イエモンの「球根」のビデオクリップには、何故かグリーンイグアナが出ている。
変な色の触覚を装着されて「謎の生き物」っぽく扱われてはいるが、本体はいたって普通のグリーンイグアナ。
イエモンは昔からカタツムリだのトカゲだのがやけに好きで、よくジャケやビデオに出演させていたので、その流れで「次はイグアナ」だったんだろうなという感じだった。
(その頃榊はまだイグアナではなかったので、さほどの興味を持ってはいなかった)
で、歌の内容に合わせてか、その謎の生き物(中身イグアナ)は、ビデオのラストで背中から水晶の結晶みたいなものを生やして、脱皮した後の抜け殻ミイラになっているという、美しいんだかグロいんだか、いまいち解らぬ感じの映像で終わります。
その「球根」という歌は、たまたま当時神無×双魔の本のタイトルに頂いたこともあるのだが、あれに限らずうちでよく書くネタ全般に合う歌なんである。
例えば、魔王サタンの双子の片割れでありながら、存在を赦されず黙殺され続け、その怒りと復讐心だけを糧に這い上がってきた影サタン様であるとか。
例えば、誰もが認める天界一の武将で、ミカエルにも特別扱いされるほどの栄えある上級天使様でありながら、そんなことは何の救いにもならず、ソードとの決闘だけが唯一の楽しみだったイオスであるとか。
例えば、自分を拾ってくれた正サタン様に心酔し、正様が死んだ後はその復活と敵の排除に人生の全てを捧げてしまい、それ以外の個人的な感情や都合は全部投げ打ってしまうシバであるとか。
そういう、「要らない子」というレッテルに対する反発心とか、逆に「必要な子」であっても、その必要とされている部分が、自分にとっては何の意味も価値もないという絶望感とか、多分榊はそういうものに呪縛されていて、そういうキャラの気持ちを書くのが好きなのである。そして「球根」というのは正にそういうテーマの歌なんじゃないだろうか。
そしてあのビデオクリップ謎の終わり方は、何かそういうものの決着を示しているような気もするのですが、正確な意味はやっぱり解らぬまま、ただなんかじわじわと泣けてくるのだった。
名作も名曲も多々あれども、デビ以上にしつこく同人誌出すマンガも、イエモンを越えるほど入れあげるバンドも、多分もうないだろうなあ。