ソラリゼーション
※♀リノア×♂スコール。


 誰かを愛すると言う事は、決して怖い事ではないのだと、教えてくれたのは彼女だった。
何処までも真っ直ぐに、正直過ぎる程に心をぶつけてくる彼女の姿に、知らず知らず、何かを動かされていたのは確かだろう。

 スコールは、人を愛する方法が判らない。
幼い頃に最も心を預けた人を失って以来、スコールは大切なものを失う痛みに怯え、誰かに寄り掛かる事を忌避するようになった。
十余年に渡るその意識は、スコールに対人恐怖症にも似た思考を植え付けており、それは彼の意識一つで変えられる程簡単なものではなくなっている。
愛に飢えた少年は、最も愛して欲しいと願った手を失った事で、愛し方も、愛され方も判らなくなってしまったのだ。

 だからスコールは、リノアに惹かれたのかも知れない。
何もかも明け透けで、傍目に見れば隠せてすらいない彼女の好意は、本人の意識するしないに関わらない所で、スコールの心を揺さぶっていた。
衝突を、擦れ違いを、再会を繰り返しながら、少しずつ重なり合った想いは、最後の瞬間に全てを失おうとしていた彼を、もう一度取り戻す程強いものとなる。






 抱きたいんだ、と言ったスコールを見て、リノアは数秒、ぽかんとした表情を浮かべた後で、沸騰するように一気に赤くなった。

 スコールの告白は、唐突と言えば唐突であった。
直前にそんな匂いのある会話があった訳でもなく、ムードがあった訳でもない。
いつものようにスコールの部屋で、一日の出来事を報告し合うような会話(喋っているのは専らリノアなので、会話とすら言えないかも知れない)をして、その話題も尽き、リノアがそろそろ女子寮に誂られた自室に戻ろうかなと言った時の事だ。
スコールは部屋を出て行こうとするリノアを呼び止め、彼にしては珍しく、真っ直ぐに彼女の顔を見て言った───「あんたを抱きたいんだ」と。

 スコールの言葉は、大事な時ですら、少ない。
その代わり、口に出すまでに色々な事が彼の頭の中を巡るから、口にした言葉数以上に、彼の言葉には沢山の感情が篭っている。
リノアは、それをよく知っていた。

 抱きたいのだと、愛したいのだと、彼は言った。
常時、触れる事も触れられる事も、決して好きではない彼の事を思えば、その言葉がどれ程重いものであるか判るだろう。
魔女戦争が終わった後、スコールの人嫌いは軟化しつつあるとは言え、他者の温もりを苦手と感じている事は変わらない。
そんな彼に、他人の温もりに触れたいと思う事が、そう思う相手が現れた事が、どんなに大きな出来事か判らない筈がない。

 スコールの言葉に、リノアの心臓は跳ねた。
虚を突かれた驚きと、心の何処かで待ち侘びていた期待から来る喜びと、どちらが大きかったのかは判らない。

 しかし、リノアは一日だけ待って欲しい、とスコールに言った。
赤い顔でそう言った彼女は、決してスコールの申し出を拒否してはいなかった。
色々準備したい事がある、と言うリノアに、スコールも逸る事はしなかった。
自分の告白が唐突であった事、身も蓋もなかった事、リノアが混乱している事────とにかく、待つ時間は必要だろうと思ったのだ。

 結局、その日は何事もなく、リノアは女子寮の自室へ向かった───赤い顔のままで。
スコールはそれを見送って、無表情の裏側で煩くしていた心臓を宥めていたのだった。




 バラムガーデン内で、スコールとリノアの仲は、公然のものになっている。
幼馴染の面々は当然のものとして、リノアは隠し事が苦手で、スコールを見付けると判り易く嬉しそうにしたり、飛び付いたりと言うスキンシップが多い。
そんな彼女をスコールが振り払わないものだから、バラムガーデンの一般生徒の殆ども、二人の間に漂う雰囲気と言うものを察知し、恐らくはそうなのだろう、と言う認識に至っていた。

 しかし、だからと言って、やはりガーデン内で睦み合うのは抵抗があった。
男子寮である筈のスコールの部屋に、リノアがしょっちゅう出入りしている時点で、周囲はひょっとして……と思っていたりするのだが、本人達には与り知らぬ事だ。
スコールは二日分の休暇を申請し、リノアは外泊届を出し、夕方になってから二人でバラムの街へ外出した。
行先はスコールが予約して置いた、バラムホテルの最上階である。
其処なら余程の急用でもなければ、誰かがスコール達を呼びに来る事もないし、人目も気にしなくて良い。

 夕食も兼ねて、バラムの街で短いデートをした後、ホテルの部屋に入って順にシャワーを浴びた。
妙な緊張感が二人の胸中にあって、それぞれバスローブだけを身に付けて、しばらくはベッドの上でぎこちのない───リノアの不自然な一言に対し、スコールが「ああ」と返事をするだけの───会話が続いていたが、一拍の沈黙の後、


「……リノア」


 名を呼ぶ声に、リノアがそっと顔を上げると、直ぐ近くにスコールの貌があった。
憂いを含んだ蒼灰色の瞳に意識を奪われている間に、唇が重なって、肩を抱かれる。
リノアはそっと目を閉じて、スコールの腕に身を委ねた。

 ゆっくりとベッドに横たえられたリノアは、口付けを止めて離れようとするスコールの頭を抱えるように抱き締めた。
スコールは一瞬戸惑ったように動きを止めたが、首に巻き付いたリノアの腕に手を添えると、やんわりとした力でそれを解かせた。


「……良いな?」


 問うように確かめるスコールに、リノアは顔を赤らめ、小さく頷いた。
リノアの頬にキスが落ちて、スコールの手が彼女の耳の端を擽る。

 スコールの愛撫は、緩やかで、柔らかなものだった。
触れ方は稚拙にも思える程にゆったりとしており、壊れ物を扱うようだとリノアは思った。
実際、それは間違ってはいないのだろう。
スコールは自分からリノアに触れる時、いつも少しだけ戸惑って、優しく触れて来る。
そんなに怖がらなくたって壊れたりしないよ、とリノアは思うが、彼が自分を大事にしてくれている事が判るのも嬉しいから、何も言わない事にしている。

 普段は黒の皮手袋に覆われているスコールの手は、指が長く、形も綺麗なものであった。
爪もいつも綺麗に手入れされており、マメだね、とリノアが言うと、伸びていると戦闘中に爪が割れる事がある、と言われた。
成程、それは傭兵にとって死活問題だ。
その手が、指が、リノアの柔肌を撫でて、細い腰を抱く。
ベッドに身を預けたリノアの乳房に、スコールの手が触れて、リノアの唇から甘い色を含んだ吐息が漏れた。


「……ん……」
「……」


 零れたリノアの吐息に、スコールの手が止まる。
光量を落とした照明の影の中、スコールの眉間に皺が寄せられるのを見付けて、リノアは小さく笑った。


「……ふふ…なんか、くすぐったい」
「………」


 嫌な気持ちは一つもないのだと笑うリノアに、スコールの眦が少し和らいだ。
リノアはそんなスコールの貌に手を伸ばし、頬を両手で包んで、自分の方へと引き寄せた。
スコールは恋人の力に逆らわず、貌を近付け、自分とリノアの唇を重ねる。


「ん……」


 どちらともなく、鼻にかかった声が零れた。
スコールの舌がリノアの唇をくすぐって、リノアは閉じていた唇を薄く開いた。
隙間からスコールの舌が滑り込み、リノアのそれと絡み合う。

 スコールの手がリノアの乳房を柔らかく揉んだ。
緩く強弱をつけて乳房を刺激され、リノアはスコールが自分の身体に触れている事を改めて実感し、身体の奥がじんと熱くなってくるのが判る。

 重ね合っていた唇が離れて、リノアはほう、と小さく息を漏らした。
知らず閉じていた瞼を持ち上げると、殆どゼロに近い距離にスコールの貌がある。
額の大きな傷の傍ら、濡れたように深い蒼灰色の瞳が間近にあって、リノアの心臓が跳ねる。
その鼓動が、胸に触れていた男の手に伝わった。


「リノア?」


 どうした、と問うスコールの声に、リノアはなんでもない、と首を横に振った。
いつだって格好良いスコールはズルイ、と心の中で呟く。
スコールは首を傾げて手を止めていたが、リノアの手が自身の手に重なると、促されるように愛撫を再開させる。

 スコールはリノアの頬にキスをして、少しずつ身体を丸めて行く。
薄い唇が、首筋に、鎖骨に触れるのを感じながら、リノアはスコールの頭に手を置いた。
スコールは、柔らかい毛質の髪を撫でるリノアの手を甘受しつつ、彼女の胸に顔を寄せた。

 ちゅ、とリノアの乳房にキスが落ちる。
ぴくん、とリノアの身体が震え、薄桃色の頂きをスコールの指がくすぐる。
程無く膨らんだ其処にスコールの舌が触れて、赤ん坊が乳を吸うように、ちゅう、と吸われる。
リノアの身体がピクッ、と一瞬跳ね上がり、スコールの頭を抱き締めるように腕を回して、リノアは天井を仰いだ。


「あ…っ……」
「……ん…」
「ん、ふ……っ」


 リノアの反応が見られた事が喜ばしかったのだろうか。
スコールはもう一度、リノアの乳首を吸って、彼女の細い腰に手を這わす。
彼の手が腰骨を辿って行くのを感じながら、リノアは自分の心臓がドキドキと高鳴るのを聞いていた。

 スコールの手はリノアの小振りな尻を撫でて、足の付け根をくすぐり、その内側へと滑って行く。
リノアの膝がふるりと震えて、ベッドシーツの波の中を爪先が彷徨う。
そんなリノアの膝を、スコールの手がやんわりと押して、左右に開かせる。
ああ、見られている───そんな思考が上って来て、リノアは今更ながら、恥ずかしくて堪らなくなった。


「……嫌か」


 真っ赤になっているリノアの頬に気付いて、スコールが言った。


「……そうじゃ、ない…けど……」
「……」
「は……恥ずかしくて……っ」
「…なら、止めるか」
「そ、そう言うのでもなくてっ」


 体を引こうとするスコールを、リノアは慌てて捕まえた。
こんな時まで鈍いのか、とリノアは些か苛立ちつつ、そう言えばこう言う人だった、と改めて思い出す。

 リノアは顔を赤らめながら、スコールの首に腕を巻き付けて捕まえたまま、案外と確りしている彼の肩に顔を埋めて、


「い、イヤじゃないんだよ。でも、恥ずかしいの。こ、こんなの、誰かに見せるものでもないでしょ」
「……ん」
「だから…その……ね?」
「……うん」


 リノアの言葉に、スコールからの反応は、どうにも鈍いものだった。
困らせたかなぁ、とリノアは思いつつ、もう一度スコールが動き始めるのを待った。

 一分、二分───いや、ひょっとしたら十秒足らずの短い時間だったのかも知れない。
しかし、緊張と戸惑いが入り交じった所為か、リノアには随分と長い沈黙だったように感じられた。
それはスコールも同様で、やっぱり嫌なんじゃないか、でもリノアは嫌じゃないって言った、と思考が右へ左へとブレて、上手くまとまらない。
取り敢えず、とスコールは組み敷いたままの少女を見下ろして、


「……嫌じゃない、んだよな」
「………うん……」


 恥ずかしいだけ、とリノアは重ねて言った。
じゃあ、とようやくスコールの手が愛撫を再開させる。

 スコールの唇が、リノアの瞼の上に落ちる。
不器用な触れるだけのキスに、安心させてくれようとしているのだと言う事が判って、リノアは嬉しくなった。
些か強張っていたリノアの身体から、少しずつ力が抜けて行くのを確かめて、スコールは彼女の薄い腹に手を当てる。
ゆっくりと降りて行く手の行先を想像して、リノアの頬に朱色が上り、また湧き上がる恥ずかしさを誤魔化すように、スコールの首にしがみ付く。

 スコールの手がリノアの脚の付け根をくすぐり、その内側へ。
秘められた蜜園に指先が触れるのを感じて、ピクン、とリノアの肩が震えた。


「っん……!」


 形の良い指先が、リノアの中に入って来る。


「……痛いか」
「……へい、き……」
「………」


 唇を噛むリノアの表情に、スコールの眉間に皺が寄せられる。
スコールはしばし思案した後、彼女の秘部に埋めようとしていた指を抜いた。


「……スコール?」
「…無理しなくて良い。前戯のやり方なら、他にもあるし」


 リノアに痛みを我慢させるようなセックスは、スコールの望む事ではない。
実地経験するような機会がなかったとは言え、性的知識ならば、スコールも人並みにあるのだ。
出来るだけリノアの負担にならないように考えて、スコールは別の方法で彼女を愛撫する事にした。

 リノアは少しの間、何をするんだろう、とスコールを見詰めていた。
が、彼の貌が自分の秘部に近付くのを見て、彼の考えている事を察し、真っ赤になってスコールの髪を掴む。


「ス、スコール、待って!ひょっとして、その、あの、」
「……もう待ったは聞かない」
「や、ちょっ、ひゃんっ!」


 スコールは暴れようとするリノアの足を捕まえると、左右に大きく開かせた。
日焼けを知らないリノアの白い太腿に軽くキスをして、スコールはリノアの蜜園に顔を寄せた。

 ぴったりと閉じたリノアの陰唇にスコールの鼻先が近付く。
リノアは顔を真っ赤にして、スコールの頭を押し退けようとしていたが、叶わなかった。
秘部にスコールの吐息がかかるのが判って、リノアの膝がふるふると震える。


「……ん……」
「……っあ……んっ…!」


 つ……と生暖かいものが秘裂をなぞるのを感じて、リノアはぞくぞくとしたものが背中を走るのを感じた。
スコールは人差し指と親指で披裂の溝を広げると、薄く色付いた花弁を覗き込んで、指先で隙間を擽った。
ピクッ、ピクッ、とリノアの細い足が跳ねるのを横目に、スコールは肉びらに舌を押し当てる。

 スコールはゆっくりとリノアの強張りを溶かして行く。
高い鼻がリノアの陰唇の縁を押し上げて、スコールが頭を動かして陰部を舐めそぞる度、彼の吐息が淫部全体に当たる。
リノアは、真っ赤になった顔を手で隠しながら、その指の隙間から、スコールの愛撫の様子を覗き見ていた。

 睫毛の長い瞼を伏せて、丹念にリノアにクンニをするスコール。
時折、赤い舌が自分の身体の陰から覗く度、リノアの唇からは甘い吐息が漏れて、じっとりとした汗が全身の毛穴から噴き出してくる。
それに呼応するように、リノアは腹の奥から粘り気のある熱が生まれるのが判った。


「ん、ふ……」
「んっ、やっ…!」
「……っく……んん……」
「っあ…!スコー、ルぅ……っ」


 甘える声で名を呼ぶリノアに、スコールは自分の雄がむくむくと膨らむのを感じた。
早く彼女と一つになりたい、と思いながら、スコールは丹念に丹念に、余す所なくリノアの陰部を舐った。

 リノアの蜜園の中は、スコールの唾液と、リノア自身の愛液ですっかり濡れそぼり、柔らかく解れている。
その頃には、リノアの頭からは羞恥心と言うものも抜け落ちていて、うっとりとした表情でベッドに体を横たえていた。
スコールはそんなリノアの臍にキスをして、ぼんやりと天井を仰いでいるリノアの頬に手を添える。


「……リノア」


 名を呼ぶ声に、リノアは伏せていた瞼を持ち上げた。
眉間に深い皺を寄せているスコールを見て、リノアは頬を赤らめ、小さく笑みを漏らす。


「うん……大丈夫」
「…そうか」


 リノアはのろのろと体を起こして、スコールの頬にキスをした。
それからリノアは、スコールの首に腕を絡め、悪戯っ子を思わせる笑みを浮かべる。


「ね、スコール。交代しよ?」
「交代?」


 きょとんと首を傾げるスコールに、リノアは笑顔で頷いた。

 リノアに肩を押され、今度はスコールがベッドに横になる。
裸身のスコールの身体を見下ろして、リノアはドキドキと胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。
長身である事と、いつも黒のタイトな服装でいる所為か、スコールは細身に見え勝ちだが、その身体には無駄のない筋肉がついている。
リノアは、薄いが確りとしている胸筋にキスをして、腹筋に手を滑らせる。

 リノアの動向を、スコールはじっと見詰めていた。
不思議そうに見詰める蒼灰色の瞳に、リノアはこっそりと小さく笑って、スコールの起き上がった雄に指を滑らせる。
ぴくっ、とスコールの身体が微かに震えたのが判った。


「リノア……っ?」
「……ふふ」


 戸惑うスコールの胸に、リノアは頭を乗せた。
胸の奥で、とくとくとスコールの鼓動が逸っているのが判って、リノアはスコールの胸に唇を落とす。


「スコールが私に触ってくれるの、嬉しいよ。気持ち良くしてくれるのも、嬉しいの」


 もどかしいほどの緩やかな愛撫も、大事にしてくれている事が判るから、リノアは素直に嬉しかった。
でも、とリノアは呟いて、スコールの雄に指を這わせ、つぅ……と亀頭の先端から裏筋をなぞる。


「ん……っ!」
「私もスコールのこと、気持ち良くしてあげたいの。……ダメ?」


 リノアの艶のある黒髪が、スコールの胸の上をさらさらと滑って行く。
彼女の手はスコールの雄を優しく包み込み、竿を緩く上下に撫でている。
スコールは、リノアの細くて白い手が己のそれに触れているのを感じて、劣情が膨らむのを自覚した。

 返事をしないスコールに、リノアは首を伸ばして、彼の唇の端にキスを掠めた。
スコールは呆けたように動かない。
リノアはスコールの意識が帰って来るのを待たず、背中を丸め、スコールの脚の付け根に手を置いた。


「わ……」


 半勃起状態となっているペニスに顔を近付けて、リノアは興味津々という表情で、目の前の肉棒を覗き込む。


(これが…男の人の…スコールの、おちんちん…)


 リノアとて性的な事に興味のない程幼い年齢ではないから、保健体育の授業だとか、少々過激なメディア作品等で相応の知識はある。
しかし、実際に男の一物を目にした事は初めてであったし、膨らんで勃起しているのを見て、想像していたのより大きいかも…と言う印象で、リノアは俄かに興奮していた。


「リ、リノア……」


 戸惑う声に呼ばれて、リノアは顔を上げた。
勃起したペニス越しに、眉間に深い皺を刻んだスコールの貌がある。

 リノアはペニスに両手を添えて、そっと唇を近付けた。
ちゅ、と軽くキスをすると、ぴくん、と手の中のものが震える。
小さな生き物を愛でているような気がして、リノアの口元に笑みが浮かぶ。

 赤い小さな舌が、スコールの雄をちろり、とくすぐる。
手の中でぴくっ、ぴくっ、と震えるそれを逃げないように柔らかく包んで、リノアは亀頭のエラに舌を押し当てた。


「リノア、やめっ……、汚い、から……っ」
「ん、ふ……ん、イーヤ。ふふっ」
「リノアっ」


 遊ぶな、ふざけるな、と言わんばかりにスコールが声を荒げたが、リノアは気に留めなかった。

 リノアは質量を増して行くペニスを愛でながら、つい先程、自分がスコールに愛撫されていた時の事を思い出していた。
あの時は只管恥ずかしくて堪らなかったが、立場を逆にして見ると、先のスコールの気持ちが判るような気がする。
赤い顔で、しかし振り払う訳にも行かずに戸惑っているスコールの姿が、いつもの凛とした姿と違って、可愛らしく見えて仕方ない。
また、汚いから止めろ、とスコールは言ったが、リノアは愛撫を施すペニスを汚い等とは思わなかった。
それはきっと相手がスコールだからで、彼に気持ち良くなって貰いたいと思っているからだ。

 リノアはペニスの先端を口に含んで、ちゅう、と吸った。
思いも寄らない刺激だったのか、スコールの身体が不意打ちを食らったようにビクッと跳ねる。


「リノ、ア……っ!」
「ん、ちゅ……」
「う、う……っんん…っ!」


 リノアの舌がペニスを這う度、スコールの身体がビクッ、ピクッ、と反応を返す。
彼がリノアにそうしたように、リノアもスコールの雄を丹念に、丁寧に愛撫し、先端やカリ首の裏側、竿と亀頭の境目の皺と、隅々までたっぷりと撫でて行く。
スコールの腹筋に力が篭って、彼の手は耐えるようにベッドシーツを強く握り締めていた。

 口に含んだ先端を、舌先でちろちろとくすぐると、はぁっ、と押し殺した吐息が漏れたのが聞こえた。
膨らんだ雄は熱い肉になっていて、リノアに舌越しにその体温と伝えて来る。
舌に絡めた唾液を塗り込むように、亀頭の裏側をぐりぐりと舌で押してやれば、スコールの身体が一瞬弓形に撓った。


「あ、…あ……っ…!」
「ん、ふ……んぐ、ぅ…」


 リノアは思い切って口を大きく開けて、スコールの雄を深くまで咥え込んだ。
根本近くまで一気に飲み込んで、頭を上下に動かす。
奥から先端までくまなく舐め回す舌の、生暖かく艶めかしい感触に、スコールはぞくぞくとしたものが腰の奥から昇ってくるのを感じていた。


「は、ひっ…あ……あっ…!」
「んぐ…ふ……ひもち、い…?ひゅこーる…」
「あぁっ…!」


 ペニスを口に咥えたまま問うリノアに、スコールは答える余裕を持たなかった。
十七歳と言う年齢に相応して、自慰行為も何度となく行った事はあるが、その時、こんなにも逆らい難い快感に囚われた事はない。
そもそも、他人にこんな場所に触れられる事自体が初めてで、それが愛しい少女である事を思うと、尚の事スコールは昂る自分を止められなかった。

 そんなスコールの様子を上目遣いに伺いながら、リノアも興奮していた。
ほんの少し舌で擽るだけで、ビクビクと顕著な反応を返すスコールの躯。
こんなにも敏感な反応が返ってくるのは、男がこういうものだからなのか、人に触れられる事を苦手としているスコールだからなのかは、リノアには判らない。
だが、何れにせよ自分の愛撫でこうして官能を感じてくれている彼の姿に、リノアの心が歓びに満ちているのは間違いない。

 リノアが口に含んでいた亀頭を解放すると、唾液の銀糸が先端とリノアの濡れた唇を繋いだ。
ぷつん、と細い糸が切れると、濡れそぼっててらてらと光るペニスがリノアの前に現れる。
既に支えなくとも天を突くそれにもう一度顔を寄せ、リノアは根本の皺から裏筋を辿り、ねっとりとした動きでペニスを舐めた。


「ん、ん……っ!」


 スコールが唇を噛んで、湧き上がる衝動を抑えようと耐える。
はっ、はっ、と短いリズムで呼吸するスコールを見て、リノアはうっそりと笑って、スコールのペニスに吸い付いた。


「んちゅぅっ……!」
「ひっ、あっ!や…リノ、やめ……っ!」


 ちゅうっ、ちゅうっ、と音が聞こえる程に強く啜られて、スコールの脚がピンと強張る。
絶頂が近いのだろう、リノアは口の中で、じっとりと苦味のあるものが昇ってくるのを感じた。


「リノ、ア、リノアっ…!あっ、あっ…!あぁああ……っ!」


 ビクッ、ビクッ、ビクッ、とスコールの躯が痙攣し、甘露を含んだ声が部屋全体に響く。
その直後、リノアは熱いものが自分の口の中に注がれ、粘り気のあるものが咥内を一杯に埋めつくすのが判った。


「ぷぁっ……!わ、あ…けほっ、けほっ…」


 予想はしていたが、それ以上に粘着質で独特の味を持った液体の感触に、リノアは思わずペニスから口を離す。
鼻腔にむわっと広がった独特の匂いに、思わず咽返り、口の中のものを吐き出してしまう。
どろりとしたものが口から溢れ出して、リノアの顎を伝い、皺だらけのシーツに落ちて沁みを作った。

 リノアが自分の呼吸を整えている間、スコールの意識は夢現のように茫洋としていた。
自分が絶頂を迎えた事、それも恋人の口でイかされた事を、ぼんやりと頭の隅で理解して、こんなに気持ち良いものなのか、と他人事のように思う。
他人の手で、愛しい人の手で絶頂を迎える事が、こんなにも────

 リノアは口の周りのべとつきを指で拭いながら、ベッドに仰向けになったまま動かないスコールを見下ろした。
傭兵として鍛えられながらも、サイファーのように体格に恵まれた男に比べると、やはり細く見え勝ちの身体。
それでも、飛び付いたリノアを難なく支えられる位に、体幹はしっかりと出来上がっている。
その逞しい身体が悩ましげに身動ぎし、じっとりと汗を滲ませ、肌を紅潮させている姿は、なんとも艶美的だ。
男の人でもこんなに色っぽく見える事があるんだ、と思いながら、リノアの視線はスコールの下腹部へ向かう。

 リノアの指がまだ緩く頭を起こしているスコールのペニスに触れ、名残のように涙を零している先端から、つぅ……と辿って根本へと向かう。
指は精液を溜め込んでいるであろう陰嚢の形をくすぐって、会陰の窪みを掠めると、ピクッ、とスコールの脚の付け根が震えた。


「リノア……?」


 まだぼんやりとした瞳で名を呼んだスコールに、リノアは「うん」と聞こえていると返事をした。
起き上がる気力もないのか、スコールは体を起こそうとはしない。
それを良い事に、リノアの指は更に下へ下へと降りて行く。

 やがてリノアの指が辿り着いたのは、慎ましく閉じたスコールの菊口。
綺麗に手入れのされたリノアの指先が、つん、とアナルの口を突いた。


「……っ…?」


 あらぬ場所からの感触に、流石にスコールも気付いた。
ピクッ、と下肢を震わせたスコールを、リノアは高揚感を隠せない表情で見下ろしていた。


「リノア…?」
「……ね、スコール。こっち、してみても良い?」
「こ、っち……?────っあ!」


 何の事だ、とスコールが問う声は、虚を突いた悲鳴に取って代わられた。
丸みのある細いものが、排泄器官である筈の場所に埋められている。


「な、リノっ……んんぅっ…!」


 にゅぷぅ……と挿入されて行く異物に、スコールは唇を噛んで嫌悪感を堪えた。
シーツを握る手には、白む程に力が篭り、拒絶感を表すようにスコールの全身が強張る。

 スコールのアナルに挿入されているのは、リノアの細く嫋やかな指だった。
リノアはスコールの太腿を押して足を開かせると、ゆっくりと指を前後に動かし始める。
手首を前後に動かしながら、埋めた指の関節を曲げて、秘穴の中の天井を柔らかく弄る。


「ひっ、いっ…い、う……っ!」
「痛い?もうちょっと浅い所からの方がいいかな…」
「そ、ういう…問題じゃ……あっ!う、うぅ…っ!」


 傷の走る眉間に深い皺を寄せて、スコールは異物感に表情を歪めた。
リノアを蹴り飛ばしてこの行為を止めさせることは簡単だが、彼女を傷付ける事は、スコールの望む事ではない。
第一、下腹部からの異物感への生理的嫌悪で四肢が強張り、まともに躯を動かす事も出来なかった。

 リノアの指が、穴口の入り口付近でしつこく遊ぶ。
爪先で肉壁がくすぐられ、入り口を広げるように親指の腹で縁の薄皮を引っ張られる。


「ん、ぐ……リノ、ア……っ」
「ん、と……こっちも触った方が良いかな?」


 顰め面が緩まないスコールを見て、リノアはアナルを弄りながら、ペニスにも手を伸ばした。
唾液と精液で濡れそぼったペニスを捉え、指で輪を作って上下に扱き始める。


「あっ、あ…っ!リノア…っ、ん、やめ…っ……指、抜け…っ!」
「まだ痛い?」
「だ、から…そう、いう…事じゃ……んんっ…!」


 ペニスの亀頭の裏側を、人差し指の爪先で引っ掻くように擦られ、スコールは腰からびりびりとした痺れが生まれるのを感じた。
リノアが繰り返し同じ場所をくすぐると、その度、ビクッ、ビクッ、とスコールの引き締まった腰が跳ねる。

 リノアは指でくすぐっていた場所に舌を押し当て、尖らせた舌先でぐにぐにとペニスをくすぐった。


「んっ、んっ…、ふ……う…っ!」
「スコール、ここ、気持ち良いんだ?」
「……っふ…!」


 リノアの言葉に、スコールは肯定も否定もしなかった。
しかし、リノアがエラ裏に舌を押し当ててくすぐってやれば、ひくん、と腰が浮いてしまう。

 ペニスのエラ裏を舌で刺激しながら、リノアは竿を扱いて行く。
はっ、はぁっ、とスコールの呼吸が逸って行くにつれ、彼の秘孔もひくひくと伸縮を繰り返し、リノアの指をきゅっ…きゅっ…と締め付けては緩む。


「ん、う…っ、ふ…っ!……んぅうっ!」


 にゅぷぅっ、とアナルに侵入したものが奥深くへと進んだ。
直腸の壁を逆方向に擦られる感覚に、スコールはビクビクと四肢を痙攣させながら、くぐもった悲鳴を上げる。

 リノアの細い指は、あっと言う間に根本まで入ってしまった。
それを見たリノアが、高揚とした声で呟く。


「すごい。こんなに入っちゃった…」
「ひっ…い、…抜、けぇっ……!リノア…っ、いい加減に…っ」
「えっと……後は……」
「───っ!」


 秘孔内でリノアの指が折り曲げられ、肉壁が押し上げられて、スコールは声にならない声を上げた。
リノアはそんなスコールに気付いていないのか、仕切りに指を折り曲げ、円を描くように動かし、スコールの中を弄っている。


「リ、リノっ…リノアっ…!やめ、もう…!」
「あ。そうだ、こっちも気持ち良くしてあげなきゃね」


 ごめんごめん、忘れてた、等と明るい声で言って、リノアはまたペニスに舌を這わせた。
そうじゃない、とスコールは首を横に振るが、リノアは見ていない。

 リノアはスコールのペニスを頬張り、亀頭に舌を絡め、ちゅぽちゅぽと音を立てながらフェラチオを始めた。
アナルの異物感に囚われていたスコールは、再びペニスからの官能に流されて行く。


「はっ、あっ、あぁっ…!」
「ん、ふっ、んちゅっ、はむっ……んっ、んっ…」
「あ、あ、あぁ……んっ、あっ…!は、あ……っ」


 リノアの舌遣いに、スコールは虚空を見上げて熱の篭った瞳を彷徨わせる。
シーツを握り締めていた指先から力が抜けて、ペニスに舌が這う度、ひくっひくっと戦慄いていた。

 ペニスへの愛撫に意識が傾くのか、リノアのアナルを攻める指は、緩やかなものになっていた。
侵入者に抵抗するようにねっとりと絡み付く肉壁を、指の腹でゆっくりと撫でて宥めてやる。
ペニスの亀頭を啜るタイミングで、爪先で肉壁を押してやると、段々とスコールの反応に艶が孕まれる。


「はっ、あ……あ、あ……」
「んちゅっ、ふっ……んっ、むっ、あむっ……!」
「リ、リノア…あ、あ……ん────あぁっ!」


 リノアの指が肉壁の点を突いた瞬間、甲高い声が反響した。
思わぬ反応にリノアは一瞬目を丸くしたが、直ぐにその目に笑みが灯り、


「な…あ……何っ……」
「ここ?」
「ひんっ!」


 リノアが指先でくりゅっと肉壁を抉ると、ビクン!とスコールの躯が跳ね上がる。
目を白黒とさせているスコールを見上げながら、リノアは何度も同じ場所を突き上げた。


「ひっ、ひっ!あっ、あぁっ!何っ、やめっ!」
「男の人でもホントにそんなに感じるんだ。前立腺って」
「ぜ、前……んんっ!」


 そう言う器官の事は知識として知っているが、医療行為でもないのに、そんな場所を他人に触れられる事があるなど、スコールは思ってもいなかった。
当然、それに触れられる事で、まるで電気を浴びせられたように身体が震えあがるなど。

 リノアは、肉壁の一点にある微かな膨らみを引っ掻いた。


「ひあっあっ!」


 リノアの指が前立腺の膨らみを突く度、スコールの口からはあられもない声が上がる。
スコールは手の甲を噛んで唇を殺そうとするが、


「ん、ん……あぁっ!」
「スコール、声、我慢しないで」
「リ、ノア……も、もう…ひぃんっ!あっ、あっ、あぁっ…!」
「聞きたいの。スコールの、感じてる声……」


 リノアは、うっとりと熱に浮かされた表情で囁くと、スコールのペニスに吸い付いた。
生暖かい肉厚が亀頭を舐め回し、じゅるっ、じゅるぅっ、と音を立てながら、唾液を絡み付かせる。

 リノアの熱の篭った吐息が、スコールの亀頭を蒸らして行く。
同時に前立腺を爪先で引っ掻き、コリコリと擽ってやれば、スコールは悲鳴に似た嬌声を上げた。


「ああっ、ひっ、リ、リノアぁあ…っ!やめ、あっ、あくぅんっ!」
「んっ、んぢゅっ、んふっ…!ふ、はふっ、んんん…♡」
「ひぅうっ…!あ、あ…ああぁっ…!」


 リノアにペニスをぬっぷりと根本まで食まれ、スコールが切ない声を上げる。
同時にきゅうっ、きゅうっ、と秘部の肉壁がリノアの指を締め付けた。

 舌の腹で亀頭を丹念にしゃぶりながら、リノアは指を更に深くまで突き入れた。
ぐちゅっ!とアナルの最奥の壁を突かれて、ビクン!とスコールの脚が跳ねる。
そのままリノアが指を前後に動かし、掻き回すように秘奥を捏ね回してやれば、指先が奥壁と前立腺に引っ掛かる度、スコールは引き締まった腰を揺らめかせて甘い悲鳴を上げ続ける。


「あひっ、ひっ、あぁっ!や、リノア、抜け、抜いて…あぁあっ!」
「ん、ふぐ、んむぅっ♡んっ、んぢゅっ、んふっ♡」
「はっ、はふっ、ああぁっ!や、んぁ、あっあっ、あっあっ!」


 ちゅる、ぢゅるっ、と音がする程に強くペニスを啜られながら、アナルをぐちゅぐちゅと掻き回されて、スコールの腰から下をビリビリとした痺れが支配する。
リノアに足の膝を押し上げられ、足をM字に開いて淫部を曝け出した格好にしている事すら気付かず、スコールはリノアにされるがまま、官能に流されて行く。


「リ、リノっ、リノアぁっ!もうやめっ、イっ、あぁっイくっ、イくぅう…っ!」
「ん、はぶっ……んちゅぅううっ♡」
「───あぁああああぁあぁっっ♡♡」


 スコールの訴える声に、リノアは応えた。
更なる快感を与える事で。

 前立腺を引っ掻かれ、ペニスを強く啜られたスコールは、競り上がる劣情に逆らう事も忘れて、甘い悲鳴を上げて二度目の絶頂を迎えた。
ビクッビクッ、ビクッ、と四肢を大きく痙攣させて、リノアの咥内へ精液を吐き出し、咥え込んだままのリノアの指を強く締め付ける。
リノアは口一杯に広がる苦いものを、今度は全て受け止めながら、絶頂の名残に躯を戦慄かせる恋人を見詰めていた。


「あっ…あっ……♡」


 絶頂直後に強張ったスコールの躯が弛緩し、くったりとベッドに沈む。
スコールの瞳は宙を彷徨い、正気を失っているだけでなく、悦の揺らぎすら灯っている。

 リノアはゆっくりと体を起こして、口の中のものを飲み込んだ。
口端から溢れ出した蜜液を指で拭って、それも舐め取る。
スコールのアナルに埋めていた指は、まだきゅうきゅうと締め付けられていて、まるで離れて行く事を嫌がる子供のようだと思う。
結構寂しがり屋だから、強ち外れてないのかも、と勝手に思いながら、リノアはゆっくりと指を抜いた。
直腸は咥えたものが出て行くのを嫌がってか、引き留めるように肉壁が絡み付いて来るのが判る。
そんな恋人の反応に、リノアの唇が笑みに歪む。


「ね、スコール……どうだった?気持ち良かった?」


 指を引き抜いて、くぱっ、くぱっ、と卑猥な動きをしている穴口を覗き込みながら、リノアは言った。
スコールからの答えはない。
スコールは、リノアの声さえ聞こえていないのか、空中を見上げて熱を孕んだ呼吸を繰り返すばかりだ。

 足を開き、全てを曝け出した格好で、身動き一つ出来ずにベッドに横たわっているスコールの姿に、リノアの興奮が高まって行く。
いつも自分を守ってくれる男が、自分の手で暴かれて行く様は、嘗てない愉悦をリノアに感じさせた。
良くも悪くも自分の頽れた姿など見せまいとするスコールが、誰も聞いた事がないであろう甘ったるい声を上げて、官能に溺れている。
そうしたのは、他の誰でもないリノア自身なのだ。
きっと彼自身も知らなかったであろう、快感に打ちひしがれているスコールの姿に、リノアはこの上ない喜びを感じている。
そして、もっと、もっと────と言う衝動が、リノアの心を支配する。