◇ ソードと双魔の召喚術講座 ◇
※特にオチのない、単なる設定覚え書きです(「真・魔王転生」辺りで使う会話かも)
「―――って感じで、召喚円はこれが基本形だな」開いたノートの上を歩き回り、魔法陣を描いたソード(手乗りサイズ魂)が、シャーペンの芯で図面を指す。
「ここんとこに呼び出す相手の名前を書く訳だ」
「悪魔文字でだよね?」
「勿論。しかも相手によっちゃ高級言語でなきゃ無視されるぜ。綴りが間違ってたら難癖つけられて食われるかも知れねえから気をつけろよ」
「それは通称でいいの?」
「そりゃ真名なら一発だが、そんなもん滅多なことじゃ洩れねえからな」
「みずのさんに頼んだら解るかなあ。ほら、真実の書ってあったじゃない」
「アレは目の前に当の魔族がいねえと使えなさそうじゃねえか? あとオレ様の名前が載ってねえ辺り、相当抜けがありそうだけどな」
「(何だか年金納付記録の不具合みたいだなあ‥‥)あ、じゃあ呼び出す相手が魔族なら誰でもいい時はどうするの?」
「そん時ゃこの辺に、せめて目当ての属性くらい書かないと効かねえな」
「属性。‥‥地水火風とかそういうの?」
「そういうのとか、あとは種族なんかだな。龍族とか精霊とか夜魔とか。でもそれだとロクな奴が来ねえからやめとけ」
「え、なんで?」
「お前、外から急に『誰でもいいから来い助けてくれ!』って声が聞こえたら出て行くか?」
「行かないね。‥‥あー、魔族でも鍵開けさせるのが目的の強盗みたいのが来ちゃう可能性がある訳かぁ」
「逆だろ。それこっちじゃむしろ『うかうか呼び出されてロクでもねえ人間に捕まると、瓶に封印されてこき使われるぞ』って話になってるぜ」
「へぇー‥‥(そういえばアラビアンナイトにそういう話あったっけなあ)」
「まあケータイ電話なんかと一緒だな。召喚呪文自体、人間界でいう電話番号とかメルアドみたいなもんだし」
「そうなんだ?!」
「実際、電話番号ってやつは、召喚呪文と魔法陣の仕組みとよく似てるぜ。 知ってる奴からかかってくれば出るが、知らない番号だとまず出ないだろ?」
「知り合いでも忙しい時だと出ないで留守録任せだね。‥‥なるほど似てるかも」
「人間が名前を知ってるような大物だと、召喚術が間違ってなくてもまず出てこねえだろうな。 始終あちこちから呼ばれててウゼえからまとめて無視してるだろうし、呼ぶ方がよっぽどじゃねえと行くだけ損だろうし」
「芸能人の番号が洩れるのと大変なのと一緒だね」
「あと、呪文と召喚陣がちゃんとしてりゃ、呼んでるのがどういう奴かは大雑把に解るようになってるんだ。留守録で声聞いた時みたいに。 それで行く行かないを決めることもあるだろうな」
「ソードさんは美人っぽい女の人なら直行しそうだね」
「‥‥てめえオレのこと何だと思ってやがるんだ」
「ええー違うの?」
「‥‥悪魔呼び出すような魔導に詳しい女には大概ロクでもねえ後ろ盾がついてて、試しに呼ばれてみてもイイ目見れねえって相場が決まってんだよ!」
「へー‥‥(多分前に何かあったんだろうなあ‥‥ていうかそれって、もしかしなくても出会い系詐欺‥‥)」
「‥‥その何か言いたげな顔は何だ!」
「えー、いや、あの‥‥あ、前に薬味先輩がケルベロス召喚した時、ナナちゃんが出てきちゃったのは何でだろ?(質問でごまかしちゃえ)」
「ケルベロスが召喚を無視したところに、ネコが便乗したんだろ。あいつオレ達に近付く隙を窺ってたみたいだからな」
「んー‥‥じゃあソードさんが前にサタン様呼び出した時(※)は何で来てくれたのかなあ。一番召喚を無視しそうな相手だけど」
(※‥‥既刊再録にある「Merry Xmas!」参照のこと)
「普通に様付けしてんじゃねーよ!‥‥あれは落とした手帳取りに来るのが目的だったんだろ。召喚した奴が持ってるって解ってんだから」
「あー‥‥落としたケータイから家電に電話がかかってきたようなもの?」
「だな」
「うわーそう聞くと何だかオカルトっぽくないなあ‥‥」
「しょうがねえだろ、それが魔族の側の日常なんだからよ‥‥」
(2011/04/20日記)
最終回後、入れ替わりが容易になり、互いに手乗りサイズ(魂)でも出てこられるようになると、
ソードは連日魔術・魔界に関する質問攻めにあう羽目になります。