『牝奴隷は金髪美女』第二章 「DISGRACE〜恥辱」


<前回のあらすじ>
憧れの恩師、木戸に影響を受け、彼の祖国 日本へと留学を決めたアメリカ人少女 ジェーン。
しかし彼女は、その日本へと向かう飛行機の中で、恩師とは違う日本人の醜い一面を知る事になる。
人目も憚らず淫らな性交にうつつを抜かす中年男。その男に犯されながらもあらぬ嬌声を上げる美人スチュワーデス。
自分に目をつけたその中年男から逃れるため、空港に到着するなり迎えに来ていた男 飯塚にすがる。
しかし彼もまた、外面とは別の感情をジェーンに対して抱いた、一人の日本人だったのだ……。


「……イイヅカさん。ハシモト教授は、どんな人ですか?」

 ジェーンが、運転席のイイヅカに聞いた。

「うーん、そうねえ……マジメな人だよ。教授会の中じゃ結構地位もある方なんだけど、別にそれをひけらかしたりしないし。まあ、僕は尊敬しているな……」
「そうですか」

 飯塚の言葉に嘘はなかった。事実、橋本の研究は文学部では群を抜いていた。だからこそ飯塚は彼の研究室に入ったのだ。
 尊敬も、していた。しかし最近、尊敬以外の別の感情も発生していた。ある一面において、余裕がなさすぎるのだ。橋本教授の研究室には、飯塚とは別にもう一人研究員がいる。武藤敬子という女だ。年齢も飯塚と同じ二十四歳で、ルックスもかなりイケてる方だ。大学の研究室とはいえ、相手が女なら飯塚でなくともこ洒落た会話でもしてコミュニケーションを取ろうとするのは当然だ。しかし、そんな現場を見つけると橋本は烈火のごとく怒った。他のことは大概自由なのに、こと男女のちょっとした交流も許さないのだ。

「先生のいってた通りの人なんだ……」

 ジェーンがあらぬ所を向いてつぶやいた。空港での一件のショックは、おおかた抜けてしまったようだ。シャツに忍ばせた写真を、無意識のうちに握り締める。

「先生……あ、木戸教授のことだね。君の恩師の」
「先生のこと、知ってるんですか!」

 途端に瞳を輝かせ、ジェーンが言う。

「まあ、詳しく知ってる訳じゃないよ。僕が橋本教授の所に行く前に、木戸教授はアメリカに行ったからね。でも、よく橋本教授が話してくれるよ。『あいつは俺の最高のライバルであり、最高の親友だ』ってね」
「ああ……」

 ジェーンは、感嘆のため息を洩らした。『最高の親友』、これ以上の賛辞はあろうか。先生も同じことをいっていたような気がする。だからこそ、一刻も早くその橋本教授に会いたくなった。会って、自分の知らない先生の色々なことを教えて欲しかった。

「……イイヅカさん、ちょっと眠っていいですか?」

 ジェーンは飯塚の答えも聞かぬまま、ズボンのポケットからピルケースを取り出し、愛用の睡眠薬を一錠飲んだ。

「疲れたの?まあ、日本に着くなり痴漢騒ぎじゃ無理もないか。いいよ、寝てて。着いたら起こしてあげるよ」  

 ここでも飯塚はあくまで優しい日本人を演じる。

「大学まではもうちょっとかかるけど、今日は高速道路が結構空いてるし……あれ?」

 飯塚は驚いた。ジェーンは、助手席で軽い寝息を立てていた。急に安心したのか、あっさりと寝てしまったのだ。

「へっ、いい気なもんだ。ま、いいや。これから一ヶ月間、たっぷり日本を楽しむことになるさ……!」

 飯塚は、静かだが強い口調でつぶやいた。

 飯塚のロードスターは、大学の裏手に静かに到着した。ここから入れば、教授の研究室は近い。ジェーンは、相変わらず助手席で寝ている。

「しょうがないなあ……」

 誰もいないのに、飯塚はあたりに気を遣いながら独り言をいった。助手席のドアをゆっくりと開け、寝息を立てたままのジェーンの躰を抱え上げた。スースーと、子供のような寝息が、飯塚の首筋にかかる。

「おほうっ!」

 密着した肉体が、飯塚の感激を大きくする。ジェーンの躰を肩で抱くことで、その豊かに張った胸や肉のついた腰が、飯塚の全身を妖しく圧迫するのだ。このまま研究室まで、この快感を受け続けることを想像して、股間に巡る血液は圧力を増していく。
 自分より少し身長は高いようだ。そんなアメリカ人少女を、飯塚は文学部棟三階にある橋本教授の『近代英文学研究室』まで、必死になって運んで行った。

「……ふうっ!」

 ドアを、伸ばした手でゆっくりと開ける。見回してみても、誰の姿も見当たらない。予定通りだ。とりあえず、ジェーンの躰を来客用の高級なソファーに寝かせる。女の腕が、力なく下に下がる。胸のふくらみが、はっきりと目に飛び込んで来た。飯塚のペニスは、もう最高値まで勃起してしまっていた。ジンジンと、鈍い痛みが襲う。

「こりゃ、手早くヌイてしまわないと持たねえな……」

 飯塚は、ジッパーを下ろしてトランクスからいきり立った怒張を取り出した。シャツにスーツ姿なのに、そこだけ肉色の物体がいなないている様子は、飯塚自身にさえ滑稽に見えた。

「さーてジェーンちゃん。ボクのおへやに行きましょうね……」

 飯塚は再び力を振り絞ってジェーンをソファーから抱え上げると、研究室の奥にある扉を目指した。助手である飯塚がレポートを書いたり仮眠をとったりする部屋が、この向こうにあるのだ。ポコポコと、ペニスが抱き上げたジェーンのちょうどヒップのあたりをこする。亀頭が刺激されて、それだけでイキそうな気分になった。

「あ、は、はっ……」

 情けない声を出して飯塚が喘ぐ。自分の分身は一刻の猶予もないようだ。半開きのドアを腰で開けて、まっしぐらに自分用の仮眠ベッドにジェーンを横たえた。
 午前十一時の日差しが、粗末なベッドに横たわった美少女をまるで西洋美術の女神彫像のように照らし出す。そんな彫像に一つだけ不釣り合いな、地味なメガネをはずしてみる。そうすると、そこにエロスという薄衣をまとった、アメリカ人の女神が、飯塚の前に現出した。さすがに飯塚も、ゴクリと唾を呑み込んだ。 飯塚とて、このままジェーンをレイプしようとは思っていなかった。そんなことがもし橋本教授、さらには大学にバレてしまえば、自分の人生は無茶苦茶になってしまうのは明白だ。ただ、この素晴らしい女の躰を見ながらオナニーの一つでもできればよかった。
 睡眠薬がよほど効いているのか、ジェーンはまったく目を覚ます気配がない。飯塚は、ゆっくりと手を伸ばし、薄いイエローチェックのシャツを少し上体を浮かせて脱がせた。シャツを床に落とした飯塚は、そのまま巨乳が隠れた真っ白のTシャツに手をかける。そのままシャツと同じ要領で、ゆっくり脱がしていった。今度は美しいセミロングの金髪をまとった頭を通さなければいけないので、さすがに慎重になる。額にはうっすらと汗が滲んできた。

「……!」

 ブラウン色をした、レースの大きな二つの丘が、しがない大学院生の目に飛び込んで来た。白いTシャツを着ているので、ラインが目立たぬよう茶系のブラジャーを身に着けているのだろう。しかし、そんなことは飯塚には関係なかった。飯塚は今、中学時代親友の家で見た、洋モノのポルノビデオを思い出していた。確か、スケベな医者にレイプされる哀れな女学生が、今ジェーンが着けているようなブラウンのブラをしていた。あの女優はとても学生には見えなかったが、ジェーンはその熟れきった肉体以外は、十七歳の若々しく美しい女子高生に間違いなかった。今からその二つの丘の秘密を露わにする喜びで、飯塚は思わず全身が震えた。フロントホックに伸ばした指先も、心なし震えてしまう。
 パチンっ!と高い音を立てて、重い圧力から開放された豊かなバストがブラジャーからまろび出た。その瞬間しっかりとした張力を秘めたその胸は、まるでつくりたてのゼリーのようにぷるるんっと左右に心地よく揺れた。その頂点で恥ずかしげに息づいている乳首も、真っ白い肌がそこの部分だけほんの少し桜色に色づいた、まさしく少女の新鮮なピンクだった。

「うああ、ピンクだ、ピンクだ……!」

 小躍りしたい気持ちで、飯塚はジェーンのその双胸をジックリと眺めた。ジェーンがかすかな呼吸をするたび、そのDカップはあろう乳房は艶やかに上下する。その様子を見ていると、飯塚はもうガマンできなくなっていた。

「ああっ、俺はもうヤルぞ!」

 ジッパーから露出したままの怒張を、飯塚は右手で掴んだ。ジンジンと脈打っていて、その熱も体温より熱いような気がする。もう、ジェーンのジーンズを脱がしている余裕すらなかった。そのまますごい勢いでオナニーを開始する。

「う、うおっ!」

 いままで生きてきた中で、もっとも甘美なオナニーだった。横たわったジェーンはけして動いたりしない。指でシナを作ったり、淫靡な言葉で男を誘ったりはしない。しかし、それをおってあまりある魅力を、動かないジェーンは持っていた。
 そのまま自分のペニスをこすり続けていても、これまで感じたことのない快感を得ることができただろう。しかし、やはり美しいアメリカ人美少女を目の前に、飯塚はそれ以上の悪戯をしたくなってしまう。

「へっへっへ……イイコト思いついた!」

 飯塚は熱い分身を支え持ったまま、寝息を立てるジェーンにゆっくりと近づいた。そしておもむろに、あの美しく息づくピンク色の乳首に自分の陰茎の先端を接触させた。乳首の柔らかい感触が、敏感になった亀頭に電流のように伝わる。

「う、ほおおうっ!」

 いい気になった飯塚は、ペニスをその豊かな乳のあらゆる場所にこすりつけ始めた。乳頭をツンツンと突ついたかと思えば、次は乳輪に沿って男自身で円を描く。熱い幹で白い乳肉の弾力を測ったかと思うと、ぴっちりと張った乳房全体をそれこそ怒張全体で小突きまわしたりした。ジェーンの乳房を飯塚のペニスが這い回るたび、先端から漏れたカウパー液がいやらしげに糸引く。発射は時間の問題であったが、飯塚にはこの素晴らしき時間が永遠に続くのではないかと思った。

「ああっ、イキそうだよジェーン……俺、イキそうっ!」

 熱い樹液が導管を昇ってくるのを感じて、飯塚はもう狂ったように怒張をジェーンの肌に密着させた。乳房を離れ、へそに突っ込んでみたりした。そこで少しピストン運動してみると、なんだか本当にジェーンのヴァギナにペニスを突っ込んでいるような錯覚を覚えた。もうそこで射精してもいいと思った。

「ウ……ううんっ」

 突然ジェーンの唇が少し開いて、小さな吐息が洩れた。フィニッシュに向かって驀進していた飯塚の心臓は、その瞬間恐怖に縮み上がった。

「ううん……」

 目覚めるかと思われたジェーンは、また一つ吐息を吐いて眠りについた。小さく開いた紅い唇はそのままだ。全身に冷や汗をかいた飯塚は、静かに大きなため息をついた。こんな非常時でも、男の分身はオルガスムスを求めていなないている。飯塚は、そんな自分のぺニスを見て微笑み、動揺も消えていった。そうすると、やはり性欲がすぐに復活してくるのだ。

「もう、知らんもんね……へへっ」

 いきり立ったペニスを、飯塚はその少し開いているジェーンの唇にくっつけた。ジェーンの少し冷たい唇の感触が、熱い怒張を刺激する。もう、遠慮するつもりはなかった。このささやかな疑似フェラチオで、自分の精を放ってしまうつもりだった。

「つるんっ、ぺろんっ、と……へっへ、ジェーンもう俺イッちゃうよん……ああ、あっ」

 唇を連続でまくり返しながら、絶頂に接近して行く。喉を反らせて、唸りながら耐える。耐えながらも、イク。

「あ、あ、ああうっ……あ、あ、あ、でっ、出る!」

 飯塚が、間抜けな声を発して、イった。唇を中心に、首筋、胸、そしてへそのあたりまで、男のスペルマがまき散らされた。金髪美少女の全身に点々とついた自分の白い精液を見ていると、飯塚は最高の幸福を感じた。
 しばらくして、萎えた自分のペニスをズボンの中に押し込むと、飯塚はティッシュでジェーンの裸身に付着したスペルマを拭き取り始めた。一番多量に浴びせられたのは、やはり顔面だ。白濁液がべっとりとくっついた光景は、まさしくアダルトビデオのようだった。

「へへっ、でもこれは正真正銘俺の精液だもんね。こんな美人に、顔面シャワーしちゃったもんね……」

 顔をニヤニヤさせて、飯塚は一人ごちた。何枚もティッシュを使って、全身を拭いてゆく。そしてまた、あのあまりに魅力的なバストで手が止まる。あらかた精液を拭き取ったあと、飯塚は自分の顔をその息づく乳首に近づけた。ちょっと、匂ってみる。かすかに、精液特有の青臭い匂いがした。美女に自分の匂いをつけたという事実に、また性感がぶり返してくる。股間のペニスが、今放出したばかりなのにまた勃起してくる。

「おいおい、困ったな……」

 顔がまた崩れる。ジェーンはいまだ起きる気配がない。気持ちよさそうに寝息を立てている。 飯塚は無言のまま、自分の口でジェーンのピンクの乳首にキスをした。キスだけで満足する訳はなく、そのまま舌の愛撫へと変わる。わざと唾液をいっぱい出して、ぴちゃぴちゃと音を立ててその小さな突起を吸いたてる。やがて女の乳首は自然に、歓喜に固くしこってゆく。

(へへへっ、ジェーンが感じてる……ぐっすり眠ってるのに感じてやがる……)女の変化に、飯塚は歓喜して愛撫を続ける。
 ちゅぽんっ、とわざと大きな音を立てて、男はピンクの乳突起から口を離した。そしてじっと横たわったままの女の全身を眺める。美しく魅惑的な肉体を持ったこの美少女は、永遠に目覚めないように思えた。飯塚は決心した。このアメリカ人娘を犯す、と。こんなにしっかり眠っているのだ。レイプすべきだろう。教授がなんだ。大学がどうした。これからの人生なんて、今この素晴らしい肉体をこころゆくまで味わうことに比べれば、ほんの些細なことだ。飯塚は、ゆっくりとジェーンに近づき、この少女を完全な全裸にしようとジーンズのベルトに手をかけた。

 その瞬間飯塚の耳に、まさに地獄の音ともいうべき足音が聞こえた。この階の廊下を、誰かが歩いてくる。それが誰であるか、飯塚にはすぐに分かった。同じ研究室の武藤敬子だ。彼女がいつも大学で愛用している赤いハイヒールの音が、まさしくこの研究室に向かって来ていた。あと数秒で、間違いなく隣の部屋のドアを開けるだろう。
 飯塚の全身から汗がどっと噴き出した。急いでジェーンの裸に衣服を着けようとする。はずす時あんなに簡単だったブラウンのDカップブラが、なかなか止まらない。やっとブラジャーが済めば、今度はぴっちりとしたTシャツだ。脱がす時のようにゆっくりしていられない。少々乱暴に金髪の頭を通した。今武藤敬子にこの部屋に入ってこられれば、まさしく身の破滅だ。また、今ジェーンに目覚められても同様だ。
 隣室のドアが開いた音がした。足音はそこで立ち止まった。カギがかかっていないことをいぶかしんでいるのだろう。きっと飯塚がいるのだと思って、確認するためにこの仮眠室を覗くだろう。そうされたら間に合わない。飯塚はまだ、Tシャツさえ着せ終わっていないのだ。

「……!」

 飯塚は、絶望した。おそらくすぐに目の前のドアが開いて、敬子がこの光景を目にするだろう。そして、ジェーンを見て……。

「ふーん……」

 事態は、飯塚にとっての最悪の結果を回避したようだった。敬子は開いたままの研究室のドアに自分でカギをかけた。そのまま来客用のソファーに、ゆっくりと腰を下ろしたようだった。

「……ふう」

 敬子の、息をつく声が聞こえた。飯塚は今のうちにと、急いで残りのイエローシャツをジェーンに羽織らせた。とりあえず、ジェーンの姿は元のままになった。これで、たとえ今から敬子がここに入ってきたとしてもなんとか言い訳ができるだろう。 安心してみると、飯塚は少し疑問に思った。飯塚と武藤敬子、橋本教授の二人の助手は、今日は基本的に休日だった。飯塚は教授に頼まれてジェーンを羽田までしかたなく迎えにいったが、武藤敬子は休日にわざわざ大学の研究室に来るような真面目な女ではない。大学には『男を漁りに来ている』と自ら公言するような女だ。この研究室に入ったのも、『大学時代、有名な橋本教授の元で勉強したっていったら、あとでイイ男がいい寄ってくるでしょ?』と、飯塚に語っていたほどだ。
(敬子、なにしに来たんだ?)飯塚は気になって、ドアの鍵穴から研究室をそっと覗く。
 赤いハイヒールを履いた長い脚を組んで、敬子はソファーに腰かけていた。何をするでもなく、ボーっと虚空を眺めている。時折口から少し舌を出し、唇を舐める。男子学生が歓喜する、敬子の癖だ。武藤敬子という女は、生まれながらに男を惹きつける媚びのようなモノを持ち合わせている。
 長く黒く艶やかな髪、憂いを帯びた瞳、ツンと上向きな魅力のあるバスト、くびれたウエスト、形のよい尻、スラリと伸びた脚。黙っていれば『良家のお嬢さま』のような容姿なのだが、武藤敬子は自分が『男を誘っている』ことをしっかりと主張する。ローズレッドの口紅、黒や真紅の下着、ガーターベルト、そしてトレードマークの赤いハイヒール。彼女が校内を歩けば、ほとんどの男たちが振り向く。そして、たった一度の夜の交歓を経験して捨てられて行く。セックスの悦びを知っている敬子は、一人の男に縛られたりしない。気ままに、大勢の男たちの間をすり抜け自分の快楽のみをむさぼっていた。
 しかし、そんな敬子と飯塚は一度もセックスをしていない。お互い求めない。同じ研究生ということもあるが、敬子は飯塚をセックスの対象としていないようだった。飯塚にとっては一度お願いしたい所でもあるし、おそらくそうすれば敬子は躰をつなげてくれるだろう。しかし飯塚もなぜか積極的にその気持ちになれなかった。敬子は飯塚には包み隠すことなく他の男との秘密も話してくれる。気がねしないのだ。そんな奇妙な親友関係を、飯塚も敬子もセックスで壊したくなかったのだ。
 鍵穴の向こうの敬子に変化が表れたのは、そのすぐあとだった。ソファーから立ち上がり、窓の方に躰を向ける。飯塚からは、グレーのスーツをまとった後ろ姿になった。そして次の瞬間、敬子はおもむろにスーツのボタンをはずし始めた。三つのボタンをはずすと、スーツの上着をスルっと脱いだ。続けて白のブラウスシャツもボタンをはずし、それもすぐに脱ぎ、ソファーの上に放った。
(おいおい、何をする気だ……)思いながら飯塚は、そのあとの光景を期待して股間を熱くさせる。
 予想通り、敬子は真っ赤なブラジャーをしていた。けして大きくないサイズだが、本人が自慢する通り、スーパーモデルのように形のよいオッパイだということがブラジャーを着けていても分かる。

「はあっ……」

 扇情的な吐息を窓に向かって一つつくと、敬子はさらに衣服をはずし続ける。今度は、スカートに手をかけた。ベルトを抜き取ると、抵抗もなくスカートは足元に落ちた。

「……!」

 ブラと同じブランドのパンティーであろうか。目に焼きつくような真っ赤のショーツがそこに存在した。豊満なヒップのラインに沿って、そのレース生地のパンティーは敬子の下腹部を覆っていた。この薄さなら、前に回れば、黒い繊毛に縁取られた秘丘を目の当たりにすることができるだろう。そのパンティーの下部からガーターベルトが太ももを這い、高級そうなストッキングを吊り上げている。敬子はまるで、娼婦のような妖しい美しさを発散していた。

「は、あっ……」

 自分の躰を窓ガラスに映して、敬子はまた淫らなため息を洩らす。おそらく外からその窓を覗けば、敬子のその淫らな姿を見ることができるだろう。あくまで大胆に、敬子は自分の姿に酔いながら、躰をくねらせた。
 やがて敬子は振り返り、先ほど座っていたソファーに再び座った。飯塚は見えた。やはり、黒々と茂ったヘアが。いきり立ったペニスに、さらに大量の血液が流れ込む。
 敬子は座ったまま、右腕をまっすぐ前に伸ばした。指先を少しくねらせて、やがてその腕はゆっくりと赤いパンティーに下りていった。
(オナニーする気だ!敬子は、ここで、オナニーする気なんだ……!)飯塚は歓喜した。今日はなんてツイている日だろうか。先ほどジェーンの恐ろしいまでに美しいヌードで一発放出したばかりだ。今度は淫靡この上ない敬子のオナニーシーンを覗くことができるのだ。 飯塚はすぐに二発目の放出を果たそうと、ジッパーから勃起したペニスを取り出した。

「は、あうん……」

 敬子はその細い指を薄布の上から這わせて、性器をやんわりと刺激している。指が少しずつ動くたびに、小さな吐息がローズレッドの唇から静かに洩れる。

「あ、はっ、ふうっ」

 少し声が高くなった。クリトリスにでも指がたどり着いたのだろう。指の動きも少しだけ激しくなったようだ。

「ふうっ……ふう、ん、あはっ!」

 やはり、敏感な小突起を愛撫しているようだ。声は廊下に洩れるのではないかと飯塚が心配になるくらい甲高くなる。敬子と一夜を共にした男にいつか『敬子は最高に感度がイイ』と聞いたことがあるが、それはウソではないようだった。聞いているこっちがおかしくなりそうな喘ぎ声を、敬子は上げ始めていた。

「あ、はっ……うんっ、ああ、イイよぉ……!」

 生地の上からの愛撫に飽き足らなくなったのか、敬子はついに指をパンティーに滑りこませた。いかに敬子が感じやすいか、飯塚は指がまさぐる場所から洩れ出す音で分かった。
 クチュクチュと愛液の音が、本当にいやらしい感じで研究室にこだまする。
 その時、また人の足音が飯塚の耳に入ってきた。誰かが部屋の前の廊下を歩いているのだ。奥まった仮眠室にいる飯塚に聞こえているのだから、敬子に聞こえていないはずがない。しかし、敬子は足音を気にする訳でもなくさらに指の愛撫を続けている。足音は、どんどん近づいてくる。飯塚は自分の分身を必死に擦りながらも、敬子のことが気が気でなかった。

「入るよ」

 ドアの前で声がした。飯塚は仰天した。橋本教授の声だ。続いてカギを開ける音がする。気づいていないのか、いまだ敬子の指淫行為は止まない。飯塚は、最悪の状況を想像した。

「……」

 ドアを開いた橋本と、指を淫裂に這わせ続けている敬子の目が合った。鍵穴から覗く飯塚には、無表情で静止した教授とソファーに深く寝そべった淫乱女学生の姿がはっきりと見えた。

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