発情期







可愛い可愛い我が家の猫は





ちょっとだけ、腕白すぎる所があります

























「あっ…にゃぁ……」



猫撫で声───と言うよりも、猫の鳴き声が部屋に響く。
目をやれば、小さな子供が身体を震わせて丸くなっていた。
頬を朱色に染めて、半開きの口からは時折小さな声が漏れる。

その頭にはピンと立った三角形の獣の耳があり、包まったシーツの隙間からは細長い尻尾のようなものがある。
子供が身を震わせる度に、尻尾のようなものがゆらゆらと揺れた。



「にゃ、にゅ……ふにゃあぁん……」



もぞもぞと布団の中で悶えながら、子供は声を漏らす。

寒い訳ではないだろう。
かと言って、寝苦しいからという訳でもないようだ。


金蝉はそれをしばし見つめた後、そっと歩み寄る。




「……どうした」




判っていながら問えば、子供はゆるゆると瞳を向けた。
熱に浮かされたようなその瞳に、金蝉は思わずゾクリと背筋を駆ける感覚を覚えた。

子供が布団に包まって、ベッドに横たわっている子供。
その枕元に腰を下ろすと、スプリングが嫌な音を立てる。
けれどそれに構わず、金蝉はそっと子供の頭を撫でてやった。


頭を撫でて、気紛れに子供の頬に手を当てる。
子供はそれに甘えるように、猫のように金蝉の手に擦り寄った。

全く、可愛いものだと思う。
拾ったのはそれほど昔の事ではないのだが、思いの他、これは人懐こくて大人しい。
時折気を引こうと言うのか悪さもするが、それだって可愛いものだろう。



「ふに……う〜……」
「愚図ってんじゃねえよ」
「うにゃぁ……」



ふるふると首を横に振る子供。
まだ幼い手を伸ばし、子供はまるで何かをねだっているようだ。

そう言えば随分前に、子供が猫とじゃれているのを見た。
その時、猫は仰向けに寝転がっていて、子供はその猫の腹を撫で擦っていた。
猫は擽ったそうに鳴きながら、前足で子供の手を押し退けたりしながら、甘えているようにも見えた。

今の子供は、まるでそれと同じだ。






……全く、可愛い我が家の猫だ。
















小さな身体を抱き上げ、身を包む布を取り払う。
薄手の布団で外気から守られていた身体は、幼さ特有の丸っこさが残っている。

外気に当てられて寒くなったのか、子供はふるりと震えて金蝉に擦り寄った。
子供の体温は金蝉にしてみれば熱い程だった。


子供の耳も尻尾も、全て本物だ。
引っ張っても取れないし、寧ろ子供は痛がるほどだ。

生まれついてのものだと、子供は言っていた。
人語も解すし、手で箸も持てるし、二本足で立って歩くことも出来る。
拾ったばかりの頃は衰弱も酷く、まともな教養もなかったのだろう、喋る事は出来なかった。
けれども金蝉と過ごしていくうちに言葉を覚え、身体も随分小奇麗になったものである。



「にぃ……」
「判った判った」



基本的に甘え癖があり、それは特に金蝉相手に見られる。
金蝉の旧知の人物二名にもよく懐いているが、金蝉相手程ではない。


ふるふると震える身体を抱き寄せると、子供はぴくっと身を跳ねさせた。
耳の裏を擽れば身体を縮こまらせて、喉を擦ると気持ち良さそうに目を細める。

こうまで無防備になるのは、金蝉と二人っきりの時だけだ。



「こうしたいんだろ?」



小さく可愛い胸の果実を突くと、子供は嬉しそうに笑う。
普段は恥ずかしそうに顔を赤らめるのだが、この時期だけは違う。
自分から積極的に誘おうとするし、始まれば気持ち良さそうに鳴いて止まらない。

最初の頃は金蝉も戸惑っていたものだが、今ではすっかり慣れた。
いや、慣れたどころか、好きに子供を穢しているほどだ。



「全く……フェロモンってのは、雌が出すんじゃなかったか?」
「にゃっ…うにゃ…んっあ……」



胸の果実を刺激する度、仔猫は短い鳴き声を上げる。
子供の下腹部では、幼い性器が自己主張していた。



「……こういう事してるから、身体は雄でも、雌みたいになったのかもな」



揶揄ように耳元で囁くと、息が吹きかかるのだろう、子供───悟空はそれにさえ声を上げた。


小さな身体を膝上に、後ろ向きで乗せてやる。
落ち着く場所を探してしばし身動ぎしていたが、身体が安定すると其処に収まった。

それを見届けてから、金蝉は小さな子供の胸を揉む。
中世的な面持ちをしている上に、髪を腰まで伸ばしている悟空だが、列記とした男である。
いや、雄猫と言った方がこの子供の場合は正しいのだろうか。
どちらに分類すべきか判らないが……とにかく、柔らかな胸などある訳はないのである。

けれど。



「っん……うにぃ……」



ぴくんとその躯を震わせて、悟空は鳴く。
赤い顔をして、尻尾は金蝉の腕を誘うように擦っている。
全部無意識の産物なのがタチが悪いと思う金蝉だ。

無駄な肉のない、けれどもやはり子供特有に丸っこさのある悟空の裸体。
それを労わるように撫でてやりながら、金蝉は悟空の肩に口付ける。



「にゃ…こ…んぜぇ……」
「……うん?」



呼ぶ声に答えながら、胸の果実を摘む。
そのまま捏ねて弄ると、小さな口から漏れる甘い吐息。



「あっあっ…はにゃっ…にっ……」
「両方弄った方が良いか?」
「にゃ……ふにぃ……」



返事はなかったが、悟空はこくこくと首を縦に振る。

悟空の背中を自分の胸へ預けさせれば、支えていた金蝉の手は解放される。
脇の下を潜らせて、金蝉は悟空の可愛い果実を二つとも弄った。



「もう固くなってるぞ」
「にゃっあっふぁっ、あぅんっ!」



少し意地悪に引っ張ると、短い悲鳴。
それから上目で睨まれて、金蝉は喉の奥で笑った。

どんなに怒った顔をしてみせたって、少しもそれは怖くないのだ。
大きくて零れてしまいそうな丸っこい瞳は、そういう行為に向いていない。
それに、少しあやしてやれば直ぐに機嫌は持ち直ってしまうのである。


その証拠に。



「悪かったな。ほら、こっちの方がいいんだろ?」



擦るように親指の腹でくすぐれば、途端にとろんとなってしまう。



「にゃぁあ…あぁっ……はぅ…」
「ほら、触ってみろ。自分のがどうなってんのか、自分で感じてみろよ」



右側の果実を弄りながら、金蝉は悟空の左手を捕った。
自分よりも随分小さい其の手を、悟空自身の胸に当ててやる。

小さな手には、どんな風に感触が残るのだろう。
ただ、悪いものではなかっただろうと判った。
何せ、自分で弄り出したものだから。



「あにゃっ…ふぇ…こ、こんぜぇん……」
「其処までしろとは言ってねぇけどな……ま、いいが」



金蝉の手付きを真似するように、悟空は自分の乳首を弄る。



「だっ…きも……ちぃ……」



悟空の言葉に、金蝉はまた笑った。

こういう言葉は、発情期でなければ聞けない。
いつもは羞恥心の方が勝っていて、余程前後不覚にでもならない限り言わない。
そして金蝉も其処まで無理をさせようとはしないから、滅多に聞けないのである。


子供の癖に意地っ張りの強い悟空が、こんなに快楽に素直になる。
最初は戸惑っていた発情期も悪いものではないと、思うようになったのはこれが原因ではないだろうか。



「むぅ…にゃ……ふゃっ!?」



ひっくり返った声が上がったのは、金蝉が首根を吸い上げたからだ。
プルプル震える躯にやはり喉奥で笑いを噛み殺しながら、其処を強く吸う。

解放すれば、キレイな紅い華が咲く。



「……消えたら、またつけてやるからな」
「んっ…う……ぅんっ……」



やはり半分は動物だからだろうか。
こういうマーキングを、悟空は気に入っている。

この華がある間は、自分は金蝉のもので。
その華がある間は、金蝉は自分のもので。
消えればまた付け替えて、その繰り返しで、なくなる事はない。


マーキングは、絆だ。



悟空の小さな手が、金蝉の腕を掴む。
小さな手では、金蝉の腕を半周りと少し程度しか確保できない。
けれども、金蝉が悟空を振り払う事は在り得なかった。

悟空はおずおずと、掴んだその腕を引っ張る。
そして金蝉の手が辿り着いたのは、既に自己主張している幼い性器。



「はにゃっ…も…も、がまん…むりぃ……」
「塗れてないだろ」
「んっう……!」



欲しい、と言っている悟空だけれど。
塗れてもいない幼い狭い穴に、大人の男の一物が入る訳がない。
いつも念入りに塗らしてからでも、容易には行かないのである。

発情期の悟空は常以上に我慢が効かない。
だからうっかりすると、金蝉が止めるのを無視してまで挿入を始めてしまう事がある。
だが幸いにも、今はまだ其処まで至っていないようだ。


金蝉は悟空の幼い中心をやんわりと握って、緩やかに揉んでやる。
睾丸をやわやわと揉んで、時折幼い性器を扱く。

もう片方の手は、悟空の口の中に指を入れていた。



「っは…ふんっ…にゃっ……はひ……」



昼間は無邪気に保護者を困らせる子供の顔は、今だけは酷く妖艶を醸し出す。

早く欲しいのだろう、悟空は躍起になったように金蝉の指を舐める。
拙い舌使いではあるのだが、そうして必死になっているのが堪らなく愛しい。



「んあ、ふ……ひにゃっ、やっん、あっ……」



気紛れに、強く睾丸を握ると、上擦った鳴き声。
尻尾が嬉しそうにゆらゆらと揺れていた。



「にゃぁっ…ふにゃっ……」
「おい……」



尻尾が揺れてしまう反動か、悟空の細い腰も揺れている。
まるで金蝉を誘うように、己の中心を金蝉の手に擦り付けながら。

全く、これも全部無意識のうちなのだ。
こうまで積極的なのは殆ど発情期に限る事であるが、まったく仕様のない飼い猫だと思う。
発情期に無闇に外に出すのは危険だな、と何度目か知れない認識をした。



「にゃーっ、にゃぁん……ふぁあ……」



己の齎す快楽にも踊らされて、悟空は益々可愛い鳴き声を上げる。

ジタバタと暴れ出すのは、快楽に悶えているからだ。
此処で解放してしまうと、悟空は勝手に行為を進めてしまう。
飼い主としてそれはさせる気はないので、しっかりと小さな躯を押さえ込んだ。


発情期でも、我慢は覚えさせなければならない。
一度覚えてしまうと後が長引くから、きっちり教え込まなければいけないのだ。

何かと悟空に甘いと(それなりに)自覚はある金蝉だが、躾は厳しく行っている。



「そんなに欲しいのか?」



耳元で囁くと、悟空はふるりと躯を震えさせて、頷いた。
しかし。



「もう少し我慢しろ。暴れるな」
「やーぁっ……あにゃっ…むり、むりぃ…」



欲しい、頂戴、と強請る子供。
これが昼間なら、ただの子供のワガママなのに、今は違う。
欲している物はそんな容易いものではないのだ。

だから簡単に与えてはいけない。