第五話 挿れられて、喘ぎ



「はあっ、あっ……もう、許して……お願いよ、ハロッド。ああっ……このままじゃ私、駄目に、なるっ……!」

 声の反響が少し変わる。見えない、見えはしないが、母親が首を曲げてヒップの後ろに立つハロッドに哀願している姿が想像できた。それも、普段の凛とした声でなく、今まで一度も聞いた事のない、色っぽい声で。

 何を許して欲しいのか?何が駄目になるのか?私は机の下の体を、もう一歩、進めた。

「駄目になる……?これは傑作だ!今の奥様は、これ以上ないくらい魅力的です。私のペニスに泣かされ、どんどん魅力的になっているのですぞ?一文の得にもならない名家のプライドや、野垂れ死んだまぬけ旦那の事は全て忘れて、私と共にもっともっと駄目になりましょう……クククッ」

 ハロッドの腰が、動いた。

「はあ、ううっ!」

 何かが触れたようだ。一歩進んだ私の視界に入ったもの、それは。

「さあ、お待ちかねの私のペニスです。挿れたらすぐに善がるんでしょうなぁ……あまり喜び過ぎて、明日の相手バーデマー卿へのご奉仕の練習を忘れぬように。挿れられたら、自分からねだるようにヒップを動かすのですぞ……?」

 母とハロッドの背後、1メートルを切った。斜め下方から見上げた先にはハロッドの汚らしい尻。その前の部分にあった、見た事もない物。

 自分のペニスがある部分から生えた、異形の肉柱。形も、長さも、色もまるで違う。それがハロッドのペニスである事は間違いないのだが、幼い私にはあまりに衝撃的過ぎてにわかに信じがたかった。そして、そのペニスの先端が、母のシミひとつない美しいヒップの割れ目に迫っていた。どこに収まるかなど知らない私でも、その白と黒のコントラストは淫靡極まりなかった。

 だから、思わず。

「マ、マ……っ」

 それは、微かに唇が動いただけの声のはずだった。しかし、男に狂わせられる直前の女はともかく、あらゆる事で女を辱めようとしている凌辱者には、新たな福音のように聞こえ、届いてしまった

「……おやぁ?」

 気づかれた。ハロッドの顔が、まるでスローモーションのようにゆっくりとこちらを見る。

「な、なに……どう、したの?」

 母は、潤んだ瞳を背後のハロッドに向けた。やはり母の鼓膜は私の声を拾ってはいなかった。

 しかし、まさに絶望寸前だった。恥辱に塗れた母の姿をずっと覗き見ていたという罪、その事実をハロッドが晒せば、私は母をこれ以上ないくらい悲しませる事になるだろう、と。

 だが。

「……いいえ、何でもありませんよ奥様……では、挿れますよ。ヒップ振りのご奉仕、お忘れなきよう。それもこれも全て、『アーネストお坊ちゃま』のためですからな……」

 悪魔の笑みだった。ハロッドは確かに私の顔を見つめながら、これ以上ないほど冷たい微笑を浮かべていた。私の体は恐怖と混乱で、震えたまま見えない縄に緊縛された。

 そして、ハロッドは、私に視線を残したまま。

「ひ、いいいいい……っ!」

 明らかな変化は、広間中に響き渡った母の叫び声と、見えなくなったあの異形の肉柱。私の、目の前で、母に、ハロッドが侵入した瞬間だった。

「さあ、奥様の大好きな私のペニスが入りましたぞ……ほら、どうしたのです?おねだりをしなくてはいけませんよ……私をバーデマー卿だと思って、教えた通りの口上で、さあ……」

「あ、は……恥ずか、しいの……あ、ああっ!」

 弱々しい母の願いを、ハロッドは一度小腰を使う事で封じた。

「……これまで何度もして来た事でしょう?さあ、ノースミッド家の名誉や、アーネストお坊ちゃまを守るために、いい口上を、さあ……」

「ああ……っ」

 母の横顔が恥辱に紅く染まる様子を、私は瞳ではっきりと見た。私が何も知らずすやすやと寝ていた真夜中、母は何度この表情を強要されたのだろう?そしてハロッドは、どこまで母を堕とすつもりだったのだろう?




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