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中の人日記・今月の大当たり編

 それは電撃文庫刊のラノベ「VS!!-正義の味方を倒すには-」著者・和泉弐式。

 あらすじは大雑把に言うと、
「悪の組織・アルスマグナの、いまいちやる気のない下っ端戦闘員・21号(通称ニーイチ)が、色々なあれこれを経て『いつか絶対ヒーローぶっ倒す!!』という決意を固める話」
 なんだけど、その展開がものすごく熱い!
「戦闘とかそういうの向いてない」と地下基地から家出する怪人・ジャバウォック(見た目17歳くらいの女の子)とか、ニーイチと同居する同僚の女の子戦闘員・22号(通称ジジ)とか、下っ端を統括する隊長(戦闘員一号)とかのキャラもいい。

 なんつか、全員がちゃんとキャラが立ってるんだ、いい意味で。
 最近のラノベはほら、ツンデレだのお嬢様だの幼馴染みだの女王様だの、そういう「属性」の一言で説明がついちゃうキャラばっかなんだけど、これはそういう意味ではあんまりラノベ的ではない。ものすごくちゃんと特撮的。
 対するヒーロー側(カラフル戦隊系)もいい人達でちゃんと英雄してて、ありがちな善悪逆転ものでもない。

 設定的になんかすげえ!と思ったのは、下っ端戦闘員のシステム。
 戦闘員はホムンクルスで、フラスコの中で合成され、いきなり大人の形態で生まれてくるんだけど、その人数は全81人と決まっている。戦闘で欠けた分だけ、新たに合成されて数に加わる。
 なので、例えば1号が戦闘で死ねば、次の一号が製造補充される。前の一号とは何の共通点もなく、単にゼッケンを引き継ぐ程度の仮名ナンバリングなのだが、何故か一号=隊長と決まってるんだな。
 でも下っ端戦闘員なのでどんどん死んで入れ替わる。現隊長の一号は戦闘7回ほどを生き延びた経歴だが、主人公の21号は13回生き延びて帰還している、という。
 ラスト間近の戦闘中、隊長がその辺を回想するシーンと、その後の展開~ラストの締めはかなり本気で感動した。ちょっと泣けた。

 ヒーローと怪人の裏表、みたいな話は、織田兄第の「EX!」もあった(今もある)。
 ‥‥のだが、あっちはまず、怪人の生き残りとヒーローそれぞれの子供達が共存を目指しつつ、それを邪魔する悪の組織とヒーローそれぞれの強硬派と戦う話なんだな。
 でもその「共存を目指す」ってのが焦点であると共に問題で、ギャルゲノリの主人公モテモテ&萌え展開が強くなり、ヒーロー色が二の次になっちまったので、ついて行けなくなって5巻までしか持ってない、という。<現在13巻くらいまでは行ってるはず。でもまさかのメインヒロインと当て馬ヒロイン交代で誰得状態。

「VS!!」の方に恋愛色が皆無かと言えばそうでもないのだが、ウザいとは思わないレベル。
 なおかつ、「どうせ勝てないんだから生きて帰れればいい」と思っていたニーイチが、初めて「ヒーローに勝つこと・倒すこと」を意識する理由付けでもある。
 割と押しの強いマイペース系として描かれる怪人ジャバウォックも、この辺の展開は非常に切なくもはかなくて悲しい。

 文章にはそれほど癖も特徴もないが、自分のリズムに近いせいか読みやすい。
 昨年の大当たりは「はたらく魔王さま!」(二月に第四巻が出ます)なんだけど、それと比べても文章はさらに平易だと思う。魔王様の方がいくらか説明的なくらい。そして地の文と心理描写の混ざり具合が大変好みだ。

 という訳で、「VS!!-正義の味方を倒すには-」、お薦めです。
 後半の展開はものすっごく血が煮えたよ‥‥!
 ヒーローものが好きな人、恋愛沙汰はいいから戦えー!と思ってしまう榊のような趣味の人は、是非!


御礼‥‥パチパチありがとうございます(^_^)/
 win7は相変わらず色々とめんどくさいです‥‥マシンスペックのおかげか、挙動が遅いと思ったことは一度もないのですが(起動とか異様に早い。追加アプリ一切なしの98くらい早い)、この痒いところをさらにくすぐるような仕様は一体何たることか! ことに、ファイルの置き場を勝手に想定・分類されるのが嫌です‥‥原稿の文章ファイルと表紙原稿ファイルは一緒に置きたいんだよ! テキスト/ピクチャとかで勝手に仲を裂こうとすんな!って感じです。微妙。

(そして小ネタの風邪引きイオス&神無編は、なんか予想外の方に横滑りして長くなり、いまいちまとめられずにいます‥‥)