child play






意味は、ない

理由は、多分、ある




何も知らない、穢れさえも知らない子供






それを汚すたびに思うのは

僅かな後悔と



底知れぬ、悦び


















最初はただ、好奇心だからだった。

閉鎖的に育っている子供を見て、ふと思ったのだ。
性的な教育は、一体どうしているのだろうかと。




神社仏閣というものは、俗世間から切り離され。
人間の持つ欲望を律して生きていく者のいる場所だと。
漠然としたイメージを持っていた。

だからじゃないが、三蔵も淡白だし。
子供に至っては、寧ろ何も知らないように見えた。


三蔵は、悟空に何も教えていないのだろうか。
そうだと考えても、特に違和感も沸かない。

悟空は今年で15らしいが(どうにも見えない)。
夢精さえも知らないように見える。
性的行為という物を知っているかさえ怪しい。


影で稚児だなんだとささやかれている悟空だが。
その意味も判らず、三蔵に聞いた事もあるようだ。
三蔵の返答がどうであったかは、知らない。








だから最初は、そんな好奇心からだったんだ。

















三蔵が遠出の仕事で、悟空を置いて行った。
悟空は最後まで、一緒に行くと駄々を捏ねたが。
頭を撫でられ、「待ってろ」と言われてから大人しくなった。


普段煩いだの邪魔だの言う彼だが。
置いて行くのは、悟空の身を案じるからで。
悟空もそれが判らない訳ではない。

遠くなっていく背中を、泣きそうな顔で見ていたのは。
悟浄の記憶の中で、まだ新しいままだ。




仕事先の寺は、何かと戒律が厳しいらしく。
悟空の風当たりも酷いだろうと踏んでの判断。

これが初めてではない。
悟浄と八戒に出会う前は、寺に置いていた。
悟空も仕方がないとは思っているらしいが。



頭と心は別物なんだと、よく判った。



置いて行かれた事に、しばらく拗ねていた小猿だが。
八戒が自慢の料理を振舞ってやったり。
悟浄が遊び相手をしてやれば、気も紛れた。

ポーカーに勝てなくて怒ったり。
風呂場で悟浄と一緒に騒いだり。



寺院にいる時には出来ない事。





泣いた鴉がもう笑った、と悟浄が言うと。
意味が判らないと言った顔をしている悟空がいた。





夜になると。
悟空のお願いで、三人一緒に寝る事になる。

悟空は小柄なので問題ないのだが。
図体の大きい男二人がシングルベッドにいる光景は。
悟浄は、自分の事ながら嫌だなぁとか思っていた。


けれど、二人に挟まれている悟空は上機嫌で。
悟浄の髪を引っ張ったり、八戒に抱き付いたり。
咎める者がいないので、甘え放題だ。

狭いベッドの中では、流石に暴れられなくて。
引っ張られる髪が少々痛いが、悟浄は我慢してやった。

八戒は四六時中、上機嫌だった。
じゃれついてくる悟空に、柔和な笑みを向けていて。
時折、手櫛で悟空の長い髪を梳いていた。



夜が更けても、悟空はまだ眠らない。
どうやら、夜更かしに慣れてきたらしい。

三蔵が知ったら、なんと言うか。
躾なのか、それとも単に自分の生活リズムなのか。
あの保護者は、12時までに悟空を寝かしつけているらしい。





仕舞いには、「目が冴えた」と言い出して。
それなら何か作ろうと八戒がキッチンに向かおうとした時。



玄関のチャイムが、鳴った。






















「八戒、どうしたの?」




突然の訪問に家主と同居人で対応し。
寝室に戻って来たのは、悟浄一人で。
不思議に思った悟空の質問は、ごく当然だろう。

悟空の金瞳は、暗闇の中、よく映える。
悟浄は大地色の髪をくしゃりと撫ぜた。



「近所の寄り合い。ちょっと急ぎらしい」
「悟浄は行かなくていいのか?」
「俺よりあいつの方が顔が利くからな」



もとより、悟浄は近所付き合いを殆どしていない。
大体の活動時間が夜中だったし。
話す機会もなければ、会う機会もなかった。

それが八戒と同居するようになってから一変。
彼の人当たりの良さは、近所に評判になったらしい。



「八戒、遅いの?」
「多分な。って訳で、ベッドが広くなるぜ」
「あ、じゃあさ、悟浄」



ベッドに上がった悟浄に、悟空がじゃれついた。








「今日は何して遊ぶの?」




















“遊び”。




それは、二人きりの時だけの“遊び”。
三蔵も八戒もいない時だけの。
悟空と悟浄だけの、内緒の“遊び”。

知られたら、問答無用であの世行きだ。
恐らく、骨のカスさえ残してくれやしないだろう。


けれど、何も知らない悟空は。
絶対内緒だと強く言う悟浄を見て。
多分、単純に秘密を持てるのが嬉しいのだろう。
なんの疑問も口にしないで、頷いた。

大人の汚いやり方だと判ってはいるけど。
もう戻れないのだから仕方がないだろう。




期間は、悟空が大人になるまで。
“遊び”の本当の意味を知るまで。

今のところ、それが来る様子はない。
二人きりになると、“遊び”をしたがるようになり。
無垢な魂そのままに、穢されているとも知らない。









ハマっているのは、どちらだろう。



































一糸纏わぬ姿になっても。
子供にはまだ、羞恥心なんてものはなく。
同じく上半身裸になった悟浄に、じゃれついて来る。

そんな悟空の大地色の髪をくしゃりと撫ぜて。
壁に背を預けさせ、ベッドに座らせる。



「今日どんなことすんの?」
「そーだな……ちょっと趣向変えてみるか」



悟空の両足を左右に割り開いて。
そこに悟浄は、自分の躯を割り込ませる。

見上げてくる金瞳の瞼にキスを落とす。
くすぐったそうに小さく笑う悟空に、悟浄も笑って。
柔らかい唇に深く深く口付ける。



「…っふ…ん……ゅ…」



キスをするのは、初めてじゃない。
触れるだけのキスも、深い深いキスも。
何も知らないまま、行為だけ教えた。

開放すれば、酸欠からか肩で呼吸して。
小柄な手が、抗議するように悟浄の髪を引っ張る。


鼻で息をしろと教えているのに。
不器用のなせる技か、悟空はそれが出来なくて。
口付けるたびに軽い酸欠状態に陥る。

その時、顔はほんのりと赤く染まって。
いつもの子供っぽさとは違う、艶のある表情をする。


上下する悟空の胸に手を這わす。
そのまま顔を寄せて舌で愛撫すると、幼い躯が震えた。

女のように柔らかい膨らみなんてない。
体付きは細いし、背も小さいし。
中身は幼児と変わらないくらい、だけど。



「っは…やん……あ…」
「お前、最近敏感になってきたよな」
「……ふぇ……?」



最初に触れた時から、感度がいいと思ったが。
回数が増える毎に、反応が正直になる。

カリ、と胸の果実に歯を立てる。





「っんぁ!」





悟空の躯が跳ね、背を仰け反らせる。



「やっ、ごじょ…あ、あん、やっん…!」
「結構硬くなってんぞ……」



引き剥がそうとしているのだろう。
悟空の手が、悟浄の髪を引っ張ろうろうとした。

しかし、悟浄がまた果実に愛撫を与えると。
悟空は悟浄の頭を抱きこむ形になり。
まるで「もっと」と強請っているようだった。

胸から与える愛撫を止めないままで。
悟浄の手が、ゆっくりと悟空の下肢へ下りていく。


今の愛撫だけで、悟空は一杯一杯で。
悟浄の手が不埒な所に触れようとしているなど気付かない。




「……ちょっと慣らそうな」




幼い子供をあやすように言ってから。
悟空の反応を待たず、指を一本ねじ込んだ。



「っや!」
「このままじゃ何しても痛ぇだろ」
「あ、やっ…あ、ふ…んん…!」



突き入れた指を動かすと。
悟空の躯がびくびくと反応を示した。

子供だから、余計に素直なのだろう。
それは躯の方もしっかりと示していて。
悟浄の指と穴の隙間から、蜜が零れ落ちる。


ゆっくりと二本目を差し込めば。
ただでさえ狭い内壁が、更に締め付ける。



「おい、力抜け。いてぇよ」
「だ…ってぇ…む、りぃ………」



涙目で見上げる悟空に、悟浄は仕方ないと溜息を吐いた。

金鈷に口付けて、次は瞼にして。
目尻の涙を舐めとり、唇に触れるだけのキスを落とす。

開いていた手で大地色の髪を撫ぜて。
赤ん坊をあやすように、背中をぽんぽんと叩いてやる。
すると次第に、悟空の躯の強張りが解ける。


悟浄の頭を抑えていた腕の力が抜けて。
悟浄が躯を起こすと、悟空が見上げてきた。

熱に浮いた、金色の瞳で。




「─────っあ……!」




ずる、と指を引き抜いて。
悟浄はベッドを降りて、傍にあった棚を開けた。

悟空は荒い息を繰り返し、それを見ていて。
躯が熱いのか、寒さを感じるらしく。
生まれたままの姿の自分を、抱きしめていた。



そして、悟浄がベッドに戻ってきた時には。
手の中に、悟空には見慣れぬものが握られていた。





「なに?それ」









─────そう聞いてきた悟空に、悟浄は薄っすらと笑った。