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ディケイド!カブトの世界編(後編)

 カブトの世界編最高―――!!!!
 素材を最高に生かした原作再構築っぷりだった!

 原作カブトの方は、
・いいとこ:題材・映像・俳優・キャラクター造形が最高。
・駄目なとこ:キャラが多すぎ。設定が二転三転しすぎ。おかげで物語としての全体のまとまりがグダグダ。
 という状態だったのだが、ディケイド版ではその「キャラ多すぎて物語~」というところが正に完全修正されていた。

 原作カブトの「組織を掌握して暴走する影山・三島」「ロクなことにならないザビー装着者」「もう一人の天道(ネイティブワーム)」は、ディケイド版のザビー弟切ソウ(ワームが擬態した偽ソウジ)に集約されてすっきり!
 主役のカブトも、原作ではカブト天道を演じた水嶋ヒロのビジュアルにスタッフが引っ張られすぎたのか、格好つけのためにやりすぎたっぽい、無駄な演出が多々あった。それが今回はかなり抑えられ、「ともかく妹を守る(ワームでも)」「誰に誤解されても正しいと信じた道を行く」という、天道の地味にいいとこだけ抜き出したディケイド版の「天堂ソウジ」に。
 そして「ソウジ」からは外された格好つけの部分「おばあちゃんが言っていた」を、同じオレ様キャラである士に言わせるとか、すげえ上手い。本気で鳥肌立った。あのセリフ、士が喋っても何の違和感もなくて驚いたよ!

 ガタックのアラタが異常に影薄かったけど、二話にまとめるのに原作の加賀美レベルの出番は確かに邪魔すぎる。元の加賀美自体、無駄に話かき回して堂々巡りするキャラだったしなあ。物語的には今回くらいの位置付けで丁度いいと思った。

 ラストの方の、高い位置からシュートするディケイドの派手なキックと、背を向けたポジションから一転して回し蹴り、という静と動のメリハリの利いたカブトのキックをダブルでワームに当てるシーンも超燃えた。
 いっとき止められていたクロックアップ機能が復活し、自分では制御出来ない高速の世界に再び戻ってしまうという、妹=普通の日常との別れのシーンも、切なくもたいへん美しかった。
 原作で樹花(天道の義妹)が言ってたセリフ「おばあちゃんが言ってた。側にいない時は、もっと側にいてくれるって」を思い出したよ‥‥
 アクション的にも物語的にも、原作でいまいち足りなかったカタルシスを、今になってこんな形で見られるとは!って感じでした。

(原作は、ラスト直前までガタック加賀美がグダグダで、カブト天道の足引っ張ってたし、一方では地獄兄弟がひどいことになっていたので、正直最終回の盛り上がりとか全くなかった。ヒロインであるひよりの処遇も最後までおかしかったし)

 変な話だが、これでようやく原作カブトの正しい最終回を見たような気がした。
 来週は響鬼の世界編だけど、こうなると期待しちゃうなあ。
「だが期待するな!」という、矢車さんの声が聞こえてきそうですが‥‥

(何故なら脚本が米村さんだから。あの人ってキャラはたいそう魅力的でパッと見のシーンは面白いんだけど、全体としてのまとまりを作ったり、大きな流れの中での整合性を保つのが下手なんだよね)