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デビ小ネタ・鞄にまつわるエトセトラ編

 神無と双魔は鞄のことでまた何ごとか言い争っていた。
 どうやら双魔が目的外の鞄(ショルダーバッグ)を衝動買いし、必要経費を使い込んでしまったらしい。
「そんなに好きな鞄なら自分が入ってろ!」
 神無は怒りの勢いのあまり、双魔を頭から鞄に押し込もうとし始めた。
「伊東さんじゃないんだから無理だってばー!」
「泣き言は試してから言え!」
「絶対無理だって! そんなの入らないよ! やめてー!」
「BLみたいな台詞を吐くな!」
「ていうか何でBLとか知ってるんだよー!」
「お前が俺のバイク誌の山に妙な本を混入させておくからだろうが!」
「読まなきゃいいじゃーん!!」
 ‥‥などという、毎度の兄弟喧嘩の混沌の果てに、
「じゃあまず神無が試せば!」
 と、逆ギレした双魔が鞄を奪い取り、神無の頭にがぼりと被せた。
「!!‥‥‥‥」
 どうしてか、神無がピタリと動きを止めた。
「‥‥か、神無?」
「‥‥‥‥」
 鞄をかぶったまま、神無は無言。
 その隙に逃げようと目論んでいた双魔は、しかし、予想外の沈黙が醸し出す不安感に、逆に身動きかなわなくなってしまった。
「‥‥な、なんか言ってよ、ねえ」
「‥‥‥‥」
「ぼ、僕も被るから勘弁してよ‥‥!」
 双魔は混乱の勢いで、傍らにあった神無の鞄(ワンショルダーのディパック)をすぽりとかぶった。
 しかし、神無の反応はやはりなく。
 ‥‥そのまま、しばしの沈黙が過ぎ去った頃。
「ただいま~、息子達よ、今帰ったよ~」
 いつもの能天気な声と共に、父が帰宅。
 リビングに入るなり目にした光景に、父はぎょっとしたように足を止めた。
 そしてしばらく考えた後、
「‥‥ち、父もかぶればいいのかな?」
 ガサガサとエコバッグを広げる音に、二人は思わず同時に叫んだ。
「やめろ!」
「やめてよ!」

(オチない)


御礼‥‥パチパチありがとうございます(^_^)/
 二名様のパチに感謝! これは更新確認!なのか、小ネタにウケて頂いたのか、どっちだろう。どっちでも嬉しいが! ちなみにあの「去年の水で入れたお茶」はイグ母の持ちネタです。ああいうのはどこのおうちでもよくやるネタなのであろうか、うちだけなのだろうか‥‥あの年越しネタには「去年の蕎麦をまだ食べ終わっていない!」などのバリエーションもあります。「そんなネタやらないよ!」というおうちの方は、是非一度お試し下さい(笑) そして年始に和やかな笑いを!