『牝奴隷は金髪美女』第四章 「DESPAIR〜絶望」


<前回のあらすじ>
留学初日から、日本人の性の奔放さをまざまざと見せつけられた、アメリカ人少女 ジェーン十七歳。
優しげな様子に騙され信頼している大学研究生 飯塚にも、眠っている間に裸に剥かれ自慰の標的にされ、
さらに尊敬している師 木戸教授の親友 橋本と、女学生 敬子とのあまりに淫猥なセックスを覗き見ることになる。
日本人の性道徳を疑い失望するジェーンに、今度は自身の処女喪失危機が迫る。ジェーンを狙うのは、飯塚。


 シャーッと、シャワーの音がバスルームから聞こえる。ジェーンは、飯塚に勧められて風呂に入っている。なんの疑いもなく。すりガラスの向こうに映るジェーンの豊かな裸身を廊下から眺めながら、飯塚はニヤニヤしていた。まだはやい。シャワーを浴びているうちはなにもできない。飯塚はタイミングを計っていた。一番いい瞬間を、しっかりと見極めていた。

「アア……」  

 シャワーのおかげで、少しモヤモヤがとれたのだろう。時にハミングも聞こえてくる。そして、キュッという音と共にシャワーが止まった。ジェーンは風呂場を見回しているようだ。

「イイヅカさん、体はどうやって洗うんですか?」  

 飯塚が居間にいると思っているジェーンは、少し大きな声で尋ねる。

「そこにソープがあるだろう?使いかたはアメリカといっしょだと思うよ」
「ああ……そうですね、ちょっと慣れなくて……」  

 ジェーンは可愛い声で応える。狭いバスルームで、必死に泡を立てているようだ。いよいよだ。いよいよその瞬間が近づいている。飯塚は、すでに全裸だった。股間のモノはしっかりと勃起している。あとは、ジェーンが躰を洗い始めるのを待つだけだ。  
 ジェーンがこちらに背を向けて、スポンジを持ったまましゃがんだ。今だ!飯塚は全裸の体を躍らせて、バスルームのドアを開けた。

「やあジェーン、背中を流してあげよう!」  

 無理矢理張った声で、ジェーンに声をかけた。前など隠すつもりはまったくない。いきり立ったペニスは声に振り返ったジェーンの目の前でいなないている。

「……!」  

 飯塚のふいの攻撃に、ジェーンは驚愕していた。口をポカンと開けたまま、全裸の飯塚を見上げている。躰は緊張のせいか、小刻みに震えていた。

「イ、ア……」  

 口が回らない様子で、ジェーンが飯塚を見つめる。大声で叫びたいようだ。飯塚はその様子を察して、素早くしゃがんでジェーンの口に指を当てた。

「……ジェーン、そんなにビックリしないの。日本人はね、お客さんが来ると一緒にお風呂に入って、背中を洗い合うのがならわしなの。『裸のつきあい』っていうのは最高のもてなしでね……だから、そんなにビックリされると、もてなす側の僕が困っちゃう訳で……」   

 飯塚の必死の説得が実ったか、ジェーンは口をつぐんで小さくうなずいた。そのまま無言で顔をバスタブの方に向ける。まだ、躰の小さな震えは止まらない。真っ白な裸身が、少しずつ紅潮していくのが、後ろから見ている飯塚にも分かった。ジェーンは必死に恥ずかしい部分を隠そうと、豊かな胸には左手を、女の秘所には右手をあてがっている。
(ヘヘヘッ、可愛い可愛い……女の子はこうでなくっちゃ。さあ、これからだ。これからうまくやればジェーンちゃんの……ウヘヘッ)心に巻き起こる淫らな感情を押し殺しながら、飯塚はジェーンの裸の背中に近寄る。そして、スポンジがないのに気がつく。探してみれば、なんとジェーンの股間にあてがわれた右手に、しっかりと握られていた。

「おいおい、スポンジがないと洗えないよ……」  

 そういいながら飯塚は手を伸ばしジェーンの右手を握った。

「No……!」  

 ビクッと躰を震わせて、ジェーンは目を閉じた。羞恥のあまり、耳は真っ赤に染まっている。

「イイヅカさん、渡しますから……渡しますから手を、離してください……」  

 ジェーンは弱々しい声で飯塚に哀願した。

「……分かったよ。はやく、それを渡して」  

 飯塚がじっと凝視する中で、ジェーンは右手に握ったスポンジを男に渡した。その瞬間、わずかにジェーンの若い草むらが露わになったのを、飯塚は見逃さなかった。ジェーンの陰部に生えたヘアは、美しい金髪と同じように金色に輝いていた。考えれば当たり前のことだが、飯塚にはひそかな感動だった。

「……さて、それじゃあ背中、流すよ」  

 たった今まで美少女の股間にあてがわれていたスポンジを握り、飯塚はジェーンの裸身に泡をまぶし始めた。ジェーンの肌は緊張と羞恥心に支配され、いまだこわばったままだ。しかし飯塚の手先は、それにかまうことなく背中を這い回った。もちろん、これで終わらせるつもりもなかった。背中を中心に洗っていた飯塚の手はゆっくりと、しかし意志を持って下の方へと向かっていた。そこには、あのボリュームを持った美しいヒップがある。

「……」  

 飯塚の手がヒップを撫でると、ジェーンはさらに固く瞳を閉じた。沸き上がってくる嫌悪感と戦っているのだ。きっとイイヅカさんは好意でやってくれているに違いない。私が嫌がってしまったら、イイヅカさんは気を悪くするに決まっている。彼は私が日本に来てから、ずっと親切にしてくれた。きっと悪い人じゃないはずだ……。飯塚の本心にはいまだ気づかず、ジェーンは飯塚の言う『もてなし』に必死に耐えていた。   
 対する飯塚は、ジェーンが声を立てぬことをいいことに、たっぷりとジェーンの尻感触を味わっていた。ぷるるんっとした素肌に石鹸の泡を塗りつけて、十七歳アメリカ人美少女のセクシーな肉体をさらに扇情的な姿にしてゆく。

「綺麗な肌だね、ジェーン」
「……あ、あ、ありがとう、ございます……」
「背中も綺麗だし、お尻も綺麗……こんな美しい女の子は、日本にはもういないよ」
「そ、そうなんですか……」
「そうだよ……ジェーンみたいに素直で、可愛い子はいない……」  


 飯塚の怒張は、完全にいきり立って来た。心臓はもうバクバクいっている。限界だ。本能のままに、飯塚はスポンジを持った手をジェーンの前部に持っていった。あの豊かに張った胸を洗う、いや揉むためだ。

「ノ、No!前は、前は自分で洗います……!」
「いや、ダメだ。前も僕に洗わせてくれ、な?」
「No!ダメですっ!」  

 ジェーンはさすがに躰をよじらせて必死に抵抗する。飯塚も必死に胸にあてがわれたジェーンの腕を払おうと力を込める。

「ダメっ!Noっ!イイヅカさん、No……!」  

 抵抗は激しい。これ以上こだわると、ジェーンに本心が気づかれてしまう。飯塚は、腕に込めた力を抜いた。ジェーンも、警戒を少し解いた。

「……ごめんジェーン。僕が悪かった。泡、流してあげるよ」  

 飯塚が力ない声で立ち上がり、洗面器で湯をすくってジェーンにかけた。

「ホントに、ゴメン……」
「……私のほうこそ、すいません。イイヅカさんがせっかく好意でしてくださってたのに……」
「いや、もういいんだ。もういいよ。僕は外に出るから、ジェーンはゆっくり湯船につかって疲れをとってよ……」
「……はい、ありがとうございます……」  

 やはり、気分を悪くしてしまったようだ。ジェーンは飯塚に申し訳ない気持ちがした。しょうがなく飯塚のいった通り、湯船につかろうと腰を浮かせた。飯塚がその姿を無防備な姿を狙っていることも知らずに。
(今だ!)飯塚はバスタブのへりに手をついたジェーンの尻に飛びついた。そしてしっかりと腰を掴み、自分の方に引きつける。

「……イイヅカさんっ!」
「ゴメンジェーン……俺もうガマンできなくなっちゃった」  

 飯塚はにやけた顔でいった。ついに、ついにジェーンをモノにできる。その感動が飯塚を奮い立たせた。しっかりと淫裂に狙いをつけて、自分のペニスを押し当てる。

「イヤっ、イイヅカさん、イヤーっ!」  

 ジェーンがありったけの声で叫ぶ。その声が、バスルームに空しく響いた。

「ダメだよジェーン……もう入れなきゃもたないからね……」  

 自分勝手な理屈で、飯塚は腰にさらなる力を込めた。先端が、ジェーンの狭く熱い処女肉にめりこむ。

「ああっ、いや……っ!」  

 すさまじい痛みが、ジェーンを襲う。逃げようとしても、前はバスタブに押しつけられており、腰はしっかりと強い力で掴まれている。ジェーンはただ、空しい叫びを上げるしかなかった。

「うわあ……入っていくよ、ジェーン。ああっ、イイよお……」
「痛い……ノ、No……!い、た、ああうっ」  

 飯塚の歓喜の声と、ジェーンの叫びが交差する。痛みは飯塚のモノが入って来るほど、鋭く大きくなってゆく。こんな痛みは初めてだ。ジェーンは屈辱と苦痛に耐えながら、歯を食いしばった。

「ああ……入った。僕のチ○ポが入ったよ……ジェーン、どうだい?」
「ああっ、Painful……痛い、だけです……」  

 ジェーンの非難にもかまわず、飯塚はアメリカ人処女の膣内の感触を味わっていた。内部はとても熱く、そして狭い。しかし、持ち主であるジェーンの意志とは関係なく、その粘膜は飯塚の兇器をしっかりと締めつけてゆく。

「おわあ、ジェ、ジェーンそんなに締めつけないでくれよ……すぐに出ちゃうよ……!」
「私、なにも……なにもしてません……ああっ、抜いて……」
「ダメ、抜けないよ……これから気持ちよくなるんだから」  

 飯塚はついに腰を躍動させ始めた。少し後退させた怒張には、ジェーンの処女血がうっすらと付着していた。

「Ah……!ああっ痛い、イイヅカさん、痛い……っ!」  

 ジェーンの悲痛な叫びが続く。しかし、快感をもっと得たい飯塚には、馬の耳に念仏だった。かまわず腰を繰り出す。

「ジェーン、イイよお……君のオ○ンコすごくイイっ……!」  

 飯塚は感激の真ん中にいた。今味わっている女の肉体は、今まで経験してきたセックスと比べものにならないほど甘美だった。自分の分身をしっかりと締めつけ、熱く包み込む。このままピストン運動していれば、すぐに射精してしまいそうだ。飯塚は攻撃の的を変えた。腰の動きを一時止め、もう抵抗をやめたジェーンのバストに手を伸ばす。

「うあ……!」  

 ジェーンが小さなうめきを上げた。躰の中にはまだあの痛みの元が埋まっている。腰の動きが止まって少し、ほんの少し痛みはやわらいだが、今度は胸に対する飯塚の攻撃にさらなる嫌悪感が襲った。飯塚の手は気にするでもなくジェーンの豊満なバストを力を込めて揉み始めた。

「ウヘヘッ、思った通りスゴイおっぱいだ……ジェーンすごいよ」  

 湯にしっとりと濡れた豊かなバストは、男の手に吸いついてくるようだ。大きいだけでなくしっかりと張りがある。大学の仮眠室でペニスによって感じた甘美な感触はさらに現実的になって飯塚を感激させていた。

「あうう……嫌ぁ、やめ、やめてください、イイヅカさ、ん……」
「やめるもんか、こんなに気持ちいいおっぱいは初めてだからね……」  

 ジェーンの花芯にペニスを収めたまま、飯塚は両手で思う存分豊胸をむさぼった。激しく揉みしだくたび、たぷんたぷんとまるで音がするかのようにそのバストは淫らに揺れる。表現しようのないその感触が、飯塚の分身にさらなる力をみなぎらせた。  
 ジェーンも、胸を揉まれ続ける状態にある違和感を感じ始めていた。男に抱かれる嫌悪感はまだ大きくある。しかし、躰の奥底からえもいわれぬ感情が湧きあがってくるのに気がついたからだ。嫌悪でも、羞恥でも、ましてや痛みでもないその恐ろしい感情は、自分でも抑えようのないものだった。

「うはあっ,No……!こんなの、こんなの嫌ぁ……っ!」  

 いまだ、ジェーンはその感情の正体に気づいていなかった。どうしようもなく抑え切れないその感情は、揉まれている胸や男のモノがおさまっているヴァギナがら集中的に湧いてくる。

「ああ、もうたまらん。ジェーン、また動くよ……」  

 飯塚は再び腰の躍動を開始した。猛ったペニスをものすごい勢いで前後させる。ジェーンの痛みはまた増した。しかしあの感情は消えない。消えないどころかさらに躰全体に広がってゆく。痺れのような、電流のような感じにジェーン自身も戸惑っていたのだ。

 「あ、はうう……ひ、はAnn……む、ふう」  

 ジェーンのうめきから、苦痛や非難の声が消えた。無意識の間にだ。それと共に、淫裂から淫らな音が発生していた。汚らしい男によって無理矢理押し広げられた処女肉でさえ、それを迎え入れるために熱い淫汁がしたたってきたのである。

「あうんっ、あ、おっ……Ann、Oh……っ!」
「ああ、ジェーン、ジェーン……ああっ、イイっ!」  

 男女の鳴咽がバスルームに響く。ジェーンの感じていた違和感は、今や痛みさえも覆い隠そうとしていた。信じたくない。信じたくないが、ジェーンの官能的な肉体は飯塚のペニスによって、『快感』という本能を与えていたのだ。  
 飯塚のほうももう限界が近かった。ジェーンの蜜壷は本人の意思に関係なく粘膜を収縮させ、飯塚のペニスを包み込んでいた。女の本能は男の精を搾りとるようにできているかのような自然な動きだった。

「あくうっ、ジェーン……俺イク、イクうっ」
「Ha……はあうんっ、お、Ohh……Ohh……っ!」  

 何かが、ジェーンの躰に襲いかかって来た。全身が震える。痛みが、どこかにいってしまったことを実感する。そして、淫裂を中心に躰が蕩けるような感覚に襲われる。

「あうう、くうっ……イ、イク……っ!」
「Ah……何か、何か……あうっ、Coming……あふう、来るっ!」  

 飯塚が、ジェーンの体内に熱い樹液を大量にぶちまけた。その瞬間、ジェーンの頭の中で何かがはじけた。そして大きな波にさらわれるように、意識が遠のいていった。


「……アメリカでは、コレのことをなんて言うの?」  

 目の前に、ペニスが差し出された。見つめるジェーンの瞳はうつろだ。たった今起こった現実を、悪夢と思い込もうとしているようだった。夢と思えば、なにも問題はない。たとえ男がまだ全裸のままで、そして手にビデオカメラを構えていようと、夢は夢なのだから。

「……ディック、それからコック……まだまだ、いろいろ」
「ふーん、勉強になるな。じゃあ、そのコックを口に咥えることはなんて言うの?」
「みんなが言うのはフェラチオ……地方によって、スラングはいっぱいある……」
「へえ、そうなんだ。じゃあジェーン、今までフェラチオしたことある?」  

 ジェーンは、少し考えて小さくうなずいた。瞳はまだうつろなままだ。

「え、あるの?バージンだったのに、フェラはやったことがあるんだ?」
「……ジュニアハイスクールの時のボーイフレンドに、映画館で……キスもまだなのに、無理矢理……途中で恐くなって、逃げた……」
「なるほど……じゃあ、今ならできる?僕のディックはもう準備OKなんだけど」  

 唇に触れるほどの距離に、男のペニスが差し出された。ジェーンは躊躇する。

「……恐い」
「恐くなんてないさ。たった今まで、君のオ○ンコに入っていたんだから……」  

 夢だ。恐くなんてない。

「舐めて、みる……」  

 ジェーンはそう言って目の前のモノの先端にチュッとくちづけた。瞬間、そのモノが痙攣する。

「そう、それでいいんだ。じゃあもう少し勇気を出してみようよ。舌を使ったり、唇全体を使ったり、ね」  

 ジェーンはうなずいて、そのペニスに舌を絡めた。そのたびにペニスは反応してピクピクと動く。オモチャを与えられた少女のように、ジェーンは面白がって舌を這いまわさせた。

「ああっ、うまいよジェーン……今度はソレをしっかり口に咥えるんだ……」  

 男に言われるがままにジェーンは舌の愛撫をやめ、いなないているモノを唇にくわえ込んだ。ちょっと苦しかったが、それ以上に男の反応が面白かった。咥えただけで、女のような声を出す。

「おあっ……うまい、うまいよジェーン。ああうっ、はあ」  

 面白がって、さらに動きを激しくする。口の中でペニスに舌を絡めたり、首のスライドを早くしたり。

「ああっ、もうイキそうだ!ちょっと待ってジェーン……」  

 男が急に口からペニスを引き抜いた。

「あふんっ……コックが……」  

 オモチャが遠のいてしまった。名残惜しそうにジェーンが見上げる。

「イキそうになっちゃった……ジェーンがあんまりうまいから。さあ、また入れるよ……」  

 男の影が自分にのしかかってくる。その時初めて、ジェーンは自分がオールヌードで、さらにベッドの上にいることに気がついた。しかし、それも夢の中の出来事にすぎないのだ。
(まだ私は、きっと日本行きの飛行機の上にいるんだ……睡眠薬で眠ってしまって、躰もちょっと疲れてたから、こんな夢を見てるんだわ……明日になったら、きっと覚めてる……)再びヴァギナにペニスの感触を感じても、ジェーンの意識は夢の中でさまよっていた。  


 飯塚のロードスターは、橋本教授の待つ大学に向かっていた。助手席には、ジェーンが座っている。アパートを出発してから、ずっとうつむいたままだ。

「どうしたのジェーン。今日は、元気がないみたいだけど」  

 許せない男が、声をかけてくる。この男は昨日からずっと、自分をレイプし続けた。シャワーを浴びることを許されたのは、明け方だったのだ。

「……アメリカに、帰りたい」  

 ジェーンがつぶやく。

「おいおい、まだ日本に来て一日だよ。なんにも日本の事勉強してないでしょ?」
「そんなことどうでもいい……私を、アメリカに帰して……」
「ジェーンって意外とわがままなんだね。そんなことじゃ木戸教授が悲しむよ?」  

 飯塚はそう言ってダッシュボードから一本のビデオテープを取り出した。それがなんであるか、ジェーンには痛いほど分かっていた。飯塚はビデオカメラを使って、ジェーンの痴態をずっと撮影していた。朝起きてからずっと、飯塚はそのテープをジェーンの前にチラつかせている。

「僕はねジェーン。君がこっちにいる間、ビデオカメラでしっかり観察することにしたんだ。君の態度があんまりよくなかったら、このテープはすぐに木戸教授の所に届く。僕の詳しい報告書をつけてね。で、これが昨日の分。親切だろ、僕って……」  

 飯塚は笑ってジェーンに言った。ジェーンは逆らうことができなかった。自分の恥ずかしい姿が誰に見られるより、愛しい先生に見られるのが一番苦痛なのだ。

「……分かってくれたようだね。じゃあ今日はこれから橋本教授にあいさつして、用が済んだらすぐに出かけようか。いろいろ僕が連れていってあげるよ。時間はたっぷりある……」  

 今日もまた、この男に弄ばれるのか。ジェーンは、死にたい気持ちを噛みしめながら助手席に静かに座っているしかなかった。


「橋本教授、いらっしゃいますか?」    

 飯塚は研究室のドアをノックする。反応はない。

「あれえ?確か今朝電話した時『午前中は研究室にいる』って言ってたんだけどなあ……」  

 ドアノブに手をかける。ガチャリとドアは開いた。カギがかかっていなかったようだ。

「誰かいるのか……ジェーン、こっち来て」  

 飯塚はジェーンを従えて研究室に入った。人のいる気配はない。

「珍しいな、教授がカギをかけ忘れるなんて……いったいどこ行ったんだろ?」
「……教授は急な用事が入って自宅に帰ったわよ。今度の学会に使う資料を先方が欲しがってるんだって」  

 不意の声に飯塚とジェーンは振り向いた。仮眠室から、敬子が顔を覗かせていた。

「なんだ敬子、いたのか。いるんだったら返事くらいしろよ、バカ」
「あら、そんな強気に出ていいの?学会の資料担当はどなたでしたっけ?」
「……あ!」
「あなたが外部に漏れるとまずいんで、教授から預かった資料をパソコンに打ち込んだんでしょ?教授あんまり慌てるもんだからそのことも忘れて家に帰っちゃったわよ」
「うわあ、最悪……」    

 飯塚は顔を青くする。

「あの様子だとそのまま書類をFAXか何かで送っちゃうわよ。そんないらない手間をかけさせたくなかったら、ハイ、教授の家に直行!」
 
 敬子の声が弾んでいる。状況を楽しんでいるようだ。

「……で、でもなあ、ジェーンもいることだし、困ったなあ……」  

 飯塚はジェーンを振り返り、思案し始めた。

「あ、その件については心配しないで。教授に言われて『飯塚くんと留学生が来たらキミが学校の中か何かを案内してあげなさい』って頼まれてるの」
「ありゃあ……」  

 今日一日の予定がすべて狂ってしまった。ジェーンを一日中むさぼり尽くすつもりのはずが、橋本の家で学会の準備するハメに陥った。飯塚はしかたない様子で仮眠室からノートパソコンを持ってきた。顔には明らかに不満の表情が浮かんでいる。

「じゃあ行ってくるから……敬子、ジェーンよろしくな」
「心配しないで、早く行ってらっしゃい」
「ジェーン、午後には帰ってくるからそれまで待っててね」  

 ジェーンは、無言でうなずいた。そんな二人の様子を、敬子は意味ありげに微笑みながら見ていた。

「……さて、今からどうしよっか?」  

 飯塚の車が走り去った音を聞いたあと、敬子がジェーンに聞いてきた。

「……え、学校の中を案内してくれるんじゃないんですか?」
「あははっ、そんなのウソッパチ。教授にはなんにも言われてないのよ。あんなことあいつに言ったのは、アイツからあなたを引き離すため」  

 敬子は余裕ある笑顔でジェーンに笑いかけた。昨日この部屋で淫らな喘ぎ声を上げていた女と同一人物とは思えない素直な笑顔だ。

「……ねえ、もしかしてもうアイツにヤラれちゃった?」  

 突然に尋ねられて、ジェーンは考える余地を与えられる間もなく言葉を発してしまった。

「……Yes」
「あーあ、やっぱりね……アイツあなたみたいな躰の女に弱いんだから。……もしかして、レイプ?」  

 今度の問いにはジェーンは無言だ。レイプという言葉に、昨夜の悪夢が再び蘇ってきた。やがて少しの間の後、小さくうなずいた。

「……最低ね。日本人の恥だわ。女をなんだと思っているのかしら」  

 怒りに満ちた表情で敬子はドアに向かった。そしてドアを背にして言う。

「ねえジェーン、これから女同士、男のことについて語り合ってみない?あなたにはちょっとつらいことかも知れないけど、私ちょっとでもあなたの力になりたいの」  

 敬子は口を動かしながら、後ろ手でドアのカギを、音を立てぬようにかけた。ジェーンには、気づかれていないようだ。

「……ありがとう、ケイコさん。私あなたのこと誤解していたみたいです」  

 ジェーンの表情には、安堵の表情が浮かんでいた。

「いいのよ。さ、とりあえずお茶でも入れましょうか。いい紅茶があるの」  

 敬子は、ニコニコしながら仮眠室に向かった。カップやポットを用意する音がジェーンにも聞こえる。
(ケイコさんって、とても優しそうだ。……そうよ、別にセックス自体が悪いことじゃないわ。彼女がハシモト教授とセックスしていたって、それ自体はなにも問題はないわ。悪いのは、無理矢理女性の躰を奪うあの男のような……)

「ジェーン、お茶が入ったわよ。さあ、飲んでみて……」
「ありがとう、ございます」  

 高級そうな香りに美しいレッドの色。その紅茶の温かさはジェーンの心にまで染み渡るようだった。

「どう?」
「あ、ハイ。おいしいです」
「フフッ、本当?よかった……」  

 敬子の笑顔につられて、ジェーンは紅茶をまた一口、二口と飲んでゆく。

「気にいってもらったようね……」
「はい!とってもおいしいです。敬子さ、あ、あれ……?」  

 真正面に座っている敬子の姿が揺らいだ。視界全体がジワジワと波打つように狭くなってゆく。

「な、何、これ……」
「どうしたの、ジェーン……?」  

 すでに敬子の姿はあやふやだ。躰中電流のような痺れが襲い、力がだんだん抜けていくのが分かる。

「ケイコさん……助けて。躰に、力が入らないんです……!」  

 ジェーンの悲痛な叫びに、敬子は異常なほど冷静な声で答えた。

「……そう。じゃああなたの睡眠薬が効いてきたのよ」
「え……?」
「昨日あなた、ここに自分の睡眠薬を忘れていったのよ。だから今の紅茶に、それを混ぜてみたの。ふーん、そんなにすぐ効くんだ。それとも入れすぎちゃったかしら……」
「う、そ……」  

 敬子の冷たい声も、自分の声さえも遠くに聞こえる。やがて襲ってきた漆黒の闇の中に、ジェーンは堕ちるしかなかった。

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