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一瞬世界が暗転して、悟空は驚愕した。
けれどもその直ぐ後には、再び世界が広がっている。

しかし目の前の光景は数秒前と一転して、幼い頃に寺院の書物でちらりと見た、地獄絵図。
足元にはしゃれこうべが敷き詰められ、見下ろせば昏い空洞の瞳と交わる。
空は蒼など何処にもなく、まるで色を反転させたように紅と黒い雲で覆われていた。


この世界を見るのは、決して初めてではない。
初めて雀呂と会った時、追っ手の妖怪と応戦した時、この世界に入ってしまった。
単純な悟空は、雀呂の思惑とは関係なく、幻術世界に陥ってしまったのである。



「雀呂?」



どうして今、この世界を広がらせるのだろう。

訳が判らない。
そんな様子で名を呼ぶ少年に、雀呂は薄ら寒い笑みを浮かべた。


敷き詰められた誰のものとも判らぬ骨を踏み、雀呂はゆっくりと悟空に近付く。
無遠慮に擦れ合って、耳障りな音がし、時折ぱきりと折れる音が聞こえた。



「……ざくろ……?」



以前とは違う空気をまとう雀呂に、悟空は戸惑った。
初めて会った時はもっと面白くて、黙っている時間の方が少なかったと思う。
色んな話を聞かせてくれて、一緒にいて楽しかった。

なのに、今は違う。



…ようやく鳴り出した警鐘は、既に間に合わない。

それでも、このままじっとしているのは駄目だと、理屈で考えるように本能で悟った。
何故、と思いながら、足が動き出す。


背中を向けて、駆け出した。




「お前の足を、誰かが掴んでるぞ」




背中から聞こえた声の後、右足が何かに引っ掛かったように動かなかった。
急に制されてつんのめって、悟空は顔面から地面に落ちる。

転んだ場所にしゃれこうべがなかったのは、果たして幸いだったのだろうか。
幻術世界なのにリアルな痛みに顔を顰めながら、悟空は起き上がる。
右足の違和感はまだ残っていて、肩越しにそれを見遣った。


すると其処には、彼の言葉の通り。
真後ろにあった積み上げられたしゃれこうべの山から伸びた何かが、悟空の足を掴んでいる。

それは見紛う事無く人の腕で、土気色をした手が、悟空の足首を強い力で捕まえていた。


捕まった素足の部分から伝わるのは、明らかに生きているものではない冷たさ。
この冷たさは以前も感じていて、死体と闘った事は何度かあった。
それと同じ。

不気味さから一瞬硬直した悟空だったが、歩み寄る足音にまた意識が戻った。
少しずつ近付く距離に得体の知れないものを感じ、悟空は足を掴む手を解こうとする。



しかし、それさえ無為にする無情の声。





「ああ、後ろにもいるな」





鼓膜に言葉が聞こえた直後、何かが強く襟を引っ張った。
背中を強かに打ちつけて、咽る。




「右も左も……何処に隠れていたんだか」




雀呂が辺りを見回すと、あちこちの骨の山がバランスを崩していく音がした。
意味を成さない低い呻き声が聞こえてくる。

悟空の周りにあったしゃれこうべの山から、次々に手が伸びてくる。
それらは全貌を見せる事はなく、それが余計に悟空の恐怖心を煽った。
正体の判らぬものというのは、どれも酷く不気味なものである。


どうにか伸びてくる腕を払おうとするが、それよりも先に手首を掴まれた。



「雀呂っ!冗談止めろよ!」
「……冗談、だと?」



悟空を見下ろせる位置に立って、雀呂はクッと喉で笑う。



「結界から出たいんだろう?」
「そうだけどっ……」
「なら、やはり相応の報酬は頂かなければな」



雀呂の言いたい事が判らない。
いや、そもそもこの男は雀呂なのだろうか。
己の知っている彼と違い過ぎて、悟空はそんな事まで考える。

彼の時として非情な部分を、悟空は知らない。
逢瀬はあの一時だけであったのだから、無理もないかも知れないけれど。


雀呂にとって、それは好都合だった。
こんなにも簡単に、自らのテリトリーに入れ、手の中に陥らせる事が出来たのだから。





「光栄に思えよ、少年」





あちこちから伸びる手が、悟空の服を掴む。
無数のそれらが気持ち悪くて振り払いたくても、腕を掴むものが許さない。
唯一自由になるものといえば、もう首から上しかなかった。


ゆっくりと雀呂の手が伸びる。

どれだけもがいても、拘束するものは離れなかった。
それどころか、更に地面に押し付けようと圧力が掛かる。








「この雀呂様に見初められたのだからな」









見下ろす瞳の昏さに、悟空は息を呑む。

伸びた手は悟空の首巻を掴んで、一気に下へと降ろされた。
びりびりと、耳障りな引き裂く音が悟空の鼓膜にも届く。
何を、と頭を起こして自分の身体を見下ろせば、露になった己の身体。



「何すんだよ、雀呂!」
「こうなってしまっては、一つしかないだろう」



自由にならない肢体を暴れさせてみるけれど、それで解放される訳がない。
逃げようとする悟空の身体は、あちこちから伸びる手に拘束されている。
ずっと掴まれたままの右足首なんかは、段々痺れてきていた。

首だけが自由であっても、悟空には抗う術にはならない。
例え八戒のように口が達者でも、身体が言う事を効かなければ、相手の有利は変わらない。



雀呂は舐めるように悟空の身体を見つめていた。


健康的に日焼けした肌に比べて、発展途上の身体はまだまだ細身だ。
それに対して追い詰められたにも関わらず、失われない瞳の光。

あの瞳の光を、艶めかしい色で染めてしまいたい。
純粋無垢という言葉がよく似合う子供が乱れたら、どんな華が咲くだろう。
綺麗な瞳が水に濡れた時、この子供はどんな顔をするのだろう。


考えるだけで、雀呂は興奮する自分を覚えていた。




「ひっ……!」




片手でゆったりと、脇腹を撫で上げる。



「やだっ…やめ……!」



怪しい動きをする雀呂の手に、悟空は制止の声を上げる。
けれども構わず、雀呂は身体を屈めて悟空の上に覆い被さった。

腹筋の辺りをゆるゆると舐め上げてると、悟空の躯がびくっと跳ねる。



「感じたな……」
「な……何、が……」
「その時点で、これは合意だ」



胸の果実に尖った爪を立てると、短い悲鳴。
このまま貫かれるとでも思っているのだろう。

後の事など分かっていないのだろう。
そんな悟空に小さく笑って、雀呂は手を其処から離す。
もっと別のところは、貫かせて貰うけれど。


離した手と入れ替わりで、舌先でまた其処を刺激した。



「やっ、あっ…!何、して……んっ…!」



初めての快楽、なんだろう。
その素直な反応に気を良くして、雀呂は歯を立てる。



「あうっ…!」



僅かな痛みに上がった声は、まだまだ悲鳴の色を残している。
けれども震える躯は、確かに快感を感じている事を示していた。

本人の意思を無視した、躯。
胸だけでこんなにも反応するなら、最も感じる箇所に触れた時は果たしてどうなるのだろう。
今すぐ其処を貪りたい気持ちもあるけれど、まだ悟空は落ちてはいない。



「ひっ、や、あっ…!や、やめろ…っ……!」
「気持ち良いのだろう?」
「知らない…っ……!」
「ほら、固くなってきたぞ」



胸の果実はすっかり張って、何故だか悟空は恥ずかしくなった。
そんな所を触れられた事なんてなくて、そんなふうになるのも知らない。
初めての行為は、恐怖心と羞恥心とが綯い交ぜだ。

雀呂だけが、悟空のそんな反応を楽しんでいる。




「やだ…あ……!」




自由にならない躯で抗うなんて、出来る訳がない。
ただ拒絶の声を上げるだけで、それも刺激を与えられれば嬌声に代わる。


張り詰める乳首を摘んで、親指で擦る。
急に変わった刺激の与え方に、悟空の躯がまたしても跳ねた。



「やめ、いやっ…やだ…あっあう、んっ……」
「素直になれば、もう少し優しくしてやらんこともないぞ?」
「う、るさ……あぁっ!!」



雀呂の言葉を跳ねつける悟空。
予想していたその言葉に、雀呂は薄く笑って、乳首を抓る。
慣れない快楽の中で突然与えられた痛みに、悟空の口から叫びが漏れた。





「んっ…や…!あ…!はっ、はうっ…あぁ……!」





右手で悟空の胸を弄りながら、雀呂はゆっくりと下肢に手を伸ばした。
初めての快楽に翻弄される悟空は、それに気づく事が出来ない。

胸への愛撫を止めずにそっと中心に触れれば、ズボンの上からでも判るほどに其処は張り詰めていた。
ちらりと悟空の足へ目をやれば、もどかしそうに揺れ動いているのが伺えた。
自覚はないのだろう、耐えるように腰を揺らしているのも、雀呂の雄を煽っている。


自分の手で悟空が快楽を感じている。
そして自分が思った通りに、この少年は乱れている。

満たされるのは征服欲だ。
何も知らない子供を己の手の内に落とし、己の思う様蹂躙する。
これで悟空が泣いてくれたら、きっとこの上なく雀呂は歓喜を覚えるだろう。



その為には、この程度の快楽は弱い。
悟空の反応は見れたけれど、此処から進むには、更なる快楽が要る。





「ひっ!?」





ジーンズの上から中心を握ると、悟空が目を見開いた。
そのまま布越しに揉みしだくと、小さな躯が面白い程に跳ね上がる。



「あっああっ!やだ、や、ひっあ…!あぁっ…!」
「此処は嫌そうではないぞ」
「や、さわる、なぁっ……あぅんっ!」



穴の場所をジーンズの上から、指先で押して刺激した。
ぐりぐりと押し付けてやれば、悟空は背を弓形に逸らして悶えている。





「やめ…おねが……っ!あっあっ、あぁっん!ふ、うぁ…やぁっ!!」





ビクン、と悟空の躯が跳ねて、弛緩した。
ふるふると躯を震えさせる少年を見下ろして、雀呂は口角を上げる。


ズボンを下着ごと下ろしてみれば、白濁に汚れた幼い剣。
達した事で萎えてしまったそれに触れると、ぴくりと揺れた。

何が起きたのか、自分でも判らなかったのだろうか。
悟空がのろのろと首を起き上がらせ、己の下肢に目をやる。
そして初めて見た自分の痴態に、顔を真っ赤にした。



「やはり、気持ち良かったようだな」
「な………」
「これが何よりの証拠だ」
「んっ!」



指で軽く弾けば、悟空の躯がふるりと震えた。



「それにしても、やはり服は邪魔だな」



悟空の中心をゆったりと撫で上げながら、雀呂は呟く。
緩やかな刺激に身を震わせつつも、その声はしっかりと悟空の耳に届いていた。

何をするのか、と思っていたら。




「ああ、燃えてしまえば問題ないか」




ごう、と燃え上がった炎。
燃えるようなものなど何処にもない筈なのに。


その炎は意志を持って、悟空の躯を焼くことはなかった。
破られて最早役に立たなくなった服のみを焼き尽くし、灰さえ残さない。

気付けば肌を防護するものは何もなく、何時の間にかジーンズさえない。
生まれたままの姿を否応なく晒され、悟空は羞恥と怒りで唇を噛んだ。
晒された己の情けない姿に、その原因を作った目の前の妖怪を睨みつける。



「いい格好だな、少年。まるで全てを俺に捧げようとしているようだ」



光悦とした表情を浮かべる雀呂に、悟空は思い切り眉を顰めた。

こんな情けない姿、誰にも見られたくない。
目の前の男にだって当然、勿論、今この場にいない人達にだって。
なのに、躯はやっぱり拘束されたままで、己を捕らえる冷たい腕は解けない。
まるで吸い付いてくるように。


全てを捧げるなんて、真っ平御免だ。
自分は何を思って生きるのか、もし全てを誰かに捧げるというなら、誰にするか。
それぐらいはずっと昔から決めていて、それはこれからも代わらない。

ちょっと気を許したぐらいの相手に、しかもこんな事をするような奴に捧げるなんて、死んでも嫌だ。



だけど思いは、届かなくて。




「や……!」




屈んだ雀呂の顔が、悟空の中心に近付いた。
されるよりも先に危険を察知した悟空は呟いたが、当然雀呂がそれを聞く訳がない。

まるで甘いものを舐めるように、雀呂の舌が悟空の剣を舐め上げる。



「ひっあ……!」



まさかそんな場所にそんな事をされるなんて。
下手な痛みを与えられるよりも、ずっと応える。



「いや、ぁ…!あ、っあ…ふ、はぁっ……!」



余すところなどないように、雀呂は丹念に舐め上げる。
ねっとりとした生暖かい、まるで生き物のように動く雀呂の舌。
感じたくなくても与えられる快楽に、悟空の中心がまたしても勃ち上がり始める。

嫌なのに、女みたいな声だって嫌なのに、雀呂は止めようとしない。
幼い肉剣を舌で愛撫しながら、本来排泄器官である場所に指を埋めた。



「…んぁっ!」
「此処に触れられるのは、初めてのようだな」
「あ、たりまえだ…あうっ!あっ、やっ、あぁっ!」



浅く埋めた場所で指を動かせば、快楽の波が悟空を襲う。



「やめっ…はっ…、そんな、とこ……あ、やぁあっ!」
「何を言う。これからもっと、此処を濡らさなければならないんだぞ?」
「やだっ、もうやだっ!もうっ……あぁんっ!」



深みを狙って指を動かせば、つぷつぷと奥へと潜り込んで行く。
妖怪の尖った爪が擦れる度に、悟空は歯を食いしばって耐える。

もう一本指を埋め込めば、増える異物感に悟空の躯が悶えた。
二本で悟空の穴の入り口を広げれば、ひくひくと伸縮する内部までもが伺える。


まるで誘っている。

雀呂は肉剣への愛撫を止めて、其処に舌を侵入させた。




「やだぁっ!あっう、あんっ!は、ひ……!」




己の体内に入り込んできた異物に、悟空は震える。
抗いようのない快楽と、勝手に蹂躙される自分の躯



「や…いや…あ…!あっあっ、あんっ、あっ…!」



ぬるぬるとした、まるでナメクジでも這い回っているような。
広げられた秘部は濡れそぼり、それは決して雀呂が濡らした唾液だけではないだろう。



「良い具合になってきたな」
「やっ…しゃべ、んあぁっ!」
「そろそろ欲しいだろう?」
「あ、ぅっ、な、にがっ…あっあっ!や、離せえ…っ!」



カチャ、とベルトを外す音が聞こえる。

ちゅぽん、と水音を立てて、ようやく侵入物が体内から出て行った。
散々解された秘部は緩み、白濁の液を垂らしている。


これがどういう行為なのか、悟空にはよく判らない。
ただ、酷く悔しくて嫌な感じがするのだけは、変わらない事実。

視界がぐにゃりと歪んで、自分が泣いているのが判った。
見下ろす雀呂にそれを見られたくなくて拭おうとするけれど、掴む温度のない手がそれを阻む。
零したりするもんかとじっと雀呂を睨みつけるのが、せてもの抵抗。


そんな悟空の苦悩を無視して、宛がわれた雄。
今度は何が、と悟空が見下ろせば、まるで凶器のように怒張したソレ。





「やっ…ま、さかっ……それ……」




無理。
絶対無理。

物理的にもそうだし、生理的にも受け付けられない。
ゆるゆると首を横に振るけれど、雀呂はそんな悟空を楽しそうに見下ろすばかり。
そうして嫌がっている姿さえも、雀呂の加虐心を煽る。


ズプ、と一番太い亀頭部分が内部に押し入った。





「いっ……いやだぁあああっ!!!!」





悟空の叫びを聞かぬまま、奥へ奥へと入っていく雄。
十分解されていた所為で大した痛みはなかったが、返って悟空にはそれが辛かった。
否応なしに高められた躯は、侵入するものに快楽で反応するから。

まだ痛い方が耐えられる。
悟空は背を仰け反らせ、白い喉を露にしながら歯を食いしばって思う。