くのいちハガネ忍法帖第一部
〜ハガネ、陰虐〜

 少し幼さの名残がある、少女の濡れたうめき声がその傾きかけた小屋の中から聞こえてくる。時よりその声に、ピチャピチャと舌を何かに這わせる音が混じる。

 時は、戦国時代。様々なつわものたちが戦場を駆け巡っていた頃。人々は戦火から逃げ惑い、誰も住まなくなった土地が数多くあった。ここはそんな寂れてしまって人の姿などまったくない山奥の寒村。そのさらにはずれにある古い小屋で、幼い喘ぎ声は続けて起こっている。

 いろりばたに、がっしりとした体格の男が足を投げ出して座っている。その股間に、まだ少女と呼べるほどの娘がはりついていた。男の股間には完全に勃起した男根がいきり立っており、娘はその男臭いモノに眉を反らせて必死に舌を這わせている。

「おい、ハガネ。もっとしっかり舌を使うんだよ!何度言ったら覚えるんだ」
「ふ、ふぐう……んっ」

 野太い声で、ハガネと呼ばれた少女は、自分の口に含んだ大きなモノのために返事できなかったが、代わりに言われたとおりにその口の中の熱いモノに舌を巧みに這わせた。

「おお、うっ。そうだよハガネ、やればできるじゃねえか」

 男は喉を反らせて、感じ入った。その様子を見て、もう一人の男が尋ねる。

「おい佐吉、だいぶハガネも仕込めてきたじゃねえか。これならすぐに立派なくのいちになれるぜ」
「そうさ源蔵。これも俺様たちの珍棒で、この可愛いおクチを毎日可愛がってやったおかげだよ。なあハガネ」

 そう言って男は自分の腰を繰り出して、ハガネという名の女の口にさらに分身を突き込んだ。

「うっ……ううんっ」

 喉奥まで侵入してきた佐吉の肉柱を、ハガネは苦しそうにうめきながら続けて愛撫する。もうここに連れてこられてから、三日間ずっと佐吉と源蔵のペニスを口淫させられている。
 二人のほとばしらせたスペルマは有無も言わさず呑まされ、すでにあごや舌は疲れきってしびれている。好きでやっているわけでは、もちろんない。ただ、命じられるままにこのいつ果てるともしれない屈辱淫技をおこなっていた。

「しかしよう、佐吉。ウスラさまはなんでハガネを、他のくのいちと同じように育てねえんだ?普通だったら、敵の男をたぶらかせるために、口だけじゃなくてココの稽古もさせるはずじゃろ?」

 源蔵はハガネの着物の短い裾から、ゴツゴツした自分の手を滑り込ませ、わずかな若草でふちどられた乙女の部分をまさぐった。

「ふぐっ、ふんん……」

 佐吉の男茎をくわえたままのハガネは、突然の淫裂への攻撃にむなしく喘ぐ。

「おいやめろよ。ウスラさまの命令を知ってるだろ。『ハガネの乙女は、決して汚してはならぬ』ってな。そりゃわしだってこいつに俺の珍棒をねじり込んで、ヒイヒイ泣かせてみたいわ。なんてったってハガネは、ついこの前までわしら憧れの『頭領のお嬢様』だったんだからな」
「しかし、ウスラさまの考えがわしにはよう分からん。なんでウスラさまはこのハガネを生かしておいたんじゃろ?だってウスラさま本人がこいつの両親であった、わしらの昔の頭領『ジンライさまとカスミさま』を暗殺したんだぞ。わしだったらあとあと恨みを残すよりは、このハガネを殺すかわしら下忍のなぐさみ物にするがのう」

 ハガネの幼い淫花に指を這わせたまま、源蔵が言う。

「……もうええじゃないか。ハガネは今気分を出してわしに奉仕しておるんじゃ。そんなにおなごとしたいんなら、となりの奴らとすればいい」

 源蔵の話にうんざりしたのか、佐吉は不機嫌になる。そんな様子を知ったのか源蔵はハガネから手を離し、そろそろと立ち上がった。ふすまを開けると、隣の部屋にはハガネと同い年ぐらいの娘たちが三人、全裸で疲れきって寝ている。ハガネと同じように、くのいち養成のために佐吉と源蔵に預けられた娘たちだ。ハガネと違って、連れてこられた途端乙女を散らされ、休むことなくくのいちとしての淫技を教えられていた。

「そうさせてもらうわ。こっちのほうが何も気兼ねせんで楽しめるからな……おい、サクラ、カエデ、ツバキ。とっとと起きてわしの相手をせんかい!」

 男の怒声に、死んだように寝ていた三人の少女たちは、けだるそうに目を開けその白い裸身を浅黒い中年男のほうへ向けた。やがて当たり前のように源蔵の着物を脱がせその体に自分たちの舌を這わせ始めた。

「けっ。源蔵の奴、結局ヤリたかっただけなんじゃねえか。勝手にハガネのま○こに触りやがって。俺だってさわったことなかったんだぞ……おいハガネ、もっとしっかりベロ使ってしゃぶれ!そんなんじゃ敵の男をだまくらかせねえぞ!」

 怒りを帯びた口調だ。ハガネは噛み切ってやりたいほど憎い男根を、さらに舌を駆使して舐めしゃぶった。思い出したくもない、ウスラの裏切りを思い出しながら……。


 ハガネの両親、ジンライとカスミはこの地方を治める戦国武将に仕える忍び集団『黒装衆(こくそうしゅう)』のリーダーだった。『黒装衆』は古くから女が頭領を務めるのが習わしで、ハガネの母 カスミは先代首領の娘として頭領になり、持ち前の美貌と先代譲りの統率力で『黒装衆』をそつなくまとめていた。父親であるジンライは、厳しい実力社会を生き抜いてきた組織一の忍者であった。カスミはジンライと激しい恋に落ち、やがて夫婦となる。
 ジンライとカスミは一人娘であるハガネが生まれた後も、組織の若きリーダーとして務めてきた。しかし、ハガネが十四歳になった時、事態は急変した。
 ジンライとカスミの忠実なる腹心と誰からも思われ、信頼されてきたウスラという女忍者とゴンザという怪力忍びが、頭領二人を襲い組織に反旗を翻したのだ。


「……カスミさま、もう逃げられませんよ」

 火が放たれ、猛火によって今にも崩れそうな頭領屋敷の中、死の間際でも凛とした美貌を向けるカスミの目の前に、冷たい微笑みを浮かべたウスラが立っている。

「ウスラ、おぬしなぜこのようなバカげたまねを……」
「フフフ、カスミさまは本当に美しい……このご夫婦の寝所で、ジンライさまと何度も熱くまぐわったのでしょうね。そのお美しい顔を愉悦に染めながら」
「笑わせるな……おぬしもその妖しい美貌と淫乱な躰で、いくどとなく敵の男どもをとろけさせてきたではないか。わたしをうらやむほどでもなかろうに」
「いいえカスミさま。そのわたしでさえ、たった一人てに入れることのできなかった男がおりますわ。しかし、その男ももうカスミさまのものではなくなる……」

 勝ち誇ったようにウスラが笑う。カスミは、愕然とする。

「も、もしや、おぬし……」
「フフッ、カスミさまでもそんな気弱なお顔をなさるのですね。そうですわ、もう今ごろジンライさまも、ゴンザの手にかかって……」

 ちょうどその時、ゴンザが炎の中からのっそりとその姿を現した。その二メートル以上の巨体には、おびただしい量の返り血を浴びている。

「あらゴンザ、おまえの仕事は終わったの?」

 ウスラは、あえてゴンザにきく。絶望に引きつった、カスミの表情を楽しむかのように。

「……」

 ゴンザはしゃべれない。しかし、ゴンザははっきりとうなずいた。

「……おのれぇ、ウスラにゴンザ!」

 カスミは涙を浮かべて叫んだ。
「フフフッ。もっとお嘆きなさい。お嬢様も我々が預かっている……カスミさまはこのまま生き長らえますか?そうするなら下忍の夜伽にでも使ってさしあげますが……」
「……誰が!」

 カスミは懐刀を取り出すと、おもむろに自らの胸に深々と突き刺した。やがて、ウスラとゴンザに恨みの目を向けながら、絶命した。

「さすがカスミさま、死に際も完璧ですわ。さあゴンザ、いくよ」

 頭領の死を確認し、二人は炎に崩れ落ちる屋敷から去っていった。
 二人の凶行は忍びの里に瞬く間に広まった。リーダーをなくした今、他の忍びはウスラについていくしかない。やがて、『黒装衆』は消滅し、ウスラたちが新たに作った『鉄面天狗』という忍群に吸収された。それが、半年前のことだ。『鉄面天狗』に捕らえられたハガネは、ウスラの指令によって命こそ助かったが、汚らしい下忍の手によってくのいちの淫技を教え込まれることとなったのだ。


「うおおっ……ハガネ、いいぞっもう少し……!」

 佐吉が声高にうめく。絶頂が近いのだ。ハガネはさらに頭を激しく動かす。

「源蔵さまぁん……は、はあっんん!」

 隣の部屋では、甘ったるい声を上げて、サクラが源蔵の腰の上で華奢な躰を振っている。カエデとツバキも源蔵の躰を舌で愛撫し続けている。

「お、おおう……イクっ!」

 その声を合図に、ハガネの口内に溢れんばかりの樹液がほとばしった。

「ふ、ふぐうんっ……」

 その苦く熱い液体を、ハガネは眉を反らせて必死に呑みくだす。心に、両親を殺めたウスラとゴンザへの復讐の炎を、密かに燃やしながら……。


「あ……ああっ、イイよゴンザ。もっと激しく舌を動かしな……そう、はあっ……んっ!」

松明の妖しい光だけがその暗い洞窟を照らしていた。洞窟の中央でウスラは、その妖しい美しさに包まれた艶やかな裸身を石の玉座に投げ出し、ゴンザに舌の奉仕を命じていた。 ゴンザの舌は、人一倍長い。それは幼い頃からの厳しい修行のためであった。暗殺者として、小さな洞穴にその巨体を折り曲げ、食料もないまま潜んでいたこともあった。わずかな栄養を地中で得るため、その体は爬虫類のように変化していった。ゴンザがしゃべらないのも、その境遇の結果であった。その長く巧みに動く舌は、好色なくのいちたちの羨望の的だったが、今はウスラ専用のものとなっていた。

「ふうん、はあっ……ねえゴンザ、例の件は滞りなく進んでいるの?あれがなくっちゃ、この企みは水の泡だよ……ふうっ、んんっ!」

 ゴンザは無言だ。ただおのれの舌をまるで生き物のように使って女頭領の淫洞に蠢かせている。

「……そうかい、お前に任せておけば大丈夫だったよね……ああっイイよ、もっと……ああ、そうっ……ああ、イクよ、イクよぉ!」

 その瞬間、ゴンザの顔面にウスラの淫汁が浴びせられた。ゴンザも、そんなウスラの絶頂を満足そうに眺めていた。

「ゴンザ、よかったよ……おまえの舌は最高だ……そうだ。例の件は順調だし、おまえにそろそろあのご褒美をあげようか。そう、ずっとおまえが欲しがっていたもの……」

 激しい息でオルガズムの余韻に浸る女首領の言葉に、今まで無表情だったゴンザの顔に明らかな喜びが浮かんだ。

「フフッ、そんなに嬉しいのかい?なんだか妬けるねえ……まあいいさ。さあ、いいよ。今すぐにでもモノにしてくるんだね。おまえが憧れ続けてきた、ハガネお嬢さまの処女を……」

 ウスラのサディスティックな感情が、その言葉にいいようのない迫力を与えていた。


「畜生、畜生っ……!」

 佐吉は、あのぼろ小屋の前で怒りに任せて道端の石を蹴っていた。発端は源蔵の言葉だった。佐吉がハガネの口淫によって絶頂を迎えた頃、源蔵はまさにサクラをイカせたところだった。荒い呼吸を続ける佐吉を見て源蔵はニヤニヤと笑った。

「おやおや佐吉、えらく気持ちよかったみてえだな。男汁を出しきって、もうすっかり珍棒がなえちまってるじゃねえか!」

キッとにらんだ佐吉だったが、その目の前で源蔵は力の抜けたサクラの躰をどかした。源蔵のペニスは、いきり立ったままだった。

「どうだい、俺はまだまだイケるぜ。おいカエデ、ここに寝ろ!」

 ゴロンと床に裸身を転がしたカエデに、源蔵は有無を言わさずのしかかり怒張を突き入れた。

「ああーっ、源蔵さま……イイ、イイっ!」
「ははん、見てみろこの乱れようを……佐吉よお、ハガネの口もいいが、どうせその女はヤレりゃしねえんだ。素直にこっちで楽しむほうがいいんじゃねえか?まあ、ハガネのオマ○コにさえ触れねえような意気地なしじゃ女には好かれねえかな……ゲハハハッ!」

 カエデに激しく突き入れながら、源蔵は佐吉に冷笑を浴びせたのだ。

「源蔵の奴、俺を馬鹿にしやがって……畜生、だいたいウスラさまがいけねえんだ。なんで俺とあんな下品な野郎を組ませたんだ。だいたい上の奴らは俺を正当に評価しちゃくれねえんだ……」

 胸に浮かんだ反感は、どんどんエスカレートしていった。このまま『鉄面天狗』で一生下忍としてこき使われるだけなのだろうか?仲間に馬鹿にされ、上司には見向きもされぬまま戦場で野垂れ死ぬのか。それならいっそ……!
 ついに、佐吉はある考えにたどり着いた。そうだ、組織を裏切るのだ。隣国に逃げて、敵の組織に寝返るのだ。幸い、手土産もある……。
 佐吉は小屋の戸を開けた。源蔵は三人のくのいち候補を連れてどこかにいった。中には、鎖に繋がれ、屈辱に疲れきって寝ているハガネだけだ。佐吉はハガネを見下ろし、足で蹴飛ばした。

「おいハガネ、起きろ!」

 事態が把握できぬまま、ハガネが潤んだひとみを佐吉に向ける。

「さっさと起きろ。今からお前を連れて隣の国まで逃げる。前頭領の娘として、お前を人質にするんだよ!」

 まだハガネにはすべてを理解できない。キョトンとしたままのハガネに苛立ち、佐吉は声を荒げた。

「いいから、早く立つんだよ!お前にはでけえ利用価値があるんだ。もうこんな里にはうんざりなんだ……」

 佐吉の怒声が、急に止んだ。黙ったまま、力なく立ち上がったハガネを舐めまわすように見ている。

「ははっ……そうだ、そうだよ。たった今から俺は裏切るんだ。いまさらウスラさまに義理立てすることもねえんだ。ははっ、はははっ!」

 気味悪く笑う佐吉を見て、ハガネは鳥肌が立った。まさか、この男……。

「……何を、する気……?」

 それを聞くか聞かぬか、佐吉はハガネに飛び掛かり、その躰をムシロの上に押し倒した。

「キャーッ、やっ……やめてぇーっ!」
「……決まってるじゃねえか、お前の乙女をいただくのさ……俺の珍棒をねじり込んで、ヒイヒイ言わせて、もう俺なしじゃいられない躰にしちまうのさ!」

 抵抗するハガネにかまわず、佐吉はハガネの着ていた粗末な着物を強引に引き剥がす。すぐに、少女の膨らみかけた白く健康的な乳房がまろび出る。

「いやっ……いやーっ!」
「うるせえっ、黙ってろ!どうせ、誰も来やしねえんだ。源蔵だって今ごろまたあの女たちと……クソッ!」

 思い出した悔しさを振り払うように、佐吉はハガネのその揺れる双丘にむしゃぶりついた。

「ああっ、いやあーっ!」

 ハガネには、舌が胸を這う感触など気味悪いだけだった。しかし、佐吉はそんなことにはかまわずに、舌を桜色に息づく乳首に絡め続ける。
 やがて余裕が出てきたのか、佐吉はさらに今までハガネを押さえつけていた右手をハガネの下腹部に近づけ、ついに処女の秘裂を探り当てた。

「ひっ……!」

 昼間、佐吉のモノを口に含んでいる時、源蔵が今と同じように秘裂に指を這わせた。その時ももちろんいやだったが、今の佐吉の太い指は、さらに大きな嫌悪感をハガネに与えていた。このおぞましい愛撫の後に、何が待っているのかそれに恐怖するように。
 無論恐ろしさが先に立って、いくら佐吉が必死に愛撫しようとも、ハガネの花芯は潤ってはこない。佐吉は、次第に焦りを感じていた。

「クソッ!お前も俺を馬鹿にするのか!俺がおなごのココをいじくるのがヘタだって言うのか……!もういい、このまま俺のモノをぶち込んでやる……覚悟しろハガネ!」

 着物の股から、佐吉は激しく猛った怒張を取り出した。それは汚れない少女の洞窟に入り込もうと、鼓動に合わせてわなないていた。ハガネにとって、それはこの三日間何度も見た物体であったが、それが自分の陰花の入り口で体内に侵入しようとしている姿を眺め、思わず目を閉じ大きな絶望を感じた。ウスラたちへの恨みも、両親の無念も、すべてのことを忘れ去ってしまうような恐怖感に、思わず閉じた瞳から涙が溢れ出した。

「ヘッ!いまさらめそめそ泣いてんじゃねえ。よーし、見てろ。すぐにヨガり泣くように仕立ててやるからな……」

 大泣きするハガネを見下ろし、自分の分身を支え持って、ついに佐吉は美少女の処女裂に当てがった。ハガネは、凌辱の恐怖にまっさらな裸身を固くした。
 にやにやとした、佐吉のいやらしい顔がハガネに近づく。秘所に感じる圧迫感も増してくる。

「ああ……!」

 ハガネがため息を洩らす。瞬間、佐吉の動きが止まった。目を開けると、佐吉はあらぬ方向を向いて、表情を引きつらせている。ハガネは、佐吉の視線の先をたどった。そこには、音もなく侵入したゴンザの巨体があった。確かに無表情だ。しかし、その目にははっきりと怒りがたたえられていた。

「ゴ、ゴンザさま……なんで、ここに……」

 佐吉がそう言うか言わぬかの瞬間。ゴンザの体は風のような速さで佐吉の背後に回りこむ。

「ヒッ……!」

 振り返るまもなく、佐吉の頭部はゴンザの怪力に掴まれていた。ゴンザはそれを片手で持ち上げる。あっけなく佐吉の体はハガネから剥がされた。ハガネの目には、離れていった佐助の体がまるで紙切れかなにかのようにヒョイと小屋の外に投げ出されるのが見えただけだった。外から、何かがつぶれる音と、カエルを踏んだ時のような「グエッ」という声が聞こえた。
 すぐにあたりは静寂になった。全裸のハガネの目の前には、先ほどの怒りと違って、なにか言いようのない感情を含んだ目をしたゴンザがいた。寂しげで、どこか子供じみた瞳だ。

「ゴンザ……」

 ハガネにとってゴンザは特別な存在であった。両親が任務の最前線にいて不在の時、小さい頃のハガネのそばには、いつもゴンザがいた。両親が信頼してゴンザに娘の子守りを任せていたのだ。大男はその姿に似合わぬ優しい態度で、頭領の娘に接した。ハガネもそんなゴンザに心を許していた。言葉なんかなくても、二人の間には素晴らしい信頼関係が生まれていたのだ。やがてハガネが成長したのち、『黒装衆』の頭領となるためには、やはり一通りの忍術を必要とするため、カスミとジンライは、もちろんゴンザにその指導を頼むつもりであったし、その命令はすぐにでも出されるはずだったのだ。しかしその直前、ゴンザはウスラと共に、両親を暗殺し『鉄面天狗』を旗揚げしてしまう。 ゴンザの突然の裏切りに、ハガネは信じられない思いであった。だから、目の前のゴンザが自分の危機を救ってくれたことでハガネは、ゴンザがまた改心してくれたものと確信した。しかし、その思いは次の瞬間にまた裏切られる。
 ゴンザはその巨体に着ていた着物を勢いよく脱ぎ捨てた。目を閉じる暇さえ与えられなかったハガネには、ゴンザの股間にあるペニスがはっきりと目に入ってきた。それは、佐吉や源蔵のものとは明らかに迫力が違っていた。恐ろしく長く、そして太い。そのイチモツは、なにか鬱積した凶凶しさがあった。
 ゴンザは、少女の驚愕を無視して、その大きな体をハガネにのしかからせた。そして有無を言わさず、まったく潤っていない乙女の淫裂にそのまがまがしい男根をギリギリとねじり込んでいった。

「ひっ……ひぎィ……!」

 痛みとかそんな生易しいものではなかった。ハガネの体内を熱く鋳された鉄の棒が差し込まれていく。この一線を越えれば、『死』というものが待っているような、そんな痛みだった。叫ぶことすら叶わず、ハガネは必死に歯を食いしばる。しかしその口から壮絶な痛みから来る瀕死のうなりが発生する。

「あ、あ、あが……うっぐう!」

 ゴンザのペニスはまだ収まりきらない。ハガネにとっては地獄の業火に焼かれているも同じことだった。まったくの無表情で、ゴンザは自ら手塩にかけて育てた少女の内部を蹂躪していった。

「う、うう……」

 自分の分身が少女の挟洞の奥底にたどり着いた時、ゴンザは何も言わぬ口からうめき声を上げた。それは何を意味するものか分からないが。対するハガネは、これが悪夢だと必死に思い込もうとしていた。自分の知っているゴンザはこんな酷いことはしない。これが夢なら、ウスラの裏切りも父母の惨劇も悪夢なんだ……。しかし、体内に打ち込まれた杭から感じる激しい痛みが、これが夢でもなんでもない現実だということをハガネに嫌というほど教えていた。
 突然、ゴンザの巨体が躍動し始めた。身を切られるような新たな痛みがハガネの華奢な躰を襲う。垣間見た源蔵と三人娘との交歓で、男女の交わりが互いに動き合うものだとは認識していた。しかし、ゴンザの腰の動きから受けるのはまさしく長刀で身を裂かれるような痛みだけであった。

「や、やめっ……ゴン……ザ、やめ、て……」

 組み敷かれた美少女はかつての守役に必死に懇願した。しかし、ゴンザはその苦痛に歪むハガネの顔をじっと見つめたまま、眉一つ動かさず自分の分身を繰り出していた。 突然、だった。無表情のままだったゴンザの口から、あの長く赤い舌が伸びてきたのだ。

「ひっ……!」

 その舌はすぐにハガネの顔に到達した。幼い頃、面白がって眺めていたその舌が、今は自分の顔面を気味悪く這いずり回っている。 唇から始まって、額、鼻、あご、首筋……ゴンザの蛇のような舌はまさに獲物をなぶり尽くすかのように乙女の柔肌を蹂躪する。やがてその動きは、当然のようにハガネのいたいけに揺れる乳房に到達する。

「ふぐっ、くっ……くっ、ふうっ……」

 ゴンザの舌は、胸全体の輪郭をやんわりとたどったかと思えば、その舌先で敏感なピンクの隆起を唾液にまぶして愛撫したりする。

「ふうっ……く、くうっ……!」
 ハガネはそこから湧き上がる感覚に戸惑っていた。相変わらず、体内で動き回っている怪物的ペニスからは激痛しか伝わってこない。胸を這う舌の感触もただ気持ち悪いだけだ。ただ、ただ躰の奥底から、いままでに味わったことのない不思議な感覚が、少しづつだが感じられるのだ。

「ふ、ふっ、くうんっ……ふうんっ……!」

 ハガネはそれが性の快感であることを意識していないが、十五歳の伸び盛り少女の躰は、無意識に洩れる小さな喘ぎに本能をさらけ出させていた。
 ゴンザはハガネの変化を見逃しはしなかった。腰の動きはさらに激しくなり、念入りにバストを愛撫していた巧舌は少しづつ下腹部に移動していった。

「ふうっ……ふ、ふああっ!」

 ハガネが今までにない高い声を出したのは、ゴンザの舌がへそに到着した時だった。くぼみに行き当たった舌は、まるで疑似ペニスのような動きでその小さな穴に出入りした。

「ふっ、あっ、ああっ……ああっん!」
 その時初めて、ハガネは自分が思いのほか大きな声で叫んでいることに気がついた。全身が羞恥で真っ赤に染まる。性器の摩擦から受ける痛みも、いつのまにかだいぶやわらいでいることに気づく。薄目を開けてゴンザの腰としたの動きを眺めているうちに、痛み以外に陶酔がかった感覚が自分の躰を支配し始めていた。
 何この感じ……だって、こんなに躰じゅう痛いんだよ…?なのに、ちょっとだけ……ちょっとだけ、気持ちイイっ……!
 もうハガネはゴンザに身を任せることに決めた。そう、これは夢だったんだ。ゴンザは相変わらず、わたしにだけ優しい……。ハガネは再び瞳を閉じてあごを反らせた。 組み敷いた娘の躰から、次第に力が抜けていくことを察知して、ゴンザは舌をハガネのへそから急に離した。

「あっ……」

 ゴンザでさえ、ハガネの躰が舌に追いすがるようにして動いたのには少し、驚いた。それだけ、自分の愛撫にハガネは感じてくれているのだ。ゴンザは離した舌をしばらく虚空にさ迷わせたのち、巨体の上体を起こし、それと共にハガネの若々しい肉体を腰から抱え上げた。

「……は、あっ……?」

 何が起こったか分からぬハガネを襲ったのは、またもや長い舌だった。ゴンザは舌を真下に真っ直ぐ下ろし、性器と性器がくちゅくちゅと交差している所、そこにある潤った小突起に愛撫を仕掛けたのだ。

「ひあっ……!あああっ……!」

 自慰さえ行ったことのない少女にとって、性器の少し上にある突起の存在などまったく知らなかった。そしてその場所がこんなに奇妙な感覚を与えてくれることなど……。

「ふあっ、ふあっ、ふああ……っ!」

 ゴンザは舌と同時に、腰の躍動もさらに巧みにした。大きくエラの張った男根はハガネの体内を激しく擦り上げ、子宮に届くかのように性感帯すべてを蹂躪した。

「くうっ、ふあっ……ふあん、はああっ……!」

 もう、痛みはなかった。ハガネは振り落とされないように必死にしがみつこうとして、自然にゴンザの大きな背中に自分の細い腕を回していた。その腕に込められた力は強く、美少女を抱えている大男にも、その腕が纏った微妙な感情をうれしく感じていた。

「……う、ううっ……」

 ゴンザが、またうめいた。そのうめきの意味は、ハガネにはなんとなく理解した。その時のゴンザの顔が、いつもの無表情ではなく、自分を暖かく見つめる優しい瞳だったからだ。

「ゴ、ゴンザぁ……ゴンザぁー!」

 ハガネの激しい喘ぎに呼応するように腰を突き入れるゴンザ。屈強の忍者であるはずの男が額にびっしょりと汗をかきながら必死に、本当に華奢な小娘を心から愛し続けた。
「や、あっ……ゴンザ、な、なんかっ……わたし、ヘンに……ヘンに、なるぅーっ!」

 もう自分で、その感覚が何を意味しているのかなど、どうでもよかった。ただ全身を包み込む甘美な快感に身を任せていたかった。

「ひっ、やっ……はあ、はあっ、はああーっ!」

 グッと、ハガネのからだが硬直した。生まれて初めて感じた、強烈な絶頂感だった。しかし、ゴンザはまだイカなかった。いまだ激しく怒張をハガネの体内に深く埋めて、自分も最高の絶頂を味わおうとしていた。

「あっ……あああっ、ゴン、ゴンザぁ……!」

 たった今純潔を失った少女なのに、ハガネの肉体に宿る性の本能は再びゴンザのペニスから与えられる快感をすべて受け止めようとしていた。膣内はまるで別の生き物のように蠢き始め、百戦錬磨の肉柱をも呑み込もうとしていた。

「また、また……ゴンザ、また来るよぉーっ!」

 美少女の艶のある喘ぎがぼろ小屋にこだまする。半開きの口からはだらしなくよだれを垂らし、空ろな目はどこか虚空を眺めていた。

「ぐ……ぐおっ、ぐお……っ!」

 その時、ゴンザが大きくうめいた。瞬間、刀身の先からほとばしった熱く大量の精液が、ハガネの膣奥に勢いよくぶつかった。

「来る……ああっ、そ、それっ……く、くうう……っ!」

 あとは言葉にならなかった。溶岩の衝撃を感じたと同時に、ハガネもまた二度目のエクスタシーにいたったのだ。再びの素晴らしき絶頂感に、ハガネの意識は遠のいていった。 


「……おやおや、だいぶ気分を出したようですわね、ハガネさま」

 突然の声に、ハガネは驚いて目を覚ました。目の前には、ウスラの冷笑があった。
「ウスラ……!」
「ハガネお嬢さま、せっかくお迎えにあがりましたのに、ご機嫌があまりよろしくないようですわね。それに、そんな格好では、おカゼをひいてしまいますよ……」

 ハガネは自分の姿を見る。あの時のまま、全裸だ。

「きゃっ……」

 慌てて胸と股間を隠す。

「あら可愛い、フフッ」

 ウスラは元頭領の娘が、真っ赤になるのを静かに見下ろしていた。

「さあ、ハガネさま。これを着てお立ちなさい。外に馬を用意してございます。支度ができればすぐに出発しますわ」

 ウスラはハガネに着物を投げて渡した。ここ三日間着ていたくのいち修行用のみすぼらしい着物ではなく、昔着ていたようなちょっと豪華なものだった。

「出発?どこへ……?」

 ハガネはウスラをキッと睨みつけたまま着物を着け始めた。

「それは、ハガネさまが知らなくてよいこと……安心してくださいな。きっとイイ所ですわよ……」

 ウスラはまたあの冷たい笑いを浮かべた。 ハガネは着物を着け終わり、ウスラの前で毅然と立ち上がった。

「ほお……さすがハガネさま。りりしうございますわ」

 ウスラはハガネのその姿に軽く一礼した。 やがて、ウスラが扉に向かって歩き始めた。ハガネもその後に続く。戸を開けると、眩しい朝の光が射し込んできた。外を見れば、馬二頭が繋がれていた。そのそばの大岩に、昨日ゴンザにヒョイと投げられた、佐吉の死骸が無残に横たわっていた。それを見て、ハガネは思い出したように言った。

「ウスラ、あの……」
「なに、ハガネさま」
「あ、あの……ゴンザは?」

 ハガネの言葉に、ウスラは一瞬キョトンとした。が、すぐに大笑いを始めた。

「……ハッハッハ!もしかして、ゴンザに惚れたの?」
「……!」

 ハガネは顔をそらす。

「あのねぇ……」

 ウスラはハガネの顔をじっと覗き込んで、ささやいた。

「ゴンザは、わたしの命令であなたのもとへ行っただけ。分かる?ゴンザはハガネのことなんか、なんとも思っちゃいないわよ。だいたい、ゴンザが今までに何人のくのいちの乙女を奪ったと思うの?『黒装衆』のくのいちはほとんどそうよ」

 面白そうにハガネの顔を覗き込む。

「じゃあ……ウスラも、なの?」

 急な言葉に、ウスラは黙る。

「……わたしは、違うわ。さあ、行くよ!

 ウスラは馬に飛び乗った。ハガネも、それに続く。 馬は、どこかへ続く道を走っていった。


 ゴンザは、暗い洞窟にいた。ハガネの乙女を奪ったあと、すぐにここに来たのだ。地下深くからから冷たい風が吹き込み、夏真っ盛りの今でも氷点下の寒さが維持されている、いわば天然の冷凍庫であった。普段は『鉄面天狗』の篭城用の食料や、冬の間山から切り出した氷を保存するために利用されていた。
 その中に、ひときわ大きな氷柱が置かれていた。ゴンザの背丈よりもさらに大きいその氷の柱は、違和感のある不気味な冷たさをたたえていた。中に、なにか入っているのか、中心がうっすらながら、黒い。
 ゴンザは、ふところから二つの小瓶を取り出した。その二つを、ゴンザはじっくりと見比べ、しばらく考え込んでいた。やがて、そのうち一つの小瓶を選んで、蓋を開けた。中からはきつい刺激臭が漂い、覗くと血のように真っ赤な液体が満たされている。目の前にそびえ立つ氷柱に、ゴンザはその液体をゆっくりとかける。
 しばらくして、氷柱の表面に変化が表れた。ジワリジワリと、氷が溶解し始めたのだ。ゴンザは、その変化を認めると残ったもう一つの小瓶を、地面に向かって投げつけた。小瓶は木っ端微塵になり、中の液体は飛び散った。こちらは真っ青な液体が入っていたらしい。
 ふいに、洞窟の中に不気味な声が響き始めた。死人の断末魔の叫びのような、いや地獄の底から聞こえる悪鬼の声のような、どのようにも表現できない、ただ空恐ろしい不気味な低い声であった。声は、氷柱の中心から聞こえる。先ほどうっすらと見えていた黒い影が、まるで生き物のように蠢いているようだ。
 ゴンザは、その声を確認すると無表情のまま洞窟の出口へと向かった。明るい出口の所まで来た時、一度ゴンザは奥を振り返った。恐ろしい声はさらに高くなっていた。


「ヘッヘッヘ……昨日は危うく佐吉にヤラれる所だったって?あいつもバカな奴だよ。おめえなんかにこだわらなけりゃ俺みたいに楽しめたのによ……奴がゴンザさまに見つかって岩と心中してた時にゃ、俺はサクラ・カエデ・ツバキとオ○コの真っ最中さ」

 源蔵が、黒く太い縄を手に持ちながら、ハガネの目の前に立っている。またあのいやらしい微笑みを浮かべて。

「俺さまがツバキとヤってるっていうのに、他の二人はすぐに俺さまに催促してきやがる。まったくスケベエになっちまったもんさ……ま、俺がそういうふうに仕立てたんだけどな、ガッハッハ!」

 黒い縄が、源蔵の手によってハガネの躰に容赦なく食い込む。先ほど着た豪華な着物の上から、である。

「クッ……痛い」

 きつい縛り方に、思わず苦痛の声を洩らす。

「おっ、イイねえ……お嬢さまのか細い声だ。思わず珍棒が立っちまうよ」

 源蔵はかまわず縛り続ける。

「さてと……」

 ハガネの全身に、ゴツイ黒縄が巻かれた時、源蔵はその姿をニヤニヤとした顔で見下ろしていた。

「……なるほど、佐吉が惑わされたのも無理ねえな。これなら、命賭けてもヤリたくもなるわなぁ……」

 ハガネは、男の嫌らしい視線に耐えようと、毅然とした目で源蔵を見上げていた。

「へっへ、そんな恐い顔してもムダだよ。お前は抵抗なんてできねえんだ……」

 源蔵はそういって、身動き取れないハガネの後ろに回った。

「……まったく、可愛い奴だぜ。ほら、こんな白い首筋なんざ……」

 ふいに、源蔵の舌がハガネの首に這った。悪寒の走る、気味悪い感触だ。

「やっ……やめ、ろ……」

 必死に声を絞り出す。

「ハッ、やめろだってか?お前、自分の立場が相変わらず分かってないねえ……」

 源蔵はまたニヤリと笑った。今度は両手で、着物の上からハガネの双胸を揉み始めた。

「ヒッ……いや、やめて……」
「いやいやなんて言えんのは、今のうちだけだよ。お前だって、やがては男のモノを喜んで受け入れて、ヒイヒイよがることになる。だから今のうちに慣れとった方がいいぞ」

 発展途上の幼い胸の感触を着物の上から感じながら、源蔵はハガネの耳元で囁く。ハガネは後ろ手に縛られた両手を、無駄と分かっていても悲しく動かした。

「は、あっ……お願い、もう……もうやめて……」

 ハガネの声が切なくなる。源蔵はニヤリとした。

「なんだハガネ、お前感じてるのか?今までどんなに可愛がってやっても絶対によがらなかったのに……」
「……!」

 ハガネは羞恥で真っ赤になる。確かに、源蔵の着物の上からのもどかしい愛撫に、自分は屈辱以外の何かを感じていた。それが、昨夜ゴンザとの行為によって初めて開発された感覚であることを、ハガネ自身が一番分かっていた。

「ガッハッハ!それでいいんだハガネ。女は素直に感じてたほうがいいんだよ。それでこそ男をたらし込むのが仕事の、立派なくのいちになれるってわけだ……さて、せっかくハガネが悦んでくれたんだ。もっといじくってやろうかな……」

 ずっと続いていた胸の愛撫により、だんだん力が抜けてきた少女の躰を、源蔵はひざでつついて横たわらせた。

「あっ……」

 力なく倒れたハガネは、小さくうめいた。源蔵はその上に全身を乗せ、すばやく唇を奪う。

「ううっ……」

 抗う少女の口元を、中年の忍者は決して離さなかった。そればかりか、汚らしい自分の舌をその幼いハガネの唇にこじ入れていく。

「うう……ううんっ!」

 ハガネは、その男の舌の侵入に抵抗することはできなかった。全身身動きが取れぬ以上、たとえこの男の舌を噛み切ったところで何の意味もない。すぐに怒りに狂った男によって殺されるだけだ。
 源蔵の舌はやがてハガネの舌を絡めとるように吸い出した。吸引は強くなり、舌の付け根に鈍い痛みが走る。
 うう、汚い……。
 今ハガネは、男の舌の不気味な感触への嫌悪を感じている。だがいまだに続けられる胸への愛撫からは、先ほどの不思議な感覚がさらに大きくなっているのが分かった。
 突然、胸を這っていた右手が、着物のすそから侵入してハガネの淫裂にたどり着いた。そして、そこは少女の気持ちとは裏腹に、ジメっと潤っていた。

「ははっ!こりゃイイや。おいハガネ、お前、かなり感じてきてるじゃねえか。ほい、これを見てみろ」

 唇を離して、これ見よがしに源蔵は愛液で濡れた右手の指を、ハガネの顔前に差し出す。愛液は、ハガネの目の前でいやらしげに糸を引いた。

「いやっ、いやぁ……っ!」
「いやじゃねえよ。お前が勝手に感じてるんだ。お前は俺のいじくりで、オマ○コからイヤらしい汁を垂らしてんだ」

 目の前の現実が、ハガネを打ちのめす。心では嫌がっていても、少女の躰は男の愛撫でジワジワと性交の準備を整えていく。
 ハガネが恥ずかしがる反応を楽しんだのち、源蔵は再び若い花芯に指を忍ばせた。

「クッ……ふうんっ!」

 源蔵の人差し指が、潤った少女の肉の隆起をゆっくりとなぞる。触れるか触れないかのタッチで指を動かしたかと思えば、いつのまにか一番敏感な牝真珠を愛撫している。

「あはっ……はああんっ……!」

 念入りなおさねへのいじくりによって、ハガネの喘ぎはさらに大きくなった。その様子を見て、源蔵はその指を花芯の中に侵入させる。人差し指だけではなく、中指もいっしょに添えながら。

「あああっ、は、はぐう……んっ」

 膣壁を擦る二本指の感触は、ハガネの躰を一層感じ入れさせた。荒々しく性感帯をこね回すその指は、昨夜のゴンザとの交わりを思い出させるものだったのだ。

「はあっ、ふうっ……ふうん……っ!」

 眉を反らして、ハガネはもう自然に喘いでいた。陰部から沸き上がってくる快感は、決して悪寒などではなかった。今ハガネは、はっきりと性の快感が自分の全身を支配しようとしていることを悟っていた。

「へっへ……俺もたまらなくなってきたぜ……ほんとにコイツをブチ込みたくなっちまった。
しかし、それはできねえしな……」

 源蔵は着物の中からいきり立った男根を取り出して、興奮した口調で言った。本心は、すぐさまハガネの中に挿入したいのだ。しかし、それをやってしまえば、昨日の佐吉のような無様な死が待っているだけだ。

「……しょうがねえ。口でガマンしてやるか。おいハガネ、俺さまの珍棒を口でイカせやがれ!」

 源蔵はハガネの上に腰を乗せ、小さな口元に男の凶器を近づける。ハガネの目の前に、グロテスクなペニスが迫った。荒い息のハガネは、もう少しでその陰茎を躊躇なく含んでしまうところだった。
 その時、部屋の外が騒がしくなった。源蔵は、慌てて身を起こす。

「源蔵!源蔵はおるか!」

 ウスラの声だ。こちらのほうに向かって、廊下を歩いてくるようだ。

「へ、へい!ここにおりますが……」

 ペニスをしまい、立ち上がった源蔵は気の抜けた返事しかできなかった。

「なんだ、ここにおったのか。ハガネの支度はできておろうな?」

 ふすまを開けて、ウスラが部屋に入ってきた。そして畳に転がされたまま、うつろな瞳で見上げるハガネを見つけた。

「……おい源蔵。ハガネにおかしな真似はしなかったであろうな?」
「いえいえ、滅相もございませんウスラさま。私はただ、お言い付け通りにハガネを逃げられぬよう縛っただけにございます……」
「ほう……」

 言うが早いか、ウスラは目に見えぬような素早い動きで源蔵の後ろをとった。いつのまにか手には小刀が握られており、それはしっかりと源蔵の首筋に当てられていた。

「ヒイッ!」
「……おい源蔵。お前は昨夜、ハガネの監視の任をほったらかしてくのいち三人といちゃついていたそうだが、それも立派な命令違反だ。佐吉のようになってもおかしくないのだぞ……」

 ウスラが冷たい声でささやく。

「そのうえ、我が軍団の大事な商品であるハガネを傷物にするようなことがあったら、ただ殺すだけでは済まされぬぞ……」
「……はっ、ハイ!」
「ふふっ……素直だなお前は。よし、素直なそなたに褒美をやろう」

 源蔵に甘い吐息を吹きかけながら、ウスラは言った。

「ほ、褒美でございますか……?」
「ああ。いくぞ……」

 ウスラはそう言って源蔵の前に手を回すと、陰部の近くにある一つのツボを押した。

「がっ……がああああ……っ!」

 突然、源蔵に壮絶な絶頂感が襲ってきた。それはすぐには治まらず、精液を吐き出しても吐き出しても止まることがなかった。あまりの苦しさに、源蔵は床に倒れ伏した。それでも肉棒からはまだおびただしい量の樹液が流れ出していた。

「しばらく続くから、苦しんでいるがいいさ。このウスラさまににイカせてもらったんだ。殺されなかっただけありがたいと思いな……さあハガネ、いくよ!」

 ウスラはハガネの縄をとり、いまだ余韻の中のハガネを無理矢理立ち上がらせた。
 部屋を出る時、ハガネは少し振り返ってみた。源蔵はうずくまったまま小さくうめいていた。股間のあたりの着物が、自分の垂れ流す精液で濡れていた。

「ブザマな姿だねえ……まあ、男なんておおかたあんなもんさ」

 ウスラが笑って言った。

「……ウスラ、私をどこに連れて行くつもり……?」

 ハガネは言葉に力強さを込めながら言った。

「ん……?心配しなくていいよ。けして殺したりはしないから」
「あんた、さっき私を『商品』って言ったよね。私をどこかに売るつもりなんだろ?忍びのシの字も知らない私を、誰が買ってくれるっていうんだい?」

 ハガネは率直に疑問をぶつけた。それを聞いていたウスラは、やがて静かに笑い出す。

「くっくっく……あっはっはっはっ!お前、何にも分かっちゃいないねぇ。本当に世間知らずのお嬢さまだよ……いいかい、誰もお前に忍者の仕事なんて望んじゃいないさ。お前に求められてるのは、『何も知らない乙女の躰』……これこそあまたの権力者が望むものさ。だからお前みたいな役立たずを殺さずに生かしてるのさ!」

 ウスラは、呆然とするハガネに向かって冷然と言い放つ。

「なんでも言うことを聞いて、いつ何時でも主が望めば性欲の処理をする……言ってみれば『肉人形』みたいなもんさ……それにね、あたしたちもお前一人で交渉するなんてバカな真似はしないよ。もう一つ本当の商品があるんだよ。お前はあくまで本当の商品の『オマケ』……そこらへん、自覚しておくことだね!」

 ハガネは今、生まれて初めての強烈な屈辱感にさいなまれていた。『肉人形』……これほど屈辱的な言葉があろうか。そして今、ハガネはその『肉人形』だと断言されたのである。
 考えてみれば、確かに世間知らずだったかもしれない。この生き馬の目を抜くいくさの時代に、両親を惨殺した奴らにただ生かされているはずがなかったのだ。佐吉や源蔵に辱められ続けたあの三日間も、サクラ・カエデ・ツバキの三人の本格的なくのいちへの調教に比べて、自分は口淫のみをやらされただけであった。ハガネはその状況を『特別扱い』だと思っていた。そして今、それが間違いだと悟ったのだ。処女肉を奪われなかったのは、『性交回数の少ない少女』としての商品価値を保つためだけだったのだ。

「フフッ、やっと立場が分かったみたいだね。今から、この屋敷の広間でお前の品評会があるのさ。だからこそ、昨日の晩ゴンザに命じてお前の乙女を奪ったのさ。今度のお客さんは、正真正銘の処女じゃお気に召さないらしいからね」

 あまりにも冷たいウスラの言葉に、ハガネのつぶらな瞳から涙が溢れた。悲しいからではなく、あまりに無恥であった自分に対する、悔し涙だった。

「さ、時間がないんだ。さっさとお歩き!」

 後ろ手に縛った縄をグイッと引っ張り、ウスラはハガネを無理矢理歩かせた。


「……ほう!これは上玉じゃの!」

 広間は、確かに広かった。その代わり、あまりに暗かった。すべての戸は固く閉じられ、その全てに目張りされていた。明かりといえば、先ほどの姿のまま畳に転がされたハガネの周りに、申し訳程度にろうそくが点っているだけだ。乱れた着物姿をさらしているハガネを、何人かの人間が取り囲んでいるのが気配で分かった。

「ええ。この娘はつい昨日まで本当の乙女でございました。口淫の淫技以外、我々はなにも教えておりませぬ。家筋も、しっかりしていると、私が保証いたします」

 何も見えないが、ウスラの艶やかなよく通る声が暗い広間に響いた。

「なるほど、口淫だけ……つまりこれからいかようにも染められる、ということですな」

 老人特有の粘着質な声で、見えぬ誰かがささやく。

「しかし、本当にまぐわいの回数は少ないのであろうな?まがいものを掴まされるのはかなわぬからな……」
「フフッ、お疑いなら、ご存分にお調べなさいませ。自らの指などでなんなりと……」

 ウスラのその言葉を合図に、暗闇から一本の手がハガネの躰に伸びてきた。その手は有無を言わさず、ハガネの淫裂をまさぐった。

「ひ、ひい……っ!」

 長く粘ったうめきが、ハガネの口から洩れた。指はかまわずハガネの内部を荒々しくまさぐる。

「ふうむ……たしかに中はまっさらじゃな。締めつけも乙女のモノ……」

 しゃべりながらも続けて花芯で指を蠢かせる。その動きに、またハガネの肉体に宿る本能が反応を始める。

「くっ……くうん、ふうっ……ふうん……っ!」

 たまらず切ない声を上げるハガネ。男は、少女の反応に悦んでさらに指の動きを活発にする。

「ふうんっ……は、はっ、はああん……っ!」

 膣内を這い回る異物にハガネの未発達な性感は知らず知らずのうちに集中していった。さきほど、源蔵の愛撫が中途半端に終わったせいか、花芯周辺の感覚はさらに倍加している。

「はうっ、も……もう、やめて……くだ、さ、い……」

 ハガネは不自由な躰をよじりながら、迫り来る快感と戦っていた。
 男はハガネの様子を散々楽しんだあと、淫裂から指を離した。男は指先についた少女のネバつく愛液を擦りつけながら、さきほどの源蔵と同じようにハガネの目の前に晒した。

 しかしそこからが、この男の違うところだった。

「……舐めて、みろ」
「……っ!」

 暗闇の中から、いやらしく舌なめずりする気配がした。ここにいる姿の見えぬ皆が、ハガネのさらなる恥態を望んでいた。

「いや、いやっ!」

 ハガネは目の前にある自分の恥汁から逃れるように、目を閉じて首を振った。

「……ハガネ、舐めるんだよ」

 暗闇から、ウスラの刃物のような声が飛ぶ。

「お前に、それを拒否することができると思いかい?さあ、お客さんの指についたお前の恥ずかしいマ○コ汁を舐めるんだよ……!」

 有無を言わさぬ、冷たい口調でウスラが言う。ハガネは絶望感に包まれながら、中年の指におそるおそる唇を近づけた。

「んっ……んふうっ」

 ハガネは舌を使いながら、自分の淫液の付着したゴツイ指を舐めしゃぶった。ピチャピチャと、まるでペニスをしゃぶるかのごとくネットリと。

「ほっほっほ、これはこれは……この娘は根がかなり淫乱のようですな。まだ膜を破って日が経たぬらしいのに、このいやらしい舌使い……殿、なかなかの代物ですぞ」

 男が振り返る気配がした。そこに、ただじっと座っている男がいる。相変わらず暗闇で顔は見えないが、この場でその男が一番上位の者らしかった。

「……わしは、おなごの経験はあまりないゆえ、よく分からぬ。しかし、そなたらが言うのだから間違いなかろう。ウスラ、この娘を買い取ろう」

 その男が言った。

「……ありがとうございます」
「しかし、娘だけでは困るぞ。例のモノのほうが大事じゃ。そちらは、滞りなかろうな?」
「はい。ただいま我が軍団のゴンザという者がしっかりと準備しております」
「……そうか。それならばよい。それでは……」

 男は、用が済んだと思って立ちあがろうとした。しかし、さきほどの中年がそれを引き止めた。

「殿、せっかくこんなどうにともなる娘を手にいれたのですぞ。さっそく味見をされたほうがよろしいでしょうし、ウスラたちも安心できましょう……」
「しかし……」

 殿、と呼ばれる男はあまり乗り気ではないようだ。

「殿……そうなさってくださいな。ハガネはまだまだ仕込む余地がございますし……二人きりがご不安なら、私もご一緒しますけど……」

 ウスラは殿に、妖しくしだれかかった。殿は、そのキツイほどのフェロモンに、思わず唾を飲んだ。

「ね……?そうなさいませ、殿……」

 甘い吐息を吹きかけながら、男の劣情を誘う。殿と呼ばれる男も、それを意識し始めていた。

「……う、ううむ」
「殿、そうなさいませ!ささ、ウスラ。殿を別室に」

 早く娘の狂態を見たいのか、他の男たちが異様に煽る。

「……分かった。ウスラ、案内せい」

 殿は、そういってウスラの手を取った。ハガネはその一連の動きを、中途半端に止められた性感の包む目で、ぼんやりと眺めていた。


 その部屋も、また暗かった。十二畳ほどの部屋の真ん中に、寝具一式が用意されている。ここはさきほどの広間より狭いため、行灯の光は同じでも大方部屋全体を見渡せた。ウスラによって隅の柱に縛られているハガネにも、部屋の中央に立っている男女二人の様子が見えた。ウスラは着ていた着物をわざと少しだけ乱し、しなだれかかっている男に甘えるしぐさを見せる。一方、美女に寄りかかられている先ほどから『殿』と呼ばれていた男は、そんなウスラの様子に戸惑っているようだ。
 年齢はとても若いようには見えない。どう見ても五十代だ。しかし、その顔には不思議な若々しさが満ち、凛とした一等の美男だった。そんな男が、先ほどの広間で自分を『経験不足』と自嘲していた。

「……」

 殿、と呼ばれる男は自分の経験不足のためか、その布団の前でボーッと突っ立っている。

「……殿、そんなに緊張なさらないで。さ、お着物を……」

 ウスラはこわばった男の体からスルスルと器用に着物を脱がしていった。やがて薄暗がりの中に、男の褌一丁の裸体が浮かび上がるのをハガネは見た。そこには、顔にはとても似合わぬ筋肉質のたくましい肉体があった。またその鍛えられた体には、凄まじい数のカタナ傷が刻み込まれていた。

「凄い……さすがは殿。われわれ忍びのものでもこのような傷はございませんわ……」

 じっと男の体を眺めながら、ウスラが感嘆の声を洩らす。どうやら本心のようだ。

「うむ……自慢ではないが、それがしはいくさ場において一度も敵に後れを取ったことはない。受けた傷も多いが、それに倍する敵を刀の露としてきた」

 男の口から、自信に満ちた言葉がほとばしった。それが虚言でないことは、その肉体が雄弁にハガネやウスラに語っていた。

「ああ……ほんとにたくましい。奥方さまがうらやましいですわ。さぞかしアチラも激しいのでしょうね……」

 男の体にしなやかな指を触れさせながら、ウスラは男に囁く。

「……いや、所詮めおとの交わり。いたって、普通じゃ」

 こと話しが性の事となると、この男は完全に受け手に回ってしまう。

「……それじゃあ、おなごの味は奥方さましかご存知ではないのですか……?」
「……もちろんだ。他の諸将のように、本妻以外に側室を持とうなど、それがしは考えたことがない」

 男は胸を張って答えた。

「……それなら、私やハガネが殿に奥方さま以外のおなごの味を初めて教えることになるのですね……フフフッ」

 ウスラの言葉に、顔を真っ赤にした殿は、無言になってしまった。

「フフフッ……殿、それでは私から本当のおなごの味をお教えしますわ……ハガネ、よく見とくんだよ」

 殿の目の前に立ち、ウスラは帯をほどく。なんの抵抗もなく、着物はウスラから滑り落ちた。瞬間、全身に妖しさをまとった美熟女の全裸体が現れる。

「……!」

 殿は、その美しさにゴクリと息を呑んだ。白く抜けるような肌。ぴんっと張った熟れ切った乳房。躰全体は肉豊かなのに、しっかりとくびれた腰の線。指の先まで肉感的な脚。そして、あらゆる男を誘惑するかのような、黒く艶やかに茂った陰毛……。妻と同じ『女』のはずなのに、そのすべてがまるで違って見えた。

「フフフッ、殿……私の躰、お気に召しまして?やっぱり奥方さまのほうがよろしいかしら……?」

 舌なめずりしながら、ウスラが殿に囁きかける。殿は、無意識のうちに首を振っていた。

「あら、うれしい……それじゃあ、失礼させていただきますわ……」

 ウスラは不意にしゃがんだ。そして目にも止まらぬ速さで、男の褌からペニスを取り出した。すでに、殿の男茎は、激しく勃起していた。

「凄い、凄いわ……ねえハガネ、見てご覧なさい。殿のたくましいモノを……」

 ウスラの言葉より早く、ハガネの視線は殿の陰茎に集中していた。佐吉や源蔵のモノとは比べる余地も無い。ゴンザのモノより、一回り小さいが、その何とも言えぬ迫力はゴンザのモノより勝っていた。硬そうで、熱そうで……。ハガネは、その猛った男根を眺めているだけで、頭がボーッとしてきた。なんだか股の間がむずがゆい。きっとまた、あのニチャニチャした液体が、自分のアソコから湧き出し始めているのだ。

「殿、ハガネも気にいったようですよ……あとで、このモノをあの娘にご馳走してさしあげませ。きっと、よがり狂って悦んでくれると思いますわ……」

 男のペニスを支え持ったまま、ウスラはハガネに冷たい笑いを投げた。

「でも、先に私に召し上がらせてくださいませ。ね、いいでしょ……?」

 殿が答えるのを待たずに、ウスラはその手の中のモノに美貌を近づけた。

「うおっ……うううっ!」

 自分の分身が美女の口内にくるまれるのを見て、殿は思わずうめいた。女は時々上目使いで殿の様子を見ながら、太い幹を自分の口の中に含んで行く。

「おおうっ、こ、こんな……」

 殿は初めて経験する口の淫技に、緊張を解いていった。やがて、モノが口内に収まり切ると、ウスラは熱く脈打った肉棒に舌を巧みに絡め、首を前後に大きく動かし始めた。逃げようとする殿の腰を両手でしっかりとつかまえたままで。
 ウスラは、男の怒張に自分の唾液を存分にまぶして、激しい吸引を続けている。町娘に身を変え、男に取り入り敵の内情を聞き出すには、一通りの淫技は身につけておかなければならない。くのいちにとって、口内愛撫の技は初歩中の初歩だった。ウスラには、このような経験の少ない男はもとより、側室を何人も抱える敵の武将でさえ、この淫技でイカせる自信があった。

「くっ、くっ……くううーっ!」

 殿は首を反らして、少女のように喘いだ。チラと股間にとりついた女を見ると、こちらを相変わらずの妖しい上目使いで見ており、両ほほは強い吸引のためペコッとへこんでいる。あまりに扇情的な表情に、殿は切なくうめく。
 やがて、ウスラは男の怒張から少し唇を離した。舌の先に、先漏れ汁の味を感じたからだ。このまま激しい吸引を続けるより、他の愛撫の仕方に変えたほうが、男の分身を長く持続させることができることを、幾多の経験から知っていたのだ。潤んだ瞳で、手のひらの上でビクビクと脈動しているペニスをじっと眺めている。

「……ほんとに、凄い……」

 ひとこと、ウスラがつぶやいた。本心から、ウットリとしていた。男の肉体に刻まれた傷の数々と同じように、そのモノは本当の戦場の恐怖を経験した人間にしかまとい得ない迫力を醸し出していた。ウスラでさえ、見たことの無いほどのペニスだったのだ。そしてハガネにさえ、ウスラが本心から感動していることが手に取るように分かった。同じ女として、当然のようにハガネもその男の分身に魅入られていたのである。

「うっ……!」

 再び、ウスラは陰茎に舌を這わせ始めた。今度は口に含まず、長く巧みな舌を自在に使っての、外側からの愛撫だった。ピンク色の舌は、生き物のように肉棒を這いずり回る。たった今たくましい幹の部分に触れていたかと思えば、今度は亀頭の所を念入りに舐めている。男がその感覚に酔っていると、さらに今度は思わぬ所に攻撃を受ける。ぶら下がっている二つの袋をじかに口に含むのだ。まったく味わったことのない快感に、殿は戸惑いながらも身を任せるしかなかった。
唾液と先漏れ汁が混ざり、男の分身を妖しく光らせ始めた時、ウスラは再び猛ったペニスを口奥に呑み込み始めた。やがて口内にそれが収まりきると、初めて口に含んだ時より、さらに大きさを増したそのモノにしっかりと舌を絡めながら首の前後運動を開始する。

「くおーっ……く、くうっ、ううう……っ!」

 殿は歯を食いしばって必死に快感に耐えていた。しかし、それも長くは続かなかった。二度目の口内挿入に、男の怒張は辛抱し切れずに射精したのだ。

「うああっ……ああっ、ああっ、ああっ……!」

 初めて発射を経験する少年のような素直な声を上げて、女の口に精を吐き出した。

「んっ、んっ、んんっ……」

 ウスラは、男のほとばしりをすべて吸い尽くすかのように、喉をならして呑み下した。

「んっ……んはあ……っ!」

 大量の樹液を味わって満足したのか、ウスラがペニスから唇を離した。スペルマの名残が、妖しく光って糸引く。発射した直後なのに、殿の分身はあの力強い迫力をまとったままだ。ウスラは、もうたまらずに、ささやいた。

「ねえ殿……まだ、大丈夫?大丈夫ですよ、ね……?」

 懇願するような濡れた瞳で、ウスラが言った。殿の陰茎を、手でしごきながら。

「う……うむ」

 男の沽券が、殿にそう言わせた。敵に後れを取ったことのない男が、女の願いにひるむわけにはいかない。

「そう、それなら……」

 ウスラは、畳に腰をおろした。上体をそらせて、美しい脚をM字型に開く。男の目前に、女の秘所がはっきり見えるのだ。震えが来るくらいの淫靡ば眺めだ。

「さあ……きてくださいまし、殿……」

 ウスラは自分の指で、すでにしっかりと潤った淫裂を開き晒した。

「……!」

 ウスラのソコは、薄明かりの中でジクジクと、蠢いていた。男のモノが、そこに収まるのを今か今かと待っているのだ。
 催眠術にかかったかのように、殿はウスラの裸身に引き寄せられていった。見ているだけで、分身に再び力がみなぎってくる。

「そう、そう……ゆっくり、ね……?」

 口を開けた花芯が、直前に迫った怒張を迎えようとしている。そして、そのモノが淫裂に触れた瞬間、ウスラは待っていたように腰を前に繰り出した。

「うおおおっ…っ!」

 その時、男の頭の中から、本妻の姿は完全に消えた。いや、それどころか、今までの幾多の戦場、成し遂げた仕事、そして上の主君に今任せられている任務のことなどまったく消え失せたのだ。
 ウスラが腰を巧みに進めて、男のペニスは吸い込まれるように体内に呑み込まれていく。

「ううっ、おおおうっ!」
「ああっ……殿、いい……っ!」

 二人の鳴咽が、挿入を終えた時点で重なり合った。内部の膣壁が蠢いて、男の分身をしっかりとくるんだ。粘膜はさらなる接触を求めて、ぐっと締め付けてくるのだ。

「さ……殿、動かして、いいわよ……」

 殿の耳元で、ウスラがささやく。殿も、その言葉を合図に、いてもたってもいられないように、ゆっくりと腰をグラインドさせ始めた。

「おおうっ……こう、でいいのか?」

 育ち盛りの少年が母親に作法を聞くかのように、五十男が二十代後半のまだ若い美女にたずねる。

「ええ……殿、それでいい……ああっ、いいわ……」

 ウスラも優しく答える。
 確かに男の腰の動きはぎこちなかった。緩急などをつけるなどという高度なテクニックはもちろんなく、ただただ本妻とのいつもの行為と時のように一定の動きを繰り返しているだけだった。しかしウスラはあせってはいない。いらつくこともない。やがてどんな男でも、自分の蜜壷の感触に心を昂ぶらせ、腰の動きも激しくなることを知っていたからだ。ウスラはただ、男の珍棒が恥をかかぬようにして、自分がいいように楽しめばいいだけだった。

「そう……はあう、んっ!もっと、もっと……くう……ふうんっ!」

 ウスラは遠慮することなく大きな声で喘いだ。たった十畳のこの狭い部屋で、それはまるで衝撃波のごとくハガネの躰に押し寄せる。         

「……ふう……んっ」

 なにかが、おかしい……。ハガネは自分の異変に気がついていた。躰のあちこちが妙に発熱している。吐く息もいつのまにか荒い。そして、昨夜からゴンザの肉棒・源蔵の二本指・見知らぬ老人たちの淫指などによって激しく弄ばれた『あそこの部分』が、ヒリヒリするほど、熱い。先ほどから知らず知らずに生ぬるい液体が漏れ出しており、その心地悪さから、必死に両方のふとももを擦りあわせている。しかし、そうすればするほど、また再び熱い割れ目から淫汁が流れ出してしまう。
違う。こんなの、おかしい……だって、ウスラと知らない男の人のオ○○○見てるだけだよ……なのに、なんで、ココが……ああっ!
柱に縛られた躰が、もどかしい。躰をくねらせればくねらせるほど、目の前の男女の痴態に心乱される。

「ふ……くっ……うん……っ!」

 いたたまれぬように、荒い息を吐く。目の前には、額に汗して腰を揺り動かす中年男と、セクシーな唇を半開きにして、自らも腰を妖しく突き上げるくのいちがいる。瞳を閉じれば、目には入らないはずだ。しかし、今のハガネには目を閉じる事は、できなかった。その男女の淫靡なまぐわいは、十五歳の肉体のも、性の快感を無意識に感じさせるに十分だった。

「……!」

 突然、ウスラと目が合った。ウスラは、こちらをうつろな瞳で見つめている。唇には、小さな微笑みが浮かんでいる。ウスラには、ハガネの躰が感じ始めていることが、手に取るように分かっていた。

「フフッ……見て、殿……つい昨日まで生娘だった女が、私たちの、ふうっ……交わってる姿をみ……見て、もだえて……いるっ……ああっ、イイ……っ!」

 男も、ウスラにつられてこちらを向いた。ハガネと、目が合う。男の瞳は、先ほどの凛とした武士の瞳ではなかった。ただただ黒い淫猥な炎を宿した、獣のような眼だった。

「さあ、殿……もっともっと見せつけてやりましょう……すぐにあの娘も、うんっ……はあ……殿のコレで、……激しく、よがる、の……っ!」

 ウスラは、こちらに瞳を向けたまま言った。男の太い首に白い腕を回し、相変わらずたわわな腰を、うねらすような動きで躍動させている。
 男も、それに応えるべく腰の動きを激しくさせた。二人の擦り合わされた性器と性器の間から、くちゅくちゅと形容しがたいほど恥ずかしい音が聞こえる。

「はああっ!それ、イイっ!殿、殿ぉーっ……ふっ、くっ、ひいっ……あああっ、イイ……イイん……っ!」

 ウスラの喘ぎが一段と激しくなる。思ったとおり、男は本能的に女が悦ぶ動きを始めていた。さらにこの男は、鍛えられた筋肉のおかげで、一突き一突きが躰の芯に、ズンッと響いてくる。

「くひいっ……はあ、うんっ……はあ、はがっ……ひいいっ!」

 これは、久しぶりにイケそうだ……。ウスラは直感した。ゴンザの舌では、そこそこ感じはするが、やはり慣れが先に立つ。この男を利用するために差し出した躰だったが、今はとりあえずそんなことは忘れて、快感に素直になることにした。

「くうっ……くうっ……!」
「ひ、あ……っ、と、殿ぉ……私、わた、し……イク……ふっ、ふうん……イクわ……っ!」

 女が、こんなにはしたなくしていいのか。ハガネはウスラの叫びに自分を省みた。しかし、自分も淫裂から愛液をしたたらせて、小さな喘ぎを洩らしている。私も、あの男の人のモノを入れられたら……。

「ひいっ、ひいっ……殿、殿……イク、イクっ……イク、うう……っ!」
「う、うっ……う、あああっ!」

 ウスラと殿の叫びが最高潮で重なり合った時、二人はほぼ同時にオルガスムスを迎えた。そして、まるで空気感染するように、ハガネも陰部に鈍い感覚を感じて、静かに気を失った。

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