第4章


 志穂の頭の中に、別れ際の義父の言葉がこだましていた。

『明日も、あんたを抱きたい』。義祐のアパートをよろよろと立ち去る自分に、確かにそう囁きかけた。明確に拒否できなかった自分を、志穂は呪っていた。

 息子 等は、夕食を終えるとすぐに一人で風呂に入り、ドッジボールの疲れとかですぐに寝てしまった。階段をあくびしながら登る幼い後ろ姿を、志穂は複雑な気持ちで見送る。

(等に、何を期待していたの……?)

 志穂の自問は続く。義祐に激しく犯され、開発されていく自分の肉体。その穢れを実の息子に向けたところで、何の解決になるだろうか。むしろ更なる禁忌の深淵に落ちていくだけではないか。しかし、それが理解できていても、息子が口淫を求めてこなかった事に一抹の寂しさを覚えているのは事実なのだ。義父に淫らな躰を奮ってしまってなお、息子に癒されたいと願う志穂。ベッドに横たわっても淫猥な想像だけが渦巻き、一睡もできなかった。

そして、義祐が囁いた『明日』がやって来る。

 

 

 来客を告げる電子音が、志穂の胸を貫く。インターホンに向かい誰かと問う事もできずに、志穂は玄関ドアのロックを外した。初めて犯された時間とほぼ同じ、日差しが傾き始めた、午後三時。

 無言の脅迫、まさにそれだった。義祐はリビングをゆっくりと歩きながら、そこに飾られている家族写真や、等が書いた家族の似顔絵などを眺め、そのたびに志穂を振り返り笑った。義父は、その気になればこの家庭の幸せを壊す事だって出来ると宣言しているのだ。

「お義父さま……どうか、考え直してください。わたしは誰にも言いません。ですからお義父さまも、今までの事は忘れて下さい……お願い、祐二さんや等との幸せを壊さないで……」

 勇気を振り絞って発せられた志穂の言葉。しかし義祐は、まるで意に関せず志穂を見つめる。

「……志穂さん、あんた次第じゃ。わしだって息子の悲しむ顔を見たくはない。もうすでに孫に悲しい思いをさせているんだからな。だから……わしとあんたさえ秘密にしていればいいだけ……」

「ああ……っ!」

 禁じられた関係を清算する気は、義祐には無い。志穂は絶望した。力なく崩れ落ちる若妻の表情を眺めて、義祐はさらに被虐的になる。

「……そうと決まれば、早く済ませたほうがいいじゃろ?またあの時のように、等に見られてしまうぞ」

「……」

 志穂は無言だ。しかし、この場合の無言は拒否にはならない事を、志穂が一番よく分かっていた。

 志穂はよろよろと立ち上がって、エプロンを外す。そして、義祐のアパートに向かうため廊下へと歩もうとした。その手を、義父が強く掴む。

「どこに、行くんじゃ?」

「え……」

「……わしは、ここであんたを抱きたい。それも……あんたと祐二の寝室でな」

「そんな……っ」

 家を建てて以来、夫婦以外は誰も入った事の無い場所。愛を育み、等を生み出した夫婦だけの場所。そんな事情を全て知った上で、義祐はそこを指定した。

「わたし、お義父さまに抱かれます……でも寝室だけは、寝室だけはやめて下さい……っ」

「いやダメだ……志穂さん、押し問答しているヒマは無いはずだ。わしはあんたをこの居間で犯したっていいんじゃ。等が帰って来たって、わしはもう平気だ。だが、あんたは違うじゃろ……?」

 全身を震わせる息子の嫁の返事も聞かずに、義祐は夫婦の匂いの染み付いた寝室へと向かい始めた。志穂は、自分に選択権の無い事を悟り、瞳から一筋の涙をこぼした。

 

 

 震える手でドアをゆっくりと閉じた時、義祐はベッドに腰掛け志穂の方を見ていた。寝室はレースのカーテンがかけられた窓から差し込む光で、予想以上に明るかった。夜にしか躰を交わさない祐二と志穂。だからこそその部屋の明るさが、志穂の心を奥底から掻き乱していく。

「さて……」

 義祐は、ドアのそばで立ちすくみ視線をそらす志穂をじっと見つめていた。それこそ頭から脚の先まで、全てを舐めまわすように眺め続ける。

「志穂さん」

「はい……」

「服を、脱いでくれんか。このままで」

「ああ……っ、明る過ぎます。せめて、カーテンを閉めてください!」

「ダメだ。このままで、脱いでくれ」

「……っ」

「早くした方がいい。わかるじゃろ」

 今にも、玄関ドアを開く音が聞こえそうな気がする。もうこれ以上、等に悲しい思いをさせたくはなかった。

 チェックのシャツのボタンに手をかける。やはり、指先が震えた。ひとつひとつ外していけば、やがて豊かな乳房を覆っているピンクのブラジャーが現れていく。

「よしよし……」

 パサリと、薄いシャツが床に落ちた。義祐はもう何も言わないが、志穂は次の要求を悟り、ライトグレーのスカートジッパーに指を添えた。ジーッという、普段何気なく聞いている音が、今日は限りなく淫猥に感じられる。

 スカートも、シャツと同じように床に落ちた。恥じらいの表情を浮かべながら、胸と股間に手をあてがう志穂を、義祐はニヤニヤしながら眺めている。

「……ほら、次はどうしたんじゃ」

「ああっ……もうこれで、許してください」

 義祐の表情が、真顔になる。

「わしはいい、と何度も言っておる。このままあんたの綺麗な下着姿を眺めているだけで満足できるからな……そうじゃ、どうせなら、等と一緒に見ようかの」

「そんな事……っ!」

 息子の事に触れられると、志穂は混乱してしまう。もう、脱ぐしかないのだ。仕方なく、志穂は背に手を回し、ブラのホックを外した。まるで弾かれるように、普通の女性よりも大きな胸がまろび出る。

「おお……」

 義父の感嘆の声は、さらに志穂を打ちのめしていく。自分の大きな胸が、六十代の義父をいやらしく興奮させているのだ。拒否される事は分かっていたから、もう胸を隠すような事はしなかった。しかし、恥ずかしさはどうにもならない。志穂は目を閉じ、おそらく好色一杯の視線で見つめているだろう義祐から顔をそらしていた。

「きれいだ、志穂さん。本当にあんたのおっぱいは、きれいだ……」

「ああっ、恥ずかしい……」

 少し翳った陽光に照らされ、若々しい乳房が美しさを主張している。義祐は、それを『きれいだ』としか表現できなかった。

「おお、志穂さん。乳首が、乳首が立っているぞ」

「そんな事……ありませんっ」

「そんな事も何も、実際立ってる。あんたも、わしにこうしてじっと見られて感じておるのか?」

「ああっ……もうそんな事、言わないで……」

 恥じらう若嫁の反応は、義祐の淫猥な心を奮い立たせる。こんな美しい女を、自分は思い通りにしているのだ、と。

「まあいい。さあ、おっぱいは見せてもらったが、その次はどうした?」

 ここで胸に執着しても仕方がない。少し待てばどうにでもなるのだ。義祐の興味は、ただ一枚残された布に向けられた。

「さあ、早くそれを脱いでくれ。一人で出来ないというのなら、わしが手伝ってあげてもいいがの」

「自分で……自分で、脱ぎます」

 躰中を、恥辱の炎で炙られているようだ。ゆっくりと瞳を開き、ショーツに手をかけた。ずり下げていると、すぐに繊毛の草叢が現れる。つい3日前までは、想像する事さえ出来なかったその場所を、義祐はじっくり凝視する事が出来るのだ。

 小さな布切れとなったショーツが、床に脱がれる。志穂はすぐに股間を隠そうとしたが、義祐はそれを許さなかった。

「……もう隠さんでもいいだろう。わしはあんたをもう2度も抱いてるんだ。そして……今から3度目だ。隠している暇はない、そう思わんか?」

 義父の微笑みは、どんどん意地悪になっていく。志穂は固く唇を噛みながら、手を腰の後ろに回した。目の前の義父が、唾を呑み込む様子が分かる。

「志穂さん……」

 義祐は、ベッドから腰を上げた。そのままゆっくりと、志穂の美しい裸体に歩み寄る。

「お義父さまっ!」

「志穂さん、志穂さんっ!」

 突然、義祐は志穂の躰にすがりついた。腰に両腕を巻きつけると、舌を出して首筋や顔を遠慮なく舐め始めた。

「やめっ……やめて下さいっ!」

 そう言った志穂の唇は、すぐに義祐の唇によって塞がれた。強引に舌が割り込んできて、自分の口内を暴れまわる。

「んんっ、んふっん……っ!」

 舌が捕らえられた瞬間、志穂の頭に電流が走る。汚らしいと思いながらも、その舌を噛み切るまでには憎めない自分に、志穂は幻滅していた。実際、志穂は舌を絡め取られながら、切なげな吐息を洩らしているのだから。

 志穂の抵抗が少しだけ弱まったのを感じた義祐は、さらに腕に力を込め、そのまま息子夫婦のベッドに女の躰を押し倒した。

「あんんっ!」

 信じられないほどの怪力で自分を捕らえた義父に、志穂は抗いの視線を向けた。しかしそこにあったのは、自分を抱く事だけが目的の、まるで獣のような目だった。

「いや……っ、やめて下さいお義父さまっ!」

「……」

 志穂が自分の目を凝視しながら訴えかけても、義祐はもう何の感慨も持たなかった。自分が思った通りに愛撫すれば、この美しい嫁は淫乱な本性を現して、いずれ抵抗しなくなるのだ。

「ひっ!」

 舌が、また首筋を這う。先端だけほんの少し触れるようにしながら、義祐は真っ白い肌に唾液の線を刻んでいく。そのたびに、志穂の躰はどうしようもなく熱を帯びていった。

「ああっ、や、やめ……てっ」

 鎖骨を愛しげに這ったあと、義祐の舌は魅力的な志穂の乳房の、外周をじらすように舐めまわす。いっそ乳房自体を舐めてくれたら、はっきりと拒否の言葉が出てくるはずなのに……。志穂は複雑なジレンマに思考を掻き乱されていく。

「あううっ!う、ふ……」

 今度は脇の下だ。汗を最も感じやすいその場所を、義祐は遠慮なく舐めしゃぶり、舐められる志穂は恥ずかしさにさらに身を焦がす。

 さらに舌は移動し、脇腹を沿って柔肌に濡れ筋をつけて行く。自分が息子の嫁を汚していく感触が、舌の先から脳内に直接響きわたる。薄い汗の味も、義祐の興奮を昂ぶらせる大きな材料となっている。舌はその汗を丹念に吸い取りながら、老練な舌はさらに若妻の心を歪めていく。

「く、あうっ!」

 また予想を裏切られ、志穂はうわずった声を上げてしまう。義祐の舌先は下に移動すると思いきや、今度はあれほど近づこうとはしなかった乳房、それも頂上に息づく桃色の乳首に突然吸い付いたのだ。そのままちゅぱちゅぱと音を立てながら、強い吸引でその柔突起を吸い続ける。志穂は、その愛撫によって自分の乳首が固しこっていく事を、悲しい気分で感じていた。

「くう、んっ……うん、んふっ……んっ!」

 静かに義父の両手が近づき、志穂の豊かな乳房にあてがわれた。振り払う事はもう出来ない。その手が激しく動き始めても、志穂は躰全体を支配する熱に浮かされて、浮かさされたような声を洩らす事しか出来なくなっていたのだ。

「志穂……」

「ん……っ、んふう、んっ!」

 自分の呼びかけの言葉に息子の嫁が反応しなくなった事は、義祐にとってはむしろ喜ばしい事だった。快感に溺れ自我を薄れさせていく若い女。今まさに志穂はそうなっているのだ。その事をきっかけに、義祐は胸への愛撫を、別の場所に切り替える事にした。もちろんその別の場所とは、すでに熱く滾った愛液を滴らせているであろう、あの場所だ。

 対する志穂は、頭の中で義父の愛撫を否定するのが精一杯だった。事実、自分の胸から発生している濡れた液音を聞きながら、やめて、やめて……と口の端で小さく呟きながらも、自分の両手がその自分の胸に張り付いている義父の白髪の頭にあてがわれ、もどかしげに掻き毟っている事にも、気づかずにいた。

「あんっ……あ、あうっ」

 ふいに、その掴んでいた義父の頭が離れた。その時確かに、志穂は大きな空虚感を感じた。男の体と一瞬離れただけで、こんなにも虚しさを感じなければならない女の肉体。そんな肉体を持った事は、志穂にとって不幸なのだろうか、それとも……。

「ひ……いっ!」

 これまでにない高く切ない声を、志穂は部屋にこだまさせた。ついに義祐の舌が、志穂の熱い秘裂に這ったのだ。そして当然のように、その場所は淫らに濡れそぼっていた。

「ひ、い……っ、う、くうっ!」

 唇を閉じようとしても、激しい喘ぎは洩れ出してしまう。舌の上下動に同調するように、粘りつくような声を、禁じられた相手からの愛撫によって、神聖であるべきはずの夫婦の寝室で発しているのだ。

「ううっ、うん……は、はあっ、お、お義父、さま……っ」

 志穂はかすれていく意識の中で、かろうじて義父を呼んだ。しかし、それが抵抗のためか、それとも違う目的のためか、判断するのはすでに無理な事だった。

 義祐は幸せだった。志穂を裸に剥き、抵抗もさせずにベッドに横たえ、舌の愛撫で激しく悶えさせている。昨夜見た妄想が、次第に現実のものとなっている。そして、義祐はこれ以上を望むからこそ、志穂の草叢の中に息づく美しい紅唇に巧みに舌を這わせ続ける。

「ひい、いいっ!う、うあっ……んんっ!」

 反応は最高だった。声を高く上げ、切なげに首を振る志穂。いやそれどころか、先程から義祐の頭にあてがわれている美しい手は、それをはねどける事なく、むしろ自分の淫裂に押し付けるように自然に力が込められていた。腰もまた、もどかしげに揺らめき舌の動きを本能的に助ける。息子の妻が、自分の舌で際限なく乱れていく。全ての淫らな動きが、義父 義祐にとって禁忌の興奮を奮い立たせるものだった。

 義祐が、淫蜜をしたたらせて悦ぶ部分から顔を離す。唇の周りは、その液体でぬめ光っている。義祐の頭には、志穂の手が残ったままだった。その手は義祐が体を離していく時にゆっくりと離れ、やがてベッドシーツをギュッと掴んだ。これから必ず繰り出されるであろう、義父 義祐の激しい突きに耐えるために。

「あっ……」

 潤みきった瞳に映ったもの。それは、愛する夫の父親が衣服をゆっくりと脱いでいる光景、そして最後一枚の下着から現れた、逞しい物体。志穂は思い出していた。これを初めて見た時、自分は気を失ってしまった。しかし、もうそんな事はない。ゆっくりと自分の脚の間に近づいて来る怒張を、志穂は誰よりも淫らな瞳で見つめ続けている。

(欲しい。お義父さまが、欲しい……っ!)

「ひ、い……っ!」

 熱い場所に、熱いモノ。全身の細胞が男のこわばりを受け入れるため、一気にざわめいた。入り口の筋肉、内部の滾った粘膜。持ち主である志穂とはまるで違う生物のように蠢き、禁忌のつながりを歓迎していた。

「お、お、おお……」

 バスルームで初めて裸の志穂を浚った。自分のアパートで志穂を尻から剥き犯した。そして今、息子祐二と何度も愛を深めたであろう夫婦のベッドで、志穂を抱いている。

志穂からは、もう抗いの言葉もない。言葉よりも饒舌に、義祐の自分自身を呑み込もうとしている志穂の肉体が、女の気持ちを義祐に語っている。

(ついに、俺の女になった……っ!)

常識では許されない義父と嫁の淫らな心が、禁忌の熱に浮かされ同調した。押されるたびに喘ぎ、突くたびに呻く。明るい陽差しが差し込むベッドの上で義祐と志穂、男と女が躰をつなげた。

「うんっ、ふ、あんっ!」

 志穂が、白い肌を震わせて本格的に喘ぎ始めた。打ち込まれた熱い杭が内部の粘膜を擦るたび、今までに感じた事のない快感が全身を駆け巡る。

「あんっ、お義父、さ、まぁっ……」

 ぐっぐっと自分の躰が突き上げられるたび、志穂は義父を呼んだ。自分が何をするべきか、全く考えられないまま、志穂はうわ言のように叫び続ける。

「おうう……志穂、志穂っ!」

自分の突きで女が浚われていく実感を、義祐は奮う肉体全てで感じていた。志穂の美貌は快感によって淫らに歪み、白い肌は熱に煽られ紅潮している。シーツは激しい躍動のため皺を刻み、その純白のシーツを必死に掴む指は、先程よりもずっと強く躰をつなぎ止めようとしている。

「は、あうっ、ん……っ、あ、はあっ!」

 幸せな生活が、どんどんめちゃめちゃになっていく。それも、自分の余りに淫蕩な肉体のせいで。そしてその淫蕩な肉体は、自分を無理矢理割り開いているはずの男の愛撫を、さらに強く求めているのだ。

「あうっ!……お義父さま、ああんっ!」

 男はその女の欲求を、経験で鋭く看破した。自らの躍動に魅惑的に揺れる豊かな乳房を、逞しい両手でむんずと掴んで、激しく揉みしだき始めた。

「あんっ、あ……ふうんっ!い、あ、いい……っ」

 自分でも持て余すほどの乳房は今、男の手のひらで醜く歪まされぷるんぷるんと動き回っているはずだ。体内の熱い杭から湧く強烈な感覚とは違って、躰中を静かな波のようにじっくりと寄せて来ては、かすかに残る脆い自意識を掠り取って行く。

「志穂、志穂……おおうっ!」

「あん、ああんっ……お、お義父さ、まぁっ!あ、んっ、くう……っ!」

 シーツを頼っていたしなやかな手はベッドの上から離れ、所在無さげに宙をさまよった後、老境にいるとは思えない精力的な男の逞しい腰に添えられた。それと同時に、色香を強烈に発散させている女の腰もまた、もどかしげながら男の激しい突きに合わせて躍動を始める。本能は、志穂の思考を完全に支配してしまった。

「あ、あく……うっ、うん、うんっ、うあ……ん、お義父さま、あ……い、いっ!」

「し、志穂お……っ」

 志穂。素晴らしい躰を持った26歳の美女の乱れように、義祐は心の底から歓喜していた。組み敷いたその女を、下からもどかしげに腰を突き上げているその女を、もっともっと乱れさせてやりたかった。

「うん、うむ……っ!」

 突然義祐が、志穂の切なげに開いた唇を奪った。そして当たり前のように、舌を差し入れた。

「んんっ、ん、んふ……っ」

 志穂の濡れた舌は、待っていた。男の舌を誘い、絡め取るように激しく吸う。自分を淫靡な人間に変えていく義父のペニスが挿入されている熱い花芯と、義父の舌を自分の舌に絡めむさぼり合っている口。二つの空洞がまるで、全く同じ性感器官であるような錯覚を、禁忌に犯された志穂は感じていた。

「んっ、うんっ、んふん……っ!」

「お、おお……、志穂、し、ほっ!」

 だからこそ、激しく絡み合う舌と同じように、義父の怒張を咥え込んでいるヴァギナも、自分の悦びをさらに昂ぶらせるため、今度は確かな動きで腰を突き上げ始めた。

「ん、んあ……っ、あく、うっ!お、お、とう……さ、まぁっ!」

 志穂の浮かされた思考の中では、ただ一つの事しか浮かんではいなかった。自分が淫らに躰を振るえば振るうほど、禁断のつながりから受ける快感は大きくなっていく。進んで腰を振れば義父の突きの角度が変わり、自分の内部を激しく擦り上げる。舌を熱く絡めれば、熱病のような淫猥な頭痛が襲い来る。

「志穂さん、イイのか……わしのチ○ポが、そんなにイイのか……?」

 若嫁の舌から逃れた義祐は、その乱れた若嫁の耳元でそう囁きかける。その余りに淫らで猥褻な質問を、志穂は唇を噛んで聞いた。しかし、それもほんのわずかな時間だった。義祐は自分の怒張を志穂の一番奥深くに突き刺した後、急に腰の躍動を止めた。ビリビリと電流のような感覚が躰の奥で何度も弾ける。志穂は、それを続けて欲しくて、固く噛んでいた唇を、開けた。

「イ、イ、です……っ」

「んん、聞こえんよ志穂さん……」

 粘っこい吐息が、再び耳に囁きかけられる。志穂は、もうどうしようもなかった。どうしようもなく、欲しかったのだ。

「お義父さま……イイ、です……お義父、さまの……」

 志穂は、濡れた瞳でしっかりと義祐の顔を見つめた。

「お義父、さまの……アレ、が……っ」

「アレ、じゃあ分からんよ、志穂さん。わしの、何がイイんじゃ?」

 義父の顔に浮かんだ微笑みは、まるで悪魔の笑みだった。しかし、それでも、志穂は欲しかった。

「お義父さまの……ああっ、お義父さまのっ、おチ、チ……チン、チン……ああっ!」

「……くくっ、まあいいわ。それ、ご褒美じゃ」

 グッと、義祐の腰が引かれる。

「ああ……うう、んっ!」

 今度は最大限に突き出される。志穂はもう、高く喘ぐしかなかった。

「そうじゃ志穂、もっと声を出して悶えるんじゃ……あんたのお気に入りの、わしのチ○ポでな」

 耳に猥褻な単語が届き、また志穂の自我を強引に剥ぎ取っていく。義父の腰に回された両手は、もっと強い接触を求めて引きつけられていた。そこから洩れ出している男女の性感液が、交じり合い絡み合いねとつくような音を発生させている。志穂はその音を、確認していただろうか?

「……ふむ」

 義祐は、自分の下で悶え狂う息子の嫁の、もっといやらしい姿を見たいと思った。突然志穂のしなやかな腰を掴んだかと思うと、ぐっと後ろに反ってベッドに仰向けに寝た。もちろん、結合したままで。

「……お、お義父さ、ま……っ?」

 男の腰の上に、自分が腰を降ろしている格好だ。逞しい肉茎が深く打ち込まれ、そうするしかなかったのだ。

 荒い息のまま、志穂はうつろな目で自分の姿を顧みる。午後の日差しに照らされて、白い肌全身に浮き出た幾粒もの汗が輝いている。その余りに乱れた姿に一瞬だけ恥じはしたが、今自分が求めているのは、この躰に刺さっている逞しいモノで、先程までのように激しく突いて欲しいという事だ。

「お義父、さまぁ……」

「なんじゃ志穂さん。どうして欲しいかはっきり言わんと、わしには分からんぞ」

 甘い声でねだる志穂を、義祐は容赦しない。女が自分から上に乗り腰を振り出すまでは。

「お願いっ……いじわる、しないで」

「わしはなーんもしとらん。どうしても何かしたけりゃ、自分からするといい」

「……っ」

 志穂は義祐が何を待っているのかを悟っていた。しかし自分が、挿入されている『だけ』の鈍い快感だけでは満足できない事も悟っていたのだ。

「くう……っ」

 やがて、志穂の尻が揺らめいた。その些細な動きでも、溢れ出した愛液はしっかりと接触した性器の間でにちゃにちゃと淫猥な音を立てる。今度は志穂も、その音をはっきりと聞いた。

「く、うんっ……は、あっ!はあんっ!」

 少しずつ大きくなる喘ぎ声に同調するように、腰の振りも次第に大胆になっていく。自分から躰を動かせば、体内の熱いペニスは角度を変え膣壁を擦り上げ、また新たな快感を生み出していく。

「よおし、よおし……いいぞ志穂、その調子でもっと狂うんだ。お、おおうっ!」

 柔らかく蠢く息子の嫁の粘膜。それが自分の性感器官を優しく包み込んでいる。女の腰がうねれば、粘膜もまるで別の生物のように巧みに蠢動する。60余年生きて初めて感じる、最高の快感だった。

「おう、おうっ……おお、うっ!」

「はあっ……んんんっ!」

 男が、下から突いた。女の尻が落ちた瞬間だった。最高潮の叫び声が、夫婦の寝室に響き渡る。志穂が、快楽の波に浚われ、軽い絶頂に襲われた。

「おお……志穂、イッたか」

 上に乗った女の唇の端から、涎が一筋滴り落ちるのが見えた。洞内もさらに熱く滾って、分身を締め上げる。しかし、志穂は腰の動きを止めない。義祐も、躍動を止めない。

「ああ、ん、くっ!お義父さまっ……あっ、うふ、うんっ……また、わたしっ!」

 たった今駆け上ったばかりの肉体は、また次のエクスタシーを求め淫らに振るわれている。

汗は下から突き上げる夫の父に歓喜の雨となって降り注ぐ。

セミロングの美しい黒髪は額や唇に張り付き、美貌をより猥褻なものにしている。

白磁の裸像のように美しい乳房は、重力と運動の狭間でゆさゆさと上下する。

尻肉は義父の両手に抱えられて、豊かな肉感を強調しながら本能的にくねっている。

真っ赤な唇はだらしなく開かれ、涎と悩ましい叫びを絶えず発生させ続けている。

 志穂は快感に狂っていた。愛する夫の実の父との禁じられているはずなのに、いや禁じられているからこそ、志穂は女として最高の快感に狂っていられるのだ。

(ああ……あなた、許してっ。志穂、あなたのお父さまに逞しいものを入れられて、また……また、イっちゃう……っ!)

「お、お義父さまぁ……っ、わたし、また、もうっ……ああ、すご、いい……っ!」

 小さな幾度もの波を越え、今自分に迫る大きな絶頂は、きっとこれまでに感じたどれよりも素晴らしい快感であろうと、志穂は乱れきった思考で悟っていた。

「志穂、志穂ぉ……おうっ!わしも、わしも……おお、すごいぞっ、志穂!」

 義祐もまた、望んで望んでついに手に入れた志穂の肉体から、大きな波が襲って来ているのを感じていた。老いた体に残された以上の力を全て腰、いや誇らしく猛った怒張に込め、女の躰を突き破らん限りに突き上げた。頂点の瞬間は、もうすぐだった。

「あ、あうっ!もう、もうっ……お義父、さまぁ、し、ほ……志穂、イクうっ!」

「お、おおうっ……志穂、おっ!お、お、おお……うううっ!」

 叫ぶ、動く、突く、飛ぶ、揺れる。志穂と義祐の全てが一致した時、全裸の二人を最高のオーガズムが呑み込んだ。志穂は全身を痙攣させ喉を反らせ、その美貌を淫らに輝かせた。熱いヴァギナは義父のペニスに歓喜の液を浴びせながら最後の締め上げを行った。義祐もまた、その締め上げに呼応して、先端から滾った溶岩を息子の嫁の奥底に吹き上げさせた。

「あ、あ、あふ、うん……っ」

「お、お……おおっ」

 静かだが艶やかな嗚咽を、志穂義祐二人とも洩らし続けている。躰の中心で混ぜ合わされた二つの液体はこれ以上なく接触されている部分からたらりと洩れ出し、男女双方の絶頂を証明していた。

「あ、ん……」

 やがて、力の抜けた志穂の躰が、義祐の腰の上から墜落した。自分の花芯からしぼんだペニスが抜けていくのを感じながら。

 二人の裸の体が、ベッドに並ぶ。志穂はまだ、淫らな夢の中にいた。傍らで目を閉じ荒い息を必死に抑えながら余韻を味わっている義父の顔を、潤んだ瞳で見つめる。その視線はすぐに離れ、義祐の股間で止まる。自分の淫乱な愛液と義父の熱い樹液が、傾いた陽光に照らされて淫らに輝いている。

「ん……っ」

 心に、淫靡な衝動が灯る。志穂の美貌は本能の赴くままそのペニスに移動した。目の前に存在する、昨日のように不意に差し出されたわけでもないそのしぼんだ肉茎。誰に命ぜられる事もなく、志穂はピンクの舌を出して表面の液体を舐め取っていった。

 

 

 志穂がシャワーを浴び、バスタオルを巻いただけの姿で出てくるのを、義祐は玄関口で待っていた。義父はすでに服は着ているが、激しく貪り合った後では、逞しい男の裸体がちらついて志穂には直視できないでいた。

「じゃあな、志穂さん」

「……」

 義祐は玄関ドアのロックを開け、家を出て行こうとした。志穂はまだ、自分の気持ちに整理がつけられないでいる。義父とのセックスから受ける悦びが大きいほど、終わった後で感じる夫や息子 等への罪悪感が募っていく。確かに、自分は淫乱な躰を持て余して義父と躰を交わしてしまった。しかし、誰かから救ってもらいたいとも願っているのだ。

 また義父はわたしを求めてくるだろう。拒否できないのは分かっている。あれほど激しく乱れてしまったのだから。しかし、それを受け入れこちらから誘うなどという淫らな真似は、いくら自分が淫乱だと悟っていても、志穂には絶対にできない事だった。

 逸らしていた視線を義父に向ければ、義祐はこちらを見て笑っている。その笑顔が近づいてくるのを、志穂はやはり拒否できずにいた。

「ん……っ」

 義父の舌が唇に侵入してくる。舌は、混乱する思考とは裏腹にその侵入者を悦び迎えねとねとと絡んでいく。

「ん、んふ……っ!」

 後ろに回された義祐の手が、尻の谷間からあの部分をまさぐる。

(だめ、だめっ……また、おかしくなるっ!)

 志穂の思考が、また欲望に支配され始めた時、不意に玄関ドアが開いた。夕陽の中に現れたのは、志穂が一番大事にしている宝物、帰宅した等だった。

「あっ」

 目の前にいた二人の姿に、明らかに『キス』している母親と祖父の姿に、等は戸惑っているようだった。志穂は恐怖におののく。しかし、義祐は舌を絡ませたまま唇を離さなかった。

「……た、ただいま」

 幼い声が、やはり少し震えている。志穂の絶望が最高潮に達そうとした瞬間、やっと義祐が唇を離した。舌と舌の間に、唾液が糸引く。

「……おお等、おかえり」

 義祐は、微笑みながら孫の帰宅を迎えた。その笑みさえ、傍らの志穂には恐ろしいものに感じられた。

「ただいま、おじいちゃん」

 等はやっといつもの笑顔に戻ったが、それでもやはり母親と祖父の顔を交互に見つめている。

「あ、あ……っ!」

 淫裂に這ったままだった指が、突然動いた。鈍い電流感覚と心臓を止めるような恐怖感。志穂は、一瞬義祐の方を見た。しかし何よりも息子の事が気になってすぐに等のほうを見つめる。

「ママ、どうしたの?」

 等が、きょとんとしている。

「な、なんでもないの等……気にしないで」

 気丈に答える志穂の淫裂では、まだ義父の指先が巧みに這い回っている。

「……お、お義父さま、お願い……っ」

 か細い声で、必死に訴える。そのうろたえ濡れた瞳を見、義祐は満足して割れ目から指をゆっくりと離した。

「じゃあ志穂さん、またな。等もな」

「うん。おじいちゃん、またね!」

 義祐が意図的に強調し、等が無邪気に言った『また』という言葉が、志穂の心に重く響いていた。

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