＜30＞

意識した瞬間に射精感が急に来ちゃったから、もう正直カッコを変えるという選択肢はナシになっちゃって。
……3回目は、自分でもよく分からん。時間が時間だしちょっと怖い。時計見れないけど多分、5時過ぎ。
旅行でリズムが狂っちゃってるから、父さんとか文哉が起きてきてもおかしくない。うーわ、色々怖ーい。
……したい感じのシチュエーションとか、無くはなかったんだけど。初めてからの展開が慌てちゃって。
まあこれは次に・・・いや、今は次の事とか考えるのはアレだよな。集中、集中ー。

なるようにしか、ならないし。大好きな母さんの中で、ちゃんと、出したい。気持ちよく。

「母、さん」
「……な、何ッ？もう、好きはやめたの？……和樹って、やっぱ……う、ンンッ！」
「母、さんッ」

あ。逃げられた。俺の新たな攻撃「突然顔急接近」ー。
まあ、嫌で顔背けられた感じじゃなかった。キスされるかと思って、不意打ち恥ずかしい！って感じ。
俺も、キスが目的じゃなかったし。なんとなくだけど、やりたい事は定まったし。
母さんの、暑い季節でもないのに軽い汗の匂いがする首の下に、両手を回して。
鼻先をその首筋に密着させて。すりすり、すーりすり。すぐそばに、大好きな母さんがいる、感。
手を回しちゃったから、体全体が密着してる。おっぱいも、おなかも、両足も。
そのどこをとっても超エロい。でもそのエロさが単なるエロさじゃない。
圧倒的な「大好きな母さん」のエロさ。自分が大好きで、多分向こうも大好きでいてくれてる、母さんのエロさ。

「和樹……ん、うンッ、かず、き……ッ」
「母さんッ、母さん……」

挑発しあいみたいな軽口も、あんまり意味なくなって。
ただお互いにヘンな囁き声で相手を呼んで。顔見えなくなっちゃったけど、すぐそば耳だし。顔も、見なくたって分かるあの顔。
触んなくったって、揉まなくたっていい。世界で一番俺の近くにあるのが、俺を生んで育ててくれた、母さんの、体。

「母さん……母、さんッ、か、かおッ……うンッ、かあ、さんッ」
「あ、あ、アッ……和樹ぃッ。うん、うンンッ、ん、ふッ、ん、アッ」

あー。名前、呼びそうになったけど。それはダメだと思う。だからやめた。それは多分、父さんの特権。
文哉ならふざけて呼ぶかも知んないけど、それを俺がしちゃったら、母さんが抱いてくれてる俺じゃなくなっちゃう。
俺にとっては、母さんで。ずっとずっと母さんで。これからもずっと、母さんなわけだし。
ほら。その母さんも。シーツにでろんってなってたその腕を、ちゃんと俺の背中に、優しく回してくれて。すぐに、ぎゅっとしてくれて。
立ててた両足も、最初よりずっとずっと俺の腰に密着してる。ふともももだけど、膝に超力がかかってる感じ。
・・・母さんも、世界で一番、俺の近くにいようとしてくれてる。この瞬間は、ってだけだけど、それでいいし。

「あッ、んアッ、ん、んーッ……かず、きィ、和、樹イイッ……あ、ンンッ！」
「あ、ううッ……母さん、母さんッ！う、う、くうううッ！」

音も、気がつけばまた鳴ってる。きしきしって鳴ってる。俺と母さんがお互いに大きくぶつけ合ってるから、ね。
でももう、いいや。声だって正直、とてもとても囁きなんかじゃないし。大きくはないけど、ちゃんと呼び合ってる俺と母さん。
「見られてもいいや」「バレてもいいや」とかいう覚悟ができたんじゃなくって。母さんと気持ちよくなりたい、が目標。
あと・・・別の音も聞こえてる。俺と母さんの、あの場所から。ちっちっ……くっちくっち、くらいの音。
……もう、何の音とか考えないで、このまま突っ走る。多分もう、限界直前。

「ン、あッ……んッ、んッ、かず……ん、くンッ！あ、うッ、ンンッ、かず、きッ」
「あ、あ、あッ、母さん母さんッ！……ひい、うッ、ううッ、母、さんッ！」
「あー、ンッ！和樹、かずきいぃッ、あン、あんッ、あンーッ！和樹、いッ、うンッ、うンンンッ！」

母さんが。顔を俺のほうに向けた。なんかもうたまんなくなって、って勝手に理解。勝手に。
首筋に張り付いてる俺。そっちに顔向ける母さん。口と口、鼻と鼻の距離3、4センチ。
母さんの鼻がすんすん鳴る。母さんの口が喘ぎながら歪んだり開いたり閉じたり尖ったりしてる。
俺も多分同じ。母さんの首筋に頬ずりして、匂い嗅いで、舐め寸前の感じでちゅっちゅして。
唇と唇が重ならないだけの、ほぼ擬似キス。3センチどころか、互いに尖らせた唇の距離はきっと1センチ付近。
でももう俺も母さんもキスを求めたりしない。キスしない事がこのセックスの正解だって思ってる。
今キスしたら、なんかがきっと壊れる。逆にだからこそ、キスしないからこそ、最後の瞬間に向かって男と女が腰をぶつけられてる。

母さんも。
いってくれると、いいな。

「母さんッ、好き、だッ、あ、あッ、あッ……！」
「和樹……イッ！す、き……うン、あ、ああああアアッ！」

ぷしゅっ。
ぷしゅっ。
ぷ、しゅっ。
しゅこ、しゅこ、しゅこっ。
文字にしか、ならん。ちゃんと、普通に、気持ちよく。俺が、母さんの中に、射精。

「かあ、さん……ッ」
「う、ンッ……かず、きッ」

ハアハアが、止まらない。ベッドの軋みも、濡れた謎音も止まったけど。超早朝の俺の部屋に響く、母さんと俺の、荒い息。
その荒い息が遠慮なく顔に吹きかかってる。俺もそうだし、母さんもそう。
キスも相変わらず、しない。ただなんかヘンなトーンで、母さん和樹と互いに囁き合ってる。
……あー。ちんこが、縮んできた気がする。2回目の中出し。大好きな母さんの中に入ってた俺のちんこ。役目終了ー。

「……寝、る？」
「……分かんね」
「そ……私は、起きるね」
「……」

そもそも。終了後何分経ったか分かんない状態。いつの間にか目を閉じてた俺に、母さんはいつもの調子で。
や、いつもとはやっぱり違う気がする。小さく、少しだけエロい響きが残ってる感じの。俺の思い込み？

「……」
「……あ」

多分いろんな液や汁で汚れまくった俺のベッドのシーツの上。母さんが、ゆっくり体を起こしてく。
何か急に寂しくなっちゃって。なのに体を起こす気力があるわけでもなくて。
手だけ伸ばして母さんの体を追った、ね。そしたら柔らかい場所に触れた。どうやら、母さんの左のおっぱい。

「……」
「……ッ」

もう1回とかじゃない。断言。でもなんかその瞬間、母さんの体にもう少しだけ触ってたかったんだと思う。
だから、手のひらの中の左おっぱいを、別に激しくもなくただゆっくりと揉み続けた。
・・・母さんも、何にも言わないし。もみもみ、と。

「……」
「……はい、おしまい」

手首を持たれて。ちょっと力がこもって離されて。母さんは、ベッドから出てく。

「……少しでも、寝てたほうがいいよ？明日から学校なんだから」
「ん」

パジャマ、着始めたね。最初、パンツ探してたのがちょっと微笑ましかったけど。ちなみにベッドの足元の下でした。
・・・あそこ、拭かんで大丈夫なんか？とか思ってたけど、聞く事じゃないしなー。

「じゃ」
「……ん」

ドアの向こうに、姿が消える直前。手、振りやがった。くそう、母さん可愛いな。
俺は振り返さなかったけど、正解かどうかもうどーでもよかった。多分、正解なんて向こうは求めてない。
チラッと、壁の時計を確認。午前5時48分。
体起こして。案の定な感じのシーツを引っぺがしてくしゃくしゃにして、丸めて床に投げて。
一応股間だけティッシュで念入りに拭いて。それをゴミ箱に投げて。パンツ探して（ほぼ母さんと同じ場所にあった）、穿いて。
蹴脱いでた布団を一応掛けて。寝たー。

ごうんごうんごうんごうん……。

「どうなん？」
「分かんないよー。じゃあ最初からこんな事想像してた？してないでしょ？」
「まあ、確かに」
「流れだもん」
「うん」
「だから、分かんないとしか言いようがない。うん」
「了解」
「流れがそうなったら、ね」
「アリなわけ？」
「なくは、ないかな？でもほら、父さんが優先・・・優先って言うか、父さんと、かな？」
「あー……まぁ、今の「優先」って言葉を忘れないようにしとく」
「……イヤな言いかたするー。何かちょっと、変わったわー」
「あー」
「シーツも完全に忘れてたし。今の時間洗濯したんじゃ全然意味ないよね」
「……ゴメン」
「ウソウソ、冗談。何にしても、流れ流れ」
「流れ……あいつは？」
「流れ流れ」
「何それ……なんか超引っかかるし」
「んふふー」
「分かりました。了解ー」
「……ね」
「……ん？」
「……気持ちよかった？」
「……そりゃもう」
「そ……それは良かった。幸せ」

＜終＞