プラッサくん物語

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  〜はじまり〜  

 プラッサくんは、最初はポーラ化粧品のCMに出てきたマスコットキャラクターでした。
 イタチともミンクともフェレットともつかない、不思議な二足歩行の生き物(と言ってもぬいぐるみだけど)で、枯れた植物が水をかけられて緑色に蘇るのを見て『わひゃー』と驚く姿はとても可愛くて、このCMは結構評判がよかったのです。
 そして、それを見ていた沢山の視聴者の中に、ある人物がいました。まだ十三才の男の子、榊 陸くんです。でも、陸くんはただの中学一年生ではなかったのです。
 陸くんは、実は機械工学の天才で、国の研究機関にも特別研究生として在籍し、五歳の頃から数々の研究、発明を手がけていました。そのかたわら、子供らしく特撮やアニメの番組を見ては、登場するキャラクターそのままのロボットを作ったりして友達を驚かせるというお茶目な趣味もあったのです。
 陸くんはそうして同じように試作型プラッサくんを作り、研究所に『汎用小型ロボットの製作モデル』として提出しました。
 陸くんの上司である開発部の部長は、机の上に立っているプラッサくんの小ささにまず驚き、それがちゃんと生き物と同じように動いて話すのにまた驚き、さらに子供と同じくらいの知能と情緒と感情を持っているのに三たび驚きました(ちなみのその時、あんまり注目されて戸惑ったプラッサくんは、CM通りの『わひゃー』と言う驚きのリアクションをして、四たび部長を驚かせました)。
 その時部長は、
『これは開発の方向によっては、介護用からサービス業まで幅広い用途がある』
と思いました。陸くんはそこまで考えていたわけではありませんでしたが、生き物の飼えない人のペット代わりや、お年寄りの話し相手なんかにいいだろうなあ、なんて思ってはいました。陸くんの家には沢山の猫や犬や鳥、それに兎、リス、ミニ豚、いつの間にか住みついたフルーツバットまでが居て、友達に羨ましがられることが多かったからです。
 そうして、プラッサくんは研究を重ねて商品化され、『小さな友達』としてあちこちで見かけるようになりました。もちろん、人権擁護条約の対象になるくらいですから(つまり、プラッサくんに対する虐待や侵害は、処罰の対象となるのです)、プラッサくんは人間と同じに色んなことを考えたり、笑ったり、泣いたり、驚いたりします。
 中には、びっくりするような大冒険をしてしまうプラッサくんもいます。
 これは、そのお話の中のひとつです。
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