自宅の風呂 4
「いいケツや。むしゃぶりつきてえくらいや」
あれほど母をいじくり回していたのに、あらためて言ったその野崎の言い回しは私にはいやらしく感じました。
そして続いて、そのいやらしさを増させるように野崎は私のほうから少しだけ見える母の尻をぺちぺちと手のひらで叩き始めました。
「あう、あっ……い、やぁ」
四つんばいになって、顔が見えなくなった母の弱々しい声が聞こえます。野崎は腰使いに合わせて同じように母の尻を平手で叩き続けます。
「野崎、さん……ああっ、痛い……あ、んふ、うううっ」
すごく色が白いわけではない母の肌ですが、尻へのビンタによって見る見る赤くなっていきました。見た目ではすごく痛そうに見えます。
しかし母は、口では痛いと言っているのですが全然体をよじるでもなく、野崎のされるがままになっていました。
それどころかむしろ声は高くなっているように感じられました。
どうしようもない興奮の中に、「なんで嫌がらないんだ」とか「痛いのになんで止めないんだ」とか言う声が心の中で聞こえていました。
「ふん、やっぱり後ろのほうがいいんやねえか。ケツが喜んじょんぞ。ええ、おい」
「い、あぁ……は、あんっ!のざ、き、さん……は、あうっ、んふうううっ!」
母はすぐに、痛いと言わなくなりました。そして、野崎の言うとおり、私から狭いながらも見える母の尻は、野崎に叩かれながらもぐいぐいと動き始めました。
もしかしたら全部見えていたら、母のあまりのいやらしさを子供心に裏切りととらえてその場を離れてしまったかもしれませんが、
ほんの少しだけ見える母と野崎を「覗く」という感じが自分の興奮と子供っぽい後ろめたさを感じて長い時間見てしまっていたのかもしれません。
「ああっ、あ、あぁ……ひい、い、い……い、いいんっ」
叩かれているのに、痛そうに赤くはれているのに母の尻は動き続けていました。
「ほらよい、もうちょいケツ振れエロ女。ふん、ふんっ……ダンナもガキもおるのに完全に俺のちんこにやられちょんやねえか」
「あ、い……っ、あう、うううっ」
母は答えません。でももう私には何となくわかっていました。
「ほら、何とか言わんかよい……お、おおうっ……みさ、え、よいっ」
野崎に尻からちんこを入れられ、痛さに嫌がりもしないで、もはや気持ちいいから何も答えられなくなっているのだと。
「よい、こら美佐江、みさえっ……ケツ振り女、おめこ女が……出すぞっ、お前のおめこに……出すぞ」
幼稚園くらいまで、私は母を「みさえ」と呼び捨てにしていました。それは限りない親しさから出た呼び方で、
そう言わなくなったこの当時もたまにそれを懐かしい気持ちで思い返したりしていました。
でも風呂場の野崎は、母を当たり前のように呼び捨てにしました。そしてそのことに母は何も言わず、ただあんあんと叫び続けていました。
「ひ、ああっ……うう、う、野崎、さんっ……い、い、いっ、い、うううううっ……!」
野崎の腰が前後に大きく動き、母の尻もその勢いで肉が揺れているのが見えます。
そして母は手を野崎のほうに伸ばし、なぜか野崎のふとももの裏を何回も何回もなでていました。
母の手のひらのはずなのに、その手は「他のどこか知らない女」の手のように見えました。その不思議な感覚は今でもはっきり思い出せます。
「お、おおっ……美佐江っ!出すぞ、出すぞ……お、おぉっ!」
「あぁ……あ、いい、いっ……は、あ、あああああっ」
その、母の物と感じられない手のひらがその瞬間、ぐっと野崎のふとももに食い込み止りました。野崎がまた母のおめこに出し、母はただただ高く叫んでいました。
手のひらも、声も、前回覗いた母の姿とはまるで違います。
「よい、いいんか……やめろっち言わんけん、当たり前んごとおめこん中に出しちもうたぞ」
野崎の少し上ずった声が耳に届きます。悔しいと思う気持ちの中、私はズボンの中で射精してしまっていました。生ぬるい感触が気持ち悪く、
さらに悔しさを倍増させていました。
「はあっ……はあ、はあ、あ、あ……っ」
中に出したことに関して母は何も答えず、鼻にかかったような荒い息づかいを続けていて、それがシャワーの音と同時に風呂場に響いていました。
肉のぶつかる音が聞こえなくなった分、それがずっと耳に印象的に聞こえてきました。
その2つの音に、もう1つ加わってきたのは少し経ってからでした。加わったというより母の荒い息づかいが消え、それが新たに聞こえてきた感じです。
それはぴちゃぴちゃ、といった感じの音で、惨めな射精をした直後の私にはいまいち伝わりにくい音だったのですが(シャワーの音と似ていたからかもしれません)、
それと気づいた時のショックは大きなものでした。
「んっ……ん、ちゅ……ん、んう、んっ……ちゅっ、ん、んふ……」
その音の正体になんとなく気づいた私に、すりガラスの向こうの影が追い討ちをかけます。ずるずると母の体の上に寄りかかった野崎。
母もその重みで風呂場の床につぶれました。はっきりと確認できるのは野崎と母の両脚だけ。むしろはっきり見えない、すりガラスの端のほうで、
それは行われていました。音もそこから聞こえていました。
母のキスシーンというのを私はそれまで3度しか見たことがありませんでした。1度目は父と母の披露宴の写真の1枚、
あと2度は家庭の中で(九州に引っ越してくる前、埼玉でのことですが)、ごくごく普通に交わしたのを見ただけです。
その2度も、私に見られていたのを知ると父と母は顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたものです。
しかし母は父ではない相手、当時子供の私から見れば特に嫌な男である野崎と、どうやら風呂場でキスを交わしていたようなのでした。
長く長く、その母の濡れた音は続きました。
自ら野崎の上で腰を振っていたこと。
野崎の恥ずかしい命令に従っているように見えたこと。
中で出されても慌てなかったこと。
長く長くキスしていたこと。
母はどうやら変わってしまったらしい。そう思いました。ずっとずっとキスの音が響く風呂場から逃げるように、私は廊下をずるずると逆に進み、
静かに家を出ました。鍵もかけ、また再び牛乳箱の中に戻しました。そして、少し離れた近所の水路のほとりでしくしくと鳴き続けました。
股間は出した精液で汚れ、時間が経つごとに乾いて気持ち悪さを増しましたが、そんなことはもうどうでもいいように感じられました。
家に帰ったのは3時過ぎ。打ちのめされてなお、体調が悪くてもなお、母に覗いていたことを気づかれないように時間を調整して帰りました。
もちろんすでに野崎はおらず、先ほどは忍ぶようにして開けた玄関のカギも開いていました。
「おかえり」
台所から声が聞こえましたが、私はその時初めて「ただいま」と言わなかったような気がします。実際はよく覚えていませんがそういう気分でした。
「どうしたの」
母が台所から出てきました。普段どおりの母の姿。しかしやはり、どこかいつもと違うように感じられる母の姿でした。
だから、無意識にまじまじと見つめてしまったのかもしれません。でも、ズボンの汚れに気づかれるのが嫌ですぐの顔をそむけたつもりでした。
「しんちゃん、どうしたの?」
それが逆効果だったのかもしれません。そして、母はどうやら私の顔を見て泣きはらしていたのに気づいたようでした。
声を大きくして心配そうな顔で迫ってきました。
「なんもない、なんもない!」
駄々っ子のように、私は急いで階段を駆け上りました。そしてそのまま布団にもぐりこみました。階段を上ってきた母がドアのところで何度も私に問いましたが
「頭が痛いけん寝るだけ」と、母があきらめて下りるまで叫び続けました。
夜、父が心配そうに上がってきて「大丈夫か」と聞いてきました。その頃には学校から連絡があって風邪だということもわかったので「よう寝とけよ」と言って
下りていきました。しばらくして母がドアを開け「明日は休みなさい。栄養がつくもの食べようね」と、枕元で優しい声で言いました。
複雑な気持ちがありましたが「うん」と小さく返事し、それに安心したのか母もそれ以上何も言わず部屋を出て行きました。
ただ、パジャマに着替えるのだけは断固拒否して「このままでいい」と言い続けました。そしてまた夜中に起きて、ズボンとパンツを洗いました。
その時一瞬「漏らしたと勘違いされるかも」と思いましたが、射精したとばれるよりはましだと思ってそのまま洗濯カゴに投げ込みました。