カタチニナイオクリモノ



漏れ始めた先走りの蜜液が、悟空の中心に触れる三蔵の手を汚す。



「恥ずかしいって言いながら、これか……」
「やっあ、は、はぅっ…あんっ、あっあぁっ…!」
「その恥ずかしいってのも、気持ちいいんじゃねえのか?」



中心に触れていたのとは反対の手が、悟空の形の良い尻を撫でる。
前にばかり意識が集中していたから、予想していなかった場所からの愛撫に悟空は身を捩った。

三蔵の手が、強弱をつけて悟空の尻を揉む。



「あっあっ、あんっ!やぅ、やっ、んっ!」



前を扱く刺激と同時に与えられるそれに、悟空は悶えるように自分の躯を抱き込んだ。



「はっ…だ、だめっ…もうっ……さんぞ、はなしてぇ…っ」



耐えようとするその表情に、三蔵はぞくりとしたものを覚える。

赤い顔をして、目尻を涙で塗らして。
暗がりの中でもその表情は酷くそそるのだが、明るい中で見るとまた一層違う顔になる。
身悶えして震えるのが触れた肌に伝わって、三蔵は興奮する自分を自覚していた。


三蔵の手の中の悟空の中心部は、既に限界に達している。
悪戯に指先でその先端部分を突けば、悟空はびくんっと背を弓形に反らす。
それに触発されてくりくりと先端を弄ると、漏れる蜜液の量が増えた。



「だめ、だよぉ…!それ、それだめぇっ…やぁあ…!」
「これ、か?」
「あっ…!や、だって、ばぁっ!」



嫌がって悶える悟空が、どうしようもなく、自分らしくなくても可愛く思えた。
けれどそうしていると、金瞳が抗議のようにじろっと睨む。



「もっ、……三蔵っ!」
「なんだよ」
「なん、だ、じゃっ…あっ…ないっ……!」



止まらない愛撫に反応しながら、悟空の精一杯の抗議。


宥めるように頬に口づけると、悟空はむぅっと拗ねた子供のような顔。
もう既に怒りが緩和されていると判る表情に、単純だな、と三蔵は心の中でのみ呟いた。

その傍らで悟空の中心部を扱く手を少々荒いものにする。



「あっあ!だめっ、や…!出、る、やぁあっ!」
「ああ、一回出しとけよ……」
「さん、ぞ…!手、手…っ離して…!よごれ……あぁあんっ!」



どうにか三蔵の手を離させようとする悟空の意思は叶わず。
激しさを増した刺激に耐え切れず、悟空は三蔵の手の中に白濁を吐き出した。

絶頂直後の気だるさに、悟空はぽすっと頭をベッドに預ける。
けれども躯の方は未だに熱の名残を帯び、悟空の躯はひくひくと痙攣していた。
ツ、と三蔵が尻の形をなぞれば、ぴくっと悟空が頭を震わせる。


ぼんやりと目を開けた悟空のすぐ近くで、三蔵は白濁に汚れた己の手を舐める。
形の良い節ばった手を汚しているのが自分の吐き出したものと気付いて、悟空は少し俯いた。
耳まで真っ赤になって、目線は何処に向けられているのか、居場所を探して彷徨っている。

汚れるから離して、と言い切る前に達してしまった自分が、悟空は酷く恥ずかしかった。
けれど、それでも受け止めてくれると言われているようで、それも嬉しくて。



「ん、はっ……はぁ……」
「慣らすぞ」
「ちょ、と待……あ、んっ!」



悟空の白濁と三蔵の唾液とで濡らされた、三蔵の指。
長くて綺麗な指が悟空の内壁を少しずつ解そうと侵入を始める。

達成後の気だるさと脱力感に身を委ねていた悟空だったが、始まった侵入に身を硬くする。



「おい、締めんじゃねえよ」
「ん、なことっ…あ、はぁうっ!い、痛っ…!」
「…っ力抜けっ…!」



まだ奥に潜り込んだ訳でもないのに、悟空を襲う引き攣るような痛み。
歯を食いしばって耐えようとすれば余分な力が入ってしまって、余計に秘所にある三蔵の指を締め付ける。



「や、やだっ!三蔵、痛いっ……!」
「お前が力入れてんだ。落ち着いて呼吸しろ」
「むりっ…むり、だよぉ…!」
「ちっ……」



痛みに泣きじゃくる悟空に、三蔵は一つ溜息を吐く。



「結局何があってもお前はやっぱり泣く訳だな……」



呆れたように呟いた後、三蔵は泣きじゃくる悟空の頬に口付けた。
空いている手で悟空の頭を撫でて、唇にもキスを落とす。


小さな子供のように泣く悟空を見下ろす紫闇は、確かに呆れてもいたけれど、奥底にあるのは愛しさで。
何度行為を繰り返しても、何度躯を開かせても、まるで初めの頃と変わらぬままの幼い恋人の肢体。
時に行為に不似合いと思う程の幼い顔立ちさえも、何もかもが三蔵にとっては愛すべきものだった。

だから、拗ねた顔も、笑い顔も、泣き顔も。
全て、今この時自分の前でだけ、何もかも晒してやりたくて。



「っん…っひ……ん、ぅ……」



ベッドシーツを握っていた手が、三蔵の首へと廻される。

秘部に埋められた指はそのままで、決してその痛みがなくなった訳ではないだろう。
けれど、それでも幾らか気持ちだけでも緩和する事は出来たらしい。



「痛かったらしがみつけ」
「……爪……」
「構わん」



背中の傷なんてなんて事はない、それが悟空のつけたものならば。
それは互いが口付けた所為で音にされる事はなかったけれど、必要ないとも思った。

背中の細い血の滲んだ線でも、首根に残される紅い華でも。
相手が自分の躯に刻み付けたものだというのなら、喜び以外其処に生まれる事はない。


あやされるうちに悟空の躯の緊張は解け、埋め込まれた指への締め付けも緩くなっていた。
くちゅ、と二本目の指を差し込まれて、悟空の躯が跳ねる。
先刻よりも力の抜けた内壁は、その侵入を今度は拒もうとはしなかった。

抵抗がなくなったのを確認して、三蔵は指を動かす。
聞こえ始めた卑猥な水音に、悟空は三蔵にしがみ付いて小さく震えていた。



「さ、んぞ…さんぞっ……あっ、ん、あうっ…」



探るように動きながら内部を広げていく、三蔵の指。
悟空はそれに翻弄されて、為す術もない。

三蔵の顔を見るのが恥ずかしくなって、悟空はふっと明後日の方向に目を背けた。
けれども見下ろす三蔵の視線からは逃れられなくて、すぐ近くから強い眼力を感じる気がした。



「逸らすなよ」
「やっ…あ、っは、あんっ!あ、ぅ、んぁあ…!」



ちゅぷ、と音を立てる悟空の穴。
本来受け入れる器官でない筈の其処は、既に濡れそぼっていた。

達してからまだ間もない筈の悟空の幼い雄は、再び勃ち上がりつつある。
若く正直な躯は与えられる快感に酷く従順に仕立て上げられ、いつも目の前の男に全て暴かれる。


逸らしたまま再び前を見ようとしない悟空に、三蔵はクッと笑みを漏らす。
真っ赤になっている耳に顔を近づけると、軽く息を吹きかけた。
途端に悟空は全身の毛穴が開いたような感覚に襲われて、身を竦ませる。
そうなれば秘部の内壁も締まり、悟空はびくんっと躯を反らす。

その反応が可笑しくて、三蔵の普段は滅多に出てこない悪戯心が沸き上がる。
秘部を探るのを止めないままで、三蔵は悟空の柔らかい耳朶を甘噛みした。



「やっ!ちょ、三蔵っ!や、あんっ…!」
「耳、弱いんだったな」
「わ、わかってんなら……ひゃぁんっ!」
「止める訳ねぇだろ」



止めるどころか尚も甘噛みした上、舌でゆったりと形をなぞる。



「や、だ、やぁっ…ど、っちか止めてよぉ…!」



耳をなぞられ、下肢を広げられて。
同時進行の刺激に悶えながら、悟空は三蔵の躯を押し退けようとする。
しかしいつものバカ力は何処へやら、悟空の細腕は三蔵を押し退けるどころか揺らすことさえ出来なかった。



「やなこった」
「あっひあぁん!」



ぐりゅ、と内部を抉るように指が掻き回す。
ぴんと張った脚の爪先で、ベッドシーツが真っ直ぐな波を作る。



「はっ、あ、あ、やっあぁ!め、だめっ、やぁあんっ!」
「駄目じゃねえよ」
「いや、あっ!あう、はぁんっ…は、あっ!」



ちゅぽん、と音を立てて三蔵の指が離れていく。

名残惜しげにヒクつく悟空の内壁を見て、三蔵は小さく笑みを漏らして、悟空の耳朶を甘噛みした。
途端の喪失感と物足りなさを感じていた悟空は、尚も愛撫する三蔵を押し退けようと肩を押す。
が、当然三蔵は離す気はない。


三蔵は逃げようとする悟空の脚を捕まえ、左右に大きく広げさせる。
濡れそぼった其処が明るい部屋の中に曝け出され、ひんやりとした空気に悟空の躯が震えた。



「や、ちょ…さんぞっ……!」



窓辺から差し込む陽光は、行為を始めた直後よりも強さを増している。
今更になって昼間の情事である事を思い出して、悟空は恥ずかしくなった。

しかし三蔵はそんな悟空に構わず、恋人の痴態によって膨張した雄を入り口へと押し付ける。
押し当てられた肉棒の熱さに思わず驚いて、悟空は眼を見開いて下肢へ目をやった。


いつも自分の全てを食い尽くす、雄。
子何度も重ねる行為の中でそれがどんなものか、覚えていない訳がない。

けれど、やはり暗がりの中で見るのと明るい場所で見るのとでは違って見えてしまう。
怒張した雄は大きく膨れ上がり、元来受け入れる器官でない自分の穴がそれを潜れるなど信じられない。
三蔵に言えばやはり今更何言ってんだ、と言われることなのだろうが。



「やっ…ちょ、無理っ……!」
「聞かねぇ」
「おーぼーっ…て、あ、んあぁっ!!」



慣らしたとはいえ、やはり悟空の穴は狭い。
それでも半ば強引に侵入を果たそうとする雄に、悟空は目を見開いた。



「あ、やっ、あっあ!あんっ!」
「っつ……」



先端しか挿入っていないというのに、締め付ける内壁。
悟空は無理、という言葉すら声に出来ないかのように髪を振り乱して頭を横に振る。



「や、さんぞっ!あ、ん、あうぅっ!」
「く、そっ……」
「だから、無理っ、てぇ…!ひぁう、んっ!」



強い締め付けに眉を顰める三蔵を、悟空は恨めしそうに見上げながら言う。
けれども内壁を擦る熱い狂気は、確かに悟空の若い躯を追い上げていく。


三蔵もとっくに限界だった。

腕の中で悶え、熱に翻弄される悟空の痴態によって散々煽られているのだから、当たり前で。
それを知らないのが悟空一人なのだから性質が悪い。
言ってもやはり判らずにいるから、こんなにも煽られる。



「あ、うっ、あんっ!はぅ、んっんっ…!」



奥へ、奥へ。
最も熱い最奥を目指して突き上げを繰り返す、三蔵の雄。

まるで獣の如く激しいその突き上げに、悟空の躯が本人の意思とは別に逃げを打った。
それを阻止せんと三蔵の手が悟空の細い腰を掴み、自身の突き上げに合わせて引き寄せる。
途端に深くなる抽出に、悟空は為すがまま躯を振わせた。



「やっ、だめっ、だめぇっ!またっ…イっちゃうよぉ……!」
「早いってんだろ、お前は……」
「はげしっ…やっ!やぁあっ!あう、あんっ!はぁ、んっ!」



パンパンと肌が激しく当たる音がする。
二人の間で擦れる悟空の幼い雄もまた、それに誘発されるように張り詰めていた。


ギリギリまで引き抜かれた三蔵の剣が、悟空の最奥を穿つ。
びくん、と悟空の躯が跳ね上がり、三蔵は繰り返してその場所を突き上げた。

あられもない声を上げて、悟空は抵抗する術なく突き上げる熱に揺さぶられる。
尚も激しさを増す三蔵の勢いに完全に飲まれた格好で、悟空は無意識のうちに自分の腰を揺らしていた。
自ら誘い込むその姿が淫らで愛おしくて、三蔵は紅く濡れた唇にキスをする。



「んっぅ…ん……や、ぁ、出ちゃうっ…!だめっ、もう……っ!」



とぷり、と悟空の先端から蜜が零れた、直後。




「だ、だめっ、だめぇっ!あ、あぁあああんっ!!」
「っごく……うっ…!」




最もイイ所を突かれて、悟空は互いの腹の上に蜜液を吐き出した。
同時に潜り込んだ雄を締め付けられた三蔵は、熱い迸りを悟空のナカへと吐き出す。

どくどくと流れ込んでくる液体に、悟空は躯を震わせる。
抱き寄せれば縋りついて来る小さな躯にキスを落としながら、三蔵は腰を揺らした。
全てを吐き出して、注ぎ込んでしまおうとするように。



「あっ、あっあんっ…あふっ…あ、あっぁあ…!」



悩ましげな声を上げて、悟空は注ぎ込まれる熱に身悶えする。



「っは……はぁっ……」
「ん、あ、ぅんっ……は、あぁっ……」



互いに汗ばんだ躯を抱き締めあい、悟空はそれでも尚熱くなる自分の躯を自覚していた。


触れ合っている以上、この躯の熱が冷めて行くことはない。
それは三蔵も同じで、このままずっと繋がっていたいとさえ思う。
一分一秒でも離れているのが惜しくて、このまま溶け合ってしまえば良いと。

けれども肌が溶けて混ざり合うことは決してなくて、頭の隅で矛盾しているけれどそれで良いとも思った。
だって一つになんてなったりしたら、もうそれ以上触れ合うことが出来なくなるから。