オシリスの審判


そんな悟空を他所に、青痣男が巨漢に言った。



「おい、場所変われ」



力関係がどうなっているのか悟空には判らなかったが、巨漢は何も言わずに場所を譲った。
男も移動し、その隙に悟空は自由な足で立ち上がろうとしたが、アルコールの所為で力が入らない。
立ち上がりかけた膝を後ろから抱え上げられ、また足を開かれた。

尚も逃げ出そうと試みた悟空に、青痣男は嘲るように笑った。



「そろそろ意地を張るのも止めた方がいいぜ」
「……る、さい…っ……」
「息が上がってるじゃねえか」



笑う男を睨み付けると、後ろにいた巨漢が更に足を開かせた。
屈辱的な格好に悟空は顔を赤くし、それは羞恥ではなく怒りの所為である。



「さっきまで善がってた癖に」
「だれ、が……んな事……ひ、あっ!」



否定しようとした瞬間、乳首を強く抓られた。
摘み上げられて躯がピクピクと痙攣する。



「い…あ……痛……ぁ、あっ…!」



胸の果実を苛めながら、男がズボンに手をかけた。
足を開かれたままでは脱がすこと等出来ない。
青痣男は躊躇なく、上着と同じくズボンまでも引き千切り、更には下着も引き裂いた。

通常、人前に容易く晒す場所ではない所が露にされて、悟空は今度は羞恥で顔を朱色に染めた。



「やだ、やだっ…離せ……あ!?」



男の顔が股間に近付き、ぬるりとした感触が悟空の雄を襲った。



「やっ、あっああっ!ひ、ん、な、なにっ…んぁっ!」



自分のものとは思えない声が口から漏れて、悟空は目を剥いた。
更に青痣男がしている事を見つけて、驚愕する。

青痣男は悟空の幼い肉剣をその舌で丹念に舐め上げながら、輪を作った指で扱き出した。



「やめ、やめろっ!やめ……んぁあっ!」



ぴちゃぴちゃという卑猥な音に、悟空は首を振った。
それが嫌がっているというサインで、青痣男の可虐心を刺激する。



「や、いや……や、あっ…ああっ…ん、う、あぁ…っ!」



抜けないアルコールがまた回り始め、悟空の言葉にも力が入らなくなる。
悔しさと得体の知れない感覚への恐怖で、認めたくはないのに涙が浮かぶのが判った。



「はっ…あっ、あ……や……あ、んんっ!」
「お、勃ってきたな」
「ひ……!」



刺激を与えられた悟空の肉棒が、徐々に硬度を増していく。
その意味さえも判らず、ただそういう反応が目の前の男を悦ばしている事だけ判ったけれど、
だからと言って反応する躯を幾ら叱咤した所で意味はなく、悟空は子供が愚図るように頭を横に振るしか出来なかった。



「やだ…や……あっ…!」



青痣男が爪先で悟空の太い部分を刺激する。
ぴくりと震えた躯に気分を良くして、男は爪と舌で悟空の肉棒の先端を苛め始めた。



「い、あ、やぁっ…!は、やめ、やだ……や、そこ…やぁ…!」
「いいな、その声……もっと聞かせろよ」
「や……あ、ああっ!」



形をなぞるように舌が這い、先端に吸い付いた。
音が立つ程に強く吸い上げられ、悟空は身体を仰け反らせてビクビクと痙攣する。



「あっあっあああっ!」



沸き上がる熱が下腹部に集まり、吐き出したくて溜まらない。
先走りが悟空の肉棒から溢れ始め、男の口元と手を汚していった。
しかし天を仰ぐ悟空にそれが見られる事はない。

本人の意思に反して、与えられる初めての快楽に正直に反応し始める幼い躯。
青痣男はそれを見ながら、悟空の肉剣を刺激し、こっそりと手を秘部へと移動させた。


そして。



「いっ………!?」




ずぷり、と後部からの突然の異物感と圧迫感に、悟空は目を見開いた。

一体何が起きたのか、悟空が把握しようとする間も与えず、その異物は悟空の後ろの穴を掻き回し始めた。
痛みに顔を顰めれば、まるでその痛みを緩和させようとするように前部に刺激を与えられる。



「痛っ…い、ひっ…あっやぁっ!ん、あ、ひぃっ…!う、うう…あああっ!」



ぐちゅぎちゅと音と、あらぬ場所を掻き回す異物。
逃れたくて足を動かそうとしても、背後に控える巨漢は無言のまま、しっかりと足を固定していた。



「痛いかぁ?」
「う、うぁっ!ふっく…んぅぅ!」
「それとも、気持ちいいのか?」
「い、やぁああ!」



顔を近付け、酒臭さを漂わせながら問い掛け、同時に男は悟空の前と後ろを同時に刺激した。


後部は痛い。
圧迫感も異物感も気持ちが悪かった。

けれど掌で扱かれる前部は、気持ち悪さは確かにある、ものの。
痛いかと言われれば痛くはなく、熱ばかりが集まり、高められていく。
漏れる先走りはこれからの事を催促しているようだった。



「一回イっとくかあ」



言って、青痣男は悟空の肉棒を激しく扱く。



「やっ…や、やだ、やだぁ…っ!あ、ん、あっ!あふっ…」
「いいぜ、出しても。初めてならお目出度いなぁ、精通だぜ」
「せい…って、何……ひっ、い……あ─────ッ!!」



男の言葉の意味も判らぬまま、悟空は沸き上がる衝動に流され、吐精した。
ビクビクを躯を痙攣させながら吐き出された白濁の液は、男の手と腹を汚し、床に落ちる。


初めての絶頂感と開放感に、悟空はがっくりと力を失って項垂れた。
アルコールの摂取と、初めての快楽に混乱もしていた頭は、完全に考えることを放棄した。
どうすれば此処から逃げられるのか、この男を殴り飛ばすことが出来るのか、それさえも。

なやましげに眉を寄せた悟空の顔に、青痣男は更なる劣情を煽られる。
ちらりと許可を得ようとリーダーの男を見遣れば、好きにしろとひらひらと手を振られ、青痣男はにやりと笑う。


青痣男は、巨漢に抱えられるまま足を開いていた悟空の太股を掴む。



「………あ……?」



ぼんやりと見上げた金瞳は怪しく揺らめき、男を誘う。
勿論、本人にその意識はないが。

あれだけ気丈に怖くない、と反抗していた子供が陥落した事に、男は満足感を得た。



「本番は此処からだぜ、坊主」



だが、それだけでは終わらない。
今度は何を────と、抵抗を忘れて不思議そうに見上げてくる金瞳に舌なめずりする。

ズボンのベルトを外し、ジッパーを下ろす。
取り出した青痣男の雄は勃起しており、二、三度擦ると更に大きく膨れ上がった。
ぼんやりと男を見上げる悟空はそれに気付かずにいる。


ツンと膨れ上がった悟空の乳首に、男の舌が這う。



「あ……ん、あっ…は……や……」



言葉は辛うじて拒否を紡ぐものの、躯はそれまでよりも正直に反応した。

ちゅっと強く吸い上げられ、悟空の口から甘い喘ぎ声が漏れる。
悟空は口を閉じる気力すら失っていた。



「あっあっ…あ……は、はぅ……い、やぁ……」



弱々しい拒絶の言葉は、やはり男の支配欲を煽るだけ。


ピクピクと反応する躯が自分のものではないようで、悟空は戸惑っていた。
だがアルコールに思考を奪われている所為で考えが纏まることはなく、浮かんでは消えるばかり。
それよりも沸き上がる不思議な感覚に身を任せた方が楽なのでは、とまで思えてくる。

自分が今どんな状況にいるのか、それすらもまともな判断が出来ない。
何をされているのか、何が起ころうとしているのか、何も。



「ほーら、もっと気持ちよくなるぜぇ?」



青痣男に持ち上げられて、躯が浮遊感に襲われる。

その直後、先程異物感に襲われた箇所に、熱い塊が宛がわれた。
それが青痣男の一物であると気付いた瞬間、肉塊は狭い穴を強引に潜り抜けていた。







「────────!!!!」







痛いとか苦しいとか言う次元じゃない。
歯を食い縛る事もなく、悟空の叫び声が音になる事はなかった。

何もかも初めてだったというのに、青痣男は解しもせずに悟空の内部に侵入した。
あまつさえ呼吸が整うのも待とうとせず、浮かした躯の尻を掴み、乱暴に揺すり始めた。



「…あっ…!…あがっ…!ひ、い……っ!!」
「おい、壊れるぞ、その坊主」
「平気ですよ、あれだけ強がり言えるガキですから」
「……まあいいけどな」



リーダーの男の言葉も歯牙にかけず、青痣男は悟空の身体を揺さぶった。



「どうだ、痛いか?」
「あっあ…!あぎっ…い、たいっ……!痛いぃっ!!」



我慢なんて出来る範囲ではない痛みに、悟空は涙を浮かべながら答える。
質問への答えと言うよりも、それは完全な悲鳴の言葉だった。
たまたま質問の答えのようなタイミングで、その単語が出て来たに過ぎないとも言える。

だがそれでも男は満足したようで、ニヤリと笑った。



「いた、痛いっ!や、やだ、抜けよっ…!んぁあっ!」
「おい、こいつの腰動かせろ」
「や……う、あっ!んあ、あっああっ!やだ、やぁあっ!」



背後の巨漢男は言われたまま、悟空の腰を掴み、前後に揺さぶる。
更にその動きに合わせて、青痣男は抜き差しを開始した。
その上で、青痣男は空いた手で悟空の男根を包み込み、上下に扱き始めた。



「ひっい、あっあんっ!や、んあ、やめ……あぁん!」
「これでも痛いか?坊主?」
「あっはうっ、あん、あっ…!んう、ひ、はっ、やぁ…!」



躯が壊れるのを本能的に守ろうとしてか、痛みよりも快楽を拾ってしまう。



「や、あ……あ、んぅっ!っは…はぁっ…!」
「お、また勃って来たな」
「んぁあ……っあく、っは…ひぃんっ…!」



ぎちぎちと言う圧迫感よりも、雄を扱かれる快楽の方が強い。
悟空の瞳の光が虚ろになっていくのを、青痣男は目を窄めて楽しそうに見下ろす。

青痣男が顔を近付け、悟空の間近で酒の臭気を漂わす。



「ふぁ……」



思考回路がとろりと溶けて行く。
躯の力が抜ければ下肢の痛みも緩和され、侵入した男の形をまざまざと確かめさせられる。

背後の巨漢が悟空の腰を揺すり、青痣男が激しく抽出を始める。
悟空の背中で鎖で拘束された腕がジャラジャラと音を鳴らした。



「あっあっ!や、あ、んん……ふぁ…や……」
「いい締め付けすんじゃねえか、坊主」
「ひっい…ん…!や、らぁ……」



強引に与えられる快楽の所為か、吐きかけられる強い酒気の所為か。
呂律の廻らなくなった子供に、青痣男は気分を良くする。

あれだけ怖くないと粋がっていた子供が、快楽の波に遂に屈した。
中世的な面立ちを涙で濡らし、頬を染め、細い躯を捩らせながらやめてくれと懇願する。
リーダーの男の言葉通り、サド気質の男にとってはそれを激しく擽られる。


ずんっと腰を強く推し進められ、深くなった挿入に悟空は躯を撓らせた。



「あっ、はっ…や、あぁっ…!ん、う、はぅん…!」



巨漢の男に腰を揺すられ、内壁を青痣男の雄が激しく擦る。
呼吸が整う暇など与えられず、アルコールでだらしなく開かれたままの口端から唾液が溢れて零れた。
色事など知らない子供の、幼子らしからぬ痴態に、男は興奮する。

途端に侵入したそれの質量が増し、悟空はびくりと躯を硬直させた。
その所為で力が入って男の一物を締め付けてしまい、悟空はゾクゾクと身震いする。



「や…ぁあ!」
「なんだ、好きなんじゃねえか」
「や、やらっ…やぁあ!やめ…ひ……!」



ぐちゅりと音がして、悟空は目を見開く。

刺激を与えられた悟空の幼い雄は、既に支えなくとも勃ち上がっていた。
溢れ出した先走りの蜜液を更に絞りださんとするように、青痣男が乱暴に扱く。



「や、やだ、やぁ…!は、ひ、ひぁっ!んんんっ!」



目の前がチカチカと明滅する感覚に、悟空はパニックを起こしていた。
絶頂感はつい先程も味わったけれど、その意味も理由も悟空には判らない。
ただ無性にこの熱を吐き出したくて溜まらなかった。


蕾を埋める男の肉棒も既に限界近いのか、悟空の内部で液を零し始めている。
体内でそれを感じ取った悟空は気持ち悪さを覚え、戦慄いた。

悟空のその反応をどう受け取ったのか、青痣男はラストスパートとばかりに悟空の最奥を突き始める。



「ひぎっ、あっあっ!や、ぁ、痛っ…ひっ…!」
「一発目から中はキツいかぁ?」
「よせよせ、もう酒だけでも殆どイっちまってんだから勘弁してやれよ」
「へーい」
「あっあああっ!」



リーダーの言葉に気のなさそうな返事をしながら、男は悟空の弱い箇所を狙って攻め立てる。



「んぅっ、あっあう!や、あ、あ、あぁ、ああぁああんっ!」



自分があられもない声を上げている事も、悟空の頭では認識されない。
体内で暴れまわる熱から解放されたいと、思うことはそれだけだった。

初めの頃に屈するまいと突っ張っていた意地もプライドも、もうない。
アルコールの所為だと言い訳は出来るけれど、そうだとしても幼い心にこの負担は大き過ぎた。
前後不覚の状態になるまで揺さぶられて、経験の浅い躯が自我を保つ事など無理な話だ。



「はぅっ、あっあっ!や、ぁ、あはぁっ!」
「そろそろ出るな」
「ひゃんっ!」



青痣男が悟空の小さな雄を指先で弾く。
その刺激に、無意識に内部に入り込んだ男を締め付ける。

男の顔が一瞬苦悶に歪み、ずるりと侵入物が抜け出ていくのを悟空は感じた。
排泄器官から出て行く、異物の擦れに快感を覚え、悟空は甘い声を上げた。


そして、一番太い部分が入り口を擦った時。







「んぁっ、あっあ──────!」






一際、高い嬌声を上げて、悟空は果てた。
そうして直後、悟空は意識を手放す。

だから自分が達した直後、蕾の周囲に青痣男の精液がぶちまけられた事も判らなかった。


達した直後の悟空は、意識を手放した後も触れれば反応を示した。
腹を、臀部を白濁の液で汚し、されるがまま、まるで供物のように其処に存在する子供に、男は笑う。



「やらしい躯してたなぁ」
「誰かに教わったって訳でもなさそうだったけどな。気は済んだか?」
「いや、足りないっスよ。もう一回起こしてヤっちまおうかな」
「お前、そいつを連れてきた目的摩り替わってないか?」



リーダーの言葉に、青痣男はへへ、と誤魔化すように愛想を浮かべた。


この子供を連れ去ってきたのは、悟空が想像した通り、一緒にいた大人達へのお礼参りの為だった。
正面からかかったのでは認めたくはないが叶わないだろうし、ならばとこの子供を人質に取る事を思い付いた。

昼間見た限りでは、この子供は随分と大切にされているように見えたのだ。
三者三様の構いつけ方ではあったが、誰一人として邪険に扱おうとはしない。
だから悟空を連れて来れば、きっと彼等は助けに来るし、無体にされない為にも大人しくするだろうと思った。


悟空の中世的な顔立ちに、性質の悪い悪戯を思いついたのはリーダーだ。
度数の強いアルコールを飲んで、頭が妙な方向に廻っていたのも理由の一つ。
もう一つは奴らに復讐するんだと意気込んで聞かないこの青痣男の逸る感情を、少しでも落ち着かせる為だった。

悟空は完全に、本人が考えた通り、本当にただのとばっちりだった訳だ。
悟空に意識があって気付くことが出来たら、今度は鎖だろうとなんだろうと引き千切り、半殺し並みに殴り飛ばしていただろう。
けれども男達には運の良い事に、当の悟空はすっかり意識を飛ばしてしまっていた。



「まぁ、連中もまだ来ねぇようだしな」
「次はアンタも混ざります?」



ついでにお前も、と青痣男が言ったのは、黙したまま、言われた通りの事だけを実行している巨漢。
やはり酒の廻っているリーダーは、面白そうに卑下た笑みを浮かべる。



「悪くねえな」
「でしょう?いい躯してますよ、こいつ」
「恨むんなら、ノロマなあいつらを恨めよ、坊主」



目覚めぬ悟空に顔を近付け、耳元で囁く。
かかる吐息に反応して、悟空はもぞもぞと身動ぎした。


─────が、彼等の救いようのない悪ふざけも、其処で終わる。