もはや興味の焦点はカブト本筋では(略)
そんな訳で、本筋とは全然関係ないところで衝撃を受けまくった第48話でした‥‥
本筋としては、カブト天道が、ZECTの配布する「ワーム感知ペンダント」を、輸送トラックを襲って破壊しまくり、全国指名手配に。
何か訳があるはずだ!言ってくれ!と詰め寄った加賀美に、しかし天道は理由を言わず。
キレた加賀美はうさんくささ全開のネイティブワーム代表の根岸にコロッと丸め込まれ、ゼクトルーパーを率いて天道と対決!
しかし案の定、ペンダントは装着した人間をネイティブワームにしてしまうという恐ろしい機能があり、加賀美パパがZECTのナンバー2三島の裏切りによって失脚・更迭されるに至って、加賀美もようやく真実を知る。
人類ネイティブ化を阻止出来るのは、もはやZECT支配下にないカブト天道のみ。しかしガタック加賀美に倒された天道は瓦礫の下に‥‥
(ここまで本筋)
この合間に、ほんっとに短い尺で展開された地獄兄弟なんですが。
地下道、または薄暗いガード下っぽいところを歩いている天道の前に、熱を出して赤い顔でふらつく影山が現れ、倒れ込む。
でも影山は天道を見上げて、すごく嬉しそうに言う。
「よう、天道。いいこと教えてやるよ。‥‥俺達はこれから、光を求めて旅に出るんだ」
「‥‥そうか」
しかしその胸元には、例のZECT製ペンダントが二つ。
「‥‥だが、その前にそのネックレスは外していけ」
「何だ、お前もこれが欲しいのか。‥‥でも、やらないよ」
と言った影山は不意に苦しみ出し、その姿が一瞬ネイティブワームのものに‥‥
「嘘だ‥‥嘘だろ‥‥!!」
衝撃のあまり叫びながら走り去る影山。
その姿を見送りながら、天道が呟く。
「やはりそういうことか‥‥」
‥‥「やはり」じゃねえだろ!!!!!
何で前回それを加賀美に言わなかったんだ、お前‥‥
確信がなかったにしろ、何故ペンダントを破壊すると聞かれて「気にくわないからだ」じゃあ誰も納得しないっつーの‥‥トリプルライダーキックの回に加賀美と培った信頼とかはどこ行ったんだ、一体!
とはいえ加賀美は加賀美で、この期に及んで何で天道を信じないのか謎が深い。作中において、俺様モードの天道は常に正しく、決して判断を間違わない、という鉄則があるんですが、何故か加賀美は毎度それを忘れた反応するんだよなあ‥‥
ある意味、前回から今回にかけての天道と加賀美のこういうすれ違いのせいで、影山が犠牲になったとも言えるんじゃ‥‥
そしてカブト天道とガタック加賀美がすれ違いバトルを繰り広げ、救出した加賀美パパの話で加賀美(息子)がようやく真実に気付いた頃。
どこか夜の埠頭らしきところで、フェンス越しの海と客船を見ている矢車兄貴。
(その雰囲気はどう見ても「夜陰に乗じて海外へ密航」の待ち合わせ)
そこによろよろと現れた影山に、兄貴が一言。
「遅かったな、兄弟」
いつもの「相棒」じゃなく、今回は何故か「兄弟」。
しかもこの声がまた優しいんだ‥‥いつものうんざりと疲れたような低い声とはちょっと違ってた。
しかし影山は力無くフェンスに縋り、
「俺は‥‥兄貴も知らない暗闇を知ってしまった‥‥」
またも一瞬ワーム化し、元の姿に戻る影山。その横で、俯いたまま無言の兄貴。
「連れて行ってほしかったけどさ‥‥俺はもう、一生この暗闇から出れないよ‥‥」
「‥‥‥‥」
腕組みして海を見詰めたまま、やっぱり微動だにしない兄貴。
よろよろとその背後に回り、背を向けてパンチホッパーに変身する影山。
兄貴の横顔がかすかに揺らぐ。横顔には影が落ちているけど、目尻にかすかに涙が光ったように見える。
背を向けたまま影山が呟く。
「‥‥さよならだ、兄貴」
「‥‥相棒‥‥!!」
キックホッパーに変身し、ライダーキックを放つ兄貴。
‥‥パワー爆裂の破壊音の後、どこかコンテナの隙間みたいなところで脚を投げ出して座り込む兄貴と、その肩に頭をもたせかけて目を閉じている影山。
「‥‥相棒。俺達は永遠に一緒だ」
と影山に話し掛ける兄貴。
そうしてコンテナの隙間から見える夜空の星を見上げ、
「行こう、俺達だけの光を掴みに‥‥」
言いながら、目を閉じたままの影山を見詰める兄貴の目が、優しい―――
‥‥以上、このシーン、およそ二分。
‥‥有り得ないよ!!!!!!
何だよこの「傷だらけの天使」的展開はーーーーー!!!!!!!
しかも前回の予告スポットにあった(そして更新された東映公式サイトの48話分スチールにもあった)、「毛布にくるまった影山と、その前に立っている兄貴」のシーンがなかった!!!!
多分尺の都合でカットされたんだろうけど、どう見てもそのカットは大失敗です。
予告の映像を見るに、影山はワーム化で異常をきたした右手を、咄嗟に毛布に引っ込めて隠したっぽい。
そして兄貴は、埠頭のシーンで動じてなかったことからして、影山のワーム化を毛布のシーンによって既に知っていたと思われるんだよね。
なのにこのシーンが削られたせいで、埠頭での兄貴のライダーキックがものすごく唐突に見えるというか、「兄貴決断早すぎ!」と叫びたくなってしまうという‥‥
いや、影山は多分「人として」死にたかったんだよね‥‥兄貴は影山がワームになっても、それでも二人で行こうとしていたんだけど。
ただこのシーン、雰囲気は死亡フラグ全開ですが、影山は死んでないよ気絶してるだけだよ!と言えなくもないんです。
何故なら以前も、ライダーキックで吹っ飛ばしたもののザビーの変身を解除させただけで、命に別状はない、というシーンがあったから。
実際、影山役の内山さんは東映公式のミニインタビューで、
「本人的には、死んでいるのか、それとも眠っているだけなのか、見ている方に判断してもらえるよう演じたつもりです。」
という発言をしていらしたんです。
しかしその記事の見出しが無情にも、
『48話で壮絶な最期を遂げた影山こと内山眞人さんに、そのときの心境など語ってもらいました。』
‥‥空気読め。つーかファン心理を察してくれよ、公式‥‥
そんな訳で、このあまりに無情、かつ切なくも美しいシーンのおかげでイグは大ショックを受け、いまだに立ち直れていないのでした‥‥
というか、自分でも何でこんなにショック受けてるのかよく解らない。自分が爆萌えしてたのはどっちかというと矢車さんの方で、さほど影山に入れあげてた訳ではないので、余計に解らない。
ただ、榊はかなりの電波体質なので、入れあげたキャラへの感情移入は、普通の方には想像を絶する異常なレベルにあるらしく。それでちょっと思ったのは、この衝撃と虚脱は、あるいは兄貴のものなんじゃないだろうかと。
あのシーン見た直後はただただ茫然とするだけで、半日くらいは何か空白になってた気がします。事態を直視出来ないというか、衝撃の展開を信じたくないというか。ようやく感情が戻ってきて涙出てきたのは、夜になってからでした。
ラストシーンで「俺達は永遠に一緒だ」と言ってる兄貴は、どこか虚ろで夢見てるようでもあった。
兄貴もあの時点では少し感情が麻痺してたんじゃないだろうか、とか、あの後影山を失った兄貴は一体どうなるんだろう、とか、色々考えてしまったですよ‥‥
そして考えながら、いや影山は死んでないよ気絶してるだけだよ、あの後きっと「あれ?俺‥‥」とか言いながら目を覚ますんだよ、そしてワーム化しても気にしない兄貴と二人で光を掴みに旅立つんだよ!!!!!とか、必死で死亡モード考察を打ち消したりなんかして‥‥
にしても思うのは、地獄兄弟、ほんと本筋に絡まないまま終わったなあ‥‥
(この回で出番が終わりなのは、兄貴役の徳山さんと影山役の内山さんのブログで明言されている)
テレマガのお二人の対談を見ると、矢車さんは本来、初期のパーフェクトハーモニー崩壊→退場、で終わりの予定だったとか。それが予期せず、劇場版に出演が決まり、なおかつホッパーでの再登場することになった、という話でした。
しかし、パンチホッッパー&キックホッパー、という「ライダー」の登場自体は、スポンサーの玩具展開としては初期から予定されていたはず。
ということは、後半で出てくるホッパーをどういうキャラにしよう、と会議にかかった時、人気あったし(?)矢車と影山いいんじゃない? ということになったんではないだろうか、と推測される訳ですよ。
だとしたら、後で「赤い靴」カブト暴走システムのストッパーとしてホッパーは作られたのではないか、ということを匂わせるシーンはあったものの、それはあくまで「ライダーシステム」としての設定であり、ホッパーに地獄兄弟が配役されたこと自体は、ファンサービスとしての「壮大なおまけ」であったという可能性もあるのではないだろうか‥‥
だとしたら、この本筋への絡まなさも納得がいく。
しかしそれなら、何もわざわざこんなバッドエンドでなくてもいいじゃないか、とも思うのだが‥‥(涙)
ただ、この地獄兄弟のラストシーンは、前述の「傷だらけの天使」を筆頭に、「俺達の勲章」や「はぐれ刑事(デカ)」や「プロハンター」「探偵物語」「ベイシティ刑事(コップ)」他といった、70年代~80年代初頭のアクションドラマの構造に非常に似ている気がする。
それらのドラマは、ちょっとアウトローな刑事や私立探偵、あるいは町のチンピラ二人組といったキャラが主人公で、ゆるいコメディタッチをメインにしたお気楽無国籍アクションである。
しかし同時にそれらはほぼ例外なく、最終回で主人公や相棒が唐突で無情な死に見舞われて終わる。
(こういうもののルーツは、もしかしたらアメリカ映画の「真夜中のカウボーイ」なのかも知れない。あれもチンピラ二人組が「暖かいカリフォルニアに行こうぜ」と大陸横断バスに乗るも、彼の地を見ることなく片割れが車中で死んでしまう、というラストだった)
地獄兄弟のこの顛末は、雰囲気といいコメディタッチから一転しての死亡エンドといい、どうもその辺のドラマを思わせる‥‥だからスタッフはもしかしたら、壮大なおまけキャラを本筋の狂言回しに使いながら、劇中劇としてあの辺のドラマをやってみたかったんじゃないだろうか、という気がしてしょうがない。
だからって何もそれをライダーでやらなくても(略) 地獄兄弟のためにカブト見続けてたような人間もここにいるくらい、あの二人は人気沸騰しちゃったのに‥‥(涙)
御礼‥‥今回の更新は、幸猫さんと柴犬さんにネタを頂いたものです。
こんな状態なので、お二人がいないと今回の更新はなかったと思われます。
深く御礼申し上げます。