『露わ・露わ・露わ』第1弾

魔法の靴
<第2話>


 マジノは、今まで後ろに背負っていた鞄を床に降ろし、中をまさぐった。リューズはその様子を楽しそうに眺めていた。やがて、鞄の中からなにやら液体の入ったガラスの瓶。

「それは……?」

「これこそが、わたしの靴作りにおける初めのコツでございます、リューズ様」

 瓶の蓋を回し開き、中に入っていた液体をマジノは手のひらに少し取ってみる。少しネバネバした、透明な液体。

「人間の足は、朝と夜はまるで大きさが違います。朝は肉が緊張し縮んでいますが、夜は肉の緊張も緩み大きくなります。つまり、朝や昼に靴を合わせて作ると、足は夜大変窮屈になるわけなのです」

「なるほど……」

「我々のような下賎の者でさえそうなのですから、夜さまざまな儀式のあるリューズ様やバレッタ様のような御貴族の方々なら尚更です。わたしはそこに気づいた時、御貴族の方々のためだけの靴を作れないものかと思い悩んでおりました」

 マジノの言葉に、リューズは無言で何度も頷く。バレッタや、今までの貴族たちと全く同じ反応だ。

「……そして、その解決策がこの液体なのです。険しい岩山にだけ生える薬草、砂漠にしか生息しない爬虫類、遠く蛮国でしか採れない木の実、そして森の奥深くに湧き出る水などを何種類も調合し、特殊な方法で煮詰めた、世界でわたししか作ることの出来ない液体なのです」

「まあ……」

 感嘆の声が、リューズの口から発せられる。

 手のひらの中で、マジノはその液体をくちゅくちゅと混ぜ合わし、やがて無言でリューズの顔の前に差し出す。

「匂ってみてくださいませ」

 言われたとおり、リューズは顔を近づけて鼻を鳴らした。先ほどまで無かった、少しつんとする匂いが、その液体から香っている。

「空気と混ざることによって、匂いと共にこの液体の効能が出てきます。これで足をまんべんなくマッサージすれば、足は本来の体積を取り戻すのです。その上で採寸すれば、その靴はその人に合った靴となるのです」

「ふうん……」

 液体から匂う香りに、頭を少しぼんやりとさせながら、リューズはマジノに向かい頷き続ける。

「ではさっそく……申し訳ございませんがリューズ様、今履いている靴と靴下を脱ぎ、素足をわたしに預けてくださいませ。マッサージを始めたいと思います」

「あ、うん……」

 言われるままにリューズは、普段何気なく窮屈と感じていた靴と、シルクの靴下を脱いだ。マジノの前に、白くきめ細かな肌をした、美しい少女の脚先が現れる。好事家が見れば、飛び上がらんばかりに喜ぶであろう魅力的な脚だ。ましてや、それは正真正銘この国の王女の脚なのだ。

 マジノはぬめった液体をまぶした両手のひらを、リューズのその脚先にあてがった。それからはことさら力を入れるわけでもなく、優しくゆっくりとリューズの脚に液体を塗り込んでいく。なるほどそれは、確かに今まで体験した事のない触れ心地で、リューズはますますこのマジノという靴職人への信頼を深めた。

 暗い部屋で月明かりに照らされ、リューズの脚先だけがテラテラと光って見える。

「これから、どうするのです……?」

 期待に満ちた表情で、リューズはマジノを見つめた。液体の匂いは先程よりさらに増し、ゆっくりとリューズの気分を揺らめかせていく。

「これからが、マッサージ本番です。液体が脚全体に染み渡ってくると、じきに皮膚を通じて内部の脂肪、肉、筋が全て柔らかくなるのです。あと十秒ほど……九……八……七……」

 マジノの声はまるで呪術のように低く重くリューズの耳に響く。

「……さあ、マッサージを始めます」

 男の手の指が、美しい王女の脚指に触れた。ぬめぬめでぬるぬるの液体が、マジノの指とリューズの指が重なる部分でにちゃにちゃとまぶされる。中年の男にしてはしなやかな手の先は丁寧に、そして巧みにリューズの脚を揉みほぐしていく。

 リューズは気づく。靴職人が、特に自分の脚の親指と人差し指の間を入念にマッサージしていることに。

「なぜそこを、特にこだわるのですか……?」

「おやリューズ様、痛いのでしたら止めますが」

「いや、続けてよいのですが……」

 リューズは言葉を濁した。もちろん痛みなど感じない。むしろ、男の指先が底を揉むたび、脚全体に痺れるような感覚が走り、それが脚の付け根に届く。脚の先を撫でられているのに、股のあたりがなぜかざわつく。体験したことのない奇妙な感じに、リューズは戸惑っていたのだ。

 リューズが桃色の唇を軽く噛み始めたのを眺め見て、マジノは心の中で、計画がまた一段階進んだことを悟る。

 脚の親指と股関節は、太い感覚神経で繋がっている。そこを刺激するということは、性器を間接的に刺激することになるのだ。しかし、この時代の高錬な医学者ですらあまり知らないその技術を、マジノはなぜか自分の物としていた。指の間をマッサージすればするほど、リューズの戸惑いが増すのが分かる。あの液体に混ぜた媚薬も、そろそろ効果を発揮していることだろう。

「……リューズ様、気持ちよろしいですか?」

「うん……気持ち、いい」

 王女の声は、まるで呟きのように小さくなっていた。股の間の違和感と同じような痺れが、頭の中にも鈍い頭痛となって広がっていく。森の中で深い霧に襲われた時のように、眠気に似た感覚を覚え始めていた。

「おや、眠たくなったのでございますか?」

「う、うん……」

「それはそれは。わたしめのマッサージがどうやらお気に召したようで……リューズ様、わたしは構いませんから、どうぞベッドに横になって下さいませ。マッサージも、そのあとの採寸も、横になった状態でもできる作業ですので……」

 返事を聞くよりも早く立ち上がり、マジノはリューズの躰を不意に抱き上げ、ベッドに優しく誘導し王女の躰を横たえた。普通なら怒りを覚えてもおかしくない男の行動だったが、今リューズにはそれを咎める気など起きなかった。

「さあ、目を閉じてくださいませ。リューズ様が夢を見ている間に、きっと素晴らしい靴が出来上がっていることでしょう……!」

 靴職人の言うとおりに、リューズはゆっくりと瞳を閉じた。脚から湧き出る気持ちよさと共に、全身が少しずつ熱くなっていくのをかすかに感じながら。

「失礼致します!リューズ姫様が部屋に入りましてから、半刻が経ちましたのでご報告に参上したのですが」

 扉の外で兵士が叫んだ。

「母上……」

「……あの部屋に行ってみましょう。何事も起こってなければよいのですが。シャプタル、ボーザも一緒に参りますよ」

「はい!」

 少年は、力強く立ち上がった母親の後に続いた。ボーザも、よろよろと躰を起こしながらも、二人と同じように、リューズの身の安全を心患いながら部屋を後にした。

「おおっ!」

 リューズの部屋の前に待機していた衛兵たちは、三人の姿を認めて姿勢を正した。

「……どうなのです、中の様子は?」

「はっ、リューズ様と靴職人が部屋に入って、すでに一刻が経過しましたが、全く動きがありません」

「……」

 少し考えた後、その女性はドレスから部屋の合鍵を取り出した。

「とりあえず、開けましょう。事情を話せば、リューズもきっと分かってくれるはずです」

 鍵を鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。重厚な扉は、一刻ぶりに開かれたのだ。

「リューズ、リューズ……?」

 部屋の中を見回し、この部屋にいるはずの二人、リューズと靴職人がいないことにすぐに気づく。その様子を見て、周囲の兵士たちは状態を悟る。

「姫様が……姫様がさらわれた!」

「おのれエセ靴職人め!はじめからそのつもりであったか!」

「探せ探せ!まだ遠くには逃げておらぬはずだ、急いで姫様をお救いするのだ!」

 部屋の前に待機していた兵士たちは全て駆け出した。

「母上、私もその賊を追います!失礼します!」

 少年もまた、兵士たちに続いて駆け出していく。残されたのは、その女性とボーザだけ。

 周囲の喧騒が去ったあとも、女性は静かにもぬけの殻となった部屋を見回していた。

「……!」

 ふいに、女性が気づいた。この部屋には仕掛けに、彼女はいち早く気がついたのだ。それはそうだ、この部屋の仕掛けは、彼女自身が命じて作らせたものだからだ。

 高貴な位の美しいお姫様は、粗末なベッドで小さな寝息を立てている。そのしなやかな足指をずっとマッサージし続けていたマジノは、やがてその動きを止めた。その躰を静かに立たせ、ベッドで眠るリューズ姫の傍らに見ながら、自分の鞄を再びまさぐった。先ほどのものとは違う液体で満たされた小瓶を取り出し、部屋の隅々に少量ずつ撒いた。先ほどのものよりさらに強い匂いが、その液体から放たれている。睡眠薬でもあり、媚薬でもあり、幻覚剤でもある、凶悪な効き目を有するこのような薬品を、マジノは事も無げに扱う。

「う……うん……っ」

 リューズの口から低い唸りが洩れる。薬の匂いが、神経に届いたのだろう。その声を聞き、マジノは美しい15歳の姫様の横に座った。ついにマジノは、本来の目的を果たすため行動を開始したのだ。

 マジノの腕はゆっくりと伸ばされ、リューズのレース生地を纏ったドレスの胸元に辿り着く。貴石で作られたボタンを手つきよく外していくと、ドレスの下からは絹の下着が現れた。

「……」

 薄い絹の生地の下に、淡いふくらみが見て取れる。白い肌や、ほんの少し桃色に色づいた乳首が確認できる。マジノは懐のポケットから小さなナイフを取り出し、その絹に向けた。

 高く耳障りな音を残しながら、絹布は切れ味鋭いナイフにゆっくりと切り裂かれていく。次第に露わになっていく素肌と肉の柔らかい凹凸を眺めながらも、やはりマジノは無表情だった。

「ふむ……」

 絹の裂け目を両手で広げ、ついにリューズの若々しい左右の乳房が現れた。薬によって浅い眠りを彷徨っているリューズの呼吸に合わせて、その白い乳はゆっくりと上下している。マジノは右手を伸ばし、そのすべすべとした乳房に触れた。

「……んっ」

 ほんの少しだけ唇が開き、リューズの切ない吐息が洩れた。しかしマジノは全く動じることなく、美王女の乳房への愛撫を続行する。マジノは、この部屋に充満している薬の効果を微塵も疑ってはいない。先程リューズにこの薬の成分を語ってみせたが、あれは全くのデタラメだ。実際人が知れば、驚愕するであろうこと間違いない物質を、何種類も特殊な方法で調合したものなのだ。

「んふ……っ」

 指先に感じた変化を、マジノは見逃さなかった。リューズの乳房の先端に息づくピンクの柔突起が、マジノの愛撫によってやわやわとしこって来たのだ。マジノは激しくならぬよう丁寧に両乳房を揉み、くりくりとした乳首の感触を味わう。ここまで来れば、第二段階に進んでもよかろう。

 魅力的な乳房から、マジノはあっさりと手を離した。無論、さらに魅力的であろう場所に移動しただけであったが。

 軟質鉄線で保たれているドレスの裾は、ベッドに横たわっていても型が崩れていない。マジノはその裾を持ち、ゆっくりとずり上げていく。みずみずしい両脚が月明かりに妖しく照らされていた。

「ふむふむ……」

 捲り上げられたドレスの裾は、愛撫から解放された乳房を覆い隠してしまったが、マジノの視線はすでにそこには向いていなかった。左右の脚の付け根、これもやはり仕立てのいいシルクの生地に、凝った装飾レースが施された純白のショーツを凝視し、マジノはこの日2度目の冷笑を浮かべた。ショーツは、確かに、湿っていたのである。

 リューズは処女だ。あと1年ほどすれば大勢の女官たちによって実践的花嫁修業が開始され、数年後には他国の王室皇太子とでも結婚することになるはずだ。だが今の時点では、リューズはおてんばが過ぎる男勝りの王女に過ぎない。同年齢であっても、早熟な貴族の娘たちならば、複数の愛人と交わって性宴を謳歌している場合もあろう。しかし、リューズは退屈な王宮生活をセックスには向けず、乗馬やいたずらに向けていた。そして、リューズは自慰さえも覚えてはいなかった。

「く、ふ……んっ!」

 ショーツのしみをマジノが人差し指でつつくと、リューズの口から少し大きめの声が洩れた。妖しげな媚薬の効果は、自慰さえ未体験の少女の肉体にも確かに浸透していたのだ。

「んんっ、んふ……っ、うんっ!」

 マジノの人差し指はショーツのその部分をくにくにと往復している。薄い絹布越しに、柔肉のかすかな隆起が感じられた。マジノはその中心部を決して離さず、指先の巧みな往復運動を続ける。しみは、さきほどより広がっていって、シルクのショーツを濡らしていった。

 指をふっと離し、マジノはまたあの小さなナイフを取り出した。象牙の柄には、なにやらおぞましい物の怪たちが描かれている。その不気味な刃物の先を今度は、しみが現れた純白のショーツにあてがった。

「……」

 現れた若草の園に、マジノはさしたる感想も持たなかった。髪の毛と同じ、美しい金色をしたヘアーが、ほんのわずかに幼い淫裂を彩っている。月光が、その淫裂からじわじわと染み出してくる液体をいやらしく照らしていた。

「あ……んんっ!」

 マジノの指が、直にリューズの割れ目を這った。肉の谷を巧みに往復し、たまに思い立ったように、濡れた陰豆を指先で弾く。

「くうっ、ふう、ん……っ!」

 リューズの声が明らかに高くなる。指先にまとわりつく愛液は、さきほどよりさらに増していた。

「ひ……いっ!」

 指が、高貴な生娘の内部にすんなりと侵入した。そして、まるで現実の陰茎のようにその指を往復させ始めた。指が出入りするたびに、処女の淫液が纏わりついてくる。

「あん……うんっ、ふ、くう……っ!」

 暗い塔に響く声が、次第に艶を帯びてきた。男の指の躍動は、性の悦びを知らない女の躰さえ、激しく昂ぶらせるほど巧みで的確だった。

「ふ、くうっ……うん、ふうん……んっ!」

 整った唇は美しく歪み、幼い美貌に不釣合いな、乱れた悶えを絶えず洩らしている。間隔も短くなってきた。マジノは、姫君の絶頂が近いことを悟る。指の動きが、早まった。

「あっ、あふ、う、くう……、う、ん、んんっ……!!」

 指の先が、柔らかい肉に締められた。リューズの口から、大きな溜め息が聞こえた。リューズは生まれて初めて、絶頂を迎えたのだ。

 処女の愛液でぬめった指をリューズの内部から引き抜くと、マジノはその指に纏わりついた処女汁を、舌先で舐め取った。

「……うむ」

 マジノは、淫らな夢を見ているであろう美しき少女から体を離す。しかし、それは一瞬の事だった。帯を緩めズボンを脱ぎ、続いて下着も外す。そこには、あたりまえのように勃起したペニスがいなないていた。

 リューズがもし目を覚ましていれば、その物体を見てすぐにまた失神してしまうだろう。それほど、マジノの股間に存在しているペニスは、見るも禍々しいものだった。確かに人よりも大きい。が、それだけではない。そのペニス全体が纏っているのは、まるでその物体が人間の所有物でないかのような雰囲気だった。

 一歩、マジノが足を進める。つい先ほど、生まれて初めて淫液を溢れさせたリューズの淫裂の目前に、マジノの凶器が近づいた。室内に漂うあの魔薬の匂いは、処女を失う直前の美しい姫君を、未だ猥褻な夢の中に閉じ込めたままだった。

「あ、あ……っ」

 毒蛇の頭が、少女の汚れ無き泉に触れた時、リューズの少し開いた唇から処女期最後の声が洩れたが、マジノはまるでそれを無視するかのように、腰を強く押した。

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