先日、出掛けようと玄関を出、風除室(冷気避けのため玄関前に作るガラス貼りの二重扉部屋。寒冷地域には大概ある)の窓ガラスをふと見たところ。
ガラスの外側に、直径1.5センチほどのカタツムリが張り付いてました。
ああ懐かしいなあでんでん。最近あんまりいないんだよなあ。
とか思ってよく見てみると、カタツムリの内側の、身の部分が見当たりません。
どうやら身は殻の奥に待避していて、殻のふち部分だけが、移動してきた時の粘液(もう乾いている)でガラスにくっついている状態のよう。
そういえば雨が降ったのは昨日のこと。恐らくこのカタツムリは、ここまで移動してきて一休みしていたのだろう。そしてうっかりしているうちに雨が上がり、それどころか殻が乾いてしまって、動けなくなったのではなかろうか。
‥‥その時イグは思いだしたのです。
ずっと昔も、こういうカタツムリを見かけたことがあったのを。
普段通らない道を珍しく通ってみた時、イグはそいつを発見しました。
裏通りの細いT字路に、ひっそり立っていたカーブミラー。
その鏡面に、何かがくっついていることに。
よく見るとそれは、遠目での推定3~4センチほどの、ちょっと大きめのカタツムリでした。
その時は、「なんであんなところに昇っちゃったんだろうなあアレ」とか思いつつ、普通に通り過ぎました。
しかし。
何日か後に通りかかった時も、カタツムリの殻はそのまんまそこにくっついていました。
その後何度そこを通っても、カタツムリの殻は同じ位置にくっついたままでした。
カーブミラーの表面はガラス。しかも日当たりのいい場所の、高いところにある。
‥‥恐らくそのカタツムリ(の中身)は、うっかりとカーブミラーにくっついている間に、そのまま干からびてしまったのでは‥‥
と気が付いた瞬間、イグは何とも言えない重ーい気持ちになってしまったですよ‥‥
なんでそのカタツムリは、周囲がまだ湿っているうちに移動しなかったんだろう。
うっかりとガラスが乾いてしまっても、自分がまだ湿っているうちなら、ほんの50センチも移動すれば鉄柱に辿り着き、日射を避けてカーブミラーを降りることも可能だっただろうに。
うかうかしてるうちにガラスが熱くなって、動くに動けなかったのか? 何でそうなる前に動かなかったのか。
そもそもそいつは何でそんなところまで昇ってしまったのか‥‥
てなことを考えながら、イグはヘミングウェイの豹の話を思い出したですよ。
「キリマンジャロ山頂の雪の中に、何故か豹が死んでいる、豹が何でそんなところまでやってきたのかは誰にも解らない」っていう、バナナフィッシュで引用されているアレ。
いや、このカタツムリは絶対単なるうっかり者だろ! とは思いましたが。
‥‥というかつての記憶が、風除室のカタツムリを見てどーっと蘇ってしまったイグアナ。
泡食って外に出て、ガラスからカタツムリの殻を剥がしました。
その時ぺりっ、て音がしたので、「うわー乾いてる! 死んでるかも!」と思い、玄関脇の水道で水をぶっかけ、横にあったアジサイの葉っぱに乗せて、さらに水をかけておきました。<葉っぱの上のプチ水たまりに殻が漬かってる状態。
そんで裏の物置に自転車を取りに行き、タイヤの空気を入れ、数分ののちに玄関脇に戻ってきたところ。
‥‥カタツムリの殻から、身が出てきてました。
出ていたツノを恐る恐るつつくと、「おわっ?!」って感じで引っ込みます。
うわー良かった生きてた! 乾いてなかったよでんでん虫!
というのが、レスキューでんでん虫の顛末でありました。
いつかイグが地獄に堕ちたら、あのカタツムリは蜘蛛の糸みたいに助けてくれるかなあ。
でもカタツムリは伸ばす糸とか無いしなー。無理か。
とか、訳の解らないことを考えつつ、出がけのイグはやや晴れ晴れとした気持ちになったのでした。