今ここにある景色を覚えていて
『It is among a sale per day of today and a Mass!』
聖域から一番近いモーグリショップに向かった秩序の戦士一行を迎えたのは、一枚の看板。
それには、ヒイラギの葉に、赤いリボンを括りつけたリースを飾り付けてあった。
其処に綴られた文章を読み上げたのは、フリオニールだ。
彼はきょとんとした表情をしばし晒した後、小声でもう一度、文章を読み上げた。
それからまたしばらくの間を置いて、
「そうか、セールか!良かったな、皆!」
タダで貰えるなら貰ってしまおう、なフリオニールである。
元々が節約家な性分の彼が、これに食いつかない訳がなかった。
その傍らで、バッツが看板を眺めながら首を傾げている。
「セールなのはいいけどさ。“mass(ミサ)”ってなんの事だ?」
「え?バッツ、知らないんスか?」
フリオニールの隣にいたティーダが、体躯の大きな彼の陰からひょっこり顔を出して言った。
「ミサって言ったら、クリスマス・ミサの事に決まってるって」
「クリスマスってなんだ?」
「え、其処から…?」
続けて問うたバッツの言葉に、ティーダが目を丸くした。
沢山の世界の断片で出来た世界で出逢った仲間達は、皆それぞれ、異なる世界から召喚された。
世界が違っても共通して分かり合える事は確かなのだが、反面、理解しあえない価値観や習慣もあった。
特にティーダは比較的文明の発達した世界にいたので、時折こうして、他の仲間達とジェネレーションギャップを感じる事が多かった。
「えーっと、クリスマスって言うのは、聖なる夜って言われる特別な日の事で……えーと…」
「何が特別なの?」
「ルーネスも知らないのか?」
聞いた事のない話に、知識欲が疼いたのだろうか。
ルーネスからの問いかけに、ティーダはまた目を丸くした。
それから辺りを見回すと、バッツやルーネスだけでなく、フリオニール、セシル、ティナ、終いにはウォーリアまでもがも興味津々と言った様子だ。
ジタンは知っているのか、単に説明に興味がないのか、スコールにじゃれついて遊んでいる。
それらの輪から少し外れた所にクラウドがいて、ティーダはふと、彼も自分と同じような文明レベルの世界にいたらしい事を思い出す。
「なあ、クラウド。クラウドはクリスマスって知ってる?」
「ああ。俺の世界にもあったぞ。お前と全く同じかは判らないが」
「じゃあパス!」
主語を抜いて言ったティーダだったが、クラウドにはその意味がちゃんと伝わったようだ。
咳払いを一つして、説明を求める仲間達に向き直る。
「クリスマスとは、とある特別な人物の誕生を祝う日の事だ」
「特別な人って?」
「世界の救世主、だそうだ。まあ、この辺りは神話なり聖書なりの伝説上の話だから、あまり細かく考えなくて良いだろう。俺も宗教の人間じゃないから、詳しく知らないしな。とにかく、この救世主の誕生を祝う日は、俺やティーダの世界では、特別な日だと認識されていて、祝いにケーキを食べたりする習慣がある」
「ケーキかあ……フリオニール、作ってくれよ!」
早速食いついたバッツの言葉に、菓子は苦手だよ、とフリオニールが眉尻を下げる。
「それで、この日が近付くと、商売をしている奴らはこぞってクリスマスセールってものを始める。丁度こんな具合にな」
リースのかけられた看板を指差すクラウド。
リースを形作るヒイラギも、彩のリボンも、クリスマスの日には欠かせないものだ。
商売人達は、これらのクリスマスグッズと共に、セールと言う幟やポスターを掲げて、客を呼び込む。
彼らにとってこの時期は、年末に向かう大切な書き入れ時なのである。
俺もこの時期は大変だった…と呟くクラウドの脳裏には、元の世界での奔走する日々が思い浮かんでいた。
それをやや強引に中断させて、恐らくメインとなるであろう、クリスマス・ミサのもう一つの習慣について説明する。
「そしてクリスマスの日には、子供達の元にサンタクロースがやって来て、眠っている子供達の枕元にプレゼントを置いて行くんだ」
「サンタクロース?眠ってる子供の枕元って……」
「それ、不法侵入って言うんじゃないの?」
その行動の不可解さに首を傾げるセシルと、胡乱な目をして言ったルーネスに、それを言っては、とクラウドは眉尻を下げて苦笑する。
「夢がないっスね、ルーは」
「だって怪しいじゃない。なんの見返りもないのに、プレゼント置いて行く人なんて」
「そんな事言ってると、ルーの所にサンタさんが来ないぞー」
年下の戦士の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら言うティーダに、ルーネスはそもそも僕は子供じゃない、と顔を顰める。
その傍らで、ティナが不思議そうにクラウドに問いかける。
「どうして、来てくれなくなるの?」
「サンタクロースがプレゼントを贈るのは、良い子の所だけ、なんだそうだ。だから悪さをしたり、サンタクロースなんていないと言う子供の所には、来てくれないのさ」
そういう風に言い伝えられている、と付け足すクラウドに、ティナはふぅん、と首を傾ける。
その傍らで、益々胡散臭い、と言う表情をするルーネスを、セシルが宥める。
「まあまあ、ルーネス。色んな世界があるから、色んな習慣もあるんだ。細かい事は言いっこナシにして、折角教えて貰ったんだし、モーグリも便乗してるようだし。僕らも楽しもう?」
ね、と柔らかな笑みを浮かべるセシルに、ルーネスは唇を尖らせてはみるものの、他世界の慣習にいつまでも文句をつけるのも無粋と思ったのか、口を噤む。
ルーネスにしてみれば、単純に疑問を解いて欲しいだけなのだが、それを理論で説明がつかないのが、習慣や風習と言うものである。
同じような事はルーネスにも言えるから、これ以上はもう言うまい、と諦める事にする。
クラウドの説明を興味深げに聞いていたウォーリアが、ふむ、と顎下に指を当てて数泊考えるように沈黙した後、
「世界には、面白い習慣があるものだな。子供を喜ばせる日、と言う事か」
「極端に言えばそうなるな」
クラウドの世界では、他にも恋人同士で過ごす日だとか、家族でゆっくり過ごす日だとか、色々言われていたような気もするが、其処まで説明するとキリがなくなってしまう。
一番メインであろう事は教えたし、これで良いだろうとクラウドは思う事にした。
クリスマスに関する説明はこの辺りにして、と、クラウドは本来の目的であるモーグリショップでの物資調達に当たる事にする。
ショップに並ぶ商品のメニューは、ポーションやエーテルなどのいつものアイテムに加え、クリスマスならではの品物も並んでいた。
リースや小さなモミの木の他、ケーキにお菓子に靴下に、サンタクロースを模したブリキの玩具に、ネジを回すとクリスマス・キャロルの流れるオルゴール。
戦場には全く不似合いな品物がショップ内を埋め尽くしている。
モーグリがこれらを何処から調達しているのかは、相変わらず謎だ。
懐かしさから、ついつい玩具やオルゴールを眺めてしまっていたクラウドだったが、気を取り直して消費物を補充する。
値段もクリスマスセールとあって、破格の値段でセットで売られていた。
予定よりも大分ギルが余ったので、ついでに何か買っていくか、と辺りを見回して、既に玩具類に夢中になっている仲間達に気付く。
「これ、かわいいね。シカ…かな?」
「似てるけど…違うね。僕らの世界にはいないシカかな」
「ああ、それ、シカじゃなくてトナカイっスよ。サンタのソリを引くのはトナカイって決まってるんだ」
トナカイのぬいぐるみを抱き締めるティナと、そんなティナを眺めていたルーネスに、オルゴールを弄っていたティーダが応える。
ティーダがオルゴールのネジを捻ると、ポロンポロンと小さなメロディが流れ始める。
それはクラウドも聞き覚えのあるメロディだった。
「サイレント・ナイトか」
「お、クラウドも知ってる?」
「オレも聞いた事あるぜ」
クラウドとティーダの間にひょいっと割り込んできたのは、ずっとスコールにじゃれついていたジタンだった。
スコールは店の中には姿が見られず、「スコールは?」と問うクラウドに、ジタンはショップの外で待っていると答えた。
「ジタンは、クリスマスって知ってるんスか?」
「ああ。オレの所はクリスマスってのじゃなくて、ノエルって呼んでたけど、やってる事は大体一緒だな。サンタ?とかも、呼び方違ったなあ……シンタクラースって言ってた気がする」
でも、眠る子供の枕元にプレゼントを置いて行ってくれるのは変わらない。
言いながら、ジタンは並べられたアクセサリー商品の中から、ヒイラギの葉に赤い実がつけられ、その下に小さなシルバーのヤドリギを取り付けた、ヘアピンを手に取った。
それの代金を支払うと、ジタンは直ぐにティナの下に戻り、
「此方をどうぞ、レディ。きっと貴女にお似合いですよ」
「ふふ、ありがとう。つけてみても良いかな」
紳士然とした言葉遣いと仕草で、透明な袋に可愛らしいリボンでラッピングされたヘアピンを差し出すジタン。
いつものジタンのその仕草に、ルーネスが白い眼でジタンを睨んでいたが、当の本人達は全く気にしていない。
微笑んでヘアピンを受け取ったティナの言葉に、是非とも!とジタンが頷いた。
そんな遣り取りを傍らで見ながら、クラウドとティーダは、あれかな、とぼんやり自分達の世界にも通じる習慣を思い出していた。
袋からヘアピンを取り出したティナは、前髪を少し顔の横に流して留める。
淡いクリーム色のティナの髪に、鮮やかな緑と赤い実が映え、その傍ら、ヤドリギの銀色がひらりと光る。
「どうかな?」
「可愛いよ、ティナ。よく似合ってる」
「ああ」
「流石ジタンの見立てっスね」
ルーネスとクラウドの言葉に、ティナは照れくさそうに頬を染める。
その隣で、ジタンがふふんと胸を張った。
「さてと……ティナちゃん。ちょっと失礼」
一つ詫びをして、ジタンはティナの傍に片膝を立てて跪き、彼女の右手をそっと掬う。
盗賊である筈のジタンだが、こうした騎士然とした仕草も中々胴に入っているあたり、流石と言うか。
ジタンは、きょとんとしているティナを見上げて小さく微笑んだ後、彼女の白い嫋やかな手に、そっと唇を落とした。
「あーっ!何やってるのさ、ジタン!」
それ程広くはないショップ内に響いたルーネスの声に、各々好きに商品を眺めていた仲間達が一斉に振り返る。
ルーネスは眉尻を吊り上げて、ジタンとティナの間に割り込んだ。
ジタンは、今にも噛み付かんばかりに睨むルーネスから足早に逃げる。
サンタクロース人形を前に、何やら話し込んでいたセシルとフリオニール、ウォーリア、バッツの下に行くと、セシルを盾にするように彼の背中に廻り込む。
其処からジタンはひょっこりと顔だけ出して、
「ヤドリギの飾りの下にいる女の子には、キスをしていいって決まりがあるんだよ」
「それはジタンの世界の話でしょ!」
ティナは知らないんだから関係ない、と言ってジタンを追いかけようとするルーネスを、クラウドが肩を押さえて宥める。
「あれは習慣であって、特別やましいものじゃないから、安心しろ、ルーネス。こういう時のキスは、相手の安全や健康を願ってする、一種の呪(まじな)いみたいなものなんだ」
「そうそう、今日ぐらいは目くじら立てるなって。折角だし、ルーもティナにキスしちゃえばいいじゃん」
それで御相子、と言うティーダに、ルーネスの顔が真っ赤になる。
ジタンと一緒にしないで、と叫ぶ少年の傍らで、ティナがことんと首を傾げ、
「クラウド、キスをするのは男の人からじゃないと駄目なの?」
「いや……習慣的に男性が女性に、と言うのがパターンになっているだけだから、やってはいけない、と言う事はないと思うぞ」
其処まで厳格な規定が設けられている訳ではない、と言うクラウドに、ティナがぱっと明るく破顔する。
いつも柔らかな表情を浮かべているティナにしては、珍しい表情と言えた。
ティナはヘアピンを取ると、クラウドに羽交い絞めにされた格好で暴れているルーネスに声をかけた。
「ルーネス、」
少女の呼ぶ声に、ルーネスがはっと我に返って顔を上げる。
ティーナはルーネスの金色の髪に、そっとヘアピンを取り付け、少年の額にキスをした。
────今、何が。
そんな表情で、ルーネスはクラウドに抱えられたまま、ぽかんとなってフリーズする。
同じくルーネスを抱えるクラウドも、傍で眺めていたティーダも、口を開けて固まっていた。
ティナだけがにこにこと楽しそうに笑っている。
針が止まった時計を動かしたのは、ジタンだった。
「何羨ましい事して貰ってんだ、たまあああああ!」
「たまって言うな!」
ほぼ条件反射で返したルーネスに、「そんな事どうでもいいんだよ!」とジタンが叫ぶ。
「ティナちゃん、今の」
「安全と健康のおまじない、だよね」
「じゃあオレにも!」
「うん」
「ちょ、ちょっとちょっと!ジタンは駄目!」
迷いなく希望するジタンに、快く頷いたティナだったが、すぐさまルーネスが割り込んで阻止する。
なんで駄目なんだよ、と言うジタンに、ルーネスは「なんででも!」と言い返す。
そんな二人の様子に、ティナがどうしよう、と困ったように眉尻を下げていた。
恒例とも言える最年少組二名の賑やかなケンカに、クラウドはやれやれ、と肩を竦めて苦笑する。
ティーダも可笑しそうに笑っていて、手元のオルゴールをテーブルに戻し、面白そうにジタンとルーネスの遣り取りを眺めていた。
そんな傍観者二人の下に、セシルが小さな雪だるまの飾りを持って来る。
「ねえ、二人とも。クリスマス…だっけ?これのグッズを見てると、雪だるまとか、氷の結晶とかが多い気がするんだけど、これもクリスマスと関係があるのかい?」
「ああ。クリスマスの時期は冬だからな。地方によってズレはあると思うが、大抵、雪が降る時期がクリスマスになった」
「俺の所もそうだなぁ。だから冬のグッズと一緒に飾られる事が多いんスよ」
幼い頃に見上げていたクリスマスツリーを思い描きながら、ティーダは言った。
セシルは、小さくて愛らしい、マフラーを巻いた雪だるまを見下ろして、成程ねえ、と納得したように微笑んだ。
ショップ内に並べられたクリスマスグッズは、セシルが持っているような細々とした飾りの他、オーナメントリボンなど、ツリーを華やかに飾る品物もある。
バッツがオーナメントの電球の電源を入れて、ちかちかと様々な色に光るライトに感歎の声を漏らしている。
その傍らで、ウォーリアがいつもの無表情のまま、一メートル大のサンタクロースの人形をじっと見詰めていると言う、シュールな光景があった。
ふとクラウドがモーグリの方を見ると、フリオニールが菓子の詰め合わせの代金を払っていた。
いつも「出来れば倹約したい」と言うフリオニールにしては、珍しい事だ。
じっと見つめるクラウドに気付いたフリオニールは、少し眉尻を下げて笑い、
「ケーキとか菓子とか作るの、俺はあんまり得意じゃないからさ。でも、こういうのがあった方がクリスマスらしいんだろ?」
「まあ、そうだな」
「なら今日位は奮発しても良いかと思ったんだ」
手に持っている袋詰めされた菓子は、持って帰ったら直ぐに元気な欠食児童達の胃袋に消える事だろう。
フリオニールの背中に、元気な塊が跳び付いて来た。
ティーダである。
「じゃあツリーも買って行くっスよ、フリオ!」
「ツリーって……あの木か?」
フリオニールが指差したのは、ショップ内で一番スペースを陣取っている、高さニメートルのクリスマスツリー。
流石にあれはちょっと、と言うフリオニールに、じゃあこっち、とティーダが高さ一メートル程のツリーを指差す。
「これと、ケーキと、あと飾り。買って帰って飾ろう!」
「嵩張りそうだし……ちょっと値が張るなあ。飾りも色々買うんだろ?だったらツリーはもうちょっと安いのが…」
「ツリーとセットで買ってくれるなら、お安くしとくクポ〜」
ぱたぱたと小さな羽根を羽ばたかせながら言ったモーグリに、フリオニールは更に難しい顔になって考え込む。
唸り出したフリオニールを見て、此処は押し所だと思ったティーダが、親に玩具をねだる子供のように食い下がった。
めいめい賑やかな仲間達を眺め、帰るにはもうしばらくかかりそうだと、クラウドは一つ短い息を吐いて、小さな笑みを浮かべた。
ティーダ希望のツリーは、一メートルよりももう少し小ぶりなものを買う事になった。
飾りはティーダとジタン、そしてティナに選んで貰い、箱に詰められたそれらは、フリオニール、セシル、クラウドが持つ事になった。
本来の用事で買ったポーションやエーテル等は、残りのメンバーが分担して持っている。
他にも、フリオニールが奮発して買った菓子類は、「持って帰るまでにつまみ食いをしない」と言う信頼性から、スコールが持つ事になった。
案の定ジタンやティーダ、バッツが菓子をねだりに言ったが、スコールは頑として菓子を譲らない。
喧しさには辟易しているようだが。
買い物をしている最中、スコールはずっとショップの外にいた。
店内の賑やかさは聞こえていたようだったが、何故菓子を買う事になったのか、ツリーだの飾りだのと、本来ならば必要ない筈のものを大量に買い揃える事になったのかまでは、聞こえていなかったらしく、ショップを出て来た仲間達の大荷物を見て、露骨に顔を顰めていた。
幸運な事に、これだけの大荷物を抱えての帰路で、魔物や混沌の戦士に襲われる事はなかった。
メンバーも荷物も無傷のままでホームに到着すると、ティーダとジタンとバッツの賑やか三人組は、早速ツリーの飾りつけを始めた。
楽しそうにあれこれと飾り付けて行く三人を、ティナも楽しそうに見つめている。
その傍らで、ルーネスははしゃぐ年上三名を呆れた眼で眺めつつも、そのグリーンの瞳に心なしか楽しそうな色が宿っているのは確かだった。
ツリーの飾りつけが一通り終わると、最後にバッツが大きな星の飾りを手にし、
「よし、これでラスト!」
ツリーの頂点に星が飾られて、これで完成。
いえーい、と楽しそうに三人は手を打ちあって喜んだ。
「結構いい感じになったよな」
「欲を言えば、もうちょっとでかい奴でやりたかったけどな。ま、仕方ないか」
「皆呼んでくるっスよ!」
自信作のお披露目だ、とティーダがキッチンにいるフリオニールを呼びに行く。
じゃあ俺達も、とジタンとバッツは屋敷内の各自室で寛いでいるだろう仲間達の下へ駆けた。
キッチンから出て来たフリオニールは、ただの緑色の木だったツリーが、華やかに彩られているのを見て、「凄いじゃないか」とティーダに笑いかけた。
ティーダがくすぐったそうに笑う。
それから、図書室に篭っていたクラウドとセシルをジタンが連れて来、続いてバッツが外で素振りをしていたウォーリアを連れて来た。
「ほう。見事なものだな」
モーグリショップで見ていたものに比べれば、とても小さなツリーだが、ティーダ達の奮闘のお陰で、負けず劣らず豪華な姿になっている。
ティナとルーネスがツリーの下に近付いた。
ティナの視線の先には、ツリーの上部に飾られた、小さなモーグリのキーホルダーがある。
つん、と白い指先がそれを突いた。
すると、モーグリの下に取り付けられた小さなベルが、ちりんちりんと音を鳴らす。
可愛い、と嬉しそうに呟くティナに、ルーネスも頬が緩む。
───と、バッツがきょろきょろと辺りを見回して、首を傾げる。
「あれ?スコールはどうしたんだ?」
スコールは、買い物から帰って早々、自分の部屋に篭ってしまった。
ウォーリアを呼びに屋敷の外に出たバッツは、てっきり、屋敷内にいたクラウド達を呼びに行ったジタンが、彼も呼んでくるものと思い込んでいた。
ジタンは困ったように眉尻を下げ、頬を掻き、
「あー……声はかけたんだけどなあ。反応がなかったんだ。寝ちまったのかも」
「まだ6時っスよ。早過ぎないか?」
「なんか疲れてるみたいだったから、そっとしとこうと思ってさ」
だから呼んでない、と言うジタンに、ティーダが勿体ないなと零す。
ウォーリアはそんなティーダを諌めるように言った。
「疲れているのなら、無理に起こすのも忍びない。スコールにツリーを見せるのは明日でも構わないだろう」
どうせなら、皆で一緒に見て盛り上がりたい、と思うティーダだが、ウォーリアに言われてしまっては仕方がない。
少し残念そうに唇を尖らせて、ツリーを見上げたのだった。
≫
英文は翻訳で一発変換なので、正誤はスルーでお願いします…。
ノエル(Noel)はフランス語、シンタクラースはオランダ語。ごちゃまぜにさせた独自設定ですみません。