ぶるっ、とスコールの体が戦慄いて、彼の下腹部がきゅうっと切なげに疼いたかと思うと、どろっ……と白濁液がスコールの秘部から溢れ出した。


「んんぅっ…!」
「ん……」
「んっ、んむぅ…っ!は、ふぅっうぅ…ん…っ!」


 止まない口吸いにスコールの体が熱くなって行く。
彼を汚してしまうのに、と思いながら、吸われる心地良さに逃げる事が出来ない。
咥内の天井をねっとりと舐められて、スコールはくぐもった声で啼いた。


「んんぅうぅっ


 ビクッ、ビクッ、ビクッ、とスコールの体が大きく震え、びゅくっ、と彼の股間から蜜液が噴き出した。
男達の手で散々弄ばれ、強引に射精させられたものの、その後は昂ぶりとは裏腹に精を持て余し続けていた所為か、噴いたそれはどろりと濃いものになっている。
密着していたレオンのシャツに付着した精液は、じっとりと深い沁みを作りながら、吸い込み切れなかった粘着水分を二人の体の間を滑らせて行った。

 スコールが果てた事に気付いて、レオンはゆっくりと唇を放した。
すっかり蕩けた蒼灰色の瞳が、ぼんやりとレオンの顔を映している。
レオンはそんなスコールを見詰め、ほんのりと赤らんだ頬に手を滑らせ、


「スコール。お前は汚れてなんていないし、俺が汚れるなんて事もない。そんなに怖がらなくて良い」
「……レ、オン……でも、それでも、俺……一杯……色んな事、されて……レオンに嫌われるような事、一杯……」


 男のペニスを咥えてしゃぶらされた。
手に握らされて奉仕を強要された。
秘園に挿入されて、中に出された。

 どれも、スコールが同居人達にされた事がある事ばかりだ。
だが、好いた者に愛される事と、望んでもいない相手に無理矢理強制されて行うのとは違う。
スコールは愛してくれる人達以外には絶対にされたくないし、したくもない事ばかりだった。
それを、強姦とは言え行わされた事が、彼等への裏切りを働いたように思えてならない。

 だから、きっともう嫌われたんだ───と、スコールがそう考えている事は、泣き出しそうな顔を見れば判る事だった。
レオンはそんなスコールを抱き締め、ゆるゆると首を横に振る。


「嫌いになんかならない。何があっても、絶対に」
「……っ」
「不安になるなら、何度でも言ってやる。嫌いになんてならない。お前が自分が汚れたというなら、俺が綺麗にしてやる。それでも自分が赦せないなら、俺も一緒に汚れるよ。お前と同じなら、お前はもう何も気にしなくて良いだろう」
「そ、んな…事……駄目、だ……あんたは、皆の……」
「知らない。お前がいなくなる位なら、お前が離れてしまう位ななら……他の事なんて、もうどうでも良い」


 レオンの言葉に、スコールは頭を鈍器で殴られたようなショックを受けていた。
レオンにとって故郷であるこの街は、何物にも変えられない、大切な存在である筈だ。
十年以上の歳月を経て、ようやく戻れた故郷なのだと言う。
自分の故郷すら何処にあるのか判然としないスコールは、望郷の念と言うものを正しく理解する事は出来なかったが、それでも、“故郷”や“家”と言うものが、容易く放り出せるものではない事は判る。

 それを、“どうでも良い”と言わせてしまった。
街には、レオンを含めた再建委員会を頼りにしている人が沢山いるのに、これからもそうした人々はもっと増えていくのだろうに、それを全て捨てても良いとレオンは言う。
そんな事を彼に言わせてしまった自分に、スコールは酷く嫌悪した。

 それと同時に、レオンの心が、他の何よりも自分を優先してくれている事が嬉しいと思ってしまった。
何処から来たのかも判らず、自分の名前以外に何も覚えていないスコールを拾い、面倒を見て、愛してくれるまでになったレオン。
何よりも優先している筈の故郷の事すら振り切って、自分と共にいてくれると言うレオンの言葉が、スコールは嬉しかった。

 喜びと、そんな感情を抱いてしまう自分への辟易と、レオンにそんな言葉を言わせてしまった後悔と。
入り交じった感情を宿した青灰色の瞳から、大粒の雫がぽろりと零れた。


「レ…オ……ごめ……ごめん……」
「……謝らなくて良い」


 レオンはそう言ったが、スコールは「ごめんなさい」と繰り返した。
泣きじゃくるスコールを、レオンは強く抱き締めて、彼が泣き止むまで放す事はなかった。