ヒュプノシス・ステート


 拠点に戻ったバッツは、その時点で其処にいた仲間達に、野宿中の出来事を話して、“魔獣使い”の力を実験させて貰った。
しかし、結果は全く効果がないと言うもの。
と言うのも、その場にいたのはティナ、ヤ・シュトラ、シャントットと言った、魔法のエキスパートとも言えるメンバーだったからだ。
ティナには少し効果が見られたが、それは魔法への耐性と言うよりも、彼女自身の性格によるものだろう。
以前の闘争よりも少し強かな所が見られるとは言え、基本的に彼女は純粋な性格をしているから、魔法よりも催眠と言う点で暗示にかかり易い所はありそうだ。

 そしてバッツが一番試してみたかった人物───スコールは、夕方になって拠点に戻って来た。
フリオニールが作った夕飯を済ませ、部屋でそろそろ寝落ちようかと言う時に、バッツは彼の部屋を訪れた。
今日は疲れてる、とスコールは言ったが、恋人の来訪自体は嫌ではなかったようで、直ぐに部屋に入れてくれる。
結構機嫌が良いみたいだ、とバッツは読み取り、それなら早速と昨晩野宿の際にあった事を話して、


「って事で、スコール!一回試させてくれよ」
「断る」


 いつものように好奇心一杯の顔でねだったバッツを、スコールは一刀両断した。
下らないと言わんばかりの表情のスコールは、そんな実験をして何が楽しいのか、そもそも自分を巻き込むなと目が語る。
しかし、そんな反応はバッツも判り切っていた事だ。


「一回だけ。一回だけで良いからさ」
「嫌だ」
「かかっても直ぐに解くから」
「嫌だ」
「変な命令したりしないから!」


 顔の前で両手を合わせ、拝み倒すスタイルで頼み込むバッツに、スコールは何故そんなに必死になるのかと呆れる他ない。
しかし、こう言う頼み方をしている時のバッツは、何度断られても諦めないと、スコールも判っていた。

 はあ、とスコールは判り易い溜息を吐く。
こうして甘やかすから、またバッツが突拍子もない事を思いついては巻き込まれるのだ。
そう判っているのに、受け入れてしまうのは、そうしないといつまでも食い下がって来るからだ───と、スコールは何に対してか判らない理由立てをする。


「……本当に妙な命令はしないんだな?」
「うん。そもそも、スコールに効くかも判んないしな〜」


 スコールの世界は魔法は存在するものの、それは科学的に解析されて、疑似的に使い方を再現させた代物である。
本物の魔法が使えるの魔女のみである為、スコールが魔法を使うにはG.Fの力を借りなければならなかった。
そうした構造が根幹にある為か、スコールは他世界で使われている精神感応魔法の類には余り耐性がなく、コンフュやスリプルと言った魔法は、戦士達の中では少し効き易い傾向があった。

 しかし、同様の条件はティーダとクラウドにも当て嵌まるし、魔法が恒久的に存在するフリオニールやヴァンも外れてはいない。
その中で、ティーダは想像以上の効果が上がったが、クラウドとフリオニールには効かなかったと言う。
そうした効果のバラつきを考えると、確かにスコールに“魔獣使い”の力が通用するかは判らなかった。


(……念の為、ジャンクションで耐性を上げておくか)


 スコールは内側に意識を集めて、内包している魔法の組み合わせを調整した。
この世界に置いて、それが飛躍的な効果を齎す訳ではなかったが、底上げが出来るのは確かだ。
問題は、それがバッツの言う“クリスタルの加護によって与えられた力”にどれ程の効果を持つかだが、これはスコールにも判らなかった。

 だが、幸いと言うべきなのか、バッツの“魔獣使い”の力は、催眠術に似た導入が必要らしい。
クラウドのような警戒心の強い者が魔力の強さに関わらず操られなかった事、素直な性格のティーダやティナは操る事が可能であった事を考えると、そう言うものだと判って見ていれば、暗示にかかる事もないだろう。
タネが判っている手品と同じようなものだ。


「……一回だけだからな」
「!うんうん!」
「二度とやらない」
「判ってる判ってる」


 今回だけだと釘を刺すスコールに、バッツは満面の笑顔で頷く。
ありがとな、と抱き着いて来るバッツに、スコールは何度目かの溜息を吐きながら、満更でもない自分にも呆れていた。

 楽にしてて良いよ、とバッツが言うと、スコールは眉間に皺を寄せつつ、大きく深呼吸した。
バッツが見せた人差し指が、ゆっくりと左右に振られる。
スコールの脳裏に、吊るしたコインを左右に揺らして催眠術をかける方法が思い浮かぶ。
と言う事は、これをずっと見ていると暗示にかけられてしまう訳だ。
それなら、この指だけを見る事を辞め、他の事に意識を散らしながら遣り過ごせば、操られる事はない────と、スコールは思っていた。

 徐々に動きを速めて行った指の動きが、ピッとスコールの目を指差して止まる。
其処に至る以前から、バッツは気付いていた。


「……おーい、スコール」


 顔を覗き込むように近付け、十分な声量で声をかける。
が、スコールの反応は鈍かった。
右手でぴたぴたと白い頬を叩いてみるが、スコールはそれを払う事はせず、されるがままになっている。


「……フリじゃない?」


 つん、と頬を指先で突きながらバッツが問うと、スコールはやはり沈黙していた。
一切の反応を示さないスコールに、バッツは苦笑する。


「随分すんなり入っちゃったな。やっぱり魔力の作用があるのかな」
「………」
「それとも、意外とスコールがこう言うのに弱いのか」


 呟くバッツの独り言だけが、静かな部屋の中で反響している。
何も返事がないのは寂しいなあ、と苦笑しつつ、バッツはスコールの様子をまじまじと観察した。

 スコールは指振りの途中から、暗示の中に没入していた。
元々の精神感応魔法への耐性が低い所為なのか、懐疑的に見えて心を許した者には無防備な所がある所為なのか、どちらも可能性はあるだろう。
とは言え、まさかティーダと同じ位に早い段階で浸透してしまうとは思わなかった。
バッツはこの世界におけるスコールの弱点を見付けたような気がして、彼の今後を心配に思う。

 それにしても───とバッツの視線は彼の貌へと向かう。
暗示の世界に入っているスコールの表情は、瞼が半開きになってぼんやりとしており、随分と無防備だった。
ティーダの場合は、一切の表情を失くした人形のようだったが、スコールは微睡んでいるような表情だ。
体の力も抜けているようで、いつも強張り気味の肩が少し落ちている。
この違いは何だろう、と思いつつ、バッツはスコールの薄く開いた唇に指をあてた。


「…ふ……、」


 ぴく、とスコールの体が微かに震える。
反応は鈍いが、感覚は残っているようだ。
と言う事は、意識も半分位は残っているのだろうか。
しかし、スコールの表情を見る限り、余り明確な自意識が生きているとは思えない。

 バッツは指先に触れるスコールの唇の感触を感じていた。
少しカサついているのは、今日の疲労の所為だろうか。
そんな事を考えつつ、バッツはスコールに初めての指示を出してみる。


「スコール。こっち来て」


 その言葉に、スコールは素直に従った。
ベッドに並んで座っていた体を、ずり、と少しだけ動かして、バッツへと近寄る。
もっと、と言うと、また近付いた。
何度か繰り返してみると、スコールはぴったりとバッツに寄り添うように密着し、


「スコール。キスして」


 指示と言うよりも、バッツは強請る口調で言った。
すると、スコールはバッツにゆっくりと顔を近付け、唇をバッツのそれと重ねる。
いつもなら真っ赤になって恥ずかしがるだろうに、瞼を閉じたり視線を逸らす事もせず、ぼんやりとした表情のまま、当たり前のようにスコールはバッツとキスを交わした。


「ん…ん……っ」


 寄り掛かるようにスコールの体重がバッツへと預けられ、それでももっと近付きたいと言うように身を寄せて来るスコールを、バッツは膝上に乗せて受け入れる。
ちゅ、ちゅ、と鳥が啄むようなキスを繰り返すスコール。
それを受け止めながら、バッツはスコールの項に指を滑らせた。
髪の毛の生え際を指先で擽ると、ひくん、とスコールの肩が震える。


「ふ…ん…、ん……、んっ……」
「ん……ふ、もう良いよ、スコール」
「……」


 いつまでもキスを止めないスコールに、バッツがストップをかけると、スコールは触れかけていた唇を離す。
本当に素直だな、と思いつつ、しかしバッツは少しだけ物足りなさを感じていた。


(寝惚けてる感じの顔って、眉間の皺がなくて可愛いんだけど)


 操られているスコールの表情は、ぼんやりとしたまま変化がない。
いつも寄せられている不機嫌の象徴が消えている為、整った顔立ちが存外と幼い造りをしている事が判るので、それはそれでバッツの好みなのだが、やはりもう少し反応が欲しい。
恥ずかしがって嫌がる様子や、蕩けた時のギャップがあるスコールが、バッツは好きなのだ。

 実験は十分試すことが出来た。
そろそろ起こさなきゃな、とバッツはスコールの傷の走る額に、ぴしっとデコピンを当ててやる。


「っ……?」


 小さな痛みは、スコールを正気に戻すには十分だった。
やはりティーダよりは深度は浅いようで、スコールはふるふると頭を横に振り、


「……変な感じが…って、おい。なんだ、この状況」


 靄の残る頭に顔を顰めていたスコールは、バッツと密着している自分に気付き、眉間の皺を三割増しで深く寄せた。
バッツは、ああいつものスコールだ、と思いつつ、


「お帰り、スコール。びっくりしたな、スコールにも“操る”が効くなんて」
「……効いたのか」
「覚えてない?」
「………」


 納得の行かない表情で睨むスコールに、バッツが訊ねてやると、彼は口を噤んでしまった。
頭の中で今の状態───自分がバッツに抱き着いている格好───になるまでの経緯を思い出そうとするが、よく判らない。
こうした記憶の曖昧な所は、スコール個人に限ってはあまり珍しいことではなかったが、こんなにも直近の記憶が飛んでいると言うのは普通ではない。
即ち、自分の意思とは関係のない状態で、この状態に至るまでの時間があったと言う事だ。

 自分が操られていたと、自覚はないが事実としてあった可能性が高いと理解して、スコールの眉間の皺は益々深くなって行く。
かからないように気を付けようとしていたのに、まさか確り暗示にかかってしまっていたとは。
それに情けない気持ちを抱きつつ、スコールはバッツを見、


「…変な事してないだろうな」
「してないしてない」


 へらっと笑って頷くバッツを、スコールはじっと睨む。
記憶がないだけに、その表情の意味を何処まで掘り下げれば良いのか判らない。

 疑うスコールの視線を受け止めつつ、バッツは首に絡んでいる体温に名残惜しさを感じつつ言った。


「んでさ、スコール。そろそろ足痺れそう」
「は?……あ、え?」


 バッツの言葉に、スコールは何の事だと眉根を寄せる。
それから一拍を置いて、スコールは自分がバッツの膝上に乗っている事に気付いた。
どうしてこんな所に、蒼の瞳が丸くなる。
理解不能だと固まるスコールに、バッツはくすりと笑って、離れようとしない腕に自分の腕を絡める。


「スコールの方から抱き着いてくれるとは思ってなかったなあ」
「な……そ、そんな事してない!」
「したんだって。だからこうなってるんだぞ?」
「あんたが変な命令をしたんだろう!」
「命令なんてしてないよ。キスしてって言っただけ。そしたらスコール、おれに抱き着いて一杯キスしてくれたんだ」
「やっぱり変な命令してるじゃないか!」


 真っ赤になって怒るスコールに、命令じゃないって、とバッツも重ねて言う。

 それにしても、とバッツは首に絡む腕を見遣る。
怒っているのに、スコールはバッツから離れようとしない。
“操る”の力で自分に近付くように指示した名残だろうか。
それなら、力から解放した時点で、直ぐにバッツから離れても良い筈。
バッツが元の世界で魔物を相手に操っていた時は、効果が消えれば直ぐに襲ってくるような魔物ばかりだったので、解放すればその時に指示していたものも全てリセットされるとばかり思っていたのだが、スコールは違うのだろうか。

 未だ離れる様子のない恋人に、バッツはにーっと笑う。
それに予感のようなものを感じてか、スコールが逃げるように体を退くが、腕はまだ解けなかった。
何かを葛藤しているようにも見えるスコールを見ながら、バッツは言う。


「スコール。キスしてくれよ」
「な……!?」
「ほら」
「……なんで……」 
「して欲しいんだ。スコールから」


 そう言いながら、バッツはスコールの頬に手を当てる。
猫をあやすようにそっと撫でると、んん、とスコールの喉からむずがるような声が漏れた。
指を耳の後ろへ滑らせて、指先で軽くくすぐってやると、ぞくぞくとしたものがスコールの首筋に走る。

 うう、と羞恥に唸りながら、スコールはそろそろとバッツに顔を近付けた。
間近にある褐色の瞳が、一切目を逸らさずに見詰めて来る事に耐えられず、スコールは瞼を閉じてバッツの唇に自分のそれを重ねる。
触れるだけで終わるつもりだったのだろうスコールの後頭部に手を添えて、バッツは舌で彼の唇を割った。
ヒクン、と震える肩を抱いて、彼の舌を絡め取り、深い口付けを交わす。


「ん…っ、ん……」


 バッツの舌がスコールの咥内をゆっくりと弄る。
舌先で擽られる感覚に、スコールの肩がピクッ、ピクッ、と反応を示した。
咥内を愛でながら、また首の後ろを擽ってやると、スコールはふるふると肩を震わせていた。
やだ、と言うようにくぐもった声が聞こえたが、バッツは構わずに愛撫を続ける。


「う…ん、ふ……っ」
「ふ…、っは……」
「は…あ……っ」


 唾液塗れになった舌を外へと誘い出しながら、バッツはスコールの唇を開放する。
はあっと甘い吐息を吐きながら、スコールは熱の籠った瞳を揺らし、てらてらと光る赤い舌を見せた。

 ぼんやりとした瞳を彷徨わせているスコールの表情は、“操る”の力を使っていた時とよく似ている。
違うのは、ほんのりと赤みを帯びた頬と、痺れるような感覚に体を支配されている事だろう。
自分自身の意識もあるので、鋭敏になった神経が感知してしまう刺激にも否応なく反応してしまう。

 バッツはスコールの首筋に唇を寄せ、ちゅう、と吸い付いた。
ビクッとスコールの体が跳ね、いやいやと子供のように頭を振る。
構わずに喉仏を舌でくすぐりながら、バッツの右手がスコールのシャツの中に滑り込んだ。
薄い腹筋を掌で撫でながら登って行くと、慎ましやかな蕾の頂きを見付ける。
其処を指先でくりくりと押し潰してやると、スコールは小さな声を上げた。


「あ…っ、や……っ」
「本当に嫌?」
「や…だ……ぁ……っ」


 吐息を首筋に当てながら言うバッツに、スコールはゆるゆると首を横に振って訴えた。
しかしバッツの腕に絡められたスコールの腕は、未だに解かれる気配はない。


「スコールの口は素直じゃないからなぁ」
「う…んん……っ」
「でもその代わり、体は凄く素直だよな」
「あっ……!」


 くりっ、と乳首を捏ねてやると、スコールはビクッと体を仰け反らせて喘いだ。
バッツの指の下で、スコールの蕾はぷくりと膨らんでおり、シャツの裏地に擦れるだけで感じてしまう程に敏感になっている。


「スコール、気持ち良い?」
「……っ」
「教えてくれよ」
「んぁ……っ!」


 喉に舌が滑り、胸の蕾を指が摘まむ。
はくはくとスコールの唇が酸素を求める魚のように喘いだ後、


「バ…ッツ……」
「ん?」
「あぁ……っ」


 摘まんだ乳首を指先で捏ねてやれば、また高い声が上がった。
スコールはバッツの肩に額を押し付け、はあ、はあ、と息を途切れさせながら、小さな声で呟く。


「……きも…ち……、い……んっ……」


 その言葉に、バッツは目を丸くする。
いつも蕩けるまで素直にならないスコールの口が、今此処でその言葉を吐き出すとは思っていなかった。


「スコール?」
「……ん……?」


 いつにない恋人の反応に名前を呼ぶと、ゆらゆらと頼りなく揺れる蒼灰色の瞳がバッツを見る。
何、と問う瞳は甘えん坊の恋人に違いなく、けれどもいつもよりも素直になるのが早いと言う印象は拭えない。

 普段とは少し様子の違うスコールの表情を観察するように確かめながら、バッツは乳首を転がした。
クリクリと乳頭の向きを右へ左へと変えながら刺激してやると、スコールはふるふると体を震わせて快感に耐えている。
ああ、ああ……とバッツの耳元で悩ましい声が繰り返され、バッツの下半身に血が集まって行く。


「あっ…ん……、あぁ……っ」
「乳首、もうこんなに固くなっちゃって」
「やぁ……んっ……!」


 固い蕾のように膨らんでいるスコールの乳首。
それを指先でピンッピンッと弾いて遊びながら囁けば、スコールの顔が益々赤くなる。

 バッツは片方の乳首を摘まんで、クニクニと押し潰すように弄びながら、片手を下肢へと降ろして行った。
薄い腹を掌全体でゆっくりと撫でると、ひくん、とスコールの腹筋が震える。
いつ触っても薄いよなあ、と元々厚みの足りない体の具合を改めて確かめつつ、その中にある臓器を自分の欲望で溺れさせる時の事を想像して、バッツはこっそりと舌なめずりをする。

 くすぐったさを嫌うようにスコールがふるふると頭を振った。
腹を撫でる手を嫌がっていると判りつつ、バッツは掌で軽く腹を押してやった。
ビクッ、と跳ねるスコールに、目尻にキスをして宥めながら、バッツの手はスコールの中心部に触れる。


「ん……っ!」
「勃ってる。やっぱり体は素直だ」
「あ…っ、や……っ!」


 夜着の上から柔らかく雄を握ってやれば、ビクンッ、と細身の体が判り易く反応を示した。
バッツは口角を上げながら、下着の中に手を入れる。

 スコールの下着の中は、じっとりと湿気に覆われており、ペニスは先走りの涙を流していた。
まだ胸しか触ってないのに、と早い反応に驚いたバッツだが、それもスコールがバッツからの熱を待ち望んでいるように思えて嬉しい。
柔らかく握ったそれを上下に扱いて擦ってやれば、スコールははくはくと唇を戦慄かせて、虚ろな瞳を天井へ向けて彷徨わせる。


「あ…は…っ、あ…っ、あぁ……っ!」


 堪らないと言う様子のスコールの喉に、バッツは吸い付いた。
喉仏をゆっくりと舌先で舐め擽ってやれば、ヒクン、と喉の筋肉が震える。
刺激から逃げるように体を仰け反らせるスコールだったが、そんな様子に反して、スコールの腕はバッツの首に絡み付いたままだ。
しかしスコール自身にそんな自覚はないのか、腕を解こうと言う努力すら見せない。
まるで、先のバッツの指示が今も彼の中で生きているかのように。

 バッツはスコールの体をベッドへと押し倒すと、ズボンと下着を脱がせた。
スコールは抵抗するように膝を揃えたり足先を動かしたりとしていたが、結局は無駄な行為だ。
バッツがキスをすると、その感触に溺れるように口付けに応え、その隙にスコールは彼を裸へと剥いてやる。


「ん…、ん、ふ……っ」
「ん……は……、」
「あ……は、あ…あ……っ」


 バッツの舌がスコールの咥内を満遍なく舐る。
舌の根本からじわじわと広がって行くと熱と痺れに、スコールは抗えなかった。
じんわりとした快感が口の中を支配して、バッツに愛撫されるだけで、体が震えそうな程に熱くなる。

 絡めた舌でちゅくちゅくと言う音を鳴らしながら、バッツはスコールの雄を握った。
しゅこしゅこと擦ってやればあっという間に勃起して、蜜が溢れ出して行く。
このまま直ぐに果ててしまいそうな程、スコールの体は快感に正直になっていた。


「スコール、もうちんこパンパンになってる」
「あ、あ…っ、あんっ……!」
「そんなに気持ち良い?」
「ふ…ああっ……!」
「教えて、スコール」


 下唇を舐めて、答えるように促してみる。
スコールは、はっ、はっ、と小刻みに息を吐いた後、


「バッ、ツ……ああ……っ!」
「ん?」
「きも…ち……い、い……んんっ♡」


 恥ずかしそうに、それでも素直に答えるスコールに、きゅっとペニスを強く握れば甲高い声を上げる。
裏筋の敏感な場所を指で引っ掻いてやれば、スコールはビクビクと腰を震わせて快感に悶えた。


「ああっ、ああぁ…っ!そ、こ……んあっ♡」
「今日のスコールは甘えん坊で素直だなぁ」
「はっ、はっ…ああぁっ♡」


 手淫の快感に悶えて、スコールはベッドシーツを握り締めながら高い喘ぎ声を上げた。
膝を立て、バッツの手淫に合わせるように腰を悩ましく揺らす。

 いつにないスコールの素直な様子に、バッツはその原因を察しつつあった。
恐らくスコールは、無自覚且つ浅い程度ではあるが、まだバッツの“操る”力の影響を受けている。
刺激を与えられて没入状態からの回復はしたが、それだけでは戻り切れない所まで力が浸透していたのだろう。
だから、バッツが「教えて」と囁けば、その前に訊ねた事に答えたり、キスをしてと強請ればその通りに応じていたのだ。

 むくむくとバッツの中で悪戯心が育っていく。
スコールは理性が強い性格で、性的な事にも決してオープンではないので、何かと恥ずかしがって嫌がる素振りを見せる。
それが本当に嫌がっているのかは、本気で拒んだりはしないので心配はしていないが、時には素直に自分を求めてくれるスコールも見て見たい、と言うのがバッツの正直な気持ちだった。

 バッツはスコールの脚の間に体を割り込ませると、自身の前を寛げた。
スコールの痴態のお陰で大きくなっている雄の象徴を、切なげに震えているスコールのそれに押し当てると、逞しい感触にスコールの太腿がビクッと跳ねる。


「ふあ……っ!」
「スコールが可愛いから、おれのちんこ、こんなになっちゃった」
「んぁ…あ……っ♡」


 バッツの言葉に、スコールは知らない、と頭を振る。
構わずバッツは、二本のペニスを手で包むように握って、一緒に扱き始める。


「あっ、あっ、あっ……!や、あ…、バッツぅ……っ!」


 どくん、どくん、と脈打つ雄と、存外と大きなバッツの掌に愛でられて、スコールのペニスはどんどん膨らんで行く。
露わにされた時には既に蜜を零していたスコールのそれは、益々泣き虫になって行き、


「はっ…やっ…、バッツ…、ああ……っ!」
「イきそう?」
「あっ、あっ…や…っ!」


 言いたくない、とスコールが首を横に振る。
バッツはそんな彼の喉に噛み付いて、甘く歯を立て、


「教えて、スコール」
「あぁんっ……!」


 ちゅう、と喉を吸いながら、バッツは手淫を激しくする。
右手で竿を扱きながら、左手で亀頭を撫でまわすように刺激してやれば、スコールは腰を浮かせて悶え喘ぐ。


「あっ、あっ♡あっ♡バ、バッツ、や…それ、ああ……っ!」
「教えて、スコール。イきそう?」
「はひっ……あぁ……っ!ああぁ……っ!」


 スコールの鈴口を指の腹でぐりぐりと押してやると、スコールは膝をがくがくと震わせながら何度も頷いた。
声も出ない程の快感を得ているスコールの様子に、可愛いなあ、と思いながら、バッツはエラの窪みを爪先でカリカリと擦ってやる。


「ひっ♡あっ♡それっ、あっ、うぅうんんっ♡」


 ビクッビクッビクッ、と一際大きく体を震わせたかと思うと、スコールは喉奥で声を押し殺しながら絶頂する。
背中を弓形に撓らせ、ベッドから腰を浮かせた格好で、スコールは射精した。
びゅっ、びゅうっ、と吐き出された精液が、スコールの腹に降り注ぐ。

 蜜に汚れたバッツの手の中で、スコールのペニスはまだ勃起している。
膨張は幾らか落ち着いたようだが、前だけの刺激でスコールが満足できない事は判り切っていた。


「あ…あぁ……っ♡」


 スコールの体から強張りが解け、バッツの首に絡まっていた腕の離れて、くったりとベッドに沈む。
快感の名残に震える体を、バッツの蜜に塗れた手がそっと撫でた。
それだけでスコールの体が痺れるように震えて、立てた膝がもどかしそうにバッツの腰を擦る。

 スコールは達したが、バッツの雄はまだその前兆すら見せていない。
バッツの体がスコールに覆い被さるように密着すると、また二本のペニスが重なりあった。
ぐりぐりと股間を押し付けて来るバッツに、スコールはいやいやと頭を振って見せるが、唇からは甘い声が漏れている。


「あ…っ、や…っ、バッツ…ん……っ♡」
「早くスコールの中に入りたいな……」
「ん…あぁ……っ♡」


 バッツの呟きに、スコールの背中にぞくぞくとしたものが奔る。
俺もあんたが欲しい────蒼灰色の瞳が、そんな熱を持ちながらバッツを見上げた。

 バッツの手がスコールの内腿を押して、秘められた場所を露わにする。
其処は今までに一度も触れられていないのに、慎ましく閉じている筈の秘孔はヒクヒクと伸縮して待ち遠しそうに口を膨らませていた。
早く其処に入れたい、と言う気持ちを堪えつつ、バッツは指先でツンツンと入り口をノックする。


「あっ、ふ…っ、あん……っ」
「スコール、自分で足持ってて」
「や……」
「持ってて」


 バッツの言葉に、顔を赤くして嫌だと訴えたスコールだったが、もう一度告げると言葉を失ったように口を噤んだ。
流石に嫌がるかなと思ったバッツだったが、スコールはそろそろ腕を持ち上げて、自分の両膝を抱えてみる。
自分でM字開脚になり、局部を見せつけている格好になったスコールに、バッツは口角が上がるのを堪えられなかった。


「良い子」
「バカ……っ」


 子供を褒めるように言ってやれば、羞恥心の所為か薄らと水膜を浮かせた蒼がじろりと睨んだ。
可愛い抵抗を受け止めつつ、バッツが指先で秘孔をすりすりと擽ると、「んんぅ……っ♡」と甘い声が漏れる。

 ひく、ひく、と物欲しそうに蠢いている秘孔に指先を宛がうと、素直な躰は一層欲しがり、バッツの指に吸い付こうとする。
本の先端だけが振れている状態で、穴淵を軽く擦ってやると、スコールは膝を抱える腕に力を込めて背中を丸める。


「んっ、んっ…ふ…うぅん……っ♡」


 小振りな尻がふるふると震えて、穴口がくぱっ、くぱっ、と閉じては開きを繰り返す。
自分の躰が浅ましい反応をしている事は判るのだろう、スコールは眉根を寄せて顔を赤くして目を伏せていた。
目を閉じているものだから、触覚が鋭敏になっていて、バッツの指が悪戯をしているのがよく伝わる。
その悪戯はいつまでも入り口を苛めているばかりで、長く続けば続く程、スコールの内側は飢えて堪らなくなって行く。

 バッツはじっくりとスコールの入り口を愛でてやった。
ふくふくと卑しい形に膨らんでは口を開ける秘孔を、指先で何度も擦っている内に、スコールの息は上がって行く。
いやらしい匂いがしてきた所でつぷりと指先を入れてやれば、スコールは体を仰け反らせて快感を享受した。
まだ指先だけだと言うのに、スコールの淫壺は嬉しそうにバッツに縋り付き、中へと誘おうとする。


「あ、あ…っ、んぁ……っ♡」


 第一関節まで入れた指を曲げて、縁の内側を押してやる。
抱えあげているスコールの脚がヒクッ…ヒクッ…、と小さく跳ねるのが見えた。


「や…っ、あ…っ、あ…っ♡」
「本当に嫌?」
「んんぅう……っ♡」


 尋ねながら指を奥へと挿入してやれば、スコールは逃げるように視線を逸らす。
根本まで入った指で、狭い道をくちゅくちゅと掻き回しながら、バッツはスコールの耳朶を食んだ。


「あんっ…!あっ、あっ、は…あぁんっ…!」
「スコールのおまんこ、吸い付いて来る」
「は…やっ…まん…こ、じゃ…な……あぅんっ♡」


 バッツの言葉に、スコールが赤い顔で否定するが、奥を突かれて嬌声に取って代わられた。
其処を何度もコツコツと指先でノックしてやれば、スコールは為す術なく喘ぐしか出来ない。


「おまんこだよ。スコールの此処は、おれだけのエッチなおまんこだ」
「んぁ、あっ、あっ…!や…あぁっ♡」


 バッツの指が奥壁を掠める度に、スコールの唇からは甘い声が上がる。
指先に絡み付く肉の感触を堪能しながら、バッツはじっくりと媚肉を愛でてやった。

 ひくひくと戦慄く内壁が、締め付けながらも柔らかくなりつつある頃、スコールの貌は蕩けていた。
閉じる事を忘れた口からは絶えず甘い吐息が零れ、飲み込めなかった唾液が端から伝い落ちている。
膝を抱える手が震え、何度も離しそうになる膝を抱え直しているのが、保護者の言いつけを守ろうと頑張る子供のようだった。
それを挫かんとばかりに奥壁をくちゅくちゅと音を立てて掻き回してやれば、宙に浮いた足がビクッビクッと跳ねる。


「はっ、あっ、あぁっ♡んや…やっ、あんっ…!」
「スコールの奥、もぐもぐしてるの判る?もっと大きいの欲しいって言ってるみたいだ」
「ああ…っ、や…やぁ……あぁんっ♡」


 バッツの言葉にスコールはゆるゆると首を横に振って否定するが、彼の躰は何処までも正直だ。
にゅぷぅっ、と奥を目指して指を突き入れてやると、嬉しそうに嬌声が上がる。
そのまま奥の行き止まりを爪先でカリカリと引っ掻くと、スコールは全身をぶるぶると大きく震わせた。


「んんうぅっ♡やっ、や♡バ、バッツ、バッツぅ……っ!」
「物足りない?」
「ふっ、ふあ…っ!あぅんっ♡」


 答えられないスコールに構わず、バッツは二本目の指を挿入した。


「は、はう…っ、あう……あぁんっ♡やっ、中…っ、か、掻き回すなぁ…っ!ああっ♡」
「そんな事言っても、スコールのまんこは気持ち良さそうだぞ?」
「んや、あっ、あぁんっ♡はひ…っ、ひぃんっ♡」


 秘孔の奥で、バッツの二本の指が遊んでいる。
指を曲げて狭い直腸を拡げたかと思うと、第一関節を小刻みに曲げて何度も同じ場所を擦って責める。
知り尽くされた弱点をバッツに満遍なく苛められると、スコールの秘孔はあっという間に濡れて行き、もっともっとと求めるようにバッツの指を締め付ける。

 バッツはスコールの腰を持ち上げると、ちんぐり返しの格好にしてやった。
バッツは逆様になったスコールの股間から彼の貌を見下ろしながら、アナルの奥を激しく掻き回してやった。


「ああっ、あっ、あぁっ♡や…バッツ、やだ…こんな格好…っ!」
「大丈夫、可愛いよ。スコールのおまんこがよく見える」
「やだぁ…っ、見るな、見るなバカ……あぁああっ♡」


 見るな、と言いながら、スコールはまだ抱えた膝を話そうとしない。
まるで自分で見せつけているようだ、と誘導した自分を棚に上げてバッツは思う。

 見せてはいけない場所を晒している、それを恋人にこんなにも近い距離で見られていると言う事が、スコールを羞恥と興奮で苛む。
膝を抱える手が震え、折りたたまれているような格好からの息苦しさもあるのだろう、眦の涙が粒を大きくして行く。
しかし、スコールのペニスは萎える事はなく、また膨らみ始めていた。
その一物をバッツの手が捕まえると、「ひぅんっ♡」と可愛らしい声が響く。

 バッツはアナルの奥を掻き回しながら、勃起したスコールのペニスを扱き始めた。
既に一度達した事もあり、敏感になっている其処へ刺激を与えられるのは、スコールにとって拷問にも等しい快感であった。


「あ、あっ、はぁっ♡はぁんっ♡バッツ、や、ひぃっ♡」
「スコール、おまんこがきゅーってしてるぞ」
「やだ、やっ、あぁあっ♡」
「なあ、スコール。スコールのおまんこ、凄くエッチな色してるぞ」
「見るな、見る…んんっ♡見るなって、言って……ああ……っ」
「ピンク色して、ヒクヒクして、おれのが欲しいって一杯おねだりしてるんだ。判るだろ?」
「はう、はひっ、ああ…っ!あっ、あっ…!」
「おれも早く挿れたいな。挿れて、一杯スコールの中に俺の精子出して、孕ませたい」
「うっ、んっ♡バカ……あっ、ふぅうんっ♡」


 与えられる刺激に絶えず甘い声を上げながら、スコールは涙の滲んだ目でバッツを睨む。
が、バッツの手がぐりぐりと奥壁を押し潰すように苛めると、スコールは目の奥がチカチカと点滅する程の強烈な快感に襲われた。


「あは、あひ、はあぁんっ♡バ、バッツ、そこ、ああっ!」
「お尻穿られながらちんぽシコシコされるの気持ち良い?」
「あぁ、あっあっあぁあっ♡」
「教えて、スコール。気持ち良い?」
「んぁああっ♡そこっ、そこだめぇっ♡ああああっ♡」


 スコールが一番弱い前立腺をぐりぐりと押し潰すように苛めながら、ペニスの尿道を擦れば、スコールは全身を強張らせて悲鳴を上げた。
宙を蹴っていた足の爪先が強張り、太腿が震えて、直腸が閉じて指を締め付ける。
媚肉が脈を打つように蠢きながら、バッツの指をマッサージしており、イきそうな時の反応だとバッツに教えた。


「はひっ、はひっ♡ひぃいっ♡あああぁっ♡」
「スコール。ほら、教えてよ」
「んぁあっ♡ひぃっ♡いいいっ♡きもっ、きもひっ♡イイぃいいっっ♡♡」


 余りの快感に、スコールは叫ぶように答えながら、二度目の絶頂を見る。
ビクンビクンと四肢を大きく痙攣させながら、スコールは秘部をバッツに見せつけながら射精した。
びゅうううっ、と勢いよく吐き出された精液が、蕩けた表情のスコールの貌に飛び散っていく。